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特許72229323次元ポリマーネットワークおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】3次元ポリマーネットワークおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/549 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
G01N33/549
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019570075
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2018066148
(87)【国際公開番号】W WO2018234253
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】17176572.0
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518213606
【氏名又は名称】セイフガード バイオシステムズ ホールディングズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Safeguard Biosystems Holdings Ltd.
【住所又は居所原語表記】Quadrant House, Floor 6, 4 Thomas More Square, London E1W 1YW, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー クラップロート
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ ベトナー
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0008442(US,A1)
【文献】米国特許第04196070(US,A)
【文献】特表2019-506180(JP,A)
【文献】特表2001-504756(JP,A)
【文献】国際公開第98/023366(WO,A1)
【文献】特表2005-523739(JP,A)
【文献】特表2010-505029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130699(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0005600(US,A1)
【文献】Martin Rendl,Simple One-Step Process for Immobilization of Biomolecules on Polymer Substrates Based on Surface-Attached Polymer Networks,Langmuir,2011年04月14日,Vol.27,Page.6116-6123
【文献】D. Horak,Superporous poly(2-hydroxyethyl methacrylate) based scaffolds: Preparation and characterization,Polymer,2008年04月04日,Vol.49,Page.2046-2054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/549
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数本の輸送チャネルを含む3次元ヒドロゲルネットワークの製造方法であって、
(a) 以下:
(i) 少なくとも500mMの総濃度を有する少なくとも2種の一価金属イオンと、
(ii) 水溶性ポリマー鎖と、
(iii) 架橋剤部分と
含む混合物を塩結晶形成条件に曝露させ、塩結晶を1つまたは複数含む混合物を形成させるステップと、
(b) 前記塩結晶を1つまたは複数含む混合物のポリマー鎖を架橋させて、塩結晶を1つまたは複数含むヒドロゲルを形成させるステップと、
(c) 前記塩結晶を1つまたは複数含むヒドロゲルを、前記1つまたは複数の塩結晶を溶解させ得る溶媒と接触させることにより前記塩結晶を溶解させて、前記1本または複数本の輸送チャネルを含む3次元ヒドロゲルネットワークを形成させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物はプローブ分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プローブ分子は核酸分子である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記混合物は基材の表面上に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記塩結晶形成条件は、前記混合物中の相対的塩含量が増加して溶解限度を上回るまで該混合物を脱水または冷却することを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記混合物は、500mM~1000mMの総濃度を有する少なくとも2種類の一価金属イオンを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記混合物は、200mM以上の濃度のナトリウムイオンおよび150mM以上の濃度のカリウムイオンを含む、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記ナトリウムイオンの濃度は、300mM~400mMの範囲であり、かつ前記カリウムイオンの濃度は、200mM~350mMの範囲である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)の前に、前記混合物を形成するステップをさらに含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を形成するステップは、一価金属カチオンを含む塩水溶液と、水溶性ポリマー鎖、架橋剤部分、および存在する場合には任意のプローブ分子を含む1つまたは複数の溶液とを合することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記塩水溶液は、6~9の範囲のpHを有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウムおよびリン酸二水素カリウムを水に溶解させることを含む方法によって製造される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリマー鎖は、メタクリレート基および1分子あたり少なくとも2つの架橋剤部分を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記架橋剤部分はベンゾフェノン部分である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記水溶性ポリマー鎖は、ジメチルアクリルアミド(DMAA)と、メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MABP)と、4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SSNa)とを重合させたものである、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
架橋された水溶性ポリマー鎖と1つまたは2つのプローブ分子を含み、かつ、1本または複数本の長チャネルおよび1本または複数本の短チャネルを含む3次元ヒドロゲルネットワークであって、
(a)それぞれの長チャネルは、ほぼ一直線であり、かつ3次元ヒドロゲルネットワークが含水状態にある場合に、少なくとも300nmの最小断面と、最小断面の少なくとも3倍の長さとを有し、かつ
(b)それぞれの短チャネルは、ほぼ一直線であり、かつ3次元ヒドロゲルネットワークが含水状態にある場合に、その最小断面の3倍未満の長さを有する、
3次元ヒドロゲルネットワーク。
【請求項17】
前記プローブ分子は核酸分子である、請求項16に記載の3次元ヒドロゲルネットワーク。
【請求項18】
前記1本または複数本の短チャネルが、前記1本または複数本の長チャネルによって貫通されている、請求項16または17記載の3次元ヒドロゲルネットワーク。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項項記載の3次元ヒドロゲルネットワークを複数個含むアレイであって、
(a) 前記3次元ヒドロゲルネットワークは、前記基材に固定化されており、かつ
(b) 前記3次元ヒドロゲルネットワークはそれぞれ、前記基材上の別個のスポットに位置する、アレイ。
【請求項20】
前記アレイは、少なくとも10回再使用可能である、請求項19記載のアレイ。
【請求項21】
アレイの製造方法であって、
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法によって、同一の基材の表面上の離散した各スポットで複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを生成させるステップと、
ステップ(b)の間に前記3次元ヒドロゲルネットワークを前記基材と架橋させるステップと
を含む、方法。
【請求項22】
サンプル中に検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 請求項16から18までのいずれか1項記載の3次元ヒドロゲルネットワークまたは請求項19記載のアレイを前記サンプルと接触させ、ここで、前記3次元ヒドロゲルネットワークまたはアレイは、前記サンプルに含まれる前記検体に結合し得るプローブ分子を含むものとするステップと、
(b) 前記3次元ヒドロゲルネットワークまたはアレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記サンプル中に前記検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記3次元ヒドロゲルネットワークもしくはアレイは、ステップ(a)の前にすでに少なくとも10回使用および洗浄されているか、または
前記方法は、前記3次元ヒドロゲルネットワークもしくはアレイをステップ(b)の後に少なくとも10回再使用するステップをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記3次元ヒドロゲルネットワークにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を定量するステップをさらに含む、請求項23記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 背景
米国特許出願公開第2008/0293592号明細書には、光反応性架橋剤を用いて有機表面上にプローブ生体分子を共有結合により固定化する方法が記載されている。この方法は特に、例えばシラン化ガラス支持体や標準的な市販のプラスチック製の基材といった非反応性表面上にプローブ生体分子を固定化することができるため有利であることが実地において実証されている。この米国特許出願公開第2008/0293592号明細書に記載の方法では、ある種の3次元ネットワークを形成するためのポリマーが使用されており、この3次元ネットワークには、プローブ生体分子が該ネットワークの表面にも該ネットワークの内部でも結合し得る。ポリマーおよび/またはコポリマーネットワークにおいて生体分子を3次元的に固定化することで、プローブ生体分子が2次元形態でしか固定化されていない有機表面と比較して、有機表面上のプローブ生体分子をより高密度とすることができる。これによって、有機表面の単位表面あたりに結合し得る検体の量が増加する。このように、表面を生体センサとして使用することで、測定精度が向上するとともに、高度な測定ダイナミックが生じる。
【0002】
しかし、この米国特許出願公開第2008/0293592号明細書に記載の方法およびポリマーネットワークの欠点は、該ポリマーネットワークの表面またはその近傍に配置されたプローブ生体分子に結合した検体分子または検体構成要素が該ネットワークをブロックし得るという点にある。その場合、該ネットワークの表面からより離れて該ネットワークの内部に配置されている未結合のプローブ生体分子には、それ以上さらなる検体分子や検体成分が結合し得ない。
【0003】
したがって、改良されたポリマーネットワークが必要とされている。
【0004】
2. 概要
本開示は、架橋ポリマー鎖、例えば水溶性ポリマー鎖と、1本または複数本の輸送チャネルとを含む三次元ポリマーネットワークを提供する。該輸送チャネルにより、溶解した分子、例えば検体分子がネットワーク内のポリマー鎖に到達し得る。特定の態様において、ポリマー鎖はプローブ分子に架橋され、輸送チャネルは、検体をプローブ分子に結合させるためのより大きな表面積を提供する。
【0005】
該ネットワークは、表面に適切に共有結合する。前段落に示されているように、該ネットワークの表面上および該ネットワークの内部全体に、例えば生体分子などの1個または複数個のプローブを固定化することができ、それによってサンプル中の検体の存在を検出しかつ/またはその量を測定するためのセンサが提供される。例えば、核酸プローブを用いることで、サンプル中に存在する相補的核酸を検出することができ、抗体プローブを用いることで、サンプル中に存在する抗原を検出することができる。輸送チャネルによってネットワークの表面積を効率的に増大させることができ、それによって所与の時間内により多くのプローブをサンプルに曝露させることができるため、本開示のネットワークによって、所与の量の検体を、輸送チャネルを有しないネットワークよりも高速にハイブリダイゼーションすることが可能となる。さらに、ネットワークの表面またはその近傍のプローブに結合した検体またはサンプルの他の構成要素によって該ネットワークの内部に位置するプローブへの到達がブロックされてしまうという問題が輸送チャネルによって低減または排除されるため、本開示のネットワークは、輸送チャネルを有しない同一体積のネットワークよりも多くの検体を拘束することができる。本開示のネットワークのもう1つの利点は、輸送チャネルによって多量の検体を負荷させることができるようになったことで、所与の量の検体をより低体積のネットワーク内に集中させることができるため、輸送チャネルを有しないネットワークを用いた場合に可能である検体検出よりも高感度の検体検出が可能となり、すなわち輸送チャネルを有しないネットワークと比較してシグナルノイズ比を改善することができるという点にある。本開示のネットワークのもう1つの利点は、輸送チャネルによって多量の検体を負荷させることができるようになったことで、輸送チャネルを有しないネットワークと比較して、より広範囲の検体濃度の定量が可能となる点にある。
【0006】
本開示はまた、本開示の複数個の3次元ネットワークと基材とを含むアレイを提供する。本開示のアレイを使用することにより、1つまたは複数のサンプル中の1種または複数種の検体を同時に検出および/または測定することができる。本開示のアレイは洗浄および再使用が可能であることから、使い捨てアレイよりも著しいコスト上の利点が提供される。本開示のアレイのもう1つの利点は、個々のネットワークの製造に必要なすべての構成要素を製造プロセス中に単一の混合物として基材の表面に施与することができるため、該アレイを簡便に製造できるという点にある。
【0007】
本開示はまた、本開示の3次元ネットワークおよびアレイの製造方法を提供する。少なくとも2種の塩結晶の存在下で、好ましくは針状塩結晶および緻密塩結晶の存在下でポリマーを架橋させ、次いで該塩結晶を溶解させて架橋ポリマーネットワーク内に輸送チャネルを残すことによって、本開示の3次元ネットワークを製造することができる。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、架橋時の緻密塩結晶の存在によって、短チャネルを有する海綿様ポリマーが生じ、これを、架橋時の針状塩結晶の存在によって生じた長チャネルが貫通しているものと考えている。
【0008】
本開示はまた、本開示の3次元ネットワークおよびアレイを、サンプル中の、好ましくは液体サンプル中の検体の検出および/または測定に使用するための方法を提供する。
【0009】
3. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1に、プローブ生体分子(1)と、1分子あたり2つの光反応性基(4)を含むポリマー(3)とを有する、塩水溶液(第4.3.1節で説明)に溶解した混合物の概略図を示す。
図2図2に、図1に示す混合物(5)の液滴の断面を示し、ここで該液滴は、保持体(6)上に配置されていてよい表面(2)のスポット(7)に位置する表面(10)を有するものとする。表面は、有機基材または有機物含有基材の表面であることが好ましい。基材は、剛性であることが好ましい。塩水溶液中の塩の結晶化を制御できるようにするため、保持体は、加熱された保持体であっても冷却された保持体であってもよい。
図3図3に、混合物を加熱して、(a)結晶化発生部(9)から延在する針状塩結晶(8)と(b)緻密結晶(14)との双方を塩溶液中に形成させた後の、図2に示す構成体の断面図を示す。
図4図4に、前記混合物を乾燥させ、これに光学放射線(11)を照射して表面(16)を有するポリマーネットワーク(15)を形成させた後の、図3に示す構成体の断面図を示す。
図5図5に、光学放射線を照射した後の、図1の混合物の概略図を示す。
図6図6に、塩結晶を溶媒(12)に溶解させて、長チャネル(13)および短チャネル(19)の形状の輸送チャネルを形成させた後の、図4に示す構成体の断面図を示す。
図7図7に、ジメチルアクリルアミドとメタクリロイルベンゾフェノンと4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムとのコポリマーを形成させるための反応経路を示す。
図8図8に、バイオチップ(17)の斜視図を示し、ここで、その上には、行および列のマトリックスとして配置された各スポット(7)に各ポリマーネットワーク(15)が位置するものとする。このチップは、有機表面を有することが好ましい。
図9図9に、図8に示すバイオチップ(17)の上面図を示し、ここで、各ポリマーネットワーク(15)は直径(D)を有し、各行および各列はそれぞれ、該ポリマーネットワークの中心点から測定して距離Yおよび距離Xだけ離れているものとする。
図10図10に、可とう性の基材帯体(18)を含むバイオセンサ(17’)を示し、ここで、その上には、直径(D)を有する各ポリマーネットワーク(15)が、該ポリマーネットワークの中心点から測定して距離Xだけ離れた各スポット(7)に位置するものとする。
図11図11A~11Cに、乾燥前(図11A)および乾燥後(図11B)のポリマーネットワークの6行(A~F)および6列(1~6)のバイオチップを示し、図11Cに、D行およびE行のポリマーネットワークの製造に用いた塩濃度を示す。D行およびE行のポリマーネットワークは、リン酸ナトリウムとリン酸カリウムの双方を含む塩水溶液を使用して製造したものである。残りの行は、濃度350mMのリン酸ナトリウムのみを含む塩水溶液を使用して製造したものである。D行およびE行のポリマーネットワークは、より丸く均質に見える。
図12図12A~12Cに、S.アウレウス(S.aureus)およびE.コリ(E.coli)に特異的なプライマー対を用いたPCR反応産物の、図12A図12Cによるアレイへのハイブリダイゼーションの結果を示す。図12Aに、S.アウレウス(S.aureus)DNAの100コピーから増幅されたPCR産物のアレイへのハイブリダイゼーションを示す。図12Bに、E.コリ(E.coli)DNAの100コピーから増幅されたPCR産物のアレイへのハイブリダイゼーションを示す。図12Cに、図12Aおよび図12Bに示されるアレイのプローブマップを示す。E.coliは、E.コリ(E.coli)プローブであり、Salmonellaは、サルモネラ(Salmonella)プローブ(該サルモネラプローブに対して、E.コリ(E.coli)PCR産物が若干の交差反応性を示す)、All staphは、パンスタフィロコッカス(pan Staphylococcus)プローブであり、S.aureusは、S.アウレウス(S.aureus)プローブであり、PCR対照は、PCR増幅プロセスの内部対照を検出するためのプローブであり、LLは、着陸灯(landing light)であり、これは、アレイ対照として使用されるネットワーク内のポリマー鎖に架橋された蛍光標識したオリゴヌクレオチドである。
図13図13に、テンプレートの非存在下でS.アウレウス(S.aureus)またはE.コリ(E.coli)に特異的なプライマー対を使用して増幅されたPCR産物のハイブリダイゼーションで得られた蛍光シグナルの定量を示し、これは、バックグラウンド「ノイズ」を表す。1番は、スポットD1、E1を表し、2番は、スポットD1、E2を表し、3番は、スポットD1、E3を表し、4番は、スポットD1、E4を表し、5番は、スポットD1、E5を表し、6番は、スポットD1、E6を表す。
【0011】
4. 詳細な説明
4.1. 3次元ポリマーネットワーク
本開示の3次元ネットワークは、例えばRendl et al., 2011, Langmuir 27:6116-6123または米国特許出願公開第2008/0293592号明細書に記載のポリマーなどの架橋ポリマーを含み、これらの文献の内容全体を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。本開示の3次元ネットワークはさらに、1本または複数本の輸送チャネルを含むとともに、適宜さらに、例えばポリマー鎖への架橋によって該ネットワークに固定化された1個または複数個のプローブを含み得る。
【0012】
本開示のネットワークは、(ネットワークの含水状態で測定した場合に)例えば5~75nm(例えば10~20nm、10~30nm、10~40nm、10~50nm、20~30nm、20~40nm、20~50nm、30~40nm、30~50nmまたは40~50nm)のメッシュサイズを有することができる。「ネットワークの含水状態」とは、ネットワークが吸水に関して平衡状態にあること、すなわち、ネットワークが、水溶液中で自身が放出するのと同量の水を吸収することを意味する。
【0013】
ネットワークの製造に使用することができるポリマーについては、第4.1.1節で説明する。ネットワークの製造に使用することができる架橋剤については、第4.1.2節で説明する。1本または複数本の輸送チャネルの特徴については、第4.1.3節で説明する。ネットワークに固定化することができるプローブについては、第4.1.4節で説明する。
【0014】
4.1.1. ポリマー
本開示の3次元ネットワークは、架橋したホモポリマー、コポリマー、ホモポリマーの混合物、コポリマーの混合物または1種以上のホモポリマーと1種以上のコポリマーとの混合物を含むことができる。本明細書で使用される「ポリマー」なる用語には、ホモポリマーおよび/またはコポリマーの双方が含まれる。本明細書で使用される「コポリマー」なる用語には、2種以上のモノマーを重合させたポリマー(例えば2元ポリマー、3元ポリマー、4元ポリマーなど)が含まれる。コポリマーとしては、交互コポリマー、周期コポリマー、統計コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、直鎖状コポリマーおよび分岐コポリマーが挙げられる。本開示の3次元ネットワークは、前述の種のポリマーの任意の組み合わせを含むことができる。かかるポリマーを製造するための試薬および方法は、当技術分野において知られている(例えばRavve,A., Principles of Polymer Chemistry,Springer Science+Business Media,1995;Cowie,J.M.G.,Polymers:Chemistry&Physics of Modern Materials,2ndEdition,Chapman&Hall,1991;Chanda,M.,Introduction to Polymer Science and Chemistry:A Problem-Solving Approach,2ndEdition,CRC Press,2013;Nicholson,J.W.,The Chemistry of Polymers,4thEdition,RSC Publishing,2012参照;これらの各文献の内容全体を、本明細書の一部を構成するものとして援用する)。
【0015】
好ましいポリマーは、親水性でありかつ/または親水性基を含む。ポリマーは、好ましくは水溶性である。一実施形態では、ポリマーは、所望の水準の水溶性が提供されるように選択された2種以上のモノマーを重合させたコポリマーである。例えば、コポリマーの製造に使用される荷電モノマーの量を変更することによって、例えば4-ビニルスルホン酸ナトリウムの量を変更することによって、コポリマーの水溶性を調整することができる。
【0016】
水溶性ポリマーは、架橋すると水膨潤性ゲルまたはヒドロゲルを形成する。ヒドロゲルは、水分子との水素結合によって水溶液を吸収する。ゲルの製造に使用される架橋剤の種類および程度によって、ヒドロゲルの総吸収性および膨潤能力を調整することができる。架橋密度が低いポリマーは一般に架橋密度が高いポリマーよりも吸収能力が高く、より高度に膨潤するが、架橋密度が高いポリマーの方がゲル強度が高く、中程度の圧力下でもネットワーク形状を維持することができる。
【0017】
ヒドロゲルの吸水能力は、水溶液のイオン濃度の一因子である。特定の実施形態では、本開示のヒドロゲルは、脱イオン蒸留水中では自重の50倍まで(自己体積の5~50倍)を吸収することができ、生理食塩水中では自重の30倍まで(自己体積の4~30倍)を吸収することができる。生理食塩水中での吸収性の低下は、ポリマーが水分子と結合する能力を妨げる原子価カチオンが存在することに起因する。
【0018】
本開示の3次元ネットワークは、1種、2種または3種以上のモノマーを重合させたコポリマーを含むことができ、ここで、1種、2種または3種以上のモノマーは、アクリレート基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、メチルメタクリレート基、ヒドロキシエチルメタクリレート基、エチルアクリレート基、2-フェニルアクリレート基)、アクリルアミド基(例えばアクリルアミド基、メタクリルアミド基、ジメチルアクリルアミド基、エチルアクリルアミド基)、イタコネート基(例えばイタコネート基、4-メチルイタコネート基、ジメチルイタコネート基)およびスチレン基(例えばスチレン基、4-メチルスチレン基、4-エトキシスチレン基)から独立して選択された重合性基を含む。好ましい重合性基は、アクリレート基、メタクリレート基、エタクリレート基、2-フェニルアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、イタコネート基およびスチレン基である。いくつかの実施形態において、コポリマーの製造に使用されるモノマーのうちの1種、例えば4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、電荷を有する。
【0019】
本開示のネットワークの製造に使用されるポリマーは、1分子あたり少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ以上の架橋基を含むことができる。架橋基とは、ネットワークの各ポリマー分子同士を共有結合させるとともに、適宜これらの各ポリマー分子をプローブおよび/または基材に共有結合させる基である。2種以上のモノマー(例えば前段落に記載したものから独立して選択される重合性基を有するモノマー)であって、そのうち少なくとも1つは架橋剤を含むものを重合させたコポリマーが、本開示の3次元ネットワークの製造に適している。例示的な架橋剤については、第4.1.2節で説明する。架橋剤を含む好ましいモノマーの1つとして、メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MABP)が挙げられる(図7参照)。
【0020】
好ましい一実施形態では、コポリマーは、架橋剤を含む2元ポリマーまたは3元ポリマーである。特に好ましい一実施形態では、コポリマーは、ジメチルアクリルアミドとメタクリロイルベンゾフェノンと4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムとのコポリマーを含む(図7参照)。
【0021】
4.1.2. 架橋剤
3次元ネットワークにおける架橋に適した架橋試薬(すなわち架橋剤)としては、紫外光(例えば長波紫外光)、可視光および熱によって活性化されるものが挙げられる。紫外光によって活性化される例示的な架橋剤としては、ベンゾフェノン類、チオキサントン類(例えばチオキサンテン-9-オン、10-メチルフェノチアジン)およびベンゾインエーテル類(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル)が挙げられる。可視光によって活性化される例示的な架橋剤としては、エチルエオシン、エオシンY、ローズベンガル、カンファーキノンおよびエリチロシンが挙げられる。熱によって活性化される例示的な架橋剤としては、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)および2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩および過酸化ベンゾイルが挙げられる。当技術分野で知られている他の架橋剤を使用することも可能であり、例えば照射時にラジカルまたは他の反応性基を形成し得る架橋剤を使用することも可能である。
【0022】
4.1.3. 輸送チャネル
本開示の3次元ネットワークは、1本または複数本の輸送チャネルを含む。
【0023】
輸送チャネルによって、ネットワークの内部への到達が可能となる。輸送チャネルは比較的大きな断面を有することができるが、ネットワークのメッシュサイズが輸送チャネル断面よりもかなり小さくなり得るため、ネットワークは機械的な安定性を保つことができる。
【0024】
輸送チャネルによって、ある種のハイウェイを形成することができ、このハイウェイを通って検体がネットワークの内部に迅速に出入りすることができる。輸送チャネル内で拡散および/または対流によって検体の輸送を行うことができる。
【0025】
第4.3節で説明したように、塩結晶の存在下でのポリマー鎖の架橋によりネットワークが形成されると、輸送チャネルが形成される。塩結晶が洗い流された後、輸送チャネルが残される。
【0026】
理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、本開示のネットワークの製造方法によって、異なる金属イオンと塩イオンとの組み合わせに起因して少なくとも2種類の塩結晶が形成されるものと考えている。塩結晶が洗い流されると、「失われた」形の原理に従って、少なくとも2種類の輸送チャネルが残される。これらの輸送チャネルにより、検体がネットワークの内部に浸透し、ネットワークの内部に位置するプローブに特異的に結合することができる。さらに、これらの輸送チャネルにより、洗浄後に未結合の検体をネットワークの内部に存在させることができ、ネットワーク内に「詰められた」検体からの非特異的シグナルの量が減少する。
【0027】
輸送チャネルの種類の1つは、針状塩結晶から製造された長チャネルであると考えられる。本明細書で使用される場合に、「長チャネル」とは、ネットワーク内の細長い通路であって、(1)ほぼ一直線であり、かつ(2)ネットワークが含水状態にある場合に、少なくとも300nmの最小断面と、通路の最小断面の少なくとも3倍、好ましくは5倍、より好ましくは少なくとも10倍の長さとを有するものをいう。例えば、長チャネルの長さは、長チャネルの最小断面の3~15倍、5~10倍または10~15倍であることができる。「ほぼ一直線」である長チャネルとは、いずれの方向にも、すなわちX方向にもY方向にもZ方向にも、45度を超える方向変化が生じることなく、核生成点から一方向に延在するチャネルをいう。長チャネルは、共通の核生成点から形成される針状結晶から生じるため、本開示のネットワークには、元の結晶化の核生成点に対応するネットワーク内に位置する点で収束する(例えば5、10、またはそれを上回る)長チャネルの群が含まれ得る。通常は、長チャネルは、ネットワークの表面から内部に向かって、長チャネル間の横方向の距離が短くなるように配置されている。
【0028】
他の態様では、輸送チャネルの種類の1つは、例えば立方体状または棒状結晶から形成された短チャネルであると考えられる。本明細書で使用する場合に、「短チャネル」とは、ネットワーク内の通路であって、(1)ほぼ一直線であり、かつ(2)ネットワークが含水状態にある場合に、ネットワークのメッシュサイズの好ましくは少なくとも10倍の最小断面と、通路の最小断面の3倍未満(例えば、1~2.75倍、1~2.5倍、1~2倍、または1~1.5倍の範囲であり得る)の長さとを有するものをいう。「ほぼ一直線」である短チャネルとは、いずれの方向にも、すなわちX方向にもY方向にもZ方向にも、45度を超える方向変化が生じることなく、核生成点から一方向に延在するチャネルをいう。ネットワークの強度を維持するために、短チャネルは、ネットワークの幅または直径の1/20以下の断面を持つことが好ましい。例えば、直径が200μmであるアレイ上の「スポット」の形態のネットワークの場合には、短チャネルの断面は10μm以下であることが好ましく、直径が100μmであるアレイ上のスポットの場合には、短チャネルの断面は5μm以下であることが好ましい。特定の態様において、短チャネルの断面は、約20nm以上、約50nm以上、約100nm以上、約250nm以上、少なくとも500nm以上、または約1μm以上である。ネットワーク内の短チャネルは、ほぼ(例えば、+/-10%または+/-25%)同じ直径を有することも、異なる直径を有することも可能である。特定の実施形態では、ネットワーク内の短チャネルは、前述の寸法のいずれか2つの範囲の直径を有し、例えば、100nm~10μm、50nm~1μm、500nm~5μm、250nm~10μmなどの範囲であってよい。
【0029】
理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、短チャネルによって海綿様ポリマーが生成され、これを長チャネルが貫通しているものと考えている。
【0030】
4.1.4. プローブ
本開示のネットワークに固定化されるプローブは、生体分子であってもよいし生体分子と結合する分子であってもよく、例えば相補的結合パートナーの特異的相互作用系のパートナー(受容体/リガンド)であってもよい。例えば、プローブは、核酸およびその誘導体(例えばRNA、DNA、ロックト核酸(LNA)およびペプチド核酸(PNA))、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよびそれらの誘導体(例えばグルコサミン、抗体、抗体フラグメントおよび酵素)、脂質類(例えばリン脂質類、脂肪酸類、例えばアラキドン酸、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド)、炭水化物類、酵素阻害剤、酵素基質、抗原およびエピトープを含むことができる。プローブはまた、より大きな複合構造体、例えばリポソーム、膜および膜フラグメント、細胞、細胞溶解物、細胞フラグメント、胞子および微生物を含むことができる。
【0031】
相補的結合パートナーの特異的相互作用系は、例えば核酸と相補的核酸との相互作用、PNAと核酸との相互作用、または酵素/基質、受容体/リガンド、レクチン/糖、抗体/抗原、アビジン/ビオチンもしくはストレプトアビジン/ビオチンの相互作用に基づくことができる。
【0032】
核酸プローブは、DNAまたはRNAであってよく、例えばオリゴヌクレオチドまたはアプタマー、LNA、PNAまたは5’末端にメタクリル基を含むDNA(5’Acrydite(商標))であってよい。オリゴヌクレオチドプローブは、例えば12~30、14~30、14~25、14~20、15~30、15~25、15~20、16~30、16~25、16~20、15~40、15~45、15~50、15~60、20~55、18~60、20~50、30~90、20~100、20~60、40~80、40~100、20~120、20~40、40~60、60~80、80~100、100~120または12~150のヌクレオチド長であることができる。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、15~60のヌクレオチド長である。
【0033】
核酸プローブを使用する場合には、プローブのすべてが標的配列と相補的であってもよいし、プローブの一部のみが標的配列と相補的であってもよい。標的配列と相補的なプローブ部分は、好ましくは少なくとも12のヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも15、少なくとも18または少なくとも20のヌクレオチド長である。長さが40または50のヌクレオチドより長い核酸プローブの場合には、標的配列と相補的なプローブ部分は、少なくとも25、少なくとも30または少なくとも35のヌクレオチド長であることができる。
【0034】
抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体もしくはキメラ抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)、またはそれらの一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変体であることができ、これらに限定されるものではないが、例えば一本鎖抗体(scFv)および単一ドメイン抗体(例えばヒト、ラクダ科動物またはサメのドメイン抗体)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、vNARおよびビス-scFv(例えばHollinger and Hudson, 2005, Nature Biotech 23:1126-1136参照)が挙げられる。抗体には、IgG、IgAもしくはIgM(またはそれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、抗体はいずれかの特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは様々なクラスに分類され得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMなる5つの主要なクラスが存在し、これらのいくつかをさらに、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAといったサブクラス(アイソタイプ)に分けることができる。「抗体」には、前述の各抗体/免疫グロブリン型がすべて包含される。
【0035】
本開示の3次元ネットワークは、プローブを1種または2種以上(例えば2、3、4または5種以上)含むことができる。3次元ネットワークは、同一標的に対して2種以上のプローブ(例えば同一標的の異なるエピトープに結合する複数の抗体)を含むことができ、かつ/または複数の標的に結合するプローブを含むことができる。
【0036】
ネットワークは、標識した(例えば蛍光標識した)対照プローブ分子を含むことができ、この分子を、例えばネットワーク内に存在するプローブの量の測定に使用することができる。
【0037】
プローブは、ネットワーク全体に(例えばネットワークの表面および内部に)分布していてよい。好ましくは、少なくとも1個のプローブは、ネットワークの表面から離れており、かつ少なくとも1本の輸送チャネルに隣接している。その場合、そのように配置されたプローブは、輸送チャネルを通って検体分子または検体構成要素に直接到達することができる。いくつかの実施形態において、プローブの大部分がネットワークの内部に位置する。
【0038】
1個または複数個のプローブを、共有結合によりネットワークに固定化してもよいし、共有結合によらずにネットワークに固定化してもよい。例えば、プローブを架橋ポリマーと架橋させてもよいし、プローブを共有結合によらずに(例えばネットワークに共有結合した分子に結合させることによって)ネットワークに結合させてもよい。好ましい一実施形態では、1個または複数個のプローブを架橋ポリマーと架橋させる。いくつかの実施形態において、プローブの大部分をネットワークの内部に共有結合させる(例えばその結果、プローブの少なくとも一部が輸送チャネルに隣接する)。
【0039】
理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、第4.3節に記載した塩結晶(特にリン酸塩結晶)の存在下での3次元ネットワークの製造方法によって、プローブ分子(特に核酸プローブ分子)と塩結晶との静電相互作用に起因して、ポリマーと輸送チャネルとの界面またはその近傍でプローブ分子の濃度が比較的高くなるものと考えている。したがって本発明のいくつかの実施形態において、本開示は、本開示によるネットワークであって、輸送チャネルに隣接していないポリマー領域の内部に比べて、ポリマーと輸送チャネルとの界面においてプローブがより高密度であるネットワークを提供する。様々な実施形態において、ポリマーと輸送チャネルとの界面では、輸送チャネルに隣接していないポリマー領域内に比べて、プローブの密度が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%高い。
【0040】
ネットワーク内のプローブ分子の密度を、以下の手順で確認することができる:
ネットワークを、室温で水性液体と例えばボウル内で接触させる。この液体は、ネットワーク内のプローブ分子と相互作用する部分に結合した複数のナノ粒子を含み、例えばプローブ分子をビオチン化した場合には、ストレプトアビジンに結合した複数のナノ粒子を含む。ナノ粒子をポリマー全体に分配できるようにするため、ナノ粒子のサイズは、ネットワークのメッシュサイズよりも小さく、かつネットワークの内の少なくとも1種の輸送チャネルの最小断面よりも小さい。適切なナノ粒子は、直径2~5ナノメートルの量子ドットである。
【0041】
インキュベーション期間は、液体中のネットワークが完全に含水状態となるように、つまりネットワークが概して自身が放出するのと同量の水を取り込むように選択される。インキュベーション期間を、例えば1時間とすることができる。インキュベーション中にネットワークおよび/または液体を動かすことによって、例えばネットワークおよび/または液体を好ましくは超音波で振動させることによって、ネットワークへのナノ粒子の浸透を促進させることができる。
【0042】
インキュベーションの完了後、例えばボウルから液体を排出するか、またはボウルからネットワークを取り出すことによって、液体をネットワークから分離する。
【0043】
次に、この含水させたネットワークを、例えば液体窒素によって凍結させる。その後、この凍結したネットワークを、互いに平行な切断面に沿ってクライオミクロトームを用いて切断して、薄いスライスにすることができる。切断面は、輸送チャネルの長手方向の延在部に対して横方向に位置し、輸送チャネルを貫通する。この切断を、液体窒素で冷却したダイヤモンドブレードを用いて行うことが好ましい。スライスの厚さを、例えば約100nmまたは200nmとすることができる。
【0044】
顕微鏡を用いて、凍結したネットワークを切断して得られたディスク内に配置されているナノ粒子を探索する。これらのナノ粒子は、必要に応じて蛍光性であってかつ光学的なハイライトが可能であってもよく、それによって該ナノ粒子をネットワークとより良好に区別することができる。これらのナノ粒子の探索を、画像処理方法により適切なソフトウェアを用いて行うことができる。これらのディスクの検査には、蛍光光学系を備えた共焦点レーザー走査型顕微鏡または電子顕微鏡を使用することが好ましい。
【0045】
このようにして得られたナノ粒子の幾何学的および/または位置情報を用いて、コンピュータによりネットワーク内のナノ粒子の分布の3次元幾何モデルを製造することができる。次いで、このモデルを使用して、輸送チャネル部位の近傍でのプローブ分子の密度が比較的高いことがナノ粒子の分布に反映されているか否かを判定することができる。
【0046】
4.2. アレイ
本開示の3次元ネットワークを基材に配置する(例えば堆積させる)ことができ、好ましくは基材に(例えばネットワークと基材との共有結合架橋により)固定化する。複数個のネットワークを基材に固定化することで、例えばバイオチップとして有用なアレイを形成させることができる。
【0047】
適切な基材としては、有機ポリマー、例えばシクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレート(PMMA、Plexiglas(登録商標))が挙げられる。Ticonaは、適切なCOCの一例をTopas(登録商標)なる商品名で販売している。基材として無機物質(例えば金属、ガラス)を使用してもよい。こうした基材を有機分子で被覆することで、ネットワークと基材表面との間での架橋が可能となる。例えば、無機表面を自己組織化単分子膜(SAM)で被覆することができる。SAM自体は完全に非反応性であるため、SAMは、例えば純粋なアルキルシランを含むかまたはそれからなることができる。フリーラジカルプロセス中に有機分子と安定的に結合し得るものであれば、他の基材も3次元ネットワークとの架橋に適している(例えば有機ホウ素化合物)。
【0048】
基材は、剛性を示すものであってもよいし、可とう性を示すものであってもよい。いくつかの実施形態において、基材は、プレート(例えば矩形プレート、正方形プレート、円形ディスクなど)の形状をとる。例えば、基材はマイクロウェルプレートを含むことができ、3次元ネットワークをこのプレートのウェル内に配置することができる。
【0049】
個々のネットワークを、基材の表面上の別々の各スポットに、例えば複数の列および行を含むマトリックス状に配置することができる。図8に示す実施形態では、ネットワークは、6列×6行で配置された36個のスポットに配置されている。様々な数の行および列を有するアレイが企図され、それらのそれぞれの数を独立して選択することができる(例えば2~64列および2~64行)。個々のネットワークを配置することができるスポット格子を形成するために、(例えば図9に示すように)各列は距離Xだけ離れていてよく、各行は距離Yだけ離れていてよい。この格子のスポットに配置された各ネットワークが脱水状態でも含水状態でも互いに接触することのないように、XおよびYを選択することができる。寸法Xと寸法Yとは、同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、XとYとは同一である。いくつかの実施形態において、XとYとは異なる。いくつかの実施形態において、XおよびYは、独立して、少なくとも約500μm(例えば500μm~5mm、500μm~4mm、500μm~3mm、500μm~2mmまたは500μm~1mm)の距離から選択される。いくつかの実施形態において、XおよびYはともに約500μmである。他の実施形態では、XおよびYはともに500μmである。
【0050】
いくつかの実施形態において、(例えば図10に示すように)基材は帯状である。ネットワークを、帯状の有機表面の長手方向に延在する単一の行として配置してもよいし、帯状の表面の長手方向に延在する複数の行として配置してもよい。このような帯状のアレイの行および列は、上述の格子寸法XおよびYを有することができる。
【0051】
個々のネットワークはそれぞれ、円形またはほぼ円形のアレイ表面領域を覆うことができる。典型的には、個々のネットワークによって覆われるアレイの表面上領域の直径(すなわちスポット直径)は、80μm~1000μmである。様々な実施形態において、スポット直径は、80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmもしくは1000μmであるか、または前述の実施形態のうちのいずれか2つを境界とする範囲から選択され、例えば80μm~200μm、100μm~120μm、120μm~140μm、120μm~180μm、140μm~160μm、160μm~180μm、180μm~200μm、120μm~200μm、100μm~400μm、160μm~600μmもしくは120μm~700μmなどとすることができる。好ましい一実施形態では、この直径は、100μm~200μmまたはその部分範囲にある。
【0052】
本開示のアレイは、典型的には少なくとも8個の個々の3次元ネットワークを有する。特定の態様では、アレイは、少なくとも16個、少なくとも24個、少なくとも48個、少なくとも96個、少なくとも128個、少なくとも256個、少なくとも512個または少なくとも1024個の個々の3次元ネットワークを有する。いくつかの実施形態において、本開示のアレイは、24個、48個、96個、128個、256個、512個、1024個、2048個、4096個もしくは8192個の個々のネットワークを有するか、または前述の実施形態のうちのいずれか2つを境界とする範囲から選択される個数の3次元ネットワークを有し、例えば8~128個、8~512個、24~8192個、24~4096個、48~2048個、96~512個、128~1024個、24~1024個、48~512個、96~1024個または128~512個などの3次元ネットワークを有する。好ましい一実施形態では、アレイ上の3次元ネットワークの個数は、8~1024の範囲にある。特に好ましい一実施形態では、アレイ上の3次元ネットワークの個数は、25~400の範囲にある。
【0053】
本開示のアレイを含む個々のネットワークは、同一のプローブを有することも、異なるプローブを有することもできる(例えば、各ネットワークが固有のプローブセットを有することも可能であるし、複数個のネットワークが同一のプローブセットを有し、他のネットワークが1つまたは複数の異なるプローブセットを有することも可能であり、またすべてのネットワークが同一のプローブセットを有することも可能である)。例えば、マトリックスの同一の行に配置されたネットワークが同一のプローブを含み、マトリックスの異なる行に配置されたネットワークが異なるプローブを有することが可能である。
【0054】
典型的には、アレイ上の個々のネットワークは、スポット直径および/またはネットワーク体積が互いに20%以下、15%以下、10%以下または5%以下だけ異なる。
【0055】
いくつかの実施形態において、アレイは、個々のネットワーク(例えばアレイ上のスポット)を1個または複数個含み、該ネットワークは、対照オリゴヌクレオチドまたは対照プローブ分子を1個または複数個有する。(アレイを空間的に配置するための)空間的対照として使用するために、および/または例えば本開示のアレイを洗浄して再使用する(すなわち「再使用可能な対照」として使用する)場合にネットワークに結合したプローブ分子を定量するために、この対照オリゴヌクレオチドに例えば蛍光標識などの標識を行うことができる。この空間的対照プローブと再使用可能な対照プローブとは、同一のプローブであってもよいし、異なるプローブであってもよい。
【0056】
アレイ上の同一のスポットまたはアレイ上の異なるスポットはさらに、既知の標的と相補的な未標識プローブを含むことができる。ハイブリダイゼーションアッセイで使用する場合、未標識プローブの標識済み標的へのハイブリダイゼーションのシグナル強度を求めることによって、ハイブリダイゼーション反応の効率を求めることができる。個々のネットワーク(すなわちアレイ上のスポット)を、再使用可能なおよび/または空間的対照としてもハイブリダイゼーション対照としても用いる場合には、再使用可能な対照プローブまたは空間的対照プローブの蛍光部分と異なる蛍光部分を使用することにより、標的分子を標識することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示のアレイは、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回または少なくとも50回(例えば5~20回、5~30回、10~50回、10~20回、10~30回、20~40回または40~50回)再使用可能であり、これには、好ましくは該アレイを10~50回再使用することが含まれる。アレイを、変性条件(例えば低濃度の塩および高温)下で塩溶液で洗浄することができる。例えば、アレイを、使用の間に80~90℃で1~10mMのリン酸緩衝剤で洗浄することができる。洗浄の温度を、標的:プローブハイブリッドの長さ(Tm)に基づいて選択することができる。
【0058】
アレイの完全性は、「再使用可能な対照」プローブによって決まり得る。再使用可能な対照プローブを、蛍光標識することができ、また蛍光標識した相補的核酸へのハイブリダイゼーションによって検出することもできる。蛍光標識した再使用可能な対照プローブの蛍光標識を、核酸の完全性が損なわれない限り励起の繰返しによって漂白することができ、そのような場合、さらなる再使用はいずれも、対照としての蛍光標識した相補的核酸へのハイブリダイゼーションの検出を含むことができる。典型的には、本発明のアレイは、少なくとも6ヶ月間安定である。
【0059】
様々な態様において、蛍光標識した再使用可能な対照プローブは、5回、10回、20回、30回、40回または50回の使用後に、その初期蛍光シグナル強度の少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%を保っている。好ましくは、再使用可能な対照プローブは、5回または10回の使用後にその蛍光シグナル強度の少なくとも75%を保っている。再使用可能な対照プローブが例えば20回、30回、40回または50回の再使用後にその蛍光シグナル強度の少なくとも50%を保っている限り、アレイを再使用し続けることができる。対照プローブの蛍光シグナル強度を、各再使用ごとに、2回の再使用につき1回の割合で、3回の再使用につき1回の割合で、4回の再使用につき1回の割合で、5回の再使用につき1回の割合で、6回の再使用につき1回の割合で、7回の再使用につき1回の割合で、8回の再使用につき1回の割合で、9回の再使用につき1回の割合で、10回の再使用につき1回の割合で、または上記の組み合わせで試験することができる。例えば、シグナル強度を最初に5回または10回の再使用の間で周期的に試験し、所定の回数(例えば5回、10回、20回、30回、40回または50回)使用した後は、この強度を各再使用後に試験するというように、再使用の回数とともに試験の頻度を高めることができる。いくつかの実施形態において、試験の頻度は、平均して1回、1.5回、2回、2.5回、3回、4回、5回または10回の使用につき1回であるか、または平均して前述の値のうちのいずれかの2つの間の範囲内にあり、例えば1~2回の使用につき1回、1~1.5回の使用につき1回、1~3回の使用につき1回または1.5~3回の使用につき1回である。
【0060】
「空間的対照」、「再使用可能な対照」および「ハイブリダイゼーション対照」なる表記は、便宜上および参照の目的で含まれたものであって、「空間的対照」、「再使用可能な対照」および「ハイブリダイゼーション対照」と称されるプローブ自体の使用の要求を含意することを意図しているわけではない。
【0061】
4.3. 3次元ポリマーネットワークの製造方法
一態様では、3次元ポリマーネットワークを製造するための本開示の方法は、
(a) 塩水溶液と、ポリマーと、架橋剤とを含むとともに適宜プローブを1個または複数個含む混合物を、塩結晶形成条件に曝露させるステップと、
(b) 前記混合物を架橋条件に曝露させて前記ポリマーを架橋させることにより、架橋ポリマーネットワークを形成させるステップと、
(c) 前記架橋ポリマーネットワークを溶媒と接触させることにより前記塩結晶を溶解させて、1本または複数本の輸送チャネルを形成させるステップと
を含む。
【0062】
本方法はさらに、塩水溶液と、ポリマーと、架橋剤と、適宜1個または複数個のプローブとを合することによって混合物を形成するステップを含むことができ、かつ/またはさらに、混合物を塩結晶形成条件に曝露させる前に混合物を基材(例えば第4.2節に記載の基材)に施与するステップを含むことができる。使用するポリマーが、予め結合した架橋剤を有する場合(例えば、架橋剤を含むモノマーを重合させたコポリマーを使用する場合)、混合物を形成させるステップは、塩水溶液と、ポリマーと、適宜1個または複数個のプローブとを合することを含むことができる。
【0063】
混合物を塩結晶形成条件に曝露させる前に、混合物を基材に施与することができ、これを例えば、混合物を基材表面に(例えば該表面上の1024個の部位に)吹き付けることによって行うことができる。混合物を、例えば、DNAチップスポッターまたはインクジェットプリンタを用いて表面に施与することができる。好ましい一実施形態では、インクジェットプリンタを用いて混合物を吹き付ける。これにより、混合物を基材上の多数のスポットに簡便かつ迅速に施与することが可能になる。各スポットを、例えばいくつかの行および/または列のマトリックスの形態で配置することができる。好ましくは、印刷時の混合物中の塩含有量は、該混合物がプリンタのプリントヘッド内で結晶化することのないように、溶解限界未満とする。個々のスポットで施与される混合物の体積は、例えば100pl、200pl、300pl、400pl、500pl、750pl、1nl、2nl、3nl、4nlまたは5nlであることができ、また前述の値のうちのいずれか2つを境界とする範囲から選択されてもよい(例えば100pl~5nl、100pl~1nl、300pl~1nl、200pl~750nl、100pl~500pl、200pl~2nl、500pl~2nl、1nl~2nlなど)。好ましい一実施形態では、スポット体積は200pl~4nlである。
【0064】
個々のスポットの直径は、混合物の組成、施与される混合物の体積および基材の表面化学に依存する。スポット直径は、典型的には80μm~1000μmの範囲にあり、前述のパラメータを変えることによってこうしたスポット直径を得ることができる。様々な実施形態において、スポット直径は、80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmもしくは1000μmであるか、または前述の実施形態のうちのいずれか2つを境界とする範囲から選択され、例えば80μm~200μm、100μm~120μm、120μm~140μm、120μm~180μm、140μm~160μm、160μm~180μm、180μm~200μm、120μm~200μm、100μm~400μm、160μm~600μmもしくは120μm~700μmなどから選択される。好ましい一実施形態では、直径は、100μm~200μmまたはその部分範囲にある。
【0065】
本開示の方法で使用することができる適切なポリマー、架橋剤およびプローブについては、それぞれ第4.1.1節、第4.1.2節および第4.1.4節で説明する。いくつかの実施形態において、本方法で使用されるポリマーは、ポリマー1分子あたり少なくとも1つの架橋基を有する。好ましい一実施形態では、ポリマーは、1分子あたり少なくとも2つの架橋基を有する。特に好ましい一実施形態では、ポリマーは、1分子あたり少なくとも2つの光反応性架橋基を有する。これらの実施形態では、別個のポリマーや架橋分子は不要である。
【0066】
混合物に含めることができる適切な塩については、第4.3.1節で説明する。適切な塩結晶形成条件については、第4.3.2節で説明する。適切な架橋条件については、第4.3.3節で説明する。塩結晶の溶解に適した溶媒については、第4.3.4節で説明する。
【0067】
4.3.1. 塩
本開示のポリマーネットワークは、少なくとも2種類の塩を含む水溶液から形成された塩結晶を含む混合物中で該ポリマーを架橋させた際に生じる輸送チャネルを特徴とする。
【0068】
塩は好ましくは、該塩が1個または複数個のプローブと適合するように選択される。理想的には、各々の塩は、以下の特性のうち1つまたは複数を有する:(i)塩は、プローブに対して毒性を示さず(例えば、塩はプローブを変性させず)、(ii)塩は、プローブと化学的に反応せず、(iii)塩は、プローブの光学的マーキングに適したシアニン色素などの蛍光体を攻撃せず、かつ/または(iv)塩は、検体、検出分子および/またはそれらに結合した結合パートナーと反応しない。好ましくは、少なくとも1つの塩は、針状結晶を形成する。
【0069】
好ましい一実施形態では、塩水溶液は、少なくとも2種の一価のカチオンを含み、例えば2種類のアルカリ金属カチオンを含む。使用できるアルカリ金属カチオンには、ナトリウムカチオンおよびカリウムカチオンが含まれるが、リチウムカチオンなどの他のアルカリ金属カチオンも使用可能である。
【0070】
核酸検体の検出に最適なシグナル:ノイズ比の場合、塩水溶液は好ましくは、ナトリウムおよびカリウムカチオンを含み、かつ/または(架橋前に)ポリマー溶液および任意のプローブ溶液と合した際に得られる混合物が少なくとも500mMの一価カチオン総濃度を有するような一価カチオン総濃度を有する。特定の実施形態では、混合物中のナトリウムイオン濃度は少なくとも250mMであり、250mM~500mMの範囲であってよく、より好ましくは300mM~400mMの範囲である。特定の実施形態では、混合物中のナトリウムイオン濃度は、350mMである。混合物中のカリウムイオン濃度は、好ましくは少なくとも150mMであり、好ましくは150mM~500mMの範囲であり、より好ましくは200mM~400mMの範囲であり、さらにより好ましくは250mM~350mMの範囲である。
【0071】
塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)および/またはリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)を用いて製造することができ、これは、水溶液中でNaカチオンおよびリン酸イオンPO 3-を放出する。リン酸水素二カリウム(KHPO)および/またはリン酸二水素カリウム(KHPO)を用いて塩水溶液を製造することも可能である。
【0072】
好ましくは、塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムとの双方を含むリン酸ナトリウム緩衝剤に、リン酸水素二カリウム(KHPO)および/またはリン酸二水素カリウム(KHPO)を補充したものであってよい。一実施形態において、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムとの双方を含むリン酸ナトリウム緩衝剤、およびリン酸水素二カリウムとリン酸二水素カリウムとの双方を含むリン酸カリウム緩衝剤を別々に製造し、ポリマーおよび/またはプローブ溶液と混合する前または後に合して単一の水溶液とする。
【0073】
総じて、塩水溶液は、好ましくは6~9の範囲、より好ましくは7~8.5の範囲のpHを有する。特定の例示的な実施形態では、pHは、7.5、8または8.5であり、最も好ましくは8である。
【0074】
タンパク質ベースのプローブ生体分子を含むネットワークの場合、塩水溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)および/または一価カチオン硫酸塩を含むことができる。
【0075】
4.3.2. 塩結晶形成条件
塩結晶形成条件は、混合物中の相対的塩含有量が増加して溶解限度を上回る(このことは、該混合物が塩の過飽和状態にあることを意味する)まで該混合物を脱水または冷却することを含み得る。これによって、混合物の体積中に位置する結晶化発生部から該混合物の表面に向かって塩結晶の形成が促進される。理論に拘束されるものではないが、少なくとも2つの異なる一価金属イオンを含む水溶液を使用することで、少なくとも2つの異なる種類の塩結晶が形成されるものと考えられる。
【0076】
混合物の脱水は、混合物を加熱し、該混合物を真空に曝露させかつ/または該混合物を取り囲む雰囲気の湿度を低下させることによって行うことができる。
【0077】
混合物の加熱は、(例えば約50℃~約70℃に)加熱された基材または表面に混合物を載置することによって、混合物を載置した基材または表面を(例えば約50℃~約70℃に)加熱することによって、および/または混合物を高温ガス(例えば該混合物の温度よりも高い温度を有する空気、窒素または二酸化炭素)と接触させて該混合物から水を蒸発させることによって行うことができる。高温ガスとの接触は、例えば加熱オーブン内に混合物を配置することによって行うことができる。加熱オーブンへ輸送する際、混合物を、40%以上の湿度に保つことができ、例えば約60%超の相対湿度に保つことができるが、さらには75%以上にものぼるより高い湿度も可能である。カリウムイオン濃度が比較的高い混合物は、相対湿度が比較的低くても耐えることができ、カリウム塩濃度が比較的低い混合物は、輸送中に比較的高い相対湿度に保つことが好ましい。
【0078】
熱により活性化可能な架橋剤が存在する場合には、混合物を加熱することにより該架橋剤を活性化させてポリマーを架橋させることも可能である。
【0079】
いくつかの実施形態において、混合物の脱水に使用される加熱された基材および/または空気の温度は、該混合物を加熱する前の該混合物の温度よりも20℃以上高いが、ただし100℃未満である。
【0080】
混合物の冷却は、(例えば約5℃~約15℃に)冷却された基材または表面に混合物を載置することによって、混合物を載置した基材または表面を(例えば約5℃~約15℃に)冷却することによって、および/または混合物を低温ガス(例えば該混合物の温度よりも低い温度を有する空気、窒素または二酸化炭素)と接触させることによって行うことができる。混合物中の塩の溶解限界は温度に依存しており、冷却すると、この溶解限界は、混合物が最終的に塩の過飽和状態となるまで減少する。いくつかの実施形態において、低温、低湿度のチャンバ(例えば温度0℃~10℃、相対湿度<40%)内で混合物をインキュベートすることによって混合物を冷却する。
【0081】
1つまたは複数の塩結晶を形成させる間に、混合物中の温度を、該混合物を取り囲む周囲空気の露点を上回るように保つことが好ましい。こうすることで、周囲空気から凝縮した水で混合物が希釈されて混合物中の相対的塩含有量が低下することが阻止される。
【0082】
4.3.3. 架橋条件
架橋条件を、使用する架橋剤の種類に基づいて選択することができる。例えば、紫外光によって活性化される架橋剤(例えばベンゾフェノン、チオキサントンまたはベンゾインエーテル)を使用する場合、架橋条件は、紫外(UV)光への混合物の曝露を含むことができる。いくつかの実施形態において、約250nm~約360nm(例えば260±20nmまたは355±20nm)の波長を有するUV光が使用される。比較的低エネルギー/長波長のUV光(例えば254nmのUV光と対比して360nmのUV光)を使用した場合には、比較的長い曝露時間が必要となり得る。可視光によって活性化される架橋剤(例えばエチルエオシン、エオシンY、ローズベンガル、カンファーキノンまたはエリチロシン)を使用する場合、架橋条件は、可視光への混合物の曝露を含むことができる。熱により活性化される架橋剤(例えば4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)および2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩または過酸化ベンゾイル)を使用する場合、架橋条件は、熱への混合物の曝露を含むことができる。
【0083】
架橋条件の長さおよび強度は、ポリマー分子と他のポリマー分子との架橋、プローブ分子が存在する場合にはポリマー分子と該プローブ分子との架橋、およびポリマー分子と基材分子との架橋、または基材上に有機分子が存在する場合にはポリマー分子と該有機分子との架橋が生じるように選択することができる。プローブを含む混合物の架橋条件の長さおよび強度を、例えばプローブ分子の固定化の堅牢性と固有性とのバランスがとれるように、実験により決定することができる。
【0084】
4.3.4. 塩結晶の溶解
ポリマーを架橋させた後、ネットワーク内に少なくとも1本の輸送チャネルが形成されるように、塩結晶を溶媒に溶解させることができる。理論に拘束されるものではないが、結晶形成中に2種類の一価の塩カチオンを使用すると、少なくとも2種類の結晶、つまり緻密結晶および針状結晶が得られるものと考えられる。緻密結晶の溶解によって短チャネルが得られ、これによってネットワーク内で海綿様効果が生じ、これを、針状結晶の溶解に起因する長チャネルが貫通しているものと考えられる。
【0085】
本開示の方法によって生成されたアレイを生体センサとして使用した場合、高い測定精度および高度な測定ダイナミックが可能となる。
【0086】
1つまたは複数の塩結晶を溶解させるための溶媒は、該溶媒がポリマーに適合し、そしてプローブが存在する場合には該プローブにも適合するように選択することができる(例えば、溶媒がポリマーにもプローブにも溶解することのないように、溶媒を選択することができる)。好ましくは、使用される溶媒は、希釈リン酸緩衝剤などの水性緩衝剤である。メタノール、エタノール、プロパノールまたはこれらの液体の混合物を緩衝剤に加えることで、ネットワークからの未結合ポリマーの除去を促進することができる。
【0087】
塩結晶を除去した後、ネットワークは、乾燥により崩壊することも、再び含水状態となることもできる。ネットワークを乾燥させることは、プローブ生体分子の輸送および安定化に有利である。
【0088】
4.3.5. 3次元ネットワークの使用方法
本開示のネットワークおよびアレイを使用して、サンプル中の、好ましくは液体サンプル中の検体の有無を判定することができる。したがって本開示は、1つまたは複数のサンプル中に検体が存在するか否かを判定する方法であって、
前記検体に結合し得るプローブ分子を含む本開示のネットワークまたはアレイを、前記1つまたは複数のサンプルと接触させるステップと、
前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記1つまたは複数のサンプル中に前記検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む方法を提供する。異なる種の検体に結合し得る異なる種のプローブを含むアレイを本方法で使用する場合には、プローブへの異なる種の検体の結合を検出することにより、異なる種の検体の存在を判定することができる。いくつかの実施形態において、本方法はさらに、アレイに結合した1種または複数種の検体を定量するステップを含む。
【0089】
検体は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アンプリコンなどの核酸であってもよい。いくつかの実施形態において、PCRアンプリコンは、生体サンプルまたは環境サンプル(例えば血液、血清、血漿、組織、細胞、唾液、痰、尿、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、涙液、便、汗、精液、全細胞、細胞成分、細胞塗抹標本またはそれらの抽出物もしくは誘導体)から増幅される。いくつかの実施形態において、核酸を標識する(例えば蛍光標識する)。
【0090】
ネットワークの表面上に配置された検体は、ネットワークの内部でポリマーに共有結合したプローブ(例えば生体分子)に特異的に結合するために、輸送チャネルを通ってこのネットワークの内部に浸透することができる。ネットワークを固定化した本開示のアレイを生体センサとして使用した場合、高い測定精度に加え高度の測定ダイナミックも可能となる。
【0091】
本開示のネットワークおよびアレイを、バイオセンサとしての使用後に再生させることができ、複数回(例えば5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回または少なくとも50回)使用することができる。プローブ分子がDNAである場合、この再生は、例えば1個または複数個のネットワークを1×リン酸緩衝生理食塩水中で約10分間かけて80℃~90℃の温度に加熱することによって達成することができる。次いで、このリン酸緩衝生理食塩水を新鮮なリン酸緩衝生理食塩水と交換して、変性したDNAを1個または複数個のネットワークから洗い流すことができる。ネットワークまたはアレイのプローブ分子が抗原である場合には、1個または複数個のネットワークを0.1NのNaOHと約10分間接触させることによって、ネットワークまたはアレイを再生させることができる。次に、0.1NのNaOHをリン酸緩衝生理食塩水と交換して、抗原をネットワークから洗い流すことができる。したがって、本開示のネットワークおよびアレイの使用方法のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のサンプルと接触させる前に洗浄したネットワークまたはアレイを使用することを含む。
【0092】
4.4. 本開示のアレイの用途
本発明のアレイによって、サンプル中の核酸の定性的および定量的な存在の経済的な判定が達成されるため、本発明のアレイは、ヒトおよび非ヒト動物における健康および疾患に関連する問題に直接適用される。
【0093】
これらの用途では、生物学的または環境的供給源から当技術分野で公知のプロトコールにしたがって、標的分子を含む調製物が誘導または抽出される。標的分子は、ウイルス、細菌および真核生物、原核生物、原生生物、植物、真菌ならびにすべての門および綱の動物を含む、いずれの分類学上のクラスの細胞および組織から誘導または抽出されてもよい。動物は、脊椎動物、哺乳動物、霊長類および特にヒトであってよい。血液、血清、血漿、組織、細胞、唾液、痰、尿、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、涙液、便、汗、精液、全細胞、細胞成分および細胞塗抹標本が、標的分子の適切な供給源である。
【0094】
標的分子は、好ましくは上記の供給源のいずれかから(例えばPCRにより)増幅された核酸である。
【0095】
本発明のアレイは、ヒトまたは非ヒト動物の病原体の検出に有用なプローブを含むことができる。そのようなプローブとしては、細菌、ウイルスもしくは真菌の標的または細菌、ウイルスおよび真菌の標的の任意の組み合わせと少なくとも部分的に相補的なオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0096】
本発明のアレイは、被験者の診断、被験者の治療のモニタリングまたは被験者の予後の経過観察を目的とした、ヒトまたは非ヒト動物の細胞における遺伝子発現、例えば、癌、心血管疾患もしくは代謝性疾患などの疾患または障害に関連する遺伝子発現の検出に有用なプローブを含むことができる。その場合、遺伝子発現情報によって疾患の進行または退行を追跡することができ、そのような情報は、初期治療の成功のモニタリングや初期治療の過程の変更の一助となり得る。
【0097】
5.例示的プロトコール
以下の例示的プロトコールでは、図面に示された参照番号を参照する。これらのプロトコールは本開示の範囲に包含され、第4.1.1節、第4.1.2節および第4.1.4節のそれぞれポリマー、架橋剤およびプローブと組み合わせて使用することができる。以下の方法で使用するためのさらなる有用なポリマー(コポリマーを含む)および架橋基は、Rendl et al., 2011, Langmuir 27:6116-6123および米国特許出願公開第2008/0293592号明細書に記載されており、該文献の内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。一実施形態では、第6.2節に記載のポリマー混合物を使用する。
【0098】
5.1. 例示的プロトコール1
加熱した保持体(6)に、表面(2)を有するプレートを載置し、ここで、該表面(2)は、好ましくは有機である。50~70℃の温度が適している。この有機表面(2)上に、標準的なDNAチップスポッター(例えばScienion、ドイツ)を用いて、ポリマー(3)と、プローブ生体分子(1)と、塩水溶液とを含む混合物(5)をスポットする。各スポット(7)に0.5~4nlの体積量を印刷する(図2参照)。これらのスポットの液体はほぼ直ちに乾燥し、それによって塩結晶(8)、(14)の核生成が生じる。核生成後、針状塩結晶は、混合物(5)の体積中に位置する少なくとも1つの結晶化発生部(9)から混合物(5)の表面(10)へと延在することができる(図3参照)。さらに、より短い立方体状または棒状結晶(14)の形成が生じるものと考えられる(図3参照)。結晶(8)、(14)の核生成後、各スポット(7)にUV架橋装置で直ちに紫外光(11)を照射し(図4参照)、その結果プローブ生体分子(1)がポリマー(3)に共有結合し、かつポリマー(3)が有機表面(2)に共有結合して架橋される(図5参照)。乾燥した架橋混合物(5)が水分を引き付けて再び液体になることのないように注意する。
【0099】
次いで、この乾燥した架橋混合物(5)を結晶(8)用の溶媒(12)と接触させることにより、結晶(8)、(14)が存在していた箇所で、ポリマー(3)とプローブ生体分子(1)とを含むネットワーク(15)内に、長チャネル(13)および短チャネル(19)が形成される(図6参照)。その後、溶媒(12)を除去する。長チャネル(13)は、ネットワーク(15)の表面(16)からネットワーク(15)の内部へと延在することができる。塩結晶(8)、(14)を溶解させる溶媒(12)は、該溶媒(12)がプローブ生体分子(1)のみならずポリマー(3)にも適合するように選択される。好ましくは、使用される溶媒(12)は水性である。
【0100】
5.2. 例示的プロトコール2
プレート上に配置した有機表面(2)上に、標準的なDNAチップスポッター(例えばScienion、ドイツ)を用いて、ポリマー(3)と、プローブ生体分子(1)と、塩水溶液とを含む混合物(5)をスポットする。各スポット(7)に0.5~4nlの体積量を印刷する(図2参照)。この表面(2)上に各スポット(7)を有するプレートを、冷却した保持体(6)に載置し、ここで、該表面(2)は、好ましくは有機である。(図3参照)。5℃~15℃の温度が適している。これらのスポットの液体を、緩衝剤が過飽和に達するまで冷却し、これによってほぼ直ちに結晶の核生成が生じる。核生成後、針状塩結晶(8)は、混合物(5)の体積中に位置する少なくとも1つの結晶化発生部(9)から混合物(5)の表面(10)へと延在することができる。さらに、より短い立方体状または棒状結晶(14)の形成が生じるものと考えられる(図3参照)。印刷後、これらの目標物を完全に乾燥させるために(例えば70℃の)オーブンに入れる。結晶の核生成後、各スポットにUV架橋装置で直ちに紫外光(11)を照射し(図4参照)、その結果プローブ生体分子(1)がポリマー(3)に共有結合し、かつポリマー(3)が有機表面(2)に共有結合して架橋される。乾燥した架橋混合物が水分を引き付けて再び液体になることのないように注意する。
【0101】
次いで、この乾燥した架橋混合物(5)を結晶(8)、(14)を溶解させる溶媒(12)と接触させることにより、結晶(8)、(14)が存在していた箇所で、ポリマー(3)とプローブ生体分子(1)とを含むネットワーク(15)内に、輸送チャネル、例えば長チャネル(13)および短チャネル(19)が形成される。その後、溶媒(12)を除去する。長チャネル(13)は、ネットワーク(15)の表面(16)からネットワーク(15)の内部へと延在することができる。塩結晶(8)、(14)を溶解させる溶媒(12)は、該溶媒(12)がプローブ生体分子(1)のみならずポリマー(3)にも適合するように選択される。好ましくは、使用される溶媒(12)は水性である。
【0102】
図6から分かるように、ネットワーク(15)内に複数本の長チャネル(13)および短チャネル(19)を形成させることができる。長チャネル(13)は、ネットワーク(15)の表面(16)からネットワーク(15)内に位置する少なくとも1つの地点まで延在することができる。長チャネル(13)を、表面(16)から出発して内部方向に長チャネル(13)間の横方向の間隔が減少するように配置することができる。
【0103】
5.3. 例示的プロトコール3
湿度40~80%、好ましくは50~70%の範囲の通常の条件で、ポリマー(3)と、プローブ生体分子(1)と、塩水溶液とを含む混合物(5)を、プレートの表面(2)上に印刷し、ここで、該表面(2)は、好ましくは有機である。この混合物は、例えばpH8の350mMのリン酸ナトリウムと、pH8の250~300mMのリン酸カリウムとを含んでよい。各スポット(7)に、0.5~4nlの体積量を印刷する。印刷区画内に水分が含まれることによって、各スポット(7)は、結晶形成が生じることなく(すなわち核生成が起こらずに)確実に液体のままとなる。次いで、このプレートを、例えばボール紙製の箱などの容器に入れる。このプレートに、運搬のために蓋をする。次いで、各スポット(7)を有するプレートを乾燥オーブン内かまたはホットプレート上に置いて核生成を迅速に生じさせ、その結果、針状塩結晶(8)が、混合物(5)の体積中に位置する少なくとも1つの結晶化発生部(9)から混合物(5)の表面(10)に向かって延在することとなる。さらに、より短い立方体状または棒状結晶(14)の形成が生じるものと考えられる。
【0104】
オーブン/ホットプレートの温度を、印刷温度よりも20℃以上高くすることが望ましい。100℃を上回る温度にする必要はない。
【0105】
乾燥後、混合物に対して照射を行うことにより、ポリマー(3)と、プローブ生体分子(1)と、表面(2)とを架橋させる。
【0106】
次いで、この乾燥した架橋混合物(5)を溶媒(12)と接触させることにより、結晶(8)、(14)が存在していた箇所で、ポリマー(3)とプローブ生体分子(1)とを含むネットワーク(15)内に、長チャネル(13)および短チャネル(19)が形成される。その後、溶媒(12)を除去する。長チャネル(13)は、ネットワーク(15)の表面(16)からネットワーク(15)の内部へと延在することができる。塩結晶(8)、(14)を溶解させる溶媒(12)は、該溶媒(12)がプローブ生体分子(1)にもポリマー(3)にも適合するように選択される。好ましくは、使用される溶媒(12)は水性である。
【0107】
5.4. 例示的プロトコール4
上記とは異なって、例示的プロトコール3の通りに準備した表面(2)上にスポット(7)を有するプレートを、低温、低湿度のチャンバ(例えば温度<10℃、相対湿度<40%)に入れることにより冷却して核生成を達成することもでき、ここで、該表面(2)は、好ましくは有機である。乾燥は、湿度を低下させることによって行われてもよいし、核生成の開始後に真空を印加することによって行われてもよい。核生成後、針状塩結晶(8)は、混合物(5)の体積中に位置する少なくとも1つの結晶化発生部(9)から混合物(5)の表面(10)に向かって延在することができる。さらに、より短い立方体状または棒状結晶(14)の形成が生じるものと考えられる。このスポット(7)を有するプレートを60~70℃のオーブンに1時間入れて、これらのスポットを完全に乾燥させる。これらのスポット(7)に、UV架橋装置、すなわちStratalinker 2400で、254nmで1.00JのUVを照射する。これを行うために、このスポット(7)を有するプレートを、チャンバの中央に入れることができる。このチャンバは、該チャンバの扉に平行な短辺を有する。次に、カバーを取り外して架橋装置を始動させる。機械が終了したら、アレイを取り出してカバーを交換する。
【0108】
あるいは、同一の波長(例えば240~270nm)かまたはより長波長の、例えば360nmの、他のUV架橋装置を使用することもできる。
【0109】
次いで、この混合物(5)を溶媒(12)と接触させることにより結晶(8)を溶解させ、その結果、結晶(8)、(14)が存在していた箇所で、ポリマー(3)とプローブ生体分子(1)とを含むネットワーク(15)内に、長チャネル(13)および短チャネル(19)が形成される。その後、溶媒(12)を除去する。長チャネル(13)は、ネットワーク(15)の表面(16)からネットワーク(15)の内部へと延在することができる。塩結晶(8)、(14)を溶解させる溶媒(12)は、該溶媒(12)がプローブ生体分子(1)にもポリマー(3)にも適合するように選択される。好ましくは、使用される溶媒(12)は水性である。
【0110】
6. 例
6.1. バックグラウンド
ほぼ本明細書に記載のとおりに製造したが、ただし第2の塩を含まずに350mMの濃度のリン酸ナトリウム(「NaPi」)の緩衝剤を含むポリマーネットワークは、加熱プレート上での乾燥中に湿度が60%以上に維持されないと、乾燥して相分離する場合がある。これは、湿度レベルがこれよりも低いと、制御されない様式で結晶化が起こる可能性があるためである。
【0111】
制御されない結晶化を避けるためには、リン酸ナトリウム濃度を増加させることが望ましいであろう。しかしその場合には、NaPi結晶がプリンタ内で沈殿して印刷ノズルを閉塞させることがあるため、NaPiの濃度を大幅に高めることはできない。
【0112】
様々な塩(塩化ナトリウム、ナトリウムbをNaPi試験の実験と組み合わせて使用した。しかし、これらのいずれからも、NaPi単独よりも良好なシグナルが得られなかった。通常、これらのスポットのハイブリダイゼーションシグナルは、劣っていた(データ掲載せず)。
【0113】
通常の湿度レベルでの乾燥を最小限に抑えるための他の試みでは、ポリマーネットワークにおけるハイブリダイゼーションシグナルの低減を招くNaPiの代わりにリン酸緩衝生理食塩水、クエン酸ナトリウム緩衝剤またはリン酸カリウム緩衝剤を試験する必要があった。
【0114】
しかし、NaPi緩衝剤にリン酸カリウム緩衝剤を補った場合(第6.2節で説明)、特にリン酸カリウム濃度が150mMを超えると、シグナルが損失することなく液体スポットの安定化が観察された。
【0115】
これらの実験を行った際に、驚くべき観察があった。比較的高いリン酸カリウムレベル(150mM以上)では、バックグラウンドシグナル(「ノイズ」)が減少し、200mMの濃度では、ハイブリダイゼーション反応からノイズがほぼ完全になくなった(第6.3節参照)。この効果の理由として最も考えられるのは、短チャネルによって海綿様ポリマーマトリックスが生じ、これをリン酸ナトリウムによって生じた長チャネルが貫通していることである。これらの2つの構造の組み合わせにより、オンカイネティクス(ハイブリダイゼーション)だけでなく、オフカイネティクス(未結合または弱く結合した物質の洗い流し)も改善される。バックグラウンドシグナルが比較的低いと、バックグラウンドシグナルが減少するため、リン酸ナトリウムとリン酸カリウムとの双方を使用して製造されたポリマーネットワークを使用して行われた試験のLOD(検出限界)が改善される。
【0116】
6.2. 例1:3次元ポリマーネットワークの形成
架橋性ポリマーである、ジメチルアクリルアミドとメタクリロイルベンゾフェノン5%と4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5%とのコポリマー10mgを、1.0mlのDNアーゼ不含の水に溶解させることにより、10mg/mlのポリマーストック溶液を調製した。この調製は、激しい振とうを行い、そして視認可能なポリマーがすべて溶解するまでボルテックス処理を約5分間行うことによって行った。次いで、このストック溶液を箔で包んで光から保護し、そして冷蔵庫に一晩入れることにより、ポリマーを完全に確実に溶解させるとともに、泡を確実に減少させた。このポリマーは、1分子あたり少なくとも2つの光反応性基を有する。
【0117】
10mg/mlのポリマー(PDMAA -5%のMABP - 2.5%のSSNa)と、プローブ生体分子(Cy3蛍光部分を含むDNAオリゴヌクレオチドを含む)と、350mMのリン酸ナトリウム緩衝剤を含む塩水溶液と、場合によって様々な量のリン酸カリウムとを含む様々な混合物を、湿度65%でプレートの有機表面に印刷した。Scienion Sciflexプリンタを使用して、1.6nlの体積を各スポットに印刷した。次いで、このプレートを、容器であるボール紙製の箱に入れた。運搬のために、この有機表面を有するプレートに蓋をした。次いで、この有機表面上にスポットを有するプレートを乾燥オーブン内かまたはホットプレート(70℃)上に置いて、塩結晶の核生成を生じさせた。1時間かけて乾燥させた後、このプレートに照射して、ポリマー、プローブ生体分子および有機表面を架橋させた。
【0118】
印刷後、このプレートを10mMのNaPi緩衝剤で洗浄して未結合の物質を除去し、次いで乾燥させて保存した。このプレートをSensovation Fluorescenceスキャナでスキャンして、スポットの形態を視覚的に評価した。得られた画像を、図11A(洗浄後)および図11B(乾燥後)に示す。
【0119】
D行およびE行のスポットには、(図11Cに示すように)様々な量のリン酸カリウムが含まれるのに対して、残りの行のスポットは、リン酸ナトリウム緩衝剤のみを含む塩溶液を使用して製造されたものである。リン酸カリウムを含めることにより、リン酸ナトリウムのみを用いて製造されたスポットに比べ、より均質でより丸みのあるポリマーネットワークが得られた(図11A図11B)。相対湿度を高めない場合、例えばほぼ通常の大気湿度である約40%の場合には、リン酸カリウムを含めることにより、結晶化を制御することも可能となる。
【0120】
6.3. 例2:ポリマーネットワークのハイブリダイゼーション品質
例1に記載のアレイは、S.アウレウス(S.aureus)またはE.コリ(E.coli)の検出用プローブを使用して製造された。
【0121】
S.アウレウス(S.aureus)およびE.コリ(E.coli)を増幅するためのプライマー対を、テンプレートとしてそれぞれS.アウレウス(S.aureus)およびE.コリ(E.coli)ゲノムDNAの100コピーを用いたPCR反応で使用し、PCR産物を、それぞれS.アウレウス(S.aureus)およびE.コリ(E.coli)プローブを含むアレイにハイブリダイズした。結果を、図12Aおよび図12Bに示す。図12Aに、S.アウレウス(S.aureus)DNAの100コピーから増幅されたPCR産物のアレイへのハイブリダイゼーションを示す。図12Bに、E.コリ(E.coli)DNAの100コピーから増幅されたPCR産物のアレイへのハイブリダイゼーションを示す。図12Cに、図12Aおよび図12Bのアレイのプローブマップを示す。この実験は、リン酸カリウムおよびリン酸ナトリウム緩衝剤を含む塩水溶液を使用して製造されたポリマーネットワークから得られたシグナルが、リン酸ナトリウムのみを含む塩水溶液を使用して製造されたポリマーネットワークに匹敵するシグナルを有することを示している。
【0122】
驚くべきことに、図13に示すように、リン酸カリウムを含む塩水溶液を使用して製造されたポリマーネットワークは、リン酸ナトリウムのみを含む塩水溶液を使用して製造されたポリマーネットワークと比較して、バックグラウンド「ノイズ」が低減している。図13に、テンプレートの非存在下でS.アウレウス(S.aureus)またはE.コリ(E.coli)に特異的なプライマー対を使用して増幅されたPCR産物のハイブリダイゼーションで得られた蛍光シグナルの定量を示す。したがって、ハイブリダイゼーションシグナルは、バックグラウンドの「ノイズ」を表す。比較的高濃度のリン酸カリウムの存在下で製造されたポリマーネットワークには、バックグラウンドの「ノイズ」がない。
【0123】
7 .特定の実施形態
本開示は、以下の特定の実施形態によって例示される。
【0124】
1. 3次元ヒドロゲルネットワークの製造方法であって、
(a) 以下:
(i) 少なくとも500mMの総濃度を有する少なくとも2種の一価金属イオンと、
(ii) 水溶性ポリマー鎖と、
(iii) 架橋剤部分と、
(iv) 適宜、プローブ分子と
を含む(適宜、基材の表面上に配置した)混合物を塩結晶形成条件に曝露させて、塩結晶を1つまたは複数含む混合物を形成させるステップと、
(b) 前記塩結晶を1つまたは複数含む混合物を架橋条件に曝露させて、塩結晶を1つまたは複数含むヒドロゲルを形成させるステップと、
(c) 前記塩結晶を1つまたは複数含むヒドロゲルを、前記1つまたは複数の塩結晶を溶解させ得る溶媒と接触させることにより前記塩結晶を溶解させて、前記3次元ヒドロゲルネットワークを形成させるステップと
を含む、方法。
【0125】
2. 前記混合物は、500mM~1000mMの総濃度を有する少なくとも2種類の一価金属イオンを含む、実施形態1記載の方法。
【0126】
3. 前記混合物中の一価金属イオンの総濃度は、550mM~800mMである、実施形態2記載の方法。
【0127】
4. 前記混合物中の一価金属イオンの総濃度は、600mM~750mMである、実施形態3記載の方法。
【0128】
5. 前記混合物は、2種類の一価金属イオンを含む、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の方法。
【0129】
6. 各一価イオンの濃度は、少なくとも150mMまたは少なくとも200mMである、実施形態5記載の方法。
【0130】
7. 前記一価金属イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびリチウムイオンから選択される、実施形態5または6記載の方法。
【0131】
8. 前記一価金属イオンは、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンである、実施形態5または6記載の方法。
【0132】
9. 前記ナトリウムイオンの濃度は、少なくとも300mMである、実施形態8記載の方法。
【0133】
10. 前記ナトリウムイオンの濃度は、300mM~500mMである、実施形態9記載の方法。
【0134】
11. 前記ナトリウムイオンの濃度は、300mM~400mMである、実施形態10記載の方法。
【0135】
12. 前記ナトリウムイオンの濃度は、350mMである、実施形態11記載の方法。
【0136】
13. 前記カリウムイオンの濃度は、150mM~500mMである、実施形態8から12までのいずれか1つに記載の方法。
【0137】
14. 前記カリウムイオンの濃度は、175mM~400mMである、実施形態13記載の方法。
【0138】
15. 前記カリウムイオンの濃度は、200mM~350mMである、実施形態14記載の方法。
【0139】
16. 前記カリウムイオンの濃度は、250mM~350mMである、実施形態15記載の方法。
【0140】
17. 前記混合物は、3種類の一価金属イオンを含む、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の方法。
【0141】
18. 前記一価イオンの少なくとも2つの濃度は、それぞれ少なくとも150mMまたはそれぞれ少なくとも200mMである、実施形態17記載の方法。
【0142】
19. 前記一価金属イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびリチウムイオンである、実施形態17または実施形態18記載の方法。
【0143】
20. 前記ナトリウムイオンの濃度は、少なくとも250mMである、実施形態19記載の方法。
【0144】
21. 前記ナトリウムイオンの濃度は、250mM~500mMである、実施形態20記載の方法。
【0145】
22. 前記ナトリウムイオンの濃度は、300mM~400mMである、実施形態21記載の方法。
【0146】
23. 前記ナトリウムイオンの濃度は、350mMである、実施形態22記載の方法。
【0147】
24. 前記カリウムイオンの濃度は、150mM~500mMである、実施形態19から23までのいずれか1つに記載の方法。
【0148】
25. 前記カリウムイオンの濃度は、200mM~400mMである、実施形態24記載の方法。
【0149】
26. 前記カリウムイオンの濃度は、250mM~350mMである、実施形態25記載の方法。
【0150】
27. ステップ(a)の前に、前記混合物を形成するステップをさらに含む、実施形態1から26までのいずれか1つに記載の方法。
【0151】
28. 前記混合物の形成は、一価金属カチオンを含む塩水溶液と、水溶性ポリマー鎖、架橋剤部分、および存在する場合には任意のプローブ分子を含む1つまたは複数の溶液とを合することを含む、実施形態27記載の方法。
【0152】
29. 前記水溶性ポリマー鎖および前記架橋剤部分は、単一の溶液中に存在する、実施形態28記載の方法。
【0153】
30. 前記架橋部分は、前記ポリマー鎖に共有結合している、実施形態29記載の方法。
【0154】
31. 前記塩水溶液は、6~9の範囲のpHを有する、実施形態28から30までのいずれか1つに記載の方法。
【0155】
32. 前記塩水溶液は、7~8.5の範囲のpHを有する、実施形態31記載の方法。
【0156】
33. 前記塩水溶液は、8のpHを有する、実施形態32記載の方法。
【0157】
34. 前記塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムまたはそれらの組み合わせを水または水溶液に溶解させることを含む方法によって製造された溶液を含む、実施形態28から33までのいずれか1つに記載の方法。
【0158】
35. 前記塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムまたはそれらの組み合わせを水または水溶液に溶解させることを含む方法によって製造される、実施形態34記載の方法。
【0159】
36. 前記塩水溶液は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウムおよびリン酸二水素カリウムを水に溶解させることを含む方法によって製造される、実施形態35記載の方法。
【0160】
37. 前記混合物中のリン酸イオンの濃度は、少なくとも250mMである、実施形態1から36までのいずれか1つに記載の方法。
【0161】
38. 前記混合物中のリン酸イオンの濃度は、250mM~1000mMである、実施形態37記載の方法。
【0162】
39. 前記混合物中のリン酸イオンの濃度は、550mM~800mMである、実施形態38記載の方法。
【0163】
40. 前記混合物中のリン酸イオンの濃度は、600mM~750mMである、実施形態39記載の方法。
【0164】
41. 前記塩結晶形成条件によって、1つまたは複数の針状結晶が形成され、前記塩結晶の溶解後に1本または複数本の長チャネルが生成される、実施形態1から40までのいずれか1つに記載の方法。
【0165】
42. 前記塩結晶形成条件によって、1つまたは複数の緻密結晶が形成され、前記塩結晶の溶解後に1本または複数本の短チャネルが生成される、実施形態1から41までのいずれか1つに記載の方法。
【0166】
43. 前記塩結晶形成条件は、前記混合物を脱水することを含む、実施形態1から42までのいずれか1つに記載の方法。
【0167】
44. 前記混合物の加熱、真空への前記混合物の曝露、前記混合物を取り囲む雰囲気の湿度の低下またはそれらの組み合わせによって前記混合物を脱水することを含む、実施形態43記載の方法。
【0168】
45. 真空への前記混合物の曝露によって前記混合物を脱水することを含む、実施形態44記載の方法。
【0169】
46. 前記混合物の加熱によって前記混合物を脱水することを含む、実施形態44記載の方法。
【0170】
47. 前記混合物の加熱は、前記混合物の温度よりも高い温度を有するガスと前記混合物とを接触させることを含む、実施形態46記載の方法。
【0171】
48. 前記塩結晶形成条件は、前記混合物が前記塩の過飽和状態になるまで前記混合物を冷却することを含む、実施形態1から42までのいずれか1つに記載の方法。
【0172】
49. 前記混合物の温度よりも低い温度を有するガスと前記混合物とを接触させることにより前記混合物を冷却することを含む、実施形態48記載の方法。
【0173】
50.ステップ(a)の間の前記混合物の温度を、前記混合物を取り囲む雰囲気の露点を上回るように保つ、実施形態1から49までのいずれか1つに記載の方法。
【0174】
51. 前記架橋剤部分を紫外(UV)光によって活性化させ、かつ前記架橋条件は、前記混合物を紫外光に曝露させることを含む、実施形態1から50までのいずれか1つに記載の方法。
【0175】
52. 前記架橋剤部分を可視光によって活性化させ、かつ前記架橋条件は、前記混合物を可視光に曝露させることを含む、実施形態1から50までのいずれか1つに記載の方法。
【0176】
53. 前記架橋剤部分を熱により活性化させ、かつ前記架橋条件は、前記混合物を熱に曝露させることを含む、実施形態1から50までのいずれか1つに記載の方法。
【0177】
54. 前記水溶性ポリマー鎖は、ホモポリマー鎖を含む、実施形態1から53までのいずれか1つに記載の方法。
【0178】
55. 前記水溶性ポリマー鎖は、コポリマー鎖を含む、実施形態1から54までのいずれか1つに記載の方法。
【0179】
56. 前記水溶性ポリマー鎖は、ホモポリマー鎖とコポリマー鎖との混合物を含む、実施形態1から54までのいずれか1つに記載の方法。
【0180】
57. 前記水溶性ポリマー鎖は、1種または複数種のモノマーを重合させたポリマー鎖を含む、実施形態54から56までのいずれか1つに記載の方法。
【0181】
58. 各モノマー種は、アクリレート基、メタクリレート基、エタクリレート基、2-フェニルアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、イタコネート基およびスチレン基から独立して選択された重合性基を含む、実施形態57記載の方法。
【0182】
59. 前記水溶性ポリマー中の少なくとも1つのモノマー種は、メタクリレート基を含む、実施形態58記載の方法。
【0183】
60. 前記メタクリレート基を含む少なくとも1つのモノマー種は、メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MABP)である、実施形態59記載の方法。
【0184】
61. 前記水溶性ポリマーは、ジメチルアクリルアミド(DMAA)と、メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MABP)と、4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SSNa)とを重合させたポリマーを含む、実施形態57記載の方法。
【0185】
62. 前記水溶性ポリマー鎖は、前記架橋剤部分を含むコポリマー鎖である、実施形態1から61までのいずれか1つに記載の方法。
【0186】
63. 前記水溶性ポリマー鎖は、ポリマー1分子あたり少なくとも2つの架橋剤部分を含む、実施形態62記載の方法。
【0187】
64. 前記架橋剤部分は、ベンゾフェノン、チオキサントン、ベンゾインエーテル、エチルエオシン、エオシンY、ローズベンガル、カンファーキノン、エリチロシン、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩および過酸化ベンゾイルから選択される、実施形態1から63までのいずれか1つに記載の方法。
【0188】
65. 前記架橋剤部分は、ベンゾフェノン部分である、実施形態64記載の方法。
【0189】
66. 前記溶媒は、水または水性緩衝剤である、実施形態1から65までのいずれか1つに記載の方法。
【0190】
67. 前記溶媒は、水である、実施形態66記載の方法。
【0191】
68. 前記溶媒は、水性緩衝剤である、実施形態66記載の方法。
【0192】
69. 前記水性緩衝剤は、リン酸塩、メタノール、エタノール、プロパノールまたはそれらの混合物を含む、実施形態68記載の方法。
【0193】
70. 前記ステップ(a)の混合物はさらに、プローブ分子を含む、実施形態1から69までのいずれか1つに記載の方法。
【0194】
71. 前記プローブ分子の少なくともいくつか、大部分またはすべてが、核酸、核酸誘導体、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、細胞、リガンドまたはそれらの組み合わせを含む、実施形態70記載の方法。
【0195】
72. 前記プローブ分子の少なくともいくつかは、核酸または核酸誘導体を含む、実施形態71記載の方法。
【0196】
73. 前記プローブ分子の少なくとも大部分が、核酸または核酸誘導体を含む、実施形態71記載の方法。
【0197】
74. 前記プローブ分子のすべてが、核酸または核酸誘導体を含む、実施形態71記載の方法。
【0198】
75. 前記プローブ分子の少なくともいくつか、大部分またはすべてが、抗体、抗体フラグメント、抗原、エピトープ、酵素、酵素基質、酵素阻害剤、核酸またはそれらの組み合わせを含む、実施形態70記載の方法。
【0199】
76. 前記プローブ分子の少なくともいくつかは、核酸を含む、実施形態75記載の方法。
【0200】
77. 前記プローブ分子の少なくとも大部分が、核酸を含む、実施形態75記載の方法。
【0201】
78. 前記プローブ分子のすべてが、核酸を含む、実施形態75記載の方法。
【0202】
79. 前記核酸は、オリゴヌクレオチドである、実施形態76から78までのいずれか1つに記載の方法。
【0203】
80. 前記オリゴヌクレオチドは、12~30のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0204】
81. 前記オリゴヌクレオチドは、14~30のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0205】
82. 前記オリゴヌクレオチドは、14~25のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0206】
83. 前記オリゴヌクレオチドは、14~20のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0207】
84. 前記オリゴヌクレオチドは、15~30のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0208】
85. 前記オリゴヌクレオチドは、15~25のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0209】
86. 前記オリゴヌクレオチドは、15~20のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0210】
87. 前記オリゴヌクレオチドは、16~30のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0211】
88. 前記オリゴヌクレオチドは、16~25のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0212】
89. 前記オリゴヌクレオチドは、16~20のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0213】
90. 前記オリゴヌクレオチドは、15~40のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0214】
91. 前記オリゴヌクレオチドは、15~45のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0215】
92. 前記オリゴヌクレオチドは、15~50のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0216】
93. 前記オリゴヌクレオチドは、15~60のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0217】
94. 前記オリゴヌクレオチドは、20~55のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0218】
95. 前記オリゴヌクレオチドは、18~60のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0219】
96. 前記オリゴヌクレオチドは、20~50のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0220】
97. 前記オリゴヌクレオチドは、30~90のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0221】
98. 前記オリゴヌクレオチドは、20~100のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0222】
99. 前記オリゴヌクレオチドは、20~120のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0223】
100. 前記オリゴヌクレオチドは、20~40のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0224】
101. 前記オリゴヌクレオチドは、20~60のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0225】
102. 前記オリゴヌクレオチドは、40~80のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0226】
103. 前記オリゴヌクレオチドは、40~100のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0227】
104. 前記オリゴヌクレオチドは、40~60のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0228】
105. 前記オリゴヌクレオチドは、60~80のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0229】
106. 前記オリゴヌクレオチドは、80~100のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0230】
107. 前記オリゴヌクレオチドは、100~120のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0231】
108. 前記オリゴヌクレオチドは、12~150のヌクレオチド長である、実施形態79記載の方法。
【0232】
109. ステップ(a)の前に、前記混合物を基材表面に施与するステップをさらに含む、実施形態1から108までのいずれか1つに記載の方法。
【0233】
110. 前記混合物を、100pl~5nlの体積で施与する、実施形態109記載の方法。
【0234】
111. 前記混合物を、100pl~1nlの体積で施与する、実施形態109記載の方法。
【0235】
112. 前記混合物を、200pl~1nlの体積で施与する、実施形態109記載の方法。
【0236】
113. 前記混合物を基材表面に施与するステップは、前記混合物を前記基材表面に吹き付けることを含む、実施形態109から112までのいずれか1つに記載の方法。
【0237】
114. 前記混合物を、インクジェットプリンタによって吹き付ける、実施形態113記載の方法。
【0238】
115. 前記基材は、有機ポリマーを含むか、または表面上に有機分子の自己組織化単分子膜を有する無機材料を含む、実施形態109から114までのいずれか1つに記載の方法。
【0239】
116. 前記基材は、有機ポリマーを含む、実施形態115記載の方法。
【0240】
117. 前記有機ポリマーは、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレートから選択される、実施形態116記載の方法。
【0241】
118. 前記基材は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンまたはシクロオレフィンコポリマーを含む、実施形態117記載の方法。
【0242】
119. 前記基材は、表面上にアルキルシラン自己組織化単分子膜を有する無機材料を含む、実施形態115記載の方法。
【0243】
120. 前記基材は、マイクロウェルプレートを含む、実施形態109から119までのいずれか1つに記載の方法。
【0244】
121. ステップ(b)で前記ポリマーを前記表面と架橋させる、実施形態109から120までのいずれか1つに記載の方法。
【0245】
122. 水膨潤性ポリマーを生成させ、これを前記表面と架橋させる、実施形態121記載の方法。
【0246】
123. 前記水膨潤性ポリマーは、自重の50倍までの脱イオン蒸留水を吸収することができる、実施形態122記載の方法。
【0247】
124. 前記水膨潤性ポリマーは、自己体積の5~50倍の脱イオン蒸留水を吸収することができる、実施形態122または123記載の方法。
【0248】
125. 前記水膨潤性ポリマーは、自重の30倍までの生理食塩水を吸収することができる、実施形態122から124までのいずれか1つに記載の方法。
【0249】
126. 前記水膨潤性ポリマーは、自己体積の4~30倍の生理食塩水を吸収することができる、実施形態122から125までのいずれか1つに記載の方法。
【0250】
127. アレイの製造方法であって、実施形態1から126までのいずれか1つに記載の方法によって、同一の基材の表面上の別個の各スポットで複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを生成させることを含む、方法。
【0251】
128. 前記複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを、同時に生成させる、実施形態127記載の方法。
【0252】
129. 前記複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを、逐次的に生成させる、実施形態127記載の方法。
【0253】
130. 前記複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを前記基材表面と架橋させることをさらに含む、実施形態127から129までのいずれか1つに記載の方法。
【0254】
131. アレイの製造方法であって、実施形態1から126までのいずれか1つに記載の方法により製造されたまたは得ることができる複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを、前記同一の基材の表面上の別個の各スポットに配置することを含む、方法。
【0255】
132. 前記複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを前記表面と架橋させることをさらに含む、実施形態127から131までのいずれか1つに記載の方法。
【0256】
133. アレイの製造方法であって、実施形態109から126までのいずれか1つに記載の方法により製造されたまたは得ることができる複数個の3次元ヒドロゲルネットワークを、前記同一の基材の表面上の別個の各スポットに配置することを含む、方法。
【0257】
134. 前記配置は、前記3次元ヒドロゲルネットワークを形成させる前記混合物を前記別個の各スポットに施与することを含む、実施形態133記載の方法。
【0258】
135. 前記各スポットを、各列および/または各行に配置する、実施形態127から134までのいずれか1つに記載の方法。
【0259】
136. 実施形態1から126までのいずれか1つに記載の方法により製造されたまたは得ることができる、3次元ヒドロゲルネットワーク。
【0260】
137. 基材上に実施形態136に記載の3次元ヒドロゲルネットワークを複数個含む、アレイ。
【0261】
138. 実施形態127から135までのいずれか1つに記載の方法により製造されたまたは得ることができる、アレイ。
【0262】
139. 少なくとも8個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0263】
140. 少なくとも16個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0264】
141. 少なくとも24個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0265】
142. 少なくとも48個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0266】
143. 少なくとも96個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0267】
144. 少なくとも128個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0268】
145. 少なくとも256個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0269】
146. 少なくとも512個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0270】
147. 少なくとも1024個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0271】
148. 24個~8192個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0272】
149. 24個~4096個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0273】
150. 24個~2048個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0274】
151. 24個~1024個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0275】
152. 24個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0276】
153. 48個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0277】
154. 96個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0278】
155. 128個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0279】
156. 256個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0280】
157. 512個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0281】
158. 1024個の3次元ヒドロゲルネットワークを含む、実施形態137または138に記載のアレイ。
【0282】
159. 前記3次元ヒドロゲルネットワークは、プローブ分子を含み、2つ以上の3次元ヒドロゲルネットワークが、異なる種のプローブ分子を含む、実施形態137から158までのいずれか1つに記載のアレイ。
【0283】
160. 前記3次元ヒドロゲルネットワークは、プローブ分子を含み、2つ以上の3次元ヒドロゲルネットワークが、同一の種のプローブ分子を含む、実施形態137から159までのいずれか1つに記載のアレイ。
【0284】
161. 前記3次元ヒドロゲルネットワークは、プローブ分子を含み、前記3次元ヒドロゲルネットワークはそれぞれ、同一の種のプローブ分子を含む、実施形態137から158までのいずれか1つに記載のアレイ。
【0285】
162. 前記複数個の3次元ヒドロゲルネットワークは、標識した対照プローブ分子を含む3次元ヒドロゲルネットワークを1個または複数個含む、実施形態137から161までのいずれか1つに記載のアレイ。
【0286】
163. 前記標識した対照プローブ分子は、蛍光標識済みである、実施形態162記載のアレイ。
【0287】
164. 前記基材は、マイクロウェルプレートを含み、前記マイクロウェルプレートの各ウェルは、単一の3次元ヒドロゲルネットワークのみを含む、実施形態137から163までのいずれか1つに記載のアレイ。
【0288】
165. 1つのサンプル中に1種の検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 前記検体に結合し得るプローブ分子を含む、実施形態136に記載の3次元ヒドロゲルネットワークまたは実施形態137から164までのいずれか1つに記載のアレイを、前記サンプルと接触させるステップと、
(b) 前記3次元ヒドロゲルネットワークまたはアレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記1つのサンプル中に前記1種の検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【0289】
166. ステップ(a)とステップ(b)との間で、前記プローブ分子を含むネットワークまたはアレイを洗浄することをさらに含む、実施形態165記載の方法。
【0290】
167. ステップ(a)の前に、前記プローブ分子を含むネットワークまたはアレイをブロッキング試薬と接触させることをさらに含む、実施形態165または166記載の方法。
【0291】
168. 前記プローブ分子を含む3次元ヒドロゲルネットワークまたはアレイに結合した検体を定量することをさらに含む、実施形態165から167までのいずれか1つに記載の方法。
【0292】
169. 複数のサンプルにおける各サンプル中に1種の検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 前記検体に結合し得るプローブ分子を含む、実施形態137から164までのいずれか1つに記載のアレイを、前記サンプルと接触させるステップと、
(b) 前記アレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記複数のサンプルにおける各サンプル中に前記1種の検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【0293】
170. 複数のサンプルにおける各サンプル中に1種の検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 前記検体に結合し得るプローブ分子と対照プローブ分子とを含む、実施形態137から164までのいずれか1つに記載のアレイを、前記サンプルと接触させ、その際、前記アレイは、ステップ(a)の前にすでに使用されかつ洗浄されているステップと、
(b) 前記アレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記複数のサンプルにおける各サンプル中に前記1種の検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【0294】
171. 1つのサンプル中に2種以上の検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 前記異なる種の検体に結合し得る異なる種のプローブ分子を含む、実施形態137から164までのいずれか1つに記載のアレイを、前記サンプルと接触させるステップと、
(b) 前記アレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記1つのサンプル中に2種以上の検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【0295】
172. 1つのサンプル中に2種以上の検体が存在するか否かを判定する方法であって、
(a) 前記異なる種の検体に結合し得る異なる種のプローブ分子と対照プローブ分子とを含む、実施形態137から164までのいずれか1つに記載のアレイを、前記サンプルと接触させ、その際、前記アレイは、ステップ(a)の前にすでに使用されかつ洗浄されているステップと、
(b) 前記アレイにおける前記プローブ分子への前記検体の結合を検出することにより、前記1つのサンプル中に前記2種以上の検体が存在するか否かを判定するステップと
を含む、方法。
【0296】
173.
(a) 前記アレイの基材は、マイクロウェルプレートを含み、
(b) 前記マイクロウェルプレートの各ウェルは、単一の3次元ヒドロゲルネットワークのみを含み、かつ
(c) 前記アレイと前記サンプルとの接触は、各ウェルを単一のサンプルのみと接触させることを含む、実施形態169から172までのいずれか1つに記載の方法。
【0297】
174. ステップ(a)とステップ(b)との間で、前記プローブ分子を含むアレイを洗浄することをさらに含む、実施形態169から173までのいずれか1つに記載の方法。
【0298】
175. ステップ(a)の前に、前記プローブ分子を含むアレイをブロッキング試薬と接触させることをさらに含む、実施形態169から174までのいずれか1つに記載の方法。
【0299】
176. 前記アレイに結合した1種または複数種の検体を定量することをさらに含む、実施形態169から175までのいずれか1つに記載の方法。
【0300】
177. 前記アレイを再使用することをさらに含む、実施形態165から176までのいずれか1つに記載の方法。
【0301】
178. 前記アレイを少なくとも5回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0302】
179. 前記アレイを少なくとも10回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0303】
180. 前記アレイを少なくとも20回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0304】
181. 前記アレイを少なくとも30回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0305】
182. 前記アレイを少なくとも40回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0306】
183. 前記アレイを少なくとも50回再使用する、実施形態177記載の方法。
【0307】
184. 前記アレイを5~20回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0308】
185. 前記アレイを5~30回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0309】
186. 前記アレイを10~50回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0310】
187. 前記アレイを10~20回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0311】
188. 前記アレイを10~30回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0312】
189. 前記アレイを20~40回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0313】
190. 前記アレイを40~50回再使用することを含む、実施形態178記載の方法。
【0314】
191. 前記アレイを再使用の間に洗浄することを含む、実施形態177から190までのいずれか1つに記載の方法。
【0315】
192. 前記アレイを変性条件下で洗浄する、実施形態191記載の方法。
【0316】
193. 前記変性条件は、前記アレイを熱に曝露させることを含む、実施形態192記載の方法。
【0317】
194. 前記変性条件は、前記アレイを低濃度の塩に曝露させることを含む、実施形態192記載の方法。
【0318】
195. 前記変性条件は、前記アレイを熱および低濃度の塩の双方に曝露させることを含む、実施形態192記載の方法。
【0319】
196. 再使用前に前記変性条件を解消する、実施形態192記載の方法。
【0320】
197. 前記変性条件は、前記アレイを熱に曝露させて、再使用前に温度を下げることを含む、実施形態196記載の方法。
【0321】
198. 前記変性条件は、前記アレイを低濃度の塩に曝露させて、再使用前に前記塩濃度を高めることを含む、実施形態196記載の方法。
【0322】
199. 前記変性条件は、前記アレイを熱および低濃度の塩の双方に曝露させて、再使用前に温度を下げて塩濃度を高めることを含む、実施形態196記載の方法。
【0323】
200. 前記アレイは、蛍光標識したオリゴヌクレオチドを再使用可能な対照として含む3次元ヒドロゲルネットワークを少なくとも1つ含む、実施形態177から199までのいずれか1つに記載の方法。
【0324】
201. 蛍光シグナル強度を試験することを含む、実施形態200記載の方法。
【0325】
202. 前記再使用可能な対照は、10回の使用後にその初期蛍光シグナル強度の少なくとも70%を保っている、実施形態201記載の方法。
【0326】
203. 前記再使用可能な対照は、20回の使用後にそのシグナル強度の少なくとも50%を保っている、実施形態202記載の方法。
【0327】
204. 前記再使用可能な対照がそのシグナル強度の50%超を失った以後は、前記アレイをそれ以上再使用しない、実施形態200から203までのいずれか1つに記載の方法。
【0328】
205. 前記検体は、核酸である、実施形態165から204までのいずれか1つに記載の方法。
【0329】
206. 前記核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アンプリコンである、実施形態205記載の方法。
【0330】
207. 前記PCRアンプリコンは、生体サンプルまたは環境サンプルから増幅されたものである、実施形態205記載の方法。
【0331】
208. 前記PCRアンプリコンは、生体サンプルから増幅されたものである、実施形態207記載の方法。
【0332】
209. 前記PCRアンプリコンは、環境サンプルから増幅されたものである、実施形態207記載の方法。
【0333】
210. 前記生体サンプルは、血液、血清、血漿、組織、細胞、唾液、痰、尿、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、涙液、便、汗、精液、全細胞、細胞成分、細胞塗抹標本またはそれらの抽出物もしくは誘導体である、実施形態208記載の方法。
【0334】
211. 前記生体サンプルは、哺乳動物の血液、血清もしくは血漿またはそれらの抽出物である、実施形態210記載の方法。
【0335】
212. 前記生体サンプルは、ヒトまたはウシの血液、血清もしくは血漿またはそれらの抽出物である、実施形態211記載の方法。
【0336】
213. 前記生体サンプルは、乳汁またはその抽出物である、実施形態210記載の方法。
【0337】
214. 前記生体サンプルは、牛乳またはその抽出物である、実施形態213記載の方法。
【0338】
215. 前記核酸は、標識済みである、実施形態205から214までのいずれか1つに記載の方法。
【0339】
216. 前記核酸は、蛍光標識済みである、実施形態215記載の方法。
【0340】
様々な特定の実施形態を例示して説明したが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えてよいものと理解されたい。
【0341】
8. 参照の引用
本出願に引用される刊行物、特許、特許出願およびその他の文献はいずれも、個々の各刊行物、特許、特許出願またはその他の文献があらゆる目的で援用されるために個々に示されるのと同程度までそれらの内容全体があらゆる目的で援用される。本明細書に援用される1つまたは複数の参考文献の教示と本開示との間に矛盾が生じる場合には、本明細書の教示が意図される。
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