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特許7222935プルトニウム(IV)を還元することなくウラン(VI)とプルトニウム(IV)を分離するためのカルバミド
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  • 特許-プルトニウム(IV)を還元することなくウラン(VI)とプルトニウム(IV)を分離するためのカルバミド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】プルトニウム(IV)を還元することなくウラン(VI)とプルトニウム(IV)を分離するためのカルバミド
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/46 20060101AFI20230208BHJP
   C07C 275/06 20060101ALI20230208BHJP
   C07C 275/18 20060101ALI20230208BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20230208BHJP
   C22B 60/04 20060101ALI20230208BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20230208BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G21C19/46 624
C07C275/06 CSP
C07C275/18
B01D11/04 B
C22B60/04
C22B3/26
C22B7/00 G
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019571251
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 FR2018051606
(87)【国際公開番号】W WO2019002788
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】1756057
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】591015050
【氏名又は名称】オラノ・デモンテルモ
(73)【特許権者】
【識別番号】522350782
【氏名又は名称】オラノ・ルシクラージュ
(73)【特許権者】
【識別番号】507030070
【氏名又は名称】エレクトリシテ ド フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリー,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェ,クレマンス
(72)【発明者】
【氏名】モサン,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ラッセロ,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイアディス,エウゲン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨモン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ミギルディトシャン,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ソレル,クリスチャン
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02862852(EP,A1)
【文献】特開平06-157449(JP,A)
【文献】特表2005-538074(JP,A)
【文献】E. K. DUKES et al.,TETRABUTYL UREA AS EXTRACTANT FOR NITRIC ACID AND SOME ACTINIDE NITRATES,JOURNAL OF INORGANIC AND NUCLEAR CHEMISTRY,1966年10月01日,Vol. 28, No.10,p.2307-2312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/00-19/50
23/00
JSTPlus(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液A1のプルトニウム(IV)から、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元することなく、ウラン(VI)を完全に又は部分的に分離するための抽出剤としての一般式(I)のカルバミドの使用であって:
【化1】
(式中、
同一又は異なるR1,R2及びR3は、1~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、又は4~13個の炭素原子を含むシクロアルキルアルキル基を表し;
4は、水素原子、1~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、又は4~13個の炭素原子を含むシクロアルキルアルキル基を表す。)
以下の工程を含み:
a)水溶液A1からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出し、その後、水溶液と有機溶液の分離を行う工程であって、該共抽出は、抽出器内で、水溶液と、有機希釈液中に前記カルバミドを含む有機溶液S1との少なくとも1回の接触を含む工程;
b)a)工程で生じた有機溶液からプルトニウム(IV)及び一部のウラン(VI)を逆抽出(stripping)し、その後、有機溶液と水溶液の分離を行う工程であって、該逆抽出は、抽出器内で、有機溶液と、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液A2との少なくとも1回の接触を含む工程;及び、
c)b)工程で生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分の全部又は一部を抽出し、その後、水溶液と有機溶液の分離を行う工程であって、該抽出は、抽出器内で、水溶液と、有機希釈液中に前記カルバミドを含む有機溶液S2との少なくとも1回の接触を含む工程;
これにより、ウラン(VI)を含まずプルトニウム(IV)を含む水溶液、又は、プルトニウム(IV)とウラン(VI)の混合物を含む水溶液、及びプルトニウム(IV)を含まずウラン(VI)を含む有機溶液が得られる使用。
【請求項2】
前記カルバミドに含まれる炭素原子の総数が17~25である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1,R2,R3及びR4が、1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
-R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であるがR1及びR2とは異なる;又は、
-R1とR4は同一であり、R2とR3は同一であるがR1及びR4とは異なる;又は、
-R1,R2,R3及びR4は全て同一である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用:
【請求項5】
1とR2は同一であり、1~5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、R3とR4は同一であり、6~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、そして前記カルバミドに含まれる炭素原子の総数が、19、21又は23である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
1とR4は同一であり、1~5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、R2とR3は同一であり、6~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、そして前記カルバミドに含まれる炭素原子の総数が、19、21又は23である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
1,R2,R3及びR4は同一であり、4~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
1,R2及びR3が、1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、R4は水素原子である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
1,R2及びR3が、同一である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
1,R2及びR3が、6~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記カルバミドが、N,N,N’-トリ-n-オクチル尿素;N,N,N’-トリ(2-エチルヘキシル)尿素;N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-N’-n-オクチル尿素;N,N,N’,N’-テトラ-n-ブチル尿素;N,N,N’,N’-テトラ-n-ペンチル尿素;N,N,N’,N’-テトラ-n-ヘキシル尿素;N,N,N’,N’-テトラ-n-オクチル尿素;N,N’-ジ-n-ブチル-N,N’-ジ-n-ヘキシル尿素;N,N’-ジ-n-ヘプチル-N,N’-ジ-n-プロピル尿素;N,N’-ジエチル-N,N’-ジ-n-オクチル尿素;又は、N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-n-ノニル尿素である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項12】
有機溶液S1及びS2が、0.5mol/L~2mol/Lの前記カルバミドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
更にa)工程が、アメリシウム、キュリウム及び核分裂生成物について、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の共抽出由来の有機溶液を除染し、その後、有機溶液と水溶液の分離を行う工程を含み、該除染は、抽出器内で、有機溶液と1mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液A3との接触を少なくとも1回含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
b)工程が行われる前記抽出器において、a)工程由来の有機溶液と水溶液A2との接触が、1より大きい流量比O/Aの有機溶液と水溶液の向流循環を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
更に、c)工程由来の有機溶液からウラン(VI)を逆抽出し、その後、有機溶液と水溶液の分離を行う工程を含み、該逆抽出は、有機溶液と最大0.05mol/Lの硝酸を含む水溶液A5との接触を少なくとも1回含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
一般式(I)のカルバミド:
【化2】
式中、
1及びR4は同一であって1~4個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、
2及びR3は同一であって6~9個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、及び、
当該カルバミドに含まれる炭素原子の総数は21である。
【請求項17】
N,N’-ジエチル-N,N’-ジ-n-オクチル尿素、又は、N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-n-ノニル尿素である、請求項16に記載のカルバミド。
【請求項18】
特定の式(II)のカルバミド:
【化3】
式中、
1,R2及びR3は、同一又は異なり、8~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である
【請求項19】
含まれる炭素原子の総数が17~25である、請求項18のカルバミド。
【請求項20】
1,R2及びR3は同一である、請求項18又は19に記載のカルバミド。
【請求項21】
N,N,N’-トリ-n-オクチル尿素、N,N,N’-トリ(2-エチルヘキシル)尿素、又は、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-N’-n-オクチル尿素である、請求項18~20のいずれか一項に記載のカルバミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済み核燃料処理の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、使用済み核燃料の硝酸中への溶解から得られる水溶液を使用して、プルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元を行わない液液抽出により、プルトニウム(IV)からウラン(VI)を完全に又は部分的に分離するための抽出剤としてのカルバミド(すなわち尿素誘導体)の使用に関する。
【0003】
また、極めて有利な抽出剤特性を有する新規カルバミドにも関する。
【0004】
特に本発明は、ウラン(特にウラン酸化物-UOX)又はウランとプルトニウム(特にウランとプルトニウムの混合酸化物-MOX)をベースとする使用済み核燃料の処理における用途を見い出す。
【背景技術】
【0005】
世界中に存在する全ての使用済み核燃料処理プラント(フランスのLa Hague、日本の六ヶ所村、英国のSellafield等)で使用されているPUREX法は、リン酸トリ-n-ブチル(又はTBP)を抽出剤として使用し、液液抽出により、これらの燃料を硝酸中に溶解して得られる水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を回収する。
【0006】
この方法では、TBPは、脂肪族希釈液(水添テトラプロピレン(もしくはTPH)、n-ドデカン又は灯油)の30%(v/v)溶液で使用される。この有機溶液は、本技術分野では、通常「溶媒」と呼ばれる。
【0007】
PUREX法を使用したウラン及びプルトニウムの回収は、以下の複数のサイクルで実施される:
-第1の、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)精製サイクル(「1CUPu」として知られる)であって、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を当該第1のサイクルにおける2つの水流に分離し、これらの元素をアメリシウム、キュリウム及び核分裂生成物から除染することを目的とするサイクル;
-第2の、ウラン(VI)精製サイクル(「2CU」として知られる)であって、最終製品であるウランのASTM規格で定義された仕様を満たすために当該元素の除染を完了することを目的とするサイクル;並びに、
-第2のサイクル、及び特定のプラントの場合は第3のプルトニウム(IV)精製サイクル(それぞれ「2CPu」及び「3CPu」として知られる)であって、最終製品であるプルトニウムのASTM規格で定義された仕様を満たすために当該元素の除染を完了し、酸化物PuOに転換する前にこれを濃縮することを目的とするサイクル。
【0008】
PUREX法の性能は満足のいくものであり、これを使用したプラントの試運転以降に得られたフィードバックは肯定的である。
【0009】
しかしながら、将来の使用済み核燃料処理プラントに予定されている簡便性、コンパクトな設計及び安全性の向上の観点からTBPの使用には制限があり、当該抽出剤を用いて目標を達成する可能性を無効にする。
【0010】
主な制限は、ウランとプルトニウムを2つの水流に分離するには、プルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元が必要になるという事実に起因する(TBPを使用すると、ウラン(VI)とプルトニウム(IV)の分離係数は、当該分離の実施に使用される水溶液の酸性度とは無関係に不十分となるため)。したがって、分解によって不安定な反応種を発生させる多量の還元剤及び抗亜硝酸剤(anti-nitrous agent)の使用は、したがって安全性の面で制限が多い。
【0011】
硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液から定量的にウランとプルトニウムを共抽出し、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元することなく、これら2つの元素の完全な又は部分的な分離を実施するのに適した抽出剤の提供は、したがって多くの研究を生み出している。
【0012】
したがって、特許文献1においては、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-3,3-ジメチルブタンアミド(又はDEHDMBA)等の対称N、N-ジアルキルアミドの使用が提案され、特許文献2においては、N-メチル-N-オクチル-2-エチルヘキサンアミド(又はMOEHA)等の「非対称」N、N-ジアルキルアミドの使用が提案されている。いずれの場合も、N、N-ジアルキルアミドは非常に有利な性能を示す。
【0013】
更に、カルバミドによる硝酸水溶液のウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の抽出に関する3つの研究が文献に発表されている。これらは以下から成る:非特許文献1に報告されたE.K.Dukes及びT.H.SidallによるN,N,N’,N’-テトラ-n-ブチル尿素を用いて行った研究;また非特許文献2に報告されたG.M.ChumakovaらによるN,N,N’,N’-テトラ-n-ブチル尿素を用いて行った研究;更に、非特許文献3に報告されたB.G.VatsらによるN,N-ジエチル-N’,N’-ジイソブチル尿素(又はDEDiBU)及びN,N-ジエチル-N’,N’-ジ-n-オクチル尿素(又はDEDOU)を用いて行った最近の研究。
【0014】
これらの研究は、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の抽出剤としてのテトラアルキル化カルバミドの可能性を実証している。しかしながら、これらのいずれも、このタイプの化合物を使用して、使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液からウラン(VI)とプルトニウム(IV)を共抽出し、その後、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元する必要なくプルトニウム(IV)からウラン(VI)を完全に又は部分的に分離できる可能性を示していない。
【0015】
しかし、彼らの研究の範囲内で、本発明者は、いくつかのカルバミドが次のような抽出剤特性を有することを実際に観察した:
-例えば使用済み核燃料の硝酸中の溶解に由来する水溶液が示す強酸性の水相の存在下では、当該水相のこれら2つの元素の定量的な共抽出を可能にするのに適したウラン(VI)とプルトニウム(IV)の分離係数が得られる;及び
-中程度の酸性度の水相の存在下では、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元する必要なく、プルトニウム(IV)からウラン(VI)を必要に応じて任意に完全に又は部分的に分離するのを可能にするのに適したU(VI)/Pu(IV)分離係数が得られる。
【0016】
本発明は、これらの観察に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2017/017207号
【文献】国際公開第2017/017193号
【非特許文献】
【0018】
【文献】E.K.Dukes and T.H.Sidall,Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry 1966,28(10),2307-2312
【文献】G.M.Chumakova et al.,Radiokhimiya 1980,22(2),213-217
【文献】B.G. Vats et al.,Dalton Transactions 2016,45(25),10319-10325
【発明の概要】
【0019】
第1に、本発明は、硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液A1のプルトニウム(IV)から、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元することなく、ウラン(VI)を完全に又は部分的に分離するための抽出剤としての一般式(I)のカルバミドの使用に関する:
【0020】
【化1】
【0021】
式中、
同一又は異なるR1,R2及びR3は、1~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、又は4~13個の炭素原子を含むシクロアルキルアルキル基を表し;
4は、水素原子、1~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基、又は4~13個の炭素原子を含むシクロアルキルアルキル基を表す。
【0022】
当該使用は以下を含む:
a)水溶液からのウラン(VI)とプルトニウム(IV)の共抽出(共抽出は、抽出器において、水溶液A1と有機希釈液中に前記カルバミドを含む有機溶液S1との少なくとも1回の接触を含む)と、その後に続く水溶液と有機溶液の分離;
b)a)工程で生じた有機溶液からのプルトニウム(IV)と、一部のウラン(VI)の逆抽出(stripping)(逆抽出は、抽出器において、有機溶液S1と0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液A2との少なくとも1回の接触を含む)と、その後に続く有機溶液と水溶液の分離;及び、
c)b)工程で生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分の全部又は一部の抽出(抽出は、抽出器において、水溶液と有機希釈液中に前記カルバミドを含む有機溶液S2との少なくとも1回の接触を含む)と、その後に続く水溶液と有機溶液の分離;
これにより、ウラン(VI)を含まずプルトニウム(IV)を含む水溶液、又は、プルトニウム(IV)とウラン(VI)の混合物を含む水溶液、及びプルトニウム(IV)を含まずウラン(VI)を含む有機溶液が得られる。
【0023】
上記及び下記において、表現「・・・から・・・までを含む」、「・・・から・・・までの範囲」及び「・・・と・・・の間」は同義であり、境界が含まれることを示す。
【0024】
「1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基」とは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルヘプチル、2-メチルオクチル、2-エチルヘキシル、1,5-ジメチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、2-エチルヘプチル、1,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチルヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、2-メチルノニル、3,7-ジメチルオクチル、2,4,6-トリメチルヘプチル、2-ブチルヘキシル基等の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を含む任意の直鎖又は分岐鎖アルキル基であると理解される。
【0025】
「3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基」とは、当該シクロアルキル基に含まれる炭素原子の総数(置換基を有する場合は置換基を含む)が、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である、1又は複数の縮合又は架橋環を有する任意のシクロアルキル基(当該環は1又は複数のアルキル基で任意に置換されている)であると理解される。このようなシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、ビシクロプロピル、ビシクロヘキシル基、1又は複数のメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル基等で置換されたシクロペンチル又はシクロヘキシル基である。
【0026】
「4~13個の炭素原子を含むシクロアルキルアルキル基」とは、その置換基を含むアルキル基の炭素原子の総数が、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13である、シクロアルキル基で置換された任意の直鎖又は分岐鎖アルキル基であると理解される。このようなシクロアルキルアルキル基は、例えば、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘキシルブチル、3-シクロヘキシル-2-メチルブチル、4-シクロヘキシル-1-メチルブチル、4-シクロヘキシル-2-メチルブチル、4-シクロヘキシル-3-メチルブチル、4-シクロヘキシル-1-エチルブチル、4-シクロヘキシル-2-エチルブチル、4-シクロヘキシル-1-プロピルブチル、4-シクロヘキシル-2-プロピルブチル、4-シクロヘキシルペンチル、4-シクロヘキシル-2-メチルペンチル基等である。
【0027】
更に、用語「有機溶液」と「有機相」は同義かつ互換可能であり、同様に、用語「水溶液」と「水相」は同義かつ互換可能である。
【0028】
シクロアルキル基とは、唯一の炭素鎖又は主炭素鎖が環状であるアルキル基であると考えられる限り、本発明の使用に適したカルバミドは、テトラアルキル化カルバミド(R4が水素原子と異なる場合)又は確かにトリアルキル化カルバミド(R4が水素原子を表す場合)と説明することができる。したがって、この説明を以下に使用する。
【0029】
本発明によれば、カルバミドに含まれる炭素原子の総数は、優先的に17~25である。
【0030】
カルバミドがテトラアルキル化されている場合、好ましくは、R1,R2,R3及びR4は、1~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0031】
更に、以下が好ましい:
-R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であるがR1及びR2とは異なる、又は確かに、
-R1とR4は同一であり、R2とR3は同一であるがR1及びR4とは異なる、又は確かに、
-R1,R2,R3及びR4は全て同一である。
【0032】
1とR2は同一であり、R3とR4は同一であるがR1及びR2とは異なる場合、R1とR2は優先的に1~5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、一方R3とR4は優先的に6~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、そしてカルバミドに含まれる炭素原子の総数は、好ましくは19、21又は23である。
【0033】
同様に、R1とR4は同一であり、R2とR3は同一であるがR1及びR4とは異なる場合、R1とR4は優先的に1~5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、R2とR3は優先的に6~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、そしてカルバミドに含まれる炭素原子の総数は、この場合も好ましくは19、21又は23である。
【0034】
1,R2,R3及びR4は同一である場合、R1,R2,R3及びR4は、4~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル及びn-オクチル基が特に好ましい。
【0035】
カルバミドがトリアルキル化される場合、R1,R2及びR3は、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは2~10個の炭素原子、更により好ましくは4~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0036】
更に、R1はR2と同一であることが好ましく、R1,R2及びR3は全て同一であることがより好ましい。この場合、R1,R2及びR3は、好ましくは6~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0037】
したがって、好ましいカルバミドの例として以下を挙げることができる:
・ N,N,N’,N’-テトラ-n-ブチル尿素(又は、TBU)(一般式(I)のR1,R2,R3及びR4がn-ブチル基である);
・ N,N,N’,N’-テトラ-n-ペンチル尿素(又は、TPU)(一般式(I)のR1,R2,R3及びR4がn-ペンチル基である);
・ N,N,N’,N’-テトラ-n-ヘキシル尿素(又は、THU)(一般式(I)のR1,R2,R3及びR4がn-ヘキシル基である);
・ N,N,N’,N’-テトラ-n-オクチル尿素(又は、TOU)(一般式(I)のR1,R2,R3及びR4がn-オクチル基である);
・ N,N’-ジ-n-ブチル-N,N’-ジ-n-ヘキシル尿素(又は、DBDHU)(一般式(I)のR1及びR4がn-ブチル基であり、R2及びR3がn-ヘキシル基である);
・ N,N’-ジ-n-ヘプチル-N,N’-ジ-n-プロピル尿素(又は、DHDPU)(一般式(I)のR1及びR4がn-プロピル基であり、R2及びR3がn-ヘプチル基である);
・ N,N’-ジエチル-N,N’-ジ-n-オクチル尿素(又は、sym-DEDOU)(一般式(I)のR1及びR4がエチル基であり、R2及びR3がn-オクチル基である);
・ N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-n-ノニル尿素(又は、DMDNU)(一般式(I)のR1及びR4がメチル基であり、R2及びR3がn-ノニル基である);
・ N,N,N’-トリ-n-オクチル尿素(又は、TrOU)(一般式(I)のR1,R2及びR3がn-オクチル基であり、R4が水素原子である);
・ N,N,N’-トリ(2-エチルヘキシル)尿素(又は、TrEHU)(一般式(I)のR1,R2及びR3が2-エチルヘキシル基であり、R4が水素原子である);及び、
・ N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-N’-n-オクチル尿素(又は、DEHOU)(一般式(I)のR1及びR2が2-エチルヘキシル基であり、R3がn-オクチル基であり、Rが水素原子である)。
【0038】
これらのカルバミドのうち、中程度の酸性度(すなわち、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水相の存在下)において、プルトニウム(IV)に対して、ウラン(VI)に特に高い選択性を示すという点で、カルバミドTBU、THU、TPU、DBDHU、DHDPU、sym-DEDOU及びDMDNUが最も好ましい。
【0039】
本発明によれば、有機溶液S1及びS2は、好ましくは0.5mol/L~2mol/L、より好ましくは1mol/L~1.4mol/Lのカルバミドを含む。
【0040】
有機希釈液は、有利には非環式炭化水素又は非環式炭化水素の混合物、例えばn-ドデカン、水素化テトラプロピレン(又はTPH)、灯油、Isane(商標)IP-185T又はIsane(商標)IP-175Tであり、TPHが好ましい。
【0041】
硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液に関しては、典型的には3mol/L~6mol/Lの硝酸を含む。
【0042】
好ましくは、a)工程は、アメリシウム、キュリウム及び核分裂生成物について、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の共抽出由来の有機溶液の除染(当該除染は、抽出器において、有機溶液と1mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液A3との接触を少なくとも含む)と、その後に続く有機溶液と水溶液の分離を更に含む。当該除染は、除染された有機溶液の脱酸によって任意に補われ、当該脱酸は、抽出器において、除染由来の有機溶液を、0.1mol/L~1mol/L、より好ましくは0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液A4との接触を少なくとも含み、有機溶液と水溶液の分離がこれに続く。
【0043】
また好ましくは、b)工程が行われる抽出器において、a)工程由来の有機溶液と水溶液A2との接触は、有利には1より大きく、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の流量比O/A(有機溶液/水溶液)の有機溶液と水溶液の向流循環を含む。それにより、プルトニウム(IV)の濃縮逆抽出(それが逆抽出された有機溶液中の当該元素が示す濃度よりもプルトニウム(IV)の濃度が高い水溶液が得られるプルトニウム(IV)の逆抽出)が達成される。
【0044】
本発明によれば、c)工程由来の有機溶液中に存在するウラン(VI)は、抽出器内で、有機溶液を、最大0.05mol/L、より好ましくは最大0.01mol/Lの硝酸を含む水溶液A5と少なくとも1回接触させることにより、当該溶液から引き続き逆抽出することができる。有機溶液と水溶液の分離がこれに続く。当該逆抽出は、周囲温度、又はウラン(VI)の逆抽出を促進するのに適した40℃~50℃の温度で実施できる。更に、ウラン(VI)が濃縮されて逆抽出されるように、1より大きい流量比O/Aを用いて実施できる。
【0045】
本発明の使用に適したカルバミドのうち、テトラアルキル化カルバミドTBU、THU、TOU及びTPU等のいくつかは、先行技術に属する。
【0046】
それに対し、一方のテトラアルキル化カルバミドDBDHU、DHDPU、sym-DEDOU及びDMDNU等の別のもの、及び他方のトリアルキル化カルバミドTrOU、TrEHU及びDEHOUは、本発明者の知る限り、先行技術には記載されていない。
【0047】
したがって、本発明の対象は、上記一般式(I)のテトラアルキル化カルバミド(式中、R1及びR4は同一であって1~4個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を表し、R2及びR3は同一であって6~9個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を表し、当該カルバミドに含まれる炭素原子の総数は21に等しい)である。
【0048】
当該テトラアルキル化カルバミドは、カルバミドDBDHU、カルバミドDHDPU、カルバミドsym-DEDOU又はカルバミドDMDNUであり、優先的には、カルバミドsym-DEDOU及びDMDNUである。
【0049】
それ自体既知の方法で、当該テトラアルキル化カルバミドは、具体的には、式RNHC(O)NHR(式中、RはカルバミドのR2及びR3と同じ意味を有する)のN,N’-ジアルキル尿素と、ハロゲノアルカンHalR’、例えばヨードアルカンIR’(式中、R’はカルバミドのR1及びR4と同じ意味を有する)を、有機媒体中、例えばテトラヒドロフラン中で、水素化ナトリウム等の金属水素化物の存在下で、反応させて得ることができる。
【0050】
更に本発明は、特定の式(II)のトリアルキル化カルバミドに関する:
【0051】
【化2】
【0052】
式中、
同一又は異なるR1,R2及びR3は、8~12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、又は3~12個の炭素原子を含むシクロアルキル基である。ただし、R1,R2及びR3の少なくとも1つはシクロアルキル基ではない。
【0053】
また式中、特定の式(II)のカルバミドに含まれる炭素原子の総数は、優先的に17~25である。
【0054】
当該カルバミドにおいて、R1,R2及びR3は、それぞれ直鎖又は分岐鎖アルキル基を表すことが好ましく、n-オクチル及び2-エチルヘキシル基が最も特に好ましい。
【0055】
更に、R1はR2と同一であることが好ましく、R1,R2及びR3は互いに同一であることがより好ましい。
【0056】
本発明によれば、特定の式(II)のカルバミドは、有利にはカルバミドTrOU、カルバミドTrEHU又はカルバミドDEHOUであり、カルバミドTrOU及びTrEHUが最も特に好ましい。
【0057】
それ自体既知の方法で、当該カルバミドは、特に有機媒体中、例えば無水ジクロロメタン中で、式R12NH(式中、R1及びR2は上で定義した通りである)の二級アミンと、式R3NCO(式中、R3は上で定義した通りである)のイソシアネートを反応させることにより得ることができる。
【0058】
非常に有利な抽出剤特性を有することに加えて、カルバミドは、その分解生成物と同様に、炭素、水素、酸素及び窒素原子のみを含むという利点も有し、そのため完全に焼却可能であり、二次廃棄物に不利をもたらさない。
【0059】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の補足説明から明らかになるであろう。
【0060】
しかし、当該補足説明は単に説明のために提供されるものであり、いかなる状況においても、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明の使用の好ましい実施形態の原理図を表す。この図では、長方形1~4は、使用済み核燃料の処理に従来使用されている多段抽出器(ミキサーセトラ、パルスカラム、又は遠心抽出器)を表している。有機相は実線で表され、一方、水相は点線で表されている。
【実施例
【0062】
実施例I:テトラアルキル化及びトリアルキル化カルバミドの合成
I.1-N,N’-ジ-n-ブチル-N,N’-ジ-n-ヘキシル尿素又はDBDHU:
カルバミドDBDHUは以下の通り合成される:
-無水ジクロロメタン中でn-ヘキシルイソシアネート(5mL,34.3mmol)とn-ヘキシルアミン(0.3mol/L,1.2eq.)を反応させて、N,N’-ジ-n-ヘキシル尿素を得る;次いで、
-テトラヒドロフラン(THF)中でN,N’-ジ-n-ヘキシル尿素(7.6g,33.4mmol)とヨードブタン(5eq.)を反応させる。
【0063】
これを行うために、無水ジクロロメタン中のn-ヘキシルアミンの溶液に0℃でn-ヘキシルイソシアネートの溶液を滴下する。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで周囲温度に戻し、オーバーナイトで撹拌する。溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物をジクロロメタン/メタノール混合物(95/5,v:v)を用いてシリカゲル上で精製して、7.6gのN,N’-ジ-n-ヘキシル尿素を得た(収率:>97%)。
【0064】
次に、THF中の60%(w/w)(8eq.)のNaHの懸濁液を、0℃でTHF中のN,N’-ジ-n-ヘキシル尿素の溶液に分割して加える。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次いでヨードブタンを滴下する。混合物を周囲温度に戻し、次いで還流する。オーバーナイト後、混合物を0℃に冷却し、水を補充する。水相をジエチルエーテルで抽出する。次いで有機相を飽和塩化ナトリウム(NaCl)溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥させる。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた固体をシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(99/1~90/10,v:v)を用いてシリカゲル上で精製し、10.5gのカルバミドDBDHUを得る(収率:>95%)。当該カルバミドの特性を以下に示す。
【0065】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):3.12(m,8H);1.50(m,8H);1.28(m,16H);0.92(m,12H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):165;48.5;48.1;31.6;30.1;27.9;26.7;22.6;20.2;14.0;13.9
MS(ポジティブモード ESI):341(MH+);682(2MH+);703(2MNa+
GC-HRMS(ポジティブモード EI):純度>99%;計算精密質量C21442O:340.3448;実測値:340.3412
【0066】
I.2-N,N’-ジ-n-ヘプチル-N,N’-ジ-n-プロピル尿素又はDHDPU:
カルバミドDBDHUは以下の通り合成される:
-無水ジクロロメタン中でn-ヘプチルイソシアネート(5g,35.4mmol)とn-ヘプチルアミン(0.3mol/L,1.2eq.)を反応させて、N,N’-ジ-n-ヘプチル尿素を得る;次いで、
-THF中でN,N’-ジ-n-ヘプチル尿素(8.8g,34.3mmol)とヨードプロパン(5eq.)を反応させる;
DBDHUの合成については、上記のセクション1.1で説明したプロトコルと同じプロトコルに従う。
【0067】
これにより、11.2gのカルバミドDHDPUが得られる(収率:>96%)。その特性を以下に示す。
【0068】
1H NMR(CDCl3.400MHz)δ(ppm):3.07(m,8H);1.50(m,8H);1.25(m,16H);0.86(m,12H)
13C NMR(CDCl3.101MHz)δ(ppm):163.7;48.5;46.7;30.2;27.5;26.4;25.4;21.0;19.6;12.4;9.8
MS(ポジティブモード ESI):341(MH+);363(MNa+);682(2MH+);703(2MNa+
GC-HRMS(ポジティブモード EI):純度99.1%;計算精密質量C21442O:340.3448;実測値:340.3438
【0069】
I.3-N,N’-ジエチル-N,N’-ジ-n-オクチル尿素又はsym-DEDOU:
カルバミドsym-DEDOUは以下の通り合成される:
-無水ジクロロメタン中でn-オクチルイソシアネート(5g,32.2mmol)とn-オクチルアミン(0.3mol/L,1.2eq.)を反応させて、N,N’-ジ-n-オクチル尿素を得る;次いで、
-THF中でN,N’-ジ-n-オクチル尿素(8.9g,31.3mmol)とヨードエタン(5eq.)を反応させる;
DBDHUの合成については、上記のセクション1.1で説明したプロトコルと同じプロトコルに従う。
【0070】
これにより、10.2gのカルバミドsym-DEDOUが得られる(収率:>96%)。その特性を以下に示す。
【0071】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):3.14(q,J=7Hz,4HEt);3.07(m,4HOct);1.48(m,4HOct);1.25(m,20HOct);1.08(t,J=7Hz,6HEt);0.86(m,6HOct
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):164.9;47.8;42.9;31.8;29.4;29.3;28.0;27.1;22.6;14.1;13.2
MS(ポジティブモード ESI):341(MH+);363(MNa+);703(2MNa+
GC-HRMS(ポジティブモード EI):純度99.5%;計算精密質量C21442O:340.3448;実測値:340.3437
【0072】
I.4-N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-n-ノニル尿素又はDMDNU:
カルバミドDMDNUは、THF中で、N,N’-ジ-n-メチル尿素(2g,22.7mmol)とヨードノナン(5.3mL,40.2mmol,2eq.)を反応させて合成する。
【0073】
これを行うために、THF中のN,N’-ジメチル尿素の溶液を、THF中のNaHの懸濁液60%(w/w)(7.2g,45.4mmol,2eq.)に0℃で滴下する。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次いでヨードノナンを滴下する。混合物を周囲温度に戻し、次いで還流する。オーバーナイト後、溶媒を0℃に冷却し、水を補充する。水相をジエチルエーテルで抽出する。次に有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させる。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた固体をシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(99/1~90/10,v:v)を用いてシリカゲル上で精製し、7.8gのカルバミドDMDNUを得る(収率:>98%)。当該カルバミドの特性を以下に示す。
【0074】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):3.08(t,J=7.5Hz,4H);2.76(s,6H);1.52(m,4H);1.25(m,24H);0.87(m,6H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):165.4;50.6;36.5;31.8;29.5;29.4;29.3;27.6;26.9;22.6;14.1
MS(ポジティブモード ESI):341(MH+);682(2MH+);703(2MNa+
GC-HRMS(ポジティブモード EI):純度99.2%;計算精密質量C21442O:340.3448;実測値:340.3454
【0075】
I.5-N,N,N’-トリ-n-オクチル尿素又はTrOU:
カルバミドTrOUは、無水ジクロロメタン(0.1mol/L)中で、ジ-n-オクチルアミン(1.5mL,4.9mmol,1eq.)とn-オクチルイソシアネート(1.7mL,9.7mmol,2eq.)を反応させて合成する。
【0076】
この目的のために、無水ジクロロメタン中のジ-n-オクチルアミン及びn-オクチルイソシアネートを含む溶液を周囲温度で4.5時間撹拌する。次に、反応混合物を1M塩酸(HCl)溶液で2回、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)溶液で2回洗浄する。有機相を硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、減圧下で濃縮し、残留物をジクロロメタン/酢酸エチル混合物(95/5,v:v)を用いたシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで精製し、1.9gのTrOUを無色の油状で得る(収率:100%)。当該カルバミドの特性を以下に示す。
【0077】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.25(s,1H);3.20(q,J=5.4Hz,2H);3.14(q,J=7.7Hz,4H);1.50(m,6H);1.46(m,30H);0.87(t,J=7.2Hz,9H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):157.8;47.5;41.0;32.0;30.6;29.6;29.5;29.4;28.8;27.2;22.8;14.2
IR(KBr,νmax/cm-1):3345;2955;2922;2853;1622;1533;1465;1376;1274;767;722
MS(ポジティブモード ESI):397(MH+),816(2MNa+
HRMS(ポジティブモード ESI):C25532Oの理論値:397.4158;実測値:397.4156
元素分析(%)(C25522O+0.18AcOEt):理論値:C 74.88;H 13.06;N 6.79;実測値:C 75.17;H 12.74;N 6.88
【0078】
I.6-N,N,N’-トリ(2-エチルヘキシル)尿素又はTrEHU:
TrEHUは、無水ジクロロメタン(0.1mol/L)中のジ(2-エチルヘキシル)アミン(1.49mL,4.92mmol,1eq.)と2-エチルヘキシルイソシアネート(1.76mL,9.84mmol,2eq.)から合成される。
【0079】
この目的のために、無水ジクロロメタン中のジ(2-エチルヘキシル)アミン及び2-エチルヘキシルイソシアネートを含む溶液を周囲温度で5時間撹拌する。次いで、反応混合物を1M HCl溶液で2回、飽和NaHCO3溶液で2回洗浄する。有機相をMgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮し、残留物をジクロロメタン/酢酸エチル(99/1~90/10,v:v)勾配を用いたシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、1.94gのTrEHUを無色の濃厚な油状で得る(収率:99%)。当該カルバミドの特性を以下に示す。
【0080】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.26(s,1H);3.17(t,J=5.7Hz,2H);3.09(m,4H);1.62(m,2H);1.46(m,25H);0.88(m,18H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):158.2;51.6;43.6;39.8;38.4;31.2;30.7;28.9;24.4;24.0;23.1;14.1;11.0;10.8
IR(KBr,νmax/cm-1):3348;2957;2925;2859;1617;1534;1459;1378;1240;765;727
MS(ポジティブモード ESI):397(MH+);816(2MNa+
HRMS(ポジティブモード ESI):C25532Oの理論値:397.4158;実測値:397.4156
元素分析(%)(C25522O):理論値:C 75.69;H 13.21;N 7.06;実測値:C 75.49;H 13.45;N 6.91
【0081】
I.7-N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-N’-n-オクチル尿素又はDEHOU:
カルバミドDEHOUは、カルバミドTrEHUの合成に関する上記セクションI.6に記載のプロトコルと同じプロトコルに従って、無水ジクロロメタン(0.1mol/L)中で、ジ(2-エチルヘキシル)アミン(1.49mL,4.92mmol,1eq.)及びn-オクチルイソシアネート(1.75mL,9.84mmol,2eq.)から合成される。これにより、無色の油状の1.84gのカルバミドDEHOUが得られる(収率:94%)。当該カルバミドの特性を以下に示す。
【0082】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.25(t,J=4.9Hz,1H);3.20(q,J=6.1Hz,2H);3.07(m,4H);1.61(ヘプト,J=5.6Hz,2H);1.46(クイント,J=6.4Hz,2H);1.25(m,26H);0.86(m,15H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):158.3;51.5;41.0;38.5;31.9;30.8;30.5;29.5;29.4;29.0;27.2;24.1;23.2;22.8;14.2;10.9
IR(KBr,νmax/cm-1):3344;2957;2924;2857;1618;1533;1459;1408;1378;1241;765;725
MS(ポジティブモード ESI):397(MH+);816(2MNa+
HRMS(ポジティブモード ESI):C25532Oの理論値:397.4158;実測値:397.4154
元素分析(%)(C25522O):理論値:C 75.69;H 13.21;N 7.06;実測値:C 75.87;H 13.49;N 6.89
【0083】
I.8-N-シクロヘキシル-N’,N’-ジ-n-オクチル尿素又はCyDOU:
シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに使用されるジクロロメタン/酢酸エチルの勾配が96/4~90/10,v:vであることを除いて、カルバミドTrEHUの合成用の上記セクションI.6に記載のプロトコルと同じプロトコルに従って、上記式(I)(式中、R1=R2=n-オクチル,R3=シクロヘキシル及びR4=H)に適合するカルバミドCyDOUは、無水ジクロロメタン(0.1mol/L)中で、ジ-n-オクチルアミン(1.50mL,4.87mmol,1eq.)及びシクロヘキシルイソシアネート(1.27mL,9.74mmol,2eq.)から合成される。これにより、1.48gのカルバミドCyDOUが無色の油状で得られる(収率:83%)。この化合物の特性を以下に示す。
【0084】
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.11(s,1H);3.64(m,1H);3.13(t,J=7.6Hz,4H);1.94(m,2H);1.59(m,8H);1.28(m,24H);0.87(t,6H)
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):157.1;49.3;47.5;34.3;32.0;29.6;29.4;28.8;27.2;25.9;25.2;22.8;14.2
IR(KBr,νmax/cm-1):3330;2922;2853;1617;1528;1451;1407;1314;1251;1214;890;767;722
MS(ポジティブモード ESI):367(MH+);756(2MNa+
HRMS(ポジティブモード ESI):C23472Oの理論値:367.3688;実測値:367.3686
元素分析(%)(C23462O):理論値:C 75.35;H 12.65;N 7.64;実測値:C 75.33;H 12.80;N 7.47
【0085】
II:カルバミドの抽出剤特性:
II.1-テトラアルキル化カルバミド:
ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)抽出試験:
抽出試験は以下を使用して実施される:
-有機相として:TPH中にカルバミドTBU、THU、TOU、TPU、DBDHU、DHDPU、sym-DEDOU及びDMDNUの1つを約0.5mol/L又は約1.2mol/Lのいずれかで含有する溶液;並びに、
-水相として:10g/Lのウラン(VI)、約200kBq/mLのプルトニウム(IV)、及び4mol/L(硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液が示す傾向にある酸性度をシミュレートするため)又は0.5mol/L(本発明によるプルトニウムの逆抽出に使用される傾向にある水溶液が示す酸性度をシミュレートするため)のいずれかの濃度で硝酸を含む水溶液。
【0086】
これらの各試験は、25℃で30分間、有機相と水相を試験管内で攪拌しながら接触させることにより実施される。体積比O/Aは1である。
【0087】
遠心分離と相の分離後、誘導結合プラズマ原子発光分析(又はICP-AES)により水相のウラン濃度を測定する。一方、有機相のウラン濃度は、0.01mol/Lの濃度の硝酸溶液中に当該元素を逆抽出し、当該逆抽出の結果として生じる水相中のその濃度をICP-AESを用いて測定することにより決定する。プルトニウム濃度は、水相及び有機相でαスペクトロメトリーにより測定する。
【0088】
以下の表Iは、試験した各カルバミド及び当該カルバミドを試験した各濃度について、4mol/LのHNO3と0.5mol/LのHNO3の水相で得られたウラン(DUと表記)及びプルトニウム(DPuと表記)の分配係数、並びに、0.5mol/LのHNO3の水相で得られた分離係数U/Pu(FSU/Puと表記)を示す。
【0089】
比較として、同じ操作条件下で、しかし先行技術に従ってN,N-ジアルキルアミドを含む溶液を有機相として用いて実施された抽出試験の結果もまた当該表に示す。すなわち:
-TPH中に、特許文献1で提案されたDEHDMBA(N,N-ジ(2-エチヘキシル)-3,3-ジメチブチルアミド)を0.5mol/Lで含む溶液;及び、
-TPH中に、特許文献2で提案されたMOEHA(N-メチル-N-オクチル-2-エチルヘキサンアミド)を0.5mol/L又は1.2mol/Lのいずれかで含む溶液。
【0090】
【表1】
【0091】
この表は、強い酸性度([HNO3]=4mol/L)であっても、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/L)であっても、試験した8つのテトラアルキル化カルバミドについて得られたウラン(VI)の分配係数の全てが、有機相中の同じ濃度のN,N-ジアルキルアミドDEHDMBA及びMOEHAについて得られたものよりも大きいことを示す。これは、強酸性の水相からウラン(VI)を抽出するテトラアルキル化カルバミドの強力な能力を裏付ける。
【0092】
特に、強い酸性度([HNO3]=4mol/L)であっても、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/L)であっても、有機相中の1.2mol/L程度の濃度のカルバミドTPU,DBDHU,DHDPU,sym-DEDOU及びDMDNUについて得られたウラン(VI)の分配係数は、有機相中の同じ濃度のMOEHAについて得られたものよりも2倍以上大きい。
【0093】
またこの表は、強酸性([HNO3]=4mol/L)で、有機相中の濃度が0.5mol/Lのとき、プルトニウム(IV)の分配係数についても、カルバミドTBU及びTOUでは、有機相中の同じ濃度のDEHDMBAとMOEHAについて得られたものよりも大きいことを示す。
【0094】
一方、有機相中の濃度が1.2mol/Lのとき、プルトニウム(IV)の分配係数について、カルバミドTBU,THU,TOU,TPU,DBDHU,DHDPU及びsym-DEDOUでは、有機相中の同じ濃度のMOEHAについて得られたものより小さい。しかし、それでもなお、カルバミドTBU、THU、TPU、DBDHU及びDHDPUのものは2より大きく、カルバミドTOUのものは2に近く(DPu=1.9)、そしてsym-DEDOUのものは1.3より大きいので、これらの分配係数は非常に満足できるものである。
【0095】
更にこの表は、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/L)で、カルバミドTBU,THU,TPU,DBDHU,DHDPU,sym-DEDOU及びDMDNUについて得られたU(VI)/Pu(IV)分離係数は、有機相中の同じ濃度のN,N-ジアルキルアミドDEHDMBA及びMOEHAについて得られたものよりも大きいことを示す。
【0096】
特に、有機相中で1.2mol/Lの量で使用する場合、TBUは36のU(VI)/Pu(IV)分離係数を達成することができる。すなわち有機相中の同じ濃度のMOEHAについて得られたものの約2倍大きい。カルバミドTPU及びDBDHUは、それぞれ73及び74のU(VI)/Pu(IV)分離係数を達成することができる。すなわちMOEHAについて得られたものの約4倍大きい。カルバミドDHDPUは、94のU(VI)/Pu(IV)分離係数を達成することができる。すなわちMOEHAで得られたものの約5倍大きい。sym-DEDOUについて得られたU(VI)/Pu(IV)分離係数に関しては、MOEHAで得られたものの8.5倍大きい(170対20)。
【0097】
したがって、この表は、テトラアルキル化カルバミドが、硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液を処理する方法において、抽出剤として有利に使用され得ることを裏付ける。当該方法は、強酸性である当該水溶液からウラン(VI)とプルトニウム(IV)を共抽出し、続いて中程度の酸性度の水溶液を用いて、有機相からプルトニウム(IV)を逆抽出することにより、この共抽出により生じた有機相に存在するウラン(VI)からプルトニウム(IV)を部分的に又は完全に分離することを含む。
【0098】
これらのテトラアルキル化カルバミドのうち、カルバミドDMDNUはこの方法の開発に特に興味深いと思われる。これは、一方で、強酸性であり、ウランを抽出する能力(DU及びDPu>30)が、MOEHAの能力(DU=7.5及びDPu=4.3)と比較して著しく高いためである。そして他方では、中程度の酸性度で、ウラン(VI)/プルトニウム(IV)分離係数(FSU/Pu=30)が得られるが、これもまたMOEHAについて得たものよりも顕著に高い。
【0099】
強い酸性度では、MOEHAよりもプルトニウムを抽出する能力が低いことが示されるが、カルバミドsym-DEDOUは、中程度の酸性度で特に高いウラン(VI)/プルトニウム(IV)分離係数(FSU/Pu=170)を達成することができるので、優れた候補であると思われる。
【0100】
ウラン(VI)のチャージ能力(charge capacity)試験:
ウラン(VI)のチャージ能力試験は、TPH中にカルバミドTPU,DBDHU,DHDPU,sym-DEDOU及びDMDNUの1つを1.2mol/Lで含む有機相を試験管の中で攪拌しながら、200g/Lのウラン(VI)と3.4mol/Lの硝酸を含む水相のアリコートと4回接触させることにより行った。
【0101】
各接触は、25°Cで30分間、O/A比2で行う。
【0102】
遠心分離と相の分離後、0.01mol/Lの濃度の硝酸溶液でこの元素を逆抽出した後、当該逆抽出で得られる水相中のその濃度をICP-AESで測定することにより、有機相のウラン濃度を測定する。
【0103】
以下の表IIは、試験した各カルバミドについて、4回の接触のそれぞれの後に有機相中に得られたウラン(VI)の濃度をg/Lで示す。
【0104】
比較として、同じ操作条件下で、ただし有機相としてTPH中に1.2mol/LのMOEHAを含む溶液を使用して行ったチャージ能力試験の結果もまたこの表に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
2回目の接触後、MOEHAを含む有機相は第3の相を形成する。300μLの有機相(硝酸との接触により事前に平衡化されている)を加えると、この第3の相を逆抽出できる。その結果、124g/Lでウラン(VI)による有機相の飽和が達成される。すなわち(1/2のウラン/抽出剤の化学量論を考慮すると)有機相の理論的なチャージ能力の約87%である。
【0107】
一方、同じ条件下で、カルバミドは分離しないで、カルバミドを含む有機相に130g/L~143g/Lのウラン(VI)をチャージすることができる。これは、(1/2のウラン/抽出剤の化学量論を考慮すると)有機相の理論的なチャージ能力の88%を超える。
【0108】
これらの結果は、カルバミドが高いウラン(VI)チャージ能力を有し、核燃料を処理する方法の開発に適合し、MOEHAで観察されやすい有機相の分離問題を防ぐことさえ可能にすることを示す。
【0109】
II.2-トリアルキル化カルバミド:
上記のセクションII.1で説明したものと同じ抽出試験であるが、有機相として、TPH中にカルバミドTrOU、TrEHU及びDEHOUの1つを0.4mol/L~0.5mol/Lで含む溶液を使用する試験を行う。
【0110】
これらの試験の結果を以下の表IIIに示す。
【0111】
比較として、この表には、TPH中の0.5mol/LのMOEHAについて上記の表Iで先に報告した結果も示す。
【0112】
【表3】
【0113】
この表では、強い酸性([HNO3]=4mol/L)において、試験した3つのトリアルキル化カルバミドは、ウラン(VI)とプルトニウム(IV)の分配係数が全てこのN,N-ジアルキルアミドについて得られるものよりも大きい結果となったため、N,N-ジアルキルアミドMOEHAよりも、より十分にウラン(VI)とプルトニウム(IV)を抽出することが示される。
【0114】
また、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/L)においては、試験した3つのトリアルキル化カルバミドは、これらのカルバミドについて得られたプルトニウム(IV)の分配離係数が0.04未満であるため、非常に効率的に(D>0.5)そしてプルトニウム(IV)に対して選択的に、ウラン(VI)を有機相中に保持できることも示されている。
【0115】
カルバミドTrEHUは、このカルバミドがU(VI)/Pu(IV)分離係数121を達成することができるため(すなわち、同じ濃度のN,N-ジアルキルアミドMOEHAが達成するものよりも約10倍大きいため)、特に選択的である。
【0116】
改めて、この表は、トリアルキル化カルバミドが、硝酸中の使用済み核燃料の溶解に由来する水溶液の処理方法において、ウラン(VI)とプルトニウム(IV)の共抽出を含む抽出剤として有利に使用できることを裏付ける。当該方法は、強酸性である当該水溶液からウラン(VI)とプルトニウム(IV)を共抽出し、続いて中程度の酸性度の水溶液を用いて、有機相からプルトニウム(IV)を逆抽出することにより、この共抽出により生じた有機相に存在するウラン(VI)からプルトニウム(IV)を部分的に又は完全に分離することを含む。
【0117】
III:本発明の使用の好ましい実施形態の原理図:
本発明の使用の好ましい実施形態の原理図を表す図1を参照する。
【0118】
この図が示す通り、この使用には4つの工程が含まれる。
【0119】
これらの工程の第1工程は、図1に「U+Pu共抽出」と表記されており、図1に「A1」と表記された水性硝酸使用済み核燃料溶解液からウラン(VI)とプルトニウム(IV)を一緒に抽出することを意図する。
【0120】
この溶液は、典型的には、3mol/L~6mol/LのHNO、ウラン、プルトニウム、マイナーアクチニド(特に、アメリシウム及びキュリウム)、核分裂生成物(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Mo,Zr,Ru,Tc,Rh,Pd,Y,Cs,Ba等)並びにいくらかの腐食生成物、例えば鉄を含む。
【0121】
「U+Pu共抽出」工程は、水溶液A1を、抽出器1内で、有機相(図1で「S1」と表記される)に対して向流で循環させることにより行われる。この有機相は、0.5mol/L~2mol/L、好ましくは1.0mol/L~1.4mol/Lの一般式(I)のカルバミドを有機希釈液中に溶解して含む。
【0122】
この有機希釈液は、有利には非環式炭化水素又は非環式炭化水素の混合物、例えばn-ドデカン、水素化テトラプロピレン(TPH)、灯油、Isane(商標)IP-185T又はIsane(商標)IP-175Tであり、TPHが好ましい。
【0123】
図1に「PF洗浄」と表記された第2工程は、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)と一緒に水溶液A1から抽出された少量の核分裂生成物を「U+Pu共抽出」から生じる有機相から逆抽出(除去)することを意図する。
【0124】
これを行うために、「PF洗浄」工程は、「U+Pu共抽出」から生じる有機相の1回又は複数回の洗浄操作を含み、各洗浄操作は、抽出器2内で、硝酸を含む水溶液(図1で「A3」と表記される)に対して向流で行われる。硝酸を含む水溶液のHNO3濃度は、1mol/L~6mol/Lの範囲とすることができるが、好ましくは4mol/L~6mol/Lである。
【0125】
「PF洗浄」工程が強い酸性水溶液、すなわち典型的には3mol/L以上のHNO3水溶液で実施される場合、この工程は、更に有機相の脱酸を含む。この脱酸は、この有機相を、弱酸性水溶液(図1で「A4」と表記される)、すなわち0.1mol/L~1mol/LのHNO3、例えば0.5mol/LのHNO3を含む水溶液に対して向流で循環させることにより行われる。これにより、過剰量の酸が、図1で「Pu逆抽出」と表記される第3工程用の抽出器に運ばれることを防ぎ、当該第3工程の実行は阻害されない。
【0126】
「Pu逆抽出」工程は、「PF洗浄」から生じる有機相から、酸化状態+IVで、プルトニウムを逆抽出することを意図する。
【0127】
これは、抽出器3内で、この有機相を0.1mol/L~0.5mol/LのHNO3を含む水溶液(図1で「A2」と表記される)に対して向流で循環させ、好ましくは、1よりも高いO/A流量比、好ましくは3以上、更に好ましくは5以上のO/A流量比を使用することにより行われる。これにより、プルトニウム(IV)が濃縮されて逆抽出される。
【0128】
「Pu逆抽出」工程で行われるプルトニウム(IV)の逆抽出は、「PF洗浄」から生じる有機相にも含まれるウラン(VI)の一部の逆抽出を伴う。
【0129】
したがって、図1に「U洗浄」と表記された第4工程は、「Pu逆抽出」から生じる水相から以下の抽出を行うことを意図する:
-この工程に続いてウラン(VI)を含まないプルトニウム(IV)を含む水溶液を得ることが望まれる場合、当該水相に存在する全てのウラン(VI);又は、
-この工程に続いてウラン(VI)とプルトニウム(IV)を予め選択した比率で含む水溶液を得るために適した量のウラン(VI)
【0130】
どちらの場合も、「U洗浄」は、「Pu逆抽出」から生じる水相を、抽出器4内で、有機相(図1で「S2」と表記される)に対して向流で循環させることにより行われる。その有機相の定性的及び定量的組成は、好ましくは、有機相S1のものと同一である。抽出されるウラン(VI)の量は、一方ではO/A流量比を調整することで設定され、他方では水相の酸性度を調整することで設定される。実際、ウラン(VI)は、有機相/水相の流量比と水相の酸性度が高い場合に、より良く抽出される。したがって、この水相に与えることが求められる酸性度に応じて、より高い又はより低い濃度のHNO3を、抽出器4内を循環する水相に添加することが想定できる。
【0131】
これらの4工程に従って、以下が得られる:
-抽出器1からの水相に相当し、核分裂生成物並びにアメリシウム及びキュリウムを含むラフィネート;
-除染されたプルトニウム(IV)又は除染されたプルトニウム(IV)とウラン(VI)の混合物を含む抽出器4から生じる水相;及び、
-プルトニウム(IV)を含まずウラン(VI)を含む抽出器3から生じる有機相。
【0132】
この有機相は、直接又は更に処理した後、図1に示されていない抽出器に送ることができる。この抽出器では、ウラン(VI)は、例えば0.01mol/LのHNO3を含む水溶液等の、最大0.05mol/LのHNOを含む水溶液を用いて、周囲温度(すなわち20~25℃)又は高温(すなわち通常40~50℃の温度)で、好ましくは、1より大きい流量比O/Aを用いて、この有機相から逆抽出される。これにより、ウラン(VI)が濃縮されて逆抽出される。
【0133】
引用文献:
[1]国際公開第2017/017207号[特許文献1]
[2]国際公開第2017/017193号[特許文献2]
[3]E.K.Dukes and T.H.Sidall,Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry 1966,28(10),2307-2312[非特許文献1]
[4]G.M.Chumakova et al.,Radiokhimiya 1980,22(2),213-217[非特許文献2]
[5]B.G. Vats et al.,Dalton Transactions 2016,45(25),10319-10325[非特許文献3]
図1