(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/48 20060101AFI20230208BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230208BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230208BHJP
B26D 1/18 20060101ALI20230208BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B23Q1/48 C
B23Q1/01 T
H01L21/78 F
H05K3/00 X
H05K3/00 L
B26D1/18
B26D7/02 Z
(21)【出願番号】P 2020020562
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】深井 元樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 聡子
(72)【発明者】
【氏名】白井 克昌
(72)【発明者】
【氏名】東 秀和
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136856(JP,A)
【文献】特開2009-297851(JP,A)
【文献】特許第6227184(JP,B1)
【文献】特開2017-047504(JP,A)
【文献】特開2018-078253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76;
H01L 21/78;
H05K 3/00;
B26D 1/00-1/24,7/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を保持する加工テーブルと、
加工液を用いつつ回転工具により前記加工対象物を加工する加工機構と、
前記加工機構
を水平面における
X方向に直線移動させるX方向移動部、前記加工機構を水平面におけるY方向に直線移動させるY方向移動部、及び前記加工機構をZ方向に直線移動させるZ方向移動を有する移動機構と
、
前記加工テーブルを水平面上において回転させる回転機構とを備え、
少なくともXY方向に固定された前記加工テーブルに対して、前記移動機構により移動された前記加工機構が前記加工対象物を加工
し、
前記Y方向移動部は、前記加工テーブルを挟んでY方向に沿って設けられた一対のY方向ガイドレールと、当該一対のY方向ガイドレールに沿って移動するとともに、前記X方向移動部を介して前記加工機構を支持する支持体とを有しており、
前記加工テーブルは、水平面上においてY方向に沿って2つ以上設けられており、
前記回転機構は、2つ以上の前記加工テーブルのそれぞれに対応して設けられており、
前記回転工具は、X方向において互いに対向するようそれぞれに回転刃が取り付けられる2つのスピンドルから構成され、
2つの前記スピンドルは、前記移動機構によりX方向及びZ方向のそれぞれに互いに独立して直線移動可能である、加工装置。
【請求項2】
前記加工機構は、回転刃により前記加工対象物を切断して個片化するものである、請求項
1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記加工対象物は、樹脂封止された封止済基板であり、
前記加工機構は、回転刃により前記封止済基板を切断することによって複数の製品に個片化するものである、請求項
1又は2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂封止された封止済基板などの電子部品を切断して個片化する際に切断装置が用いられるが、例えば特許文献1に示すような切削装置が知られている。この切削装置は、加工対象物を保持するチャックテーブルと、当該チャックテーブルを直線的に移動させる例えばボールねじなどの移動機構とを有している。また、切削装置は、切削により生じる加工屑又は切削の際に供給される加工液から、前記移動機構を保護するための保護プレートを有している。
【0003】
この保護プレートは、チャックテーブルの移動に伴って伸縮可能に構成されている。具体的に保護プレートは、前記移動機構の上方及び側方を取り囲むように設けられた蛇腹カバーと、当該蛇腹カバーの上面に設けられた複数のプレートとを有している。この各プレートは、複数順次重ね合わされて構成されており、チャックテーブルの移動に伴って互いにスライドする。
【0004】
この切削装置によって加工対象物を個片化すると、製品部と端材などの切削屑とが発生する。製品部は、チャックテーブルに設けられたチャック機構によって保持されている。
【0005】
しかしながら、切削屑は前記チャック機構により保持されていないので、製品部から切削された後にチャックテーブルから落下する。この落下した切削屑は、保護プレートにおける各プレートの上面に溜まってしまう。この状態でチャックテーブルが移動すると、当該チャックテーブルの移動に伴って保護プレートが縮む最中に、切削屑が互いに重ね合わされた各プレートの間に侵入する可能性がある。プレートの間に加工屑が侵入してしまうと、保護プレートの伸縮を妨げるだけでなく、蛇腹カバーに接触して蛇腹カバーを破損させてしまう恐れがある。蛇腹カバーが破損してしまうと加工液が移動機構に漏洩して、移動機構に錆を生じさせてしまい、動作不良や故障を引き起こしてしまう。その結果、それらの保守作業や交換作業を頻繁に行う必要が生じてしまい、切削装置の稼働率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、加工テーブルを移動させる移動機構を不要にして、蛇腹カバーなどの保護カバーを不要にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る加工装置は、加工対象物を保持する加工テーブルと、加工液を用いつつ回転工具により前記加工対象物を加工する加工機構と、前記加工機構を少なくとも水平面におけるXY方向それぞれに直線移動させる移動機構とを備え、少なくともXY方向に固定された前記加工テーブルに対して、前記移動機構により移動された前記加工機構が前記加工対象物を加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、加工テーブルを移動させる移動機構を不要にして、蛇腹カバーなどの保護カバーを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の基板切断モジュールの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】同実施形態の基板切断モジュールの構成を模式的に示すZ方向から見た図(平面図)である。
【
図4】同実施形態の基板切断モジュールの構成を模式的に示すX方向から見た図(側面図)である。
【
図5】同実施形態の基板切断モジュールの構成を模式的に示すY方向から見た図(正面図)である。
【
図6】従来の構成と比較した本実施形態の効果を示す模式図である。
【
図7】従来の構成と比較した本実施形態の効果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の加工装置は、前述のとおり、加工対象物を保持する加工テーブルと、加工液を用いつつ回転工具により前記加工対象物を加工する加工機構と、前記加工機構を少なくとも水平面におけるXY方向それぞれに直線移動させる移動機構とを備え、少なくともXY方向に固定された前記加工テーブルに対して、前記移動機構により移動された前記加工機構が前記加工対象物を加工することを特徴とする。
この加工装置であれば、少なくともXY方向に固定された加工テーブルに対して、移動機構により移動された加工機構が加工対象物を加工するので、加工テーブルをX方向又はY方向に移動させる移動機構を不要にし、蛇腹カバーなどの保護カバーを不要にすることができる。その結果、蛇腹カバーなどの保護カバーの破損に伴う装置の稼働率の低下を抑制して、装置の生産性を向上させることができる。
【0013】
加工機構を少なくともXY方向に移動させる移動機構の具体的な実施の態様としては、前記移動機構は、前記加工機構をX方向に直線移動させるX方向移動部と、前記加工機構をY方向に直線移動させるY方向移動部とを備え、前記Y方向移動部は、前記加工テーブルを挟んでY方向に沿って設けられた一対のY方向ガイドレールと、当該一対のY方向ガイドレールに沿って移動するとともに、前記X方向移動部を介して前記加工機構を支持する支持体とを有していることが考えられる。
このようにY方向に設けられる一対のY方向ガイドレールが加工テーブルを挟んで設けられるので、一対のY方向ガイドレールのピッチを大きくすることができる。その結果、Y方向ガイドレール同士のZ方向の位置ずれが加工に与える影響を小さくすることができる。つまり、回転工具(例えば回転刃)と加工テーブルの直交度のズレを小さくすることができ、加工精度を向上させることができる。また、Y方向ガイドレールに従来よりも低スペックのものを用いることができる。
【0014】
1つの加工装置において加工対象物の処理能力を上げるためには、前記加工テーブルを2つ以上備えていることが考えられる。
この構成において、前記2つ以上の加工テーブルは、水平面上においてY方向に沿って設けられていることが望ましい。
この構成であれば、2つ以上の加工テーブルがY方向に沿って設けられているので、2つ以上の加工テーブルに対する移動機構のY方向の平行度を一挙に調整することができる。また、一方の加工テーブルで加工対象物を処理している際に、他方の加工テーブルにおいて搬送などの別の処理を行うことができる。
【0015】
前記加工機構が、回転刃により前記加工対象物を切断して個片化するものである場合、回転刃による切断方向と移動機構によるY方向とが一致する(つまり、回転刃の回転軸方向と移動機構によるY方向とが直交する)ことが特に重要となる。本発明では、Y方向移動部の支持体に対して回転刃を位置決めするだけでよく、従来のように回転刃とは別に移動する加工テーブルに対して、回転刃の回転軸方向を位置決めする場合に比べて、それらの位置決めが容易となる。
【0016】
本発明の加工装置の具体的な実施の態様としては、前記加工対象物は、樹脂封止された封止済基板であり、前記加工機構は、回転刃により前記封止済基板を切断することによって複数の製品に個片化するものであることが望ましい。
【0017】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る加工装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0018】
<加工装置の全体構成>
本実施形態の加工装置100は、
図1に示すように、加工対象物である封止済基板Wを切断することによって複数の製品Pに個片化する切断装置である。この切断装置100は、基板供給モジュールAと基板切断モジュールBと検査モジュールCとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA~C)は、それぞれ他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0019】
基板供給モジュールAは、基板切断モジュールBに封止済基板Wを供給するものである。具体的に基板供給モジュールAは、封止済基板Wを基板切断モジュールBに供給するための基板供給機構1を有している。そして、封止済基板Wが、基板供給機構1から搬出され、移送機構(図示なし)によって基板切断モジュールBに移送される。
【0020】
基板切断モジュールBは、回転刃及びスピンドルからなる回転工具30を有する切断機構(加工機構)3を用いて、封止済基板Wを切断するものであり、例えばツインカットテーブル方式のツインスピンドル構成のものである。具体的に基板切断モジュールBは、2つの切断用テーブル(加工テーブル)2A、2Bと、回転刃31A、31Bが取り付けられる2つのスピンドル32A、32Bとを有している。切断用テーブル2Aには切断用治具4Aが取り付けら、切断用テーブル2Bには切断用治具4Bが取り付けられる。基板切断モジュールBの具体的な構成については後述する。
【0021】
検査モジュールCには検査用テーブル10が設けられる。検査用テーブル10には、封止済基板Wを切断して個片化された複数の製品Pからなる集合体が載置される。複数の製品Pは、検査用のカメラ(図示なし)によって検査され、良品と不良品とに選別される。良品はトレイ11に収容される。
【0022】
なお、本実施形態においては、切断装置100の動作、封止済基板Wの搬送、封止済基板Wの切断、製品Pの検査など、すべての動作や制御を行う制御部CTLを基板供給モジュールA内に設けている。これに限らず、制御部CTLを他のモジュール内に設けてもよい。
【0023】
<基板切断モジュールBの具体的な構成>
次に、本実施形態の切断装置100において、基板切断モジュールBの具体的な構成について以下に説明する。なお、便宜上、切断用テーブル2A、2Bの上面である基板載置面21(保持面)に沿った平面(水平面)内で互いに直交する方向をそれぞれX方向及びY方向、X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とする。具体的には、
図3の左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とする。また、
図2において、手前側のY方向ガイドレール511の一部を省略している。
【0024】
基板切断モジュールBは、
図2~
図5に示すように、封止済基板Wを保持する2つの切断用テーブル2A、2Bと、回転刃31A、31B及び2つのスピンドル32A、32Bからなる2つの回転工具30を有する切断機構3と、当該切断機構3の2つのスピンドル32A、32BをXYZ方向それぞれに直線移動させる移動機構5とを備えている。
【0025】
2つの切断用テーブル2A、2Bは、X方向、Y方向及びZ方向に固定して設けられている。なお、切断用テーブル2Aは、切断用テーブル2Aの下に設けられた回転機構6Aによってθ方向に回転可能である。また、切断用テーブル2Bは、切断用テーブル2Bの下に設けられた回転機構6Bによってθ方向に回転可能である。
【0026】
これら2つの切断用テーブル2A、2Bは、水平面上においてY方向に沿って設けられている。具体的には、2つの切断用テーブル2A、2Bは、それらの上面である基板載置面21(保持面)が同一の水平面上に位置する(Z方向において同じ高さ位置する)ように配置されるとともに(
図4参照)、それらの基板載置面21の中心(具体的には回転機構6A、6Bによる回転中心)がY方向に延びる同一直線上に位置するように配置されている(
図3参照)。
【0027】
また、2つの切断用テーブル2A、2Bは、封止済基板Wを吸着保持するものであり、
図2に示すように、2つの切断用テーブル2A、2Bに対応して、吸着保持するための2つの真空ポンプ7A、7Bが配置されている。各真空ポンプ7A、7Bは、例えば水封式真空ポンプであり、対応する切断用テーブル2A、2BのX方向に沿った斜め下方に設けられており、2つの真空ポンプ7A、7Bは、Y方向に沿って並んで設けられている。
【0028】
ここで、切断用テーブル2A、2BがXYZ方向に固定されているため、真空ポンプ7A、7Bから切断用テーブル2A、2Bに接続される配管71A、71Bを短くすることができ、配管71A、71Bの圧力損失を低減して、吸着力の低下を防止することができる。その結果、例えば1mm角以下の極小パッケージであっても確実に切断用テーブル2A、2Bに吸着することができる。また、配管71A、71Bの圧力損失による吸着力の低下を防止できるので、真空ポンプ7A、7Bの容量を小さくすることができ、コストダウンにもつながる。
【0029】
切断機構3の2つのスピンドル32A、32Bは、それらの回転軸がX方向に沿うように設けられており、それらに取り付けられる回転刃31A、31Bが互いに対向するように配置される(
図3、
図5参照)。スピンドル32Aの回転刃31A及びスピンドル32Bの回転刃31Bは、Y方向とZ方向とを含む面内において回転することによって各切断用テーブル2A、2Bに保持された封止済基板Wを切断する。なお、基板切断モジュールBには、
図4に示すように、回転刃31A、31Bによって発生する摩擦熱を抑えるために切削水(加工液)を噴射する噴射ノズル81を有する液体供給機構8が設けられている。この噴射ノズル81は、例えば、後述するZ方向移動部53に支持されている。
【0030】
移動機構5は、
図2~
図5に示すように、2つのスピンドル32A、32Bそれぞれを、X方向、Y方向及びZ方向それぞれに独立して直線移動させるものである。
【0031】
具体的に移動機構5は、スピンドル32A、32BをY方向に直線移動させるY方向移動部51と、スピンドル32A、32BをX方向に直線移動させるX方向移動部52と、スピンドル32A、32BをZ方向に直線移動させるZ方向移動部53とを備えている。
【0032】
Y方向移動部51は、2つの切断用テーブル2A、2Bで共通のものであり、2つの切断用テーブル2A、2Bを挟んでY方向に沿って設けられた一対のY方向ガイドレール511と、当該一対のY方向ガイドレール511に沿って移動するとともに、X方向移動部52及びZ方向移動部53を介してスピンドル32A、32Bを支持する支持体512とを有している。一対のY方向ガイドレール511は、Y方向に沿って設けられた2つの切断用テーブル2A、2Bの側方に設けられている。また、支持体512は、例えば門型のものであり、X方向に延びる形状を有している。
【0033】
そして、支持体512は、例えば、Y方向に延びるボールねじ機構513により、一対のY方向ガイドレール511上を直線的に往復移動する。このボールねじ機構513はサーボモータ等の駆動源(不図示)により駆動される。その他、支持体512は、リニアモータ等の他の直動機構により往復移動するように構成しても良い。
【0034】
X方向移動部52は、支持体512においてX方向に沿って設けられたX方向ガイドレール521と、当該X方向ガイドレール521に沿って移動するX方向スライダ522とを有している。X方向スライダ522は、例えばリニアモータ(不図示)により駆動されるものであり、X方向ガイドレール521上を直線的に往復移動する。本実施形態では、2つのスピンドル32A、32Bに対応して2つのX方向スライダ522が設けられている。これにより、2つのスピンドル32A、32Bは互いに独立してX方向に移動可能とされている。その他、X方向スライダ522は、ボールねじ機構を用いた他の直動機構により往復移動するように構成しても良い。
【0035】
Z方向移動部53は、各X方向スライダ522においてZ方向に沿って設けられたZ方向ガイドレール531と、当該Z方向ガイドレール531に沿って移動するとともにスピンドル32A、32Bを支持するZ方向スライダ532とを有している。つまり、Z方向移動部53は、各スピンドル32A、32Bに対応して設けられている。Z方向スライダ532は、例えば、偏心カム機構(不図示)により駆動されるものであり、Z方向ガイドレール531上を直線的に往復移動する。その他、Z方向スライダ532は、ボールねじ機構等の他の直動機構により往復移動するように構成しても良い。
【0036】
そして、本実施形態の基板切断モジュールBは、
図2~
図5に示すように、封止済基板Wの切断により生じた端材などの加工屑Sを収容する加工屑収容部9をさらに備えている。
【0037】
この加工屑収容部9は、切断用テーブル2A、2Bの下方に設けられており、平面視において切断用テーブル2A、2Bを取り囲む上部開口91Xを有するガイド部91と、当該ガイド部91によりガイドされた加工屑Sを回収する回収容器92とを有している。加工屑収容部9を切断用テーブル2A、2Bの下方に設けることによって、加工屑Sの回収率を向上することができる。
【0038】
ガイド部91は、切断用テーブル2A、2Bから飛散又は落下した加工屑Sを回収容器92に導くものである。本実施形態は、ガイド部91の上部開口91Xが切断用テーブル2A、2Bを取り囲むように構成されているので(
図3参照)、加工屑Sを取りこぼしにくくなり、加工屑Sの回収率を一層向上することができる。また、ガイド部91は、切断用テーブル2A、2Bの下に設けられた回転機構6A、6Bを取り囲むように設けられており(
図4参照)、加工屑S及び切削水から回転機構6A、6Bを保護するように構成されている。
【0039】
本実施形態では、加工屑収容部9は2つの切断用テーブル2A、2Bに共通のものとされているが、切断用テーブル2A、2Bそれぞれに対応して設けられても良い。また、
図4及び
図5に示すように、ガイド部91の上部開口91Xを構成する側周壁911を、切断用テーブル2A、2Bの基板載置面21よりも高い位置(例えば5mm程度)にすることで、加工屑Sがガイド部91内に入りやすくしている。なお、ガイド部91の上部開口91Xを構成する側周壁911の高さ位置は、スピンドル32A、32B等の切断機構3の移動を妨げない程度の高さ位置とする。
【0040】
回収容器92は、ガイド部91を自重により通過した加工屑Sを回収するものであり、本実施形態では、
図4等に示すように、2つの切断用テーブル2A、2Bそれぞれに対応して設けられている。そして、2つの回収容器92は、それぞれ独立して、切断装置100から取り外すことができるように構成されている。この構成により、加工屑Sの廃棄等のメンテナンス性を向上することができる。なお、回収容器92は、封止済基板Wのサイズや、加工屑Sのサイズ及び量、作業性などを考慮して、全ての切断用テーブルの下全体に1つ設けて良いし、3つ以上で設けても良い。
【0041】
また、加工屑収容部9は、
図4等に示すように、切断水と加工屑とを分離する分離部93を有している。この分離部93の構成としては、例えば、回収容器92の底面に切断水を通過させる多孔板等のフィルタを設けることが考えられる。この分離部93により、回収容器92に切断水を溜めることなく、加工屑Sを回収することができる。また、フィルタを通過した切断水は、液体供給機構8に戻されて、切断水として再利用することができる。
【0042】
次に、基板切断モジュールBの動作の一例を説明する。
【0043】
切断用テーブル2Aでの切断は、XYZ方向に固定された切断用テーブル2Aに対して、2つのスピンドル32A、32Bを移動機構5によりXYZ方向に移動させることによって行われる。例えば、X方向移動部52及びZ方向移動部53がスピンドル32AをX方向及びZ方向の所望位置に固定した後に、Y方向移動部51がスピンドル32A、32BをY方向に移動させることにより、封止済基板WがY方向に沿って切断される。この動作をX方向に所定距離ずらしながら順次行うことによって、封止済基板WはX方向において複数片に切断される。そして、切断用テーブル2Aを回転機構6Aによってθ方向に例えば90度回転させ、その後、上述したようにスピンドル32A、32BをX方向に所定距離ずらしながら順次Y方向に移動させることにより、封止済基板Wの前記複数片がY方向に沿って切断される。これらの動作によって、切断用テーブル2Aに保持された封止済基板Wは、格子状に切断されて個片化される。
【0044】
また、切断用テーブル2Bでの切断は、切断用テーブル2Aでの切断と同様に、XYZ方向に固定された切断用テーブル2Bに対して、2つのスピンドル32A、32Bを移動機構5によりXYZ方向に移動させることに行われる。例えば、X方向移動部52及びZ方向移動部53がスピンドル32A、32BをX方向及びZ方向の所望位置に固定した後に、Y方向移動部51がスピンドル32A、32BをY方向に移動させることにより、切断用テーブル2Bの封止済基板WがY方向に沿って切断される。この動作をX方向に所定距離ずらしながら順次行うことによって、封止済基板WはX方向に複数片に切断される。そして、切断用テーブル2Bを回転機構6Bによってθ方向に例えば90度回転させ、その後、上述したようにスピンドル32A、32BをX方向に所定距離ずらしながら順次Y方向に移動させることにより、封止済基板WがY方向に沿って切断される。これらの動作によって、切断用テーブル2Bに保持された封止済基板Wは、格子状に切断されて個片化される。
【0045】
上記の動作では、切断用テーブル2Aでの切断処理と、切断用テーブル2Bでの切断処置は、別々に交互に行っているが、Y方向移動部51がスピンドル32A、32Bを、切断用テーブル2A及び切断用テーブル2Bに亘って移動させることにより、切断用テーブル2Aでの切断処理と切断用テーブル2Bでの切断処置とを同時に行うようにしても良い。
【0046】
<本実施形態の効果>
本実施形態の切断装置100によれば、XYZ方向に固定された切断用テーブル2A、2Bに対して、移動機構5により移動された切断機構3(回転工具30)が封止済基板Wを切断するので、切断用テーブル2A、2Bを移動させる移動機構を不要にして、蛇腹カバーなどの保護カバーを不要にすることができる。その結果、保護カバーの故障に伴う切断装置100の稼働率の低下を抑制して、切断装置100の生産性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、Y方向に設けられる一対のY方向ガイドレール511が切断用テーブル2A、2Bを挟んで設けられるので、一対のY方向ガイドレール511のピッチを大きくすることができる。その結果、Y方向ガイドレール511同士のZ方向の位置ずれが加工に与える影響を小さくすることができる。つまり、
図6に示すように、一対のガイドレール511のピッチL’が従来の構成のピッチLより大きくなるため、回転刃と加工テーブルとの直交度θのズレを小さくすることができる。さらに、一対のガイドレール511のピッチが大きくなることでY方向移動部51の直進性が向上し、その結果、回転刃31A、31Bの刃先のブレが小さくなり、切断の際の切削抵抗などが小さくなって、加工精度を向上させることができる。また、Y方向ガイドレール511を従来よりも低スペックのものを用いることができる。
【0048】
本実施形態では、移動機構5のうち一番下側に位置するY方向移動部51(具体的にはY方向ガイドレール511及びボールねじ機構513)が、切断用テーブル2A、2Bの側方に位置しているので、
図7に示すように、Y方向移動部51が水回りから離れる構成であり、Y方向移動部51における水が原因の故障のリスクを小さくすることができ、装置寿命を長くすることができる。
【0049】
本実施形態では、2つ以上の切断用テーブル2A、2Bが切断時にY方向に移動しないため、2つ以上の切断用テーブル2A、2Bに対する移動機構5(Y方向移動部51)のY方向の平行度を一挙に調整することができる。すなわち、切断時に切断用テーブルが移動する従来の装置に切断用テーブルを2つ設ける場合、2つの切断用テーブルのY方向の平行度を調整し、さらにこの調整したY方向の平行度と回転刃のY方向の平行度を調整する必要があった(具体的には、2回の調整が必要であった)が、本実施形態では、2つの切断用テーブル2A、2Bは切断時にY方向に移動しないため、回転刃31A、31BのY方向の平行度を調整するだけでよい(具体的には、1回の調整で済む)。
【0050】
また、2つ以上の切断用テーブル2A、2BがY方向に沿って設けられるとともに、スピンドル32A、32Bを支持する支持体512をY方向に沿って移動させる構成のため、一方の切断用テーブル2Aで封止済基板Wを処理している際に、他方の切断用テーブル2Bにおいて搬送などの別の処理を行うことができる。
【0051】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、ツインカットテーブル方式であって、ツインスピンドル構成の切断装置を説明したが、これに限らず、シングルカットテーブル方式であって、シングルスピンドル構成の切断装置や、シングルカットテーブル方式であって、ツインスピンドル構成の切断装置などであってもよい。
【0052】
前記実施形態では、ツインカットテーブル方式の2つの切断用テーブルをY方向に沿って設けたが、複数の切断用テーブルをX方向に沿って設けてもよい。この場合、各切断用テーブルのY方向の位置は、同じにしてもよいし、ずらしてもよい。Y方向の位置をずらして複数の切断用テーブルを設けた場合、各切断用テーブルにアクセス可能な搬送機構を設けることによって、切断がなされていない切断用テーブルに基板を搬送又は該切断用テーブルから基板を搬出することができる。
【0053】
加えて、本発明の加工装置は、切断以外の加工を行うものであってもよく、例えば切削や研削などのその他の機械加工を行うものであってもよい。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・切断装置(加工装置)
W・・・封止済基板(加工対象物)
2A、2B・・・切断用テーブル(加工テーブル)
3・・・切断機構(加工機構)
30・・・回転工具
31A、31B・・・回転刃
32A、32B・・・スピンドル
5・・・移動機構
51・・・Y方向移動部
511・・・Y方向ガイドレール
512・・・支持体
52・・・X方向移動部