(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】冷感調合物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20230208BHJP
C07D 333/20 20060101ALI20230208BHJP
C07C 69/68 20060101ALI20230208BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20230208BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230208BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230208BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230208BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20230208BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20230208BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C11B9/00 W
C07D333/20
C07C69/68
A23L27/20 D
A61K8/49
A61Q13/00 101
A61Q11/00
A23K20/105
A23K10/20
C09K3/00 B
(21)【出願番号】P 2020500903
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2018069017
(87)【国際公開番号】W WO2019012071
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】202017107872.8
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ウブー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フィーバー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ボスブル
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503486(JP,A)
【文献】特表2016-508122(JP,A)
【文献】国際公開第2017/058594(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/055603(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00 - 15/00
C11C 1/00 - 5/02
C07D 333/20
C07D 231/40
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 99/00
A23K 10/00 - 40/35
A23K 50/15
A23L 27/00 - 27/40
A23L 27/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1種の式(I)
【化1】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物であって、その立体異性体のいずれかの形での化合物、及び
ii)少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート
を含む組成物。
【請求項2】
R
1が、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により置換されているフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
1が、1つもしくは2つのC
1-2アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのフルオロ基により置換されているフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R
1が、1つもしくは2つのメチル基、エチル基、メトキシ基により、又は1つのフルオロ基により置換されているフェニル基であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
R
2及びR
3が、互いに独立して、窒素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
R
2が、1つ又は2つの窒素原子を含む複素環式基であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
R
2が、ピラゾリル基であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
R
3が、1つ又は2つの硫黄原子を含む複素環式基であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
R
3が、チオフェニル基であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記C
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートがエチルラクテートであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、組成物の全質量に対して、0.1質量%~20質量%の請求項1から9において定義した少なくとも1種の式(I)の化合物、及び組成物の全質量に対して80質量%~99.1質量%の少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物が、N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミド、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミド、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド又は2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
i)請求項1から12において定義した、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)フレーバーキャリヤー、フレーバー付与補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含むフレーバー付与調合物。
【請求項14】
少なくとも1種の冷感剤を含むことを特徴とする、請求項13に記載のフレーバー付与調合物。
【請求項15】
前記冷感剤が、メントール、メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メンチルラクテート(FEMA GRAS 3748)、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、モノメチルスクシネート(FEMA GRAS 3810)、モノメンチルグルタメート(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4496)、(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4549)、メンタンカルボン酸エステル及びアミド
、WS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14、WS-23(2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、FEMA GRAS 3804)、WS-30、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載のフレーバー付与調合物。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項において定義した組成物、又は請求項13から15において定義したフレーバー付与調合物を含む、フレーバー付与した消費者製品。
【請求項17】
前記フレーバー付与した消費者製品が、調味料、香辛料、肉ベースの製品、スープ、炭水化物ベースの製品、乳製品もしくは脂製品、風味付けした製品、菓子類、オーラルケア製品、人工製品、ペットもしくは動物の食品、又は飲料であることを特徴とする、請求項16に記載のフレーバー付与した消費者製品。
【請求項18】
前記フレーバー付与した消費者製品が、煮出し汁、風味付けキューブ、パウダーミックス、フレーバー付与したオイル、ソース、レリッシュソース、バーベキューソース、ドレッシングソース、グレービーソース、甘いソース、酸味のあるソース、サラダドレッシング又はマヨネーズ、家禽、牛肉もしくは豚肉ベースの製品、シーフード、すり身、又は魚肉ソーセージ、澄ましスープ、クリームスープ、チキンもしくはビーフスープ、又はトマトもしくはアスパラガススープ、インスタント麺、米、パスタ、ポテトフレークもしくはフライ、ピザ、トルティーヤ、ラップ、麺、スプレッド、チーズ、普通のマーガリン、低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、バター、ピーナッツバター、ショートニング、加工又はフレーバー付与したチーズ、スナック、ビスケット、チップス、クリスプ、卵製品、ポテト/トルティーヤチップ、電子レンジ用ポップコーン、ナッツ、プレッツェル、餅、煎餅、人工乳製品、人工海産物、人工肉、ペットもしくは動物の食品、すぐに飲める飲料、粉末ソフト飲料、ホットドリンク、茶、ソフトドリンク、炭酸ソフトドリンク、アルコールドリンク、すぐに飲めるドリンク又はパウダーソフト、パン屋の菓子、甘いペストリー、ケーキ、糖菓、スイーツ、キャンディー、砂糖漬けナッツ、チョコレート、チューインガム、バブルガム、砂糖菓子、パスティヤージュ、シュガーレス菓子、チョコレート菓子、練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルケア製品、義歯接着剤、デンタルリンス、マウススプレー、又はデンタルフロスであることを特徴とする、請求項17に記載のフレーバー付与した消費者製品。
【請求項19】
i)請求項1から12において定義した、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)香料キャリヤー、付香補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む付香調合物。
【請求項20】
請求項1から12までのいずれか1項において定義した組成物、又は請求項19において定義した付香調合物を含む、着香消費者製品。
【請求項21】
香料消費者製品が、香水、布地用ケア製品、ボディケア製品、化粧品調製物、スキンケア製品、エアケア製品又はホームケア製品であることを特徴とする、請求項20に記載の着香消費者製品。
【請求項22】
前記着香消費者製品が、ファイン香水、スプラッシュ又はオーデパルファム、コロン、シェーブローション又はアフターシェーブローション、液体又は固形洗剤、布地用柔軟剤、液体又は固体の香りブースター、布地用リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品、シャンプー、染毛料、ヘアスプレー、カラーケア製品、ヘアシェーピング製品、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品、スキンクリーム又はローション、バニシングクリーム、デオドラント又は発汗抑制剤、脱毛剤、日焼け用製品、爪用製品、スキンクレンジング、メイクアップ、着香石鹸、シャワー又はバス用のムース、オイルもしくはゲル、フット/ハンドケア製品、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー、カビ取り剤、ファーニッシャーケア、ワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤、レザーケア製品、カーケア製品であることを特徴とする、請求項21に記載の着香消費者製品。
【請求項23】
フレーバー付与調合物又はフレーバー付与した物品もしくは表面の味の特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法であって、該調合物又は物品に、請求項1から12までのいずれか1項において定義した組成物の有効量を付加することを含む、前記方法。
【請求項24】
付香調合物又は着香した物品もしくは表面のにおい特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法であって、該調合物又は物品に、請求項1から12までのいずれか1項において定義した組成物の有効量を付加することを含む、前記方法。
【請求項25】
請求項1から12において定義した組成物を製造するための方法であって、
a)式
【化2】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、かつXは、ヒドロキシル基、C
1-10アルコキシ基又は塩化物原子である]の化合物と、式
【化3】
[式中、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物とを反応させることによって、請求項1に定義した式(I)の化合物を製造するステップ、
b)ステップa)において得られた反応混合物を結晶化するステップ、
c)ステップb)において得られた結晶化生成物の溶液を濾過するステップ、
d)ステップc)において得られた結晶化生成物を乾燥させるステップ、及び
e)ステップd)において得られた乾燥させた結晶化生成物をC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート中で可溶化するステップ
を含む、前記方法。
【請求項26】
Xが、C
1-5アルコキシ基
であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Xが、C
1-3
アルコキシ基であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップa)を、塩基の存在下で実施することを特徴とする、請求項25
から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記塩基が、アルキル金属のアルコキシド、カーボネート又はヒドロキシドであることを特徴とする、請求項2
8に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップc)~e)を同一の装置で実施することを特徴とする、請求項25から2
9までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2017年7月14日に出願された欧州特許出願番号第17181445.2号(European Patent Application Serial No. 17181445.2)、2018年3月28日に出願された欧州特許出願番号第18164604.3号(European Patent Application Serial No. 18164604.3)、及び2017年12月22日に出願された独国実用新案番号第202017107872.8号(German Utility Model Serial No. 202017107872.8)に対して優先権を主張し、その全記載内容は参照をもってその全体を本明細書に組み込まれたものとする。
【0002】
技術分野
本発明は、フレーバー又は香料の分野に関する。より詳述すれば、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む組成物、並びにフレーバー又は香料調合物における該組成物の使用に関する。したがって、本明細書において以下で挙げられるように、本発明は、フレーバー付与もしくは付香調合物の又はフレーバー付与もしくは付香消費者製品の一部として本発明の組成物を含む。本発明の組成物及び式(I)の化合物の多形体、特にN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドを製造するための方法も本発明の目的でもある。
【0003】
先行技術
香料及びフレーバーの分野において最も要求される成分の1つは、多くの着香した及びフレーバー付与した消費製品において使用される新鮮さ及び清涼感を消費者製品に提供する冷たさ又は冷感を付与するものである。数十年以来、この効果を呈する化合物を得るために多くの努力がなされてきた。
【0004】
この点において、特に冷感感覚に関与するチャネルである一過性受容器電位チャネルメラスチンナンバー8(TRPM8)のモジュレータである非常に強力な新規の冷感物質が、国際公開番号第2012/061698号(WO 2012/061698)及び国際公開番号第2017/058594号(WO 2017/058594)において報告されている。これらの化合物が特に有効であり、かつ非常に低い濃度で冷感効果を提供する。実際、冷感効果は、微量のこの粉末でのみ観察される。しかしながら、前記化合物は、室温で及び大気圧下で、非常に細かい粉末の形である。これらの化合物の濃度により、溶媒中、特にフレーバー付与した消費者製品において認可された溶媒中で希釈すべきである。しかしながら、該化合物は、最も一般的なフレーバー溶媒中で低い溶解性を呈する。
【0005】
したがって、希釈された形でこれらの化合物を提供するために、これらの化合物を可溶化する必要がある。本発明は、アルキルラクテートを使用することにより、前記問題に対する解決策を提供する。
【0006】
発明の要旨
本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物、並びに式(I)の化合物の使用及び取り扱いを容易にする少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む新規の組成物に関する。
【0007】
したがって、本発明の第一の目的は、
i)少なくとも1種の式(I)
【化1】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物であって、その立体異性体のいずれかの形での化合物、及び
ii)少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート
を含む組成物である。
【0008】
本発明の第二の目的は、
i)少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)フレーバーキャリヤー、フレーバー付与補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含むフレーバー付与調合物である。
【0009】
本発明の第三の目的は、前記で定義した組成物又は前記で定義したフレーバー付与調合物を含むフレーバー付与した消費者製品である。
【0010】
本発明の他の目的は、
i)少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)香料キャリヤー、付香補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む付香調合物である。
【0011】
本発明の他の目的は、前記で定義した組成物又は前記で定義した付香調合物を含む着香消費者製品である。
【0012】
本発明の他の目的は、フレーバー付与調合物又はフレーバー付与した物品又は表面の味の特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法であり、該方法は、例えばその典型的なノートを付与するために、該調合物又は物品に本発明の組成物の有効量を付加することを含む。
【0013】
本発明の他の目的は、付香調合物又は着香物品又は表面のにおい特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法であり、該方法は、該調合物又は物品に前記で定義した組成物の有効量を付加することを含む。
【0014】
本発明の他の目的は、前記で定義した組成物を製造する方法であって、
a)式
【化2】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、かつXは、ヒドロキシル基、C
1-10アルコキシ基又は塩素原子である]の化合物と、式
【化3】
[式中、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物とを反応させることによって、請求項1に定義した式(I)の化合物を製造するステップ、
b)ステップa)において得られた反応混合物を結晶化するステップ、
c)ステップb)において得られた結晶化生成物の溶液を濾過するステップ、
d)ステップc)において得られた結晶化生成物を乾燥させるステップ、及び
e)ステップd)において得られた乾燥させた結晶化生成物をC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート中で可溶化するステップ
を含む方法である。
【0015】
本発明の最後の目的は、銅K-アルファ線を使用して得られるその粉末X線回折パターンで、6.86、12.46、15.87、17.38、17.70、17.93、18.43、19.46、20.61、22.08、23.03、23.43、24.36、26.11、27.59、34.68の主なピークにより特徴付けられるN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドの結晶形である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例3において挙げたように得られる13C固体状NMRスペクトルを示す。
【
図2】
図2は、実施例3において挙げたように得られるX線粉末回折スペクトルを示す。
【0017】
発明の詳細
驚くべきことに、式(I)の化合物が、C1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート中で容易に可溶化し、固体の形でのこれらの化合物の取り扱いを軽減しながら非常に低いレベルで該化合物を使用できることを発見している。
【0018】
したがって、本発明の第一の目的は、i)少なくとも1種の式(I)
【化4】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物であって、その立体異性体のいずれか1つの形での化合物、及び
ii)少なくとも1種のC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート
を含む組成物である。
【0019】
明確性の理由から、「その立体異性体のいずれか1つ」の表現又は同様の表現に関しては、当業者によって理解される通常の意味、すなわち式(I)の化合物が、任意のジアステレオマー、エナンチオマー又はそれらの混合物の形であることを意味する。言い換えれば、式(I)の化合物は、シス又はトランス又はそれらの混合物であってよいアミド官能基を有する。さらに、式(I)の化合物は、異なる立体化学を有しうる少なくとも1つの立体中心をさらに有してよい(すなわち、1つの立体中心が存在する場合に、化合物(I)は(R)又は(S)の立体配置を有しうる)。該立体中心のそれぞれは、相対立体配置RもしくはS又はそれらの混合物であってよい。式(I)の該化合物は、純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーの形で、又は立体異性体の混合物の形であってよい。
【0020】
前記実施形態のいずれか1つに従って、R1は、1つもしくは2つのC1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基である。好ましくは、R1は、1つもしくは2つのC1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン化物原子により置換されているフェニル基である。好ましくは、R1は、1つもしくは2つのC1-2アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのフルオロ基により置換されているフェニル基である。さらにより好ましくは、R1は、1つもしくは2つのメチル基、エチル基、メトキシ基により又は1つのフルオロ基により置換されているフェニル基である。フェニル基に対する置換基は、酸素原子とR1基との間の結合に対してオルト位及び/又はメタ位及び/又はパラ位であってよい。好ましくは、R1は、パラ-トリル、4-エチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-フルオロフェニル、3,4-ジメチルフェニル及びメタ-トリルからなる群から選択されてよい。さらにより好ましくは、R1は、パラ-トリル又は4-エチルフェニルであってよい。さらにより好ましくは、R1は、パラ-トリルであってよい。
【0021】
「オルト」、「メタ」及び「パラ」という用語に関しては、当該技術分野における通常の意味を意味し、すなわち、オルト位は、隣接する位置を占めるフェニル基の2つの置換基に対応し、メタ位は、1位及び3位を占めるフェニル基の2つの置換基に対応し、かつパラ位は、1位及び4位を占めるフェニル基の2つの置換基に対応する。
【0022】
前記実施形態のいずれか1つに従って、R2及びR3は、互いに独立して、1つ又は2つのC1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である。好ましくは、R2及びR3は、互いに独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である。さらにより好ましくは、R2及びR3は、互いに独立して、窒素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である。
【0023】
前記実施形態のいずれか1つに従って、R2は、1つ又は2つの窒素原子を含む複素環式基である。好ましくは、R2はピラゾリル基である。
【0024】
前記実施形態のいずれか1つに従って、R3は、1つ又は2つの硫黄原子を含む複素環式基である。好ましくは、R3はチオフェニル基である。
【0025】
前記実施形態のいずれか1つに従って、式(I)の化合物は、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミド、2-(4-フルオロフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド、2-(4-メトキシフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(m-トリルオキシ)アセトアミド及び2-(3,4-ジメチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドからなる群から選択されてよい。前記化合物はピラゾリル基を有する。この基は、2つの互変異性型で、すなわち1H-ピラゾール-3-イル及び1H-ピラゾール-5-イルで存在することがよく知られている。これらの2つの形は、非常に急速に平衡化する。言い換えれば、本発明の組成物がN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドを含む場合に、必然的に該組成物は、N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドも含む。前記の他の化合物にも同様のことが当てはまる;すなわち、2-(4-フルオロフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドは、2-(4-フルオロフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドと平衡であり、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドは、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドと平衡であり、2-(4-メトキシフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドは、2-(4-メトキシフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドと平衡であり、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(m-トリルオキシ)アセトアミドは、N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(m-トリルオキシ)アセトアミドと平衡であり、かつ2-(3,4-ジメチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドは、2-(3,4-ジメチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドと平衡である。好ましくは、式(I)の化合物は、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドである。
【0026】
前記実施形態のいずれか1つに従って、前記組成物は、C1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む。好ましくは、前記組成物は、C1-4直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む。さらにより好ましくは、前記組成物は、C1-4直鎖アルキルラクテートを含む。さらにより好ましくは、前記組成物は、エチルラクテートを含む。
【0027】
前記実施形態のいずれか1つに従って、前記組成物は、組成物の全質量に対して、0.1質量%~20質量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、及び組成物の全質量に対して80質量%~99.9質量%の少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む。好ましくは、前記組成物は、組成物の全質量に対して、0.5質量%~15質量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、及び組成物の全質量に対して85質量%~99.5質量%の少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む。さらにより好ましくは、前記組成物は、組成物の全質量に対して、1質量%~10質量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、及び組成物の全質量に対して90質量%~99質量%の少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む。
【0028】
本発明の組成物は、フレーバー付与成分として使用されてもよい。本発明は、フレーバー付与成分として、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む組成物の使用に関する。言い換えれば、本発明は、フレーバー付与調合物又はフレーバー付与した物品もしくは表面の味の特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法に関し、該方法は、例えばその典型的なノートを付与するために、該調合物又は物品に本発明の組成物の有効量を付加することを含む。
【0029】
「組成物の使用」に関しては、フレーバー産業において有利に使用されうる、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む任意の組成物の使用もここで理解されるべきである。
【0030】
「味」に関しては、味の知覚及び味の感覚を示すことを意味する。
【0031】
実際にフレーバー付与成分として有利に使用されうる前記組成物は、本発明の目的でもある。
【0032】
したがって、本発明の他の目的は、
i)前記で定義した、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)フレーバーキャリヤー、フレーバー付与補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含むフレーバー付与調合物である。
【0033】
「フレーバーキャリヤー」に関しては、フレーバー付与成分の感覚刺激性の特性を著しく変更しない限りは、フレーバーの観点から実質的に中性である材料を意味する。キャリヤーは、液体又は固体であってよい。
【0034】
適した液体キャリヤーは、例えば、乳化系、すなわち溶媒及び界面活性剤系、又はフレーバーにおいて慣用的に使用される溶媒を含む。フレーバーにおいて慣用的に使用される溶媒の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。適した溶媒は、例えば、プロピレングリコール、トリアセチン、ネオビー(neobee)、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、植物油、例えばアマニ油、ヒマワリ油もしくはココヤシ油、又はテルペンを含む。
【0035】
適した固体キャリヤーは、例えば、吸収性ゴム又はポリマー、又はさらにカプセル化材料を含む。かかる材料の例は、造壁材料及び可塑材料、例えば単糖、二糖又は三糖、天然デンプン又は加工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又はさらに、参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloids : Stabilisatoren, Dickungs- und Gehermittel in Lebensmittel, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996において挙げられている材料を含んでよい。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、例えば噴霧乾燥、凝集、押し出し、コアセルベーション等のような技術を使用して実施してよい。
【0036】
「フレーバー付与補助成分」に関しては、ここでは、心地よい効果を付与するためのフレーバー付与調製物又は調合物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、フレーバー付与成分であると考えられるべきかかる成分は、ポジティブ又は好ましい方法で調合物の味を付与又は改質することができると、及び単に1つの味を有するだけでないと当業者によって認識される必要がある。前記フレーバー付与成分は、式(I)の化合物ではない。
【0037】
前記フレーバー付与調合物中に存在するフレーバー付与補助成分の性質及びタイプは、ここでより詳細な記載を保証するものではなく、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び意図された使用又は適用及び所望された感覚刺激性効果に従って、それらを選択することができる。一般的な用語で、これらのフレーバー付与補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素又は硫黄の複素環化合物及び精油と多様な化学品種に属し、かつ該付香補助成分は、天然又は合成由来のものであってよい。これらの補助成分の多くは、いずれにしても、参考文献、例えばS. Arctanderによる本、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、又はその最新版において、又は同様の種類の他の著作において、並びにフレーバーの分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記補助成分は、制御された方法で種々のタイプのフレーバー付与化合物を放出することが公知の化合物であってもよいとも解される。
【0038】
特に、フレーバー配合物において慣用的に使用されるフレーバー付与補助成分として、以下が挙げられてよい:ミント植物、例えばペパーミント、スペアミント及びニホンハッカから得られる精油、ミント・ピペリタ(mint piperita)油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油(washed oil))、ミント・ピペリタを精留したインディア油(India oil)及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ミント・スピカタ(mint spicata)天然油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ミント・スピカタUS油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ミント・アルベンシス(mint arvensis)油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ミント・カルディカ(mint cardiaca)油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、品種改良から得られる全てのミント変種の油、ハイブリッドミント植物、例えば13-S12-2、13-39-9、13-A36-13、07-A3-11、09-6-2、11-A35-3、07-A3-5A、14-27-71、08-6-10、14-41-16、08-A20-3、14-27-89、05-19-1として公知のものからの油、ユーカリ・グロブルス(eucalyptus globulus)油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ユーカリプトール、アネトール(天然及び合成)、スターアニス油、フェンネル油、メボウキ油、クローブ油の全てのタイプ(芽、茎、葉)、オイゲノール、シンナムアルデヒド、カシア油、桂皮油、シナモンリーフ油、シナモン芽油、メントール(全てのグレード:L及びDL(ラセミ体))、パイン油(全てのタイプ及び源)、セージ油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、カモミール及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、バニリン(天然及び合成)及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、レモン油の全てのタイプ、オレンジ油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、ライム油及び他の抽出物(無水、オレオレジン、洗浄した油)、マンダリン油、タンジェリン油、マルトール、エチルマルトール、フラネオール、ベンゾフェノン、全てのラクトン、エチルブチレート、カンゾウ抽出物、(Z)-3-ヘキセニルアセテート、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、(E)-2-ヘキセン-1-オール又はメチルサリチレート。当業者は、天然油を、天然油の感覚プロフィールを模倣する合成及び人工ブレンドで置き換えることができることをよく知っている。該ブレンドは、フレーバー補助成分としても使用されてよい。
【0039】
「フレーバー補助剤」に関しては、ここで、追加の付加効果、例えば色、特定の耐光性、化学安定性等を付与することができる成分を意味する。フレーバー付与調合物において慣用的に使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。それにもかかわらず、かかる補助剤は、その一般的な知識に基づいて及び意図された使用又は適用に従ってそれらを選択することができるであろう当業者に周知である。
【0040】
少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート及び少なくとも1種のフレーバーキャリヤーからなる調合物、並びに少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート、少なくとも1種のフレーバーキャリヤー、少なくとも1種のフレーバー補助成分、及び任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤を含むフレーバー付与調合物は、本発明の特定の実施形態を示す。
【0041】
前記実施形態のいずれか1つに従って、本発明の調合物は、さらに少なくとも1種の冷感剤を含んでよい。適した冷感剤の制限のない例は、WS-23(2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド)、FEMA 3804;WS-3(N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド)、FEMA 3455;WS-5[エチル 3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート]、FEMA 4309;WS-12(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4681;WS-27(N-エチル-2,2-ジイソプロピルブタンアミド)、FEMA 4557;N-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4693、WS-116(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,2-ジエチルブタンアミド)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)2,2-ジエチルブタンアミド、FEMA 4603、メントキシエタノール、FEMA 4154、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4549;N-(2-ヒドロキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミド、FEMA 4602及び(N-(4-(カルバモイルメチル)フェニル)-メンチルカルボキサミド、FEMA 4684;(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)、FEMA 4681;(2S,5R)-N-[4-(2-アミノ-2-オキソエチル)フェニル]-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4684;及びN-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカルボンカルボキサミド、FEMA 4693;2-[(2-p-メントキシ)エトキシ]エタノール、FEMA 4718;(2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロピラン、FEMA 4680);トランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール、FEMA 4724;2-(p-トリルオキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-((チオフェン-2-イル)メチル)アセトアミド、FEMA 4809;メントングリセロールケタール、FEMA 3807;メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808);(-)-メントキシプロパン-1,2-ジオール;3-(l-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、FEMA 3849;イソプレゴール;(+)-シス&(-)-トランス p-メンタン-3,8-ジオール、割合~62:38、FEMA 4053;2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン;3,3,5-トリメチルシクロヘキサノングリセロールケタール;メンチルピロリドンカルボキシレート;(1R,3R,4S)-3-メンチル-3,6-ジオキサヘプタノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチルメトキシアセテート;(1R,2S,5R)-3-メンチル 3,6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル 3.6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル (2-ヒドロキシエトキシ)アセテート;(1R,2S,5R)-メンチル 11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカノエート;クベボール、FEMA 4497;N-(4-シアノメチルフェニル) p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル 4-(ジメチルアミノ)-4-オキソブタノエート、FEMA 4230;N-(4-シアノメチルフェニル) p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-ピリジン-2-イルエチル) p-;メンタンカルボキサミド、FEMA 4549、メンチルラクテート、FEMA 3748;6-イソプロピル-3,9-ジメチル-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2-オン、FEMA 4285;N-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-3-p-メンタンカルボキサミド;N-(1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル)-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキサミド;N-(R)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル-(1R,2S,5R)-p-メンタン-3-カルボキサミド;2,2,5,6,6-ペンタメチル-2,3,6,6a-テトラヒドロペンタレン-3a(1H)-オールと5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-3,4,4-トリメチルシクロペンタ-2-エン-1-オンとの混合物;(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4549;(2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-4-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド;N-(4-シアノメチルフェニル) p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;(1S,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド;1/7-イソプロピル-4/5-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン誘導体;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンザミド;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-クロロ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-シアノ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ビス(4-メトキシフェニル)-メチルアミノ)-メチル)-2-メトキシフェノール;4-((1,2-ジフェニルエチルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルオキシ)メチル)-2-メトキシフェノール、4-((9H-フルオレン-9-イルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-エトキシフェノール;1-(4-メトキシフェニル)-2-(1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ビニル4-メトキシベンゾエート;2-(1-イソプロピル-6-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシフェニル)ビニル4-メトキシベンゾエート;(Z)-2-(1-イソプロピル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシ-フェニル)ビニル-4-メトキシベンゾエート;3-アルキル-p-メタン-3-オール誘導体;フェンチル、D-ボルニル、L-ボルニル、エキソ-ノルボルニル、2-メチルイソボルニル、2-エチルフェンチル、2-メチルボルニル、シス-ピナン-2-イル、ベルバニル(verbanyl)及びイソボルニルの誘導体;メンチルオキサメート誘導体;メンチル 3-オキソカルボン酸エステル;Nアルファ-(メンタンカルボニル)アミノ酸アミド;p-メンタンカルボキサミド及びWS-23類似体;(-)-(1R,2R,4S)-ジヒドロウンベルロール(dihydroumbellulol);p-メンタンアルキルオキシアミド;シクロヘキサン誘導体;ブトン(butone)誘導体;3-メトキシ-1-プロパノールと1-メントキシ-2-プロパノールとの混合物;1-[2-ヒドロキシフェニル]-4-[2-ニトロフェニル- ]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-2-オン;4-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2[5H]-フラノン;並びにそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記冷感剤は、メントール、メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メンチルラクテート(FEMA GRAS 3748)、メンチルアセテート、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、モノメチルスクシネート(FEMA GRAS 3810)、モノメンチルグルタメート(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4496)、(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4549)、メンタンカルボン酸エステル及びアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14、WS-30及びそれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0042】
前記実施形態のいずれか1つに従って、本発明の調合物は、甘味料を含んでよい。適した甘味料の制限のない例は、通常の糖類甘味料、例えばスクロース、フルクトース(例えばD-フルクトース)、グルコース(例えばD-グルコース);天然糖を含む甘味料調合物、例えばステビア(全てのタイプ及びグレード)、コーンシロップ(高フルクトースコーンシロップを含む)又は天然果実及び植物源に由来する他のシロップもしくは甘味料濃縮物;半合成「糖アルコール」甘味料、例えばエリトリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、グリセロール、トレイトール、アラビトール、リビトール及びズルシトール;人工甘味料、例えばミラクリン、アスパルテーム、スーパーアスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムK、シクラメート、シクラミン酸ナトリウム及びアリテーム;他の甘味料、例えばトレハロース、メレジトース(melizitose)、メリビオース、ラフィノース、パラチノース、ラクツロース、シクラミン酸、モグロシド、タガトース(例えばD-タガトース)、マルトース、ガラクトース(例えばD-ガラクトース)、L-ラムノース、D-ソルボース、マンノース(maunose)(例えばD-マンノース)、ラクトース、L-アラビノース、D-リボース、D-グリセルアルデヒド、クルクリン、ブラゼイン、モグロシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)、ネオテーム及び他のアスパルテーム誘導体、D-トリプトファン、D-ロイシン、D-トレオニン、グリシン、D-アスパラギン、D-フェニルアラニン、L-プロリン、マルチトール、還元グルコースシロップ(HGS)、マガップ(magap)、スクラロース、ルグズナム、スクロノネート(sucrononate)、スクロオクテート(sucrooctate)、モナチン、フィロズルチン、加水分解水添デンプン(HSH)、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドD、レバウジオシドM(rebadioside M)及び他のスイートステビア系グリコシド、ラカンカ、ソーマチン、モネリン、カレラミンド(carrelameand)、並びに他のグアニジン系甘味料を含む。
【0043】
前記実施形態のいずれか1つに従って、フレーバー付与した調合物は、さらに、加温、ほてり、唾液分泌、洗浄又はアルコール増強効果を付与する成分、例えばトウガラシ抽出物、スパイス抽出物(例えば、ショウガ、マニゲット(maniguette)、花椒を含む全てのタイプのコショウ、ピペリン、カプサイシン、ジャンブ(jambu)抽出物、スピラントール(spilanthol)を含んでよい。
【0044】
前記実施形態のいずれか1つに従って、本発明のフレーバー付与調合物は、菓子類、例えばチューインガム、バブルガム、パスティヤージュ(砂糖細工)、シュガーレス菓子類、又はオーラルケア製品、例えば練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルケア製品、義歯接着剤、デンタルリンス、マウススプレーもしくはデンタルフロスの形であってよい。
【0045】
さらに、本発明の組成物は、全てのフレーバーの分野において、前記組成物に付加される消費者製品の味をポジティブに付与する又は改質するために有利に使用されてもよい。したがって、本発明の他の目的は、前記で定義した本発明の組成物を含むフレーバー付与した消費者製品によって示される。
【0046】
本発明の組成物を、本発明のフレーバー付与調合物自体又はフレーバー付与調合物の一部として添加してよい。
【0047】
明確性の理由から、「フレーバー付与した消費者製品」に関しては、食品又は飲料品であってよく、油で揚げられるか揚げられていないか、及び冷凍されているか冷凍されていないか、低脂質であるか低脂質でないか、マリネにされるか、衣を付けられるか、冷蔵されるか、水分を抜かれるか、インスタントであるか、缶詰めにされるか、もどされるか、レトルトにされるか、又は保存されてよい、食用品を示すことを意味する。したがって、本発明に従ったフレーバー付与した物品は、本発明の組成物、及び所望の食用品の味覚及びフレーバープロフィールに対応する任意の有効物質、例えば風味付けキューブを含む。
【0048】
食料又は飲料品の構成物の性質及びタイプは、ここでのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び該製品の性質に従って、性質及びタイプを選択することができる。
【0049】
前記フレーバー付与消費者製品の典型的な例としては、以下を含む:
・ 調味料又は香辛料、例えば煮出し汁、風味付けキューブ(savory cube)、パウダーミックス、フレーバー付与したオイル、ソース(例えば、レリッシュ、バーベキューソース、ドレッシング、グレービーソース又は甘い及び/又は酸味のあるソース)、サラダドレッシング又はマヨネーズ;
・ 肉ベースの製品、例えば家禽、牛肉もしくは豚肉ベースの製品、シーフード、すり身、又は魚肉ソーセージ;
・ スープ、例えば澄ましスープ、クリームスープ、チキン又はビーフスープ、トマト又はアスパラガススープ;
・ 炭水化物ベースの製品、例えばインスタント麺、米、パスタ、ポテトフレーク又はフライ、麺、ピザ、トルティーヤ、ラップ;
・ 乳製品又は脂製品、例えばスプレッド、チーズ、普通のマーガリン、低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、バター、ピーナッツバター、ショートニング、加工又は味付けチーズ;
・ 風味付けした製品、例えばスナック、ビスケット(例えばチップス又はクリスプ)又は卵製品、ポテト/トルティーヤチップ、電子レンジ用ポップコーン、ナッツ、プレッツェル、餅、煎餅等;
・ 菓子類、例えばパン屋の菓子(例えば甘いペストリー又はケーキ)、糖菓(例えばスイーツ、キャンディー、砂糖漬けナッツ、チョコレート、チューインガム及びバブルガム、砂糖菓子、パスティヤージュ、シュガーレス菓子)、又はチョコレート菓子;
・ オーラルケア製品、例えば練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルケア製品(例えば義歯接着剤)、デンタルリンス、マウススプレー、デンタルパウダー、デンタルジェル又はデンタルフロス;
・ 人工製品、例えば乳製品(例えば、油、脂肪及び増粘剤から製造された改良チーズ(reformed cheese))又は海産物又は肉(例えば、ベジタリアンの肉の代用品、野菜バーガー)又は類似品;
・ ペット又は動物の食品;又は
・ 飲料、例えばホットドリンク(例えば茶)、炭酸を含むソフトドリンク、アルコールドリンク、すぐに飲めるドリンク又は粉末ソフト。
【0050】
本発明の組成物において有用性が見出されている特に好ましいフレーバー付与した消費者製品は、菓子類及びオーラルケア、好ましくはオーラルケア製品を含む。
【0051】
いくつかの前記フレーバー付与した消費者製品は、本発明の組成物にとってアグレッシブな媒体であることもあるため、適した外部刺激、例えば酵素、光、熱又はpHの変化に対して、例えばカプセル化によって、又は本発明の組成物の放出に適した他の化学物質との化学的結合によって本発明による組成物を早すぎる分解から保護する必要がある場合がある。
【0052】
種々の前記製品中に組込まれてよい本発明の組成物の割合は、広い範囲の値で変動する。これらの値は、フレーバー付与されるべき物品の性質に、並びに所望の感覚受容性効果及び本発明による組成物が、付香又はフレーバー付与成分、溶媒又は当該技術分野において慣用的に使用される添加剤と混合される場合に、所与のベースにおける補助成分の性質に依存する。
【0053】
例えば、フレーバー付与調合物の場合に、本発明の組成物の典型的な濃度は、導入される調合物の質量に対して、0.001質量ppm~1000質量ppmである。フレーバー付与した消費者製品の場合に、典型的な濃度は、導入される消費者製品の質量に対して、本発明の組成物の0.001質量ppm~1000質量ppm、より好ましくは0.5質量ppm~500質量ppm、最も好ましくは1~350質量ppmである。
【0054】
本発明の組成物は、付香成分としても使用されてよい。したがって、本発明は、付香成分として、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む組成物の使用に関する。言い換えれば、本発明は、付香調合物又は着香物品もしくは表面のにおい特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法に関し、該方法は、例えばその典型的なノートを付与するために、該調合物又は物品に本発明の組成物の有効量を付加することを含む。
【0055】
「組成物の使用」に関しては、香料産業において有利に使用されうる、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む任意の組成物の使用もここで理解されるべきである。
【0056】
実際に付香成分として有利に使用されうる前記組成物は、本発明の目的でもある。
【0057】
したがって、本発明の他の目的は、
i)前記で定義した、少なくとも1種の式(I)の化合物及び少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテートを含む少なくとも1種の組成物
ii)香料キャリヤー、付香補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む付香調合物である。
【0058】
「香料キャリヤー」に関しては、本明細書では、香料の観点から事実上中性である、すなわち付香成分の感覚刺激性の特性を著しく変更しない材料を意味する。前記キャリヤーは、液体又は固体であってよい。
【0059】
液体キャリヤーとしては、乳化系、すなわち溶媒及び界面活性剤系、又は香料において慣用的に使用される溶媒を挙げてよいが、これらに制限されない。香料において慣用的に使用される溶媒の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。しかしながら、最も慣用的に使用される溶媒、例えばブチレン又はプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコール及びそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、トリエチルシトレート、又はそれらの混合物が挙げられてよいが、これらに制限されない。香料キャリヤー及び付香補助成分の双方を含む調合物に関して、前記したものよりも適した他の香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン、又は他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標名Isopar(登録商標)(供給源:Exxon Chemical)で公知のもの、又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば商標名Dowanol(登録商標)(供給源:Dow Chemical Company)で公知のもの、又は硬化ヒマシ油、例えば商標名Cremophor(登録商標)RH 40(供給源:BASF)で公知のものであってもよい。
【0060】
固体キャリヤーは、付香調合物又は付香調合物のいくつかの要素を、化学的又は物理的に結合することができる材料を示すことを意味する。一般に、かかる固体キャリヤーは、調合物を安定化するために又は調合物もしくはいくつかの成分の蒸発の速度を調整するために使用される。固体キャリヤーの使用は、当該技術分野において現在使用されており、当業者は所望の効果に達成するための方法を知っている。しかしながら、固体キャリヤーの制限のない例に関しては、吸収性ゴム又はポリマー又は無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木質材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク又はゼオライトが挙げられてよい。
【0061】
固体キャリヤーの他の制限のない例としては、カプセル化材料を挙げてよい。かかる材料の例は、造壁材料及び可塑材料、例えば単糖、二糖又は三糖、天然デンプン又は加工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又はさらに、参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996において挙げられている材料を含んでよい。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、かつ例えば噴霧乾燥、凝集又はさらに押し出しのような技術を使用して実施してよく、又はコアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含む被覆カプセル化からなる。
【0062】
固体キャリヤーの制限のない例としては、特に、任意にポリマー安定剤又はカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーション又はその全て(前記技術の全ては先行技術に記載されている)によって誘発される相分離プロセスのような技術を使用したアミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレアもしくはポリウレタンタイプの樹脂又はそれらの混合物(前記樹脂の全ては当業者に周知である)でのコア-シェルカプセルを挙げてよい。
【0063】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタノール、グリオキサール、グリオキシル酸又はグリコールアルデヒド及びそれらの混合物)と、アミン、例えば尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾール等、及びそれらの混合物との重縮合によって製造されうる。代わりに、予め形成した樹脂、アルキル化ポリアミン、例えば商標名Urac(登録商標)(供給源:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(供給源:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)又はLuracoll(登録商標)(供給源:BASF)で市販されているものを使用してよい。
【0064】
他の樹脂は、ポリオール、例えばグリセロール、及びポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、又はキシリレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、又はキシリレンジイソシアネートの三量体と、トリメチロールプロパン(Takenate(登録商標)の商標名で公知、供給源:Mitsui Chemicals)との、中でもキシリレンジイソシアネートの三量体とトリメチロールプロパン及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとの重縮合によって製造されるものである。
【0065】
アミノ樹脂、すなわちメラミンベースの樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関する生産的な文献のいくつかは、例えばActa Polymerica においてK. Dietrichら(1989年、第40巻、243頁、325頁及び683頁、並びに1990年、第41巻、91頁)の記事により示されているものを含む。かかる文献は、さらに詳細に説明され、かつ特許文献に例示されている先行技術の方法に従って、かかるコア-シェルマイクロカプセルの製造に影響を与える種々のパラメーターを既に記載している。米国特許第4396670号(US 4’396'670)(Wiggins Teape Group Limited)は、該文献の適切な初期の例である。それ以来、多くの他の著者は、この分野の文献を充実させており、出版された全ての進展内容をここで網羅することは不可能であるものの、カプセル化技術の一般知識は非常に重要である。かかるマイクロカプセルの適切な使用を開示している最近の関連文献の代表例は、例えば、H.Y.LeeらのJournal of Microencapsulation(2002年、第19巻、559頁~569頁)の論文、国際公開番号第01/41915号(WO 01/41915)、又はさらにS.BoneらのChimia(2011年、第65巻、177頁~181頁)の論文である。
【0066】
「付香補助成分」に関しては、ここでは、心地よい効果を付与するための付香調製物又は調合物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、付香補助成分であると考えられるべきかかる補助成分は、ポジティブ又は好ましい方法で調合物のにおいを付与又は改質することができると、及び単に1つのにおいを有するだけでないと当業者によって認識される必要がある。前記付香補助成分は、式(I)ではない。
【0067】
いずれにしても網羅的とはならないであろう前記付香調合物中に存在する付香補助成分の性質及びタイプは、ここでより詳細な記載を保証するものではなく、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び任意の使用又は適用及び所望された感覚刺激性効果に従って、それらを選択することができる。一般的な用語で、これらの付香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素又は硫黄の複素環化合物及び精油と多様な化学品種に属し、かつ該付香補助成分は、天然又は合成由来のものであってよい。
【0068】
特に、香料配合物において慣用的に使用される付香補助成分として以下を挙げてよい:
- アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデカナール、オクタナール及び/又はノネナール;
- 芳香性ハーブ成分:ユーカリ油、樟脳、オイカリプトール、メントール及び/又はアルファ-ピネン;
- バルサム成分:クマリン、エチルバニリン及び/又はバニリン;
- シトラス成分、ジヒドロミリセノール、シトラール、オレンジ油、リナリルアセテート、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-P-メンテン-8-イルアセテート及び/又は1,4(8)-P-メンタジエン;
- フローラル成分:メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルサリチレート、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、ベータイオノン、メチル2-(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、ヘキシルサリチレート、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、バージルアセテート、ゲラニオール、P-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、アミルサリチレート、高シスメチルジヒドロジャスモネート、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、バージルプロピオネート、ゲラニルアセテート、テトラヒドロリナロール、シス-7-P-メタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、4-フェニル-2-ブタノン、イソノニルアセテート、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、バージルイソブチレート及び/又はメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーティー成分:ガンマウンデカラクトン、4-デカノリド、エチル2-メチル-ペンタノエート、ヘキシルアセテート、エチル2-メチルブタノエート、ガンマノナラクトン、アリルヘプタノエート、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート及び/又はジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
- グリーン成分:2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オール及び/又は1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、ペンタデカノリド、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、ペンタデカノリド及び/又は(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディー成分:1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリ油、パチュリ油のテルペン画分、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン及び/又はイソボルニルアセテート;
- 他の成分(例えばアンバー、パウダリースパイシー又はウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フラン及び任意のその立体異性体、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、チョウジ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール及び/又は3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール。
【0069】
本発明による付香補助成分は、これらに制限されないが前記したものであってよく、多くの他のこれらの補助成分は、いずれにしても、参考文献、例えばS. ArctanderによるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、又はその最新版において、又は同様の種類の他の著作において、並びに香料の分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記補助成分は、制御された方法で種々のタイプの付香化合物を放出することが公知の化合物であってもよいとも解される。
【0070】
「香料補助剤」に関しては、ここで、追加の付加効果、例えば色、特定の耐光性、化学安定性等を付与することができる成分を意味する。付香調合物において慣用的に使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅的なものにはなりえないが、しかし該成分が当業者に周知であることを挙げるべきである。特定の制限のない例として以下を挙げてよい:粘性剤(例えば界面活性剤、増粘剤、ゲル化及び/又はレオロジー改質剤)、安定剤(例えば防腐剤、酸化防止剤、熱/光及び又は緩衝液又はキレート剤、例えばBHT)、着色剤(例えば染料及び/又は顔料)、防腐剤(例えば抗菌剤又は抗微生物剤又は抗真菌剤又は抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷感剤、固定剤、昆虫忌避剤、軟膏、ビタミン及びそれらの混合物。
【0071】
当業者は、付香調合物の前記構成成分を混和することによって、単に当該技術分野の標準的な知識を適用することによって、及び試行錯誤方法論によって、所望の効果に最適な配合物を完全に設計することができると解される。
【0072】
少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート及び少なくとも1種の香料キャリヤーからなる本発明の調合物、並びに少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種のC1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート、少なくとも1種の香料キャリヤー、少なくとも1種の付香補助成分、及び任意に少なくとも1種の香料補助剤を含む付香調合物は、本発明の特定の実施形態からなる。
【0073】
前記実施形態のいずれか1つに従って、本発明の付香調合物は、シャンプー、染毛料、ヘアスプレー、カラーケア製品、ヘアシェーピング製品、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品、スキンクリーム又はローション、バニシングクリーム、デオドラント又は発汗抑制剤、脱毛剤、日焼け用製品、爪用製品、スキンクレンジング、メイクアップ、着香石鹸、シャワー又はバス用のムース、オイルもしくはゲル、フット/ハンドケア製品、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー、カビ取り剤、ファーニッシャーケア、ワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤、レザーケア製品の形であってよい。好ましくは、本発明の付香調合物は、エアフレッシュナーの形であってよい。
【0074】
さらに、本発明の組成物は、現在の香料、すなわちファイン香水又は機能的香水の全ての分野において、前記(I)に付加される消費者製品のにおいをポジティブに付与する又は改質するために、有利に使用されてもよい。したがって、本発明の他の目的は、前記で定義した本発明の組成物を含む着香消費者製品によって示される。
【0075】
本発明の組成物は、本発明の付香調合物自体又は付香調合物の一部を添加してよい。
【0076】
明確性の理由から、「着香消費者製品」は、少なくとも1つの心地よい付香効果を、付香効果が適用される表面又は空間(例えば皮膚、髪、織物、又は家の表面)に提供する消費者製品を示すこと意味する。言い換えれば、本発明による着香消費者製品は、機能的な調製物、並びに任意に所望の消費者製品に対応する追加の有効物質、及び少なくとも1つの本発明の化合物の嗅覚有効量を含む、着香消費者製品である。明確性の理由から、前記着香消費者製品は、食用でない製品である。
【0077】
いずれにしても網羅的とはならないであろう着香消費者製品の成分の性質及びタイプは、ここでより詳細な記載を保証するものではなく、その際当業者は、一般的な知識に基づいて、及び該製品の性質及び所望の効果に従って、香料消費者製品の成分の性質及びタイプを選択することができる。
【0078】
適した着香消費者製品の制限のない例は、香水、例えばファイン香水、スプラッシュ又はオーデパルファム、コロン又はシェイブもしくはアフターシェイブローション;布地ケア製品、例えば液体もしくは固形洗剤、布地用柔軟剤、液体もしくは固体の香りブースター、布地用リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、染毛料又はヘアスプレー、カラーケア製品、ヘアシェーピング製品)、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品;化粧品調製物(例えば、スキンクリーム又はローション、バニシングクリーム又はデオドラント又は発汗抑制剤(例えばスプレー又はロールオン)、脱毛剤、日焼け用又は日焼け後の製品、爪用製品、スキンクレンジング、メイクアップ);又はスキンケア製品(石鹸、シャワー又はバス用のムース、オイルもしくはゲル、又は衛生製品、又はフット/ハンドケア製品);エアケア製品、例えば住宅スペース(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴箱又は車)において及び/又は公共スペース(ホール、ホテル、モール等)において使用されうるエアフレッシュナー又は「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー;又はホームケア製品、例えばカビ取り剤、ファーニッシャーケア製品、ワイプ、皿用洗剤又は硬質表面(例えば、床、浴槽、サニタリー又は窓洗浄)洗剤;レザーケア製品;カーケア製品、例えば磨き剤、ワックス又はプラスチッククリーナーを含む。
【0079】
いくつかの前記着香消費者製品は、本発明組成物にとってアグレッシブな媒体であることもあるため、適した外部刺激、例えば酵素、光、熱又はpHの変化に対して、例えばカプセル化によって、又は本発明の成分の放出に適した他の化学物質との化学的結合によって本発明の組成物を早すぎる分解から保護する必要があってよい。
【0080】
種々の前記製品中に組込まれてよい本発明の組成物の割合は、広い範囲の値で変動する。これらの値は、着香されるべき物品の性質に、並びに所望の感覚受容性効果及び本発明による組成物が付香成分、溶媒又は当該技術分野において慣用的に使用される添加剤と混合される場合に所与のベースにおける補助成分の性質に依存する。
【0081】
例えば、付香調合物の場合において、典型的な濃度は、それらに組込まれてよい調合物の質量に対して、本発明の組成物の0.001質量ppm~1000質量ppm、又はそれ以上の範囲である。着香消費者製品の場合において、典型的な濃度は、それらに組込まれてよい消費者製品の質量に対して、本発明の組成物の0.01質量ppm~500質量ppm、又はそれ以上の範囲である。
【0082】
本発明の他の目的は、前記で定義した組成物を製造する方法であって、
a)式
【化5】
[式中、R
1は、1つもしくは2つのC
1-3アルキル基もしくはアルコキシ基により、又は1つもしくは2つのハロゲン基により任意に置換されているフェニル基であり、かつXは、ヒドロキシル基、C
1-10アルコキシ基又は塩化物原子である]の化合物と、式
【化6】
[式中、R
2及びR
3は、互いに独立して、1つ又は2つのC
1-3アルキル基により任意に置換されている窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含む複素環式基である]の化合物とを反応させることによって、請求項1に定義した式(I)の化合物を製造するステップ、
b)ステップa)において得られた反応混合物を結晶化するステップ、
c)ステップb)において得られた結晶化生成物の溶液を濾過するステップ、
d)ステップc)において得られた結晶化生成物を乾燥させるステップ、及び
e)ステップd)において得られた乾燥させた結晶化生成物をC
1-6直鎖又は分枝鎖アルキルラクテート中で可溶化するステップ
を含む方法である。
【0083】
明確性の理由から、「結晶化」という用語に関しては、当該技術分野における通常の意味、すなわち反応混合物を結晶の成長に有利である条件下に置くことを意味する。
【0084】
前記実施形態のいずれか1つに従って、R1、R2及びR3は、前記で定義したものと同一の意味を有する。
【0085】
前記実施形態のいずれか1つに従って、ステップa)はアミド化反応である。当業者は、所望の製品を得るために適用する条件をよく知っている。ステップa)を実施するための適した試薬/条件の制限のない例は、熱条件、塩基又はルイス酸の存在を含む。反応条件の選択は、基材の性質の機能であり、当業者は、反応を最適化するためにそれぞれの場合に最も簡便な条件をうまく選択することができる。好ましくは、ステップa)を、塩基の存在下で、又は150℃を超える温度で反応混合物を加熱することによる熱条件下で実施する。さらにより好ましくは、ステップa)を、塩基の存在下で実施する。適した塩基の制限のない例は、アミン塩基、例えばピリジン、トリメチルアミン、ルチジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンもしくは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、又はアルカリ金属アルコキシド、カーボネートもしくはヒドロキシドを含む。好ましくは、塩基は、アルカリ金属アルコキシド、カーボネート又はドロキシドであってよい。さらにより好ましくは、塩基は、アルカリ金属アルコキシドであってよい。さらにより好ましくは、塩基は、ナトリウム又はカリウムのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドもしくはtert-ブトキシドであってよい。さらにより好ましくは、塩基は、ナトリウム又はカリウムのメトキシドであってよい。
【0086】
前記実施形態のいずれか1つに従って、XはC1-10アルコキシ基を示す。好ましくは、XはC1-5アルコキシ基を示してよい。さらにより好ましくは、XはC1-3アルコキシ基を示してよい。さらにより好ましくは、Xは、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ基であってよく、さらにより好ましくはエトキシ基であってよい。
【0087】
式(II)及び(III)の化合物は、当該技術分野において公知の方法又は国際公開番号第2012/061698号(WO 2012/061698)において報告されているような方法に従って製造されてよい。
【0088】
ステップa)を、溶媒の存在下で又は溶媒の不在下で実施してよい。溶媒を実践理論のために要求又は使用する場合に、かかる反応タイプにおいて現行のあらゆる溶媒を本発明の目的のために使用してよい。制限のない例は、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、THF、Me-THF、MTBE、DME、Et2O、トルエン、ブタノン、ジクロロメタン、ドデカンを含む。溶媒の選択は、式(II)及び(III)の化合物及び/又は塩基の性質の作用であり、当業者は、反応を最適化するためにそれぞれの場合に最も簡便な溶媒をうまく選択することができる。
【0089】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、本発明の方法を、20℃~250℃の温度で実施する。特に、前記温度は、30℃~150℃の範囲である。もちろん、当業者は、出発生成物及び最終生成物の融点及び沸点の作用として好ましい温度、並びに反応又は変換の所望の時間を選択することもできる。
【0090】
前記実施形態のいずれか1つに従って、ステップb)の結晶化を、室温で、5時間超、好ましくは10時間超の期間にわたって反応混合物をゆっくりと冷却することによって実施する。
【0091】
前記実施形態のいずれか1つに従って、本発明の方法のステップc)~e)を、同一の装置で、すなわちNucha Vacuum Filter-Dryer、Filter-dryer又はAgitated Nutsche Filter Dryerとしても公知のAgitated Filter Dryerで実施する。同一装置での濾過、乾燥及び可溶化は、得られた式(I)の化合物の取扱いを減らすことができる。
【0092】
ステップa)~d)を実施することにより得られる式(I)の化合物は結晶の形である。驚くべきことに、式(I)の化合物が、三次元結晶構造の1超のタイプで結晶化できることが発見されている。言い換えれば、式(I)の化合物のいくつかの多形体、及び特にN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドが得られる。特定の有機化合物の多形体は、その明確な三次元結晶構造により、異なる物理的特性、例えば溶解性及び吸湿性を有しうることが周知である。しかしながら、結晶形自体の構造及び特性を予測することは言うまでもなく、特定の有機化合物が異なる結晶形を形成するかどうかを予測することは一般に不可能である。有用な化合物の新たな結晶又は多形体の形の発見は、最終製品、例えばフレーバー付与した又は着香した消費者製品の全体的な特徴を改善するための新たな機会を提供しうる。製剤科学者が設計のために利用できることは材料のレパートリーを拡大する。このレパートリーが有用な化合物の新たな多形体の発見により広がる場合に有利であってよい。化合物N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドの最も安定な多形体は、本発明の方法に従って得られる。したがって、本発明の他の目的は、銅K-アルファ線を使用して得られるその粉末X線回折パターンで、6.86、12.46、15.87、17.38、17.70、17.93、18.43、19.46、20.61、22.08、23.03、23.43、24.36、26.11、27.59、34.68の主なピークにより特徴付けられるN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドの結晶形である。本発明の組成物を、本明細書の以下に記載される方法に従って製造することができる。
【0093】
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に記載するが、ここで略号は当該技術分野において通常の意味を有し、温度は摂氏(℃)で示す。NMRスペクトルのデータは、CDCl3(その他の記載がない限り)中で、1H及び13Cについて360MHz又は400MHzの機器で記録し、ケミカルシフトδは、標準としてTMSを基準としてppmで記載し、結合定数Jを、Hzで記載する。
【0094】
実施例1
本発明の組成物の合成
a)N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミド及びエチルラクテートを含む組成物の製造
温度プローブ、窒素入口を有する還流コンデンサ、隔壁、メカニカルスターラー及びストッパーを備えた1.5リットルの五首フラスコに、N-(チオフェン-2-イルメチル)-1H-ピラゾール-5-アミン(58g、0.324mol)、無水エタノール51g及びエチル2-(p-トリルオキシ)アセテート(72.5g、0.373mol)を装入した。ナトリウムメトキシド(メタノール中30%溶液67g、0.372mol)を添加し、その反応混合物を55℃で7時間加熱した。その反応混合物をエタノール(297g)で希釈し、温度を50℃にした。25%クエン酸水溶液(60.7g)の添加によりpHを11.7に調節した。水(487g)を15分にわたって添加し、得られた懸濁液を68℃まで加熱した。粗溶液を15℃にゆっくりと冷却し、続いて濾過し、その固体をエタノール1部及び水2部を含有する溶液131gで2回洗浄した。そして、その固体を脱塩水(176g)で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドを無色の固体として得た(74.19g、0.227mol)。そして、この固体を、エチルラクテート(456g)で希釈して、14%のN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミド及び86%のエチルラクテートを含む組成物を得た。
【0095】
b)2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド及びエチルラクテートを含む組成物の製造
温度プローブ、窒素入口を有する還流コンデンサ、隔壁、メカニカルスターラー及びストッパーを備えた350mlの五首フラスコに、N-(チオフェン-2-イルメチル)-1H-ピラゾール-5-アミン(9.50g、53.0mmol)、無水エタノール8.71g及びエチル2-(4-エチルフェノキシ)アセテート(11.81g、60.8mmol)を装入した。ナトリウムメトキシド(メタノール中30%溶液10.86g、60.3mmol)を添加し、その反応混合物を55℃で7時間加熱した。その反応混合物をエタノール(49.4g)で希釈し、温度を55℃にした。25%クエン酸水溶液(10.24g)及び水(80.0g)の添加によりpHを10.9に調節した。得られた懸濁液を70℃に加熱した。粗溶液を19℃にゆっくりと冷却し、続いて濾過し、その固体をエタノール1部及び水2部を含有する溶液42.9gで2回洗浄した。そして、その固体を脱塩水(121g)で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミドを無色の固体として得た(12.96g、36.9mmol)。そして、この固体を、エチルラクテート(246g)で希釈して、5%の2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)アセトアミド及び95%のエチルラクテートを含む組成物を得た。
【0096】
分析的に純粋な材料を、エタノールからの固体の再結晶化により得た。
【0097】
実施例2
式(I)の化合物の溶解度
正確な量の粉末を、透明な8mLチューブに秤量し、溶媒3gを添加し、統合オーバーヘッド撹拌機を備えたキャップでチューブを密封した。そのチューブを、すぐにCrystalline PV装置(Technobis Crystallization Systems, The Netherlands)に移し、そして3℃で予め冷却した反応器に置いた。その試料を加熱し、そして60℃まで0.1℃/分の速度で反応器中で撹拌した。Crystalline PV装置のそれぞれの反応器はLEDセンサー及びデジタルカメラを備えており、そのデータは、濁度を検出するためのリアルタイムの透過率として又は視覚化のためのビデオ画像として取得される。全ての粒子が溶解した場合に、溶解温度に達する。温度溶解度曲線を確立するために、異なる濃度で少なくとも4つの試料を測定する。データを、Hoffmannのモデルに従って指数曲線に適合させ、温度の関数としての溶解度を外挿により算出できる。この方法で、フレーバー適用において使用されてよい、異なる溶媒中でのN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドの溶解度を測定した。結果を表1において報告する。
【0098】
【0099】
22℃でエチルラクテート中での溶媒エチルラクテート中でのN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(4-エチルフェノキシ)アセトアミドの溶解度は、26.1%であることが見出された。
【0100】
実施例3
実施例1の実験部に従って得られたN-(1H-ピラゾール-3-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)-2-(p-トリルオキシ)アセトアミドの多形体の分析
a)13C固体NMR分光法
試料を微粉砕し、そして4mmのZrO2ローターに装入した。13C固体NMRスペクトルを、CPMASプローブヘッドを備えたBruker AVII 400MHz分光器で記録した。その試料を4000Hzで室温で回転させた。2msの交差分極ランプでのサイドバンドの完全抑制についてのパルスシーケンス(CPTOSS)を実行し、1万スキャンを蓄積した。そのスペクトルを、20Hzのラインブロードニング関数を使用して変換した。
【0101】
ピーク:(ppmでのδ vs 外部標準アダマンタン);170.33, 156.04, 147.10, 143.55, 131.18, 129.04, 126.57, 125.31, 98.34, 66.48, 48.91, 21.75。
【0102】
b)X線粉末回折
粉末試料を微粉砕し、そしてディスク型試料ホルダーに装入した。ディフラクトグラムを、反射モードのKα1モノクロメーターでPANalytical Empyrean粉末回折計で取得した。2シータスキャン範囲は3~80°であった。
【0103】
粉末X線回折パターンにおける主なピークによって特徴付けられる化合物の結晶型(2シータ度):6.86, 12.46, 15.87, 17.38, 17.70, 17.93, 18.43, 19.46, 20.61, 22.08, 23.03, 23.43, 24.36, 26.11, 27.59, 34.68。
【0104】
分子は、単位セルごとに1つの分子を有するP21/c空間群に配置される。
【0105】
実施例4
本発明の組成物を含むフレーバー付与調合物の製造
グリーンフローラルノートを付与したフレーバー付与調合物を、次の成分を混合することにより製造した:
【表2】
【0106】
このフレーバー付与調合物を、オーラルケア製品に又は菓子類、例えばチューインガムに添加してよい。
【0107】
実施例5
本発明の組成物を含むフレーバー付与調合物の製造
スペアミントノートを付与したフレーバー付与調合物を、次の成分を混合することにより製造した:
【表3】
【0108】
このフレーバー付与調合物を、オーラルケア製品に又は菓子類、例えばチューインガムに添加してよい。