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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】薄膜を処理するレーザ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20230208BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20230208BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20230208BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20230208BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20230208BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01L21/268 T
B23K26/0622
B23K26/073
C23C14/58 C
C23C16/56
H01L21/20
H01L21/268 G
H01L21/268 J
H01L21/268 F
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020505210
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018044705
(87)【国際公開番号】W WO2019028082
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】62/539,183
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/712,796
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/549,254
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・リマノフ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ヴォン・ダデルツェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ショエンリー
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・レオナルド
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/004280(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/004175(WO,A1)
【文献】特開2002-280324(JP,A)
【文献】特表2013-512566(JP,A)
【文献】特開2016-119470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
B23K 26/0622
B23K 26/073
C23C 14/58
C23C 16/56
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に堆積された薄膜のファイバレーザ処理の方法であって、薄膜区域Afが幅Wfおよび長さLfによって画定され、
(a)バースト領域で動作する少なくとも1つの擬似連続波(QCW)ファイバレーザからのレーザビームを提供するステップと、
(b)ビーム整形ユニットを通して前記レーザビームを前記薄膜上に導くステップであって、それによって、前記薄膜の表面上の第1の薄膜区域Abを照射する均質な線状ビームへと前記レーザビームを整形し、前記照射した薄膜区域Abは個々のバーストに対応するとともに前記薄膜区域Afの一部であり、前記薄膜区域Abは長さLbおよび幅Wbによって画定される、ステップと、
(c)ビーム整形光学系と前記薄膜とを距離dyだけ第1の方向に互いに対して連続的に変位させるステップであって、前記距離dyが、順次の照射の間の熱的なポジティブフィードバックが所定のdy閾値を超えるのを防止するように選択され、それによって、前記第1の薄膜区域Abと一緒に第1の細長いカラムを画定する一連の均一な薄膜区域Abを形成する、ステップと、
(d)その後、前記ビーム整形光学系とその上に前記薄膜を有する基板とを、前記第1の方向に対して横向きの第2の方向に距離dxだけ互いに対して変位させて、ステップ(b)~(c)を繰り返すステップであって、前記距離dxが前記照射される膜区域Abの長さより短く、それによって、前記薄膜区域Af上に複数の重なり合う細長いカラムを形成し、前記距離dxおよびdyは、前記薄膜区域Afの各場所が3~50の範囲の所定の数のバーストに露光されるように選択される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ビーム整形ユニットを通して前記レーザビームを導くステップが、
前記レーザビームをレンズレットのアレイを通して案内するステップであって、それによって、前記第1の方向Yに対して傾き前記第2の方向に直交する第3の方向に伝播する複数のビームレットへと前記レーザビームを分割する、ステップと、
前記ビームレットをそれぞれの遅延ガラス対を通して案内することによって、前記ビームレットを一時的に遅らせるステップであって、前記遅延ガラス対が、各々、実質的に等しい焦点距離および前記第3の方向に延びる共通の長手軸を有する離間した正および負の円柱レンズで構成され、前記遅延ガラス対が、各々、その間に軸方向間隙を画定するように互いに対向する、それぞれの曲面を備える、ステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一時的に遅らせるステップがホモジナイザのコヒーレンス効果および製造公差を軽減して、3~50μmの範囲の前記Wbと等しいビーム幅および1~少なくとも500のアスペクト比を有する前記均質な線状ビームを形成しており、前記一時的に遅らせるステップが、
(a)各対の前記離間したレンズを前記第3の方向に沿って互いに対して遠近に軸方向に変位させるステップであって、それによって、前記ビームレットを、前記薄膜の前記表面上の共通の焦点面において合焦させる、ステップ、
(b)前記第3の方向に延びる前記共通の長手軸の周りに、各遅延ガラス対の前記離間したレンズを互いに対して回転させるステップ、
(c)前記共通の長手軸および前記第2の方向Xに垂直に、前記離間したレンズを互いに対して変位させるステップ、または
(d)前記(a)から(c)の組合せ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アレイの側部レンズレットの隣のレンズレットから開始して、円柱形ユニットから下流へと遅延ガラス対の数を増やして配置し、前記遅延ガラス対の各々を順次操作して前記線状ビームを形成するステップをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
最大1GHzのパルス繰返し率で前記レーザビームを出力するように、前記QCWファイバレーザが100%未満のデューティサイクルで動作し、前記パルス繰返し率は、バースト繰返し率よりも高く、100%のデューティサイクルで動作する前記QCWファイバレーザからの前記レーザビームによって引き起こされるものと同一の前記薄膜の熱応答を発生させるのに十分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の方向、前記第2の方向、または前記第1および第2の方向に所望の空間的強度プロファイルを有するように、前記薄膜上に少なくとも1つのさらなるレーザビームを生成して導くステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザビームの偏光を制御するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
基板上に堆積された薄膜を処理するためのファイバレーザシステムであって、
前記基板を支持するステージ、
光の経路に沿ってレーザビームのバーストを出力する少なくとも1つのQCWファイバレーザ発生源、
単一のバーストに対応し、処理される全部の薄膜区域Afの一部をなす第1の照射される薄膜区域Abを形成するために、所望の幾何学寸法、強度プロファイル、および最適なパワーで、前記薄膜の表面上に入射する均質な線状ビームへと前記レーザビームを整形するように構成される、光学的ビーム整形ユニットであって、前記薄膜区域Abが長さLbおよび幅Wbによって画定される、光学的ビーム整形ユニット、ならびに
プロセッサであって、
所定の長さおよび幅の第1の細長いカラムを累積的に画定する一連の照射される薄膜区域Abを形成するように、前記ステージと前記光学的ビーム整形ユニットとを第1の方向に距離dyだけ互いに対して変位させるステップであって、前記距離dyは、熱的なポジティブフィードバックが順次のバーストの間の所定の熱的な閾値を超えるのを防止するように選択される、ステップと、
前記第1の方向Yに直交する第2の方向Xに、前記ステージと前記光学的ビーム整形ユニットとを距離dxだけ互いに対して変位させるステップと、
前記一連の照射される薄膜区域Abによって画定され前記第1のカラムと重なり合う第2のカラムを形成するために、前記第1の方向に、前記ステージと前記光学的ビーム整形ユニットとを変位させるステップと、
全部の前膜区域Afが処理されるまで、前記薄膜区域Af上に複数の重なり合うカラムを形成するために、前記ステージと前記光学的ビーム整形ユニットとを、前記第1の方向および前記第2の方向にそれぞれ距離dyおよびdxだけ繰り返し順次変位させるステップであって、前記距離dxおよびdyは、前記薄膜区域Afの各場所が3~50の範囲の所定の数のバーストに露光されるように選択される、ステップと
を含む一連のステップを実行するように構成される、プロセッサ
を備える、ファイバレーザシステム。
【請求項9】
前記光学的ビーム整形ユニットが、前記レーザビームのコヒーレンスを軽減するように動作するホモジナイザを含み、前記ホモジナイザが、前記第1の方向に対して傾き前記第2の方向に直交する第3の方向に伝播する複数のビームレットへと前記レーザビームをセグメント化する1つまたは複数のレンズレットのアレイを含む、請求項8に記載のファイバレーザシステム。
【請求項10】
ビームレットのそれぞれの経路に配置されて前記ホモジナイザの製造公差を補償するように構成される遅延ガラス対の1つまたは複数のアレイをさらに備え、各遅延ガラス対は、前記第3の方向に延びる共通の細長い軸を有し、2つの軸方向に離間した正および負の円柱レンズで構成され、正の円柱レンズは凸面を、負の円柱レンズは凹面をそれぞれ備え、その間に軸方向間隙を画定する、請求項9に記載のファイバレーザシステム。
【請求項11】
各対の前記正および負の円柱レンズが、
前記薄膜の前記表面上の共通の焦点面において前記複数のビームレットを合焦させるように、互いに対して軸方向に変位可能であり、
長手軸および第2の方向に垂直に、互いに対して直線的に変位可能であり、
前記細長い軸の周りで互いに対して回転可能である、請求項10に記載のファイバレーザシステム。
【請求項12】
遅延ガラス対の数が、前記アレイの最後のレンズレットの隣から開始して増分的に増え、前記最後のレンズレットの前記隣は単一の遅延ガラス対に関連する、請求項9または10に記載のファイバレーザシステム。
【請求項13】
前記ホモジナイザが、前記薄膜の表面上で前記ビームレットを前記線状ビームへと再合成するように構成される円柱レンズ配置をさらに含み、前記線状ビームが高いアスペクト比で整形され、3~50μmのビーム幅が前記照射される膜区域Abの幅に対応する、請求項9から12のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項14】
前記光学的ビーム整形ユニットの上流に、第2高調波、または第2および第3高調波発生器ならびに少なくとも1つの第2のQCWファイバレーザをさらに備え、ファイバレーザが各々、前記整形したレーザビームが前記薄膜区域Afの各場所を実質的に同時に照射するようなパルス繰返し率(PRR)で、ナノセカンドパルスの列を出力する、シングルモードまたはマルチモードQCWファイバレーザであり、前記PRRが100MHzと1GHzとの間で変化する、請求項9から13のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項15】
ファイバレーザと前記光学的ビーム整形ユニットとの間に、アッテネータ、偏光コントローラ、およびコリメータをさらに備える、請求項8から14のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項16】
前記ステージおよびビーム整形光学系の一方または両方が、前記第1の方向および前記第2の方向に変位可能であり、前記距離dyは、前記照射される薄膜区域Abの幅以下であるように選択される、請求項8から15のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項17】
1つのファイバレーザの出力と組み合わせ可能な出力、または前記1つのファイバレーザの前記出力を処理する前記光学的ビーム整形ユニットと類似して構成される指定された光学的ビーム整形ユニットを通して、第1のファイバレーザの前記出力と同期して前記薄膜に送り出される出力を有する、少なくとも1つの第2のQCWバーストファイバレーザをさらに備え、前記線状ビームは、第1の方向と第2の方向の両方で所望の強度プロファイルを有し、ガウス分布、スーパーガウス分布、またはフラットトッププロファイルから選択される、請求項8から16のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項18】
バースト領域で動作する前記QCWファイバレーザが、バースト繰返し率(BRR)で長パルスの列を出力し、前記長パルスが各々、前記BRRよりも高いPRRで短パルスの列へと区画化される、請求項8から17のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【請求項19】
前記第1の方向における前記線状ビームの強度プロファイルをガウス分布、スーパーガウス分布、またはフラットトップ強度プロファイルへと整形するように構成される非円柱形対物ユニットをさらに備える、請求項8から18のいずれか一項に記載のファイバレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームより数桁大きくサイズ決定されたガラスパネル上に堆積された薄膜の2次元(2D)処理のレーザ方法に関する。本開示は、ホモジナイザと組み合わせて開示されるプロセスを実装する、ファイバレーザにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスパネルディスプレイを製造するための、現在普及している方法の1つは、ディスプレイ技術の当業者によく知られている、エキシマレーザ低温多結晶シリコン(LTPS)アニーリングプロセスを利用する。LTPSシステムの製造では、パルス状エキシマレーザの矩形出力が、典型的にはパネルの幅と等しい、またはパネルの幅の半分に等しい長さを有する、長く細い線状ビームへとかなり再整形される。エキシマレーザアニーリング(ELA: excimer laser annealing)プロセスで使用されるエキシマレーザは、低い繰返し率を有するパルス毎に高エネルギーを有する。このことによって、エキシマレーザが、大きいパネルのシングルラインアニーリングに好適となり、ここで、線状ビームは、全パネル幅、または少なくとも幅の半分を包含する。このことによって、全パネルを、レーザの下で、ワンパスまたはツーパスで処理することが可能になる。
【0003】
しかし、高エネルギーをもたらすKHzの周波数では、エキシマレーザは、それ自体が非常に高価で扱いにくいが、およそ48時間の一日の動作期間にわたって、複数のガス交換を必要とし、このことも、エキシマレーザを動作させることを高価にしている。エキシマレーザのこうした属性および他の必要な属性は、エキシマレーザをかなり非効率にしており、エキシマ発生源を所有して動作させる全体的な費用を非常に高くしている。
【0004】
エキシマレーザの上記の欠点が、連続波(CW)、擬似CW(QCW)バーストモード領域で動作するファイバレーザの幅広い使用を導いた。擬似CW(QCW)バーストモード領域は、比較的長いパルスである、(バースト繰返し率(BRR)またはバースト繰返し周波数(BRF)によって特徴付けられる)バースト用、および各バースト内の(キャリアパルス繰返し率(PRR))パルス用の2つの異なる繰返し率によって特徴付けられる。よく知られているように、ファイバレーザは、高効率で、実質的に保守不要で、低コストの丈夫な光源である。
【0005】
LTPSシステムで使用されるファイバレーザは、たとえば、アモルファスシリコン(a-Si)膜のスポットビーム結晶化のための、QCW、パルス状ファイバレーザおよびCWファイバレーザさえ開示する、PCT/US2017/012716(PCT'716)で開示される。PCT'716で開示されるシステムは、全膜にわたってスキャンされるレーザビームによって、一方向で完全にカバーすることができる小さいサイズのパネルに適用可能である。特に、膜上に作られる溶融ゾーンが、スキャン方向に平行移動されて、基板の全幅にわたって、各後続の領域を漸次加熱する。
【0006】
しかし、エキシマレーザ光源と均等な総合パワー出力を出力するように構成されるバーストモードファイバレーザを含むQCWファイバレーザは、一般的に、数桁低いパルスエネルギーを有し、数桁大きい繰返し率を必要とする。パルスエネルギーが低すぎて、パネル幅が線状ビームの長さよりも大きい場合に、単一のファイバレーザからの線状ビームが全パネルを包含することができない。
【0007】
このために、PCT/US16/40222に開示されるように、線状ビームの長い軸/スキャン方向に部分的な線状ビームを一緒にスティッチングすることが必要であり、その結果、得られるポリシリコン粒子構造が、ビームの長さよりも大きい対象の領域にわたって連続する。対象の領域は、全パネル区域またはその部分であってよい。
【0008】
長いビーム軸における2つの隣接する線を一緒にスティッチングすることによって、PCT'716にはないが、参照によって本明細書に完全に組み込まれるUS14/790,170(US‘170)で認知されているかなりの課題が提供される。理想的には、各線状ビームが完全にシャープな縁部を有し、隣接するビームの縁部が正確に当接することになる。これは、線状ビーム縁部の回折限界点広がり関数状鮮鋭度、および機械的な正確さの限界に起因して、物理的に実現可能でない。たとえば、線状ビームの端部は、何らかの柔らかさの精細度を常に有することになる。スティッチングにはいくつかの可能性があるが、しかし、ビームがスティッチングされるのに関係なく、隣接するビーム間の継ぎ目に、ポリシリコン粒子構造の何らかの不連続性、最終的にはアニールしたパネルの低品質がもたらされる何らかのアーチファクトが生じる可能性が大きい。
【0009】
さらに、ビームスティッチングの後に、低いコントラストおよび不均一な輝度によって特徴付けられ、レーザ処理した基板に「リップル状」外観を与え得る、レーザ処理した基板上に観察される現象である、ムラが形成される。ムラは許容できず、ポリシリコン基板の品質が劣るために欠陥と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】PCT/US2017/012716
【文献】PCT/US16/40222
【文献】US14/790,170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、隣接するビームのスティッチングが必要ないような、薄膜区域Afよりもはるかに小さいファイバレーザの線状ビームを使用する、基板パネル上の大きい薄膜区域を処理する方法が必要である。
【0012】
開示される方法を実装するホモジナイザで構成されるファイバレーザがさらに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上で開示された必要性に合った本発明の方法は、限定しないが、ファイバレーザアニーリング(FLA)アモルファスSiアニーリング、順次横方向凝固(SLS)アモルファスSiアニーリング、不純物ドーピング活性化、炭化ケイ素(SiC)アニーリング(たとえば、オーミック接触)、およびポリイミドレーザリフトオフ(LLO)用途を含む様々な用途に適用される。開示される方法は、第2の方向Xにおいて、隣接する照射される薄膜区域間に、カラムとも呼ばれるオーバーラップを設けること、一方、各カラムが第1の方向Yにおいて膜区域を照射することによって形成されることによって、スティッチングをなくす。カラム間の距離dxおよび各カラム内の隣接する照射区域間の距離dyを制御可能に変えることによって、膜区域Afの各照射位置毎の、所望の累積露光期間od/パルス数および温度が達成される。したがって、開示される方法は、2Dプロセスとも呼ばれる。
【0014】
特に、薄膜を処理するファイバの開示される2D方法は、バースト領域で動作するQCWファイバレーザを使用するステップと、好ましくは100KHzより高く、1GHzくらい高くてよい高い繰返しキャリアパルス率(PRR)でレーザビームを出力するステップとによって実装される。レーザビームは、光学的ビーム整形ユニットを通る経路に沿って伝播する。整形したビーム、すなわち線状ビームは、次いで、膜に入射し、それによって、膜の表面上に、第1の照射した薄膜区域Abを形成する。
【0015】
その後、整形したレーザビームと基板は、照射される薄膜区域Abの幅より狭い、広い、または等しい距離dyだけ、第1の方向Yに互いに対し好ましくは連続的に変位される。したがって、隣接する照射される区域Abは、互いに重なり合ってよく、隣接してよく、または第1の方向Yに互いに離間してよい。結果として、膜上に形成される細長いカラムは、一連の、均一に照射される薄膜区域Abによって画定される。
【0016】
線状ビームの長さに対応する幅を有するカラムの完了の後に、距離dxだけ、第2のスキャン方向Xに、薄膜およびビーム整形ユニットを変位させることが続く。距離dxは、以前に形成したカラムの幅より短く選択される。したがって、カラムは、第2の方向に重ね合わされ、このことによって、隣接するカラムをその後にスティッチングする必要がなくなる。
【0017】
本プロセスは、膜区域Afの所望の部分、または全膜区域Afが処理されるまで続く。処理した膜は、したがって、その各場所を、所定の累積期間/バースト数の間、整形したレーザビームに露光させ、薄膜の照射区域Afは、均一な流束量によって特徴付けられる。結果として、照射した薄膜区域Afは、所望の微細構造または他の特性、たとえば、表面シート抵抗または接触抵抗を有する。
【0018】
本方法を実装する、開示されるファイバレーザシステムは、照射される薄膜区域Afを支持する多軸ステージで構成される。少なくとも1つのファイバレーザ発生源が、光学的ビーム整形ユニット中で処理したレーザビームを出力する。光学的ビーム整形ユニットは、全薄膜区域Afの一部である第1の照射される薄膜区域Abを形成するために、所望の幾何学寸法、強度プロファイル、および最適なパワーを有する線状ビームへとレーザビームを整形するように構成される。本発明の2D方法にしたがって薄膜区域Afを処理するステップは、プロセッサによって制御され、それによって、隣接するカラムが第2のx方向に互いに重なり合い、各カラムの個々の照射した膜区域Abが第1のy方向に互いに重なり合う。距離dxおよびdyは、処理される全部または一部の膜区域Afの各場所が、所定の回数だけ整形したビームに露光される、すなわち、所望の露光期間の間照射され、所定の温度を有するように選択される。
【0019】
本発明のファイバレーザシステムは、撮像用もしくは非撮像用フライアイ、バイプリズム、またはレーザビームをセグメント化することに関連する任意の他の知られている構成などといった、ホモジナイザと組み合わせたバーストモードQCWファイバレーザを使用して構築することができる。この実施形態の顕著な特徴によれば、複数の遅延ガラス対がホモジナイザに組み込まれ、ホモジナイザの構成要素の製造公差を補正するように構成される。特に、各遅延ガラス対は、膜の表面上の共通の焦点面において複数のビームレットを合焦させ、それによって、3~50μmの範囲の幅と1~10cmの長さを有する細い線状ビームへとレーザビームを整形するように、回転可能で、直交する平面で互いに対して直線的に変位可能な2つのレンズを含む。
【0020】
開示されるシステムおよび方法の多くの特徴は、それぞれの特徴を説明する従属請求項からより明らかになるように、交換可能に使用することができる。
【0021】
本発明の方法および装置に部分的にまたは任意の組合せで使用できる、上記および他の態様および特徴は、以下の図面からより容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の方法を表すフローチャートである。
図2A】本発明にしたがって処理される薄膜区域Afの概略図である。
図2B】本発明にしたがって処理される薄膜区域Afの概略図である。
図3】マルチビームレット撮像用フライアイホモジナイザおよび交差軸対物レンズを示す図である。
図4】ホモジナイザを図示する図である。
図5】ホモジナイザを図示する図である。
図6A】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図6B】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図7A】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図7B】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図8A】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図8B】光学構成要素の可能な製造欠陥を図示する図である。
図9A】本発明の遅延ガラス対のそれぞれを図示する側面図である。
図9B】本発明の遅延ガラス対のそれぞれを図示する等角図である。
図10A】ホモジナイザの光学的な概要の側面図である。
図10B】ホモジナイザの光学的な概要の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、開示されるシステムに対して、詳細に参照が行われる。可能な場合には、同じまたは同様の部分またはステップに言及するため、図面および説明において、同じまたは同様の参照数字が使用される。図面は、正確なスケールからは遠い、簡略化した形態である。便宜のためおよび明瞭にするためにだけであるが、「接続する(connect)」、「結合する(couple)」といった用語、および同様の用語ならびにそれらの屈折形態は、必ずしも直接的で直の接続を示さず、中間要素またはデバイスを通した接続も含む。
【0024】
開示される方法は、薄膜を処理するために、CWまたはQCWバーストレーザビームを利用する。開示される方法は、線状ビームによって照射される個々または部分的な膜区域Abより数桁大きい薄膜区域Afを処理するように具体的に調整される。知られている従来型の技法とは対照的に、第1のy方向および第2のxの直交方向における、連続し部分的に照射した膜区域Abのスティッチングは必要ない。本開示に記載される方法論は、限定しないが、FLA(ELAに等価な)アモルファスSiアニーリング、SLSアモルファスSiアニーリング、SiCアニーリング(たとえば、オーミック接触)、およびポリイミドLLO用途を含む用途のために使用することができる。
【0025】
図1および図2は、50~500nsの間で変わるバースト期間を有するナノセカンド(ns)バーストを出力するQCWファイバレーザ発生源100を組み込んでいる本発明のシステムを例示する。バースト領域は、バースト繰返し率(BRR)で出力される長パルスまたはバーストによって特徴付けられ、各バーストは、もちろんBRRより高い100MHz~1GHzの範囲のキャリアパルス繰返し率(PRR)で出力される短パルスへと区画化される。
【0026】
薄膜処理で利用されるファイバレーザにとって典型的だが、ファイバレーザ発生源100は、各々が、1ミクロンの範囲で動作し、当業者によく知られている方法で、それぞれ532nmおよび355nmなどといった、それぞれ5xxnmおよび3xxnmで第2高調波または第3高調波の効率的な生成のために必要な、一般的に空間的および時間的にコヒーレントな光を出力する1つまたは複数のYb QCWレーザを含む。しかし、ファイバレーザのそれほど魅力的な特徴であるコヒーレンスは、高いアスペクト比を有する固定した均質の線状ビームを得るために、軽減しなければならない。
【0027】
レーザビームの整形は、パワーアッテネータ、コリメータ、およびいくつかの事例では偏光コントローラなどのプリホモジナイザ光学系104を含む場合がある、光学的ビーム整形ユニット102で行われる。ビーム整形ユニット102の心臓部は、下で十分詳細に議論されるホモジナイザ106である。一方、整形したレーザビームは、下で議論されるように、ポストホモジナイザ光学系108によってさらに案内される。
【0028】
また当業者にはよく理解されるように、ホモジナイザ106は、複数のファイバレーザ発生源100についてのビームコンバイナとして機能することもできる。代替として、複数のレーザ発生源100が、薄膜表面に複数の線状ビームを送り出す示された例と同様の、それぞれの光学方式に関連する。
【0029】
薄膜110は、レーザ発生源100およびビーム整形ユニット102に対して、第1のy方向および第2のx方向に変位することができるステージ112上に支持される。相対的な変位は、これらの構成要素のいずれか一方が、他方が静止している間に動くことができ、または両方の構成要素が互いに対して動くことを意味している。好ましくは、ステージ112は、第1の(y)方向および第2の(x)方向に動くように動作する多軸構成要素である。薄膜区域Abを照射する個々の均質化ビームの単一のバーストは、第1の方向または第2の方向または第1および第2の方向に、所望の空間的強度プロファイルを有する。意図される目的のために、ガウス分布、スーパーガウス分布、またはフラットトッププロファイルが適用可能である。
【0030】
図2A図2Bは、上で議論したシステムの動作原理を図示する。特に、以下の記載は、膜110が第1のY方向および第2のX方向に照射される2Dプロセスに関係する。大面積の薄膜を処理するファイバベースのレーザ方法が小さいファイバレーザビームで実装されることを、この発明が開示することを銘記されたい。結果として、均質化した線状ビームによって照射される部分的な膜区域Abは、照射されるべき所望の膜区域Afより数桁小さい。FLAプロセスは、場所毎に2~50回の範囲の露光を必要とし、実質的に均一に寸法決定された粒子を得るためには、場所毎に10~30回の露光が典型的である。従来技術では、これらの問題を、SLSアニーリングおよびFLAアニーリングの両方で、連続して照射された膜区域Abを連続的にスティッチングすることによって対処した。残念ながら、その結果は、処理した膜区域Afの品質についての要件を全く満たさなかった。特に、第2/スキャン方向Xで、問題がある結果が与えられた。しかし、本発明の方法は、両方の方向への重ね合わせを可能にする。第2の方向Xでのステップサイズまたは距離dxは、ムラ現象を排除するために小さい。
【0031】
図2Aを参照すると、均質化した線状ビームによって照射される部分的な薄膜区域Ab114は、3~50μmの範囲の幅Wbおよび幅Wbよりも500~1000およびそれ以上倍大きい長さLbを有することができる。図2Bを参照すると、第1の部分的な薄膜区域Ab116_1を照射すると、図1のステージ112およびビーム整形ユニット102が、距離dyだけ互いに対して順次変位されて、第1の方向Yに第1のカラム124を形成し、区域Ab116nが第1のカラム124の底の照射区域である。距離dyは変化することができ、所定の閾値を超える順次照射間の熱的なポジティブフィードバックを防止するように選択される。熱的なポジティブフィードバックとは、重ね合わされた膜区域内の場所の温度が極めて高いことを示し、当該温度が極めて高いことは、バーストエネルギー閾値を超えていることを示す。
【0032】
可能な最小の距離dyは、以下の方法で決定することができる。第1のバーストエネルギーEbo=Plaser source/BRRを有する個々のバーストによって照射される、第1の膜区域Abを形成すると仮定する。照射される区域Abの微細構造を分析した後、当業者なら、この区域が加熱されすぎか、低すぎか、良好かを決定することができる。良好であると仮定し、バーストエネルギーEboがわかると、次の区域Abは、区域Abの幅Wb(図2B)よりも大きい距離dy1に形成される。言い換えると、2つの隣接する区域Abが互いに離間され、それぞれの第1の区域Abと第2の区域Abの熱条件は、互いに独立である。バーストエネルギーEboが本当に最適か、または最大かを確かめるため、第2の区域Abを分析して、連続的に形成される区域Abが互いに重なり合うように、操作者が距離dy2を選択する。重なり合った区域が依然として所望の微細構造を有する場合、距離dyが再び減らされて、さらなるバーストが、第1の膜区域Abのより大きい区域と重なり合うさらなる区域Abを形成する。漸進的により小さい距離dyで、重なり合う区域内の膜が、さらに加熱する。結果として、バーストエネルギーEbは、最適なバーストエネルギーEboよりも漸進的に小さくなる。一度バーストエネルギーEboが、FLAの許容品質を実現するのに十分となる可能な最低エネルギーである約50%Eboに減ると、対応する距離dyが、第1の方向Yにおける可能な最小距離であると考えられ、この距離の何らかのさらなる減少は、極めて過熱され重ね合わされた膜区域をもたらすだけの可能性がある。したがって、50%Eboへ最適なバーストエネルギーを下げることは、可能な最小dy距離を示し、これは、ステップ閾値とさらに呼ばれる。もちろん最終的に、この閾値は、90%、80%、70%、および60%であってよい。というのは、これは全体的に経験者によって出された結論に依存するためである。
【0033】
図2Bに示されるように、この距離dyは、区域Abの幅Wbより小さく、このことが、形成されるカラムの各々の後続する部分的な区域Ab間の重ね合わせを可能にする。しかし、この距離は、幅Wbに等しい場合もある。さらに、距離dyが幅Wbより大きく選択される場合、隣接する区域Abが、第1の方向Yに離間される。この場合、中間の照射されない区域が、隣接する照射される区域間に形成される。選択される距離yが閾値に対応しない限り、中間の照射されない区域は、後続のスキャンによってレーザ線状ビームで照射することができる。
【0034】
第1のカラム124が完全に形成された後、ステージ112およびビーム整形ユニットが、距離dxだけ第2の方向Xに変位される。図2Aによりよく示されるように、距離dxは部分的な区域Abの長さより短いために、それぞれの隣接するカラムの対応する部分的な区域Abは、第2の方向Xに重なり合う。第2のカラム126の第1の区域Abが形成された後、ステージ112およびビーム整形ユニット102は、第1の方向Yに互いに対して変位され、第2のカラム126を画定する後続の部分的な区域Abを形成する。使用にあたり、通常はステージ112によって実現される第1の方向Yにおける相対的な変位は、連続的であって、毎秒数百ミリメートルを超えない。そのような速度は、第2の方向Xにおけるそれぞれのカラム124、126、128、および130の部分的な区域Abの位置合わせには非常にわずかにしか影響を及ぼさず、容易に許容することができる。プロセスは、所望の数のカラム1XXをさらに形成して継続する。所望の薄膜区域Afが、膜110の全区域に対応するか、この膜を支持するパネルに対応するか、または全区域の単なるセグメントに対応するかで、上で開示したプロセスは、変化しない。全膜区域を完全に処理するために、第2の方向Xに離間される膜の縁部は、均質化した線状ビームの単に一部を受け取る。典型的には、縁部区域ERは、dxの距離を超えない第2の方向Xにおける幅を有する。さもなければ、膜110の端部領域は、これらの領域に所望の膜の微細構造を設けるのに十分に加熱または冷却されない。上の動作の全ては、プロセッサ125によって制御される。
【0035】
図3は、ホモジナイザ106を図示する。多くのビームホモジナイザは、同じ原理で働く。ビームは、ビームレットへと分割され、ビームレットは、次いで、互いの上に重畳される。このようにして、バイプリズム、オフアクシスシリンダレンズ、および他の知られている構成のいずれかを、原理的に、開示されるシステムに組み込むことができる。図3図5に示される撮像用フライアイ構成を有する撮像用および非撮像用フライアイホモジナイザで、最良の実験結果が得られている。
【0036】
図4および図5を参照すると、撮像用フライアイホモジナイザ106は、当業者には知られているように、レーザビームを複数のビームレット134へと分割する、2つの離間したレンズレットのアレイ130、132で構成される。ビームレットは、第2の方向Xに延ばされ、集光レンズ136によって薄膜110の表面上でマージされる。しかし、ビームレットは、第1の方向Yにややオフセットする場合がある。オフセットを防ぐため、ビームレットは、膜110の表面上に各々延ばされたビームレットを合焦させる、円柱形対物ユニット140を通して案内される。結果として、第1の方向におけるビームレット間のオフセットは最小化される。さらに、対物ユニット140は、狭軸における所望の強度プロファイル(ガウス分布、スーパーガウス分布、トップハット)を実現するように設計される少なくとも1つの非円柱形面を備えることができる。
【0037】
集光レンズ136および対物ユニット140の相対的な位置は、互いに対して固定されない。したがって、図4では集光レンズ136は、レンズ140の前に示されるが、これらのレンズの反対の位置が許容可能である。本開示の文脈内で、レンズ136と140のいずれかまたは両方が、図1におけるポストホモジナイザ光学系108の部分であると考えられる。
【0038】
加えて、ホモジナイザ106は、レンズレットアレイ132から下流に配置される、複数の遅延ガラス対142で構成される。知られているように、遅延ガラス対は、延ばされたビームレットを互いに対して遅らせて、何らかの残っているコヒーレンスをさらに軽減し、図1の補正光学系115を構築する。
【0039】
本発明の別の顕著な特徴によれば、順次遅延ガラス整形対142は、下で説明するように、コヒーレンス効果およびレンズレット製造公差を同時に軽減することを可能にする。
【0040】
図6A図7A、および図8Aは、レンズレットおよび原理的には遅延ガラスなどの他のホモジナイザ構成要素の製造期間に作られる異なる製造欠陥を図示する。図6Aおよび図7Aは、理想的な対称性の軸A-Aの代わりに、円柱レンズが傾いた軸A'-A'で製造されるときに生じる軸ねじれを図示する。軸ねじれは、図6Bに示されるように、線状ビームレットを回転させる。レンズは、くさび-すなわち図8Aに示されるような中心厚変化をもって製造される場合がある。この欠陥は、線状ビームをずらし、図7Bに示されるように、個々の線状ビームレットが互いからオフセットされる結果となる。軸ねじれとくさび欠陥の両方が存在すると、図8Bに示されるように、薄膜の表面上で、ビームレットの互いに対する回転およびねじれが同時に生じる結果となる。これらの製造欠陥の全ては、本発明にしたがって構成される、個々の遅延ガラス対142を使用して補正することができる。
【0041】
図9Aおよび図9Bならびに図10A図10Bを参照すると、知られているように、遅延ガラス対142は、凸面150を備える正レンズ146および凹面152を備える負レンズ148を含み、これらはその間に間隙154を画定し、凹面150は、凸面152のものよりもやや小さい。レンズ146および148を共通の長手軸145(図9A)に沿って互いに対して遠近に変位させることによって、間隙154で無限共役が確保される。言い換えると、第3の方向におけるビームレット経路に沿ったこの直線的な変位は(図9A図10A、および図10B)、膜の表面上の共通の焦点面においてビームレットを合焦するのに役立つ。レンズ146および148は、第3の方向および第2の方向の両方に垂直な方向に、互いに対してやはり変位可能である。この変位によって、くさび公差についての、相対的な中心補償(centration compensation)が調節される。最後に、両方のレンズは、互いに対して回転するように構成され、軸ねじれ公差(ビーム回転)について補償する。中心および回転を同時に調節することによって、くさび公差および軸ねじれ公差を補償する。
【0042】
遅延ガラス対が設置されて順次位置合わせされ、その結果、隣接するビームレットの対のうちの1つのビームレットは、増加した合計ガラス厚(増した遅延)を経験し、ビームレットは、中心および軸ねじれについて順次補償される。言い換えると、図3図5に示されるように、レンズレットは、各アレイの中の側部レンズレットの隣に配置されて始まり、遅延ガラス対の数が増える。遅延ガラス対は、交差軸ビームレット高の変化を最小化させるために、凹/凸の順序を交番して設置することができる。遅延ガラス対の組み合わされる機能によって、個々のビームレットが分離されたまま、限られた距離を最大限使用することが可能になる。
【0043】
上記の実施形態が例としてのみ提示されており、添付した請求項およびそれらの等価物の範囲内であって、本発明を、具体的に記載される以外に実施できることを当業者なら理解されよう。本開示は、本明細書に記載される、各個々の特徴、システム、材料および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、材料、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
100 QCWファイバレーザ発生源、ファイバレーザ発生源、レーザ発生源
102 光学的ビーム整形ユニット、ビーム整形ユニット
104 プリホモジナイザ光学系
106 ホモジナイザ
108 ポストホモジナイザ光学系
110 薄膜、膜
112 ステージ
114 薄膜区域Ab
115 補正光学系
116_1 薄膜区域Ab
116n 区域Ab
124 第1のカラム
125 プロセッサ
126 第2のカラム
128 カラム
130 カラム、レンズレットのアレイ
132 レンズレットのアレイ
134 ビームレット
136 集光レンズ
140 対物ユニット、レンズ
142 遅延ガラス対、遅延ガラス整形対
145 長手軸
146 正レンズ、レンズ
148 負レンズ、レンズ
150 凸面
152 凹面
154 間隙
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B