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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】往復動型流体圧機器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/36 20060101AFI20230208BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230208BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20230208BHJP
【FI】
F16F9/36
F16F9/32 J
F16J15/3204 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020510948
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012962
(87)【国際公開番号】W WO2019189236
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018058027
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 直英
(72)【発明者】
【氏名】前田 英登
(72)【発明者】
【氏名】入江 天
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-281373(JP,A)
【文献】特開2007-107550(JP,A)
【文献】特開平11-132338(JP,A)
【文献】特開2005-016721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブと、
前記チューブ内に軸方向に移動自在に挿入されるピストンロッドと、
前記チューブの内周に設けられ、前記ピストンロッドを支持するロッドガイドと、
前記ロッドガイドに支持され、前記チューブと前記ピストンロッドとの間を閉塞するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
環状に形成され前記ピストンロッドが挿通するベース部と、
前記ベース部から前記軸方向に延在し前記チューブの内周面と前記ロッドガイドの外周面との間に圧縮された状態で設けられる外周リップ部と、を有し、
前記外周リップ部の外周面は、前記ベース部から前記軸方向に離れて設けられ前記チューブの内周面により押圧される外側押圧部を有し、
前記外側押圧部は、前記外周リップ部が圧縮されていない状態において、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成され、
前記ロッドガイドの外周面は、前記チューブの内周面に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記外周リップ部の内周面は、前記傾斜部により押圧される内側押圧部を有し、
前記外周リップ部は、前記チューブの内周面による押圧量が、前記ロッドガイドの前記傾斜部による押圧量よりも小さい、
往復動型流体圧機器。
【請求項2】
請求項1に記載の往復動型流体圧機器であって、
前記内側押圧部は、前記外周リップ部が圧縮されていない状態において、湾曲している、
往復動型流体圧機器。
【請求項3】
請求項1に記載の往復動型流体圧機器であって、
前記チューブの内周面による前記外周リップ部の押圧量は、非圧縮状態において、前記チューブの内周面に直交する方向における前記チューブの内周面と前記外周リップ部の外周面との間の最大寸法であり、
前記ロッドガイドの前記傾斜部による前記外周リップ部の押圧量は、非圧縮状態において、前記ロッドガイドの前記傾斜部に直交する方向における前記傾斜部と前記外周リップ部の内周面との間の最大寸法である
往復動型流体圧機器。
【請求項4】
請求項1に記載の往復動型流体圧機器であって、
前記チューブは、継ぎ目に溶接部を有する電縫管から形成され、
前記電縫管は、前記溶接部の内側に窪み部を有する
往復動型流体圧機器。
【請求項5】
請求項1に記載の往復動型流体圧機器であって、
前記外周リップ部の体積は、前記チューブの内周面と前記ロッドガイドの外周面とにより画定される空間の体積よりも小さい
往復動型流体圧機器。
【請求項6】
チューブと、
前記チューブ内に軸方向に移動自在に挿入されるピストンロッドと、
前記チューブの内周に設けられ、前記ピストンロッドを支持するロッドガイドと、
前記ロッドガイドに支持され、前記チューブと前記ピストンロッドとの間を閉塞するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
環状に形成され前記ピストンロッドが挿通するベース部と、
前記ベース部から前記軸方向に延在し前記チューブの内周面と前記ロッドガイドの外周面との間に圧縮された状態で設けられる外周リップ部と、を有し、
前記外周リップ部の外周面は、前記ベース部から前記軸方向に離れて設けられ前記チューブの内周面により押圧される外側押圧部を有し、
前記外側押圧部は、前記外周リップ部が圧縮されていない状態において、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成され、
前記外周リップ部が圧縮されていない状態において、前記外周リップ部の外径は、前記ベース部における前記ロッドガイド側の面から前記外押圧部までの軸方向区間で一定である、
往復動型流体圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動型流体圧機器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器や流体圧シリンダ等の往復動型流体圧機器において、チューブとピストンロッドとの間を閉塞する環状のシール部材が知られている(JP2007-155078A及びJP2001-173797A)。JP2007-155078A及びJP2001-173797Aに開示される緩衝器では、シール部材は、チューブの内周に固定されるロッドガイドに支持される金属環と、金属環に加硫接着された外周リップ部と、を有する。外周リップ部は、チューブの内周面とロッドガイドの外周面との間に圧縮状態で設けられており、これにより、チューブを密封している。
【発明の概要】
【0003】
JP2007-155078Aに開示される緩衝器では、シール部材の外周リップ部は、圧縮されていない状態において径方向外側に尖って膨らむように形成されている。そのため、緩衝器が組み立てられ外周リップ部がチューブとロッドガイドとにより圧縮された状態では、外周リップ部に局所的な内部応力が生じ、外周リップ部の一部が破損してシール部材の密封性が低下するおそれがある。
【0004】
JP2001-173797Aに開示される緩衝器では、シール部材の外周リップ部は、金属環の外周から先端に向けて湾曲する外周を有している。そのため、チューブをかしめてシール部材をチューブに固定する際に、外周リップ部のうち金属環の外周に結合する部分は、金属からなるチューブと金属環との間に挟まれ過度な応力を受ける。それにより、外周リップ部のクリープ現象が促進されて密封性が早期に低下し、油漏れするおそれがある。
【0005】
本発明は、緩衝器におけるシール部材の密封性を向上させることを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、往復動型流体圧機器は、チューブと、チューブ内に軸方向に移動自在に挿入されるピストンロッドと、チューブの内周に設けられ、ピストンロッドを支持するロッドガイドと、ロッドガイドに支持され、チューブとピストンロッドとの間を閉塞するシール部材と、を備え、シール部材は、環状に形成されピストンロッドが挿通するベース部と、ベース部から軸方向に延在しチューブの内周面とロッドガイドの外周面との間に圧縮された状態で設けられる外周リップ部と、を有し、外周リップ部の外周面は、ベース部から軸方向に離れて設けられチューブの内周面により押圧される外側押圧部を有し、外側押圧部は、外周リップ部が圧縮されていない状態において、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成され、ロッドガイドの外周面は、チューブの内周面に対して傾斜した傾斜部を有し、外周リップ部の内周面は、傾斜部により押圧される内側押圧部を有し、外周リップ部は、チューブの内周面による押圧量が、ロッドガイドの傾斜部による押圧量よりも小さい。
また、本発明のある態様によれば、往復動型流体圧機器は、チューブと、チューブ内に軸方向に移動自在に挿入されるピストンロッドと、チューブの内周に設けられ、ピストンロッドを支持するロッドガイドと、ロッドガイドに支持され、チューブとピストンロッドとの間を閉塞するシール部材と、を備え、シール部材は、環状に形成されピストンロッドが挿通するベース部と、ベース部から軸方向に延在しチューブの内周面とロッドガイドの外周面との間に圧縮された状態で設けられる外周リップ部と、を有し、外周リップ部の外周面は、ベース部から軸方向に離れて設けられチューブの内周面により押圧される外側押圧部を有し、外側押圧部は、外周リップ部が圧縮されていない状態において、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成され、外周リップ部が圧縮されていない状態において、外周リップ部の外径は、ベース部におけるロッドガイド側の面から押圧部までの軸方向区間で一定である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係る緩衝器の部分断面図である。
図2図2は、シール部材周辺の拡大断面図である。
図3図3は、シール部材の拡大断面図であり、チューブに組み付ける前の状態を示す。
図4図4は、図3に示すIV部の拡大であり、チューブに組み付ける前の状態を示す。
図5図5は、図2に示すV-V線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係る往復動型流体圧機器としての緩衝器100について説明する。
【0009】
図1は、緩衝器100の部分断面図である。緩衝器100は、例えば、車両(図示せず)の車体と車軸との間に設けられ、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する。
【0010】
緩衝器100は、チューブ10と、チューブ10に移動自在に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されるピストン30と、を備える。ピストンロッド20は、チューブ10から延出しており、ピストンロッド20がチューブ10内に進入することにより緩衝器100は収縮し、ピストンロッド20がチューブ10から退出することにより緩衝器100は伸長する。
【0011】
以下において、ピストンロッド20に沿う方向を「軸方向」と称し、ピストンロッド20を中心とする放射方向を「径方向」と称する。
【0012】
ピストン30は、チューブ10に摺動自在に収容され、チューブ10内を圧側室11aと伸側室11bとに区画する。圧側室11a及び伸側室11bには、作動流体としての作動油が封入される。ピストン30には、圧側室11aと伸側室11bとを連通する圧側通路31a及び伸側通路31bが形成される。圧側通路31a及び伸側通路31bは、それぞれ、ピストン30に設けられる減衰力発生部としての圧側減衰バルブ40a及び伸側減衰バルブ40bにより開閉される。
【0013】
緩衝器100が収縮する際には、ピストン30は、圧側室11aを縮小し伸側室11bを拡大する方向に移動する。圧側室11aと伸側室11bとの差圧により圧側減衰バルブ40aは開弁して圧側通路31aを開放し、圧側室11aから作動油が圧側通路31aを通じて伸側室11bに流入する。このとき、作動油の流れに圧側減衰バルブ40aにより抵抗が付与され、緩衝器100は減衰力を発揮する。
【0014】
緩衝器100が伸長する際には、ピストン30は、伸側室11bを縮小し圧側室11aを拡大する方向に移動する。伸側室11bと圧側室11aとの差圧により伸側減衰バルブ40bは開弁して伸側通路31bを開放し、伸側室11bから作動油が伸側通路31bを通じて圧側室11aに流入する。このとき、作動油の流れに伸側減衰バルブ40bにより抵抗が付与され、緩衝器100は減衰力を発揮する。
【0015】
このように、圧側減衰バルブ40a及び伸側減衰バルブ40bは、ピストンロッド20の移動に伴って作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する。
【0016】
ピストンロッド20の移動に伴うチューブ10内の容積変化は、チューブ10内にフリーピストン50により形成される気室12によって補償される。
【0017】
チューブ10の内周には、ブッシュ61を介してピストンロッド20を支持するロッドガイド60が設けられる。ロッドガイド60は、チューブ10の内周に設けられた止め輪62に支持される。
【0018】
チューブ10の開口端13は、かしめ加工により内側に折り曲げられており、開口端13とロッドガイド60との間に、チューブ10とピストンロッド20との間を閉塞するシール部材70が設けられている。つまり、シール部材70及びロッドガイド60は、チューブ10の開口端13と止め輪62とにより挟持されてチューブ10に固定される。
【0019】
図2に示すように、シール部材70は、ピストンロッド20が挿通する環状のベース部71と、ベース部71の内周から軸方向に延在する内周リップ部としてのオイルリップ部72及びダストリップ部73と、ベース部71の外周から軸方向に延在する外周リップ部74と、を備える。ベース部71は金属からなる。オイルリップ部72、ダストリップ部73及び外周リップ部74は、弾性体としてのゴム材で一体的に形成されている。すなわち、オイルリップ部72とダストリップ部73とは、ベース部71の内周面とピストン20の外周面との間を軸方向に延びる連結部75を介して互いに連結され、オイルリップ部72と外周リップ部74とは、ベース部71とロッドガイド60との間を径方向に延びる連結部76を介して互いに連結されている。オイルリップ部72、ダストリップ部73、外周リップ部74、連結部75及び連結部76は、加硫接着によりベース部71に接着される。
【0020】
オイルリップ部72は、ベース部71から径方向内側かつピストンロッド20がチューブ10に進入する方向に突出するように形成され、ピストンロッド20の外周に摺接する。緩衝器100が伸長する際には、ピストンロッド20の外周に付着する作動油はオイルリップ部72により掻き落され、チューブ10内に残る。つまり、オイルリップ部72は、チューブ10から作動油が漏出するのを防止する。
【0021】
オイルリップ部72の外周には、環状の溝部72aが形成され、溝部72aに環状のガータースプリング72bが装着されている。ガータースプリング72bによって、オイルリップ部72におけるピストンロッド20に対する締め付けが保障される。
【0022】
ダストリップ部73は、ベース部71から径方向内側かつピストンロッド20がチューブ10から退出する方向に突出するように形成され、ピストンロッド20の外周に摺接する。緩衝器100が収縮する際には、ピストンロッド20の外周に付着する異物はダストリップ部73により掻き落される。つまり、ダストリップ部73は、チューブ10に異物が進入するのを防止する。なお、オイルリップ部72と同様に、ダストリップ部73の外周にガータースプリングが装着されていてもよい。
【0023】
外周リップ部74は、ベース部71からチューブ10の内周に沿って環状に延在し、チューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面との間に圧縮された状態で設けられる。具体的には、ロッドガイド60には、シール部材70に向かって軸方向に突出する突出部60aがチューブ10の内周面と間隔を開けて設けられ、突出部60aの外周面とチューブ10の内周面との間に外周リップ部74が圧縮された状態で設けられる。そのため、外周リップ部74が突出部60aによりチューブ10の内周面に押し付けられ、外周リップ部74とチューブ10の間における作動油の漏出及び異物の進入を防止することができる。
【0024】
突出部60aの外周面は、チューブ10の内周面に対して傾斜した傾斜部60bを含む。そのため、緩衝器100の組立時において、シール部材70の外周リップ部74を突出部60aの外周面とチューブ10の内周面との間に容易に挿入することができる。
【0025】
また、突出部60aの先端面60cは、シール部材70の連結部76と当接している。換言すれば、連結部76には、突出部60aの先端面60cと当接する当接面76aが形成される。
【0026】
図3は、シール部材70の拡大断面図であり、チューブ10に組み付ける前の状態、すなわちシール部材70の外周リップ部74がチューブ10とロッドガイド60とにより圧縮されていない状態を示す。なお、図3では、チューブ10、ピストンロッド20及びロッドガイド60の断面を2点鎖線で示している。
【0027】
図3及び図4に示すように、外周リップ部74は、チューブ10とロッドガイド60の突出部60aとにより圧縮されていない状態(非圧縮状態)では、径方向外側に膨らんでいる。具体的には、外周リップ部74の外周面は、チューブ10の内周面により押圧される外側押圧部74aを有し、外側押圧部74aは、非圧縮状態において最大外径がチューブ10の内径よりも大きくなるように膨らんでいる。
【0028】
外周リップ部74は、非圧縮状態において、外周面が尖ることなく湾曲するように形成されている。そのため、シール部材70がチューブ10に組み付けられた状態において、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力を、非圧縮状態で外周面が尖っている場合と比較して小さくすることができ、外周リップ部74の外周におけるクリープ現象を軽減することができる。したがって、外周リップ部74の外周の破損を防止することができる。これにより、シール部材70の密封性を向上させることができる。
【0029】
外周リップ部74の外側押圧部74aは、ベース部71から軸方向に離れて設けられる。具体的には、外側押圧部74aは、ベース部71から軸方向に離れた第1位置74bと、外周リップ部74の外周面がチューブ10の内周面から離れ始める第2位置74cと、の間に設けられる。そして、外周リップ部74が圧縮されていない状態において、外側押圧部74aは、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成される。そのため、外側押圧部74aの曲率半径を、外側押圧部74aの一部のみが湾曲している場合と比較して大きくすることができる。したがって、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力をより小さくすることができ、外周リップ部74におけるクリープ現象をより軽減することができる。これにより、シール部材70の密封性をより向上させることができる。
【0030】
図4に示すように、第1位置74bは、連結部76の当接面76aを径方向外側に延長した仮想延長面76bよりも、ピストンロッド20がチューブ10から退出する方向(図3及び図4における上方)に位置している。
【0031】
なお、外周リップ部74の外周面は、非圧縮状態において、外側押圧部74aだけでなく、第1位置74bと、外周リップ部74の先端74dと、の間の全体に渡って湾曲していてもよい。この場合には、外周リップ部74の外周面の曲率半径をより大きくすることができる。したがって、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力をより小さくすることができ、外周リップ部74におけるクリープ現象をより軽減することができる。これにより、シール部材70の密封性をより向上させることができる。
【0032】
また、外側押圧部74aは、連結部76の当接面76aより上方に位置する第1位置74bから先端74dに渡って全体的に設けられていてもよい。すなわち、外周リップ部74は、第1位置74bから先端74dに渡ってチューブ10の内周面により押圧されるように形成されていてもよい。
【0033】
外周リップ部74の内周面には、ロッドガイド60の傾斜部60bにより押圧される内側押圧部74eが設けられる。内側押圧部74eは、非圧縮状態において、軸方向に沿う平面部74fと、平面部74fから先端74dにかけて湾曲する湾曲部74gと、を含む。そのため、シール部材70がチューブ10に組み付けられた状態において、外周リップ部74の内周面での局所的な内部応力を、非圧縮状態で外周リップ部74が平面部74fから先端74dにかけて尖っている場合と比較して小さくすることができ、外周リップ部74におけるクリープ現象を軽減することができる。これにより、突出部60aによりチューブ10に向けて外周リップ部74に加えられる押し付け力が弱まるのを防止することができ、シール部材70の密封性を向上させることができる。
【0034】
外周リップ部74は、非圧縮状態において、外側押圧部74aの曲率半径が、内側押圧部74eの湾曲部74gの曲率半径よりも大きい。そのため、シール部材70がチューブ10に組み付けられた状態において、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力は、内周面での局所的な内部応力よりも小さくなる。したがって、外周リップ部74の外周におけるクリープ現象をより軽減することができ、外周リップ部74の外周の破損を防止することができる。これにより、シール部材70の密封性を向上させることができる。
【0035】
チューブ10の内周面による外周リップ部74の押圧量Aは、ロッドガイド60の傾斜部60bによる外周リップ部74の押圧量Bよりも小さい。ここで、チューブ10の内周面による外周リップ部74の押圧量Aは、非圧縮状態において、チューブ10の内周面に直交する方向におけるチューブ10の内周面と外周リップ部74の外周面との間の最大寸法Aとして表される。また、ロッドガイド60の傾斜部60bによる外周リップ部74の押圧量Bは、非圧縮状態において、ロッドガイド60の傾斜部60bに直交する方向における傾斜部60bと外周リップ部74の内周面との間の最大寸法Bとして表される。
【0036】
なお、押圧量A,Bは、それぞれ、非圧縮状態における外周リップ部74の外側押圧部74a及び内側押圧部74eの膨らみ量であってもよい。すなわち、緩衝器100では、外周リップ部74が圧縮されていない状態において、外側押圧部74aの膨らみ量が、内側押圧部74eの膨らみ量よりも小さい。
【0037】
シール部材70では、チューブ10の内周面による押圧量Aがロッドガイド60の傾斜部60bによる押圧量Bよりも小さいので、シール部材70がチューブ10に組み付けられた状態において、外周リップ部74の外周面近傍での内部応力は、内周面近傍での内部応力よりも小さくなる。したがって、外周リップ部74の外周におけるクリープ現象をより軽減することができ、外周リップ部74の外周の破損を防止することができる。これにより、シール部材70の密封性を向上させることができる。
【0038】
内側押圧部74eにおける最も押圧される部位(図4において、押圧量Bで押圧される部位)は、外側押圧部74aにおける最も押圧される部位(図4において、押圧量Aで押圧される部位)よりも、ピストンロッド20がチューブ10に進入する方向(図3及び図4における下方)に配置される。そのため、ロッドガイド60の傾斜部60bによる押圧力が外側押圧部74aによりかかりやすくなる。したがって、シール部材70の密封性をより向上させることができる。
【0039】
なお、内側押圧部74eは、外側押圧部74aの一部よりも図3及び図4における下方に配置されていてもよいし、外側押圧部74aの全部よりも図3及び図4における下方に配置されていてもよい。すなわち、内側押圧部74eは、外側押圧部74aの少なくとも一部よりも図3及び図4にける下方に配置されていていればよい。この場合においても、ロッドガイド60の傾斜部60bによる押圧力が外側押圧部74aにかかりやすくなり、シール部材70の密封性を向上させることができる。
【0040】
チューブ10は、いわゆる電縫管から形成される。電縫管は、鋼板を管状に丸めて縁どうしを突き合わせ、継ぎ目を溶接することにより造られる。溶接部には、電縫管の内側に突出する溶接ビードが形成されるため、電縫管をチューブ10として用いる場合には、溶接部10a(図5参照)を電縫管の内側から切削して溶接ビードを切除する。
【0041】
電縫管は、溶接部のない管部材と比較して安価であるものの、図5に示すように、溶接ビードの切除に伴い、溶接部10aの内側に窪み部10bが形成される。
【0042】
仮に、径方向に尖って膨らむ外周リップを有する関連するシール部材を用いてチューブ10とピストンロッド20との間を閉塞すると、窪み部10bに密着する面積が十分にとれず、作動油がチューブ10から漏れるおそれがある。
【0043】
シール部材70では、図3に示すように、外周リップ部74の外側押圧部74aが全体にわたって湾曲状に膨らんで形成されているため、安価な電縫管を用いても十分な密封性を維持することができる。
【0044】
また、緩衝器100では、外周リップ部74の体積は、チューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面とにより画定される空間63の体積よりも小さい。つまり、当該空間63の体積に対する外周リップ部74の体積の比である充填率は、100%未満である。そのため、外周リップ部74の逃げ場がチューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面との間に形成される。したがって、シール部材70をチューブ10に組み付ける際にチューブ10が膨らむのを防止することができる。
【0045】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0046】
緩衝器100は、チューブ10と、チューブ10内に軸方向に移動自在に挿入されるピストンロッド20と、チューブ10の内周に設けられ、ピストンロッド20を支持するロッドガイド60と、ロッドガイド60に支持され、チューブ10とピストンロッド20との間を閉塞するシール部材70と、を備え、シール部材70は、環状に形成されピストンロッド20が挿通するベース部71と、ベース部71から軸方向に延在しチューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面との間に圧縮された状態で設けられる外周リップ部74と、を有し、外周リップ部74の外周面は、ベース部71から軸方向に離れて設けられチューブ10の内周面により押圧される外側押圧部74aを有し、外側押圧部74aは、外周リップ部74が圧縮されていない状態において、全体に渡って湾曲状に膨らんで形成される。
【0047】
この構成では、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力は、非圧縮状態で外周面が尖っている場合と比較して小さい。したがって、外周リップ部74の破損を防止することができる。また、外周リップ部74がチューブ10とベース部71との間で過度な応力を受けた状態で挟まれるのを防ぐことができる。したがって、外周リップ部74のクリープ現象を抑制することができる。これにより、緩衝器100におけるシール部材70の密封性を向上させることができる。
【0048】
また、緩衝器100では、ロッドガイド60の外周面が、チューブ10の内周面に対して傾斜した傾斜部60bを有し、外周リップ部74の内周面は、傾斜部60bにより押圧される内側押圧部74eを有し、内側押圧部74eは、外周リップ部74が圧縮されていない状態において、湾曲しており、外周リップ部74は、チューブ10の内周面による押圧量Aが、ロッドガイド60の傾斜部60bによる押圧量Bよりも小さい。
【0049】
この構成では、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力は、外周リップ部74の内周面での局所的な内部応力と比較して小さい。したがって、外周リップ部74の外周面近傍部の破損を防止することができ、緩衝器100におけるシール部材70の密封性をより向上させることができる。
【0050】
また、緩衝器100では、チューブ10の内周面による外周リップ部74の押圧量Aは、非圧縮状態において、チューブ10の内周面に直交する方向におけるチューブ10の内周面と外周リップ部74の外周面との間の最大寸法であり、ロッドガイド60の傾斜部60bによる外周リップ部74の押圧量Bは、非圧縮状態において、ロッドガイド60の傾斜部60bに直交する方向における傾斜部60bと外周リップ部74の内周面との間の最大寸法である。
【0051】
この構成では、外周リップ部74の外周面での局所的な内部応力は、外周リップ部74の内周面での局所的な内部応力と比較して小さい。したがって、外周リップ部74の外周面近傍部の破損を防止することができ、緩衝器100におけるシール部材70の密封性をより向上させることができる。
【0052】
また、緩衝器100では、チューブ10は、継ぎ目に溶接部10aを有する電縫管から形成され、電縫管は、溶接部10aの内側に窪み部10bを有する。
【0053】
この構成では、安価な電縫管を用いても十分な密封性を維持することができる。
【0054】
また、緩衝器100では、外周リップ部74の体積は、チューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面とにより画定される空間63の体積よりも小さい。
【0055】
この構成では、外周リップ部74の逃げ場がチューブ10の内周面とロッドガイド60の外周面との間に形成される。したがって、チューブ10が膨らむのを防止することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0057】
上記実施形態では、作動流体として、作動油を使用しているが、作動油の代わりに水や水溶液等の非圧縮性流体を使用してもよい。
【0058】
上記実施形態では、緩衝器100として、チューブ10内に圧側室11a、伸側室11b及び気室12が形成される単筒型緩衝器について説明したが、緩衝器100は、インナーチューブの外周にアウターチューブが設けられインナーチューブとアウターチューブの間にリザーバが形成される複筒型緩衝器であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、緩衝器100について説明したが、本発明は、流体圧シリンダ等の往復動型流体圧機器にも適用可能である。
【0060】
本願は2018年3月26日に日本国特許庁に出願された特願2018-058027に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
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図5