(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】マイクロデバイスの推進および制御
(51)【国際特許分類】
A61B 90/00 20160101AFI20230208BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20230208BHJP
【FI】
A61B90/00
A61B34/35
(21)【出願番号】P 2020511858
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(86)【国際出願番号】 US2018030942
(87)【国際公開番号】W WO2018204687
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-26
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519392041
【氏名又は名称】シュピゲルマッハー、マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0225634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
A61B 34/35
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織に移植するための、かつ粘弾性媒体内を移動するように適合されているデバイスであって、前記デバイスは、
第1の材料(M1)を含み、かつ前記粘弾性媒体内においてある方向を有する、主要本体であって、第1の閾値(T1)での第1の刺激場(SF1)の印加時に、前記主要本体の前記方向が変化する、該主要本体と、
第1の構成を有し、かつ第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)であって、前記第2の材料は、エラストマーを含み、前記記憶形状要素は、第2の閾値(T2)での第2の刺激場(SF2)の印加時に、第2の構成を採用する、該1つ以上の記憶形状要素と、を含み、
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場は、磁気刺激場であり、
前記記憶形状要素のうちの少なくともいくつかの材料は、互いに異なる(M2
i≠M2
j、i≠j)、デバイス。
【請求項2】
前記第2の材料は、前記第1の材料とは異なる(M2≠M1)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場は、同じ性質および同じ方向のものであり、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の材料および前記第2の材料のうちの少なくとも1つは、マイクロ粒子またはナノ粒子の形状を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記記憶形状要素の前記第1の構成または前記第2の構成は、細長い形状、フィルム、ワイヤ、ストリング、ストリップ、プラグ、シート、膜、鞭毛、コイル、らせん、アーム、ジョイント、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記記憶形状要素の少なくとも1つは、前記主要本体の外部に取り付けられており、かつ前記粘弾性媒体内で前記主要本体を推進するように適合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2の刺激場の前記印加は、前記第2の閾値を上回るおよび下回る前記第2の刺激場のサイクルを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
生物学的組織に移植するための、かつ粘弾性媒体内を移動するように適合されているデバイスであって、前記デバイスは、
第1の材料(M1)を含み、かつ前記粘弾性媒体内においてある方向を有する、主要本体であって、第1の閾値(T1)での第1の刺激場(SF1)の印加時に、前記主要本体の前記方向が変化する、該主要本体と、
第1の構成を有し、かつ第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)であって、前記第2の材料は、エラストマーを含み、前記記憶形状要素は、第2の閾値(T2)での第2の刺激場(SF2)の印加時に、第2の構成を採用する、該1つ以上の記憶形状要素と、を含み、
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場は、磁気刺激場であり、
前記主要本体は、前記主要本体の前記方向を操縦するように構成されている、少なくとも2つのフィンをさらに含む、デバイス。
【請求項9】
前記フィンは、前記第1の材料を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記フィンは、前記主要本体に対してある角度をなす極性方向を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フィンは、前記主要本体の外部におよび対称的に取り付けられている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項12】
前記フィンは、前記主要本体に対して傾斜するように構成されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項13】
生物学的組織に移植するための、かつ粘弾性媒体内を移動するように適合されているデバイスであって、前記デバイスは、
第1の材料(M1)を含み、かつ前記粘弾性媒体内においてある方向を有する、主要本体であって、第1の閾値(T1)での第1の刺激場(SF1)の印加時に、前記主要本体の前記方向が変化する、該主要本体と、
第1の構成を有し、かつ第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)であって、前記第2の材料は、エラストマーを含み、前記記憶形状要素は、第2の閾値(T2)での第2の刺激場(SF2)の印加時に、第2の構成を採用する、該1つ以上の記憶形状要素と、を含み、
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場は、磁気刺激場であり、
前記主要本体は、密閉可能な空洞をさらに含み、前記記憶形状要素が前記第1の構成にあるとき、前記空洞は、閉鎖されており、前記第2の構成にあるとき、前記空洞は、開放している、デバイス。
【請求項14】
前記密閉可能な空洞は、治療エンティティ、治療用充填物、診断用充填物、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを一時的に収容するように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記密閉可能な空洞は、前記主要本体を推進するように構成されている、排出材料を一時的に収容するように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記空洞を一時的に密閉するように構成されている、高感度密閉蓋をさらに含み、前記高感度密閉蓋は、環境閾値に応答して開放されるように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記記憶形状要素は、前記空洞のための密閉蓋として構成されており、前記記憶形状要素の構成は、前記密閉可能な空洞を開放および/または閉鎖する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記記憶形状要素は、第1のアームを含み、前記第2の刺激場の印加時に前記空洞の密閉蓋を引くおよび/または押す、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1のアームは、ばね、つる巻きばね、板ばね、ロッド、シャフト、ポール、およびバーから選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
生物学的組織に移植するための、かつ粘弾性媒体内を移動するように適合されているデバイスであって、前記デバイスは、
第1の材料(M1)を含み、かつ前記粘弾性媒体内においてある方向を有する、主要本体であって、第1の閾値(T1)での第1の刺激場(SF1)の印加時に、前記主要本体の前記方向が変化する、該主要本体と、
第1の構成を有し、かつ第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)であって、前記第2の材料は、エラストマーを含み、前記記憶形状要素は、第2の閾値(T2)での第2の刺激場(SF2)の印加時に、第2の構成を採用する、該1つ以上の記憶形状要素と、を含み、
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場は、磁気刺激場であり、
前記主要本体は、空洞をさらに含み、前記記憶形状要素は、前記第2の刺激場の印加時に、前記空洞内に収容された物質を前記空洞から押し出すように構成されている、第2のアームを含む、デバイス。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載のデバイスと、
前記第1の刺激場および前記第2の刺激場の印加を制御するように構成された遠隔制御モジュールと、を含む、システム。
【請求項22】
哺乳類対象の試験管内、生体外、生体内、およびヒト患者の生体内から選択される、特定の場所へ、および/または特定の場所から、前記デバイスを送達するおよび/または引き戻すように構成されている、送達および/または引き戻しモジュールをさらに含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記送達および/または引き戻しモジュールは、磁化可能な針、拡張可能な磁気要素、磁化可能な表面、空気圧要素、電磁要素、超音波要素、展開可能なメッシュ、展開可能なマイクロネット、吸引要素、およびそれらの任意の組み合わせから選択される取り付け要素を含む、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
前記遠隔制御モジュールは、粘弾性媒体内の前記デバイスの位置および配向を位置特定および表示するように構成されている、監視デバイスを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
ヒト以外の対象の粘弾性流体内の前記主要本体の運動を操作するために、
前記第1の刺激場及び前記第2の刺激場のうちの少なくとも1つを、請求項1~20のいずれか1項に記載のデバイスに印加するステップを含む、方法。
【請求項26】
操作は、下限閾値である
前記第1の閾値に対応する
前記第1の刺激場を介して、前記主要本体を所望の方向に操縦するステップ、および/または、前記第2の閾値に対応する
前記第2の刺激場を介して、前記記憶形状要素の構成を修正することにより、前記主要本体を推進するステップ、を含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記デバイスの空洞に、選択された充填物を外部から充填するステップ、
前記デバイスを処置された対象へ送達するステップ、
前記粘弾性媒体内の前記デバイスの位置および配向を監視するステップ、
前記選択された充填物を前記空洞から所望の位置で解放するステップ、
さらなる診断情報のために、前記対象を撮像して、前記デバイスを位置特定するステップ、または
前記デバイスを所定の場所から引き戻すステップ、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
前記送達するステップは、注入、嚥下の提供、カテーテルを介した貫通のうちの少なくとも1つを含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記選択された充填物を前記解放するステップは、前記空洞の密閉蓋が開放されるように、前記第2の閾値での前記第2の刺激場を介して、前記記憶形状要素の前記構成を修正するステップを含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記選択された充填物を前記解放するステップは、選択された環境閾値を提供することによって、高感度密閉蓋を開放するステップを含む、請求項
27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月4日に出願された米国仮特許出願第62/501,156号に対する利益を主張し、その優先日は本明細書に主張される。
【背景技術】
【0002】
微小物体(マイクロロボットと呼ばれることもある)の磁気駆動推進のために、多くの技術が提案されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,768,501号は、1空間次元において20ナノメートルから100ミクロン(マイクロメートル)までの範囲の典型的なフィーチャーサイズを有する磁気駆動プロペラ(MAP)の製作および適用のための方法およびシステムを記載している。
【0003】
磁気駆動の別の技術は、Fe3O4磁性ナノ粒子(MNP)の鎖によって導入される磁気異方性を利用する、エラストマーフィルムの選択的および方向性のある駆動である。参照により本明細書に組み込まれる、Mishraらの、「Selective and directional actuation of elastomer films using chained magnetic nanoparticles」、 Nanoscale 8 (2016)、1309~1313ページを参照されたい。均一な磁場、または磁場勾配の下では、MNP間の双極子相互作用は、鎖の方向に沿った磁化を促進し、かつ選択的なリフティングを引き起こす。
【0004】
したがって、少なくとも1つの印加された刺激場(SF)によって、粘弾性媒体内を移動することができるデバイスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、生物学的組織に移植するための、かつ粘弾性媒体内を移動するように適合されているデバイスを提供し、本デバイスは、
●第1の材料(M1)を含み、かつ粘弾性媒体内においてある方向を有する、主要本体であって、第1の閾値(T1)での第1の刺激場(SF1)の印加時に、主要本体の方向が変化する、該主要本体と、
●第1の構成を有し、かつ第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)であって、第2の材料は、エラストマーを含み、MSEは、第2の閾値(T2)での第2の刺激場(SF2)の印加時に、第2の構成を採用する、該1つ以上の記憶形状要素(MSE)と、を含む。
【0006】
一実施形態では、第2の材料(M2)は、第1の材料とは異なる(M2≠M1)。一実施形態では、SF1およびSF2は、同じ性質(すなわち、同じ物理的原理に基づき、例えば、両方の場は、超音波(US)場、磁場、電場、または電磁場である)および同じ方向のものであり、T2は、T1よりも大きい。一実施形態では、MSEのうちの少なくともいくつかの材料は、互いに異なる(M2i≠M2j、i≠j)。一実施形態では、M1およびM2のうちの少なくとも1つは、マイクロ粒子またはナノ粒子の形状を含む。一実施形態では、MSEの第1または第2の構成は、細長い形状、フィルム、ワイヤ、ストリング、ストリップ、プラグ、シート、膜、鞭毛、コイル、らせん、アーム、ジョイント、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも1つのMSEは、主要本体の外部に取り付けられており、かつ粘弾性媒体内で主要本体を推進するように適合されている。一実施形態では、SF2の印加は、第2の閾値(T2)を上回るおよび下回る第2の刺激場のサイクルを含む。
【0007】
一実施形態では、主要本体は、主要本体の方向を操縦するように構成されている、少なくとも2つのフィンをさらに含む。一実施形態では、フィンは、第1の材料(M1)を含む。一実施形態では、フィンは、主要本体に対してある角度をなす極性方向を含む。一実施形態では、フィンは、主要本体の外部におよび対称的に取り付けられている。一実施形態では、フィンは、主要本体に対して傾斜するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、主要本体は、密閉可能な空洞をさらに含み、MSEが第1の構成にあるとき、空洞は、閉鎖されており、第2の構成にあるとき、空洞は、開放している。一実施形態では、密閉可能な空洞は、治療エンティティ、治療用充填物、診断用充填物、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを一時的に収容するように構成されている。一実施形態では、密閉可能な空洞は、主要本体を推進するように構成されている、排出材料を一時的に収容するように構成されている。
【0009】
一実施形態では、デバイスは、空洞を一時的に密閉するように構成されている、高感度密閉蓋をさらに含み、高感度密閉蓋は、環境閾値に応答して開放されるように構成されている。一実施形態では、MSEは、空洞のための密閉蓋として構成されており、MSEの構成は、密閉可能な空洞を開放および/または閉鎖する。一実施形態では、MSEは、第1のアームを含み、SF2の印加時に空洞の密閉蓋を引くおよび/または押す。一実施形態では、第1のアームは、ばね、つる巻きばね、板ばね、ロッド、シャフト、ポール、およびバーから選択される少なくとも1つの要素を含む。一実施形態では、主要本体は、空洞をさらに含み、MSEは、SF2の印加時に、空洞内に収容された物質を空洞から押し出すように構成されている、第2のアームを含む。
【0010】
一実施形態では、本発明は、
●本明細書に記載のデバイスと、
●SF1およびSF2の印加を制御するように構成された遠隔制御モジュールと、を含む、システムを提供する。
【0011】
一実施形態では、遠隔制御モジュールは、磁気、電気、音響、超音波、熱、X線、電波、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、刺激場用の少なくとも1つのインデューサを含む。
【0012】
一実施形態では、システムは、哺乳類対象の試験管内、生体外、生体内、およびヒト患者の生体内から選択される、特定の場所へ、および/または特定の場所から、デバイスを送達するおよび/または引き戻すように構成されている、送達および/または引き戻しモジュールをさらに含む。一実施形態では、送達および/または引き戻しモジュールは、磁化可能な針、拡張可能な磁気要素、磁化可能な表面、空気圧要素、電磁要素、超音波要素、展開可能なメッシュ、展開可能なマイクロネット、吸引要素、およびそれらの任意の組み合わせから選択される取り付け要素を含む。一実施形態では、遠隔制御モジュールは、粘弾性媒体内のデバイスの位置および配向を位置特定および表示するように構成されている、監視デバイスを含む。
【0013】
一実施形態では、本発明は、対象の粘弾性流体(粘弾性媒体)内の主要本体の運動を操作するために、刺激場(SF)のうちの少なくとも1つを、本明細書に記載のデバイスに印加するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、操作は、下限閾値(T1)に対応するSF1を介して、主要本体を所望の方向に操縦するステップ、および/または、第2の閾値(T2)に対応するSF2を介して、MSEの構成を修正することにより、主要本体を推進するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、方法は、
●デバイスの空洞に、選択された充填物を外部から充填するステップ、
●デバイスを処置された対象へ送達するステップ、
●粘弾性媒体内のデバイスの位置および配向を監視するステップ、
●選択された充填物を空洞から所望の場所で解放するステップ、
●さらなる診断情報のために、対象を撮像して、デバイスを位置特定するステップ、または
●デバイスを所定の場所から引き戻すステップ、のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0015】
一実施形態では、送達するステップは、注入、嚥下の提供、カテーテルを介した貫通のうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、選択された充填物を解放するステップは、空洞の密閉蓋が開放されるように、第2の閾値(T2)でのSF2を介して、MSEの構成を修正するステップを含む。一実施形態では、選択された充填物を解放するステップは、選択された環境閾値を提供することによって、高感度密閉蓋を開放するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に請求されている。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、動作構成および動作方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれるときに、以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解され得る。
【0017】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、鞭毛を有するデバイスを概略的に示す。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、鞭毛を有するデバイスを概略的に示す。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態による、鞭毛を有するデバイスを概略的に示す。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有するデバイスを概略的に示す。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有するデバイスを概略的に示す。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図5C】本発明のいくつかの実施形態による、空洞を有する別のデバイスを概略的に示す。
【
図6A】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図6B】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図6C】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図6D】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図6E】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図6F】本発明のいくつかの実施形態による、フィンを備えたデバイスを概略的に示す。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態によるシステムを概略的に示す。
【0018】
例解を簡単かつ明確にするために、図に示す要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。例えば、要素のいくつかの寸法は、明確にするために、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似する要素を示すため、参照番号を図の間で繰り返すことがある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられている。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで本発明を実施することができることが当業者には理解されるであろう。他の例では、本発明を曖昧にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。
【0020】
本明細書における用語「デバイス」は、生物学的組織に移植可能な任意のオブジェクトを示す。本明細書における用語「キャリアデバイス」および「キャリア」は、医療ペイロードを組織内に運搬および解放することができるデバイスを示す。用語「医療ペイロード」、または医療状況で同義に使用される用語「ペイロード」および「積荷」は、本明細書では、任意の物質または材料、いくつかの関連する治療材料の組み合わせ、診断法、あるいは、治療および診断法の組み合わせを含むと理解される。本発明の特定の実施形態では、流体ペイロードが使用され、本明細書における用語「流体」は、ペイロードが流れることができることを示す。本発明の特定の実施形態では、固体ペイロードが使用され、本明細書における用語「固体」は、離散粒子の形状でペイロードを解放することができることを示す。デバイスは、3Dプリンティング、成形、鋳造、エッチング、リソグラフィ、薄膜技術、堆積技術などを含むがこれらに限定されない、既知の製造技術によって製作されてもよい。
【0021】
本発明の様々な実施形態において、キャリアデバイスは、生物学的組織への移植のために小型化されている。本明細書における用語「小型化」(デバイスに関して)は、ミリメートルからセンチメートルスケールのデバイス、「マイクロデバイス」と呼ばれるマイクロメートル(「ミクロン」)スケールのデバイス、「ナノデバイス」と呼ばれるナノメートルスケール(数百ナノメートルを含む)のデバイス、を含むがこれらに限定されない、小型のデバイスを示す。デバイス自体が上記のようなサイズスケールを有するだけでなく、デバイスの個々の構成要素も同様のスケールを有する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、デバイスの運動の推進、操縦および制御などの用途のために、選択的かつ方向性のある駆動用に構成されている、鎖状磁性粒子を有するエラストマーフィルムを含むマイクロ/ナノデバイスが提供される。いくつかの実施形態によれば、エラストマーフィルムは、その区画を開放するおよび/または閉鎖するなど、デバイスの要素を制御することができる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、100~5,000マイクロメートル、10~100マイクロメートル、1~10マイクロメートル、200~1,000ナノメートル、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、200ナノメートル~5,000マイクロメートルまでである。
【0024】
当業者は、記憶形状要素(MSE)は、いくつかの実施形態によれば、刺激場が除去されるとき、または少なくとも事前に定義された閾値/複数可を下回る(もしくは代替的に、上回る)とき、変形された状態から(印加された刺激場の下で変形された)、元の形状に戻ることができる、スマート材料を指し得ることを理解するであろう。
【0025】
当業者は、「閾値に対応する刺激場を印加する」というフレーズまたは同様のフレーズは、閾値を交差する(特定の用途に応じて上回るまたは下回る)ように刺激場を印加し、それによってデバイスの少なくとも1つの材料が反応することを指し得ることを理解するであろう。非限定的な例では、熱刺激場を印加することができ、加熱刺激の場合、所定の温度を上回ると反応が発生し(材料の融解など)、冷却刺激の場合、所定の温度を下回ると反応が発生する(材料の凍結など)。
【0026】
ここで、
図1A~
図1Cおよび
図2A~
図2Bを参照する。いくつかの実施形態によれば、デバイス100、200は、少なくとも1つの刺激場(SF)の印加に応答して、粘弾性媒体内を移動および進行するように提供および構成されており、デバイス100、200は、
-第1の材料(M1)を含む主要本体110、210であって、M1は、第1の閾値(T1)(より高いまたはより低い)に対応して印加されたSFに応答するように構成されている、該主要本体と、
-第2の材料(M2)を含む、1つ以上の記憶形状要素(MSE)120、220であって、M2は第2の閾値(T2)(より高いまたはより低い)に対応して印加されたSFに応答して変形するように構成されている、該1つ以上の記憶形状要素(MSE)と、を備え、
M1は、粘弾性媒体内の主要本体の方向の操作を可能にするように選択されており、M2は、MSE形状の操作を可能にするように選択されている。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、MSEは、SFが除去されると、または、(上で言及される)第2の閾値よりも低いもしくは高いSFがそれぞれ印加されると、元の形状に戻るように構成されている。いくつかの実施形態によれば、SFは、パルス(オン/オフ)方式で印加される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、MSEの形状/複数可は、粘弾性媒体内の主要本体を推進するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、第2の材料は、第1の材料とは異なる(M2≠M1)。いくつかの関連実施形態によれば、材料M1およびM2は両方とも、同じタイプの同じSFに反応(それぞれ、応答/変形)するように構成されている。いくつかの関連実施形態によれば、材料M1およびM2は、SFの印加時に、それらの対応する第1および第2の閾値(T1≠T2)が、最初に第1の材料(SFが主要本体に応答させる)の活性化を可能にし、次いで、より高いSFの印加で、第2の材料の活性化を可能にする(SFがMSEを変形させる)か、またはその逆で、最初に第2の材料を活性化し、次いで、より高いSFの印加で第1の材料を活性化するように、選択された印加に応じて選択される。磁気刺激場を印加した例は、実施例1および2に記載されている。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、第2の材料(M2)は、印加されたSF(第2の閾値T2に対応する)がMSEを変形させ、印加されたSFの方向に沿ってその形状を整合させるように、構成されている。
図1Aは、SFの印加前の元の形状のMSE120を示し、
図1Bは、第2の閾値(T2)に対応するSFの印加中の、整合されたMSE120を示す。
図1A~
図1Cおよび
図6A~
図6Eにおいて、MSE120、620は、粘弾性媒体内の主要本体を推進するように構成された、鞭毛/複数可として設計されている。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、第2の材料(M2)は、印加されたSF(第2の閾値T2に対応する)がMSEを所定の形状(元の形状とは異なる)に変形させるように構成されるように、選択される。
図1Aは、SFの印加前の元の形状(右側にねじられた)のMSE120を示し、
図1Cは、第2の閾値(T2)に対応するSFの印加中の、所定の変形された形状のMSE120(左側にねじられた)を示す。別の例は、SFの印加前の元の(圧縮された)形状のMSE220を示す
図2Aにあり、
図2Bは、第2の閾値(T2)に対応するSFの印加中の、所定の変形された(拡張された)形状のMSE220を示す。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、複数のMSEの場合、それらの材料M2は、少なくともいくつかのMSEに対して異なる、または各MSEごとに異なるように選択することができ、すなわち、MSEの各々が、それぞれの第2の閾値(T21、T22、...T2n)に対応する印加されたSFの下で変形するように、材料(M21、M22、...M2n)を選択する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、主要本体は、細長い、軸対称、中心対称、キラル、ランダム、およびそれらの任意の組み合わせから選択される形状を含む。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、SFに対する主要本体および/またはその部分の応答は、回転、配向修正、推進、振動、波動、並進、拡張、収縮、離れて傾斜、向かって傾斜、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、粘弾性媒体は、ヒトの血液、哺乳類の血液、生物学的組織、生物学的器官および/またはシステム、天然ゲル、合成ゲル、リンパ、胆汁ならびにそれらの組み合わせから選択される材料を含む。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、刺激場は、磁気、電気、電磁気、光学、音響、超音波、光音響、電波、熱、pH、溶液、免疫学的、酸化還元、酵素、タンパク質、X線、細胞内区画固有の環境、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、刺激場の少なくとも1つは外部から印加される。いくつかの実施形態によれば、刺激場の少なくとも1つは内部から印加される。いくつかの関連実施形態によれば、内部から印加される刺激場は、場所に関連する、または依存する、すなわち、デバイスの現在の場所、非限定的な例では、人間(または他の哺乳類)の体内の特定の臓器のpHレベルに依存する。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、第1および第2の材料の少なくとも1つは、マイクロ粒子またはナノ粒子の形状を含む。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのMSEは、細長い形状、フィルム、ワイヤ、ストリング、ストリップ、シート、プラグ、膜、鞭毛、コイル、らせん、アーム、ジョイント、およびそれらの任意の組み合わせの群から選択される構成を有するエラストマー材料(背景技術において言及)を含む。エラストマーフィルムについて本明細書で開示される実施形態はまた、本明細書で上記に提示された列挙からの他の構成に適用する。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのMSEは、埋め込まれた電気、磁気感受性材料、音響感受性材料、マイクロワイヤ、多様な微粒子、微小不規則性、層状2D/3Dナノ/マイクロ構造、pH感受性材料、酸化還元感受性材料、可逆的または不可逆的なトポロジー変化をトリガする特定の酵素感受性コーティング、およびそれらの任意の組み合わせを含む、複合メモリポリマーから選択される材料を含む。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、および、少なくとも
図1A~
図1Cに示すように、少なくとも1つのMSE120(例えば鞭毛)が主要本体の外部に取り付けられており、第2の閾値(T2)に対応するSFの印加に応答して、粘弾性媒体内で主要本体を推進するように構成されている。いくつかの関連実施形態によれば、SF印加は、第2の閾値(T2)を上回るおよび下回るSFのサイクルを含む。いくつかの関連実施形態によれば、印加のサイクルは、刺激場の周波数印加であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、
図6A~
図6Cに示すように、主要本体(デバイス600)は、主要本体の方向を操縦するように構成されている、少なくとも1つのフィン630をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、SFの印加前(
図6Aのように)、および
図6Bおよび
図6Cのように、SFの異なる方向について、第1の閾値(T1)に対応するSFの印加中を示す、
図6A~
図6Cに示すように、フィンは、主要本体に対して傾斜するように構成されており(610)、それにより、粘弾性媒体内で主要本体を回転、推進、および/または回旋させる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、フィンは主要本体よりも小さい。いくつかの実施形態によれば、フィンは軸対称配列で位置付けられている。いくつかの実施形態によれば、フィンの少なくとも1つは可撓性である。いくつかの実施形態によれば、フィンの少なくとも1つは剛性である。いくつかの実施形態によれば、フィンはピンおよび/またはジョイントによって主要本体に取り付けられている。いくつかの実施形態によれば、フィンは、接着要素または方法を介して主要本体に取り付けられている。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、フィン630は、第3の材料(M3)を含む。いくつかの実施形態によれば、材料M1およびM3は両方とも、同じSFに反応するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、フィンは、第1の材料(M3=M1)を含む。いくつかの実施形態によれば、フィンは、主要本体と同じ一定の極性方向を有する。例えば、
図6A~
図6Fに示すように、磁化極性(または代替力場ベクトル)の方向は、主要本体610の対称軸に対して平行であるか、またはわずかに傾斜している。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、および、
図2A~
図2B、
図3A~
図3B、
図4A~
図4B、
図5A~
図5Bおよび
図5Cのデバイス200、300、400、500、550で示すように、主要本体210、310、410、510、560はさらに、密閉可能な空洞211、311、411、511、561を含む。いくつかの実施形態によれば、空洞の容積は、主要本体の5%~95%から選択される。いくつかの実施形態によれば、空洞の容積は、主要本体の体積の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%から選択される。
【0046】
いくつかの関連する実施形態によれば、密閉可能な空洞は、ジェット充填物、診断用充填物、治療用充填物、治療エンティティ、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される所定の充填物を一時的に収容するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、密閉可能な空洞は、複数の治療エンティティおよび複数の診断用充填物を、それらの所定の組み合わせで一時的に収容するように構成されている。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、ジェット材料は、遠隔で活性化され、ジェットのトルクは、粘弾性材料内の主要本体を推進するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、所定のレベルでのSFの印加は、ジェット推進生成材料を活性化する。
【0048】
いくつかの関連する実施形態によれば、MSE320、420、520、562は、第2の閾値(T2)に対応する(上回るまたは下回る)SFの印加に応答して、例えば、
図3B、
図4B、
図5B、および
図5Cにそれぞれ示すように、空洞の密閉蓋(膜)320、412、512、562を開放することにより、空洞の開放および閉鎖を制御するように構成されている。
【0049】
いくつかの関連する実施形態によれば、MSE220、320、420、520、562は、第2の閾値(T2)に対応する(上回るまたは下回る)SFの印加に応答して、空洞211、311、411、511、561内に収容されている選択された充填物を解放するように構成されている。例えば、
図2Bに示すように、空洞の小さな開口孔213を介して充填物を押す、または押し出すことにより、あるいは、
図3B、
図4B、
図5B、および
図5Cに示すように空洞を開放することによって、解放するように構成されている。
【0050】
いくつかの関連する実施形態によれば、治療エンティティは、空洞の中へ充填することができ、放射性核種、アルファ粒子および中性子放射体、小ペプチド、ペプトイド、抗体、抗体-薬物複合体、改変抗体、ならびに、軽鎖抗体構築物が例示されるがこれに限定されない誘導体、アプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、siRNA、shRNA、miRNAが例示されるがこれらに限定されない核酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、治療用充填物は、CRISPR-Cas9または関連する遺伝子編集分子の成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療用充填物は、Bacillus Calmette-Guerinワクチンが例示されるがこれに限定されない、ワクチンを含むことができるいくつかの実施形態では、治療用充填物は、Talimogene laherparepvec(OncoVEX GM-CSF)が例示されるがこれに限定されない、腫瘍溶解性ウイルスを含むことができる。いくつかの実施形態では、治療用充填物は、CART細胞または多能性幹細胞によって例示されるがこれらに限定されない、特殊化された細胞および/または細胞療法を含むことができる。いくつかの実施形態では、充填物は、放射線造影剤、MRI造影剤、または超音波造影剤を含むがこれに限定されない、診断剤および造影剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の空洞は、ミセル、リポソーム、メソポーラスシリカ媒介キャリア、カーボンナノチューブ媒介キャリア、それらの複合材料、または、薬剤もしくはそれらの混合物の意図された治療用充填物を供給し、空洞に適合する代替的な粒子を含むがこれに限定されない、固体、液体、または治療薬のゲル、ゾル、懸濁液、ナノ製剤、もしくはマイクロ製剤を含む代替的な製剤形態としての、活性剤を含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、ならびに
図2A~
図2Bおよび
図3A~
図3Bから分かるように(ただし、これらに限定されない)、密閉可能な空洞211、311は、主要本体210、310を推進するように構成されている排出材料を一時的に収容するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、排出材料は、印加されたSFに対する所定の閾値によってトリガされるように構成されている。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、デバイスは、空洞を一時的に密閉するように構成されている、高感度密閉蓋をさらに含む。高感度密閉蓋は、音響、超音波、温度、pH、酸化還元、酵素、タンパク質、細胞内区画から選択される環境局所場に対する閾値に応答して(印加されたSFによってではなく)開放される(例えば、溶解、溶融、曲げる)ように構成されている。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、ならびに、
図3A~
図3Bおよび
図5Cに示すように、MSEは、空洞311、561の密閉蓋(膜320、562)として構成されており、MSEの形状の操作は、空洞を開放するおよび/または閉鎖するように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、ならびに、
図4A~
図4Bおよび
図5A~
図5Bに示すように、MSEは、空洞の密閉蓋412、512を引くおよび/または押すように構成されている、第1のアーム420、520として構成されている。
図4A~
図4Bは、空洞411内から密閉蓋412を開放する/閉鎖するように構成されている、第1のアーム420を例解し、
図5A~
図5Bは、空洞511の外側から密閉蓋512を開放する/閉鎖するように構成されている、第1のアーム520を例解する。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、および、
図2A~
図2Bに示すように、MSEは、第2の閾値(T2)に対応するSFの印加に応答して、充填物が収容されるトレイ214を押し、それにより、その充填物を空洞211から押し出すように構成されている、第2のアーム220として構成されている。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、第1および第2のアームのうちの少なくとも1つは、ばね、つる巻きばね、板ばね、ロッド、シャフト、ポール、およびバーから選択される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、かつ
図7に示すように、
-上で言及される実施形態100、200、300、400、500、600、550のうちの1つの少なくとも1つのデバイス710と、
-刺激場(SF)の印加を制御し、それにより、粘弾性媒体内の主要本体の方向およびMSEの形状を操作する、遠隔制御モジュール720と、を含む、システム700が提供される。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、1つのデバイスの材料は、別のデバイスの材料とは異なり、したがって、それらの対応する閾値は異なる。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、遠隔制御モジュール720は、粘弾性媒体内のデバイス710の位置および配向を位置特定および表示するように構成されている、監視デバイス(デバイス721)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、遠隔制御モジュール720は、粘弾性媒体内のデバイス710の運動に指示を提供するように構成されている、介護者によって取り扱われる入力デバイス(デバイス721)を含む。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、遠隔制御モジュール720は、磁気、電気、圧電、音響、超音波、熱、X線、電波、光学、およびそれらの任意の組み合わせから選択される刺激場用の少なくとも1つのインデューサ730を含む。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、磁場インデューサ(インデューサ730)は、主要本体およびMSEが位置特定される所定の場所に、任意の磁場ベクトルを生成する一組の永久磁石および/または電導コイル(ヘルムホルツまたはマクスウェルコイルなど)を含む。かかる磁場ベクトルは、主要本体の方向およびMSEの形状を制御するように調整することができる。いくつかの実施形態によれば、コイルおよび/または固定磁石の組み合わせは、磁場を発生させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、遠隔制御モジュール720は、磁力、強度、周波数、および方向から選択されるSFの特徴を制御するように構成されており、非限定的な例としては、一連の多様なトランスデューサを介して超音波の焦点を合わせ、特定のトポロジーおよび深さに調整するように、構成されている。いくつかの実施形態によれば、遠隔制御モジュール720は、前述の外部刺激の組み合わせを制御して、主要本体およびMSEの両方を相乗的または個別的に制御するように構成されており、非限定的な例としては、電磁および超音波刺激を使用して、デバイス710の推進の特定の態様を遠隔で制御するように、構成されている。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、システム700は、哺乳類の試験管内、生体外、生体内、またはヒト患者の生体内から選択される特定の場所へ、および/または、特定の場所からデバイスを送達するおよび/または引き戻すように構成されている、送達および/または引き戻しモジュール740をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、磁化可能な針、空気圧要素、拡張可能な磁気要素、磁気表面、電磁要素、超音波要素、展開可能なメッシュ、展開可能なマイクロネット、吸引要素、およびそれらの組み合わせから選択される取り付け要素を含む。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、送達および引き戻しモジュールは、外部刺激および積荷送達による駆動の前および後の、特定の場所へおよび特定の場所からのナノデバイスまたはマイクロデバイスの送達および回収の制御を目的とする。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、ナノデバイスまたはマイクロデバイスを送達および回収するための1つまたはいくつかの構造要素を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、試験管内、生体内または患者への用途のための、単一または複数の挿入を確保する特定の設計を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、ナノデバイスまたはマイクロデバイスを注入および回収するための、磁針、または磁化可能な針を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、電磁、超音波、または空気圧をベースとするデバイスに基づく代替的な送達技術を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、モジュールは、展開可能なメッシュ、マイクロネット、または吸引が例示されるがこれらに限定されない、代替的な回収技術を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、磁針は、スタンドアロンデバイスまたはマトリックス内のデバイスを収容して正確な送達を確保するように設計することができる。いくつかの実施形態によれば、磁針または磁化可能な針は、処置期間中、試験管内、生体内または患者内の注入マトリックスに保持されるか、または、デバイス回収のために引き戻され、再導入され得る。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上で言及される実施形態のデバイスおよび/またはシステムを使用して、対象(例えば、哺乳類の身体または患者)の試験管内、生体外、生体内系から選択される所望の組織または対象を、処置するおよび/または監視する(例えば、治療エンティティを送達する)ための使用方法が提供される。方法は、対象の粘弾性流体(粘弾性媒体)内の主要本体の運動を操作するために構成されている、刺激場(SF)の少なくとも1つを印加するステップを含む。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、操作するステップは、閾値(T1)に対応するSFを介して主要本体を所望の方向に操縦するステップ、および/または、第2の閾値(T2)に対応するSFを介してMSEの形状を修正することにより、主要本体を推進するステップ、を含む。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、方法は、
-デバイスの空洞に、選択された充填物を外部から充填するステップ、
-デバイスを処置された対象に挿入すること、および/もしくは送達するステップ、
-粘弾性媒体内のデバイスの位置および配向を監視するステップ、
-必要なときに、選択された充填物もしくは治療エンティティを空洞から、それにより、所望の場所で解放するステップ、
-デバイスを位置特定するため、もしくはさらなる診断情報のために、対象を撮像するステップ、
-デバイスを所定の場所から回収するステップ、ならびに/または引き戻すステップ(任意選択で、処置後)、のうちの少なくとも1つ(必ずしもこの順序である必要はない)をさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、挿入するステップは、注入、穿孔、挿入、穿鑿、嚥下の提供、カテーテルを介した貫通のうちの少なくとも1つを含む。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、治療エンティティを解放するステップは、空洞の密閉蓋が開放されるように、第2の閾値(T2)に対応するSFを介してMSEの形状を修正するステップを含む。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、治療エンティティを解放するステップは、選択された環境閾値を提供することによって、高感度密封蓋を開放するステップを含む。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、高感度密閉蓋を開放するステップは、0.01~1.0ワット/cm2の範囲の強度、1:4/3(20%、25%)または1:1/連続(50%、100%)が例示されるがこれに限定されない多様なパルス比、および、10~60KHzまたは0.25~30.0MHzの範囲の周波数を有する、10~200ワットの範囲の特別な電力の調整可能な超音波によって提供され得る。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、高感度密閉蓋を開放するステップは、ヒドラゾン、シッフ塩基(イミン)、トリチル基、アセタール/ケタール、オキシム、1,3,5-トリアザアダマンタン、およびボロン酸エステルによって例示されるがこれらに限定されない、3~8の範囲で開放-閉鎖-開放へと遷移(複数可)する、調整可能なpH感応膜によって提供され得る。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、高感度密閉蓋を開放するステップは、磁気、電気、音響、または(超)短波長の光場によって例示されるがこれらに限定されない外部刺激で処置されたときに、熱変化の局所勾配にさらされると、開放-閉鎖-開放へと遷移(複数可)する、調整可能な温度感応膜によって提供される。いくつかの実施形態によれば、蓋は、37~80°Cの区間で熱的に誘導され、開放-閉鎖-開放へと配座遷移する。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、表面で特定される、100~5,000マイクロメートル、10~100マイクロメートル、100ナノメートル~10マイクロメートル、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。配座の変化は、ラクタムおよびラクトンによって例示される、熱曝露時に鎖-環転換する適切な化学部分を示す膜によって例示される、治療用充填物の複数ステップまたは単一ステップの解放を媒介するために可逆的、部分的に可逆的、または不可逆的であり得る。適切な解放対安全性比を維持するために、外部場は、連続的に、または制御されたパルスで印加されることができる。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、高感度密閉蓋を開放するステップは、アリールボロン酸、チオケタール、ジスルフィド架橋、あるいは、ジチオスレイトール、グルタチオン、システインまたはメチオニン含有ペプチド、およびタンパク質を含むがこれらに限定されない、それらを含有する特定の生物学的分子が例示されるが、これらに限定されない媒体特異的分子の濃度勾配にさらされると、開放-閉鎖-開放へと遷移(複数可)する、調整可能な酸化還元感応膜によって提供される。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、高感度密閉蓋を開放するステップは、媒体特異的分子の濃度勾配にさらされると、開放-閉鎖-開放へと遷移(複数可)する、調整可能な酵素または他の生物学的分子感応膜によって提供される。いくつかの実施形態によれば、密閉蓋は、ホスファターゼ(切断可能なリン酸基を有するリンカーの場合)、エステル結合の分解のためのエステラーゼ、グリコシダーゼ、および特定のオリゴペプチド(例えば、GlyPhe-LeuGly)を切断するプロテアーゼの局所的勾配に反応するペプチド配列を含むことができる。
【0078】
実施例1.
本発明のいくつかの実施形態によれば、磁気刺激場を備える例が提供される。本例では、外部磁場を使用して、ナノ/マイクロ/ミリメータースケールの粘弾性媒体内を移動または進行する、操縦および推進デバイスが提供される。デバイスの材料は、推進のための、エラストマーをベースとする鞭毛、ならびに、方向操縦のための、磁石をベースとする主要本体およびフィンの組み合わせを含む。かかるデバイスは、組織を介して人体内部の粒子を推進する、医療ペイロード(治療法または診断法)を運搬する、または低侵襲手術を行うために使用することができる。
【0079】
図6D~
図6Eに示すように、粒子(デバイス600)は、以下の3つの主要構成要素を含む。
-十分に強い磁気モーメントを備える埋め込まれた磁性構成要素をベースとし、運動の所望の方向に対応する一定の極性を有する、磁性粒子の主要本体610、
-主要本体にその軸の周り全体に対称的に(円筒対称)取り付けられている、より小さな磁気フィン(フィン630)であって、各フィンは、十分に強い磁気モーメントを備えるフィンに埋め込まれた磁性構成要素をベースとし、粒子の主要本体の極性と整合された一定の極性を有する、該より小さな磁気フィン。かかるフィンは、例えば、Mishraらに記載されているエラストマーフィルムから、または代替的に、当技術分野で知られている他の好適な技術によって、製造することができる。かかるフィルムは、例えば、Fe
3O
4磁性ナノ粒子(MNP)および熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。フィルムは、ポリマーおよび磁性ナノ粒子を含むナノコンポジットである。MNPを鎖状に集合させると、静磁エネルギーに方向依存性が生じ、3Dでの複合材料の異方性駆動が可能になる。フィンは、主要本体に自在な取り付けポイントで取り付けられ、および/または可撓性材料からなるため、外部磁場に置かれたときに、傾斜または「フラップ」することができ(それらは磁気を帯びているため、外部磁場と整合するように傾斜することができ)、この場合、粒子の主要本体はまた、それを外部磁場と整合させる回転トルクを受け、本体は、フィンよりも大きいため、よりゆっくりと傾斜することができ、粘弾性媒体内で引っ張られ、フィンは、本体に対して「フラップ」することが可能になる。
-主要本体の尾端にある、埋め込まれた磁性ナノ粒子(MNP)を備えるエラストマーからなる1つの鞭毛(または
図6Eのように複数の鞭毛)。
【0080】
本例では、鞭毛内のMNPは、主要本体およびフィンに使用される磁性材料(それぞれ、M1、M1´)とは異なる(透磁率、磁気モーメントに関して)、磁性材料M2をベースとしており、かかる材料の選択の理由は、以下のとおりである。
【0081】
粒子の運動は、外部磁場によって制御され、
【0082】
【数1】
式中、
-B1は、一定の低振幅(低電力)の操縦成分である(粒子が回転する必要がある場合にのみ方向を変更する)、および
-B2は、様々な振幅、高出力、オンオフパルス部品であり、推進を担当し、
B1およびB2の両方のベクトルは、同じ方向にある。
【0083】
B=B1(B2=0を意味する)の場合、鞭毛は、場B1の下での鞭毛の移動に十分なトルクを発生させるには弱すぎる磁気モーメントを備える、磁気材料M2が埋め込まれたエラストマーをベースとしているため、弛緩位置に留まる。
【0084】
それに対し、粒子本体およびフィンにそれぞれ使用される材料M1、M1´は、場B1の下での回転する(操縦する)粒子の移動を発生させるのに十分な大きさの磁気モーメントを有している。
【0085】
重要なことに、材料M2は、M1、M1´と比較して、単位体積または質量あたりの磁気モーメントが必ずしも低いとは限らない。ただし、M2の磁気モーメントは、鞭毛活性化に必要な最小閾値に対して弱すぎる(すなわち、場B1は、主要本体およびフィンを操縦するのに十分に強いが、鞭毛を活性化するのには十分に強くないトルクを発生させる)。鞭毛を駆動するための最小閾値(T2)は、動的弾性率、鞭毛の形状およびサイズ、ならびに周囲媒体のレオロジーなど、エラストマーの機械的特性によって決まる。主要本体およびフィンを操縦するための最小閾値(T1)は、周囲媒体のレオロジー、ならびに粒子の形状およびサイズによって決まる。
【0086】
要約すると、鞭毛は、弱い磁場B1の下ではその形状を変えない。BがB1より明らかに大きい(すなわち、B2>>0)場合にのみ、外部場は、鞭毛を活性化する、およびそれらにその形状を変化させる、のに十分に高い。B2のオンオフパルスの結果としての鞭毛形状のオンオフの変化は、粒子を前方に推進する鞭毛の運動を発生させる。
【0087】
図6Eおよび
図6Fは、鞭毛が最小電位の2つの可能な構成(互いに対称)を有する、構成を示す。これらの構成の各々において、鞭毛は、一方の側または他方の側に湾曲している。強い外部磁場Bをオンにすると、鞭毛が真っ直ぐになり(破線で表示)、電位局所最小点(2つの対称な大域電位最小点との間の中央にある)に到達する。この構成は、2つの直交する湾曲軸(長方形のエラストマーシートの2つの辺に平行)によって支持される双安定構造と呼ばれる。かかる構造の例は、「スナップブレスレット」である。外部磁場をオフにすると、鞭毛は、電位最小点のいずれか1つに(同じ確率で)戻る。場B2の成分が、繰り返しオン/オフを切り替えられると、これにより、概して、鞭毛の2つの電位最小構成との間でフリップフロップ運動が発生し(魚の尾びれの運動に類似)、したがって、粒子(主要本体610を含むデバイス)を前方に推進させる。いくつかの実施形態によれば、場の成分B2がオフのままであるとき、鞭毛は、2つの安定した電位最小構成のうちの1つに留まる(フリップフロップしない)。鞭毛は、B2成分がオンに切り替わるときのみ、不安定な中央の位置に達し、場成分B2をオフにすると、2つの安定した位置のうちの1つにランダムにフリップする。
【0088】
図6Eは、強い外部磁場B2がない場合の、対称的な湾曲形状(カエルの脚に類似)を有する2つの鞭毛がある構成を示す。B2が大きい場合、鞭毛は、真っ直ぐになり(破線で表示)、粒子を前方に押し出す。
【0089】
図6Dは、弛緩位置にある鞭毛(強い外部場B2なし)が、折り畳まれたアコーディオン形状を有する構成を示す。外部場B2をオンにすると、鞭毛が真っ直ぐになり(破線で表示)、粒子を前方に押し出す。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、各鞭毛は、特定の形状(3次元)を備えるエラストマーシートを含む。明確にするために、
図6A~
図6Fは、粒子およびその鞭毛の断面を示し、各鞭毛を2次元の曲線として描写している。粒子の前方への推進をもたらす、多くの他の鞭毛構成が可能である。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、
図6A~
図6C(SF印加前(
図6A)および2つの異なるSF方向について(
図6Bおよび
図6C))に示すように、Bがその方向を変えると、主要本体およびフィンは、傾斜してBの方向と整合し、粒子を所望の方向に操縦する。
【0092】
操縦成分とオンオフ推進パルス成分との間の組み合わせは、粘弾性媒体内のデバイス600の方向性のある、および正確に遠隔制御された運動を発生させるように構成されている。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、外部磁場は、標的領域(デバイスの現在の場所)の周辺の永久磁石、ヘルムホルツ、マクスウェルコイル、またはそれらの組み合わせによって発生され得る。フィン、粒子、および鞭毛の正確な形状およびサイズを最適化して、特定の粘弾性媒体内の可動性を向上させることができる。
【0094】
関連する磁場B1、B2の強度は、1桁のガウスから1桁のテスラまでの範囲を変動し得る(粒子のサイズおよび形状、使用する材料、ならびに粒子が移動する媒体のレオロジーに依存する)。粒子、フィン、および鞭毛のサイズは、いずれの寸法も、数十ナノメートルから1~10ミリメートルの間を変動し得る。
【0095】
使用することができる磁性材料M1、M1´、M2の例は、鉄、ニッケル、パーマロイ、コバルト、および他のものを含む。例えば、鞭毛は、弱い磁場B1によって活性化されないが、主要本体/フィンは、この場の影響を受けることを確実にするために、高透磁率材料にパーマロイを、低透磁率材料にニッケルを選択してもよい。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態によれば、材料M1、M1´、M2の磁気モーメントB1、B2の間の近似関係が提供される。B1、B2と材料M1、M1´、M2の透磁率との関係は、以下のように近似的に説明することができる。
【0097】
B1は、粒子(デバイス600)の回転を引き起こすのに十分に強いトルクt1を発生させるのに十分高い、すなわち、周囲の媒体のレオロジー、ならびに粒子のサイズおよび形状に依存する特定の閾値(t1>T1)より大きい必要がある、と仮定する。
【0098】
t1は、以下の方程式(2)のように近似される。
【0099】
【数2】
式中、
-Mtは、粒子の全磁気モーメントであり、Mtは、M1(主要本体の磁気モーメント)およびM1´(フィンの磁気モーメント)の線形結合として近似し得、これは、主要本体およびフィンの有効磁気モーメントであり、
-スケール因子Cは、(他の因子の中でも特に)外部場および粒子軸との間の角度に依存する。
【0100】
回転をトリガするためには、
【0101】
【0102】
エラストマーの鞭毛に、鞭毛形状の変化を引き起こすのに十分に大きいトルクt2を発生させるためには、B1+B2が必要であると仮定する。t2は、以下の方程式(4)のように近似され、
【0103】
【数4】
-スケール因子Aは、他の因子の中でも特に、外部磁場に対する鞭毛の形状および角度に依存する。
【0104】
鞭毛形状の変化をトリガするためには、
【0105】
【数5】
式中、T2は、エラストマーの特性および環境レオロジーに依存する、形状変化に必要な閾値トルクである。
【0106】
【数6】
-式中、Nは、スケール因子である、ことを示す。
【0107】
そこで、
【0108】
【0109】
ただし、
【0110】
【数8】
すなわち、鞭毛は、大きな場成分B2なしでは活性化されない、ことも必要である。
【0111】
【数9】
-ここで、Dは、スケール因子である、と仮定する。
【0112】
次いで、方程式(3)および方程式(8)を組み合わせることにより、
【0113】
【0114】
【0115】
これは、M2がMtに対して高すぎない限り、鞭毛は、場B1だけでは活性化され得ないことを意味する。
【0116】
これらの手段の実例。C=1(Mtにスケール因子Cを埋め込むことに相当)、A=1(M2にスケール因子Aを埋め込むことに相当)と仮定する。T1、T2、Dは、所与のものである(すなわち、与えられた物理的パラメータ)。Mt、M2、B1、B2は、選択可能なパラメータである。
【0117】
粒子の主要本体およびフィンに総磁気モーメントMtを発生させる材料を選択すると仮定する。Y=B1*Mt/T1を示す。Mt、T1は、すでに定義または選択されているため、B1=(T1*Y)/Mtを選択することができ、Y>1を満たし、そうして、方程式(3)が満たされる。
【0118】
NをD+1になるように選択することにより、B2=(D+1)*B1になる。M2=Mt/(Y*D)、ここで、(Y>1)であるように、磁性材料M2を選択することできる場合、その結果、方程式(11)および方程式(8)が満たされ、方程式(5)に代入すると、以下の方程式(12)が満たされる。
【0119】
【0120】
言い換えれば、M2/MtがD=T1/T2に反比例するように、M2およびMtを選択する必要がある。M2およびMtは、それぞれの材料の透磁率に比例するため、M2およびMtは、適切な材料を選択することで、上記の基準を満たすように設定することができる。
【0121】
D(すなわち、T1/T2)が1/100~100(物理シナリオのほぼすべての実際の比率を含む広い範囲)で変動する場合、透磁率比が反比例する(100~1/100)材料M2、Mtのペアを選択する必要がある。所望の比率の好適な材料を容易に選択するために、広範囲の透磁率比(ニッケル対パーマロイなど)を備えた、かかる材料の複数の例が存在する。D>1の場合、高透磁率材料をベースとするようにMtを選択し、低透過率材料をベースとするようにM2を選択する。D<1の場合、M2は、高透磁率材料をベースとしており、Mtは、低透過率材料をベースとしている。
【0122】
実施例2.
いくつかの実施形態によれば、外部磁性信号を使用して、および、ペイロードを含有/解放するために使用されるエラストマーをベースとする膜の組み合わせに基づいて、粒子にカプセル化されたペイロード(例えば、薬物、治療エンティティ)を解放するように構成されている、システムが提供される。
【0123】
図2A~
図2B、
図3A~
図3B、
図4A~
図4B、
図5A~
図5Bおよび
図5Cに示す、粒子(デバイス200、300、400、500、550)は、以下から構成されている。
-ペイロードを含有するように構成されている空洞211、311、411、511、561を備える、粒子の主要本体210、310、410、510、560。
-埋め込まれたMNPを備える、エラストマーからなる膜220、320、420、520、562であって、
膜220は、ばねのような形状で空洞底に取り付けることができ(
図2A~
図2Bに示すように)、ペイロードが収容されているトレイ214を押すように構成されており、膜320は、空洞を密閉する、および充填物の自由拡散を防止するように構成されている、蓋として使用することができ(
図3A~
図3Bおよび
図5Cに示すように)、または膜は、空洞の密閉蓋412、512を開放するおよび閉鎖するように構成されている、アーム420、520(
図4A~
図4Bおよび
図5A~
図5Bに示すように)として設計することができる、該膜。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、外部磁場が存在しない場合、膜は、そのデフォルトの弛緩位置にあり、粒子から(空洞からを意味する)のペイロードの拡散を防止する(または少なくとも促進しない)。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、特定の外部磁場が印加されたとき、膜は、
-ペイロードを空洞から押し出す(
図2Bのように)、
-空洞を開放する、および拡散を可能にするために、折り畳まれる(
図3Bおよび
図5Cのように)、または
-空洞を開放するために、密閉蓋を押す/引く(
図4Bおよび
図5Bのように)。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、いくつかのセットアップ、すなわち、一方は空洞を開放/閉鎖し、他方はペイロードを押し出す、2つの膜、を組み合わせることができる。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、デバイスは、外部回転電磁場を使用して粘弾性媒体で推進される磁性粒子(ペイロードを運ぶ)と組み合わせて使用することができる。この場合、粒子全体は、外部回転磁場の影響下でその軸の周りを回転するように構成されている。場の回転面は、運動の方向に直交する。この回転は、粒子をコルクスクリューのように前方へ推進させる。いくつかの実施形態によれば、磁場の回転方向を反転させることにより、それぞれ、粒子を後方に推進させる。
【0128】
課題は、かかる回転する外部磁場が、上記のペイロード解放メカニズムを活性化させないことを確実にすることである。解決策は、粒子本体が、磁性材料M1を含むことである。それに対し、ペイロード解放メカニズムに関与するエラストマー膜の材料は、磁性材料M2の埋め込まれたMNPを含む。
【0129】
外部磁場は、2つの成分を有し、
【0130】
【数13】
-ここで、B1は、操縦するおよび推進回転する磁場成分である。
目標は、B2=0であるときに、この成分が薬物解放エラストマー膜を活性化することを防止することである。
【0131】
これを防止するために、個々にまたは組み合わせて印加することができる3つの方法が提供される。
【0132】
エラストマー膜を活性化するために必要な、場B2の正確な方向を的確に設計することができる(エラストマー膜設計および粒子550上のその位置の一部として)。
図5Cのようなエラストマーの膜562設計の例では、外部磁場のベクトルが膜562の2次元平面に平行でない場合に、平面エラストマー膜はその構成を変更するだけである。したがって、膜562は、粒子の回転軸に直交する(すなわち、回転する外部磁場の平面に平行になる)ように、粒子550上に位置付けられ、その結果、主要本体560の運動の方向にBのかなり大きいベクトル成分がない限り、エラストマー膜は活性化されず、および、ペイロードは、解放されない。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、低振幅のB1による推進が可能となるように、粒子を設計する(すなわち、材料M1、M2を選択する)ことができる。この設計では、磁性エラストマーは、エラストマーの活性化に必要な最小トルクと比較して低い、材料M2の磁気モーメントのため、場B1の下では活性化されないが、粒子主要本体は、材料M1の磁気モーメント(粒子の回転に必要な最小トルクと比較して十分高い)のため、場B1と共に回転し続ける。B2>>0、およびBがB1よりも大幅に大きい場合にのみ、膜内の磁性エラストマーが活性化され、要求に応じて、ペイロードの解放をトリガする。これは、上の実施例1で記載したように、材料M1、M2、および場B1、B2の適切な選択により実行することができる。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、磁場B1が、特定の周波数F1で、患者の体内に位置特定され得る、事前に定義された動作平面および/または体積内で回転するとき、材料M2は、回転する場B1の周波数F1よりも遅く外部磁場の変化に応答するような設計(すなわち、より大きな磁性粘性)により選択することができる。
【0135】
この選択は、外部磁場の変化に応答して形状を変化させるのにより多くの時間を必要とする特定の膜設計と組み合わせることができる。例えば、外部場は、エラストマー膜に関して適切に位置付けられる場合(例えば、膜面に直交して)、エラストマー膜に総トルクt1(エラストマー膜の動的係数に依存する、形状変形に応答する正味の内部抵抗力)をかけることができる。膜は、静止位置から変形し始める。膜が、ペイロードの拡散を可能にする、完全伸展位置に達するまで最小限の時間xがかかる。ただし、外部磁場の回転周波数が十分に高く、その結果、時間<<x内である場合、外部磁場は膜に対して新しい角度で回転し、その角度では、膜面に垂直な場成分が膜の活性化に必要な閾値トルクよりも低いため、場は、もはや膜を活性化しない。したがって、膜は、完全に活性化された状態に達することはない。それは、外部場が回転している限り、エラストマーは、それに「追いつく」ことはないため、活性化されず、ペイロードは、解放されないことを意味する。長い固定パルスB2は、ペイロード解放の所望の時点でのみ活性化される。このパルスは、エラストマー膜の応答時間xの閾値を超えるのに十分長い。したがって、エラストマー膜は活性化され、ペイロードは、要求に応じて解放される。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、上記のオプションの3つすべては、回転する低磁場の平面に直交する方向にある高磁場の10ミリ秒から1分のパルスの範囲内で、矩形、二重指数関数、減衰正弦波パルス、またはそれらの組み合わせを使用することにより、組み合わせることができる。
【0137】
関連する磁場B1、B2の強度は、1桁のガウスから1桁のテスラまでの範囲を変動し得る(粒子のサイズおよび形状、使用する材料、粒子が移動する媒体のレオロジーに依存する)。
【0138】
粒子のサイズは、いずれの寸法も、数十ナノメートルから数十ミリメートルの間を変動し得る。
【0139】
使用可能な上記で定義された磁性材料M1、M2の例は、鉄、ニッケル、パーマロイ、コバルト、および他のものを含む。例えば、膜は、弱い磁場B1によって活性化されないが、本体は、この場の影響を受けることを確実にするため、より高い透磁率にはパーマロイを、より低い透磁率にはニッケルを選択することができる。
【0140】
薄いエラストマー層を製造するための実施例
本発明のいくつかの実施形態によれば、エラストマーをベースとする膜および磁性粒子の製造方法が提供される。
【0141】
上記の運動付属物(実施例1のように様々な鞭毛)、および上記のペイロード解放制御膜/ばね(実施例2のように)は、ベースポリマーおよび分散した磁気相を含む磁性ポリマー複合材料を含むが、これらに限定されない。
【0142】
例えば、デバイスの鞭毛は、鋳型をベースとする、または鋳型のない磁気アセンブリを介して製造することができる。具体的には、「カエルの脚」、アコーディオン、または「ひれ」形状の鞭毛は、鋳造および/または成形技術を使用して製造することができる。
【0143】
代表的な手順では、予備成形された金型および/またはキャストに、選択した、溶液または液化されたニートポリマー(例、ポリジメチルシロキサン)を充填し、続いて、磁性マイクロ/ナノ粒子を添加して懸濁液を生成する。
【0144】
得られた懸濁液は、ポリマー全体の統一された、および/またはパターン化された粒子分布を確認するために、外部磁場または代替的なエネルギー源(例、超音波)の存在下で硬化され、標的とされた磁気活性エラストマー材料に供給する。
【0145】
得られた鞭毛は、「形状記憶」特徴を有することができ(「Stimulus responsive shape-memory materials:A review」、Materials and Design 33(2012)、577~640ページ)、
図1A、
図1B、
図1Cに例示されているように、外部磁場(複数可)によって推進されることができる。同様に、エラストマーをベースとする膜、またはエラストマーをベースとするばねの「形状記憶」およびトポロジー特徴は、同じ製造技術を使用して実現することができる。刺激応答性形状記憶材料は、熱、化学、磁気、電気、機械、および光などの特定の刺激に応答する。応答は、可逆的であり得る。ほとんどの刺激応答性材料では、結果は、特定の物理的/化学的特性の変化に限定されるが、刺激応答性形状記憶材料(SMM)は、準塑性変形した後、元の形状を回復する。SMMは、材料が駆動される、および反応性運動を発生させる統合システムに理想的である。SMMは、例えば形状記憶合金(SMA)および形状記憶ポリマー(SMP)を含む。SMMはまた、セラミック、ゲル、およびこれらの材料の組み合わせを含む。形状記憶材料およびそれらが応答する刺激は、本発明の実施形態に含まれる。
【0146】
固体粒子本体は、サイズが数ナノメートルから数マイクロメートルまで変動することができ、特定のおよび調整可能な磁気特性を示すことができる。調整可能な磁性特徴は、使用する粒子の化学組成、結晶構造、およびサイズに応じて、反磁性、常磁性、超常磁性、および強磁性である。より具体的には、粒子候補の代表例は、ネオジム(例、Nd2Fe14B(「A magnetic membrane actuator in composite technology utilizing diamagnetic levitation」、 IEEE Sens.J.13 (2013)、2786~2797ページ)、炭素被覆Fe(「Microfabrication of magnetically actuated PDMS-Iron composite membranes」、 Microelectr.Engineer.98 (2012)、607~609ページ)、酸化鉄(II/III)(「Magnetically-actuated artificial cilia for microfluidics propulsion」、 Lab Chip.11(2011)、2002~2010ページ)、コバルト合金(複数可)(「A facile template-free approach to magnetodriven multifunctional artificial cilia」、Appl.Mater.Interfaces 2(2010)、2226~2230ページ)など)を含む。
【0147】
これらの粒子は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの相溶性ポリマーマトリックスに組み込まれる(「Magnetically actuated micropumps using an Fe-PDMS composite membrane」 Proc. SPIE Conf.Smart.Struc.Mater.2006、617213ページ)。弾性ポリマーマトリックスの追加的な例は、以下に限定されないが、ポリn-ブチルアクリレート(PnBA)(「Magnetically-actuated artificial cilia for microfluidics propulsion」、 ab Chip.11(2011)、2002~2010ページ)、ポリ(スチレンブロック-イソプレンブロックスチレン)(「A facile template-free approach to magnetodriven multifunctional artificial cilia」 Appl.Mater.Interfaces 2(2010))、およびSU-8(一般的に使用されるエポキシをベースとするネガ型フォトレジストポリマー)(「Single cell manipulation using ferromagnetic composite microtransporters」 ppl.Phys.Lett.96 (2010), 043705)を含む。
【0148】
対象の粒子を磁気活性エラストマーに組み込む特定の製造技術は、以下を含むがこれらに限定されない。
-スタンドアロンプロセスとして、または犠牲コーティング(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアクリレート(PVA)、またはポリカーボネート)を使用した鋳造、
-埋め込まれた粒子を備える所定の形状を生成するための成形/ケーシングと、続いて、所望のトポロジーを実現するための、レーザー、化学、または他のエッチング技術、
-フォトパターニング、
-磁場下での自己組織化、および(iv)リソグラフィ(「A review of magnetic composite polymers applied to microfluidics devices」J.Electrochem.Soc.161 (2014)、B3173~B3183ページ)。上記に引用された刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
本明細書では本発明の特定の特徴を例示および説明してきたが、当業者には多くの修正、置換、変更、および等価物が着想されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内にある、かかるすべての修正および変更を網羅することを意図していることを理解されたい。