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特許7222981近視を軽減するためのコンタクトレンズおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】近視を軽減するためのコンタクトレンズおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20230208BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230208BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230208BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20230208BHJP
   B29C 39/18 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B5/02 B
B29C33/42
B29C39/26
B29C39/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020512767
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018031506
(87)【国際公開番号】W WO2018208724
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】62/502,992
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519400379
【氏名又は名称】サイトグラス・ヴィジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・チャルバーグ・ジュニア
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-046523(JP,A)
【文献】米国特許第04558931(US,A)
【文献】米国特許第04710327(US,A)
【文献】特開2006-184477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02B 5/02
B29C 33/42
B29C 39/26
B29C 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と第2の部分とを備える、コンタクトレンズ用の円筒形ブランクを設けるステップであって、前記第1の部分が均質の光学的透明材料から形成され、前記第2の部分が不均質の光散乱材料から形成される、ステップと、
第1の領域と前記第1の領域を囲む第2の領域とを含むコンタクトレンズとなるように前記円筒形ブランクを形作るステップと、
第2の領域に散乱中心を設けるステップと、
を含んでなる、コンタクトレンズの製造方法であって、
前記第1の領域が前記均質の光学的透明材料から形成され、前記第2の領域が前記不均質の光散乱材料から形成され
前記第1の部分が第1の円筒形層であり、前記第2の部分が前記第1の部分に隣接する第2の円筒形層であり、前記第1の部分と前記第2の部分とが同じ直径を有していることを特徴とする、コンタクトレンズの製造方法。
【請求項2】
前記第2の領域に散乱中心を設けるステップが、
材料の複数の個々のドットを転写基板上でパターンに形成するステップと、
前記パターンをコンタクトレンズの表面に位置合わせするステップと、
前記パターンを前記コンタクトレンズの前記表面に接触させるステップと、
前記材料のドットを前記表面に接触させながら前記ドットを転写基板から解放して、前記ドットのパターンを前記コンタクトレンズの前記表面に転写するステップと、
を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視を軽減するためのコンタクトレンズおよびそのようなレンズの製造方法を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
眼は、外部源からの光が、レンズによって、波長依存フォトセンサの列である網膜の表面で焦点を結ばれる、光学センサである。眼の水晶体が受け入れられる様々な形態の各々は、眼によって観察される外部の像に対応する倒立像を網膜の表面上に生成するように、外部光線が最適にまたは略最適に焦点を結ばれる焦点距離に関連する。眼の水晶体が受け入れられる様々な形態の各々において、眼の水晶体は、眼から一定の距離の範囲内にある外部物体から放射または反射される光の焦点を最適にまたは略最適に結び、その距離の範囲外にある物体に焦点を合わせるのはあまり最適ではなく、または焦点を合わせられない。
【0003】
通常の視力を有する者においては、眼軸長または水晶体から網膜表面までの距離が、遠くの物体に略最適に焦点を合わせるための焦点距離に一致する。通常の視力を有する者の眼は、眼の水晶体の形状を変えるための力を加える、筋肉への神経性入力である、「遠近調節」と呼ばれる過程を経ることなく、遠くの物体に焦点を合わせる。より近くにある近傍物体は、遠近調節の結果として通常の者によって焦点を合わせられる。
【0004】
しかしながら、多くの人は、近視(「近眼」)などの眼軸長に関連する疾患を抱えている。近視の者は、眼軸長が、遠近調節なしで遠くの物体に焦点を合わせるのに必要とされる軸長よりも長い。その結果、近視の者は近くにある物体は明瞭に見えるが、より離れたところにある物体はぼやけて見える。近視の者は一般に遠近調節を行うことが可能であるが、焦点を合わせられる物体の平均距離は通常の視力を有する者より短い。
【0005】
通常、幼児は生まれながら遠視で、眼軸長は、遠近調節なしで遠くの物体に最適にまたは略最適に焦点を合わせるのに必要とされるよりも短い。「正視化」と呼ばれる眼の正常な発達の間に、眼軸長は、眼の他の寸法に相対的に、遠近調節なしで遠くの物体に略最適に焦点を合わせる長さまで増加する。眼が最終的な大人の大きさまで成長するにつれて、生物学的過程が、眼の大きさに対して略最適な相対的な眼軸長を維持するのが理想である。しかしながら、近視の者においては、全体的な眼の大きさに対する相対的な眼軸長は、発達の間に増加し続け、遠くの物体に略最適に焦点を合わせる長さを超えて、次第に顕著な近視となる。
【0006】
近視は遺伝的要因と同様に、行動要因による影響を受けると考えられている。したがって、行動要因に対処する治療装置によって近視を軽減することができる。例えば、近視を含む眼軸長に関連する疾患を治療するための治療装置が、米国特許出願公開第2011/0313058(A1)号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2011/0313058(A1)号
【文献】米国仮特許出願第62/369,351号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、一態様において、本発明は、第1の部分と第2の部分とを備える、コンタクトレンズ用の円筒形ブランクを設けるステップを含む、コンタクトレンズの製造方法を特徴とする。第1の部分は均質の光学的透明材料から形成され、第2の部分は不均質の光散乱材料から形成される。方法は、コンタクトレンズとなるように円筒形ブランクを形作る(例えば、研削する)ステップを含む。コンタクトレンズは、第2の領域に囲まれた第1の領域を含み、第1の領域は均質の光学的透明材料から形成され、第2の領域は不均質の光散乱材料から形成される。
【0009】
方法の実施は、以下の特徴のうちの1つまたは複数および/または他の態様の特徴を含むことができる。例えば、第1の部分は円筒形部分であってもよく、第2の部分は第1の部分を囲む円筒形の環状部分であってもよい。第1の部分は第1の円筒形層であってもよく、第2の部分は第1の部分に隣接する第2の円筒形層であってもよく、第1の部分と第2の部分とは同じ直径を有する。第1の部分は第2の部分に埋め込まれた円錐形部分であってもよい。
【0010】
方法の実施は、他の態様の1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0011】
一般に、別の態様において、本発明は、材料の複数の個々のドットを転写基板上でパターン(例えば、環状パターン)に形成する(例えば、インクジェットプリンタを使用して印刷する)ステップと、パターンをコンタクトレンズの表面に位置合わせするステップと、パターンをコンタクトレンズの表面に接触させるステップと、材料のドットを表面に接触させながらドットを転写基板から解放して、ドットのパターンをコンタクトレンズの表面に転写するステップとを含む、コンタクトレンズの製造方法を特徴とする。
【0012】
一般に、さらなる態様において、本発明は、開口を囲む不均質の光散乱材料から形成された環状部分となるように第1の部分を成形するステップと、第1の部分と均質の光学的透明材料とを型に入れて結合させて、均質の光学的透明材料を開口に充填することにより、コンタクトレンズを成形するステップとを含む、コンタクトレンズの製造方法を特徴とする。
【0013】
方法の実施は、以下の特徴のうちの1つまたは複数および/または他の態様の特徴を含むことができる。例えば、環状部分を均質の光学的透明材料に埋め込んでもよい。一部の実施形態において、環状部分は均質の光学的透明材料を囲む。
【0014】
一般に、別の態様において、本発明は、均質の光学的透明材料から形成された第1の領域と、不均質の光散乱材料から形成された第2の領域とを含む、コンタクトレンズを製造するためのボタンを特徴とする。ボタンは円筒として形作られる。
【0015】
方法の実施は、以下の特徴のうちの1つまたは複数および/または他の態様の特徴を含むことができる。例えば、第1の領域は円筒形の内核であってもよく、第2の領域は第1の領域を囲む環状被覆であってもよい。第1の領域は下層であってもよく、第2の領域は上層であってもよく、上層と下層とは第1の平坦面および第2の平坦面に略平行な界面を形成する。一部の実施形態において、第1の領域は円錐であり、第2の領域は第1の領域を囲むように構成される。
【0016】
一般に、さらなる態様において、本発明は、複数の表面機構(surface feature)を有する凹成形面を含む第1の型部に、レンズ形成材料を供給するステップと、凸成形面を含む第2の型部を第1の型部に押し付けて、凹成形面および凸成形面に適合させるステップと、レンズ形成材料が凹成形面および凸成形面によって形成された形状を呈し、かつその形状を維持するのに十分な条件を適用するステップと、第1の型部と第2の型部とを分離させるステップとを含む、コンタクトレンズの製造方法を特徴とする。凹成形面および/または凸成形面は、複数の突起および/または窪みを含み、コンタクトレンズがコンタクトレンズ表面または凸凹レンズ面のうちの少なくとも1つに複数の光散乱ドットを含むようになっている。
【0017】
方法の実施は、他の態様の1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】近視軽減コンタクトレンズの実施形態の平面図である。
図1B図1Aに示す近視軽減コンタクトレンズの側断面図である。
図2A】レンズのぼやけ領域(blurring region)の表面に突起を含む、近視軽減コンタクトレンズの実施形態の側断面図である。
図2B】レンズのぼやけ領域の表面に凹みを含む、近視軽減コンタクトレンズの実施形態の側断面図である。
図2C】レンズのぼやけ領域全体に含有物が分散された、近視軽減コンタクトレンズの実施形態の側断面図である。
図2D】レンズのぼやけ領域の個々の層に含有物が限定された、近視軽減コンタクトレンズの実施形態の側断面図である。
図3A】近視軽減コンタクトレンズを形成するための異なる転写プロセスを示す概略図である。
図3B】近視軽減コンタクトレンズを形成するための異なる転写プロセスを示す概略図である。
図3C】近視軽減コンタクトレンズを形成するための異なる転写プロセスを示す概略図である。
図4】近視軽減コンタクトレンズを形成するためのレーザシステムの実施形態の概略図である。
図5A】選択的にレーザ放射に晒すことにより散乱含有物をコンタクトレンズ内に形成する様子を示す概略図である。
図5B】選択的にレーザ放射に晒すことにより透明開口(clear aperture)をコンタクトレンズ内に形成する様子を示す概略図である。
図6A】ボタンからコンタクトレンズの凸面を研削する実施形態を示す概略図である。
図6B】ボタンからコンタクトレンズの凸面を研削する実施形態を示す概略図である。
図6C】ボタンからコンタクトレンズの凹面を研削する実施形態を示す概略図である。
図6D】ボタンからコンタクトレンズの凹面を研削する実施形態を示す概略図である。
図7A】近視軽減コンタクトレンズを形成するためのボタンの実施形態の断面図である。
図7B】近視軽減コンタクトレンズを形成するためのボタンの別の実施形態の断面図である。
図7C】近視軽減コンタクトレンズを形成するためのボタンのさらなる実施形態の断面図である。
図8A】コンタクトレンズ成形プロセスの実施における異なるステップを示す概略図である。
図8B】コンタクトレンズ成形プロセスの実施における異なるステップを示す概略図である。
図8C】コンタクトレンズ成形プロセスの実施における異なるステップを示す概略図である。
図9A】コンタクトレンズの凸面に窪みを形成するための型部の概略断面図である。
図9B】コンタクトレンズの凸面に突起を形成するための型部の概略断面図である。
図9C】コンタクトレンズの凸面にドットを埋め込むために材料の個々のドットが表面にある状態の、型部の概略断面図である。
図10A】近視軽減コンタクトレンズの成形部分の平面図である。
図10B図10Aに示す近視軽減コンタクトレンズの成形部分の断面図である。
図10C図10Aおよび図10Bに示す部分を含む、完成した近視軽減コンタクトレンズの断面図である。
図11A】別の近視軽減コンタクトレンズの成形部分の断面図である。
図11B図11Aに示す部分を含む、完成した近視軽減コンタクトレンズの断面図である。
図12】近視軽減コンタクトレンズの別の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aおよび図1Bを参照すると、近視軽減コンタクトレンズ100は、透明開口110とぼやけ領域120とを含む。透明開口110は横径CAを有する。ぼやけ領域120は半径方向横寸法BRを有し、2BR+CAがコンタクトレンズの直径である。
【0020】
透明開口110の大きさおよび形状は変化し得る。一般に、透明開口110は、着用者の視力を最適に(例えば、20/15または20/20に)矯正することができるように、視円錐を着用者にもたらす。一般的に、横径CAは、通常の室内照明の条件下で(例えば、使用者が容易に本の文章を読むことができる、一般的な教室またはオフィスの照明など)、使用者の瞳孔径より小さい。このため、そのような照明条件下で、使用者の周辺視野における像コントラストが確実に低減する。
【0021】
一部の実施形態において、開口の横径CAは、約0.2mm(例えば、約0.3mm以上、約0.4mm以上、約0.5mm以上)~約2mmの範囲(例えば、約0.75mm~約1.75mmの範囲、約0.9mm~約1.2mmの範囲、約0.6mm以上、約0.7mm以上、約0.8mm以上、約0.9mm以上、約1mm以上、約1.1mm以上、約1.2mm以上、約1.9mm以下、約1.8mm以下、約1.7mm以下、約1.6mm以下、約1.5mm以下、約1.4mm以下、約1.3mm以下)である。
【0022】
透明開口110は、見る者の視野において、約30度以下(例えば、約25度以下、約20度以下、約15度以下、約12度以下、約10度以下、約9度以下、約8度以下、約7度以下、約6度以下、約5度以下、約4度以下、約3度以下)の立体角をなすことができる。水平および垂直な視野平面でなされる立体角は、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
一般に、コンタクトレンズ100のぼやけ領域120は、この領域においてレンズを透過し、普通なら着用者の網膜に像を与える光の少なくとも一部を散乱させる散乱中心を含む。したがって、ぼやけ領域120を通して見える光景は、着用者が透明開口110を通して見る同じ光景に対してぼやける。一般に、散乱中心を、コンタクトレンズの表面100上および/またはレンズ自体の本体中に形成することができる。
【0024】
一部の実施形態において、散乱中心は、コンタクトレンズの表面における隆起(「突起」)の形状である。例えば、図2Aを参照すると、コンタクトレンズ200は、レンズの表面202に突起210の列を含む。突起は、順序を有して(例えば、順序付けられた列として)配置されていても、ランダムに配置されていてもよい。
【0025】
一部の実施形態において、散乱中心は、コンタクトレンズの表面における凹み(「窪み」)の形状である。例えば、図2Bを参照すると、コンタクトレンズ220は、レンズの表面222に凹み230の列を含む。窪みは、順序を有して配置されていても、ランダムに配置されていてもよい。
【0026】
散乱中心の大きさおよび形状は、散乱中心が入射光を散乱させて、コントラスト低減領域(reduced contrast area)を通して見える物体のコントラストを低減させるように決められる。散乱中心は、略球形、楕円形、または不規則な形状であってよい。一般に、散乱中心の寸法(例えば、球形の場合には直径)は、可視光を散乱させるのに十分大きいが、通常の使用中に着用者によって解像されないように十分小さくしなければならない。例えば、散乱中心の寸法(レンズ表面に対して接平面で測定)は、約0.001mm以上(例えば、約0.005mm以上、約0.01mm以上、約0.015mm以上、約0.02mm以上、約0.025mm以上、約0.03mm以上、約0.035mm以上、約0.04mm以上、約0.045mm以上、約0.05mm以上、約0.055mm以上、約0.06mm以上、約0.07mm以上、約0.08mm以上、約0.09mm以上、約0.1mm)~約1mm以下(例えば、約0.9mm以下、約0.8mm以下、約0.7mm以下、約0.6mm以下、約0.5mm以下、約0.4mm以下、約0.3mm以下、約0.2mm以下、約0.1mm)の範囲である。
【0027】
例えば、光の波長と同等の寸法(例えば、0.001mm~約0.05mm)を有する、より小さい散乱中心の場合、光の散乱はレイリー散乱またはミー散乱とみなされることがあることに留意されたい。例えば約0.1mm以上のより大きい散乱中心の場合、光の散乱は散乱中心のレンズ効果に起因することがあり、例えば、非常に小さい曲率半径を有するレンズによって、使用者の網膜のかなり前方にある点で焦点を結ぶことに起因することがある。そのような場合には、各散乱中心からの光は、使用者の網膜に到達するときに、その焦点からかなり離れ、使用者によって像として解像することができない。
【0028】
一般に、散乱中心の寸法は、レンズにわたって同じであっても変化してもよい。例えば、寸法は、例えば透明開口から測定した散乱中心の位置の関数として、および/またはレンズの縁からの距離の関数として増減し得る。
【0029】
所望の光学的効果をもたらすために、散乱中心の間隔も変化し得る。一般的に、散乱中心の間隔(すなわち、隣接する散乱中心の中心間で測定された間隔)は、約0.05mm(例えば、約0.1mm以上、約0.15mm以上、約0.2mm以上、約0.25mm以上、約0.3mm以上、約0.35mm以上、約0.4mm以上、約0.45mm以上)~約1mm(例えば、約0.9mm以下、約0.8mm以下、約0.7mm以下、約0.6mm以下、約0.5mm以下)の範囲である。
【0030】
ぼやけ領域120において散乱中心間でレンズに入射する光景からの光は、使用者の網膜に光景の像を与えるが、散乱中心に入射する光景からの光は、光景の像を与えないと考えられる。さらに、散乱中心に入射する光はなおも網膜に伝達されるので、網膜における光度を大幅に低下させることなく像のコントラストを低減させる効果を有する。したがって、使用者の周辺視野におけるコントラスト低減量は、散乱中心で覆われたコントラスト低減領域の表面積の割合に関連する(例えば、略比例する)と考えられる。一般に、散乱中心は、ぼやけ領域120の面積の少なくとも10%(例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、例えば90%以下、80%以下、70%以下、60%以下)を占める。
【0031】
一般に、散乱中心は、着用者の周辺視野における物体の像のコントラストを、この領域における着用者の視力を著しく悪化させることなく低減させる。ここで周辺視野とは、透明開口の視野の外側にある視野を指す。これらの領域における像コントラストは、決定されるレンズの透明開口を使用して見られる像コントラストに対して、40%以上(例えば、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上)低減され得る。コントラスト低減は、個々の場合の必要に従って設定され得る。一般的なコントラスト低減は、約50%~55%の範囲であると考えられる。50%未満のコントラスト低減は、非常に軽症の場合に使用されることがあり、一方、より素因を持っている(predisposed)患者は55%超のコントラスト低減を必要とすることがある。周辺視力を、有意なコントラスト低減を実現しながら、自覚的屈折検査によって決定される20/30以上(例えば、20/25以上、20/20以上)に矯正することができる。
【0032】
ここでコントラストとは、同じ視野にある、2つの物体の間の輝度の差を指す。したがって、コントラスト低減は、この差の変化を指す。
【0033】
図2Aおよび図2Bにおいて、表面の散乱中心は凸レンズ面に示されているが、あるいは、または加えて、散乱中心を凹面に形成してもよい。
【0034】
ある実施形態において、散乱中心は、ぼやけ領域におけるコンタクトレンズの本体内の個々の含有物の形状である。例えば、図2Cを参照すると、コンタクトレンズ240は、連続したレンズ材料中に分散された散乱中心250の分散体(dispersion)を含む。
【0035】
ある実施形態において、散乱中心は、コンタクトレンズの本体内の個々の層に限定される。例えば、図2Dを参照すると、コンタクトレンズ260は、散乱中心270の分散体が内部に限定された層262を含む。
【0036】
図2Cおよび図2Dに示す含有物は個々の含有物であるが、他の形状の含有物も可能である。例えば、一部の実施形態において、ぼやけ領域における光の散乱は、レンズのぼやけ領域の全体または一部に分布された材料網目(network of material)によってもたらされる。例えば、(例えば、多機能アクリレートモノマーまたはオリゴマーから形成された)架橋ポリマー網目により、個々の含有物と同様の効果を有する散乱含有物をもたらすことができる。一般に、そのようなポリマー網目は、網目を透過する間隙物質を受け入れるように十分に拡散している。網目と間隙物質との界面は、光の散乱のための光界面を提供する。
【0037】
一般に、散乱中心を、様々な方法でコンタクトレンズに含ませることができる。一部の実施形態において、コンタクトレンズを最初に形成することができ、その後の処理によって機構を追加することができる。あるいは、コンタクトレンズ製造プロセスの一部として機構を形成してもよい。これら2つの様式の各々の例について以下で説明する。
【0038】
一部の実施において、散乱中心(ドット)は、既に形成されたコンタクトレンズの表面にドットを堆積させることによって形成される。
【0039】
レンズにドットを形成するためのインクジェット方法が、例えば、参照により本明細書に全体が組み込まれている、2016年8月1日に出願した、発明者Jay Neitz、James Kuchenbecker、およびMaureen Neitzによる、「SPECTACLE LENSES FOR REDUCING SIGNALS IN THE RETINA RESPONSIBLE FOR GROWTH OF EYE LENGTH」という名称の米国仮特許出願第62/369,351号に記載されている。
【0040】
一般に、コンタクトレンズの本体は、光学的透明材料から形成される。光学的透明材料は、剛性であっても軟質であってもよい。剛性材料の例として、フルオロシリコーンアクリレートおよびシリコーンアクリレートが挙げられる。一般に、シリコーンアクリレートは、フルオロシリコーンアクリレートより高い屈折率を有する。フルオロシリコーンアクリレートは、1.423~1.469の範囲の屈折率を有し得る。シリコーンアクリレートは、1.458~1.473超(例えば、最大1.480)の範囲の屈折率を有し得る。
【0041】
軟質材料は、通常、ハイドロゲルであり、これは、薄く柔軟で眼の前面に適合するゲル状の水含有プラスチックである。コンタクトレンズに広く使用されているハイドロゲルの種類は、シリコーンハイドロゲルである。
【0042】
ソフトコンタクトレンズの製造に使用可能なハイドロゲルの例として、balafilcon A、lotrafilcon B、etafilcon A、Narafilcon A、Galyfilcon A、Senofilcon A、Ocufilcon D、Hioxifilicon A、Enfilcon A、Comfilcon A、Nesofilcon A、Filicon II 3、Deleficon A、Methafilcon A/B、Vifilcon A、Phemfilcon A、Nelfilcon A、Stenfilcon A、Polymacon、Hefilcon B、Tetrafilcon A、Omafilcon A、Balafilcon A、Polymacon、Polymacon B、Hilafilcon B、Alphafilcon Aが挙げられる。
【0043】
他のハイドロゲルの例として、tefilcon、lidofilcon B、etafilcon、bufilcon A、tetrafilcon A、surfilcon、bufilcon A、perfilcon、crofilcon、lidofilcon A、deltafilcon A、dimefilcon、ofilcon A、droxifilcon A、Ocufilcon B、hefilcon A&B、xylofilcon A、phemfilcon A、phemfilcon A、phemfilcon A、scafilcon A、ocufilcon、tetrafilcon B、isofilcon、methafilcon、mafilcon、vifilcon A、およびpolymaconが挙げられる。
【0044】
Lotrafilcon Bは約1.422の屈折率を有し得る。Etafilcon Aは約1.405の屈折率を有し得る。
【0045】
通常、水の屈折率はハイドロゲルの構成材料よりも低いため、ハイドロゲルの屈折率は水和状態に応じて変化し得る。例えば、乾燥したハイドロゲルは1.51の屈折率を有し得、湿潤時の同じ材料は1.41の屈折率を有し得る。
【0046】
散乱中心を、光学的透明材料または光学的に不透明な材料から形成することができる。一部の実施形態において、散乱中心を、コンタクトレンズの本体を形成する材料と同様の屈折率を有する材料から形成することができる。例えば、散乱中心がコンタクトレンズの表面に位置する突起、窪み、または個々の粒子である場合、散乱中心の幾何形状により、散乱中心とコンタクトレンズの本体との間における屈折率のコントラストなしで、光のコントラストを低減させ得る散乱効果を(例えば、屈折または回折により)生じさせることができる。
【0047】
一部の他の実施形態において、散乱中心を、コンタクトレンズの本体を形成する材料とは実質的に異なる屈折率を有する材料、例えば、0.05以上(例えば、0.08以上、0.1以上、0.12以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、例えば最大約0.4)の屈折率差を有する材料から形成することができる。そのような材料により、散乱中心と周囲媒体との間に屈折率のコントラストをもたらす。屈折率のコントラストは、例えば、散乱中心がコンタクトレンズの本体を形成する材料内に埋め込まれるときに、レイリー散乱またはミー散乱による光の散乱を可能にすることができる。
【0048】
散乱中心がコンタクトレンズの本体内に埋め込まれる実施形態において、様々な材料の対が考えられる。
【0049】
例えば、ハードコンタクトレンズの場合、ある範囲の屈折率コントラストを潜在的にもたらすために、フルオロシリコーンアクリレートを使用して本体を形成することができ、シリコーンアクリレートを使用して散乱中心を形成することができ、またこの逆も可能である。例えば、屈折率コントラストは、約0.1%以上(例えば、約0.25%以上、約0.5%以上、約0.75%以上、約1.0%)~約5%以下(例えば、約4.5%以下、約4.0%以下、約3.5%以下、約3.0%以下、約2.5%以下、約2.0%以下、約1.5%)の範囲であってよい。
【0050】
一部の実施形態において、散乱中心を無機ガラス材料から形成してもよい。一般に、無機ガラスを、所望の屈折率コントラストをもたらすようにその都度選択される様々な材料から形成することができる。例えば、石英ガラスは約1.46の屈折率を有し得、Schottガラス8625生体適合性ガラスは約1.53の屈折率を有し得る。ある種類のハイインデックスガラスは1.50~1.90の範囲の屈折率を有し得る。ハイインデックスガラスの例として、N-BK7、N-K5、B270/S1、Schott ZERODUR(登録商標)、N-SK11、N-BAK4、N-BaK1、L-BAL35、N-SK14、N-SSK8、N-F2、BaSF1、N-SF2、N-LAK22、S-BaH11、N-BAF10、N-SF5、N-SF8、N-LAK14、N-SF15、N-BASF64、N-LAK8、N-SF18、N-SF10、S-TIH13、N-SF14、サファイア、N-SF11、N-SF56、N-LASF44、N-SF6、N-SF57、N-LASF9、N-SF66が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態において、散乱中心をプラスチックから形成することができる。例えば、眼科用レンズの製造に使用されるポリカーボネート材料またはTrivex材料を使用してもよい。ポリカーボネート材料は1.58~1.74の範囲の屈折率を有し得る。Trivex材料は約1.53の屈折率を有し得る。
【0052】
一般に、記載した材料の屈折率は、560~600nmの波長、例えば587.6nm(ヘリウムd線)または589.0nm(ナトリウムD2線)の波長で測定される。
【0053】
ソフトコンタクトレンズ用の水和軟質材料の屈折率は、一般に、前述の散乱中心用の材料よりも低い。したがって、前述の材料から形成された散乱中心を軟質材料に埋め込んで、屈折率コントラストを実現することができる。
【0054】
一般に、コンタクトレンズの本体を形成する材料は、生体適合性でなければならない。生体適合性の基準として、細胞毒性、遺伝毒性、遅延型過敏症、および炎症が挙げられる。
【0055】
場合により、散乱中心を形成するのに望ましい光学特性を有する材料が、生体適合性でないことがある。そのような場合には、生体適合性でない材料が周囲環境(例えば、眼)に直接触れないようにすることによって、生体適合性の欠如を潜在的に緩和することができる。例えば、散乱中心を生体適合性材料で被覆してもよい。別の例として、散乱中心をコンタクトレンズの本体に埋め込んでもよい。
【0056】
一部の実施形態において、転写プロセスにより、ドットパターンをコンタクトレンズ表面に形成することができる。例えば、図3Aを参照すると、インクジェットプリンタ320を使用して、ドットパターン301を転写基板310の表面311に形成する。以下のようにして、ドットパターン301をコンタクトレンズ300の表面330に転写する。図3Bを参照すると、転写基板310を、光軸302を有するコンタクトレンズ300に位置合わせして、ドットパターン301の開口をレンズの光軸302に位置合わせする。転写基板は、表面311をコンタクトレンズの表面330に向けて位置合わせされる。位置合わせしたら、基板をコンタクトレンズ300に接触させて配置し、コンタクトレンズと転写基板との間にドットパターン301を挟む。接触は、ドットをコンタクトレンズの表面330に付着させるのに十分な条件下で行われる。例えば、接触を、高温(例えば、室温より高い温度)および/または高圧(例えば、大気圧より高い圧力)で行うことができる。
【0057】
図3Cを参照すると、ドットがコンタクトレンズ300の表面330に付着するのに十分な時間の後、転写基板をコンタクトレンズから後退させて、ドットパターン301を転写基板から解放させる。
【0058】
場合によっては、ドットを表面330に転写するのに圧力および熱のみで十分である。
【0059】
あるいは、または加えて、コンタクトレンズ300と転写基板310とを接触させたまま、これらにさらなる刺激を与えて、ドットパターン301の転写を容易にする。例えば、一部の実施形態において、ドットを、転写基板および/またはコンタクトレンズを通して放射に晒し、例えば、ドットとコンタクトレンズ300の表面330との付着を強化することができ、または転写基板310の表面311からドットの解放を促進することができる(またはこれらの両方を行うことができる)。
【0060】
一部の実施形態において、転写プロセスは転写後ステップを含むことができる。例えば、コンタクトレンズ300を放射、熱、および/または材料に晒して、例えば、ドットと表面330との付着を促進し、かつ/またはドット材料を固化させることができる。
【0061】
一部の実施形態において、散乱含有物は、コンタクトレンズをレーザ放射に晒すことによって、コンタクトレンズの本体内に形成される。レーザ放射は、露光領域でコンタクトレンズ材料の光学特性を局所的に変化させて、光学散乱機構を作り出す。コンタクトレンズ表面を選択的にレーザ放射に晒すことによって、含有物の分布をコンタクトレンズの本体内に形成することができる。例えば、レーザ光線がパルス状である間に、光線をコンタクトレンズに対して動かすことができる。光線とコンタクトレンズ表面との相対運動は、表面を固定したまま光線を動かすこと、光線を固定したまま表面を動かすこと、または光線および表面の両方を動かすことによって生じさせることができる。
【0062】
図4を参照すると、コンタクトレンズ401内に散乱含有物を形成するためのレーザシステム400は、レーザ420、ビームチョッパ430、集束光学部品440、ミラー450、およびステージ470を備える。レーザ420はレーザ光線をミラー450に向け、ミラー450は、ステージ470によりミラー450に対して位置決めされるコンタクトレンズ401に向かって光線を偏向させる。アクチュエータ460(例えば、圧電アクチュエータ)がミラー450に取り付けられる。ステージは、コンタクトレンズ401を支持する湾曲した取付け面480を含む。レーザシステム400はまた、レーザ420、ビームチョッパ430、およびアクチュエータ460と通信するコントローラ(例えば、コンピュータコントローラ)を備える。
【0063】
ビームチョッパ430および集束光学部品440は、光線経路に位置決めされる。チョッパ430は光線を周期的に遮断して、コンタクトレンズ401がレーザ光の個々のパルスに晒されるようにする。一般に1つまたは複数の透過光学素子(例えば、1つまたは複数のレンズ)を備える集束光学部品440は、レンズ表面の光線により除去される領域が所望の含有物の大きさに一致するように、コンタクトレンズ401の表面にある十分に小さい点に光線の焦点を合わせる。アクチュエータ460は、光線に対してミラー450の向きを変えて、コンタクトレンズ表面にある異なる目標点へのパルス状の光線を走査する。コントローラ410は、レーザシステムがコンタクトレンズ内に所定の含有物分布を形成するように、レーザ420、チョッパ430、およびアクチュエータ460の動作を調整する。
【0064】
一部の実施において、ステージ470もアクチュエータを備える。ステージアクチュエータは、例えば光線伝播方向に直交する2つの横寸法にコンタクトレンズを動かす、多軸アクチュエータであってよい。あるいは、または加えて、アクチュエータは光線方向に沿ってステージを動かしてもよい。ステージを光線方向に沿って動かすことは、レンズ表面の曲率にかかわらず、レンズ表面の露光部分を光線の焦点位置に維持し、これによりレンズにわたって略一定の露光領域を維持するために使用することができる。ステージアクチュエータはまた、このステージの動きをシステムの他の要素に調和させるコントローラ410によって制御され得る。一部の実施形態において、ステージアクチュエータはミラーアクチュエータの代わりに使用される。
【0065】
一般に、レーザ420は、コンタクトレンズ材料に所望の光化学反応を生じさせるのに十分なエネルギーを有する、適切な波長の光を発生させることが可能な任意の種類のレーザであってよい。ガスレーザ、化学レーザ、色素レーザ、固体レーザ、および半導体レーザを使用することができる。
【0066】
パルス幅およびパルスエネルギーは、通常、各パルスがコンタクトレンズ材料と相互作用して所望の大きさの散乱含有物を形成するように選択される。
【0067】
含有物形成プロセスが図5Aに示され、図5Aは、集束レーザ光線510がコンタクトレンズ500の個々の領域を選択的にレーザ放射に晒す様子を示す。一部の実施において、レーザ放射はコンタクトレンズ材料の化学反応を開始して(photoinitiate)、レンズを透過する光を光学的に散乱させる個々の含有物を形成する。一部の他の実施において、レーザ放射は、多光子吸収によって材料により局所的に吸収されて、散乱中心として作用し得る微小クラックを生じさせる。
【0068】
あるいは、一部の実施において、選択的レーザ放射を使用して、散乱中心が内部に分散されたコンタクトレンズ材料に透明開口を形成することができる。このプロセスは図5Bに示される。ここでは、コンタクトレンズ550が、レンズの光軸またはその近傍の領域に含まれる連続相材料570(continuous phase material)全体に個々の粒子560が分散された材料から形成される。集束レーザ光線510に晒されると、レーザ光線からの熱により、近傍の粒子の材料が連続相材料内に拡散して、レンズの透明開口に相当する光学的に均質な領域を形成する。
【0069】
例えば、個々の粒子560は、連続相材料570から形成することができ、さらに粒子560の屈折率を修正するドーパントを含むことができる。ドーパントは、材料570の屈折率を増減させて、粒子560と材料570との間の屈折率コントラストを実現することができる。
【0070】
レーザ光線によりドーパント拡散に十分な温度(例えば、材料570の溶融温度近く)まで加熱すると、ドーパントは拡散して材料570を囲む。拡散によって、粒子560と材料570との間の屈折率コントラストが低減し、またはなくなり、光学的に均質な領域を形成することができる。
【0071】
ある実施において、近視軽減コンタクトレンズは、円筒形レンズブランクまたはボタンから研削される。図6A図6Dを参照すると、ボタン600を2段階プロセスで研削して、コンタクトレンズを製造する。図6Aを参照すると、第1のステップで、凸レンズ面の所望の曲率を持つ凹研削面631を有する研削工具630を使用して、ボタン600の第1の面を研削する。研削は、一般に、工具を回転させながらボタン600の端部610を工具に押し付けることによって行われる。このプロセスにより、材料をボタン600から除去して、凹研削面631と同じ曲率を持つ凸面を形成する。
【0072】
図6Bを参照すると、結果として得られた、部分的に研削されたボタン601は、研削されていない面に元の円筒形状を有するが、反対側の凸レンズ面611を特徴とする。
【0073】
図6Cを参照すると、次に、凹レンズ面の所望の曲率を持つ凸研削面641を有する研削工具640を使用して、部分的に研削されたボタン601の反対側620を研削する。図6Dを参照すると、第2の研削ステップの結果として、凸面611と凹面612とを有するコンタクトレンズ602が得られる。
【0074】
追加の研磨ステップを両面に行って、所望の表面平滑度を実現してもよい。
【0075】
近視軽減コンタクトレンズを形成するためのボタンを、様々な方法で形成することができる。一般に、ボタンは、透明な材料の部分(最終的にコンタクトレンズの透明開口に相当する)と分散体からなる部分(最終的にぼやけ領域に相当する)とから形成された複合部材(multi-component item)である。
【0076】
散乱中心が全体に浮遊する(suspend)分散体を、様々な方法で形成することができる。一部の実施において、分散体を、散乱中心(例えば、図2A図2Dに関して屈折率コントラストを有する前述の材料から形成された粒子、ビーズ、または球体)を液体のレンズ形成材料に混合し、その後、凝固プロセス(例えば、硬化)を行うことによって形成することができる。
【0077】
一部の実施形態において、ボタンは2つの同心層から形成されており、中心の円筒形層は透明な材料から形成され、外側の環状層は分散体から形成される。例えば、円筒形ボタン710を断面で示す図7Aを参照すると、ボタン710は、環状被覆711によって囲まれた内核712から構成される。核712は透明(すなわち、光学的に透明)な材料から形成され、被覆711は分散体から形成される。コンタクトレンズ700の形状は、核712がレンズの透明開口となり、被覆711がぼやけ領域となる様子を示す。例えば、図6A図6Cで説明した研削プロセスを使用して、コンタクトレンズ700を形成することができる。
【0078】
ある実施形態において、ボタンは、分散体の層の上に透明な材料の層があるものから形成される。例えば、図7Bを参照すると、円筒形ボタン720は、透明な上層721と、分散体から形成された下層722とから形成される。図6A図6Cで説明した研削プロセスを使用して、コンタクトレンズ700を形成することができる。研削されると、レンズ700の曲率により、レンズの中心部が透明な材料(層721)から形成され、レンズの外側部が分散体(層722)から形成される。円筒形ボタン720の第1の面および第2の面から除去する材料の量を制御することにより、透明開口の直径CAを限られた範囲で制御することができる。
【0079】
場合によって、ボタンは、分散体内に埋め込まれた透明な材料の円錐体(conical volume)から形成される。例えば、図7Cを参照すると、円筒形ボタン730は、円筒形ケーシング731内に埋め込まれた円錐形部分732から形成される。円錐形部分732は透明な材料から形成され、ケーシング731は分散体から形成される。研削されると、コンタクトレンズ700は、円錐形部分732の透明な材料に相当する中心部分と、ケーシング731の分散体に相当する外側部分とを含む。透明開口とぼやけ領域との相対的な大きさ(すなわち、CA対BR、図1A図1B参照)は、ボタンを研削する深さに応じて決まることに留意されたい。したがって、そのようなボタンを使用して、様々な透明開口の大きさを有するコンタクトレンズを形成することができる。前述したように、コンタクトレンズをボタンから研削するのではなく、成形してもよい。図8A図8Cを参照すると、一般に、コンタクトレンズを成形するステップは、コンタクトレンズ表面の所望の曲率に一致する、一方が凹で他方が凸の2つの湾曲面の間でコンタクトレンズ材料を硬化させるステップを伴う。図8A図8Cに示す実施形態において、型800は、凸成形面812を有する第1の型部810と凹成形面822を有する第2の型部820とから構成される。レンズ形成プロセスは、図8Aに示すように、レンズ形成材料830を型部820の凹面822に注入するステップを含む。その後、図8Bに示すように、型部810、820を押し付けて、レンズ形成材料を一側で凸面812に適合させ、他側で凹面822に適合させる。レンズ形成材料がコンタクトレンズ801の形状を呈し、かつその形状を維持するのに十分な条件下で、型部810、820を十分に長く合わせて保持する。
【0080】
レンズ形成材料830は、一般に、重合可能な合成物である。重合可能な合成物を使用して、前述のハイドロゲルを形成することができる。ソフトコンタクトレンズの製造に適した重合可能な合成物の例として、ビニル含有モノマー、ビニル含有架橋剤、およびシロキサンモノマーが挙げられる。この合成物は、硬化すると、シリコーンハイドロゲルを形成することができる。一部の重合可能な合成物は、光を使用して硬化させることのできるフォトポリマーであってよい。一部の重合可能な合成物は、熱硬化性ポリマーであってよい。
【0081】
一般に、レンズを成形する条件は、使用するレンズ形成材料に応じて決まる。これらの条件は、レンズ形成材料が適切な形状を呈するように、部品を十分な圧力および/または高温で押し付けるステップを含むことができる。ある材料、例えば、熱硬化性ポリマーの場合、レンズを成形してレンズ形状を固定したら、温度を低下させることができる。
【0082】
シリコーンハイドロゲルの場合、条件は、高温、例えば50~95℃で、例えば15~60分間硬化させるステップを含むことができる。場合によって、硬化させるステップを複数の段階で行って、完全に硬化するまで温度を徐々に上昇させてもよい。
【0083】
フォトポリマーの場合、条件は、可視放射またはUV放射による照明で重合化を開始するステップを含み、これにより、レンズ形成材料がコンタクトレンズ801の形状を維持できるようにする。
【0084】
コンタクトレンズ801の形状を固定するのに十分な時間の後、図8Cに示すように、型部を分離させ、レンズを型から取り外す。
【0085】
一般に、成形するステップを使用して、散乱中心が表面にある、または散乱中心がレンズの本体中に分散した近視軽減コンタクトレンズを形成することができる。
【0086】
図9Aは、コンタクトレンズの凸面に窪みを形成するための型部910を示す。詳細には、凹成形面912が、パターンに配置された突起911を含む。成形プロセス中、突起911は、レンズの対応する凸面に窪みを付ける。
【0087】
図9Bは、コンタクトレンズの凸面に突起を形成するための型部920を示す。ここでは、凹成形面922が、パターンに配置された窪み921を含む。成形プロセス中、窪み921にコンタクトレンズ材料を充填することにより、レンズの対応する凸面に突起が作られる。
【0088】
場合によって、成形プロセス中に散乱中心をコンタクトレンズ表面に埋め込んでもよい。例えば、図9Cを参照すると、散乱粒子931を型部930の表面932に堆積させる。その後のレンズ成形ステップ中に、コンタクトレンズ材料を粒子931の周りに充填し、粒子をレンズの凸面に埋め込む。一般に、粒子のパターンを、例えばインクジェット印刷または転写印刷を含む様々な技法を使用して形成することができる。
【0089】
あるいは、または加えて、窪み、突起、または含有物をレンズ表面の凹面に形成するための型部を使用してもよい。
【0090】
前述の例は、散乱中心をコンタクトレンズ表面の一方または両方に形成する、または埋め込むための型部を示すが、成形プロセスを使用して、ぼやけ領域においてレンズの本体中に散乱中心の分散体を含む、近視軽減コンタクトレンズを形成することもできる。一部の実施形態において、そのようなコンタクトレンズは、複数の成形ステップを使用して形成される。例えば、第1の成形ステップを使用して、粒子がレンズ材料中に分散されたコンタクトレンズ材料を用いてぼやけ領域を形成することができる。その後、透明開口を第2の成形ステップで形成することができる。そのようなプロセスの例が図10A図10Cに示される。
【0091】
図10Aを参照すると、孔1020を有する成形部分1010が示される。成形部分1010を、例えば、図8A図8Cで説明した成形プロセスを使用して形成し、その後、透明開口を画定する孔1020を形成することができる。成形部分1010は、ぼやけ領域に対応し、例えば、分散体を使用して形成することができる。孔1020を、レーザ切断、水ジェット切断、木摺打ち、および打抜きを含む様々なプロセスを使用して形成することができる。図10Bは、成形部分1010の断面図である。
【0092】
図10Cを参照すると、近視軽減コンタクトレンズ1000が示される。コンタクトレンズ1000を、透明開口1030を形成することによって形成することができる。透明開口1030を、例えば、前述の光学的透明材料を孔1020に充填し、成形部分1010を形成するために使用される成形プロセスを繰り返すことによって形成することができる。同じ組の型部を使用することにより、透明開口1030と成形部分1010との界面の途切れを最小限にすることができ、レンズ表面の曲率を界面にわたって維持することができる。
【0093】
多段階成形プロセスを使用して、光学的透明材料の層内に分散体の個々の層を埋め込むこともできる。例えば、図11A図11Bを参照すると、近視軽減コンタクトレンズ1100を、図10Aの成形部分1010と同様の成形部分1110を最初に形成することによって形成することができる。その後、成形部分1110を、光学的透明材料の層内に様々な方法で埋め込むことができる。例えば、十分に粘性の高いレンズ形成材料の場合、形成材料の第1の層を、図8Aの型部820と同様の型に最初に供給することができる。その後、成形部分1110を第1の層に配置し、続いて、成形部分1110の上に次の形成材料を供給して、孔1120に充填することができる。この時点で、成形部分1110はレンズ形成材料中で浮遊している。その後、図8A図8Cと同様の成形プロセスを使用して、コンタクトレンズの表面を形成し、結果として得られたコンタクトレンズ1100の形状を固定することができる。
【0094】
前述した近視軽減コンタクトレンズの実施形態は、コンタクトレンズの縁まで広がるぼやけ領域によって囲まれた透明開口を特徴とするが、他の実施形態も可能である。例えば、一部の実施形態において、ぼやけ領域はコンタクトレンズの縁まで広がるのではなく、外側の透明領域によって囲まれる。この例が図12に示され、ここでは、コンタクトレンズ1200が透明開口1210、コントラスト低減領域1220、および透明な外側領域1230を含む。コントラスト低減領域1220は、内径IDおよび外径ODを有する環状領域である。IDは透明開口1210の直径に相当する。コンタクトレンズは、ODより大きいレンズ径LDを有する。
【0095】
一般的に、IDは、通常の室内照明の条件下で(例えば、使用者が容易に本の文章を読むことができる、一般的な教室またはオフィスの照明など)、使用者の瞳孔径より小さい。このため、そのような照明条件下で、使用者の周辺視野における像コントラストが確実に低減する。一部の実施形態において、IDは約0.2mm~約2mmの範囲(例えば、約0.75mm~約1.75mmの範囲、約0.9mm~約1.2mmの範囲、約0.6mm以上、約0.7mm以上、約0.8mm以上、約0.9mm以上、約1mm以上、約1.1mm以上、約1.2mm以上、約1.9mm以下、約1.8mm以下、約1.7mm以下、約1.6mm以下、約1.5mm以下、約1.4mm以下、約1.3mm以下)である。
【0096】
一般に、ODは、コントラスト低減領域が通常の室内照明の条件下で使用者の瞳孔を越えて広がるように十分大きい。一部の実施形態において、ODは約2.5mm以上(例えば、約3mm以上、約4mm以上、約5mm以上、例えば約10mm以下、約8mm以下、約7mm以下、約6mm以下)である。
【0097】
一般に、コンタクトレンズのドットの寸法および間隔は、所望の光学的効果(例えば上述のような)をもたらすように選択される。同様に、ドットの間隔はまた、所望の光学的効果(例えば上述のような)をもたらすように変化し得る。
【0098】
LDはコンタクトレンズの直径に相当し、通常、約10~20mmの範囲である。一般に、LDはODより少なくとも1mm以上(例えば、約2mm以上、約3mm以上、約4mm以上、約5mm以上、約6mm以上、約7mm以上、例えば約8mm)大きい。コンタクトレンズの縁にドットを含まない少なくともいくらかの余白を含むことにより、ドットがコンタクトレンズの完全性をその縁で低下させないこと(例えば流涙によって)、またはコンタクトレンズと使用者の眼球との間の密閉の完全性を低下させないことが確実になる。
【0099】
透明な外側領域を有するコンタクトレンズを、前述した方法のいずれかを使用して形成することができる。例えば、散乱中心をレンズ表面に形成することによってコンタクトレンズを製造する場合、散乱中心を、環状のぼやけ領域に相当する表面領域のみに形成することができる。レンズを円筒形ボタンから形作ることによって形成される実施形態においては、ボタンを、例えば、前述のボタンを囲む透明な材料から形成された、追加の環状部分から形成することができる。射出成形によって形成される実施形態においては、型の大きさを、散乱部分が透明部分まで半径方向に広がらないように決めることができる。
【0100】
いくつかの実施形態について説明した。他の実施形態は以下の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100 近視軽減コンタクトレンズ
110 透明開口
120 ぼやけ領域
200 コンタクトレンズ
202 表面
210 突起
220 コンタクトレンズ
222 表面
230 凹み
240 コンタクトレンズ
250 散乱中心
260 コンタクトレンズ
262 層
270 散乱中心
300 コンタクトレンズ
301 ドットパターン
302 光軸
310 転写基板
311 表面
320 インクジェットプリンタ
330 表面
400 レーザシステム
401 コンタクトレンズ
410 コントローラ
420 レーザ
430 ビームチョッパ
440 集束光学部品
450 ミラー
460 アクチュエータ
470 ステージ
480 取付け面
500 コンタクトレンズ
510 集束レーザ光線
550 コンタクトレンズ
560 粒子
570 連続相材料
600 ボタン
601 部分的に研削されたボタン
602 コンタクトレンズ
610 端部
611 凸面
612 凹面
620 反対側
630 研削工具
631 凹研削面
640 研削工具
641 凸研削面
700 コンタクトレンズ
710 ボタン
711 環状被覆
712 内核
720 円筒形ボタン
721 上層
722 下層
730 円筒形ボタン
731 円筒形ケーシング
732 円錐形部分
800 型
801 コンタクトレンズ
810 第1の型部
812 凸成形面
820 第2の型部
822 凹成形面
830 レンズ形成材料
910 型部
911 突起
912 凹成形面
920 型部
921 窪み
922 凹成形面
930 型部
931 散乱粒子
932 表面
1000 近視軽減コンタクトレンズ
1010 成形部分
1020 孔
1030 透明開口
1100 近視軽減コンタクトレンズ
1110 成形部分
1120 孔
1200 コンタクトレンズ
1210 透明開口
1220 コントラスト低減領域
1230 透明な外側領域
CA 横径
BR 半径方向横寸法
ID 内径
OD 外径
LD レンズ径
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A-6B】
図6C-6D】
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A-10B】
図10C
図11A
図11B
図12