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特許7222984レニウムおよび/またはルテニウムを含む超合金で作られたタービン部品および関連する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】レニウムおよび/またはルテニウムを含む超合金で作られたタービン部品および関連する製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20230208BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20230208BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F01D25/00 L
C23C14/14 D
C23C14/34 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020516683
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 FR2018052314
(87)【国際公開番号】W WO2019058068
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】1700965
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザブーンジ,アマール
(72)【発明者】
【氏名】ジャッケ,ビルジニー
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059235(JP,A)
【文献】特開2007-092168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0185944(US,A1)
【文献】特開2008-095191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
C23C 14/14
C23C 14/34
F01D 5/28
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウムおよび/またはルテニウムを含み、かつ体積の点で主たるγ’-NiAl相とγ-Ni相とを有する単結晶ニッケル基超合金からできている基材(2)と、基材(2)を覆うニッケル基金属超合金からできているボンドコート(3b)であって、大部分の体積のγ’-NiAl相(12)を有しているボンドコート(3b)とを含むタービン部品(1)であって、ボンドコート(3b)が、
-0.15~0.25の間のアルミニウムの;
-0.03~0.08の間のクロムの;
-0.01~0.05の間の白金の;
-0.01未満のハフニウムの、および
-0.01未満のケイ素の
平均原子分率を有することと、
タービン部品(1)は、ボンドコート(3bを覆う酸化アルミニウムの保護層(4)を含むことと、を特徴とするタービン部品(1)。
【請求項2】
ボンドコート(3b)が、95体積%を超えるγ’-NiAl(12)相を有する、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
ボンドコート(3b)が、γ’-NiAl相(12)とβ-NiAlPt相(11)とを有する、請求項1または2に記載の部品。
【請求項4】
ボンドコート(3b)が、γ’-NiAl相(12)とγ-Ni相とを有する、請求項1または2に記載の部品。
【請求項5】
基材(2)のレニウム質量分率が0.04以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
ボンドコート(3b)が、コバルト、モリブデン、タングステン、チタン、タンタルから選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
保護層(4)を覆う熱的絶縁セラミック層(9)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の部品。
【請求項8】
ボンドコート(3)の厚さが5μm~50μmの間である、請求項1から7のいずれか一項に記載の部品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の部品(1)を備えることを特徴とするタービンブレード(6)。
【請求項10】
請求項9に記載のタービンブレード(6)を備えるタービンを備えることを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項11】
タービン部品(1)を製造するためのプロセスであって、レニウムおよび/またはルテニウムを含むニッケル基超合金で作られた基材(2)上の、体積の点で主にγ’-NiAl相を有するニッケル基超合金のボンドコート(3b)の真空蒸着のステップであって、ボンドコート(3b)が、
-0.15~0.25の間のアルミニウムの;
-0.03~0.08の間のクロムの;
-0.01~0.05の間の白金の;
-0.01未満のハフニウムの、および
-0.01未満のケイ素の
平均原子分率を有するステップと、
ボンドコート(3b)を覆う酸化アルミニウムの保護層(4)を形成するステップと
を含む、プロセス。
【請求項12】
堆積が、物理蒸着、溶射、ジュール蒸着、パルスレーザアブレーションおよびスパッタリングから選択される方法により行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
ボンドコート(3b)が、金属ターゲットを同時噴射かつ/または同時蒸着することにより堆積される、請求項11または12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空学において使用されるタービン部品、例えばタービンブレードまたはノズルベーンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットエンジンにおいて、燃焼室により生成された排気ガスは、1200℃またはさらには1600℃を上回る高温に達することがある。したがって、これらの排気ガスと接触するターボジェットエンジンの部品、例えばタービンブレードなどは、これらの高温においてそれらの機械的特性を維持できなければならない。
【0003】
この目的のために、ターボジェットエンジンのある種の部品を「超合金」で製造することが既知である。超合金は、その融点に比較的近い温度(典型的にはその溶融温度の0.7~0.8倍)で機能することができる高強度金属合金の一群である。
【0004】
これらの超合金の耐熱性を向上させるために、かつ酸化および腐食からこれらを保護するために、熱障壁として働くコーティングでこれらをコートすることが既知である。
【0005】
図1は、タービン部品1、例えばタービンブレード6またはノズルベーンの断面の略図を示す。部品1は、熱障壁10でコートされた、単結晶金属超合金で作られた基材2を含む。
【0006】
熱障壁は典型的には、金属ボンドコートと保護層と熱絶縁層とからなる。金属ボンドコートは金属超合金基材を覆っている。金属ボンドコートはそれ自体、保護層によって覆われており、保護層は、金属ボンドコートの酸化により形成される。保護層は、腐食および/または酸化から超合金基材を保護している。熱的絶縁層は保護層を覆っている。熱的絶縁層は、セラミック、例えばイットリア化ジルコニアで作られることができる。
【0007】
ボンドコートは、単一のニッケルアルミナイドβ-NiAlまたは修飾白金β-NiAlPtから作られることができる。ボンドコートの平均アルミニウム原子分率(0.35~0.45の間)は、酸化アルミニウム(Al)の保護層のみを形成して酸化および腐食から超合金基材を保護するのに十分である。
【0008】
しかし、部品が高温に曝されたとき、超合金基材と金属ボンドコートとの間のニッケルおよび特にアルミニウムの濃度の差は、様々な元素の拡散、特に基材中のニッケルから金属ボンドコートへの拡散および金属ボンドコート中のアルミニウムから超合金への拡散をもたらす。この現象は「相互拡散」と呼ばれる。
【0009】
相互拡散は、ボンドコートと接触する基材の一部内の一次および二次反応領域(SRZ)の形成をもたらすことがある。
【0010】
図2は、基材2を覆うボンドコート3aの断面の顕微鏡写真である。顕微鏡写真は、使用中の部品1の温度条件をシミュレートする一連の熱サイクルに部品が曝される前に撮影される。基材2はレニウムに富んでおり、すなわち、レニウムの平均質量分率は0.04以上である。超合金の組成中にレニウムを使用して超合金部品の耐クリープ性を向上させることが既知である。典型的には、基材2はγ-Ni相を有する。基材3aは、β-NiAlPt型のものである。基材は、ボンドコート3aによって直接覆われた基材の一部内に一次相互拡散領域5を有する。基材2は、一次相互拡散領域5によって直接覆われた二次相互拡散領域6も有する。図2に示された二次相互拡散領域6の厚さはおよそ35μmである。
【0011】
図3は、基材2を覆うボンドコート3aの断面の顕微鏡写真である。顕微鏡写真は、ボンドコート3aおよび基材2を上述の一連の熱サイクルに曝した後のボンドコート3aおよび基材2を示す。ボンドコート3aは基材2を覆っている。基材2は、一次相互拡散領域5と二次相互拡散領域6とを有する。局所的に、二次相互拡散領域6の厚さは、図3の白色部分によって表される通り、最大150μmになることがある。
【0012】
相互拡散現象は、アルミニウムボンドコートの早期減少をもたらし、これはボンドコート中の相変態(β-NiAl→γ’-NiAl、マルテンサイト変態)を促す。これらの変態は、ボンドコート3aの同素組織を変化させ、ボンドコート中に割れ8を生じさせ、保護酸化アルミニウム層のしわ発生を促進する。
【0013】
したがって、超合金基材とボンドコートとの間の相互拡散は、超合金部品の使用寿命に対して不都合な結果を有することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、既知の部品と比べて、使用中、超合金タービン部品の使用寿命を延ばしながら、酸化および腐食から超合金タービン部品を効果的に保護するための解決策を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、基材中の二次反応領域の形成および保護酸化アルミニウム層の剥離を回避または制限するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明において、レニウムおよび/またはルテニウムを含み、かつ体積の点で主たるγ’-NiAl相とγ-Ni相とを有する単結晶ニッケル基超合金からできている基材と、基材を覆う、ニッケル基金属超合金で作られたボンドコートとを含むタービン部品であって、ボンドコートが、体積の点で主たるγ’-NiAl相を有することと、ボンドコートが、0.15~0.25の間のアルミニウムの、0.03~0.08の間のクロムの、0.01~0.05の間の白金の、0.01未満のハフニウムの、および0.01未満のケイ素の平均原子分率を有することと、を特徴とするタービン部品により、この目的は達成される。
【0017】
金属ボンドコートは、基材組織に近い同素組織を有するため、二次反応領域の形成は防止および/または制限される。
【0018】
さらに、金属性ボンドコートの組成は、マルテンサイト転移後のある時点における加工条件下のボンドコートの組成に対応するため、ボンドコートの同素組織は、その間に保護ボンドコートが形成されることができる時間を加工条件下で延ばすよう適合された化学組成を有しながら、二次反応領域の形成を制限または防止する。
【0019】
加えて、タービン部品は、以下の特徴を有し得る:
-ボンドコートは、95体積%を超えるγ’-NiAl相を有する;
-ボンドコートは、γ’-NiAl相とβ-NiAlPt相とを有する;
-ボンドコートは、γ’-NiAl相とγ-Ni相とを有する;
-基材中のレニウムの質量分率は0.04以上である;
-ボンドコートは、コバルト、モリブデン、タングステン、チタン、タンタルから選択される少なくとも1つの元素をさらに含む;
-酸化アルミニウムの保護層はボンドコートを覆っている;
-熱的絶縁セラミック層は保護層を覆っている;
-ボンドコートの厚さは5μm~50μmの間である。
【0020】
本発明はさらに、先に規定された通りの部品を備えることを特徴とするタービンブレードにも関する。
【0021】
本発明はさらに、先に規定された通りのタービンブレードを備えるタービンを備えることを特徴とするガスタービンエンジンにも関する。
【0022】
タービン部品を製造するためのプロセスであって、レニウムおよび/またはルテニウムを含むニッケル基超合金で作られた基材上において、体積の点で主にγ’-NiAl相を有するニッケル基超合金のボンドコートの真空蒸着のステップを含み、ボンドコートが、
-0.15~0.25の間のアルミニウムの;
-0.03~0.08の間のクロムの;
-0.01~0.05の間の白金の;
-0.01未満のハフニウムの、および
-0.01未満のケイ素の
平均原子分率を有する、プロセスにも、本発明はさらに関する。
【0023】
堆積は、物理蒸着、溶射、ジュール蒸着、パルスレーザアブレーションおよびスパッタリングから選択される方法により行われることができる。
【0024】
ボンドコートは、金属ターゲットを同時噴射かつ/または同時蒸着することにより堆積されることができる。
【0025】
他の特徴および利点は、以下の説明においてさらに明らかにされ、以下の説明は、純粋に例示的かつ非限定的であり、添付図面と併せて読まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】タービン部品、例えばタービンブレードまたはノズルベーンの断面を示す概略図である。
図2】基材を覆うボンドコートの断面の顕微鏡写真である。
図3】基材を覆うボンドコートの断面の顕微鏡写真である。
図4】本発明のある実施形態によるタービン部品の基材を覆う熱障壁の断面を概略的に示す図である。
図5】熱処理後の基材を覆うボンドコートの断面の顕微鏡写真である。
図6】熱処理後の基材を覆うボンドコートの断面の顕微鏡写真である。
【0027】
定義
「超合金」という用語は、高温高圧における酸化、腐食、クリープおよび繰返し(特に機械的または熱的)応力に対する非常に良好な耐性を有する複合合金を指す。超合金は、その融点に比較的近い温度(典型的にはその溶融温度の0.7~0.8倍)で機能することができる高強度合金の一群を構成するため、航空学において使用される部品、例えばタービンブレードまたはガスタービンエンジンブレードの製造において特定の用途を有する。
【0028】
超合金は、マトリックスを生成する第1の相(「γ相」と呼ばれる。)と、マトリックス中で硬化する析出物を生成する第2の相(「γ’相」と呼ばれる。)と、を含む二相ミクロ組織を有し得る。
【0029】
超合金の「ベース」は、マトリックスの主な金属成分である。多くの場合、超合金は、鉄基、コバルト基またはニッケル基を含むが、場合によってチタン基またはアルミニウム基も含む。
【0030】
「ニッケル基超合金」は、耐酸化性と耐高温破壊性と重量との間の良好な折衷を提供する利点を有し、これは、ターボジェットエンジンの最も高温の部品におけるその使用を正当化する。
【0031】
ニッケル基超合金は、α置換の固溶体中の添加物(Co、Cr、W、Mo)を任意選択で含む面心立方オーステナイト系γ-Ni型のγ相(すなわちマトリックス)と、γ’-NiX型(X=Al、TiまたはTa)のγ’相(すなわち析出物)とからなる。γ’相は、マトリックスと一貫した、すなわち、マトリックスと非常に近い原子格子を有する、面心立方構造から誘導される秩序だったL12構造を有する。
【0032】
その秩序だった特徴のために、γ’相は、最高約800℃までの温度と共に向上する機械的耐性を有する注目すべき特性を有する。γ相とγ’相との間の一貫性は、ニッケル基超合金の非常に高い高温の機械的強度を与え、それ自体、比γ/γ’および硬化析出物のサイズに依存する。
【0033】
超合金は、本発明のすべての実施形態において、レニウムおよび/またはルテニウムに富んでおり、すなわち、超合金中のレニウムおよび/またはルテニウムの平均原子分率は0.04以上である。レニウムの存在は、ルテニウムを含まないレニウムフリーの超合金部品と比べて、超合金部品の耐クリープ性を向上させる。加えて、ルテニウムの存在は、γ相中およびγ’相中の耐熱性化学元素の分布を改善する。
【0034】
したがって、ニッケル基超合金は一般に、最高700℃まで高い機械的強度を有し、次いで、800℃を上回ると急激に低下する機械的強度を有する。
【0035】
「原子分率」という用語は濃度を指す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図4は、タービン部品1の基材2を覆う熱障壁10の断面を概略的に示す。
【0037】
図4に示された構成要素は、タービンブレード6、ノズルベーンの構成要素、またはタービンのその他の任意の構成要素、部品もしくは片を独立して代表し得る。
【0038】
基材2は、レニウムおよび/またはルテニウムを含むニッケル基超合金から形成される。レニウムおよび/またはルテニウム基材2の平均質量分率は、0.04以上、優先的には0.045~0.055の間である。
【0039】
熱障壁は、金属ボンドコート3bと保護層4と熱絶縁層9とからなる。
【0040】
基材2は、金属性ボンドコート3bによって覆われている。金属層3bは、保護層4によって覆われている。保護層4は、熱的絶縁層9によって覆われている。
【0041】
堆積された金属性ボンドコート3bの組成は、0.15~0.25の間の、優先的には0.19~0.23の間のアルミニウムの、0.03~0.08の間の、優先的には0.03~0.06の間のクロムの、0.01~0.05の間の白金の、0.01未満の、優先的には0.008未満のハフニウムの、および0.01未満の、優先的には0.008未満のケイ素の平均原子分率を有する。優先的な組成が以下の表1に記載されており、平均原子分率は百分率で与えられている。
【0042】
【表1】
【0043】
金属性ボンドコート3bは、体積で大部分のγ’-NiAl相12を有する。したがって、ボンドコート3bの同素組織は、基材2の組織に近く、900℃を上回る温度での、優先的には1100℃を上回る温度でのタービン部品1の使用中の二次反応領域の形成を防止する。有利には、γ’-NiAl相は、金属ボンドコート中で95体積%を超える。γ’-NiAl相とは別に、金属ボンドコート3bは、β-NiAlPt相またはγ-Ni相を有し得る。
【0044】
ボンドコート3bの化学組成および同素組織は、部品1の使用の熱的条件をシミュレートするボンドコート3bの処理中のマルテンサイト変態段階の直後に、初めはβ-NiAlPt型のボンドコート3bの化学組成および組織を分析することにより決定された。
【0045】
図5は、熱処理後の基材を覆う、本発明のボンドコートとは異なるボンドコート3aの断面の顕微鏡写真である。ボンドコート3aによって覆われた基材は、レニウムもルテニウムも含まないAM1型のニッケル基超合金で作られた基材である。ボンドコート3aを含む部品は、一連の250回の熱サイクルにより処理されており、各サイクルは、ボンドコート3aを含む部品の1100℃の温度で60分間の熱処理に対応する。ボンドコート3aの体積の大部分はβ-NiAlPt相11であり、小部分はγ’-NiAl相12である。ボンドコート3aは、保護層4によって覆われている。ボンドコート3aと保護層4との間の界面は非常に不規則であり、部品が使用されるときに保護層4が薄片になる(またはしわになる)ことを引き起こすのに十分な高い粗度を有する。この粗度は、熱処理中に、ボンドコート3a中のβ-NiAlPt相11のマルテンサイト変態によってもたらされる。
【0046】
図6は、本発明のある実施形態による、レニウムおよび/またはルテニウムを含む単結晶ニッケル基超合金で作られた熱処理後の基材2を覆うボンドコート3bの断面の顕微鏡写真である。ボンドコート3bを含む部品は、一連の500回の熱サイクルにより処理されており、各サイクルは、ボンドコート3bを含む部品1の1100℃の温度で60分間の熱処理に対応する。ボンドコート3bの体積の大部分はγ’-NiAl相12であり、小部分はβ-NiAlPt相11である。ボンドコート3aは、保護層4によって覆われている。図5を参照して記載された熱処理より長い、ボンドコート3bを含む系の熱処理にも関わらず、ボンドコート3bと保護層4との間の界面は、図5に示されたボンドコート3aと保護層4との間の粗度より低い粗度を有する。この粗度の差は、ボンドコート3aのβ-NiAlPt相11のマルテンサイト変態より速いボンドコート3bのβ-NiAlPt相11のマルテンサイト変態に関連する。加えて、図6に示されたボンドコート3bは、体積で主にγ’-NiAl相12を与え、体積でより小さいβ-NiAlPt相11を与える。
【0047】
500回の熱サイクル後のボンドコート3bの同素組織および化学組成が分析および選択された。この組織および組成は、上述の、特に表1の組織および組成に対応する。
【0048】
したがって、体積の点で大部分のγ’-NiAl相12によって、かつ表1に記載された組成によって、ボンドコート3bは、その間に保護ボンドコート4が形成されることができる時間を加工条件下で延ばす組成を与えながら、しわ発生現象につながるマルテンサイト変態を被るとしてもわずかである。
【0049】
ボンドコート3bは、例えば物理蒸着(PVD)により、真空下で堆積されることができる。スパッタリング、ジュール蒸着、レーザアブレーションおよび電子ビーム支援物理蒸着など、様々なPVD法がボンドコート3bの製造のために使用されることができる。ボンドコート3bは、溶射により堆積されることもできる。
【0050】
したがって、任意の熱処理前に、しわ発生現象を回避するよう適合された化学組成および同素組織を与えることにより、ボンドコート3bは、基材2上に堆積されることができる。
【0051】
これらの堆積法はまた、基材2上のボンドコート3bの形成ならびにボンドコート3bの化学組成のより良い制御を単純化する。
【0052】
最後に、これらの堆積法は、化学元素拡散による金属ボンドコート形成の方法とは異なり、ボンドコート3bの厚さの正確な制御を可能にする。有利には、ボンドコート3bの厚さは5μm~50μmの間である。
【0053】
ボンドコート3bを堆積するとき、異なる金属性材料のいくつかのターゲットが、並行して、同時に使用されることができる。このタイプの堆積は、同時蒸着または同時スパッタリングにより行われることができ、次いで、ボンドコート3bの堆積中に各ターゲット上に課せられる蒸着またはスパッタリングそれぞれの速度が前記層の化学量論を決める。
図1
図2
図3
図4
図5
図6