(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】可塑剤としてポリフェニレンエーテル樹脂を含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20230208BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230208BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230208BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230208BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20230208BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20230208BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/011
C08L71/12
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020521901
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 FR2018052585
(87)【国際公開番号】W WO2019077272
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-18
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】アバド マチルド
(72)【発明者】
【氏名】パガノ サルヴァトーレ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502145(JP,A)
【文献】特表2017-502142(JP,A)
【文献】特開2015-174951(JP,A)
【文献】特開2004-238547(JP,A)
【文献】特表2018-526476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の主要ビニル芳香族ジエンエラストマー、補強用充填剤、架橋系、および800~1500g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)および一般式(I)を有するポリフェニレンエーテル樹脂をベースとするゴム組成物
【化1】
(I)
(式中、基Rは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基を示し、nは、6と12の間である)。
【請求項2】
前記ビニル芳香族ジエンエラストマーが、10%よりも多いビニル芳香族含有量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ビニル芳香族ジエンエラストマーが、ブタジエンとスチレンのコポリマー、イソプレンとスチレンのコポリマー、ブタジエンとイソプレンとスチレンのコポリマーおよびこれらの
コポリマーの混合物からなる群から選ばれ
る、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ビニル芳香族ジエンエラストマー含有量が70~100phr(エラストマー100部当たりの質量部)
の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が、1~90ph
の範囲内である、請求項1~
4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記補強用充填剤がカーボンブラックおよび/またはシリカを含む、請求項1~
5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記補強用充填剤
の含有量が、20phrと200phrの間
にある、請求項1~
6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項記載のゴム組成物を含む完成または半完成ゴム製品。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にタイヤまたはタイヤ用半製品の製造を意図するゴム組成物に関し、より詳細には、その混合物の製造が非常に容易であり、タイヤの形では良好な耐摩耗性を有するタイヤトレッド用のゴム組成物に関する。
【0002】
使用中のタイヤは多くの応力を受ける。そのタイヤトレッドは、特に、濡れた路面と乾燥した路面の両方で高い耐摩耗性と良好なグリップのような多くの場合互いに矛盾する多数の技術的要件を満たさなければならない。これらのタイヤ用の混合物は、製造が容易でなければならないことを意味する、良好な加工性を有することも必要である。
そのタイヤ組成物においてエラストマーを補強用充填剤および可塑剤と組合せて使用することは知られている。従来、これらの可塑剤は、特に可塑化用樹脂としての熱可塑性樹脂の使用を説明した多数の文献、例えば特許出願FR 2866028号、FR 2877348号またはFR 2889538号に記載されているように、可塑化用オイルまたは可塑化用樹脂であり得る。
さらにまた、出願人は、文献WO2015/091921号において、少なくとも1種の主要ビニル芳香族ジエンエラストマー、補強用充填剤、架橋系、および置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位を含む熱可塑性樹脂をベースとするゴム組成物を記載しており、上記樹脂は6000g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有する。実施例には、例えば、Mnが2350g/molと1800g/molの樹脂が示されている。この文献は、そのような樹脂の使用が、その混合物の製造の容易さとそのタイヤのグリップとの間の性能の妥協を改善する驚くべき結果を有することを示している。しかも、置換されていてもよいポリフェニレンエーテル単位をベースとするこれらの熱可塑性樹脂の使用は、従来の熱可塑性可塑化用樹脂と比較して樹脂の量を減らすことができ、それにより、これらの樹脂の使用に関連するこれらの組成物の生状態の粘着性を低下させることができ、したがって、これらの組成物を含むタイヤの製造を容易にする。
【0003】
出願人は、ここで、既知のポリフェニレンエーテル単位を含む樹脂から特定の選択を行うことにより、その混合物のガラス転移のシフトをさらに達成させ、したがってこの混合物に含まれる従来の熱可塑性樹脂の量を減らすことを可能にすることを見出した。
【0004】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも1種の主要ビニル芳香族ジエンエラストマー、補強用充填剤、架橋系、および800~1500g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)および一般式(I)を有するポリフェニレンエーテル樹脂をベースとするゴム組成物に関する
【化1】
(I)
(式中、基Rは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基を示し、nは、6と12の間である)。
【0005】
本発明は、上記樹脂が、好ましくは800~1300g/molの範囲内、より好ましくは800~1100g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)を有する、上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、上記ビニル芳香族ジエンエラストマーが10%よりも多い、好ましくは10%と50%の間、より好ましくは10%と30%の間、非常に好ましくは12%と28%の間、さらに好ましくは14%と20%の間のビニル芳香族含有量を有する上記で定義した通りの組成物に関する。
上記ビニル芳香族ジエンエラストマーは、好ましくは、ブタジエンとスチレンのコポリマー、イソプレンとスチレンのコポリマー、ブタジエンとイソプレンとスチレンのコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれ、好ましくはブタジエンとスチレンのコポリマーおよび後者のコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。また、上記ビニル芳香族ジエンエラストマー含有量は、好ましくは70~100phr(エラストマー100部当たりの質量部)、より好ましくは85~100phrの範囲内である。
【0006】
本発明は、好ましくは、上記ポリフェニレンエーテル樹脂が、0~130℃、好ましくは5~115℃、より好ましくは5~100℃の範囲内の、1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有する、上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、上記ポリフェニレンエーテル樹脂が、一般式(I)(式中、基Rは全て水素原子を示すかまたは全て同一のアルキル基を示す)を有する上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、基Rがメチル基を示す上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、nが7と10の間である上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、上記ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が1~90phr、好ましくは2~80phr、より好ましくは3~60phr、さらに好ましくは5~60phrの範囲内である上記で定義した通りの組成物に関する。
【0007】
本発明は、好ましくは、上記補強用充填剤がカーボンブラックおよび/またはシリカを含む上記で定義した通りの組成物に関する。
また、本発明は、上記補強用充填剤が好ましくは20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと160phrの間である上記で定義した通りの組成物に関する。
本発明は、好ましくは、上記補強用充填剤が主にカーボンブラックを含む上記で定義した通りの組成物に関する。そのカーボンブラックは、好ましくは60~160phr、より好ましくは70~150phrを示す。
或いはまた、本発明は、好ましくは、上記補強用充填剤が主にシリカを含む上記で定義した通りの組成物に関する。そのシリカは、好ましくは60~160phr、より好ましくは70~150phrを示す。
【0008】
本発明のさらなる主題は、本発明に従うゴム組成物を含む完成または半完成ゴム製品である。
本発明のさらなる主題は、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤ、特にそのトレッドが本発明に従うゴム組成物を含むタイヤである。
本発明に従うタイヤは、特に、乗用車用、二輪車(オートバイ、自転車)用、バン類、「大型」車両-即ち、地下鉄列車、バス、重量道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、道路外車両、農業用車両もしくは土木工事機械、飛行機、および他の輸送または操作用車両から選ばれる産業用車両用を意図する。
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様に照らせば容易に理解し得るであろう。
【0009】
I.試験
I.1.硬化後の動的特性
上記ゴム組成物は、下記に示すように、硬化後に特性決定する。
動的特性G*は、規格ASTM D 5992-96に従って粘度アナライザー(Metravib VA4000)で測定する。そのアナライザーは、10Hzの周波数で、単純な交互正弦波剪断応力に供した加硫組成物(即ち、少なくとも90%の変換率まで硬化させた組成物)のサンプル(厚さ2mmおよび78.5mm2の断面積を有する円筒状の試験標本)の応答を記録する。
温度掃引を、0.7MPaの頂点間剪断応力をかけた+1.5℃/分の一定の温度上昇率で実施する。その試験標本を、その均衡位置の周りで対称に10Hzの正弦波剪断応力に供する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および剪断モジュラス(G'')のG''(T)で示す粘性部分である。
本発明に従うガラス転移温度(Tgで示す)は、温度掃引中に最高観察G''が観察される温度に対応する。したがって、本説明においては、特に明記しない限り、Tgは、最高値G'' (G''は、知られている通り、剪断モジュラスの粘性部分である)を10Hzの周波数で0.7MPaをかけた正弦波剪断応力に供した架橋サンプルの温度掃引中に観察される温度と定義する。上記で示したように、このTgは、規格ASTM D 5992-96に従って粘度アナライザー(Metravib VA4000)での動的特性の測定中に測定する。
【0010】
I.2.分子量測定(GPC)
上記PPE樹脂の分子量は、下記に示すように測定する。
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、多孔性ゲルで満たされたカラムを通して、それらのサイズに応じて溶液中の高分子を分離できる。それらの水力学的体積に従ってその高分子が分離され、最大のものが最初に溶出される。
SECは、絶対的な方法ではなく、ポリマーの分子量の分布がわかる。市販の標準製品から開始して、様々な数平均分子量(Mn)および質量(Mw)モル質量を決定し、MOOREキャリブレーションを介して多分子指数(Ip = Mw/Mn)を計算できる。
そのポリマーサンプルの分析前の特別な処理はない。これは、溶出溶媒に約1g/lの濃度で簡単に溶解する。次に、その溶液を、注入前に0.45μmの多孔度を持つフィルターでろ過する。
使用する装置はWATERS allianceクロマトグラフィーシステムである。溶出溶媒は、酸化防止剤を含まないテトラヒドロフランであり、流量は1mL.min-1であり、そのシステムの温度は35℃であり、分析時間は45分である。使用するカラムは、2本の商品名PL GEL MIXED Dと2本の商品名PL GEL MIXED Eを備える4本のAgilentカラムのセットである。そのポリマーサンプル溶液の注入量は100μLである。検出器はWATERS 2410示差屈折計であり、クロマトグラフィーデータを解読するソフトウェアはWaters Empowerシステムである。
計算した平均モル質量は、標準ポリスチレンに基づいて作成された較正曲線に関係している。
【0011】
II.本発明を実施するための条件
本発明に従うゴム組成物は、少なくとも1種の主要ビニル芳香族ジエンエラストマー、補強用充填剤、架橋系、および800~1500g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)および一般式(I)を有するポリフェニレンエーテル樹脂をベースとする。
【化2】
(I)
(式中、基Rは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基を示し、nは、6と12の間である)。
【0012】
「ベースとする」という表現の組成物は、使用する様々な各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味し、これらのベース構成成分の一部は、少なくとも部分的に、組成物の製造の様々な段階の間、特にその架橋または加硫の間に、互いに反応できるか或いは反応することを意図する。
本説明においては、特に明記しない限り、示す全てのパーセント(%)は質量パーセント(%)である。さらにまた、「aとbの間」という表現により示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、「a~b」という表現により示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。
本発明の関連において、「主要」化合物に言及する場合、この用語は、この化合物が上記組成物において、同じタイプの化合物のうちで主要であること、即ち、この化合物が同じタイプの化合物のうちで質量による最大量を示す化合物であることを意味する。したがって、例えば、主要エラストマーは、上記組成物におけるエラストマーの総質量%に対して最大質量を示すエラストマーである。同様に、主要充填剤は、上記組成物の充填剤のうちで最大質量を示す充填剤である。一例として、単一のエラストマーを含む系において、そのエラストマーは本発明の意味の範囲内で主要なものであり、2種のエラストマーを含む系においては、上記主要エラストマーは、エラストマーの質量の半分よりも多いエラストマーを示す。
【0013】
II.1.エラストマー
本発明に従うゴム組成物は、主要ビニル芳香族ジエンエラストマーを含む。
「ジエン」エラストマーまたはゴムという用語は、知られている通り、少なくとも一部(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)がジエンモノマー(2つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を担持するモノマー)から得られる1種(1種以上と理解される)のエラストマーを意味すると理解すべきである。
これらの定義を考慮すれば、「ビニル芳香族ジエンエラストマー」という用語は、より詳細には、1種以上の共役ジエンが互いにまたは8~20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合により得られる任意のコポリマーを意味する。
共役ジエンとして、下記のものが特に適している:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1-C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは2,4-ヘキサジエン。
【0014】
ビニル芳香族化合物として、例えば、下記のものが適している:スチレン、アルファ-メチルスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位と1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に変性剤および/またはランダム化剤の有無および変性剤および/またはランダム化剤の使用量によっては、任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロックエラストマー、ランダムエラストマー、統計エラストマー、序列エラストマーまたは微細序列エラストマーであってもよく、分散液中または溶液中で調製し得る;上記エラストマーは、カップリング剤および/または星状枝分れ剤または官能化剤によって、カップリングかつ/または星状枝分れ或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C-Sn結合を含む官能基またはアミノ化官能基、例えばアミノベンゾフェノンを挙げることができる;補強用無機充填剤、例えばシリカにカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されている)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されている)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されている)或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されている)を挙げることができる。官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプの(SBRのような)ビニル芳香族ジエンエラストマーも挙げることができる。
【0015】
本発明に従う組成物の上記ビニル芳香族ジエンエラストマーは、好ましくは、10%よりも多い、好ましくは10%と50%の間、より好ましくは10%と30%の間、非常に好ましくは12%から28%の間、さらに好ましくは14%と20%の間のビニル芳香族含有量を有する。本発明に従う組成物の上記ビニル芳香族ジエンエラストマーは、より好ましくは、スチレン含有量が10%よりも多い、好ましくは10%と50%の間、より好ましくは10%と30%の間、非常に好ましくは12%と28%の間、さらに好ましくは14%と20%の間のスチレンジエンエラストマーである(即ち、そのビニル芳香族部分がスチレン部分である)。
本発明に従う組成物の上記ビニル芳香族ジエンエラストマーは、好ましくは、ブタジエンのスチレンコポリマー、イソプレンのスチレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高度に不飽和のスチレンジエンエラストマーの群から選ばれることが好ましい。そのようなコポリマーは、ブタジエン-スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選ばれることがより好ましい。
【0016】
下記のものが特に適している:ブタジエン-スチレンコポリマー(SBR)、特に、20℃と-70℃の間、より詳しくは0℃と-50℃の間の1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したTg(ガラス転移温度)、10%よりも多い、好ましくは10%と50%の間、より好ましくは10%と30%の間、非常に好ましくは12質量%と28質量%の間、さらに好ましくは14%と20%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン部分の-1,2結合の含有量(mol%)、および10%と80%の間のトランス-1,4結合の含有量(mol%)を有するSBR。
下記のものも適している:イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)、特に、15質量%と60質量%の間、より詳しくは20%と50%の間のスチレン含有量、および25℃と-50℃の間の、1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したTgを有するSIR。
【0017】
ブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマー(SBIR)の場合、15質量%と50質量%の間、より詳しくは20%と50%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%、より詳しくは20%と50%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、より詳しくは20%と40%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン部分の1,2単位の含有量(mol%)、6%と80%の間のブタジエン部分のトランス-1,4単位の含有量(mol%)、5%と70%の間のイソプレン部分の1,2単位と3,4単位の含有量(mol%)および10%と50%の間のイソプレン部分のトランス-1,4単位の含有量(モル%)を有するSBIR、より一般的には20℃と-60℃の間の、1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したTgを有する任意のブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーが特に適している。
本発明に従う組成物の上記ビニル芳香族ジエンエラストマーは、非常に好ましくはSBRである。SBRは、知られている通り、エマルジョン(ESBR)として調製してもよくまたは溶液(SSBR)として調製してもよい。
本発明の組成物は、単一のビニル芳香族ジエンエラストマーまたは複数種のビニル芳香族ジエンエラストマーの混合物を含むことができ、上記ビニル芳香族ジエンエラストマー(1種以上)は、常に主要であって、当業者に既知の他のエラストマー、例えば天然ゴム(NR)またはポリブタジエン(BR)と組合せて使用できる。
上記ビニル芳香族ジエンエラストマー含有量は、70~100phr、好ましくは85~100phrの範囲内であり、この含有量は、非常に好ましくは100phrであり、上記組成物にはビニル芳香族ジエンエラストマーのみが含まれていることを意味する。
【0018】
II.2.補強用充填剤
タイヤの製造に使用できるゴム組成物を補強するその能力で知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えばカーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような無機補強用充填剤、或いはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカのブレンドを使用し得る。
タイヤにおいて、通常使用するカーボンブラック、特にHAF、ISAF、SAFタイプのブラック類(タイヤ級ブラック類と呼ばれるブラック類)の全てがカーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類、或いは意図した用途によれば、高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683、N772)が挙げられる。これらのカーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願WO-A-2006/069792号、WO-A-2006/069793号、WO-A-2008/003434号およびWO-A-2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0019】
「補強用無機充填剤」とは、本出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して「白色充填剤」、「透明充填剤」とも、または「非黒色充填剤」とも知られ、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強することのできる、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置き換わることのできる、(その色合いおよびその由来:天然または合成にかかわりなく)任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有する。
上記補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロパール、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤とは、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味するものとする。
【0020】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類、Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類、PPG社からのHi-Sil EZ150Gシリカ、Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類、または、出願WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の総含有量は、好ましくは20phrと200phrの間、好ましくは30phrと160phrの間の量であり、最適は、知られている通り、目標とする特定の用途に応じて異なる:例えば、自転車のタイヤに期待される補強のレベルは、勿論、継続的に高速で走行することのできるタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用タイヤまたは大型車のような実用車用タイヤに関して要求される補強レベルよりも低い。
【0021】
本発明の第1の好ましい実施態様によれば、カーボンブラックを、主要補強用充填剤として60phrと160phrの間、より好ましくは70phrと150phrの間で使用する。
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、シリカを、主要補強用充填剤として60phrと160phrの間、より好ましくは70phrと150phrの間で使用し、さらにカーボンブラックを使用してもよい;そのカーボンブラックが存在する場合、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば0.1phrと5phrの間)の含有量で使用する。
上記補強用無機充填剤を上記ジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、上記無機充填剤(その粒子表面)と上記ジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の充分な結合をもたらすことを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば出願WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によっては「対称形」または「非対称形」と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0022】
特に、以下の定義に限定されることなく、「対称形」と称するシランポリスルフィドは下記の一般式(I)に相応する:
Z -A -Sx -A -Z [式中:
-xは、2~8(好ましくは2~5)の整数であり;
-Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC
1~C
18アルキレン基またはC
6~C
12アリーレン基、より詳しくはC
1~C
10アルキレン、特にC
1~C
4アルキレン、特にプロピレン)であり;
-Zは、下記の式の1つに相応する:
【化3】
(式中:
-基R
1は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1~C
18アルキル基、C
5~C
18シクロアルキル基またはC
6~C
18アリール基(好ましくはC
1~C
6アルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基、特にC
1~C
4アルキル基、より詳しくはメチルおよび/またはエチル)を示し、
-基R
2は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1~C
18アルコキシ基またはC
5~C
18シクロアルコキシ基(好ましくはC
1~C
8アルコキシおよびC
5~C
8シクロアルコキシから選ばれる基、より好ましくはC
1~C
4アルコキシから選ばれる基、特にメトキシおよびエトキシ)を示す)]。
【0023】
上記式に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、特に、通常の商業的に入手可能な混合物の場合、「x」指数の平均値は、好ましくは2と5の間、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
より詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C1~C4)アルコキシ(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1~C4)アルコキシジ(C1~C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より詳しくはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0024】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式において、R2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOSが挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと16phrの間、より好ましくは5phrと15phrの間の量である。
当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、充填剤とエラストマー間の結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とするその表面に官能部位、特にヒドロキシル部位を含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0025】
II.3.PPE樹脂
本発明に従う組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂(「PPE樹脂」と略記する)を含む。このタイプの化合物は、例えば、VCH出版の百科事典「ウルマンの産業化学百科事典」、Vol. A 21、605~614頁、第5版、1992年に記載されている。
PPE樹脂は、知られている通り、通常、ほとんどの場合15 000~30 000g/molで変動し得る数平均分子量(Mn)有する;これらのような高い分子量の場合、Mnは、SEC(文献US 4 588 806号、第8欄におけるようにGPCとも称する)によって当業者に知られているようにして測定する。
本発明のために、本発明の組成物では、通常遭遇する分子量よりも低い、特に800~1500g/molの範囲内、好ましくは800~1300g/mol、より詳しくは800~1100g/molの範囲内のMnが含まれるMn量を有するPPE樹脂が使用される。分子量は上記の方法に従って測定する。
【0026】
上記モノマーの鎖の配列に応じて、いくつかのタイプの構造が上記PPE樹脂に相応し得る。例えば、タイプAまたはBの構造であり得る。
【化4】
タイプAおよびBの式は例であり、PPE樹脂の他の構造も可能である。タイプAおよびBの式は市販されており、例は、SABIC Innovative Plastics社からのそれぞれ樹脂Noryl SA 120(上記の方法ではMn = 3300g/mol)、または樹脂Noryl SA 90 (上記の方法ではMn = 2300g/モル)である。
【0027】
分子量が800~1500g/molの範囲内のPPE樹脂の調製
低分子量を有するタイプAおよびBのPPE樹脂は、Noryl SA 120やNoryl SA90などの高い分子量を有する市販のPPE樹脂から開始して、これらの生成物に含まれる低分子量の選択的抽出により得ることができる。この選択的抽出は、生成物の良溶媒に事前の可溶化、その後、貧溶媒の添加による制御された沈殿を実施した。
【0028】
分子量が950g/molのタイプAのPPE樹脂の調製(樹脂A1と称す):
1kgのNoryl SA120 PPE樹脂を60℃で3kgのトルエンと混合する。そのPPE樹脂が完全に溶解するまで混合物を撹拌する。次いで、20kgのメタノールを加え、この混合物を均質化のために30分間撹拌する。この懸濁液を周囲温度まで自由に冷却させ、傾潟することにより上澄みから沈殿物を分離する。蒸発により上澄みから溶媒を除去する。回収した生成物は、0.12kgの黄緑色の粉末である。樹脂A1は、タイプAの一般式(I)のPPE樹脂であり、基Rはメチル基であり、n = 8である。
【0029】
分子量が950g/molのタイプBのPPE樹脂の調製(樹脂B1と称す):
1kgのNoryl SA90 PPE樹脂を60℃で3kgのトルエンと混合する。そのPPE樹脂が完全に溶解するまで混合物を撹拌する。次いで、42.8 kgのメタノールを加え、この混合物を均質化のために30分間撹拌する。この懸濁液を周囲温度まで自由に冷却させ、傾潟することにより上澄みから沈殿物を分離する。蒸発により上澄みから溶媒を除去する。回収した生成物は、0.3kgの黄色の粉末である。樹脂B1は、タイプBの一般式(I)とは異なる一般式を有するPPE樹脂であり、基Yはジメチルメチレン基であり、基Rはメチル基であり、m + p = 5である。
【0030】
本発明のために、上記樹脂は、タイプAの一般式(I)を有する:
【化5】
(I)
(式中:
- 基Rは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基を示し;基Rは、好ましくは、全て水素原子または全てアルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル)を示し、より好ましくは、基Rはメチル基を示す。
- nは、6と12の間、好ましくは7と10の間である)。
【0031】
上記PPE樹脂の多分散性指数Ip(確認:Ip = Mw/Mn、ここで、Mwは質量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは5以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。
本発明のために有用なPPE樹脂は、0~130℃、好ましくは5~115℃、より好ましくは5~100℃の範囲内の、1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
上記組成物中のPPE樹脂の含有量は、好ましくは1~90phr、より好ましくは2~80phr、さらに好ましくは3~60phr、非常に好ましくは5~60phrの範囲内である。
【0032】
II.4.架橋系
上記架橋系は、加硫系であり得る;上記架橋系は、イオウまたはイオウ供与体および一次加硫促進剤(好ましくは0.5~10.0phrの一次促進剤)をベースとする。この加硫系には、様々な既知の二次加硫促進剤および/または加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛(好ましくは0.5~10.0phr)、ステアリン酸またはその他を添加してもよい。上記イオウは、好ましくは0.5phrと10phrの間、より好ましくは0.5phrと5.0phrの間、例えば、本発明がタイヤトレッドに応用する場合は0.5phrと3.0phrの間の含有量で使用する。
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用することのできる任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体並びにチウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用し得る。これらの促進剤は、より好ましくは、2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略記する)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「CBS」と略記する)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「DCBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「TBBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアジルスルフェンイミド(「TBSI」と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。好ましくは、上記スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0033】
II.5.各種添加剤
本発明に従うトレッドのゴム組成物は、例えば、顔料、オゾン防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤、疲労防止剤、補強用樹脂または可塑剤のような、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物に一般的に使用する通常の添加剤の全部または一部も含む。好ましくは、この可塑剤は、上記で説明した樹脂以外の固形炭化水素系樹脂(または可塑化用樹脂)、増量剤オイル(または可塑化用オイル)またはこれら2成分の混合物である。
これらの組成物は、また、上記カップリング剤に加えて、カップリング活性化剤、無機充填剤用の被覆剤、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し且つ組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工されるべき能力を改良することのできるより一般的な加工助剤も含み得る、これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン、ポリオール、ポリエーテル、第一級、第二級または第三級アミン、或いはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0034】
II.6.上記ゴム組成物の調製
本発明のトレッドにおいて使用する組成物は、適切なミキサー内で、当業者に周知の2つの連続する調製段階を使用して製造し得る:110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混錬する第1段階(「非生産」段階)、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば40℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械的に加工する第2段階(「生産」段階)、この仕上げ段階において、上記架橋系を混入する。
そのような組成物を調製するプロセスは、例えば、下記の段階を含む:
-上記エラストマー、特に上記ビニル芳香族ジエンエラストマー中に、(「非生産」)第1段階において、上記補強用充填剤、上記PPE樹脂、および上記架橋系を除く上記組成物の他の任意選択成分を混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば1回または複数回);
-その混ぜ合わせた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
-その後、(「生産」)第2段階において、架橋系を混入する段階;
-全てを110℃よりも低い最高温度まで混練する工程。
【0035】
例として、上記非生産段階は、1回の熱機械段階で実施し、その間に、先ず、全ての必須ベース構成成分(エラストマー、補強用充填剤、PPE樹脂およびその他の成分)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、次に、例えば1~2分間の混練後、上記架橋系を除いた他の添加剤、上記充填剤を被覆するためのさらなる薬剤またはさらなる加工助剤を導入してもよい。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間の時間である。そのようにして得られた混合物を冷却した後、上記架橋系を、この場合、低温(例えば、40℃と100℃の間の温度)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内に混入する。その後、その混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
そのようにして得られた最終組成物は、引続き、例えば、特に試験室での特性決定のためのシートまたはプレートの形にカレンダー加工するか、或いは押出加工して、例えば、タイヤの製造において使用するゴム形状要素に成形し得る。
本発明は、上述のタイヤおよびタイヤ用の半製品、生状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方のゴム物品に関する。
【0036】
II.7.本発明のタイヤ
本発明に従うゴム組成物は、上記タイヤの種々の部品において、特にクラウン、カーカス、ビード領域、側壁領域およびトレッド(特にトレッドの下地層を含む)において使用することができる。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記のゴム組成物は、タイヤにおいて、タイヤの少なくとも1種の部品内の硬質エラストマー層として使用し得る。
エラストマー「層」という用語は、ゴム(または「エラストマー」、両者は同義とみなす)組成物から製造し、任意の形状および厚さを有する任意の三次元要素、特にシート、ストリップ、または任意の断面、例えば矩形もしくは三角形を有する他の構成要素を意味するものと理解されたい。
先ずは第1に、上記エラストマー層は、タイヤのクラウン内に、一方のトレッド、即ち走行中に道路と接触することを意図する部分と他方の上記クラウンを補強するベルトとの間のタイヤのクラウン内に位置するトレッド下地層として使用し得る。このエラストマー層の厚さは、好ましくは0.5~10mmの範囲内、特に1~5mmの範囲内である。
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、本発明に従うゴム組成物は、上記カーカスプライ、ビードワイヤおよびカーカスプライ折返しの間で半径方向のタイヤのビード領域の範囲内に配置するエラストマー層を形成するために使用し得る。
本発明のもう1つの好ましい実施態様は、本発明に従う組成物の、タイヤの側壁領域内に配置するエラストマー層を形成するための使用であり得る。
或いは、本発明の組成物は、タイヤのトレッドに有利に使用し得る。
【0037】
III.本発明の典型的な実施態様
III.1.上記組成物の調製
以下の試験を、以下の方法で実施する:上記ビニル芳香族ジエンエラストマー、上記補強用充填剤および上記PPE樹脂、さらにまた、上記加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度が約60℃である密閉ミキサー内に連続して導入する(最終充填度:約70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1段階で実施し、この段階は、180℃の最高「落下」温度に達するまで全体で約3~4分間続く。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウおよびスルフェンアミドタイプの促進剤を30℃のミキサー(ホモフィニッシャー)に混入し、全てを適切な時間(例えば、5分と12分の間の時間)混合する(生産段階)。
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためにゴムのスラブ(2~3mm厚)または薄いゴムシートの形にカレンダー加工するか、或いは形状要素の形に押出加工する。
【0038】
III.2.ゴム組成物に関する試験
この試験は、タイヤトレッドにおいて使用するゴム組成物を例証する。これらの組成物は、上記混合物のTgを上昇させることを可能にする。このために、ゴム組成物を上記のように調製した。
下記の組成物C1はPPE樹脂を含まない。対照組成物C2、C3およびC4は、本発明に従わないPPE樹脂を含む。組成物C5は本発明に従う組成物である。配合物(phrまたはエラストマー100部あたりの質量部での)およびそれらの機械的特性は、下記の表1および2にまとめている。
【0039】
表1
(1) 15%のスチレン単位と24%のブタジエン部分の1,2単位を含むSBR(-65℃の1999年の規格ASTM D3418に従いDSCによって測定したTg);
(2) BET表面積が160m
2/gのSolvay社からのZeosil1 165MPシリカ;
(3) TESPTカップリング剤:Evonik社からのSI69;
(4) PPE樹脂 1:ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル) Sabic社からのNoryl SA120、Mn = 3300g/mol;
(5) PPE樹脂 2:ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル) Sabic社からのNoryl SA90、Mn = 2350g/mol;
(6) PPE樹脂 3:上述の手順によって得られたPPE樹脂B1、Mn = 950g/mol;
(7) PPE樹脂 4:上述の手順によって得られたPPE A1樹脂、Mn = 950g/mol;
(8)ジフェニルグアニジン:Flexsys社からのPerkacit DPG;
(9)酸化亜鉛(工業級-Umicore社);
(10) Stearin (Uniquema社からのPristerene 4931);
(11) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミンFlexsys社からのSantoflex 6-PPD。
(12) N-シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミド(Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0040】
【0041】
組成物C2およびC3が高Tgの可塑剤を含まない組成物C1に近いおよびそれより高いガラス転移温度を有することがわかる。組成物C4において、タイプBのPPE樹脂の低いMnへの入れ替えがその混合物のTgを変更する能力にほとんど影響を及ぼさないということがわかる。反対に、また、驚くべきことに、C5において、タイプAのPPE樹脂では、Mnの低下によって、その混合物のTgが著しく上昇したことが見出される。驚くべきことに、これらの組成物に含まれるPPE樹脂が匹敵する分子量を有するにもかかわらず、本発明に従う組成物C5が組成物C4よりもはるかに高いTgを有することも見出された。