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特許7222992アルカンの脱水素によりオレフィンを製造するための触媒及び前記触媒を使用してオレフィンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】アルカンの脱水素によりオレフィンを製造するための触媒及び前記触媒を使用してオレフィンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20230208BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20230208BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230208BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20230208BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20230208BHJP
   C01B 37/02 20060101ALI20230208BHJP
   B01J 29/035 20060101ALI20230208BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230208BHJP
   C07C 5/333 20060101ALI20230208BHJP
   C07C 11/10 20060101ALI20230208BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20230208BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
B01J29/74 Z
B01J35/10 301G
B01J37/08
B01J37/02 101Z
C01B39/48
C01B37/02
B01J29/035 Z
B01J37/04 102
C07C5/333
C07C11/10
C07C11/06
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020524069
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 TH2018000049
(87)【国際公開番号】W WO2019088935
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】1701006520
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チュララト・ワッタナキト
(72)【発明者】
【氏名】ティッタヤ・ユッタレカ
(72)【発明者】
【氏名】アナワット・ティヴァサシト
(72)【発明者】
【氏名】ワナルエディ・ワナパクディ
(72)【発明者】
【氏名】パニダ・ダクントッド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアンカモン・スッティパト
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/142666(WO,A1)
【文献】特開昭62-038241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0059722(US,A1)
【文献】特開2013-163647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 39/48
C01B 37/02
C07C 5/333
C07C 11/10
C07C 11/06
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~5個の炭素原子を有するアルカンの脱水素によってオレフィンを製造するための触媒であって、300より大きいシリカ対アルミナ(SiO/Al)モル比及びゼオライトの総質量に対して0.3~5質量%の範囲の周期表のX族金属(1又は複数)を有する階層型ゼオライトナノシートを含み、
前記階層型ゼオライトナノシートが、0.4~0.6nmの範囲の細孔直径を有するミクロ細孔、2~50nmの範囲の細孔直径を有するメソ細孔、及び50nmより大きな細孔直径を有するマクロ細孔を含み、ここで、メソ細孔及びマクロ細孔が、総細孔体積に対して60%以上であることを特徴とする、触媒。
【請求項2】
前記階層型ゼオライトナノシートが、0.4~0.6nmの範囲の細孔直径を有するミクロ細孔、20~40nmの範囲の細孔直径を有するメソ細孔、及び50nmより大きな細孔直径を有するマクロ細孔を含み、ここで、メソ細孔及びマクロ細孔が、総細孔体積に対して75%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
周期表のX族金属(1又は複数)が、白金、パラジウム、及びニッケルから選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
周期表のX族金属が白金である、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライトがシリカライトである、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
触媒がゼオライトの総質量に対して0.5~2質量%の周期表のX族金属(1又は複数)を含む、請求項1、3、及び4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
以下の工程:
(a)ゼオライトを調製するための化合物及びソフトテンプレートを含む溶液を調製する工程;
(b)工程(a)で得られた混合物に、130~180℃の範囲の温度で水熱プロセスを施して、前記混合物を階層型ゼオライトへと形成させる工程;及び
(c)工程(b)で得られた階層型ゼオライトを周期表のX族金属(1又は複数)塩の溶液に接触させる工程
を含み、
ここで、工程(a)におけるソフトテンプレートは第四級ホスホニウム塩であり、工程(c)における周期表のX族の金属(1又は複数)塩は、ゼオライトに対して0.3~5質量%の周期表のX族の金属(1又は複数)を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の触媒を製造する方法。
【請求項8】
ゼオライトを調製するための化合物が、アルミニウムイソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、及び硫酸アルミニウムから選択されるアルミナと、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸ナトリウム、又はシリカゲルから選択されるシリカ化合物との混合物である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ゼオライトを調製するための化合物が、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸ナトリウム、又はシリカゲルから選択されるシリカ化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
第四級ホスホニウム塩が、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドから選択されるテトラアルキルホスホニウム塩である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
第四級ホスホニウム塩がテトラブチルホスホニウムヒドロキシドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)が、ゼオライトの総質量に対して、0.5~2質量%の割合の周期表のX族金属(1又は複数)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
周期表のX族金属の塩(1又は複数)が、白金塩、パラジウム塩、及びニッケル塩から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項14】
周期表のX族金属塩(1又は複数)が、塩化白金酸、硝酸テトラアンミン白金、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、及び硫酸ニッケルから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
周期表のX族金属塩が、硝酸テトラアンミン白金又は塩化白金酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)が含浸により行われる、請求項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~のいずれか一項に記載の触媒を用いる、アルカンの脱水素によるオレフィンの製造方法。
【請求項18】
450~550℃の範囲の温度で実施され、アルカンがプロパン及びペンタンから選択される、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカンの脱水素によりオレフィンを製造するための触媒、及び前記の触媒を使用するオレフィンの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、2~5個の炭素原子を有するアルカンの脱水素によりオレフィンを製造するための触媒及びその触媒を使用してオレフィンを製造する方法に関し、前記の触媒は、120以上のシリカ対アルミナ(SiO/Alモル比、及びゼオライトの総質量に対して0.3~5質量%の範囲の周期表のX族金属(1又は複数)を有する、階層型ゼオライトナノシート(hierarchical zeolite nanosheet)を含む。
なお、以下の記載のおいて周期表のX族金属を単にX族金属とも記す。
【背景技術】
【0003】
プロピレンなどのオレフィンはいくつかの方法、例えば、ブタン及びエタンのメタセシス、メタノールのオレフィンへの変換反応、並びに炭化水素化合物の分解によって調製できることはよく知られている。しかしながら、アルカンの脱水素によるオレフィンの製造プロセスが、複雑でないプロセス及びコスト競争力によって広く使用されてきた。
【0004】
これまで、CB&I LummusのCatofin process(商標)(国際公開第1995/023123号及び米国特許第5315056号明細書)など、プロパンの脱水素化によるプロピレンの製造技術についての報告がある。そのようなプロセス技術は、平行固定床反応器中で、担体上のクロム金属含有アルミナ触媒を使用している。さらに、UOPのOleflex process(商標)は、特許文献である米国特許第8563793号明細書に開示されているとおり、流動床反応器中で、担体上の白金金属及びスズを含むアルミナ触媒を利用している。
【0005】
上述した技術とは別に、UHDEのSTAR(Steam Active Reforming)process(商標)(米国特許第4926005号明細書)について開示されており、このプロセスは、固定床反応器中で、白金金属とスズを含み、バインダーとしてアルミン酸カルシウム又はアルミン酸マグネシウムを含む、アルミン酸亜鉛を使用する。しかし、クロム金属は重金属に分類され、環境毒性が、産業に適用されるうえで制限をもたらしている。したがって、オレフィン製造においてアルカンの脱水素に効率的であるように、他の金属、特に白金金属及びスズを含む触媒を開発するための継続的な試みがある。
【0006】
しかしながら、プロピレン選択率における制限、及び触媒の迅速な分解が発見されている。これは、脱水素に対する低い反応性を有する金属焼結が、望ましくない反応、例えば、クラッキング反応及びコークスの形成を引き起こしうるからである。さらに、触媒担体としてのアルミナの使用は、望ましくない反応並びに副生成物、例えば、メタン及びエタンをもたらす。
【0007】
上記のすべての理由からゼオライトを貴金属の担体として適用する試みがなされてきており、なぜなら、ゼオライトはいくつかの優れた特性、例えば、化学的安定性及び熱安定性並びに形状選択性を有しているからである。その結果、ゼオライトは石油及び石油化学産業において触媒として広く使用されてきた。それにもかかわらず、従来のゼオライトは、物質移動の制限及びゼオライト構造中の非常に小さな細孔(オングストローム単位)が原因で、クラッキング反応と速い分解を促進するその酸性度などのいくつかの制限を有している。これは、前駆体が触媒部位で反応するのを妨げる臨界物質移動条件を引き起こし、ゼオライトの細孔を詰まらせるコークスの蓄積による触媒の分解を促進する。さらに、従来のゼオライトは、貴金属の担体として適用された場合に、それらの貴金属の反応性を遅くする可能性がある大きなゼオライト結晶であり、したがって、触媒効率を低下させる。
【0008】
Liu Huiら(China Petroleum Processing and Petrochemical Technology,2013,15,54-62)は、触媒の効率に対する金属の含浸の影響を研究することによって、プロパンの脱水素化のための、白金金属、スズ、及びナトリウムを含むZSM-5ゼオライト触媒(PtSnNa/ZSM-5)を開示した。前記の触媒は、生成物への前駆体の転化率をあまり高くしないことがわかった。
【0009】
米国特許第5516961号明細書は、軽質パラフィン炭化水素の脱水素化、特にブタンからブテンへの転化のための触媒を開示しており、前記の触媒は、約1対5の範囲のアルカリ金属対アルミニウムのモル比でのアルカリ金属及び白金によって改良された中間的細孔を有するZSM-5ゼオライトを含む。しかし、前記の触媒は、ブテンの選択率及び前駆体から生成物への転化率はそれほど高くないことがわかった。
【0010】
米国特許出願公開第2012/0083641号は、プロパンのプロピレンへの酸化的脱水素化の触媒を開示しており、前記の触媒は、バナジウム、アルミニウム、及びニッケルによって改良されたMCM-41ゼオライトを含む。しかしながら、前記触媒は、それほど高くないプロピレン選択率及びそれほど高くない前駆体の生成物への転化率をもたらすことが発見された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第1995/023123号
【文献】米国特許第5315056号明細書
【文献】米国特許第8563793号明細書
【文献】米国特許第4926005号明細書
【文献】米国特許第5516961号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0083641号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Liu Huiら, China Petroleum Processing and Petrochemical Technology,2013,15,54-62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の理由から、本発明は、前駆体の生成物への高い転化パーセント割合と高いオレフィン選択率をもたらすため、アルカンの脱水素化によるオレフィン製造において、その適用に適するようにゼオライト構造を改良するために、X族金属(1又は複数)を含む階層型ゼオライトナノシートを調製することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1a)及びb)は、それぞれ、本発明2によるサンプルの走査型電子顕微鏡写真及び透過型電子顕微鏡写真を示す。 図1c)とd)は、それぞれ比較サンプルBの走査型電子顕微鏡写真及び透過型電子顕微鏡写真を示している。
図2図2は、アンモニア温度プログラム脱着技術を使用した、本発明2によるサンプル及び比較サンプルBの酸性度特性を示す。
図3図3は、プロパンの脱水素化についての、本発明によるゼオライトサンプル及び比較サンプルのパーセント転化率を示す。
図4図4は、プロパンの脱水素化についての、本発明によるゼオライトサンプル及び比較サンプルのパーセント生成物選択率を示す。
図5図5は、ペンタンの脱水素化についての、本発明によるゼオライトサンプル及び比較サンプルのパーセント転化率を示す。
図6図6は、ペンタンの脱水素化についての、本発明によるゼオライトサンプル及び比較サンプルのパーセント生成物選択率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、アルカンの脱水素によってオレフィンを製造するための触媒、及び前記の触媒を用いてオレフィンを製造する方法に関し、これらを以下の実施態様に従って説明する。
【0016】
本明細書に示される任意の態様は、別段の記載のない限り、本発明の他の態様へのその適用を含むことを意味する。
【0017】
本明細書で使用される技術用語または科学用語は、別段の記載のない限り、当業者による定義を有する。
【0018】
ここで命名されている道具、装置、方法、又は化学物質は、それらが本発明においてだけの特定の道具、装置、方法、又は化学物質であるという別段の記載のない限り、当業者によって一般的に使用されている道具、装置、方法、又は化学物質を意味する。
【0019】
特許請求の範囲又は明細書において「含む」という文言を伴う単数名詞又は単数の代名詞は、「1」を意味し、また、「1以上」、「少なくとも1」、及び「1又は1より多」を含む。
【0020】
本願において開示され、特許請求の範囲に記載された全ての組成物及び/又は方法は、特許請求の範囲に具体的には記載されていないけれども、当業者によって本発明と同様の結果をもたらし、有用性の目的を伴って得られる、本発明から大きく異なるという試験結果のない全ての活動、実施行為、変更、又は調整による実施態様を含む。したがって、当業者によって明らかにわかる全ての小さな変更又は調整を含む、本発明の実施態様に対する置換可能又は類似の対象は、付属の特許請求の範囲に示されている発明の思想、範囲、及び概念の中にあるものと解釈されるべきである。
【0021】
本出願全体を通して、「約」という用語は、ここに出現又は示された全ての数が、装置、方法、又はその装置又は方法を使用する者の誤差によって変動又は逸脱しうることを意味する。
【0022】
以下において、本発明の範囲を限定するいかなる目的なしに、本発明の実施形態を示す。
【0023】
本発明は、2~5個の炭素原子を有するアルカンの脱水素によってオレフィンを製造するための触媒に関し、触媒は、120以上のシリカ対アルミナ(SiO/Alモル比及びゼオライトの総質量に対して0.3~5質量%の範囲の周期表のX族金属(1又は複数)を有する階層型ゼオライトナノシートを含む。

【0024】
一実施形態では、階層型ゼオライトナノシートは、0.4~0.6nmの範囲の細孔直径(pore diameter)を有するミクロ細孔、2~50nmの範囲の細孔直径を有するメソ細孔、及び50nmより大きな細孔直径を有するマクロ細孔を含み、ここで、メソ細孔及びマクロ細孔が、総細孔体積に対して60%以上であることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、ミクロ細孔は0.4~0.6nmの範囲の孔径を有し、メソ細孔は20~40nmの範囲の細孔直径を有し、かつマクロ細孔は50nmより大きな細孔直径を有し、ここで、ミクロ細孔及びマクロ細孔は、総細孔体積に対して75%以上であることを特徴とする。
【0026】
一実施形態では、X族金属(1又は複数)は、白金、パラジウム、及びニッケルから選択され、好ましくは白金である。
【0027】
好ましくは、本発明による触媒は、300より大きな、シリカ対アルミナ(アルミナに対するシリカ)のモル比を有し、約0.5~2質量%の範囲でX族金属を有する階層型ゼオライトナノシートを含む。
【0028】
最も好ましくは、ゼオライトはシリカライトである。
【0029】
一実施形態では、本発明による触媒は、以下の工程:
(a)ゼオライトを調製するための化合物及びソフトテンプレート(soft template)を含む溶液を調製する工程;
(b)工程(a)で得られた混合物に、所定の時間及び温度で水熱プロセスを施して、前記混合物を階層型ゼオライトへと形成させる工程;及び
(c)工程(b)で得られた階層型ゼオライトをX族金属(1又は複数)塩の溶液に接触させる工程
によって調製することができ、
ここで、工程(a)におけるソフトテンプレートは第四級ホスホニウム塩であり、工程(c)におけるX族の金属(1又は複数)塩は、ゼオライトに対して0.3~5質量%のX族の金属(1又は複数)を含む。
【0030】
一実施形態では、第四級ホスホニウム塩は、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドから選択されるテトラアルキルホスホニウム塩であり、好ましくはテトラブチルホスホニウムヒドロキシドである。
【0031】
一実施形態では、ゼオライトを調製するための化合物は、アルミニウムイソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、及び硫酸アルミニウムから選択されるアルミナと、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸ナトリウム、又はシリカゲルから選択されるシリカ化合物との混合物である。
【0032】
好ましくは、ゼオライトを調製するための化合物は、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸ナトリウム、又はシリカゲルから選択されるシリカ化合物であり、最も好ましくはオルトケイ酸テトラエチルである。
【0033】
一実施形態では、工程(b)は、130~180℃の範囲の温度で行われる。
【0034】
1つの実施形態において、工程(c)は、ゼオライトに対して、0.5~2質量%の割合のX族金属(1又は複数)を含む。
【0035】
一実施形態では、X族金属の塩(1又は複数)は、白金塩、パラジウム塩、又はニッケル塩から選択される。
【0036】
一実施形態では、X族金属塩(1又は複数)は、塩化白金酸、硝酸テトラアンミン白金、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、及び硫酸ニッケルから選択され、好ましくは硝酸テトラアンミン白金又は塩化白金酸である。
【0037】
1つの実施形態において、工程(c)は、含浸により行うことができる。
【0038】
一実施形態では、前記触媒の調製方法は、か焼工程(焼成工程)をさらに含むことができる。
【0039】
乾燥は、オーブンを用いる一般的な乾燥方法、真空乾燥、撹拌乾燥、回転蒸発乾燥によって行うことができる。
【0040】
か焼は、大気条件下で約1~10時間、約400~800℃の範囲の温度で、好ましくは約4~6時間、約500~600℃の範囲の温度で行うことができる。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、本発明による触媒を、2~5個の炭素原子を有するアルカンの脱水素化に供して、オレフィンを製造することに関する。好ましくは、アルカンは、プロパン又はペンタン、最も好ましくはプロパンである。
【0042】
一実施形態では、反応のために適した条件で、2~5個の炭素原子を有するアルカンの供給ラインを本発明による触媒と接触させる脱水素化プロセスを行うことができ、それは固定床システム、移動床システム、流動床システム、又はバッチシステムにおいて操作することができる。
【0043】
脱水素化は、約400~650℃の範囲、好ましくは約450~550℃の範囲の温度で、大気圧下の圧力~約3000KPaの圧力で、好ましくは約100~500KPaの範囲で、そして最も好ましくは大気圧で実施することができる。
【0044】
脱水素化におけるアルカン供給ラインの重量空間速度(WHSV)は、約1~30時間-1の範囲、好ましくは約3~10時間-1の範囲である。
【0045】
一般に、いずれの当業者も、脱水素化条件を調整して、供給ライン、触媒、及び反応器システムのタイプ及び構成に適するようにすることができる。
【0046】
以下の例は、本発明の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を決して限定するためのものではない。
【実施例
【0047】
触媒の調製
本発明による触媒は、以下の方法により調製される。
アルミニウムイソプロポキシド、テトラエチルオルトシリケートを含む溶液を、シリカ対アルミナの決定したモル比で調製した。テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(水酸化テトラブチルホスホニウム)をゼオライトのためのテンプレートとして用いた。次に、得られた混合物を、約130~180℃の温度にて約2~4日間、水熱処理して、前記の混合物を階層型ゼオライトに変換した。
【0048】
次に、得られた階層型ゼオライトを、洗浄液のpHが9未満になるまで脱イオン水で洗浄した。得られた物質を約100~120℃にて約12~24時間乾燥させた。か焼(焼成)は、約500~650℃にて約8~12時間、テンプレートを除去するために行った。白色粉末の階層型ゼオライトが得られた。
【0049】
得られたゼオライトを、上記プロセスによって得られたゼオライト約1gに約20mLの白金溶液を添加して含浸させることによって白金塩溶液と接触させ、ここで、ゼオライトに対する白金の割合は約1質量%だった。得られた混合物を約6~12時間撹拌し、ロータリーエバポレーターで乾燥させ、約550℃の温度にて約5~10時間か焼した。
【0050】
比較サンプルCat A(ZSM5-con-120)
Hensenら(Catalysis Today, 2011, 168, 96-111)によって開示された方法に従って合成された、アルミナに対するシリカのモル比が約120で得られたZSM-5ゼオライトを、上述した方法によって白金塩溶液と接触させた。
【0051】
比較サンプルCat B(Silicalite-con
その組成としてアルミナなしで、Hensenら(Catalysis Today, 2011, 168, 96-111)によって開示された方法に従って合成されたZSM-5ゼオライトを、上述した方法によって白金塩溶液と接触させた。
【0052】
本発明によるサンプルCat 1(ZSM5-NS-120)
本発明によるサンプルCat 1を上述した本発明の方法によって調製したが、アルミナに対するシリカのモル比120を用い、上述した方法によって白金塩溶液と接触させた。
【0053】
本発明によるサンプルCat 2(Silicalite-NS)
本発明による試料Cat 2を上述した本発明の方法によって調製したが、調製工程で使用するアルミナを用いず、上述した方法によって白金塩溶液と接触させた。
【0054】
脱水素化試験
脱水素化試験は、以下の条件で行うことができる。
脱水素化は、約0.2gの触媒を使用する固定床反応で行なった。反応前に、触媒を、窒素中の約2~10体積%の水素と約10~50mL/分の流速で約1~3時間接触させた。次に、2~5個の炭素原子を有するアルカンを約1~3g/時間の流速で供給した。 反応は、約450~550℃の温度にて大気圧で、約5時間-1の重量空間速度(WHSV)で行った。
【0055】
次に、反応に続いて、固定床反応器の出口に接続されたガスクロマトグラフィーにより、各々の前記の成分を分析するために検出器として火炎イオン化検出器(FID)及びHP-AL/S及びGASPROキャピラリーカラムを使用して、触媒を作用させた後の前駆体の変化及び各成分の生成を各時間ごとに測定した。
【0056】
表1は、本発明による階層型ゼオライトナノシート及び比較サンプルの物理的特性を示している。表から、本発明によって調製されたゼオライトは、ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔を含み、メソ細孔及びマクロ細孔は全細孔体積の60%より大きいことがわかった。本発明によって調製されたゼオライトにおける含有量は、従来のゼオライトよりも著しく多い。これは、階層的な多孔性を示している。さらに、結晶構造を示すために、得られた物質を、走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)により試験をし、結果は図1に示したとおりである。本発明によるゼオライトは、約120~200nmの範囲の粒径をもつ薄いナノシートだった。また、この階層型ゼオライトナノシートは、従来のゼオライト担体よりも大幅に小さい白金粒子を有するのに対して、従来のゼオライトは同じ試験条件下で調製した場合に大きくかつ不規則な白金粒子径を有することもわかった。
【0057】
図2は、酸性度試験においてアンモニア温度プログラム脱着技術を使用した、本発明による階層型ゼオライトナノシート及び従来のゼオライトの酸性度特性を示している。 本発明によるゼオライトは、300~500℃の範囲の温度におけるピーク面積から分かるように、強酸性部位を有意に減少させていることが発見された。この結果は、コークス形成反応及び分解反応を含む副反応の低減に影響を及ぼし、それによって副生成物の形成を低下させる。
【0058】
【表1】
【0059】
脱水素化触媒としての前記のゼオライトの性能に対する階層的ゼオライトナノシート構造の影響を研究するために、図3図6に示すように、従来のゼオライトを使用する比較試料とともに、本発明によるゼオライトを使用して試験をした。
【0060】
図3及び図4は、プロパンの脱水素化触媒としてのゼオライトの性能を示している。本発明による試料Cat 1及びCat 2は、従来のゼオライトよりも、プロパンのより良好な転化、より高いプロピレン選択率、及びより優れた安定性を示すことを発見した。
【0061】
図5及び図6は、ペンタンの脱水素化触媒としてのゼオライトの性能を示している。本発明による試料Cat 2は、従来のゼオライトよりもペンタンのより良好な転化及びより高いオレフィン選択率を示すことを発見した。
【0062】
上記の結果から、本発明による階層型ゼオライトナノシート触媒は、本発明の目的に示されるように、2~5個の炭素原子を有するアルカンの脱水素に対して高い転化率及び高いオレフィン選択率をもたらすと言うことができる。
【0063】
発明の最良の形態
本発明の最良の形態は、本発明の説明に提供されているとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6