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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】アルデヒド系匂い物質
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20230208BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20230208BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20230208BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230208BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230208BHJP
   D06M 13/127 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C11B9/00 K
C11D3/50
A61K8/35
A61Q13/00 101
A61L9/01 J
A61L9/00 Z
D06M13/127
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020536527
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2019057529
(87)【国際公開番号】W WO2019185599
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】18164274.5
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト モレッティ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー アレクサンダー バークベック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シャピュイ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-011485(JP,A)
【文献】特開2005-139191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090390(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0117046(US,A1)
【文献】特開昭50-094143(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B9/00;C11D;A61K;A61Q;A61L;D06M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、Rは、n-ブチル基または(3-メチルブタン-2-イル)基を表す]の立体異性体のいずれか1種の形態またはそれらの混合物である化合物の、芳香成分としての使用。
【請求項2】
Rはn-ブチル基を表すことを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
式(I)の化合物が、3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールおよび3-[4-(1,2-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から2までのいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
式(I)の化合物が、3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
芳香組成物または賦香物品に、請求項1から4までに定義された式(I)の化合物の少なくとも1種の有効量を添加することを含む、前記組成物または物品の香気特性を付与、増強、改善、または変調する方法。
【請求項6】
請求項1から5までに定義された式(I)の化合物。
【請求項7】
i)請求項6に定義された式(I)の少なくとも1種の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)場合により少なくとも1種の香料助剤
を含む、芳香組成物。
【請求項8】
請求項6に定義された式(I)の少なくとも1種の化合物または請求項7に定義された組成物を含む、賦香消費者製品。
【請求項9】
香料消費者製品が、香水、ファブリックケア製品、ボディケア製品、化粧用調剤、スキンケア製品、空気清浄製品、またはホームケア製品であることを特徴とする、請求項8記載の賦香消費者製品。
【請求項10】
香料消費者製品が、ファインフレグランス、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブローションもしくはアフターシェーブローション、液体洗剤もしくは固形洗剤、布用柔軟剤、布用消臭剤、アイロンウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品、シャンプー、染髪用調剤、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、消毒薬、デリケートゾーンケア製品、ヘアースプレー、バニシングクリーム、デオドラントもしくは制汗剤、脱毛剤、タンニングもしくは日焼け用製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メークアップ、香料入り石鹸、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または足用/手用ケア製品、衛生製品、エアーフレッシュナー、「即座に使える」粉末状エアーフレッシュナー、カビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用もしくは硬質表面用洗剤、皮革手入れ用製品、車手入れ用製品であることを特徴とする、請求項9記載の賦香消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料分野に関する。より詳細には、本明細書で以下に定義する式(I)の化合物、および芳香成分としてのその使用に関する。したがって、本明細書で述べる事項に従い、本発明は、芳香組成物または賦香消費者製品の一部として本発明の化合物を含む。
【0002】
先行技術
香料産業では、新規な官能的ノートを付与する化合物の提供が定常的に必要とされる。特にスズラン香気の主たる官能的側面の1種を代表するアルデヒドノートに関心が寄せられている。そこで、精油生産の際、最も穏やかな抽出方法でも残存しないミュゲの繊細なフローラル香気を再現するために、上記ノートを付与する化合物が特に求められている。
【0003】
本発明は、過去に報告例のない式(I)の新規な香料成分を提供する。これを使用すると、アルデヒド、クリーミー、およびコリアンダーの特徴を組み合わせた非常に興味深い官能的ノートを付与する、ミュゲノートの一側面を実現することができる。
【0004】
本発明者らの知る限り、芳香成分と類似する構造類似体が米国特許出願公開第20110217257号明細書および米国特許出願公開第20110117046号明細書に記載されており、これには、フローラル、ミュゲグリーンのノートを付与する3-(4-アルキル)シクロヘキサンプロパナール化合物が報告されている。一方、欧州特許出願公開第1054053号明細書は、Mugoxal(登録商標)(Firmenich SA,Suisseによる商標)としても知られる、スズランの香気種を有する3-(4-tert-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールを公開している。上記先行技術の化合物は、式(I)の化合物とは異なる官能的特性を有する。
【0005】
したがって、これらの先行技術文献はいずれも、式(I)の化合物のいかなる官能的特性も、または香料分野における上記化合物のいかなる使用も報告または示唆していない。
【0006】
発明の概要
本発明は、クリーミーおよびコリアンダーのノートを有すると同時に、複雑なスズラン香気の一性質を特徴とするアルデヒドノートを付与する式(I)の化合物に関する。
【0007】
したがって、本発明の第1の対象は、式(I):
【化1】
[式中、Rは、n-ブチル基または(3-メチルブタン-2-イル)基を表す]の立体異性体のいずれか1種の形態またはそれらの混合物である化合物の使用である。
【0008】
本発明の第2の対象は、芳香組成物または賦香物品の香気特性を付与、増強、改善、または変調する方法であり、本方法は、上記組成物または物品に、上記で定義した式(I)の少なくとも1種の化合物の有効量を添加することを含む。
【0009】
本発明の第3の対象は、上記で定義した式(I)の化合物である。
【0010】
本発明の別の対象は、
i)上記で定義した式(I)の少なくとも1種の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)場合により少なくとも1種の香料助剤
を含む芳香組成物である。
【0011】
本発明の最後の対象は、式(I)の少なくとも1種の化合物または上記で定義した組成物を含む、賦香消費者製品である。
【0012】
発明の説明
驚くべきことに、式(I)の化合物は、クリーミーノートとコリアンダーノートを兼ね備える、スズラン香気ノートのアルデヒド側面を有することが新たに発見された。式(I)の上記化合物を香料組成物に使用して、ミュゲ香気を再現することができた。
【0013】
本発明の第1の対象は、式:
【化2】
[式中、Rは、n-ブチル基または(3-メチルブタン-2-イル)基を表す]の立体異性体のいずれか1種の形態またはそれらの混合物である化合物である。上記化合物を芳香成分として使用すると、例えば、スズランの性質にアルデヒド、コリアンダー、およびクリーミーといった種類の香気ノートを付与することができる。
【0014】
明確にするために述べると、「立体異性体のいずれか1種」または類似の表現は、当業者によって理解されている通常の意味、すなわち、本発明の化合物が純粋なエナンチオマー(キラルの場合)、エナンチオマーの混合物(立体異性体の混合物)、純粋なジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、またはそれらの混合物であってもよいことを意図する。
【0015】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、上記化合物(I)はC13~C14化合物である。
【0016】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、Rは、n-ブチル基または(3-メチルブタン-2-イル)基を表す。好ましくは、Rはn-ブチル基を表す。
【0017】
本発明の化合物の具体例として、スズラン香気ノートの特徴であるアルデヒドノートに加え、クリーミーノートとコリアンダーノート、特にコリアンダーリーフノートを有し、かつまたマンダリン側面と清涼感のある性質も備えることを特徴とする、3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールを非限定的な例として挙げることができる。上記化合物はまた、非常によく知られた成分、Lilial(登録商標)(2-メチル-3-[4-(2-メチル-2-プロパニル)フェニル]プロパナール、Givaudan-Roure SA,Vernier,Suisseによる商標)と極めて酷似するファッティおよびウォータリーの特徴も有する。本化合物によって提供される全体的な官能的効果は、ブルーム効果(拡散)を備えた非常に強力なものである。
【0018】
他の例として、上記に述べたものと類似するがわずかに強度が劣る香気を有する、3-[4-(1,2-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールを挙げることができる。
【0019】
本発明の化合物は驚くほど非常に強力である。上記で挙げた比較化合物はすべて、構造的に本発明の化合物と近似しているが、付与される香気ノートはメタリックノートおよび/またはファッティノートが含まれ、発散性を欠く、魅力に乏しいものである。本発明の化合物のみがメタリックノートおよびファッティノートを含まない。
【表1-1】
【表1-2】
【0020】
本発明の特定の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール、および3-[4-(1,2-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールからなる群から選択することができる。好ましくは、式(I)の化合物は、3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールであり得る。
【0021】
本発明の化合物の香気は、先行技術の化合物Mugoxal(登録商標)(3-(4-tert-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール;製造元:Firmenich SA,Geneva,Switzerland)、またはStarfleur(登録商標)(3-[4-(2-メチルプロピル)シクロヘキシル]プロパナール;製造元:International Flavors & Fragrances,USA)と比較した場合、本発明の化合物は、クリーミーとコリアンダーの特徴をもつ、より強力なアルデヒドノートである点、Mugoxal(登録商標)のフローラルノートおよびStarfleur(登録商標)のシトロネラノートがない点が他と異なっている。米国特許出願公開第20110117046号明細書に報告される3-(4-n-ブチルシクロヘキシル)プロパナールは、本発明の化合物の典型的なフローラルノートの香気を有さないが、望ましくないファッティノートおよびメタリックノートを付与する。本発明の化合物の香気は、先行技術の化合物よりもはるかに清涼感がある。さらに、本発明の化合物は、先行技術の化合物には存在しないブルーム効果および拡散性/発散性を有する。
【0022】
上記の差異により、本発明の化合物と先行技術の化合物とは適する用途がそれぞれ異なる、すなわち異なる官能的印象を付与する。
【0023】
上記で述べたように、本発明は、式(I)の化合物の芳香成分としての使用に関する。換言すれば、芳香組成物または賦香物品または表面の香気特性を付与、増強、改善、または変調する方法であって、上記組成物または物品に、式(I)の少なくとも1種の化合物の有効量を添加する、例えばその典型的なノートを付与することを含む方法に関する。最終的な快楽効果は、本発明の化合物の正確な用量および官能的特性に依存する可能性があることは理解しているが、いずれにしても、本発明の化合物の添加は、用量に応じたノート、特色、または性質の形態でその典型的な特色を最終製品に付与することになる。
【0024】
本明細書で「式(I)の化合物の使用」とは、化合物(I)を含有し、香料産業で有利に用いることができる任意の組成物の使用でもあると理解されなければならない。
【0025】
上記の組成物は、実際に芳香成分として有利に用いることができ、これも本発明の対象である。
【0026】
したがって、本発明の別の対象は、
i)芳香成分として、上記で定義した少なくとも1種の本発明の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)場合により少なくとも1種の香料助剤
を含む、芳香組成物である。
【0027】
本明細書で「香料担体」とは、香料の観点から実質的に中性である材料、すなわち芳香成分の官能的特性を著しく変化させない材料を意味する。上記の担体は、液体であっても固体であってもよい。
【0028】
液体担体として、乳化系、すなわち溶媒と界面活性剤の系、または香料製造に一般的に使用される溶媒を非限定的な例として挙げることができる。香料製造に一般的に使用される溶媒の性質および種類の詳細な説明は、網羅できるものではない。しかしながら、最も一般的に使用されている、ブチレンまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセタート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチル、またはそれらの混合物などの溶媒を非限定的な例として挙げることができる。香料担体と香料基剤との双方を含む組成物について、先に明記したもの以外の他の好適な香料担体はまた、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えばIsopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)という商標で知られるもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えばDowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)という商標で知られるもの、または硬化ヒマシ油、例えばCremophor(登録商標)RH 40(製造元:BASF)という商標で知られるものであってもよい。
【0029】
固体担体は、芳香組成物または芳香組成物のいくつかの要素が化学的または物理的に結合され得る材料を示すことを意味する。概して、このような固体担体は、組成物を安定化させるか、または組成物もしくはいくつかの成分の蒸発速度を制御するために用いられる。固体担体の使用は当技術分野で現在使用されており、望ましい効果に達する方法を当業者は承知している。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸収性のゴムもしくはポリマーまたは無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木質材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク、もしくはゼオライトなどを挙げることができる。
【0030】
固体担体の他の非限定的な例として、被包材料を挙げることができる。そのような材料の例は、単糖類、二糖類、もしくは三糖類、天然もしくは加工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチンなどの隔壁形成材料および可塑化材料、またはさらにはH.Scherz,Hydrokolloide:Stabilisatoren,Dickungs-und Geliermittel in Lebensmitteln,Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet,Behr’s Verlag GmbH & Co.,Hamburg,1996などの参考図書に引用されている材料を含み得る。封入は、当業者にとって周知のプロセスであり、例えば、噴霧乾燥、凝集、またはさらには押出などの技術、またはコアセルベーション技術および複合コアセルベーション技術を含む被覆封入からなる技術を使用することにより実施することができる。
【0031】
固体担体の非限定的な例として、特にアミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素、もしくはポリウレタン種の樹脂またはそれらの混合物(上記の樹脂はすべて当業者に周知である)を有するコアシェルカプセルを挙げることができる。これには、場合によりポリマー安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーション、または全部により導入される相分離プロセスなどの技術を使用する(上記の技術はすべて先行技術に記載されている)。
【0032】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸、またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)とアミン、例えば尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなど、ならびにそれらの混合物との重縮合によって生成される。あるいは、予備形成樹脂アルキルオレート化ポリアミン、例えばUrac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Cy mel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)、またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)の商標で市販されているものなどを使用することができる。
【0033】
他の樹脂の1種は、グリセロールなどのポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、またはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体(Takenate(登録商標)の商標で知られる、製造元:Mitsui Chemicals)、中でもキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などのポリイソシアネートとの重縮合によって生成されるものである。
【0034】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドの重縮合による香料の封入に関連する独創的な文献のいくつかには、K.Dietrich et al.Acta Polymerica,1989,vol.40,ページ243,325および683,ならびに1990,vol.41,ページ91により公開されたものなどの論文に代表されるものが含まれる。そのような論文には、先行技術の方法に従うようなコアシェルマイクロカプセルの製造に影響を与える種々のパラメーターがすでに記載されており、これらはまた、本特許文献にさらに詳細に記載され、かつ例示される。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4,396,670号明細書は、後者に関係する初期の例である。それ以降、他の多くの著者によって本分野の文献が拡充されており、公開された開発すべてを本明細書で網羅することは不可能であるが、封入技術の一般知識は非常に重要である。そのようなマイクロカプセルの好適な使用を開示している、最近の関連出版物は、例えば、H.Y.Lee et al.Journal of Microencapsulation,2002,vol.19,ページ559-569、国際公開第01/41915号、さらにはS.Boene et al.Chimia,2011,vol.65,ページ177-181に代表される。
【0035】
本明細書で意味する「香料基剤」とは、少なくとも1種の賦香補助成分を含む組成物である。
【0036】
上記の芳香補助成分は式(I)のものではない。さらに、本明細書で「芳香補助成分」とは、快楽効果を付与するために芳香調製物または組成物に使用される化合物を意味する。換言すれば、賦香成分であるとみなされるそのような補助成分は、単に香気を有するだけではなく、組成物の香気を良好なまたは快適な方法で付与または変調できるものとして当業者に認識されなければならない。
【0037】
基剤中に存在する芳香補助成分の性質および種類は、本明細書のさらに詳細な説明であると保証されるものではなく、いかなる場合でも網羅的ではなく、当業者であれば、その一般的な知見に基づいて、かつ意図された使用または用途および望ましい官能的効果に応じて、それらを選択することができる。一般論として、これらの芳香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫黄複素環式化合物および精油といった様々な化学クラスに属し、かつ上記芳香補助成分は天然由来であっても合成由来であってもよい。
【0038】
特に、次のような類似の嗅覚ノートを有することで知られている芳香補助成分を挙げることができる。
【0039】
特に、次のような香料配合物で一般的に使用されている芳香補助成分を挙げることができる。
-アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、および/またはノネナール;
-芳香性ハーブ成分:ユーカリ油、樟脳、ユーカリプトール、メントール、および/またはアルファ-ピネン;
-バルサム成分:クマリン、エチルバニリン、および/またはバニリン;
-柑橘類成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジオイル、酢酸リナリル、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、酢酸1-P-メンテン-8-イル、および/または1,4(8)-P-メンタジエン;
-フローラル成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシル桂皮アルデヒド、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、ベータイオノン、2-(メチルアミノ)安息香酸メチル、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、サリチル酸ヘキシル、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、酢酸ベルジル、ゲラニオール、P-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1.1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセタート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、サリチル酸アミル、高cisジヒドロジャスモン酸メチル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、プロピオン酸ベルジル、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、cis-7-P-メンタノール、(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパン酸プロピル、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセタート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミル桂皮アルデヒド、4-フェニル-2-ブタノン、酢酸イソノニル、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセタート、イソ酪酸ベルジル、および/またはメチルイオノン異性体の混合物;
-フルーティ成分:ガンマウンデカラクトン、4-デカノリド、2-メチル-ペンタン酸エチル、酢酸ヘキシル、2-メチル酪酸エチル、ガンマノナラクトン、ヘプタン酸アリル、イソ酪酸2-フェノキシエチル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル、および/または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル;
-グリーン成分:2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセタート、酢酸スチラリル、(2-メチルブトキシ)酢酸アリル、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、および/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
-ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、ペンタデセノリド、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1´R)-2-[1-(3´,3´-ジメチル-1´-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、ペンタデカノリド、および/または(1S,1´R)-[1-(3´,3´-ジメチル-1´-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
-ウッディ成分:1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリ油、パチュリ油のテルペン画分、(1´R,E)-2-エチル-4-(2´,2´,3´-トリメチル-3´-シクロペンテン-1´-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、および/または酢酸イソボルニル;
-その他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシー、またはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フランおよびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、桂皮アルデヒド、クローブ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、ならびに/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール。
【0040】
本発明による香料基剤は、上記に述べた芳香補助成分に限定されることはなく、いずれによらず、他のこのような補助成分の多くは、S.Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals,1969,Montclair,New Jersey,USA、もしくはその最新版などの参考図書、または同様の種類の他の著作、および香料分野の豊富な特許文献に列挙されている。上記補助成分はまた、様々な種類の芳香化合物を制御された方法で放出することが知られている化合物であってもよいものと理解される。
【0041】
本明細書では、「香料助剤」とは、色、特別な耐光性、化学的安定性などといった付加的に加味される利点を付与することが可能な成分を意味する。芳香組成物に一般的に使用される助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅できるものではないが、言及すべき点として上記成分は当業者に周知されているものである。具体的な非限定的な例として、増粘剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、防腐剤、抗酸化剤、熱/光および/または緩衝剤またはキレート剤、例えばBHTなど)、着色剤(例えば、色素および/または顔料)、防腐剤(例えば、抗菌剤もしくは抗微生物剤または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、防虫剤、軟膏、ビタミン剤、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
当業者は、単に当技術分野の標準的知見を適用することによってのみならず、方法論の試行錯誤により、芳香組成物の上記に述べた成分を混合して、望ましい効果を得るための最適な配合物を設計することが完全に可能であることが理解される。
【0043】
式(I)の少なくとも1種の化合物および少なくとも1種の香料担体からなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態、ならびに式(I)の少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の香料担体、少なくとも1種の香料基剤、および場合により少なくとも1種の香料助剤を含む芳香組成物からなる。
【0044】
特定の実施形態によれば、上記に述べた組成物は、式(I)の2つ以上の化合物を含んでおり、調香師は本発明の種々の化合物の香調を有する調合香料または香料を製造することで、開発目的で新たな構成単位を生成することができる。
【0045】
明確にするために述べると、出発物質、中間体、または最終生成物として、本発明の化合物を包含する、化学合成から直接得られる任意の混合物、例えば十分な精製を行わない反応媒体は、上記の混合物が本発明の化合物を香料に適した形態で提供するものでない限り、本発明による芳香組成物とみなすことができないことも理解される。したがって、未精製の反応混合物は概して、特に明記しない限り、本発明から除外される。
【0046】
本発明の化合物はまた、現代の香料産業、すなわちファインフレグランスまたは機能性香料産業のあらゆる分野で有利に使用して、上記の化合物(I)が添加される消費者製品の香気を良好に付与または変調することができる。結果として、本発明の別の対象は、上記で定義した式(I)の少なくとも1種の化合物を芳香成分として含む賦香消費者製品からなる。
【0047】
本発明の化合物は、そのまま添加することも、または本発明の芳香組成物の一部として添加することもできる。
【0048】
明確にするために述べると、「賦香消費者製品」とは、塗布される表面または空間(例えば、皮膚、髪、繊維、または住宅内の表面)に少なくとも快適な芳香効果を与える消費者製品を称することを意図する。換言すれば、本発明による賦香消費者製品は、機能性配合物に加え、場合により追加の有益な薬剤を含む賦香消費者製品であり、望ましい消費者製品と嗅覚的有効量の少なくとも1種の発明の化合物に相当する。明確にするために述べると、上記の賦香消費者製品は非食用製品である。
【0049】
賦香消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書のさらに詳細な説明であると保証されるものではなく、いかなる場合でも網羅的ではなく、当業者であれば、一般的な知見に基づいて、かつ上記製品の性質および望ましい効果に応じて、それらを選択することができる。
【0050】
好適な賦香消費者製品の非限定的な例として、香水、例えばファインフレグランス、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、またはシェーブローションもしくはアフターシェーブローション;ファブリックケア製品、例えば液体洗剤もしくは固形洗剤、布用柔軟剤、液体もしくは固形芳香増強剤、布用消臭剤、アイロンウォーター、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、染髪用調剤もしくはヘアースプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品)、消毒薬、デリケートゾーンケア製品;化粧用調剤(例えば、肌用クリームもしくはローション、バニシングクリームまたはデオドラントもしくは制汗剤(例えば、スプレーまたはロールオン)、脱毛剤、タンニング製品もしくは日焼け用製品もしくは日焼け後製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メークアップ);またはスキンケア製品(例えば、石鹸、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品もしくは足用/手用ケア製品);住居空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴、または車)および/または公共空間(ホール、ホテル、モールなど)で使用することができる空気清浄製品、例えばエアーフレッシュナーもしくは「即座に使える」粉末状エアーフレッシュナー;またはホームケア製品、例えばカビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば、床、浴槽、サニタリー、または窓)用洗剤;皮革手入れ用製品;車手入れ用製品、例えば磨き剤、ワックスもしくはプラスチッククリーナーが挙げられる。
【0051】
上記で述べた賦香消費者製品のいくつかは、本発明の化合物に対して侵襲性の媒体であり得るため、例えば封入によって、または酵素、光、熱、もしくはpHの変化など、適切な外部刺激下で本発明の成分を放出するのに適した別の化学物質に化学的に結合することによって、本化合物を早期分解から保護することが必要となる場合がある。
【0052】
本発明による化合物を種々の前述の製品または組成物に導入できる比率は、広範な値の範囲内で変化する。このような値は、賦香される物品の性質および望ましい官能的効果、ならびに本技術分野で一般的に使用される芳香補助成分、溶媒、または添加剤と本発明による化合物を混合する場合の所与の基剤中の補助成分の性質に応じて異なる。
【0053】
例えば芳香組成物の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、化合物が組み込まれる組成物の重量を基準として0.001重量%~10重量%程度、またはそれ以上である。賦香消費者製品の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、化合物が組み込まれる消費者製品の重量を基準として0.001重量%~1重量%程度、またはそれ以上である。
【0054】
式(I)の化合物は本明細書で以下に記載する方法に従って製造することができる。
【0055】
実施例
ここで、以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。略語は当技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示されている。NMRスペクトルデータは、(特に指定のない限り)CDCl中で、Bruker Advance II Ultrashield 400 plus(400MHz(H)および100MHz(13C)で稼働)またはBruker Advance III 500 plus(500MHz(H)および125MHz(13C)で稼働)またはBruker Advance III 600クライオプローブ(600MHz(H)および150MHz(13C)で稼働)のいずれかを使用して記録した。スペクトルには内部参照を行い、化学シフトδはTMS0.0ppmに対するppmで示し、結合定数JはHzで表す。
【0056】
例1
3-(4-n-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(式(I)の化合物)の合成
a)8-ブチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造
4-n-ブチルシクロヘキサノール(175g;1120mmol)を、2つの滴下漏斗、温度計、およびディーン・スターク装置を備える1.5lの4ツ口フラスコに入れた。アルコールをN下、155℃で加熱し、アクリル酸n-ブチル(85g;660mmol)およびジ-tert-ブチルペルオキシド(39.3g;264mmol)を同時ではあるが別々に反応物に添加した。内部温度は最初158℃であったが、添加が進むにつれて徐々に低下したため、浴温度を徐々に165℃に上げ、内部温度を155℃に戻した。処理中に液体(t-ブタノール)が蒸留した(蒸気温度=79~81℃)。添加には6時間を要し、39mlのt-ブタノールを回収した。反応物を50℃に冷却した。MTBE(200ml)、続いて30%NaOH水溶液(50gのNaOHを110mlのHOに溶解)を添加した。混合物を30分間撹拌した後、水(200ml)および追加のMTBE(200ml)を添加した。混合物を室温まで冷却し、2リットルの分液漏斗に移した。ジエチルエーテル(500ml)および水(400ml)を添加し、混合物を激しく振盪した。相を分離した。水相をジエチルエーテル(500ml)で再抽出した。各有機相を水(300ml)で処理した。有機相(過剰の4-n-ブチルシクロヘキサノールを含有)を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過および濃縮し、蒸留(バルブ・ツー・バルブ;90℃/1mbar)して、回収された4-n-ブチルシクロヘキサノール61g(390mmol)を得た。
【0057】
水相(ヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩を含有)を50%HSO水溶液(400ml、これは酸の塩をプロトン化した後、ラクトンを形成した)で酸化し、ジエチルエーテル(2×750ml)で抽出した。各有機相を水(2×1リットル)、NaHCO飽和水溶液で洗浄した。合一した有機画分を硫酸ナトリウムで脱水した。粗製混合物のGCは、出発物質11%および生成物84%を示した。出発物質の大半は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(80~105℃/0.028mbar)によって留去された。8-ブチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンを130℃/0.028mbarで蒸留し、2つの画分を得た:
画分番号1:49.21g;GCによる純度100%;ジアステレオマーの39:61混合物
画分番号2:1.87g;GCによる純度89%;ジアステレオマーの15:85混合物
総収量:242mmol;37%
【化3】
【0058】
b)3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン酸ブチルの製造
短いVigreuxカラム、ディーン・スタークトラップおよび冷却器を備えた500mlフラスコ中で、8-ブチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(50.9g;242mmol)および1-ブタノール(89.7g;1210mmol)を混合した。濃硫酸(1.19g;12mmol)を添加し、150℃の油浴にて溶液を9時間加熱した。1-ブタノールを蒸発させ、残渣をn-ペンタン(500ml)で希釈した。溶液をNaHCOの飽和水溶液およびブライン(各300ml)で洗浄した。水相をn-ペンタン(300ml)で抽出した。合一した抽出物を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。生成物をバルブ・ツー・バルブ蒸留(132~160℃/0.046mbar)により精製した。
画分番号1:4.46g;GCにより95%
画分番号2:56.42g;GCにより95%
画分番号3:1.9g;GCにより71%
総収量:222mmol;92%
【化4】
【0059】
c)3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールの製造
水素化ジイソブチルアルミニウム(1Mジクロロメタン溶液、241ml;241mmol)を8-ブチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(56.42g;95%;201mmol)の乾燥ジクロロメタン(500ml)溶液に、-70℃、N下で(1時間30分超)滴下した。反応物をさらに-70℃で2時間30分撹拌した後、酒石酸Na/K(ロッシェル塩;700g)の10%水溶液を徐々に添加することによりクエンチした。この段階では非常に効率的な撹拌が必要である。反応物を室温まで加温し、一晩撹拌した。相を分離した。水相をジクロロメタンで抽出した。各有機相をブラインで洗浄した。合一した抽出物を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル15:1~10:1)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(80℃/0.04mbar)で精製した。
収量:30g(154mmol);77%
【化5】
【0060】
例2
3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
a)1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)エチル)-4-(sec-ブチル)シクロヘキサン-1-オールの製造
2-(2-ブロモエチル-1,3-ジオキソラン)(18.0g、100mmol)のTHF溶液を、Mg(2.7g、112mmol)のTHF(100mL)撹拌懸濁液に徐々に滴下した。MgBr(約100mg)および/または少しのヨウ素結晶でMgを活性化した。発熱したら、臭化物を徐々に滴下し、温度を50~60℃に上昇させた後、30℃まで冷却した。次に、4-(sec-ブチル)シクロヘキサン-1-オン(100mmol)のTHF(20mL)溶液を徐々に滴下した。添加時の温度は35℃未満であった。溶液を周囲温度でさらに4時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウムと氷の撹拌混合物(1:1、200mL)に注入し、EtOAc(2×100mL)で再抽出し、飽和重炭酸ナトリウム(100mL)、次いでブライン(100mL)で洗浄し、MgS0で脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去した。cis異性体とtrans異性体との混合物である粗製アルコールをさらに精製することなく次の工程でそのまま使用した。
【0061】
b)2-(2-(4-sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソランの製造
工程a)で得たアルコール(4.8g、19mmol)を、0℃に冷却したピリジン(25mL)に撹拌した溶液に、POCl(4.4g、28.5mmol)を徐々に滴下した。懸濁液を0℃で30分間撹拌した後、周囲温度に加温し、さらに1時間撹拌した。次に、懸濁液を氷/水に注入し、EtOAc(2×100mL)で再抽出し、中性になるまで飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した後、10%HSO、ブライン(100mL)で洗浄し、MgS0で脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去した。粗製ジオキソランをバルブ・ツー・バルブ(クーゲルロール)蒸留によりさらに精製して、純粋なジオキソラン3.5gを得た。
【化6】
【0062】
c)3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールの製造
工程b)で得たジオキソラン(3.4g、14.4mmol)をアセトン(45mL)と水(15mL)に溶解し、濃HCl(0.5mL)を添加した後、混合物を15時間加熱還流した。次に混合物を冷却し、EtO(100mL)で希釈し、水相をEtO(100mL)で再抽出した。次に、合一した有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム(2×50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgS0で脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去し、粗製アルデヒドを得た。バルブ・ツー・バルブ蒸留によりさらに精製し、所望のアルデヒド2.5gを得た。
【化7】
【0063】
例3
3-[4-(1,2-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナール(式(I)の化合物)の合成
最初の工程で、4-(sec-ブチル)シクロヘキサン-1-オンを4-(3-メチルブタン-2-イル)シクロヘキサン-1-オンに置き換えることにより、例2で報告した実験部分に従って3-[4-(1,2-ジメチルプロピル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールを製造した。
2-(2-(4-(3-(メチルブタン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソラン
【化8】
3-(4-(3-メチルブタン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール
【化9】
【0064】
例4
3-(4-n-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
最初の工程で、4-(sec-ブチル)シクロヘキサン-1-オンを4-プロピルシクロヘキサン-1-オンに置き換えることにより、例2で報告した実験部分に従って3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールを製造した。
【0065】
2-(2-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソラン
2-(2-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)エチル)-1,3-ジオキソランを81%の収率で得た。
【化10】
【0066】
3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール
3-(4-n-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールを74%の収率で得た。
【化11】
【0067】
例5
2-メチル-3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
最初の工程で、4-(sec-ブチル)シクロヘキサン-1-オンを4-プロピルシクロヘキサン-1-オンに、2-(2-ブロモエチル-1,3-ジオキソランを2-(1-ブロモプロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン(特開2016084325号公報に従って製造)に置き換えることにより、例2で報告した実験部分に従って2-メチル-3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールを製造した。
【0068】
2-(1-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン
2-(1-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソランを立体異性体の1:1混合物の形態で76%の収率で得た。
【化12】
【0069】
2-メチル-3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール
2-メチル-3-(4-プロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールジオキソランをジアステレオマーの1:1混合物の形態で75%の収率で得た。
【化13】
【0070】
例6
3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2メチルプロパナール(比較化合物)の合成
最初の工程で、2-(2-ブロモエチル-1,3-ジオキソランを2-(1-ブロモプロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン(特開2016084325号公報に従って製造)に置き換えることにより、例2で報告した実験部分に従って3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2メチルプロパナールを製造した。
【0071】
2-(1-(4-sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン
2-(1-(4-sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソランをジアステレオマーの1:1:1:1混合物の形態で50%の収率で得た。
【化14】
【0072】
3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2メチルプロパナール
3-(4-(sec-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2メチルプロパナールを立体異性体の1:1:1:1混合物の形態で81%の収率で得た。
【化15】
【0073】
例7
3-(4-n-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナール(比較化合物)の合成
55%ホルムアルデヒド(Formcel、0.9g;16.5mmol)、40%ジメチルアミン水溶液(0.15g;1.33mmol)、およびプロピオン酸(0.4g;5.4mmol)を90℃、N下で加熱した。例1で得た3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(2g;10.3mmol)を添加した。10分後、反応物を室温に冷却し、MTBEで希釈した。反応物を飽和NHCl水溶液、10%クエン酸水溶液、水、およびブラインで洗浄した。各水相をMTBEで抽出した。合一した抽出物を硫酸ナトリウムで脱水した。残渣をバルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃/0.1mbar)により精製して、得た化合物をエタノール(10ml)に溶解し、5%パラジウム炭素(50mg)の存在下、周囲圧力および周囲温度で水素化した。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル99:1)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(90℃/0.1mbar)で精製した。
【0074】
収量:0.44g(純度98%;2.1mmol;20%)。これは、ジアステレオマーの1:1混合物である。
【化16】
【0075】
例8
3-(4-n-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタナール(比較化合物)の合成
a)8-ブチル-4-メチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造
8-ブチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造について記載された手順(例1a)を参照)を適合し、以下の化合物および量を使用した:
4-n-ブチルシクロヘキサノール(46.78g;300mmol);E-n-クロトン酸ブチル(24.13g;166mmol);ジ-tert-ブチルペルオキシド(9.93g;67mmol)。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル5:1~3:1)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃/0.015mbar)で精製した。
【0076】
収量:10.92g(49mmol;29%)。これは、4種のジアステレオマーの混合物である。
【化17】
【0077】
b)3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン酸ブチルの製造
3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパノエートの製造について記載された手順(例1b)を参照)を適合し、以下の化合物および量を使用した:
8-ブチル-4-メチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(10.54g;47mmol);1-ブタノール(17.42g;235ミリモル);濃硫酸(0.23g;2.35mmol)。生成物をバルブ・ツー・バルブ蒸留(120~160℃/0.025mbar)により精製した。
【0078】
収量:12.91g(46mmol;98%)。これは、2種のジアステレオマーの混合物である。
【化18】
【0079】
c)3-(4-n-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタナールの製造
3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールの製造について記載された手順(例1c)を参照)を適合し、以下の化合物および量を使用した:
3-(4-ブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン酸ブチル(12.9g;46mmol);水素化ジイソブチルアルミニウム(1Mジクロロメタン溶液、55.2ml、55.2mmol)。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル15:1~10:1)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(80℃/0.035mbar)で精製した。これは、2種のジアステレオマーの混合物である。
収量:7.72g(純度92%;34mmol;74%)。
【化19】
【0080】
例9
3-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
a)1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)エチル)-4-イソブチルシクロヘキサン-1-オールの製造
アルゴン雰囲気下で、削状マグネシウム(2.45g、102mmol)のTHF(8ml)懸濁液に、2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキソラン(16.8g、93mmol)のTHF(75ml)溶液を徐々に滴下した。冷浴で発熱を40℃に維持した。周囲温度でさらに60分間撹拌した後、国際公開第9955811号に従って製造したケトン(9.4g、61mmol)のTHF(20ml)溶液を徐々に滴下した。周囲温度でさらに15時間後、反応混合物を、氷と飽和塩化アンモニウム溶液との混合物に注入し、2倍MTBEで抽出し、合一した有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液、次いでブラインで洗浄し、NaSOで脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去し、粗製アルコール16.6gを得て、これをさらに精製することなく次の工程でそのまま使用した。
1H-NMR:混合物から推定される主値δ0.85 (d, J = 6.7, 6H); 0.93-2.10 (m, 17H); 3.83-3.88 (m, 2H); 3.95-4.00 (m, 2H); 4.88 (t, J = 4.6, 1H) ppm.
13C-NMR: 混合物から推定される主値 δ22.9 (2q); 24.8 (d); 27.5 (t); 28.5 (2t); 34.8 (d); 37.0 (2t); 37.8 (t); 46.5 (t); 64.9 (2t); 70.3 (s); 104.9 (d) ppm.
【0081】
b)2-(2-(4-イソブチルシクロヘキサン-1-エン-1-イル)エチル-1,3-ジオキソランの製造
1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)エチル)-4-イソブチルシクロヘキサン-1-オール(15.0g、59mmol)をピリジン(80ml)に溶解し、溶液を0℃に冷却した。POCl(15.0g、98mmol)を徐々に滴下した。溶液を徐々に周囲温度まで加温し、さらに18時間撹拌した。次に、混合物を冷却し、注意深く氷に注入した後、MTBEで抽出し、有機相を飽和NaHCO溶液、次いで希硫酸(5%、2倍)、ブラインで慎重に洗浄し、NaSOで脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去し、アセタール11.2g、80%を得た。
【化20】
【0082】
c)3-(4-イソブチルシクロヘキサン-1-エン-1-イル)プロパナールの製造
粗製アセタール(11.9g、50mmol)をアセトン(200ml)と水(70ml)との混合物に溶解した後、HCl(高濃度、4ml)を徐々に添加し、溶液を4時間加熱還流した後、冷却した。溶液を飽和NaHCO溶液で希釈した後、2倍MTBEで抽出し、合一した有機相をブラインで洗浄し、NaSOで脱水して、濾過し、溶媒を真空で除去し、粗製アルデヒド13.0gを得た。蒸留(クーゲルロール、0.7mbar、110~150℃)によりさらに精製して、アルデヒド7.5gを得た。シクロヘキサン:EtOAc(99:1)を使用したクロマトグラフィー(SiO)によりさらに精製し、アルデヒドを得て、これを以前と同様に再蒸留して、純粋な3-(4-イソブチルシクロヘキサン-1-エン-1-イル)プロパナール2.75g、28%を得た。
【化21】
【0083】
例10
3-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナール(比較化合物)の合成
a)1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル)-4-イソブチルシクロヘキサン-1-オールの製造
温度を15~20℃に維持することにより、2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキサラン(20g、93mmol、D.J.Collins,A.M.James,Aust.J.Chem.1989,42,223)をMg(2.495g、103mmol)のTHF(100ml)懸濁液に滴下した。20℃でさらに2時間後、このグリニャールストック試薬は滴定によれば1.0Mであった。4-イソブチルシクロヘキサノン(6170mg、40mmol,A.R.Pinder,J.Chem.Soc.1956,1577;M.Julia,C.Descoins,Bull.Soc.Chim.Fr.1970,1805)のTHF(50ml)溶液を、温度を30℃未満に維持して、上記のグリニャール試薬(1.0M、40ml、40mmol)の溶液に滴下した。20℃で18時間後、反応混合物を冷飽和NHCl水溶液に注入した後、EtOで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、脱水して(NaSO)、濾過し、濃縮した後、CC/SiO(シクロヘキサン/AcOEtを9:1)で精製し、1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル)-4-イソブチルシクロヘキサン-1-オールを収率69%、立体異性体の55:45混合物として得た。
【化22】
【0084】
b)2-(1-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソランの製造
POCl(6.27g、40.9mmol)を1-(2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル)-4-イソブチルシクロヘキサン-1-オール(7.37g、27.3mmol)のピリジン(40ml)溶液に0℃で15分間滴下した。0℃で15分、さらに20℃で60分後、反応混合物を0℃に冷却し、氷/HO(50ml)の混合物、続いてEtO(100ml)を徐々に添加した。20℃で1時間後、反応混合物を分配した。水相をNaHCOの飽和水溶液、ブラインで中性になるまで洗浄し、脱水して(NaSO)、濃縮した後、CC/SiO(シクロヘキサン/AcOEtを98:2)で精製し、2-(1-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソランを収率79%で得た。
【化23】
【0085】
c)3-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールの製造
2-(1-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン(5.6g、21.1mmol)のTHF(50ml)溶液に10%HCl(5ml)を添加した。20℃で18時間後、反応混合物をEtO(50ml)で希釈し、NaHCOの飽和水溶液、次いでブラインで抽出した。有機相を脱水して(NaSO)、濃縮し、生じた油をCC/SiO(シクロヘキサン/AcOEtを97:3)で精製し、3-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールを収率48%で得た。あるいは、2-(1-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン-2-イル)-1,3-ジオキソラン(21.7g、80mmol)のアセトン(150ml)溶液に5%HCl(121ml)を15℃で5分間添加した。2時間還流させた後、冷反応混合物を飽和NaHCO水溶液で洗浄した。有機相をブラインで洗浄し、脱水して(NaSO)、濃縮し、CC/SiO(シクロヘキサン/AcOEtを99:1)で精製し、3-(4-イソブチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールを収率75%で得た。
【化24】
【0086】
例11
3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
a)8-n-ペンチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造
例1a)に記載された手順に従って、4-n-ペンチルシクロヘキサノール(50g;294mmol)を、ジアステレオマーの3:2混合物である8-n-ペンチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(5.3g;23mmol;8%)に変換した。
【0087】
バルブ・ツー・バルブ蒸留(150℃/0.1mbar)により精製した。
【化25】
【0088】
b)3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン酸ブチルの製造
例1b)に記載の手順に従って、8-n-ペンチル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(3.1g;13.8mmol)を3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパノエート(3.32g;11.8mmol;86%)に変換した。
【0089】
バルブ・ツー・バルブ蒸留(150℃/0.2mbar)により精製した。
【化26】
【0090】
c)3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールの製造
例1c)に記載の手順に従って、3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン酸ブチル(3.32g;10.2mmol)を3-(4-n-ペンチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(0.51g;2.5mmol;25%)に変換した。
【0091】
シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル99:1)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(125℃/1mbar)で精製した。
【化27】
【0092】
例12
3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(比較化合物)の合成
a)8-n-ヘキシル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造
例1a)に記載された手順に従って、4-n-ヘキシルシクロヘキサノール(42g;228mmol)を、ジアステレオマーの3:2混合物である8-n-ヘキシル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(6.8g;29mmol;13%)に変換した。
【0093】
バルブ・ツー・バルブ蒸留(150℃/0.1mbar)により精製した。
【化28】
【0094】
b)3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン酸ブチルの製造
例1b)に記載の手順に従って、8-n-ヘキシル-1-オキサスピロ[4.5]デカン-2-オン(2.47g;10.4mmol)を3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパノエート(1.82g;6.2mmol;59%)に変換した。
【0095】
バルブ・ツー・バルブ蒸留(130℃/0.2mbar)により精製した。
【化29】
【0096】
c)化合物3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールの製造
例1c)に記載の手順に従って、3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパン酸ブチル(1.5g;5.1mmol)を3-(4-n-ヘキシルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(0.6g;2.7mmol;53%)に変換した。
【0097】
シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル97:3)、続いてバルブ・ツー・バルブ蒸留(125℃/1mbar)で精製した。
【化30】
【0098】
例13
芳香組成物の製造
以下の成分を混合することにより、液体洗剤用の芳香組成物を製造した:
【表2-1】
【表2-2】
【0099】
上記の組成物に100重量部の3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール)を添加すると、コリアンダーの性質も備えるクリーミーで花弁様のマンダリンノートが上記組成物に付与されると同時に、組成物に清涼感を与えた。組成物は量感を増し、非常に強力になる。3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールは、(+-)-2-メチルウンデカナールなどの清浄なアルデヒド要素と、また(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(E)-3,7-ジメチル-2,6-オクテン-1-オール、および組成物のLilyfloreなどのフローラル要素と混合すると特に良好である。
【0100】
本発明の化合物の代わりに、同量のMugoxal(登録商標)(3-(4-tert-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール;製造元:Firmenich SA,Geneva,Switzerland)を使用した場合、組成物は、フローラル/スズランの印象を増すと同時に、柑橘類の側面をもつが、クリーミー、花弁様、マンダリン、およびコリアンダーのノートは含まない。さらに、上記の組成物は強度が低い。
【0101】
本発明の化合物の代わりに、同量のStarfleur(登録商標)(3-[4-(2-メチルプロピル)シクロヘキシル]プロパナール;製造元:International Flavors & Fragrances,USA)を使用した場合、結果が全く異なり、組成物はアルデヒド、シトロネラノートを獲得した。上記の組成物は、メタリックでほこり様のノートを備え、強度は弱く、清浄さが少なかった。
【0102】
本発明の化合物の代わりに、同量の3-(4-イソブチルシクロヘキシル)-2-メチルプロパナールを使用した場合、組成物はアルデヒドノートのみを獲得した。上記の組成物は最も弱い。
【0103】
本発明の化合物の代わりに、同量の3-(4-n-ブチルシクロヘキシル)プロパナールを使用した場合、組成物はよりファッティかつメタリックで、わずかに動物糞臭になる。
【0104】
3-(4-n-ブチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナールを含む組成物が最も強力である。上記の組成物は24時間後も引き続き最も強く、トップノートの効果が持続する。
【0105】
例14
本発明の化合物を含む液体洗剤の製造
【表3】
【0106】
液体洗剤は、液体洗剤の総重量に対して1.5重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表2の無香性液体洗剤配合物に添加することにより製造した。
【0107】
例15
本発明の化合物を含む布用柔軟剤の製造
【表4】
【0108】
柔軟剤は、65℃で加熱したメチルビス[エチル(牛脂脂肪酸)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硫酸メチルを秤量することにより製造した。次に、水と1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンを反応器に入れ、撹拌しながら65℃で加熱した。上記の混合物に、メチルビス[エチル(牛脂脂肪酸)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硫酸メチルを添加した。混合物を15分間撹拌し、CaClを添加した。柔軟剤の総重量に対して0.5~2重量%の例13の本発明の組成物を添加した。混合物を15分間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却した(粘度測定:結果35+/-5mPas(剪断速度106秒-1))。
【0109】
例16
本発明の組成物を含む透明な等張性シャンプーの製造
【表5】
【0110】
シャンプーは、ポリクオタニウム-10を水に分散させることにより製造した。相Aの残りの成分をその各添加後に十分に混合しながら順々に添加することにより別々に混合した。この予混合物をポリクオタニウム-10分散液に添加し、さらに5分間混合した。次に、予混合した相Bおよび予混合した相Cを撹拌しながら添加した(Monomuls 90L-12を加熱して、Texapon NSO ISに溶解した)。相Dおよび相Eを撹拌しながら添加した。pH:5.5~6.0になるまでクエン酸溶液でpHを調整し、無香性シャンプー配合物にした。
【0111】
香料入りシャンプーは、シャンプーの総重量に対して0.4~0.8重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表4の無香性シャンプー配合物に添加することにより製造した。
【0112】
例17
本発明の組成物を含む構造化シャワージェルの製造
【表6】
【0113】
このシャワージェルは、シャワージェルの総重量に対して0.5~1.5重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表5の無香性シャワージェル配合物に添加することにより製造した。
【0114】
例18
本発明の組成物を含む透明シャワージェルの製造
【表7】
【0115】
透明シャワージェルは、シャワージェルの総重量に対して0.5~1.5重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表6の無香性シャワージェル配合物に添加することにより製造した。
【0116】
例19
本発明の組成物を含む乳状シャワージェルの製造
【表8】
【0117】
透明シャワージェルは、シャワージェルの総重量に対して0.5~1.5重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表7の無香性シャワージェル配合物に添加することにより製造した。
【0118】
例20
本発明の組成物を含む光沢のあるシャンプーの製造
【表9-1】
【表9-2】
【0119】
このシャンプーは、水とEDTA四ナトリウム塩、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとポリクオタニウム-10に分散させて製造した。相Aが均質になったら、NaOH 10%溶液(相B)を添加した。次に、予混合した相Cを添加し、混合物を75℃に加熱した。相Dの成分を加え、均質になるまで混合した。混合物を冷却した。45℃で、相Eの成分を混合しながら添加した。25%NaCl溶液で最終粘度を調整し、10%NaOH溶液でpHを5.5~6に調整した。
【0120】
香料入りの光沢のあるシャンプーは、シャンプーの総重量に対して0.4~0.8重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表8の無香性シャンプー配合物に添加することにより製造した。
【0121】
例21
本発明の組成物を含む構造化シャワージェルの製造
【表10】
【0122】
この透明シャワージェルは、シャワージェルの総重量に対して0.5~1.5重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながら表9の無香性シャワージェル配合物に添加することにより製造した。
【0123】
例22
本発明の化合物を含むオードトワレの製造
オードトワレは、オードトワレ総重量に対して5~20重量%の例13の本発明の組成物を、穏やかに振盪しながらエタノールに添加することにより製造した。