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特許7223013クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体、共重合体を含む組成物、組成物の加硫成形体、及び加硫成形体の用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体、共重合体を含む組成物、組成物の加硫成形体、及び加硫成形体の用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/18 20060101AFI20230208BHJP
   C08F 220/42 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 11/00 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C08F236/18
C08F220/42
C08L11/00
C08L9/00
C08L23/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540160
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029420
(87)【国際公開番号】W WO2020044899
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2018162988
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄平
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
(72)【発明者】
【氏名】會澤 卓
(72)【発明者】
【氏名】大貫 俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 光佑
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117356(JP,A)
【文献】特開昭50-045082(JP,A)
【文献】国際公開第2004/009647(WO,A1)
【文献】特開2015-166475(JP,A)
【文献】特開昭60-001206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 236/18
C08F 220/42
C08L 11/00
C08L 9/00
C08L 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーニー粘度ML(1+4)100℃が20~80であり、下記一般式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有する、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体であって、
【化1】

【化2】

(一般式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
前記不飽和ニトリル化合物の結合量が1.0~18.0質量%であり、分子量分布が1.5~5.0である、共重合体。
【請求項2】
統計的共重合体である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
下記サンプル作製条件(I)に準じて作製したゴム組成物を、JIS K6300に準拠し測定した125℃のスコーチタイムt5が15分以上である、請求項1又は2に記載の共重合体。
サンプル作製条件(I):
共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、酸化マグネシウム4質量部、カーボンブラック(SRF)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、酸化亜鉛5質量部、エチレンチオウレア1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。
【請求項4】
下記サンプル作製条件(II)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、
JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWが15%未満であり、
JIS K6262に準拠して測定した130℃の圧縮永久ひずみが20%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体。
サンプル作製条件(II):
共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、酸化マグネシウム4質量部、カーボンブラック(SRF)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、酸化亜鉛5質量部、エチレンチオウレア1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。得られたゴム組成物をJIS K6250に基づき、電熱プレスを用いて170℃、20分間熱処理を行い、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製する。
【請求項5】
前記R が、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の共重合体を含む組成物。
【請求項7】
加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、老化防止剤、又はシランカップリング剤を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物を用いた加硫成形体。
【請求項10】
JIS K6251に準拠して測定した破断強度が20MPa以上であり、
JIS K6251に準拠して測定した破断伸びが300%超であり、
JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWが15%未満であり、
JIS K6262に準拠して測定した130℃の圧縮永久ひずみが20%以下である、請求項9に記載の加硫成形体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の加硫成形体を用いた、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール、パッキン、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム、スポンジ製品、ゴムライニング又は空気バネ。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の共重合体を得るための製造方法であり、
クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の合計100質量部に対し、下記一般式(3)又は(4)で表される連鎖移動剤を添加して、重合開始時における全単量体と前記連鎖移動剤との物質量の比[M]/[CTA]を5/1~2000/1とした溶液(A)と、乳化剤0.1~10質量%の水溶液(B)100~5000質量部と、を混合し乳化した後、ラジカル重合を行い、重合率5~50%に到達した時に、クロロプレン単量体単独、又はクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の混合物50~5000質量部を追添加する、共重合体の製造方法。
【化3】

【化4】

(一般式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。一般式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体、共重合体を含む組成物、組成物の加硫成形体、及び加硫成形体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、難燃性などに優れることから様々な用途に用いられている汎用ゴムである。ポリクロロプレンの分子量は、メルカプタン類及びキサントゲンジスルフィド類などの連鎖移動剤を変量することで調節されている。しかしながら、クロロプレンゴムはラジカル乳化重合により製造されることから、使用可能な連鎖移動剤が限定され、ゴム物性に大きく影響する末端官能基を容易に変更できなかった。近年、リビングラジカル重合の一つであるRAFT重合による制御が注目されており、クロロプレンゴムの製造においても、適用可能であることが見出されている(例えば、特許文献1~3及び非特許文献1、2参照)。これらの文献には、末端構造についても制御可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-508409号公報
【文献】特開2007-297502号公報
【文献】特開2004-115517号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Polymer Chemistry, 2013, 4, 2272.
【文献】RSC Advance, 2014, 4, 55529.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献において、分子量分布の狭いポリマーの合成には成功しているものの、得られるポリマーは数平均分子量が小さく、工業的な応用に耐えうる十分な分子量を有しておらず、乳化系及び重合条件についても工業的に実現性に乏しいという問題があった。さらにRAFT重合によるクロロプレンゴムに限らず、広く一般的なクロロプレンゴムに関する技術においても、工業的に利用可能な十分なムーニー粘度を有するクロロプレン系共重合体が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、工業的に利用可能であり十分なムーニー粘度を有する、クロロプレンと不飽和ニトリル化合物の共重合体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が20~80であり、下記一般式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有する、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体を提供する。
【化1】
【化2】
(一般式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
前記共重合体は、統計的共重合体であってもよい。
前記共重合体は、
下記サンプル作製条件(I)に準じて作製したゴム組成物を、JIS K6300に準拠し測定した125℃のスコーチタイムt5が15分以上である共重合体であってもよい。
サンプル作製条件(I):
共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、酸化マグネシウム4質量部、カーボンブラック(SRF)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、酸化亜鉛5質量部、エチレンチオウレア1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。
前記共重合体は、
下記サンプル作製条件(II)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、
JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWが15%未満であり、
JIS K6262に準拠して測定した130℃の圧縮永久ひずみが20%以下である、共重合体であってもよい。
サンプル作製条件(II):
共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、酸化マグネシウム4質量部、カーボンブラック(SRF)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、酸化亜鉛5質量部、エチレンチオウレア1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。得られたゴム組成物をJIS K6250に基づき、電熱プレスを用いて170℃、20分間熱処理を行い、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製する。
前記共重合体は、前記不飽和ニトリル化合物の結合量が1.0~18.0質量%であってもよい。
本発明は、前記共重合体を含む組成物を提供する。
前記組成物は、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、老化防止剤、又はシランカップリング剤を含んでもよい。
前記組成物は、更に、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
本発明は、前記組成物を用いた加硫成形体を提供する。
前記加硫成形体は、
JIS K6251に準拠して測定した破断強度が20MPa以上であり、
JIS K6251に準拠して測定した破断伸びが300%超であり、
JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWが15%未満であり、
JIS K6262に準拠して測定した130℃の圧縮永久ひずみが20%以下であってもよい。
本発明は、前記加硫成形体を用いた、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール、パッキン、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム、スポンジ製品、ゴムライニング又は空気バネを提供する。
本発明は、前記共重合体を得るための製造方法であり、
クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の合計100質量部に対し、下記一般式(3)又は(4)で表される連鎖移動剤を添加して、重合開始時における全単量体と前記連鎖移動剤との物質量の比[M]/[CTA]を5/1~2000/1とした溶液(A)と、乳化剤0.1~10質量%の水溶液(B)100~5000質量部と、を混合し乳化した後、ラジカル重合を行い、重合率5~50%に到達した時に、クロロプレン単量体単独、又はクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の混合物50~5000質量部を追添加する、共重合体の製造方法を提供する。
【化3】
【化4】
(一般式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。一般式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工業的に利用可能であり十分なムーニー粘度を有する、クロロプレンと不飽和ニトリル化合物の共重合体が提供される。また、当該共重合体を用いることで、スコーチタイムが実用上十分に長いゴム組成物が得られうる。また、当該共重合体を用いることで、耐油性とゴム物性に優れる加硫成形体が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のH-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体(以下、単に「共重合体」と呼ぶことがある。)は、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が20~80であり、下記一般式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有する共重合体である。
【化5】
【化6】
【0012】
上記一般式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。
【0013】
クロロプレン単量体とは、2-クロロ-1,3-ブタジエンである。なお、市販品の2-クロロ-1,3-ブタジエンには不純物として少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンが含まれる場合がある。このような少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンを含む2-クロロ-1,3-ブタジエンを、本実施形態のクロロプレン単量体として用いることも可能である。
【0014】
不飽和ニトリル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、製造容易性及び耐油性の観点からアクリロニトリルが好ましい。
【0015】
本実施形態に係るクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体は、統計的共重合体であることがより好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表される構造の官能基は、下記一般式(3)で表される連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合を行うことで本実施形態の共重合体に導入される。上記一般式(2)で表される構造の官能基は、下記一般式(4)で表される連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合を行うことで本実施形態の共重合体に導入される。この場合、上記一般式(2)で表される構造の官能基に下記一般式(4)中のR又はRのいずれか一方の基が結合している場合と、R及びRの基がいずれも結合しない場合と、がある。これらは下記一般式(4)中のR又はRの基の種類により異なる。
【0017】
【化7】
【化8】
【0018】
上記一般式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示し、上記一般式(1)のRとして重合体鎖に導入される置換基である。一般式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。
【0019】
上記一般式(3)で表される連鎖移動剤は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えばジチオカルバメート類、ジチオエステル類が挙げられる。これらの中でも、重合制御性に優れることから、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル1-ピロールジチオカルバメート)、1-ベンジル-N,N-ジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート(慣用名:1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート(慣用名:ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート)、ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート(慣用名:ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、ベンジルジチオエート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセテート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート、tert-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、tert-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル-4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエートが好ましい。
【0020】
上記一般式(4)で表される連鎖移動剤は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えば、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2’-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(tert-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナートなどのトリチオカルボナート類が挙げられる。
【0021】
用いられた連鎖移動剤の一部構造が官能基として重合体に導入されることは、一般的なRAFT重合に関する文献(Aust.J.Chem.2009,62,1402-1472)により明らかである。また、本実施形態の共重合体中における上記官能基の存在は、任意の方法で確認でき、例えばH-NMR法又は13C-NMR法により確認できる。H-NMR法によって官能基を検出することが困難である場合は、より検出感度の高い13C-NMR法(J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,2009,47,3118-3130など)を用いることができ、十分な積算回数の13C-NMR法によって官能基の存在を確認することが可能である。つまり、炭素13をエンリッチした一般式(3)又は(4)で表される連鎖移動剤を用いて得られた共重合体について、同様の測定を行うことで当業者らは上記一般式で表される官能基の存在を確認できる。
【0022】
本実施形態の共重合体の数平均分子量Mnは、好ましくは5~30万であり、より好ましくは8~15万であり、さらに好ましくは8~14万であり、特に好ましくは10~14万である。数平均分子量Mnが5万以上の共重合体は、工業的に実用可能な力学物性を十分に発現する。また、数平均分子量Mnが30万以下の共重合体は、混練性及び成形加工性が良好であり、当該共重合体を用いた加硫ゴムの合成をより容易に行うことが可能である。
【0023】
本実施形態の共重合体は、重量平均分子量Mwと上記数平均分子量Mnとの比である分子量分布Mw/Mnが好ましくは1.5~5.0であり、より好ましくは2.0~5.0である。分子量分布Mw/Mnが1.5以上であると工業的応用に好適である。一方、分子量分布Mw/Mnを5.0超に調整することは技術的に困難である。
【0024】
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値であり、測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載の通りである。
【0025】
本実施形態の共重合体は、本実施形態の効果を阻害しない範囲で、クロロプレン単量体又は不飽和ニトリル化合物と共重合可能な単量体をさらに含有することも可能である。そのような単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルなどのアクリル酸のエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸のエステル類、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート類、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレンなどが挙げられる。本実施形態の共重合体において、クロロプレン単量体又は不飽和ニトリル化合物と共重合可能な単量体としては、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、及び芳香族ビニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及び/又は芳香族ビニル化合物がより好ましく、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及び/又はスチレンが更に好ましい。
【0026】
本明細書において共重合体とは好ましくは統計的共重合体である。「統計的共重合体」は、J.C.Randall「POLYMER SEQUENCE DETERMINATION,Carbon-13 NMR Method」Academic Press,NewYork,1977,71-78ページに記述されているように、ベルヌーイの統計モデルにより、又は一次又は二次のマルコフの統計モデルにより、単量体連鎖分布が記述できる共重合体であることを意味する。また本実施形態のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物とを含む統計的共重合体は、特に限定されるものではないが、2元系の単量体から構成される場合、下記Mayo-Lewis式(I)において、クロロプレン単量体をM1とした時の反応性比r1、r2について、r1は0.3~3000の範囲、r2は10-5~3.0の範囲をとることができる。さらに別な観点からは、本明細書において「統計的共重合体」とは、複数種の単量体を用いラジカル重合により得られる共重合体である。本「統計的共重合体」は、実質的にランダムな共重合体を包含する概念である。
【0027】
【数1】
【0028】
また、本実施形態の共重合体は、後述するように、ゴム製造プロセス上の優位性を示すことができる。
【0029】
下記サンプル作製条件(I)に準じて作製した、本実施形態の共重合体を含むゴム組成物を、JIS K6300に準拠し測定した125℃のスコーチタイムt5は、好ましくは15分以上であり、より好ましくは17分以上であり、更に好ましくは18分以上である。また、上記スコーチタイムt5は、好ましくは20分以下である。スコーチタイムt5を15分以上とすることで、加硫温度及び添加剤による加硫速度の調整が容易となり、生産性及び架橋構造の両面の改善が可能となる。スコーチタイムt5を20分以下とすることで、ゴム製造の効率性をより上げることができる。
【0030】
サンプル作製条件(I):
本実施形態の共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製ノクラックCD)2質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョーワマグ#150)4質量部、カーボンブラック(SRF;旭カーボーン社製旭#50)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製アデカサイザーRS-735)5質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(川口化学社製アクセル22S)1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。
【0031】
本実施形態の共重合体における不飽和ニトリル化合物の結合量(含有量)は好ましくは、1.0~18.0質量%である。1.0質量%以上であることで、本実施形態の共重合体を含むゴム又は当該ゴムを含む組成物を加硫(架橋)した場合に、耐油性を向上させることができる。18.0質量%以下であることで、本実施形態の共重合体を含むゴム又は当該ゴムを含む組成物を加硫(架橋)した場合に、良好な高温ゴム物性(高温圧縮永久ひずみ)及び低温ゴム物性(低温圧縮永久ひずみ)を示すことができる。
【0032】
また、下記サンプル作製条件(II)に準じて作製した、本実施形態の共重合体を含む加硫ゴムを評価した時、JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWは15%未満であり、JIS K6262に準拠して測定した130℃の圧縮永久ひずみは20%以下である。
【0033】
サンプル作製条件(II):
本実施形態の共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製ノクラックCD)2質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョーワマグ#150)4質量部、カーボンブラック(SRF;旭カーボーン社製旭#50)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製アデカサイザーRS-735)5質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(川口化学社製アクセル22S)1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。得られたゴム組成物をJIS K6250に基づき、電熱プレスを用いて、170℃、20分間熱処理を行い、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製する。
【0034】
本実施形態の共重合体における不飽和ニトリル化合物の結合量(含有量)は更に好ましくは、5.0~14.0質量%である。5.0質量%以上であることで、本実施形態の共重合体を含むゴム又は当該ゴムを含む組成物を加硫(架橋)した場合に、更に優れた耐油性を示すことができる。14.0質量%以下であることで、本実施形態の共重合体を含むゴム又は当該ゴムを含む組成物を加硫(架橋)した場合に、更に優れた高温ゴム物性(高温圧縮永久ひずみ)及び低温ゴム物性(低温圧縮永久ひずみ)を示すことができる。
【0035】
本実施形態の共重合体は、以下の製造方法で製造することが可能である。
すなわち、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の合計100質量部に対し、上記一般式(3)又は(4)で表される連鎖移動剤を添加して、重合開始時における全単量体と前記連鎖移動剤との物質量の比[M]/[CTA]を5/1~2000/1とした溶液(A)と、乳化剤0.1~10質量%の水溶液(B)100~5000質量部と、を混合し乳化した後、ラジカル重合を行い、重合率5~50%に到達した時に、クロロプレン単量体単独、又はクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の混合物50~5000質量部を追添加する。
【0036】
重合開始時における全単量体の物質量[M]と連鎖移動剤の物質量[CTA]とが[M]/[CTA]=5/1~2000/1の割合となるように調整することで、分子量を大きくした際の重合制御性を高めることができる。モノマー比率が5/1より低いと、乳化液とした際に連鎖移動剤が分離して分子量分布を制御できず、2000/1より高いと熱重合によりクロロプレンがフリーラジカル重合してしまい、十分なリビング性が得られない。[M]/[CTA]の値は、好ましくは100/1~500/1である。
【0037】
初期に添加した単量体の重合率が5~50%に到達した時点で、所望の分子量にあわせて単量体を追添加する。5%未満では、重合中に新たにミセルが形成されることでフリーラジカル重合が進行する恐れがあり、50%超ではモノマー油滴が一旦消失することから、継続的なモノマー供給が途絶え、副反応が進行する恐れがある。
【0038】
初期に添加した単量体の重合率については、乳化液の比重から決定できる。すなわち、予め同条件で重合し、3点以上のサンプリングを行い、固形分濃度と比重を測定することで、重合率と比重の検量線を作成できる。
【0039】
単量体を追添加する際には、単量体の熱重合を防ぐために単量体を冷却することが好ましい。追添加の手段は特に限定されず、ポンプなどを用いて直接系中へ添加すればよい。
【0040】
上記一般式(1)に示す末端構造を分子の中に1つ以上導入するため、連鎖移動剤として、公知のRAFT剤を使用することができる。これらRAFT剤については、特表2000-515181号公報及び特表2002-508409号公報などに記載されている。
【0041】
上記RAFT剤は、好ましくは上記一般式(3)に示す化合物であり、より好ましくは、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジルピロールジチオカルバメート)、1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート、3-クロロ-2-ブテニルピロールジチオカルバメート、1H-ピロール-1-カルボジチオ酸-フェニレンビスメチレンエステル、ベンジルジチオベンゾエートである。更に好ましくは、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジルピロールジチオカルバメート)である。
【0042】
上記一般式(2)に示す末端構造を分子の中に1つ以上導入するためには、連鎖移動剤として、上記一般式(4)に示す化合物を使用すればよい。具体的には、ベンジルブチルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナートなどが挙げられる。これらの中でも、ベンジルブチルトリチオカルボナート又はジベンジルトリチオカルボナートが好ましい。
【0043】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定するものではなく、過硫酸塩、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アゾ系化合物などを用いることができるが、10時間半減期温度が70℃以下であることが望ましい。開始剤の10時間半減期温度が70℃以下であると、重合初期に十分なラジカルを生成して、重合制御性を向上させることが可能である。
【0044】
乳化重合で使用する乳化剤は、特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点からアニオン系又はノニオン系の乳化剤が好ましい。特に重合終了後の凍結凝固乾燥により得られるフィルム状の本実施形態に係る共重合体に、適当な強度を持たせて過度の収縮及び破損を防ぐことができるという理由から、ロジン酸アルカリ金属塩を使用することが好ましい。ロジン酸は、樹脂酸、脂肪酸などの混合物である。樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロイソピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などが含まれる。脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸などが含まれる。これらの成分組成は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンに分類されるロジン採取方法の違い、松の産地及び樹種、蒸留精製、不均化(不均斉化)反応によって変化するものであり、本実施形態では特に限定されない。乳化安定性及び取り扱いやすさを考慮すると、乳化剤はロジン酸ナトリウム塩又はロジン酸カリウム塩が好ましい。
【0045】
水溶液(B)の乳化剤の濃度は0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。0.1質量%より濃度が低いと、十分に単量体を乳化することができず、10質量%を超えると本実施形態の共重合体を固形にする際、うまく析出させることができない恐れがある。
【0046】
乳化剤0.1~10質量%の水溶液(B)の添加量については、重合開始時における全単量体100質量部に対して500~5000質量部であり、より好ましくは600~4000質量部である。水溶液(B)の添加量は、最終的なラテックスの安定性を考慮し、追添加する単量体を含めた全単量体100質量部に対して、100~200質量部とすることが好ましい。
【0047】
重合温度は、10~50℃が好ましい。重合温度を10℃以上とすることで、乳化液の増粘及び開始剤の効率を向上させることができる。また、クロロプレンの沸点が約59℃であることから、重合温度を50℃以下とすることで、異常重合などにより発熱した場合であっても除熱が追いつかずに反応液が突沸する事態を回避することができる。リビング性についても、50℃以下とすることで、連鎖移動剤の加水分解の影響及び単量体の蒸発を考慮する必要がなくなるという利点がある。
【0048】
重合反応における最終重合率は、副反応を防ぐ観点からは80%以下が好ましい。生産性の観点からは50~75%がより好ましい。50%以上とすることで、分子量が大きく十分な物性を有する共重合体が得られる。
【0049】
最終重合率を調整するためには、所望する重合率になった時に、重合反応を停止させる重合禁止剤を添加して重合を停止させればよい。
【0050】
重合禁止剤としては、通常用いられる禁止剤を用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、油溶性の重合禁止剤であるチオジフェニルアミン、4-ターシャリーブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール、及び水溶性の重合禁止剤であるジエチルヒドロキシルアミンなどがある。
【0051】
未反応の単量体は、例えば、スチームストリッピング法によって除去することができる。その後、pHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥などの工程を経て本実施形態の共重合体が得られる。
【0052】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上述したクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体を含む。本実施形態のゴム組成物は、架橋又は加硫することにより架橋ゴム又は加硫ゴムの製造に用いられる。本実施形態のゴム組成物は、好適には加硫ゴムの製造に用いられる。
【0053】
本実施形態のゴム組成物において、上記共重合体以外の原料は特に限定されず、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。ゴム組成物に含有されうる原料としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、老化防止剤、及びシランカップリング剤などが挙げられる。
【0054】
添加可能な加硫剤としては、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる硫黄、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系の有機加硫剤が使用できるが、チオウレア系のものが好ましい。チオウレア系の加硫剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレアなどが挙げられ、特にトリメチルチオウレア、エチレンチオウレアが好ましい。また、3-メチルチアゾリジンチオン-2-チアゾールとフェニレンジマレイミドとの混合物、ジメチルアンモニウムハイドロジエンイソフタレート、及び1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体などの加硫剤も使用することができる。これらの加硫剤は、上記に挙げたものを2種以上併用してもよい。また、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれら金属の酸化物又は水酸化物を加硫剤として使用することができる。これら添加可能な加硫剤の中でも、特に、酸化カルシウム、酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン及び酸化マグネシウムは、加硫効果が高いため好ましい。これらの加硫剤は2種以上を併用してもよい。加硫剤の含有量は、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.1~10質量部であることが好ましい。
【0055】
加硫促進剤としては、例えば、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の含有量は、例えば、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.2~5.0質量部とすることができる。
【0056】
充填剤及び補強剤は、ゴムの硬さを調整したり機械的強度を向上したりするために添加するものであり、特に限定はされないが、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。その他の無機充填剤として、特に限定はされないが、γ-アルミナ及びα-アルミナなどのアルミナ(Al)、ベーマイト及びダイアスポアなどのアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト及びバイヤライトなどの水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HOなど)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiOなど)、ケイ酸カルシウム(CaSiOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiOなど)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などを使用してもよい。充填剤及び補強剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。これら充填剤及び補強剤の配合量は、ゴム組成物及び当該ゴム組成物から得られる架橋ゴム又は加硫ゴムに求められる物性に応じて調整すればよく、特に限定するものではない。充填剤及び補強剤の含有量は、例えば、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で15~200質量部とすることができる。
【0057】
可塑剤は、ゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば菜種油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系可塑剤などがある。ゴム組成物及び当該ゴム組成物から得られる架橋ゴム又は加硫ゴムに要求される特性に合わせて、上記可塑剤を1種又は複数種使用することができる。可塑剤の含有量は、例えば、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で5~50質量部とすることができる。
【0058】
ゴム組成物を混練したり加硫成形したりする際に、ロール、成形金型及び押出機のスクリューなどから剥離しやすくするなど、加工特性及び表面滑性を向上させるために、ゴム組成物に加工助剤又は滑剤を添加することができる。加工助剤及び滑剤としては、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、ポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミドなどが挙げられる。加工助剤及び滑剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。加工助剤及び滑剤の含有量は、例えば、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.5~5質量部とすることができる。
【0059】
耐熱性を向上させる老化防止剤として、通常のゴム用途に使用されている、ラジカルを捕捉して自動酸化を防止する一次老化防止剤と、ハイドロパーオキサイドを無害化する二次老化防止剤を添加することができる。これらの老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、それぞれ0.1~10質量部とすることができ、好ましくは2~5質量部である。これらの老化防止剤は単独使用のみならず2種以上を併用することも可能である。一次老化防止剤の例としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを挙げることができる。二次老化防止剤の例としては、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤の具体的な例としては、特に限定するものではないが、N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4´-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4´-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、7-オクタデシル-3-(4´-ヒドロキシ-3´,5´-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3´,5´-ジ-tert-ブチル-4´-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N´-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナアミド、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホネート-ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ-及びジ-ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルフォスファイト-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4´-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチル-ジ-トリデシルフォスファイト)、2,2´-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4´-イソプロピリデン-ジフェノールアルキル(C12~C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジフォスファイト及び水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイト・ポリマーなどが挙げられる。
【0060】
上記共重合体などのゴム成分と充填剤及び補強剤との接着性を高め、機械的強度を向上させるために、さらにシランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤はゴム組成物を混練する際に加えても、充填剤又は補強剤を予め表面処理する形で加えてもどちらでもよい。シランカップリング剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。特に限定するものではないが、シランカップリング剤としては、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリメトキシンリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリンドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが挙げられる。
【0061】
本実施形態のゴム組成物は、他に天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種の生ゴム(未架橋又は未加硫ゴム)を含んでもよい。本実施形態のゴム組成物は、加硫することで加硫ゴムとして実用に供することが好ましい。加硫は、公知の方法が適用できるが、チオウレア系加硫剤を用い、加硫温度は120~230℃で行うことが一般的である。
【0062】
本実施形態のゴム組成物は、従来のラジカル重合方法で得られる共重合体を含むゴム組成物と比較し、スコーチタイムが長く、ゴムとしての良好な成形加工性を有する。具体的には、上記サンプル作製条件(I)に準じて作製された、上記クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体を含むゴム組成物を、JIS K6300に準拠して測定した125℃のスコーチタイムt5が、15分以上である。
【0063】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、上記共重合体を含むゴム組成物を加硫することにより製造される。本実施形態の加硫成形体は、上記共重合体を用いるため、成形加工性が良好でかつ、耐油性、高温ゴム物性(高温圧縮永久ひずみ)、低温ゴム物性(低温圧縮永久ひずみ)及び機械的強度(破断強度及び破断伸び)に優れるという特徴を合わせ有することができる。加硫温度は、組成に合わせて適宜設定されればよいが、例えば130~230℃である。加硫時間も組成及び形状によって適宜設定されればよいが、例えば10~90分である。成形方法も特に限定されず、プレス成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形などの公知の方法が用いられうる。また、本実施形態の加硫成形体を製造する工程において、必要に応じて150~200℃で二次加硫を行ってもよい。二次加硫によって加硫成形体の圧縮永久ひずみを改良することができる。
【0064】
本実施形態の加硫成形体に用いられるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体において、不飽和ニトリル化合物の含有量(結合量)は、好ましくは1.0~18.0質量%であり、より好ましくは5.0~14.0質量%である。
【0065】
本実施形態の加硫成形体は、従来のラジカル重合方法で得られる共重合体を含む組成物を使用した加硫成形体と比較して、良好な高温ゴム物性(すなわち低い高温圧縮永久ひずみ)を有する。具体的には、上記サンプル作製条件(II)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、JIS K6262に準拠して測定した130℃、72時間後の圧縮永久ひずみを20%以下とすることができる。
【0066】
また、本実施形態の加硫成形体は、耐油性に優れる。すなわち、本実施形態の加硫成形体は、JIS K6258に準拠してIRM903オイルを用いて測定した重量変化率ΔWを15%未満とすることが可能である。また、本実施形態の加硫成形体は、低温ゴム物性に優れる。すなすち、本実施形態の加硫成形体は、JIS K6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久ひずみを25%以下とすることができる。また、本実施形態の加硫成形体は、機械的強度(破断強度及び破断伸び)に優れる。すなわち、本実施形態の加硫成形体は、JIS K6251に準拠して測定した破断強度が好ましくは20MPa以上であり、破断伸びが好ましくは300%超である。
【0067】
本実施形態の加硫成形体は、不飽和ニトリル化合物の含有量(結合量)が5.0~14.0質量%であるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の統計的共重合体を含む加硫成形体であることが特に好ましい。当該加硫成形体は、上記の優れた高温ゴム物性、耐油性及び機械的強度を有すると共に、さらに、JIS K6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久ひずみが20%以下であるという特に優れた低温ゴム物性も合わせ有することができる。また、当該加硫成形体は、ゲーマン捻り試験(T10)で-15℃以下という特に優れた低温ゴム物性を示すことができる。
【0068】
一般的に、ゴム組成物はスコーチタイムが長くなると加硫の遅延を生じるため、加硫密度が低くなることがある。また、一般的に、加硫密度が低い加硫成形体は圧縮永久ひずみが大きくなる。したがって、スコーチタイムが長く、加硫の遅延を生じるゴム組成物を用いて製造される加硫成形体は、加硫密度が低くなり圧縮永久ひずみが大きくなる傾向にある。しかしながら、本実施形態の加硫成形体は、スコーチタイムが長いゴム組成物が用いられているにも関わらず、低温下及び高温下での圧縮永久ひずみが小さいという優れた効果を奏する。
【0069】
上記加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール、パッキン、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム、スポンジ製品、ゴムライニング及び空気バネに好適に用いられる。上記加硫成形体を含むこれらの製品の製造方法は、上記加硫成形体を配合しさえすれば特に限定されない。
【0070】
(伝動ベルト及びコンベアベルト)
伝動ベルト及びコンベアベルトとしては、具体的には、平ベルト、コンベアベルト、タイミングベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルトなどがある。本実施形態の加硫成形体は、伝動ベルト及びコンベアベルトの機械的強度と耐油性と耐屈曲疲労性を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった飛散した油にさらされる環境でも使用できるベルトを製造することができる。
【0071】
(ホース)
ホースは、屈曲可能な管であり、具体的には、送水用、送油用、送気用、蒸気用、油圧用高・低圧ホースなどがある。本実施形態の加硫成形体は、ホースの機械的強度と耐油性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった直接非極性流体と接するホースを製造することができる。
【0072】
(ワイパー)
ワイパーは、具体的には、自動車、電車、航空機、船舶、建設機械などのフロントガラス、リアガラスなどに用いられる。本実施形態の加硫成形体は、ワイパーの機械的強度と耐油性と耐久疲労性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることができる。これにより、従来の材料では困難であった油汚れが多い環境下でも使用できるワイパーを製造することが可能である。
【0073】
(シール及びパッキン)
シールは、機械や装置において、液体及び気体の漏れ、雨水及び埃などのごみ及び異物が内部に侵入するのを防ぐ部品であり、具体的には、固定用途に使われるガスケットと、運動部分又は可動部分に使用されるパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種材料が使用される。また、パッキンは、ポンプ又はモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。本実施形態の加硫成形体は、シールの機械的強度と耐油性を高めることができる。これにより、従来の材料では困難であったエンジンオイル及びギアーオイルのような非極性の流体のシールを製造することが可能である。また、本実施形態の加硫成形体は、上記に加えて良好な耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)も有しているため、長期にわたる使用でもシールの形状が変わりにくく良好なシール性能が得られる。
【0074】
(ブーツ)
ブーツとは、一端から他端に向けて外径が次第に大きくなる蛇腹状をなす部材であり、具体的には、自動車駆動系などの駆動部を保護するための等速ジョイントカバー用ブーツ、ボールジョイントカバー用ブーツ(ダストカバーブーツ)、ラックアンドピニオンギア用ブーツなどがある。本実施形態の加硫成形体は、ブーツの機械的強度と耐油性と耐久疲労性を高めることが可能である。これにより、従来の材料よりも、内部に含有する油及びグリースなどの非極性の液体に対する信頼性に優れたブーツを製造することが可能である。また、耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)にも優れるため、金属バンドなど、内部に含有する油の漏洩を防ぐためのかしめ部分の変形が起こりにくい。
【0075】
(ゴム引布)
ゴム引布は、ゴムを布に貼り合わせたゴムと布織物(繊維)の複合材料であり、具体的には、ゴムボートやテント材料、雨合羽などの衣類、建築防水用シート、緩衝材などに広く用いられている。本実施形態の加硫成形体は、ゴム引布の機械的強度と耐油性を高めることができる。これにより、従来の材料では困難であった油が飛散する環境下でも使用できるゴム引布を製造することが可能である。
【0076】
(ゴムロール)
ゴムロールは、鉄芯などの金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるロールであり、具体的には、製紙用、各種金属製造用、印刷用、一般産業用、籾摺りなどの農機具用、食品加工用などの種々の用途の要求特性に応じたゴムロールがある。ゴムロールは、製鉄用又は製紙用の工業用材料及び製品の製造時などでは油が付着する環境下で用いられ、また、製品に金、銀、ニッケル、クロム及び亜鉛などのメッキ処理を施す際には酸又はアルカリに晒される場合もある。本実施形態の加硫成形体は、ゴムロールの機械的強度と耐油性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった油が付着する環境下で用いられるゴムロールを製造することが可能である。
【0077】
(防振ゴム)
防振ゴムは、振動の伝達波及を防止するゴムのことであり、具体的には、自動車及び各種車両用のエンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するためのトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガーなどがある。本実施形態の加硫成形体は、防振材の機械的強度と耐油性と耐屈曲疲労性を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった油の飛散する環境でも使用できる防振ゴムを製造することができる。
【0078】
(スポンジ製品)
スポンジは、内部に細かい孔が無数に空いた多孔質の物質であり、具体的には、防振材、スポンジシール部品、ウェットスーツ、靴などがある。本実施形態の加硫成形体は、スポンジ製品の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった油による膨潤変形、変色を起こしにくいスポンジ製品を製造することができる。
【0079】
(ゴムライニング)
ゴムライニングは、配管及びタンク等の金属面にゴムシートを接着させて金属を防食する技術である。また、耐電気、耐摩耗を必要とされる箇所にもゴムライニングが使われる。本実施形態の加硫成形体は、ゴムライニングの耐油性を高めることができる。これにより、従来の材料では困難であった油による配管及びタンクの腐食を防止することができる。
【0080】
(空気バネ)
空気バネは、圧縮空気の弾力性を利用したバネ装置であり、自動車、バス、トラックなどのエアサスペンションなどに利用されている。本実施形態の加硫成形体は、空気バネの機械的強度、耐油性、耐久疲労性及び耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来の材料では困難であった油汚れが多い環境下でも使用できる空気バネを製造することができる。
【実施例
【0081】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
<共重合体の製造>
[実施例1]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ベンジルブチルトリチオカルボナート0.12質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.8質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0083】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0084】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析条件および分析結果)
クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の重合率は、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを風乾することで乾燥重量(固形分濃度)から算出した。具体的には、以下の式より計算した。式中、固形分濃度は、乳化液2gを130℃で加熱し、加熱前後の重量変化から揮発分を除いて求めた固形分濃度(質量%)である。総仕込み量及び蒸発残分は重合処方より計算した。蒸発残分とは、重合時に仕込んだ薬品のうち、130℃の条件下で揮発せずに共重合体と共に固形分として残留する薬品の重量を表す。
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100
【0085】
乾燥サンプルをTHFでサンプル調整濃度0.1質量%とした後、TOSOH HLC-8320GPCを用いて、上記共重合体の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとしてTSKガードカラムHHR-H、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-H3本を使用し、サンプルポンプ圧8.0~9.5MPa、流量1ml/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。流出時間と分子量は、以下にあげる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いた。
Mw=8.42×10、1.09×10、7.06×10、4.27×10、1.90×10、9.64×10、3.79×10、1.74×10、2.63×10
【0086】
共重合体中のアクリロニトリル結合量(含有量)は、共重合体の窒素含有量から求めた。共重合体中の窒素原子の含有量は、100mgの乾燥サンプルを用いて元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)により決定した。電気炉温度は反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2ml/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80ml/minフローした。検量線は窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質に用いて作成した。結果、数平均分子量(Mn)は11.0×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は25.3×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量は9.3質量%であった。
【0087】
H-NMR測定による、連鎖移動剤由来の官能基の分析)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体における連鎖移動剤由来の官能基の分析は以下のように行った。得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体をベンゼンとメタノールで精製し、再度凍結乾燥して測定用試料を得た。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体30mgを重クロロホルム1mlに溶解し、JEOL製ECX400(400MHz)を使用し、30℃でH-NMRを測定した。実施例1で得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のH-NMRスペクトルを図1に示す。用いられた連鎖移動剤(ベンジルブチルトリチオカルボナート)由来のピーク(図1中、aで示すピーク)が明瞭に観察された。同定された官能基の構造は、下記表1に示した。以下の実施例、比較例も同様である。
【0088】
[実施例2]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート0.11質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.8質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0089】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0090】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は14.0×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は33.6×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、8.9質量%であった。
【0091】
[実施例3]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体26質量部、アクリロニトリル単量体36質量部、ベンジルブチルトリチオカルボナート0.12質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.8gを添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0092】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0093】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.8×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は31.7×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、13.0質量%であった。
【0094】
[実施例4]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体20質量部、アクリロニトリル単量体47質量部、ベンジルブチルトリチオカルボナート0.15質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液2.25質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が65%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0095】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0096】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.6×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は32.6×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、16.0質量%であった。
【0097】
[実施例5]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ベンジルブチルトリチオカルボナート0.16質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液2.4質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が65%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0098】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0099】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は10.9×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は26.2×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、10.0質量%であった。
【0100】
[実施例6]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ベンジルブチルトリチオカルボナート0.10質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.5質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が65%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0101】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0102】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.2×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は31.7×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、9.6質量%であった。
【0103】
[実施例7]
内容積10リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジベンジルトリチオカルボナート0.13質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.8質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。最終重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0104】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0105】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.9×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は36.1×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、9.9質量%であった。
【0106】
[比較例1]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。重合率50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0107】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0108】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.0×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は44.2×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、8.9質量%であった。
【0109】
[比較例2]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体20質量部、アクリロニトリル単量体47質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。重合率50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
【0110】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることにより乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0111】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
前述した方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は13.8×104g/mol、重量平均分子量(Mw)は46.9×104g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、16.2質量%であった。
【0112】
<ゴム組成物の作製>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製ノクラックCD)2質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョーワマグ#150)4質量部、カーボンブラック(SRF;旭カーボーン社製旭#50)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製アデカサイザーRS-735)5質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(川口化学社製アクセル22S)1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得た。
【0113】
<ゴム組成物のスコーチタイムの測定>
上述の方法で得られたゴム組成物を、JIS K6300に準拠して、125℃におけるムーニースコーチ試験を行い、スコーチタイムt5を測定した。スコーチタイムt5とは、スコーチタイムを測定した際に、ゴム組成物の粘度が最低粘度から5%まで上昇するまでにかかる時間(分)を表す。
【0114】
<加硫ゴムの作製>
JIS K6250に基づき、電熱プレスを用いて、ゴム組成物を170℃、20分間熱処理し、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理することにより加硫ゴムを作製した。
【0115】
<加硫ゴムの機械的強度の測定>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムの機械的強度(破断強度及び破断伸び)はJIS K6251に準拠して測定した。破断強度≧20MPa、破断伸び>300%を合格と判断した。
【0116】
<加硫ゴムの硬度>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムの硬度はJIS K6253に準拠して測定した。
【0117】
<加硫ゴムの耐油性の測定>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムの耐油性はJIS K6258に準拠して測定した。油種はIRM903オイルであり、135℃、72時間浸漬後の体積変化率(ΔV)及び重量変化率(ΔW)から耐油性を評価した。ΔV<20%、ΔW<15%を合格と判断した。
【0118】
<加硫ゴムのゲーマン捻り試験(T10)の実施>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムのゲーマン捻り試験(T10)をJIS K6261に準拠して実施した。T10は常温(23℃)に比べ、捩りモジュラスが10倍になる温度で、数字が低いほど耐寒性が良好なことを示す。0℃以下を合格、-10℃以下を優秀、-15℃以下をきわめて優秀とした。
【0119】
<加硫ゴムの低温圧縮永久ひずみの測定>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムの低温圧縮永久ひずみは、JIS K6262に基づいて、0℃、72時間の条件で測定した。圧縮永久ひずみ(CS)が、25%以下のものを合格、20%以下のものを優秀とした。
【0120】
<加硫ゴムの高温圧縮永久ひずみの測定>
実施例1~7又は比較例1、2の共重合体を用いた加硫ゴムの高温圧縮永久ひずみは、JIS K6262に基づいて、130℃、72時間の条件で測定した。圧縮永久ひずみ(CS)が、22%以下のものを合格、20%以下のものを優秀とした。
【0121】
実施例1~7及び比較例1、2の結果を下記表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
実施例1~7のゴム組成物は、スコーチタイムが長く、ゴムとしての良好な成形加工性を有していた。実施例1~7の加硫ゴムは、機械的強度(破断強度及び破断伸び)及び耐油性に優れており、加えて、低温下及び高温下で良好なゴム物性(圧縮永久ひずみ)を有していた。
図1