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特許7223028融合蛋白質E-カドヘリン-Fc、VE-カドヘリン-FcとVEGF-Fcの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】融合蛋白質E-カドヘリン-Fc、VE-カドヘリン-FcとVEGF-Fcの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230208BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230208BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230208BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230208BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230208BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C07K14/705
C07K16/00
C07K19/00
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020556916
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2019096004
(87)【国際公開番号】W WO2019242781
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201810774242.4
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509159274
【氏名又は名称】南▲開▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANKAI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】94 Weijin Road, Nankai District, Tianjin 300071 CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カオ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, イエン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シュエピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, グオチアン
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126405(JP,A)
【文献】J. Mater. Chem. B,2016年,Vol.4,pp.4267-4277
【文献】Chin. J. Biomed. Eng.,2013年,Vol. 32, No. 6,pp.708-715
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞の中に存在するEGFRを活性化し、幹細胞から肝様細胞への分化誘導を促進するための、E-カドヘリン-Fc融合蛋白質と、VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質との組み合わせの使用であって、
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞である使用
【請求項2】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質がEGFの代わりに用いられる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質が基材に固定される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
さらに、前記幹細胞から内皮様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質と前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質との割合は、3:1~1:3である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記割合は、1:3、3:1又は1:1である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質と前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質が、同一又は異なる基材に固定される、請求項に記載の使用。
【請求項8】
前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質が、VEGF-Fc融合蛋白質と組み合わせて用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質と前記VEGF-Fc融合蛋白質が、同一又は異なる基材に固定される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
幹細胞を、E-カドヘリン-Fc融合蛋白質とVE-カドヘリン-Fc融合蛋白質の存在下で培養して、前記幹細胞から肝様細胞への分化誘導を促進する方法であって、
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞である方法
【請求項11】
さらに、前記幹細胞から内皮様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記幹細胞を、さらにVEGF-Fc融合蛋白質の存在下で培養する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質と前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質が、同一又は異なる基材に固定される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記VEGF-Fc融合蛋白質が、基材に固定される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
E-カドヘリン-Fc融合蛋白質とVE-カドヘリン-Fc融合蛋白質を含む基材であって、細胞培養、及び幹細胞から肝様細胞への分化誘導を促進するための修飾基材であって、
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞である修飾基材
【請求項16】
さらに、前記基材はVEGF-Fc融合蛋白質も含む、請求項15に記載の修飾基材。
【請求項17】
前記基材が、細胞培養プレート、細胞培養ディッシュ、ハイドロゲル、多孔質スキャホールド、フィルム、又はマイクロビーズからなる群から選ばれる、請求項15又は16に記載の修飾基材。
【請求項18】
前記マイクロビーズがPLGAマイクロビーズである、請求項17に記載の修飾基材。
【請求項19】
前記マイクロビーズの粒子径が10-50μmである、請求項17又は18に記載の修飾基材。
【請求項20】
前記マイクロビーズの粒子径が15-30μmである、請求項19に記載の修飾基材。
【請求項21】
前記マイクロビーズの粒子径が15-20μmである、請求項19又は20に記載の修飾基材。
【請求項22】
前記ハイドロゲルが、ヒアルロン酸ハイドロゲル、アクリルヒドラジン化ヒアルロン酸ハイドロゲル、PAMAMデンドリマー/チオール化ヒアルロン酸ハイドロゲルから選ばれ、前記フィルムが、ナノファイバーのフィルムである、請求項17に記載の修飾基材。
【請求項23】
前記多孔質スキャホールド、フィルム、又はマイクロビーズが、親水性又は疎水性である、請求項17に記載の修飾基材。
【請求項24】
前記多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズが、親水性の多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズである場合、E-カドヘリン-Fc融合蛋白質又はVE-カドヘリン-Fc融合蛋白質又はVEGF-Fc融合蛋白質が、リンカーを介して前記多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズに連接される、請求項23に記載の修飾基材。
【請求項25】
前記リンカーが、Fc-結合ペプチドである、請求項24に記載の修飾基材。
【請求項26】
前記Fc-結合ペプチドが、CHWRGWV(SEQ ID NO:93)、HYFKFD(SEQ ID NO:94)、HFRRHL(SEQ ID NO:95)、FYWHCLDE(SEQ ID NO:96)又はSpA(ブドウ球菌プロテインA )からなる群から選ばれる、請求項25に記載の修飾基材。
【請求項27】
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、又は胚性幹細胞である、請求項15-26のいずれか1項に記載の修飾基材。
【請求項28】
前記幹細胞が、哺乳動物由来である、請求項15-27のいずれか1項に記載の修飾基材。
【請求項29】
前記哺乳動物が、ヒト、ネズミ、又はブタである、請求項28に記載の修飾基材。
【請求項30】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質に含まれるE-カドヘリンセグメントが、hE-カドヘリンである、請求項15-29のいずれか1項に記載の修飾基材。
【請求項31】
前記E-カドヘリン-Fc融合蛋白質に含まれるE-カドヘリンセグメントの配列が、SEQ ID NO:9に示される配列である、請求項30に記載の修飾基材。
【請求項32】
前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質に含まれるVE-カドヘリンセグメントが、hVE-カドヘリンである、請求項15-31のいずれか1項に記載の修飾基材。
【請求項33】
前記VE-カドヘリン-Fc融合蛋白質に含まれるVE-カドヘリンセグメントの配列が、SEQ ID NO:5に示される配列である、請求項32に記載の修飾基材。
【請求項34】
前記VEGF-Fc融合蛋白質に含まれるVEGF(血管内皮細胞増殖因子)が、ヒトVEGF165である、請求項16に記載の修飾基材。
【請求項35】
前記VEGF-Fc融合蛋白質に含まれるVEGFの配列が、SEQ ID NO:81に示される配列である、請求項34に記載の修飾基材。
【請求項36】
前記融合蛋白質に含まれるFcセグメントが、ヒトIgGのFcである、請求項15-35のいずれか1項に記載の修飾基材。
【請求項37】
前記ヒトIgGが、IgG1である、請求項36に記載の修飾基材。
【請求項38】
前記ヒトIgGに含まれるFcセグメントの配列が、SEQ ID NO:4に示される配列である、請求項37に記載の修飾基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分化の分野に属し、特に、幹細胞から肝様細胞、内皮様細胞、膵島様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進する、上皮細胞カドヘリン(E-カドヘリン)-Fc融合蛋白質、及び/又は血管内皮細胞カドヘリン(VE-カドヘリン)-Fc融合蛋白質、及び/又は内皮細胞増殖因子(VEGF)-Fc融合蛋白質の新たな使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の器官発生は、複数のシグナル伝達分子によって構築された微小環境の影響を受け、非常にダイナミックなプロセスである。近年、3次元幹細胞培養に基づくオルガノイド(organoid)技術は、in vitroで器官の形成・発生の全過程をシミュレートすることが期待されており、徐々に幹細胞技術と再生医学の新しい研究ホットスポットとなっている。煩雑な立体構造と機能を持つ肝臓は、人体中の最も重要な内分泌・外分泌器官の1つであり、その体内での発生過程は、多くの因子によって共同で制御されている。肝実質細胞(肝細胞)と肝非実質細胞(例えば、胆管上皮細胞、クッパー細胞、NK細胞)は、肝組織の構造と機能を構成する基本単位であり、その中で肝細胞と胆管上皮細胞は肝臓内の主な機能を担っており、様々なサイトカインの制御下で肝芽細胞から分化している。初期肝内皮細胞とその分泌因子TGFβは、肝発生時の肝芽細胞の分化運命(肝細胞や胆管上皮細胞への分化運命)を制御するだけでなく、初期肝発生時の肝内皮細胞の横中隔間充織への移動や肝芽の形成を促進することが報告されている。 したがって、in vitroでの肝オルガノイド形成誘導の過程において、幹細胞を血管内皮細胞や肝細胞/胆管上皮細胞に分化誘導させ、一定の構造と機能を有する肝細胞凝集体を形成するための自己組織化を正確に制御することが、本技術の主な技術的ボトルネックとなっている。
【0003】
細胞ソーティング(cell sorting out)は肝オルガノイドの形成の第一段階であり、細胞表面の接着分子(cell adhesion molecular)に関係している。カドヘリン(cadherin、本文で「Cad」と略記)は、細胞特異的な接着因子の1つであり、同種細胞の表面に同じサブタイプのカルシウムカドヘリンが相同的に結合することで細胞間接着結合(Adhesion Junction)を形成し、細胞の分化に影響を与える。また、カドヘリンは、胚発生における細胞認識、移動、組織分化、又は成体組織・器官の構成にも、大きな役割を果たしている。上皮細胞カドヘリン(E-cadherin)は、哺乳動物の発生過程の中で最先に発現したカドヘリンであり、胚性幹細胞分裂球の密着結合および上皮細胞の分化に対して重要な影響を与える。なお、血管内皮細胞カドヘリン(VE-cadherin)は、幹細胞/内皮前駆細胞の内皮細胞への分化及びその機能実現に重要な役割を果たしている。
【0004】
Fcセグメントに基づく複数種のカドヘリン融合蛋白質は、組織工学や再生医学の研究に応用されている。例えば、E-カドヘリン-Fc、N-カドヘリン-Fc等は、細胞外マトリクスの修飾成分の1つとして用い、細胞行為の制御への影響を研究している。内皮細胞間の接着接合の重要な構成要素である血管内皮細胞カドヘリン蛋白(VE-カドヘリン)は、新生血管化の過程で非常に重要な役割を果たしていることが研究により明らかにされている。
【0005】
南開大学の杜鳳儀、許可博士は、ヒト内皮細胞カドヘリン蛋白の細胞外ドメインと、イムノグロブリンIgGのFcドメインからなる融合蛋白質(hVE-cad-Fc)を生合成し、ポリスチレン培養プレート表面への固定化と血管内皮細胞の接着・増殖・遊走・分化機能の発現調節における生物学的活性を調査・最適化した(杜鳳儀、許可、博士学位論文、2011、2016年、南開大学)。
【0006】
しかしながら、これまでのところ、先行技術において、ヒト内皮細胞カドヘリン蛋白-Fc融合蛋白質による幹細胞の肝細胞への分化の促進についての報告はない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質(例えば、ヒト上皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質、hE-cad-Fcと略記)、血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質(例えば、ヒト血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質、hVE-cad-Fcと略記)と内皮細胞増殖因子融合蛋白質(例えば、ヒトVEGF165-Fc融合蛋白質、hVEGF-Fcと略記)を基材に固定し、幹細胞を基材表面に固定した融合蛋白質上で二次元的に培養し、或いは、表面に融合蛋白質を固定された基材を3次元的に幹細胞の凝集体の内部に導入し、細胞表面のカドヘリンと基材表面の同種タイプのカドヘリン-Fcとの結合によって、基材表面の幹細胞の接着、移動とソーティングを制御し、さらに、幹細胞の分泌機能を制御し、外来性の細胞分化因子との相乗効果により、生体の細胞外微小環境を生体工学的に構築し、幹細胞の分化を制御する。E-cad-Fc、VE-cad-FcとVEGF-Fcを同一又は異なる基材に固定することで、幹細胞から肝様細胞、内皮様細胞、膵島様細胞、胆管上皮様細胞への分化効率を向上させる。
【0008】
融合蛋白質は、分化誘導の全過程において、以下のような主な役割を果たしている。
1.基材材料表面に固定した異なるサブタイプのカドヘリン融合蛋白質は、幹細胞からの複数細胞の凝集体の形成を媒介し、カドヘリンサブタイプ依存性の細胞接着を可能にし、幹細胞による組織特異性の細胞外微小環境の構築を促進する。
2.また、対応する外因性サイトカインと協働して、内皮および上皮への幹細胞分化を方向的に誘導する。VE-cad-Fcは、内在、外来性のVEGFと協調して、幹細胞を内皮様細胞へ迅速に分化誘導するのを促進する。同時に、それらが分泌した細胞外マトリクス、サイトカインおよび内皮ニッチの形成によって、さらにE-cad-Fcと協調して幹細胞を上皮様細胞へ分化誘導する。E-cad-Fc、外来添加したサイトカインと内皮ニッチ及びその内在性TGFβの働きで、幹細胞の肝様細胞又は胆管上皮様細胞への分化をそれぞれ調節する。このプロセスは、主に融合タンパク質の種類と濃度の調節を介して、in vitroで肝臓の発生プロセスをよりよく生体工学的に模倣している。
3.分化過程で、E-cad-Fcは、幹細胞のEGF受容体のリン酸化を持続的に活性化させて、外来性のEGFの使用を代替する。VE-cad-Fcは、幹細胞のVEGFの発現を持続的に上向きに調節するだけではなく、幹細胞のVEGF受容体のリン酸化も効果的に活性化でき、幹細胞の内皮細胞への定向分化において外来性のVEGFの添加に対する依存性を減少させる。
【0009】
4.E-cad-Fcは幹細胞のHNF4αの発現を上向きに調節し、幹細胞のMET形質転換を促進し、幹細胞の肝様細胞への分化を促進する。
5.E-cad-Fcは幹細胞のβ-カテニン発現を抑制するだけでなく、細胞質内での局在性を高めることで、幹細胞の肝様細胞への分化を促進する。
6.E-cad-FcとVE-cad-Fcは、YAPタンパク質の発現及びそれが細胞内の分布を調節することで、幹細胞の内皮および上皮への定向分化を促進する。
7.E-cad-FcとVE-cad-Fcは、幹細胞の凝集体構造と機能の安定性を改善させ、生体内の細胞微小環境を模倣し、幹細胞の体外定向分化を促進する。
8.E-cad-FcとVE-cad-Fcは、幹細胞を複数細胞の凝集体に形成させ、幹細胞の定向分化を効率よく制御でき、分化効率を上げる。肝臓、胆、膵臓のオルガノイドの構築、及びそれらの再生医学、薬品の研究開発等の分野における使用について、新たな方案と技術を提供する。
【0010】
具体的に、本発明は、肝様細胞、内皮様細胞、胆管上皮様細胞、膵島様細胞の分化において、E-cad-Fc、VE-cad-FcとVFGF-Fcの使用に関する。
本発明の1つの態様は、細胞の中に存在するEGFRを活性化するための、E-cad-Fcの使用に係る。
本発明の1つの態様は、幹細胞から肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進するための、E-cad-Fcの使用に係る。
本発明の1つの実施形態では、前記E-cad-Fcは、EGFの代わりに用いられる。
本発明の1つの実施形態では、前記E-cad-Fcは基材に固定される。
本発明の1つの態様は、幹細胞を内皮様細胞、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進するための、VE-cad-Fcの使用に係る。
本発明の1つの実施形態では、前記VE-cad-Fcが基材に固定される。
本発明の1つの実施形態では、前記VE-cad-FcはVEGF-Fcと併用する。
本発明の1つの実施形態では、前記VE-cad-Fcと前記VEGF-Fcが基材に固定され、好ましくは、同一又は異なる基材に固定される。
【0011】
本発明の1つの態様は、細胞を内皮様細胞、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化誘導を促進するための、E-cad-FcとVE-cad-Fcの使用に係る。
本発明の1つの実施形態では、前記E-cad-Fcと前記VE-cad-Fcとの比率が3:1~1:3であり、好ましくは1:3、3:1又は1:1である。
本発明の1つの実施形態では、前記VE-cad-FcはVEGF-Fc融合蛋白質と併用する。
本発明の1つの実施形態では、前記VE-cad-Fcと前記VEGF-Fc融合蛋白質が基材に固定され、好ましくは同一又は異なる基材に固定される。
本発明の1つの態様は、幹細胞をE-cad-Fc及び/又はVE-cad-Fcの存在下で培養することを特徴とする、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞の製造方法に係る。
【0012】
本発明の1つの態様は、幹細胞をVE-cad-Fcの存在下で培養することを特徴とする、内皮様細胞の製造方法に係る。
本発明の1つの実施形態では、幹細胞を、VEGF-Fc融合蛋白質をさらに添加して培養する。
本発明の1つの実施形態では、前記E-cad-Fcと前記VE-cad-Fcが基材に固定され、好ましくは同一又は異なる基材に固定される。
本発明の1つの実施形態では、前記幹細胞は間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞である。
本発明の1つの実施形態では、前記幹細胞は哺乳動物由来、好ましくはヒト、ネズミ、ブタ由来である。
本発明の1つの実施形態では、前記上皮細胞カドヘリンはヒト上皮細胞カドヘリンであり、好ましくはSEQ ID NO:9に示される配列である。
本発明の1つの実施形態では、前記血管内皮細胞カドヘリンはヒト血管内皮細胞カドヘリンであり、好ましくはその配列がSEQ ID NO:5に示される配列である。
本発明の1つの実施形態では、前記FcはヒトIgG(好ましくは、IgG1)のFcであり、好ましくはSEQ ID NO:4に示される配列である。
本発明の1つの実施形態では、前記血管内皮細胞増殖因子はヒトVEGF165であり、好ましくはVEGFの配列がSEQ ID NO:81である。
【0013】
本発明の1つの態様は、上皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質、及び/又は血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質を含む、細胞培養のための修飾基材に係る。好ましくは、前記上皮細胞カドヘリンがヒト上皮細胞カドヘリンであり、好ましくはSEQ ID NO:9に示される配列であり、前記血管内皮細胞カドヘリンはヒト血管内皮細胞カドヘリンであり、好ましくはその配列がSEQ ID NO:5に示される配列である。
本発明の実施形態では、前記基材は、細胞から内皮様細胞、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化を促進するためのものである。好ましくは、前記幹細胞は間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞であり、より好ましくは、前記幹細胞は哺乳動物由来、好ましくはヒト、ネズミ、ブタ由来である。
本発明の実施形態では、修飾基材が血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質を含む場合、さらにVEGF-Fc融合蛋白質を含み、好ましくは、前記VEGFはヒトVEGF165であり、より好ましくは、VEGFの配列がSEQ ID NO:81である。
【0014】
本発明のもう1つの態様は、細胞(好ましくは幹細胞、より好ましくは間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞)の分化(好ましくは、内皮様細胞、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化)を促進するための、前記修飾基材の使用に係る。
本発明のもう1つの態様は、上皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質、及び/又は血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質を基材と混合して、前記基材を修飾することを含む、修飾基材を調製する方法に係る。
本発明の実施形態では、前記基材は細胞から内皮様細胞、肝様細胞、膵様細胞又は胆管上皮様細胞への分化を促進するための基材である。好ましくは、前記幹細胞は間葉系幹細胞、iPS細胞又は胚性幹細胞であり、より好ましくは、前記幹細胞は哺乳動物由来、好ましくはヒト、ネズミ、ブタ由来である。
本発明の実施形態では、血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質を用いて基材を修飾する場合、さらにVEGF-Fc融合蛋白質を用いて前記基材を修飾する。好ましくは、前記VEGFはヒトVEGF165であり、より好ましくはVEGFの配列がSEQ ID NO:81である。
【0015】
本発明の上述したさまざまの実施形態では、前記基材は、細胞培養プレート、細胞培養ディッシュ、ハイドロゲル、多孔質スキャホールド(好ましくは、PLGAスキャホ-ルード又はPGLスキャホ-ルード)又はマイクロビーズからなる群から選ばれる。好ましくは、前記マイクロビーズの粒子径が10-50μm(好ましくは、15-30、15-20μm)であり、好ましくは疎水性マイクロビーズ又は親水性マイクロビーズであり、より好ましくは前記マイクロビーズがPLGAマイクロビーズであり、さらに好ましくは粒子径が10-50μm(好ましくは、15-30、15-20μm)のPLGAマイクロビーズである。あるいは、前記マイクロビーズはポリスチレンビーズであり、より好ましくは粒子径が10-50μm(好ましくは、15-30、15-20μm)のポリスチレンマイクロビーズである。
【0016】
本発明の上述したさまざまの実施形態では、前記多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズは、親水性又は疎水性である。1つの実施形態では、前記多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズは親水性の多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズである場合、前記上皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質又は前記血管内皮細胞カドヘリン-Fc融合蛋白質が、リンカー(好ましくは、Fc-結合ペプチド)を介して前記多孔質スキャホールド、フィルム又はマイクロビーズに連接される。好ましくは、前記Fc結合ペプチドは、CHWRGWV(SEQ ID NO:93)、HYFKFD(SEQ ID NO:94、REFERENCES 3、4参照)、HFRRHL(SEQ ID NO:95、REFERENCES 3、4参照)、FYWHCLDE(SEQ ID NO:96、REFERENCES 1、2参照)又はSpA(ブドウ球菌(staphylococcal)プロテインA 、REFERENCES 1、2参照)からなる群から選ばれる。
【0017】
本発明の前記したさまざまの実施形態では、好ましくは、前記ハイドロゲルが、ヒアルロン酸ハイドロゲルであり、より好ましくは、アクリルヒドラジン化ヒアルロン酸ハイドロゲル、又はPAMAMデンドリマー/チオール化ヒアルロン酸ハイドロゲルである。
本発明の実施形態では、前記アクリルヒドラジン化ヒアルロン酸ハイドロゲルは、アジピン酸ジヒドラジドとN-アクリルオキシスクシンイミドで、ヒアルロン酸を修飾して調製される。
【0018】
本発明の実施形態では、前記PAMAMデンドリマー/チオール化ヒアルロン酸ハイドロゲルは、PAMAMデンドリマーとチオール化ヒアルロン酸とのマイケル付加反応によって調製される。
【0019】
REFERENCES
1.Biomimetic design of affinity peptide ligands for human IgG based on protein A-IgG complex,Biochemical Engineering Journal,88(2014(1-11)。
2.FYWHCLDE-based affinity chromatography of IgG: Effect of ligand density and purifications of human IgG and monoclonal antibody, Journal of Chromatography A, 1355(2014)107-114。
3.Performance of hexamer peptide ligands for affinity purification of immunoglobulin G from commercial cell culture media,Journal of Chromatography A,1218(2011)1691-1700。
4.Purification of human immunoglobulin G via Fc-specific small peptide ligand affinity chromatography,Journal of Chromatography A 1216(2009)910-918。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】hVE-cad-Fcの構成の模式図とその同定。この中で、図1Aは、pcDNA 3.1-hVE-cad-Fcの構造を示す模式図である;図1Bは、精製したhVE-cad-FcのSDS-PAGEとWestern blotによる解析結果を示す。この中で、M:基準タンパク質;P:ヒトIgG(陽性対照、Sigmaカタログ番号、No.M15154);R:還元条件で精製したhVE-cad-Fc融合蛋白質;N:非還元条件で精製したhVE-cad-Fc融合蛋白質。
図2】hE-cad-Fcの構成の模式図とその同定。この中で、図2Aは、hE-cad-Fc融合蛋白質発現ベクターの酵素消化による同定を示す。M:基準タンパク質;1:酵素消化したhE-cad-Fc融合蛋白質の遺伝子断片;2:酵素消化したhE-cadの細胞外ドメインの遺伝子断片;3:酵素消化したFc遺伝子断片;4:酵素消化なしのプラスミドベクター;図2BはhE-cad-Fc融合蛋白質のウエスタンブロット同定を示す。M:marker;1:還元態のヒトE-カドヘリン融合蛋白質;2:非還元態のヒトE-カドヘリン融合蛋白質。
図3】コラーゲン溶液、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fcの混合溶液により基材およびTCPS基材の表面をそれぞれ処理して、24時間培養した細胞の関連因子の遺伝子の発現。
図4】コラーゲン溶液、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fcの混合溶液により基材およびTCPS基材の表面をそれぞれ処理して、48時間培養した細胞の関連因子の遺伝子の発現。
【0021】
図5】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液およびhVE-cad-Fc溶液により、基材を異なる時間で処理して、細胞を培養する場合、総EGF受容体とリン酸化EGF受容体リン酸化タンパク質の発現。
図6】hE-cad-Fc溶液で処理した基材により、異なる濃度のEGFの存在下で細胞を培養する場合、総EGF受容体、リン酸化したEGF受容体、Oct4、CK18、CK19およびβ-アクチンの発現。
図7】hVE-cad-Fc溶液と異なる濃度のhVEGF-Fc溶液で共処理した基材で細胞を培養する場合、総VEGFR2受容体、リン酸化VEGFR2受容体、Oct4、CD31、VE-カドヘリンおよびβ-アクチンの発現。
図8】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞の形態。
図9】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のOct4、FoxA2およびSox17遺伝子の発現。
図10】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のCK18、AFPおよびALB遺伝子の発現。
【0022】
図11】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のOATPおよびMRP2遺伝子の発現。
図12】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のG6Paseおよびα1-AT遺伝子の発現。
図13】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のCD31、VE-カドヘリンおよびVEGFR2遺伝子の発現。
図14】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のALB分泌およびUrea合成。
図15】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、4週間定向分化誘導された細胞が発現したALBの免疫蛍光染色。
【0023】
図16】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞の関連タンパク質の発現。
図17】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞が分泌した関連因子の遺伝子の発現。
図18】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc、hVE-cad-Fcの混合溶液で基材又はTCPS基材表面を処理して、細胞を48時間培養した時に、細胞が発現したYAPタンパク質の免疫蛍光染色の結果。
図19】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のMET形質転換に関連する遺伝子の発現。
図20】hE-cad-Fc溶液、hVE-cad-Fc溶液とhVEGF-Fcの混合溶液の固定量、安定性とマイクロビーズの表面での分布。
【0024】
図21】細胞とマイクロビーズの異なる配合比率で調製した細胞凝集体の形態。
図22】細胞とマイクロビーズの異なる配合比率で調製した細胞凝集体が1週間定向分化誘導された時、関連遺伝子の発現。
図23】コラーゲン溶液修飾マイクロビーズ、hE-cad-FcとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの異なる配合比率で修飾マイクロビーズによって調製した細胞凝集体は、1週間分化誘導した時、関連遺伝子の発現。
図24】コラーゲン溶液修飾マイクロビーズ、異なる配合比率のhE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズによって調製した幹細胞の凝集体は、1週間分化誘導した時、関連遺伝子の発現。
図25】マイクロビーズを含まない細胞凝集体、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとを含む細胞凝集体、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体が、4週間分化誘導された時、関連遺伝子の発現。
【0025】
図26】マイクロビーズを含まない細胞凝集体、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとを含む細胞凝集体、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体が、2週間分化誘導された時、細胞のALBとCD31の免疫蛍光染色。
図27】ヒト臍静脈内皮細胞とhMSCとを含む細胞凝集体、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとを含む幹細胞の凝集体、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体が、4週間分化誘導された時、関連遺伝子の発現状況とALBの分泌。
図28】それぞれ、コラーゲン溶液、hE-cad-Fc溶液及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で処理した基材表面で、定向分化誘導された細胞のOct4、PDX-1、INS、MAFA、CPA1およびβ-アクチン遺伝子の発現。
図29】マイクロビーズを含まない細胞凝集体、PLGAマイクロビーズを含む細胞凝集体、hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体が、それぞれ1週間分化誘導された時、関連遺伝子と蛋白質の発現。この中で、図29Aは、1週間分化誘導した時、内皮細胞の関連するマーカー遺伝子と蛋白質の発現を示す。図29Bは、1週間分化誘導した期間の関連因子および間質遺伝子の発現を示す。
図30】PAMAMデンドリマーを合成する経路の図と、hVE-cad-Fc融合蛋白質によるハイドロゲルの機能化修飾。この中で、図30Aは、PAMAMデンドリマーを合成する経路の図であり、図30Bは、三つの異なるPAMAMデンドリマーの核磁気共鳴の水素スペクトルの図であり、図30Cは、Fc-bp含有/非含有のハイドロゲルの中、14日間にわたってhVE-cad-Fc融合蛋白質の固定量のパーセンテージであり、図30Dは、異なる手段で修飾したハイドロゲルによって、HUVECとhMSCの接着と増殖を示す。
【0026】
図31】ハイドロゲルの物理化学的特性の特性化。この中で、図31Aは、hVE-cad-Fc修飾前、後のハイドロゲルは、培地、ヒアルロニダーゼ、hMSC又はHUVEC上清において、それぞれの異なる時点の残量のパーセンテージを示す。図31Bは、hVE-cad-Fc修飾前、後のハイドロゲルの、PBSにおける膨潤性を示す。図31Cは、hVE-cad-Fc修飾前、後のハイドロゲルのレオメーター特性を示す。図31Dは、hVE-cad-Fc修飾前、後のハイドロゲルの外観特徴を示す。
図32】hVE-cad-Fc機能化修飾ハイドロゲルによるHUVECの生存に対して影響の検討。この中で、図32Aは、異なる修飾ハイドロゲルでHUVECを3日間二次元的培養した時、光学顕微鏡にて観察した図である。図32Bは、HUVECが異なる修飾ハイドロゲルで3日間二次元的培養した時の生存死亡染色図である;図32Cは、HUVECを異なる修飾ハイドロゲルで二次元的4、24、48と72時間培養した時、CCK-8にて検出した接着、増殖を示す。図32Dは、HUVECが異なる修飾ハイドロゲルでの3日間二次元的培養した時の細胞の骨格染色を示す。図32Eは、HUVECが異なる修飾ハイドロゲルで1、3、5と7日間3次元的培養した時の接着、増殖を示す。図32Fは、HUVECが異なる修飾ハイドロゲルで7日間3次元的培養した時の生存死亡染色を示す。
図33】hVE-cad-Fc融合蛋白質機能化修飾ハイドロゲルによるHUVECの血管機能化に対する影響。この中で、図33A、Bは、HUVECを異なる修飾ハイドロゲルでそれぞれ24、48、72時間培養した後、vWFとeNOSタンパク質の発現をウェスタンブロッティングにて検出した。図33Cは、HUVECを異なる修飾ハイドロゲルで4、24、48、72時間培養した後の一酸化窒素放出量である;図33Dは、HUVECを異なる修飾ハイドロゲルで72時間培養した後、レーザー共焦点顕微鏡にて低密度リポ蛋白に対する貪食を検出した。
図34】クリヒドラジド化ヒアルロン酸の核磁気共鳴の水素スペクトルテストである。この中で、図34Aは、HAの核磁気共鳴の水素スペクトルであり、図34Bは、HA-ADHの核磁気共鳴の水素スペクトルであり、図34Cは、HA-ACの核磁気共鳴の水素スペクトルである。
図35】融合蛋白質hVE-cad-Fcはハイドロゲルに固定されている1週間の、酵素結合イムノソルベントアッセイ試験を示す。
【0027】
図36】ハイドロゲルのゲル化性、安定性と分解性についての、物理化学的特性の特性化。この中で、図36Aは、異なる架橋剤によるゲルの図である。図36Bは、異なる架橋度を有するハイドロゲルが、PBS溶液での安定性の解析、低架橋度を有するハイドロゲルについてのレオロジーの解析である。図36Cは、hVE-cad-Fcによる機能的に修飾された前、後のハイドロゲル(DTTによる架橋、MMPによる架橋)の膨潤性の検討である。
図37】マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと記す)、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体(mcpと記す)、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズ(m(E/VE/VEGF)pと記す)を含む幹細胞の凝集体が、2週間分化誘導された時、細胞のCK18とCK19の免疫蛍光染色。
図38】hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む複数の幹細胞の凝集体(m(E/VE/VEGF)pと記す)が、2週間分化誘導された時、細胞のCK19の免疫蛍光染色。
図39】マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと記す)、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体(mcpと記す)、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体(m(E/VE/VEGF)pと記す)が、2週間分化誘導された時、細胞のアルブミンとCD31のフローサイトメトリーでの検出。
図40】マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと記す)、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体(mcpと記す)、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体(m(E/VE/VEGF)pと記す)が、2週間分化誘導された時、細胞のPASとインドシアニングリーン染色の図。図40Aは、分化誘導した後の肝オルガノイドのPAS染色の図である;図40Bは、分化誘導した後の肝オルガノイドには、インドシアニングリーンの摂取と放出の図である。
【0028】
図41】マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと記す)、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体(mcpと記す)、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体(m(E/VE/VEGF)pと記す)が、2週間分化誘導された時、細胞のMRP2の免疫蛍光染色図。
図42】マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと記す)、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体(mcpと記す)、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体((mE+mVE/VEGF)pと記す)、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含む幹細胞の凝集体(m(E/VE/VEGF)pと記す)が、2週間分化誘導された時、細胞のCYP3A4の免疫蛍光染色図。
図43】hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズによる肝オルガノイドの、モデルドラッグによる酸化ストレス損傷の評価。図43Aは、肝オルガノイドをアセトアミノフェンで処理した後の、ROSとミトコンドリアの染色の図である。図43Bは、肝オルガノイドをイソニコチン酸ヒドラジッドで処理した後の、ROSとミトコンドリアの染色図である。
図44】hE-cad-Fcで修飾されたマイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで修飾されたマイクロビーズを含むことによる肝オルガノイドに対して、モデルドラッグによる酸化ストレス損傷の評価。図43Aは、アセトアミノフェンにより肝オルガノイドを処理した後の、ROSとミトコンドリアの染色の図である。図44Bは、イソニコチン酸ヒドラジッドで肝オルガノイドを処理した後の、ROSとミトコンドリアの染色図である。
図45】マイクロビーズを含まないマウス幹細胞凝集体、コラーゲン溶液修飾マイクロビーズを含むマウス幹細胞凝集体、hE-cad-Fc修飾マイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとを含むマウス幹細胞凝集体、及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcの混合溶液で修飾されたマイクロビーズを含むマウス幹細胞凝集体が、3週間分化誘導された時、関連遺伝子の発現。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例と図面を参照して本発明を詳細に説明する。一般当業者が理解できるように、以下の実施形態は例示を目的とするものであり、本発明を何らこれらに限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の保護範囲は、後述する請求項により限定された。
【0030】
実施例1:ヒトhVE-cad-Fc融合蛋白質の構築と発現
杜鳳儀、博士論文、南開大学、2011年11月を参照。主な内容は以下の通りである。
【0031】
1.1 血管内皮細胞カドヘリンの細胞外ドメイン遺伝子VE-cadのクローニングと配列分析
UniProtデータベースに収載したヒトVE カドヘリンの蛋白配列と機能ドメインに基づいて、GenBankに収載した遺伝子(NCBI Reference Sequence:NM_001795.3)配列を参考して特異的なPCRプライマーを設計し、hVE カドヘリン蛋白の細胞外ドメイン(EC1-EC5)を増幅した。上流プライマー(P1):5′-CCGGATATCATGCAGAGGCTCATGATGCTCC-3′(SEQ ID NO:1)、EcoRV酵素消化サイトを組み込まれ(下線)、下流プライマー:(P2)5′-AAGCGGCCGCTCTGGGCGGCCATATC-3′(SEQ ID NO:2)、NotI酵素消化サイトを組み込まれた(下線)。プライマーの合成およびシークエンス解析は、Invitrogen Ltd.に委託して実施した。
【0032】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、ScienCell会社、米国)の総mRNAの抽出:『分子クローニング実験ガイド』(第3版)の中の常法に従ってmRNAを抽出した。O.D値を測定して、RNAの純度と濃度を定量した。逆転写は、購入したBD会社のキットのTaqMan@MicroRNA Assaysにて作業を行い、次のような逆転写系を用いた:
【0033】
【表1】
【0034】
逆転写のプログラムは以下の通りである。
【0035】
【表2】
【0036】
HUVEC mRNAから逆転写したcDNAを鋳型として、VE-cadの遺伝子断片を増幅した。PCR反応系は以下の通りである。
【0037】
【表3】
【0038】
増幅の条件は:94℃で30s変性、60℃で30sアニーリング、72℃で30s伸長、計35サイクル、最後72℃で10分間伸長した。反応液に380μL ddH2Oを加えて、同体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を一回行い、1/10倍体積の3M NaAc(pH 5.0)、2倍体積の無水エタノールを加えて、-20℃で1h放置した。4℃、12000 rpmで10分間遠心分離し、DNA沈殿物は70%エタノールで洗浄を両回行い、真空乾燥した。沈殿物は適量のTEに溶解した。
【0039】
1.2 pcDNA 3.1-hVE-cad-Fc真核発現ベクターの構築
(1)EcoRV、NotI二重酵素消化で精製したPCR産物
酵素消化系は以下の通りである。
【0040】
【表4】
【0041】
37℃でオーバーナイト反応し、65℃で15分間に酵素を非働化し、反応液に350μL ddH2Oを加えて、さらに同体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を一回行い、1/10倍体積の3M NaAc(pH 5.0)、2倍体積の無水エタノールを加えて、-20℃で1h放置した。4℃、12000 rpmで10分間遠心分離し、DNA沈殿物は70%エタノールで洗浄を両回行い、真空乾燥した。沈殿物は10μL TEに溶解した。
【0042】
(2)pcDNA/3.1に対するEcoRVとNotI酵素消化:
pcDNA/3.1(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国、商品番号V79020)の二重酵素消化系(3×50μL)は以下の通りである。
【0043】
【表5】
【0044】
37℃でオーバーナイト反応した。酵素消化産物は、1%のアガロースゲルに電気泳動して分離した。目的断片をUVランプの下で切り取って、DNAアガロースゲル回収キット(TaKaRa、日本、商品番号9762)を用いて回収して、回収した断片は25μL ddH2Oに溶解した。
【0045】
(3)ベクターと目的断片とのライゲーション反応と形質転換反応
反応系は以下の通りである。
【0046】
【表6】
【0047】
16℃で16h反応した。その後、CaCl2でコンピテントセルBL21(DE3)に形質転換して、37℃で16~18hオーバーナイト培養した。形質転換細胞をピックアップし、プラスミドを少量抽出して検出した。
回収した目的遺伝子であるhVE-カドヘリンの細胞外ドメインと、Fc断片を持つベクターであるpcDNA 3.1とを、分別、37℃の恒温で二重酵素(EcoRVとNotI)消化した。電気泳動で回収して、回収した産物を混合し、T4 DNAリガーゼを触媒として16℃でオーバーナイトライゲーションした。ライゲーション産物は、E.coli DH5αコンピテントセルを形質転換して、アンピシリン(Amp+)を用いて耐性によるスクリーニングを行った。プラスミドは抽出した後、二重酵素消化で同定した。最初の同定で正しい組み換えプラスミドと認可されたものについて、DNA配列を分析された。構築した組み換えプラスミドは、pcDNA 3.1/hVE-cad-Fcと命名した(図1Aに示す)。シークエンス解析で配列の正確性を確認した。hVE-cad-Fc融合蛋白質配列はSEQ ID NO:3に示す。なお、Fcの配列はSEQ ID NO:4に示し、hVE-cadの配列はSEQ ID NO:5に示す。
【0048】
1.3 細胞のトランスフェクションとタンパク質の精製
pcDNA 3.1/hVE-cad-Fcで、293F細胞(中国科学院典型培養物寄託委員会細胞バンク)をトランスフェクションした。
免疫グロブリンのFcセグメントとrProtein Aとの特異的な結合により、GEヘルスケア会社のHitrap rProtein A FFカラムで、目的のタンパク質を精製した。
【0049】
1.4 ウエスタンブロット分析
精製したhVE-cad-Fc融合蛋白質は、10%SDS-PAGEで電気泳動して、PVDFフィルムに移行された。5%脱脂ミルクで2時間ブロックし、第一抗体であるウサギ抗ヒトVE-カドヘリンの細胞外ドメインモノクローナル抗体(RD、米国、1:400で希釈する)で、4℃で一晩インキュベートした。HRP標識ヒツジ抗ウサギ第二抗体(Abcam、米国、1:10000で希釈する)で室温1hインキュベートした。フィルムをTBSTで洗浄して、DAB試薬で露光させ、現像・定着させて分析した。Fcからなる二量体の検出を行う場合、ローディングバッファーには、βメルカプトエタノールを含まない。結果は図1Bに示す。
図1Bから分かるように、非還元条件の場合、約240 KDの位置に1つのバンドが見られ、還元条件の場合、約120 KDの位置に1つのバンドが見られた。これらの結果より、hVE-cad-Fc融合蛋白質は二量体として存在している示唆を与える。
【0050】
実施例2:ヒトhE-cad-Fc融合蛋白質の構築と発現
徐建斌、博士論文、南開大学、2013年12月を参照した。本実施例の主な内容は以下の通りである。
【0051】
2.1 上皮細胞カドヘリンの細胞外ドメイン遺伝子であるE-cadのクローニングと配列分析
UniProtデータベースに収載したヒトE カドヘリンの蛋白配列と機能ドメインに基づいて、GenBankに収載した遺伝子(NCBI Reference Sequence:NM 004360.3)配列を参考して、特異的なPCR プライマーを設計し、E カドヘリン蛋白の細胞外ドメインを増幅した。上流プライマー(P1):5’-CGCAAGCTTATGGGCCCTTG-GAGCCGCAGC-3’、SEQ ID NO:6;下流プライマー:(P2)5’-TTGCGGCCGCAGGCAGGAATTTGCAATCCTGC-3’、SEQ ID NO:7。プライマーの合成およびシークエンス解析は、Invitrogen Ltd.に委託して実施した。
【0052】
L-02(中国科学院典型的培養物寄託委員会細胞バンク)細胞の総mRNAの抽出:分子クローニング実験ガイド》(第3版)の中の常法に従ってmRNAを抽出した。O.D値を測定して、RNAの純度と濃度の定量を行う。逆転写は、購入したBD会社のキットのTaqMan@MicroRNA Assaysに従って操作を行った。逆転写系は以下の通りである。
【0053】
【表7】
【0054】
逆転写のプログラムは以下の通りである。
【0055】
【表8】
【0056】
L-02 mRNAから逆転写したcDNAを鋳型として、E-cadの遺伝子断片を増幅した。PCR反応系は以下の通りである。
【0057】
【表9】
【0058】
増幅の条件は:94℃で30s変性して、60℃で30sアニーリングして、72℃で30s伸長して、計35サイクルを行って、最後、72℃で10分間伸長した。反応液に380μL ddH2Oを加えて、同体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を一回行い、1/10倍体積の3M NaAc(pH 5.0)、2倍体積の無水エタノールを加えて、-20℃で1h放置した。4℃、12000rpmで10分間遠心分離し、DNA沈殿物は70%エタノールで洗浄を両回行い、真空乾燥した。沈殿物は適量のTEに溶解した。
【0059】
2.2 pcDNA 3.1-hE-cad-Fc真核発現ベクターの構築
(1)Hind III、NotI二重酵素消化で精製したPCR産物
酵素消化系は以下の通りである。
【0060】
【表10】
【0061】
37℃オーバーナイト反応し、65℃で15分間に酵素を非働化し、反応液に350μL ddH2O加えて、同体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出を一回行い、1/10倍体積の3M NaAc(pH 5.0)、2倍体積の無水エタノールを加えて、-20℃で1h放置した。4℃、12000 rpmで10分間遠心分離し、DNA沈殿物は70%エタノールで洗浄を両回行い、真空乾燥した。沈殿物は10μL TEに溶解した。
【0062】
(2)pcDNA/3.1に対するHind IIIとNotI酵素消化
【0063】
【表11】
【0064】
37℃でオーバーナイト反応した。酵素消化産物は、1%のアガロースゲルで電気泳動して分離した。UVランプの下で目的断片を切り取って、DNAアガロースゲル回収キット(TaKaRa)を用いて回収して、回収した断片は25μL ddH2Oに溶解した。
【0065】
(3)ベクターと目的断片とのライゲーション反応、形質転換反応
反応系は以下の通りである。
【0066】
【表12】
【0067】
16℃反応16h。その後、CaCl2でコンピテントセルBL21(DE3)に形質転換して、37℃で16~18hオーバーナイト培養した。形質転換細胞をピックアップし、プラスミドを少量抽出して検出した。
回収した目的遺伝子であるE-カドヘリンの細胞外ドメインと、Fc断片を持つベクターpcDNA 3.1とを、それぞれ、37℃の恒温で二重酵素(Hind IIIとNotI)消化した。電気泳動で回収した後、回収した産物を混合し、T4 DNAリガーゼを触媒として、16℃でオーバーナイトライゲーションした。ライゲーション産物は、E.coli DH5αコンピテントセルを形質転換した後、アンピシリン(Amp+)を用いて耐性によるスクリーニングを行った。プラスミドは抽出した後、二重酵素消化で同定した。予備同定で正しいと認可された組み換えプラスミドは、DNA配列を分析した(図2Aに示す)。構築した組み換えプラスミドは、pcDNA 3.1/hE-cad-Fcと命名した。シークエンス解析で配列の正確性を確認した。hE-cad-Fc融合蛋白質配列はSEQ ID NO:8に示す。この中で、hE-cadの配列はSEQ ID NO:9に示し、Fcの配列はSEQ ID NO:4に示す。
【0068】
2.3 細胞トランスフェクションとタンパク質の精製
pcDNA 3.1/hE-cad-Fcで293F細胞(中国科学院典型的培養物寄託委員会細胞バンク)をトランスフェクションした。
免疫グロブリンのFcセグメントとrProtein Aとの特異的な結合により、GEヘルスケア会社のHitrap rProtein A FFカラムで、目的のタンパク質を精製した。
【0069】
2.4 ウエスタンブロット分析
精製したhE-cad-Fc融合蛋白質は、10%SDS-PAGEで電気泳動して、PVDFフィルムに移行された。5%脱脂ミルクで2hブロックし、第一抗体であるウサギ抗ヒトE-カドヘリンの細胞外ドメインのモノクローナル抗体(RD、米国、1:400で希釈する)で、4℃で一晩インキュベートした。HRP標識ヒツジ抗ウサギ第二抗体(Abcam、米国、1:10,000で希釈する)で室温1hインキュベートした。フィルムをTBSTで洗浄して、DAB試薬で露光させ、現像・定着させて分析した。Fcからなる二量体の検出を行う場合、ローディングバッファーには、βメルカプトエタノールを含まない。結果は図2Bに示す。
図2Bから分かるように、非還元条件の場合、約240KDの位置1つのバンドが見られ、還元条件の場合、約120KDの位置に1つのバンドが見られた。これらの結果より、hE-cadは二量体として存在している示唆を与える。
【0070】
特記しない限り、以下の実施例に係るPCR反応は、以下の通り行う:
Transgen Biotech Co., LTDから提供したPCRキットを用いて、下表に従って、RNase/DNaseへフリーのPCRチューブに、それぞれ下記成分を加えた:
【0071】
【表13】
【0072】
PCR機の設定プログラム:95°Cで5分間 1サイクル、95℃で5分間、アニーリング温度で1分間、72℃で45s、35サイクルを繰り返し、72℃10分間 1サイクル、4℃で保温した。1%のアガロースゲルで電気泳動してPCR産物の発現状況を検出した。
【0073】
実施例3.異なる修飾を行った基材の表面におけるは、hMSCのサイトカインと細胞外マトリクスの分泌の検出
I型コラーゲン(collagen、BD、米国、商品番号354249)、hE-cad-Fc、hVE-cad-Fc及びhE-cad-Fc/hVE-cad-Fcの混合溶液(2種の融合蛋白質の割合は、1:1)を、0.01M PBS(pH=7.2)で、それぞれ終濃度が10μg/mLに希釈した。6ウェルの細胞培養プレートに、希釈したコラーゲン溶液とhE-cad-Fc/hVE-cad-Fcの混合溶液1.5 mLを別々加えて、細胞インキュベーターに置き、37℃で2hインキュベートした。取り出した後上清を棄て、0.01M PBS(pH=7.2)で3回洗浄した。
【0074】
その後、hMSC(Cyagen Biosciences Inc. 中国)を細胞密度105細胞/ウェルで、TCPSプレート、前記溶液でインキュベーション後の培養用プレートに接種した。10%ウシ胎仔血清(FBS、BI、米国)を含むDMEM/Ham′s F12 1:1(DF12、BI、米国)培地を用いて、細胞インキュベーター(37℃、5%CO2)に培養した。24h、48hに個別に培養した後、培地を棄て、細胞を0.01M PBS(pH=7.2)で3回洗浄した。ウェル毎に1mL Trizol(Invitrogen 、米国、商品番号15596026)を加えて、製品明細書に従ってRNAを抽出した。BiodropでRNAサンプルの濃度を測定した。2μg RNAを取って、Roche逆転写キット(商品番号4655877001)明細書に従って、キット添付のランダムプライマーにより逆転写して、cDNAを得た(PCR機の設定プログラム:55°C 30分間 1サイクル、85℃5分間 1サイクル、4℃で保温)。遺伝子の発現量は、Roche蛍光定量PCRキット(商品番号4914058001)にて分析する。使用したプライマーの配列とアニーリング温度は、下記の表1(PCR機の設定プログラム:95℃で5分間 1サイクル、95℃で5分間、アニーリング温度で1分間、72℃で45s 35 サイクルを繰り返し、72℃で10分間 1サイクル、4℃に保温した)に示す。前記サンプルをよく混ぜて、蛍光定量PCR機(Biorad)に置いて検出した。得られるデータは、TCPS群をコントロール群として、2-ΔΔCt法により処理した。24h培養の検出結果は図3に示し、48h培養の検出結果は図4に示す。
【0075】
PCRの結果から分かるように、hE-cad-FcとhVE-cad-Fcの2種類の融合蛋白質の併用は、hMSの細胞外マトリクスプロテインとサイトカインの自己分泌能力を著しく向上させ、hMSCが外来性のサイトカインの作用で定向分化誘導されることに寄与する。
【0076】
【表14】
【0077】
実施例4.異なる修飾を持つ基材表面においてEGF受容体の活性化時間の評価
実施例3の方法で6ウェルの細胞培養プレートを処理し、hMSCを105細胞/ウェルの細胞密度で、I型コラーゲン、hE-cad-FcとhVE-cad-Fcで修飾した培養用プレートの表面に別々に接種した。細胞は維持用培地にて細胞インキュベーターに(37℃、5%CO2)4h培養した。I型コラーゲンで修飾した基材表面に接種した細胞は、10ng/mL EGF(Peprotech、米国、商品番号AF-100-15)を含む維持用培地にて培養して、hE-cad-FcとhVE-cad-Fcで別々修飾した基材表面に接種した細胞は、維持用培地(EGFを含まない)にて培養した。培養開始後0分間、10分間、30分間、60分間、90分間と120分間に、100μL細胞強力溶解液(Beyotime Biotechnology.)で細胞を溶解して、タンパク質を以下のように抽出した。異なるサンプルについて、異なる時点の総EGF受容体(total EGF receptor、CST、米国、1:1000で希釈する)とEGFリン酸化受容体(phospho-EGF receptor Tyr 1068、1068位にリン酸化され、CST、米国、1:1000で希釈する)の発現の状況を、ウエスタンブロットで検出した。結果を図5に示す。
【0078】
タンパク質の抽出:
[1]2×106細胞に対して100μLの溶解液を加える割合で、溶解液を加えた。セルスクリーパーで細胞をさらに溶解させ、細胞の中の全部タンパク質を放出させ、4℃、13000rpmで10分間遠心分離して、上清を得た;
[2]上清の中のタンパク質の含有率を、BCAキット(Beyotime Biotechnology、商品番号P0010)にて検出した;
[3]上清に1:5の割合で5×ローディングバッファー(Beyotime Biotechnology、商品番号P0015)を加えて、5分間沸騰させた。沸騰させたタンパク質は、ウェル毎に20μgタンパク質のインジェクションになるように、単独で-80℃冷蔵庫に保存し、細胞の全部タンパク質の抽出を完成した。
【0079】
図5から分かるように、培地に添加したEGFによる刺激によって、コラーゲンで修飾された基材においてhMSCのEGF受容体のリン酸化は、60分間以内に活性化状態を維持していた。60分間後、EGF受容体のリン酸化の活性化が消えて始めた。また、hE-cad-Fcで修飾された基材表面においてhMSC EGF受容体のリン酸化が、2h以内にずっと活性化状態を維持していた。hVE-cad-Fcで修飾された基材表面においてhMSCのEGF受容体のリン酸化は、活性化しなかった。これは、hE-cad-Fcが、EGF受容体及びそのリン酸化を特異性的、持続的に活性化できることを示した。
【0080】
実施例5.hE-cad-Fcで修飾された基材表面において、異なる濃度のEGFはhMSCの定向分化に与える影響
実施例3に記載のように調製したhE-cad-Fcで修飾された6穴プレートの表面に、105細胞/ウェルの細胞密度で、hMSCを接種した。維持用培地でオーバーナイト培養した後、違うウェルに1.5 mLの異なる濃度(0ng/mL、5 ng/mL、10 ng/mL、15 ng/mL、20 ng/mLと25 ng/mL)のEGFを含む肝定向分化用培地(DF12+2%FBS+10ng/mL FGF4+20ng/mL HGF+1*ITS、この中で、FGF4は、Peprotech製、米国、商品番号は100-31;HGFは、Peprotech製、米国、商品番号は100-39H;ITSは、シグマ製、米国、商品番号はI3146)を加えた。両日毎に培地を交換した。7日間培養した後、タンパク質を抽出して、ウエスタンブロットにて違うサンプルのOct4(Abcam、米国、1:1000で希釈する)、総EGF受容体(CST、米国、1:1000で希釈する)、リン酸化-EGF受容体Tyr 1068(CST、米国、1:1000で希釈する)、CK18(Abcam、米国、1:1000で希釈する)、及びCK19(Abcam、米国、1:1000で希釈する)の発現状況を検出した。結果を図6に示す。
【0081】
図6から分かるように、分化用培地を加えた1週間後、EGFを含まない分化用培地の試験群には、肝細胞へ定向分化誘導効率が最も高くなる。これは、hE-cad-Fc基材は、hMSCから肝細胞への定向分化の過程の中で、EGFの関連機能を代わって、EGF受容体のリン酸化を持続的刺激させ、hMSCから肝細胞への分化誘導効率を上げた。
【0082】
実施例6.hVE-cad-Fcで修飾された基材表面に固定した異なる濃度のhVEGF-FcがhMSCの定向分化への影響
0μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、1.5μg/mL、2μg/mL、2.5μg/mLの異なる終濃度でhVEGF-Fc(SEQ ID NO:26、金斯瑞会社で合成した)を含むように、(ここで、hVEGFの配列がSEQ ID NO:81)hVE-cad-Fc溶液(終濃度が10μg/mL)を調製した。105細胞/ウェルの細胞密度でhMSCを培養用プレートに接種し、維持用培地でオーバーナイト培養した後、内皮細胞分化用培地(DF12+2%FBS+10ng/mL FGF2、FGF2、Peprotech製、米国、商品番号100-18B)に交換して培養し、両日毎に換液した。7日間培養した後、ウエスタンブロットにて各サンプルのOct4(Abcam、MA、米国、1:1000で希釈する)、総VEGF受容体(CST、米国、1:1000で希釈する)、リン酸化-VEGF受容体Tyr 1175(CST、米国、1:1000で希釈する)、CD31(CST、米国、1:1000で希釈する)及びhVE-cadherin(Abcam、米国、1:1000で希釈する)の発現状況を検出した。結果を図7に示す。図7から分かるように、分化用培地を加えた1週間後、hVEGF-Fcの固定量が2μg/mLである場合、hMSCから血管内皮様細胞への分化効率は最も高くなる。これは、hMSCから血管内皮様細胞へ分化誘導する過程において、一定濃度のhVE-cad-Fc基材とhVEGF-Fc融合蛋白質は、その分化の調節に協力する役割を果たし、それらはVEGF受容体のリン酸化を持続的に刺激でき、hMSCから血管内皮様細胞へ分化誘導する効率を上げることを証明した。
【0083】
異なる修飾を持つ基材表面に使用する分化用培地として最も好ましい成分は以下の通りである。
(1)コラーゲン:DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS+20ng/mL EGF+40ng/mL hVEGF
(2)hE-cad-Fc:DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS+40ng/mL hVEGF
(3)hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc:DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS。
【0084】
実施例7.異なる修飾を持つ基材表面においてhMSCから肝細胞へ分化誘導する誘導の検出
実施例3の方法に従い、それぞれコラーゲン溶液とhE-cad-Fcで修飾した6ウェルの細胞培養プレートを調製した。hE-cad-Fc終濃度が10μg/mL、hVE-cad-Fc終濃度が10μg/mL且つhVEGF-Fc終濃度が2μg/mLである混合溶液により修飾した6ウェルの細胞培養プレートを調製した。hMSCを105細胞/ウェルの細胞密度で培養用プレート表面に接種して、維持用培地でオーバーナイト培養した後、特定の分化用培地(培地の成分は、実施例6の培地(1)-(3)を参考する)に交換した。両日毎に換液、28日間連続培養を行って、0日目、7日目、14日目、21日目と28日目に細胞の形態を観察した。図8から分かるように、分化用培地を加えた後、異なる基材表面におけるhMSCはいすれも形態改変が始め、分化1周時点で細胞の収縮が現れ、分化4周時点で細胞が卵円形を呈した。分化の過程全体にわたって、融合蛋白質基材の表面は、細胞数がコラーゲン群より顕著に多く、形態の改変もより早く起こった。これは、融合蛋白質はhMSCの定向分化を促進でき、分化効率を上げることを証明した。同時に、前記時点で各群の細胞RNAを抽出して逆転写して、PCRにて関連する胚葉遺伝子、肝細胞遺伝子、肝極性タンパク質遺伝子、代謝酵素遺伝子と内皮細胞遺伝子の発現状況を検出した。関連する遺伝子のプライマー配列、アニーリング温度は下表に示す。
【0085】
Oct4、FoxA2、Sox17とβ-アクチン(内部標準)のPCR増幅結果、分化時間に従うmRNAの相対発現量は、図9に示す(特に指定しない限り、以下実施例には、Cは、コラーゲン表面に培養した細胞を表し、EはhE-cad-Fc表面に培養した細胞を表し、E+Vは、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc表面に培養した細胞を表す)。
CK18、CK19、AFP、ALBとβ-アクチン(内部標準)のPCR増幅結果、分化時間に従うmRNAの相対発現量は、図10に示す。
OATP、MRP2とβ-アクチン(内部標準)のPCR増幅結果、分化時間に従うmRNAの相対発現量は、図11に示す。
G6Pase、α1-ATとβ-アクチン(内部標準)のPCR増幅結果、分化時間に従うmRNAの相対発現量は、図12に示す。
CD31、VE-カドヘリン、VEGFR2とβ-アクチン(内部標準)のPCR増幅結果、分化時間に従うmRNAの相対発現量は、図13に示す。
【0086】
PCRの結果から、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで共同修飾された基材表面、及びhE-cad-Fcで修飾された基材表面でhMSCを培養することは、hMSCの肝様細胞マーカーであるAFP、ALBと血管内皮様細胞マーカーであるCD31の発現を著しく向上でき、細胞極性タンパク質であるOATPとMRP2の発現と維持を促進でき、細胞が肝機能に係るいくつかの代謝酵素であるG6Paseとα1-ATを発現することを促進させ、また、共同修飾された基材表面における分化誘導効率は、一番よいであることが分かった。また、図13から、血管内皮様細胞のマーカーであるCD31は、1週間の時点で発現が始まり、その発現時間は肝様細胞マーカーであるALBとAFPの発現時間より早く(図10)、肝臓の体内発生過程と似ている(即ち、まず内皮細胞を発生、形成し、その後、上皮細胞を発生、形成して)ことが分かった。そのため、かかる融合蛋白質の基材表面には、hMSCが融合蛋白質によってhMSCの自己分泌、パラクリン等の機能を調節し、細胞の外界微小環境を生体工学的構築でき、肝細胞の体内発生の過程を模倣することを可能にし、分化効率を上げて、分化時間を短くでき、得た細胞はよりよく肝様細胞と血管様内皮細胞としての機能を維持、発現できることが証明された。
【0087】
前記時点で細胞上清を採取して、ELISAにてALBとUreaの発現量を検出した。ELISAの結果を図14に示す。図14から分かるように、分化後の細胞のアルブミンの分泌とUreaの合成について、Elisaにて検出した場合、その発現量は分化14日目から段階的に高まり、また、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc群の発現量は、一貫してhE-cad-Fcおよびコラーゲン群より高いことを見出す。
【0088】
【表15】
【0089】
実施例8.異なる修飾を持つ基材表面においてhMSCから肝細胞への定向分化誘導の検出--免疫蛍光染色
実施例7の方法に従いレーザー共焦点細胞培養ディッシュを処理して、異なる分化誘導培地によりhMSCを分化誘導培養して、28日間連続的培養を行った後、免疫蛍光染色した。細胞を固定して、開孔され、ブロックした後、希釈した100μL ALB抗体(Abcam、米国)を1:500の希釈割合で加えて、4℃でオーバーナイトインキュベートした。その後、100μL FITC標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国、商品番号A27034)を1:1000の希釈割合で加えて、37℃で2h室温でインキュベートした。その後DAPIを含む蛍光褪色防止用剤(Anti-Fade Mouting Medium,SouthernBiotech、米国、商品番号0100-20)を加えて、4℃、暗所で保存した。レーザー共焦点顕微鏡(ライカ)で写真を取った。結果を図15に示す。
【0090】
図15から分かるように、hMSCが異なる基材表面に連続的分化4周の時点で、免疫蛍光染色の結果から、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで共同修飾した基材表面において、細胞が肝様細胞のマーカーであるALB(矢印で示す)をより多く発現し、これは、かかる基材表面においてhMSCから肝様細胞への定向分化効率が最も高い、かつその肝機能の発現も最も強いことを証明した。
【0091】
免疫蛍光染色の工程は以下の通りである。
[1]培地を棄て、冷い0.01M PBSで細胞を3回洗浄し、PBSを棄て、新たに配製した4%パラホルムアルデヒドを加えて、室温で10分間インキュベートした;
[2]パラホルムアルデヒドを棄て、冷い0.01M PBSで細胞を3回洗浄した。標的タンパク質が細胞質にいる場合、0.1%トリトンX-100を含むPBS溶液で室温10分間インキュベートして、冷い0.01M PBSで細胞を3回洗浄することを必要があり、標的タンパク質が細胞フィルムにいる場合、前記工程は不要である;
[3]10%のヤギ血清で室温30分間インキュベートして、上清を棄て、第一抗体(ALB抗体)が1:500の割合で0.01M PBS溶液により希釈した後、細胞培養ディッシュに加えて、4℃でオーバーナイトした;
[4]上清を棄て、0.01M PBSで細胞を3回洗浄し、毎回5分間である;
[5]第二抗体(ヤギ抗ウサギIgG抗体)は1:500の割合で0.01M PBS溶液により希釈した後、細胞培養ディッシュに加えて、37℃、暗所で2hインキュベートした;
[6]上清を棄て、暗所で、0.01M PBSで細胞を3回洗浄し、毎回5分間である;
[7]上清を棄て、DAPIを含む蛍光褪色防止用剤を加え、4℃、暗所で保存した。レーザー共焦点顕微鏡(ライカ)で写真を取った。
【0092】
実施例9.異なる修飾を持つ基材表面において細胞の定向分化誘導の機序についての検討--サイトカイン、基材タンパク質の分泌、及び分化の調節に関連するタンパク質の発現
実施例7の方法に従い細胞を培養して、分化誘導させ、0日目、7日目、14日目、21日目と28日目でRNAとタンパク質を抽出した。抽出したRNAを逆転写して、蛍光定量PCRで関連サイトカインと基材タンパク質の発現状況(プライマー配列およびアニーリング温度は実施例3参照)を検出した。得たデータは、コラーゲン群をコントロール群として、2-ΔΔCt法で処理した;抽出したタンパク質は、ウエスタンブロットにてβ-カテニン(BD、米国、1:1000で希釈する)、α-カテニン(BD、米国、1:1000で希釈する)、総VEGF受容体2(CST、米国、1:1000で希釈する)、リン酸化-VEGF受容体(Tyr 1175位してリン酸化)(CST、米国、1:1000で希釈する)、総EGF受容体(CST、米国、1:1000で希釈する)とリン酸化-EGF受容体(Tyr 1068位のさらなるリン酸化)(CST、米国、1:1000で希釈する)の発現状況を検出した。
【0093】
図16から分かるように、分化の過程には細胞のβ-カテニンの発現が持続的な低下すること、また、hE-cad-FcとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで共同修飾した基材表面において、細胞が発現したβ-カテニンのレベルが最も低くことは、hMSCから上皮細胞への分化に寄与する。同時に、外来の可溶性EGFとVEGFを加えていない場合、コラーゲン群とhE-cad-Fc修飾群と比べて、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで共同修飾群の細胞において、EGF受容体とVEGF受容体のリン酸化の継続的なポジティブな発現は、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcが、EGF受容体とVEGF受容体を持続的活性化させてでき、hMSCから上皮細胞と内皮細胞への分化に寄与することを証明した。
【0094】
図17から、分化誘導過程において、コラーゲン表面と比べて、融合蛋白質表面に培養したhMSCが、細胞外マトリクスタンパク質成分(フィブロネクチン、コラーゲンおよびラミニン)を持続的に高発現し、サイトカイン(TGFβとHGF)、IL-6を分化誘導の初期に高発現し、VEGFが経時的に低発現したことが分かった。かかる結果から、融合蛋白質基材は、幹細胞の分泌機能を調節し、そして細胞の微小環境を再構成する機能を有しており、それは肝臓の発生経過を生体工学的模倣して、幹細胞を上皮と内皮細胞へ定向分化誘導することの制御に寄与することがわかった。
【0095】
実施例10.異なる修飾を持つ基材表面において細胞の定向分化誘導の機序についての検討--YAPタンパク質の発現と分布
実施例3の方法と同様にしてレーザー共焦点細胞培養ディッシュを処理して、維持用培地によりhMSCを48時間培養した後、実施例8の方法で免疫蛍光染色した。100μL希釈したYAP抗体(Santa Cruz、米国)を1:1000の希釈割合で加えて、4℃でオーバーナイト培養した。100μL FITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国、商品番号A32723)を1:1000の希釈割合で加えて、37℃で室温2hインキュベートした。DAPIを含む蛍光褪色防止用剤(SouthernBiotech、米国、商品番号0100-20)を加えて、4℃、暗所で保存した。レーザー共焦点顕微鏡(ライカ)で写真を取った。結果を図18に示す。
【0096】
図18から分かるように、hMSCを融合蛋白質修飾した基材表面に培養した場合、YAPタンパク質は、細胞質においてより多い分布したことを見える。なお、TCPS基材とコラーゲン基材表面に培養した場合、YAPタンパク質は細胞核と細胞質に同様に分布するようになる。これら結果によると、融合蛋白質で修飾された基材は、細胞中のYAPタンパク質の分布を調節できるので、幹細胞を上皮細胞への分化誘導を促進することを示している。
【0097】
実施例11.異なる修飾を持つ基材表面において細胞の定向分化誘導の機序についての検討--MET経路に関連する遺伝子の発現
実施例7の方法と同様にして細胞を培養して、分化誘導させ、0日目、7日目、14日目、21日目と28日目でRNAを抽出して逆転写した。PCRで関連遺伝子の発現状況(プライマー配列、アニーリング温度は下表に示す)を検出し、結果を図19に示す。図19から分かるように、融合蛋白質は肝細胞核内転写因子であるHNF4αの発現を促進できるから、さらに細胞がα-カテニンとE-カドヘリンを発現することを促進し、細胞がSnail、ビメンチンとTwistを発現することを抑え、細胞がMET形質転換することを促進する。
【0098】
【表16】
【0099】
実施例12.PLGAマイクロビーズ表面に融合蛋白質の固定および安定性の検出
実施例3の方法に従い、終濃度が10μg/mL hE-cad-Fc、10μg/mLのhVE-cad-Fcと、終濃度がそれぞれ0μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mLと25μg/mLのhVEGF-Fcの混合溶液を、それぞれ調製した。1mg PLGAマイクロビーズの粉末(sigma、米国、商品番号805114)を、前記混合溶液にそれぞれ浸漬して、十分に振盪した後、37℃の水平ロータリーシェーカーに入れて、150rpmで2hインキュベートした。上清を棄て、PBSにて振盪して、安定的に固定されなかった融合蛋白質を洗浄して除去した(3回)。その後、固定量の検出を行いた。300μL 5%BSA溶液を加えて、37℃の水平ロータリーシェーカーに置いて、150rpmで2hブロックした。100μL希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(Abcam、米国)を1:10000の希釈割合で加えて、37℃の水平ロータリーシェーカーに置いて、150rpm、暗所で1hブロックした。0.01M PBSで5回洗浄した後、チューブ毎に300μL TMB(索莱宝、商品番号PR1200)発色液を加えて、37℃水平ロータリーシェーカーに置いて150rpm、暗所で30分間反応した。300μL停止液を加えて、200μL溶液を取って96穴プレートに加えた。452nmで吸光度の値を測定し、マイクロビーズ表面に3つの種類の融合蛋白質を共同固定させる場合の最大固定量を検定した。その後、hE-cad-Fc、hVE-cad-FcとhVEGF-Fcを前記方法に従って、最大固定量でPLGA表面に共同固定し、それぞれPBS、DF12培地、DF12+10%FBSによって、28日間浸漬した後、上清の吸光度を前記方法に従って、0、7、14、21、28日目にそれぞれ検出することで、マイクロビーズ表面に対して融合蛋白質の固定時間を評価した。それぞれ、DyLightTM550 Antibody Labeling Kit(ThermoFisher、商品番号84530)、DyLightTM488 Microscale Antibody Labeling Kit(ThermoFisher、商品番号53025)とDyLightTM405 Antibody Labeling Kit(ThermoFisher、商品番号53020)を使用して、hE-cad-Fc、hVE-cad-FcとhVEGF-Fcを標識して(標識の手順は以下の通りである)、最大固定量に応じて3種類の蛍光標識タンパク質をPLGAマイクロビーズ表面に共同固定し、レーザー共焦点顕微鏡で融合蛋白質がマイクロビーズ表面での分布を観察した。結果を図20に示す。
【0100】
図20から分かるように、10μg/mL hE-cad-Fcと10μg/mL hVE-cad-Fcを同じPLGAマイクロビーズ表面に共同固定した後、システム全体の吸光度は、VEGF-Fc濃度の向上に伴ってますます増加した。3種類の融合蛋白質が同時にマイクロビーズ表面に固定されることが証明した;常用されるPBS、培地、又は血清を含む培地に一定期間浸漬した場合、上清の吸光度がほとんど変化しないことを見出して、融合蛋白質がマイクロビーズ表面に4週間まで安定に存在できることが証明した;フルオレセイン付ける融合蛋白質をマイクロビーズ表面に固定して、レーザー共焦点にて検定することで、3種類の融合蛋白質はマイクロビーズ表面に均一に分布できることがわかった。
【0101】
融合蛋白質の蛍光標識工程は以下の通りである。
[1]40μL 0.67Mホウ酸塩バッファーを取って、500μL 2mg/mL融合蛋白質溶液と均一に混合した;
[2]前記溶液を、予め蛍光染料50μgを装填した試験管に加えて、軽くボルテックスして、ピペットでピペッティングして均一に混合し、暗所で室温60分間インキュベートした;
[3]均一に混合した吸着レジンを250μL取って、遠心分離カラムを入れた遠心分離チューブに入れて、1000gで1分間遠心分離し、上清を棄て、遠心分離カラムを新たな遠心分離チューブに移した;
[4]250μL 前記工程[2]の反応後の溶液を工程[3]の遠心分離カラムに加え、わずかにボルテックスして、反応液と吸着レジンとを混合させた;
[5]1000gで1分間遠心分離して、精製した溶液を収集して、融合蛋白質の標識を完成し、4℃又は-80℃、暗所で保存した。
【0102】
実施例13.細胞凝集体の調製、PLGAマイクロビーズと細胞との混合比率の選択
8×105 hMSC細胞とPLGAマイクロビーズをそれぞれ、3:1、1:1と1:3の割合で混合して、AggrewellTM(Stemcell Technologies、商品番号27845)培養用プレートに加えて、1000rpmで5分間遠心分離した後、細胞インキュベーターに置いて、37℃でオーバーナイト培養した。顕微鏡で細胞凝集体の形態を観察した。結果を図21に示す。図21から分かるように、マイクロビーズと細胞との割合は、1:1-1:3にいる場合、18時間のインキュベーション後に得た凝集体は、完全な構造を有し、大きさがそろった。
【0103】
その後、1000μLの尖端を切り落としたピペットチップで凝集体を吹き出し、15mL遠心分離チューブに入れて、自然沈降によって沈殿物を収集した。200μL 2%アルギン酸の溶液で沈殿物を再縣濁して、0.1M CaCl2溶液に滴下して10分間インキュベートすることで、アルギン酸のハイドロゲルを形成した。上清を棄て、アルギン酸のハイドロゲルを生理食塩水で洗浄し、異なる割合のマイクロビーズを含む細胞凝集体を6ウェルの培養用プレートに入れて、分化用培地(DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS+20ng/mL EGF+40ng/mL hVEGF)で7日間連続培養し、2日毎に培地を交換した。7日目に0.1M EDTA溶液でアルギン酸ハイドロゲルを溶解した。細胞凝集体を収集して、1mL Trizolを加えてRNAを抽出した。実施例7の方法に従い、上皮細胞の遺伝子と内皮細胞に関連遺伝子の発現を検定した。結果を図22に示す。図22から分かるように、定向分化誘導培地を加えて1週間培養した時点に、マイクロビーズとhMSCとの割合は1:3であれば、凝集体が肝様細胞遺伝子(CK18、ALBとASGPR)と血管内皮様細胞遺伝子(CD31とVEGFR2)を発現する能力は最も強くことを観察された。これは、ここで幹細胞の凝集体の、上皮細胞と内皮細胞への分化効率が最も高いのを証明した。よって、次の試験に該割合を選用した。
【0104】
実施例14.PLGAマイクロビーズ表面において融合蛋白質の異なる濃度の選択
hE-cad-FcとhVE-cad-Fcは、濃度で3:1(hE-cad-Fc:15μg/mL、hVE-cad-Fc:5μg/mL)、1:1(hE-cad-Fc:10μg/mL、hVE-cad-Fc:10μg/mL)と1:3(hE-cad-Fc:5μg/mL、hVE-cad-Fc:15μg/mL)になるように希釈された後、終濃度で2μg/mLのhVEGF-Fcを加えて、実施例12の方法にて、それぞれ、前記異なる配合比率の融合蛋白質でPLGAマイクロビーズを修飾し、10μg/mLコラーゲンでPLGAマイクロビーズを修飾した。その後、マイクロビーズとhMSCはhMSC:マイクロビーズ=3:1の割合で混合した。細胞凝集体は実施例13の方法にて調製して分化誘導した。7日目に、実施例7の方法と同様にRNAを抽出して逆転写して、関連遺伝子の発現を検出した。結果を図23に示す(ここで、mcpはコラーゲン修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体を示し、E:VE/VEGF-Fcは、2種類の融合蛋白質が異なる割合で同じマイクロビーズを修飾したものを含む細胞凝集体を示す)。図23から、定向分化誘導培地を加えて1週間培養した時点に、同じPLGAマイクロビーズ表面のhE-cad-FcとhVE-cad-Fcの割合は1:1であれば、凝集体が肝様細胞遺伝子(HNF4α、ALB、OATP、α1-ATとG6Pase)と血管内皮様細胞遺伝子(CD31とVE-カドヘリン)の発現能力は最も強くことを観察された。これは、ここで幹細胞の凝集体の、肝様細胞と血管内皮様細胞への分化効率が最も高いことを証明した。よって、次の試験に該割合を選用した。
【0105】
実施例15.異なる融合蛋白質で修飾されたマイクロビーズの間の割合の決定
実施例12の方法で、10μg/mLコラーゲン溶液でPLGAマイクロビーズを修飾しており、10μg/mL hE-cad-Fc溶液でhE-cad-Fc修飾PLGAマイクロビーズを調製し、10μg/mL hVE-cad-Fcと2μg/mL hVEGF-Fc溶液でhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾PLGAマイクロビーズを調製した。そして、2種類のマイクロビーズは3:1、1:1と1:3の割合で混合した。hMSCは、hMSC:マイクロビーズ=3:1の割合でマイクロビーズと混合した。細胞凝集体は、実施例13の方法で調製して分化誘導した。7日目に、実施例7の方法と同様にRNAを抽出して逆転写して、関連遺伝子の発現を検出した。結果を図24に示す(ここで、mcpは、コラーゲン修飾マイクロビーズを含む細胞凝集体、mEp:m(VE/VEGF)pは、融合蛋白質修飾マイクロビーズを異なる割合で含有している細胞凝集体を示す)。図24から分かるように、定向分化誘導培地を加えて1週間培養した、hE-cad-Fc修飾PLGAマイクロビーズとhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾マイクロビーズとの割合は1:1である場合、凝集体の、肝様細胞遺伝子(HNF4α、OATPとASGPR)と血管内皮様細胞遺伝子(CD31)の発現能力が最も強く、肝様細胞と血管内皮様細胞への分化効率が最も高くなることを観察された。よって、次の試験に該割合を選用した。
【0106】
実施例16.凝集体についての定向分化誘導の検討
実施例12の方法に従い、異なるタンパク質溶液(hE-cad-Fc融合蛋白質、hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc融合蛋白質、又はコラーゲン)で修飾したマイクロビーズを調製した。修飾の実情は以下の通りである。
(1)10μg/mLコラーゲンでPLGAマイクロビーズを修飾した;
(2)同じPLGAマイクロビーズに対して、10μg/mL hE-cad-Fc、10μg/mL hVE-cad-Fcと2μg/mL hVEGF-Fc融合蛋白質で共同修飾した;
(3)一部のPLGAマイクロビーズは、10μg/mL hE-cad-Fcで修飾し、別の一部のPLGAマイクロビーズは10μg/mL hVE-cad-Fcと2μg/mL hVEGF-Fcで修飾し、2種類のマイクロビーズを等割合で混合した。
【0107】
実施例13の方法で、細胞は、hMSC:マイクロビーズ=3:1の割合でマイクロビーズと共混して、コラーゲン修飾マイクロビーズを含む凝集体(mcpと略記)、hE-cad-Fc、hVE-cad-FcおよびhVEGF-Fcの共同修飾マイクロビーズを含む凝集体((E/VE/VEGF)pと略記)、異なる融合蛋白質で個別に修飾したマイクロビーズを、等しい割合で混合したものを含む凝集体((mE+mVE/VEGF)pと略記)、のいろいろ凝集体を調製した。マイクロビーズを含まないhMSCの凝集体(mと略記)を対照として、次の特定の分化用培地で28日間連続的培養を行った。0日目、7日目、14日目、21日目と28日目でRNAを抽出してPCRで検出した。具体的プライマーの配列は、実施例7に示す。結果を図25に示す。
【0108】
図25から分かるように、融合蛋白質を含む凝集体には、FoxA2とSox17がより早く発現された。これは、融合蛋白質は内胚葉への分化がより早く開始できるのを証明した。融合蛋白質を含む凝集体には、肝細胞関連遺伝子であるHNF4α、CK18、AFPとALBおよび内皮細胞関連遺伝子であるCD31、VE-カドヘリンとVEGF受容体2がより早く発現された。これは、融合蛋白質が幹細胞から上皮細胞と内皮細胞への分化誘導を促進できることを証明した。融合蛋白質を含む凝集体には、肝細胞極性タンパク質遺伝子(MRP2、OATPとASGPR)と関連代謝酵素の関連遺伝子(G6Paseとα1-AT)がより早く発現された。これは、融合蛋白質は、肝細胞構造と機能を促進できるのを証明した。実施例7の2D培養方式に比べて、凝集体の分化効率が顕著に高まり、所要の分化時間が大きく短縮した。2D培養と比べて、3D培養は肝細胞極性遺伝子であるOATPとMRP2の発現を著しく向上できる、且つ、細胞は内、外来性の環境要素との協調はより有効であり、胆管上皮細胞への定向分化を促進する;融合蛋白質を同じPLGAマイクロビーズ表面に共同固定したものを含むhMSC凝集体には、細胞分化に係る指標が効率よく発現され、hMSC凝集体の定向分化誘導が促進された。
【0109】
分化用培地:
m、mcp:DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS+20ng/mL EGF+40ng/mL hVEGF;
m(E/VE/VEGF)p、(mE+mVE/VEGF)p:DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-4+10ng/mL FGF-2+20ng/mL HGF+1*ITS。
【0110】
実施例17.オルガノイドの染色
実施例16の方法で、4種類の凝集体(それぞれ、m、mcp、m(E/VE/VEGF)pと(mE+mVE/VEGF)p)を調製して分化誘導した。2週間分化誘導した後、0.9%NaCl溶液を含む0.1M EDTA溶解液でアルギン酸を溶解して、凝集体の沈殿物を収集した。以下の全ての工程には、PBSB溶液(0.01M PBS溶液、5%BSAを含む)で処理したピペットチップで作業を行った。冷たい0.01M PBS溶液でオルガノイドを3回洗い、上清を棄て、300μL最近配製した4%パラホルムアルデヒド溶液を加えて、室温で少なくとも30分間インキュベートした。沈殿物を収集して冷たい0.01M PBS溶液でオルガノイドを3回洗い、上清を棄て、300μL PBSDT溶液(0.01M PBS+1%BSA+1%ヤギブロック血清+0.5%トリトンX-100+1%DMSO)を加えて、4℃でブロックしてオーバーナイトした。上清を棄て、PBSDT溶液により一定の割合で希釈した第一抗体(希釈の割合は、以下で説明する)100μLを加えて、4℃で24-48h反応した。上清を棄て、冷たい0.01M PBS溶液でオルガノイドを3回洗い、上清を棄て、PBSDT溶液により一定の割合で希釈した第二抗体(希釈の割合は、以下で説明する)100μLを加えた。上清を棄て、冷たい0.01M PBS溶液でオルガノイドを3回洗い、上清を棄てDAPIを含む蛍光褪色防止用剤100μLを加えて、4℃、暗所で保存した。レーザー共焦点顕微鏡(ライカ)で写真を取って観察した。結果を図26に示す。異なる材を含むhMSC凝集体が2週間連続分化誘導した際の免疫蛍光染色の結果から、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcを共同固定した基材表面には、細胞がより多くの肝様細胞のマーカーであるALBおよび内皮細胞のマーカーCD31(矢印で示す)を発現したことを分かった。該基材表面では、hMSCから肝様細胞および内皮様細胞への分化効率最も高いことが証明された。
【0111】
【表17】
【0112】
実施例18.内皮細胞共培養系との対比
hMSCは2:8割合で臍静脈内皮細胞(HUVEC、サイヤジェンバイオ)と混合して、aggrewell培養用プレートに8×105個を加え(HMと略記)、好適化した試験群であるm(E/VE/VEGF)pと(mE+mVE/VEGF)pと比較した。細胞は、実施例16の方法にて定向分化誘導培地で2週間連続培養した。2周の時点に、サンプルのRNAおよび培地上清を抽出し、関連遺伝子の発現状況(ALB、MRP2、OATP、α1-AT、CD31とVE-カドヘリン)をそれぞれPCRで検出し、ALBの細胞分泌能をELISAで検出した。結果を図27に示す。
【0113】
図27から分かるように、配向誘導培地を加えた2週間後、PCRにて以下の結果が示された。対照群HMは、試験群に比べて関連した内皮細胞マーカーであるCD31とVE-カドヘリンをより良く発現した。また、融合蛋白質表面で2週間分化誘導された試験群にはCD31とVE-カドヘリン陽性細胞が出現するので、凝集体内に内皮様細胞の存在が示された。また、試験群は、肝分化機能に関連する遺伝子(ALB、MRP2とα1-AT)の発現レベルはHM群よりも高く。さらに、ELISAで肝の分化機能を示したアルブミンの分泌を検出した。その結果から、試験群はHM対照群より顕著に良く、また、m(E/VE/VEGF)p群には、肝細胞に関連する指標の発現レベルが最も高いことを示した。
【0114】
実施例19.異なる修飾を持つ基材表面においてhMSCから膵島細胞への分化誘導能力の確認
実施例7の方法に従い、異なる融合蛋白質修飾を持つ6ウェルの細胞培養プレートを調製した。105細胞/ウェルの細胞密度でhMSCを培養用プレート表面に接種して、維持用培地でオーバーナイト培養した後、特定の分化用培地(10 ng/mL EGF、10 ng/mL FGF-2、10 mMニコチンアミド、1X ITS-G DMEM分化用培地で一周間定向誘導され、その後、10 ng/mL HGF、10 ng/mL FGF-2、10 mMニコチンアミド、1X ITS-Gを添加したDMEM分化用培地に交換して両周間配向誘導された)に交換して両日毎に培地を交換し、21日間連続培養した。実施例7の方法に従い、21日目にRNAを抽出した、PCRで関連遺伝子の発現状況を検出した。結果を図28に示す。図28から分かるように、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcで修飾した基材表面にhMSCを培養することは、hMSCから膵島様細胞への分化効率と膵島様細胞の成熟度にも著しく向上できる。膵臓の発生過程において、上皮細胞から分泌したシグナル分子、内皮細胞から分泌したシグナル分子は、内分泌細胞と外分泌細胞運命の調節過程に極めて重要な役割を担っている。なお、成熟した膵島の中、膵島β細胞で分泌したインシュリン、又はα細胞で分泌したグルカゴンは、いずれも内皮シグナルおよび血管ネットワークを介する必要がある。図28に示す結果から、hE-cad-Fc/hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc融合蛋白質の存在により、特に、内皮シグナルと内皮細胞の存在下、増殖因子と結合して細胞が異なる運命への分化を促進することが推定された。膵島細胞がin vitroで機能の維持について新しい方案を提供する。
【0115】
【表18】
【0116】
実施例20.凝集体から内皮細胞への定向分化誘導の検討
実施例12の方法に従い、10μg/mL hVE-cad-Fcと2μg/mL hVEGF-Fc溶液でhVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾PLGAマイクロビーズを調製した。異なる凝集体は、実施例13の方法に従い、細胞を、hMSC:マイクロビーズ=3:1の割合でマイクロビーズと共混して調製した。マイクロビーズを含まない細胞凝集体(mと略記)と、PLGAマイクロビーズを含む細胞凝集体(mpと略記)は、対照群とし;hVE-cad-FcとhVEGF-Fcで共同修飾したマイクロビーズを含む細胞凝集体(mvpと略記)は、リサーチ群とし、内皮定向分化誘導培地(DF12+2%FBS+10ng/mL FGF-2)で培養して、両日毎に換液し、連続分化誘導されて7日間培養した。7日目に、RNAとタンパク質を抽出し、PCRで関連した内皮細胞マーカー(vWF、CD31とVE-カドヘリン)の発現、細胞が分泌した基材と因子(フィブロネクチン、VEGF、IL-8、IL-6、MCP-1、IGFBP-3とアンジオポエチン)の変化を検出した。具体的なプライマー配列は実施例3、実施例7および下表を参照する;ウエスタンブロットにより関連した内皮細胞マーカーであるCD31、VE-カドヘリンとvWF(Abcam、米国、1:1000で希釈する)の発現状況を検出した。結果を図29に示す。
【0117】
図29Aから分かるように、m群とmp群に比べて、hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc修飾PLGAマイクロビーズを含む細胞凝集体のmvp群には、vWF、CD31、VE-カドヘリン等の内皮細胞マーカーの発現能力が、遺伝子の層面とタンパク質の層面でいずれも明確に向上した。よって、hVE-cad-Fc/hVEGF-Fc融合蛋白質が、hMSCから血管内皮様細胞に分化誘導して内皮細胞マーカーを発現することを著しく促進できることが示された。かつ、分化誘導時間の延長につれて、対照群に比べて、mvpリサーチ群の細胞の内皮細胞マーカー発現量は持続に上昇した。よって、hVE-cad-Fc/hVEGF-Fcが、培地の中の分化因子と協調でき、hMSCから内皮細胞への分化及びその機能の発現を持続促進することが示された。図29Bから分かるように、分化誘導する過程の初期において、mvp群の細胞におけるフィブロネクチン、VEGF、IL-8、IL-6、MCP-1、IGFBP-3および血管新生素等のサイトカインの発現レベルは、2つの対照群より高いである。よって、融合蛋白質が、細胞により内皮特異性関連サイトカインと細胞外マトリクスの分泌を著しい改善できるから、内皮細胞微小環境を構築して、hMSCから内皮細胞への分化を促進することが示された。
【0118】
【表19】
【0119】
実施例21 PAMAM/ヒアルロン酸ハイドロゲルについての機能化修飾
G5-Ac-DVS、G5-Ac-DVS-RGD,G5-Ac-DVS-Fc-bpの合成は、以下の通りである。 5代目のPAMAM(PAMAM G5)デンドリマー(502mg、0.0197 mmol、Dendritech Inc.Midland,MI,USAより購入)をメタノール(60mL)に溶解し、トリエチルアミン(259mL、1.846 mmol)を加えて、室温で10分間攪拌した。反応混合液へ無水酢酸(140mL、1.477 mmol)のメタノール(40mL)溶液を滴下した。オーバーナイト反応して、分子量カットオフ10000のフィルムで透析し、PBS(10mL×3回)と脱イオン水(10mL×3回)で洗浄した。凍結乾燥して、G5-Ac産物が得られた。
【0120】
G5-Ac(333mg、0.0116 mmol)は脱イオン水(20mL)に溶解した。2-サブアンモニアヒドロクロライドチオール(80.05 mg、0.582 mmol)を加えた。窒素ガスによるシールドで室温24時間反応した。分子量カットオフ10000のフィルムで透析し、PBS(10mL×3回)と脱イオン水(10mL×3回)で洗浄した。凍結乾燥して、G5-Ac-SH産物が得られた。
G5-Ac-SH(213.4 mg、0.00661 mmol)は脱イオン水(15mL)に溶解した。ジビニルスルフォン(DVS、132.5μL、1.321 mmol)を加えた。窒素ガスによるシールドで室温2日間反応した。分子量カットオフ10000のフィルムで透析し、PBS(10mL×3回)と脱イオン水(10mL×3回)で洗浄した。凍結乾燥して、G5-Ac-DVSが得られた。
【0121】
G5-Ac-DVS(58.5 mg、0.00166 mmol)は脱イオン水(5mL)に溶解した。RGDポリペプチドCGRGDS(SEQ ID NO:92、6.9 mg、0.0116 mmol)は脱イオン水(1mL)に溶解した。2種溶液を混合した。室温で1時間反応した。分子量カットオフ10000のフィルムで透析し、PBS(10mL×3回)と脱イオン水(10mL×3回)で洗浄した。凍結乾燥して、G5-Ac-DVS-RGDが得られた。
【0122】
G5-Ac-DVS(164mg、0.00513 mmole)、Fc結合ポリペプチド(4.83 mg,0.00513 mmol、CHWRGWV、SEQ ID NO:93、ここで、Fc-bpと略記)を、それぞれ、無酸素の水5mLと1mLに溶解した。そして、ポリペプチド溶液は、ゆっくり樹枝状分子溶液に添加しながら攪拌した。混合溶液は、室温で攪拌して1時間反応した。反応した混合液は、分子量カットオフ10000のフィルムでろ過した。残余は、それぞれ、PBS(15mL×3回)とウォーター(15mL×3回)で洗浄した。最後、凍結乾燥して、収率95.9%のG5-Ac-DVS-Fc-bp産物が得られた。合成経路図は図30-Aに示す。核磁気共鳴の水素スペクトルは図30-bに示す。
【0123】
ヒアルロン酸ハイドロゲルの機能化修飾は以下の通りである。
はじめに、G5-Ac-DVS-Fc-bpデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備える。前記溶液50μLを取って、その中に初濃度200μg/mLであるhVE-cad-Fc融合蛋白質10μLを加えて、37℃で1hインキュベートした。その後、50μLチオール化のヒアルロン酸(Bio Time Inc)を加えて、96穴プレートにいれた。対照群には、G5-Ac-DVSデンドリマーを用いており、それ以外の作業工程は同じのものである。安定なハイドロゲルを形成した後、ウェル毎に100μL PBSを加えてハイドロゲルを完全に浸かるように浸漬し、1、3、5、7、10、14日目にそれぞれ上清を取って、ELISAキット(R&D)方法にてhVE-cad-Fc融合蛋白質の放出した量を検出した。方法はキットの説明に従って、具体的に以下である:標品ウェルは:ウェル毎に希釈した標品50μLを加え、ゼロウェルとしては、標品/サンプル希釈液50μLを加え、その後、酵素標識試薬50μLを加えた。サンプルウェルは:サンプル50μLを加えて、その後、酵素標識試薬50μLを加えた。軽く振いて、カバーフィルムを被せて、37℃で60分間インキュベートした。カバーフィルムを慎重に剥がし、液体を棄て、ドライまでに振り回し、ウェル毎に洗い液を満ちるように注ぐ、30秒静置して洗い液を棄て、5回を繰り返し、叩いて水分を取り除く。ウェル毎に、先ず発色剤A 50μLを加えて、そして発色剤B 50μLを加え、軽く振盪してよく混ぜ、37℃、暗所で10分間発色した。ウェル毎に停止液50μLを加えて、反応を停止させた。452nmで吸光度を測定した。結果から、Fc-bpの接続を利用したhVE-cad-Fcは、2週間内のハイドロゲルへの固定率が85%程度になっており、Fc-bpの接続を利用しなかったhVE-cad-Fcは、ハイドロゲルへの固定率がわずかに40%程になったことがわかった(図30-C)。前記2種類の方式で修飾したハイドロゲルの前液は、それぞれ、均一にするように48穴プレートに加えた。安定なハイドロゲルを形成した後、ウェル毎に2×104のHUVEC(米国ScienCell会社)、hMSC細胞(広州Saiye Co., Ltd.)を別々に接種した。24時間後に、相差顕微鏡で2種類の細胞の接着及び形態の特徴を別々に観察した。その結果は、Fc-bpを利用したhVE-cad-Fcによる固定手段で修飾したハイドロゲルが、無Fc-bpのハイドロゲル系より、細胞の接着を著しく促進できることを示している(図30-D)。
【0124】
実施例22 融合蛋白質で機能的に修飾されたヒアルロン酸ハイドロゲルの物理化学的特性の特性化
2種類のハイドロゲルを調製した。
その1種は、hVE-cad-Fc融合蛋白質修飾ハイドロゲルである:G5-Ac-DVS-Fc-bpデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備えて、前記溶液50μLを取って、初濃度200μg/mLのhVE-cad-Fc融合蛋白質10μLを加えて、室温で1hインキュベートし、50μLチオール化ヒアルロン酸を加えて、hVE-cad-Fc融合蛋白質修飾ハイドロゲルを形成した。
もう1種は、非修飾ハイドロゲルである。G5-Ac-DVSデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備えて、前記溶液50μLを取って、その中に50μLチオール化ヒアルロン酸を加えて、非修飾ハイドロゲルを形成した。
【0125】
ハイドロゲルの分解試験は以下の通りである。 2種類のハイドロゲルを、それぞれ、PBS、ヒアルロニダーゼ(Sangon Biotech(Shanghai)Co.Ltd.)、HUVEC培地(ScienCell会社、500mL 基礎培地、25mL FBS,5mL 内皮細胞増殖因子、5mL ペニシリン/ストレプトマイシンを含む)上清、hMSC培地(DMEM培地とF12培地が1:1で混合した物からなる、HyClone)上清の中の2週間浸漬した。ハイドロゲルの初期重さをM0とし、1、3、5、7、10、14日目の時点にそれぞれ吸収紙で余分なPBSを吸い出した。残余なハイドロゲルの重さを計量してMtをとし、式M%=(M0-Mt)/M0にした。結果から、ハイドロゲルは、PBSの中の場合はほぼ分解しないで、ヒアルロニダーゼの溶液の場合、24時間内にほぼ完全に分解しており、細胞培地上清の場合、70%程までに分解したことがわかった。hVE-cad-Fc修飾を経ったハイドロゲルは、分解性が改変しない(図31-A)。
【0126】
ハイドロゲルの膨潤性の試験は以下の通りである。 二つの群の異なるハイドロゲルは、それぞれ、PBSに2週間完全に浸かるように浸漬した。ハイドロゲルの初期重さをM0とし、1、3、5、7、10、14日目の時点にそれぞれ吸収紙で余分なPBSを軽く吸い出した。残余なハイドロゲルの重さを計量してMtとし、算出方法は前記同様にした。ハイドロゲルは、PBS溶液にはほぼ膨潤しないから、hVE-cad-Fc修飾を経った後、ハイドロゲルの膨潤性が改変しない(図31-B)。
【0127】
ハイドロゲルのレオロジーの試験には、前記2種ハイドロゲルの前液サンプル(融合蛋白質修飾ハイドロゲル、非修飾ハイドロゲル)それぞれ500μLを用意し、レオメーター(AR 2000ex)でハイドロゲルの粘弾性を検出した。先ず、空気圧縮機を開いて、エアータンク圧力が自動的に上昇した。エアータンク圧力が0.5MPになった時、出力圧力を0.45MPにするように時計回りに調節して、レオメーターの圧力調節弁を点検して30 Pisにするように5分間安定させた。次に、循環水を開いて、エアベアリングの安全ロックを検出し、平行な治具プレートを取り付けた。そして、レオメーターのホストコンピューターを開いて、レオロジーのプログラムをコンピューターで試験して、機器のブレを直した;最後に、試験の要求によって一定のパラメータを設け、サンプルを配製して試験を始また。具体的パラメータ設置は:平行な治具プレート4cm、隙間設置 500μm、温度 25℃である。ダイナミックタイムスキャン:時間 7200 s、20 sおきに1つのポイントを取り戻し、周波数は1 rad/sであり、応力は1%である;ひずみスキャン範囲は0.1-10%で、周波数 1rad/sである;動態周波数スキャン範囲は0.1-100 rad/sで、応力は1%である。サンプルを測定する際は、500μL被検試料を取ってトレイに入れ、平行な治具プレートの間の隙間を500umに低めて、サンプルの測定を始まった。結果から、ヒアルロン酸の溶液はハイドロゲルを形成でき、形成したハイドロゲルの粘弾性が良い、かつ、一定の機械的応力強度を有することと、hVE-cad-Fc修飾をした後、ハイドロゲルのレオロジー特性は改変しないことがわかった(図31-C)。
【0128】
ハイドロゲルの表面の外観特徴について、2つの群のハイドロゲルのサンプル各200μLを用意して真空下で冷凍乾燥処理した。乾燥した多孔ハイドロゲルを立方体の形状になるように切断した。両面テープで、サンプルを観察面が上にいるように、走査型電子顕微鏡の銅の板に張り付けた。SEM(QUANTA 200,FEI)でのスキャンの結果から、ハイドロゲルの内部には比較的な均質な孔隙率を持つ構造が有しており、修飾前、後のハイドロゲルの外観特徴には著しい変化がないことがわかった(図31-D)。その中、左1は、対照群のハイドロゲルであり、左2はその局所拡大図であり、左3はhVE-cad-Fc融合蛋白質修飾ハイドロゲルであり、左4はその局所拡大図である。
【0129】
実施例23 融合蛋白質で機能的に修飾されたハイドロゲルによるHUVECの生存の影響の検討
試験サンプルの調製は以下の通りである。 試験には、3つの群に分け、(1)対照(Control)群には、G5-Ac-DVSデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備えて、50μL前記溶液を取って、その中に50μLチオール化のヒアルロン酸を加えて、単独ハイドロゲル系を形成した;(2)RGD群には、G5-Ac-DVS-RGDデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備えて、50μL前記溶液を取って,その中に50μLチオール化のヒアルロン酸を加えて、RGD修飾ハイドロゲル系を形成した;(3)hVE-cad-Fc群には、G5-Ac-DVS-Fc-bpデンドリマー25mgを500μL無酸素PBSに完溶して、使用に備えて、50μL前記溶液を取って,を加えて10μL初濃度200μg/mLしたhVE-cad-Fc、室温で1hインキュベートした。その中に50μLチオール化のヒアルロン酸を加えて、hVE-cad-Fc修飾ハイドロゲル系を形成した;
【0130】
細胞の光学顕微鏡の観察試験:前もって用意した3つの群の異なるハイドロゲルの前液サンプル100μLを、均一にするように96穴プレートに加えて、37℃で10分間インキュベートして、安定なハイドロゲルになるまで待っていた。ウェル毎に細胞1×104個を播種し、細胞インキュベーター(37℃、5%CO2)で培養して、細胞が72時間培養した際に、倒立相差顕微鏡(Olympus、CKX41)にて細胞の外観特徴を観察した。結果から、hVE-cad-Fc修飾ハイドロゲル群において、HUVECの外観には、毛細血管様構造と類似のものが現れていることがわかった(図32-A)。
【0131】
細胞の生存死亡の染色試験は以下の通りである。 細胞が72時間培養した際に、細胞培地を吸い出し、PBSで細胞を洗浄して、細胞生存死亡染色液を調製した:2μL 2mM EthD-IIIドープ+0.5μL 4mM Calcein Amドープ+1mL PBS。ウェル毎に100μL生存死亡染色液を加えて、細胞インキュベーターに30分間放置して、PBSで3回洗浄した。蛍光顕微鏡で観察した。結果から、対照群に比べて、hVE-cad-Fc修飾ハイドロゲルは細胞の生存能力を著しく増強させたことがわかった(図32-Bに示す)。
【0132】
細胞の増殖試験。前もって用意した3つの群の異なるハイドロゲルの前液サンプル100μLを、均一にするように96穴プレートに加えて、37℃で10分間インキュベートして、安定なハイドロゲルになるまで待っていた。ウェル毎に細胞1×104個を播種し、細胞インキュベーター(37℃、5%CO2)で培養して、細胞の増殖能をそれぞれ、4、24、48、72時間にCCK-8試験にて検出した。詳細は以下の通りである。 先ず、細胞培地を吸い出し、PBSで細胞を洗浄して、前もって調製したCCK-8溶液(100μL毎に10μL CCK-8ドープ(CA1210,Solarbio)と90μL ECM培地(ScienCell会社)を含む)をウェル毎に100μLで加えて、37℃で4時間インキュベートした。前記培養したCCK-8溶液は、新たな96穴プレートに移行され、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度の値を測定した。結果から、hVE-cad-Fc修飾ハイドロゲルは細胞の接着及び増殖を促進できることがわかった(図32-C)。
【0133】
細胞骨格の染色試験は以下の通りである。 3種類の異なるハイドロゲルの前液を均一にするようにレーザー共焦点ディシュに加えて、安定なハイドロゲルになるまで待っていた。ディシュ毎に3×104個のHUVECを播種して、細胞を72時間に培養した。上清である細胞培地を軽く吸い出し、37℃に予熱したPBSで細胞を洗浄して、4%パラホルムアルデヒドで細胞を10分間固定した。0.1%トリトンx-100で細胞を10分間膜透過処理して、1%ウシ血清アルブミンにより室温で40分間ブロックした。FITC-ファロイジン(シグマ)で細胞骨格マイクロフィラメントを染色した。最後に、DAPI(シグマ)で細胞核を染色した。結果から、hVE-cad-Fcで機能的に修飾されたハイドロゲルは、細胞骨格の伸び広がりを著しく促進できることがわかった(図32-D)。
【0134】
ハイドロゲルによるHUVECの3次元での成長の影響の検討。3種類の異なる群に分けたハイドロゲルの前液を、それぞれ100μLを取って、群に各105つ個のHUVECを加えて、軽くピペッティングして均一に混合して96穴プレートに加えた。ハイドロゲルを形成した後、ECM培地を加えて、細胞の増殖能をそれぞれ、1、3、5、7日目にCCK-8にて検出した。試験方法は前記同様にした。結果から、対照群に比べて、hVE-cad-Fc修飾ハイドロゲルは細胞の増殖を著しく促進できることがわかった(図32-E)。また、7日目に、細胞は生存死亡染色試験を行って、試験方法は前記同様にした。結果から、対照群に比べて、hVE-cad-Fc機能化修飾ハイドロゲルはHUVECの増殖能を著しく増強させたことがわかった(図32-F)。
【0135】
実施例24 融合蛋白質で機能的に修飾されたハイドロゲルによるHUVECの血管機能化に対する影響
実施例23に記載した3種類の異なる修飾ハイドロゲルの前液を、各200μLを用意し、均一にするように6穴プレートに加えた。安定なハイドロゲルを形成した後、ウェル毎に1×105個のHUVECを播種して、分別、24、48、72時間に細胞タンパク質を抽出した。詳細は以下の通りである。 培地を捨てて、PBSで細胞を洗浄した。RIPA(シグマ)で氷の上に細胞を溶解させて、13000 rpmで溶解液を収集して、10分間遠心分離した。上清を収集してローディングバッファーを加えて5分間沸騰させ、-20℃で保存して使用に備える。8%-10%のゲルで電気泳動して、異なる分子量を持つタンパク質を分離した。ゲルの中のタンパク質を湿式転移法で、PVDFフィルムに電気転移した。フィルムはブロックして、抗vWF、抗eNOSの第一抗体(Abcam)を加えて、4℃でオーバーナイトした。PBSTでフィルムを洗浄して、IgG-HRP第二抗体(Santa Cruz)を加えて、室温で2時間インキュベートして、PBSTでフィルムを洗浄して、ECL発光にてタンパク質の発現を検出した。結果から、対照群とRGD群に比べて、hVE-cad-Fc修飾したハイドロゲルは、HUVECにおいてvWFおよびeNOSタンパク質の発現を著しく促進できることがわかった(図33-A、B)。
【0136】
異なる修飾ハイドロゲルの前液を均一にするように96穴プレートに加えた。安定なハイドロゲルを形成した後、ウェル毎に1×104HUVECs細胞を播種して、分別、4h、24h、48h、72hに細胞のNO放出量を検出した。詳細は以下の通りである。 HUVECから培地の上清を採取して、NOキット(Beyotime Biotechnology、中国)のガイド説明に従って検出して、OD540で吸光度の値を検出した。結果から、対照群とRGDハイドロゲル群に比べて、hVE-cad-Fc融合蛋白質で機能的に修飾されたハイドロゲルはNOの放出を著しく促進できることがわかった(図33-C)。
【0137】
異なる修飾ハイドロゲルの前液を、各100μLで均一にするように共焦点ディシュに加えた。安定なハイドロゲルを形成した後、ディシュ毎に2×104個のHUVECを播種した。72時間後に、細胞が低密度リポタンパク質(Ac-LDL)に対する貪食の状況を検出した。詳細は以下の通りである。 細胞を培養した72時間に、元の細胞培地を除去して、PBSで洗浄して、新たな細胞培地に蛍光タグ付ける低密度リポタンパク質(Invirogen,USA)を加えて、5時間程度培養した。培地を除去して、PBSで細胞を洗浄して、予熱した4%パラホルムアルデヒドで細胞を10分間固定した。PBSで洗浄して、DAPIで細胞核を10分間染色して、PBSで洗浄して、レーザー共焦点顕微鏡にて観察した。結果から、対照群とRGDハイドロゲル群に比べて、hVE-cad-Fc機能化修飾ハイドロゲルは、HUVECのAc-LDLに対する貪食能を著しく増強させたことがわかった(図33-D)。
【0138】
実施例25.クリヒドラジド化ヒアルロン酸のデザインと合成
ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、NHS-AC(N-アクリルオキシスクシンイミド)により、ヒアルロン酸鎖に対して二段修飾することで、ヒアルロン酸鎖にクリヒドラジド基による修飾が付与された。詳細は以下の通りである。
【0139】
1gの分子量が91KDであるヒアルロン酸(HA、山東福瑞▲だ▼生物科技有限会社)粉末を精確に1g称量して、その核磁気共鳴の水素スペクトルは図34-aに示す。200mL ddH2Oを加えて、攪拌して十分に溶解した。溶液に18gのADH粉末を加えて、十分に溶解したまで攪拌して、さらに、2gのEDAC(触媒)粉末を加えて、十分に溶解したまで攪拌した。pHを4.75に調節して、それぞれ、反応した10分間、30分間、1時間、2時間後に溶液のpHを4.75に調節して、オーバーナイト反応した。二日目に、溶液のpHを7になるまで調節して、透析工程を始まった:透析液は、それぞれ、100mMの塩化ナトリウム溶液(48時間)、1/5のエタノール溶液(48時間)、ddH2O(48時間)である。透析の終了後、粉末を凍結乾燥して、粉末の質量を称量した。また、核磁気共鳴の水素スペクトルにてADHの置換度を検出し、図34-bのA,Bに示す。HA-ADH産物を得た。
【0140】
0.5 gのHA-ADH産物を称量して、100ml ddH2Oを加えて溶解し、それに質量比で:mHA-ADH:mNHS-AC=4:3のNHS-ACを加えて、十分に溶解した。pHを7.20に調節して、反応が始まった。それぞれ、反応の開始後10分間、30分間、1時間、2時間の各時点で溶液のpHを4.75に調整して、オーバーナイト反応した。二日目に、透析工程を始まった:透析液は、100mMの塩化ナトリウム溶液で48時間透析して、ddH2Oで48時間透析した。透析の終了後、粉末を凍結乾燥して、粉末の質量を称量した。また、核磁気共鳴の水素スペクトルにてAc基(図34c中のC、Dの二つのピーク)の置換度を検出した。この工程において全部の反応工程の温度は、室温に制御した。HA-ACを得た。
【0141】
実施例26.クリヒドラジド化ヒアルロン酸のhVE-cad-Fc融合蛋白質修飾
hVE-cad/Fc-結合(-)前液の調製:100μL 5%溶液あたりに5μLの10mg/mL hVE-cad-Fc融合蛋白質を加えて、よく混ぜ、37℃で30分間反応した。
hVE-cad/Fc-結合(+)前液の調製:100μL 5%溶液あたりに濃度が4mg/mLのFc-結合ポリペプチド2μL、5uLの10mg/mL hVE-cad-Fc融合蛋白質を加えて、よく混ぜ、37℃で30分間反応した。ELISA法にてhVE-cad-Fc融合蛋白質の固定量を検定した。具体的方法は以下の通りである。それぞれ50μL前液を取って、架橋剤であるジチオスレイトール(DTT)(索莱宝生物有限会社より購入)を加えて、よく混ぜ、96穴プレートにいれてゲル化させた。ゲル化の終了後、hVE-カドヘリン ELISAテストキット(索莱宝生物有限会社)で検定を行った。hVE-cad-Fc修飾クリヒドラジド化ヒアルロン酸ハイドロゲル、hVE-cad-FcとFc-bpの組み合わせで修飾クリヒドラジド化ヒアルロン酸ハイドロゲルに、それぞれ200μL PBS溶液を加えてインキュベートした。複数の時点である1,3,5,7日間に、異なる溶液から上清を採取して、上清に残存したhVE-cad-Fc融合蛋白質をキットで特定し、その長期安定性を検出した。図35に示すように、Fc-bpが添加されていないハイドロゲル群に比べて、hVE-cad-FcとFc-bpの組み合わせで修飾ハイドロゲル群において、7日目までhVE-cad-Fcの90%が残存しており、Fc-bpが添加されていないハイドロゲル群において、7日目までhVE-cad-Fcの残存量が50%に低下した。これは、Fc-bpの添加が、ハイドロゲルのhVE-cad-Fcの長期担持安定性を著しく増加できるのを証明した。
【0142】
実施例27.クリヒドラジド化ヒアルロン酸ハイドロゲルの物理化学的特性の特性化
MMPs応答性破断ポリペプチドを含む、両端にチオール化した架橋剤をデザインし、ハイドロゲルの濃度、架橋密度、修飾因子によるハイドロゲルの理化学的キャラクターに対する影響を調べた。
架橋剤であるMMP-2応答性ポリペプチド(CRGDPQGIWGQDRC、SEQ ID NO:97)とDTTの両者は、分別、無酸素の無菌PBSで所要濃度(それぞれ、最終濃度160mM及び292mM)に希釈した。
実施例25で調製したクリヒドラジド化ヒアルロン酸の溶液100uL毎に、0.45 g/mL DTT溶液をそれぞれ3uL、6uL加えて、架橋度は分別、50%と100%になって、よく混ぜ、37度に置いて30分間反応させることより、架橋度の異なるハイドロゲルを作製した。
DDTとMMP-2により架橋したハイドロゲルのゲル化の前、後のゲル状態を巨視的観察して写真を撮った図であり、図36-Aの左は、DTTにより架橋したハイドロゲルを示し;図36-Aの右は、MMP-2応答性ポリペプチドで架橋したハイドロゲルを示す。
【0143】
ハイドロゲルの前液(Fc-bpを含む)に、MMP-2応答性ポリペプチド架橋剤(クリヒドラジド化ヒアルロン酸の溶液100μLあたり、濃度0.25 g/mLの溶液5μLを加え)ならびにDTT架橋剤(クリヒドラジド化ヒアルロン酸100μLあたり、0.45 g/mLの溶液6μLを加え)を加えて、37℃で30分間反応した。DTT、DTT+hVE-cad-Fc、MMP、MMP+hVE-cad-Fcの4つのハイドロゲルを生成した。ハイドロゲルにそれぞれ1mL PBS溶液を加えて、ゲルが十分に膨潤させた。ゲルの膨潤過程において、異なる時点でゲルの質量を秤量して、膨潤性試験を行った。また、以上の試験工程に従って、低、高の2種類の架橋密度(それぞれ、架橋度50%、100%)でハイドロゲルの膨潤性試験を行って、架橋密度がゲル安定性に及ぼす影響を観察した。別々、DTT架橋ハイドロゲル系、MMP-2応答性ポリペプチド架橋ハイドロゲル系を合成した。両方のハイドロゲルは、いずれもPBS溶液に長期にわたって安定に存在可能である(図36-Bの左);また、両方のクリヒドラジド化ヒアルロン酸の溶液は、いずれもDTT又はMMP架橋剤を加えた後の30分間でゲル化できる(図36-Bの右)。DTT、MMP応答性ポリペプチドで架橋したハイドロゲルの両者は、いずれも良好な膨潤性を有しており、また、hVE-cad-Fcの添加はハイドロゲル自体の膨潤性に影響を与えない(図36-C)。
【0144】
実施例28.オルガノイドにおける胆管上皮細胞の免疫蛍光染色
肝オルガノイドの免疫蛍光染色は、実施例17の方法に従って行った。肝オルガノイドをブロックして、PBSDT溶液により一定の割合で希釈した第一抗体(希釈の割合は、以下で説明する)を加えて、4℃で24-48h反応した後上清を棄て、オルガノイドを冷い0.01M PBS溶液で3回洗浄した。上清を棄て、PBSDT溶液により一定の割合で希釈した第二抗体(希釈の割合は、以下で説明する)100μLを加えた。上清を棄て、冷い0.01M PBS溶液でオルガノイドを3回洗い、上清を棄て、DAPIを含む蛍光褪色防止用剤100μLを加えて、4℃、暗所で保存した。レーザー共焦点顕微鏡(ライカ)で写真を取って観察した。結果を図37に示す。異なる素材を含むhMSC凝集体は2週間連続分化誘導した場合、免疫蛍光染色から分かるように、m(E/VE/VEGF)p群において、細胞が肝細胞のマーカーであるCK18、胆管上皮細胞のマーカーであるCK19(矢印で示す)がより多く発現され、また、胆管様上皮細胞は、肝様細胞のまわりに比較的な均一に分布できる。これは、かかる基材表面において、hMSCから肝様細胞および胆管様上皮細胞への分化効率が最も高くなること、3種類の融合蛋白質がマイクロビーズ表面に均一に分布する場合、細胞がより生体工学的な自己組織挙動を示したことを証明した。
また、2-3つの肝オルガノイドが集合した場合、互いに相互作用してつながって、一定のネットワーク構造が形成される。かかるネットワーク構造は、m(E/VE/VEGF)p群においてより顕著であり(図38)、胆管似た樹状構造を形成できる。
【0145】
【表20】
【0146】
実施例29 肝オルガノイドにおいて肝様細胞と内皮様細胞の割合
2週間分化誘導した肝オルガノイドは、PBSBでブロックした1.5 mL遠心分離チューブに収集され、チューブ毎に1 mL Cell dissociation reagent(Stemcell Technologies、商品番号07174)を加えて10分間消化した。PBSBでブロックした1 mLチップを用いて、オルガノイドを単個の細胞に分散するまでピペッティング繰り返し、1 mL予熱した新しい完全培地を加えて、消化を停止させた。1000×gで5分間遠心分離して、沈殿物を収集した。沈殿物に1 mL最近配製した4%パラホルムアルデヒドを加えて、37℃10分間固定した。上清を棄て、PBSB溶液で細胞を3回洗浄し、1000×gで5分間遠心分離した。上清を棄て、沈殿物に1 mL 90%冷メタノールを加えて、氷の上に置いて30分間インキュベートして開孔された;4℃、1000×gで5分間遠心分離して、上清を棄て、PBSBで細胞を洗浄して、一回を繰り返し、遠心分離して上清を棄て、室温で0.5%BSA溶液により10分間ブロックした;1:100の割合で、分別、ウサギ抗ヒトALB第一抗体(Abcam会社、米国)、マウス抗ヒトCD31第一抗体(CST会社、米国)を加えて、室温で1 インキュベートした;1000×gで5分間遠心分離して、上清を棄て、PBSB溶液で細胞を洗浄して、一回を繰り返した後、1:1000の割合で特異的Alexa Fluor 488マーカーヤギ抗マウス第二抗体又はAlexa Fluor 488マーカーヤギ抗ウサギ第二抗体を加えて、室温、暗所でインキュベート30分間;1000×gで5分間遠心分離して、上清を棄て、PBSB溶液で細胞を洗浄して、一回を繰り返した;1 mL 0.01 M PBSで沈殿物を再縣濁して、メッシュでフローサイト用チューブにろ過して、フローサイトメーターにてサンプルの中の陽性細胞の発現量を分析した。
【0147】
図39に示すように、m(E/VE/VEGF)p群において、肝様細胞と内皮様細胞への分化効率が最も高いで、それぞれ、77.1%と14.9%になって、肝臓内の2種の細胞のパーセンテージ含有率に、かなり近づいている。(mE+mVE/VEGF)p群において、細胞の約65.5%が肝様細胞に分化誘導しており、細胞の10.6%が内皮様細胞に分化誘導しており、分化効率はm群とmcp群より顕著に高く。フローサイトメトリーの結果から、融合蛋白質で基材を修飾したマイクロビーズは、hMSCs凝集体から肝オルガノイドへの分化の過程において、肝様細胞と内皮様細胞への分化効率を向上できることが分かった。
【0148】
実施例30 肝オルガノイドのグリコーゲン貯蔵とインドシアニングリーンの摂取、放出能の検出
2週間分化誘導した肝オルガノイドは、パラフィン切片を作製した。キシレンで脱ロウして、グラデーションエタノールで水に戻した。サンプルを過ヨウ素酸の溶液に入れ、室温で15~20分間酸化して、70%のエタノール溶液で2回洗った;サンプルにSchiff溶液を加えて、室温、暗所で10~20分間浸漬して染色された;上清を棄て、重亜硫酸ナトリウム溶液で細胞を2回、毎回2分間で洗浄し、70%エタノール溶液で2分間洗った;室温、ヘマトキシリン染液で1~2分間二重染色され、塩酸-エタノール溶液で2s分化誘導させて、水道水で2分間すすいだ後、蒸留水で2回洗って、エタノールでグラジェント脱水して風乾させ、中性ガムでカバーグラス封入した。立体顕微鏡で観察して写真を撮った。
【0149】
2週間分化誘導した肝オルガノイドには、1 mg/mL インドシアニングリーン溶液を含む培地を加えて、細胞インキュベーターで1h培養した;無菌PBSBで細胞を3回洗浄した後、相差顕微鏡で写真を撮った;PBSBを棄てて、インドシアニングリーンを含まない新しい培地を加えて、細胞インキュベーターでオーバーナイト培養した。その後、無菌PBSBで細胞を3回洗浄して、相差顕微鏡で観察して写真を撮った。
【0150】
グリコーゲン貯蔵とインドシアニングリーンの摂取、放出能は、肝細胞の機能を評価ために常用される検出手段である。よって、PAS染色とインドシアニングリーンの摂取、放出試験にて、肝オルガノイドの関連機能を考察した。図40Aからわかるように、融合蛋白質表面修飾PLGAマイクロビーズ(mE+mVE/VEGF)p群、m(E/VE/VEGF)p群)を含む肝オルガノイドは、PAS染料で赤紫色に染色可能であることから、更なる優れたグリコーゲン貯蔵能を有することが証明された。また、(mE+mVE/VEGF)p群とm(E/VE/VEGF)p群において、肝オルガノイドがより多いインドシアニングリーン染料を摂取できるので深い緑を呈しており、新しい培地に交換を行って培養した場合、肝オルガノイドがインドシアニングリーンを放出し得る(図40 B)。以上結果から、融合蛋白質表面修飾されたマイクロビーズを含む肝オルガノイドは、貯蔵、摂取、放出能を有することが証明された。
【0151】
実施例31 肝オルガノイドの極性タンパク質、代謝酵素の発現
2週間分化誘導した肝オルガノイドにおいて、薬物代謝に関連したタンパク質であるMRP2及び代謝酵素CYP3A4の発現と分布は、実施例17と28の方法で免疫蛍光染色法にて考察した。レーザー共焦点顕微鏡のより、488 nm、561 nmと紫外励起光に観察して写真を撮った。抗体の希釈割合は下表に示す。
【0152】
ヒト体内の薬物代謝の中心として、薬物の肝臓代謝が肝細胞表面の極性膜タンパク質と代謝酵素の発現を依存している。免疫蛍光染色には(図41図42)、m(E/VE/VEGF)p群と(mE+mVE/VEGF)p群の多くの肝様細胞は、MRP2とCYP3A4に対する特異性抗体により認識された。以上結果から、融合蛋白質表面修飾マイクロビーズを含むhMSCs凝集体から分化誘導した肝オルガノイドは、薬物代謝と緊密に関連している肝細胞膜タンパク質と、I相酵素であるCYP3A4を発現でき、細胞の薬物代謝に寄与することがわかった。
【0153】
【表21】
【0154】
実施例32 肝オルガノイドのドラッグ感受性の検出
培地で、異なる濃度のアセトアミノフェンとイソニコチン酸ヒドラジッド(0 mM、0.39 mM、0.78125 mM、1.5625 mM、3.125 mM、6.25 mM、12.5 mM、25 mMと50 mM)を含む培養液を、それぞれ配製した。それを融合蛋白質を含む肝オルガノイドに別々加えて、24 h培養した。各群の各ドラッグのIC50値は、CCK-8法にて検定した。IC50値のドラッグ濃度を基準とし、ドラッグ濃度が該濃度の2倍、0.5倍である培養液を培地でそれぞれ配製した。それを融合蛋白質を含む肝オルガノイドに加えて24 h培養した。上清を棄て、0.01 M 無菌PBSで肝オルガノイドを3回洗浄した。100 nM MitoTrackerTMRed CMXRos(Invitrogen 、米国、商品番号M7512)、と5 mM CellROXTMOxidative Stress Reagent(Invitrogen 、米国、商品番号C10444)を含む培地で、37℃で、30分間インキュベートした。培養上清を棄てて、0.01 M 無菌PBSで3回洗浄して、最近配製した4%パラホルムアルデヒド固定後PBSBで3回洗浄した。DAPIを含む蛍光褪色防止用剤で二重染色され、24 h以内にレーザー共焦点顕微鏡で488 nm、561 nmと紫外励起光でサンプルを観察して写真を撮った。
【0155】
CCK8の検出結果から、m(E/VE/VEGF)p群の細胞に対して、アセトアミノフェンの半数阻害濃度であるIC50値は、0.537 mmol/Lであり、イソニコチン酸ヒドラジッドか細胞の半数致死率を達成するIC50値は、2.775 mmol/Lであり;(mE+mVE/VEGF)p群の細胞に対して、アセトアミノフェンの半数致死率を達成するIC50値は、3.273 mmol/Lであり、イソニコチン酸ヒドラジッドの細胞の半数阻害濃度であるIC50値は5.226 mmol/Lであることが分かった。(mE+mVE/VEGF)p群に比べて、m(E/VE/VEGF)p群において、アセトアミノフェン、イソニコチン酸ヒドラジッドのIC50値がいずれも低下した。これから、m(E/VE/VEGF)p群は、肝毒性ドラッグに対する敏感性がより高くであり、そして、イソニコチン酸ヒドラジッドに比べて、アセトアミノフェンが肝オルガノイドに対してよりひどいダメージを与えることが証明された。その後、ROS検出キット(Invitrogen 会社、商品番号C10444)、Mitro検出キット(Invitrogen 会社、商品番号M7512)で、異なるモデルドラッグによる肝オルガノイドのROSの生成、肝細胞のミトコンドリアに与えるダメージをそれぞれ評価した。図43図44から分かるように、ドラッグの濃度が高くなるにつれて、ROSのレベルは上げ続けて、緑の蛍光の強さは上げ続けて、一方で、ミトコンドリアの膜電位が低下して、赤の蛍光の強さは減少し続けた。これは、ドラッグの濃度が高くなるにつれて、肝細胞を与えるダメージも上げ続けて、用量依存性を呈することを証明した。また、肝オルガノイドは、肝毒性モデルドラッグに対して一定の感受性を有し、ドラッグ毒性の有効評価手段として有用である。
【0156】
実施例33 胚性幹細胞から肝オルガノイドへの分化の検討
異なるマウス胚性幹細胞(中国科学院典型的培養物寄託委員会細胞バンク)の凝集体は、実施例16の方法で調製した。即ち:コラーゲン修飾マイクロビーズを含む胚性幹細胞の凝集体(ecpと略記);hE-cad-Fc、hVE-cad-FcとhVEGF-Fcで共同修飾されたマイクロビーズを含む胚性幹細胞の凝集体(e(E/VE/VEGF)pと略記);と等割合を混合した異なる融合蛋白質それぞれ修飾されたマイクロビーズを含む胚性幹細胞の凝集体(e(E+VE/VEGF)pと略記)である。マイクロビーズを含まない胚性幹細胞の凝集体(eと略記)をcontrolとして、下表に示す定向分化誘導培地で21日間連続的培養を行って分化誘導した。21日目にRNAを抽出して、PCRテストを行った。具体的プライマー配列は、下表に示す。結果を図45に示す。
【0157】
図45から分かるように、融合蛋白質を含む凝集体は、内胚葉細胞マーカーであるFoxA2の発現能力、肝細胞関連遺伝子マーカーであるHNF4αの発現能力、成熟肝細胞遺伝子マーカーであるALBの発現能力、内皮細胞関連遺伝子マーカーであるCD31の発現能力、肝細胞極性タンパク質遺伝子マーカーであるOATPの発現能力と肝細胞関連代謝酵素に関連する遺伝子マーカーであるG6paseの発現能力が、その他の両群より顕著に高いである。これは、融合蛋白質が細胞分化因子と協調して、胚性幹細胞の凝集体が一定の構造と機能を有する肝オルガノイドに分化誘導されることを促進できるのを証明した。
【0158】
【表22】
【0159】
【表23】
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【配列表】
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