(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】癌治療のための併用免疫療法及びサイトカイン制御療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20230208BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230208BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230208BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230208BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230208BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61K35/15 Z
A61P37/02
A61P35/00
C12N5/10
C12N5/0783
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021080192
(22)【出願日】2021-05-11
(62)【分割の表示】P 2018543388の分割
【原出願日】2017-02-15
【審査請求日】2021-06-10
(32)【優先日】2016-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321012580
【氏名又は名称】エンリヴェックス セラピューティクス アールディーオー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィック シャイ
(72)【発明者】
【氏名】メヴォラック ドロア
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522081(JP,A)
【文献】特表2016-501526(JP,A)
【文献】特表2008-500374(JP,A)
【文献】特表2019-505552(JP,A)
【文献】特表2003-534281(JP,A)
【文献】EMBO Mol.Med.,2011,3(2),p.102-114
【文献】J.Clin.Invest.,2013,123(7),p.2773-2774
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌にかかっていて、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)癌治療を受けている対象におけるマクロファージ活性化症候群治療用の医薬品の調製のための、末梢血単核球(PBMC)に由来する細胞の早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含む組成物の使用であって、
前記早期アポトーシス単核濃縮細胞集団は、少なくとも
50%のアネキシンV陽性及び5%未満のPI陽性細胞であると分析される、使用。
【請求項2】
前記治療は、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの細胞放出を低減する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインが、IL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの細胞放出の前記低減が、IL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9を含むサイトカインの1つの組み合わせの低減を含む、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記医薬品が、IL-2Rの細胞放出を増加する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬品が、IL-2の細胞放出に影響しない、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記対象がサイトカインストーム又はサイトカイン放出症候群(CRS)にかかっている、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記癌が固形癌を含む、請求項
1に記載の使用。
【請求項9】
前記癌がびまん性癌を含む、請求項
1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されるのは、CAR T細胞癌治療中にキメラ抗原受容体発現T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させるための組成物及びその方法である。さらに、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体T細胞癌治療の有効性を高める組成物及びその方法であって、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを経験する対象の発生率が減少又は抑制される組成物及びその方法である。本明細書に開示される方法としては、CAR T細胞と、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤との投与を含むものなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
癌の標準治療は手術、化学療法及び放射線療法であるが、標的免疫療法などの改善された方法が現在開発され、試験されている。1つの有望な技術は、養子細胞移入(ACT:adoptive cell transfer)を使用し、免疫細胞がそれらの腫瘍を認識し、攻撃するように改変される。ACTの一例は、患者自身又はドナーの細胞傷害性T細胞が、腫瘍細胞の表面で発現される腫瘍特異性抗原を標的にするキメラ抗原受容体(CAR(chimeric antigen receptor)T細胞)を発現するように操作されたときである。その場合、これらのCAR T細胞は、腫瘍特異性抗原を発現する細胞にのみ細胞傷害性である。臨床試験によれば、CAR T細胞治療は、とりわけ、進行急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)及びリンパ腫を制御するのに大きな可能性を有する。
【0003】
しかし、CAR T細胞治療及び別の免疫療法を受けた一部の患者は、サイトカイン放出症候群(CRS:cytokine release syndrome)又はサイトカインストームと呼ばれる危険な、時には生命にかかわる副作用を経験し、注入された活性化T細胞が全身性炎症反応を起こし、サイトカインが血流中に急速に多量に放出され、危険なほどに低い血圧、高熱及び震えをもたらす。
【0004】
CRSの重症例においては、患者は、サイトカインストーム(別名、サイトカインカスケード又は高サイトカイン血症)を経験し、サイトカインと白血球の間でサイトカインレベルの極めて高い正のフィードバックループが存在する。これは、心機能不全、成人呼吸促迫症候群、神経毒性、腎及び/又は肝不全、肺水腫並びに播種性血管内凝固を含めて、生命にかかわる恐れがある合併症を引き起こし得る。
【0005】
例えば、T細胞上のCD28受容体に結合するモノクローナル抗体TGN1412を投与された最近の第I相試験の6名の患者は、サイトカインストーム及び多臓器不全の重症例を示した。これは、TGN1412用量が動物において安全であることが判明している用量の1/500であったにもかかわらずに起こった(非特許文献1)。
【0006】
CD19に対して特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞は、極めて難治性の血液悪性腫瘍に対して著しい有望性を示した。完全寛解率が90%と高い臨床反応が、再発/難治性急性リンパ性白血病(ALL)の小児及び成人において報告された。しかし、極めて重大な毒性が認められ、CAR-T細胞を投与された対象の30%もが、重症型CRS及び恐らくは関連した神経毒性を起こす。CRSは、主にマクロファージ/単球からの炎症誘発性サイトカインの大量分泌に起因し、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)及び恐らくは追加のサイトカインを分泌するCAR-Tに反応する、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食に似ている。
【0007】
現在まで、コルチコステロイド、抗IL6療法などの生物学的療法、及び抗炎症薬が、CAR T細胞治療を受けた患者におけるサイトカイン放出症候群を制御するのに評価されている。しかし、ステロイドは、CAR T細胞の活性及び/又は増殖に影響する可能性があり、患者を敗血症及び日和見感染の危険にさらす可能性がある。抗炎症薬は、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの制御には有効でない可能性がある。というのは、サイトカインストームは極めて多数のサイトカインを含むものの、患者に抗炎症薬を注入する能力には限界があるからである。CAR T細胞治療の可能性を実現するために、サイトカイン放出症候群、特にサイトカインストームを制御する新規戦略が必要である。
【0008】
サイトカインストームは、別の感染性及び非感染性刺激後の問題でもある。サイトカインストームにおいては、インターロイキン-1(IL-1)、IL-6、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)などの多数の炎症誘発性サイトカインが放出され、低血圧、出血、最終的に多臓器不全をもたらす。さらに、IFN-γは、マクロファージも刺激し、マクロファージは、IL-6及びTNF-αを含めて、膨大な量の炎症誘発性サイトカインを分泌する可能性がある。
【0009】
CRSは、CAR T細胞に関連する最も一般的な重症化する可能性のある毒性であるが、ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体を含めて、T細胞に癌細胞を殺させる別の療法、及びRituxanなどの非T細胞治療においてさえも起こる。それでも、患者の80~100%における発生率はCAR T細胞に独特であり、ALL患者の30%は重症型毒性を有し、一部の患者では致死的になり得る。
【0010】
1918年のH1N1インフルエンザ汎流行、及びより最近の鳥インフルエンザH5N1感染症における、恐らくは健康な免疫系を有する、若年者における比較的高い死亡率は、サイトカインストームに起因する。この症候群は、重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、グラム陰性菌敗血症、マラリア、及びエボラ感染症を含めた多数の他の感染症の進行した又は末期の症例において起こることも知られている。サイトカインストームは、急性膵炎、重度の熱傷又は外傷、急性呼吸促迫症候群などの非感染性原因から生じることもある。
【0011】
神経毒性は、症候群とは別にも、症候群の一部としても考えられるが、精神状態変化、可逆的譫妄及び発作様活動を含む。患者は、錯乱、喚語困難及び失語症が徐々に進行し、最終的に昏迷状態になり得る。3つの症例においては、これらの神経学的合併症は、気道保護のために挿管及び機械的換気が必要であった。神経学的合併症患者は、一部の症例では可能性がある白質脳症のほかには変化を示さない脳のCT及びMRI、並びに脳波(EEG)及び腰椎穿刺で評価された。EEGでは発作様活動が確認され、抗てんかん処置後に消散した。明白な神経学的合併症のときに3名の患者において腰椎穿刺によって得られた脳脊髄液(CSF)の分析によれば、リンパ球増加症が明らかになり、リンパ球増加症は、更なるqPCR分析によって、少なくとも部分的にCAR T細胞で構成されることが分かった。
【0012】
CAR-T細胞注入後のCRSの高い発生率にもかかわらず、該症候群の根底にある生物学についてはほとんど理解されていない。その状態は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)及びマクロファージ活性化症候群(MAS:macrophage activating syndrome)に似ており、サイトカイン及びケモカインの著しい上昇に付随する。
【0013】
現在、CRSの処置に使用されるモダリティはほとんどない。トシリズマブは、リウマチ障害の処置に使用されるIL-6受容体拮抗薬である。それは、臨床試験においてはCRS関連毒性の処置に使用されたが、現在、CAR T細胞注入後の毒性に対して広く適応外使用されている。トシリズマブは、CAR T細胞注入後のCRS関連毒性を軽減又は抑制することができる。非対照試験の示唆するところによれば、ALL患者を処置すると、CAR T細胞に起因するCRSを処置するためにトシリズマブを投与されたときでも完全寛解が起こる。しかし、抗悪性腫瘍結果に対するトシリズマブの影響の正式な研究が行われていないので、トシリズマブがCAR T細胞に起因する抗悪性腫瘍反応の程度又は持続時間をわずかに損なう多少の懸念が残る。さらに、トシリズマブを用いたほとんどの発表体験は、ALLに関するものである。トシリズマブは、ALLに対するCAR T細胞の活性を損なわないとしても、リンパ腫又は別の悪性腫瘍に対するCAR T細胞の有効性を損なう可能性がある。
【0014】
CRSが最初のトシリズマブ投与で改善しない場合、追加用量のトシリズマブを投与すべきであり、又はコルチコステロイドなどの別の免疫抑制剤を考えるべきであるという一般的合意が存在する。CRSの特定の段階に対してではなく、具体的な血行動態及び臓器機能閾値を超えたときにトシリズマブを投与する人もいる。血液脳関門を越えるその能力についての懸念、及びトシリズマブが神経毒性を改善しなかった明らかに極少数の患者における経験から、トシリズマブは、神経毒性に対して投与されるべきではないと示唆されている。
【0015】
全身性コルチコステロイドは、CRS関連毒性を抑制するのに有効に使用されたが、抗CD19 CAR T細胞注入後のALL患者において以前に報告された通り、コルチコステロイドがCAR T細胞持続性及び抗悪性腫瘍有効性を阻害し得る幾らかの証拠がある。このため、コルチコステロイド療法は、トシリズマブがCRSを改善できなかった後に使用するために保留されている。CRSの管理に使用された、又は考慮された別の免疫抑制剤としては、シルツキシマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ及びアナキンラが挙げられる。データ不足のために、他よりも推奨された第二選択薬はない。
【0016】
CAR T細胞は、幾つかの機序によって、より重要ではないが更なる毒性を生じる可能性がある。CARが標的とする腫瘍関連抗原が正常組織上で発現される場合、正常B細胞が抗CD19 CAR T細胞によって使い果たされた場合と同様に、その組織は損傷を受ける可能性がある。CAR T細胞は、腫瘍細胞上で発現されないタンパク質と予想外に交差反応することによって正常組織を傷つける可能性がある。急性アナフィラキシー及び腫瘍崩壊症候群(TLS:tumor lysis syndrome)は、CAR T細胞の注入後に発生するが、これらの毒性はCRSよりもはるかに頻度が少ない。
【0017】
CAR T細胞治療の安全性に影響する要因に加えて、複数の別の要因がCAR T細胞の有効性に影響する。有効性は、遺伝子改変CAR T細胞の持続性及び残存、患者に特有であると思われる細胞の最終定常状態数としての細胞数、並びに標的抗原の発現の減少又は低下を含めて、幾つかの要因に依存し得る。
【0018】
したがって、CAR T細胞治療の有効性を維持する、又は高めると同時に、サイトカイン放出症候群、特にサイトカインストームを含む安全性の問題を管理する新規戦略が必要である。さらに、CAR改変T細胞を用いた、又は用いない、CRSのインビトロ及びインビボモデルの開発が必要である。本明細書に開示されるのは、早期アポトーシス細胞集団の効果をサイトカイン放出及びCAR T細胞毒性に対するそれらの有効性について試験するCRSのインビトロ及びインビボモデルである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【文献】St.Clair EW:The calm after the cytokine storm:Lessons from the TGN1412 trial、J Clin Invest 118:1344~1347、2008
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
一態様においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)癌治療中のCAR T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法であって、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む組成物をCAR T細胞治療を受ける対象に投与するステップを含み、対象における前記増殖速度が、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持される、又は増加する、方法である。
【0021】
関連する一態様においては、該方法は、前記CAR T細胞癌治療の有効性を低下させず、阻害もしない。別の関連する一態様においては、前記対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率が、前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して抑制される、又は減少する。
【0022】
関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、前記CAR T細胞治療によって処置される対象の自己のものであり、又はプールされた第三者ドナー細胞である。
【0023】
関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞又は前記アポトーシス細胞上清を含む前記組成物は、CAR T細胞治療の前に、該治療と同時に、又は該治療の後に投与される。別の関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞又は前記アポトーシス上清は、CAR T細胞治療の前に、該治療と同時に、又は該治療の後に投与される。
【0024】
関連する一態様においては、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-白血球上清であり、白血球は、アポトーシス細胞-白血球上清の採取前にアポトーシス細胞と共培養される。別の関連する一態様においては、白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞及びNK細胞からなる群から選択される。
【0025】
関連する一態様においては、該方法は、対象におけるIL-2レベルを、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持する、又は増加させる。
【0026】
一態様においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)癌治療の有効性を高める方法であって、CAR T細胞と、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤とを投与するステップを含み、対象における前記有効性前記CAR T細胞が、CAR T細胞癌治療を受けるが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して増加する、方法である。関連する一態様においては、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルが、CAR T細胞癌治療を受けるが前記薬剤を含む組成物を投与されない対象における前記炎症誘発性サイトカインのレベルと比較して低下する。別の関連する一態様においては、炎症誘発性サイトカインはIL-6を含む。
【0027】
関連する一態様においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清が投与されたときに、前記方法は、対象におけるIL-2レベルを、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持する、又は増加させる。別の関連する一態様においては、前記対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率が、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して抑制される、又は減少する。
【0028】
関連する一態様においては、CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、単一の組成物に含まれる。別の関連する一態様においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、少なくとも2つの組成物に含まれる。別の関連する一態様においては、前記追加の薬剤又はそれらの薬剤の任意の組合せは、前記CAR T細胞を含まない組成物に含まれ、前記薬剤又は複数の薬剤を含む前記組成物は、前記CAR T細胞の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。
【0029】
関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、前記CAR T細胞治療によって治療される対象の自己のものであり、又はプールされた第三者ドナー細胞である。別の一態様においては、前記薬剤を含む前記組成物は、前記CAR T細胞の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。
【0030】
関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-白血球上清であり、白血球は、アポトーシス細胞-白血球上清の採取前にアポトーシス細胞と共培養される。別の関連する一態様においては、供給される白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞及びNK細胞からなる群から選択される。
【0031】
一態様においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)及び追加の薬剤を投与するステップを含み、前記追加の薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス上清若しくはCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含み、前記方法が、前記対象における癌又は腫瘍を、CAR T細胞を投与されたが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して、処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する、方法である。
【0032】
関連する一態様においては、前記方法は、前記対象における前記癌又は前記腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性が、CAR T細胞を投与されたが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高い。
【0033】
別の関連する一態様においては、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルが、前記CAR T細胞を投与されたが前記薬剤を含む組成物を投与されない対象における前記炎症誘発性サイトカインのレベルと比較して低下する。別の関連する一態様においては、前記炎症誘発性サイトカインはIL-6を含む。別の関連する一態様においては、前記追加の薬剤は、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含み、前記方法が対象におけるIL-2レベルを、前記CAR T細胞を投与されたが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持する、又は増加させる。
【0034】
別の関連する一態様においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、単一の組成物に含まれる。更に別の関連する一態様においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、少なくとも2つの組成物に含まれる。別の関連する一態様においては、前記追加の薬剤又はそれらの薬剤の任意の組合せは、前記CAR T細胞を含まない組成物に含まれ、前記薬剤又は複数の薬剤を含む前記組成物は、前記CAR T細胞の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。
【0035】
関連する一態様においては、前記追加の薬剤は、前記CAR T細胞の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。別の関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞は、前記対象の自己のものであり、又はプールされた第三者ドナー細胞である。
【0036】
関連する一態様においては、前記アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-白血球上清であり、白血球は、アポトーシス細胞-白血球上清の採取前にアポトーシス細胞と共培養される。別の関連する一態様においては、供給される白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞及びNK細胞からなる群から選択される。
【0037】
本明細書に開示される主題は、本明細書の結論の部分に特に指摘され、明瞭にクレームされている。しかし、本明細書に開示される組成物及び方法は、機構と操作法の両方に関して、その目的、特徴及び効果と共に、以下の詳細な説明を参照して、添付図面と一緒に読むときに、最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】早期アポトーシス細胞集団の製造プロセスの一実施形態中のステップを示し、抗凝固薬がプロセスに含まれた、フローチャートである。
【
図2A】標準CAR T細胞治療(
図2A)を示す模式図である。
【
図2B】患者自身の細胞(自己)を用いてアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を産生する、患者における安全で有効なCAR T細胞癌治療の方法の実施形態を示す模式図である。
【
図3】ドナー細胞を用いてアポトーシス細胞又はアポトーシス上清を産生する、患者における安全で有効なCAR T細胞癌治療の方法の実施形態を示す模式図である。
【
図4】導入T4
+CAR-T細胞の抗CD124分析のフローサイトメトリー結果を示すT細胞の導入の検証を示す図である。
【
図5】24ウェルプレート中のSKOV3-luc増殖を示す図である。SKOV3-luc細胞3.8×10
4~3.8×10
5個/ウェルを24ウェルプレートで培養し、ルシフェラーゼ活性を毎日記録した。
【
図6】T4
+CAR-T細胞がSKOV3-luc卵巣腺癌細胞の増殖を減少させたことを示す図である。細胞毒性試験の結果を棒グラフで示す。SKOV3-luc細胞の単層を非導入T細胞又はT4+CAR-T細胞によって培養した。
【
図7】アポトーシス細胞がT4
+CAR-T細胞抗腫瘍活性を抑制しないことを示す図である。結果は、細胞毒性試験に基づき、SKOV3-luc細胞の単層を、非導入T細胞又はT4
+CAR-T細胞と一緒に、ビヒクル(Hartmann液)、又はアポトーシス細胞(Apocell)、又はアポトーシス細胞の上清(ApoSup)、又はアポトーシス細胞と単球/マクロファージの共培養の上清(ApoMon Sup)の存在下で培養した。
【
図8】CAR-T細胞傷害性中に高レベルで分泌されるIl-6は、アポトーシス細胞、又はApoCell上清(ApoSup)、又はアポトーシス細胞と単球/マクロファージの共培養物(ApoMon Sup)によって下方制御される。 ここに示す結果は、SKOV3-lucとヒト単球/マクロファージの共培養の効果が、癌及びCAR-19の存在下で、アポトーシス細胞(ApoCell)、又はApoCell上清(ApoSup)、又はアポトーシス細胞と単球/マクロファージの共培養物(ApoMon Sup)にさらされたことを示している。
【
図9A】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるIL-10レベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌の存在下でApocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9B】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるIL-6レベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいてApocellの投与後に癌及びCAR-19の存在下で、マクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9C】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるMIP-1αレベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9D】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるIL-8レベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9E】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるTNF-αレベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9F】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるMIP-1βレベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:4、1:8、1:16、1:32及び1:64において24時間で低下することを示している。
【
図9G】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるMIP-1βレベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:4、1:8、1:16、1:32及び1:64において24時間で低下することを示している。
【
図9H】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるIL-9レベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:8及び1:16において、2つの期間(6時間及び24時間)で低下することを示している。
【
図9I】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。LPSによって誘導されるIL-2Rレベルが、マクロファージ活性化症候群モデルにおいて癌及びCAR-19の存在下で、Apocellの投与後にマクロファージ/単球:Apocell比1:4、1:8、1:16、1:32及び1:64において24時間で増加することを示している。
【
図9J】アポトーシス細胞が、癌環境におけるマクロファージ活性化症候群のLPS-無菌モデルにおいて誘導されるサイトカインストームのインビトロモデルにおいてサイトカインストームを予防することを示す図である。アポトーシス細胞が細胞からのIL-2放出を下方制御しないことを示す図である。アポトーシス細胞をマクロファージ/単球と一緒に癌及びCAR-19の存在下で24時間、アポトーシス細胞の用量を増やしながら(n=3)インキュベートした。白抜きの棒(輪郭のみ)-アポトーシス細胞2.5×10
6個/ウェル、黒色-アポトーシス細胞5×10
6個/ウェル、灰色-アポトーシス細胞10×10
6個/ウェル。
【
図10】CAR T細胞臨床治療を模倣したCAR T細胞処置中のLPS曝露後のアポトーシス細胞、又はアポトーシス細胞上清、又はアポトーシス細胞と単球の共培養の効果を示す図である。リポ多糖(LPS)を細胞毒性試験に添加したときのIL-6の極めて高い分泌については記述されている。結果によれば、アポトーシス細胞(Apocell)、又はアポトーシス細胞の上清(ApoSup)、又はアポトーシス細胞と単球/マクロファージの共培養の上清(ApoMon Sup)への曝露は、IL-6を下方制御し、IL-6は許容レベルに減少する。
【
図11A】選別時のマウスの体重及び腫瘍サイズを示す図である。
図11Aは、実験期間の体重変化を示す。青色-対照 4.5×10
6個のSKOV3-luc細胞は投与されなかった。赤色-0.5×10
6個のSKOV3-luc細胞。緑色-1.0×10
6個のSKOV3-luc細胞。紫色-4.5×10
6個のSKOV3-luc細胞。
【
図11B】選別時のマウスの体重及び腫瘍サイズを示す図である。注射後39日目の4.5×10
6個のSKOV3-luc細胞を投与したマウスの代表的なSKOV3-luc腫瘍である。
【
図12】SKOV3-luc腫瘍増殖を示す図である。生物発光イメージング(BLI)によって画像化されたSKOV3-luc腫瘍を有するマウスであり、対照(PBS)と0.5×10
6、1×10
6及び4.5×10
6個のSKOV3-luc細胞接種の差を示す。
【
図13A】SKOV3-luc腫瘍量を示す図である。インビボのSKOV3-luc腫瘍の生物発光(BLI)の定量化(
図12参照)。600光子カウントカットオフを製造者によって指示された通りに行った。0.5×10
6個のSKOV3-lucを接種したマウス。
【
図13B】SKOV3-luc腫瘍量を示す図である。インビボのSKOV3-luc腫瘍の生物発光(BLI)の定量化(
図12参照)。600光子カウントカットオフを製造者によって指示された通りに行った。1×10
6個のSKOV3-lucを接種したマウス。
【
図13C】SKOV3-luc腫瘍量を示す図である。インビボのSKOV3-luc腫瘍の生物発光(BLI)の定量化(
図12参照)。600光子カウントカットオフを製造者によって指示された通りに行った。4.5×10
6個のSKOV3-lucを接種したマウス。
【
図13D】SKOV3-luc腫瘍量を示す図である。インビボのSKOV3-luc腫瘍の生物発光(BLI)の定量化(
図12参照)。600光子カウントカットオフを製造者によって指示された通りに行った。平均SKOV3-luc腫瘍増殖。
【
図14】Raji Burkettリンパ腫細胞の細胞傷害性較正を示す図である。Raji細胞を様々な細胞密度で培養し、遠心分離の直前に細胞溶解した。結果は、Raji細胞数(x軸)対492nmにおける吸光度(y軸)を示す。すべての細胞数は、不溶対応物に比べて有意な読みを示した。
【
図15】早期アポトーシス細胞の添加がCAR T細胞抗腫瘍活性に影響しないことを示す図である。E/T比は、CD19+CAR T細胞とHeLa細胞の比を示す。生存は、CD19+腫瘍細胞のものである。塗りつぶしの円CD19+Hela、白抜きの三角形CD19+Hela+ナイーブT細胞、塗りつぶしの三角形CD19+Hela+CAR T-CD19、白抜きの円CD19+Hela+CAR T-CD19+ApoCell。
【
図16】アポトーシス細胞の存在下及び非存在下でのRaji Burkettリンパ腫細胞におけるサイトカイン分析(GM-CSF)を示す図である。棒グラフは、単球及びLPSの存在下でインキュベートされ、続いてナイーブT細胞(Raji+ナイーブT)、CD19+CAR T細胞(Raji+CAR T)、CAR T細胞:ApoCell1:8の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:8)、CAR T細胞:ApoCell1:32の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:32)、及びCAR T細胞:ApoCell1:64の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:64)が添加されたRaji細胞の培養上清中に存在するサイトカインGM-CSF(pg/ml)の濃度測定を示す。
【
図17】アポトーシス細胞の存在下及び非存在下でのRaji Burkettリンパ腫細胞におけるサイトカイン分析(TNF-アルファ)を示す図である。棒グラフは、単球及びLPSの存在下でインキュベートされ、続いてナイーブT細胞(Raji+ナイーブT)、CD19+CAR T細胞(Raji+CAR T)、CAR T細胞:ApoCell1:8の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:8)、CAR T細胞:ApoCell1:32の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:32)、及びCAR T細胞:ApoCell1:64の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:64)が添加されたRaji細胞の培養上清中に存在するサイトカインTNF-アルファ(TNF-α)(pg/ml)の濃度測定を示す。
【
図18A】CAR T細胞治療に対するアポトーシス細胞の影響を分析する実験スキームを示す図である。SCIDマウスに1日目にRaji癌細胞を注射し、続いて6日目にCAR T-CD19細胞(CAR T細胞治療)及びアポトーシス細胞を投与した。
【
図18B】CAR T細胞治療がApoCellの同時投与によって負の影響を受けなかったことを示す図である。生存曲線:SCIDマウスに、早期アポトーシス細胞を添加して、又は添加せずに、CD19+Raji細胞を注射した。
【
図19A】固形腫瘍インビボモデルにおいて、腫瘍からの炎症誘発性サイトカインの放出の増加を示す図である。BALB/c及びSCIDマウスの腹膜に存在する固形腫瘍から放出されるIL-6のわずかな増加を示し、IL-6放出は、HeLa CAR-CD-19 CAR T細胞の存在下でかなり増加する。
【
図19B】固形腫瘍インビボモデルにおいて、腫瘍からの炎症誘発性サイトカインの放出の増加を示す図である。BALB/c及びSCIDマウスの腹膜に存在する固形腫瘍から放出されるIP-10のわずかな増加を示し、IP-10放出は、HeLa CAR-CD-19 CAR T細胞の存在下でかなり増加する。
【
図19C】固形腫瘍インビボモデルにおいて、腫瘍からの炎症誘発性サイトカインの放出の増加を示す図である。驚くべきことに、TNF-α放出でさえもHeLa CAR-CD-19 CAR T細胞の存在下で増加することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の詳細な説明においては、本明細書に開示される方法を十分に理解するために、多数の具体的詳細を述べる。しかし、これらの方法をこれらの具体的詳細なしに実行し得ることを当業者は理解されたい。別の例においては、本明細書に開示される方法を不明瞭にしないように、周知の方法、手順及び構成要素を詳述しなかった。
【0040】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)癌治療中のCAR T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法であって、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、対象における前記増殖速度が、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持される、又は増加する、方法である。
【0041】
関連する一実施形態においては、該方法は、前記CAR T細胞癌治療の有効性を低下させず、阻害もしない。別の関連する一実施形態においては、前記対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率が、前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して抑制される、又は減少する。
【0042】
一実施形態においては、CRSは、自発的に発生する。別の一実施形態においては、CRSは、LPSに反応して発生する。別の一実施形態においては、CRSは、IFN-γに反応して発生する。
【0043】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)癌治療の有効性を高める方法であって、CAR T細胞と、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤とを投与するステップを含み、対象における前記有効性前記CAR T細胞が、CAR T細胞癌治療を受けるが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して増加する、方法である。関連する一実施形態においては、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルが、CAR T細胞癌治療を受けるが前記薬剤を含む組成物を投与されない対象における前記炎症誘発性サイトカインのレベルと比較して低下する。別の関連する一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインはIL-6を含む。
【0044】
関連する一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清が投与されたときに、前記方法が対象におけるIL-2レベルを、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して増加させる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清が投与されたときに、前記方法が対象におけるIL-2レベルを、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清が投与されたときに、前記方法が対象におけるIL-2レベルを、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して維持する、又は増加させる。別の関連する一実施形態においては、前記対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率が、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して抑制される、又は減少する。
【0045】
関連する一実施形態においては、CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、単一の組成物に含まれる。別の関連する一実施形態においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、少なくとも2つの組成物に含まれる。
【0046】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)及び追加の薬剤を投与するステップを含み、前記追加の薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス上清若しくはCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含み、前記方法が、前記対象における癌又は腫瘍を、CAR T細胞を投与されたが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して、処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する、方法である。
【0047】
関連する一実施形態においては、前記方法は、前記対象における前記癌又は前記腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性が、CAR T細胞を投与されたが前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高い。別の関連する一実施形態においては、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルが、前記CAR T細胞を投与されたが前記薬剤を含む組成物を投与されない対象における前記炎症誘発性サイトカインのレベルと比較して低下する。別の関連する一実施形態においては、前記炎症誘発性サイトカインはIL-6を含む。別の関連する一実施形態においては、前記追加の薬剤は、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含み、前記方法が対象におけるIL-2レベルを、前記CAR T細胞を投与されたが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清も投与されない対象と比較して増加させる。別の関連する一実施形態においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、単一の組成物に含まれる。更に別の関連する一実施形態においては、前記CAR T細胞及び前記追加の薬剤又はそれらの任意の組合せは、少なくとも2つの組成物に含まれる。
【0048】
関連する一実施形態においては、前記追加の薬剤は、前記CAR T細胞の投与の前に、投与と同時に、又は投与の後に投与される。別の関連する一実施形態においては、前記アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の関連する一実施形態においては、前記アポトーシス細胞は、前記対象の自己のものであり、又はプールされた第三者ドナー細胞である。
【0049】
関連する一実施形態においては、前記アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を用意するステップ、(b)ステップ(a)の細胞を培養するステップ、及び(c)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られる。別の関連する一実施形態においては、前記アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-白血球上清であり、前記方法は、更に(d)白血球を用意するステップ、(e)場合によってはアポトーシス細胞及び白血球を洗浄するステップ、(f)アポトーシス細胞と白血球を共培養するステップを含み、ステップ(d)~(f)は、ステップ(b)の代わりである。別の関連する一実施形態においては、供給される白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞及びNK細胞からなる群から選択される。したがって、一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、アポトーシス細胞をマクロファージと一緒に培養することによって生成する上清を含み、マクロファージはアポトーシス細胞を摂取し、この共培養から生成した上清が使用される。一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、アポトーシス細胞を培養することによって生成する上清を含み、上清は、アポトーシス細胞によって分泌される材料から生成する。
【0050】
遺伝子改変免疫細胞
免疫細胞の遺伝子改変は、癌に対する免疫細胞治療の戦略としてよく知られている。これらの免疫細胞治療は、必要としている対象の自己又は同種免疫細胞の操作及び投与に基づく。免疫細胞に基づく治療としては、ナチュラルキラー細胞治療、樹状突起細胞治療、並びにナイーブT細胞、ヘルパーT細胞としても知られるエフェクターT細胞、細胞傷害性T細胞、及び制御性T細胞(Treg)を利用するものを含めたT細胞免疫療法が挙げられる。
【0051】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、遺伝子改変免疫細胞を含む組成物である。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブCD4+T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブCD8+T細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、樹状細胞である。更に別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、遺伝子改変T細胞受容体(TCR:T-cell receptor)細胞である。
【0052】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、遺伝子改変免疫細胞と、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤とを含む組成物である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、遺伝子改変免疫細胞と、アポトーシス細胞と、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤とを含む組成物である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、遺伝子改変免疫細胞と、アポトーシス細胞上清と、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤とを含む組成物である。
【0053】
一実施形態においては、免疫細胞は細胞傷害性である。別の一実施形態においては、遺伝子改変用細胞傷害性細胞は、対象(自己)又はドナー(同種)の骨髄から得ることができる。別の場合には、細胞は、幹細胞から得られる。例えば、細胞傷害性細胞は、ヒト胚性幹細胞、ヒト誘導多能性T細胞などのヒト多能性幹細胞から誘導することができる。人工多能性幹細胞(IPSC:induced pluripotent stem cell)の場合、こうした多能性T細胞は、遺伝子改変細胞傷害性細胞が供給される対象からの体細胞を用いて得ることができる。一実施形態においては、免疫細胞は、静脈穿刺によって、除去療法によって、白血球動員とそれに続く除去療法若しくは静脈穿刺によって、又は骨髄穿刺によって、細胞を収集することによって、対象又はドナーから得ることができる。
【0054】
一実施形態においては、免疫細胞、例えばT細胞は、特定の要因の存在によってインビボで産生され、増殖する。別の一実施形態においては、T細胞の産生及び維持は、インビボでサイトカインによって影響される。別の一実施形態においては、インビボでヘルパーT細胞の産生及び維持に影響するサイトカインは、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-21、IL-23、IL-25、IL-33及びTGFβを含む。別の一実施形態においては、Treg細胞は、ナイーブT細胞からサイトカイン誘導によってインビボで産生される。更に別の一実施形態においては、TGF-β及び/又はIL-2は、ナイーブT細胞が分化してTreg細胞になるのにある役割を果たす。
【0055】
別の一実施形態においては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-21、IL-23、IL-25、IL-33及びTGFβを含む群から選択されるサイトカインの存在は、インビボでT細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、サイトカインIL-2及び/又はTGFβの存在は、インビボでT細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-21、IL-23、IL-25、IL-33及びTGFβを含む群から選択されるサイトカインの存在は、インビボでCAR T細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、サイトカインIL-2及び/又はTGFβの存在は、インビボでCAR T細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-21、IL-23、IL-25、IL-33及びTGFβを含む群から選択されるサイトカインの存在は、インビボでTCR T細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、サイトカインIL-2及び/又はTGFβの存在は、インビボでTCR T細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-21、IL-23、IL-25、IL-33及びTGFβを含む群から選択されるサイトカインの存在は、インビボでT-reg細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。別の一実施形態においては、サイトカインIL-2及び/又はTGFβの存在は、インビボでT-reg細胞の増殖速度を維持するか、若しくは増加させるか、又は維持し、増加させる。
【0056】
一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質又はBACH2にコードされたタンパク質の発現又は形態が変化したT細胞は、長期間維持されるか、若しくは増殖速度が速いか、又は長期間維持され、増殖速度が速い。別の一実施形態においては、前記発現の変化は、発現STAT5Bポリペプチドを増加させる。別の一実施形態においては、前記発現の変化は、BACH2ポリペプチドの発現を増加させる。
【0057】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。
【0058】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで1年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで2年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで3年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで4年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで5年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで10年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで20年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。
【0059】
別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで1年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで2年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで3年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで4年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで5年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで10年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したT細胞は、インビボで20年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。
【0060】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで1年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで2年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで3年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで4年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで5年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで10年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで20年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。
【0061】
別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで1年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで2年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで3年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで4年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで5年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで10年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したT細胞は、インビボで20年以上それらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。
【0062】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したCAR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したCAR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したCAR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したCAR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。
【0063】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したTCR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したTCR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したTCR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したTCR T細胞は、インビボで長期間維持されるか、又は増殖速度が速い。
【0064】
別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の発現が変化したTreg細胞は、インビボでそれらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の発現が変化したTreg細胞は、インビボでそれらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、STAT5Bにコードされたタンパク質の形態が変化したTreg細胞は、インビボでそれらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。別の一実施形態においては、BACH2にコードされたタンパク質の形態が変化したTreg細胞は、インビボでそれらの増殖速度を維持するか、又は増加させる。
【0065】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法が本明細書に開示され、該方法は、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞の有効性を高める方法が本明細書に開示され、該方法は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示される癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法は、遺伝子改変免疫細胞及び追加の薬剤を投与し、前記追加の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0066】
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)
一実施形態においては、キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外腫瘍結合部分と融合した細胞内T細胞シグナル伝達ドメインで構成される抗原標的受容体の1タイプ、最も一般的にはモノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)である。CARは、MHC媒介性提示とは無関係に、細胞表面抗原を直接認識し、すべての患者において任意の所与の抗原に特異的な単一受容体構築物の使用を可能にする。最初のCARは、抗原認識ドメインをT細胞受容体(TCR)複合体のCD3ζ活性化鎖に融合させた。これらの第一世代CARは、T細胞エフェクター機能をインビトロで誘導したが、それらは、インビボで抗腫瘍効率が低いために制約が大きかった。それに続くCARの後継は、CD28、又は4-1BB(CD137)、OX40(CD134)などの種々のTNF受容体ファミリー分子由来の細胞内ドメインを含めて、CD3ζと協同して第二の共刺激シグナルを含んだ。さらに、第三世代受容体は、最も一般的にはCD28及び4-1BB由来の、CD3ζに加えて2つの共刺激シグナルを含んだ。第二及び第三世代CARは、抗腫瘍効率を劇的に改善し、場合によっては、進行癌患者において完全寛解をもたらした。
【0067】
一実施形態においては、CAR T細胞は、抗原受容体を含む免疫応答細胞であり、その受容体がその抗原に結合すると活性化される。
【0068】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、第一世代CAR T細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、第二世代CAR T細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、第三世代CAR T細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、第四世代CAR T細胞である。一実施形態においては、CAR T細胞の各世代は、前の世代のCAR T細胞よりも強力である。
【0069】
一実施形態においては、第一世代CARは、1つのシグナル伝達ドメイン、一般にはCD3 TCRζ鎖の細胞質シグナル伝達ドメインを有する。
【0070】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞は、第二世代CAR T細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞は、三要素キメラ受容体(TPCR:tripartite chimeric receptor)を含む。一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞は、共刺激に依存しない様式でナイーブT細胞を活性化する1個以上のシグナル伝達部分を含む。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、更に腫瘍壊死因子受容体ファミリーの1つ以上のメンバーをコードし、該メンバーは、一実施形態においては、CD27、4-1BB(CD137)若しくはOX40(CD134)又はそれらの組合せである。
【0071】
第三世代CAR T細胞は、2つの共刺激ドメイン、すなわち一実施形態においては、CD28ドメイン、続いて4-1BB又はOX-40シグナル伝達ドメインのシグナル伝達能力を利用しようとするものである。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、一実施形態においてはCD28である、共刺激シグナル伝達ドメインを更にコードする。別の一実施形態においては、シグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖、CD97、GDI la-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、CD28シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組合せである。
【0072】
一実施形態においては、テロメア長及び複製能力は、養子移入T細胞系の移植効率及び抗腫瘍効率と相関する。一実施形態においては、CD28刺激は、T細胞におけるテロメア長を維持する。
【0073】
一実施形態においては、CAR改変T細胞能力は、増殖性サイトカイン(すなわち、IL-12)又は共刺激リガンド(すなわち、4-1BBL)をコードするものを含めて、追加の遺伝子の導入によって更に増強することができ、したがって「強化された(armored)」第四世代CAR改変T細胞を生成することができる。一実施形態においては、「強化されたCAR T細胞」は、抑制性腫瘍微小環境から保護されたCAR T細胞である。別の一実施形態においては、「強化された」CAR技術は、全身性副作用を最小限にすることを目的に、可溶性シグナル伝達タンパク質の局所分泌を取り込んで、腫瘍微小環境内の免疫応答を増幅する。一実施形態においては、シグナル伝達タンパク質シグナルは、T細胞活性化及び動員を刺激することができるIL-12である。一実施形態においては、「強化された」CAR技術は、固形腫瘍適応症において特に有用であり、微小環境及び強力な免疫抑制機序は、堅牢な抗腫瘍応答の確立をより困難にする可能性がある。
【0074】
一実施形態においては、CAR T細胞は、遺伝子改変されて、アポトーシス予防、腫瘍微小環境の再構築、恒常的増殖の誘導、及び定方向のT細胞ホーミングを促進するケモカイン受容体に関与する分子をコードする。
【0075】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞治療は、サイトカイン導入遺伝子の発現、小分子阻害剤との併用療法、又はモノクローナル抗体を用いて、強化される。別の一実施形態においては、腫瘍細胞をより明確に標的にする二重CAR及びケモカイン受容体を用いることを含めて、CAR T細胞治療の改良を目的とした別の戦略は、本明細書に開示されるCAR T細胞及びCAR T細胞治療の一部と考えられる。
【0076】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法のCAR T細胞は、癌細胞対正常細胞に対するCAR T細胞の特異性を高めるために、抑制又は増幅シグナルをもたらし得る第2の結合ドメインを含む。例えば、CAR T細胞は、1種の標的タンパク質の存在下で誘発されるが、第2のタンパク質が存在する場合には抑制されるように、操作することができる。あるいは、最大活性化には2種の標的タンパク質が必要であるように操作することもできる。これらの手法は、正常組織に比べて腫瘍に対するCARの特異性を高めることができる。
【0077】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるCAR T細胞は、抗体に基づいた外部受容体構造、及び免疫受容活性化チロシンモチーフで構成されるシグナル伝達モジュールをコードするサイトゾルドメインをコードする。
【0078】
一実施形態においては、CAR T細胞は、更に、免疫抑制活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変断片(scFv)をコードする。別の一実施形態においては、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4又はそれらの組合せである。
【0079】
一実施形態においては、CAR T細胞は、更に、免疫賦活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変断片(scFv)をコードする。別の一実施形態においては、免疫賦活性を有するポリペプチドは、CD28、OX-40、4-1BB又はそれらの組合せである。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、更に、一実施形態においては抗原の免疫賦活性を増強する、CD40リガンド(CD40L)をコードする。
【0080】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、免疫細胞を対象から得るステップ、及び免疫細胞を遺伝子改変して、キメラ抗原受容体を発現するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、免疫細胞を対象から得るステップ、免疫細胞を遺伝子改変して、キメラ抗原受容体を発現するステップ、及びアポトーシス細胞集団と組み合わせるステップを含み、対象におけるサイトカイン産生が減少するが、アポトーシス細胞集団を投与されないCARを発現する免疫細胞に比べて細胞傷害性が実質的に影響されない(
図2A~2B及び3)。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、免疫細胞を対象から得るステップ、免疫細胞を遺伝子改変して、キメラ抗原受容体を発現するステップ、及びアポトーシス細胞上清又は上清を含む組成物と組み合わせるステップを含み、対象におけるサイトカイン産生が減少するが、アポトーシス細胞上清を投与されないCARを発現する免疫細胞に比べて細胞傷害性が実質的に影響されない。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞からの上清の投与は、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞の有効性を低下させない。
【0081】
したがって、本明細書に開示される一実施形態は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞傷害性免疫細胞(例えば、NK細胞又はT細胞)に関し、該細胞は、それらの細胞傷害機能を保持する。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体は、T細胞に対して外来性である。別の一実施形態においては、CARは、組換え発現される。別の一実施形態においては、CARは、ベクターから発現される。
【0082】
一実施形態においては、CAR T細胞の生成に利用されるT細胞は、ナイーブCD4+T細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞の生成に利用されるT細胞は、ナイーブCD8+T細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞の生成に利用されるT細胞は、エフェクターT細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞の生成に利用されるT細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の一実施形態においては、CAR T細胞の生成に利用されるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。
【0083】
CAR T細胞は、文献に広範に記述されており、例えば、Themelliら(2015)、New Cell Sources for T Cell Engineering and Adoptive Immunotherapy、Cell Stem Cell 16:357~366;Sharpe及びMount(2015)、Genetically modified T cells in cancer therapy: opportunities and challenges、Diseas Models & Mechanisms 8:337~350;Hanら(2013)Journal of Hematology & Oncology 6:47~53;Wilkieら(2010)J Bio Chem 285(33):25538~25544;及びvan der Stegenら(2013)J.Immunol 191:4589~4598を参照されたい。CAR T細胞は、Creative Biolabs(NY USA)などの商業供給源から注文することができ、Creative Biolabs(NY USA)は、キメラ抗原受容体(CAR)の注文に応じた構成及び製造サービスを提供し、組換えアデノウイルスワクチンによってコードされた防御免疫を誘導することができる既製のCAR構築物貯蔵品も提供する。
【0084】
T細胞受容体(TCR)細胞
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、CAR T細胞に加えて、又はその代わりに、デザイナーT細胞受容体(TCR)細胞を利用する。TCRは、T細胞の抗原特異的活性化を媒介する多サブユニット膜貫通複合体である。TCRは、2本の異なるポリペプチド鎖で構成される。TCRは、標的細胞、例えば腫瘍又は癌細胞上の抗原エピトープを認識することによって、T細胞上で抗原特異性を与える。腫瘍又は癌細胞上に存在する抗原との接触後、T細胞は増殖して、表現型を獲得し、それらが癌又は腫瘍細胞を除去できるように機能する。
【0085】
一実施形態においては、TCR T細胞治療は、目的タンパク質のエピトープに特異的であるT細胞受容体(TCR)をT細胞に導入するステップを含む。別の一実施形態においては、目的タンパク質は、腫瘍関連抗原である。別の一実施形態においては、遺伝子操作されたTCRは、T細胞活性化ドメインと一緒に腫瘍細胞上で主要組織適合複合体(MHC:major histocompatibility complex)によって提示される腫瘍抗原エピトープを認識する。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、抗原をそれらの細胞内又は膜局在化に無関係に認識する。別の一実施形態においては、TCRは、腫瘍関連抗原を細胞内で発現する腫瘍細胞を認識する。一実施形態においては、TCRは内部抗原を認識する。別の一実施形態においては、TCRは、血管新生因子を認識する。別の一実施形態においては、血管新生因子は、新しい血管の形成に関与する分子である。種々の遺伝子改変T細胞受容体及びそれらの製造方法が当該技術分野で既知である。
【0086】
一実施形態においては、TCR T細胞治療を使用して、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、改善する、その発生率を減少させる、又は軽減する。一実施形態においては、TCR T細胞治療を使用して、血液腫瘍(リンパ腫及び白血病)及び固形腫瘍(難治性黒色腫、肉腫)を有するものを含めて、進行型転移性疾患を処置する、予防する、阻害する、改善する、その発生率を減少させる、又は軽減する。一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるTCR T細胞治療は、Sadelainら(Cancer Discov.2013 Apr;3(4):388~398)の表1に列挙された悪性腫瘍を処置する。
【0087】
別の一実施形態においては、T細胞受容体は、NY-ESO-1エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗NY-ESO-1である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、HPV-16 E6エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗HPV-16 E6である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、HPV-16 E7エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗HPV-16 E7である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、MAGE A3/A6エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗MAGE A3/A6である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、MAGE A3エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗MAGE A3である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、SSX2エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCRが操作されたT細胞は、抗SSX2である。別の一実施形態においては、T細胞受容体は、本明細書に開示される標的抗原に結合するように遺伝子改変される。当該技術分野で周知であるツールを用いて、当業者は、T細胞受容体を癌又は腫瘍細胞上に存在する標的抗原に結合するように遺伝子改変することができ、TCRが操作されたT細胞が抗腫瘍又は抗癌細胞を含むことを理解されたい。
【0088】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、免疫細胞を対象から得るステップ、及び免疫細胞を遺伝子改変して、組換えT細胞受容体(TCR)を発現するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、免疫細胞を対象から得るステップ、免疫細胞を遺伝子改変して、組換えTCRを発現するステップ、及び追加の薬剤と組み合わせるステップを含み、前記追加の薬剤は、アポトーシス細胞集団、アポトーシス細胞上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0089】
一実施形態においては、TCR T細胞の生成に利用されるT細胞は、ナイーブCD4+T細胞である。別の一実施形態においては、TCR T細胞の生成に利用されるT細胞は、ナイーブCD8+T細胞である。別の一実施形態においては、TCR T細胞の生成に利用されるT細胞は、エフェクターT細胞である。別の一実施形態においては、TCR T細胞の生成に利用されるT細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の一実施形態においては、TCR T細胞の生成に利用されるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。
【0090】
TCR T細胞は、文献に広範に記述されており、例えば、Sharpe及びMount(2015)同上;Essand M、Loskog ASI(2013)、Genetically engineered T cells for the treatment of cancer(Review).J Intern Med 273:166~181;並びにKershawら(2014)、Clinical application of genetically modified T cells in cancer therapy.Clinical & Translational Immunology 3:1~7を参照されたい。
【0091】
抗原のターゲティング
一実施形態においては、CARは、抗原に対する抗体又は抗体断片を介して抗原のエピトープに結合する。別の一実施形態においては、抗体は、モノクローナル抗体である。別の一実施形態においては、抗体は、ポリクローナル抗体である。別の一実施形態においては、抗体断片は、単鎖可変断片(scFv)である。
【0092】
一実施形態においては、TCRは、抗原のエピトープに遺伝子改変T細胞受容体を介して結合する。
【0093】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物のCAR T細胞は、腫瘍関連抗原(TAA:tumor associated antigen)に結合する。別の一実施形態においては、前記腫瘍関連抗原は、ムチン1、細胞表面関連(MUC1)若しくは多形性上皮性ムチン(PEM:polymorphic epithelial mucin)、高アルギニン初期変異腫瘍(Armet:Arginine-rich, mutated in early stage tumors)、熱ショックタンパク質60(HSP60:Heat Shock Protein 60)、カルネキシン(CANX)、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存)2、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドロラーゼ(MTHFD2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP:fibroblast activation protein)、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP6)、B黒色腫抗原1(BAGE-1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVの異常転写物(GnTV)、Q5H943、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel、カリクレイン-4、マンマグロビン-1、MART-1、GPR143-OA1、前立腺特異抗原(PSA:prostate specific antigen)、TRP1、チロシナーゼ、FGP-5、NEU癌原遺伝子、Aft、MMP-2、前立腺特異的膜抗原(PSMA:prostate specific membrane antigen)、テロメラーゼ関連タンパク質-2、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP:Prostatic acid phosphatase)、ウロプラキンII又はプロテイナーゼ3である。
【0094】
別の一実施形態においては、CARは、白血病におけるようにB細胞を破壊したい場合に、CD19又はCD20に結合してB細胞を標的にする。CD19は、B細胞系譜特異的表面受容体であり、プロB細胞から初期形質細胞までのその広範な発現によってB細胞悪性腫瘍の免疫療法の魅力的な標的になる。別の一実施形態においては、CARは、ROR1、CD22又はGD2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、NY-ESO-1に結合する。別の一実施形態においては、CARは、MAGEファミリータンパク質に結合する。別の一実施形態においては、CARは、メソテリンに結合する。別の一実施形態においては、CARは、c-erbB2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、BRAFV600E変異、BCR-ABL転座などの腫瘍特異的である変異性抗原に結合する。別の一実施形態においては、CARは、HDにおけるEBV、子宮頚癌におけるHPV、メルケル癌におけるポリオーマウイルスなどの腫瘍特異的であるウイルス抗原に結合する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、Her2/neuに結合する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、EGFRvIIIに結合する。
【0095】
一実施形態においては、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、CD19抗原に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD22抗原に結合する。別の一実施形態においては、CARは、アルファ葉酸受容体に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CAIXに結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD20に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD23に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD24に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD30に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD33に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD38に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD44v6に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD44v7/8に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD123に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CD171に結合する。別の一実施形態においては、CARは、癌胎児性抗原(CEA)に結合する。別の一実施形態においては、CARは、EGFRvIIIに結合する。別の一実施形態においては、CARは、EGP-2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、EGP-40に結合する。別の一実施形態においては、CARは、EphA2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、Erb-B2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、Erb-B2,3,4に結合する。別の一実施形態においては、CARは、Erb-B3/4に結合する。別の一実施形態においては、CARは、FBPに結合する。別の一実施形態においては、CARは、胎児アセチルコリン受容体に結合する。別の一実施形態においては、CARは、GD2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、GD3に結合する。別の一実施形態においては、CARは、HER2に結合する。別の一実施形態においては、CARは、HMW-MAAに結合する。別の一実施形態においては、CARは、IL-11Rアルファに結合する。別の一実施形態においては、CARは、IL-13Rアルファ1に結合する。別の一実施形態においては、CARは、KDRに結合する。別の一実施形態においては、CARは、カッパ-軽鎖に結合する。別の一実施形態においては、CARは、Lewis Yに結合する。別の一実施形態においては、CARは、L1細胞接着分子に結合する。別の一実施形態においては、CARは、MAGE-A1に結合する。別の一実施形態においては、CARは、メソテリンに結合する。別の一実施形態においては、CARは、CMV感染細胞に結合する。別の一実施形態においては、CARは、MUC1に結合する。別の一実施形態においては、CARは、MUC16に結合する。別の一実施形態においては、CARは、NKG2Dリガンドに結合する。別の一実施形態においては、CARは、NY-ESO-1(アミノ酸157~165)に結合する。別の一実施形態においては、CARは、癌胎児性抗原(h5T4)に結合する。別の一実施形態においては、CARは、PSCAに結合する。別の一実施形態においては、CARは、PSMAに結合する。別の一実施形態においては、CARは、ROR1に結合する。別の一実施形態においては、CARは、TAG-72に結合する。別の一実施形態においては、CARは、VEGF-R2又は別のVEGF受容体に結合する。別の一実施形態においては、CARは、B7-H6に結合する。別の一実施形態においては、CARは、CA9に結合する。別の一実施形態においては、CARは、αvβ6インテグリンに結合する。別の一実施形態においては、CARは、8H9に結合する。別の一実施形態においては、CARは、NCAMに結合する。別の一実施形態においては、CARは、胎児アセチルコリン受容体に結合する。
【0096】
別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、CD19抗原を標的にし、B細胞悪性腫瘍、ALL、濾胞性リンパ腫、CLL及びリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD22抗原を標的にし、B細胞悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、アルファ葉酸受容体又は葉酸受容体アルファを標的にし、卵巣癌又は上皮癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CAIX又はG250/CAIXを標的にし、腎細胞癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD20を標的にし、リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、外套細胞リンパ腫及び無痛性B細胞リンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD23を標的にし、CLLを有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD24を標的にし、膵臓腺癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD30を標的にし、リンパ腫又はホジキンリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD33を標的にし、AMLを有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD38を標的にし、非ホジキンリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD44v6を標的にし、幾つかの悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD44v7/8を標的にし、頚癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD123を標的にし、骨髄性悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CEAを標的にし、結腸直腸癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、EGFRvIIIを標的にし、グリア芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、EGP-2を標的にし、複数の悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、EGP-40を標的にし、結腸直腸癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、EphA2を標的にし、グリア芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、Erb-B2又はErbB3/4を標的にし、乳癌など、前立腺癌、結腸癌、種々の腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、Erb-B2,3,4を標的にし、乳癌などを有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、FBPを標的にし、卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、胎児アセチルコリン受容体を標的にし、横紋筋肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、GD2を標的にし、神経芽細胞腫、黒色腫又はユーイング肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、GD3を標的にし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、HER2を標的にし、髄芽腫、膵臓腺癌、グリア芽細胞腫、骨肉腫又は卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、HMW-MAAを標的にし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、IL-11Rアルファを標的にし、骨肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、IL-13Rアルファ1を標的にし、神経膠腫、グリア芽細胞腫又は髄芽腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、IL-13受容体アルファ2を標的にし、幾つかの悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、KDRを標的にし、腫瘍新血管系を標的にすることによって腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、カッパ-軽鎖を標的にし、B細胞悪性腫瘍(B-NHL、CLL)を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、Lewis Yを標的にし、種々の癌腫又は上皮由来の腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、L1細胞接着分子を標的にし、神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、MAGE-A1又はHLA-A1 MAGE A1を標的にし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、メソテリンを標的にし、中皮腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CMV感染細胞を標的にし、CMVを有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、MUC1を標的にし、乳癌又は卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、MUC16を標的にし、卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、NKG2Dリガンドを標的にし、骨髄腫、卵巣及び他の腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、NY-ESO-1(157-165)又はHLA-A2 NY-ESO-1を標的にし、多発性骨髄腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、癌胎児性抗原(h5T4)を標的にし、種々の腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、PSCAを標的にし、前立腺癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、PSMAを標的にし、前立腺癌/腫瘍血管系を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、ROR1を標的にし、B-CLL及び外套細胞リンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、TAG-72を標的にし、腺癌又は消化器癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、VEGF-R2又は別のVEGF受容体を標的にし、腫瘍新血管系を標的にすることによって腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CA9を標的にし、腎細胞癌を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、CD171を標的にし、腎臓神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、NCAMを標的にし、神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、胎児アセチルコリン受容体を標的にし、横紋筋肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。別の一実施形態においては、CARは、参照によりその全体を本明細書に援用するSadelainら(Cancer Discov.2013 Apr;3(4):388~398)の表1に列挙された標的抗原の1つに結合する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、炭水化物又は糖脂質構造に結合する。
【0097】
一実施形態においては、CARは、血管新生因子に結合し、それによって腫瘍血管系を標的にする。一実施形態においては、血管新生因子はVEGFR2である。別の一実施形態においては、血管新生因子はエンドグリンである。別の一実施形態においては、本発明の血管新生因子は、アンジオゲニン、アンジオポエチン-1、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF:Hepatocyte growth factor)/散乱因子(SF:scatter factor)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミッドカイン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF:Platelet-derived endothelial cell growth factor)、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB:Platelet-derived growth factor-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換成長因子-アルファ(TGF-アルファ:Transforming growth factor-alpha)、形質転換成長因子-ベータ(TGF-ベータ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ:Tumor necrosis factor-alpha)、血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular endothelial growth factor)/血管透過性因子(VPF:vascular permeability factor)である。別の一実施形態においては、血管新生因子は、血管新生タンパク質である。一実施形態においては、成長因子は、血管新生タンパク質である。一実施形態においては、本発明の組成物及び方法に使用される血管新生タンパク質は、線維芽細胞増殖因子(FGF:Fibroblast growth factor);VEGF;VEGFR及びニューロピリン1(NRP-1);アンジオポエチン1(Ang1)及びTie2;血小板由来増殖因子(PDGF;BB-ホモ二量体)及びPDGFR;形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、エンドグリン及びTGF-β受容体;単球走化性タンパク質-1(MCP-1:monocyte chemotactic protein-1);インテグリンαVβ3、αVβ5及びα5β1;VE-カドヘリン及びCD31;エフリン;プラスミノゲン活性化因子;プラスミノゲン活性化因子阻害剤-1;一酸化窒素シンターゼ(NOS)及びCOX-2;AC133;又はId1/Id3である。一実施形態においては、本発明の組成物及び方法に使用される血管新生タンパク質は、アンジオポエチンであり、一実施形態においては、アンジオポエチン1、アンジオポエチン3、アンジオポエチン4又はアンジオポエチン6である。一実施形態においては、エンドグリンは、CD105、EDG、HHT1、ORW又はORW1としても知られる。一実施形態においては、エンドグリンは、TGFベータ補助受容体である。
【0098】
別の一実施形態においては、CAR T細胞は、感染病原体に関連する抗原に結合する。一実施形態においては、感染病原体は、結核菌である。一実施形態においては、前記結核菌関連抗原は、抗原85B、リポタンパク質IpqH、推定ATP依存性ヘリカーゼ、特徴づけられていないタンパク質Rv0476/MTO4941前駆体、又は特徴づけられていないタンパク質Rv1334/MT1376前駆体である。
【0099】
別の一実施形態においては、CARは、抗体に結合する。一実施形態においては、CAR T細胞は、「抗体結合T細胞受容体」(ACTR:antibody-coupled T-cell receptor)である。この実施形態によれば、CAR T細胞は、汎用CAR T細胞である。別の一実施形態においては、抗体受容体を有するCAR T細胞は、抗体投与の前に、後に、又は投与と同時に投与され、次いで抗体に結合し、T細胞を腫瘍又は癌に近づける。別の一実施形態においては、抗体は、腫瘍細胞抗原に対するものである。別の一実施形態においては、抗体は、CD20に対するものである。別の一実施形態においては、抗体はリツキシマブである。
【0100】
別の一実施形態においては、抗体は、ERBB2に対するトラスツヅマブ(Herceptin;Genentech):ヒト化IgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、VEGFに対するベバシズマブ(Avastin;Genentech/Roche):ヒト化IgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、EGFRに対するセツキシマブ(Erbitux;Bristol-Myers Squibb):キメラヒト-マウスIgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、EGFRに対するパニツムマブ(Vectibix;Amgen):ヒトIgG2である。別の一実施形態においては、抗体は、CTLA4に対するイピリムマブ(Yervoy;Bristol-Myers Squibb):IgG1である。
【0101】
別の一実施形態においては、抗体は、CD52に対するアレムツズマブ(Campath;Genzyme):ヒト化IgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、CD20に対するオファツムマブ(Arzerra;Genmab):ヒトIgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、CD33に対するゲムツズマブオゾガミシン(Mylotarg;Wyeth):ヒト化IgG4である。別の一実施形態においては、抗体は、CD30に対するブレンツキシマブベドチン(Adcetris;Seattle Genetics):キメラIgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、CD20に対する90Y標識イブリツモマブチウキセタン(Zevalin;IDEC Pharmaceuticals):マウスIgG1である。別の一実施形態においては、抗体は、CD20に対する131I標識トシツモマブ(Bexxar;GlaxoSmithKline):マウスIgG2である。
【0102】
別の一実施形態においては、抗体は、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR-2:vascular endothelial growth factor receptor-2)に対するラムシルマブである。別の一実施形態においては、抗体は、ラムシルマブ(Cyramza Injection、Eli Lilly and Company)、ブリナツモマブ(BLINCYTO、Amgen Inc.)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck Sharp & Dohme Corp.)、オビヌツズマブ(GAZYVA、Genentech,Inc.、以前はGA101として知られた)、ペルツズマブ注射剤(PERJETA、Genentech,Inc.)又はデノスマブ(Xgeva、Amgen Inc.)である。別の一実施形態においては、抗体は、バシリキシマブ(Simulect;Novartis)である。別の一実施形態においては、抗体は、ダクリズマブ(Zenapax;Roche)である。
【0103】
別の一実施形態においては、CAR T細胞が結合する抗体は、本明細書に記載された、及び/又は当該技術分野で既知である、腫瘍若しくは癌抗原又はその一部に対するものである。別の一実施形態においては、CAR T細胞が結合する抗体は、腫瘍関連抗原に対するものである。別の一実施形態においては、CAR T細胞が結合する抗体は、血管新生因子である腫瘍関連抗原又はその一部に対するものである。
【0104】
当業者は、CARが結合する上記抗原のいずれかを認識するように遺伝子改変TCRを操作できることを理解されたい。一実施形態においては、TCR T細胞は、CAR T細胞結合標的として上述された抗原に結合する。別の一実施形態においては、TCRは、本明細書に開示される任意の抗原を認識する。別の一実施形態においては、TCRが認識する抗体は、本明細書に記載された、及び/又は当該技術分野で既知である、腫瘍若しくは癌抗原又はその一部である。別の一実施形態においては、TCRは、腫瘍関連抗原を認識する。別の一実施形態においては、TCRは、血管新生因子である腫瘍関連抗原又はその一部を認識する。
【0105】
樹状細胞
一実施形態においては、樹状細胞(DC:dendritic cell)は、抗原材料を処理し、それを細胞表面で免疫系のT細胞に提示し、それによって新しい抗原とリコール抗原の両方に対してT細胞を感作させることができる、哺乳動物免疫系の抗原産生及び提示細胞である。別の一実施形態においては、DCは、自然免疫系と適応免疫系の間のメッセンジャーとして働く、最も強力な抗原産生細胞である。DC細胞を使用して、一実施形態においては、腫瘍を攻撃し、溶解させる、エフェクター細胞の生成によって、特異的抗腫瘍免疫を刺激することができる。
【0106】
樹状細胞は、皮膚(ランゲルハンス細胞と呼ばれる分化した樹状細胞型が存在する)並びに鼻、肺、胃及び腸の内側などの外部環境と接触する組織中に存在する。それらは、血中に未成熟状態で見ることもできる。活性化後、それらは、リンパ節に移動し、そこでT細胞及びB細胞と相互作用して、適応免疫応答を惹起し、形成する。ある発生段階においては、それらは、細胞にその名称を与える樹状突起である、分岐突起部を生成させる。樹状細胞は、特別な腫瘍抗原を発現するように操作することができる。
【0107】
T細胞活性化に必要な3つのシグナルは、(i)自己MHC分子における同種抗原の提示、(ii)膜結合受容体-リガンド対による共刺激、及び(iii)後続の免疫応答の極性化を導く可溶性因子である。樹状細胞(DC)は、それらを優れた癌ワクチンプラットホームにするT細胞活性化に必要な3つのシグナルのすべてを提供することができる。
【0108】
したがって、一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、樹状細胞と追加の薬剤とを含む組成物であり、前記追加の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0109】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、樹状細胞と追加の薬剤を含む組成物とを前記対象に投与するステップを含み、前記薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0110】
サイトカインストーム及びサイトカイン放出症候群
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、NK細胞、樹状細胞、TCR T細胞、操作されたキメラ抗原受容体を含むT細胞(CAR T細胞)などの免疫細胞を、対象に起こり得る毒性サイトカイン放出又は「サイトカイン放出症候群」(CRS)又は「重症サイトカイン放出症候群」(sCRS:severe cytokine release syndrome)又は「サイトカインストーム」を減少させる少なくとも1種の追加の薬剤と一緒に供給するステップを含む。別の一実施形態においては、CRS、sCRS又はサイトカインストームは、免疫細胞の投与の結果として起こる。別の一実施形態においては、CRS、sCRS又はサイトカインストームは、免疫細胞とは別の刺激、条件又は症候群の結果である(下記参照)。別の一実施形態においては、サイトカインストーム、サイトカインカスケード又は高サイトカイン血症は、より重症型のサイトカイン放出症候群である。
【0111】
一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞、又は前記アポトーシス細胞を含む組成物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞上清、又は前記上清を含む組成物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、CTLA-4遮断薬を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びCTLA-4遮断薬を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アルファ-1抗トリプシン又はその断片若しくはその類似体を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びアルファ-1抗トリプシン又はその断片若しくはその類似体を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、テルル化合物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びテルル化合物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、免疫調節剤を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及び免疫調節剤を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、Treg細胞を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びTreg細胞を含む。
【0112】
当業者は、毒性サイトカイン放出又は毒性サイトカインレベルを減少させるステップが、対象における毒性サイトカインレベルの生成を減少させる、若しくは阻害するステップ、又は対象におけるサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームの発生率を抑制する、若しくは減少させるステップを含むことを理解されたい。別の一実施形態においては、毒性サイトカインレベルは、CRS又はサイトカインストーム中に減少する。別の一実施形態においては、毒性サイトカインレベルの生成を減少させる、又は阻害するステップは、CRS又はサイトカインストームを処置するステップを含む。別の一実施形態においては、毒性サイトカインレベルの生成を減少させる、又は阻害するステップは、CRS又はサイトカインストームを予防するステップを含む。別の一実施形態においては、毒性サイトカインレベルの生成を減少させる、又は阻害するステップは、CRS又はサイトカインストームを軽減するステップを含む。別の一実施形態においては、毒性サイトカインレベルの生成を減少させる、又は阻害するステップは、CRS又はサイトカインストームを改善するステップを含む。別の一実施形態においては、毒性サイトカインは、炎症誘発性サイトカインを含む。別の一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインはIL-6を含む。別の一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインは、IL-1βを含む。別の一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインは、TNF-αを含む。別の一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインは、IL-6、IL-1β若しくはTNF-α又はそれらの任意の組合せを含む。
【0113】
一実施形態においては、サイトカイン放出症候群は、高レベルの幾つかの炎症性サイトカイン、及び低血圧、高熱、震えなどの対象における有害な身体的反応を特徴とする。別の一実施形態においては、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1β及びTNF-αを含む。別の一実施形態においては、CRSは、高レベルのIL-6、IL-1β若しくはTNF-α又はそれらの任意の組合せを特徴とする。別の一実施形態においては、CRSは、高レベルのIL-8若しくはIL-13又はそれらの任意の組合せを特徴とする。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、IL-1ベータ、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、GM-CSF、IL-5、フラクタルカイン、又はそれらの組合せ若しくはそれらのサブセットの増加を特徴とする。更に別の一実施形態においては、IL-6は、CRS又はサイトカインストームのマーカーを含む。別の一実施形態においては、腫瘍量の多い患者ほど、サイトカイン放出症候群の発生率及び重症度が高い。
【0114】
別の一実施形態においては、ヒト及びマウスにおけるCRS又はサイトカインストームにおいて増加するサイトカインは、下表1及び2に列挙したサイトカインの任意の組合せを含み得る。
【0115】
表1:ヒト及び/又はマウスにおけるCRS又はサイトカインストームにおいて増加するサイトカインのパネル
【0116】
【0117】
一実施形態においては、表1のサイトカインFlt-3L、フラクタルカイン、GM-CSF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-2Rα、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12及びIL-13は、CRS又はサイトカインストームにおいて有意と考えられる。別の一実施形態においては、表1のIFN-α、IFN-β、IL-1及びIL-1Rαは、CRS又はサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の一実施形態においては、M-CSFの重要性は不明である。別の一実施形態においては、表1に列挙した任意のサイトカイン又はそれらの組合せを、CRS又はサイトカインストームのマーカーとして使用することができる。
【0118】
表2:ヒト及び/又はマウスにおけるCRS又はサイトカインストームにおいて増加するサイトカインのパネル
【0119】
【0120】
一実施形態においては、表2のIL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β及びTNF-αは、CRS又はサイトカインストームにおいて有意と考えられる。別の一実施形態においては、表2のIL-27、MCP-3、PGE2、RANTES、TGF-β、TNF-αR1及びMIGは、CRS又はサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の一実施形態においては、IL-23及びIL-25の重要性は不明である。別の一実施形態においては、表2に列挙した任意のサイトカイン又はそれらの組合せを、CRS又はサイトカインストームのマーカーとして使用することができる。別の一実施形態においては、マウスサイトカインIL-10、IL-1β、IL-2、IP-10、IL-4、IL-5、IL-6、IFNα、IL-9、IL-13、IFN-γ、IL-12p70、GM-CSF、TNF-α、MIP-1α、MIP-1β、IL-17A、IL-15/IL-15R及びIL-7は、CRS又はサイトカインストームにおいて重要であると思われる。
【0121】
当業者は、「サイトカイン」という用語が、サイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子アルファ)、ケモカイン(例えば、MIP1アルファ、MIP1ベータ、RANTES)、及び反応性酸素種、一酸化窒素などの他の炎症の可溶性媒介物質を包含し得ることを理解されたい。
【0122】
一実施形態においては、特定のサイトカインの放出の増加は、有意、重要又は重要性不明であろうとなかろうと、特定のサイトカインがサイトカインストームの一部であることを演繹的に意味しない。一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインの増加は、サイトカインストーム又はCRSの結果ではない。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、高レベルの特定のサイトカイン又はサイトカイングループの供給源であり得る。
【0123】
別の一実施形態においては、サイトカイン放出症候群は、以下の症候のいずれか又はすべてを特徴とする:悪寒を伴う、又は伴わない発熱、倦怠感、疲労、食欲不振、筋痛、関節痛、悪心、嘔吐、頭痛 皮疹、悪心、嘔吐、下痢、頻呼吸、低酸素血、心血管頻拍、脈圧拡大、低血圧、心拍出量増加(初期)、心拍出量の潜在的減少(後期)、Dダイマー増加、出血を伴う、又は伴わない低フィブリノーゲン血症、高窒素血症 肝臓高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、頭痛、精神状態変化、錯乱、譫妄、喚語困難又は顕症の失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩調変化、発作。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、IL-2放出及びリンパ球増殖を特徴とする。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、CAR T細胞によって放出されるサイトカインの増加を特徴とする。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、CAR T細胞以外の細胞によって放出されるサイトカインの増加を特徴とする。
【0124】
別の一実施形態においては、サイトカインストームは、心機能不全、成人呼吸促迫症候群、神経毒性、腎及び/又は肝不全、並びに播種性血管内凝固を含めて、潜在的に生命にかかわる合併症を引き起こす。
【0125】
当業者は、サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの特性が、CRS又はサイトカインストームの誘発後数日から数週間で起こると推定されることを理解されたい。一実施形態においては、CAR T細胞は、CRS又はサイトカインストームの誘因である。別の一実施形態においては、CRS又はサイトカインストームの誘因は、CAR T細胞ではない。
【0126】
一実施形態においては、サイトカインストームの指標としてのサイトカインレベル又は濃度の測定は、サイトカインレベル又は濃度の増加倍数、パーセント(%)増加、純増加又は変化率として表すことができる。別の一実施形態においては、あるレベル又は濃度を超える絶対的なサイトカインレベル又は濃度は、サイトカインストームを起こした対象、又は経験しようとしている対象の指標であり得る。別の一実施形態においては、あるレベル又は濃度の絶対的なサイトカインレベル又は濃度、例えば、CAR-T細胞治療を受けていない対照対象において通常見られるレベル又は濃度は、CAR T細胞を受ける対象におけるサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法の指標であり得る。
【0127】
当業者は、「サイトカインレベル」という用語が、濃度の尺度、倍率変化の尺度、パーセント(%)変化の尺度、又は変化率の尺度を包含し得ることを理解されたい。さらに、血液、唾液、血清、尿及び血漿中のサイトカインを測定する方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0128】
一実施形態においては、サイトカインストームが幾つかの炎症性サイトカインの増加に関連するという認識にもかかわらず、IL-6レベルを、サイトカインストームの一般的尺度として、及び/又はサイトカインストームの処置の有効性の一般的尺度として、使用することができる。当業者は、他のサイトカイン、例えば、TNF-α、IB-1α、IL-8、IL-13又はINF-γをサイトカインストームのマーカーとして使用できることを理解されたい。さらに、サイトカインを測定する分析方法は、当該技術分野でよく知られている。当業者は、サイトカインストームに影響を及ぼす方法が、サイトカイン放出症候群にも同様に影響し得ることを理解されたい。
【0129】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを経験した対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを経験しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを経験した対象におけるサイトカイン産生を減少させ、又は阻害し、表1及び/又は2に列挙した任意のサイトカイン又はサイトカイングループの産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインIL-6産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインIL-ベータ1産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインIL-8産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインIL-13産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインTNF-アルファ産生が減少する、又は阻害される。別の一実施形態においては、サイトカインIL-6産生、IL-1ベータ産生若しくはTNF-アルファ産生又はそれらの任意の組合せが減少する、又は阻害される。
【0130】
一実施形態においては、サイトカイン放出症候群は、段階分けされる。別の一実施形態においては、グレード1は、症候が生命にかかわらず、対症療法のみを必要とするサイトカイン放出症候群、例えば、発熱、悪心、疲労、頭痛、筋痛、倦怠感を示す。別の一実施形態においては、グレード2症候は、酸素、流体、低血圧用昇圧剤などの適度の介入を必要とし、それに反応する。別の一実施形態においては、グレード3症候は、積極的な介入を必要とし、それに反応する。別の一実施形態においては、グレード4症候は、生命にかかわる症候であり、人工呼吸器を必要とし、患者は臓器毒性を示す。
【0131】
別の一実施形態においては、サイトカインストームは、IL-6及びインターフェロンガンマ放出を特徴とする。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、表1及び2に列挙した任意のサイトカイン又はそれらの組合せの放出を特徴とする。別の一実施形態においては、サイトカインストームは、当該技術分野で既知である任意のサイトカイン又はそれらの組合せの放出を特徴とする。
【0132】
一実施形態においては、発症は、注入開始後数分から数時間で始まる。別の一実施形態においては、症候は、ピークサイトカインレベルと一致する。
【0133】
一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CAR T細胞治療を支援することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CRS又はサイトカインストームの発生率抑制又は減少を支援することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CRS又はサイトカインストームの処置を支援することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CRS又はサイトカインストームの予防を支援することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CRS又はサイトカインストームの改善を支援することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物は、CRS又はサイトカインストームの軽減を支援することができる。
【0134】
一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受け、アポトーシス細胞集団若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物を投与される対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CAR T細胞治療を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの発生率抑制又は減少を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの処置を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの予防を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの改善を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの軽減を支援することができる。
【0135】
一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CAR T細胞治療を支援することができる。一実施形態においては、TCR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、TCR T細胞治療を支援することができる。一実施形態においては、治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、治療を支援することができる。一実施形態においては、NK細胞治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、追加の薬剤を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、NK細胞治療を支援することができる。
【0136】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの発生率抑制又は減少を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの処置を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの予防を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの改善を支援することができる。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CRS又はサイトカインストームの軽減を支援することができる。
【0137】
一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞、又は前記アポトーシス細胞を含む組成物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞上清、又は前記上清を含む組成物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、CTLA-4遮断薬を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びCTLA-4遮断薬を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アルファ-1抗トリプシン又はその断片若しくはその類似体を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びアルファ-1抗トリプシン又はその断片若しくはその類似体を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、テルル化合物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及びテルル化合物を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、免疫調節剤を含む。別の一実施形態においては、有害なサイトカイン放出を減少させる追加の薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物、及び免疫調節剤を含む。
【0138】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、CAR T細胞とイピリムマブなどの1種以上のCTLA-4遮断薬との併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、CAR T細胞及び1種以上のCTLA-4遮断薬を含む併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、TCR T細胞とイピリムマブなどの1種以上のCTLA-4遮断薬との併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、TCR T細胞及び1種以上のCTLA-4遮断薬を含む併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、樹状細胞とイピリムマブなどの1種以上のCTLA-4遮断薬との併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、樹状細胞及び1種以上のCTLA-4遮断薬を含む併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、NK細胞とイピリムマブなどの1種以上のCTLA-4遮断薬との併用療法を利用する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、NK細胞及び1種以上のCTLA-4遮断薬を含む併用療法を利用する。
【0139】
別の一実施形態においては、CTLA-4は、自己寛容を維持するのに役立つT細胞活性化の強力な阻害剤である。別の一実施形態においては、別の一実施形態においては抗体である抗CTLA-4遮断薬の投与は、T細胞活性化の正味の効果をもたらす。
【0140】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法によって処置する、予防する、阻害する、改善する、発生率を減少させる、又は軽減することができる、CAR T細胞、TCR T細胞、樹状細胞又はNK細胞投与に起因する別の毒性は、B細胞形成不全又は腫瘍崩壊症候群(TLS)を含む。
【0141】
一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、CAR T細胞治療の有効性に影響しない。別の一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるCRS又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、CAR T細胞治療の有効性を約5%を超えて低下させる。別の一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるCRS又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、CAR T細胞治療の有効性を約10%を超えて低下させる。別の一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるCRS又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、CAR T細胞治療の有効性を約15%を超えて低下させる。別の一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるCRS又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法は、CAR T細胞治療の有効性を約20%を超えて低下させる。
【0142】
細胞傷害性を定量化する任意の適切な方法を使用して、CARを発現するように改変された免疫細胞における活性が実質的に不変であるかどうか判定することができる。例えば、細胞傷害性は、実施例に記載の細胞毒性試験などの細胞培養に基づくアッセイによって定量化することができる。細胞毒性試験は、死細胞のDNAを優先的に染色する染料を採用することができる。別の場合には、細胞集団における生細胞と死細胞の相対数を測定する蛍光及び発光アッセイを使用することができる。こうしたアッセイでは、プロテアーゼ活性は、細胞生存率及び細胞毒性のマーカーとして役立ち、標識された細胞透過性ペプチドは、試料中の生細胞の数に比例した蛍光シグナルを発生する。例えば、細胞毒性試験は、フローサイトメトリー分析において7-AADを使用することができる。種々の細胞毒性試験のためのキットは、Promega、Abcam、Life Technologiesなどの製造者から市販されている。
【0143】
別の一実施形態においては、細胞傷害性の尺度は、定性的とすることができる。別の一実施形態においては、細胞傷害性の尺度は、定量的とすることができる。更なる一実施形態においては、細胞傷害性の尺度は、細胞傷害性サイトカインの発現変化に関連し得る。別の一実施形態においては、細胞傷害性の尺度は、骨髄及び肝臓における生存曲線及び腫瘍量によって決定することができる。
【0144】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、同種ドナー細胞の拒絶を克服するのに有用である追加のステップを含む。一実施形態においては、該方法は、一実施形態においては同種CAR T細胞である、CAR T細胞の投与前に、完全又は部分的リンパ球除去のステップを含む。別の一実施形態においては、リンパ球除去は、前記同種T細胞が対象とされる腫瘍を攻撃するのに十分な期間、ただし骨髄移植による宿主免疫系の救出を必要とするには不十分な程度に、宿主対移植片反応を遅延するように調節される。別の一実施形態においては、2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、リン酸水素2-アンモニオ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)ブチル(KRP-203ホスファート)、当該技術分野で既知である他の薬剤など、リンパ節からの同種T細胞の放出を遅延させる薬剤を、本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用して、有効性を有するが移植片対宿主病を惹起しない同種CAR T細胞の使用を可能にすることができる。一実施形態においては、同種T細胞によるMHC発現は、同種細胞の拒絶を抑制するために停止される。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、同種細胞の拒絶を予防する。
【0145】
CAR T細胞治療に関連するサイトカイン放出
一実施形態においては、サイトカイン放出は、CAR T細胞治療などの免疫療法の実施後に数日~2週間発生する。一実施形態においては、低血圧及び他の症候が、サイトカイン放出に続き、すなわち数日から数週間続く。したがって、一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を対象に免疫療法と同時に予防として投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~3日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から7日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から10日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から14日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~14日後に対象に投与する。
【0146】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の実施から2~3時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から7時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から10時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から14時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~14時間後に対象に投与する。
【0147】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の前に予防として対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の1日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~3日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の7日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の10日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の14日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~14日前に対象に投与する。
【0148】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の実施の2~3時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の7時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の10時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の14時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~14時間前に対象に投与する。
【0149】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、サイトカイン放出症候群が発生した後、治療投与することができる。一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清は、サイトカイン放出症候群の始まりに至る、又は始まりを証明するサイトカイン放出が検出された後、投与することができる。一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清は、サイトカインレベルの増加又はサイトカイン放出症候群を終結させ、その続発症を回避することができる。
【0150】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、複数の時点で治療投与することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載の少なくとも2つの時点である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載の少なくとも3つの時点である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、CRS又はサイトカインストームの前、及びサイトカイン放出症候群が発生した後、及びそれらの任意の組合せである。
【0151】
一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療とアポトーシス細胞治療又は上清を一緒に投与する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療をアポトーシス細胞治療又は上清後に実施する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療をアポトーシス細胞治療又は上清前に実施する。この態様によれば、また、一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約2~3週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約6~7週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約9週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療をCAR T細胞治療から数か月後までに実施する。
【0152】
したがって、一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を対象に免疫療法と同時に予防として投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~3日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から7日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から10日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から14日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~14日後に対象に投与する。
【0153】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の実施から2~3時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から7時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から10時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から14時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施から2~14時間後に対象に投与する。
【0154】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の前に予防として対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の1日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~3日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の7日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の10日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の14日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~14日前に対象に投与する。
【0155】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を免疫療法の実施の2~3時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の7時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の10時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の14時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清を免疫療法の実施の2~14時間前に対象に投与する。
【0156】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、サイトカイン放出症候群が発生した後、治療投与することができる。一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清は、サイトカイン放出症候群の始まりに至る、又は始まりを証明するサイトカイン放出が検出された後、投与することができる。一実施形態においては、アポトーシス細胞又は上清は、サイトカインレベルの増加又はサイトカイン放出症候群を終結させ、その続発症を回避することができる。
【0157】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、複数の時点で治療投与することができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載の少なくとも2つの時点である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載の少なくとも3つの時点である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の投与は、CRS又はサイトカインストームの前、及びサイトカイン放出症候群が発生した後、及びそれらの任意の組合せである。
【0158】
一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療とアポトーシス細胞治療又は上清を一緒に投与する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療をアポトーシス細胞治療又は上清後に実施する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療をアポトーシス細胞治療又は上清前に実施する。この態様によれば、また、一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約2~3週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約6~7週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療又は上清をCAR T細胞治療から約9週間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞治療をCAR T細胞治療から数か月後までに実施する。
【0159】
別の実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法と同時に予防として対象に投与する。一実施形態においては、追加の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節化合物、又はそれらの任意の組合せを含む。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から2~3日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から7日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から10日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から14日後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から2~14日後に対象に投与する。
【0160】
別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から2~3時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から7時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から10時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から14時間後に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施から2~14時間後に対象に投与する。
【0161】
別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の前に予防として対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の1日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の2~3日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の7日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の10日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の14日前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の2~14日前に対象に投与する。
【0162】
別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の2~3時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の7時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の10時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の14時間前に対象に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤を免疫療法の実施の2~14時間前に対象に投与する。
【0163】
別の一実施形態においては、サイトカイン放出症候群が発生した後、追加の薬剤を治療投与する。一実施形態においては、サイトカイン放出症候群の始まりに至る、又は始まりを証明するサイトカイン放出が検出された後、追加の薬剤を投与する。一実施形態においては、追加の薬剤は、サイトカインレベルの増加又はサイトカイン放出症候群を終結させ、その続発症を回避することができる。
【0164】
別の一実施形態においては、追加の薬剤を複数の時点で治療投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤の投与は、本明細書に記載の少なくとも2つの時点である。別の一実施形態においては、追加の薬剤の投与は、本明細書に記載の少なくとも3つの時点である。別の一実施形態においては、追加の薬剤の投与は、CRS又はサイトカインストームの前、及びサイトカイン放出症候群が発生した後、及びそれらの任意の組合せである。
【0165】
一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療と追加の薬剤を一緒に投与する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療を追加の薬剤の前に投与する。別の一実施形態においては、CAR T細胞治療を追加の薬剤の前に投与する。この態様によれば、また、一実施形態においては、追加の薬剤をCAR T細胞治療から約2~3週間後に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤をCAR T細胞治療から約6~7週間後に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤をCAR T細胞治療から約9週間後に投与する。別の一実施形態においては、追加の薬剤をCAR T細胞治療から数か月後までに投与する。
【0166】
一実施形態においては、CAR T細胞は、対象に対して異種である。一実施形態においては、CAR T細胞は、1人以上のドナーに由来する。一実施形態においては、CAR T細胞は、1人以上の骨髄ドナーに由来する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、1つ以上の血液銀行提供に由来する。一実施形態においては、ドナーは適合ドナーである。一実施形態においては、CAR T細胞は、汎用同種CAR T細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、同系CAR T細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、不適合第三者ドナーに由来する。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、プールされた第三者ドナーT細胞に由来する。一実施形態においては、ドナーは、骨髄ドナーである。別の一実施形態においては、ドナーは、血液銀行ドナーである。一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法のCAR T細胞は、1種以上のMHC非制限腫瘍特異的キメラ受容体を含む。一実施形態においては、非自己T細胞を当該技術分野で既知である手順に従って操作又は投与して、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許出願第20130156794号に記載のものなど、自己免疫反応を予防又は最小限にすることができる。
【0167】
別の一実施形態においては、CAR T細胞は、対象に対して自己である。一実施形態においては、患者自身の細胞を使用する。この実施形態においては、患者自身の細胞を使用する場合、CAR T細胞治療をアポトーシス細胞治療後に実施する。
【0168】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、対象に対して異種である。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、1人以上のドナーに由来する。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、1人以上の骨髄ドナーに由来する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、1つ以上の血液銀行提供に由来する。一実施形態においては、ドナーは適合ドナーである。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、不適合第三者ドナーに由来する。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、汎用同種アポトーシス細胞である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、同系ドナーに由来する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞に由来する。一実施形態においては、ドナーは、骨髄ドナーである。別の一実施形態においては、ドナーは、血液銀行ドナーである。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、対象に対して自己である。この実施形態においては、患者自身の細胞を使用する。
【0169】
一部の実施形態によれば、本明細書に開示される治療用単核濃縮細胞調製物、又はアポトーシス細胞上清を対象に全身投与する。別の一実施形態においては、投与は、静脈内経路を介する。あるいは、治療用単核濃縮細胞又は上清は、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内及び皮下経路を含めて、ただしそれらに限定されない、様々な別の経路によって対象に投与することができる。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0170】
一部の実施形態によれば、本明細書に開示される治療用単核濃縮細胞調製物、又は追加の薬剤を対象に全身投与する。別の一実施形態においては、投与は、静脈内経路を介する。あるいは、治療用単核濃縮細胞又は追加の薬剤は、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内及び皮下経路を含めて、ただしそれらに限定されない、様々な別の経路によって対象に投与することができる。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0171】
一実施形態においては、例えば調製物を患者の体の特定の領域に直接注射することによって、調製物を全身ではなく局所投与する。別の一実施形態においては、特定の領域は、腫瘍又は癌を含む。
【0172】
別の一実施形態においては、食塩水、PBS、HBSSなど、ただしそれらに限定されない適切な生理学的緩衝剤に懸濁された治療用単核濃縮細胞又は上清を対象に投与する。さらに、懸濁媒体は、細胞の生存能を維持する助けになる補助剤を更に含むことができる。別の一実施形態においては、食塩水、PBS、HBSSなど、ただしそれらに限定されない適切な生理学的緩衝剤に懸濁された追加の薬剤を対象に投与する。
【0173】
一部の実施形態によれば、医薬組成物を静脈内投与する。別の一実施形態によれば、医薬組成物を単回投与する。別の実施形態によれば、医薬組成物を複数回投与する。別の一実施形態によれば、医薬組成物を2回投与する。別の一実施形態によれば、医薬組成物を3回投与する。別の一実施形態によれば、医薬組成物を4回投与する。別の一実施形態によれば、医薬組成物を5回以上投与する。一部の実施形態によれば、医薬組成物を静脈内注射用に処方する。
【0174】
一実施形態においては、改変CAR発現免疫細胞を対象に供給する任意の適切な方法を、本明細書に記載の方法のために使用することができる。一実施形態においては、細胞を対象に供給する方法は、造血細胞移植(HCT:hematopoietic cell transplantation)、ドナー由来NK細胞の癌患者への注入、又はそれらの組合せを含む。
【0175】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、アポトーシス細胞を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0176】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0177】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、少なくとも1種の追加の薬剤を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0178】
ある実施形態においては、CAR T細胞治療は、CAR T細胞及びアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、又は本明細書に開示される別の若しくは組合せの追加の薬剤を含む本明細書に開示される組成物を投与するステップを含む。別の実施形態においては、CAR T細胞治療は、CAR T細胞を含む本明細書に開示される組成物、及びアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含む組成物、又は本明細書に開示される追加の薬剤若しくはその組合せを投与するステップを含む。
【0179】
非CAR T細胞適用に関連するサイトカイン放出
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記投与ステップが、前記対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する、方法である。別の一実施形態においては、サイトカイン産生の減少又は阻害は、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすく、アポトーシス細胞もアポトーシス上清も投与されない対象と比較される。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、炎症誘発性サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、少なくともサイトカインIL-6の産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、少なくともサイトカインIL-1ベータの産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、少なくともサイトカインTNF-アルファの産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する本明細書に開示される方法は、前記対象において、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすく、アポトーシス細胞もアポトーシス上清も投与されない対象と比較して、サイトカインIL-6、IL-1β若しくはTNF-α又は任意の組合せの産生の減少又は阻害をもたらす。
【0180】
癌又は腫瘍は、炎症誘発性サイトカインを含むサイトカインの絶対レベルにも影響し得る。対象における腫瘍量のレベルは、サイトカインレベル、特に炎症誘発性サイトカイン(proOinflammatory cytokines)に影響し得る。当業者は、「減少させる、又は阻害する」という句又はその文法上の変異形が、サイトカイン産生の倍率低下若しくは阻害、又はサイトカイン産生の正味の減少若しくは阻害、又はパーセント(%)低下若しくは阻害を包含し、又はサイトカイン産生の減少若しくは阻害の変化率を包含し得ることを理解されたい。
【0181】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0182】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清、又は前記上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0183】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤などのアポトーシス細胞上清、又は前記上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0184】
一実施形態においては、感染症は、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを引き起こす。一実施形態においては、感染症は、インフルエンザ感染症である。一実施形態においては、インフルエンザ感染症はH1N1である。別の一実施形態においては、インフルエンザ感染症は、H5N1鳥インフルエンザである。別の一実施形態においては、感染症は、重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)である。別の一実施形態においては、対象は、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を有する。別の一実施形態においては、感染症は敗血症である。一実施形態においては、敗血症はグラム陰性である。別の一実施形態においては、感染症はマラリアである。別の一実施形態においては、感染症は、エボラウイルス感染症である。別の一実施形態においては、感染症は、痘瘡ウイルスである。別の一実施形態においては、感染症は、全身性グラム陰性細菌感染症である。別の一実施形態においては、感染症は、ヤーリッシュ ヘルクスハイマー症候群である。
【0185】
一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である。別の一実施形態においては、HLHは、散発性HLHである。別の一実施形態においては、HLHは、マクロファージ活性化症候群(MAS:macrophage activation syndrome)である。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、MASである。
【0186】
一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、慢性関節炎である。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、スティル病としても知られる全身性若年性特発性関節炎(sJIA:systemic Juvenile Idiopathic Arthritis)である。
【0187】
一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS:Cryopyrin-associated Periodic Syndrome)である。別の一実施形態においては、CAPSは、家族性寒冷蕁麻疹(FCU:Familial Cold Urticaria)としても知られる家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS:Familial Cold Auto-inflammatory Syndrome)を含む。別の一実施形態においては、CAPSは、マックル ウェルズ症候群(MWS:Muckle-Well Syndrome)を含む。別の一実施形態においては、CAPSは、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA:Chronic Infantile Neurological Cutaneous and Articular)症候群を含む。更に別の一実施形態においては、CAPSは、FCAS、FCU、MWS若しくはCINCA症候群又はそれらの任意の組合せを含む。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、FCASである。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、FCUである。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、MWSである。別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、CINCA症候群である。更に別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、FCAS、FCU、MWS若しくはCINCA症候群又はそれらの任意の組合せである。
【0188】
別の一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、CIASI遺伝子としても知られるNLRP3遺伝子に遺伝性又は新規機能獲得変異を含むクリオピリン関連周期性症候群(cryopyrinopathy)である。
【0189】
一実施形態においては、対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの原因は、遺伝性自己炎症性障害である。
【0190】
一実施形態においては、炎症性サイトカインの放出の引き金は、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、又はRIG-1遺伝子発現の変化である。
【0191】
別の一実施形態においては、サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを経験した対象は、感染症を持たない。一実施形態においては、対象は、急性膵炎を有する。別の一実施形態においては、対象は、一実施形態においては重度の熱傷又は外傷である、組織傷害を有する。別の一実施形態においては、対象は、急性呼吸促迫症候群を有する。別の一実施形態においては、対象は、薬物使用に続発するサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを有する。別の一実施形態においては、対象は、毒素吸入に続発するサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを有する。
【0192】
別の一実施形態においては、対象は、一実施形態においてはスーパーアゴニストCD28特異的モノクローナル抗体(CD28SA)を用いた免疫療法である、免疫療法を受けた後のサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを有する。一実施形態においては、CD28SAはTGN1412である。別の一実施形態においては、免疫療法は、CAR T細胞治療である。別の一実施形態においては、免疫療法。
【0193】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞若しくは上清若しくはCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを使用して、医薬組成物の投与に起因するサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを制御することができる。一実施形態においては、医薬組成物は、オキサリプラチン、シタラビン、レナリドマイド又はそれらの組合せである。
【0194】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞若しくは上清若しくはCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを使用して、抗体の投与に起因するサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを制御することができる。一実施形態においては、抗体は、モノクローナルである。別の一実施形態においては、抗体は、ポリクローナルである。一実施形態においては、抗体は、リツキシマブである。別の一実施形態においては、抗体は、オルソクローンOKT3(ムロモナブ-CD3)である。別の一実施形態においては、抗体は、アレムツズマブ、トシツズマブ(tosituzumab)、CP-870,893、LO-CD2a/BTI-322又はTGN1412である。
【0195】
別の一実施形態においては、炎症性サイトカイン産生の制御が有益であり得る疾患の例としては、癌、アレルギー、任意のタイプの感染症、毒素性ショック症候群、敗血症、任意のタイプの自己免疫疾患、関節炎、クローン病、ループス、乾癬、又は対象において有害作用を引き起こす毒性サイトカイン放出を特徴とする任意の他の疾患が挙げられる。
【0196】
アルファ-1-抗トリプシン(AAT)
アルファ-1-抗トリプシン(AAT)は、主に肝臓によって産生される循環52kDa糖タンパク質である。AATは、主にセリンプロテアーゼ阻害剤として知られ、遺伝子SERPINA1によってコードされる。AATは、好中球エラスターゼを阻害し、循環AATの遺伝的欠損は、肺組織劣化及び肝疾患をもたらす。健康な個体における血清AAT濃度は、炎症中に2倍に増加する。
【0197】
AATレベルと幾つかの炎症性疾患の重症度の間には、負の関連性がある。例えば、AATのレベル又は活性の低下が、HIV感染症、真性糖尿病、C型肝炎感染誘導性慢性肝疾患、及び幾つかのタイプの血管炎の患者において記述されている。
【0198】
増え続ける証拠の示すところによれば、ヒト血清由来のアルファ-1-抗トリプシン(AAT)は、炎症誘発性サイトカインの産生を減少させ、抗炎症性サイトカインを誘導し、樹状細胞の成熟を妨害する。
【0199】
実際、AATをヒト末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)に添加すると、LPSによって誘導されるTNF-α及びIL-1βの放出が阻害されるが、IL-1受容体拮抗薬(IL-1Ra)及びIL-10の産生が増加する。
【0200】
AATは、インビトロでIL-1β媒介性膵島毒性を低下させ、AAT単独療法は、移植膵島細胞生着を延長し、マウスにおける抗原特異的免疫寛容を促進し、非肥満糖尿病(NOD:non-obese diabetic)マウスにおける糖尿病の進展を遅らせる。AATは、実験モデルにおいてLPS誘導性急性肺損傷を阻止することが示された。最近、AATは、急性心筋虚血再潅流障害のマウスモデルにおける梗塞サイズ及び心不全の重症度を低下させることが示された。
【0201】
臨床等級のヒトAAT(hAAT)を用いた単独療法は、循環炎症誘発性サイトカインを減少させ、移植片対宿主病(GvHD:Graft vs Host Disease)重症度を低下させ、実験的同種骨髄移植後の動物生存を延長した(Tawaraら、Proc Natl Acad Sci USA.2012 Jan 10;109(2):564~9)。参照により本明細書に援用する。AAT処置は、アロ反応性Tエフェクター細胞の増殖を減少させたが、T制御性T細胞(T regulatory T-cells)(Tregs)の回復を増強し、したがってドナーTエフェクターとT制御性細胞の比を病理過程の抑制に有利なように変えた。インビトロで、AATは、TNF-α、IL-1βなどの炎症誘発性サイトカインのLPS誘導性インビトロ分泌を抑制し、抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増強し、宿主樹状細胞におけるNF-κB転位を阻害した。参照により本明細書に援用するMarcondes、Blood.2014(Oct 30;124(18):2881~91)によれば、AAT処置は、GvHDを改善するだけでなく、移植片対白血病(GVL:graft vs leukemia)効果を維持し、恐らくは増強さえした。
【0202】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)とアルファ-1-抗トリプシン(AAT)とを含む組成物である。別の一実施形態においては、CAR T細胞とアルファ-1-抗トリプシン(AAT)は、別々の組成物中にある。別の一実施形態においては、AATは、完全長AAT又はその機能的断片を含む。別の一実施形態においては、AAは、完全長AATの類似体又はその機能的断片を含む。別の一実施形態においては、AATを含む組成物は、更にアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む。
【0203】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、及びアルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。別の一実施形態においては、該方法は、更にアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む。
【0204】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを処置する方法は、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを予防する方法は、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを改善する方法は、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを軽減する方法は、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0205】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0206】
一実施形態においては、AATを単独で投与して、サイトカイン放出を制御する。別の一実施形態においては、AATとアポトーシス細胞若しくはその組成物の両方、又はアポトーシス細胞上清若しくはその組成物を投与して、サイトカイン放出を制御する。
【0207】
免疫調節剤
当業者は、免疫調節剤が、細胞外媒介物質、受容体、細胞内シグナル伝達経路の媒介物質、翻訳及び転写の制御因子、並びに免疫細胞を包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、本明細書に開示される追加の薬剤は、当該技術分野で既知である免疫調節剤である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、少なくとも1種のサイトカインのレベルを低下させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、CRS又はサイトカインストームを減少させ、又は阻害する。
【0208】
一実施形態においては、免疫調節剤は、サイトカイン又はケモカインの放出を遮断する、阻害する、又は減少させる化合物を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、IL-21若しくはIL-23又はそれらの組合せの放出を遮断する、阻害する、又は減少させる化合物を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ケモカイン受容体-5(CCR5)受容体拮抗薬クラスの抗レトロウイルス薬、例えば、マラビロクを含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、抗DNAM-1抗体を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ヘパリン硫酸、ATP及び尿酸又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される損傷/病原体関連分子(DAMP/PAMP)を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、シアル酸結合Ig様レクチン(シグレック)を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、寛容性の細胞媒介物質、例えば、制御性CD4+CD25+T細胞(Tregs)又はインバリアントナチュラルキラーT細胞(iNK T細胞)を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、樹状細胞を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、単球を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、マクロファージを含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ルキソリチニブ及びトファシチニブを含む群から選択されるJAK2又はJAK3阻害剤を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)阻害剤、例えば、フォスタマチニブを含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤ボリノスタットアセチル化STAT3を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、NEDD化阻害剤、例えば、MLN4924を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、miR-142拮抗物質を含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、シチジンの化学類似体、例えば、アザシチジンを含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、例えば、ボリノスタットを含む。別の一実施形態においては、免疫調節剤は、ヒストンメチル化の阻害剤を含む。
【0209】
テルル化合物
テルルは、人体中に存在する微量元素である。種々のテルル化合物は、免疫調節性を有し、多様な前臨床及び臨床試験において有益な効果を有することが示された。テルル含有化合物の特に有効なファミリーは、例えば、米国特許第4,752,614号、同4,761,490号、同4,764,461号及び同4,929,739号に開示されている。テルル含有化合物のこのファミリーの免疫調節性は、例えば、本明細書に完全に記載されたが如く参照によりすべて本明細書に援用する、米国特許第4,962,207号、同5,093,135号、同5,102,908号及び同5,213,899号に記載されている。
【0210】
1つの有望な化合物は、アンモニウムトリクロロ(ジオキシエチレン-O,O’)テルラートであり、本明細書及び当該技術分野においてはAS101とも称される。AS101は、上で考察したテルル含有化合物のファミリーの代表例として、抗ウイルス性(Nat.Immun.Cell Growth Regul.7(3):163~8、1988;AIDS Res Hum Retroviruses.8(5):613~23、1992)及び殺腫瘍活性(Nature 330(6144):173~6、1987;J.Clin.Oncol.13(9):2342~53、1995;J.Immunol. 161(7):3536~42、1998)を示す。さらに、AS101は、低毒性を特徴とする。
【0211】
一実施形態においては、テルル含有免疫調節化合物を含む組成物は、本明細書に開示される方法に使用することができ、テルル化合物は、免疫応答の生得及び獲得アームを刺激する。例えば、AS101は、マウス(J.Natl.Cancer Inst.88(18):1276~84、1996)及びヒト(Nat.Immun.Cell Growth Regul.9(3):182~90、1990;Immunology 70(4):473~7、1990;J.Natl.Cancer Inst.88(18):1276~84、1996)において、インターフェロン(IFN)の強力な活性化剤であることが示された。
【0212】
別の一実施形態においては、テルル化合物は、IL-1α、IL-6、TNF-αなどの一連のサイトカインの分泌を誘導する。
【0213】
別の一実施形態においては、テルル化合物は、免疫調節性を有することが当該技術分野で知られているテルル化合物を含む。別の一実施形態においては、テルル化合物は、アンモニウムトリクロロ(ジオキシエチレン-O,O’)テルラートを含む。
【0214】
一実施形態においては、テルル化合物は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を阻害する。別の一実施形態においては、テルル化合物は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を減少させる。別の一実施形態においては、テルル化合物は、サイトカインストームのサイトカイン放出症候群(CRS)を阻害する、又は減少させる。
【0215】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)とテルル化合物とを含む組成物である。別の一実施形態においては、CAR T細胞とテルル化合物は、別々の組成物中にある。別の一実施形態においては、AATは、完全長AAT又はその機能的断片を含む。別の一実施形態においては、AAは、完全長AATの類似体又はその機能的断片を含む。
【0216】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、及びテルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0217】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを処置する方法は、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを予防する方法は、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを改善する方法は、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを軽減する方法は、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0218】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法であって、テルル化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む方法である。
【0219】
一実施形態においては、テルル化合物を単独で投与して、サイトカイン放出を制御する。別の一実施形態においては、テルル化合物とアポトーシス細胞若しくはその組成物の両方、又はアポトーシス細胞上清若しくはその組成物を投与して、サイトカイン放出を制御する。
【0220】
遺伝子改変
一実施形態においては、T細胞、樹状細胞及び/又はアポトーシス細胞の遺伝子改変は、RNA、DNA、組換えウイルス又はそれらの組合せを用いて行うことができる。一実施形態においては、ガンマレトロウイルス又はレンチウイルスに由来するベクターを、本明細書に開示される組成物及び方法に使用する。別の一実施形態においては、これらのベクターは、宿主ゲノムに組み込むことができ、導入遺伝子を潜在的に恒久的に発現し、固有の免疫原性が低い。別の一実施形態においては、宿主ゲノムに組み込まれ、及び/又は固有の免疫原性が低い、別のベクターを、本明細書に開示される組成物及び方法に使用することができる。別の一実施形態においては、非ウイルスベクター媒介性sleeping beauty(眠れる森の美女)トランスポゾンシステムを使用して、CAR及び他の遺伝子をT細胞に挿入する。別の一実施形態においては、「自殺遺伝子」がT細胞に組み込まれ、アポトーシス促進性遺伝子の発現が、全身送達薬物に応答性である誘導性プロモーターの制御下にある。
【0221】
一実施形態においては、遺伝子改変は、一過性であり得る。別の一実施形態においては、遺伝子改変は、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用することができる。別の一実施形態においては、多数の細胞を複数の機会にmRNA導入T細胞などの一時的に操作されたT細胞に注入することができる。別の一実施形態においては、インビトロで転写されたmRNAを用いたリンパ球のRNAベースの電気穿孔法は、タンパク質の一過性発現を約1週間媒介し、ウイルスベクターを組み込むリスクを取り除く。別の一実施形態においては、mRNA導入樹状細胞又はmRNA電気穿孔T及びNKリンパ球。
【0222】
遺伝子改変T細胞は、養子移入後に有害作用なしに10年以上存続し得ることが実証され、遺伝子改変ヒトT細胞が基本的に安全であることが示された。
【0223】
別の一実施形態においては、組成物の遺伝子改変、及び本明細書に開示される方法においては、当該技術分野で既知である任意の方法とすることができる。
【0224】
アポトーシス細胞
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアポトーシス細胞(ApoCell)は、参照によりその全体を本明細書に援用する国際公開第2014/087408号に記載の通りである。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアポトーシス細胞は、当該技術分野で既知である任意の方法で製造される。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受ける対象の自己のものである。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受ける対象と同種のものである。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物は、本明細書に開示される、又は当該技術分野で既知である、アポトーシス細胞を含む。
【0225】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、単核濃縮細胞を含む細胞調製物を含み、調製物は単核球少なくとも85%を含み、調製物中の細胞の少なくとも40%は早期アポトーシス状態であり、調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞であり、調製物は、CD15high発現細胞15%以下を含む。
【0226】
当業者は、「早期アポトーシス状態」という用語が、アポトーシスの後期徴候なしにアポトーシスの早期徴候を示す細胞を包含し得ることを理解されたい。細胞におけるアポトーシスの早期徴候の例としては、ホスファチジルセリン(PS)の露出、及びミトコンドリア膜電位の低下が挙げられる。後期事象の例としては、細胞中へのヨウ化プロピジウム(PI:propidium iodide)の進入、及び最終DNA切断が挙げられる。細胞が「早期アポトーシス」状態にあることを記述するために、一実施形態においては、アネキシン-VによるPS露出検出、及びPI染色が利用され、アネキシンVで染色されるがPIでは染色されない細胞は、「早期アポトーシス細胞」であると考えられる。別の一実施形態においては、アネキシン-V FITCとPIの両方で染色される細胞は、「後期アポトーシス細胞」であると考えられる。別の一実施形態においては、アネキシン-VにもPIにも染まらない細胞は、非アポトーシス生細胞と考えられる。
【0227】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態の細胞を含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも90%が早期アポトーシス状態である細胞を含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも80%が早期アポトーシス状態である細胞を含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも70%が早期アポトーシス状態である細胞を含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも60%が早期アポトーシス状態である細胞を含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも50%が早期アポトーシス状態である細胞を含む。
【0228】
別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、24時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、24時間を超えて安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも36時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、48時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも36時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、36時間を超えて安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも48時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、48時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも48時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、48時間を超えて安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも72時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、72時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、少なくとも72時間安定である。別の一実施形態においては、早期アポトーシス細胞は、72時間を超えて安定である。
【0229】
当業者は、「安定」という用語が、PS陽性(ホスファチジルセリン陽性)のままであり、PI陽性(ヨウ化プロピジウム陽性)の割合が極めて少ないアポトーシス細胞を包含することを理解されたい。PI陽性細胞は膜安定性の指標を与え、PI陽性細胞は細胞への進入を可能にし、膜がより不安定であることを示す。一実施形態においては、安定な早期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間早期アポトーシスのままである。別の一実施形態においては、安定な早期アポトーシス細胞は、24時間、36時間、48時間又は72時間早期アポトーシスのままである。別の一実施形態においては、安定な早期アポトーシス細胞は、24時間を超えて、36時間を超えて、48時間を超えて、又は72時間を超えて早期アポトーシスのままである。別の一実施形態においては、安定な早期アポトーシス細胞は、その状態を長期間維持する。一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物は、更に抗凝固薬を含む。
【0230】
一実施形態においては、抗凝固薬は、ヘパリン、クエン酸デキストロース(ACD:acid citrate dextrose)Formula A及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0231】
一実施形態においては、組成物は、更にメチルプレドニゾロンを含む。一実施形態においては、メチルプレドニゾロンの濃度は30μg/mlを超えない。一実施形態においては、約140×106個~210×106個のアポトーシス細胞を投与する。
【0232】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、高用量で使用される。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、高濃度で使用される。一実施形態においては、ヒトアポトーシス多形核好中球(PMN)が使用される。一実施形態においては、50%がアポトーシス細胞である細胞群が使用される。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、メイ ギムザ染色細胞標本によって確認される。一実施形態においては、細胞の生存率は、トリパンブルー排除によって評価される。一実施形態においては、細胞のアポトーシス及び壊死状態は、アネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色とFACS検出によって確認される。
【0233】
一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、壊死細胞を含まない。一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、1%未満の壊死細胞を含む。一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、2%未満の壊死細胞を含む。一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、3%未満の壊死細胞を含む。一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、4%未満の壊死細胞を含む。一部の実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、5%未満の壊死細胞を含む。
【0234】
一実施形態においては、10×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×107個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×108個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×109個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1010個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1011個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1012個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×105個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×104個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×103個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×102個のアポトーシス細胞の用量を投与する。
【0235】
一実施形態においては、高用量のアポトーシス細胞を投与する。一実施形態においては、35×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、210×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、70×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、140×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。別の一実施形態においては、35~210×106個のアポトーシス細胞の用量を投与する。
【0236】
一部の実施形態によれば、本明細書に開示される製造方法に従って単核濃縮細胞組成物を得ることは、白血球除去輸血によって行われる。当業者は、「白血球除去輸血」という用語が、白血球をドナーの血液から分離するアフェレーシス手順を包含し得ることを理解されたい。一部の実施形態によれば、ドナーの血液は白血球除去輸血を受け、したがって単核濃縮細胞組成物が本明細書に開示される製造方法に従って得られる。なお、収集細胞の凝固を予防するために、当該技術分野で知られているように、白血球除去輸血中に少なくとも1種の抗凝固薬の使用が必要である。
【0237】
一部の実施形態によれば、白血球除去輸血手順は、本明細書に開示される製造方法に従って単核濃縮細胞組成物の収集を可能にするように構成される。一部の実施形態によれば、白血球除去輸血によって得られる細胞収集物は、少なくとも65%を構成する。別の実施形態においては、少なくとも70%、又は少なくとも80%単核球。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。一部の実施形態によれば、細胞ドナー由来の血漿が収集され、並行して本明細書に開示される製造方法に従って単核濃縮細胞組成物が得られる。一部の実施形態によれば、細胞ドナー由来の血漿約300~600mlが収集され、並行して本明細書に開示される製造方法に従って単核濃縮細胞組成物が得られる。一部の実施形態によれば、本明細書に開示される製造方法に従って単核濃縮細胞組成物が得られるのと並行して収集された血漿は、凍結及び/又はインキュベーション媒体の一部として使用される。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。本明細書に開示される組成物及び方法に使用される濃縮アポトーシス細胞集団を得る更なる詳細な方法は、参照によりその全体を本明細書に援用する国際公開第2014/087408号に見ることができる。
【0238】
なお、一部の実施形態によれば、最初の単核濃縮細胞調製物は、少なくとも65%の単核球、少なくとも70%、又は少なくとも80%の単核球を含むが、本明細書に開示される最終医薬組成物は、本明細書に開示される製造方法に従って、少なくとも85%を含む。別の一実施形態においては、少なくとも90%、又は少なくとも95%単核球。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0239】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、静脈内、皮下、節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内、及び胸腺に直接を含めて、ただしそれらに限定されない、当該技術分野で既知である任意の方法によって投与することができる。
【0240】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は同種である。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナーに由来する。一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許出願第20130156794号に記載の1つ以上のステップを含めて、同種ドナー細胞の拒絶を克服するのに有用である追加のステップを含む。一実施形態においては、該方法は、一実施形態においては同種アポトーシス細胞である、アポトーシス細胞の投与前に、完全又は部分的リンパ球除去のステップを含む。一実施形態においては、同種アポトーシス細胞がサイトカイン放出を制御するのに十分な期間、宿主対移植片反応を遅らせるように、リンパ球除去を調節する。別の一実施形態においては、該方法は、2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、リン酸水素2-アンモニオ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)ブチル(KRP-203ホスファート)、当該技術分野で既知である他の薬剤など、リンパ節からの同種アポトーシスT細胞の放出を遅延させる薬剤を投与するステップを含み、本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用して、有効性を有するが移植片対宿主病を惹起しない同種アポトーシス細胞の使用を可能にすることができる。別の一実施形態においては、同種アポトーシスT細胞によるMHC発現は、同種細胞の拒絶を抑制するために停止される。
【0241】
別の一実施形態においては、該方法は、ドナーからのWBC由来のアポトーシス細胞を、レシピエントに投与する前に照射するステップを含む。一実施形態においては、アポトーシス細胞集団内の残留生細胞の増殖及び/又は活性化をしないように細胞を照射する。別の一実施形態においては、照射されたアポトーシス細胞は、すべてのそれらの早期アポトーシス性、免疫調節性、安定性を維持する。別の一実施形態においては、照射ステップは、UV照射を使用する。別の一実施形態においては、照射ステップは、ガンマ線照射を使用する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、減少した割合の生きている非アポトーシス細胞を含み、アポトーシス細胞調製物内に存在する任意の生きている非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された調製物を含み、若しくはアポトーシス細胞調製物内に存在する任意の生きている非アポトーシス細胞の増殖が減少した調製物を含み、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0242】
一実施形態においては、早期アポトーシス状態の単核球を含むプールされた単核アポトーシス細胞調製物、前記プールされた単核アポトーシス細胞は、減少した割合の生きている非アポトーシス細胞、任意の生きている非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された調製物、若しくは任意の生きている非アポトーシス細胞の増殖が減少した調製物、又はそれらの任意の組合せを含む。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞は、照射されている。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、一部の実施形態においては供血された血液から得られた白血球画分(WBC:white blood cell)に由来する、プールされた単核アポトーシス細胞調製物である。
【0243】
一実施形態においては、アポトーシス細胞調製物は照射される。別の一実施形態においては、前記照射は、ガンマ照射又はUV照射を含む。更に別の一実施形態においては、照射調製物は、非照射アポトーシス細胞調製物と比較して非アポトーシス細胞数が少ない。別の一実施形態においては、照射調製物は、非照射アポトーシス細胞調製物と比較して増殖細胞数が少ない。別の一実施形態においては、照射調製物は、非照射アポトーシス細胞集団と比較して潜在的に免疫学的に活性な細胞の数が少ない。
【0244】
一実施形態においては、プールされた血液は、ドナーとレシピエントで適合しない第三者血液を含む。
【0245】
当業者は、「プール」という用語が、複数のドナーから収集され、調製され、場合によっては後で使用するために貯蔵される、血液を包含し得ることを理解されたい。この血液混合プールを次いで処理して、プールされた単核アポトーシス細胞調製物を製造することができる。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物によって、単核アポトーシス細胞の容易に入手可能な供給が確実に利用できるようになる。別の一実施形態においては、細胞は、アポトーシスが誘導されるインキュベーションステップの直前にプールされる。別の一実施形態においては、細胞は、インキュベーションステップ後の再懸濁ステップにおいてプールされる。別の一実施形態においては、細胞は、照射ステップの直前にプールされる。別の一実施形態においては、細胞は、照射ステップ後にプールされる。別の一実施形態においては、細胞は、調製方法における任意のステップにおいてプールされる。
【0246】
一実施形態においては、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~25単位の血液中に存在する細胞に由来する。別の一実施形態においては、前記プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~5、2~10、2~15、2~20、5~10、5~15、5~20、5~25、10~15、10~20、10~25、6~13、又は6~25単位の血液中に存在する細胞で構成される。別の一実施形態においては、前記プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25単位の血液中に存在する細胞で構成される。必要な血液の単位数は、血液からのWBC回収の効率にも依存する。例えば、WBC回収効率が低いと追加の単位が必要となり、WBC回収効率が高いと必要な単位が減少すると考えられる。一部の実施形態においては、各単位は、血液バッグである。別の一実施形態においては、プールされたアポトーシス細胞調製物は、少なくとも25単位の血液、少なくとも50単位の血液、又は少なくとも100単位の血液中に存在する細胞で構成される。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0247】
一実施形態においては、血液の単位は、供血由来の白血球(WBC)画分を含む。別の一実施形態においては、供血は、輸血センター又は血液銀行からとすることができる。別の一実施形態においては、供血は、プールされたアポトーシス細胞調製物の調製時に集められた病院内のドナーからとすることができる。別の一実施形態においては、複数のドナーからのWBCを含む血液の単位は、本明細書に開示される組成物及びその方法のために設立された独立した血液銀行に保存され、維持される。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及びその方法のために創設された血液銀行は、複数のドナーからのWBCを含む血液の単位を供給することができ、白血球除去輸血ユニットを含む。
【0248】
一実施形態においては、プールされたWBCの単位は、HLA適合によって制限されない。したがって、得られるプールされたアポトーシス細胞調製物は、HLA適合によって制限されない細胞集団を含む。したがって、ある実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、同種細胞を含む。
【0249】
HLA適合によって制限されないプールされたWBCに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物の利点は、容易に利用可能なWBC源であり、WBCの入手コストが削減されることである。
【0250】
一実施形態においては、プールされた血液は、HLA適合と無関係な複数のドナーからの血液を含む。別の一実施形態においては、プールされた血液は、レシピエントとのHLA適合が考慮された複数のドナーからの血液を含む。例えば、1個のHLA対立遺伝子、2個のHLA対立遺伝子、3個のHLA対立遺伝子、4個のHLA対立遺伝子、5個のHLA対立遺伝子、6個のHLA対立遺伝子、又は7個のHLA対立遺伝子がドナーとレシピエントで適合する。別の一実施形態においては、複数のドナーが部分的に適合し、例えば、ドナーの一部がHLA適合し、1個のHLA対立遺伝子、2個のHLA対立遺伝子、3個のHLA対立遺伝子、4個のHLA対立遺伝子、5個のHLA対立遺伝子、6個のHLA対立遺伝子、又は7個のHLA対立遺伝子がドナーの一部とレシピエントで適合する。各可能性は、本明細書に開示される一実施形態を構成する。
【0251】
ある実施形態においては、一部の生存可能な非アポトーシス細胞(アポトーシス耐性)は、後述するアポトーシス誘導ステップ後に残り得る。これらの生存可能な非アポトーシス細胞の存在は、一実施形態においては、照射ステップ前に認められる。これらの生存可能な非アポトーシス細胞は、増殖又は活性化することができる。一実施形態においては、複数のドナーに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、宿主に対して活性化することができ、互いに活性化することができ、又はその両方である。
【0252】
一実施形態においては、本明細書に開示される照射細胞調製物は、非照射細胞調製物と比較して細胞活性化が抑制され、増殖が減少する。別の一実施形態においては、照射は、ガンマ照射又はUV照射を含む。別の一実施形態においては、照射細胞調製物は、非照射細胞調製物と比較して非アポトーシス細胞数が少ない。別の一実施形態においては、照射は、約15グレイ(Grey)単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約20グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約25グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約30グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約35グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約40グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約45グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約50グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約55グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約60グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、約65グレイ単位(Gy)を含む。別の一実施形態においては、照射は、最高2500Gyを含む。別の一実施形態においては、プールされた照射アポトーシス細胞調製物は、プールされた非照射アポトーシス細胞調製物と同じ又は類似のアポトーシスプロファイル、安定性及び有効性を維持する。
【0253】
一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最高24時間安定である。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも24時間安定である。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、24時間を超えて安定である。更に別の一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最高36時間安定である。更に別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも36時間安定である。更なる一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、36時間を超えて安定である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最高48時間安定である。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも48時間安定である。別の一実施形態においては、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間を超えて安定である。
【0254】
一実施形態においては、照射ステップを含むプールされた細胞調製物を製造する方法は、単一の適合ドナーに由来するアポトーシス調製物において認められた早期アポトーシス性、免疫調節性及び安定性を維持する。細胞調製は、照射ステップを含まなくてもよい。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)反応を誘発しない。
【0255】
細胞調製物の照射は、当該技術分野において安全と考えられる。照射手順は、現在、WBCに対する反応を予防するために、供血された血液に対して常法に従って行われる。
【0256】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物中のアポトーシス細胞のパーセントは100%に近く、それによって細胞調製物中の生きている非アポトーシス細胞の割合が減少する。一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも40%である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも50%である。更に別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも60%である。更に別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも70%である。更に別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも80%である。更に別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも90%である。更に別の一実施形態においては、アポトーシス細胞のパーセントは、少なくとも99%である。したがって、生きている非アポトーシス細胞の割合が少ない又は存在しない細胞調製物は、一実施形態においては、レシピエントにおいてGVHDを誘発しないプールされた単核アポトーシス細胞調製物を提供することができる。各可能性は、本明細書に開示される一実施形態となる。
【0257】
あるいは、別の一実施形態においては、生きている非アポトーシスWBCの割合は、例えば標的沈殿によって、生きている細胞集団を限定して除去することによって低下する。別の一実施形態においては、生きている非アポトーシス細胞のパーセントは、ホスファチジルセリンに結合する磁気ビーズを用いて減少させることができる。別の一実施形態においては、生きている非アポトーシス細胞のパーセントは、アポトーシス細胞ではなく非アポトーシス細胞の細胞表面のマーカーに結合する磁気ビーズを用いて減少させることができる。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、非アポトーシス細胞ではなくアポトーシス細胞の細胞表面のマーカーに結合する磁気ビーズを用いた更なる調製のために選択することができる。更に別の一実施形態においては、生きている非アポトーシスWBCの割合は、超音波の使用によって減少する。
【0258】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナーに由来する。
【0259】
一実施形態においては、プールされた細胞調製物は、リンパ球、単球及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型を含む。別の一実施形態においては、プールされた細胞調製物は、濃縮単核球集団を含む。一実施形態においては、プールされた単核は、単核濃縮細胞調製物であり、リンパ球、単球及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される細胞型を含む。別の一実施形態においては、単核濃縮細胞調製物は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球及び好酸球)としても知られる多形核白血球15%以下、あるいは10%以下、典型的には5%以下を含む。別の一実施形態においては、プールされた単核球調製物は、顆粒球が無い。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0260】
別の一実施形態においては、プールされた単核濃縮細胞調製物は、CD15high発現細胞15%以下、あるいは10%以下、典型的には5%以下を含む。一実施形態においては、プールされたアポトーシス細胞調製物は、CD15high発現細胞15%未満を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0261】
一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも80%の単核球、少なくとも85%の単核球、あるいは少なくとも90%の単核球、又は少なくとも95%の単核球を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態である。一部の実施形態によれば、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも85%の単核球を含む。
【0262】
別の一実施形態においては、単核球の最終プールパーセントが少なくとも80%である任意のプールされた細胞調製物は、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物と考えられる。したがって、細胞調製物が少なくとも80%の単核球の生成「プール」を含む高い単核球を有する多形核細胞(PMN)が増加した細胞調製物をプールすることは、本明細書に開示される調製物を含む。一部の実施形態によれば、単核球は、リンパ球及び単球を含む。
【0263】
当業者は、「単核球」という用語が、1個の分裂した核を有する白血球を包含し得ることを理解されたい。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるプールされたアポトーシス細胞調製物は、5%未満の多形核白血球を含む。
【0264】
一実施形態においては、アポトーシス細胞はT細胞である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、CAR T細胞と同じプールされた第三者ドナーT細胞に由来する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、CAR T細胞集団に由来する。
【0265】
驚くべきことに、アポトーシス細胞は、IL-6、及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、単独又は組み合わせを含めて、ただしそれらに限定されないサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を減少させるが、CAR T細胞治療の有効性は維持された(実施例2)。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼす。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを減少させる。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを抑制する。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを阻害する。一実施形態においては、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞投与前のレベルに一致又はほぼ一致するIFN-γレベルを維持する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼすが、CAR T細胞におけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼさない。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、DCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼすが、CAR T細胞におけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼさない。したがって、アポトーシス細胞がCAR T細胞治療の有効性を維持するのに有用であることは予想外であった。
【0266】
別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSを減少させる。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症のCRSを減少させる。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSを抑制する。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症のCRSを抑制する。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSを阻止する。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症のCRSを阻止する。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSを予防する。別の一実施形態においては、マクロファージ、DC又はそれらの組合せにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症のCRSを予防する。
【0267】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、T細胞の死を誘発するが、サイトカイン発現レベルの変化を介さない。
【0268】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、マクロファージ及び樹状細胞の初回刺激に拮抗して、ともすればサイトカインストームを増強するサイトカインを分泌する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、Tregを増加させ、それによって炎症反応を抑制する、及び/又はサイトカインの過剰放出を予防する。
【0269】
一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、1種以上の炎症誘発性サイトカインを阻害する。一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインは、IL-1ベータ、IL-6、TNF-アルファ若しくはIFN-ガンマ又はそれらの任意の組合せを含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、1種以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。一実施形態においては、抗炎症性サイトカインは、TGF-ベータ、IL10若しくはPGE2又はそれらの任意の組合せを含む。
【0270】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、TLRリガンドに曝露後の樹状細胞成熟を阻害する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、潜在的寛容原性樹状細胞を生成し、潜在的寛容原性樹状細胞は、一実施形態においては、移動可能であり、一実施形態においては、移動はCCR7による。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、種々のシグナル伝達事象を誘発し、シグナル伝達事象は、一実施形態においては、TAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl及びMer)であり、TAM受容体シグナル伝達は、一実施形態においては、抗原提示細胞における炎症を阻止する。一実施形態においては、Tyro-3、Axl及びMerは、キナーゼドメイン及び接着分子様細胞外ドメイン内の保存配列を特徴とする受容体チロシンキナーゼ(RTK:receptor tyrosine kinase)のTAMファミリーを構成する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、MerTKを介してシグナル伝達を活性化する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態においてはNF-κBをネガティブに調節するホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路を活性化する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態においては炎症誘発性サイトカイン分泌、DC成熟又はそれらの組合せの阻害をもたらす、インフラマソームをネガティブに調節する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、Nr4a、Thbs1、それらの組合せなどの抗炎症遺伝子の発現を上方制御する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態においてはパネキシン1に依存して蓄積する、高レベルのAMPを誘導する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞の投与は、炎症を抑制する。
【0271】
アポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoSup Mon)
一実施形態においては、本明細書に開示される方法及び処置に使用される組成物は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清を含む。
【0272】
一部の実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、a)アポトーシス細胞を用意するステップ、b)ステップa)のアポトーシス細胞を培養するステップ、及びc)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られる。
【0273】
一実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の製造に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受ける対象の自己のものである。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の製造に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受ける対象と同種である。
【0274】
アポトーシス細胞上清が得られるアポトーシス細胞は、当業者に既知のアポトーシスを誘導する方法に供される、任意の細胞型の対象から選択される細胞、又は任意の市販細胞系とすることができる。アポトーシスを誘導する方法は、低酸素、オゾン、熱、照射、化学物質、浸透圧、pHシフト、X線照射、ガンマ線照射、UV照射、血清除去、コルチコイド若しくはそれらの組合せ、又は本明細書に記載の若しくは当該技術分野で既知の任意の他の方法とすることができる。別の一実施形態においては、アポトーシスを誘導する方法は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を生成する。
【0275】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、白血球である。
【0276】
一実施形態においては、前記アポトーシス白血球は、末梢血単核球(PBMC)に由来する。別の一実施形態においては、前記白血球は、プールされた第三者ドナーに由来する。別の一実施形態においては、前記白血球は同種である。
【0277】
一実施形態によれば、アポトーシス細胞は、非接着白血球を選択し、それらをアポトーシス誘導、続いて培地中の細胞培養ステップに供することによって、提供される。アポトーシス細胞-食細胞上清を製造するために使用される「白血球」は、樹状細胞、マクロファージ、マスT細胞(masT-cells)、好塩基球、造血幹細胞、骨髄細胞、ナチュラルキラー細胞などを含めて、ただしそれらに限定されない免疫系及び/又は造血系の有核細胞の任意の系統又は亜系統に由来し得る。白血球は、種々の適切な方法のいずれかにおいて、種々の適切な解剖学的区画のいずれかから、種々の一般に実施される方法のいずれかに従って、用途及び目的、所望の白血球系統などに応じて、誘導することができ、又は得ることができる。一実施形態においては、原料白血球は、初代白血球である。別の一実施形態においては、原料白血球は、初代末梢血白血球である。
【0278】
初代リンパ球及び単球は、好都合には、末梢血に由来し得る。末梢血白血球は、70~95パーセントのリンパ球、及び5~25パーセントの単球を含む。
【0279】
特定のタイプの原料白血球を血液から得る方法は、常法に従って実施される。原料リンパ球及び/又は単球は、例えば、ヘパリン、シトラートなどの抗凝固薬の存在下で血液を採取することによって得ることができる。採取血液を、次いで、フィコールクッション上で遠心分離して、リンパ球及び単球を勾配界面で単離し、好中球及び赤血球をペレットに単離する。
【0280】
白血球は、標準免疫磁気選択又は免疫蛍光フローサイトメトリー技術によって、それらの特異的表面マーカーに従って、又は遠心溶出によって、互いに分離することができる。例えば、単球をCD14+画分として選択することができ、Tリンパ球をCD3+画分として選択することができ、Bリンパ球をCD19+画分として選択することができ、マクロファージをCD206+画分として選択することができる。
【0281】
リンパ球及び単球は、リンパ球ではなく単球の細胞接着基質への選択的接着をもたらす、組織培養処理培養レシピエントにおける静置培養などによる基質接着条件にこれらの細胞を供することによって、互いに単離することができる。
【0282】
白血球は、本明細書に記載の通りに単離することができる末梢血単核球(PBMC)から得ることもできる。
【0283】
当業者は、所望の量の本明細書に開示される培養原料白血球を生成するように初代白血球を適切に培養するのに必要な専門知識を有し、こうした培養方法を実施するのに十分な手引きが当該技術分野の文献において利用可能である。
【0284】
当業者は、更に、アポトーシス白血球が由来する適切な樹立白血球細胞系を樹立する、購入する、又は入手するのに必要な専門知識を有する。適切な白血球細胞系は、American Tissue Type Collection(ATCC)などの供給業者から得ることができる。アポトーシス白血球を産生するその能力を大きく妨げる技術によって原料白血球を得るべきでないことは当業者に明らかである。
【0285】
一実施形態においては、アポトーシス細胞は、単核濃縮細胞を含む細胞調製物を含み、調製物は単核球少なくとも85%を含み、調製物中の細胞の少なくとも40%は早期アポトーシス状態であり、調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞であり、調製物は、CD15high発現細胞15%以下を含む。
【0286】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞は、アポトーシスリンパ球とすることができる。初代リンパ球などのリンパ球のアポトーシスは、初代リンパ球を血清除去、コルチコステロイド又は照射で処理することによって誘導することができる。別の一実施形態においては、初代リンパ球のアポトーシスをコルチコステロイド処理によって誘導することは、初代リンパ球をデキサメタゾンで処理することによって行われる。別の一実施形態においては、デキサメタゾンを用いて濃度約1マイクロモルで。別の一実施形態においては、初代リンパ球のアポトーシスを照射によって誘導することは、初代リンパ球をガンマ線照射で処理することによって行われる。別の一実施形態においては、約66ラドの線量で。こうした処理は、食細胞との共培養ステップに適切なアポトーシスリンパ球を生成する。
【0287】
更なる一実施形態においては、アポトーシス細胞は、初代単球などのアポトーシス単球とすることができる。アポトーシス単球を生成するために、単球を基質/表面接着のインビトロ条件に血清除去の条件下で供する。こうした処理は、食細胞との共培養ステップに適切な非炎症誘発性アポトーシス単球を生成する。
【0288】
別の実施形態においては、アポトーシス細胞は、同種アポトーシス細胞、第三者アポトーシス細胞、及びアポトーシス細胞のプールを含めて、本明細書に記載の任意のアポトーシス細胞とすることができる。
【0289】
別の実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞と別の細胞の共培養によって得ることができる。
【0290】
したがって、一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、a)アポトーシス細胞を用意するステップ、b)別の細胞を用意するステップ、c)場合によってはステップa)及びb)からの細胞を洗浄するステップ、d)ステップa)及びb)の細胞を共培養するステップ、並びに場合によってはe)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られるアポトーシス細胞上清である。
【0291】
一実施形態においては、アポトーシス細胞と共培養される別の細胞は、白血球である。
【0292】
したがって、一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、a)アポトーシス細胞を用意するステップ、b)白血球を用意するステップ、c)場合によってはステップa)及びb)からの細胞を洗浄するステップ、d)ステップa)及びb)の細胞を共培養するステップ、並びに場合によってはe)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られるアポトーシス細胞-白血球上清である。
【0293】
一実施形態においては、白血球は、マクロファージ、単球、樹状細胞などの食細胞とすることができる。
【0294】
一実施形態においては、白血球は、B細胞、T細胞又はナチュラルキラー(NK細胞)とすることができる。
【0295】
したがって、一実施形態においては、本明細書に開示される方法及び処置に使用される組成物は、参照によりその全体を本明細書に援用する国際公開第2014/106666号に記載のアポトーシス細胞-食細胞上清を含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法に使用されるアポトーシス細胞-食細胞上清は、当該技術分野で既知である任意の方法で製造される。
【0296】
一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、食細胞とアポトーシス細胞の共培養から得られるアポトーシス細胞-食細胞上清を含む。
【0297】
一部の実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清は、a)食細胞を用意するステップ、b)アポトーシス細胞を用意するステップ、c)場合によってはステップa)及びb)からの細胞を洗浄するステップ、d)ステップa)及びb)の細胞を共培養するステップ、並びに場合によってはe)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られる。一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、アポトーシス細胞を摂取する食細胞によって生成される上清を含む。
【0298】
「食細胞」という用語は、有害な外来粒子、細菌、及び死細胞又は瀕死の細胞を摂取する(貪食する)ことによって体を保護する細胞を表す。食細胞としては、例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞及びマストT細胞、優先的に樹状細胞及び単球/マクロファージと呼ばれる細胞が挙げられる。食細胞は、樹状細胞(CD4+HLA-DR+系統-BDCA1/BDCA3+)、マクロファージ(CD14+CD206+HLA-DR+)とすることができ、又は単球(CD14+)に由来することができる。これらの異なる食細胞を区別する技術は、当業者に知られている。
【0299】
一実施形態においては、単球は、プラスチック接着ステップによって得られる。前記単球は、マーカーCD14+によってB及びT細胞から区別することができ、望ましくないB細胞はCD19+を発現し、T細胞はCD3+を発現する。マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF:Macrophage Colony Stimulating Factor)が成熟を誘導した後、得られたマクロファージは、一実施形態においては、マーカーCD14+、CD206+、HLA-DR+に陽性である。
【0300】
一実施形態においては、前記食細胞は、末梢血単核球(PBMC)に由来する。
【0301】
食細胞は、食細胞を得る当該技術分野で既知である任意の方法によって用意することができる。一実施形態においては、マクロファージ、樹状細胞などの食細胞は、対象から直接単離することができ、又は前駆細胞から成熟ステップによって誘導することができる。
【0302】
一実施形態においては、マクロファージは、対象の腹膜腔から直接単離することができ、完全RRPMI培地中で培養することができる。マクロファージは、脾臓から単離することもできる。
【0303】
食細胞は、末梢血単球から得ることもできる。前記例においては、単球は、培養時、それだけに限定されないがマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を細胞培養培地に添加すると、単球由来マクロファージに分化する。
【0304】
例えば、食細胞は、末梢血単核球(PBMC)に由来することができる。例えば、PBMCは、フィコール勾配遠心分離によって個体からの血球分離バッグから単離することができ、細胞接着ステップにおいて完全RPMI培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で90分間培養することができる。非接着T細胞をプラスチック接着ステップによって除去し、接着T細胞を組換えヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養する。培養期間後、単球由来マクロファージが得られる。
【0305】
食細胞は、細胞接着ステップによって選択することができる。前記「細胞接着ステップ」は、食細胞、又は食細胞に成熟することができる細胞が、培養細胞が表面、すなわち細胞接着表面(例えば、組織培養皿、基質、適切なタイプのナイロン又はプラスチックの袋又はバッグ)に接着可能な培養条件で選択されることを意味する。当業者は、「細胞接着表面」という用語が、親水性及び負に帯電したものを包含することができ、当該技術分野で既知である種々の方法のいずれかにおいて得ることができ、別の一実施形態においては、ポリスチレン表面を、例えば、コロナ放電又はガスプラズマを用いて改質することによって得ることができることを理解されたい。これらのプロセスは、極めて活発な酸素イオンを生成し、該酸素イオンは、表面ポリスチレン鎖にグラフトして、表面は、親水性及び負に帯電したものになる。それへの細胞接着を促進するために設計された培養レシピエントは、様々な供給業者(例えば、Corning、Perkin-Elmer、Fisher Scientific、Evergreen Scientific、Nuncなど)から入手可能である。
【0306】
B細胞、T細胞及びNK細胞は、こうした細胞を得るための当該技術分野で既知である任意の方法によって用意することができる。一実施形態においては、B細胞、T細胞又はNK細胞は、対象から直接単離することができ、又は前駆細胞から成熟ステップによって誘導することができる。別の一実施形態においては、B、T又はNK細胞は、B、T又はNK細胞系に由来することができる。当業者は、適切な樹立B細胞、T細胞及びNK細胞系を樹立する、購入する、又は得るための必要な専門知識を有する。適切な細胞系は、American Tissue Type Collection(ATCC)などの供給業者から得ることができる。
【0307】
一実施形態においては、食細胞、B、T又はNK細胞などの前記アポトーシス細胞及び前記白血球は、共培養ステップd)の前に個々に培養される。
【0308】
食細胞の細胞成熟は、例えば、成熟因子を培地に添加したために、細胞培養中に起こる。一実施形態においては、前記成熟因子は、M-CSFであり、これは、例えば単球由来マクロファージを得るために使用することができる。
【0309】
食細胞の成熟又は選択に使用される培養ステップは、数時間から数日かかり得る。別の一実施形態においては、前記未熟食細胞は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58時間適切な培地中で培養される。
【0310】
食細胞の培地は、当業者に既知であり、例えば、RPMI、DMEM、X-vivo及びUltraculture環境とすることができるが、それらに限定されない。
【0311】
一実施形態においては、アポトーシス細胞と食細胞の共培養は、生理溶液中で起こる。
【0312】
この「共培養」前に、細胞を洗浄ステップに供することができる。一実施形態においては、白血球(例えば、食細胞)及びアポトーシス細胞を共培養ステップ前に洗浄する。別の一実施形態においては、細胞をPBSで洗浄する。
【0313】
前記共培養中に、白血球(例えば、マクロファージ、単球、食細胞などの食細胞、又はB、T若しくはNK細胞)とアポトーシス細胞を10:1、9:1;8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1若しくは1:1の比、又は(白血球:アポトーシス細胞)1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9若しくは1:10の比で混合することができる。一例においては、白血球とアポトーシス細胞の比は1:5である。
【0314】
細胞の共培養は、数時間から数日とすることができる。一部の実施形態においては、前記アポトーシス細胞を2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52時間培養する。当業者は、抗炎症化合物の存在、白血球の生存可能な量、及びそれまでに除去されなかったアポトーシス細胞の量を測定することによって、共培養に最適な時間を評価することができる。
【0315】
食細胞によるアポトーシス細胞の除去は、アポトーシス細胞の消滅のために、光学顕微鏡法で観察可能である。
【0316】
一実施形態においては、白血球(例えば、マクロファージ、単球、食細胞などの食細胞、又はB、T若しくはNK細胞)培養との共培養などのアポトーシス細胞の培養は、培地中で、及び/又は対象への投与、例えば注射に適合した生理溶液中で起こる。
【0317】
当業者は、「生理溶液」が、白血球の死を培養時間内に招かない溶液を包含し得ることを理解されたい。一部の実施形態においては、生理溶液は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52時間にわたって死を招かない。別の実施形態においては、48時間又は30時間。
【0318】
一実施形態においては、白血球(例えば、マクロファージ、単球、食細胞などの食細胞、又はB、T若しくはNK細胞)及びアポトーシス細胞を生理溶液中で少なくとも30分間インキュベートする。この培養時間で、食作用を開始することができ、サイトカイン及び他の有益な物質を分泌することができる。
【0319】
一実施形態においては、こうした生理溶液は、白血球由来マクロファージによるアポトーシス白血球除去を阻害しない。
【0320】
培養又は共培養ステップの最後に、上清を場合によっては培養アポトーシス細胞又は共培養細胞から分離する。上清を細胞から分離する技術は、当該技術分野で既知である。例えば、上清を収集し、及び/又は濾過し、及び/又は遠心分離して、細胞及び残骸を除去することができる。例えば、上清を3000rpmで15分間室温で遠心分離して、それを細胞から分離する。
【0321】
上清は、例えば照射によって、使用前に「不活性化」することができる。したがって、アポトーシス細胞上清を調製する方法は、任意選択の追加の照射ステップf)を含むことができる。前記「照射」ステップは、血液製剤を不活性化するのに通常行われる、微生物を殺すのに十分な比率のX線照射(25~45Gy)を用いる殺菌法として考えることができる。
【0322】
上清の照射は、当該技術分野において安全と考えられる。照射手順は、現在、WBCに対する反応を予防するために、供血された血液に対して常法に従って行われる。
【0323】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、本明細書に詳述されているように、対象への投与に適切な医薬組成物に処方される。
【0324】
一実施形態においては、最終生成物は+4℃で貯蔵される。別の一実施形態においては、最終生成物は、次の48時間内に使用される。
【0325】
一実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清、又は上清を含む医薬組成物は、例えば-80℃で貯蔵するために、凍結乾燥させることができる。
【0326】
特定の一実施形態においては、国際公開第2014/106666号の実施例1に記載のように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、胸腺細胞をアポトーシス細胞として使用して製造することができる。単離後、胸腺細胞を照射し(例えば、35Xグレイ照射)、完全DMEM培地中で例えば6時間培養して、アポトーシスを起こすことができる。並行して、マクロファージを腹膜腔から単離し、洗浄し、完全RPMI(10%FBS、Peni-Strepto、EAA、Hepes、NaP及び2-メルカプトエタノール)中で培養する。次いで、マクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、フェノールフリーX-vivo培地中で1/5マクロファージ/アポトーシス細胞比で更に48時間共培養する。次いで、上清を収集し、遠心分離して、残骸を除去し、保存のために凍結又は凍結乾燥させることができる。マクロファージ濃縮は、FACSによるF4/80の陽性染色によって確認することができる。アポトーシスは、アネキシン-V及び7AAD排除の陽性染色を用いたFACSによって確認することができる。
【0327】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、別々に培養されたマクロファージ又はアポトーシス細胞から得られる上清に比べて、TGF-βの活性型と潜在型の両方でTGF-βレベルが高くなる。一実施形態においては、IL-10レベルも、単独で培養されたマクロファージに比べて増加し、単独で培養されたアポトーシス細胞に比べて劇的に増加する。別の一実施形態においては、IL-6などの炎症性サイトカインは検出されず、IL-1β及びTNFは検出不可能であるか、又は極めて低レベルである。
【0328】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、単独で培養されたマクロファージ又は単独で培養されたアポトーシス細胞由来の上清に比べて、TGF-β及びIL-10に加えて、上清の免疫寛容を生じる役割に関係して炎症を抑制し得るIL-1ra、TIMP-1、CXCL1/KC及びCCL2/JE/MCP1のレベルが増加する。
【0329】
別の特定の一実施形態においては、国際公開第2014/106666号の実施例3に記載のように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシスPBMCと一緒に培養された末梢血単核球(PBMC)由来のマクロファージの共培養から製造することができる。したがって、PBMCは、健康なボランティアからの血球分離バッグから、例えばフィコール勾配遠心分離によって、単離される。次いで、PBMCを完全RPMI培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で90分間培養する。次いで、アポトーシスさせるために、非接着細胞を除去し、例えば35Gy線量のX線照射によってアポトーシス性にし、完全RPMI環境で4日間培養する(最初の48時間の培養後の細胞洗浄を含む)。並行して、非接着T細胞を、組換えヒトM-CSF50μg/mLを補充した完全RPMI環境中で、最初の48時間後の細胞洗浄を含めて4日間培養する。4日間の培養期間の最後に、単球由来マクロファージとアポトーシス細胞を洗浄し、一緒にX-vivo培地中で再度48時間、1マクロファージ:5アポトーシス細胞比で培養する。次いで、終わりの培養からの上清を収集し、遠心分離して細胞及び残骸を除去し、保存及び後続の使用のために凍結又は凍結乾燥させることができる。
【0330】
一実施形態においては、国際公開第2014/106666号に記載のように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核球(PBMC)から6日で得ることができる。培養でM-CSF添加によってPBMC由来マクロファージを得るのに4日間、及びPBMC由来マクロファージと0日目に単離された非接着PBMCに対応するアポトーシス細胞との共培養に更に2日間。
【0331】
一実施形態においては、国際公開第2014/106666号に記載のように、標準化ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清を、ドナー又はPBMC源(血球分離又はバフィーコート)とは無関係に得ることができる。プラスチック接着ステップは、濃縮単球のかなりの出発集団を得るのに十分である(プラスチック培養皿上の接着後に20~93%のCD14+細胞)。さらに、こうした接着細胞は、B及びT細胞の存在が極めて少ない(1.0%のCD19+B細胞及び12.8%のCD3+T細胞)。M-CSFの存在下でT細胞を4日間培養後、単球由来マクロファージの割合は、CD14+CD206+HLA-DR+マクロファージ0.1%から77.7%に著しく増加する。その際、単球由来マクロファージをアポトーシス非接着PBMC(アネキシンV染色及び7AAD排除によって示されるアポトーシス47.6%)と共培養して、アポトーシス細胞-食細胞上清を48時間製造する。
【0332】
一実施形態においては、収集したアポトーシス細胞-食細胞上清は、単球由来マクロファージ単独又は炎症条件(+LPS)で処理された単球由来マクロファージの培養上清よりもかなり多い潜在型TGFを含み、IL-1β、TNFなどの炎症性サイトカインを微量又は低レベルしか含まない。
【0333】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、更に抗凝固薬を含む。一実施形態においては、抗凝固薬は、ヘパリン、クエン酸デキストロース(ACD)Formula A及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0334】
別の一実施形態においては、抗凝固薬をアポトーシス細胞の製造プロセス中に添加する。別の一実施形態においては、添加される抗凝固薬は、ACD及びヘパリン又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される。別の一実施形態においては、ACDは1%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは2%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは3%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは4%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは5%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは6%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは7%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは8%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは9%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは10%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは約1~10%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは約2~8%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは約3~7%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは約1~5%の濃度である。別の一実施形態においては、ACDは約5~10%の濃度である。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.5U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.1U/ml~1.0U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.2U/ml~0.9U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.3U/ml~0.7U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.1U/ml~0.5U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.5U/ml~1.0U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度約0.01U/ml~1.0U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.1U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.2U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.3U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.4U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.5U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.6U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.7U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.8U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度0.9U/mlである。別の一実施形態においては、ヘパリンは最終濃度1.0U/mlである。別の一実施形態においては、ACDは濃度5%であり、ヘパリンは最終濃度0.5U/mlである。
【0335】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、更にメチルプレドニゾロンを含む。一実施形態においては、メチルプレドニゾロンの濃度は30μg/mlを超えない。
【0336】
一実施形態においては、組成物は、体重1キログラム当たり約2億個の細胞(70kgの対象の場合)に等しい血球分離によって得られる約14×109個のCD45+細胞の共培養から得られるアポトーシス細胞上清の総量又は一定分量で使用することができる。一実施形態においては、こうした総量は、体重1キログラム当たり約1億個の細胞から得られる上清の単位用量として投与され、及び/又は単位用量として1週間間隔で投与され、別の一実施形態においてはその両方である。この実施形態に係る適切な総量としては、体重1キログラム当たり約1000万~約40億個の細胞から得られる上清の総量が挙げられる。別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約4000万~約10億個の細胞から得られる。更に別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約8000万~約5億個の細胞から得られる。更に別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約16000万~約25000万個の細胞から得られる。この実施形態に係る適切な単位用量としては、体重1キログラム当たり約4百万~約4億個の細胞から得られる上清の単位用量が挙げられる。別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約800万~約2億個の細胞から得られる。別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約1600万~約1億個の細胞から得られる。更に別の一実施形態においては、上清は、体重1キログラム当たり約3200万~約5000万個の細胞から得られる。
【0337】
別の一実施形態においては、約10×106個のアポトーシス細胞の共培養から得られるアポトーシス細胞上清の用量を投与する。別の一実施形態においては、10×107個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×108個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×109個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1010個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1011個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×1012個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×105個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×104個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×103個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、10×102個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。
【0338】
一実施形態においては、35×106個のアポトーシス細胞から得られるアポトーシス細胞上清の用量を投与する。別の一実施形態においては、210×106個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、70×106個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、140×106個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。別の一実施形態においては、35~210×106個のアポトーシス細胞から得られる用量を投与する。
【0339】
一実施形態においては、アポトーシス細胞上清、又は前記アポトーシス細胞上清を含む組成物は、本明細書で詳細に考察するように、静脈内、皮下、節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内、及び胸腺に直接を含めて、ただしそれらに限定されない、当該技術分野で既知である任意の方法によって投与することができる。
【0340】
驚くべきことに、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、IL-6などのサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を減少させる。別のサイトカインIL-2は、DC及びマクロファージによって少量分泌されるが、サイトカイン放出症候群に関与しない。しかし、それは、CAR-T細胞の生存及び増殖に必要であり、大部分はこれらのT細胞によって産生される。予想外に、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、IL-2レベルをCAR T細胞の生存に負の影響を及ぼすのに十分なレベルに減少させない。
【0341】
一実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、マクロファージ及びDCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼすが、T細胞自体におけるサイトカイン発現レベルには影響を及ぼさない。したがって、アポトーシス細胞上清がCAR T細胞治療を強化するのに有用であることは予想外であった。
【0342】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、T細胞の死を誘発するが、サイトカイン発現レベルの変化を介さない。
【0343】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、マクロファージ及び樹状細胞の初回刺激に拮抗して、ともすればサイトカインストームを増強するサイトカインを分泌する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、Tregを増加させ、それによって炎症反応を抑制する、及び/又はサイトカインの過剰放出を予防する。
【0344】
一実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清の投与は、1種以上の炎症誘発性サイトカインを阻害する。一実施形態においては、炎症誘発性サイトカインは、IL-1ベータ、IL-6、TNF-アルファ若しくはIFN-ガンマ又はそれらの任意の組合せを含む。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、1種以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。一実施形態においては、抗炎症性サイトカインは、TGF-ベータ、IL10若しくはPGE2又はそれらの任意の組合せを含む。
【0345】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清の投与は、TLRリガンドに曝露後の樹状細胞成熟を阻害する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、潜在的寛容原性樹状細胞を生成し、潜在的寛容原性樹状細胞は、一実施形態においては、移動可能であり、一実施形態においては、移動はCCR7による。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、種々のシグナル伝達事象を誘発し、シグナル伝達事象は、一実施形態においては、TAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl及びMer)であり、TAM受容体シグナル伝達は、一実施形態においては、抗原提示細胞における炎症を阻止する。一実施形態においては、Tyro-3、Axl及びMerは、キナーゼドメイン及び接着分子様細胞外ドメイン内の保存配列を特徴とする受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、MerTKを介してシグナル伝達を活性化する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態においてはNF-κBをネガティブに調節するホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路を活性化する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態においては炎症誘発性サイトカイン分泌、DC成熟又はそれらの組合せの阻害をもたらす、インフラマソームをネガティブに調節する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、Nr4a、Thbs1、それらの組合せなどの抗炎症遺伝子の発現を上方制御する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態においてはパネキシン1に依存して蓄積する、高レベルのAMPを誘導する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清の投与は、炎症を抑制する。
【0346】
組成物
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される医薬組成物は、遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持する、又は増加させるためのものである。更なる一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法は、更に、サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を減少させる、又は抑制するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、遺伝子改変免疫細胞治療の有効性を高める医薬組成物である。別の一実施形態においては、免疫細胞治療の有効性を高める方法に使用される組成物は、更に、CRS又はサイトカインストームの発生率を減少させる、又は抑制することを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における腫瘍の癌を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法のための組成物である。別の一実施形態においては、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法に使用される組成物は、更に、CRS又はサイトカインストームの発生率を減少させる、又は抑制することを含む。
【0347】
別の一実施形態においては、医薬組成物は、遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、T細胞を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体CAR T細胞を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体TCR T細胞を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、樹状細胞を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変受容体は、遺伝子改変T細胞受容体を含む。
【0348】
更に別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、有効量の遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体を、本明細書に記載のように、薬学的に許容される賦形剤中に含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量のCAR T細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量のTCR T細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の細胞傷害性T細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変樹状細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変ナチュラルキラー細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患の処置用医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変T細胞受容体、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0349】
別の一実施形態においては、本明細書に記載の症状又は疾患は、腫瘍又は癌である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の目的タンパク質又はペプチドに結合する、遺伝子改変免疫細胞又はその受容体、例えば、CAR T細胞を含む組成物である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の目的タンパク質又はペプチドを認識し、それに結合する、遺伝子改変免疫細胞又はその受容体、例えば、TCR T細胞を含む組成物である。別の一実施形態においては、目的タンパク質又はペプチドは、腫瘍抗原又はその断片を含む。
【0350】
別の一実施形態においては、本明細書に開示され、本明細書に開示される方法に使用される組成物は、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。更に別の一実施形態においては、有効量の遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞上清を含むものと同じ組成物とすることができる。別の一実施形態においては、有効量のCAR T細胞、又はTCR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又は遺伝子改変樹状細胞、又は遺伝子改変ナチュラルキラー細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞上清を含むものと同じ組成物とすることができる。更に別の一実施形態においては、有効量の遺伝子改変T細胞受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞上清を含むものと同じ組成物とすることができる。更に別の一実施形態においては、CAR T細胞、TCR T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞又は樹状細胞を含む群から選択される有効量の遺伝子改変免疫細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞上清を含むものと同じ組成物ではない。別の一実施形態においては、組成物は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)と、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。別の一実施形態においては、組成物は、遺伝子改変T細胞受容体発現T細胞(TCR T細胞)と、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。別の一実施形態においては、有効量の遺伝子改変T細胞受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団又はアポトーシス細胞上清を含むものと同じ組成物ではない。
【0351】
別の一実施形態においては、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の一実施形態においては、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、早期アポトーシス細胞から収集される。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、収集されたプールされた第三者ドナー細胞である。
【0352】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞を含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞とアポトーシス細胞とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞とアポトーシス細胞上清とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。
【0353】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞を含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞とアポトーシス細胞とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞とアポトーシス細胞上清とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。
【0354】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞とアポトーシス細胞とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞とアポトーシス細胞上清とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。
【0355】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞とアポトーシス細胞とを含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞とアポトーシス細胞上清をと含む組成物は、更に、サイトカイン放出症候群患者又はサイトカインストームを経験した患者におけるサイトカイン放出を予防する、抑制する、又は調節するための追加の医薬組成物を含む。
【0356】
一実施形態においては、追加の医薬組成物は、一実施形態においてはイピリムマブである、CTLA-4遮断薬を含む。別の一実施形態においては、追加の医薬組成物は、本明細書に開示されるアルファ-1抗トリプシン、又はその断片、又はその類似体を含む。別の一実施形態においては、追加の医薬組成物は、本明細書に開示されるテルル化合物を含む。別の一実施形態においては、追加の医薬組成物は、本明細書に開示される免疫調節剤を含む。別の一実施形態においては、追加の医薬組成物は、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節化合物、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0357】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、又はアポトーシス細胞上清、テルル化合物、又は免疫調節剤のいずれか一つを含む医薬組成物は、単一の組成物を構成する。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、若しくはアポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはCAR T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤の各々、又はそれらの任意の組合せは、別の組成物に含まれる。更に別の一実施形態においては、一実施形態においてはCAR T細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはCAR T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、若しくはアルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの任意の組合せは、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞、組成物中に存在し、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、別の組成物に含まれる。
【0358】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、又はアポトーシス細胞上清、テルル化合物、又は免疫調節剤のいずれか一つを含む医薬組成物は、単一の組成物を構成する。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、若しくはアポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはTCR T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤の各々、又はそれらの任意の組合せは、別の組成物に含まれる。更に別の一実施形態においては、一実施形態においてはTCR T細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはTCR T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、若しくはアルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの任意の組合せは、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR T細胞、組成物中に存在し、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、別の組成物に含まれる。
【0359】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、又はアポトーシス細胞上清、テルル化合物、又は免疫調節剤のいずれか一つを含む医薬組成物は、単一の組成物を構成する。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、若しくはアポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においては樹状細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤の各々、又はそれらの任意の組合せは、別の組成物に含まれる。更に別の一実施形態においては、一実施形態においては樹状細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においては樹状細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、若しくはアルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの任意の組合せは、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞、組成物中に存在し、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、別の組成物に含まれる。
【0360】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、又はアポトーシス細胞上清、テルル化合物、又は免疫調節剤のいずれか一つを含む医薬組成物は、単一の組成物を構成する。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、若しくはアポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはNK細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤の各々、又はそれらの任意の組合せは、別の組成物に含まれる。更に別の一実施形態においては、一実施形態においてはNK細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル化合物、若しくは免疫調節剤のいずれか一つ、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物は、複数の組成物を構成し、一実施形態においてはNK細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断薬、若しくはアルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの任意の組合せは、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞、組成物中に存在し、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、別の組成物に含まれる。
【0361】
当業者は、「医薬組成物」が、本明細書に記載の活性成分の1つ以上と生理的に適切な担体及び賦形剤などの別の化学成分の調製物を包含し得ることを理解されたい。薬剤組成物の目的は、生物体への化合物の投与を容易にすることである。
【0362】
当業者は、「生理的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される賦形剤」という句が、区別なく使用され、生物に重大な刺激を起こさず、投与された活性成分の生物活性及び性質を阻害しない担体、賦形剤又は希釈剤を包含し得ることを理解されたい。
【0363】
当業者は、「賦形剤」が、医薬組成物に添加して活性成分の投与を更に容易にする不活性物質を包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、賦形剤としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及び種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0364】
薬物の処方及び投与の技術は、参照により本明細書に援用する「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、イーストン、PA、最新版に記載されている。
【0365】
一実施形態においては、複数の組成物を同時に投与する。別の一実施形態においては、複数の組成物を異なる時間に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、注入又は遺伝子改変免疫細胞又はその受容体の前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物をCAR-T細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を細胞傷害性T細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物をナチュラルキラー細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を樹状細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を遺伝子改変T細胞受容体の注入前に投与する。
【0366】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、注入又は遺伝子改変免疫細胞又はその受容体の前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物をCAR-T細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を細胞傷害性T細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物をナチュラルキラー細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を樹状細胞注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を遺伝子改変T細胞受容体の注入前に投与する。
【0367】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、遺伝子改変免疫細胞又はその受容体の注入前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、遺伝子改変免疫細胞又はその受容体注入の約24時間前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約24時間前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約24時間前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、CAR-T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間 20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、又は72時間前に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間 20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、又は72時間前に投与する。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0368】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体の注入後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、CAR-T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体の注入後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、CAR-T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約24時間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、遺伝子改変免疫細胞又はその遺伝子改変受容体の注入後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約24時間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞を含む組成物を、CAR-T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はTCR T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間 20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、又は72時間後に投与する。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞上清を含む組成物を、CAR T細胞、又は細胞傷害性T細胞、又はナチュラルキラー細胞、又は樹状細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体注入の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間 20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、又は72時間後に投与する。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態となる。
【0369】
処方
遺伝子改変免疫応答細胞を含む、若しくはアポトーシス細胞を含む、若しくはアポトーシス細胞上清を含む本明細書に開示される組成物、又はそれらの任意の組合せは、好都合には、選択pHに緩衝することができる無菌液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液又は粘稠性組成物として提供することができ、液体調製物は、通常は、ゲル、別の粘稠性組成物及び固体組成物よりも調製しやすい。さらに、液体組成物は、特に注射によって、投与するのに幾らかより好都合である。一方、粘稠性組成物は、特定の組織との接触期間をより長くするために、適切な粘度範囲内で処方することができる。液体又は粘稠性組成物は、担体を含むことができ、担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。
【0370】
無菌注射液は、所望のとおりに、本明細書に開示される方法の実施に利用される遺伝子改変免疫応答細胞又はアポトーシス細胞上清を、必要な量の適切な溶媒と様々な量の別の成分中に入れることによって調製することができる。こうした組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤又は賦形剤と混合することができる。組成物は凍結乾燥させることもできる。組成物は、所望の投与経路及び調製に応じて、湿潤剤、分散剤、乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化又は増粘添加剤、防腐剤、香味剤、着色材などの補助物質を含むことができる。参照により本明細書に援用する「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」、17版、1985などの標準的な教科書を調べて、適切な調製物を過度の実験なしに調製することができる。
【0371】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤及び緩衝剤を含めて、組成物の安定性及び無菌性を高める種々の添加剤を添加することができる。微生物の作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実に予防することができる。注射用剤形の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによって延長することができる。しかし、本明細書の開示によれば、使用する任意のビヒクル、希釈剤又は添加剤は、遺伝子改変免疫応答細胞又はそれらの前駆体に適合しなければならないと考えられる。
【0372】
組成物は、等張性とすることができ、すなわち、血液及び涙液と同じ浸透圧を有することができる。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、又はデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、他の無機若しくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を用いて得ることができる。塩化ナトリウムは、特にナトリウムイオンを含む緩衝剤に好ましい場合がある。
【0373】
組成物の粘度は、所望であれば、薬学的に許容される増粘剤を用いて選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易に経済的に入手可能であり、取扱いが容易であるので、好ましい場合がある。
【0374】
別の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択される薬剤に依存する。重要なポイントは、選択された粘度が得られる量を使用することである。言うまでもなく、適切な担体及び別の添加剤の選択は、正確な投与経路及び特定の剤形、例えば液体剤形の性質(例えば、組成物が溶液剤、懸濁液剤、ゲル剤、又は徐放性剤形、液体充填剤形などの別の液体剤形に処方されるかどうか)に依存する。
【0375】
当業者は、組成物の成分が、化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本明細書に開示される方法に記載の遺伝子改変免疫応答細胞の生存率又は有効性に影響を及ぼさないことを認識するはずである。これは、化学及び薬学の原理を熟知した者には問題とならず、又は問題は、本開示、及び本明細書で引用する文献から、標準的な教科書を参照して、又は単純な実験(過度の実験を必要としない)によって、容易に回避することができる。
【0376】
本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞の治療上の使用に関する1つの考慮事項は、最適な効果を得るのに必要な細胞の量である。投与すべき細胞の量は、処置される対象ごとに異なる。一実施形態においては、104~1010、105~109、又は106~108個の本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞をヒト対象に投与する。より有効な細胞ほど、より少数で投与することができる。一部の実施形態においては、少なくとも約1×108、2×108、3×108、4×108及び5×108個の本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞をヒト対象に投与する。何を有効量と考えるかの正確な決定は、特定の対象のそのサイズ、年齢、性別、体重及び状態を含めて、各対象それぞれの要因に基づき得る。投与量は、当業者が本開示及び当該技術分野における知識から容易に確認することができる。
【0377】
当業者は、組成物中の、本明細書に開示される方法において投与される、細胞並びに任意選択の添加剤、ビヒクル及び/又は担体の量を容易に決定することができる。一般に、(活性な細胞(単数又は複数)及び/又は薬剤(単数又は複数)に加えて)任意の添加剤は、リン酸緩衝食塩水中の0.001~50%(重量)溶液の量で存在し、活性成分は、約0.0001~約5wt%などのマイクログラムからミリグラムの桁で存在する。別の一実施形態においては、約0.0001~約1wt%。更に別の一実施形態においては、約0.0001~約0.05wt%又は約0.001~約20wt%。更なる一実施形態においては、約0.01~約10wt%。別の一実施形態においては、約0.05~約5wt%。言うまでもなく、動物又はヒトに投与される任意の組成物の場合、及び任意の特定の投与方法の場合、したがって、適切な動物モデル、例えば、マウスなどの齧歯類における致死量(LD:lethal dose)及びLD50を測定することなどによって毒性を決定し、適切な応答を誘発する、組成物(単数又は複数)の投与量、その中の成分の濃度、及び組成物(単数又は複数)を投与するタイミングを決定することが好ましい。こうした決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書で引用する文献から過度の実験を必要としない。そして、連続投与時間を過度の実験なしに確認することができる。
【0378】
核酸配列、ベクター、細胞
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される組成物及び方法に使用される本明細書に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸配列である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターである。
【0379】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される組成物及び方法に使用される本明細書に記載の遺伝子改変T細胞受容体(TCR)をコードする単離核酸配列である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の遺伝子改変T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を含むベクターである。
【0380】
免疫応答細胞(例えば、T細胞、CTL細胞、NK細胞、樹状細胞)の遺伝子改変は、ほぼ均一な細胞組成物に組換えDNA構築物を導入することによって行うことができる。一実施形態においては、DNA構築物を細胞に導入するのにレトロウイルスベクター(ガンマレトロウイルス又はレンチウイルス)を採用する。例えば、抗原(例えば、腫瘍抗原、又はバリアント(valiant)、又はその断片)に結合する受容体をコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスベクター中にクローン化することができ、その内在性プロモーターから、レトロウイルスの長末端反復から、又は目的の標的細胞型(targeT-cell type)に特異的なプロモーターから、発現を引き起こすことができる。非ウイルスベクターを同様に使用することもできる。
【0381】
細胞におけるタンパク質の発現に非ウイルス手法を採用することもできる。例えば、リポフェクション(Feignerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413、1987;Onoら、Neuroscience Letters 17:259、1990;Brighamら、Am.J.Med.Sci.298:278、1989;Staubingerら、Methods in Enzymology 101:512、1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジン複合化(Wuら、Journal of Biological Chemistry 263:14621、1988;Wuら、Journal of Biological Chemistry 264:16985、1989)の存在下で核酸を投与することによって、又は外科的条件下の微量注入によって(Wolffら、Science 247:1465、1990)、核酸分子を細胞に導入することができる。遺伝子移入の別の非ウイルス手段としては、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔法、及びプロトプラスト融合を用いたインビトロ遺伝子導入が挙げられる。リポソームは、DNAを細胞に送達するのに潜在的に有益である可能性もある。正常遺伝子を対象の患部組織に移植することは、正常核酸を培養可能な細胞型にエクスビボで導入することによっても行うことができ(例えば、自己又は異種の初代細胞又はその子孫)、その後、細胞(又はその子孫)を標的組織に注射し、又は全身的に注射する。組換え受容体は、トランスポザーゼ又は標的ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ又はTALEヌクレアーゼ)を用いて誘導することもでき、又は得ることもできる。一過性発現は、RNA電気穿孔法によって得ることができる。ポリヌクレオチド治療法に使用されるcDNA発現は、任意の適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)又はメタロチオネインプロモーター)から誘導することができ、任意の適切な哺乳動物調節エレメント又はイントロン(例えば、伸長因子1aエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)によって調節することができる。例えば、所望であれば、特定の細胞型において遺伝子発現を優先的に誘導することが知られているエンハンサーを使用して、核酸の発現を誘導することができる。使用されるエンハンサーとしては、組織又は細胞特異的エンハンサーとして特徴づけられるものが挙げられるが、それらに限定されない。あるいは、ゲノムクローンが治療用構築物として使用される場合、調節は、同族の制御配列によって、又は、所望であれば、上記プロモーター若しくは調節エレメントのいずれかを含めて、異種の供給源に由来する制御配列によって、媒介することができる。
【0382】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターを含む細胞である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される遺伝子改変T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を含むベクターを含む細胞である。
【0383】
キット
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、新形成、病原体感染症、自己免疫異常又は同種移植の処置用キットであり、キットは、本明細書に開示されるCAR T細胞及びアポトーシス細胞を別々に又はあらかじめ混合して含む。
【0384】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減するためのキットであり、キットは、本明細書に開示されるCAR T細胞及びアポトーシス細胞を別々に又はあらかじめ混合して含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減するためのキットであり、キットは、本明細書に開示されるCAR T細胞及びアポトーシス細胞上清を別々に又はあらかじめ混合して含む。
【0385】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、新形成、病原体感染症、自己免疫異常又は同種移植の処置用キットであり、キットは、本明細書に開示されるTCR T細胞及びアポトーシス細胞を別々に又はあらかじめ混合して含む。
【0386】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減するためのキットであり、キットは、本明細書に開示されるTCR T細胞及びアポトーシス細胞を別々に又はあらかじめ混合して含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減するためのキットであり、キットは、本明細書に開示されるTCR T細胞及びアポトーシス細胞上清を別々に又はあらかじめ混合して含む。
【0387】
本明細書に開示されるのは、新形成、病原体感染症、免疫不全若しくは同種移植の処置若しくは予防のためのキット、又は癌若しくは腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、若しくは軽減するためのキットである。一実施形態においては、キットは、単位剤形の有効量の本明細書に開示される免疫応答細胞及びアポトーシス細胞を含む治療又は予防組成物を含む。別の一実施形態においては、キットは、単位剤形の有効量の本明細書に開示される免疫応答細胞及びアポトーシス細胞上清を含む治療又は予防組成物を含む。特定の実施形態においては、細胞は、更に共刺激リガンドを含む。別の一実施形態においては、キットは、更に、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む群から選択される追加の薬剤を含む。一部の実施形態においては、キットは、治療又は予防ワクチンを含む無菌容器を含み、こうした容器は、箱、アンプル、瓶、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック、又は当該技術分野で既知の他の適切な容器形態とすることができる。こうした容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は医薬品を保持するのに適切な他の材料で作製することができる。
【0388】
所望であれば、免疫応答細胞及びアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清は、新形成、病原体感染症、免疫不全若しくは同種移植若しくは腫瘍若しくは癌を有する、又は発症するリスクがある対象に細胞を投与するための説明書と一緒に提供される。説明書は、一般に、新形成、病原体感染症、免疫不全、同種移植、腫瘍又は癌の処置又は予防のための組成物の使用についての情報を含む。別の実施形態においては、説明書は、以下の少なくとも1つを含む:治療薬の記述;新形成、病原体感染症、免疫不全若しくは同種移植、癌、腫瘍、又はそれらの症候の処置又は予防のための投与計画及び投与;注意;警告;適応症;使用禁忌;過量情報;有害反応;動物薬理;臨床試験;及び/又は参考文献。説明書は、容器(存在するとき)に直接印刷することができ、又は容器に貼るラベルとして印刷することができ、又は容器の中若しくは容器と一緒に提供される分離したシート、パンフレット、カード若しくはフォルダとして印刷することができる。
【0389】
当業者は、「抗原認識受容体」という用語が、抗原結合に反応して免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる受容体を包含し得ることを理解されたい。例示的な抗原認識受容体は、免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる細胞内シグナル伝達ドメインに腫瘍抗原結合性ドメインが融合した天然若しくは内在性T細胞受容体又はキメラ抗原受容体とすることができる。
【0390】
当業者は、「抗体」という用語が、完全な抗体分子だけでなく、免疫原結合能力を保持する抗体分子の断片も意味することを理解されたい。こうした断片も当該技術分野でよく知られており、インビトロとインビボの両方で度々採用されている。したがって、当業者は、「抗体」という用語が、完全な免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性な断片F(ab1)2及びFabも意味することを理解されたい。完全抗体のFc断片を欠くF(ab’)25及びFab断片は、循環からより急速に消滅し、完全抗体の非特異的組織結合が少ない可能性がある(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316~325(1983)。本明細書に開示される抗体は、全自然抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、単鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド、及び従来と異なる抗体を含む。
【0391】
当業者は、「単鎖可変断片」又は「scFv」という用語が、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合した免疫グロブリンの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を包含することを理解されたい。重鎖(VH)と軽鎖(VL)は、直接連結されるか、又はペプチドをコードするリンカー(例えば、30、15、20、25アミノ酸)によって連結され、リンカーは、VHのN末端とVLのC末端、又はVHのC末端とVLのN末端を接続する。リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であり、溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富である。定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、最初の免疫グロブリンの特異性を保持する。単鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879~5883、1988)によって記述されたVH及びVLコード配列を含む核酸から発現することができる。米国特許第5,091,513号、同5,132,405号及び同4,956,778号並びに米国特許出願公開第20050196754号及び同20050196754号も参照されたい。阻害活性を有する拮抗性scFvが記述されている(例えば、Zhaoら、Hyrbidoma(Larchmt)2008 27(6):455~51;Peterら、J Cachexia Sarcope ia Muscle 2012年8月12日;Shiehら、J Imunol2009 183(4):2277~85;Giomarelliら、Thromb Haemost 2007 97(6):955~63;Fife eta.、J Clin Invst 2006 1 16(8):2252~61;Brocksら、Immunotechnology 1997 3(3):173~84;Moosmayerら、Ther Immunol 1995 2(10:31~40)を参照されたい。刺激活性を有する作動性scFvが記述されている(例えば、Peterら、J Biol Chem 2003 25278(38):36740~7;Xieら、Nat Biotech 1 97 15(8):768~71;Ledbetterら、Crit Rev Immunol l997 1(5~6)-.427~55;Hoら、BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257~66を参照されたい)。
【0392】
「親和性」とは、結合強度の尺度を意味する。理論に拘泥するものではないが、親和性は、抗体結合部位と抗原決定基の立体化学的一致度に依存し、それらの間の接触域のサイズに依存し、荷電基及び疎水基の分布に依存する。親和性は、「結合活性」という用語も含み、これは、可逆的複合体の形成後の抗原抗体結合の強度を指す。抗原に対する抗体の親和性を計算する方法は、親和性を計算する結合実験の使用を含めて、当該技術分野で既知である。機能分析(例えば、フローサイトメトリー分析)における抗体活性も抗体親和性を反映している。抗体及び親和性は、機能分析(例えば、フローサイトメトリー分析)によって表現型的に特徴づけ、比較することができる。
【0393】
当業者は、「キメラ抗原受容体」又は「CAR」という用語が、免疫細胞を活性化又は刺激することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合した抗原結合ドメインを包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、CARの細胞外結合ドメインは、マウス又はヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖と軽鎖領域の融合から誘導される単鎖可変断片(scFv)で構成される。あるいは、Fabから誘導される(抗体からの代わりに、例えば、Fabライブラリから得られる)scFvを使用することができ、様々な実施形態においては、このscFvは、膜貫通領域、次いで細胞内シグナル伝達ドメインと融合する。様々な実施形態においては、CARは、抗原に対して高い親和性又は結合活性を有するように選択される。
【0394】
ポリペプチド及び類似体
本明細書に開示される方法に更に含まれるのは、抗MUC1、CD28、CD3ζ、及び免疫応答細胞において発現されるときにそれらの抗腫瘍活性を高めるように改変される種々のscFvポリペプチド又はそれらの断片(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)である。ある実施形態においては、本明細書に開示される方法は、配列を変化させることによってアミノ酸配列又は核酸配列を最適化するステップを含む。こうした変化としては、ある種の変異、欠失、挿入又は翻訳後修飾が挙げられる。本明細書の開示は、更に、本明細書に開示される任意の天然ポリペプチドの類似体も含む。類似体は、アミノ酸配列差、翻訳後修飾、又はその両方によって、本明細書に開示される天然ポリペプチドとは異なり得る。本明細書に開示される類似体は、一般に、本明細書に開示される天然アミノ酸配列の全部又は一部と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%>、99%以上同一である。配列比較の長さは、少なくとも5、10、15又は20アミノ酸残基である。別の一実施形態においては、少なくとも25、50又は75アミノ酸残基。更に別の一実施形態においては、100個を超えるアミノ酸残基。また、同一性の程度を決定する例示的な一手法においては、BLASTプログラムを使用することができ、e”3~e”100の確率スコアは、密接に関連した配列を示す。修飾としては、ポリペプチドのインビボ及びインビトロ化学誘導体化、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化又はグリコシル化が挙げられ、こうした修飾は、ポリペプチド合成若しくはプロセシング中に起こり、又は単離修飾酵素による処理後に起こり得る。類似体は、本明細書に開示される天然ポリペプチドとは一次配列の変化分だけ異なることもできる。これらには、天然と誘導の両方の遺伝子変異体が含まれる(例えば、照射若しくは硫酸エタンメチル(ethanemethyl sulfate)曝露による、又はSambrook、Fritsch及びManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2版)、CSH Press、1989、若しくはAusubelら、前掲に記載のように部位特異的変異誘発による、ランダム変異導入に起因する遺伝子変異体)。L-アミノ酸以外の残基、例えば、D-アミノ酸又は非天然若しくは合成アミノ酸、例えば、ベータ(β)若しくはガンマ(γ)アミノ酸を含む、環化ペプチド、分子及び類似体も含まれる。
【0395】
非タンパク質類似体は、本明細書に開示されるタンパク質の機能活性を模倣するように設計された化学構造を有する。こうした類似体は、本明細書に開示される方法に従って投与される。こうした類似体は、元のポリペプチドの生理学的活性を超える可能性がある。類似体設計方法は当該技術分野で周知であり、類似体の合成は、こうした方法に従って、得られる類似体が免疫応答細胞において発現されるときに元のポリペプチドの抗腫瘍活性を増大するように化学構造を改変することによって、行うことができる。これらの化学的改変としては、別のR基を置換すること、及び参照ポリペプチドの特定の炭素原子における飽和度を変えることが挙げられるが、それらに限定されない。別の一実施形態においては、タンパク質類似体はインビボでの分解に対して比較的耐性があり、投与後の治療効果がより長続きする。機能活性を測定するアッセイとしては、下記実施例に記載のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0396】
「免疫抑制活性」という用語は、免疫応答の減少をもたらす、細胞(例えば、活性化免疫応答細胞)におけるシグナル伝達又はタンパク質発現変化の誘導を表す。それらの結合を介して免疫応答を抑制する、又は減少させることが知られているポリペプチドとしては、CD47、PD-1、CTLA-4、並びにSIRPa、PD-L1、PD-L2、B7-1及びB7-2を含めたそれらの対応するリガンドが挙げられる。こうしたポリペプチドは、腫瘍微小環境中に存在し、新生細胞に対する免疫応答を阻害する。様々な実施形態においては、免疫抑制ポリペプチド及び/又はそれらのリガンドの相互作用の阻害、遮断又は拮抗は、免疫応答細胞の免疫応答を増強する。
【0397】
「免疫賦活性」という用語は、免疫応答の増加をもたらす、細胞(例えば、活性化免疫応答細胞)におけるシグナル伝達又はタンパク質発現変化の誘導を表す。免疫賦活性は、炎症誘発活性を含み得る。それらの結合を介して免疫応答を刺激する、又は増加させることが知られているポリペプチドとしては、CD28、OX-40、4-1BB、並びにB7-1、B7-2、OX-40L及び4-1BBLを含めたそれらの対応するリガンドが挙げられる。こうしたポリペプチドは、腫瘍微小環境中に存在し、新生細胞に対する免疫応答を活性化する。様々な実施形態においては、炎症誘発性ポリペプチド及び/又はそれらのリガンドの促進、刺激又は作動は、免疫応答細胞の免疫応答を増強する。
【0398】
本明細書に開示される方法において有用な核酸分子としては、本明細書に開示されるポリペプチド又はその断片をコードする任意の核酸分子が挙げられる。こうした核酸分子は、内在性核酸配列と100%同一である必要はないが、一般に実質的な同一性を示す。内在性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、一般に、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖とハイブリッド形成することができる。「ハイブリッド形成する」とは、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)又はその一部の間で様々な厳密性の条件下で二本鎖分子を形成する対を意味する。(例えば、Wahl,G.M.及びS.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;immel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい。)
【0399】
当業者は、「実質的に同一」という用語が、ポリペプチド又は核酸分子が、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか一つ)又は核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか一つ)と少なくとも50%同一であるポリペプチド又は核酸分子を包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、こうした配列は、アミノ酸レベル又は核酸で比較用配列に対して少なくとも60%、80%又は85%、90%、95%、更には99%同一である。
【0400】
配列相同性は、一般に、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue,Madison,Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。こうしたソフトウェアは、相同性の程度を種々の置換、欠失及び/又は他の修飾に対して割り当てることによって同一又は類似配列を整合する。保存的置換としては、一般に、以下の群内の置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する例示的な一手法においては、BLASTプログラムを使用することができ、e-3~e-100の確率スコアは、密接に関連した配列を示す。
【0401】
当業者は、「類似体」という用語が、参照ポリペプチド又は核酸分子の機能を有する構造的に関連したポリペプチド又は核酸分子を包含し得ることを理解されたい。
【0402】
当業者は、「リガンド」という用語が、受容体に結合する分子を包含し得ることを理解されたい。特に、リガンドは別の細胞の受容体に結合し、細胞間の認識及び/又は相互作用を可能にする。
【0403】
当業者は、「構成的発現」という用語が、すべての生理的条件下の発現を包含し得ることを理解されたい。
【0404】
当業者は、「疾患」という用語が、細胞、組織又は器官の正常機能を損なう、又は妨害する任意の症状又は障害を包含し得ることを理解されたい。疾患の例としては、新形成又は細胞の病原体感染が挙げられる。
【0405】
当業者は、「有効量」という用語が、治療効果を有するのに十分な量を包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、「有効量」は、新形成の連続増殖、成長又は転移(例えば、浸潤又は移動)を抑止し、改善し、又は阻害するのに十分な量である。
【0406】
当業者は、「新形成」という用語が、細胞又は組織の病理学的増殖、及びそれに続く他の組織若しくは器官への移動又は他の組織若しくは器官の浸潤を特徴とする疾患を包含し得ることを理解されたい。新形成の成長は、一般に、制御されず、進行性であり、正常細胞の増殖を誘発しない、又は休止させる条件下で起こる。新形成は、膀胱、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、ファロピウス管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿生殖路、尿管、尿道、子宮及び膣からなる群から選択される器官、又はその組織若しくは細胞型を含めて、ただしそれらに限定されない種々の細胞型、組織又は器官に影響し得る。新形成としては、肉腫、癌腫又は形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などの癌が挙げられる。
【0407】
当業者は、「病原体」という用語が、疾患を引き起こし得るウイルス、細菌、真菌、寄生生物又は原生動物を包含し得ることを理解されたい。
【0408】
当業者は、「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」という用語が、正常又は非IS新生細胞と比較して、腫瘍細胞上で独自に又は差次的に発現される抗原(例えば、ポリペプチド)を包含し得ることを理解されたい。本明細書に開示される組成物及び方法に関連して、腫瘍抗原としては、抗原認識受容体(例えば、CD19、MUCI)を介して免疫応答を活性化若しくは誘導することができる、又は受容体-リガンド結合(例えば、CD47、PD-L1/L2、B7.1/2)を介して免疫応答を抑制することができる、腫瘍によって発現される任意のポリペプチドが挙げられる。
【0409】
当業者は、「ウイルス抗原」という用語が、免疫応答を誘導することができるウイルスによって発現されるポリペプチドを包含し得ることを理解されたい。
【0410】
「含む」(「comprises」、「comprising」)という用語は、米国特許法においてそれらに与えられる広範な意味を有することが意図され、「含む」(「includes」、「including」)などを意味することができる。同様に、「からなる」及び「から本質的になる」という用語は、米国特許法においてそれらに与えられる意味を有する。本明細書に開示される組成物及び方法は、活性成分又は指定ステップを含む、活性成分又は指定ステップからなる、活性成分又は指定ステップから本質的になることが予見される。
【0411】
当業者は、「処置」という用語が、処置される個体又は細胞の疾患経過を変える試みにおける臨床的介入を包含し、予防のために、又は臨床病理の過程において、実施できることを理解されたい。処置の治療効果としては、疾患の発生又は再発の予防、症候の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減、転移の予防、疾患進行速度の低下、病態の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられるが、それらに限定されない。疾患又は障害の進行を予防することによって、処置は、罹患した若しくは診断された対象、又は障害を有する疑いのある対象において障害による悪化を予防できるだけでなく、障害のリスクがある又は障害を有する疑いのある対象における障害の発生又は障害の兆候を予防することもできる。
【0412】
当業者は、「対象」という用語が、脊椎動物、一実施形態においては哺乳動物、一実施形態においてはヒトを包含し得ることを理解されたい。対象は、一実施形態においては、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌなどの家畜、及びマウス、ラット、スナネズミ、ハムスターなどの実験動物も指し得る。
【0413】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、TCRが目的ペプチドに対するものであるTCR T細胞である。一実施形態においては、TCRは、目的ペプチドに結合する。別の一実施形態においては、TCRは、目的ペプチドを認識する。別の一実施形態においては、TCRは、目的ペプチドのリガンドである。別の一実施形態においては、目的ペプチドは、TCRのリガンドである。これらの実施形態の各々は、本明細書に開示されるパートで検討される。
【0414】
一実施形態においては、本明細書に開示される免疫細胞は、T細胞ではない。別の一実施形態においては、本明細書に開示される免疫細胞は、NK細胞ではない。別の一実施形態においては、本明細書に開示される免疫細胞は、CTLではない。別の一実施形態においては、本明細書に開示される免疫細胞は、制御性T細胞ではない。別の一実施形態においては、免疫細胞は、ヒト胚性幹細胞ではない。別の一実施形態においては、免疫細胞は、リンパ球様細胞がそこから分化し得る多能性幹細胞ではない。
【0415】
使用方法
免疫療法の一手法は、患者自身の免疫細胞を操作して、それらの腫瘍を認識し、攻撃する遺伝子改変免疫細胞を作製することを含む。免疫細胞は、本明細書に記載のように、収集され、遺伝子改変されて、例えば、免疫細胞、例えばT細胞が、腫瘍又は癌細胞上の特定のタンパク質抗原を認識できるようにするキメラ抗原受容体(CAR)をそれらの細胞表面に生成する。次いで、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞の増殖集団を患者に投与する。一実施形態においては、投与された細胞は、患者の体内で増殖し、抗原をその表面に有する癌及び腫瘍細胞を認識し、死滅させる。別の一実施形態においては、投与された細胞は、患者の体内で増殖し、腫瘍関連抗原を認識し、死滅させ、癌及び腫瘍細胞の死をもたらす。
【0416】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される組成物を投与するステップを含む、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法である。
【0417】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、遺伝子改変免疫細胞と追加の薬剤を含む組成物とを投与するステップを含み、前記追加の薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含み、前記方法が、前記遺伝子改変免疫細胞を投与されるが追加の薬剤を投与されない対象と比較して、前記対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する、方法である。別の一実施形態においては、前記遺伝子改変免疫細胞は、遺伝子改変T細胞、細胞傷害性T細胞、Treg細胞、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、NK細胞又は樹状細胞を含む。
【0418】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)と追加の薬剤を含む組成物とを投与するステップを含み、前記追加の薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含み、前記方法が、前記遺伝子改変免疫細胞を投与されるが追加の薬剤を投与されない対象と比較して、前記対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する、方法である。
【0419】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、遺伝子改変T細胞受容体細胞(TCR T細胞)と追加の薬剤を含む組成物とを投与するステップを含み、前記追加の薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含み、前記方法が、前記遺伝子改変免疫細胞を投与されるが追加の薬剤を投与されない対象と比較して、前記対象における癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する、方法である。
【0420】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス上清又はそれらの組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞を投与する前記ステップの癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性を低下させない。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はその組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞を投与する前記ステップの癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性を低下させない。
【0421】
別の一実施形態においては、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス上清又はそれらの組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞を投与する前記ステップの癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性を高める。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はその組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞を投与する前記ステップの癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する有効性を高める。
【0422】
一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞癌治療の有効性を高める方法は、前記遺伝子改変免疫細胞、及びアポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はそれらの組成物を投与するステップを含み、有効性は、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高くなる。別の一実施形態においては、前記遺伝子改変免疫細胞は、T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブCD4+T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞はナイーブCD8+T細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞は、樹状細胞である。更に別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の一実施形態においては、遺伝子改変T細胞は、遺伝子改変T細胞受容体細胞(TCR T細胞)である。別の一実施形態においては、CAR T細胞癌治療の有効性を高める方法は、前記遺伝子改変免疫細胞、及びアポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はそれらの組成物を投与するステップを含み、有効性は、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高くなる。
【0423】
別の一実施形態においては、本明細書の方法は、免疫癌治療を受けるが追加の薬剤を投与されない対象における前記炎症誘発性サイトカインのレベルと比較して、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルを低下させる。別の一実施形態においては、本明細書の方法は、遺伝子改変免疫細胞癌治療を受けるが追加の薬剤を投与されない対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる。
【0424】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、IL-6を減少させる。
【0425】
別の一実施形態においては、本明細書の方法は、免疫癌治療を受けるが追加の薬剤を投与されない対象における前記サイトカインのレベルと比較して、少なくとも1種のサイトカインの産生を増加させる。一部の実施形態においては、追加の薬剤は、アポトーシス細胞である。別の実施形態においては、追加の薬剤は、アポトーシス細胞上清である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、IL-2を増加させる。
【0426】
当業者は、サイトカインに関連して本明細書で使用される「産生」という用語が、サイトカインの発現、及び細胞からのサイトカインの分泌を包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、サイトカイン産生の増加は、細胞からのサイトカインの分泌の増加をもたらす。別の一実施形態においては、サイトカイン産生の減少は、細胞からのサイトカインの分泌の減少をもたらす。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を減少させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、IL-6の分泌を減少させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を増加させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、IL-2の分泌を増加させる。
【0427】
別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、腫瘍細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、T細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、免疫細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、マクロファージである。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、B細胞リンパ球である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、肥満細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、内皮細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、線維芽細胞である。別の一実施形態においては、少なくとも1種のサイトカインを分泌する細胞は、間質細胞である。当業者は、サイトカインレベルがサイトカイン分泌細胞において細胞の周囲の環境に応じて増減し得ることを認識されたい。
【0428】
更に別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を増加させる。更に別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を維持する。更に別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、少なくとも1種のサイトカインの分泌を減少させない。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2の分泌を増加させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌を増加させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを減少させない。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持する、又は増加させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持する、又は増加させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを減少させない。
【0429】
更なる一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-6の分泌を減少させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持し、増加させ、又は減少させず、IL-6の分泌を減少させる。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法に使用される追加の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持し、増加させ、又は減少させず、IL-6の分泌を減少させる。
【0430】
一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞癌治療の有効性を高める方法は、前記対象におけるIL-6のレベルを減少させるステップを含み、前記方法は、CAR T細胞、及びアポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はそれらの組成物を投与するステップを含み、有効性は、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高くなる。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞癌治療の有効性を高める方法は、前記対象におけるIL-2のレベルを増加させるステップを含み、前記方法は、CAR T細胞、及びアポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はそれらの組成物を投与するステップを含み、有効性は、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して高くなる。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞癌治療の有効性を高める方法は、前記CAR T細胞の増殖を増加させるステップを含み、前記方法は、CAR T細胞、及びアポトーシス細胞、アポトーシス細胞由来の上清、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せを含む追加の薬剤、又はそれらの組成物を投与するステップを含み、前記CAR T細胞の有効性及び増殖は、前記追加の薬剤を投与されない対象と比較して増加する。
【0431】
一実施形態においては、CAR T細胞癌治療の有効性を高める方法は、対象におけるサイトカイン産生を減少させ、又は阻害し、前記方法は、CAR T細胞及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの組成物を含む組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法も、対象におけるサイトカイン産生を減少させ、又は阻害し、前記方法は、CAR T細胞及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの組成物を含む組成物を投与するステップを含む。
【0432】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを処置する方法である。
【0433】
別の一実施形態においては、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法は、対象におけるサイトカイン産生を減少させ、又は阻害し、前記方法は、CAR T細胞及びCTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその断片若しくは類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節剤、又はそれらの任意の組合せ、又はそれらの組成物を含む組成物を投与するステップを含む。
【0434】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを予防する方法である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを軽減する方法である。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを改善する方法である。別の一実施形態においては、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス上清又はそれらの組成物の投与は、CAR T細胞治療の有効性を低下させない。
【0435】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)癌治療を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率を抑制する、又は減少させる方法であって、該方法は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生率抑制又は減少は、キメラ抗原受容体発現T細胞癌治療を受けアポトーシス細胞又はアポトーシス上清を投与される対象におけるサイトカインレベルを測定することによって求められる。別の一実施形態においては、サイトカインの測定レベルは、CAR T細胞癌治療を受けない対象におけるサイトカインレベルと比較される。別の一実施形態においては、測定サイトカインレベルは、アポトーシス細胞もアポトーシス上清も投与されない対象におけるサイトカインレベルと比較される。更に別の一実施形態においては、測定サイトカインレベルは、対照対象と比較される。
【0436】
別の一実施形態においては、対象における炎症誘発性サイトカインのレベルは、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清もそれらの組成物も投与されない対象と比較して低下する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、CAR T細胞癌治療を受けるが前記アポトーシス細胞も前記アポトーシス細胞上清もそれらの組成物も投与されない対象と比較して、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生レベルを減少させ、又は抑制する。
【0437】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、更に追加の薬剤の投与を含むことができる。あるいは、本明細書に開示される方法は、追加の薬剤の投与、並びにアポトーシス細胞及びアポトーシス細胞上清の非投与を含むことができる。更なる一実施形態においては、追加の薬剤は、CAR T細胞癌治療を維持する、強化する、若しくは改善する、又はそれらの任意の組合せの化合物又は組成物とすることができる。更なる一実施形態においては、CAR T細胞癌治療を維持する、強化する、又は改善する追加の薬剤としては、CTLA-4遮断薬、アルファ-1抗トリプシン若しくはその機能的断片、若しくはその類似体、テルル化合物、若しくは免疫調節薬、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。別の一実施形態においては、追加の薬剤としては、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清が挙げられる。別の一実施形態においては、本明細書に記載の追加の薬剤の投与は、前記CAR T細胞癌治療の前、治療と同時、治療の後である。
【0438】
一実施形態においては、一実施形態においてはトシリズマブであるIL-6受容体拮抗薬が、本明細書に開示される組成物及び方法に使用される。
【0439】
一実施形態においては、養子移入T細胞は、リンパ球減少宿主においてより効率的に移植され、増殖する。したがって、一実施形態においては、CAR T細胞又は別の改変免疫細胞の移入の前に、対象をリンパ球除去に供する。別の一実施形態においては、CAR T細胞を受けた対象に、T細胞支持サイトカインを投与する。
【0440】
一実施形態においては、T細胞は、エフェクターT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、ナイーブT細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、中心メモリー(TCM)T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、Th17細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、Tステムメモリー細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、制御性T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、細胞傷害性T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、高い複製能力を有する。別の一実施形態においては、T細胞増殖が患者において発生する。別の一実施形態においては、少数の細胞を患者に導入することができる。別の一実施形態においては、T細胞増殖がインビトロで発生する。別の一実施形態においては、多数の細胞を患者に導入することができ、細胞及び/又は上清を患者に複数の機会に導入することができ、又はそれらの組合せとすることができる。
【0441】
一実施形態においては、CAR T細胞の利点は、それらが細胞表面分子に特異的であるので、MHC拘束性TCR認識の制約を受けず、抗原提示又はヒト白血球抗原発現の欠陥を介した腫瘍エスケープを予防することである。
【0442】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における腫瘍量を減少させる方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。
【0443】
一実施形態においては、腫瘍量の減少は、対象における腫瘍細胞数の減少を含む。別の一実施形態においては、腫瘍量の減少は、対象における腫瘍サイズの減少を含む。別の一実施形態においては、腫瘍量の減少は、対象における腫瘍の消滅を含む。
【0444】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における腫瘍細胞死を誘導する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、対象における腫瘍細胞死を誘導する本明細書に開示される方法は、操作されたキメラ抗原受容体を含むNK細胞、T細胞などの免疫細胞を少なくとも1種の追加の薬剤と一緒に投与して、対象における毒性サイトカイン放出又は「サイトカイン放出症候群」(CRS)又は「重症サイトカイン放出症候群」(sCRS)又は「サイトカインストーム」を減少させるステップを含む。
【0445】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、新形成を有する対象の生存を高める、又は延長する方法であって、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む方法である。別の一実施形態においては、対象の生存を高める、又は延長する方法は、操作されたキメラ抗原受容体を含むNK細胞、T細胞などの免疫細胞を少なくとも1種の追加の薬剤と一緒に投与して、対象における毒性サイトカイン放出又は「サイトカイン放出症候群」(CRS)又は「重症サイトカイン放出症候群」(sCRS)又は「サイトカインストーム」を減少させるステップを含む。
【0446】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、新形成を有する対象の生存を高める、又は延長する方法であって、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む方法である。
【0447】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における新形成を予防する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。
【0448】
一実施形態においては、新形成は、血液癌、B細胞白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0449】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、それを必要とする対象における血液癌を処置する方法であって、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む方法である。一実施形態においては、血液癌は、B細胞白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0450】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を処置する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を予防する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を阻害する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を減少させる方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を改善する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、対象における癌又は腫瘍を軽減する方法であり、前記方法は、前記対象に本明細書に記載の組成物のいずれかを投与するステップを含む。
【0451】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、免疫療法中に遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法であり、該方法は、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清を含む組成物を免疫療法中に投与するステップを含む。別の一実施形態においては、前記遺伝子改変免疫細胞は、T細胞、ナイーブT細胞、ナイーブCD4+T細胞、ナイーブCD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)、制御性T細胞(Treg)、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、又は遺伝子改変T細胞受容体(TCR)細胞を含む。別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、免疫療法中にCAR T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法であり、該方法は、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清を含む組成物を免疫療法中に投与するステップを含む。
【0452】
別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法は、免疫療法の有効性を低下させず、阻害しない。例えば、別の一実施形態においては、CAR T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法は、CAR T細胞癌治療の有効性を低下させず、阻害しない。別の一実施形態においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞の増殖速度を維持する、又は増加させる方法は、対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する。
【0453】
一実施形態においては、本明細書に開示される、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを経験した対象、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームにかかりやすい対象におけるサイトカイン産生を減少させる、又は阻害する方法は、サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する。別の一実施形態においては、該方法は、炎症誘発性サイトカイン産生を減少させる、又は阻害する。更なる一実施形態においては、該方法は、少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインを減少させる、又は阻害する。対象がCAR T細胞癌治療を受けている別の一実施形態においては、該方法は、CAR T細胞治療の有効性を低下させない。
【0454】
本明細書に記載の方法は、既存の症状の緩和であれ、再発の予防であれ、所望の効果を得るのに有効な量の本明細書に開示されるT細胞、NK細胞又はCTL細胞を投与するステップを含む。処置のため、投与される量は、所望の効果を生じるのに有効な量である。有効量は、1回又は一連の投与で供給することができる。有効量は、大量瞬時投与で、又は連続潅流によって、供給することができる。
【0455】
当業者は、「有効量」(又は「治療有効量」)が、処置によって有益な又は所望の臨床結果を生じるのに十分な量を包含し得ることを認識されたい。有効量を対象に1回以上投与することができる。処置に関して、有効量は、疾患の進行を緩和する、改善する、安定化する、反転する、若しくは遅らせるのに、又は疾患の病理学的結果を軽減するのに十分な量である。有効量は、一般に、医師によって症例ごとに決定され、当業者の技能の範囲内である。有効量が得られる適切な投与量を決定するときには、幾つかの要因が一般に考慮される。これらの要因としては、対象の年齢、性別及び体重、処置される症状、症状の重症度、並びに投与される抗原結合断片の形態及び有効濃度が挙げられる。
【0456】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、単一の組成物に含まれる、遺伝子改変細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、方法は、単一の組成物に含まれる、CAR T細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、方法は、単一の組成物に含まれる、TCR T細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。
【0457】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、遺伝子改変細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、CAR T細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。別の一実施形態においては、方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、TCR T細胞及び追加の薬剤又はそれらの組合せを含む組成物を投与するステップを含む。
【0458】
抗原特異的T細胞、例えばCAR T細胞を用いた養子免疫治療の場合、106~1010(例えば、109)個の細胞用量を一般に注入する。遺伝子改変細胞を宿主に投与し、続いて分化させると、特定の抗原に対して特異的であるT細胞が誘導される。T細胞の「誘導」は、欠失、アネルギーなどによる抗原特異的T細胞の不活性化を含み得る。不活性化は、自己免疫異常などにおける寛容性を確立又は再確立するのに特に有用である。改変細胞は、静脈内、皮下、節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内、及び胸腺に直接を含めて、ただしそれらに限定されない、当該技術分野で既知である任意の方法によって投与することができる。一実施形態においては、T細胞は、腹腔内に投与されない。一実施形態においては、T細胞は、腫瘍内に投与される。
【0459】
本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞(例えば、T細胞、N細胞、CTL細胞又はそれらの前駆体)を含む組成物は、新形成、病原体感染症又は感染性疾患を処置するために対象に全身的又は直接的に供給することができる。一実施形態においては、本明細書に開示される細胞は、目的器官(例えば、新形成に冒された器官)に直接注射される。あるいは、遺伝子改変免疫応答細胞を含む組成物は、例えば循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって、目的器官に間接的に供給される。増殖剤及び分化剤を細胞の投与前、投与中又は投与後に供給して、T細胞、NK細胞又はCTL細胞の産生をインビトロ又はインビボで増加させることができる。
【0460】
本明細書に開示される方法において上述したように、追加の薬剤を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞の投与前に、投与と同時に、又は投与後に供給することができる。一実施形態においては、本明細書に開示される方法においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞は、本明細書に開示される追加の薬剤の前に投与される。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞は、本明細書に開示される追加の薬剤と同時に投与される。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法においては、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR T細胞は、追加の薬剤の投与の後に投与される。
【0461】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞を含む組成物を投与する。別の一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清を含む組成物を投与する。
【0462】
改変細胞は、任意の生理的に許容されるビヒクル中で、通常は血管内に、投与することができるが、骨、又は細胞が再生及び分化に適切な部位を見つけることができる別の好都合な部位(例えば、胸腺)に導入することもできる。通常、少なくとも1×105個の細胞が投与され、最終的に1×1010個以上に達する。本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞は、精製細胞集団を含むことができる。当業者は、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの様々な周知の方法を使用して、集団における遺伝子改変免疫応答細胞の割合を容易に測定することができる。一部の実施形態においては、遺伝子改変免疫応答細胞を含む集団における純度の範囲は、約50~約55%、約55~約60%、及び約65~約70%である。別の実施形態においては、純度は、約70~約75%、約75~約80%、約80~約85%である。更なる実施形態においては、純度は、約85~約90%、約90~約95%、及び約95~約100%である。投与量は、当業者によって容易に調節することができる(例えば、純度の低下は、投与量の増加を必要とする可能性がある)。細胞は、注射、カテーテルなどによって導入することができる。所望であれば、インターロイキン、例えば、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL7、IL12、ILIS、IL21、並びに別のインターロイキン、G-、M-及びGM-CSFなどのコロニー刺激因子、インターフェロン、例えばガンマ-インターフェロン、及びエリスロポイエチンを含めて、ただしそれらに限定されない因子も含めることができる。
【0463】
組成物としては、遺伝子改変免疫応答細胞又はそれらの前駆体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が挙げられる。投与は、自己又は異種とすることができる。例えば、免疫応答細胞又は前駆体は、一対象から得られ、同じ対象又は異なる適合対象に投与することができる。本明細書に開示される末梢血由来免疫応答細胞又はそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボ又はインビトロ由来)は、カテーテル投与を含めた局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射又は非経口投与によって投与することができる。本明細書に開示される治療用組成物(例えば、遺伝子改変免疫応答細胞を含有する医薬組成物)を投与するときには、それは、一般に、単位投与量注射剤型(溶液、懸濁液、乳濁液)で処方される。
【0464】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞又は本明細書に開示される別の免疫細胞及びアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む組成物を製造する方法であり、該方法は、目的抗原に結合するCARをコードする核酸配列をT細胞又は免疫細胞に導入するステップを含む。別の一実施形態においては、CAR T細胞又は本明細書に開示される別の免疫細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞又はアポトーシス上清を含む組成物から分離される。
【0465】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、悪性腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)及びアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を含む組成物を投与するステップを含む方法である。
【0466】
当業者は、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR改変T細胞によって誘発される抗腫瘍免疫応答が、能動又は受動免疫応答であり得ることを理解されたい。さらに、CAR媒介性免疫応答は、CAR改変T細胞がCAR中の抗原結合部分に特異的な免疫応答を誘導する養子免疫治療手法の一部であり得る。
【0467】
当業者は、免疫療法が、癌細胞を標的にして破壊する免疫エフェクター細胞及び分子の使用を包含し得ることを理解されたい。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞表面の何らかのマーカーに特異的な抗体とすることができる。抗体単体は、治療のエフェクターとして働くことができ、他の細胞を動員して、実際に細胞死滅させることができる。抗体は、薬物又は毒素(化学療法、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と複合化することもでき、単にターゲティング剤として働くこともできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的又は間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球とすることができる。種々のエフェクター細胞としては、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が挙げられる。
【0468】
悪性腫瘍
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、癌又は腫瘍を処置する、予防する、阻害する、その発生率を減少させる、改善する、又は軽減する方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)とアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清又はそれらの組成物を含む組成物とを投与するステップを含む方法である。本明細書に開示されるように、これらの方法は、更に、CRS又はサイトカインストームの発生率を抑制する又は減少させる試みにおいて追加の薬剤を投与するステップを含むことができる。
【0469】
一実施形態においては、癌は、B細胞悪性腫瘍である。一実施形態においては、B細胞悪性腫瘍は白血病である。別の一実施形態においては、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ性白血病(ALL)である。別の一実施形態においては、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病である。
【0470】
一実施形態においては、癌は白血病である。一実施形態においては、癌はリンパ腫である。一実施形態においては、リンパ腫は、大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0471】
一実施形態においては、腫瘍は、固形腫瘍である。別の一実施形態においては、固形腫瘍は、嚢胞も液体領域もない異常な組織塊である。別の一実施形態においては、固形腫瘍は、血液、骨髄又はリンパ細胞以外の体組織細胞の異常増殖によって形成された新生物(新しい細胞増殖)又は病変部(解剖構造の損傷、又は生理機能の撹乱)である。別の一実施形態においては、固形腫瘍は、肝臓、結腸、乳房、肺などの異なる組織タイプから生じ得る、その細胞起源の器官において最初に増殖する、異常細胞塊からなる。しかし、こうした癌は、疾患の進行期における転移性腫瘍増殖によって、別の器官に広がる可能性がある。
【0472】
一実施形態においては、腫瘍は、固形腫瘍である。別の一実施形態においては、固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫及びリンパ腫である。一実施形態においては、固形腫瘍は、腹腔内腫瘍である。
【0473】
別の一実施形態においては、固形腫瘍は、副腎皮質腫瘍(腺腫及び癌腫)、癌腫、結腸直腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、肝芽腫 肝細胞癌、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫以外の軟部組織肉腫、及びウィルムス腫瘍を含む。一実施形態においては、固形腫瘍は、乳腺腫である。別の一実施形態においては、固形腫瘍は、前立腺癌である。別の一実施形態においては、固形腫瘍は、結腸癌である。一実施形態においては、腫瘍は、脳腫瘍である。別の一実施形態においては、腫瘍は、膵腫瘍である。別の一実施形態においては、腫瘍は、直腸結腸腫瘍である。
【0474】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、肉腫及び癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌(nile duct carcinoma)、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫(oligodenroglioma)、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)に対して治療効果及び/又は予防効果を有する。本明細書に開示される組成物及び方法を使用して、当該技術分野で既知である任意の固形腫瘍を処置する、予防する、阻害する、改善する、その発生率を減少させる、又は軽減することができる。
【0475】
別の一実施形態においては、腫瘍は、血液腫瘍である。一実施形態においては、血液腫瘍は、血液、骨髄及びリンパ節に影響する癌タイプである。血液腫瘍は、2つの初代血液細胞系列、すなわち、骨髄細胞系及びリンパ細胞系に由来し得る。骨髄細胞系は、通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及びマスT細胞を生成し、リンパ細胞系は、B、T、NK及び形質細胞を生成する。リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、リンパ性白血病及び骨髄腫は、リンパ系に由来し、急性及び慢性骨髄性白血病(AML、CML)、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患は、骨髄系が起源である。
【0476】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増多症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、H鎖病に対して治療効果及び/又は予防効果を有する。本明細書に開示される組成物及び方法を使用して、当該技術分野で既知である任意の血液腫瘍を処置する、予防する、阻害する、改善する、その発生率を減少させる、又は軽減することができる。
【0477】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるポリペプチド又はペプチドドメインのいずれか一つの活性な断片である。当業者は、「断片」という用語が、少なくとも5、10、13又は15個のアミノ酸を包含し得ることを理解されたい。別の実施形態においては、断片は、少なくとも20個の隣接アミノ酸である。本明細書に開示される断片は、当業者に既知の方法によって生成することができ、又は通常のタンパク質プロセシング(例えば、生物活性に不要なアミノ酸の新生ポリペプチドからの除去、又は選択的mRNAスプライシング若しくは選択的タンパク質プロセシング事象によるアミノ酸の除去)から得ることができる。
【0478】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で区別なく使用され、特に抗体の結合活性を保持するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はそれらの任意の断片を指す。ある実施形態においては、本明細書に開示される方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体の使用を含む。
【0479】
当業者は、「ポリクローナル抗体(単数又は複数)」という用語が、同じ抗原の異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体の集団を包含し得ることを理解されたい。
【0480】
当業者は、「モノクローナル抗体(単数又は複数)」という用語が、実質的に同種の抗体の集団を包含し得ることを理解されたい。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る場合によっては天然の変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対するものである。
【0481】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて製造することができ、又は組換えDNA法によって製造することができる(例えば、米国特許第4,816,567号)。
【0482】
ハイブリドーマ法においては、マウス、又はハムスターなどの別の適切な宿主動物は、免疫されて、免疫処置用タンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、又は産生可能である、リンパ球を誘発する。目的タンパク質に対する抗体は、一般に、動物において所望の目的タンパク質及びアジュバントの皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって産生される。一実施形態においては、動物は、担体タンパク質としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH、Sigma Aldrich)に結合した目的タンパク質で免疫される。
【0483】
動物の免疫処置に使用される目的タンパク質は、当該技術分野で周知である方法を用いて調製される。例えば、目的タンパク質は、組換え法又はペプチド合成法によって製造することができる。
【0484】
あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫し、次いでポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成することができる(Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、pp.59~103(Academic Press、1986)。
【0485】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら、Anal Biochem.、107:220(1980)のスキャッチャード分析によって決定することができる。
【0486】
本明細書に開示される抗体は、コンビナトリアルライブラリを用いて所望の活性を有する合成抗体クローンをスクリーニングすることによって、製造することができる。原則的には、合成抗体クローンは、当該技術分野で周知である方法を用いてファージコートタンパク質に融合される抗体可変領域(Fv)の種々の断片を提示するファージを含むファージライブラリをスクリーニングすることによって選択される。
【0487】
当業者は、「抗体の結合活性を保持するそれらの任意の断片」という用語が、完全抗体の標的抗原に結合することができる、その抗原結合又は可変領域を含み得る、抗体の一部を包含し得ることを理解されたい。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片が挙げられる。
【0488】
これらの抗体断片は、組換え技術によって、又は酵素消化などの従来手段によって、生成することができる。6種の抗体のパパイン消化は、各々が単一の結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び残留「Fc」断片を生成する。ペプシン処理は、2個の抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋する能力がある、F(ab’)2断片を生成する。「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。
【0489】
本明細書に開示されるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、当該技術分野で周知である方法を用いて調製される。
【0490】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CARがT細胞に対して内在性であるCAR T細胞又は関連組成物である。一実施形態においては、「内在性」は、細胞又は組織中で通常発現される核酸分子(例えば、cDNA、DNA又はRNA分子)又はポリペプチドを含む。
【0491】
別の一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CARがT細胞に対して外来性であるCAR T細胞又は関連組成物である。一実施形態においては、「外来性」は、細胞中に内在しない、又は人工的に過剰発現されたときに得られる機能的効果を得るのに十分なレベルで存在しない、核酸分子又はポリペプチドを含む。当業者は、「外来性」という用語が、したがって、異質な、異種の、過剰発現される核酸分子及びポリペプチドなどの細胞中で発現される任意の組換え核酸分子又はポリペプチドを包含することを理解されたい。
【0492】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、免疫細胞であり、一実施形態においては、T細胞が対象に対して自己のものであるCAR T細胞である。別の一実施形態においては、CAR T細胞は、対象に対して異種である。一実施形態においては、CAR T細胞は同種である。一実施形態においては、CAR T細胞は、汎用同種CAR T細胞である。別の一実施形態においては、T細胞は、自己、同種、又は操作された前駆体若しくは幹細胞からインビトロで誘導されたものとすることができる。
【0493】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のCAR T細胞及びアポトーシス細胞は、どちらも同じ供給源に由来する。更なる一実施形態においては、本明細書に記載のCAR T細胞及びアポトーシス細胞は、どちらも対象に由来する(
図2B)。別の一実施形態においては、本明細書に記載のCAR T細胞及びアポトーシス細胞は、異なる供給源に由来する。更に別の一実施形態においては、CAR T細胞は自己であり、本明細書に記載のアポトーシス細胞は同種である(
図3)。当業者は、同様に、アポトーシス細胞上清が、一実施形態においては自己細胞であり得るCAR T細胞と同じ供給源に由来する細胞から製造することができ、又はアポトーシス細胞上清が、CAR T細胞の供給源とは異なる供給源に由来する細胞から製造することができることを理解されたい。さらに、アポトーシス細胞上清は、異なる供給源から得ることができる。一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、アポトーシスを起こす細胞から得られる。一部の実施形態においては、アポトーシス上清は、組合せ細胞培養から得られ、アポトーシス細胞がマクロファージと共培養され、上清が収集される。
【0494】
一部の実施形態においては、ドナーは、HLA適合ドナーを含む。一部の実施形態においては、ドナーは、不適合HLAドナーである。
【0495】
当業者は、「異種」という用語が、異なる生物に由来する組織、細胞、核酸分子又はポリペプチドを包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、異種タンパク質は、レシピエントとは異なるT細胞型又は異なる種から最初にクローン化された、又は由来する、タンパク質であり、細胞又は細胞から得られる試料中には通常存在しないタンパク質である。
【0496】
当業者は、「自己」という用語が、ドナーとレシピエントが同じ人である組織、細胞、核酸分子又はポリペプチドを包含し得ることを理解されたい。
【0497】
当業者は、「同種」という用語が、同じ種の別々の個体に由来する組織、細胞、核酸分子又はポリペプチドを包含し得ることを理解されたい。一実施形態においては、同種ドナー細胞は、レシピエントとは遺伝的に異なる。
【0498】
別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞又はアポトーシス上清とイピリムマブなどの1種以上のCTLA-4遮断薬との併用療法を利用する。一実施形態においては、CTLA-4は、自己寛容を維持するのに役立つT細胞活性化の強力な阻害剤である。一実施形態においては、別の一実施形態においては抗体である抗CTLA-4遮断薬の投与は、T細胞活性化の正味の効果をもたらす。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、CAR T細胞及び1種以上のCTLA-4遮断薬を含む併用療法を利用する。
【0499】
ある場合には、本明細書に開示される方法のポリペプチド、及び該方法に使用されるポリペプチドは、無修飾アミノ酸配列に比べて少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を含む。別の場合には、ポリペプチドは、非保存的アミノ酸置換を含む。こうした場合、こうした修飾を有するポリペプチドは、こうしたアミノ酸置換のないポリペプチドに比べて安定性が高く、又は半減期が長い。
【0500】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載の様々な治療及び予防目的のための本明細書に記載の組成物の使用として表され、又は本明細書に記載の様々な治療及び予防目的のための医薬品又は治療用組成物又は組成物の調製における本明細書に記載の組成物の使用として表され得る。
【0501】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、種々の成分又はステップを含む。しかし、別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、種々の成分又はステップから本質的になり、別の成分又はステップが含まれてもよい。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物及び方法は、種々の成分又はステップからなる。
【0502】
一部の実施形態においては、「含む」という用語は、当該技術分野で既知であり得る組成物の有効性に影響する組成物の別の成分を含むことを包含し得る。一部の実施形態においては、「から本質的になる」という用語は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)を有する組成物、及びアポトーシス細胞又は任意のアポトーシス細胞上清を含む。しかし、組成物の有用性に直接必要とされない別の成分を含むこともできる。一部の実施形態においては、「からなる」という用語は、本明細書に記載の任意の形態又は実施形態において、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)を有する組成物、及び本明細書に開示されるアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清を包含する。
【0503】
一実施形態においては、「処置」は治療処置を含み、「予防」は予防策又は予防策を含み、目的は、標的とされる上記病態又は障害を予防する、又は軽減することである。したがって、一実施形態においては、処置は、疾患、障害若しくは症状又はそれらの組合せに直接影響を及ぼす、又は治癒させる、抑制する、阻害する、予防する、重症度を低下させる、発症を遅らせる、付随する症候を軽減することを含むことができる。したがって、一実施形態においては、「処置」、「改善」及び「軽減」は、とりわけ、進行の遅延、寛解の促進、寛解の誘導、寛解の増強、回復の加速、別の治療法の有効性向上若しくは別の治療法に対する抵抗性の減少、又はそれらの組合せを指す。一実施形態においては、「予防」は、とりわけ、症候の発生の遅延、疾患の再発予防、再発エピソードの数若しくは頻度の減少、症候エピソード間の潜伏の増加、又はそれらの組合せを指す。一実施形態においては、「抑制」又は「阻害」は、とりわけ、症候の重症度の低下、急性発症の重症度の低下、症候の数の減少、疾患関連症候の発生率の減少、症候の潜伏の減少、症候の改善、二次的症状の軽減、二次感染の減少、患者生存の延長、又はそれらの組合せを指す。
【0504】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物は、1回投与される。別の一実施形態においては、組成物は2回投与される。別の一実施形態においては、組成物は3回投与される。別の一実施形態においては、組成物は4回投与される。別の一実施形態においては、組成物は少なくとも4回投与される。別の一実施形態においては、組成物は4回を超えて投与される。
【0505】
一実施形態においては、本明細書に開示されるCAR T細胞は、1回投与される。別の一実施形態においては、CAR T細胞は2回投与される。別の一実施形態においては、CAR T細胞は3回投与される。別の一実施形態においては、CAR T細胞は4回投与される。別の一実施形態においては、CAR T細胞は少なくとも4回投与される。別の一実施形態においては、組成物は4回を超えて投与される。
【0506】
当業者は、「約」という用語が、示された数又は数値範囲から0.0001~5%の逸脱を包含し得ることを理解されたい。さらに、それは、示された数又は数値範囲から1~10%の逸脱を包含し得る。さらに、それは、示された数又は数値範囲から最高25%の逸脱を包含し得る。
【0507】
当業者は、単数形「1つの(a、an)」及び「前記(the)」は、特に明示しない限り、複数形を含むことを理解されたい。例えば、「薬剤」又は「少なくとも1種の薬剤」という用語は、それらの混合物を含めて複数の薬剤を含み得る。
【0508】
本願を通して、本明細書に開示される様々な実施形態は、範囲形式で示すことができる。範囲形式の記述は、単に便宜及び簡略のためにすぎず、開示範囲を頑なに制限するものと解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の記述は、可能な部分範囲すべて、及びその範囲内の個々の数値を明確に開示したものと考えるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5及び6を明確に開示したものと考えるべきである。これは、範囲の幅にかかわらない。
【0509】
数値範囲が本明細書に示されるときはいつでも、それは、示された範囲内の任意の引用数字(分数又は整数)を含むものとする。第1の示された数と第2の示された数の「間の範囲(ranging/ranges)」及び第1の示された数「から」第2の示された数「までの範囲」という句は、本明細書で区別無く使用され、第1と第2の示された数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むものとする。
【0510】
一実施形態においては、本明細書に開示される組成物は、治療用組成物である。別の一実施形態においては、本明細書に開示される組成物は、治療効果を有する。
【0511】
一実施形態においては、本明細書に開示されるのは、CAR T細胞を単独で含む組成物に比べて炎症性サイトカイン又はケモカイン放出が少ないが、CAR T細胞を単独で含む組成物に匹敵する細胞傷害性を有する組成物である。
【実施例】
【0512】
実施例1:アポトーシス細胞製造プロセス
目的:本明細書に記載の方法に使用される早期アポトーシス細胞を製造すること
方法:
早期アポトーシス細胞の集団を製造する方法は、本明細書にその全体を援用する、国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015/0275175号A1に詳細に記録されており、例えば、実施例の前の方法のセクション「ApoCell Preparation」及び「Generation of apoptotic cells」(パラグラフ[0223]~[0288])、並びに実施例11、12、13及び14を参照されたい。
【0513】
図1に示したフローチャートは、早期アポトーシス細胞の集団の製造プロセス中に使用されたステップの一実施形態の概要であり、抗凝固薬が調製ステップに含まれる。フローチャートに示されたのは、抗凝固薬が製造プロセス中に添加された時点である。国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015-0275175号A1の実施例14に詳述されているように、細胞集団を調製し、抗凝固薬を凍結の時間、インキュベーションの時間、又は凍結の時間とインキュベーションの時間に添加した。抗凝固薬ACD式Aに10U/mlヘパリンを総体積の5%ACD及び0.5U/mlヘパリンの最終濃度で補充した。抗凝固薬を含む方法は、高トリグリセリド濃度を含む血漿の存在下でも、一貫して少なくとも40%早期アポトーシス細胞の収率であった。
【0514】
上記方法のセクション及び実施例11は、抗凝固薬の非存在下であるアポトーシス細胞集団の別の一実施形態を調製する詳細を提供する。
【0515】
結果:
凍結の時間と解凍後のインキュベーション中の両方における抗凝固薬の含有は、安定な早期アポトーシス細胞の最も一貫した高収率をもたらした。安定な早期アポトーシス細胞のこの一貫した高収率は、ドナー血漿のトリグリセリドが高い場合でも得られた(国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015-0275175号A1の実施例12及び13参照)。抗凝固薬は、注入用最終早期アポトーシス細胞用量の処方に使用されるPBS媒体には添加されなかったことに留意されたい。
【0516】
下の表3は、添加抗凝固薬あり及びなしで調製された細胞集団(細胞のバッチ)の比較を示す。
【0517】
表3:抗凝固薬あり及びなしで調製されたバッチ間の細胞集団分析比較
【0518】
【0519】
抗凝固薬が添加されない早期アポトーシス細胞の調製方法は、少なくとも40%早期アポトーシス細胞、しばしば少なくとも50%早期アポトーシス細胞の早期アポトーシス細胞集団を生成した。
【0520】
実施例2:インビトロサイトカインストームモデルにおけるサイトカイン放出に対するアポトーシス細胞の効果
目的:マクロファージ活性化症候群のLPS無菌モデルにおいて誘発されるサイトカインストームにおけるサイトカインストームマーカー(サイトカインIL-6、IL-10、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9)のレベルに対するアポトーシス細胞の効果を試験する
方法:
細胞系及び培養試薬
ヒトリンパ腫細胞系Raji(eCACC、UK、アクセス番号85011429)、ヒト子宮頚部腺癌細胞系HeLa(ATCC、USA、番号:CCL-2)及びHeLa-CD19(ProMab、USA、カタログ番号PM-Hela-CD19)を、以下「完全培地」と称する、10%FBS(Gibco、ThermoFisher Scietific、南アメリカ、カタログ番号12657-029)、2mM GlutaMAX(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号35050-038)及び100U/mlペニシリン+100U/mlストレプトマイシン(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)を補充したRPMI1640(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号31870-025)中で培養した。HeLa-CD19培地に更に1μg/mlピューロマイシン(Sigma-Aldrich、USA、カタログ番号P9620)を選択的抗生物質として標準培養中に補充した。
【0521】
全細胞をコンフルエント未満の条件で維持した。Raji細胞を濃度範囲0.3×106~2×106細胞/mlで維持した。容器が90%コンフルエントに満たされたときに、HeLa及びHeLa-CD19細胞を継代した。
【0522】
初代単球を供血バフィーコート(Sheba Medical Center、イスラエル)から単離した。まず、末梢血単核球(PBMC)をフィコール密度勾配(Ficoll-Paque PLUS、GE Healthcare、UK、カタログ番号17-1440-03)で単離した。遠心分離(800xg、2~8℃、break 0で20分間)後、PBMCを含む相間を新しい試験管に移し、2mM L-グルタミン(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-605E)及び10mM Hepes(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-737B)を補充したRPMI-1640(Lonza、スイス、カタログ番号BE12-918F)、以下「洗浄培地」で洗浄し、遠心分離した(650xg、2~8℃、10分間)。ペレット化した細胞を「洗浄培地」に濃度15×106細胞/mlで再懸濁した。細胞を0.9ml液滴として35mmプレート(Corning、USA、カタログ番号430165)の中央に播いた。プレートを加湿恒温器(37℃、5%CO2)中で1.5時間インキュベートし、単球を接着させ、次いで予熱したPBS(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-516F)で3回洗浄し、他の細胞型を除去した。洗浄後、細胞を10%FBS(Gibco、ThermoFisher Scietific、南アメリカ、カタログ番号12657-029)、2mM GlutaMAX(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号35050-038)及び100U/mlペニシリン+100U/mlストレプトマイシン(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)を補充した2ml RPMI1640(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号31870-025)、別名「完全培地」中で培養した。
【0523】
全細胞系を5%CO2を含む加湿恒温器中で37℃で培養した。
【0524】
手短に述べると、製造者の指針に従って、標的細胞(HeLa又はHeLa-CD19)を単独で、又は単球と併せて培養した。標的細胞がプレートに接着した後(6時間-終夜)、培養物をy×106個のApoCellsApoCells細胞に1時間曝露し、その後にこれらの細胞をRPMIで4~5回洗浄した。ApoCell細胞の除去を光学顕微鏡下で視覚的に確認した。10ng/ml LPS(Sigma-Aldrich、USA、カタログ番号L4391)を共培養に導入し、1時間インキュベートした。インキュベーション後、RPMIを用いた3~5回の洗浄サイクルによってLPSを除去した。生存可能なCD19-CAR T細胞又はナイーブT細胞を指定E/T比(単数又は複数)で添加し、4時間インキュベートした。培地を収集するために、プレートを250xg、2~25℃で4分間遠心分離して(Centrifuge 5810R、Eppendorf、ドイツ)、細胞を沈降させた。各ウェルからの上清培地50μlを新しい平底96ウェルマイクロプレートウェル(Corning、USA、カタログ番号3596)に移し、50μl CytoTox 96試薬を各ウェルに添加した。プレートを暗所で室温で30分間インキュベートし、その後、50μl/ウェルの停止液の添加によって反応を終結させた。吸光度をInfinite F50(Tecan、スイス)を用いて492nmで読み、Magellan F50ソフトウェアを用いて取り込んだ。データ解析及びグラフ作成をMicrosoft Excel 2010を用いて行った。
【0525】
アポトーシス細胞と一緒のインキュベーション、又はアポトーシス細胞由来の上清と一緒のインキュベーション後に、サイトカイン放出の分析をLiminex技術を用いて行った。
【0526】
結果:
図9A~9Hによれば、マクロファージ活性化症候群のインビトロモデルにおいてLPSによって誘導されるサイトカインストームマーカーIL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9のレベルが有意に減少した。マクロファージ:ApoCell比1:8を満たすApocellの投与によって、培地に放出されたIL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9のレベルが有意に減少し(
図9A、9B、9C、9D、9E、9F、9G、9H)、マクロファージ:ApoCell比1:16を満たすApocellの投与によって、このモデルにおけるサイトカインIL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9の放出が実際に阻害され、又はほぼ阻害された。
【0527】
アポトーシス細胞の添加によって、マクロファージ活性化において誘導される少なくとも20種の炎症誘発性サイトカイン及びケモカインが阻害された。結果の一例を
図9A~9Hに示す。炎症誘発性サイトカイン及びケモカイン放出の共通機序は、NF-κB阻害である。
【0528】
類似条件下でのサイトカインIL-2R(IL-2受容体)レベルの検討によれば、放出されたIL-2Rレベルは、炎症誘発性サイトカインと同様には影響されず、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出の阻害は、特異的であると思われる。(
図9I)。アポトーシス細胞の添加によって、1:4及び1:8比におけるIL-2Rの放出が増加した。さらに、
図9Jによれば、アポトーシス細胞は、IL-2の放出に対して24時間影響を及ぼさなかった。IL-2受容体の活性化は、寛容性を含めた免疫系の重要な機能において本質的な役割を有すると考えられる。
【0529】
結論:癌及びCAR-19の存在下でマクロファージ活性化症候群のサイトカインストームモデルにおける早期アポトーシス細胞の添加は、炎症誘発性サイトカイン、例えば、IL-10、IL-6、MIP-1α、IL-8、TNF-α、MIP-1β、MCP-1及びIL-9を有意に減少させ、驚くべきことに阻止さえしたが、サイトカインIL-2Rレベルを増加させ、又はサイトカインIL-2Rレベルに影響を及ぼさなかった。したがって、ここでの結果によれば、炎症誘発性サイトカインは、アポトーシス細胞とのインキュベーションによって減少したが、IL-2及びIL-2Rは、早期アポトーシス細胞のインキュベーションによって同様には影響されなかった。したがって、T細胞関連サイトカインは、CAR T細胞治療+アポトーシス細胞によって影響されず、自然免疫サイトカイン、例えば、単球、マクロファージ及び樹状細胞から放出されるものは影響される。
【0530】
実施例3:CAR-T細胞有効性に対して負の効果のない、サイトカインストームに対するアポトーシス細胞の効果
目的:腫瘍細胞上のサイトカインストームマーカーサイトカイン及びCAR T細胞の有効性に対するアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞に由来する上清の効果を試験する
方法:
T4+CAR T細胞
マウスにおいてサイトカインストームを誘発すると報告された固形腫瘍モデル(van der Stegenら、2013、同書)を利用した。このモデルにおいては、T細胞は、頭頚部腫瘍、卵巣癌などの特定の固形腫瘍においてしばしば高度に上方制御されるある種のErbB二量体(T4
+CAR-T細胞)を標的にするキメラ抗原受容体(CAR)を用いて操作された。T細胞は、CD3マイクロビーズを用いて末梢血から分離されたPBMCから単離された。キメラT4+受容体を含むベクターを構築し、単離T細胞に導入して、T4+CAR T細胞を得た。ここで行われた実験では、T4+CAR T細胞をCreative Biolabs(NY USA)又はPromab Biotechnologies(CA USA)から購入した。
図4は、抗CD124モノクローナル抗体を用いてT4+CAR T細胞上の4αβキメラ受容体の表面発現を検証するフローサイトメトリー曲線である(Wilkieら、同書)。さらに、PCR手順を実施して、導入T細胞中のベクターの存在を検証した。
【0531】
SKOV3-luc細胞
SKOV3-luc卵巣腺癌組織培養細胞をCell BioLabsから購入した(cat.#AKR-232)。SKOV3-lucは、ErbB受容体を高度に発現し、T4+CAR-T細胞の標的である(van der Stegenら、2013、同書)。これらの細胞を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現するように更に操作して、細胞増殖をインビトロで、腫瘍増殖及び縮小をインビボで追跡できるようにした。
【0532】
アポトーシス細胞
アポトーシス細胞を実施例1に従って調製した。
【0533】
アポトーシス細胞上清
8百万個/ウェルのアポトーシス細胞を12ウェルプレートに播いた。24時間後に細胞を遠心分離した(290g、4℃、10分間)。上清を収集し、使用まで一定分量を-80℃で凍結した。異なる数の細胞を使用して上清を製造する。幾つかの一定分量は、濃縮上清を含む。
【0534】
単球単離
健康な適格ドナーから得られる末梢血/バフィーコートからフィコール(GE Healthcare、英国)を用いてPBMCを単離した。細胞をRPMI1640(Gibco、Thermo Fisher Scietific、MA、USA)中で濃度15×106細胞/mlにし、0.9ml液滴として35mmプレート(Corning、NY、USA)の中央に播いた。次いで、プレートを37℃で5%CO2中で1時間インキュベートした。インキュベーションの最後に細胞をPBS(Biological industries、Beit Haemek、イスラエル)で3回洗浄し、接着を光学顕微鏡によって判定した。次いで、細胞を完全培地(RPMI1640+10%熱失活FBS+1%Glutamax+1%PenStrep、すべてのGibco製)と一緒にインキュベートした。
【0535】
単球単離の別法も使用し、ヒト単核球をヘパリン処置末梢血から密度勾配遠心法によって単離した。次いで、単球をCD14+画分として磁気ビーズ分離(Miltenyi Biotec.、オーバーン、CA、USA)によってポジティブ選択し、B細胞をCD22+画分としてポジティブ選択し、T細胞をCD14-CD22-画分としてネガティブ選択することによって、単離単核球を単球、B細胞及びT細胞集団に分離した。純度は、単球で95パーセントを超えた。
【0536】
マクロファージ分化のために、接着の最後に細胞をPBSで3回洗浄し、次いでRPMI1640+1%Glutamax+1%PenStrep及び10%熱失活ヒトAB血清(Sigma、MO、USA)と一緒にインキュベートした。細胞を37℃及び5%で7~9日間インキュベートし、培地を3及び6日目に交換した。分化を光学顕微鏡により形態で判定した。
【0537】
apo+単球由来の上清
CD14+単球を上で調製したアポトーシス細胞と一緒に1:16の比で24時間培養した。単球の数は、12ウェルプレート中50万細胞/ウェルであり、アポトーシス細胞の数は、12ウェルプレート中8百万細胞/ウェルであった。24時間インキュベーション後、細胞を遠心分離した(290g、4℃、10分間)。上清を収集し、使用まで一定分量を-80℃で凍結した。同様の手順を異なる単球:アポトーシス細胞比で、及び/又はマクロファージ、樹状細胞などの別の細胞源を用いて、行うことができた。
【0538】
インビトロ培養条件
SKOV3-luc癌細胞をアポトーシス細胞又はアポトーシス上清と一緒に1時間インキュベートし、続いてT4+CAR T細胞(+/-単球-マクロファージ)と48時間共培養することによって、最初の実験を行った。
【0539】
インビボ条件をシミュレートするために、1×105個/mlのTHP-1細胞(HTCC USA)、又は単球若しくはマクロファージ若しくは樹状細胞を、200nM(123.4ng/ml)酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA:phorbol myristate acetate)を用いて72時間分化させ、次いでPMAを含まない完全培地中で更に24時間培養する。次に、癌又は腫瘍細胞、例えばSKOV3-luc細胞を24ウェルプレート中でSKOV3-luc細胞5×105個/ウェルで分化THP-1細胞上で培養する。癌又は腫瘍細胞の最初の培養後、4×105~8×105個のアポトーシス細胞(ApoCell)を培養物に1~3時間添加して、免疫寛容環境を誘導する。癌細胞とApoCellの比を各細胞型に対して最適化する。洗浄後、共培養物を10ng/ml LPSで処理し、その後、1×106個のT4+CAR T細胞(又はエフェクター/標的(E/T)比グラフによって求められる量)を添加する。各腫瘍又は癌細胞型のエフェクター/標的(E/T)比グラフを作成するために、腫瘍細胞とT4+CAR T細胞の比を変更する。
【0540】
SKOV3癌細胞傷害性を分析するために、溶解物を調製し、ルシフェラーゼ活性を48時間のインキュベーション期間後に測定した。癌又は腫瘍細胞傷害性を別の癌細胞型について48時間インキュベーション期間に時々分析する追加の実験を行う。あるいは、PromegaのCytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、cat #G1780)を使用する。
【0541】
溶解物調製
SKOV3-luc単層をPBSで洗浄して、残留血清を除去し、70μl CCLR溶解緩衝剤x1/ウェル(24ウェルプレートの場合)を添加することによって、SKOV3-luc細胞溶解物を調製した。ウェル底部を物理的にこすることによって剥離を更に促進した。15秒間ボルテックス撹拌後、溶解物を12,000gで2分間4℃で遠心分離した。上清を収集し、-80℃で貯蔵した。
【0542】
インビトロルシフェラーゼ活性
培養中のSKOV3-luc細胞におけるルシフェラーゼ活性を検出するために、Luciferase Assay System(Promega、cat.#E1501)を使用した。照度計リーダー(Core Facility、医学部、Ein Kerem、ヘブライ大学)を備えたこのキットをQuantiLum組換えルシフェラーゼ(Promega、cat.#E170A)によって較正した。612ag~61.2μg(10-20~10-9モル)を使用して、検出範囲を決定し、製造者の指針に従った。手短に述べると、20μl体積の各ルシフェラーゼ量を黒色96ウェルプレート(Nunc)のウェルに入れた。各量を3つ組で行った。100μlのLAR(Luciferase Assay Systemキットのルシフェリン基質)を各ウェルに添加し、すぐに10秒曝露して読んだ。
【0543】
ルシフェラーゼ活性の読み取りのために、溶解物を氷上で解凍し、20μlの試料を黒色96ウェルプレート(Nunc)中で培養した。各試料を二つ組で読み取った。100μlのLARを添加し、発光を10秒の曝露期間について2.5分ごとに25分間及び40秒ごとに次の10分間読み取った。
【0544】
サイトカイン分析
IL-2、IL-2受容体(IL-2R)、IL-6、IL-1α、IL-4、IL-2、TNF-αの最初の分析を行った。IL-2、IL-2受容体(IL-2R)、IL-6、IL-1α、IL-4、IL-2、TNF-α及び別のサイトカインのサイトカイン放出減少を分析するために、上清を収集し、選択されたサイトカインについてLuminex MagPixリーダー及びELISAアッセイによって調べた。
【0545】
結果:
SKOV3-luc増殖
SKOV3-luc増殖をルシフェラーゼ活性を指標として追跡して、その後の実験における標的SKOV3-luc細胞数を決定した。SKOV3-luc細胞3.8×10
4~3.8×10
5個/ウェルを24ウェルプレート(Corning)で培養し、ルシフェラーゼ活性を3日間毎日モニターした。培養された1.9×10
5個/ウェル以上の細胞は、培養から2日後にコンフルエントに達し、ルシフェラーゼ活性によって示される増殖飽和を示す(
図5)。SKOV3-luc細胞3.8×10
4~1.1×10
5個/ウェルは、培養から3日後も線形又は指数増殖期であったことに留意されたい(
図5、オレンジ、青緑色及び紫色のプロット)。負の対照(LAR基質を含まない3.8×10
5個のSKOV3-luc細胞)は、バックグラウンドレベルの読みしか示さず、SKOV3-luc細胞からの生物発光の読みがルシフェラーゼ活性に起因することを示している。
【0546】
SKOV3-luc腫瘍細胞に対するT4
+CAR-T細胞活性の検証
T4
+CAR-T細胞活性を裏付けるために、SKOV3-lucの単層を1,000,000(百万)個のT4
+CAR-T細胞又は1,000,000(百万)個の非導入T細胞に曝露した。24時間のインキュベーション後、T4
+CAR-T細胞は、SKOV3-luc増殖を非導入T細胞対照に比べて30%減少させ(
図6)、T4
+CAR-T細胞の抗腫瘍活性を示した。
【0547】
SKOV3-luc腫瘍細胞に対する独立型T4+CAR-T細胞の活性を、アポトーシス細胞曝露後の活性と比較した。
【0548】
アポトーシス細胞(ApoCell)及びアポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoMon Sup)を試験して、それらがT4+CAR-T細胞抗腫瘍活性を妨害するかどうか判定した。SKOV3-luc腫瘍細胞をアポトーシス細胞と一緒に1時間インキュベートし、続いてT4+CAR-T細胞(500,000、50万)又はT4+非導入T細胞(500,000、50万)(T4+CAR-T細胞とアポトーシス細胞の比1:2)を添加した。次いで、腫瘍細胞/アポトーシス細胞/T4+CAR T細胞を48時間共培養した。対照SKOV3-luc腫瘍細胞をT4+CAR-T細胞及びHartman溶液(アポトーシス細胞のビヒクル)と、アポトーシス細胞なしで、48時間共培養した。
【0549】
その結果によれば、48時間のインキュベーション後、T4+CAR-T細胞抗腫瘍活性は、非導入T細胞とのインキュベーションよりも優れた。同様のインキュベーションをアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清でも行った。驚くべきことに、T4+CAR T細胞抗腫瘍活性は、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清に曝露してもしなくても同等であった。(
図7)。
【0550】
CAR-T処置に起因するサイトカインストームの回復、減少又は阻害に対するアポトーシス細胞の効果
サイトカインストームを減少させるアポトーシス細胞の効果を次に調べた。IL-6は、サイトカインストームにおいて放出される原型炎症誘発性サイトカインであり(Lee DWら(2014)Blood 124(2):188~195)、しばしばサイトカインストーム応答のマーカーとして使用される。
【0551】
インビボCAR T細胞治療環境を模倣する培養を確立した。SKOV3-luc腫瘍細胞をヒト単球-マクロファージ及びT4+CAR T細胞の存在下で培養した。培地中で測定されたIl-6の濃度は、約500~600pg/mlであった。このIL-6濃度は、サイトカインストームの代表的なものである。
【0552】
予想外に、腫瘍細胞が前もってアポトーシス細胞と一緒に1時間インキュベートされた(T4+CAR-T細胞とアポトーシス細胞の比1:2)、SKOV3-luc腫瘍細胞、ヒト単球-マクロファージ、T4+CAR-T細胞の培地中で測定されたIL-6レベルは、劇的に低下した。同様に、腫瘍細胞が前もってアポトーシス細胞上清と一緒に1時間インキュベートされた、SKOV3-luc腫瘍細胞、ヒト単球-マクロファージ、T4+CAR-T細胞の培地中で測定されたIL-6レベルも、劇的に低下した。このIL-6濃度の減少は、サイトカインストームにおける減少の代表的なものである(
図8)。
【0553】
予想外に、アポトーシス細胞及びアポトーシス上清は、腫瘍細胞増殖に対するCAR-T細胞の効果を抑制せず、同時にそれらは、病的状態をもたらす主要なサイトカインとして記述されたIL-6などの炎症誘発性サイトカインを下方制御すると結論された。
【0554】
より広範囲のサイトカインを用いた分析
実験手順中には産生されないが、臨床現場においてはヒトサイトカインストーム中に確かに出現する可能なより広い範囲及びレベルのサイトカインに対する効果を更に評価するために、LPS(10ng/ml)を上で概説したSKOV3-luc培養状態に添加した。LPSの添加は、サイトカインストームレベルを指数関数的に増加させると予想される。予想どおりに、LPSの添加は、サイトカインストーム効果を増強し、その結果、IL-6レベルは約30,000pg/mlに増加した。サイトカインストーム中に高レベルで発現されることが知られている他のサイトカインは、レベルが上昇した。例えば、TNF-α(250~300pg/ml)、IL-10(200~300pg/ml)、IL1-アルファ(40~50pg/ml)及びIL-18(4~5pg/ml)。
図10に示すように、アポトーシス細胞に曝露すると、サイトカインストームの指数関数状態でもIL-6のレベルをほぼ正常レベルに劇的に低下させた。これは、臨床現場で見られる可能性はあるが、CAR T細胞を用いた実験手順では必ずしも見られない。この効果は、20~90%の減少を示した他の炎症誘発性サイトカインTNF-アルファ、IL-10、IL1-アルファ、IL-1β及びIL-18でも同様であった。アポトーシス細胞の代わりにアポトーシス細胞上清を用いたときにも同様の結果が見られた。
【0555】
IL-2及びIL-2Rに対するアポトーシス細胞の効果
SKOV3-luc細胞とT4+CAR T細胞のインキュベーション後の培養上清中で測定されたIL-2の濃度は、1084pg/mlであった。驚くべきことに、SKOC3-luc細胞をまずアポトーシス細胞と、次いでT4+CAR T細胞と一緒にインキュベートすると、IL-2の濃度が1190pg/mlに増加した。同様に、SKOV3-luc細胞とT4+CAR T細胞のインキュベーション後の培養上清中で測定されたIL-2Rの濃度は、3817pg/mlであった。驚くべきことに、SKOC3-luc細胞をまずアポトーシス細胞と、次いでT4+CAR T細胞と一緒にインキュベートすると、IL-2Rの濃度が4580pg/mlに増加した。SKOV3-luc単独では、Il-2の濃度は3.2pg/mlであり、アポトーシス細胞を添加すると、濃度は10.6pg/mlであった。SKOV3-luc単独では、Il-2Rの濃度は26.3pg/mlであり、アポトーシス細胞を添加すると、濃度は24.7pg/mlであった。
【0556】
結論
CAR-T細胞治療は、かなりの数の患者においてサイトカインストームを引き起こすと記述されている。これらの結果の示すところによれば、アポトーシス細胞及びアポトーシス細胞上清は、驚くべきことに、腫瘍細胞に対するCAR-T細胞有効性に影響を及ぼさずにサイトカインストームサイトカインマーカーを減少させた。さらに、アポトーシス細胞は、サイトカインIL-2を増加させ、CAR T細胞増殖を維持する、又は増加させることによって、CAR T細胞治療の期間を延長し得ると思われる。
【0557】
実施例4:アポトーシス細胞治療は、CAR T細胞治療を受けたマウスにおいてサイトカインストームを予防する
目的:T4+CAR T細胞有効性及びサイトカインストームマーカーサイトカインのレベルを測定するために、固形腫瘍モデル(SKOV3卵巣腺癌)におけるアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清のインビボ効果を試験する
材料及び方法
インビトロ研究
製造方法、培養方法及び上記結果を解析する方法を含めた、ErbB標的抗原を認識するT4+CAR T細胞(本明細書では「T4+CAR T細胞」と称する、SKOV3-luc細胞、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、単球、マクロファージの使用に関連するインビトロ方法並びに種々のアッセイはすべて、上の実施例1に記述されている。同じ方法をここでも使用した。
【0558】
インビボ研究
マウス
7~8週齢のSCID-ベージュマウス及びNSGSマウスをHarlan(イスラエル)から購入し、Sharett InstituteのSPF動物施設で飼育した。
【0559】
SKOV3-luc腫瘍細胞(1×106又は2×106)をSCIDベージュマウス又はNSGSマウスにPBS中のi.p.で、又は200ml Matrigel(BD Biosciences)中のs.c.で接種する。腫瘍移植を生物発光イメージング(BLI)によって注射後約14~18日目に確認し、マウスをT細胞投与前に類似信号強度のグループに分類する。
【0560】
マウスに30×106個のアポトーシス細胞をT4+CAR T細胞の投与の24時間前に、又はT4+CAR T細胞(10~30×106個のT4+CAR T細胞)の投与と同時に投与する。腫瘍増殖の後に生物発光イメージング(BLI)が続き、循環サイトカインレベルをLuminexによって測定する。
【0561】
インビボルシフェラーゼアッセイ
腫瘍増殖をホタルルシフェラーゼ活性によって毎週モニターした。手短に述べると、3mg D-ルシフェリン(E1605.Promega、USA)/マウス(100μlの30mg/ml D-ルシフェリン)をイソフルラン麻酔下のマウスにi.p.注射し、腹側画像を注射から10分後にIVIS Imaging System及びLive Image画像キャプチャーソフトウェア(どちらもPerkin Elmer、USA製)を用いて取得した。
【0562】
D-ルシフェリン注射「auto」オプションから5分後に、0.5×106個/マウスのSKOV3-luc細胞を投与したマウスの画像化によって、画像収集パラメータを画像セッションごとに選択した。キャプチャーパラメータをビニング4、F/ストップ1.2及び露光2~4分間に設定し、24×レンズを用いた。データ解析及び定量化をLive Imageソフトウェアを用いて行い、グラフをMicrosoft Excelプログラムを用いて作成した。
【0563】
インビボ細胞傷害性
T細胞のインビボ毒性を評価するために、器官をマウスから収集し、ホルマリン固定し、病理組織学的分析に供した。
【0564】
サイトカイン分析
Luminex MagPixリーダー及び/又はELISAキット、細胞数測定ビーズアレイ(Th1/Th2/Th17;BD Biosciences)を製造者によって記述されたように用いて、上清及び血清を分析する。例えば、分析は、一例においてはIL-6である炎症誘発性サイトカインとすることができるが、一実施形態においては、表1及び2に列挙した、又は当該技術分野で既知であるサイトカインのいずれかをここでは分析することができる。
【0565】
結果
SKOV3-luc腫瘍のインビボでの較正
0.5×106、1×106又は4.5×106個のSKOV3-luc細胞をSCIDベージュマウスにi.p.注射し、腫瘍増殖を追跡するために、生物発光イメージング(BLI)を「方法」に記載のように毎週行った(データ示さず)。
【0566】
マウスの臨床スコア
マウスは、最初の4週間に臨床症状を示さなかった。しかし、SKOV3-luc注射後28日目に、高用量(4.5×10
6;紫の線)投与したマウスは、着実に減量し始め(
図11A)、マウスの外観全体が悪化し、嗜眠、異常な歩調、及び全般的な活動性消失として現れた。このグループを39日目に選別し、腹部剖検を行って、腫瘍外観及びサイズを明らかにした(
図11B)。SKOV3-luc腫瘍は、大きく、固形であり、血管が形成され、やや白く光沢のある様相を呈した。1つの大きい腫瘍が、腹腔の尾側又は頭側の注射(左)側に目立った。この腫瘍は、腔の約25~75%を含み、明らかに腸を圧迫し、妨害した。それより小さい病巣も腹腔内の様々な場所に観察された。腫瘍は腹腔内に含まれ、どのマウスの体の他のどの部分にも他の腫瘍は観察されなかった。低用量(0.5×10
6)又は中用量(1×10
6)のSKOV3-lucを投与されたマウスは、SKOV3-luc注射後40日目に体重増加が停止し、着実に減量し始めた。SKOV3-luc注射後50日目に実験を終了した。
【0567】
SKOV3-luc腫瘍動力学
PBSをSKOV3-luc細胞の対照に注射した。これらのマウスは、実験を通してルシフェラーゼ活性を示さなかった(
図12、左パネル)。腫瘍検出及び増殖は、用量依存的であった。低用量(0.5×10
6個のSKOV3-luc細胞)は、注射後25日目に腫瘍を示し始め(4/5の動物)、中用量(1×10
6)注射は、注射後18日目に腫瘍を示し(4/5の動物)、一方、高用量(4.5×10
6)では、腫瘍が3/5の動物において早くも注射後11日目に検出され、18日目までにすべての動物が十分定着した腫瘍を示した(
図12及び
図13A~13D)。
【0568】
CAR T細胞治療は、サイトカイン放出症候群を誘発する
3グループの腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスに漸増用量のT4+CAR T細胞(3×106、10×106又は30×106)を投与する(i.p.又は腫瘍に直接)。最高用量では、腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスは、24時間以内に挙動が抑制され、起毛し、移動度が減少し、同時に体重が急激に減少し、48時間以内に死亡した。少なくともヒトインターフェロン-ガンマ及びマウスIL-6が、最高用量のCAR T細胞を投与されたマウスの血液試料中に検出可能である。異なる腫瘍抗原に対する高用量のCAR T細胞を投与された動物は、体重減少も行動上の変化も示さない。
【0569】
アポトーシス細胞の投与は、CAR T細胞治療によって誘発されるサイトカイン放出症候群の発生率を抑制する、又は減少させる。
【0570】
最高用量のCAR T細胞を投与された1グループのマウスに、安全で有効な用量であることが以前に実証された2.10×108個/kgのアポトーシス細胞を同時に投与する。ヒトCAR T+アポトーシス細胞を投与されたマウスは、マウスIL-6レベルがかなり低く、体重減少が少なく、死亡率が低い。
【0571】
実施例5:インビトロびまん性腫瘍モデルに対する併用免疫療法の効果
目的:癌細胞及びサイトカインストームマーカーサイトカインのレベルに対するCAR T細胞有効性を明らかにするために、癌が広範に広がり、局在も限局もしていないびまん性腫瘍モデルにおけるアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞に由来する上清の効果を試験する
方法:
CD19+T4+CAR T細胞(「CD19+CAR T細胞」)
CD19特異的CAR-T細胞をProMabから購入した(Lot#012916)。T細胞は、CARに対して30%陽性であった(製造者のFACSデータ-Fab染色による)。手短に述べると、細胞をAimV+5%熱失活FBSに解凍し、遠心分離し(300g、5分間、室温)、AimVに再懸濁させた。実験6日目に20×106個/マウスの細胞をIV注射した(70%アネキシンPI陰性、そのうち30%はCAR陽性)。
【0572】
CD19発現組換えHeLa細胞を、その細胞表面でもCD19を発現する対照細胞型として使用する。
【0573】
CD123+CAR T細胞
T4+CAR T細胞を、CARを標的にするCD123エピトープを用いても操作する(本明細書では「CD123+CAR T細胞」と称する)。
【0574】
Raji細胞、CD19発現HeLa細胞及びCD123発現白血病細胞
Raji細胞 Raji細胞をECACCから購入し(Cat.#:85011429)、完全培地(10%H.I.FBS、1%Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640)中で常法に従って培養し、3×105~3×106細胞/mlの濃度で維持した。実験1日目、0.1×106個/マウスの細胞をIV注射した。
【0575】
同様に、CD19発現HeLa細胞を実験室で作製し、CD19+CAR T細胞の標的として使用する。CD123発現白血病細胞をCD123+CAR T細胞の標的として使用する。さらに、初代癌細胞をCAR T細胞の標的として利用する。
【0576】
CD19を発現するHeLa細胞を当該技術分野で既知である方法を用いて調製した。細胞を当該技術分野で周知の通りに培養する。
【0577】
CD123は、血液悪性腫瘍における膜バイオマーカー及び治療標的である。CD123発現白血病細胞、例えば白血病芽球及び白血病幹細胞を当該技術分野で既知の通りに培養する。
【0578】
アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清及び単球単離を、実施例1に記載の通りに調製する。生成した早期アポトーシス細胞は、少なくとも50%のアネキシンV陽性及び5%未満のPI陽性細胞であった。
【0579】
マクロファージ。CD14陽性細胞から接着によって生成された。
【0580】
樹状細胞。IL4及びGMCSFの存在下で増殖されたCD14由来であった。
【0581】
フローサイトメトリー。以下の抗体を使用した:hCD19-PE(eBiosciences、Cat.#12-0198-42);mIgG1-PE(eBiosciences、Cat.#12-0198-42);hCD3-FITC(eBiosciences、Cat.#11-0037-42);mIgG2a-FITC(eBiosciences、Cat.#11-4724-82)。FACS Calibur、BDを用いて取得した。
【0582】
ナイーブT細胞。ナイーブT細胞をバフィーコートから磁気ビーズ(BD)を用いて単離し、90%ヒトAB血清及び10%DMSO中で凍結保存した。解凍及び注射は、CAR-T細胞と同じであった。
【0583】
インビトロ培養条件
細胞系及び培養試薬
ヒトリンパ腫細胞系Raji(eCACC、UK、アクセス番号85011429)、ヒト子宮頚部腺癌細胞系HeLa(ATCC、USA、番号:CCL-2)及びHeLa-CD19(ProMab、USA、カタログ番号PM-Hela-CD19)を、以下「完全培地」と称する、10%FBS(Gibco、ThermoFisher Scietific、南アメリカ、カタログ番号12657-029)、2mM GlutaMAX(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号35050-038)及び100U/mlペニシリン+100U/mlストレプトマイシン(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)を補充したRPMI1640(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号31870-025)中で培養した。HeLa-CD19培地に更に1μg/mlピューロマイシン(Sigma-Aldrich、USA、カタログ番号P9620)を選択的抗生物質として標準培養中に補充した。
【0584】
全細胞をコンフルエント未満の条件で維持した。Raji細胞を濃度範囲0.3×106~2×106細胞/mlで維持した。容器が90%コンフルエントに満たされたときに、HeLa及びHeLa-CD19細胞を継代した。
【0585】
初代単球を供血バフィーコート(Sheba Medical Center、イスラエル)から単離した。まず、末梢血単核球(PBMC)をフィコール密度勾配(Ficoll-Paque PLUS、GE Healthcare、UK、カタログ番号17-1440-03)で単離した。遠心分離(800xg、2~8℃、break 0で20分間)後、PBMCを含む相間を新しい試験管に移し、2mM L-グルタミン(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-605E)及び10mM Hepes(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-737B)を補充したRPMI-1640(Lonza、スイス、カタログ番号BE12-918F)、以下「洗浄培地」で洗浄し、遠心分離した(650xg、2~8℃、10分間)。ペレット化した細胞を「洗浄培地」に濃度15×106細胞/mlで再懸濁した。細胞を0.9ml液滴として35mmプレート(Corning、USA、カタログ番号430165)の中央に播いた。プレートを加湿恒温器(37℃、5%CO2)中で1.5時間インキュベートし、単球を接着させ、次いで予熱したPBS(Lonza、スイス、カタログ番号BE17-516F)で3回洗浄し、他の細胞型を除去した。洗浄後、細胞を10%FBS(Gibco、ThermoFisher Scietific、南アメリカ、カタログ番号12657-029)、2mM GlutaMAX(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号35050-038)及び100U/mlペニシリン+100U/mlストレプトマイシン(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)を補充した2ml RPMI1640(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号31870-025)、別名「完全培地」中で培養した。
【0586】
全細胞系を5%CO2を含む加湿恒温器中で37℃で培養した。
【0587】
CD19-CAR T細胞(ProMab、USA、カタログ番号FMC63)をAIM-V培地中で、又は凍結して、搬送した。インビトロ実験用凍結保存CAR T細胞を実験日に35~38℃浴で解凍し、5%FBS(Gibco、南アメリカ、カタログ番号12657-029)を補充した予熱AIM V培地(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号12055-091)にすぐに浸漬した。細胞を遠心分離し(300xg、室温、5分間)、予熱AIM V培地に再懸濁させることによって、DMSOを除去した。CD19-CAR+細胞集団の濃度及び生存率を、FACSCaliburフローサイトメータ(BD、USA)で読み取る抗FLAG(BioLegend、USA、カタログ番号637310)染色並びにアネキシンV及びPI染色(MEBCYTO Apoptosisキット、MBL、USA、カタログ番号4700)によって測定した。
【0588】
ナイーブT細胞単離の場合、Cobe Spectra(商標)アフェレーシス装置(Gambro BCT、USA)を用いてLeaukapheresis UnitのSOPに従ってHadassah Medical Center(Ein Kerem Campus、エルサレム、イスラエル)においてインフォームドコンセントを得た適格ドナーから収集した白血球除去輸血画分から、又はフィコール密度勾配で堆積され、800xg、2~8℃、20分間遠心分離されたバフィーコート(Sheba Medical Center、イスラエル)から、PBMCを抽出した。MagniSort Human CD3 Positive Selection Kit(eBioscience、USA、カタログ番号8802-6830-74)を用いて製造者の指針に従ってT細胞を陽性画分から単離した。T細胞を、追加の20%FBS(Gibco、ThermoFisher Scietific、南アメリカ、カタログ番号12657-029)及び5%DMSO(CryoSure-DMSO、WAK-Chemie Medical GmbH、ドイツ、カタログ番号WAK-DMSO-70)を含む(上で定義した)「完全培地」中で凍結保存し、CD19-CAR T細胞と同様に実験日に解凍した。
【0589】
LDH細胞毒性試験
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、安定細胞質ゾル酵素は、相関的に溶解される細胞によって放出される。したがって、培地中のLDHレベルを使用して、細胞傷害活性を定量化することができる。CytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、USA、カタログ番号G1780)は、培地中のLDHレベルを定量化する比色分析である。テトラゾリウム塩基質(ヨードニトロ-テトラゾリウムバイオレット、INT)を培地に過剰に導入すると、LDHは基質を赤いホルマザン生成物に変換する。形成された赤色の量は、溶解細胞数に正比例する。
【0590】
手短に述べると、製造者の指針に従って、標的細胞(HeLa又はHeLa-CD19)を単独で、又は単球と併せて培養した。標的細胞がプレートに接着した後(6時間-終夜)、培養物をy×106個のApoCell細胞に1時間曝露し、その後にこれらの細胞をRPMIで4~5回洗浄した。ApoCell細胞の除去を光学顕微鏡下で視覚的に確認した。10ng/ml LPS(Sigma-Aldrich、USA、カタログ番号L4391)を共培養に導入し、1時間インキュベートした。インキュベーション後、RPMIを用いた3~5回の洗浄サイクルによってLPSを除去した。生存可能なCD19-CAR T細胞又はナイーブT細胞を指定E/T比(単数又は複数)で添加し、4時間インキュベートした。培地を収集するために、プレートを250xg、2~25℃で4分間遠心分離して(Centrifuge 5810R、Eppendorf、ドイツ)、細胞を沈降させた。各ウェルからの上清培地50μlを新しい平底96ウェルマイクロプレートウェル(Corning、USA、カタログ番号3596)に移し、50μl CytoTox 96試薬を各ウェルに添加した。プレートを暗所で室温で30分間インキュベートし、その後、50μl/ウェルの停止液の添加によって反応を終結させた。吸光度をInfinite F50(Tecan、スイス)を用いて492nmで読み、Magellan F50ソフトウェアを用いて取り込んだ。データ解析及びグラフ作成をMicrosoft Excel 2010を用いて行った。
【0591】
フローサイトメトリー細胞毒性試験
HeLa-CD19(標的)とHeLa(control)細胞を5μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Life Technologies、USA、カタログ番号C1157)で前もって染色し、混合し、新しいプレート上で、又は単離初代単球が集合するプレート上で、培養した。標的細胞がプレートに接着した後(6時間-終夜)、培養物をy×106個のApoCell細胞に1時間曝露した。プレートをRPMIで3~5回洗浄し、懸濁ApoCell細胞が洗い流されたことを視覚的に確認した。10ng/ml LPSを共培養物に導入し、1時間インキュベートし、その後、RPMIを用いた3~5回の洗浄サイクルによってLPSを除去した。次いで、生存可能なCD19-CAR T細胞を特定のE/T比(単数又は複数)で示される共培養物に添加し、4時間インキュベートした。インキュベーション後、トリプシン-EDTA(Biological Industries、イスラエル、カタログ番号03-052-1B)を添加し、4分間37℃でインキュベートすることによって、細胞を採取した。酵素の活動を終了させるために、2~4倍の体積の「完全培地」を添加した。細胞を収集し、200xgで5分間室温で遠心分離し、100μl RPMI(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)に再懸濁させた。続いて、暗所で30分間室温でインキュベートされた抗CD19(eBioscience、USA、カタログ番号12-0198-42)に対して最初に染色した。遠心分離(290xg、1分間、2~8℃)及び300μl RPMIに再懸濁後、細胞を抗7AAD(eBioscience、USA、カタログ番号00-6993-50)に対して染色した。分析を7ADD陰性細胞(生細胞)に対して行い、生きた標的細胞(HeLa-CD19)及び生きた対照細胞(HeLa)を計算した。生きた標的細胞パーセントを生きた対照細胞パーセントで割ることによって生存パーセントを計算した。出発細胞数及び自発的標的細胞死の変動を補正するために、標的細胞パーセントとエフェクター細胞(CD19-CAR T細胞)なしで培養された対照細胞パーセントの比で生存パーセントを割った。最後に、補正生存百分率を100%から減算して細胞傷害性パーセントを求めた。
【0592】
96ウェルプレートにおいて5×104個/ウェルのRaji細胞から始まるCD19+CAR T細胞と標的Raji癌細胞の最適比を求めるために、Raji癌細胞とCD19+CAR T細胞(+/-単球-マクロファージ)を48時間インキュベートすることによって最初の実験を行った。エフェクター/標的(E/T)比プレートをその結果に基づいて構築する。
【0593】
Raji癌細胞をアポトーシス細胞又はアポトーシス上清と一緒に1時間インキュベートし、続いてCD19+CAR T細胞(+/-単球-マクロファージ)と48時間共培養することによって、併用免疫療法実験を行う。
【0594】
インビボ条件をシミュレートするために、1×105個/mlのTHP-1細胞を、200nM(123.4ng/ml)酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を用いて72時間分化させ、次いでPMAを含まない完全培地中で更に24時間培養する。次に、Raji癌細胞を24ウェルプレート中でRaji細胞5×105個/ウェルで分化THP-1細胞上で培養する。
【0595】
Raji癌細胞の最初の培養後、4×105~8×105個のアポトーシス細胞(ApoCell)を培養物に1~3時間添加して、免疫寛容環境を誘導する。癌細胞とApoCellの比を各細胞型に対して最適化する。洗浄後、共培養物をE/T比グラフに基づく所定数のCD19+CAR-T細胞で処理する。ある実験においては、10ng/ml LPSをCD19+CAR T細胞の添加前に培地に添加する。別の実験では、インターフェロンγ(IFN-γ)をCD19+CAR T細胞の添加前に培地に添加する。LPS又はIFN-γの添加は、サイトカインストームレベルを指数関数的に増加させると予想される。
【0596】
Raji癌細胞傷害性を分析するために、溶解物を調製し、生存率を48時間のインキュベーション期間後に測定する。Raji細胞傷害性を48時間インキュベーション期間に時々分析する追加の実験を行う。あるいは、PromegaのCytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、cat #G1780)を使用する。
【0597】
同様の実験をCD19発現HeLa細胞及びCD19+CAR T細胞でも行う。
【0598】
同様の実験をCD123発現白血病細胞及びCD123+CAR T細胞でも行う。
【0599】
サイトカイン分析
最初のサイトカイン分析では、培養上清中のMIP1a、IL-4、IL-2、IL-2R、IL-6、IL8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-15、INF-γ、GMCSF、TNF-αのレベルを調べる。
【0600】
追加のサイトカイン分析では、サイトカインIL-10、IL-1β、IL-2、IP-10、IL-4、IL-5、IL-6、IFNα、IL-9、IL-13、IFN-γ、IL-12p70、GM-CSF、TNF-α、MIP-1α、MIP-1β、IL-17A、IL-15/IL-15R、若しくはIL-7、又はそれらの任意の組合せのレベルを調べる。
【0601】
インビボCAR T細胞治療環境を模倣する培養を確立した。Raji Burkettリンパ腫細胞をヒト単球-マクロファージ、LPS及びCD19+CAR T細胞の存在下でアポトーシス細胞を添加せずに、又は添加して培養した。
【0602】
Raji細胞を単球及びLPSの存在下でインキュベートし、続いてナイーブT細胞(Raji+ナイーブT)、CD19+CAR T細胞(Raji+CAR T)、CAR T細胞:ApoCell1:8の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:8)、CAR T細胞:ApoCell1:32の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:32)、及びCAR T細胞:ApoCell1:64の比のCD19+CAR T細胞とアポトーシス細胞(ApoCell)(Raji+CAR T+ApoCell1:64)を添加した。GM-CSF及びTNF-α(TNF-a)の後に濃度測定を行った。
【0603】
IL-6、IL-8及びIL-13並びに他のサイトカインのサイトカイン放出減少を分析するために、上清を収集し、選択されたサイトカインについてLuminex MagPixリーダー及びELISAアッセイによって調べた。サイトカイン(マウス又はヒト)は、Luminex技術によってMAPIXシステム分析計(Mereck Millipore))及びMILIPLEX分析ソフトウェア(Merek Millipore)を用いて評価することができる。マウスIL-6Rα、MIG(CXCL9)及びTGF-β1をQuantikine ELISA(R&D systems)によって評価した。
【0604】
組織分析
骨髄及び肝臓をフローサイトメトリー及び免疫組織化学によって評価した。屠殺後、肝臓及び骨髄を組織病理学的分析用に収集した。組織を4%ホルマリンで48時間室温で固定し、次いでヘブライ大学の動物施設に提出して、処理した。処理前に骨を脱灰した。パラフィン切片をヘマトキシリン及びエオシン並びにCD19について染色した。
【0605】
IFN-γ効果
IFN-γ効果をSTAT1リン酸化と生物由来物質の両方によって評価する。
結果:
細胞毒性試験のための細胞数の較正
インビトロモデルに使用されるRaji細胞の数を求めるために、細胞毒性試験の感度限界を評価した。5×10
4~20×10
4個/ウェルのRaji細胞を96ウェルプレート中で四つ組で培養した。依然として完全に生存可能である細胞と比較される四つ組のうち1セットに対して溶解を行った。溶解は瞬時であり、溶解溶液を遠心分離直前に添加して、部分的細胞傷害性をシミュレートした。実際、全細胞量が生細胞を十分超える読みを示し、5×10
4個の細胞数は、最大の相対読みを示した(
図14、データの外挿)。したがって、後続の実験は、実験設計によって必要とされない限り、この細胞数を初期設定として使用する。
【0606】
Raji Burkettリンパ腫細胞に対するCD19+CAR-T細胞活性の検証
CD19+CAR T細胞活性を裏付けるために、Raji癌細胞の単層を1,000,000(百万)個のCD19+CAR-T細胞又は1,000,000(百万)個の非導入T細胞に曝露する。24時間のインキュベーション後、CD19+CAR-T細胞は、Raji癌細胞増殖を減少させ、CD19+CAR-T細胞の抗腫瘍活性を示す。
【0607】
Raji Burkettリンパ腫細胞に対する独立型CD19+CAR-T細胞の活性を、アポトーシス細胞曝露後の活性と比較した。
【0608】
アポトーシス細胞(ApoCell)及びアポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoMon Sup)を試験して、それらがCD19+CAR-T細胞抗腫瘍活性を妨害するかどうか判定する。Raji Burkettリンパ腫細胞をアポトーシス細胞と一緒に1時間インキュベートし、続いてCD19+CAR-T細胞(500,000、50万)又はCD19+非導入T細胞(500,000、50万)(CD19+CAR-T細胞とアポトーシス細胞の比1:2)を添加する。次いで、腫瘍細胞/アポトーシス細胞/CD19+CAR T細胞を48時間共培養する。対照Raji Burkettリンパ腫細胞をCD19+CAR-T細胞及びHartman溶液(アポトーシス細胞のビヒクル)と、アポトーシス細胞なしで、48時間共培養する。
【0609】
その結果によれば、48時間のインキュベーション後、CD19+CAR-T細胞抗腫瘍活性は、非導入T細胞とのインキュベーションよりも優れた。同様のインキュベーションをアポトーシス細胞上清でも行う。驚くべきことに、CD19+CAR T細胞抗腫瘍活性は、アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清に曝露してもしなくても同等である。
【0610】
共にインビトロでのCD19と対比したCAR改変T細胞に対するアポトーシス細胞の負の効果が、アポトーシス細胞の存在又は非存在下でCAR Tの類似のE/T比結果で見られた。
【0611】
HeLa白血病細胞に対するCD19+CAR-T細胞活性の検証
HeLa細胞は、特異的CD19発現細胞であり、それによってCAR CD19+T細胞活性の影響を受けやすくなる。さらに、非接着細胞系であるRaji細胞とは対照的に、HeLa細胞は接着性である。
【0612】
CD19
+CAR T細胞活性を裏付けるために、HeLa癌細胞の単層を1,000,000(百万)個のCD19
+CAR-T細胞又は1,000,000(百万)個の非導入T細胞に曝露した。24時間のインキュベーション後、CD19
+CAR-T細胞は、HeLa癌細胞増殖を減少させ、CD19
+CAR-T細胞の抗腫瘍活性を示す(
図15 CD19
++RPMI及びCD19
++CAR T-19細胞)。
【0613】
CD19+HeLa腫細胞に対する独立型CD19+CAR-T細胞の活性を、アポトーシス細胞曝露後の活性と比較した。
【0614】
アポトーシス細胞(ApoCell)を試験して、それらがCD19+CAR-T細胞抗腫瘍活性を妨害するかどうか判定した。HeLa細胞をアポトーシス細胞と一緒に1時間インキュベートし、続いてCD19+CAR-T細胞(500,000、50万)又はCD19+非導入T細胞(ナイーブT細胞、500,000、50万)(CD19
+CAR-T細胞とアポトーシス細胞の比1:2)を添加した。次いで、腫瘍細胞/アポトーシス細胞/CD19
+CAR T細胞を48時間共培養した。対照HeLa細胞をCD19+CAR-T細胞及びRPMI(アポトーシス細胞のビヒクル)と、アポトーシス細胞なしで、48時間共培養した。CD19
+CAR-T細胞:HeLa細胞比(E/T比)は、5~20の範囲であった(
図15)。
【0615】
図15によれば、48時間のインキュベーション後、CD19+CAR-T細胞抗腫瘍活性は、非導入T細胞(ナイーブ細胞)又は緩衝剤単独とのインキュベーションよりも優れた。同様のインキュベーションをアポトーシス細胞でも行った。驚くべきことに、CD19
+CAR T細胞抗腫瘍活性は、アポトーシス細胞に曝露してもしなくても同等であった。同様の実験をアポトーシス細胞上清でも行う。
図15は、ApoCellを添加してもしなくてもCAR T-CD19治療と同じインビトロ細胞傷害効果を示す。
【0616】
CD19+HeLa細胞と対比したCAR改変T細胞に対するアポトーシス細胞の負の効果は、アポトーシス細胞の存在下でも非存在下でも類似のE/T比で認められなかった。
【0617】
したがって、CD19+CAR T細胞の同じインビトロ細胞傷害効果が早期アポトーシス細胞を添加してもしなくても認められた。
【0618】
CAR-T処置に起因するサイトカインストームの回復、減少又は阻害に対するアポトーシス細胞の効果
【0619】
サイトカインIL-8及びIL-13は、培地中でCD19+CAR T細胞の添加前後に測定され、サイトカインストームと一致した濃度を示している。アポトーシス細胞又はアポトーシス細胞上清の添加は、培地中のIL-8及びIL-13濃度の減少を示している。
【0620】
より広範囲のサイトカインを用いた分析
実験手順中には産生されないが、臨床現場においてはヒトサイトカインストーム中に確かに出現する可能なより広い範囲及びレベルのサイトカインに対する効果を更に評価するために、LPS(10ng/ml)を上で概説したRaji細胞培養状態に癌及びCAR-19の存在下で添加した。LPSの添加は、サイトカインストームレベルを指数関数的に増加させると予想された。アポトーシス細胞への曝露は、サイトカインレベルを劇的に減少させた。
図16及び
図17の結果によれば、CD19+CAR T細胞の添加は、培地中のGM-CSF及びTNF-αのサイトカイン濃度(pg/ml)を大きく増加するが、アポトーシス細胞の存在下でGM-CSFとTNF-αの両方がかなり減少する。サイトカイン濃度の減少は、CAR T細胞とアポトーシス細胞のアポトーシス細胞比に関して用量依存的である。
【0621】
結論:
アポトーシス細胞は、CAR T細胞臨床手順に関連するサイトカインストームのサイトカインマーカーを下方制御することができた。意義深いことに、アポトーシス細胞は、CAR T細胞の腫瘍活性に対して効果を示さなかった。アポトーシス細胞は、自然免疫に由来する炎症誘発性サイトカインを減少させ、IFN-γレベル及びCAR-T細胞傷害性を損なわずにIFN-γ効果を阻害した。
【0622】
実施例6:アポトーシス細胞治療は、CAR T細胞治療を受けたびまん性癌インビボモデルにおいてサイトカインストームを予防する
目的:癌細胞に対するCAR T細胞有効性及びサイトカインストームマーカーサイトカインのレベルを測定するために、びまん性腫瘍モデルにおけるアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞に由来する上清のインビボ効果を試験する
材料及び方法
インビトロ研究
インビトロ研究のための実施例5に記載の方法を参照されたい。
【0623】
細胞及び細胞培養
Raji Burkittリンパ腫細胞(Sigma-Aldrich cat.#85011429)を製造者の指針に従って培養した。CD19+CAR T細胞、細胞培養、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、単球単離及びインビトロ測定は、上記実施例の通りである。生成した早期アポトーシス細胞は、少なくとも50%のアネキシンV陽性及び5%未満のPI陽性細胞であった。
【0624】
インビボ研究
マウス
7~8週齢のSCIDベージュマウスを(かつてHarlanとして知られた)Envigoから購入した。マウスをSPFフリー動物施設において施設のIACUC指針に従って飼育した。実験の過程において、マウスを毎日モニターし、体重を週3回測定した。後肢麻痺を示したマウスを屠殺した。屠殺後、骨髄及び肝臓をFACS分析及び組織学的処理用に収集し、血清をサイトカインプロファイリング用に-80℃で凍結した。
【0625】
インビボ実験
SCIDベージュマウス(C.B-17/IcrHsd-Prkdc-SCID-Lyst-bg、Harlan、イスラエル)をSPF条件でThe Authority for Animal Facilities、ヘブライ大学(Ein Kerem Campus、イスラエル)において、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)に従って収容した。研究は、The Hebrew University Ethics Committee for Animal Experimentsによって認可され、動物の苦痛をできるだけ最小限にした。
【0626】
(
図18A)播種性腫瘍モデルの場合、7~8週齢雌性SCIDベージュマウスに、200μl RPMI(Gibco、ThermoFisher Scietific、USA、カタログ番号15140-122)中に懸濁された1×10
5個/マウスのRaji細胞をi.v.注射した(1日目)。6日目、関連グループのマウスに200μl Hartmann溶液乳酸加リンゲル注射、Teva Medical、イスラエル、カタログ番号AWN2324)中の30×10
6個/マウスの細胞ApoCellをi.v.接種した。6日目、関連グループのマウスに、200μl AIM V中の10×10
6個/マウスの生存可能なCD19-CAR T細胞又はナイーブT細胞をi.v.接種した。対照マウスに等体積のRPMIを各処置で投与した。
【0627】
マウスを臨床適応症について調べ、週2回計量し、後肢麻痺の発生後に屠殺した。骨及び肝臓の病理学的試料をヘブライ大学のAnimal Facility Unitによって調製し、ヒトCD20(Cell Marque、USA、クローンL26、カタログ番号120M-84)に対して染色してRaji細胞を検出し、ヒトCD3(Cell Signaling Technology、USA、カタログ番号85061)に対して染色してヒトT細胞を検出した。
【0628】
ある実験においては、LPSをCD19+CAR T細胞の添加前に動物対象に投与する。別の実験では、インターフェロンγ(IFN-γ)をCD19+CAR T細胞の添加前に投与する。LPS又はIFN-γの添加は、サイトカインストームレベルを指数関数的に増加させると予想される。
【0629】
サイトカイン分析では、IL-10、IL-1β、IL-2、IP-10、IL-4、IL-5、IL-6、IFNα、IL-9、IL-13、IFN-γ、IL-12p70、GM-CSF、TNF-α、MIP-1α、MIP-1β、IL-17A、IL-15/IL-15R、若しくはIL-7、又はそれらの任意の組合せを含めて、ただしそれらに限定されないサイトカインのレベルを調べる。サイトカイン(マウス又はヒト)をLuminex技術によってMAPIXシステム分析計(Mereck Millipore))及びMILIPLEX分析ソフトウェア(Merek Millipore)を用いて評価する。マウスIL-6Rα、MIG(CXCL9)及びTGF-β1をQuantikine ELISA(R&D systems)によって評価する。
【0630】
組織分析
骨髄及び肝臓をフローサイトメトリー及び免疫組織化学によって評価する。屠殺後、肝臓及び骨髄を組織病理学的分析用に収集した。組織を4%ホルマリンで48時間室温で固定し、次いでヘブライ大学の動物施設に提出して、処理した。処理前に骨を脱灰した。パラフィン切片をヘマトキシリン及びエオシン並びにCD19について染色した。
【0631】
IFN-γ効果
IFN-γ効果をSTAT1リン酸化と生物由来物質の両方によって評価する。
【0632】
結果
CAR T細胞治療は、サイトカイン放出症候群を誘発する
3グループの腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスに漸増用量のCD19+CAR T細胞(3×106、10×106又は30×106)を投与する(i.p.又は腫瘍に直接)。最高用量では、腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスは、24時間以内に挙動が抑制され、起毛し、移動度が減少し、同時に体重が急激に減少し、48時間以内に死亡した。ヒトインターフェロン-ガンマ並びにマウスIL-6、IL-8及びIL-13が、最高用量のCD19+CAR T細胞を投与されたマウスの血液試料中に検出可能である。異なる腫瘍抗原に対する高用量のCD19+CAR T細胞を投与された動物は、体重減少も行動上の変化も示さない。
【0633】
アポトーシス細胞の投与は、CAR T細胞治療によって誘発されるサイトカイン放出症候群の発生率を抑制する、又は減少させる。
【0634】
最高用量のCD19+CAR T細胞を投与された1グループのマウスに、安全で有効な用量であることが以前に実証された2.10×108個/kgのアポトーシス細胞を同時に投与する。ヒトCD19+CAR T+アポトーシス細胞を投与されたマウスは、少なくとも1種のマウス炎症誘発性サイトカインのレベルがかなり低く、体重減少が少なく、死亡率が低い。
【0635】
CAR T細胞投与と組み合わせたアポトーシス細胞の投与は、CAR T細胞抗腫瘍活性に影響しなかった。
【0636】
図18Bによれば、CD19
+CAR T細胞を投与せずにCD19
+Raji細胞を注射したSCIDマウスの予想される死は、18~21日目であった。CD19
+CAR T細胞を投与されたマウスの40パーセント(40%)が少なくとも30日生存した(
図18青及び黄色の線)。生存者の割合は、アポトーシス細胞の添加と無関係であった(
図18)。生存マウスを30日目に屠殺した。
【0637】
結論:インビボでCD19と対比して、生存は同等であり、CAR改変T細胞に対するアポトーシス細胞の負の効果はなかった。
【0638】
IL-6、IP-10、TNF-a、MIP-1α、MIP-1βを含めた炎症誘発性サイトカインの有意な下方制御(p<0.01)が記述されている。IFN-γは下方制御されなかったが、マクロファージ及び樹状細胞に対するその効果は、リン酸化STAT1のレベルとCXCL10及びCXCL9のIFN-γ誘導発現の両方で阻害された。
【0639】
結論:
アポトーシス細胞は、自然免疫に由来する炎症誘発性サイトカインを減少させ、IFN-γレベル及びCAR-T細胞傷害性を損なわずにIFN-γ効果を阻害する。
【0640】
実施例7:アポトーシス細胞治療は、CAR T細胞治療を受けた固形腫瘍癌インビボモデルにおいてサイトカインストームを予防する
目的:癌細胞に対するCAR T細胞有効性及びサイトカインストームマーカーサイトカインのレベルを測定するために、固形腫瘍モデルにおけるアポトーシス細胞又はアポトーシス細胞に由来する上清のインビボ効果を試験する
材料及び方法
インビトロ研究
細胞及び細胞培養
CD19+CAR T細胞、TMCD28を含む第二世代CAR-T-CD19細胞を使用し、細胞培養、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、単球単離及びインビトロ測定は、上記実施例1&3&5の通りであった。生成した早期アポトーシス細胞は、少なくとも50%のアネキシンV陽性及び5%未満のPI陽性細胞であった。
【0641】
インビボ研究
マウス
7~8週齢のSCID-ベージュマウス及びNSGSマウスをHarlan(イスラエル)から購入し、Sharett InstituteのSPF動物施設で飼育した。
【0642】
固形腹腔内腫瘍を形成するために、SCIDベージュマウス又はNSGSマウスに、腹膜に接着することができるCD19発現HeLa細胞を接種した。T細胞投与前にマウスをグループに分けた。
【0643】
i.v.接種後6日目、5日目に前条件づけしたアポトーシス細胞(ApoCell)と一緒に、又はアポトーシス細胞(ApoCell)なしで、10×106個のCD19+CAR T細胞をマウスに投与した。前条件づけを受けたマウスに5×106又は30×106個のApoCellを投与した。腫瘍を毎週調査し、循環サイトカインレベルを毎週モニターし、Luminexシステムによって測定した。25種のマウスサイトカイン及び32種のヒトサイトカインをLuminex技術によって評価した。実験終了後、マウスを選別し、器官(骨髄、肝臓及び脾臓)の腫瘍の存在/サイズを(FACS及び免疫組織化学によって)調べた。
【0644】
サイトカイン分析では、GM-CSF、IFNγ、IL-1β、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL-17A、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、MIP-1α、TNFα、MIP-1β、IFNα及びIP-10を含めて、ただしそれらに限定されないサイトカインのレベルを調べた。サイトカイン(マウス又はヒト)をLuminex技術によってMAPIXシステム分析計(Mereck Millipore))及びMILIPLEX分析ソフトウェア(Merek Millipore)を用いて評価した。マウスIL-6Rα、MIG(CXCL9)及びTGF-β1をQuantikine ELISA(R&D systems)によって評価した。
【0645】
組織分析
骨髄及び肝臓をフローサイトメトリー及び免疫組織化学によって評価する。
【0646】
IFN-γ効果
IFN-γ効果をSTAT1リン酸化と生物由来物質の両方によって評価した。
【0647】
結果
CAR T細胞治療は、サイトカイン放出症候群を誘発する
3グループの腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスに漸増用量のCD19+CAR T細胞(3×106、10×106又は30×106)を投与した(i.p.又は腫瘍に直接)。最高用量では、腫瘍のないマウス及び腫瘍を有するマウスは、24時間以内に挙動が抑制され、起毛し、移動度が減少し、同時に体重が急激に減少し、48時間以内に死亡した。
【0648】
図19A~19Cのグラフは、CAR T細胞の存在の前でさえ、腫瘍からのIL-6、IP-10及び驚くべきことにTNF-αサイトカイン放出までもレベルが増加することを示す。
図19A~19Cによれば、予想外にIL-6、IP-10及びTNF-αは、CAR T細胞治療なしでも、癌細胞の存在によって増加した。CAR T細胞治療(Hela-CAR T細胞CD-19)の存在下で、サイトカインの放出は、かなり増大した。これらの結果によれば、腫瘍自体が、炎症誘発性サイトカインを放出する。
【0649】
早期アポトーシス細胞の添加の利点を評価するために、サイトカインGM-CSF、IFNγ、IL-1β、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL-17A、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、MIP-1α、TNFα、MIP-1β、IFNα及びIP-10を3回の実験で測定した。その結果によれば、マクロファージ関連サイトカインは、ApoCell投与の存在下で下方制御され、T細胞関連サイトカインレベルは、大きくは変化しなかった(表4)。
【0650】
表4:CD19発現HeLa細胞固形腫瘍、+/-CAR T細胞CD19治療、及び+/-ApoCellを含む腹膜内インビボモデルのサイトカインレベル
【0651】
【0652】
表4は、CAR T細胞投与+/-ApoCell後24時間のサイトカイン測定を示す。CAR T細胞治療の結果としての細胞傷害性は、GM-CSF、IL-10、IL-12p70、IL-6、MIP-1α、TNFα、MIP-1β及びIP-10を含めたサイトカインを上昇させ、そのレベルは、ApoCellの存在下で有意に下方制御された(p<0.05~0.0001)。これらのサイトカインは、主にマクロファージに関連する。それに対して、IL-2、IL-4、IL-13、IL15などのT細胞に関連するサイトカインのレベルは、大きく変化しなかった。
【0653】
図19A~C及び表4の結果によれば、癌及びCARに関連したCRSは、幾つかの要素を有する:サイトカインを分泌することができる腫瘍;腫瘍、CAR及び他の因子に応答する自然免疫;並びに自然免疫に影響する死を引き起こすサイトカインを分泌するCAR T細胞。ApoCellは、T細胞ともCAR T細胞とも相互作用せずに、自然免疫、主にマクロファージ、単球及び樹状細胞と相互作用して、これらのマクロファージ、単球及び樹状細胞の応答を下方制御する。
【0654】
異なる腫瘍抗原に対する高用量のCD19+CAR T細胞を投与された動物は、体重減少も行動上の変化も示さない。
【0655】
アポトーシス細胞の投与は、CAR T細胞治療によって誘発されるサイトカイン放出症候群の発生率を抑制する、又は減少させる。
【0656】
最高用量のCD19+CAR T細胞を投与された1グループのマウスに、安全で有効な用量であることが以前に実証された2.10×108個/kgのアポトーシス細胞を同時に投与した。アポトーシス細胞は、CD19に対して特異性を有するCAR改変T細胞に対してインビトロでもインビボでも負の効果を持たなかった。インビトロでアポトーシス細胞の存在下/非存在下でCAR T細胞に対して類似のE/T比が存在し、インビボで類似の生存曲線が存在した(データ示さず)。
【0657】
ヒトCD19+CAR T+アポトーシス細胞を投与されたマウスは、少なくとも1種のマウス炎症誘発性サイトカインのレベルがかなり低く、体重減少が少なく、死亡率が低かった。
【0658】
インビボでCD19と対比したCAR改変T細胞に対するアポトーシス細胞の負の効果が、アポトーシス細胞の存在又は非存在下でCAR Tの類似のE/T比結果で見られ、インビボで類似の生存曲線で見られた。
【0659】
IL-6、IP-10、TNF-a、MIP-1α、MIP-1βを含めた炎症誘発性サイトカインの有意な下方制御(p<0.01)が記述されている(データ示さず)。IFN-γは下方制御されなかったが、マクロファージ及び樹状細胞に対するその効果は、リン酸化STAT1のレベルとCXCL10及びCXCL9のIFN-γ誘導発現の両方で阻害された(データ示さず)。
【0660】
結論:
CRSは、腫瘍生物学、単球/マクロファージ/樹状細胞との相互作用、並びにCAR T細胞効果及び増殖に対する応答として含めて、幾つかの要因から発生する。アポトーシス細胞は、自然免疫に由来する炎症誘発性サイトカインを減少させ、IFN-γレベル又はCAR-T細胞傷害性を損なわずに単球/マクロファージ/樹状細胞に対するIFN-g効果を阻害する。したがって、アポトーシス細胞は、自然免疫に由来する炎症誘発性サイトカインを減少させ、IFN-γレベル及びCAR-T細胞傷害性を損なわずにIFN-γ効果を阻害した。これらの結果は、CAR-T細胞治療を用いた臨床試験におけるCRSの予防のためのApoCellの安全な使用を支持する。
【0661】
本明細書に開示されるある種の特徴を本明細書で説明し、記述したが、多数の改変、置換、変更及び均等物が当業者に現在想起されるはずである。したがって、添付の特許請求の範囲が、本明細書に開示される真の精神の範囲内のすべてのこうした改変及び変更を包含するものであることを理解すべきである。