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特許7223063静電ラップアラウンド用途のロボット塗装のシミュレーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】静電ラップアラウンド用途のロボット塗装のシミュレーション
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20230208BHJP
   B05D 1/04 20060101ALI20230208BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230208BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20230208BHJP
【FI】
B05D1/02 B
B05D1/04 A
B05D3/00 D
B05B12/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021097415
(22)【出願日】2021-06-10
(62)【分割の表示】P 2019229229の分割
【原出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021142524
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】16/235,711
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウダイ パサー
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209960(US,A1)
【文献】特開2010-274185(JP,A)
【文献】特開2004-249192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B05B 5/00- 5/16
12/00-12/14
13/00-13/06
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実世界のオブジェクトを塗装する現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を判定する、コンピュータシミュレーション方法であって、
対象期間中、前記現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを備え、合計塗料蓄積を計算することは、
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する塗料堆積速度を使用して、前記対象期間中の前記所与の表面要素上の静電塗料堆積を判定することであって、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する最大塗料堆積に到達した場合、前記静電塗料堆積が停止する、判定することと、
前記対象期間中の前記所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、
前記判定された静電塗料蓄積と前記判定された直接塗料蓄積とを合計することによって、前記対象期間中の前記所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することであって、前記判定された合計塗料蓄積は、前記現実世界のオブジェクトを塗装する前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を示す、判定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する前記塗料堆積速度の指標および前記最大塗料堆積の指標を受信することをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する複数の塗料堆積統計値を受信することであって、前記複数の塗料堆積統計値は、較正手順に従って、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンを動作させることから結果として生じる塗料厚さの測定値である、受信することと、
前記受信された複数の塗料堆積統計値に基づいて、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する(i)前記塗料堆積速度および(ii)前記最大塗料堆積の両方を判定することと、
をさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所与の表面要素に対する前記判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータを含むパラメータファイルを生成することと、
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの動作が前記現実世界のオブジェクトを塗装することを可能にするよう、前記生成されたパラメータファイルを送信することと、
をさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することをさらに備え、
前記パラメータファイルを生成することは、
塗装プロセス設定を決定して、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンを制御して、前記所与の表面要素に対する前記所望の塗料蓄積を達成することと、
前記パラメータファイルに、前記決定された塗装プロセス設定を含めることと、をさらに含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塗装プロセス設定は、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの速度、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの経路、および前記現実世界のオブジェクトと前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンとの間の距離、のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの動作が前記現実世界のオブジェクトを塗装することを可能にするよう、前記生成されたパラメータファイルを送信することは、
前記決定された塗装プロセス設定を含む前記生成されたパラメータファイルを、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに送信することをさらに含み、前記送信することは、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに、前記決定された塗装プロセス設定に従って、前記現実世界のオブジェクトを塗装させる、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
塗装プロセスの間の合計時間を構成する複数の期間中の前記所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を計算することをさらに備え、前記複数の期間中の合計塗料蓄積を計算することは、前記塗装プロセスの間の前記所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
塗装プロセスの間の合計時間を構成する複数の期間中の前記現実世界のオブジェクトを表現する前記モデルの複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することをさらに備え、前記複数の期間中の前記複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することは、前記塗装プロセスの間の前記複数の表面要素の各々に対する合計塗料蓄積を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することと、
塗装プロセス設定を決定して、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンを制御して、前記塗装プロセス中の前記複数の表面要素の各々に対する前記所望の塗料蓄積を達成することと
(i)前記複数の表面要素の各々に対する前記判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータ、および(ii)前記決定された塗装プロセス設定を含む、パラメータファイルを生成することと、
をさらに備えた、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塗装プロセス設定を決定することを繰り返して、前記塗装プロセス中の前記複数の表面要素の各々に対する前記所望の塗料蓄積を達成する、最適化された塗装プロセス設定を決定することをさらに備えた、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記判定された合計塗料蓄積の指標を表示することをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、有限要素モデルであり、前記所与の表面要素は、前記有限要素モデルの所与のテッセレーションされた要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
現実世界のオブジェクトを塗装する現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を判定するシステムであって、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が記憶されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令により、前記システムに、
対象期間中、前記現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを行わせるように構成され、合計塗料蓄積を計算することは、
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する塗料堆積速度を使用して、前記対象期間中の前記所与の表面要素上の静電塗料堆積を判定することであって、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する最大塗料堆積に到達した場合、前記静電塗料堆積が停止する、判定することと、
前記対象期間中の前記所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、
前記判定された静電塗料蓄積と前記判定された直接塗料蓄積とを合計することによって、前記対象期間中の前記所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することであって、前記判定された合計塗料蓄積は、前記現実世界のオブジェクトを塗装する前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を示す、判定することと、
を含む、システム。
【請求項15】
現実世界のオブジェクトを塗装する現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を判定する、プログラム命令を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラム命令は、プロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに、
対象期間中、前記現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを行わせ、合計塗料蓄積を計算することは、
前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する塗料堆積速度を使用して、前記対象期間中の前記所与の表面要素上の静電塗料堆積を判定することであって、前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンに対する最大塗料堆積に到達した場合、前記静電塗料堆積が停止する、判定することと、
前記対象期間中の前記所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、
前記判定された静電塗料蓄積と前記判定された直接塗料蓄積とを合計することによって、前記対象期間中の前記所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することであって、前記判定された合計塗料蓄積は、前記現実世界のオブジェクトを塗装する前記現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積特性を示す、判定することと、
を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、コンピュータプログラムおよびシステムの分野、具体的には、コンピュータ支援設計(CAD);コンピュータ支援エンジニアリング(CAE);3Dコンピュータグラフィックモデリングおよびシミュレーション;製造プロセスのモデリング、シミュレーション、解析、および最適化;製造;ならびに産業用ロボットなどの製造資源の利用プランニングおよびプログラミングに関する。
【背景技術】
【0002】
多数のシステムおよびプログラムが、部品、部品のアセンブリ、ならびにシステムの設計およびシミュレーションのために市場で提供されている。CADシステムは、ユーザが、オブジェクト、オブジェクトのアセンブリ、またはシステムの複雑な3次元モデルを構築および操作することを可能にする。したがって、CADシステムは、エッジまたはラインを使用して、特定の場合にはフェースを用いて、モデル化されたオブジェクトおよびシステムの表現を提供する。ライン、エッジ、フェース、またはポリゴンは、様々な方法、例えば、非一様有理Bスプライン(NURBS)で表現され得る。
【0003】
CADシステムは、モデル化されたオブジェクトの部品または部品のアセンブリを管理し、それらは、主にジオメトリの仕様である。特に、CADファイルは、仕様を含み、そこからジオメトリが生成される。ジオメトリから、表現が生成される。仕様、ジオメトリ、および表現は、単一のCADファイル、または複数のCADファイルに記憶される。CADシステムは、モデル化されたオブジェクトを設計者に示すためのグラフィックツールを含み、これらのツールは、複雑なオブジェクトの表示専用である。例えば、アセンブリは、数千個の部品を含み得る。CADシステムは、オブジェクトのモデルを管理するために使用することができ、それらは、電子ファイルに記憶されている。
【0004】
CADおよびCAEシステムの出現は、オブジェクトの幅広い表現の可能性を可能にする。1つのかかる表現は、有限要素モデル(FEM)である。有限要素解析(FEA)モデル、FEM、有限要素メッシュ、およびメッシュという用語は、本明細書では互換的に使用されている。FEMは、典型的には、CADモデルを表現し、したがって、1つ以上の現実世界の部品またはアセンブリ全体を表現し得る。FEMは、メッシュと称されるグリッドを作成するために相互接続されている、ノードと称されるポイントのシステムである。
【0005】
FEMは、FEMが表現する基礎となるオブジェクトまたは複数のオブジェクトのプロパティを有するような方法で、プログラムされてもよい。FEM、または他のかかるCADあるいはCAEモデルは、かかる方法でプログラムされている場合、モデルが表現するオブジェクトのシミュレーションを実行するために使用され得る。例えば、FEMは、車両の内部空洞、構造体を囲む音響流体、ならびに、あらゆる現実世界のオブジェクトおよびシステムを表現するために使用され得る。所与のモデルは、オブジェクトを表現し、それに応じてプログラムされている場合、現実世界のオブジェクト自体、および現実世界のオブジェクトと他のオブジェクトとの間の相互作用をシミュレーションするために使用され得る。例えば、ステントを表現するFEMを使用して、実際の医療現場でのステントの使用をシミュレーションし得る。
【0006】
同様に、CAD、CAE、およびFEMモデルを使用して、モデルが表現するオブジェクトを作成する、すなわち、製造するための設計および方法を改善することができる。これらの改善箇所は、オブジェクトの設計の変更、またはオブジェクトを作成する方法の変更を識別するために、モデル、例えば、FEMモデルを使用して、一連のシミュレーションを行う最適化技術など、シミュレーション技術の使用によって識別され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3Dコンピュータグラフィックシミュレーション方法および技術を、製造ワークセルおよびプロセスの製造に適用して、製造プロセスをシミュレーションすることができる。シミュレーションの結果は、工場現場にダウンロードすることができ、製造資源、例えば、産業用ロボットを駆動することができる。産業塗装用途の場合、産業用ロボットおよび機械を使用して、工業製造中に、噴霧材料、例えば、塗料を塗布する。実施形態は、塗装のために使用されるものとして本明細書に記述されているが、実施形態は、そのように限定されず、任意の噴霧材料、レイヤ、コーティングなどに関して使用され得ることに留意されたい。
【0008】
製造塗装プロセスを計画するために、現在のシミュレーションソフトウェア用途では、産業用ロボットを使用する製造プロセス、および結果として生じる、予想され得る塗料の堆積を、グラフィカルにモデル化およびシミュレーションすることが可能である。塗装プロセスのシミュレーションおよびプランニングは、塗料および塗装ガンの特性、塗装プロセスの設定、塗装されている工業製品および部品の3D幾何学モデル、および塗料を塗布するために使用される産業用ロボットの動作命令プログラムに基づいている。シミュレーションの結果を使用して、塗装プロセス設定およびロボット動作プログラムを確定および最適化し、塗料が複雑な幾何学オブジェクト(複数可)に塗布されているときに、塗料の所望の均一性および堆積の厚さを達成することができる。確定されたロボット動作プログラムは、工場現場のロボットにオフラインプログラムとしてダウンロードすることができ、したがって、実際の製造プロセスを設定するのに必要な時間と試験を省くことができる。
【0009】
塗装プロセスをシミュレーションするための方法は存在するが、既存の方法は、塗料の直接流から生じる塗装をシミュレーションおよびモデリングすることに限定され、既存の方法は、ラップアラウンド効果から生じる塗料堆積をシミュレーション、モデリング、プランニング、および実行しない。本発明の実施形態は、この問題を解決し、塗料堆積をモデリングおよびシミュレーションするための、ならびに、ロボットおよび塗装機械を制御して製造現場の現実世界のオブジェクトを塗装するための改善された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つのかかる例示的な実施形態は、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに関する、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標を受信することによって始まる、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするためのコンピュータ実装方法を提供する。実施形態では、これらの「指標」は、塗料堆積速度および最大塗料蓄積の値および/または範囲を設定する閾値である。方法は、仮想環境における、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積を表現することによって継続される。かかる実施形態では、仮想環境における塗料堆積を表現することは、対象期間中、現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを含む。表面要素の合計塗料蓄積を計算することは、(1)塗装ガンの噴霧ゾーン内に、塗料粒子が所与の表面要素に到達するためのラップアラウンド経路がある場合、塗料堆積速度の指標を使用して、対象期間中の所与の表面要素上のラップアラウンド塗料蓄積を判定することであって、最大塗料蓄積に到達した場合、ラップアラウンド塗料蓄積が停止する、判定することと、(2)対象期間中の所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、(3)判定されたラップアラウンド塗料蓄積と、判定された直接塗料蓄積と、を合計することによって、対象期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することと、を含む。次に、方法は、所与の表面要素に対する判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータを含むパラメータファイルを生成することであって、生成されたパラメータファイルは、現実世界のオブジェクトを塗装するための、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの正確な動作を可能にする、生成することによって、継続する。
【0011】
一実施形態は、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することをさらに含み、かかる実施形態では、パラメータファイルを生成することは、塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積を達成することと、パラメータファイルに、決定された塗装プロセス設定を含めることと、をさらに含む。かかる例示的な実施形態は、決定された塗装プロセス設定を含む生成されたパラメータファイルを、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに送信することをさらに含んでもよく、送信することは、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに、決定された塗装プロセス設定に従って、現実世界のオブジェクトを塗装させる。例示的な実施形態によれば、塗装プロセス設定は、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの速度、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの経路、および現実世界のオブジェクトと所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンとの間の距離のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
代替的な実施形態は、塗装プロセスパラメータを受信することを含む。かかる実施形態では、塗装プロセスパラメータは、塗料パラメータ、位置パラメータ、および較正パラメータのうちの少なくとも1つを含む。また、さらに別の実施形態では、受信された塗装プロセスパラメータは、ラップアラウンド塗料蓄積および直接塗料蓄積を判定するためのシミュレーションモデルで使用される。
【0013】
別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を計算する。かかる実施形態では、複数の期間中の合計塗料蓄積を計算することは、塗装プロセスの所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定する。さらに別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の現実世界のオブジェクトを表現するモデルの複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算する。この実施形態では、複数の期間中の複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することは、塗装プロセスの複数の表面要素の各々に対する合計塗料蓄積を判定する。かかる実施形態は、複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することをさらに含んでもよく、パラメータファイルを生成することにおいて、方法は、塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成することと、パラメータファイルに、決定された塗装プロセス設定を含めることと、をさらに含む。さらに別の実施形態は、塗装プロセス設定を決定することを繰り返して、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成する、最適化された塗装プロセス設定を決定することをさらに含む。
【0014】
方法の一実施形態は、生成されたパラメータファイルに基づいて、判定された合計塗料蓄積の指標を表示することをさらに含む。さらに別の実施形態によれば、モデルは、有限要素モデルであり、所与の表面要素は、有限要素モデルの所与のテッセレーションされた要素である。
【0015】
また別の実施形態は、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするシステムを対象とする。例示的なシステム実施形態は、プロセッサと、コンピュータコード命令が記憶されたメモリと、を含む。コンピュータコード命令を備えるプロセッサおよびメモリは、システムに、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに関する、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標を受信するように構成されている。システムはまた、仮想環境における、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積を表現するように構成されており、表現することは、対象期間中、現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを含む。かかる実施形態では、合計塗料蓄積を計算することは、(1)塗装ガンの噴霧ゾーン内に、塗料粒子が所与の表面要素に到達するためのラップアラウンド経路がある場合、塗料堆積速度の指標を使用して、対象期間中の所与の表面要素上のラップアラウンド塗料蓄積を判定することであって、最大塗料蓄積に到達した場合、ラップアラウンド塗料蓄積が停止する、判定することと、(2)対象期間中の所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、(3)判定されたラップアラウンド塗料蓄積と、判定された直接塗料蓄積と、を合計することによって、対象期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することと、を含む。さらに、続けると、システムは、所与の表面要素に対する判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータを含むパラメータファイルを生成するように構成されている。かかる実施形態では、生成されたパラメータファイルは、現実世界のオブジェクトを塗装するための、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの正確な動作を可能にする。
【0016】
システムの別の実施形態では、コンピュータコード命令を備えるプロセッサおよびメモリは、システムに、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することようにさらに構成されており、パラメータファイルを生成することにおいて、システムは、(i)塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積を達成することと、(ii)パラメータファイルに、決定された塗装プロセス設定を含めることと、を行うようにさらに構成されている。一実施形態によれば、システムは、決定された塗装プロセス設定を含む生成されたパラメータファイルを、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに送信するようにさらに構成されており、送信することは、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに、決定された塗装プロセス設定に従って、現実世界のオブジェクトを塗装させる。
【0017】
システムの別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を計算し、複数の期間中の合計塗料蓄積を計算することは、塗装プロセスの所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定する。システムのさらに別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の現実世界のオブジェクトを表現するモデルの複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算する。かかる実施形態では、複数の期間中の複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することは、塗装プロセスの複数の表面要素の各々に対する合計塗料蓄積を判定する。複数の表面要素に対する合計塗料蓄積を計算する別の実施形態は、複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することと、パラメータファイルを生成することにおいて、(1)塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成することと、(2)パラメータファイルに、決定された塗装プロセス設定を含めることと、をさらに含む。かかるシステムの実施形態は、塗装プロセス設定を決定することを繰り返して、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成する、最適化された塗装プロセス設定を決定するように、さらに構成されてもよい。
【0018】
システムの別の実施形態では、コンピュータコード命令を備えるプロセッサおよびメモリは、システムに、生成されたパラメータファイルに基づいて、判定された合計塗料蓄積の指標を表示させるように、さらに構成されている。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態は、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするための、クラウドコンピューティング実装を対象とする。かかる実施形態は、ネットワークを介して1つ以上のクライアントと通信しているサーバによって実行されるコンピュータプログラム製品を対象とする。かかる実施形態では、コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに関する、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標を受信させる、プログラム命令を具体化、または他の方法で含むコンピュータ可読媒体を含む。さらに、かかるクラウドコンピューティング環境では、プログラム命令は、実行されるとき、プロセッサに、仮想環境における、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積をさらに表現させ、表現することは、対象期間中、現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを含む。かかる実施形態では、合計塗料蓄積を計算することは、(1)塗装ガンの噴霧ゾーン内に、塗料粒子が所与の表面要素に到達するためのラップアラウンド経路がある場合、塗料堆積速度の指標を使用して、対象期間中の所与の表面要素上のラップアラウンド塗料蓄積を判定することであって、最大塗料蓄積に到達した場合、ラップアラウンド塗料蓄積が停止する、判定することと、(2)対象期間中の所与の表面要素上の直接塗料蓄積を判定することと、(3)判定されたラップアラウンド塗料蓄積と、判定された直接塗料蓄積と、を合計することによって、対象期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定することと、を含む。さらに、クラウドコンピューティング環境では、プロセッサは、所与の表面要素に対する判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータを含むパラメータファイルを生成するように、構成されており、生成されたパラメータファイルは、現実世界のオブジェクトを塗装するための、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの正確な動作を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
前述は、類似の参照文字が、異なる図にわたって同じパーツを言及する添付図面に図示する通り、例示的な実施形態に関する、より具体的な以下の記載から明らかとなるであろう。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、実施形態を図示することに重点が置かれている。
【0021】
図1】実施形態を使用してシミュレーションされ得る、塗装ガンの噴霧塗料形状を例解する。
図2】一実施形態で採用され得る、塗装ガン較正セットアップを描写する。
図3】一実施形態の塗装ガン較正のステップおよび結果として生じる較正測定値を例解する。
図4】一実施形態による塗装ガン較正のステップおよび結果として生じる較正測定値を表現する。
図5】一実施形態で使用される塗装ガンの直接塗料流ストリームを概念的に描写する。
図6】一実施形態で使用される塗装ガンの静電塗料流を概念的に描写する。
図7】実施形態を使用してシミュレーションし得る、塗装ガンの直接および静電塗料流ストリームの重ね合わせを例解する。
図8】一実施形態による、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするための方法のフローチャートである。
図9】実施形態において採用され得る、合計塗料蓄積を計算するための方法のフロー図である。
図10】実施形態において採用され得る、静電塗装ガン較正方法のグラフィカルな描写である。
図11図10に描写した塗装ガン較正技術の拡大描写である。
図12】実施形態によって採用される較正方法で生じる、正面および後面塗料堆積を例解する。
図13】実施形態で使用される塗装ガン較正パラメータが入力される、グラフィカルユーザインターフェースを描写する。
図14】実施形態で使用される具体的なパラメータが入力される、グラフィカルユーザインターフェースを描写する。
図15】A、B、Cはそれぞれ、実施形態で表示され得る塗装シミュレーションの例示的結果の、可能性のある変化を例解する。
図16】一実施形態による、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするための、コンピュータシステムの簡略ブロック図である。
図17】本発明の一実施形態が実装され得るコンピュータネットワーク環境の簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例示的な実施形態についての記載は、以下の通りである。
【0023】
本明細書に引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示は、その全体が参照により援用される。
【0024】
一般的に、実施形態は、現実世界のオブジェクトの静電塗装をシミュレーションするための機能を提供する。既存のモデリングおよびシミュレーションアプローチは、塗装ガンが、塗装ロボットによって移動および操作されると、塗装される製品および部品が、塗装ガンから出てくる塗料ストリームの直接流により影響を受ける、エアブラシ塗装および静電回転ブラシ塗装タイプの塗布に限定される。現在のアプローチは、塗料特性の測定および塗装ガンの較正に基づいており、その後に、流れジオメトリ、流量の保存、および固形分の量に基づいてシミュレーションされた塗料流の影響の塗装ガン較正実験パラメータを外挿する、数学的モデルを使用したシミュレーションが続く。しかしながら、特定の静電塗装用途の場合、噴霧される塗料は、荷電塗料噴霧粒子と塗装されている電気的に接地された部品との間の静電引力の効果により、塗装される部品の背面に回り込んで流れることが可能である、および流れることが予想される。実施形態は、かかる「ラップアラウンド」塗装用途における、部品の複数面上の塗料堆積を予測するための革新的な手法を提供する。既存の3Dソフトウェアモデリングおよびシミュレーションアプローチは、かかる機能を提供しない。
【0025】
実施形態は、静電塗装ガンを含むロボットセットアップの革新的な較正試験、ならびに塗装シミュレーションモデルおよび堆積計算のマッチング拡張を採用することにより、ラップアラウンド用途の静電塗装のシミュレーションの技術的問題を解決する。実施形態は、静電塗布中の塗装のシミュレーションを、塗料堆積のための2つの重ね合わせた機構に分解することに基づいている。第1の堆積機構は、塗料流線が、既知の表面法線を有する数値的に管理可能なテッセレーションされた領域に離散化された、塗装表面と交差する、塗料流線の幾何学的投影だけでなく、塗料量および固形分率の保存に基づいた従来のアプローチである。第2の堆積機構は、塗料噴霧流線によって直接影響を受けない場合であっても、塗装部品のすべての領域(側面など)上に発生する帯電塗料の静電沈着である。塗装ガンの革新的な新しい較正実験により、この第2の堆積機構を定量化することができ、塗装モデルおよび堆積シミュレーションは、上記の2つの要因(直接および静電)を組み合わせて、ラップアラウンド塗布中の静電塗装のシミュレーションのための計算解を提供することができる。
【0026】
このように、実施形態は、静電塗装用途の塗料堆積のシミュレーションおよび解析を可能にし、塗装されている荷電塗料噴霧粒子と塗装されている電気的に接地された部品との間の静電引力の効果により、噴霧される塗料が塗装される部品の背面に回り込んで流れることが可能である、および流れることが予想される。このタイプの機能は、既存のロボット塗装用途では、現在、モデル化、およびシミュレーションされていない。
【0027】
噴霧塗装ガンの従来の塗装シミュレーションは、流量の保存、および塗料流体内の固形分量の保存を利用するアプローチに基づいている。塗料堆積計算は、噴霧コーンの実験的に判定された特性、および塗装される表面への噴霧の幾何学的投影に基づいている。
【0028】
図1は、本明細書に記載の方法を使用してシミュレーションされ得る、塗装ガンの噴霧コーン101aおよび101bを描写する。噴霧コーン101aは、エアブラシ塗装ガン用であり、噴霧コーン101bは、静電回転ベル塗装ガン用である。噴霧コーン101aは、楕円形基部102aを有し、噴霧コーン101bは、円形基部102bを有する。噴霧コーンはまた、最大高さを有するように構成されてもよく、すなわち、噴霧コーンは、特定の距離のオブジェクトに到達するようにのみ構成されてもよい。一実施形態では、噴霧コーンの高さは、噴霧の効果を特定の最大切断範囲に制限するように、ユーザによって定義されている。実施形態では、基部の特性は典型的には、シミュレーションされている実際の現実世界の塗装ガンの較正実験に基づいて、判定されている。
【0029】
本明細書において以下に記載されるように、直接塗料流蓄積のための典型的な較正実験は、塗装ガンを使用して、一定の高さでストライプを塗装することを伴う。較正試験は、直交方向で2回行われ、よって、2つのストライプの幅は、噴霧コーンの楕円形基部の外径および内径を画定する。塗装ガン較正実験を行った後に測定された、2つの正規直交噴霧堆積確率分布の畳み込みにより、噴霧コーン内部の塗料厚さの分布が推測される。実施形態において実装された、直接塗料蓄積較正実験に関するさらなる詳細は、図2~4に関連して、以下に記載されている。実施形態はまた、静電塗料蓄積のための較正方法も採用することができる。静電塗料蓄積較正実験に関するさらなる詳細は、図10~12に関連して、以下に記載されている。
【0030】
直接塗料蓄積を判定/シミュレーションする場合、最初に、処理される特定の表面三角形(オブジェクトを表すモデルの)が、シミュレーションされる時間ステップにおいて噴霧コーン寸法内にあるかどうかについて判定される。シミュレーションされる時間ステップ中に、特定の表面三角形が噴霧コーン内にあると判定した後、時間ステップ中の三角形上に堆積される塗膜の厚さが計算される。塗料厚さ計算は、塗装ガンの実験的に測定された特性の数学的外挿と組み合わされた、幾何学的噴霧投影の概念に基づいている。これらの計算は、塗装ガン較正特性、塗装ガン流量、塗料内の固形分率、ユーザ定義の塗装ガン効率、塗装される表面三角形に対する塗装ノズルの距離および位置、ならびに噴霧の方向に対する表面三角形の位置および法線方向などの、シミュレーションパラメータを含む。時間ステップ中の三角形の計算された堆積厚さは、次いで、塗装される表面のこの三角形に対する、進行中のシミュレーションの膜厚の累積合計に追加される。
【0031】
典型的なエアガンタイプのシミュレーションのための塗装ガン較正実験、すなわち、直接塗料蓄積をシミュレーションするための特性を判定するために使用される較正実験は、シミュレーションされるエアガンを使用して塗装された、平面上の試験塗装ストライプの断面を測定することに基づいている。図2は、塗料噴霧コーン225を有する塗装ガンが試験プレート226に配向されている、典型的な較正セットアップ220の3つの図221、222、および223を有する。
【0032】
図2に描写する塗装ガン較正実験の間、塗装ガンは、動作の方向にストライプで塗装されることになる大きな平坦な試験面226の上を、一定の高さで、定速で、試験ロボットによって移動される。試験は、既知の塗料流量で行われ、乾燥された塗装ストライプは、ストライプに垂直に複数のポイントで測定され、特定の塗装ガンを特徴付ける堆積プロファイルを識別する堆積厚さのセットを集計する。試験は、2つの塗装ストライプが、統合すると、その特定のエアガンの効果的な堆積特性全体を定義するように、直交方向に2回行われる。塗料厚さのこのタイプの2次元分布は、2つの正規直交方向の試験塗装から生じる塗料堆積を測定することから生じる、2つの正規直交噴霧堆積確率分布の畳み込みによって、推測される。
【0033】
エアブラシ塗装ガンからの噴霧は、非対称であり得、したがって、直接塗料蓄積シミュレーションの較正実験は、2つのストライプ、つまり、X方向のものおよびY方向のものを塗装することから構成されている。静電回転ベル塗装ガンによって噴霧された塗料は、対称であり、したがって、X方向の1つの試験パスのみが必要である。エアブラシ塗装ガンの場合、XおよびY方向の2つの測定された試験プロファイルに基づいて、塗料噴霧は、楕円形のコーンとして可視化される。静電塗装ガンの塗料噴霧は、側面図では放物線状であり、平面図では円形であるように可視化される。一実施形態では、シミュレーション中の直接塗料堆積は、シミュレーションのための塗料プロファイルの設定、ならびに、ロボット動作、ブラシの位置合わせおよび距離、塗装部品形状および表面曲率などの他のすべての効果によって修正された、これらの塗料およびブラシの特性を外挿することによって、計算される。シミュレーション塗料プロファイル設定の選択および結果は、以下にさらに記載されている。
【0034】
直接塗料蓄積較正試験は、このタイプのXおよびYパスのペアを用いて行われ、したがって、塗装ブラシの堆積挙動は、2つの正規直行確率分布の形態で、表現することができ、これは、次いで、シミュレーション中に数学的に畳み込まれ、外挿される。固定された塗装ガンを用いた実際の塗料堆積測定実験を行うことができないため、試験中、ロボットは、一定の速度で移動され、それにより、塗料量流量を、測定された塗料厚さの断面積に関連付けることを可能にする。塗料量の保存により、XおよびY試験は、同じ速度で行われるため、その場合、XおよびYプロファイルの下の領域は、同一であるべきである。しかしながら、実験誤差のため、測定されたXおよびYプロファイル領域は、わずかに異なる可能性が高く、そのため、一実施形態では、XおよびYプロファイルは、正規化される。較正情報が判定されると、一実施形態はまた、結果として得られる、塗装試験の計算された有効ガン移動効率を計算および表示することができる。この効率は、実験後に塗装試験面上に塗布されることになると測定された、噴霧された塗料(塗料固形分の観点で)の割合を表す。表面に塗布されない塗料固形分の割合は、拡散および過剰噴霧となって失われたと予想される。
【0035】
図3および4は、各々、塗装ガンをy方向330に移動する、および塗装ガンをx方向440に移動することによる、塗装ガン較正を判定するための直接塗料蓄積較正実験を示す。図3は、x軸332の塗料厚さを判定するための較正セットアップ330を描写する。セットアップ330では、塗装ガンは、y方向331に沿って移動され、塗料は、プレート336上に堆積され、それは、断面338を有する塗装ストライプ337を生成する。断面338は、位置339で測定され、ストライプ337のx軸332の塗料厚さを判定する。図4は、y軸441の塗料厚さを判定するための較正セットアップ440を描写する。セットアップ440では、塗装ガンは、x方向442に沿って移動され、塗料は、プレート446上に堆積され、それは、断面448を有する塗装ストライプ447を生成する。断面448は、位置449で測定され、ストライプ447のy軸441の塗料厚さを判定する。位置339および449で得られた測定値は、直接塗料蓄積を判定するための実施形態で使用される。
【0036】
例解すると、一実施形態によれば、シミュレーション中に、数学的外挿アプローチを用いて、塗装されている幾何学的表面上の各テッセレーションされた有限要素三角形に対する、各時間ステップにおける塗料蓄積を計算するために、塗装ガン較正測定値が使用される。例示的な外挿アプローチは、シミュレーションされる時間の所与のインスタンスにおける、シミュレーションされた塗装ガンの場所に対する、塗装されるシミュレーションされた要素の場所を使用して、要素のノズルからの相対距離および傾きを計算する。次いで、この計算を使用して、予想された塗料流ストリーム線に従って、実際の塗装ガン較正実験で測定された塗装ストライプ上のポイントに、塗装されるシミュレーションされたポイントをマッピングする。次いで、計算を続けると、シミュレーションされるシステムのすべてのパラメータが、較正実験で使用されたパラメータと同じである場合、シミュレーションでの塗料堆積厚さは、実験での塗料堆積と一致する。
【0037】
しかしながら、シミュレーション条件、すなわちパラメータが、較正実験で使用された条件とは異なる場合、計算された堆積を調節するために外挿を実行する必要がある。外挿を実行すると、計算された塗料堆積は、シミュレーションと実験とを比較することによって変化する。例示的な外挿は、(1)塗料流量の比較に直接比例して堆積を修正することと、(2)塗料中の固形分率の比較に直接比例して堆積を修正することと、(3)塗装ガン効率の比較に直接比例して堆積を修正することと、(4)ノズルから塗装されたポイント/要素までの距離の2乗の比較に反比例して堆積を修正することと、(5)ノズルから表面に到達する塗料流ストリームの方向に対する、シミュレーションされた有限要素の法線方向との間の角度の余弦の比較に反比例して堆積を修正することと、を含む。
【0038】
さらに、例えば、シミュレーションされる塗装ガンが、円形基部を有する噴霧コーンを有する場合、較正実験では単一のストライプのみが塗装される必要があり、実施形態では単一のセットの測定が行われ、使用されることに留意されたい。
【0039】
塗装シミュレーションおよび実験的較正のための上記の方法は、塗装ガンから、塗装されている対象オブジェクトへの塗料の直接流を考慮しているだけである。本明細書に記載の実施形態は、通常の直接噴霧塗装効果に加えて、塗装の静電効果をシミュレーションおよび判定する。
【0040】
図5は、部品551を塗装することを例解する側面図550であり、ここでは、直接塗料流のみが描写されている。図550では、塗装ガン552は、塗料ストリーム線554からなる噴霧コーン553を用いて、塗料を部品551に噴霧する。さらに、図550に描写されるように、塗料噴霧は、切断範囲555で、例えば、塗料が停止すると推測される、塗装ガンからの距離で停止される。
【0041】
図6は、部品551を塗装することを例解する側面図560であり、ここでは、静電塗料堆積のみが描写されている。図560では、塗装ガン552は、噴霧コーン553を用いて、塗料を部品551に噴霧し、静電塗料堆積562は、部品551上に蓄積する。さらに、図550に描写されるように、図560では、塗料噴霧は、切断範囲555で停止される。
【0042】
図7は、部品551を塗装することを例解する側面図570であり、ここでは、直接塗料堆積および静電塗料堆積の両方が描写されている。図570において、塗装ガン552は、噴霧コーン553を用いて、塗料を部品551に噴霧し、塗料は、部品551上に直接流554を介して、および静電堆積562を介して蓄積する。本発明の実施形態は、直接塗料流554および静電堆積562の両方を考慮することにより、静電塗装ガンの塗料堆積をシミュレーションおよび判定する。
【0043】
静電塗装プロセスは、塗装ガンに電圧を印加することを含み、それにより、塗装オブジェクトの前方だけでなく、側方(例えば、左、右、上、および下など)ならびに後方に塗料を引き付ける電荷が、塗料粒子上に生じる。静電塗装が機能するために、塗装されるオブジェクトは典型的には、金属などの導電性タイプの材料からなり、オブジェクトは、電気的に接地されている。静電塗装ガンの挙動はまた、その回転する塗装ディスクの速度、およびガンに印加される成形気流の圧力および量などの追加的パラメータによって影響を受け、したがって、実施形態はまた、塗料蓄積を判定するときに、これらのパラメータを考慮し得る。一実施形態によれば、これらのパラメータは、塗装コーンの放物線形状、および関連する塗料ストリーム線を調節することによって、考慮される。実施形態では、これは、(1)印加された静電圧に反比例する放物線塗装コーンの直径と、(2)回転する塗装ディスクの速度に直接比例する放物線塗装コーンの直径と、(3)成形気流の圧力に反比例する放物線塗装コーンの直径と、(4)成形気流の量に反比例する放物線塗装コーンの直径と、を含み得る。
【0044】
静電の場合の噴霧コーンは、実際には、前述のパラメータによって影響を受ける放物線流形状である噴霧ゾーンである。放物線は、円形断面を有し、噴霧の塗装特性は、図2~4に関連して上述した方法と類似する較正実験を使用して判定され得る、堆積プロファイルに関連している。さらに、塗料ストリームの放物線状流線の経路にある塗装表面のシミュレーション中に、エアガンに対して行われたアプローチと同様に、堆積を計算することができる。したがって、一実施形態では、静電塗装シミュレーション数学的モデルは、本明細書で上述したエアガン噴霧数学的モデルの強化である。
【0045】
既存の方法とは異なり、静電塗料堆積の場合、静電切断範囲の噴霧ゾーン最大高さは、塗装部品の表面に到達する場所に限定されず、部品の側面(左、右、上、下など)または後ろの塗装に影響を及ぼすように超えてもよい。実施形態では、切断範囲は、エアガンアプローチの場合と同様に、ユーザによって選択することができる。実施形態によって提供される革新的な機能は、塗料ストリーム、すなわち、直接塗料ストリーム554の放物線状流線とは無関係に、部品のすべての表面上のあらゆる方向から塗装粒子を引き付ける、静電効果による堆積を判定する。
【0046】
実施形態は、非流動性に基づく静電塗料堆積が、噴霧時間の増加と共にゼロから最大まで直線的に進むと想定する、数学的モデルを採用してもよい。塗料の堆積厚さに対するこの最大の静電寄与は、本明細書ではTes_maxと称される場合があり、単に、最大静電塗料蓄積の指標である。また、単位時間当たりの静電塗料堆積速度は、本明細書ではTs_rateと称される場合があり、単に、静電塗料堆積速度の指標である。したがって、モデルは、塗装表面の任意のポイントでの非流動性静電寄与が、最大寄与Tes_maxに到達するまで、毎秒Tes_rateの速度でゼロから始まることを意味する。
【0047】
部品表面が、静電切断距離までの放物線噴霧ゾーン内にある限り、静電関連の堆積は、あらゆる方向を向く部品表面で発生する可能性がある。しかしながら、噴霧ゾーンの形状内に、塗料粒子が、部品表面の、影響を受けるその部分に移動するための開放経路が必要である。一実施形態では、図2~4に関連して本明細書に上述した、従来の塗装ガン較正実験によって判定される噴霧ゾーン特性に基づいている、従来の塗料ストリームの放物線状流線による塗料堆積の通常の計算に加えて、静電塗料堆積が判定および考慮される。
【0048】
図8は、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションする一実施形態による方法880を例解する。方法880は、ステップ881で、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに関する塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標を受信することにより、開始する。一実施形態によれば、塗料堆積速度の指標は、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンから生じる静電塗料堆積の速度であり、最大塗料蓄積の指標は、発生する可能性のある、塗料堆積厚さに対する最大静電寄与の指標である。一実施形態では、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標は、塗料堆積速度および最大塗料蓄積を示す閾値である。一実施形態によれば、塗料堆積速度の指標は、本明細書に記載されるTes_rateであってもよく、最大塗料蓄積の指標は、本明細書に記載されるTes_maxであってもよい。さらに、一実施形態によれば、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標は、図10~12に関連して本明細書に記載の機能など、本明細書に記載される現実世界の塗装ガン較正実験を使用して判定される。
【0049】
さらに、実施形態では、ステップ881で、塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標は、方法880を実装する計算デバイスに通信可能に連結されている、または通信可能に連結されていることが可能である、任意のデバイス、記憶装置構成要素などから、当該技術分野で既知の任意の方法を介して受信され得る。さらに、ステップ881は、受信した塗料堆積速度の指標および最大塗料蓄積の指標を、方法880を実装するプロセッサまたは計算デバイスに関連付けられた、または通信可能に連結されたメモリ内に記憶することをさらに含み得る。
【0050】
方法は、ステップ882で、仮想環境において、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの塗料堆積を表現することにより、続く。かかる実施形態では、ステップ882で塗料堆積を表現することは、対象期間中、現実世界のオブジェクトを表現するモデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算することを含む。このように、ステップ882で、シミュレーションされる現実世界のロボット制御静電塗装ガンを使用して、現実世界のオブジェクトが現実世界で塗装される場合、現実世界のオブジェクトで発生する合計塗料蓄積を計算するために、仮想環境、例えば、シミュレーション環境が使用される。実施形態では、現実世界のオブジェクトを表現するモデルは、とりわけ、当該技術分野で既知の任意のコンピュータベースのモデル、例えば、有限要素モデルまたはCADモデルであってもよい。さらに別の実施形態によれば、モデルは、有限要素モデルであり、所与の表面要素は、有限要素モデルの所与のテッセレーションされた要素である。
【0051】
方法880の一実施形態によれば、合計塗料蓄積は、ステップ882で、図9に描写する方法982を使用して、判定される。方法982は、ステップ991で、所与の期間中の所与の表面要素上の静電塗料蓄積を判定することによって、始まる。ステップ991で、静電塗料蓄積を判定することは、まず、塗装ガンの噴霧ゾーン内に、塗料粒子が所与の表面要素に到達するラップアラウンド経路があるかどうかを識別する。言い換えれば、ステップ991で、対象期間中に静電塗料粒子が所与の表面要素に到達することができるかどうかを判定される。さらに、方法991が「ラップアラウンド」経路があるかどうかを判定するが、実施形態はそのようには限定されず、ステップ991は、任意の経路、すなわち、塗料が表面要素に到達するための直接経路がある場合に、静電塗料蓄積を判定することに留意されたい。続けると、塗料粒子が表面要素に到達する経路がある場合、対象期間中の所与の表面要素上の静電、すなわち、ラップアラウンド塗料堆積は、ステップ991で、塗料堆積速度の指標を使用して判定され、ここで、最大塗料蓄積に到達した場合には、ラップアラウンド塗料蓄積が停止する。したがって、塗料堆積速度は、静電塗料堆積を判定するために使用され、静電塗料堆積は、最大塗料蓄積で制限される。例解すると、塗料堆積速度が1cm/秒、および最大塗料蓄積が1.5cmである例について考える。1秒である、第1の期間中、静電/ラップアラウンド塗料堆積は、1cmである。例えば、別の1秒間がシミュレーションされる場合、第2の期間中の静電塗料蓄積は、0.5cmの塗料が最初の0.5秒間に蓄積し、1.5cmの最大塗料蓄積に到達するため、0.5cmだけである。
【0052】
方法982を続けると、ステップ991で、ラップアラウンド塗料蓄積を判定した後に、ステップ992で、対象期間中の所与の表面要素上の直接塗料蓄積が判定される。直接塗料蓄積は、ステップ992で、当該技術分野で既知の任意の方法、および/または本明細書に記載の任意の方法を使用して、判定される。例えば、一実施形態では、外挿アプローチを使用して、塗装されている幾何学的表面上の各テッセレーションされた有限要素三角形に対する各時間ステップにおける塗料蓄積を計算するために、塗装ガン較正測定値が使用される。
【0053】
次に、ステップ993で、対象期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積は、判定されたラップアラウンド塗料蓄積(ステップ991の結果)と、判定された直接塗料蓄積(ステップ992の結果)と、を合計することによって、判定される。単に、一実施形態では、ステップ991からのラップアラウンド塗料蓄積出力、およびステップ992からの直接塗料蓄積出力を、ステップ993で、合計し、対象期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を判定する。ステップ993(判定された合計塗料蓄積)の出力は、ステップ882の結果として採用される。
【0054】
図8に戻ると、ステップ882で、モデルの所与の表面要素上の合計塗料蓄積を計算した後、方法880は、継続し、ステップ883で、所与の表面要素に対する判定された合計塗料蓄積を考慮するパラメータを含むパラメータファイルを生成する。かかる実施形態では、生成されたパラメータファイルは、現実世界のオブジェクトを塗装するための、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの正確な動作を可能にすることができる。例えば、一実施形態では、パラメータファイルは、所望の塗装設定に従って、現実世界のオブジェクトを塗装するための静電塗装ガンの制御を含む。
【0055】
方法880の実施形態は、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することをさらに含み、かかる実施形態では、パラメータファイルを生成することは、塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、所与の表面要素に対する所望の塗料蓄積を達成することをさらに含む。さらに、方法880のかかる実施形態では、決定された塗装プロセス設定は、ステップ883のパラメータファイルに含まれる。かかる例示的な実施形態は、決定された塗装プロセス設定を含む生成されたパラメータファイルを、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに送信することをさらに含むことができ、送信することは、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンに、決定された塗装プロセス設定に従って現実世界のオブジェクトを塗装させる。
【0056】
方法880の例示的な実施形態によれば、塗装プロセス設定は、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの速度、所与の現実世界のロボット制御静電塗装ガンの経路、および現実世界のオブジェクトと所与の現実世界のロボット制御塗装ガンとの間の距離のうちの少なくとも1つを含む。したがって、かかる実施形態では、塗装ガンの前述の設定は、方法880で決定されてもよく、設定は、設定に従って次いで動作する塗装ガンに送られる。かかる実施形態では、所望の塗料蓄積を達成する塗装プロセス設定の値は、ステップ882で計算された塗料蓄積に基づいて決定されてもよい。塗装プロセス設定は、方法、すなわち、例えば、ステップ882および883の処理を、反復して繰り返すことによって決定されてもよく、したがって、所望の塗料蓄積を達成する最適化された設定を決定することができる。別の実施形態では、ステップ882および883は、所望の塗料蓄積が達成され、および所望の塗料蓄積を達成する設定がパラメータファイルに含まれるまで、無期限に(あらゆる期間)反復され得る。
【0057】
方法880の代替的な実施形態は、塗装プロセスパラメータを受信することを含む。かかる実施形態では、塗装プロセスパラメータは、塗料パラメータ、位置パラメータ、および較正パラメータのうち少なくとも1つを含む。次いで、これらのパラメータを、方法880のステップ882で使用して、塗料蓄積を判定することができる。塗装プロセスパラメータに関するさらなる詳細は、図13および14に関連して以下に記載されている。
【0058】
方法880は、対象期間中の所与の表面要素に関して実施されるように上に記載されているが、方法880の実施形態は、そのように限定されないことに留意されたい。方法880の実施形態は、あらゆる対象表面要素、例えば、対象部品の表面要素のすべてに対する塗料蓄積を判定するように構成され得る。さらに、方法880の実施形態を利用して、あらゆる対象期間中の塗料堆積をシミュレーションすることができる。さらに、方法880の実施形態は、対象表面要素の指標、すなわち、塗料蓄積をシミュレーションする/判定することが所望される表面要素の指標を受信することをさらに含む。同様に、実施形態は、対象期間の指標、または所望の塗料蓄積が判定されるまで方法を継続する指標を受信することをさらに含む。
【0059】
方法880の別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の所与の表面要素に対する合計塗料蓄積を計算する。このように、かかる実施形態は、塗装プロセス全体の所与の表面要素に対する塗料蓄積を判定する。さらに、かかる実施形態では、塗装プロセスの所与の表面要素に対する合計塗料蓄積が判定されるため、パラメータファイルは、同様に、塗装プロセス全体を考慮するパラメータを含むように生成され得る。
【0060】
方法880のさらに別の実施形態は、塗装プロセスの合計時間を構成する複数の期間中の現実世界のオブジェクトを表現するモデルの複数の表面要素上の合計塗料蓄積を計算する。このように、方法880のかかる実施形態は、塗装プロセスの複数の表面要素の各々に対する合計塗料蓄積を判定する。かかる実施形態は、複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積の指標を受信することをさらに含むことができ、かかる実施形態では、パラメータファイルを生成することは、塗装プロセス設定を決定して、所与の現実世界の静電塗装ガンを制御し、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成することと、パラメータファイルに、決定された塗装プロセス設定を含めることをさらに含む。
【0061】
方法880の別の実施形態は、塗装プロセス設定を決定することを繰り返して、塗装プロセス中の複数の表面要素の各々に対する所望の塗料蓄積を達成する、最適化された塗装プロセス設定を決定することをさらに含む。かかる実施形態は、様々な塗装プロセス設定の塗料蓄積を判定することを自動的に繰り返すことをさらに含み得る。方法880のさらに別の実施形態は、生成されたパラメータファイルに基づいて、判定された合計塗料蓄積の指標を表示することを含む。かかる実施形態では、例えば、判定された塗料蓄積は、例えば、カラーまたはシェードコード化、分布、グラフ化、またはマッピングなどにより、ユーザに描かれてもよい。
【0062】
方法880の実施形態では、ユーザは、塗料蓄積を判定すべき表面要素を指定することができ、ユーザはまた、塗装プロセスのパラメータを提供することができる。例えば、ユーザは、塗装プロセスの時間を示してもよく、塗装されるオブジェクト、使用されるロボット、および塗料蓄積を計算するために必要な他のあらゆる情報に関するあらゆる詳細を提供してもよい。例えば、提供された期間は、使用されるロボット塗装プログラムを実行するために必要なサイクル時間を示す。ユーザは、シミュレーションされた車両全体のCADモデルの中から、塗装されているオブジェクト、例えば、フロントフードを指定してもよい。同様に、使用されるロボットに関する詳細は、ロボットの特定の運動学的特性を有するFANUC P-500iA産業用ロボットなど、具体的なモデルを示し得る。指定され得る他の情報は、塗装ガン較正実験データ、ならびにシミュレーションのための、塗料流量、固形分率、および塗装ガン効率の対応する用途パラメータを含む。
【0063】
直接塗料蓄積の塗装設定を判定するための塗装ガン較正方法が、図2~4に関連して上に記載されている。実施形態は、直接塗料蓄積を計算する際に、図2~4に関連して記載した機能を使用することができる。さらに、実施形態は、本明細書に記載の通り、塗装ガン較正実験を採用して、静電塗料蓄積を判定するために必要な塗装ガンパラメータを判定することができる。図2~4に関連して記載した較正技術とは対照的に、静電塗装ゾーン基部は、典型的には、円形であり、楕円形ではなく、したがって、試験ストライプを1つだけ塗装し、直交方向の堆積プロファイルに同じ測定番号を使用すれば十分である。例えば、シミュレーション中に、外挿アプローチを使用して、塗装されている幾何学的表面上の、各テッセレーションされた有限要素三角形に対する、各時間ステップでの塗料蓄積を計算するために、塗装ガン較正測定値を使用することができる。この情報(静電塗装ガンの塗料堆積測定値)は、実施形態では、塗料堆積測定値が既存のエアガン塗装シミュレーション方法で使用されるのと同様の方法で使用され、塗装オブジェクトと交差する幾何学的塗料流線による堆積を予測し得る。さらに、静電塗装ゾーン基部は、典型的には、円形であると記載されているが、実施形態は、そのように限定されず、実施形態は、本明細書に記載の較正技術を修正して、任意の様々な噴霧基部形状に対応し得る。
【0064】
実施形態は、塗装ガンを用いた塗装をシミュレーションできるように、静電塗装ガンの特性を較正および実験的に判定するための新しい革新的技術を活用し得る。図10~12は、例解である。図10は、シミュレーションされている塗装ガンの特性を判定するための、実施形態によって採用され得る塗装ガン較正実験の平面図1010を描写する。図10に描かれた塗装ガン較正実験では、平坦なプレート上にストライプを塗装する代わりに、正方形の断面1011を有する長いパイプ1012が塗装される。パイプおよびその断面の寸法は、静電噴霧ゾーンの高さおよび幅、ならびに較正される特定のガンの特性に基づいて選択される。一例示的なアプローチでは、正方形のパイプ断面の辺の寸法は、その切断範囲における塗装コーンの直径の半分から3分の1までの範囲内にあり、したがって、パイプは、ストリーム流線のいくつかが正方形のパイプの背面に到達するのを阻止するのに十分大きいが、塗装コーンの内側に完全に収まるのに十分小さい。パイプ1012は、パイプ1012の長さに沿って複数のセクション1013a~eに塗装される。セクション1013a~eの各々について、パイプ1012に沿って移動しながら、噴霧コーン1014を有する塗装ガンでパイプ1012を塗装する間に、ロボット速度は、低速から高速に段階的に増加する。一実施形態によれば、ロボットがパイプゾーン1013aにあるとき、ロボットは、その最小予想アプリケーション速度で移動し、ロボットがパイプの先へ移動するにつれ、ロボットの速度は、増加し、最終ゾーン1013eでは、ロボットは、最大予想アプリケーション速度で移動している。試験が完了し、塗料が乾燥した後、塗料厚さは、正方形の断面1011の正面ではなく、むしろ、背面で測定される。
【0065】
図11は、図10に描写した較正実験の拡大図1110である。図11は、塗装ブラシコーン1014を有する塗装ガンを使用して、パイプ1012のセクション1013aを塗装することを例解する。
【0066】
図12は、図10および11に描写された較正実験で使用されるパイプ1012の正面1221および背面1222上の塗料堆積を描写する平面図である。正面1221に対して、塗料堆積は、直接ストリーム塗料流1223および静電蒸着1224により生じる。パイプ1012の背面1222に対して、塗料堆積は、静電塗料流1224により生じるだけである。正面1221の塗料蓄積特徴を判定するために、既知の塗料流量でストライプを塗装することによって、上述の通り試験が行われる。静電塗料蓄積特徴を判定するために、パイプ1012は、図10に関連して記載したように塗装され、背面1222上の乾燥塗料は、複数のポイント、例えば、パイプの背面の長さに沿って所与の速度で塗装された各セッションの中心で測定され、シミュレーションされる特定の塗装ガンのラップアラウンド堆積態様を特徴付ける堆積プロファイルを識別する、Tes_maxおよびTes_rateパラメータを集計する。
【0067】
一実施形態では、最も遅いロボット速度で塗装されたパイプセクションで測定された背面塗料厚さは、最大静電ラップアラウンド塗料蓄積の値、すなわちTes_maxを与える。より速い速度で塗装されたパイプセクションの背面厚さは、単位時間当たりの静電ラップアラウンド堆積速度、すなわちTes_rateを与える。したがって、一実施形態では、Tes_rateは、較正実験からの測定値に基づいて、選択/外挿される。例解すると、較正実験が、ロボットが塗装ガンを100mm/秒の速度で移動させていたゾーンにおいて、背面厚さが50ミクロン(0.05mm)である、と判定する場合、背面の代表的な1mmセクションについて、塗装曝露時間は、0.01秒である。これは、Tes_rateが0.01秒当たり50ミクロンであることを意味し、0.5mm/秒になる。したがって、シミュレーション中に、処理される各テッセレーションされた表面三角形について、その三角形のデルタタイム曝露が0.01秒である場合、ラップアラウンド静電堆積効果の範囲は、50ミクロンであり、したがって、例えば、0.005秒の露出は、25ミクロンの静電ラップアラウンド堆積を意味するように、計算は比例する。
【0068】
一実施形態によれば、シミュレーション時間ステップの継続期間中、所与のステップ中のデルタタイムを乗算した速度、つまり、Tes_rateに基づいて、上記例解で詳述したように、可能な追加的な静電ラップアラウンド堆積が計算される。しかしながら、静電ラップアラウンド堆積効果の累積合計が、静電最大値、つまり、Tes_maxに到達する場合、一実施形態によれば、この特定の三角形におけるこれ以上のラップアラウンド堆積は、特定の三角形、すなわち、表面要素に対する合計塗料蓄積には、もはや追加されなくなる。
【0069】
この試験の背景にある意図は、試験パイプの背1222は、塗料噴霧の直接流線1223に当たることができないため、背面1222上の堆積は、それ自体で作用するラップアラウンド静電効果(堆積1224)によって引き起こされることである。試験においてパイプセクション1013a~eに適切なロボット速度を選択することにより、塗装ガンに関する、静電塗料の堆積速度および最大静電塗料蓄積特徴を判定し、次いで、塗装ガンをシミュレーションする際に、これらの判定された量を使用することが可能である。
【0070】
最も遅いロボットの速度で塗装されたパイプセクションで測定された背面1222の塗料厚さは、最大静電ラップアラウンド塗料蓄積の値、すなわち、Tes_maxを与える。より速い速度で塗装されたパイプセクションでの背面1222の塗料厚さは、単位時間当たりの静電ラップアラウンド堆積速度、すなわち、Tes_rateを与える。
【0071】
一実施形態は、シミュレーションにおいて、パラメータ、すなわち、Tes_maxおよびTes_rateを利用して、塗装されている表面上の各テッセレーションされた三角形に対する各時間ステップでの塗料蓄積を判定する。例示的な実施形態は、最初に、処理される特定の表面三角形が、シミュレーションの特定の時間ステップにおいて静電噴霧ゾーンの寸法内にあるかどうかを確認する。
【0072】
次に、静電ラップアラウンド効果により、この時間ステップ中のその三角形上に堆積される塗膜の厚さが計算される。静電堆積を判定することは、(1)塗料粒子が表面位置に到達するための噴霧ゾーン内に、遮るものない経路があるかどうかを判定することと、(2)経路がある場合、現在の時間ステップ継続期間、および静電ラップアラウンド堆積速度Tes_rateを使用して、この時間ステップ中の厚さの追加分を計算することと、(3)その時間に計算された厚さを、シミュレーションの開始以降の、この三角形に対する静電ラップアラウンド堆積の累積合計に、追加することと、(4)累積合計が静電最大値、つまりTes_maxに到達した場合、この特定の三角形でのこれ以上のラップアラウンド堆積量を追加することを停止することと、を含む。
【0073】
次に、かかる実施形態は、塗料噴霧の直接流線の従来の考慮事項に基づいて、時間ステップ中、三角形上に堆積される塗膜の厚さを計算する。次いで、この三角形に対するこの時間ステップ中に計算された上記の2つの堆積の厚さ(静電塗料流および直接塗料流)は、合計され、進行中のシミュレーション中にこの三角形上に蓄積された判定された塗料の累計に加えられる。
【0074】
かかる実施形態はまた、経時的なロボット動作および塗料蓄積を視覚的に描写し得る。塗料堆積は、塗装されるオブジェクトのグラフィカルモデル上に描写された、カラーまたはシェードコード化された輪郭で可視化され得る。
【0075】
実施形態では、エアガンのシミュレーションと同様に、塗料厚さの計算は、塗装ガンの実験的に測定された特性と組み合わされた、幾何学的噴霧投影の概念に基づいている。これらの計算は、塗装ガン較正特性、塗料流量、塗料中の固形分率、ユーザ定義の塗装ガン効率、塗装される表面三角形に対する塗装ノズルの距離および場所、ならびに噴霧の方向に対する表面三角形の位置および法線方向など、典型的なシミュレーションパラメータを含む。さらに、静電塗装ガンの挙動の直接流計算はまた、静電電位の電圧、塗装ガンの回転する塗装ディスクの速度、ならびにガンに印加される成形気流の圧力および量など、追加的なパラメータを考慮してもよい。
【0076】
実施形態は、シミュレーションエンジニアが製造プロセスを計画するのを支援し、ロボット塗装の定量的および定性的な仕上がり結果を予測するために使用され得る。かかる実施形態では、シミュレーションは、塗装される表面の形状、塗装ブラシ噴霧挙動のモデリング、堆積分解のための塗装部品の表面のメッシング、ならびに、様々な塗装およびシミュレーション設定で複雑なメッシュ表面を塗装しながら塗料堆積厚さおよび統計値を判定するための計算に基づく、塗装ストローク中のロボット経路の生成を含む、様々な強力な技術から構築される。かかる実施形態では、塗料堆積および厚さを判定するための計算は、例えば、図8の方法880を使用して本明細書に記載されるように実施され得る。
【0077】
実施形態はまた、レール上の塗装ロボットおよび移動するコンベヤライン上の塗装車両など、様々な影響下で同時に移動している複数の塗装ブラシだけでなく複数の塗装部品も考慮することができる。さらに、かかる実施形態では、要求される塗料堆積挙動は、図13および14に関連して以下に記載のグラフィカルユーザインターフェース1330および1440に示す設定など、塗装ブラシ較正パラメータおよび塗装シミュレーション設定のセットを通じて、ユーザによって指定され得る。
【0078】
複数の塗装ブラシおよび複数の塗装部品を考慮する実施形態では、塗料堆積のシミュレーションは、ロボット動作プランニングだけでなくコンベヤの動作、塗料およびブラシの特性、流量の保存、ならびに、複数の塗装ブラシの塗料流線と塗装される表面のメッシュに分解された形状およびテッセレーションされた曲率との幾何学的相互作用の計算、と並行して計算される。
【0079】
別の実施形態では、塗装プロセスで使用される塗装ブラシは、その塗装ブラシのシミュレーションの準備において定量化される。1つのかかる実施形態では、塗装ブラシを定量化することは、図2~4および10~12に関連して本明細書に上述したものなど、較正実験を実施することを含む。例示的な実施形態によれば、図2~4に関連して記載したように実施される較正実験は、直接流塗装の塗装ガンの特性を判定するために実施され、図10~12に関して記載した較正実験は、静電塗装の塗装ガンの特性を判定するために実施される。これらの実験は、試験ストライプを塗装すること、および乾燥したらすぐに堆積された塗料の厚さプロファイルを測定することを含む。一実施形態によれば、実験における塗装は、塗装される試験オブジェクトの上方の一定の目標距離の高さから実施される。較正される塗装ガンを通る塗料流体の流量だけでなく、使用される塗料の固形分含有率情報も、次いで、実験の一部として留意される。これら2つのパラメータに加えて、塗装ガンが静電回転ベル塗装ガンである場合、実験時に使用される、ディスク回転速度、調整空気圧、調整空気量、および静電圧について追加的に留意される。ユーザはまた、上記の4つのパラメータ、つまり、ディスク回転速度、調整空気圧、調整空気量、および静電圧の各々の成形因子を指定し得る。
【0080】
成形因子は、パラメータが静電回転ベル塗料噴霧幅の変化をもたらす程度を決定する。ディスク回転速度パラメータの場合、デフォルト値1.0は、ディスク速度を2倍にすることが噴霧幅を2倍にすることを意味する。残りの3つのパラメータ(調整空気圧、量、および静電圧)の各々について、成形因子1.0は、パラメータを2倍にすることが噴霧幅を半分にすることを意味する。一実施形態では、試験パラメータ、例えば、測定された塗料堆積厚さと共に試験において使用されるガンの特性は、実施形態を実装する計算デバイスによってアクセスすることができる較正プロファイルに入力される。図13は、シミュレーションされる塗装ガンの特性および、実験から測定された塗料厚さが入力され得る、例示的な較正プロファイル1330を描写する。計算デバイスが本明細書に記載の一実施形態、例えば、方法880を実施しているときに、計算デバイスは、プロファイル1330内の情報にアクセスおよび/または情報を取得し、本明細書に記載の機能を実施する際に、情報を使用する。
【0081】
較正実験は、塗装ガンの特定の設定を使用して実施されるが、実施形態は、これらの設定で塗装ガンをシミュレーションすることに限定されない。上述のように、塗装ブラシ較正パラメータは、試験中の塗料流量、固形分率、および噴霧高さを含む。シミュレーション中、塗装ガンのアクティブな塗料プロファイルを、ユーザによって、または最適化シミュレーションにおいて自動的に更新して、様々な設定に基づいて塗料堆積をシミュレーションすることができる。シミュレーションの設定は、塗料流量、固形分率、ガン移動効率、および塗装範囲を含む。これら4つのパラメータに加えて、塗装ガンが静電塗装ガンである場合、追加的な設定は、使用される、ディスク回転速度、調整空気圧、調整空気量、および静電圧を含む。
【0082】
図14は、シミュレーションされる塗装ガンのプロパティが入力され得る、例示的なプロファイル1440を描写する。計算デバイスが本明細書に記載の一実施形態、例えば、方法880を実施しているときに、計算デバイスは、プロファイル1440内の情報にアクセスおよび/または情報を取得し、本明細書に記載の機能を実施する際に、情報を使用する。
【0083】
流量および固形分率パラメータにより、較正実験とは異なる塗装設定のシミュレーションを実施することが可能になる。ガン移動効率は、較正実験の結果を使用して計算するブラシの効率を、オーバーライドするパラメータである。例示的な実施形態では、シミュレーションは、計算された効率で始まるが、その後、シミュレーション結果を調整して現実世界の作業現場体験により良く一致するように、効率を増加または減少させることができる。かかる実施形態では、効率のこれらの変更は、ユーザ主導であってもよく、または最適化シミュレーションの一部として自動的に行われてもよく、あるいは現実世界の塗装アプリケーションから受信した現実世界のデータに基づいて自動的に行われてもよい。
【0084】
実施形態では、塗装範囲パラメータ、すなわち、切断範囲はまた、シミュレーション用に設定されてもよい。塗装範囲パラメータは、噴霧が塗装部品のメッシュ表面上に堆積をもたらす、最大距離を指定する。この距離を超えるいかなるメッシュポイントにおいても、いかなる塗料の堆積も見られず、そのポイントを超える塗料噴霧は、拡散され、使用されない塗料統計値の一部となると理解され得る。一実施形態によれば、目的は、塗装ガンと塗装タスク中に塗装されている表面との間の計画距離を超える幾分短い距離の範囲を指定することである。かかる範囲を指定することにより、塗料堆積方法は、この方法が、遠く離れている、および実際の塗装シミュレーションに関連しない部品に対する、いかなる塗料堆積をも計算するのに時間を費やさないため、改善される。
【0085】
一実施形態では、塗料噴霧コーンの初期高さは、塗料テスト実験からの目標距離に基づいている。さらに、別の実施形態では、塗装範囲の設定に基づいて修正される高さを有する塗装コーンは、シミュレーション中に、可視化される、すなわち表示される。したがって、かかる実施形態では、ユーザは、進行中の塗料の色で可視化された塗装コーンを見ることができ、塗装コーンは、シミュレーションが進行している間に、現在の設定に従ってより長く、またはより短くなる。
【0086】
塗装範囲に関連する挙動は、エアブラシ塗装ガンだけでなく静電塗装ガンにも、両方に適用される。しかしながら、エアブラシガンの噴霧の形状は、スケーリングされた楕円形のコーンである一方、静電塗装ガンの噴霧の形状は、図1と関連して本明細書に上述したように、スケーリングされた放物線コーンである。さらに、実施形態では、静電塗装ガンの追加的パラメータの設定は、塗装用溶剤で使用され、放物線コーンの噴霧サイズ幅に影響を与え得る。本明細書に記載するように、噴霧幅の変化の程度は、4つのパラメータ、つまり、ディスク回転速度、調整空気圧、調整空気量、および静電圧の各々に対して定義された成形因子に基づいている。具体的には、現在のディスク回転速度パラメータを成形因子値1.0と共に2倍することは、シミュレーションのその部分の間に静電塗料噴霧幅を2倍にすることをもたらす。一方、残りの3つのパラメータ(調整空気圧、量、および静電圧)の各々については、現在のパラメータ(圧力または量または電圧)を1.0の成形因子と共に2倍することは、静電塗料噴霧幅は半分に減少させることをもたらす。
【0087】
一実施形態では、シミュレーションが進行するにつれ、経時的に判定されたオブジェクトの塗料範囲が、ユーザに描写される。シミュレーション中の、塗装ガンの噴霧幅の動的変化は、ワークピースの塗装範囲の程度だけでなく、進行中の塗料流量がより小さい領域またはより大きな領域に広がるために、結果として生じる塗料堆積厚さにも、両方に影響を与える可能性がある。したがって、一実施形態では、噴霧幅の変化はまた、塗料範囲の変化と共に描写される。図15A~Cは、シミュレーション中のこの効果の例を示す。
【0088】
図15Aは、通常幅の噴霧コーン1553aを有する噴霧塗装ガン1551aによって塗装されるオブジェクト1550aを表現する。図15Bは、狭幅の噴霧コーン1553bを有する噴霧塗装ガン1551bによって塗装されるオブジェクト1550bを示す。図15Cは、広幅の噴霧コーン1553cを有する噴霧塗装ガン1551cによって塗装されるオブジェクト1550cを示す。図15A~Cはまた、オブジェクト1550a~c上の塗料の厚さを示すシェードコードで塗料堆積を示す。さらなる実施形態はまた、同様にシェードまたはカラーコードを使用して、経時的に塗料堆積厚さを可視化する、塗装プロセスの可視アニメーションも提供し得る。
【0089】
実施形態によれば、塗装シミュレーションを行う前に、ユーザは、オブジェクトの表面の塗装メッシュを生成することによって、塗装されるオブジェクトのモデルを準備する。かかる実施形態では、メッシングは、ユーザ指定されたメッシュサイズおよびメッシュサグパラメータに基づいている。これらのパラメータは、要求される塗料堆積精度と一致するように選択することができ、ここで、より細かいメッシュサイズは、より計算集約的であるが、より高い精度を提供する。メッシュが生成されると、本明細書に記載の方法を実装する計算システムは、各メッシュポイントにおける表面法線方向の内部表現を生成し、この追加的な表面曲率データを、シミュレーション中に塗料堆積方法によって使用することができる。
【0090】
一実施形態では、シミュレーション開始時に、メッシュポイントにおける堆積情報は、ゼロにリセットされる。シミュレーションが進行するにつれて、各メッシュポイントでの堆積の累計は、塗料堆積モデルおよび方法の進行中の態様に基づいて保持される。これは、ロボットおよびコンベヤ動作速度、塗装ブラシから塗装された製品までの相対変位、塗料噴霧距離、プロファイル強度分布、ならびに塗料メッシュポイントおよびメッシュ表面法線に関する流れ方向の計算を含む。
【0091】
実施形態はまた、塗装する可能性のある部品のより多くのコレクションの中から塗装コーンの近くにある関連表面メッシュ領域のみに、塗料堆積計算が適用されるように、計算性能最適化を採用してもよい。
【0092】
別の実施形態は、ブラシごとに、計算された塗装結果だけでなく塗装統計値もインタラクティブに表示する。統計値は、塗装ブラシの使用タイミング、噴霧された塗料の合計、使用されない塗料の量(噴霧されたが、塗布されると指定された製品に、実際には塗布されなかった、任意の塗料)、および結果として得られるプロセスの効率に関する情報を含む。別の実施形態では、塗料堆積の結果は、塗装される表面上にグラフィカルに表示され、可視化することは、塗布された塗料の、下地表面の色に対する色付け効果、または塗装表面上の堆積厚さ分布の、閾値ベースの輪郭マッピングのいずれかを示すことができる。
【0093】
塗装シミュレーションの過程中、プロセスは、塗料プロファイル設定だけでなくロボットタスクのロボット操作も修正することによって、反復され、結果として得られる塗料堆積を改善することができる。パラメータへの変更は、塗装統計値および堆積結果に基づいてもよい。さらに、一実施形態では、ロボットタスク、すなわち、ロボット制御および動作、ならびに結果として得られる塗装製品の、満足のいく結果が達成されると、完成製品は、満足のいく結果を達成するために使用された塗料の結果情報、ならびに塗装ガンおよびプロセス設定と共に保存することができる。したがって、結果および設定は、後に、検索および再確認することができ、設定に従って現実世界の塗装プロセスを制御するために使用することができる。
【0094】
ガン較正特性に加えて、最終塗料厚さ予測に影響を及ぼす可能性のある他のシミュレーション因子は、一実施形態によれば、塗装ブラシコーンの直径よりも1桁小さい、塗装表面のテッセレーションのメッシュ解像度、塗装部品のCADモデルの正確性、ならびに実際の塗装ロボットと一致する、モデル上に配置された塗料軌道のマッチング精度、塗装ロボットプログラムの形式、およびモーションプランニングパラメータの正確な設定を含む。一実施形態では、前述の因子は、所望のレベルの精度を達成するために、必要に応じて修正されてもよい。
【0095】
図16は、本明細書に記載の本発明の任意の様々な実施形態による、現実世界のオブジェクト上の静電塗装をシミュレーションするために使用され得る、コンピュータベースのシステム1660の簡略ブロック図である。システム1660は、バス1663を含む。バス1663は、システム1660の様々な構成要素間の相互接続として機能する。バス1663に接続されているのは、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどの様々な入力および出力デバイスをシステム1660に接続するための、入力/出力デバイスインターフェース1666である。中央処理装置(CPU)1662は、バス1663に接続され、実施形態を実装するコンピュータ命令の実行を提供する。メモリ1665は、図8および13~14に関連して前述した方法およびユーザインターフェースなど、本明細書に記載の実施形態を実装するコンピュータ命令を実行するために使用されるデータの揮発性記憶装置を提供する。記憶装置1664は、操作システム(図示せず)および実施形態の構成など、ソフトウェア命令のための不揮発性記憶装置を提供する。システム1660はまた、ワイドエリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当該技術分野で既知の任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインターフェース1661を含む。
【0096】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実装され得ることを理解するべきである。いくつかの例では、本明細書に記載の様々な方法および機械は、各々、コンピュータシステム1660など、物理的、仮想的、あるいはハイブリッドな汎用コンピュータ、または図17に関連して本明細書に以下に記載の、コンピュータ環境1770などのコンピュータネットワーク環境によって実装されてもよい。コンピュータシステム1660は、例えば、CPU1662による実行のために、メモリ1665または不揮発性記憶装置1664のいずれかにソフトウェア命令をロードすることによって、本明細書に記載の方法を実行する機械に変換されてもよい。当業者は、システム1660およびその様々な構成要素が、本明細書に記載の本発明の任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実行するように構成されてもよいことをさらに理解するべきである。さらに、システム1660は、システム1660に動作可能に内部的に、または外部的に連結された、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアモジュールの任意の組み合わせを利用して、本明細書に記載の様々な実施形態を実装してもよい。さらに、システム1660は、デバイス、例えば、噴霧塗装ガンを装備したロボットに通信可能に連結される、または埋め込まれ、その結果、デバイスを制御して、本明細書に記載の物理的オブジェクトを塗装し得る。
【0097】
図17は、本発明の一実施形態を実装し得る、コンピュータネットワーク環境1770を例解する。コンピュータネットワーク環境1770では、サーバ1771は、通信ネットワーク1772を介して、クライアント1773a~nにリンクされる。環境1770を使用して、クライアント1773a~nが、単独、またはサーバ1771と組み合わせて、本明細書に記載の方法のいずれかを実行することを可能にすることができる。非限定的な例では、コンピュータネットワーク環境1770は、クラウドコンピューティング実施形態、サービスとしてのソフトウェア(SAAS)実施形態などを提供する。
【0098】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実装することができる。ソフトウェアで実装された場合、ソフトウェアは、プロセッサが、ソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成されている、任意の非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。次いで、プロセッサは、命令を実行して、本明細書に記載された方法で作動するまたは装置を動作させるよう構成される。
【0099】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして本明細書に記載され得る。しかしながら、本明細書に含まれるかかる記載は、単に便宜のためであり、かつ、実際には、かかる動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する計算デバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスから生じることを認識するべきである。
【0100】
フロー図、ブロック図およびネットワーク図は、より多いもしくは少ない要素を含んでもよく、異なって配置されてもよく、または異なって表現されてもよいことを理解するべきである。しかし、特定の実装形態は、実施形態の実行を例解する、ブロックおよびネットワーク図、ならびにブロックおよびネットワーク図の数は、特定の方法で実装されることを指示してもよいことを、さらに理解するべきである。
【0101】
それに応じて、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的、仮想的、クラウドコンピュータ、および/またはそれらのいくつかの組み合わせに実装されてもよく、したがって、本明細書に記載のデータプロセッサは、例解の目的で意図されているに過ぎず、実施形態の限定として意図されるものではない。
【0102】
例示的な実施形態を具体的に示し説明してきたが、形態および詳細の様々な変更が、添付の請求項によって網羅される実施形態の範囲から逸脱することなく、実施形態になされてもよいことは、当業者に理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17