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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】容器入り飲食料品
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230208BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B65D1/02 100
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021122532
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018416
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山本 柱
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-150734(JP,A)
【文献】特表2016-503375(JP,A)
【文献】特開2007-197294(JP,A)
【文献】特開2007-046182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食料品をガラス容器に収容した容器入り飲食料品であって、
前記ガラス容器が、
生物に由来するシリカ成分と、
カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物に由来するカルシウム成分と、
樹脂素材に由来するカーボン成分と、の少なくともいずれかを含む素材によって構成されており、
前記ガラス容器が、前記飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材によって構成されていること、を特徴とする容器入り飲食料品。
【請求項2】
前記飲食料品が、穀物を原材料として製造されるものであること、を特徴とする請求項1に記載の容器入り飲食料品。
【請求項3】
前記飲食料品が、稲を原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、もみがらであり、
前記ガラス製造用素材が、前記もみがらを原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とする請求項に記載の容器入り飲食料品。
【請求項4】
前記飲食料品が、トウモロコシを原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、前記トウモロコシの軸であり、
前記ガラス製造用素材が、前記トウモロコシの軸を原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とする請求項またはに記載の容器入り飲食料品。
【請求項5】
前記飲食料品が、サトウキビを原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、前記サトウキビにおける製造後の残渣であり、
前記ガラス製造用素材が、前記サトウキビの残渣を原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とする請求項のいずれか1項に記載の容器入り飲食料品。
【請求項6】
前記飲食料品が、被子植物の種を原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、前記被子植物の種における製造後の残渣であり、
前記ガラス製造用素材が、前記被子植物の種における残渣を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とする請求項のいずれか1項に記載の容器入り飲食料品。
【請求項7】
前記飲食料品が、貝類を原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、貝殻であり、
前記ガラス製造用素材が、前記貝殻を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とする請求項のいずれか1項に記載の容器入り飲食料品。
【請求項8】
前記飲食料品が、生物を原材料として製造されるものであり、
前記副産物が、前記生物由来のものであり、
前記ガラス製造用素材が、前記副産物を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とする請求項のいずれか1項に記載の容器入り飲食料品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り飲食料品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記非特許文献1や非特許文献2に開示されているように、ガラスびんは、リユースやリサイクルの形態により再活用されてきた。具体的には、ガラスびんは、非特許文献1に開示されているように、回収した使用済みのびんに洗浄等を施して繰り返し使用する、リユースと呼ばれる形態で再活用することができる。また、ガラスびんは、非特許文献2に開示されているように、使用済みのびんを細かく砕くことによって得られたカレットを、新しいびん等のガラス製品を作るために活用する、リサイクルと呼ばれる形態でも再活用することができる。上述のようにして再活用されるガラスびん(ガラス容器)は、飲料や食料等の飲食料品を収容し、容器入り飲食料品として業者や消費者に対して販売するための用途等において使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ガラスびん3R推進協議会ウェブサイト(https://www.glass-3r.jp/learn/reuse.html)
【文献】ガラスびん3R推進協議会ウェブサイト(https://www.glass-3r.jp/learn/recycle.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したように、ガラスびんを砕いてカレットの形態にして、ガラス製品を形成するための資源として再活用する等の形態においては、新しいガラス容器のガラス製品を作成するために使用済みのガラスを活用することができる。しかしながら、限りある資源の有効活用を図ることを鑑みれば、使用済みのガラスだけでなく、ガラス製品以外の材料もガラスを製造するための材料として活用できるようにすることが好ましい。
【0005】
そこで本発明は、ガラス製品以外の材料からリサイクルした素材(原料)を用いて製造されたガラス容器に飲食料品を収容した容器入り飲食料品の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の容器入り飲食料品は、飲食料品をガラス容器に収容した容器入り飲食料品であって、前記ガラス容器が、生物に由来するシリカ成分と、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物に由来するに由来するカルシウム成分と、樹脂素材に由来するカーボン成分と、の少なくともいずれかを含む素材によって構成されていること、を特徴とするものである。
【0007】
かかる構成によれば、シリカ成分とカルシウム成分とカーボン成分との少なくともいずれかを含む素材を、ガラス容器を製造するための材料として活用できる。従って、本発明によれば、ガラス製品以外の材料からリサイクルした素材(原料)を用いて製造されたガラス容器に飲食料品を収容した容器入り飲食料品を提供できる。
【0008】
(2)上述した本発明の容器入り飲食料品は、前記ガラス容器が、前記飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材によって構成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
かかる構成によれば、飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物をガラス容器を製造するための材料として活用できるため、副産物を用いて製造されたガラス容器に飲食料品を収容した容器入り飲食料品を提供できる。これにより、副産物を廃棄物として廃棄されることを抑制できる。
【0010】
ここで、ガラス容器は、原料に含まれる成分によって、透明なものを作る予定が、例えば少し緑がかったものなど、色が予定と違うものになるケースがある。通常、予定されている色と少し違うだけでも、納入先であるメーカー等において不良品と判定されるため、廃棄せざるを得ないという問題があった。しかし、上記のように資源を有効利用した商品として本発明の容器入り飲食料品を展開した場合、ガラス容器の色のばらつきは、飲食料品の製造過程において発生する副産物に独特の個性的なものとして、むしろ許容され、付加価値を高めるものとなり得る。従って、上述した構成によれば、副産物に独特の個性的な色のバラツキを有するガラス容器に飲食料品を収容した付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。また、上述した構成によれば、リサイクルした素材(原料)を用いて製造されたガラス容器が、少しの色のバラツキが原因で廃棄されてしまうのを抑制し、資源の有効活用に貢献できる。また、本発明の容器入り飲食料品によれば、環境に配慮した事業(課題)に取り組む事業者を応援しつつ消費活動を行う倫理的消費(エシカル消費)の拡充に貢献できる。
【0011】
また、上記した構成によれば、ガラス容器に収容される飲食料品等を製造する際に発生する副産物(廃棄物)をリサイクルして得られる素材を、ガラス容器の原料として用いることによって、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とを同じ素材(原料)にすることができる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品(中身)とガラス容器本体とが同じ原料からできているという点について環境に優しい商品として業者や消費者等に対してアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0012】
(3)上述した本発明の容器入り飲食料品は、前記飲食料品が、穀物を原材料として製造されるものであること、を特徴とするものであると良い。
【0013】
かかる構成によれば、穀物を原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、穀物を原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品(中身)とガラス容器本体とが穀物由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0014】
(4)この場合、好ましくは、前記飲食料品が、稲を原材料として製造されるものであり、前記副産物が、もみがらであり、前記ガラス製造用素材が、前記もみがらを原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
かかる構成によれば、稲を原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、稲を原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としてのもみがらをガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品(中身)とガラス容器本体とが稲由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0016】
(5)上記生物を原材料として飲食料品が製造される容器入り飲食料品において、好ましくは、前記飲食料品が、トウモロコシを原材料として製造されるものであり、前記副産物が、前記トウモロコシの軸であり、前記ガラス製造用素材が、前記トウモロコシの軸を原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、トウモロコシを原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、トウモロコシを原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としてのトウモロコシの軸(芯)をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とがトウモロコシ由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0018】
(6)上記生物を原材料として飲食料品が製造される容器入り飲食料品において、好ましくは、前記飲食料品が、サトウキビを原材料として製造されるものであり、前記副産物が、前記サトウキビにおける製造後の残渣であり、前記ガラス製造用素材が、前記サトウキビの残渣を原料の一部又は全部として製造されるシリカ成分を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0019】
かかる構成によれば、サトウキビを原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、サトウキビを原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としてのサトウキビの残渣をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とがサトウキビ由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0020】
(7)上記ガラス容器が副産物を原料として製造されるガラス製造用素材によって構成されている容器入り飲食料品において、好ましくは、前記飲食料品が、被子植物の種を原材料として製造されるものであり、前記副産物が、前記被子植物の種における製造後の残渣であり、前記ガラス製造用素材が、前記被子植物の種における残渣を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
かかる構成によれば、被子植物の種を原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、被子植物の種を原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての被子植物の種の残渣をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが被子植物の種由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0022】
(8)上記ガラス容器が副産物を原料として製造されるガラス製造用素材によって構成されている容器入り飲食料品において、好ましくは、前記飲食料品が、貝類を原材料として製造されるものであり、前記副産物が、貝殻であり、前記ガラス製造用素材が、前記貝殻を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0023】
かかる構成によれば、貝類を原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、貝類を原材料として製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての貝殻をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが貝類由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0024】
(9)上記容器入り飲食物飲食料品において、好ましくは、前記飲食料品が、生物を原材料として製造されるものであり、前記副産物が、前記生物由来のものであり、前記ガラス製造用素材が、前記副産物を原料の一部又は全部として製造されるカルシウム成分を含むものであること、を特徴とするものであると良い。
【0025】
かかる構成によれば、生物を原材料として製造される飲食料品をガラス容器内に収容するとともに、飲食料品の製造過程において発生する生物由来の副産物(例えば、生物の卵の殻や骨等)をガラス容器を製造するための材料として活用できる。これにより、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが原材料とされた生物由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガラス製品以外の材料からリサイクルした素材(原料)を用いて製造されたガラス容器に飲食料品を収容する容器入り飲食料品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る容器入り飲食料品について説明する。
【0028】
≪ガラス成形用再生材料について≫
本実施形態のガラス容器の製造(成形)には、ガラス成形用再生材料が用いられる。ガラス成形用再生材料は、ガラス以外の材料から再生される再生材料が配合され、飲料や食料等の飲食料品を収容することが可能なガラス容器の製造(成形)に用いられるものである。ガラス成形用再生材料は、ケイ素成分の総量、カルシウム成分、及びカーボン(炭素)成分の総量が所定の調合比となるように配合されたものとされている。また、ガラス成形用再生材料は、生物由来再生材料、成型物由来再生材料、及び樹脂素材由来再生材料を含むものとされている。
【0029】
[生物由来再生材料]
生物由来再生材料は、ケイ素成分を含む生物、又は当該生物に由来する生物由来物を加熱処理することにより、生物又は生物由来物に含まれているケイ素成分を生物由来ケイ素成分として含む再生材料である。前記生物は、例えば穀物や藻類、珪藻類等の植物系のもの、鶏等の鳥類、牛、豚等の哺乳類、魚類、貝類等の動物系のもの等とすることができる。生物由来再生材料は、ガラス成形用再生材料において、ケイ素成分の全部をなすもの、あるいは他のケイ素成分(例えば、珪砂や酸化ケイ素の試薬など)と共にガラス成形用再生材料におけるケイ素成分の一部をなすものとすることができる。生物由来再生材料は、生物に由来する炭素成分を含むもの、あるいは熱処理等によって炭素成分を除去したものとすることができる。
【0030】
生物由来再生材料が、生物に由来する炭素成分を含むものである場合には、ガラス成形時に添加する炭素成分の一部又は全部として、生物由来の炭素成分を活用すると良い。また、生物由来再生材料は、熱処理等によって炭素成分を除去したものとすることにより、例えばガラスの製造工程において従来使用されている珪砂などの炭素成分を含まない、あるいは炭素成分を殆ど含まないものと同様にガラスの製造過程において取り扱うことができる。
【0031】
[成型物由来再生材料]
成型物由来再生材料は、カルシウム成分を含む無機物質を用いて作成された成型物に由来するカルシウム成分を成型物由来カルシウム成分として含む再生材料である。成型物由来再生材料は、ガラス成形用再生材料において、カルシウム成分の全部をなすもの、あるいは他のカルシウム成分(例えば、石灰石や炭酸カルシウム試薬、酸化カルシウム試薬など)と共にガラス成形用再生材料におけるカルシウム成分の一部をなすものとすることができる。
【0032】
成型物由来再生材料の原料となる成型物は、カルシウム成分を含む無機物質を含み、当該無機物質に加えて熱可塑性樹脂や補助剤等を所定の配合率で配合したものである。成型物由来再生材料の原料となる成型物には、カルシウム成分を含む無機物質を含んだ様々な組成や形態のものを選択可能である。成型物由来再生材料の原料となる成型物には、例えば炭酸カルシウムに加えて熱可塑性樹脂や補助剤等を含み、シート状に形成された石灰紙等を好適に選択可能である。さらに具体的には、当該成型物を構成する無機物質は、例えば炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化チタン、タルク、カオリン、水酸化アルミニウムからなる群から選択される一種類以上のものからなるものであると良い。また、当該成型物を構成する熱可塑性樹脂は、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、再生樹脂等とすることができる。当該熱可塑性樹脂は、これらから選ばれた一種類を単独で用いてもよく、二種以上を混合したものであってもよい。また、当該成型物を構成する補助剤は、例えば、滑剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、着色用顔料、流動性改良材、分散剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の中から選ばれる一種以上のものとすると良い。
【0033】
[樹脂素材由来再生材料]
樹脂素材由来再生材料は、ペットボトル等の樹脂製品(PET:ペット、PP:ポリプロピレン、PE:ポリエチレン)を加熱処理等することにより得られた樹脂素材由来のカーボン(炭素)成分を含む再生材料である。言い換えると、樹脂素材由来再生材料は、PET系廃棄物からカーボン(炭素)成分が得られる再生材料である。樹脂素材由来再生材料は、ガラス成形用再生材料において、カーボン成分の全部をなすもの、あるいは他のカーボン成分と共にガラス成形用再生材料におけるカーボン成分の一部をなすものとすることができる。
【0034】
[ガラス成形用再生材料の組成]
ガラス成形用再生材料は、生物由来のケイ素成分をケイ素成分の一部又は全部として含む生物由来再生材料単体からなるものや、成型物由来カルシウム成分をカルシウム成分の一部又は全部として含む成型物由来再生材料単体からなるものや、樹脂素材由来カーボン成分をカーボン成分の一部又は全部として含む樹脂素材由来再生材料単体からなるものとすることができる。また、ガラス成形用再生材料は、生物由来再生材料、成型物由来再生材料、及び樹脂素材由来再生材料を混合することにより、生物由来ケイ素成分をケイ素成分の一部又は全部として含むと共に、成型物由来カルシウム成分をカルシウム成分の一部又は全部として含むと共に、樹脂素材由来カーボン成分をカーボン成分の一部又は全部として含んだ混合再生材料とすることも可能である。
【0035】
ここで、ガラス成形用再生材料を上述した混合再生材料とする場合は、ガラスの製造原料に含まれるケイ素成分、カルシウム成分、及びカーボン成分の調合比、製造するガラスの色等の条件を考慮して、混合再生材料におけるケイ素成分、カルシウム成分、及びカーボン成分の調合比を調整すると良い。
【0036】
≪ガラス成形用再生材料の製造方法≫
続いて、上述したガラス成形用再生材料を製造するための製造方法について説明する。上述したガラス成形用再生材料は、ケイ素成分を含む生物又は当該生物に由来する生物由来物を原料(当該原料を以下「生物系原料」とも称す)として生物由来再生材料からなるガラス成形用再生材料を製造する製造方法、カルシウム成分を含む成型物を原料(当該原料を以下「成型物系原料」とも称す)として成型物由来再生材料からなるガラス成形用再生材料を製造する製造方法、及びカーボン成分を含む樹脂素材に由来する樹脂素材由来物を原料(当該原料を以下「樹脂素材系原料」とも称す)として樹脂素材由来再生材料からなるガラス成形用再生材料を製造する製造方法のように、生物由来再生材料、成型物由来再生材料、及び樹脂素材由来再生材料を個別に製造する製造方法によりガラス成形用再生材料を製造できる。
【0037】
また、生物系原料、成型物系原料、及び樹脂素材系原料の少なくともいずれかを含む原料(当該原料を以下「混合原料」とも称す)を処理する製造方法により、生物由来再生材料、成型物由来再生材料、及び樹脂素材由来再生材料の全てを含むガラス成形用再生材料を製造することもできる。以下、(1)生物系原料からガラス成形用再生材料として生物由来ケイ素成分を製造する製造方法(以下、「生物由来再生材料製造法」とも称す)、(2)成型物系原料からガラス成形用再生材料を製造する製造方法(以下、「成型物由来再生材料製造法」とも称す)、(3)樹脂素材系原料からガラス成形用再生材料として樹脂素材由来カーボン成分を製造する製造方法(以下、「樹脂素材由来再生材料製造法」とも称す)、及び(4)混合原料からガラス成形用再生材料を製造する製造方法(以下、「混合再生材料製造法」とも称す)について説明する。
【0038】
[(1)生物由来再生材料製造法]
生物由来再生材料製造法は、生物系原料を加熱処理等することにより、生物系原料に含まれているケイ素成分を生物由来ケイ素成分として含む生物由来再生材料を取得する工程(生物由来再生材料取得工程)を製造工程の一部又は全部として含む製造方法である。
【0039】
[(2)成型物由来再生材料製造法]
成型物由来再生材料製造法は、カルシウム成分を含む成型物(成型物系原料)を加熱処理することにより、成型物由来カルシウム成分を含む成型物由来再生材料を取得する工程(成型物由来再生材料取得工程)を製造工程の一部又は全部として含む製造方法である。
【0040】
[(3)樹脂素材由来再生材料製造法]
樹脂素材由来再生材料製造法は、カーボン成分を含むペットボトル等の樹脂素材(樹脂素材系原料)を加熱処理することにより、樹脂素材由来カーボン成分を含む樹脂素材由来再生材料を取得する工程(樹脂素材由来再生材料取得工程)を製造工程の一部又は全部として含む製造方法である。
【0041】
[(4)混合再生材料製造法]
混合再生材料製造法は、生物由来原料と成型物由来原料と樹脂素材由来原料とを混合した混合物(混合原料)を熱処理対象物として直接加熱あるいは間接加熱して熱分解することにより、ケイ素成分を含む生物由来再生材料、カルシウム成分を含む成型物由来再生材料、及びカーボン成分を含む樹脂素材由来再生材料を含む混合再生材料をガラス成形用再生材料として形成する工程(混合再生材料取得工程)を製造工程の一部又は全部として含む製造方法である。
【0042】
≪ガラス製品(ガラス容器)の製造方法≫
上述したガラス成形用再生材料の製造方法等により製造されたガラス成形用再生材料を用いることにより、珪砂や石灰石等を用いた場合と同様にして、ガラス製品(ガラス容器)を製造することができる。本実施形態のガラス容器は、シリカ成分とカルシウム成分とカーボン成分との少なくともいずれかを含む素材によって構成されている。具体的には、ガラス成形用再生材料を用いてガラス製品を製造する場合には、先ず酸化ケイ素の重量を100としたときに、炭酸カルシウムが重量比で27、炭酸ナトリウムが重量比で28、硫酸ナトリウムが重量比で1.5、炭素(カーボン)が重量比で0.1となる調合比を標準的な調合比とし、製造するガラスの特性(例えば粘性等)に応じて各成分の調合比率を変動させることにより、原料の調合を行う。このようにして原料の調合を行う際に、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、及び炭素(カーボン)の少なくともいずれかについて、その一部又は全部として、上述したガラス成形用再生材料を配合する。
【0043】
また、ガラス成形用再生材料を用いたガラス製品を製造する場合には、上述したようにして調合された原料を溶解炉に投入して溶解させる。ガラス成形用再生材料を用いる場合も、ガラス成形用再生材料を用いない場合と同様に、例えばシーメンス型の連続炉などの大規模なガラス溶解炉や、光学炉や手吹き炉などの小規模な炉を溶解炉として用いることができる。ガラス成形用再生材料を含む原料を溶解して得られた溶解物を溶解炉から取り出し、これを例えばガラスびんなどの形状に成形した後、徐冷することにより、ガラス製品とすることができる。
【0044】
ここで、本実施形態では、上述したガラス製品(ガラス容器)は、飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物(廃棄物)を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(ガラス成形用再生材料)によって構成されている。
【0045】
例えば、生物の一種である穀物を用いて飲食料品を製造する場合には、副産物(廃棄物)として「もみがら」が得られ、「もみがら」からガラス製造用素材としてシリカ成分が得られる。このように、「もみがら」から得られるシリカ成分がガラス容器を製造するための素材として用いられる。ガラス製造用素材としてシリカ成分が得られる他の例としては、稲(米)、トウモロコシ、トクサ、サトウキビ、麦、粟、稗(ひえ)、穀物の根、プランクトン等の珪藻(ケイ酸塩を含むもの、珪藻土、プランクトンを培養して取り出した珪酸塩類)、ケイ素の多い食品(ワカメ、リンゴ、アサリ、ゴボウ)、等である。
【0046】
また、オリーブやアブラナ等の被子植物(双子葉植物)の種から油等の飲食料品を製造する場合には、副産物(廃棄物)として「種の残渣(搾りかす)」が得られ、「種の残渣」からガラス製造用素材としてカルシウム成分が得られる。このように、「種の残渣」から得られるカルシウム成分がガラス容器を製造するための素材として用いられる。ガラス製造用素材としてカルシウム成分が得られる他の例としては、ナス科等の双子葉植物、貝殻(サザエ、ホタテ)、貝の外表面を利用する夜光貝の残片、貝の内面外面を加工した残渣)、甲殻類の殻、食品廃棄物(鶏卵の殻、動物や魚類の骨)、等である。
【0047】
さらに、本実施形態では、以下の例に示すように、ガラス容器に収容又は充填される飲食料品等を製造する際に発生する副産物(廃棄物)をリサイクルして得られる素材を、ガラス容器の原料(ガラス製造用素材)として用いることにより、ガラス容器の中身も容器本体も同じ原料からできているというブランディングで環境に優しい商品として業者や消費者等に提供できるようになっている。
【0048】
例えば、ガラス容器に収容される飲食料品が、生物を原材料として製造されるものである場合には、ガラス容器は、生物から製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(シリカ成分)によって構成される。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが生物由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0049】
また、生物の一種である穀物としての稲(米)を原材料として製造される飲食料品としての日本酒、米酢、みそ、米焼酎、ソジュ(韓国焼酎)、ライスミルク、及び酒粕のいずれかがガラス容器に収容(充填)される場合には、上記の飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての「もみがら」を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(シリカ成分)によってガラス容器が構成される。上記の副産物としての「もみがら」は、稲(米)から日本酒等の飲食料品を一般的な製造方法で製造する過程において、通常発生する廃棄物等から得られるものである。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが稲(米)から製造されている(稲由来である)という点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0050】
また、生物としてのトウモロコシを原材料として製造される飲食料品としての焼酎、及びウィスキーのいずれかがガラス容器に収容(充填)される場合には、上記の飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての「トウモロコシの軸(芯)」を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(シリカ成分)によってガラス容器が構成される。上記の副産物としての「トウモロコシの軸(芯)」は、トウモロコシから焼酎等の飲食料品が一般的な製造方法で製造される過程において、通常発生する廃棄物等から得られるものである。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とがトウモロコシ由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0051】
また、生物としてのサトウキビを原材料として製造される飲食料品としてのラム酒がガラス容器に収容(充填)される場合には、上記の飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての「サトウキビの残渣」を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(シリカ成分)によってガラス容器が構成される。上記の副産物としての「サトウキビの残渣」は、サトウキビからラム酒等の飲食料品が一般的な製造方法で製造される過程において、通常発生する廃棄物(例えば、サトウキビの搾りカス等)から得られるものである。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とがサトウキビ由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0052】
ガラス容器に収容される飲食料品が、被子植物の種を原材料として製造されるものである場合には、ガラス容器は、被子植物の種から製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(カルシウム成分)によって構成される。
【0053】
例えば、オリーブやアブラナ等の被子植物(双子葉植物)の種を原材料として製造される飲食料品としてのオリーブ油、及び菜種油のいずれかがガラス容器に収容(充填)される場合には、上記の飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての「被子植物の種の残渣」を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(カルシウム成分が)によってガラス容器が構成される。上記の副産物としての「被子植物の種の残渣」は、オリーブやアブラナ等の被子植物の種からオリーブ油、及び菜種油等を一般的な製造方法で製造する過程において、通常発生する廃棄物等(オリーブやアブラナの種の搾りカス)から得られるものである。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが被子植物の種由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0054】
ガラス容器に収容される飲食料品が、貝類を原材料として製造されるものである場合には、ガラス容器は、貝類から製造される飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(カルシウム成分)によって構成される。
【0055】
例えば、貝類(いわゆる貝の中身)を原材料として飲食料品として調理された貝がガラス容器に収容(充填)される場合には、上記の飲食料品の製造過程において副次的に発生する副産物としての「貝殻」を原料の一部又は全部として製造されるガラス製造用素材(カルシウム成分)によってガラス容器が構成される。上記の副産物としての「貝殻」は、貝を一般的な方法で調理する過程において得られる廃棄物である。上記実施形態によれば、ガラス容器に収容される飲食料品とガラス容器本体とが貝類由来であるという点をアピール可能な付加価値の高い容器入り飲食料品を提供できる。
【0056】
上記実施形態では、主として飲食料品が飲食物である例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば宝飾品等の飲食物以外の加工品においても適用できる。例えば、加工品が真珠である場合には、真珠養殖において真珠母貝として使用されるアコヤ貝に由来する素材をガラス製造用素材として作成されたガラス容器に対し、真珠そのものあるいは真珠をさらに加工した宝飾品を入れたものを容器入り加工品とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ガラス製品以外の材料からリサイクルした素材(原料)を用いて製造されたガラス容器に飲食料品を収容する場合において、好適に適用可能である。