(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】除去機構および除去方法
(51)【国際特許分類】
B22D 35/00 20060101AFI20230208BHJP
B22D 13/10 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B22D35/00 E
B22D35/00 K
B22D13/10 505B
(21)【出願番号】P 2021209782
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】矢野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】丸目 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】寺村 孝司
(72)【発明者】
【氏名】篠原 佑太
(72)【発明者】
【氏名】藤内 路彦
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102005040966(DE,A1)
【文献】特開平06-023524(JP,A)
【文献】実開昭51-055821(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0016127(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 35/00
B22D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型内へ溶湯を導くトラフに形成されている溝部に存在する溶湯の残留物を、前記溝部から除去する除去機構であって、
前記溝部は、当該溝部の長手方向と直交する平面で切断した切断面において、前記溝部の開口部から下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する2つの側面を有するものであり、
前記溝部内において前記溝部の底面よりも上方に配置される突出部によって、前記残留物を把持する把持部と、
前記
突出部が前記残留物を把持可能な
ように、前記突出部の位置まで、前記溝部に残留した前記残留物
を引き寄せた状態で上方へ移動させる移動部と、を備えることを特徴とする除去機構。
【請求項2】
前記把持部は、互いに間隔を空けて配置される第1部分および第2部分を有し、前記第1部分と前記第2部分とを互いに近づくように移動させることにより前記残留物を把持するものであり、
前記移動部は、
前記把持部が前記第1部分と前記第2部分とを互いに近づくように移動させる方向から視認した場合に、前記第1部分および前記第2部分と重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の除去機構。
【請求項3】
前記溝部に残留した前記残留物を冷却する冷却部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の除去機構。
【請求項4】
前記溝部に残留した前記残留物を分断する分断部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の除去機構。
【請求項5】
前記溝部
の前記底面は
、前記2つの側面の下端に連な
り、
前記移動部は、前記溝部の前記底面に残留した前記残留物を前記
突出部の位置まで
上方へ移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の除去機構。
【請求項6】
前記移動部は、前記把持部に対して昇降可能であり、前記溝部に残留した前記残留物を磁力により引き寄せ
た状態で上方へ移動させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の除去機構。
【請求項7】
鋳型内へ溶湯を導くトラフに形成されている溝部に存在する溶湯の残留物を、前記溝部から除去する除去方法であって、
前記溝部は、当該溝部の長手方向と直交する平面で切断した切断面において、前記溝部の開口部から下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する2つの側面を有するものであり、
前記残留物を把持する把持部
の突出部を、前記溝部内
において前記溝部の底面よりも上方に配置する配置ステップと、
前記突出部の位置まで、前記溝部に残留した前記残留物
を引き寄せた移動部を上方へ移動させる移動ステップと、
前記溝部から前記
突出部の位置まで移動させた前記残留物を前記
突出部により把持する把持ステップと、を含むことを特徴とする除去方法。
【請求項8】
前記溝部に残留した前記残留物を冷却する冷却ステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の除去方法。
【請求項9】
前記残留物を冷却する前に、前記溝部に残留した前記残留物を分断する分断ステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去機構および除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋳型内へ溶湯を鋳込むための注湯トラフが開示されている。上記注湯トラフは、溶湯が注ぎ込まれるシュートを昇降する昇降装置と、鋳型内を移動しながら前記シュートへ注がれた溶湯を回転鋳型内へ導くトラフ本体を、長手軸を旋回軸心として反転する反転装置と、前記トラフ本体を係止し、前記シュートとの位置合わせを行うトラフ位置決め装置とを付属している。
【0003】
上記注湯トラフは、鋳造終了後に、上記トラフ本体が反転装置により反転されることにより、当該トラフ本体内に残ったジャミ(余剰鉄)が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大口径の管を鋳造する場合、トラフ本体が大型化するため、当該トラフ本体を回転させる回転機構を設けることが困難である。すなわち、上記トラフ本体の回転を自動化することは困難であった。
【0006】
そのため、大型のトラフの場合には、作業者がトラフ本体内に残ったジャミを直接回収し、撤去していた。この場合、鋳造後のジャミは高温であり、危険を伴う作業となる。
【0007】
本発明の一態様は、人手を介さずにトラフの溝部に残留した残留物を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る除去機構は、鋳型内へ溶湯を導くトラフに形成されている溝部に存在する溶湯の残留物を、前記溝部から除去する除去機構であって、前記溝部内に挿入可能であり、前記残留物を把持する把持部と、前記把持部が前記残留物を把持可能な把持位置まで、前記溝部に残留した前記残留物を移動させる移動部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
当該構成により、除去機構は、溝部から残留物を除去することができる。すなわち、人手を介さずにトラフの溝部に残留した残留物を除去することができる。
【0010】
前記把持部は、互いに間隔を空けて配置される第1部分および第2部分を有し、前記第1部分と前記第2部分とを互いに近づくように移動させることにより前記残留物を把持するものであり、前記移動部は、前記第1部分と前記第2部分との間の空間より外に配置されていることが好ましい。当該構成により、第1部分と第2部分とが互いに近づくように移動しても、第1部分および第2部分が移動部と接触しないため、移動部が把持部による把持動作を妨げる可能性を低減することができる。
【0011】
上記除去機構は、前記溝部に残留した前記残留物を冷却する冷却部をさらに備えることが好ましい。冷却部によって残留物を冷却することにより、残留物の温度を迅速に下げることができる。これにより、回収を開始するまでの時間を短縮することができ、残留物の回収効率を向上させることができる。
【0012】
上記除去機構は、前記溝部に残留した前記残留物を分断する分断部をさらに備えることが好ましい。分断部を備えることにより、残留物を分断することができる。これにより、残留物の1片のサイズを小さくすることが可能となり、残留物の回収が容易となる。
【0013】
前記溝部は、前記溝部の長手方向と直交する平面で前記トラフを切断した切断面において、前記溝部の開口部から下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する2つの側面と、前記2つの側面の下端に連なる底面と、を有し、前記移動部は、前記溝部の前記底面に残留した前記残留物を前記把持位置まで移動させることが好ましい。
【0014】
当該構成により、把持部が溝部の底面に届かない場合であっても、移動部が把持部の把持位置まで残留物を移動させるため、把持部が残留物を把持することができる。すなわち残留物を除去するために残留物を把持する装置が浸入しづらい形状を有するトラフであっても人手を介さずに溝部に残留した残留物を除去することができる。
【0015】
前記移動部は、前記把持部に対して昇降可能であり、前記溝部に残留した前記残留物を磁力により引き寄せることが好ましい。当該構成により、残留物を磁力により引き寄せることができるため、残留物の表面形状に凹凸がある場合であっても残留物を引き寄せることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る除去方法は、鋳型内へ溶湯を導くトラフに形成されている溝部に存在する溶湯の残留物を、前記溝部から除去する除去方法であって、前記残留物を把持する把持部を前記溝部内の所定の位置に配置する配置ステップと、前記所定の位置に配置した前記把持部が前記残留物を把持可能な把持位置まで、前記溝部に残留した前記残留物を移動させる移動ステップと、前記溝部から前記把持位置まで移動させた前記残留物を前記把持部により把持する把持ステップと、を含む。当該構成により、本発明の一態様に係る除去方法によって、溝部から残留物を除去することができる。すなわち、人手を介さずにトラフの溝部に残留した残留物を除去することができる。
【0017】
前記溝部に残留した前記残留物を冷却する冷却ステップをさらに含むことが好ましい。冷却ステップを実施することにより、残留物が固化し、続く除去作業が容易となる。また、冷却によって残留物の磁性が戻るため、磁力を用いた回収が可能となる。
【0018】
前記残留物を冷却する前に、前記溝部に残留した前記残留物を分断する分断ステップをさらに含むことが好ましい。分断ステップを含むことにより、残留物を分断することができる。これにより、残留物の1片のサイズが小さくなり、残留物の回収が容易となる。また、残留物を冷却する前に分断ステップを実施することにより、残留物が冷却されて硬くなる前に容易に分断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、人手を介さずにトラフの溝部に残留した残留物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】鋳造のための例示的な鋳造機の概略的な構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のX-X線矢視断面図であり、残留物を引き寄せるときの概略図である。
【
図4】
図2のX-X線矢視断面図であり、残留物を把持したときの概略図である。
【
図5】
図4の状態をX軸負方向から見たときの概略図であり、筐体の内部構成を簡単に示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態示に係る除去機構1が適用される場面について説明する。
図1は、鋳造のための例示的な鋳造機100の概略的な構成を示す断面図である。
【0022】
図1に示す鋳造機100は、定置取鍋101から溶湯102が供給される円弧取鍋(取鍋)103、モーター104、シュート105、トラフ10、鋳造部107、およびトラフ移動部109を備えている。本明細書において、鋳造機100の設置面(地面)に垂直な方向をZ軸方向、トラフ10の延伸方向をY軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の両方に直交する方向をX軸方向とする。Z軸正方向が上方向である。ここで説明したX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の定義は、他の図においても適用されるものとする。
【0023】
定置取鍋101から供給される溶湯102は、円弧取鍋103の注湯口110から、溶湯102を水平方向に導くシュート105を介して、トラフ10に供給される。トラフ10は、溶湯102が通る経路であり、溝部11(
図3参照)を備えている。
図1に示される例では鋳造部107は回転可能な鋳型108を備えている。溶湯102は、トラフ10の終端から鋳型108に供給される。また、トラフ10は、台車106bに載せられており、
図1の白抜き矢印の方向または逆方向に移動させることにより、トラフ10の終端を移動させることができる。
【0024】
本発明の実施形態に係る除去機構1は、鋳型108への溶湯102の注入が完了した後にトラフ10に残留する残留物を除去する装置である。本発明の実施形態において、残留物は、例えばジャミと呼ばれる余剰鉄である。
【0025】
<除去機構1の構成>
図2は、除去機構1の概略構成を示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係る除去機構1の筐体20が、鋳型への溶湯の注入が完了した後のトラフ10の上方に搬送されてきた様子を示している。除去機構1の筐体20は、例えばロボットアーム200と接続されており、当該ロボットアーム200によってトラフ10の上方に搬送される。
【0026】
図3は、
図2のX-X線矢視断面図であり、残留物を引き寄せるときの概略図である。
図3は、除去機構1が備える移動部40のマグネット41が残留物Rに接近した状態を示している。
図4は、
図2のX-X線矢視断面図であり、残留物を把持したときの概略図である。
図4は、移動部40が上方に移動させた残留物Rが、把持部30の第1部分321と第2部分322とによって把持されている状態を示している。なお、
図3および
図4において、筐体20内の構造については省略している。
図5は、
図4の状態をX軸負方向から見たときの概略図であり、筐体20の内部構成を簡単に示している。
図5では、トラフ10は省略して記載している。
図6は、トラフ10を上方から見たときの平面図である。
【0027】
図に示すように、除去機構1は、筐体20と、分断部60とを備える。筐体20は、把持部30と、移動部40と、冷却部50とを備えている。分断部60は、トラフ10に沿って延在するように配置されている。以下に除去機構1の各構成要素について詳述する。
【0028】
<分断部60>
分断部60は、溶湯102の注入が完了した後にトラフ10の溝部11に残留した残留物Rを分断する。本実施形態において、分断部60は、トラフ10の片側の縁部に設けられており、空気などのガスが流通する経路62およびガスを噴射するためのノズル61を備えている。ノズル61は、トラフ10の開口部付近に位置しており、トラフ10の底面14の方向に向けてガスを噴霧できるように構成されている。
【0029】
ノズル61から噴射されたガスは、溝部11の側面13A、底面14、および側面13Bに沿って流れる(
図3参照)。これにより、残留物Rを略等間隔に分断することができる。換言すると、分断部60は、トラフ10に残留する溶解状態または半溶解状態の残留物Rに空気などのガスを噴射することにより残留物Rを分断することができる。なお、分断部60は、ガスを噴射することにより分断を実現する構成に限定されない。例えば、切断具を上方から残留物Rに向けて移動させるなどの物理的な切断手段によって分断してもよい。
【0030】
除去機構1は、分断部60を備えることにより、残留物Rを分断することができる。これにより、残留物Rの1片のサイズを小さくすることが可能となり、残留物Rの回収が容易となる。
【0031】
分断部60は、ノズル61を複数備えている。当該複数のノズル61の数およびノズル61同士の間隔は特に限定されない。例えば、複数のノズル61を等間隔に配置してもよい。当該構成により、分断された残留物Rの長さを等しくすることができ、残留物Rの回収効率を向上させることができる。
【0032】
<筐体20>
筐体20は、除去機構1の構成要素のうち、把持部30と、移動部40と、冷却部50とを備える本体部分である。
【0033】
<冷却部50>
冷却部50は、溝部11に残留した残留物Rを冷却するものである。本実施形態において、冷却部50は、ミスト噴霧装置である。冷却部50は、筐体20の端部に設けられている。冷却部50は、鋳型108への溶湯102の注入が完了した後にトラフ10に残留する残留物Rに対して水および空気が混合したミストを噴射することにより、残留物Rを冷却する。除去機構1が分断部60を備える場合、冷却部50は、分断部60によって分断された後の残留物Rを冷却してもよい。
【0034】
冷却部50によって残留物Rを冷却することにより、残留物Rの温度を迅速に下げることができる。これにより、後述する移動部40および把持部30による残留物Rの回収工程を開始するまでの時間を短縮することができる。すなわち、除去機構1による残留物Rの回収効率を向上させることができる。
【0035】
また、鋳型108への溶湯102の注入が完了した直後の残留物Rの温度は1000℃ほどあり、磁性を失った状態である。後述する移動部40において残留物Rを移動させる手段としてマグネットを用いる場合、残留物Rの温度を、磁性が戻る770℃以下に下げる必要がある。冷却部50によって残留物を冷却することにより、残留物Rが磁性を取り戻すまでの時間を短縮することができる。これにより、移動部40および把持部30による残留物Rの回収工程を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0036】
<移動部40の構成>
移動部40は、把持部30が残留物Rを把持可能な把持位置P1(
図3参照)まで、溝部11に残留した残留物Rを移動させるものである。移動部40は、把持部30に対して昇降可能に構成されている。
【0037】
より具体的には、移動部40は、トラフ10の底部に位置している残留物Rを、残留物Rの少なくとも一部が、把持部30が把持可能な把持位置P1を超えるまで、上方(Z軸正方向)に移動させる。把持位置P1は、例えば、
図3に示すように、後述する把持部30が有する突出部330の上端を基準に規定されてもよい。
【0038】
図5に示すように、移動部40は、本体部42と、本体部42に設けられる引き寄せ機構とを有している。本実施形態において、引き寄せ機構はマグネット41である。なお、引き寄せ機構は、残留物を本体部42に引き寄せることができる構成であれば特に限定されない。引き寄せ機構は、例えば、残留物Rを磁力によって本体部42に引き寄せるマグネットであってもよいし、吸気によって本体部42に引き寄せる吸着機構であってもよい。移動部40は、本体部42を上方に移動させることにより、引き寄せ機構によって引き寄せられた残留物Rを上方に移動させてもよい。これにより、把持部30は残留物Rを把持することができる。
【0039】
本体部42は、筐体20に固定されている支持機構43に接続されている。支持機構43は、Z軸方向に延伸する部材であり、Z軸方向に延伸する棒状の芯部434と、芯部434を長手方向軸として配置されるバネ433と、移動部材430Bと、固定部材430Aとを備える。移動部材430Bは、芯部434に対して可動であり、バネ433の下端に位置している。移動部材430Bの上下方向の動きに伴い、バネ433が伸縮する。支持機構43がバネ433を有することにより、残留物Rに大きさ(Z軸方向の高さ)のばらつきがある場合であっても、当該ばらつきを吸収することができる。これにより、残留物Rの引き寄せ時に、移動部40による過剰な押込みによってトラフが損傷する可能性を低減することができる。
【0040】
固定部材430Aは、バネ433の上端に位置しており、芯部434に対して固定されている。固定部材430Aの一部は、筐体20の壁面に対して平行となるように形成されており、例えば、固定部材430Aと、第1接続部材431との間に筐体20を挟み、ねじ止めすることにより、支持機構43が筐体20に対して固定され得る。移動部材430Bは、第2接続部材432を介して、本体部42と接続されている。
【0041】
本体部42は、図示していない任意の移動機構によって上下方向(Z軸方向)に移動させることができる。移動機構は、例えば
図2に示すロボットアーム200が備えていてもよい。移動部40の動作の一例は次の通りである。通常時において、本体部42およびマグネット41の自重によってバネ433は伸びた状態となっている。ロボットアーム200によって筐体20がトラフ10の上方に搬送され、筐体20がトラフ10に近接する方向に移動すると、マグネット41によって残留物Rが本体部42に引き寄せられる。移動機構によって筐体20内の本体部42を上方に移動させることにより、移動部材430Bが上方に移動し、バネ433が縮んだ状態となる。当該本体部42の上方への移動とともに残留物Rは上方に移動する。
【0042】
上述したように、本実施形態において、引き寄せ機構はマグネット41である。換言すると、移動部40はマグネット41を有しており、残留物Rを磁力により引き寄せる。当該構成により、残留物Rを磁力により引き寄せることができるため、残留物Rの表面形状に凹凸がある場合であっても残留物Rを引き寄せることができる。また、マグネット41は耐熱性のある素材であるため、残留物Rの表面温度が高温であっても引き寄せ機構が劣化する可能性を低減することができる。
【0043】
マグネット41としては、例えばリフティングマグネットを用いることができる。当該リフティングマグネットは、永磁式であってもよいし、電磁式であってもよい。
【0044】
<把持部30>
除去機構1は、把持部30を備えている。把持部30は、溝部11内に挿入可能であり、残留物Rを把持するためのものである。より具体的には、把持部30は、把持部30の少なくとも一部を溝部11内に挿入し、残留物Rを把持するものである。
【0045】
図5に示すように、把持部30は、本体部31と、エアハンド32とを備えている。また、エアハンド32は、
図3および
図4に示すように、X軸方向において互いに間隔を空けて配置される第1部分321および第2部分322を有する。把持部30は、第1部分321と第2部分322とを互いに近づくように移動させることにより残留物Rを物理的に把持する。
【0046】
第1部分321および第2部分322は、それぞれY軸方向に所定の長さを有する板状の部材である。これにより、残留物Rの把持を容易にすることができる。また、第1部分321および第2部分322は、それぞれ残留物Rの把持を容易にするための突出部330を有している。突出部330は、第1部分321および第2部分322の下端に設けられ得る。これにより、残留物Rの把持をより確実にし、把持した残留物Rが落下する可能性を低減することができる。
【0047】
図5に示すように、本体部31と、エアハンド32とは接続されている。本体部内部には、エアハンド32の第1部分321と第2部分322とを移動させる移動機構が設けられている。本体部31は、筐体20に固定されている支持機構33に接続されている。支持機構33は、Z軸方向に延伸する部材であり、芯部334と、芯部334を長手方向軸として配置されるバネ333と、移動部材330Bと、固定部材330Aとを備える。移動部材330Bは、芯部334に対して可動であり、バネ333の下端に位置している。移動部材330Bの上下方向の動きに伴い、バネ333が伸縮する。
【0048】
すなわち、バネ333を伸縮させることにより、エアハンド32の上下方向の位置を調整することができる。これにより、移動部40が残留物Rを移動させた(引き寄せた)位置においてエアハンド32が残留物Rを把持できるよう、エアハンド32の位置を調整することができる。また、支持機構33がバネ333を備えることにより、エアハンド32によって残留物Rを把持した後に運搬する際の振動を吸収することができる。これにより、運搬途中に移動部40および把持部30から、残留物Rが落下する可能性を低減することができる。
【0049】
固定部材330Aは、バネ333の上端に位置しており、芯部334に対して固定されている。固定部材330Aの一部が、例えば、筐体20に固定されている第1接続部材331と接合されることにより、支持機構33が筐体20に対して固定され得る。移動部材330Bは、第2接続部材332を介して、本体部42と接続されている。
【0050】
本体部31は、図示していない任意の移動機構によって上下方向(Z軸方向)に移動させることができる。移動機構は、例えば
図2に示すロボットアーム200が備えていてもよい。
【0051】
なお、上述した移動部40は、X軸方向において把持部30と重ならない位置に配置されている。換言すれば、移動部40は、第1部分321と第2部分322との間の空間より外に配置されている。当該構成により、第1部分321と第2部分322とが互いに近づくように移動しても、第1部分321および第2部分322が移動部40と接触しないため、移動部40が把持部30による把持動作を妨げる可能性を低減することができる。
【0052】
上述したように、本実施形態の除去機構1は、鋳型内へ溶湯を導くトラフ10に形成されている溝部11に存在する溶湯の残留物Rを、溝部11から除去する除去機構1である。除去機構1は、溝部11内に挿入可能であり、残留物を把持する把持部30と、把持部30が残留物Rを把持可能な把持位置まで、溝部11に残留した残留物Rを移動させる移動部40と、を備える。
【0053】
当該構成により、除去機構1は、溝部11から残留物を除去することができる。すなわち、人手を介さずにトラフ10の溝部11に残留した残留物Rを除去することができる。
【0054】
また、トラフ10の溝部11は、溝部11の長手方向と直交する平面でトラフ10を切断した切断面において、溝部11の開口部から下方に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する2つの側面13A、13Bと、当該2つの側面13A、13Bの下端に連なる底面14と、を有している。これにより、溝部11の底面14の幅、または底面14に位置する残留物Rの上面の高さにおける側面13Aと側面13Bとの距離は、把持動作を行う前の把持部30の第1部分321と第2部分322との間の距離よりも短くなっている。上記除去機構1において、移動部40は、溝部11の底面14に残留した残留物Rを把持位置P1まで移動させる。
【0055】
当該構成により、把持部30のエアハンド32が溝部11の2つの側面13A、13Bに当たって把持部30が溝部11の底面14に届かない場合であっても、把持部30は残留物Rを把持することができる。すなわち残留物Rを除去するために残留物Rを把持する装置が浸入しづらい形状を有するトラフであっても人手を介さずに溝部11に残留した残留物Rを除去することができる。
【0056】
<残留物Rの除去方法>
以下では、溝部11に存在する溶湯の残留物Rを、溝部11から除去する方法について説明する。以下の方法は除去方法の一例であり、下記の流れに限定されるわけではない。
【0057】
まず、鋳型108への溶湯102の注入が完了すると、残留物Rを把持する把持部30を、溝部11の所定の位置に配置する(配置ステップ)。当該配置ステップは、例えば、除去機構1の筐体20を、ロボットアーム200によってトラフ10の溝部11の所定の位置に搬送することにより実現され得る。これにより、筐体20が備える、残留物Rを把持する把持部30が、溝部11の所定の位置に配置される。
【0058】
また、配置ステップの前に、配置ステップと並行して、あるいは配置ステップの後に、溝部11に残留した残留物Rを分断してもよい(分断ステップ)。当該分断ステップは、例えば、除去機構1の分断部60によって実施され得る。当該分断ステップは、必須の工程ではない。分断ステップを含むことにより、残留物Rを分断することができる。これにより、残留物Rの1片のサイズが小さくなり、残留物Rの回収が容易となる。また、後述する冷却ステップの前に分断ステップを実施することにより、残留物Rが冷却されて硬くなる前に容易に分断することができる。
【0059】
また、溝部11に残留した残留物Rを冷却してもよい(冷却ステップ)。当該冷却ステップにおける冷却方法は特に限定されず、筐体20が備える冷却部50によって、迅速に実施されてもよいし、自然冷却による冷却などであってもよい。冷却ステップを実施することにより、残留物Rが固化し、続く除去作業が容易となる。また、冷却によって残留物Rの磁性が戻るため、磁力を用いた回収が可能となる。
【0060】
冷却ステップが冷却部50によって実施される場合、ロボットアーム200によって筐体20をトラフ10の上方に搬送した後、Y軸方向に沿って移動させることにより、溝部11に残留した残留物R全体を冷却することができる。冷却部50によって残留物Rを冷却することにより、残留物Rの温度を迅速に下げることができる。これにより、後述する移動部40および把持部30による残留物Rの回収作業を開始するまでの時間、または残留物Rが磁性を取り戻すまでの時間を短縮することができる。すなわち、除去機構1による残留物Rの回収効率を向上させることができる。
【0061】
次に、溝部11に残留した残留物Rを、把持部30が残留物Rを把持可能となる把持位置P1まで移動させる(移動ステップ)。当該移動ステップは、例えば、除去機構1の移動部40によって、実施され得る。
【0062】
移動ステップの後、把持部30によって、溝部11から把持位置P1まで移動させた残留物Rを把持する(把持ステップ)。その後、残留物Rを把持した状態の把持部30を移動させ、残留物Rの回収ボックス上で把持を解除することにより残留物Rを回収してもよい。
【0063】
上述のように、本発明の実施形態に係る除去方法は、鋳型内へ溶湯を導くトラフ10に形成されている溝部11に存在する溶湯の残留物Rを、溝部11から除去する除去方法である。当該除去方法は、残留物Rを把持する把持部30を溝部11内の所定の位置に配置する配置ステップと、前記所定の位置に配置した把持部30が残留物Rを把持可能な把持位置P1まで、溝部11に残留した残留物Rを移動させる移動ステップと、溝部11から把持位置P1まで移動させた残留物Rを把持部30により把持する把持ステップと、を含む。
【0064】
当該構成により、除去機構1は、溝部11から残留物を除去することができる。すなわち、人手を介さずにトラフ10の溝部11に残留した残留物Rを除去することができる。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 除去機構
10 トラフ
11 溝部
13A、13B 側面
14 底面
30 把持部
321 第1部分
322 第2部分
40 移動部
50 冷却部
60 分断部
P1 把持位置
【要約】
【課題】人手を介さずにトラフの溝部に残留した残留物を除去する。
【解決手段】除去機構(1)は、鋳型内へ溶湯を導くトラフ(10)に形成されている溝部(11)に存在する溶湯の残留物(R)を、溝部(11)から除去する除去機構(1)であって、溝部(11)内に挿入可能であり、残留物(R)を把持する把持部(30)と、把持部(30)が残留物(R)を把持可能な把持位置(P1)まで、溝部(11)に残留した残留物(R)を移動させる移動部(40)と、を備える。
【選択図】
図2