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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】機械的表面処理のための工具および方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 39/00 20060101AFI20230208BHJP
   B23P 9/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B24B39/00
B23P9/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021521769
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 DE2019100838
(87)【国際公開番号】W WO2020083425
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102018126185.3
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ クックーク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブシュカ
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-071971(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012015308(DE,A1)
【文献】特開昭55-157475(JP,A)
【文献】特表2004-504166(JP,A)
【文献】特開昭60-177897(JP,A)
【文献】特表2002-526271(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107138915(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
B23P5/00-17/06
B23P23/00-25/00
B21H1/00-9/02
B30B1/00-7/04
B30B12/00-13/00
B30B15/30-15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的表面処理のための工具(1)であって、圧媒体による充填のために設けられたキャビティ(5)が形成されているハウジング(2)を有するとともに、前記圧媒体の基礎圧力(p)に曝され、かつ処理される被加工物表面上を圧延するために設けられた、1つのローラ体(10)を有し、前記ハウジング(2)が、筒状体として構成され、前記ローラ体(10)は前記ハウジング(2)の先端に配置され、前記圧媒体の中に前記基礎圧力(p )に重畳される標的圧力パルス(Δp)を発生させるように構成された圧電アクチュエータ(3)の一部である共振器(4)が前記ハウジング(2)内に組み込まれていることを特徴とする、工具(1)。
【請求項2】
球体が、ローラ体(10)として設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の工具(1)。
【請求項3】
前記ローラ体(10)と前記筒状体との間で有効であるシール(11)を特徴とする、請求項またはに記載の工具(1)。
【請求項4】
機械的表面処理のための方法であって、回転する金属被加工物の表面が、請求項1に従って構成された工具(1)によって脈動圧力を適用することによって処理され、圧力パルス(Δp)が、前記圧媒体の基礎圧力(p)に重畳される、方法。
【請求項5】
圧力の前記脈動適用が、前記被加工物の回転速度の少なくとも24倍に対応する周波数で発生することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記工具(1)が、圧力の前記脈動適用中に前記被加工物に対して直線に変位され、前記直線変位の速度が、少なくとも6の係数だけ、前記被加工物上における前記ローラ体(10)の表面速度とは異なることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ーラ軸受リングまたは摺動軸受リングのシール表面を処理するための請求項1に記載の工具(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる、機械的表面加工のために提供される工具に関する。本発明はまた、機械的表面加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な工具は、DE102011/050662(B4)から公知である。それは、接続ロッドアイを加工するための圧延工具である。圧延工具は、全体的に回転され得、圧延工具の凹部内に挿入されるローラ体を有し、凹部にそって、加圧流体によって外側に作用され、DE102011/050662(B4)の場合の流体は、エアロゾルである。
【0003】
別の圧延工具が、DE10340267(A1)に開示されている。この圧延工具は、油圧駆動式成形ローラである。圧延ローラとも称される成形ローラは、被加工物が巻き取られている間に加工円周を有する被加工物に沿って回転する。ここで、加工範囲は、圧延ローラの荷重支持接触エリアとは空間的に分離されている。特に、荷重支持接触エリアは、断面で円弧の形状に湾曲され、被加工物接触エリアの両側に配置される。圧延工具は、動的負荷に曝される構成要素の加工に特に好適であるべきである。
【0004】
被加工物の表面のハンマー加工もまた、分類上、公知である。この文脈では、例としてWO2016/135169(A1)を参照する。
【0005】
振動ヘッドによる精密加工が、DE19634839(A1)に説明されている。加工は、回転する被加工物上で実施され、リニアモータが、回転する被加工物に対して工具のヘッドを押し当て、同時に、振動デバイスがヘッドを振動させるために提供される。振動ヘッドを有する微細加工デバイスが、カムシャフトの加工のために提供される。
【0006】
EP0253907(B1)は、横穴を有する圧延ピンのための方法を開示している。この方法の文脈では、脈動圧延力が部分的に使用され、非脈動圧延力が部分的に使用される。
【0007】
深圧延クランクシャフトのための方法が、例えば、DE3037688(C2)に説明されている。方法は、軸受ピンの移行半径で特に使用可能であるはずである。方法の間に発生する圧延力は、30~300ヘルツの周波数で脈動する。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0052262(A1)号は、車軸軸受けのために提供されるシール装置を記載しており、このシール装置は、弾性シール要素と金属製の停止要素とを備える。ここでの停止要素は、ショットブラスト処理によって加工された表面を有する。
【0009】
EP1296801(B1)は、複合スカイビングおよびローラバニシング工具を説明している。工具は、中空被加工物の円筒内部の表面加工を意図する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、被加工物の表面加工、特に、先行技術と比較してさらに発展した、シール表面の加工のための選択肢を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、この目的は、請求項1の特徴を有する表面加工工具によって達成される。目的はまた、請求項7に記載の機械的表面加工のための方法によっても達成される。表面加工方法に関連して以下に説明される本発明の構成および利点はまた、デバイス、すなわち、工具にも同様に適用され、逆も同様である。
【0012】
公知である基礎構成では、工具は、圧媒体による充填のために設けられたキャビティが形成されているハウジングと、圧媒体の基礎圧力に曝され、かつ加工される被加工物表面上を圧延するために設けられた、少なくとも1つのローラ体と、を備える。本発明によると、工具は、圧媒体中の標的圧力パルスを発生させるように構成されている共振器を備える。圧媒体の基礎圧力は、基礎圧力に加えられ、かつそれを重畳する圧力パルスによる、標的化された脈動様式で増大される。
【0013】
共振器は、加工される被加工物上の工具の接触圧力に対して脈動負荷を重畳し、これは、被加工物の表面の構造化につながる。圧媒体に対する圧力の標的脈動適用を介したローラ本体上の振動性負荷の発生は、ローラ体によって被加工物表面に適用される力が、単純な様式で設定、制御および制限されることを可能にする。
【0014】
圧媒体中の圧力パルスを発生させるために使用される共振器は、例えば、圧電アクチュエータである。技術的背景について、この文脈の例として、DE102014/220883(B4)が参照される。
【0015】
考えられる実施形態によると、表面加工工具は、ハウジングの先端に配置された単一のローラ体を有する。ハウジングは、全体的に筒状に構成される。
【0016】
ローラ体は、例えば、ボールである。あるいは、ローラ本体は、ローラ、例えば、バレルローラであってもよい。ローラ体は、シールによってハウジングからシールされ得る。
【0017】
特にスペースを節約するための構成では、共振器は、工具のハウジング内に組み込まれ得る。圧力パルスを可能な限り減衰せずに転送するためには、ローラ本体の近くにおける共振器の配置が有利である。共振器は、圧延プロセスに必要とされる、圧媒体中の基礎圧力を発生させるためのデバイス、特に、油圧ポンプから空間的に分離され得る。特に、油圧ポンプは、別個の機械として提供され得、表面加工工具の一部ではなく、単にそこに連結されることを意図される。
【0018】
被加工物の表面上へのローラ体の圧延中、ローラ体と被加工物表面との間の接触は、方法の好ましい実行において、永続的に維持される。ローラ体の幾何学的形状に応じて、ローラ体は、例えば、圧力の脈動適用に起因して、加工物表面に球形の陥凹を形成する。被加工物表面上に生成された陥凹の分布は、典型的には、確率的または幾らか確率的である。
【0019】
加工された表面が金属構成要素、例えば、フランジ、ローラ軸受リング、または滑り軸受リングのシール表面である場合、耐摩耗性、シールの摩擦、およびシール効果の間の特に良好な関係は、表面構造化によって達成される。
【0020】
目的は、機械的表面処理のための本発明による方法によって達成され、方法において、回転する金属被加工物の表面は、本発明による工具を使用して、脈動圧力を適用することによって加工され、圧力パルスまたは圧力インパルスΔpが、標的化様式で圧媒体の基礎圧力pに重畳される。
【0021】
共振器によって実装される脈動圧力適用の周波数は、具体的には、加工される被加工物が回転する周波数よりも著しく高い。例えば、圧力の脈動適用は、被加工物の回転速度の少なくとも24倍に対応する周波数で行われる。
【0022】
圧力の脈動適用中、工具は、典型的には、被加工物に対して直線に変位される。直線変位の速度は、好ましくは、少なくとも6の係数だけ、被加工物上のローラ体の表面速度とは異なる。これは、工具が被加工物に対して変位される速度が、回転する被加工物の表面速度よりも著しく低いか、著しく高いかのいずれかであることを意味する。
【0023】
工具の低速前進の場合、多数の陥凹が、円筒被加工物表面上に生成され得、これらは、ともに螺旋軌道を描く。被加工物表面上の陥凹の非常に均一な分布は、圧力の脈動適用の高周波数および螺旋軌道の低ピッチによって全体的に達成される。
【0024】
一方、加工される表面が、被加工物の回転軸、すなわち、中心軸に対して垂直に位置合わせされる平面にある場合、工具は、加工中、例えば、内側から外側に、または外側から内側に半径方向に変位され得る。このシフトが加工プロセス中に1回のみ起こる場合、陥凹の跡は、渦巻きを描いて形成される。加工された表面、例えば、円筒構成要素の端面またはフランジの表面上の陥凹の均一分布はまた、ここでは、半径方向変位の低速度、および脈動圧力適用の十分に高い周波数に起因して達成され得る。
【0025】
言及された円盤形状の表面のタイプはまた、工具を、加工される表面の接線速度と比較して相対的に速く、半径方向内側および半径方向外側の極点間を振動性様式で移動させることによって加工され得る。工具を半径方向に移動させることによって、波が、円盤形状の被加工物表面上に描かれる。被加工物の数回転の過程では、これらの波が重畳され、それにより、この方法の変形例は、良好な近似によって均一である、被加工物表面上の陥凹の見かけ上確率的な分布を結果的にもたらす。同様の方法はまた、円筒被加工物表面にも使用され得る。この場合、工具は、被加工物に対して振動性様式で軸方向に移動される。この振動の周波数は、被加工物の回転速度よりも高い。
【0026】
全ての場合、表面加工工具は、加工される表面の硬化および構造化の両方を達成し、加工パラメータは、広範囲で調整可能である。
【0027】
加工される被加工物の回転に対して最終的に選択される周波数にかかわらず、被加工物の表面上で完了される圧延路の距離の単位lあたりの圧力パルスまたは圧力インパルスの数Tが、1メートルあたり100~5000である場合に特に好ましい。
【0028】
特に、適用される圧力パルスまたは圧力インパルスΔpは、0.2×p~200barの範囲内であり、pは、ローラバニシング中の圧媒体の中の基礎圧力に対応する。基礎圧力の任意のシステム関連の変動は、圧力パルスが現在の基礎圧力に常に加えられるため、無視することができる。
【0029】
金属構成要素、特に、フランジまたは軸受の構成要素のシール表面を加工するための本発明による工具の使用が特に有用であることが証明された。シール、特に、プラスチック製の弾性シールが接触する構成要素の表面は、シール表面と称される。
【0030】
軸受の構成要素は、具体的には、ローラ軸受リング、具体的には、ホイール軸受、または摺動軸受リングである。シールのための金属構成要素のその接触エリアの表面構造化に関して、耐摩耗性、シールの摩擦、および達成されるシール効果の間の特に良好な関係が得られる。
【0031】
以下では、本発明の例示的な実施形態が、2つの図面によって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】簡易断面図における機械的表面加工のための工具を示す。
図2】圧延接触における脈動圧力によるローラバニシングの例示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
機械的表面加工のための工具1は、例示的な実施形態では、筒状体として構成されている、ハウジング2を有する。工具1は、改質ローラバニシングを意図し、単純化のために、ローラバニシング工具とも称される。工具1は、シール表面として機能するように意図される被加工物の表面を加工するために使用される。特に、被加工物の表面は、軸受、特に、ローラまたは滑り軸受、好ましくは、ホイール軸受のシール表面であり得る。シール表面は、軸受の軸受リング、特に、ホイール軸受のローラ軸受リング上に直接形成される、
【0034】
図1から分かるように、共振器4は、工具1のハウジング2内に統合されている。共振器4は、圧電アクチュエータ3の一部であり、筒状体を通って延在し、かつ圧媒体によって充填される、キャビティ5に隣接している。圧媒体は、例えば、作動油または冷却潤滑剤である。
【0035】
キャビティ5は、筒状体全体を通して伸び、拡径された断面を有する中央部分6に隣接する、縮径された断面の2つの部分7、8を有する。筒状体の先端のキャビティ5の端部分9は、部分7に対して広げられており、一般的にローラ体10と称される加工ボールまで延在している。
【0036】
加工ボールは、筒状体から突出し、シール11によってそこからシールされる。筒状体の反対側、すなわち、後方側では、追加のシール12が見られ、これは、圧力媒体供給源への工具1のシールされた接続を可能にする。
【0037】
圧媒体の基礎圧力pが、圧力媒体供給源によってキャビティ5内で設定される。圧力の脈動適用は、共振器4を含む圧電アクチュエータ3によって、この基礎圧力pに重畳される。個々の圧力パルスまたは圧力インパルスΔpは、ローラ体10が、加工中に金属被加工物表面に個々の陥凹を生成することを確保する。
【0038】
加工プロセス中、本発明の一実施形態では、被加工物は、加工デバイス、具体的には、旋盤内にクランプされる。加工される被加工物表面は、典型的には、円筒形状を有する。工具1は、加工のために半径方向に被加工物まで持ち上げられ、加工中、軸方向、すなわち、被加工物中心軸の長手方向に変位される。加工ボールが脈動する周波数は、被加工物の表面速度よりも何倍も高い。ローラ体10と被加工物表面との間の接触は、加工プロセス中に永続的に維持される。
【0039】
図2は、ローラ体10と金属被加工物との間の圧延接触のエリア内の脈動圧力プロファイルによるローラバニシングの例示を示す。
【0040】
図は、被加工物の表面上をカバーした圧延路lに対してプロットされた圧延圧力を示す。ローラバニシングされる被加工物の表面上のローラ体10の圧力プロファイルが示される。ローラバニシングに必要とされるbar単位の基礎圧力pから開始し、bar単位の正の圧力パルスまたは圧力インパルスΔpが発生し、最大圧力p+Δpが達成され、これが、加工される被加工物に脈動様式で伝達される。これは、特に、そのような被加工物のシール表面のエリアにおいて、耐摩耗性、シールの摩擦、および達成されるシール効果に関して上記の利点を有する、陥凹を伴う金属被加工物上の永続的表面構造を結果的にもたらす。
【0041】
脈動圧力プロファイルは、図2に概略的に示されるように、正弦曲線を描かなければならない必要はなく、圧延路lの過程における被加工物の表面にわたって分布される最大圧力の上昇、低下、反復、差異、および不規則なプロファイルも示してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 工具
2 ハウジング
3 圧電アクチュエータ
4 共振器
5 キャビティ
6 中央部分
7 部分
8 部分
9 端部分
10 ローラ体
11 シール
12 追加のシール
図1
図2