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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】金型用ガス抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20230208BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B22D17/22
B22C9/06 P
B22D17/22 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021550865
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019039009
(87)【国際公開番号】W WO2021064923
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005256
【氏名又は名称】株式会社アーレスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 香聖
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-155272(JP,A)
【文献】特開平04-013464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/06
B22D 17/22
B29C 45/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに連なる流入路と、
前記金型の外部へガスを排出する排出路と、
前記流入路と前記排出路とを連通する連通路と、
前記連通路を開閉するバルブ装置と、
気流を調整する気流調整部と、を備え、
前記バルブ装置は、軸方向の第1端部および第2端部を有し軸線上に配置される弁棒と、
前記第1端部に固定される弁体と、
前記弁棒の前記第2端部を保持して前記弁体を前記軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記連通路を形成する壁面は、前記軸方向に移動した前記弁体が当接することで前記連通路を閉じる環状の弁座面と、
前記弁座面の全周から前記第2端部に向かって延びる内周壁面と、
前記内周壁面のうち前記弁座面とは反対側の端部を塞ぐと共に、前記弁棒が挿通される挿通孔が設けられる端壁面と、を備え、
前記内周壁面と前記弁棒の外周面との間には全周に亘って隙間があり、
前記内周壁面には、前記排出路に連なる排出開口が設けられ、
前記流入路は、前記軸線の全周に亘って設けられると共に前記弁座面の内側の前記連通路に連なる流入空間と、
前記流入空間を形成する壁面に設けられた流入開口を介して前記流入空間に連なる流入端部と、を備え、
前記軸方向から見て、前記軸線から離れた位置に前記流入開口が設けられ、前記流入開口から前記軸線のまわりの一方側へ前記流入端部が延び、
前記流入開口の面積は、前記軸線に垂直な前記流入空間の流路断面積よりも小さく、
前記気流調整部は、前記流入空間、前記流入開口および前記流入端部によって形成され、前記排出路からガスを排出するために前記排出路へ向かうガスが前記流入端部から前記流入開口を介して前記流入空間へ流れることによって、前記流入空間の内部に前記軸線を中心とした回転方向の気流を発生させる金型用ガス抜き装置。
【請求項2】
前記流入端部を形成する壁面は、前記流入開口へ向かうにつれて前記軸方向の前記第2端部側へ傾斜する傾斜面を備えている請求項記載の金型用ガス抜き装置。
【請求項3】
金型のキャビティに連なる流入路と、
前記金型の外部へガスを排出する排出路と、
前記流入路と前記排出路とを連通する連通路と、
前記連通路を開閉するバルブ装置と、
気流を調整する気流調整部と、を備え、
前記バルブ装置は、軸方向の第1端部および第2端部を有し軸線上に配置される弁棒と、
前記第1端部に固定される弁体と、
前記弁棒の前記第2端部を保持して前記弁体を前記軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記連通路を形成する壁面は、前記軸方向に移動した前記弁体が当接することで前記連通路を閉じる環状の弁座面と、
前記弁座面の全周から前記第2端部に向かって延びる内周壁面と、
前記内周壁面のうち前記弁座面とは反対側の端部を塞ぐと共に、前記弁棒が挿通される挿通孔が設けられる端壁面と、を備え、
前記内周壁面と前記弁棒の外周面との間には全周に亘って隙間があり、
前記内周壁面には、前記排出路に連なる排出開口が設けられ、
前記気流調整部は、前記弁棒および前記内周壁面の一方から他方へ向かって張り出すと共に、前記弁棒を中心とした螺旋状に形成されている螺旋壁を備え、前記挿通孔よりも前記流入路側に配置され、ガスの排出時に前記軸線を中心とした回転方向の気流を発生させる金型用ガス抜き装置。
【請求項4】
前記気流調整部から前記排出開口までの前記軸方向の距離は、前記軸線に垂直に交わる直線が前記内周壁面によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さよりも長い請求項1から3のいずれかに記載の金型用ガス抜き装置。
【請求項5】
前記バルブ装置は、前記弁棒が貫通する筒状のガイドを備え、
前記ガイドの外周面と前記内周壁面との間には全周に亘って隙間があり、
前記ガイドの先端が前記排出開口よりも前記第1端部側に位置し、
前記ガイドの前記外周面および前記先端が前記端壁面の一部であり、前記先端に前記挿通孔が開口し、
前記気流調整部から前記先端までの前記軸方向の距離は、前記軸線に垂直に交わる直線が前記内周壁面によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さよりも短い請求項1から4のいずれかに記載の金型用ガス抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型のキャビティから金型の外部へガスを排出する金型用ガス抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型のキャビティに溶湯を注入するとき、真空タンク等によりキャビティ内のガスをガス抜き路から吸引して金型の外部へ排出し、キャビティに溶湯が充填された後でガス抜き路をバルブ装置によって閉じる金型用ガス抜き装置が知られている(特許文献1)。このバルブ装置は、ガス抜き路の壁面に形成された弁座面に当接してガス抜き路を閉じる弁体と、その弁体が先端に固定される弁棒と、ガス抜き路の外側に位置して弁棒を軸方向に移動させる駆動部と、を備え、ガス抜き路の壁面に形成された挿通孔に弁棒が挿通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-104769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ガスの吸引時に、溶湯の一部が硬化した固体やキャビティ内の離型剤などの微細な粉粒体が、弁棒と挿通孔との間に入り込むことがある。そうすると、粉粒体により挿通孔の内周面に対して弁棒が摺動し難くなって、バルブ装置が適切に動かなくなり、弁体が弁座面に当接できずに弁体と弁座面との隙間から溶湯が漏れるおそれがある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、弁棒と挿通孔との間に粉粒体を入り込み難くできる金型用ガス抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の金型用ガス抜き装置は、金型のキャビティに連なる流入路と、前記金型の外部へガスを排出する排出路と、前記流入路と前記排出路とを連通する連通路と、前記連通路を開閉するバルブ装置と、気流を調整する気流調整部と、を備え、前記バルブ装置は、軸方向の第1端部および第2端部を有し軸線上に配置される弁棒と、前記第1端部に固定される弁体と、前記弁棒の前記第2端部を保持して前記弁体を前記軸方向に移動させる駆動部と、を備え、前記連通路を形成する壁面は、前記軸方向に移動した前記弁体が当接することで前記連通路を閉じる環状の弁座面と、前記弁座面の全周から前記第2端部に向かって延びる内周壁面と、前記内周壁面のうち前記弁座面とは反対側の端部を塞ぐと共に、前記弁棒が挿通される挿通孔が設けられる端壁面と、を備え、前記内周壁面と前記弁棒の外周面との間には全周に亘って隙間があり、前記内周壁面には、前記排出路に連なる排出開口が設けられ、前記気流調整部は、前記挿通孔よりも前記流入路側に配置され、ガスの排出時に前記軸線を中心とした回転方向の気流を発生させる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の金型用ガス抜き装置によれば、キャビティに連なる流入路と、金型の外部へガスを排出する排出路とが連通路によって連通している。この連通路を形成する壁面は、バルブ装置の弁体が当接可能な環状の弁座面と、弁体が第1端部に固定された弁棒の第2端部に向かって弁座面から延びる内周壁面と、内周壁面のうち弁座面とは反対側の端部を塞ぐ端壁面と、を備えている。弁棒の外周面と内周壁面との間に全周に亘って隙間が空き、弁棒が挿通される挿通孔が端壁面に設けられる
【0008】
入路は、軸線の全周に亘って設けられると共に弁座面の内側の連通路に連なる流入空間と、この流入空間を形成する壁面に設けられた流入開口を介して流入空間に連なる流入端部と、を備えている。これらの流入空間、流入開口および流入端部よって気流調整部が形成されている。排出路からガスを排出するために、真空タンク等によるガスの吸引によって排出路へ向かうガスは、流入端部、流入開口、流入空間、連通路を順に通る。軸線に垂直な流入空間の流路断面積よりも流入開口の面積が小さいので、流入開口から出たガスによって流入空間内に気流を発生させることができる。弁棒の軸方向から見て、この気流の始点となる流入開口が軸線から離れた位置に設けられ、その流入開口から流入端部が軸線のまわりの一方側へ延びている。これにより、流入端部の先端の流入開口から流入空間に出たガスの気流が軸線のまわりの他方側へ向かう。更に、軸線の全周に亘って流入空間が存在するので、他方側へ向かう気流が流入空間内をそのまま他方側へ流れ、流入空間の内部に軸線を中心とした回転方向の気流が発生する。その結果、真空タンク等でガスを吸引するときに、連通路よりも流入路側(上流)に位置する気流調整部よりも排出路側(下流)では弁棒を中心とした旋回流が発生する。この旋回流によって、連通路に侵入した粉粒体を挿通孔よりも上流で内周壁面へ押し当てることができ、内周壁面に設けた排出開口から排出路を通って粉粒体を金型の外部へ排出できる。よって、弁棒と挿通孔との間に粉粒体を入り込み難くできる。
【0009】
さらに、ガスの吸引時に、気流調整部は弁座面よりも上流の流入路で旋回流を発生させるので、連通路にある挿通孔の近傍では粉粒体を内周壁面へ確実に押し当てることができる。その結果、弁棒と挿通孔との間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0010】
請求項記載の金型用ガス抜き装置によれば、請求項記載の金型用ガス抜き装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。流入端部を形成する壁面は、流入開口へ向かうにつれて弁棒の軸方向の第2端部側へ傾斜する傾斜面を備えている。これにより、流入開口から出る気流を弁棒の軸方向の第2端部側(排出路側)にも向けることができるので、ガスの吸引時に気流調整部により発生する旋回流の安定性を向上できる。その結果、旋回流によって弁棒と挿通孔との間に粉粒体を更に入り込み難くできる。
請求項3記載の金型用ガス抜き装置によれば、キャビティに連なる流入路と、金型の外部へガスを排出する排出路とが連通路によって連通している。この連通路を形成する壁面は、バルブ装置の弁体が当接可能な環状の弁座面と、弁体が第1端部に固定された弁棒の第2端部に向かって弁座面から延びる内周壁面と、内周壁面のうち弁座面とは反対側の端部を塞ぐ端壁面と、を備えている。弁棒の外周面と内周壁面との間に全周に亘って隙間が空き、弁棒が挿通される挿通孔が端壁面に設けられる。そして、挿通孔よりも流入路側に配置された気流調整部は、弁棒および内周壁面の一方から他方へ向かって張り出すと共に、弁棒を中心とした螺旋状に形成される螺旋壁を備えている。これにより、真空タンク等でガスを吸引してガスを排出するときに、気流調整部によって弁棒の軸線を中心とした回転方向の気流が発生し、気流調整部よりも排出路側(下流)では弁棒を中心とした旋回流が発生する。この旋回流によって、連通路に侵入した粉粒体を挿通孔よりも流入路側(上流)で内周壁面へ押し当てることができ、内周壁面に設けた排出開口から排出路を通って粉粒体を金型の外部へ排出できる。その結果、弁棒と挿通孔との間に粉粒体を入り込み難くできる。
【0011】
請求項4記載の金型用ガス抜き装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の金型用ガス抜き装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。気流調整部から排出開口までの弁棒の軸方向の距離は、軸線に垂直に交わる直線が内周壁面によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さよりも長い。これにより、ガスの吸引時に、気流調整部と排出開口との間で旋回流を十分に安定させることができる。その結果、旋回流によって弁棒と挿通孔との間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0012】
請求項5記載の金型用ガス抜き装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の金型用ガス抜き装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。バルブ装置は、弁棒が貫通する筒状のガイドを備えている。ガイドの外周面および先端が端壁面の一部であり、ガイドの先端に挿通孔が開口している。ガイドの先端が排出開口よりも第1端部側に位置し、ガイドの外周面と内周壁面との間に全周に亘って隙間があるので、その隙間によって連通路の一部が形成される。これにより、ガスの吸引時に気流調整部で発生した旋回流を、ガイドの外周面と内周壁面との間の隙間であってガイドの先端の近傍で安定させることができる。さらに、気流調整部からガイドの先端までの軸方向の距離は、軸線に垂直に交わる直線が内周壁面によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さよりも短い。そのため、気流調整部により形成された旋回流の勢いが十分に強いところに、挿通孔が開口したガイドの先端を位置させることができるので、挿通孔と弁棒との間に粉粒体をより一層入り込み難くできる。
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図2図1のII-II線における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図3図1のIII-III線における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図4】第2実施形態における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図5図4のV-V線における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図6図4のVI-VI線における金型用ガス抜き装置の断面図である。
図7】(a)は第3実施形態における金型用ガス抜き装置の断面図であり、(b)は図7(a)のVIIb-VIIb線における金型用ガス抜き装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1から図3を参照して、第1実施形態における金型用ガス抜き装置10について説明する。図1は第1実施形態における金型用ガス抜き装置10の断面図である。図2図1のII-II線における金型用ガス抜き装置10の断面図である。図3図1のIII-III線における金型用ガス抜き装置10の断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、金型用ガス抜き装置10は、鋳造用の金型1のキャビティ(図示せず)から空気などのガスを抜くための装置であり、金型1に取り付けられている。金型1は、固定型2と可動型3とを備え、固定型2と可動型3との間にキャビティが形成されている。なお、図1には、固定型2と可動型3との分割面4の近傍における金型用ガス抜き装置10の断面を示している。また、説明の都合上、その断面の紙面手前側や奥側に位置する流入路11の一部(流入端部19b,20b)を模式的に図1に示している。
【0017】
金型用ガス抜き装置10は、金型1のキャビティに連なる流入路11と、金型1の外部へガスを排出する排出路12と、流入路11と排出路12とを連通する連通路13と、連通路13を開閉するバルブ装置30と、を主に備えている。排出路12は、下流側(連通路13とは反対側)が真空タンク(図示せず)に繋がっている。金型1を用いた鋳造時には、流入路11、連通路13及び排出路12を介してキャビティ内のガスが真空タンクによって吸引される。
【0018】
流入路11は、固定型2に取り付けられる第1成形部14と、可動型3に取り付けられる第2成形部15との分割面16にそれぞれ設けた溝を合わせて形成される。その溝の一部である取付孔17が、第1成形部14及び第2成形部15の上端部に開口している。取付孔17は、軸線Cを中心とした断面円形状の孔であり、下端に底面17aを有する。この底面17aの一部には、バルブ装置30の弁体33が当接する。
【0019】
流入路11は、底面17aの中央に開口して直下へ延びると共にキャビティに連なる主流路18と、分割面16に平行な左右方向両側(図1紙面左右両側)へ主流路18からそれぞれ分岐する2本のバイパス19,20と、取付孔17の内周面17b及び底面17aを壁面とする流入空間24と、を備えている。流入空間24は、軸線Cの全周に亘って設けられている。
【0020】
バイパス19,20は、取付孔17の内周面17bに開口した流入開口19a,20aに連なる。バイパス19,20のうち、流入開口19a,20aから左右方向外側へ延びている部分が流入端部19b,20bである。この流入端部19b,20bの流路断面積は、流入開口19a,20aの近傍を除いた流入端部19b,20bの全長に亘って略一定に形成されている。
【0021】
流入開口19aは、図2に示す通り、軸線Cに垂直な断面を上方から見た状態において、軸線Cよりも図2の左側に位置し、分割面16から軸線Cの時計回りにずれた位置の内周面17bに開口している。流入端部19bは、流入開口19aから軸線Cのまわりのうち反時計回りの方向へ延びている。より具体的には、流入開口19aから内周面17bの接線方向へ流入端部19bが延びている。
【0022】
このような形状および配置の流入開口19a及び流入端部19bを形成するために、第1成形部14の分割面16に設ける溝を流入開口19aへ向かうにつれて深くし、第1成形部14の溝に挿入されると共に流入開口19aへ向かうにつれて突出量が大きくなる凸部15aを第2成形部15の分割面16から突出させている。
【0023】
流入開口20aは、図2に示す通り、軸線Cに垂直な断面を上方から見た状態において、軸線Cよりも図2の右側に位置し、分割面16から軸線Cの時計回りにずれた位置の内周面17bに開口している。流入端部20bは、流入開口20aから軸線Cのまわりのうち反時計回りの方向へ延びている。より具体的には、流入開口20aから内周面17bの接線方向へ流入端部20bが延びている。
【0024】
このような形状および配置の流入開口20a及び流入端部20bを形成するために、第2成形部15の分割面16に設ける溝を流入開口20aへ向かうにつれて深くし、第2成形部15の溝に挿入されると共に流入開口20aへ向かうにつれて突出量が大きくなる凸部14aを第1成形部14の分割面16から突出させている。
【0025】
また、流入端部19b,20bを形成する壁面はそれぞれ、流入開口19a,20aへ向かうにつれて軸線C方向の上側へ傾斜する傾斜面19c,20cを備えている。この傾斜面19c,20cは、流入端部19b,20bを形成する壁面のうち軸線C方向の下側の部位である。
【0026】
図1及び図3に示すように、連通路13は、上下方向に延びるように軸線Cに沿って形成される流路であり、軸線Cの全周に亘って設けられている。連通路13は、取付孔17に下端部が挿入された円筒状の筒体21によって形成されている。連通路13を形成する壁面は、筒体21の内周面の一部である内周壁面22と、内周壁面22と筒体21の端面との角の面取部分に形成された環状の弁座面23と、を備えている。
【0027】
内周壁面22は、軸線Cに垂直な断面が軸線Cを中心とした円形状に形成され、弁座面23の全周から上方(後述する弁棒31の第2端部31b側)へ延びている。内周壁面22の上部の周方向の一部には、排出路12に連なる排出開口26が形成されている。
【0028】
弁座面23は、内周壁面22から離れるにつれてテーパ状に拡径する円錐面状の部位であって、バルブ装置30の弁体33が当接する部位である。この弁体33が当接する部位よりも内周壁面22から離れた側に円錐面状の部位が延びている場合、その内周壁面22から離れた側に延びた円錐面状の部位は、流入路11の流入空間24の壁面の一部である。このように、弁座面23よりも上流が流入路11であり、弁座面23の内側の連通路13が流入路11の流入空間24に連なっている。
【0029】
図1から図3に示すように、バルブ装置30は、キャビティに溶湯が充填された後に連通路13を閉じることで、溶湯が排出路12を通って金型1の外部へ出ないようにするためのものである。バルブ装置30は、軸線C方向(軸方向)の第1端部31a及び第2端部31bを有し軸線C上に配置される弁棒31と、筒体21に固定されて弁棒31が貫通する筒状のガイド32と、弁棒31の第1端部31aに固定される弁体33と、弁体33の第2端部31bを保持して弁体33を軸線C方向に移動させる駆動部34と、を備えている。なお、本実施形態における各部の下方が軸線C方向の第1端部31a側であり、各部の上方が軸線C方向の第2端部31b側である。
【0030】
ガイド32は、一部が筒体21に挿入されて弁棒31の軸線C方向の移動を案内する部材である。ガイド32の上端部から径方向外側へフランジ32aが張り出している。このフランジ32aが筒体21の上端に固定されることで、内周壁面22のうち弁座面23とは反対側の端部がガイド32によって塞がれる。
【0031】
このガイド32の外周面32bと第1端部31a側の先端32cとは、連通路13を形成する壁面の一部としての端壁面である。先端32cは、排出開口26のうち最も第1端部31aに近い縁よりも第1端部31a側に位置し、先端32cの中央に弁棒31が挿通される挿通孔32dが開口している。ガイド32の外周面32bや、先端32cから突出した弁棒31の外周面と、内周壁面22との間には全周に亘って隙間があり、その隙間によって連通路13の一部が形成されている。
【0032】
弁体33は、弁座面23に当接することで連通路13を閉じる部位であり、弁棒31の第1端部31aから径方向外側へ張り出している。弁体33は主に流入空間24に位置し、弁体33と取付孔17の内周面17bとの間に全周に亘って流入空間24による隙間が形成されている。
【0033】
以上のような金型用ガス抜き装置10を用いた鋳造方法について説明する。まず、弁体33を底面17aに押し付けてバルブ装置30により連通路13を開けた状態で、排出路12に連なる真空タンクにより吸引を開始する。そうすると、キャビティ内のガスが、主流路18、バイパス19,20、流入空間24、弁座面23と弁体33との間、弁棒31及びガイド32と内周壁面22との間、排出路12を順に通って金型1の外部へ排出される。
【0034】
ガスを吸引しながらキャビティに溶湯(図示せず)を注入し、キャビティが溶湯で満たされると、流入路11を溶湯が上昇していく。弁体33のうち主流路18に面する端部に凹部33aが形成されており、上昇してきた溶湯がその凹部33aに衝突し、弁体33が溶湯から上方への圧力を受ける。その上方への圧力によって、駆動部34による押付力に逆らって弁体33が上方へ移動し、弁体33が弁座面23に当接して連通路13が閉じる。溶湯の硬化後に、バルブ装置30が固定された筒体21を取付孔17から外し、固定型2と可動型3とを開くことで、鋳造品が得られる。
【0035】
ここで、ガスを吸引しながら溶湯をキャビティに注入しているため、弁体33が弁座面23に当接する前に、溶湯の一部が飛び散って硬化した固体やキャビティ内の離型剤などの微細な粉粒体がガスと一緒に連通路13等を通っていく。このとき、粉粒体が弁棒31と挿通孔32dとの間に入り込むと、バルブ装置30が適切に動かなくなることがある。
【0036】
しかし、本実施形態では、流入空間24と流入端部19b,20bとによって気流調整部が形成され、この気流調整部によって弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体を入り込み難くできる。具体的に気流調整部は、軸線Cに垂直な流入空間24の流路断面積よりも、流入端部19b,20bと流入空間24との境界における流入開口19a,20aの面積が小さいので、流入開口19a,20aから出たガスによって流入空間24内に気流を発生させることができる。
【0037】
この気流の始点となる流入開口19a,20aが軸線Cから離れた位置にあり、その流入開口19a,20aから流入端部19b,20bが軸線Cのまわりに延びている。即ち、軸線C方向視において軸線Cの直角方向に流入端部19b,20bが延びていないので、気流調整部は、図2に矢印で示すように、軸線Cを中心とした回転方向の気流を流入空間24に発生させることができる。そして、軸線Cの全周に亘って設けられる流入空間24や連通路13が軸線C方向に連続しているので、真空タンクでガスを吸引することにより、気流調整部による回転方向の気流が、図2,3に矢印で示すような弁棒31や弁体33(軸線C)を中心とした旋回流となる。
【0038】
排出路12側(下流)に旋回流を発生させる気流調整部が、挿通孔32dよりも流入路11側(上流)に配置されているので、挿通孔32dよりも上流で旋回流により粉粒体を内周壁面22に押し当てることができる。そして、旋回流により粉粒体を内周壁面22に押し当てた状態で、内周壁面22に設けた排出開口26から粉粒体を金型1の外部へ排出できる。これらの結果、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体を入り込み難くできる。
【0039】
さらに、流入空間24及び流入端部19b,20bによる気流調整部は、弁座面23よりも上流の流入路11にあるので、ガスの吸引時に流入路11で旋回流を発生させることができる。そのため、連通路13にある挿通孔32dの近傍では旋回流が安定し、その旋回流により粉粒体を内周壁面22に確実に押し当てることができる。その結果、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0040】
流入空間24には2本の流入端部19b,20bがそれぞれ流入開口19a,20aを介して連通し、その流入開口19a,20aから流入端部19b,20bがそれぞれ同じ方向に延びている。これにより、流入開口19a,20aからそれぞれ出る回転方向の気流を互いに打ち消しあうことなく増幅できる。加えて、流入開口19aの面積と流入開口20aの面積とを合わせた大きな面積の流入開口から出る気流の勢いよりも、狭い流入開口19a,20aからそれぞれ出る気流の勢いを強くできる。これらの結果、弁棒31や弁体33を中心とした旋回流の安定性を向上できるので、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0041】
流入端部19b,20bの流路断面積は、流入端部19b,20bの略全長に亘って略一定に形成されているので、流入端部19b,20bを通る気流を安定させることができる。そのため、流入端部19b,20bを通って流入開口19a,20aから流入空間24へ出たガスによる、軸線Cを中心とした回転方向の気流を安定させ易くでき、ガスの吸引時に流入路11で発生する旋回流を安定させ易くできる。その結果、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0042】
気流調整部よりも下流の連通路13の壁面の一部である弁座面23は、下流へ向かうにつれて縮径しているので、その弁座面23に沿った旋回流の勢いを下流で強くできる。また、内周壁面22は軸線Cを含む断面において軸線Cと略平行に形成されているので、内周壁面22に沿った旋回流の勢いを弱まり難くできる。
【0043】
流入端部19b,20bを形成する壁面の傾斜面19c,20cは、流入開口19a,20aへ向かうにつれて弁棒31の軸線C方向の第2端部31b側へ傾斜している。これにより、流入開口19a,20aから出る気流を軸線C方向の第2端部31b側(排出路12側)にも向けることができるので、ガスの吸引時に気流調整部により発生する旋回流の安定性を向上できる。その結果、旋回流によって弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体を更に入り込み難くできる。
【0044】
気流調整部である流入空間24から排出開口26までの軸線C方向の距離L1は、軸線Cに垂直に交わる直線が内周壁面22によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さ(内周壁面22の内径)L2よりも長い。これにより、ガスの吸引時に、気流調整部と排出開口26との間で旋回流を十分に安定させることができる。その結果、旋回流によって弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0045】
挿通孔32dが開口しているガイド32の先端32cは、排出開口26よりも上流に位置する。そして、ガイド32の外周面32bと内周壁面22との間に全周に亘って隙間があり、その隙間が連通路13の一部となっている。これらにより、ガスの吸引時に気流調整部で発生した旋回流が先端32cの上流だけでなく下流にも生じるので、その旋回流をガイド32の先端32cの近傍で安定させることができる。
【0046】
さらに、気流調整部である流入空間24からガイド32の先端32cまでの軸線C方向の距離L3は、軸線Cに垂直に交わる直線が内周壁面22によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さL2よりも短い。気流調整部により形成された旋回流は、気流調整部に近いほど強いので、距離L3を長さL2よりも短くすることで、その旋回流の勢いが十分に強いところに、挿通孔32dが開口した先端32cを位置させることができる。その結果、挿通孔32dが開口した先端32cの周囲の内周壁面22へ粉粒体を押し当て易くできるので、挿通孔32dと弁棒31との間に粉粒体をより一層入り込み難くできる。
【0047】
また、先端32cよりも上流側と比べて、先端32cよりも下流側であってガイド32の外周面32bと内周壁面22との間の方が、連通路13の流路断面積が小さい。これにより、ガスの吸引時に気流調整部で発生した旋回流の勢いを、先端32cよりも上流側と比べてガイド32の外周面32bと内周壁面22との間で強くし易い。そのため、先端32cから排出開口26までの軸線C方向の距離(距離L1-距離L3)が長い程、外周面32bと内周壁面22との間の旋回流を安定させ易くでき、この部分の旋回流の安定に伴って先端32cより上流側でも旋回流を安定させ易くできる。そして、距離L1-距離L3が、軸線Cに垂直に交わる直線が内周壁面22によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さL2よりも長いので、気流調整部で発生した旋回流を全体的に安定させ易くでき、挿通孔32dと弁棒31との間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0048】
次に図4から図6を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、駆動部34により弁体33を上下方向に移動させて連通路13を開閉する場合について説明した。これに対して第2実施形態では、駆動部34により弁体33を左右方向に移動させて連通路13を開閉する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0049】
図4は第2実施形態における金型用ガス抜き装置40の断面図である。図5図4のV-V線における金型用ガス抜き装置40の断面図である。図6図4のVI-VI線における金型用ガス抜き装置40の断面図である。
【0050】
図4及び図5に示すように、金型用ガス抜き装置40は、鋳造用の金型1のキャビティ(図示せず)から空気などのガスを抜くための装置であり、金型1に取り付けられている。なお、図4には、固定型2と可動型3との分割面4に垂直であって弁棒31の軸線Cを含む断面が示されている。また、説明の都合上、その断面の紙面手前側に位置する流入路41の一部(流入端部41b)を模式的に図4に示している。
【0051】
金型用ガス抜き装置40は、金型1のキャビティに連なる流入路41と、金型1の外部へガスを排出する排出路12と、流入路41と排出路12とを連通する連通路13と、連通路13を開閉するバルブ装置30と、を主に備えている。流入路41は、固定型2に取り付けられる成形部42に設けた上下方向に延びる溝を、可動型3の分割面4で塞ぐことによって主に形成される。
【0052】
成形部42には、取付孔43が分割面4に垂直な方向に貫通形成されている。取付孔43は、軸線Cを中心とした断面円形状の孔である。この取付孔43の一端が可動型3に塞がれ、取付孔43の他端が筒体21に塞がれることで、取付孔43の内周面と可動型3の分割面4と筒体21とによる壁面で囲まれた流入空間24が形成される。
【0053】
流入路41は、その流入空間24と、その流入空間24の壁面に開口した流入開口41aに連なる流入端部41bと、を備えている。この流入開口41aは、取付孔43の内周面に開口し、軸線Cから離れた位置にある。流入端部41bは、流入開口41aから軸線Cのまわりに延びている。より具体的には、流入開口41aから取付孔43の内周面の接線方向へ流入端部41bが延びている。
【0054】
以上のような金型用ガス抜き装置40を用いた鋳造方法について説明する。まず、流入空間24内に位置する弁体33を可動型3に押し付けてバルブ装置30により連通路13を開けた状態で、排出路12に連なる真空タンクにより吸引を開始する。そうすると、キャビティ内のガスが流入路41、流入空間24、弁座面23と弁体33との間、弁棒31及びガイド32と内周壁面22との間、排出路12を順に通って金型1の外部へ排出される。
【0055】
ガスを吸引しながらキャビティに溶湯を注入し、キャビティが溶湯で満たされると、流入路41を溶湯が上昇する。流入路41内に設けたセンサ(図示せず)が溶湯を検出したときに、駆動部34によって弁体33を軸線C方向に移動させ、弁体33を弁座面23に当接させて連通路13を閉じる。そして、溶湯の硬化後に固定型2と可動型3とを開くことで、鋳造品が得られる。第1実施形態と同様に、弁体33が弁座面23に当接する前のガスの吸引時に、溶湯の一部が硬化した固体やキャビティ内の離型剤などの微細な粉粒体がガスと一緒に連通路13等を通っていく。
【0056】
軸線Cに垂直な流入空間24の流路断面積よりも、流入端部41bと流入空間24との境界における流入開口41aの面積が小さいので、流入開口41aから出たガスによって流入空間24内に気流を発生させることができる。この気流の始点となる流入開口41aが軸線Cから離れた位置にあり、その流入開口41aから流入端部41bが軸線Cのまわりに延びている。即ち、軸方向視において軸線Cの直角方向に流入端部41bが延びていないので、この流入空間24及び流入端部41bによって形成された気流調整部は、図5に矢印で示すように、軸線Cを中心とした回転方向の気流を発生させることができる。そして、ガスの吸引時に気流調整部による気流が、図5及び図6に矢印で示すように弁棒31や弁体33を中心とした旋回流となるので、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体を入り込み難くできる。
【0057】
図6に示すように、内周壁面22に設けた排出開口26から排出路12が軸線Cのまわり(弁棒31の周方向)に延びている。これにより、連通路13から排出開口26へガスが吸引されるとき、弁棒31を中心とする旋回流が排出開口26の近傍の連通路13に発生する。この排出開口26及び排出路12により発生する旋回流の向きと、流入空間24及び流入端部41bにより発生する旋回流の向きとを同一にすることで、流入空間24及び流入端部41bにより発生した旋回流を排出開口26まで安定させることができる。その結果、旋回流によって弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0058】
次に図7(a)及び図7(b)を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、流入空間24と流入端部19b,20b,41bとによって気流調整部が形成される場合について説明した。これに対して第3実施形態では、螺旋壁55により気流調整部が形成される場合について説明する。なお、第1,2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7(a)は第3実施形態における金型用ガス抜き装置50の断面図である。図7(b)は図7(a)のVIIb-VIIb線における金型用ガス抜き装置50の断面図である。
【0059】
図7(a)及び図7(b)に示すように、金型用ガス抜き装置50は、鋳造用の金型1のキャビティ(図示せず)から空気などのガスを抜くための装置であり、金型1に取り付けられている。なお、図7(a)には、固定型2と可動型3との分割面4に垂直であって弁棒31の軸線Cを含む断面が示されている。
【0060】
金型用ガス抜き装置50は、金型1のキャビティに連なる流入路51と、金型1の外部へガスを排出する排出路12と、流入路51と排出路12とを連通する連通路13と、連通路13を開閉するバルブ装置30と、を主に備えている。流入路51は、固定型2に取り付けられる成形部52に設けた上下方向に延びる溝を、可動型3の分割面4で塞ぐことによって主に形成される。成形部52には、取付孔43が分割面4に垂直な方向に貫通形成されている。
【0061】
流入路51は、取付孔43の内周面により壁面の一部が形成される流入空間24と、その流入空間24の壁面に開口した流入開口51aに連なる流入端部51bと、を備えている。この流入開口51aは、取付孔43の内周面に開口し、軸線Cから離れた位置にある。流入端部51bは、流入開口51aから軸線Cの直角方向に延びている。そのため、流入空間24と流入端部19b,20b,41bとにより気流調整部が形成される第1,2実施形態と異なり、第3実施形態では、流入空間24と流入端部51bとによって、ガスの吸引時に弁棒31や弁体33を中心とした旋回流が形成されない。
【0062】
但し、第3実施形態における金型用ガス抜き装置50は、弁棒31に設けた螺旋壁55による気流調整部を備えている。螺旋壁55は、弁棒31から内周壁面22へ向かって軸線Cの直角方向に張り出す板状の部位であり、弁棒31を中心とした螺旋状に形成されている。本実施形態では4枚の螺旋壁55が軸線Cに関して回転対称に設けられている。
【0063】
このような螺旋壁55によれば、ガスの排出時に、弁棒31(軸線C)を中心とした回転方向の気流を螺旋壁55の排出路12側(下流)に発生させることができる。そのため、真空タンクでガスを吸引するとき、螺旋壁55の下流で弁棒31を中心とした旋回流が発生する。螺旋壁55が挿通孔32dよりも上流に位置するので、螺旋壁55により生じた旋回流によって、挿通孔32dよりも上流で粉粒体を内周壁面22に押し当てることができる。その結果、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体を入り込み難くできる。
【0064】
気流調整部である螺旋壁55から排出開口26までの軸線C方向の距離L4は、軸線Cの直角方向における内周壁面22の間の最小間隔(内周壁面22の内径)L2よりも長い。これにより、ガスの吸引時に、螺旋壁55と排出開口26との間で旋回流を十分に安定させることができる。その結果、旋回流によって弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより入り込み難くできる。
【0065】
また、気流調整部である螺旋壁55からガイド32の先端32cまでの軸線C方向の距離L5は、軸線Cに垂直に交わる直線が内周壁面22によって切り取られる線分のうち最も短い線分の長さL2よりも短い。これにより、気流調整部により形成された旋回流の勢いが十分に強いところに、挿通孔32dが開口した先端32cを位置させることができるので、挿通孔32dと弁棒31との間に粉粒体をより一層入り込み難くできる。
【0066】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、流入路11や排出路12、連通路13、バルブ装置30の各部の寸法や形状など、流入端部19b,20b,41b,51bや螺旋壁55の数や配置、形状などを適宜変更しても良い。
【0067】
ガイド32を省略して、内周壁面22のうち弁座面23とは反対側の端部を平坦な端壁面で塞ぎ、その端壁面に設けた挿通孔32dから弁棒31を連通路13内に突出させても良い。また、流入開口19a,20a,41aを、上記第1実施形態の取付孔17の底面17aのうち弁体33が当たる部分の外側に設けたり、上記第2実施形態の流入空間24に面する可動型3の分割面4のうち弁体33が当たる部分の外側に設けたりしても良い。
【0068】
上記第3実施形態では、弁棒31を中心とした螺旋状に形成される螺旋壁55が弁棒31から内周壁面22へ向かって張り出す場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。弁棒31を中心とした螺旋状に形成される螺旋壁55を、内周壁面22から弁棒31へ向かって張り出させても良い。また、弁棒31及び内周壁面22の一方から他方へ向かって張り出すと共に弁棒31を中心とした螺旋状の螺旋壁55を、第1実施形態のような駆動部34により弁体33を上下方向に移動させて連通路13を開閉するものに適用しても良い。
【0069】
また、弁棒31を中心軸として回転する軸流ファンを気流調整部として連通路13に設けても良い。具体的に軸流ファンは、弁棒31及び内周壁面22の一方から他方へ向かって張り出すと共に弁棒31を中心とした螺旋状の螺旋壁55を、弁棒31まわりにモータ等によって駆動回転させたり、ガスの吸引に伴って弁棒31まわりに従動回転させたりするものである。
【0070】
螺旋壁55による気流調整部と、上記第1,2実施形態における流入空間24及び流入端部19b,20b,41bによる気流調整部とを両方設けても良い。この場合、各気流調整部を適切に設計することで、流入空間24及び流入端部19b,20b,41bによる気流調整部で形成された旋回流の勢いを、螺旋壁55による気流調整部によって強くでき、弁棒31と挿通孔32dとの間に粉粒体をより一層入り込み難くできる。なお、各気流調整部の設計によっては、流入空間24及び流入端部19b,20b,41bによる気流調整部で形成された旋回流が、螺旋壁55による気流調整部で打ち消される可能性がある。そこで、流入空間24及び流入端部19b,20b,41bによる気流調整部と、螺旋壁55による気流調整部とを両方設けないことで、旋回流を形成する気流調整部の設計を容易にできる。
【0071】
上記第1実施形態では、流入開口19a,20aへ向かうにつれて軸線C方向の上側(第2端部31b側)へ傾斜する傾斜面19c,20cが、流入端部19b,20bを形成する壁面のうち軸線C方向の下側に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。流入端部19b,20bを形成する壁面のうち軸線C方向の上側に傾斜面19c,20cを設けたり、軸線C方向の上下両側に傾斜面19c,20cを設けたりしても良い。
【0072】
上記形態では、弁座面23の上流に弁体33が位置し、内周壁面22から離れるにつれてテーパ状に拡径する弁座面23に弁体33が当接することで連通路13が閉じる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。弁座面23の下流に弁体33を位置させ、内周壁面22から離れるにつれてテーパ状に縮径するように弁座面23を形成し、弁棒31を挿通孔32dから更に突出させて弁体33を弁座面23に当接させることで、連通路13を閉じても良い。但し、溶湯から弁体33が受ける圧力によって弁体33を弁座面23に強く押しつけることができるように、弁座面23の上流に弁体33を位置させることが好ましい。
【0073】
上記第1実施形態では、固定型2に取り付けられる第1成形部14と、可動型3に取り付けられる第2成形部15との分割面16にそれぞれ設けた溝によって流入路11が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1成形部14を固定型2と一体成形し、第2成形部15を可動型3と一体成形して、固定型2と可動型3との分割面4に流入路11を設けても良い。同様に、成形部42,52を固定型2と一体成形しても良い。また、可動型3に成形部42,52を設けても良い。第1成形部14や第2成形部15、成形部42,52を固定型2や可動型3と別部材にすることで、流入路11,41,51のメンテナンスや取り替え等を容易にできる。
【0074】
上記第1実施形態では、溶湯が弁体33を押し上げることで弁体33が弁座面23に当接する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。上記第2実施形態と同様に、流入路11内に設けたセンサが溶湯を検出したときに、駆動部34によって弁体33を軸線C方向に移動させ、弁体33を弁座面23に当接させて連通路13を閉じても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 金型
10,40,50 金型用ガス抜き装置
11,41,51 流入路
12 排出路
13 連通路
19a,20a,41a 流入開口
19b,20b,41b 流入端部(気流調整部の一部)
19c,20c 傾斜面
22 内周壁面
23 弁座面
24 流入空間(気流調整部の一部)
26 排出開口
30 バルブ装置
31 弁棒
31a 第1端部
31b 第2端部
32 ガイド
32b 外周面(端壁面の一部)
32c 先端(端壁面の一部)
32d 挿通孔
33 弁体
34 駆動部
55 螺旋壁(気流調整部)
C 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7