(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】ガス放電ランプのための電極およびガス放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/073 20060101AFI20230208BHJP
H01J 61/20 20060101ALI20230208BHJP
H01J 61/16 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01J61/073 F
H01J61/073 B
H01J61/20 C
H01J61/16 F
(21)【出願番号】P 2021557148
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020056387
(87)【国際公開番号】W WO2020193121
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】102019203992.8
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
【住所又は居所原語表記】Marcel-Breuer-Strasse 6, D-80807 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリア ニリウス
(72)【発明者】
【氏名】ライナー コーガー
(72)【発明者】
【氏名】アダム コトヴィッツ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03311769(US,A)
【文献】特開2013-118202(JP,A)
【文献】特開平10-208696(JP,A)
【文献】特開昭52-099673(JP,A)
【文献】国際公開第2014/174360(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/059589(WO,A1)
【文献】実開昭49-086682(JP,U)
【文献】国際公開第2007/057689(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス放電ランプ(10)のための電極(1、2)であって、
前記電極(1、2)は、少なくとも2つのチャンバを取り囲む基体を有
し、
前記基体は容器部分(ポット)(22)を含み、該容器部分(22)内に前記チャンバ(221、222)が配置されており、
前記基体は閉鎖部分(キャップ、栓)(24、261、262)を含み、該閉鎖部分(24、261、262)は前記容器部分(22)を閉鎖し、
前記閉鎖部分(24、261、262)は、前記チャンバ(221、222)または前記チャンバの少なくとも一部分を閉鎖し、任意選択的に密閉して閉鎖する、
ガス放電ランプ(10)のための電極。
【請求項2】
前記チャンバ(K1~K4)または前記チャンバの少なくとも一部分は、前記基体(22)の長手延在方向において互いに直列に配置されている、
請求項1記載の電極(202)。
【請求項3】
前記チャンバ(221、222)または前記チャンバの少なくとも一部分は、前記基体(22)の長手延在方向(A)において互いに平行に配置されている、
請求項
1記載の電極(2)。
【請求項4】
前記チャンバ(221、222)または前記チャンバの少なくとも一部分は、密封されて(気密/ガス密に)封止されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電極(2)。
【請求項5】
前記チャンバ(221、222)または前記チャンバの少なくとも一部分は、(部分的な)充填物(26)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電極(2)。
【請求項6】
前記充填物(26)は、1つまたは複数の熱伝導構成要素を含む、
請求項5記載の電極。
【請求項7】
少なくとも1つの前記熱伝導構成要素は、前記基体の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、
請求項6記載の電極。
【請求項8】
少なくとも1つの前記熱伝導構成要素は、前記電極の前記基体の融点よりも低い融点を有する1つまたは複数の金属を含む、
請求項6または7記載の電極。
【請求項9】
各チャンバ(221、222)は、個別の閉鎖部分(栓)(261、262)によって閉鎖されており、任意選択的に密閉されて閉鎖されている、
請求項
1から8までのいずれか1項記載の電極(20)。
【請求項10】
前記容器部分(22)の自由端は、電極プラトー形状部(14)として形成されており、該電極プラトー形状部(14)において前記放電ランプの動作中に放電アークが生じ、前記閉鎖部分(24)または場合によっては複数の前記閉鎖部分(261、262)は、前記電極プラトー形状部(14)とは反対側に配置されている、
請求項
1から
9までのいずれか1項記載の電極(2、20)。
【請求項11】
少なくとも1つのチャンバは、前記電極プラトー形状部の機械的変形を引き起こすことなく、前記電極プラトー形状部のできるかぎり近くまで延在している、
請求項
10記載の電極。
【請求項12】
1つの前記閉鎖部分または場合によって複数の前記閉鎖部分に、ねじ山が設けられている、
請求項
1から
11までのいずれか1項記載の電極。
【請求項13】
1つの前記閉鎖部分(266)または場合によって複数の前記閉鎖部分は、はんだ(2661)によって密閉されている、
請求項
1から
12までのいずれか1項記載の電極(200)。
【請求項14】
請求項1から
13までのいずれか1項記載の少なくとも1つの電極(1、2)を備えたガス放電ランプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプおよびその内部に配置された電極に関する。特に本発明は、たとえばショートアーク放電ランプの場合に該当するように、熱的負荷が強く加わる電極を有するランプに関する。例としてここでは、水銀放電ランプ(たとえばOSRAM HBO(登録商標))およびキセノンランプ(たとえばOSRAM XBO(登録商標))を挙げておく。これらはとりわけ、フォトリソグラフィの用途(マイクロチップ、IC、PCB、LCDディスプレイ等)のために、もしくはプロジェクション用途(たとえばシネマプロジェクション)のために使用することができる。原則的に本発明は、少なくとも1つの電極が透光性容器(たとえばガラス管体)内に配置されている、ランプ状のすべての光源において使用することができる。特に本発明を、レーザベースのプラズマ光源(いわゆるレーザ維持プラズマ光源)においても使用することができる。
【0002】
電極、特に直流ランプの場合にはアノードは、ランプ動作中、大きな熱的負荷に晒される。したがって通常、著しく高い耐熱性を有する材料が用いられ、たいていのケースではタングステンが用いられる。しかしながら、プラズマもしくはプラズマアークがアノード前部に及ぼす作用によりもたらされる温度によって、アノード材料の蒸発が引き起こされる。これによって一方では電極の劣化が引き起こされ、他方では、蒸発させられた材料が放電容器内部に堆積してしまい、その結果、光が減少してしまう可能性があり、かつ/またはランプ寿命が短くなる可能性がある。
【0003】
したがって本発明の目的は、放電アーク近傍の電極前部領域ができるかぎり良好に放熱(熱放散)するよう配慮することであり、その際に特に電極の熱伝導率が改善されるようにしたい。
【0004】
電極放熱すなわち電極からの熱放散の改善をもたらそうという複数のアプローチが存在する。1つの可能性は、赤外線領域においていっそう良好な放射率を有する材料でアノードをコーティングすることである(たとえばOsram、独国特許発明第102009021235号明細書)。熱放射を改善する目的で、電極表面の微細構造化(ウシオ、日本国特許第3838110号明細書)も用いられる。上述の手段は双方共に、電極表面からの熱放射のために役立つものである。別のアプローチは、電極軸線に沿った熱伝導率の改善を目指している。この目的で電極は、純粋なタングステンよりも伝導率が高い内部区間もしくはコア領域を有することができる。1つの例は、密閉されて封止された内部空間を有するアノードであって、この内部空間は、たとえば銀または銅のような低融点金属(ウシオ、欧州特許第1357579号明細書)または合金によって充填されている。この種のアノードは、すでにかなり前から水銀放電ランプにおいて使用されている。動作中に優勢的に生じる温度において、内部空間に封入された低融点金属が溶融し、これは部分的に気体状の凝集状態に移行する可能性もある。このような溶融プロセスもしくは気化プロセスにおいて、熱エネルギーが低融点金属によって受容され、とりわけ対流プロセスを介して、放電アークの側の電極前部領域から電極ロッドの側の電極後部領域へと輸送される。
【0005】
放電ランプの構造に関する細部がたとえば
図18に示されており、この図には、電極1および2を備えたガス放電ランプ10が概略的に描かれている。好ましくは水銀高圧ガス放電ランプとして形成されているガス放電ランプ10は、垂直方向で動作させられる放電ランプ10を成しており、したがって互いに平行に延在する、特に1つの線上で延在する、両方の電極1および2の電極軸線も、同様に垂直方向に配向されている。さらに電極1はこの実施例では、カソード先端部11および円筒状領域12を備えたカソードとして形成されている一方、電極2はアノードを成しており、アノードプラトー形状部14および同様に円筒状領域13を有する。アノード2はカソード1の上方に配置されており、アノードプラトー形状部14はカソード先端部11と向き合っており、その際にアノードプラトー形状部14とカソード先端部11との間において、動作中に放電アークが形成される。さらに両方の電極1および2は、放電容器7内に、たとえばガラス管体内に、配置されている。放電容器7内に電極を保持するために、カソード保持ロッド3およびアノード保持ロッド4が設けられている。これらは、内部電流導体5もしくは6を介して、端子ソケット8および9と電気的に接続されており、その際にさらにこれらの端子ソケット8、9を、放電ランプ10を動作させるために、適切な外部電流導体を介してエネルギー源と接続することができる(図示せず)。
【0006】
高圧放電ランプ10は好ましくは大きい電力で動作させられ、特にキロワット領域で動作させられる。これによってとりわけ、アノード2において著しく高い温度が発生する。典型的にはこの温度は、アノードプラトー形状部領域において約2700℃であり、アノードの熱伝導率および熱放射の能力に大きく依存して、アノード保持ロッドに向かって約1500℃~1100℃まで降下する。いずれにせよ、アノード2の寿命を高め、もしくは要求される電流耐性を実現するために、熱をアノード2からできるかぎり効率的に排出させなければならない。
【0007】
したがって本発明の課題は、改善された特性を有するガス放電ランプのための電極を提供することである。1つの態様は、電極、特に放電アーク近傍の電極前部領域、のできるかぎり良好な放熱を達成することである。この場合に特に、電極の熱伝導率を改善するのが望ましい。
【0008】
この課題は、請求項1記載の特徴を備えたガス放電ランプのための電極によって解決される。従属請求項、明細書ならびに図面には、本発明の有利な実施形態が示されている。
【0009】
すでに冒頭で述べたように、本発明は、少なくとも1つの本発明による電極を備えたガス放電ランプにも関する。
【0010】
以下で説明する本発明は、アノード内部における熱伝導率を高めることを目指しており、その際にマルチチャンバデザインを用いることで、これまで従来技術において述べてきたワンチャンバデザインの欠点を克服または少なくとも低減しようというものである。この目的でアノード/電極は、一般的に円筒状であるそれらの基体の内部に2つ以上のチャンバを有する。特に、より効率的な熱輸送のためにより強く方向づけられた対流が達成されるように、マルチチャンバデザインを用意するのが望ましい。さらに局所的な加熱を回避し、ランプ燃焼ポジションに関してより高いフレキシビリティを達成するのが望ましい。しかもマルチチャンバデザインによって、電極のクリティカルなプラトー形状部近傍領域において、より高い安定性が実現される。総じてアノードはn個のチャンバを有するのが望ましく、ただし2≦nである。この場合、以下の記号が適用されるものとする(
図1Cおよび関連する図面の説明も参照)。
【0011】
n チャンバの個数
ri チャンバiからアノード周縁部までの最短間隔
si チャンバiからアノードのプラトー形状部平面までの最短間隔
di プラトー形状部に対し平行なチャンバの直径または最大の広がり
aij チャンバiとjとの間の最小間隔
【0012】
1つの実施形態によれば、アノードは、第1のアノード部分である閉鎖部分またはキャップと、第2のアノード部分である容器部分またはポット(電極基体内の凹入部)とを含み、これら双方は気密にもしくは密閉されて互いに接合されている。複数のチャンバが、アノードの下部(ポット)内に設けられている。
図3~
図9(上面図)から、2つ以上のチャンバに関するいくつかの配置例を見て取ることができ、この場合、それらの例では複数のチャンバが互いに並置されており、つまり複数のチャンバまたは複数のチャンバのうちの少なくとも一部が、基体の長手延在方向において互いに平行に配置されている。
【0013】
本発明によるマルチチャンバデザインは、構成に関して著しく高いフレキシビリティがあるという利点を有し、したがって具体的な適用事例に応じて、たとえばランプ形式(ランプ充填物、充填圧力、電極直径、電極ジオメトリ等)、ランプ出力、ランプ燃焼ポジション、および他の多くの影響量を条件とし、上述の態様における個々の態様に特に着目して、好ましくは最適化することができる。
【0014】
原則的にはいずれのケースであれ、個々のチャンバのすべてのパラメータを個別に、基本的に他のチャンバとは無関係に、整合させることができる。たとえば上述の記号などのように純粋に幾何学的なパラメータのほかに、個々のチャンバ内壁の表面状態特性も整合させることができる。さらにチャンバ各々の充填物をそれ自体個別に、たとえば充填すべき低融点金属(材料選択)またはその充填レベルに関して、調整することができる。さらに別の最適化の可能性として挙げられるのは、個々のチャンバ同士の相対的な配置および電極外壁との関係における個々のチャンバの配置である。
【0015】
幾何学的寸法に関して、チャンバはたとえばすべて同じ形状および同じ深さを有することができ、このことは製造技術的に特に簡単に実現可能である。ただし適用事例に応じて、チャンバは互いに異なる形状および/または深さを有することもできる(たとえば
図7、
図12を参照)。考えられる形状を、たとえばそれらの横断面によってそれぞれ異ならせることができ、その際に丸みのある(たとえば円形または楕円形の)および角のある(たとえば三角形、四角形または多角形の)形状を使用することができる。とはいえ原則的には混合形状も考えられ、それによれば第1の区間では第1の横断面が存在し、第2の区間では、第1の区間とは異なる第2の横断面が存在する。つまり換言すれば、チャンバの長手延在方向の先に、たとえば丸みのある横断面から角のある横断面への移行部を、または丸みのある横断面から楕円形の横断面への移行部を、設けることができる。
【0016】
適切な製造方法は、特に丸みのあるチャンバのためには、たとえば穿孔、旋削、フライス加工である。他のチャンバ形状(角のある形状、半円等)を、たとえばいわゆるフィードストックアノードとして製造することができる。この場合、支持体材料(たとえばタングステン)と結合剤とから成る粉体が、たとえば鋳型によってほぼ任意に造形される。次いで結合材が抽出され、素材が再び高密度化される。
【0017】
原則的に製造方法に関して、以下のような方法を区別する必要がある。すなわち、個々のチャンバが切削による手法によって電極基体から作り出される(その際に容器またはポットまたはポット状の凹入部が基体に生じる)方法と、個々のチャンバが電極基体の外部で作成され、時間的に後にずらされたプロセスステップにおいて、それらが電極基体に嵌め込まれ、その際に基体はこのために適切に寸法選定にされた空洞を有していなければならない、という方法とを区別する必要がある。
【0018】
これまでにすでに言及したように、マルチチャンバデザインは、構成に関して高度なフレキシビリティを有し、その理由は、原則的にすべての幾何学的および非幾何学的なチャンバ特性を、個別に整合させることができ、したがってシステム全体を最適化することができるからである。以下では、これらの幾何学的および非幾何学的なチャンバ特性のうちのいくつかについて、例示的な実施形態を詳しく説明することにする。
【0019】
チャンバの長さ:
とりわけ個々のチャンバの長さを、(通常は円筒状の)電極基体内におけるチャンバの個々のポジションに依存して、できるかぎり最良の放熱と電極の安定性との間で最適な妥協を達成する目的で、整合させることができる。たとえば、電極基体の対称軸近傍に位置するチャンバを、電極基体の対称軸までもっと長い間隔を有するチャンバよりも、短く形成することができる(
図12を参照)。プラトー形状部近傍において、特に電極基体の対称軸近傍のアーク発生ポイントにおいて、特に高い温度が発生するので、かかる実施形態によれば、個々のチャンバiの間隔s
iをそれらのポジションに依存して、アーク発生ポイントに関連させて最適化することができ、そのようにすることで、この領域における変形またはそれどころか非緻密化のリスクが回避される。
【0020】
チャンバの配置:
電極内部における個々のチャンバiの配置は、好ましくは対称に、特に電極長手軸線に対し回転対称に形成されている。このことは以下の利点を有する。すなわち、実際に使用するときに頻繁に起こる垂直方向の燃焼ポジションのケースにおいて、電極横断面全体にわたり(たとえば電極長手軸線に対し垂直な平面で見て)均等に熱流を分散させることができ、それによって電極の効率的な放熱が達成され、さらに局所的な加熱および損傷が回避される。
図3~
図6、
図8および
図9には、考えられる配置が示されている。
【0021】
非垂直方向の燃焼ポジションのケースでは、非対称の、特に非回転対称の、チャンバの配置を、対流および熱流を重力方向に関して整合させるのに役立たせることができる。1つの実施形態によれば、たとえば、垂直方向から離れて傾斜させられたランプのケースにおいて底部に最も近くなる電極の側では、その電極の反対側よりも多くの個数のチャンバを用いることができる(
図7を参照、この場合であれば図中、破線の右側に示された電極の側が、底部に最も近くなる側である)。
【0022】
個々のチャンバの配置を整合させることのほか、非垂直燃焼ポジションのケースでは、他の幾何学的および非幾何学的な特性も整合させることができ、たとえばチャンバジオメトリ(直径、長さ、形状)、チャンバ充填物(材料、充填レベル)およびこれらに類するものを整合させることができる。
【0023】
チャンバの充填:
基本的に、チャンバ各々を他のチャンバとは無関係に充填することができる。このことは、充填される材料の種類自体にもそれらの量(体積%もしくは質量%)にも当てはまる。
【0024】
上述の熱輸送のために適した材料は特に低融点金属であり、たとえば銀、銅、金、および基本的に従来技術において公知の、タングステンに比べて融点が低く、かつタングステンに比べて熱伝導率が高いその他の材料である。通常、これらの材料は固体としてチャンバ内に充填される。低融点金属に加え、または低融点金属から成る合金に加え、不活性ガス、たとえばアルゴンのような希ガスを、個々のチャンバ内に共に封入することができる。
【0025】
しかも、さらに別の材料を個々のチャンバ内に共に封入することができ、それらの材料は、熱伝導率をさらに高めるものであり、ただし動作条件のもとでは溶融しない。これらのさらに別の熱伝導体を、ダイヤモンドのような非金属材料とすることができ、または窒化ホウ素、窒化アルミニウム等のようなセラミック材料とすることができる。好ましくは、これらの付加的な熱伝導体を、粉体形状で個々のチャンバ内に取り込むことができる。これについての詳細は、独国特許出願第102018220944.8号明細書に開示されている。
【0026】
壁面状態特性:
個々のチャンバの内表面の状態特性は、それらの熱特性に関してさらに別の影響ファクタを成している。製造技術的に特に簡単であるのは、上述の製造プロセス(たとえば穿孔、旋削またはフライス加工のような切削によるプロセス)の範囲内で生じる表面粗さをもつ滑らかなチャンバ内壁である。択一的なまたは付加的な製造プロセスを用いることによって、表面の粗面化または構造化を生じさせることができ、たとえば機械的プロセス(たとえばサンドビーム、スパッタリング、研磨等)、化学的プロセス(たとえばエッチング)、または他の物理的プロセス(たとえばレーザ構造化、プラズマエッチング、イオンビーム照射等)によって生じさせることができる。かかる表面処理の目的を以下のようなものとすることができる。すなわち、熱導管(熱サイフォン、ヒートパイプ)の形式に従い、熱放出ゾーン(アノード保持ロッド)から熱源(アノードプラトー形状部)への(ここでは低融点材料の)作動媒体の逆輸送が改善された熱交換を行うことができるように、表面を構造化するのである。この場合、逆輸送は単に受動的に行われ、重力によって実現することができ、かつ/またはたとえば毛細管力など他の力によって実現することができる。このためには、チャンバiの内表面に配置された網目構造、焼結構造、ウィック構造、溝構造または皺構造、またはこれらの組み合わせが適しているとすることができる。相応のコンセプトはたとえば、独国特許出願公開第102007038909号明細書に開示されている。
【0027】
チャンバの個数:
チャンバの最適な個数は原則的に様々なファクタに依存しており、それらのファクタとしてとりわけ挙げられるのは、個々のチャンバiの幾何学的特性(たとえば直径、長さ、形状等)、個々のチャンバiの充填(材料の種類、充填レベル、付加的な充填構成要素等)、チャンバiの壁面状態特性、ならびに個々のチャンバi同士の配置である。その際に個々のファクタが相互に影響し合う可能性がある。つまりたとえば、電極基体内におけるチャンバiの達成可能な実装密度は、個々のチャンバiの直径および形状に依存する。しかも、効率的な方向づけられた熱流を達成するのが問題となる場合は、チャンバ内表面とチャンバ容積との比が重要になり得る。さらにアノードの電流耐性に関しては、チャンバ容積と周囲を取り囲むタングステンの体積との比が重要になり得る。既述のようにこれらすべての考量を、ランプの動作条件、特にランプの燃焼ポジション、にも依存させることができる。
【0028】
チャンバの横断面積:
ただ1つのチャンバしか設けられていない従来の解決手段は、プラトー形状部が変形するリスクをもたらす。本発明によれば変形傾向を低減することができ、このことは、プラトー形状部へのチャンバ横断面の投影が、プラトー形状部の一部分だけしか満たさないように(たとえば
図15を参照)、チャンバを選定することによって行われる。この場合、プラトー形状部の面積はA
pであり、ただしA
p=π*p
2/4であり、ここでpはプラトー形状部の直径である。プラトー形状部へのチャンバ横断面の投影は、面積A
1、A
2、A
3...A
nを有する。したがって投影された横断面積の和A
Sは、A
S=A
1+A
2...A
nである。チャンバを有利に形成するためには、0.1<A
S/A
p<0.9が成り立つのが望ましく、特に有利には0.3<A
S/A
p<0.8が成り立つのが望ましい。これよりも小さい値であると、チャンバ内の材料を通してもはや効率的に熱を排出させることができない。比が0.9よりも大きいと、プラトー形状部が変形するリスクが高まり、従来の解決手段の欠点が再び現れてしまう。
【0029】
チャンバ同士の間隔:
チャンバ同士の間隔aijを小さく選定することができ、その際に下限はとりわけ加工処理によって決定され、もしくは動作中の亀裂形成のリスクによって決定される。よって、aij≧1mmが成り立つのが望ましい。
【0030】
チャンバからプラトー形状部まで、および周縁部までの間隔:
チャンバからアノードプラトー形状部までの間隔siは、2つの事柄によって影響を受ける。すなわち、一方では、熱をできるかぎり効果的に排出させるために、間隔が小さいのが望ましい。他方では、プラトー形状部における変形または亀裂を回避するために、この間隔を長く選択するのが望ましい。ここで変形傾向は、チャンバの直径(もしくは最大の広がり)diと共に大きくなり、つまり直径をいっそう小さく選定することによって、プラトー形状部までの間隔も低減することができる。かくして間隔siを有利には少なくとも3mmとするのが望ましいが、または少なくともdi/3、つまりsi≧di/3とし、si≧2mmとするのが望ましい。チャンバから周縁部までの間隔riを、プラトー形状部までのように、小さく選定するのが望ましく、その理由は、アノードの側面を介した熱放射も、プラトー形状部における温度低減に効果的に寄与するからである。変形傾向は、プラトー形状部と比較して温度が低く、かつプラズマによる圧力がないことから、たしかに小さくなる。とはいえ応力による亀裂を回避しなければならず、したがって有利には以下の関係を維持するのが望ましい:
si≧di/4かつsi≧2mm。
【0031】
上述の実施形態に対し択一的にまたは付加的に、電極の長手延在方向に沿ってそれぞれ異なるチャンバを相前後して配置することもでき、つまり複数のチャンバまたはそれらのチャンバのうちの少なくとも一部を、基体の長手延在方向において互いに直列に配置することができる。
図17Bには1つの実施例が示されており、これによればアノードは4つのチャンバK1~K4を有し、これらのチャンバはアノードの長手延在方向Aに沿って配置されており、したがってスタック状の配置を成している。これらのチャンバは、この実施例ではそれぞれ同じ寸法(長さ、幅、深さ)を有し、矩形の横断面を有する。これまでにすでに詳しく説明したように、これらの実施形態についても、たとえばチャンバの形状、チャンバ相互の間隔、チャンバからアノード周縁部(側壁、キャップ、アノードプラトー形状部)までの間隔、チャンバの充填、チャンバの壁部状態特性等に関する、チャンバの幾何学的および非幾何学的な特性に対する変更の可能性について、大きい変動幅がある。特に個々のチャンバiは、互いに異なる幾何学的および非幾何学的特徴を有することができ、つまりたとえば、アノードプラトー形状部近傍のチャンバは、アノードプラトー形状部からもっと離れたチャンバとは異なる幾何学的寸法を有することができる。
【0032】
つまり要約すると、ここで明確に述べることができるのは、マルチチャンバ電極のデザイン全体は多数のパラメータの関数を成しているということであり、それらのパラメータのうち(決定的なものとしてではなく)いくつかをこれまで挙げて説明してきた。その際に個々のパラメータを一部では互いに無関係に選定することができ、ただしそれらは一部では互いに直接的に結び付けられてもいる。
【0033】
密閉:
チャンバの密閉のために、複数の方法が考慮の対象となる。
【0034】
a)1つの可能性は、個々のチャンバ各々を、キャップ(すなわち閉鎖部材)および/またはポット/容器部分(すなわち電極基体内の凹入部)も構成する材料、好ましくはタングステン、から成る栓によって閉鎖することである。この場合、充填されたチャンバ各々に1つの栓が必要とされる(たとえば
図13を参照)。これはたとえば、周囲に溝が設けられているように構成されている。チャンバ開口部への「すり抜け」が阻止されるよう、溝上方の部分がいっそう広い幅で構成されている。ここでそれらの溝は、はんだとして機能する材料から成るコイルのための場所を提供している。はんだをたとえば炉内で加熱することによって、個々のチャンバが封止される。はんだ材料を、以降の動作中に再び液化しないように選定する必要がある。水銀放電ランプにおけるアノードのための適切な例を挙げるとすれば、モリブデン/ルテニウム、チタン/タングステン、ジルコニウム/タングステン、または白金/タングステンである。個々の使用領域に合わせて温度を整合させることができる。
【0035】
b)a)の1つのバリエーションによれば、はんだはコイルの形状ではなく、金属薄片として取り付けられ、この金属薄片が栓の周囲に巻回されて、その栓と共にチャンバ内へと押圧される。この場合、栓の形状を円筒状に形成することができ、ただし円錐状に形成してもよい。密閉は、a)の場合のように熱処理ステップ(たとえば炉によるか焼)によって達成される。
【0036】
c)第3の可能性は、すべてのチャンバがはんだプロセス後に互いに分離されるが、いわば同一の栓(ここではポットの端面)によって閉鎖されるように、ポットの端面にはんだを被着することである。はんだが球体状で凹欠部に取り込まれる実施例が考えられる(たとえば
図14を参照)。この場合、破線は、はんだが小球体の形状で充填される凹欠部を示す。
【0037】
d)さらに別の可能性として挙げられるのは、栓をチャンバに螺合することができるよう、栓と個々のチャンバとにねじ山を設けることである。付加的に、栓をさらにはんだで密閉することができる。
【0038】
1つのチャンバを有する従来のバリエーションであると、強い熱的負荷によってプラトー形状部の変形が発生するおそれがある、という欠点が生じる。それ相応の負荷の場合に、結果として生じるプラトー形状部領域における凹部が、材料が機械的にもはや持ち堪えられず、充填材料(たとえば銅または銀)がアノードから流れ出てしまうほど大きくなる可能性があり、このことによってランプが故障してしまう。したがって、孔とプラトー形状部との間隔sが十分に大きくなるように配慮しなければならない。他方、できるかぎり良好な熱伝導を達成するためには、これとは反対にこの間隔が小さいのが望ましい。
【0039】
マルチチャンバシステムによって、チャンバからプラトー形状部までの間隔siを、上述のような変形および場合によってはランプの故障に至ることなく、いっそう小さく選定することができる。
【0040】
好ましい実施形態の以下の説明から、ならびに図面に基づき、本発明のさらなる利点、特徴および詳細が明らかにされる。その際、同じまたは同種の特徴には、以下ではわかりやすくするために、同じ参照符号が付されている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】本発明の1つの実施例によるアノードを概略的に示す上面図である。
【
図1C】
図1Aによるアノードを概略的に示す部分断面図である。
【
図2A】本発明の第2の実施例によるアノードを概略的に示す上面図である。
【
図2B】
図2Aによるアノードを概略的に示す縦断面図である。
【
図2C】
図2Aによるアノードを概略的に示す横断面図である。
【
図3】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図4】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図5】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図6】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図7】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図8】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図9】本発明の7つのさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す横断面図である。
【
図10】本発明の1つの実施例による、アノード凹部を備えたアノードを概略的に示す部分断面図である。
【
図11】本発明のさらなる実施例による、アノード凹部を備えたアノードを概略的に示す部分断面図である。
【
図12】本発明の1つの実施例による、それぞれ異なる長さのチャンバを備えたアノードを概略的に示す断面図である。
【
図13】本発明のさらなる実施例による、チャンバ内に個別の栓が設けられ付加的なキャップを備えたアノードを概略的に示す断面図である。
【
図14】本発明の1つの実施例による、3つのチャンバを備えたアノードの端面を概略的に示す上面図である。
【
図15】個々のアノードプラトー形状部への3つのチャンバの横断面の投影面をそれぞれ概略的に示す図である。
【
図16】個々のアノードプラトー形状部への3つのチャンバの横断面の投影面をそれぞれ概略的に示す図である。
【
図17】
図17Aおよび
図17Bは、本発明のさらなる実施例によるアノードをそれぞれ概略的に示す上面図もしくは縦断面図である。
【
図18】本発明の1つの実施例によるガス放電ランプを概略的に示す上面図である。
【0042】
図1Aおよび
図1Bには、本発明の第1の実施例によるアノード2の長手軸線Aに沿って、上面図もしくは断面図がそれぞれ概略的に示されている。アノード2は、円筒状の容器部分22であるポットと閉鎖部分24であるキャップとから成る。ポット22は、アノードプラトー形状部14ならびに複数のチャンバ、ここでは2つのチャンバ221、222を有し、これらのチャンバはポット22の基体から成る凹入部として形成されている。これら両方の管状のチャンバ221および222には、部分的に銀26が充填されている(ドットの付されたエリアとしてシンボリックに表されている)。アノードプラトー形状部14とは反対側に位置するポット22の端部は、キャップ24によって閉鎖されている。その際にキャップ24は、アノードプラトー形状部14とは反対側に位置する両方のチャンバ221、222の開放端部も、同時に閉鎖している。キャップ24は、アノード保持部材(ここでは図示せず)のための孔241を有する。
【0043】
図1Cには、冒頭で挙げたいくつかの幾何学的寸法の記号が、
図1Aによるアノード2を概略的に示す部分断面図に基づき示されている。これによれば、Lは、アノードプラトー形状部14から反対側に位置するキャップ24の端子側端部までのアノード2の長さを表し、Dはアノード2の直径、d
iは、アノードプラトー形状部14に対し平行なi番目のチャンバの直径または最大の広がり(i=1~n、この実施例ではn=2)、r
iは、チャンバiからアノード2の周縁部までの最短間隔、s
iは、チャンバiからアノード2のプラトー形状部14までの最短間隔、a
ijは、チャンバiとjとの間の最小間隔(この実施例では両方のチャンバ221と222との間の最小間隔a
12)を表す。
【0044】
図2Aには、本発明の第2の実施例によるアノード20の上面図が示されており、
図2Bおよび
図2Cには、その縦断面図もしくは横断面図が概略的に示されている。ここではアノード20のポット22が5つのチャンバ221~225を有し、これらのチャンバはそれぞれ円筒状の横断面を有し、それぞれ1つずつ対応づけられた栓261~265によって個別に閉鎖されている(
図2Bには2つの栓261および262だけしか描かれていない)。
【0045】
図3~
図9には、本発明の7つのさらなる実施例によるアノードについて(
図2Cと同様の)横断面図がそれぞれ概略的に示されている。これらは、チャンバの個数および/または形状および/または直径の点でそれぞれ異なっている。チャンバを見分けやすくする目的で、横断面は銀で充填された部分を通る位置とされていて、その際に銀は
図1Bの場合のように、ドットの付されたエリアとしてシンボリックに表されている。
図3には、すでに
図2Cに描かれているものと同様に、5つのチャンバ221~225を備えたアノードポット22が示されている。
図4には、6つのチャンバ221~226を備えたアノードポット22が示されており、この場合、軸線中心におけるチャンバ226は、他の5つのチャンバ221~225よりも小さい直径を有する。
図5には、すべて等しい直径を有する7つのチャンバ221~227を備えたアノードポット22が示されている。
図6には、3つのチャンバ221~223だけしか設けられていないアノードポット22が示されている。これら3つのチャンバ221~223の個々の直径は、その前の実施例における7つのチャンバ221~227の個々の直径よりも大きい。
図7にも、同様に3つのチャンバ221~223を備えたアノードポット22が示されている。ただしこの場合にはチャンバ221が、アノードポット22の湾曲に整合させられた楕円形の直径を有するように設計されている。これに対し他の2つのチャンバ222および223は、これまでの実施例のように円形の横断面を有する。
図8に描かれているアノードポット22の場合には、2つのチャンバ221、222が設けられており、これらのチャンバは互いに相補的な半円形状の横断面によって形成されている。最後に
図9には、3つのチャンバ221、222および223を備えたアノードポット22が示されており、これらのチャンバは、1つにまとめると円形の横断面を有する円筒形状配置における個別の相補的な部分として形成されている。
【0046】
図10および
図11には、本発明の2つのさらなる実施例によるアノード2’もしくは2’’の部分断面図がそれぞれ概略的に示されている。ここでは特別なアノードデザインが扱われており、これによればアノードプラトー形状部にすでに製造プロセス中にいわゆるアノード凹部が用意される。個々の断面図において、
図10の実施例の場合、アノード凹部14’は角のある形状を有し、
図11の実施例の場合、アノード凹部14’’は丸みのある形状を有する。
【0047】
図12には、本発明のさらなる実施例によるアノード20の縦断面図が概略的に示されている。2つのチャンバ221、222は、等しい直径d
1、2ならびにアノードプラトー形状部平面14まで等しい最短間隔s
1、2を有する。これに対しアノード20の長手軸線に配置された第3のチャンバ223は、いっそう大きい直径d
3ならびにアノードプラトー形状部平面14までいっそう長い間隔s
3を有する。
【0048】
図13には、1つの変形実施例によるアノード200の断面図が概略的に示されており、これによればチャンバ221が、対応づけられた個別の栓266によって閉鎖されている。栓266を密閉するために、栓266の周囲を包囲するように巻回された糸はんだコイル2661が設けられている。最後に、アノード200のポット22がキャップ24によって閉鎖され、これによりチャンバ221の栓266も覆われる。
【0049】
図14には、3つのチャンバ221~223を備えたアノードポット220の上面図が概略的に示されている。アノードポット220の端面が示されており、閉鎖のためにこの端面にアノードキャップが載置され、はんだを用いて接合される(はんだについてはここには描かれていない)。この場合、破線230は、アノードポット220の基体における凹欠部をシンボリックに表しており、これらの凹欠部にはんだが小球体の形状で充填される(はんだについてはここには図示されていない)。
【0050】
図15および
図16には、個々のアノードプラトー形状部14への3つのチャンバ(図示せず)の横断面の投影面A1、A2、A3がそれぞれ概略的に示されている。
図15と
図16との比較からわかるように、これらの両方のケースにおいて、投影面A1、A2、A3は、チャンバがそれぞれ異なるように形成されていることに基づき、同様にそれぞれ異なるように形成されている。ただし両方のケースにおいて、投影面A1、A2、A3の和は、アノードプラトー形状部14の面積よりも小さく、いずれのケースでも係数0.9よりも小さいことがわかる。
【0051】
図17Aおよび
図17Bには、本発明のさらなる実施例によるアノード202の上面図もしくは長手軸線Aに沿った縦断面図が概略的に示されている。この場合、4つのチャンバK1~K4が、アノードポット22内部において長手軸線Aの方向に相前後して配置されている。
【0052】
図18には、本発明の1つの実施例によるガス放電ランプ10の上面図が概略的に示されている。この場合、アノード2は、
図1~
図17に示した本発明による実施形態のうちの1つに相応する。この図からは見分けられないアノード2の細部については、関連する図面の説明ならびに一般的な説明の対応個所を参照されたい。ガス放電ランプ10のさらに別の構造に関する細部については、さらに以前の対応する説明を参照されたい。
【0053】
本発明は、ガス放電ランプのための電極、特にアノード、に関し、その際に電極は、複数のチャンバを取り囲む基体を有する。それらのチャンバを、電極の長手軸線に関して互いに平行に、または直列に、配置することができ、さらにそれらのチャンバは、たとえば銀または銅のような低融点金属によって、少なくとも部分的に充填されている。個々のチャンバの個数、充填物、形状および幾何学的寸法、ならびに基体内部でのそれらのポジションを、電極の個々のデザインに合わせて適切に調整することによって、基体からの、特にアノードプラトー形状部近傍の領域からの、改善された熱放散を達成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電極(カソード)
2、2’、2’’ 電極(アノード)
3 カソード保持ロッド
4 アノード保持ロッド
5 内部電流導体(カソード)
6 内部電流導体(アノード)
7 放電容器
8、9 端子ソケット
10 放電ランプ
11 カソード先端部
12 円筒状領域(カソード)
13 円筒状領域(アノード)
14 アノードプラトー形状部
14’、14’’ アノード凹部
20 電極(アノード)
200 電極(アノード)
202 電極(アノード)
22 アノードポット
220 アノードポット
221~227 チャンバ
230 凹欠部
24 キャップ
241 孔
26 銀
261~266 栓
2661 糸はんだコイル