(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】差動太陽ギヤ切断クラッチを有する電気アクスル
(51)【国際特許分類】
H02K 7/10 20060101AFI20230208BHJP
F16H 48/10 20120101ALI20230208BHJP
F16D 11/10 20060101ALI20230208BHJP
F16D 23/12 20060101ALI20230208BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20230208BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02K7/10 C
F16H48/10
F16D11/10 A
F16D23/12 Z
F16D28/00 Z
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2021559231
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2020024946
(87)【国際公開番号】W WO2020205427
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン リー
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130585(JP,A)
【文献】特開2002-235832(JP,A)
【文献】特公昭46-20523(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
F16H 48/10
F16D 11/10
F16D 23/12
F16D 28/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータから車両の駆動シャフトへの動力供給を、選択的に可能にするように構成された電気アクスルであって、前記電気アクスルが、
駆動トルクを駆動シャフトに伝達するように構成された差動遊星ギヤセットであって、前記差動遊星ギヤセットが、前記駆動シャフトを取り囲むように構成された太陽ギヤを有する、差動遊星ギヤセットと、
前記太陽ギヤを前記駆動シャフトに、選択的に回転不可能に連結するように構成されたクラッチと、を備える、電気アクスル。
【請求項2】
前記クラッチが、軸方向に移動するように構成されたスリーブを備え、前記スリーブが、前記軸方向に移動してロックまたは係合構成となったとき、選択的に前記太陽ギヤと係合する、請求項1に記載の電気アクスル。
【請求項3】
前記太陽ギヤが、径方向に延びる歯の第1のセットを有する内面を有し、前記スリーブが、径方向に延びる歯の第2のセットを有する外面を有し、前記クラッチが前記ロックまたは係合構成にあるとき、前記歯の第2のセットが、径方向に延びる前記歯の第1のセットと噛み合う、請求項2に記載の電気アクスル。
【請求項4】
前記スリーブが、前記駆動シャフトの対応する歯と噛み合うように構成された、径方向に延びる歯を有する内面を有する、請求項2に記載の電気アクスル。
【請求項5】
アクチュエータを備えるアクチュエータアセンブリをさらに備え、前記アクチュエータが、前記軸方向に移動して、前記スリーブを前記軸方向に押しやるように構成されている、請求項2に記載の電気アクスル。
【請求項6】
前記アクチュエータアセンブリが、アクチュエータナットを回転させるように構成されたギヤセットを含み、前記アクチュエータナットの回転により、前記アクチュエータが前記軸方向に押しやられる、請求項5に記載の電気アクスル。
【請求項7】
前記アクチュエータナットが、前記アクチュエータの対応するねじ部と噛み合うねじ部を有する、請求項6に記載の電気アクスル。
【請求項8】
前記スリーブの周りに巻かれ、前記スリーブを非ロックまたは非係合構成に戻すように構成されている、ばねをさらに備える、請求項2に記載の電気アクスル。
【請求項9】
駆動シャフトのための電気アクスルであって、前記電気アクスルが、
ハウジングと、
少なくとも部分的には前記ハウジング内に配置された差動遊星ギヤセットであって、前記差動遊星ギヤセットが、前記ハウジング内において回転可能な太陽ギヤを備え、前記太陽ギヤが歯を画定する内面を有する、差動遊星ギヤセットと、
前記太陽ギヤの径方向内側に配置されたスリーブであって、前記スリーブが、前記太陽ギヤの前記歯と噛み合う歯を画定する外面を有する、スリーブと、を備え、
前記スリーブが、(i)前記太陽ギヤが前記駆動シャフトとは独立して回転可能な、非ロックまたは非係合位置と、(ii)前記スリーブが、前記太陽ギヤと前記駆動シャフトとを回転不可能に連結する、ロックまたは係合位置との間で軸方向に移動可能である、電気アクスル。
【請求項10】
前記スリーブが、前記駆動シャフトと噛み合う歯を画定する内面を有し、前記電気アクスルが、アクチュエータを備えるアクチュエータアセンブリをさらに備え、前記アクチュエータが、前記非ロックまたは非係合位置から、前記ロックまたは係合位置へと、前記スリーブを移動させるように構成されている、請求項9に記載の電気アクスル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年4月5日に出願された米国特許出願第16/376,153号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、電気アクスル(「e-アクスル(e-axle)」)であって、電気モータから、そのアクスルに関連付けられた車輪への動力供給を選択的に可能にするためのクラッチを装備する、電気アクスルに関する。
【背景技術】
【0003】
電気モータは、車両における駆動力源としてますます使用されており、化石燃料を必要とする従来の内燃機関の代替手段を提供している。全電気車両またはハイブリッド車両における電気モータの適合性を向上させるために、すでに多大な努力がなされてきた。
【0004】
e-アクスルまたはeアクスル(eAxle)とも称する電気アクスルは、当該技術分野で周知であり、駆動トルクを電気モータから出力へと、任意選択的に減速または増速駆動歯車装置を介して伝達する。例えば、遊星ギヤセットは、電気モータからトルクを1つ以上のアクスルに伝達するために設けることができると同時に、遊星歯車装置の動作に起因して、電気モータのロータがアクスルとは異なる速度で回転することを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、電気アクスルは、電気モータから車両の駆動シャフトへの動力供給を、選択的に可能にするように構成されている。電気アクスルは、駆動トルクを駆動シャフトに伝達するように構成された差動遊星ギヤセットを備える。差動遊星ギヤセットは、駆動シャフトを取り囲むように構成された太陽ギヤを有する。クラッチは、太陽ギヤを駆動シャフトに、選択的に回転不可能に連結するように構成されている。
【0006】
別の実施形態において、駆動シャフト用の電気アクスルは、ハウジングと、少なくとも部分的にはハウジング内に配置された差動遊星ギヤセットと、を含む。差動遊星ギヤセットは、ハウジング内で回転可能な太陽ギヤを含む。太陽ギヤは、歯を画定する内面を有する。スリーブは、太陽ギヤの径方向内側に配置されている。スリーブは、太陽ギヤの歯と噛み合う歯を画定する外面を有する。スリーブは、(i)差動太陽ギヤが駆動シャフトとは独立して回転可能な、非ロックまたは非係合位置と、(ii)スリーブが差動太陽ギヤと駆動シャフトとを回転不可能に連結する、ロックまたは係合位置との間で軸方向に移動可能である。
【0007】
さらに別の実施形態において、電気アクスルは、太陽ギヤと、駆動シャフトの周りに嵌合するように寸法決めされたスリーブと、を含む遊星ギヤセットを含む。スリーブは、太陽ギヤと駆動シャフトとの間の間隙において軸方向に移動するように構成されている。アクチュエータアセンブリは、スリーブを軸方向に押しやって、スリーブを太陽ギヤおよび駆動シャフトの両方に選択的に回転不可能にロックするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による、組み立てられた電気アクスルアセンブリ、または電気アクスルの斜視図である。
【
図2】一実施形態による、外側ハウジングが除去された電気アクスルの一部の拡大斜視図である。
【
図4】一実施形態による、電気アクスルのクラッチが非ロックまたは非係合構成である、
図3の電気アクスルの一部の拡大断面図である。
【
図5】一実施形態による、電気アクスルのクラッチが係合またはロック構成である、
図4の電気アクスルの一部の拡大断面図である。
【
図6】一実施形態による、
図5の線6-6に沿って取られた、電気アクスルのクラッチを作動させるためのクラッチアクチュエータアセンブリの正面断面図である。
【
図7】一実施形態による、
図5の線7-7に沿って取られた、係合またはロック構成にある電気アクスル10の一部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態が、本明細書に記載されている。しかしながら、開示された実施形態は単なる例であり、他の実施形態は様々な代替形態を取り得ることを理解されたい。図は必ずしも縮尺どおりではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化されている場合がある。したがって、本明細書に開示される特定の構造的詳細および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、当業者に実施形態を様々に使用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者が理解するように、図のいずれか1つを参照して図示および説明される様々な特徴は、1つ以上の他の図に示される特徴と組み合わせて、明示的に図示または説明されない実施形態を生成することができる。図示された特徴の組み合わせは、典型的な用途のための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、特定の用途または実装のために、本開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせおよび修正が望まれる可能性がある。
【0010】
本明細書で使用される方向を示す用語は、例示的な図面において示された表示および向きを参照してなされる。中心軸線は、図面において示されており、以下で説明する。「外」および「内」などの用語は、中心軸線に対するものである。例えば、「外」面は、面が中心軸線から離れる方向に面することを意味し、またはもう一方の「内」面の外側である。「径方向」、「直径」、「円周」などの用語もまた、中心軸線に対するものである。「前」、「後」、「上」、および「下」という用語は、参照される図面における方向を示す。
【0011】
ハイブリッド電気車両、電気車両などにおいて、車両は、少なくとも部分的には電気モータによって駆動される。電気モータは、高電圧バッテリパックによって電力供給されてもよく、例えば、回生制動を行って、車両の運動エネルギーをバッテリに貯蔵するために電気エネルギーに転換することが可能であってもよい。
【0012】
電気アクスル(e-アクスル、eアクスル、電子アクスルなどとも称する)は、車両の駆動シャフトアセンブリ上に置くことができる。電気アクスルは、例えば、車両が方向転換するとき、複数の駆動シャフトが異なる回転速度をとることを可能にする、差動装置として機能することができる。電気アクスルはまた、動力をモータから駆動シャフトに増速または減速歯車装置を介して伝達することができる。電気アクスルにより、駆動シャフトまたはプロペラシャフトを不要にすることができ、それぞれのフロントアクスルおよびリアアクスルは、独立して動力供給されるかまたは推進されることができる。
【0013】
本明細書に記載の実施形態によれば、電気アクスルには、太陽ギヤと、太陽ギヤに選択的に係合する切断クラッチと、を有する遊星差動装置が設けられている。クラッチが開または非係合のとき、モータは、駆動シャフトに動力供給できない。この構成において、それらの駆動シャフト上の車輪は、車両が走行しているときに受動的に回転することができる。クラッチが閉または係合のとき、駆動シャフトに接続された太陽ギヤは、トルクを電気モータから駆動シャフトに遊星差動装置を通って伝達することができる。本明細書に記載の特定の実施形態において、クラッチは、ドッグクラッチとして作用するスリーブを含む。スリーブは、クラッチを開閉するために軸方向に移動可能であり得る。スリーブは、スプライン付きの外面を有し、常に太陽ギヤと係合して共に回転することができる。スリーブはまた、スリーブが軸方向に移動したとき、アクスルシャフトと噛み合う内面を有することができる。スリーブが噛み合いから外れて軸方向に移動すると、アクスルシャフトは、太陽ギヤに対して自由に回転することができる。この概念は、差動装置の太陽ギヤに設けられたクラッチの単なる例示であり、この概念のさらなる記述が以下で説明する実施形態において記述されている。
【0014】
ただし、以下に記載の構成は、電気アクスルにおける切断クラッチの一実施形態である。本開示は、電気アクスルにおける切断クラッチに関する実施形態をさらに開示する米国特許出願第16/376,125号の教示を、本明細書で参照することにより完全に組み込んでいる。本出願の教示および米国特許出願第16/376,125号の教示を組み合わせて、さらなる実施形態を形成することができる。
【0015】
図1は、組み立てられた電気アクスルアセンブリ、または電気アクスル10を示す。
図2は、分かりやすくするために外側ハウジングを除去した、電気アクスルアセンブリ10の一部の拡大図を示す。
図3は、電気アクスル10の断面図を示し、
図4は、クラッチが非係合または非ロック構成である、電気アクスル10の一部の拡大断面図を示す。
図5は、クラッチが係合またはロック構成である、電気アクスル10を示す。
図6は、駆動シャフトの周りのクラッチアクチュエータアセンブリの相互作用を示す。
図7は、
図5の係合またはロック構成における、電気アクスル10の拡大領域を示し、
図8は、係合またはロック構成における、電気アクスル10の正面断面図を示す。これらの図面の少なくとも1つに示された部品が以下で参照される。
【0016】
電気アクスル10は、中心軸線11の周りに、かつ第1の駆動シャフト12および第2の駆動シャフト14などの一対の駆動シャフトの周りに配置されている。駆動シャフト12、14のそれぞれは、軸線11を中心に回転して、対応する車輪(図示せず)を回転させるように構成されている。駆動シャフト12は、中空コア13を有してもよく、中空コア13により、シャフト12の総質量を低減することができる。外側ハウジング16またはシェルが設けられており(
図2では除去されている)、第1のハウジングシェル18および第2のハウジングシェル20を含んでもよい。
【0017】
電気モータ22は、第2のハウジングシェル20内に収容されている。電気モータ22は、高電圧バッテリ(図示せず)によって電力供給されてもよいため、モータは、駆動シャフト12、14に動力供給するように構成されている。モータ22は、ステータ24と、動力供給されたときに軸線11を中心にステータ24に対して回転するように構成された対応するロータシャフト28を有するロータ26と、を含んでもよい。ロータシャフト28は、第2のハウジングシェル20に回転可能に連結されているため、ロータ26は、動作中にハウジング16が固定されたままであるか、または据え付けられたままである間、ハウジング16内で回転することができる。ロータシャフト28はまた、駆動シャフト14に連結されていてもよい。
【0018】
電気アクスル10は、遊星ギヤセット30を含む。一実施形態において、遊星ギヤセット30は、例えば、ロータシャフト28に(例えば、スプラインを介して)回転不可能に連結された太陽ギヤ32を含む。太陽ギヤ32は、例えば、噛み合い係合により遊星ギヤ34に連結されている。これにより、遊星ギヤ34は、太陽ギヤ32の周りで集合的に回転しながら、遊星ギヤ34自体の中心軸線のそれぞれを中心に回転することが可能となる。キャリア36は、遊星ギヤ34を支持する。遊星ギヤ34はまた、噛み合い係合によりリングギヤ38に接続されているため、遊星ギヤ34は、リングギヤ38内で(かつリングギヤ38に対して)回転することができる。
【0019】
電気アクスル10はまた、トルクベクタリング機能を提供する差動遊星ギヤセット31を含む差動装置を含む。差動遊星ギヤセットは、シャフト12に外接する差動太陽ギヤ33を含む。差動遊星ギヤセットはまた、遊星ギヤセット30として共通キャリア36を共有するか、またはキャリア36と噛み合ったキャリアもしくは別様にキャリア36と共に回転するように構成されたキャリアを有してもよい。一対の対向する差動太陽ギヤが存在してもよい。例えば、第1の差動太陽ギヤ33が、シャフト12の周りに配置されてもよく、一方で、第2の差動太陽ギヤ35が、シャフト14の周りに配置されてもよい。第2の差動太陽ギヤ35は、シャフト14に直接係合されて(例えば、噛み合わされて、スプライン係合されて)もよい。一方で、第1の差動太陽ギヤ33は、シャフト12から径方向に離間されるかまたは間隙が設けられて、以下に記載のスリーブ52を収容してもよい。
【0020】
クラッチアセンブリまたはクラッチ50はまた、一方のアクスルシャフト(例えば、シャフト12)を対応する差動太陽ギヤ33に選択的に回転不可能に固定するために設けられている。換言すれば、クラッチ50が起動されて、シャフト12を差動太陽ギヤ33に回転不可能に係合し、クラッチ50が動作停止されて、シャフト12を差動太陽ギヤ33から連結解除し、それらの間で自由に回転ができるようにすることができる。クラッチが係合されている接続のこの点では、トルクを遊星差動装置を通って伝えることが可能である。
【0021】
クラッチアセンブリ50は、ドッグクラッチスリーブまたはドッグクラッチ部材とも称されるスリーブ52を含む。スリーブ52は、差動太陽ギヤ33の内面と直接係合されている(例えば、スプライン係合されている)中心軸線11から離れる方向に面する外面を有する。スリーブ52が差動太陽ギヤ33と係合されている間、スリーブ52は、軸方向に(例えば、
図2の向きにおいて右に)移動して、シャフト12の外面と係合することもまたできる。換言すれば、アクスルシャフト12は、スプライン付けされており、スリーブ52が軸方向に移動してシャフト12と噛み合うとき、スリーブ52の内面と噛み合う。スリーブ52が噛み合いから外れて軸方向に(
図2の向きにおいて左に)移動すると、アクスルシャフト12は、差動太陽ギヤ33の内径の内側で自由に回転することができる。
【0022】
アクチュエータアセンブリ60はまた、スリーブ52を移動させて、シャフト12と太陽ギヤ32との間で係合する、かつ係合から外すために設けられている。アクチュエータアセンブリ60の少なくとも一部は、ハウジング18の外側に取り付けられてもよく、または別様に連結されてもよい。アクチュエータアセンブリ60は、電圧が加えられたときにギヤセット64を回転させるように構成された電気モータ62を含む。ギヤセット64は、アクチュエータナット66と噛み合い係合している。アクチュエータナット66は、ねじ係合によりアクチュエータ68に接続されている。アクチュエータ68は、例えば、対面係合でスリーブ52に接続されている。したがって、モータ62がギヤセット64を回転させると同時に、ギヤセット64は、アクチュエータ68を軸方向に押しやるアクチュエータ68のねじ部に沿って、アクチュエータナット66を回転させる。
【0023】
図3および
図4を参照すると、クラッチアセンブリ50は、非係合状態で示されている。スリーブ52は、噛み合いまたはスプライン接続を介して太陽ギヤ32と係合されているが、スリーブ52は、シャフト12と係合されていないため、シャフト12およびスリーブ52は、互いに独立に回転することができる。
【0024】
クラッチアセンブリ50の係合は、
図5および
図7に示されている。(上述のように)モータ62に電圧を加えることによるアクチュエータアセンブリ60の起動は、矢印51により示したように、スリーブ52の軸方向の移動をもたらす。係合またはロック構成であるとき、スリーブ52の内面は、シャフト12とスプライン係合されているか、または別様に噛み合っており、スリーブ52の外面は、差動太陽ギヤ33とスプライン係合されているか、または別様に噛み合っている。これにより、シャフト12が差動太陽ギヤ33に回転不可能に固定され、差動遊星ギヤセットを通ってシャフト12にトルクを伝達すること(またはその逆)が可能である。
図7に示すように、差動遊星ギヤ70は、差動太陽ギヤ33と噛み合い、差動太陽ギヤ33の周りで回転する。
【0025】
図5および
図7に示すように、シャフト12には、シャフト12の端部領域74にのみスプライン機構72が設けられてもよい。スプライン機構72は、そこから外側に延びて、シャフト12の残部よりも大きな外径を画定する。これらのスプライン機構72は、スリーブ52が係合またはロック構成に動かされたとき、スリーブ52の内面と噛み合うように寸法決めされ、かつ構成された径方向に延びる歯を含んでもよい。同様に、差動太陽ギヤ33は、スリーブが係合またはロック構成に動かされたとき、スリーブ52の外面と噛み合うように構成された径方向に延びる歯を含んでもよいスプライン機構76を有する。差動太陽ギヤ33のスプライン機構76はまた、スリーブが非係合または非ロック構成に位置しているときであっても、スリーブ52の外面と係合するように連続していてもよい(例えば、
図4を参照)。
【0026】
ばね78がスリーブ52の周りに設けられてもよい。アクチュエータアセンブリがスリーブ52をロックまたは係合構成にもはや押しやることがないとき、ばね78が付勢されて、スリーブ52を非ロックまたは非係合構成に戻してもよい。一実施形態において、ばね78は、スリーブ52と差動太陽ギヤ33との間の軸方向の間隙に位置している。ばね78は、スリーブ52がロックまたは係合構成へと軸方向に移動されるときに縮み、ばねに力を加えて圧縮状態として、スリーブ52がその非ロックまたは非係合構成に戻るように付勢する。スリーブ52には、一方の端部に径方向に延びるフランジ80が設けられて、スリーブ52と差動太陽ギヤ33との間の軸方向にばねを含んでもよい。
【0027】
例示的な実施形態が上記に説明されているが、これらの実施形態が、特許請求の範囲に含まれるすべての可能な形態を説明することは意図されていない。本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解される。前述のように、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、明示的に説明または図示されていない可能性がある本発明のさらなる実施形態を形成することができる。様々な実施形態は、1つ以上の所望の特性に関して、利点を提供するか、または他の実施形態または従来技術の実装よりも好ましいと説明できたが、当業者は、1つ以上の特徴または特性を妥協して特定の用途と実装に依存する所望の全体的なシステム属性を達成できることを認識する。これらの属性は、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、保守性、重量、製造性、組み立ての容易さなどを含み得るが、これらに限定されない。したがって、任意の実施形態が、1つ以上の特性に関して他の実施形態または先行技術の実装よりも望ましくないと記載される限りにおいて、これらの実施形態が本開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましい場合があり得る。
【0028】
以下は、図に示されている参照番号のリストである。しかしながら、これらの用語の使用は、一実施形態に関して単に例示を目的とするものであることを理解されたい。そして、図に例示され、特許請求の範囲に存在する特定の用語を相関させる参照番号の使用は、例示された実施形態のみを網羅するように特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【符号の説明】
【0029】
10 電気アクスル
11 中心軸線
12 第1の駆動シャフト
13 中空コア
14 第2の駆動シャフト
16 外側ハウジング
18 第1のハウジングシェル
20 第2のハウジングシェル
22 電気モータ
24 ステータ
26 ロータ
28 ロータシャフト
30 遊星ギヤセット
31 差動遊星ギヤセット
32 太陽ギヤ
33 差動太陽ギヤ
34 遊星ギヤ
35 第2の差動太陽ギヤ
36 キャリア
38 リングギヤ
50 クラッチアセンブリ
51 矢印
52 スリーブ
60 アクチュエータアセンブリ
62 電気モータ
64 ギヤセット
66 アクチュエータナット
68 アクチュエータ
70 差動遊星ギヤ
72 スプライン機構
74 端部領域
76 スプライン機構
78 ばね
80 フランジ