(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電解液、電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230208BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230208BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20230208BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230208BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230208BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20230208BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20230208BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20230208BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M6/16 A
H01M4/13
H01M10/052
H01G11/64
H01G11/24
H01G11/60
(21)【出願番号】P 2022076217
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2021038937の分割
【原出願日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】202010203089.7
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 睿
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006046(JP,A)
【文献】特開2017-228426(JP,A)
【文献】特開2009-158464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0099103(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0099098(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0388883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0326636(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105047993(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1195931(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 6/00-6/22
H01G 11/00-11/86
H01M 10/00-10/04;10/06-10/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液であって、プロピレンカーボネート、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を含有する第1の添加剤を含み、
アジポニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、リチウムジフルオロホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含有する第2の添加剤をさらに含み、
電解液の総質量に対して、前記第2の添加剤の含有率は0.01質量%以上、15質量%以下であることを特徴とする電解液。
【化1】
(式(I)において、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して-(CH
2)
a-CN又は-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-CNであり、R
4はH、C
1~C
5アルキル基、-(CH
2)
a-CN又は-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-CNであり、且つR
1、R
2、R
3及びR
4のうち少なくとも1つは(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-CNであり、ここで、a、b及びcはそれぞれ独立して0~10の範囲から選ばれる整数である。)
【化2】
(式(II)において、AはC
1~C
5アルキル基であり、LはC
1~C
10アルキレン基又はC
n(R
a)
2n-O-C
m(R
b)
2mであり、ここで、R
a及びR
bはそれぞれ独立してH又はC
1~C
5アルキル基であり、n及びmはそれぞれ独立して1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【請求項2】
前記電解液の総質量に対して、前記プロピレンカーボネートの含有率は2質量%以上、20質量%以下であり、及び/又は
前記電解液の総質量に対して、式(II)で表される化合物の含有率は0.001質量%以上、5質量%以下である、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記プロピレンカーボネートの質量は式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物との質量の総和よりも大きい、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と前記電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)とは以下の関係式を満たす、請求項1に記載の電解液。
0.01≦(X+Y)≦8、且つ
X≧Y
【請求項5】
式(I)で表される化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、及び式(I-C)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
【化3】
【請求項6】
式(II)で表される化合物は式(II-A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電解液。
【化4】
(式(II-A)において、AはC
1~C
5アルキル基であり、且つkは1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【請求項7】
正極シート、負極シート、セパレータ及び請求項1~6のいずれか一項に記載の電解液を含む、電気化学装置。
【請求項8】
前記負極は、負極集電体及び負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、前記負極集電体の表面に設けられ、前記負極活物質層は負極活性材料を含み、
式(II)で表される化合物の重量M(mg)と前記負極活物質層の反応面積S(m
2)は以下の関係式を満たす、請求項7に記載の電気化学装置。
10≦(M/S)≦100
【請求項9】
請求項7~8のいずれか一項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年03月20日に中国特許庁に提出された、出願番号が202010203089.7であり、発明の名称「電解液、電気化学装置及び電子装置」の中国特許出願の分割出願である。
【0002】
本発明は電解液、電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学は、2種類の導体によって形成される帯電した界面の現象及びそれに発生する変化を研究する科学である。電気化学装置では、電解液が電気化学装置の性能に重要な影響を及ぼしている。
【0004】
上記の説明は、背景技術を提供するだけであり、上記の「背景技術」が本発明の先行技術を構成することを考えない。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施例において、本発明は、プロピレンカーボネート、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を含有する第1の添加剤を含む電解液を提供することである。
【0006】
【0007】
(式(I)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して-(CH2)a-CN又は-(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり、R4はH、C1~C5アルキル基、-(CH2)a-CN又は-(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり,且つR1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり、ここで、a、b及びcはそれぞれ独立して0~10の範囲から選ばれる整数である。)
【0008】
【0009】
(式(II)において、AはC1~C5アルキル基であり、LはC1~C10アルキレン基又はCn(Ra)2n-O-Cm(Rb)2mであり、ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立してH又はC1~C5アルキル基であり、n及びmはそれぞれ独立して1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【0010】
いくつかの実施例において、前記電解液の総質量に対して、前記プロピレンカーボネートの含有率は2質量%以上、20質量%以下であり、及び/又は
前記電解液の総質量に対して、式(II)で表される化合物の含有率は0.001質量%以上、5質量%以下である。
【0011】
いくつかの実施例において、前記プロピレンカーボネートの質量は式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物との質量の総和よりも大きい。
【0012】
いくつかの実施例において、前記電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と前記電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y%)とは以下の関係式を満たす。
0.01≦(X+Y)≦8、且つ
X≧Y
【0013】
いくつかの実施例において、式(I)で表される化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン及び式(I-C)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0014】
【0015】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物は式(II-A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0016】
【0017】
(式(II-A)において、AはC1~C5アルキル基であり、且つkは1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【0018】
いくつかの実施例において、前記電解液は第2の添加剤をさらに含み、前記第2の添加剤はアジポニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、及びリチウムジフルオロホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0019】
いくつかの実施例において、本発明は、正極シート、負極シート、セパレータ及び上記の電解液を含む、電気化学装置を提供することである。
【0020】
いくつかの実施例において、前記負極は、負極集電体及び負極活物質層を含み、負極活物質層は、負極集電体の表面に設けられ、負極活物質層は負極活性材料を含み、
式(II)で表される化合物の重量M(mg)と前記負極活物質層の反応面積S(m2)は以下の関係式を満たす。
10≦(M/S)≦100
【0021】
いくつかの実施例において、本発明は、上記の電気化学装置を含む電子装置をさらに提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例は、本発明の例示にすぎず、様々な形態で実施され得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される特定の詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に、「特許請求の範囲」の根拠として、また、本発明の様々な実施を当業者に教示するための代表的な根拠として、解釈されるべきである。
【0023】
本発明の説明において、明確且つ具体的な限定がない限り、用語“第1”、“第2”、“第3”、“式(I)”、“式(II)”、“式(I-C)”、“式(II-A)”、“I-A”、“I-B”、“I-C”、“II-a”などは、説明するためだけに用いられることを目的とし、比較的な重要性及び相互関係を指示又は示唆すると理解すべきではない。
【0024】
本発明の説明において、特に限定がない限り、すべての化合物の官能基は、置換でもよく、無置換でもよい。
【0025】
[電解液]
いくつかの実施例において、プロピレンカーボネート、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を含有する第1の添加剤を含む。
【0026】
【0027】
(式(I)において,R1、R2及びR3はそれぞれ独立して-(CH2)a-CN又は-(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり、R4はH、C1~C5アルキル基、-(CH2)a-CN又は-(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり、且つR1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは(CH2)b-O-(CH2)c-CNであり、ここで、a、b及びcはそれぞれ独立して0~10の範囲から選ばれる整数である。)
【0028】
【0029】
(式(II)中,AはC1~C5アルキル基であり、LはC1~C10アルキレン基又はCn(Ra)2n-O-Cm(Rb)2mであり、ここで、Ra及びRbはそれぞれ独立してH又はC1~C5アルキル基であり、n及びmはそれぞれ独立して1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【0030】
電気化学装置のエネルギー密度に対する要求はますます高くなることに伴い、高電圧電気化学装置の開発は、電気化学装置のエネルギー密度を高めるための効果的な方法の一つです。しかしながら、高電圧下で、電気化学装置の正極活物質の酸化活性は向上するが、その安定性は低下し、電解液を正極の表面で分解させたり、電気化学材料を劣化させたりしやすく、これによってエネルギー密度の低下を招致する。
【0031】
本発明は、電解液にプロピレンカーボネート、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を加えることにより、電気化学装置の間欠サイクル性能を効果的に改善すると共に、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下を効果的に抑制することができる。電気化学装置の間欠サイクル性能は、電気化学装置の信頼性を表示するための近年発見された性能指標である。実際の使用では、電子装置は通常、高充電状態で動作するが、高充電状態では長時間に亘って待機することがある。したがって、非間欠サイクルと比較して、間欠サイクル性能指標は、電気化学装置の複数の充放電サイクル後の容量保持率を測定したもので、電子装置の実際の使用環境に近い。 電圧降下とは、電流が電気化学装置を通した後、電気化学装置の両端に発生する電位差(ポテンシャル差)を意味する。間欠サイクル性能に優れ、高温保管後の電圧降下が少ない電気化学装置は、高電圧下でのエネルギー密度の向上に寄与する。
【0032】
いくつかの実施例において、式(I)で表される化合物は、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン、及び1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0033】
いくつかの実施例において、式(I)で表される化合物は、式(I-C)で表される化合物を含む。
【0034】
【0035】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物は、式(II-A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0036】
【0037】
(式(II-A)中,AはC1~C5アルキル基,且つkは1~5の範囲から選ばれる整数である。)
【0038】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物は、式(II-a)で表される化合物を含む。
【0039】
【0040】
いくつかの実施例において、電解液的総質量に対して、プロピレンカーボネートの含有率は2質量%以上、20質量%以下である。プロピレンカーボネートの含有率が上記の範囲内にある場合、電気化学装置の間欠サイクル性能をさらに改善することができる。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、プロピレンカーボネートの含有率の下限値は5質量%、8質量%、10質量%であり、プロピレンカーボネートの含有率の上限値は20質量%、15質量%である。プロピレンカーボネートの含有率の範囲は、上限値または下限値の任意の数値で構成することができる。
【0041】
いくつかの実施例において、プロピレンカーボネートの質量は、式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物との質量の総和よりも大きい。
【0042】
いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)とは、以下の関係を満たす。0.01≦(X+Y)≦8、且つX≧Y。式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物の含有率とが上記の要件を満たす場合、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物は、相乗効果をより発現しやすく、電気化学装置の間欠サイクル性能をより十分に改善すると共に、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下をより効果的に抑制することができる。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量にに対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)とは、以下の関係を満たす。0.05≦(X+Y)≦8、且つX≧Y。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量に対する式(II)によって表される化合物の含有率(Y質量%)とは、以下の関係を満たす。0.1≦(X+Y)≦8、且つX≧Y。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)とは、以下の関係を満たす。0.1≦(X+Y)≦6、且つX≧Y。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)は、以下の関係を満たす。0.5≦(X+Y)≦6、且つX≧Y。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の含有率(Y質量%)とは、以下の関係を満たす。0.5≦(X+Y)≦5、且つX≧Y。
【0043】
いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、式(II)で表される化合物の含有率は、0.001質量%以上、5質量%以下である。式(II)で表される化合物の含有率が上記の範囲内にある場合、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下をさらに抑制することができる。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、式(II)で表される化合物の含有率の下限値は、0.01質量%、0.5質量%、1質量%であり、式(II)で表される化合物の含有率の上限値は、5質量%、3質量%、2質量%であり、式(II)で表される化合物の含有率の範囲は、上限値または下限値の任意の数値で構成することができる。
【0044】
いくつかの実施例において、電解液は、非水性溶媒をさらに含む。非水性溶媒は、当技術分野で周知の電気化学装置に適する非水性溶媒であり、例えば、非水性有機溶媒が一般的に使用される。いくつかの実施例において、非水性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、及び芳香族フッ素含有化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0045】
いくつかの実施例において、環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、及びブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、環状カーボネートは、C3~C6環状カーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0046】
いくつかの実施例において、鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルn-プロピルカーボネート、エチルn-プロピルカーボネート、及びジ-n-プロピルカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、鎖状カーボネートは、フッ素置換鎖状カーボネートを含み、フッ素置換鎖状カーボネートは、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む 。
【0047】
いくつかの実施例において、カルボン酸エステルは、環状カルボン酸エステル及び鎖状カルボン酸エステルを含む。いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルは、γ-ブチロラクトンを含む。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸s-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉シュウ酸メチル、吉シュウ酸エチル、ピバル酸メチル、及びピバル酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルは、フッ素置換鎖状カルボン酸エステルを含み、フッ素置換鎖状カルボン酸エステルは、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル、及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0048】
いくつかの実施例において、環状エーテルは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、及びジメトキシプロパンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0049】
いくつかの実施例において、鎖状エーテルは、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン、及び1,2-エトキシメトキシエタンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0050】
いくつかの実施例において、リン含有有機化合物は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジエチルホスフェート、エチレンメチルホスフェート、エチレンエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、及びトリス(2,2,3,3,3)-ペンタフルオロプロピル)ホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0051】
いくつかの実施例において、硫黄含有有機化合物は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、及び硫酸ジブチルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、硫黄含有有機化合物は、フッ素置換硫黄含有有機化合物を含む。
【0052】
いくつかの実施例において、芳香族フッ素含有化合物は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、及びトリフルオロメチルベンゼンから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0053】
いくつかの実施例において、非水性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、及び鎖状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0054】
いくつかの実施例において、非水性溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0055】
いくつかの実施例において、非水性溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸エチル、及びγ-ブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、非水性溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸プロピルを含む。
【0056】
いくつかの実施例では、電解液は、電解質塩をさらに含む。電解質塩は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる電解質塩である。さまざまな電気化学装置によって、適切な電解質塩を選択できる。例えば、リチウムイオン電池の場合、電解質塩は一般的にはリチウム塩が使用される。いくつかの実施例において、リチウム塩は、無機リチウム塩、タングステン酸リチウム塩、カルボン酸リチウム塩、スルホン酸リチウム塩、イミドリチウム塩、リチウムメチラート、(マロナト)ホウ酸リチウム塩、(マロナト)リン酸リチウム塩、フッ素含有有機リチウム塩、シュウ酸ホウ酸リチウム塩、及びシュウ酸リン酸リチウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0057】
いくつかの実施例において、無機リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、及びLiWF7から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0058】
いくつかの実施例において、タングステン酸リチウム塩は、LiWOF5を含む。
【0059】
いくつかの実施例において、カルボン酸リチウム塩は、HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、及びCF3CF2CF2CF2CO2Liから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0060】
いくつかの実施例において、スルホン酸リチウム塩は、FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、及びCF3CF2CF2CF2SO3Liから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0061】
いくつかの実施例において、イミドリチウム塩は、LiN(FCO)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、環状1,2-パーフルオロエタンビススルホンイミドリチウム、環状1,3-パーフルオロプロパンビススルホンイミドリチウム、及びLiN(CF3SO2)(C4F9SO2)から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0062】
いくつかの実施例において、リチウムメチラートは、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、及びLiC(C2F5SO2)3から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0063】
いくつかの実施例において、(マロナト)ホウ酸リチウム塩は、ビス(マロナト)ホウ酸リチウム、及びジフルオロ(マロナト)ホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0064】
いくつかの実施例において、(マロナト)リン酸リチウム塩は、トリス(マロナト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(マロナト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(マロナト)リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0065】
いくつかの実施例において、フッ素含有有機リチウム塩は、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2、LiPF3(CF3)3、及びLiPF3(C2F5)3から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0066】
いくつかの実施例において、シュウ酸ホウ酸リチウム塩は、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、及びビス(オキサレート)ホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0067】
いくつかの実施例において、オキサレートリン酸リチウム塩は、テトラフルオロオキサレートリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサレート)リン酸リチウム、及びトリス(オキサレート)リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0068】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF6、LiSbF6、LiTaF6、FSO3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、環状1,2-パーフルオロエタンビススルホンイミドリチウム、環状1,3-パーフルオロプロパンビススルホンイミドリチウム、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム、及びジフルオロビス(オキサレート)リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む。電解質塩に上記のリチウム塩が含まれると、電気化学装置の出力特性、高レート充放電特性、高温貯蔵特性、サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0069】
本発明の効果が損なわれない限り、電解質塩の含有量は特に限定されない。いくつかの実施例において、電解液の総体積に対して、電解質塩中のリチウムの総モル濃度の下限値は、0.3モル/L、0.4モル/L、0.5モル/Lであり、電解質塩中のリチウムの総モル濃度の上限値は、3モル/L、2.5モル/L、2.0モル/Lであり、電解質塩中のリチウムの総モル濃度の範囲は、任意の上限値または下限値で構成することができる。電解質塩の濃度が上記の範囲内にある場合、電解液中の荷電粒子としてのリチウム含有量をより適切にすることができ、電解液の粘度をより適切にすることができ、電解液の導電性をより良好にすることができる。
【0070】
いくつかの実施例において、電解液中の添加剤は、第2の添加剤をさらに含み、第2の添加剤は、当技術分野で周知の電気化学装置に適する添加剤である。
【0071】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート、炭素-炭素二重結合含有エチレンカーボネート、硫黄-酸素二重結合を有する化合物、及び酸無水物から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0072】
リチウムイオン電池を充電・放電すると、フルオロカーボネートがプロピオン酸エステルと作用して負極の表面に安定な保護膜を形成し、これにより電解質の分解反応を抑制する。いくつかの実施例において、プロピオン酸エステルは、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、フルオロカーボネートの構造式は、C=O(OR1’)(OR2’)であり、ここで、R1’及びR2’は、それぞれ独立してC1~C6アルキル基またはC1~C6ハロアルキル基であり、且つR1’及びR2’の少なくとも1つはC1~C6フルオロアルキル基であり、R1’及びR2’の少なくとも1つは、それが結合する原子と5~7員環を形成する。いくつかの実施例において、フルオロカーボネートは、フルオロエチレンカーボネート、シス4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トランス4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、及びエチルトリフルオロエチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、炭素-炭素二重結合を有するエチレンカーボネートは、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジメチルビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-n-プロピル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート、及び1,1-ジエチル-2-メチレンエチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、炭素-炭素二重結合を有するエチレンカーボネートは、ビニレンカーボネートを含む。 第2の添加剤に炭酸ビニレンが含まれる場合、電気化学装置の総合的性能をより向上させることができる。
【0074】
いくつかの実施例において、硫黄-酸素二重結合を有する化合物は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステル、及び環状亜硫酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、環状硫酸エステルは、1,2-エチレングリコール硫酸エステル、1,2-プロパンジオール硫酸エステル、1,3-プロパンジオール硫酸エステル、1,2-ブタンジオール硫酸エステル、1,3-ブタンジオール硫酸エステル、1,4-ブタンジオール硫酸エステル、1,2-ペンタンジオール硫酸エステル、1,3-ペンタンジオール硫酸エステル、1,4-ペンタンジオール硫酸エステル、及び1,5-ペンタンジオール硫酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、鎖状硫酸エステルは、硫酸ジメチル、硫酸メチルエチル、及び硫酸ジエチルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、鎖状スルホン酸エステルは、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチルなどのフルオロスルホン酸エステル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ジメタンスルホン酸ブチル、2-(メチルスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、及び2-(メチルスルホニルオキシ)プロピオン酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、環状スルホン酸エステルは、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、及びエチレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、鎖状亜硫酸エステルは、亜硫酸ジメチル、亜硫酸メチルエチル、及び亜硫酸ジエチルから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、環状亜硫酸エステルは、1,2-エチレングリコールスルファイト、1,2-プロピレングリコールスルファイト、1,3-プロピレングリコールスルファイト、1,2-ブチレングリコールスルファイト、1,3-ブチレングリコールスルファイト、1,4-ブチレングリコールスルファイト、1,2-ペンチレングリコールスルファイト、1,3-ペンチレングリコールスルファイト、1,4-ペンチレングリコールスルファイト及び1,5-ペンチレングリコールスルファイトから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0075】
いくつかの実施例において、酸無水物は、環状リン酸無水物、カルボン酸無水物、スルホン酸無水物から選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、環状リン酸無水物は、トリメチル環状リン酸無水物、トリエチル環状リン酸無水物、及びトリプロピル環状リン酸無水物から選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、カルボン酸無水物は、無水コハク酸、グルタル酸無水物、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、スルホン酸無水物は、ジスルホン酸無水物またはカルボン酸スルホン酸無水物を含む。いくつかの実施例において、ジスルホン酸無水物は、エタンジスルホン酸無水物、及びプロパンジスルホン酸無水物から選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、カルボン酸スルホン酸無水物は、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物、及びスルホ酪酸無水物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0076】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及び炭素-炭素二重結合を有するエチレンカーボネートを含む。
【0077】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及び硫黄-酸素二重結合を有する化合物を含む。
【0078】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及び環状リン酸無水物を含む。
【0079】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及びカルボン酸無水物を含む。
【0080】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及びスルホン酸無水物を含む。
【0081】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、フルオロカーボネート及びカルボン酸スルホン酸無水物を含む。
【0082】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、アジポニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、及びリチウムジフルオロホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含む。電解液が上記添加剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含む場合、電気化学装置の間欠サイクル性能をさらに改善することができ、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下をより効果的に抑制することができる。
【0083】
本発明の効果を損なわない限り、第2の添加剤の含有量は特に限定されない。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、第2の添加剤の含有率は0.01質量%以上、15質量%以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に基づいて、第2の添加剤の含有率は0.1質量%以上、10質量%以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、第2の添加剤の含有率は1質量%以上、5質量%以下である。
【0084】
いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、プロピオン酸エステルの含有量は、第2の添加剤の含有量の1.5倍以上、30倍以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、プロピオン酸エステルの含有量は、第2の添加剤の含有量の1.5倍以上、20倍以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、プロピオン酸エステルの含有量は、第2の添加剤の含有量の2倍以上、20倍以下又は5倍以上、20倍以下である。いくつかの実施例において、プロピオン酸エステルは、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及びプロピオン酸プロピルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0085】
いくつかの実施例において、第2の添加剤は、第3の添加剤をさらに含む。第3の添加剤は、例えば、負極皮膜形成剤、正極保護剤、過充電防止剤、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、第3の添加剤の含有率は0質量%以上、5質量%以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に対して、第3の添加剤の含有率は、0.01質量%以上、5質量%以下である。いくつかの実施例において、電解液の総質量に基づいて、第3の添加剤の含有率は、0.2質量%~5質量%である。
【0086】
[電気化学装置]
本発明の電気化学装置は、例えば、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、またはコンデンサである。二次電池は、例えば、リチウム二次電池である。リチウム二次電池には、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施例において、電気化学装置は、正極シート、負極シート、セパレータ、および本発明で前述した電解液を含む。
【0088】
正極シートは、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる正極シートであり、例えば、正極シートは、米国特許US9812739Bに記載される正極シートを採用できる。
【0089】
いくつかの実施例において、正極シートは、正極集電体及び正極活物質層を含む。正極活物質層は、正極集電体の表面に設けられている。 正極活物質層は、正極活性材料を含む。
【0090】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属であり、例えば、アルミ箔であるが、これに限定されない。
【0091】
いくつかの実施例において、正極活性材料は、硫化物、リン酸塩化合物、及びリチウム遷移金属複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。正極活性材料は、活性イオンを挿入・脱挿入することができる電気化学装置の正極活性材料として使用することができる、当技術分野で周知の様々な従来の既知の材料から選択することができる。 例えば、正極活性材料は、米国特許US9812739B号に記載される正極活性材料を採用できる。
【0092】
いくつかの実施例において、正極シートの調製方法は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる正極シートの調製方法である。
【0093】
いくつかの実施例において、正極活物質層は粘着剤をさらに含む。 正極活物質に粘着剤を加え、必要に応じて導電剤と増粘剤を加えて正極スラリーを作製し、その後正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスにより正極シートを作製し、正極スラリーは、乾燥、冷間プレスされた後、正極活物質層を形成する。正極スラリーの調製では、通常、溶媒を加え、正極活性材料に粘着剤を加え、必要に応じて導電剤と増粘剤を加えて溶媒に溶解または分散させて正極スラリーを作製する。溶媒は、乾燥過程中に揮発除去される。粘着剤は、当技術分野で周知の正極活物質層に用いられるものである。粘着剤は例えば、ポリフッ化ビニリデンであるが、これに限定されない。導電剤は、当技術分野で周知の正極活物質層に用いられるものである。導電剤は、例えばSuper-Pであるが、これに限定されない。溶媒は、当技術分野で周知の正極活物質層に用いられるものである。溶媒は例えば、N-メチルピロリドン(NMP)であるが、これに限定されない。
【0094】
いくつかの実施例において、正極シートの構造は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる構造である。例えば、正極シートは、米国特許US9812739B号に記載される構造を有する。
【0095】
負極シートは、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる負極シートであり、例えば、負極シートは、米国特許第US9812739B号に記載される負極シートを採用できる。
【0096】
いくつかの実施例において、負極シートは、負極集電体及び負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極集電体の表面に設けられている。負極活物質層は、負極活性材料を含む。
【0097】
いくつかの実施例において、負極集電体は金属であり、例えば銅箔であるが、これに限定されない
【0098】
いくつかの実施例において、負極活性材料は、炭素質材料、シリコン炭素材料、合金材料、およびリチウム含有金属複合酸化物材料から選ばれる少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。負極活性材料は、活性イオンを電気化学的に挿入・脱挿入することができる電気化学装置の負極活性材料として使用することができる、当技術分野で周知の様々な従来の既知の材料から選択することができる。
【0099】
いくつかの実施例において、負極シートの調製方法は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる負極シートの調製方法である。
【0100】
いくつかの実施例において、負極活物質層は粘着剤及び溶媒をさらに含む。負極活物質に粘着剤及び溶媒を加え、必要に応じて増粘剤、導電剤、充填材を加えて負極スラリーを作製し、その後負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥後、プレスにより負極シートを作製し、負極スラリーは、乾燥、冷間プレスされた後、負極活物質層を形成する。同様に、負極スラリーの調製では、通常、溶媒を加える。溶媒は、乾燥過程中に揮発除去される。粘着剤は、当技術分野で周知の負極活物質層に用いられるものである。粘着剤は例えば、スチレンブタジエンゴムであるが、これに限定されない。溶媒は、当技術分野で周知の負極活物質層に用いられるものである。溶媒は例えば、水であるが、これに限定されない。増粘剤は、当技術分野で周知の負極活物質層に用いられるものである。増粘剤は、例えばカルボキシメチルセルロールであるが、これに限定されない。いくつかの実施例において、負極活性材料が合金材料を含む場合、負極活物質層は、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などの方法を使用して形成される。
【0101】
いくつかの実施例において、負極シートの構造は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる構造である。
【0102】
いくつかの実施例において、負極活性材料がリチウム含有金属複合酸化物材料を含む場合、負極活物質層は、球形のねじれ状を有する導電性骨格および導電性骨格に分散された金属粒子を使用して形成される。いくつかの実施例において、球形のねじれ状を有する導電性骨格の気孔率は0.5%以上5%以下である。いくつかの実施例において、負極活性材料がリチウム含有金属複合酸化物材料を含む場合、負極活物質層に保護層が設けられている。
【0103】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物の重量Mと負極活物質層の反応面積Sとは、以下の関係:10≦(M / S)≦100を満たす。ここで、Mの単位はmgであり、Sの単位はm2です。式(II)で表される化合物の重量Mと負極活物質層の反応面積Sとが上記の範囲を満たすと、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下をさらに抑えることができる。いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物の重量Mと負極活物質層の反応面積Sとは、以下の関係:20≦(M/S)≦90満たす。いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物の重量Mと負極活物質層の反応面積Sとは、以下の関係:30≦(M/S)≦70を満たす。
【0104】
負極活物質層の反応面積は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下350℃で15分間予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値として定義する。この方法により、負極活物質層の比表面積を測定する。負極活物質層の比表面積とは、負極活物質及び添加剤(バインダー、導電剤、増粘剤、充填材など)を含む負極活物質層全体の比表面積を指す。負極活物質層の重量、すなわち、負極活物質及び添加剤(バインダー、導電剤、増粘剤、充填材など)を含む負極活物質層全体の総重量を測定する。負極活物質層の反応面積は、次の式で算出される。
反応面積=負極活物質層の比表面積×負極活物質層の重量。
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物の重量Mは、17.5mg以上、525mg以下であり、負極活物質層の反応面積Sは、1.75m2以上、5m2以下。負極活物質層の反応面積は、当技術分野で周知の手段により、制御して得られる。いくつかの実施例において、負極活物質層の反応面積は、負極活物質層の比表面及び負極活物質層の重量を制御することにより、得られる。いくつかの実施例において、負極活物質層の比表面は、0.35m2/g以上、1m2/g以下であり、負極活物質層の重量は、5g以上、7g以下である。負極活物質層の反応面積は、次の式で算出される。
負極活物質層の反応面積=負極活物質層の比表面×負極活物質層の重量
【0105】
セパレータは、当技術分野で公知の電気化学装置に用いられ、且つ使用される電解質に対して安定であるセパレータでり、例えば、樹脂、ガラス繊維、および無機物質などであるが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施例において、セパレータは、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリエーテルスルホンから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、ポリオレフィンは、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、ポリオレフィンはポリプロピレンを含む。いくつかの実施例において、セパレータは、複数の層の材料を積層することによって形成される。例えば、セパレータは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンを順で積層することによって形成される3層のセパレータである。
【0107】
いくつかの実施例において、セパレータは、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物、及び硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、硫酸塩は、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、セパレータの形態は、粒子形態または繊維形態を含む。
【0108】
本発明は、セパレータの形状について特に限定するものではない。いくつかの実施例において、セパレータの形態は、液体保持性に優れる多孔質シート形態または不織布形態を含む。多孔質シートの形態または不織布の形態のセパレーターが使用される場合、本発明は、セパレータの気孔率について特に制限しない。いくつかの実施例において、セパレータの気孔率の下限値は20%、35%、45%であり、セパレータの気孔率の上限値は90%、85%、75%であり、セパレータの気孔率の範囲は、上限値または下限値の任意の値で構成することができる。セパレータの気孔率が上記の範囲内にある場合、セパレータの絶縁性及び機械的強度がより良く確保されると共に、膜抵抗がより良く抑制され、電気化学装置は良好なレート特性を有する。
【0109】
いくつかの実施例において、セパレータの形態は、フィルム形態を含み、例えば、セパレータは、不織布、織布、微多孔質フィルムの形態である。いくつかの実施例において、フィルムの形態のセパレータの孔径は0.01μm以上、1μm以下であり、厚さは5μm以上、50μm以下である。
【0110】
いくつかの実施例において、セパレータは、樹脂系粘着剤を使用して、正極および/または負極の表面上に上記の無機粒子を含む複合多孔質層を形成することによって形成される。いくつかの実施例において、樹脂系粘着剤としてフルオロ樹脂が使用されることにより、粒子径が1μm未満のアルミナ粒子の90%が正極の両面に多孔質層を形成してセパレーターを形成することができる。
【0111】
本発明は、セパレータの厚さについて特に制限するものではない。いくつかの実施例において、セパレータの厚さの下限値は1μm、5μm、8μmであり、セパレータの厚さの上限値は50μm、40μm、30μmであり、セパレータの厚さの範囲は、上限値または下限値の任意の値で構成することができる。セパレータの厚さが上記の範囲内にある場合、セパレータの絶縁性及び機械的強度をより良く高めることができると共に、電気化学装置のレート特性及びエネルギー密度をより良く確保することができる。
【0112】
本発明は、セパレータの平均孔径について特に制限するものではない。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径の下限値は0.05μmであり、セパレータの平均孔径の上限値は0.5μm、0.2μmであり、セパレータの平均孔径の範囲は上限値または下限値の任意の値で構成することができる。セパレータの平均孔径が上記の範囲内にある場合、短絡の発生をより良く回避することができると共に、膜抵抗をより良く抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有する。
【0113】
電極接合体(electrode assembly)は、電気化学装置のモジュールの一つである。電極接合体は、正極シート、負極シート及びセパレータを含む。正極シートと負極シートとはセパレーターで隔てられる。電極接合体は、巻回型、ラミネート型、または巻回型とラミネート型との組み合わせを採用することができる。一つの実施例において、正極シート及び負極シートは、セパレータを介して積層されて、積層型の電極接合体を形成する。一つの実施例において、正極シート及び負極シートは、セパレータを介してらせん状に巻回され、巻回型の電極接合体を形成する。巻回型の電極接合体の形状は、例えば、円筒形または角柱形である。いくつかの実施例において、電気化学装置の総質量に対して、電極接合体の含有率の下限値は40質量%、50質量%であり、電極接合体の含有率の上限値は90質量%、80質量%である。電極接合体の含有率の範囲は、上限値または下限値の任意の数値で構成することができる。電極接合体の含有率が上記の範囲内にある場合、電気化学装置の容量をより良く確保することができ、内圧の上昇に伴う繰り返し充放電性能及び高温貯蔵などの特性の低下が抑制され、ガス放出弁の作動を防ぐことができる。電気化学装置では、電極接合体の数は、例えば、1つまたは複数であるが、これに制限されない。いくつかの実施例において、複数の電極接合体が並んで配置され、互いに電気的に接続されている。
【0114】
いくつかの実施例において、電気化学装置は、集電構造をさらに含む。集電構造は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる集電構造である。いくつかの実施例において、集電構造は、配線部分及び接合部分の抵抗を低減する構造である。いくつかの実施例において、電極接合体が積層型の電極接合体である場合、集電構造は、電気極性に対応する極シートの集電体を対応する出力端子に電気的に接続(例えば、溶接)することによって形成される構造である。電極の面積が大きくなると、内部抵抗が大きくなり、電極に2つ以上の端子を設けることで抵抗を小さくする集電体構造に適する。いくつかの実施例において、電極接合体が巻回型の電極接合体である場合、集電構造は、正極および負極に2つ以上のリード構造をそれぞれ配置し、それらを端子に束ねることによって形成される構造である。この集電構造は、電極接合体の内部抵抗を低減するのに寄与する。
【0115】
いくつかの実施例において、電気化学装置は、外装ケースをさらに含む。外装ケースは当技術分野で周知の電気化学装置に用いられ、且つ使用される電解質に対して安定である外装ケースであり、金属系外装ケース及び積層フィルム系外装ケースであるが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、外装ケースは、ニッケルメッキ鋼板、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金から選ばれる1種である。いくつかの実施例において、外装ケースは、樹脂及びアルミ箔で形成される。いくつかの実施例において、金属系外装ケースは、レーザー溶接、抵抗溶接、又は超音波溶接によって金属を互いに溶接することによって形成されるパッケージ密閉構造であるか、又は樹脂ガスケットを介して上記の金属を使用することによって形成されるリベット構造である。いくつかの実施例において、積層フィルム系外装ケースは、樹脂層を互いに熱粘着することによって形成されるパッケージ密閉構造であるか、又は積層フィルムで使用される樹脂とは異なる樹脂が上記の樹脂層の間に挟まれている構造である。積層膜に使用されている樹脂とは異なる樹脂を樹脂層間に挟むことで、電気化学装置のシール性を向上させる。集電体端子を介して樹脂層を熱接着して密閉構造を形成する場合、金属と樹脂との接合により、挟まれた樹脂として、極性基を有する樹脂または極性基を導入した変性樹脂を使用することができる。本発明は外装ケースの形状について特に限定されるものではなく、例えば、円筒形または角形である。
【0116】
いくつかの実施例において、電気化学装置は、保護素子をさらに含む。 保護素子は、当技術分野で周知の電気化学装置に用いられる保護要素であり、例えば、異常発熱や過電流を流れた時に電気抵抗が大きくなる正温度係数(PTC)抵抗、温度ヒューズ、サーミスタ、異常発熱時に電池の内圧や内温を急激に上昇させることで回路を流れる電流を遮断するバルブ(電流遮断弁)であるが、これらに限定されない。 上記の保護素子は、通常の大電流使用では動作しない素子を選択でき、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走を防止するように設計することもできる。
【0117】
[電子装置]
本発明の電子装置は、任意の電子装置であり、例えば、ノートパソコン、ペン入力型コンピュータ、モバイルコンピュータ、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルプリンタ、ヘッドマウントステレオヘッドフォン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、送受信機、電子手帳、電卓、メモリーカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、家庭用大型蓄電池又はリチウムイオンキャパシタなどであるが、これらに限定されない。なお、本発明の電気化学装置は、上記に例示された電子装置に適用できる以外に、エネルギー貯蔵発電所、海上運搬具、空中運搬具に適用できる。空中運搬具には、大気中の空中運搬装置と大気外の空中運搬装置が含まれる。
【0118】
いくつかの実施例において、電子装置は、本発明に前述した電気化学装置を含む。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0120】
以下の実施例および比較例において、使用される試薬、材料および機器は、特に明記しない限り、すべて市販されているか、または合成的に入手可能である。
【0121】
使用される具体的な試薬は次のとおりです。
添加剤:
アセトニトリル(以下、ANと略称する)
第1の添加剤:
プロピレンカーボネート(以下、PCと略称する);
式(I)で表される化合物:1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン(以下、TCEPと略称する)、1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン(以下、I-Aと略称する)、1,2,6-トリス(シアノエトキシ)ヘキサン(以下、I-Bと略称する)、
【化10】
式(II)で表される化合物:
【化11】
第2の添加剤:
アジポニトリル(以下、ADNと略称する);
1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(以下、HTCNと略称する);
リチウムジフルオロホスフェート(以下、LiPO
2F
2と略称する)。
非水性溶媒:エチレンカーボネート(以下、ECと略称する)、ジエチルカーボネート(以下、DECと略称する)、プロピオン酸プロピル(以下、PPと略称する);
リチウム塩:ヘキサフルオロリン酸リチウム (以下、LiPF
6と略称する)。
【0122】
実施例1~27及び比較例1-7におけるリチウムイオン電池は、以下の方法で調製される。
【0123】
(1)電解液の調製
乾燥(例えば、水分含有量<10ppm)されたアルゴン雰囲気で、非水性溶媒EC:DEC:PCを1:1:1の質量比で混合し、リチウム塩LiPF6を加えて上記の非水性溶媒に溶解させ、最後に、一定量の添加剤(表1に示す)を加え、十分に混合して、リチウム塩濃度が1.15mol/Lになる電解液を得た。
【0124】
(2)正極シートの調製
正極活性材料であるコバルト酸リチウム、導電剤であるSuper-P及び粘着剤であるフッ化ポリビニリデンを、適切な量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒に、質量比95%:2%:3%で完全に混合し、均一な正極スラリーを形成し、該正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体であるアルミ箔に塗布し、乾燥、冷間プレスされた後、さらに切り出し、タブを溶接して正極シートを得た。
【0125】
(3)セパレータの調製
ポリエチレン(PE)多孔質ポリマーフィルムがセパレータとして使用される。
【0126】
(4)負極シートの調製
負極活物質である人造黒鉛、粘着剤であるスチレン-ブタジエンゴム及び増粘剤であるカルボキシメチルセルロースを、適切な量の脱イオン水溶媒に、質量比96%:2%:2%で十分に撹拌混合し、均一の負極スラリーを形成した後、該負極スラリーを厚さ12μmの負極集電である銅箔に塗布し、乾燥、冷間プレスされ、さらに切り出し、、タブを溶接して負極シートを得た。
【0127】
(5)リチウムイオン電池の調製
得られた正極、セパレータ、負極を順に積層し、らせん状に巻回し、隔てる役割を果たすようにセパレータを正極と負極の間に配置して電極接合体を得た。電極接合体を外装ケースに配置し、注液口を残し、注液口から上記で調製した電解液を注入し、パッケージ、化成、分配などの工程を経て、リチウムイオン電池の調製が完成した。
【0128】
実施例1~27および比較例1~7において、使用される添加剤の種類及び含有量を表1、表2及び表3に示す。そのうち、各添加剤の含有量は、電解液の総質量に基づいて計算された重量百分率である。
【0129】
表1 実施例1~15及び比較例1~7のパラメータ
【表1】
【0130】
【0131】
実施例3及び22~27のリチウムイオン電池については、上記の調製方法を採用した上で、電解液中の添加剤の種類及び含有量を調整することに加え、式(II)で表される化合物の重量M(単位mg)と負極活物質層の反応面積S(単位m2)との比率が限定され、具体的には、表3に示す。
【0132】
【0133】
次に、リチウムイオン電池の性能の測定過程と測定結果について説明する。
【0134】
実施例1~27及び比較例1~7で調製されたリチウムイオン電池について、間欠サイクル性能及び高温貯蔵後の電圧降下を測定した。
【0135】
実施例1を例として、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の測定及び高温貯蔵後の電圧降下の測定の測定方法を説明し、実施例2~27及び比較例1~7のリチウムイオン電池の測定方法は実施例1と同じである。
【0136】
(1)間欠サイクル性能の測定
50℃で、リチウムイオン電池を0.5Cで4.45Vまでに定電流充電し、カットオフ電流が0.05Cに達するまでに定電圧充電に切り替え、20時間放置した後、0.5Cで3.0Vまでに定電流放電した。以上の条件に基づいて、リチウムイオン電池について「充電・放置・放電」というサイクルを複数回繰り返し、1サイクル目後の容量D0と100サイクル目後の容量D1をそれぞれ算出した。
【0137】
間欠サイクル後の容量保持率は、次の式に従って算出される。
100回の間欠サイクル後の容量保持率(%)=(100回のサイクル後の放電容量D1/1サイクル目の放電容量D0)×100%。
【0138】
(2)高温貯蔵後の電圧降下の測定
25℃で、リチウムイオン電池を1Cで4.45Vまでに定電流充電し、次に電流が0.05Cに達するまでに定電圧充電し、さらに1Cで3.2Vまでに定電流放電し、5分放置した後、電圧を測定し、U1と記す。さらに85℃で24時間貯蔵した後、電圧を再測定し、U2と記す。
【0139】
高温貯蔵後のリチウムイオン電池の電圧降を下式に従って算出する。
85℃で24時間貯蔵した後の電圧降下=貯蔵前の電圧U1-貯蔵後の電圧U2。
【0140】
表4 実施例1~27及び比較例1~7のリチウムイオン電池の間欠サイクル性能及び高温貯蔵後の電圧降下の測定結果
【表4】
【0141】
表1~4の関連データの分析から、プロピレンカーボネート、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を含む第1の添加剤が添加された電解液を、リチウムイオン電池に適用することにより、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能を効果的に改善できると共に、高温貯蔵後の電気化学装置の電圧降下を効果的に抑制できることが分かった。
【0142】
実施例1~27の比較結果によれば、プロピレンカーボネートが本発明に記載の含有量範囲を満たす、及び/又は、式(II)で表される化合物が本発明に記載の含有量範囲を満たす場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果は比較的良好であることが分かった。プロピレンカーボネートが5%以上、20%以下の含有量範囲を満たす場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果はより良好であることが分かった。
【0143】
実施例2、5~9の比較結果によれば、プロピレンカーボネートの質量が式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物の質量の総和よりも大きい場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果は比較的良好であることが分かった。
【0144】
実施例1~12の比較結果によれば、前記電解液の総質量に対する式(I)で表される化合物の含有率(X質量%)と前記電解液の総質量に対する式(II)で表される化合物の質量分率(Y質量%)とは、0.01≦(X+Y)≦8、且つX≧Yという2つの関係を同時に満たさない場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果は比較的に劣ることが分かった。1.5≦(X+Y)≦5.5、且つX≧Yを同時に満たす場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果はより良好であることが分かった。
【0145】
実施例3、16~21の比較結果によれば、第1の添加剤に加えて、本発明に記載の第2の添加剤を添加することにより、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果をさらに改善することができる。その理由の一つは、第2の添加剤と第1の添加剤との相乗作用により、より安定した複合フィルムを形成するためであると考えられる。
【0146】
負極活物質の反応面積は電池の重要なパラメータであり、電解液の成膜添加剤の反応速度と反応量に影響を与え、これによって負極と電解液との界面の安定性にさらに影響を与えるため、負極活物質と電解液成分との配合比は電池の性能に重要な影響を与える可能性がある。実施例3、22~27の比較結果によれば、式(II)で表される化合物の重量Mと上記の負極活物質層の反応面積Sとが次の関係式:10≦(M/S)≦100(ここで、Mの単位がmgであり、Sの単位がm2である)を満たす場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果は比較的良好であることが分かった。式(II)で表される化合物の重量Mと上記の負極活物質層の反応面積Sとが次の関係式:50≦(M/S)≦100(Mの単位はmgであり、Sの単位はm2である)を満たす場合、リチウムイオン電池の間欠サイクル性能の改善及びリチウムイオン電池の高温貯蔵後の電圧降下の抑制という統合的な効果はより良好であることが分かった。
【0147】
上記の詳細な説明は、いくつかの例示的な実施例を説明しているが、明示的に開示された組み合わせに限定されることを意図するものではない。したがって、特に明記しない限り、本明細書に記載される様々な特徴を組み合わせて、簡潔化にするために示されていないいくつかの他の組み合わせを形成することができる。