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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230209BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E02F9/22 K
E02F9/20 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019042334
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143544
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-082127(JP,A)
【文献】特開2011-038298(JP,A)
【文献】特開2007-100317(JP,A)
【文献】特開平09-235758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、
基体と、
当該基体の上に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、
当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する可変容量形の旋回モータと、
前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるように作動するアクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作を受ける旋回操作部材と、
前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるためのアタッチメント操作を受けるアタッチメント操作部材と、
前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータの容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成された容量制御部と、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出するための吐出圧検出部と、を備え、
前記容量制御部は、前記吐出圧検出部により検出される前記吐出圧が予め設定された吐出圧閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記吐出圧検出部により検出される前記吐出圧が前記吐出圧閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている、建設機械。
【請求項2】
建設機械であって、
基体と、
当該基体の上に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、
当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する可変容量形の旋回モータと、
前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるように作動するアクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作を受ける旋回操作部材と、
前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるためのアタッチメント操作を受けるアタッチメント操作部材と、
前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータの容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成された容量制御部と、
当該建設機械の傾きを検出するための傾斜検出部と、を備え、
前記容量制御部は、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが予め設定された傾き閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている、建設機械。
【請求項3】
建設機械であって、
基体と、
当該基体の上に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、
当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する可変容量形の旋回モータと、
前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるように作動するアクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作を受ける旋回操作部材と、
前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるためのアタッチメント操作を受けるアタッチメント操作部材と、
前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータの容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成された容量制御部と、
当該建設機械の傾きを検出するための傾斜検出部と、
前記旋回操作部材が受ける前記旋回操作の操作方向を検出するための旋回操作方向検出部と、を備え、
前記容量制御部は、
前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが予め設定された傾き閾値未満である場合、又は前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾き及び前記旋回操作方向検出部により検出される前記旋回操作の操作方向に基づいて得られる前記上部旋回体の旋回方向が重力の方向の成分を含む方向である旋回落下方向でない場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、
前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上であり、かつ、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾き及び前記旋回操作方向検出部により検出される前記旋回操作の操作方向に基づいて得られる前記上部旋回体の旋回方向が前記旋回落下方向である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている、建設機械。
【請求項4】
建設機械であって、
基体と、
当該基体の上に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、
当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する可変容量形の旋回モータと、
前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるように作動するアクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作を受ける旋回操作部材と、
前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるためのアタッチメント操作を受けるアタッチメント操作部材と、
前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータの容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成された容量制御部と、
前記旋回モータに接続される作動油供給油路と作動油戻り油路との差圧を検出するための差圧検出部と、
前記差圧検出部により検出される前記差圧と前記第2の容量とに基づいて暫定旋回トルクを演算するトルク演算部と、を備え、
前記容量制御部は、前記トルク演算部により演算される前記暫定旋回トルクが予め設定されたトルク閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記トルク演算部により演算される前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている、建設機械。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記上部旋回体の旋回速度を検出するための旋回速度検出部をさらに備え、
前記容量制御部は、前記旋回速度検出部により検出される前記旋回速度が予め設定された速度閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記旋回速度検出部により検出される前記旋回速度が前記速度閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている、建設機械。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記アタッチメントは、前記上部旋回体に起伏可能に支持されるブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、当該アームの先端部に連結される先端アタッチメントと、を含み、
前記アクチュエータは、前記アームを動作させるように作動するアクチュエータであり、
前記アタッチメント操作は、前記アームを動作させるための操作である、建設機械。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記アタッチメントは、前記上部旋回体に起伏可能に支持されるブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、当該アームの先端部に連結される先端アタッチメントと、を含み、
前記アクチュエータは、前記先端アタッチメントを動作させるように作動するアクチュエータであり、
前記アタッチメント操作は、前記先端アタッチメントを動作させるための操作である、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体と、当該基体に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、を備える建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械は、基体と、当該基体に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、作動油を吐出する油圧ポンプと、当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する旋回モータと、前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントを動作させるように作動するアクチュエータと、を備える。
【0003】
例えば特許文献1は、旋回モータ及びアームシリンダを含む複数のアクチュエータと、複数の油圧ポンプと、旋回モータ用及びアームシリンダ用両制御弁を含む複数の制御弁と、複数の油圧ポンプからの油を旋回モータ用及びアームシリンダ用両制御弁に対して別々に供給する第一位置と複数の油圧ポンプから油を合流させて供給する第二位置との間で切り換わる切換弁とを備えた油圧制御回路を開示している。当該油圧制御回路は、旋回及びアーム引き操作が行われたときにアームシリンダに供給される油量を絞るメータイン絞り手段としての流量制御弁をさらに備えている。旋回モータ用及びアームシリンダ用両制御弁に共通のポンプから圧油を供給した場合に、駆動させるのに必要な作動圧が相対的に大きい旋回モータを作動させるための旋回操作と駆動させるのに必要な作動圧が相対的に小さいアームシリンダを作動させるためのアーム操作とが同時に行われる複合操作が行われると、旋回動作がアタッチメントの動作に対して遅れるという課題に対して、前記特許文献1の前記油圧制御回路は、当該複合操作時にアームシリンダに供給される油量を絞ることでアーム引き速度が抑えられ、旋回操作とアーム引き操作が同時に行われる複合操作時における旋回動作の遅れを解消するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-295804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧制御回路では、前記複合操作時において前記メータイン絞り手段がアームシリンダに供給される油量を減少させるので、無駄な圧力損失が発生する。すなわち、前記油圧ポンプが行う仕事の一部は前記圧力損失に起因して熱エネルギーとして放出される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、旋回操作とアタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時において、圧力損失が発生するのを抑制しつつ、上部旋回体の旋回動作の遅れが生じるのを抑制することができる建設機械を提供することにある。
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明者らは、旋回モータの容量、当該旋回モータにおけるモータ差圧(旋回モータに接続される作動油供給油路と作動油戻り油路との差圧)及び旋回トルクの関係に着目した。当該旋回トルクは、前記旋回モータの容量と前記モータ差圧との積に比例する。したがって、前記複合操作時に旋回モータの容量を大きくすることは、従来のように前記メータイン絞り手段によりアームシリンダに供給される油量を減少させずに旋回モータの旋回トルクを大きくすることを可能にする。一方、前記旋回操作及び前記アタッチメント操作のうち、前記アタッチメント操作が行われずに前記旋回操作のみが行われる旋回単独操作時における前記モータ差圧は、前記複合操作時におけるモータ差圧よりも大きくなるので、この旋回単独操作時に旋回モータの容量を大きくすることは、旋回単独操作時における旋回トルクが大きくなり過ぎる過トルクの原因となり得る。これらの着眼点に基づいて、本発明者らは、旋回モータとして可変容量形の旋回モータを採用し、前記旋回単独操作時における前記旋回モータの容量を第1の容量に調節する一方で、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節する容量制御に想到した。この容量制御は、アタッチメント用のアクチュエータの作動圧が低い場合であっても、前記複合操作時において、前記旋回トルク、特に前記起動トルクが確保されることを可能にし、しかも、従来のように前記メータイン絞り手段が不要になるので、圧力損失の発生が抑制されることを可能にする。また、前記旋回単独操作時における前記旋回モータの前記第1の容量は前記複合操作時における前記旋回モータの前記第2の容量よりも小さいので、前記容量制御は、前記旋回単独操作時において前記過トルクの発生が抑制されることを可能にする。
【0008】
第1~第4の発明のそれぞれは、このような観点からなされたものである。第1~第4の発明のそれぞれは、建設機械であって、基体と、当該基体の上に旋回可能となるように搭載される上部旋回体と、当該上部旋回体に搭載されるアタッチメントと、作動油を吐出する油圧ポンプと、当該油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記上部旋回体を旋回させるように作動する可変容量形の旋回モータと、前記油圧ポンプから吐出される前記作動油の供給を受けて前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるように作動するアクチュエータと、前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作を受ける旋回操作部材と、前記アタッチメントの少なくとも一部を動作させるためのアタッチメント操作を受けるアタッチメント操作部材と、容量制御部と、を備える。当該容量制御部は、前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータの容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、前記旋回モータの容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成されている。
【0009】
この建設機械では、前記複合操作時における前記旋回モータの容量が前記旋回単独操作時における前記旋回モータの容量よりも大きい前記第2の容量に調節される。このことは、従来のように前記圧力損失の発生を伴う前記シリンダへの油量を絞る制御を行わずに、あるいはこれを制限しながら、上部旋回体を旋回させるための旋回トルク、特に、上部旋回体の旋回を開始させるための起動トルクが確保されることを可能にする。一方、前記旋回単独操作時においては前記旋回モータの容量が前記第1の容量に調節されるので、前記過トルクの発生が抑制される。
【0010】
前記建設機械は、前記上部旋回体の旋回速度を検出するための旋回速度検出部をさらに備え、前記容量制御部は、前記旋回速度検出部により検出される前記旋回速度が予め設定された速度閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記旋回速度検出部により検出される前記旋回速度が前記速度閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されていることが好ましい。
【0011】
この態様は、前記旋回速度が前記速度閾値未満である場合、すなわち、前記複合操作時において前記起動トルクを大きくする必要性が高い場合には、旋回モータの容量を大きくして前記起動トルクを確保することを可能にする。一方、この態様では、前記複合操作時において前記旋回速度が前記速度閾値以上である場合、すなわち、前記複合操作時であっても旋回トルクを大きくする必要性が低い場合には、前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータの容量が大きくなることに起因する旋回の最高速度の低下の度合いを小さくすることを可能にする。この態様において、前記第2の容量よりも小さい容量は、前記第1の容量であってもよく、前記第1の容量とは異なる容量であってもよい。また、この態様において、前記速度閾値は、前記上部旋回体の旋回状態が旋回の初期段階であるか否かを判定することが可能な値に設定される。当該初期段階は、上部旋回体が停止している状態から旋回を開始するときである旋回起動時と、上部旋回体が旋回を開始した後であって旋回速度が小さいときと、を含む。
【0012】
第1の発明に係る建設機械は、前記油圧ポンプの吐出圧を検出するための吐出圧検出部をさらに備え、前記容量制御部は、前記吐出圧検出部により検出される前記吐出圧が予め設定された吐出圧閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記吐出圧検出部により検出される前記吐出圧が前記吐出圧閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている。
【0013】
この態様は、前記吐出圧が前記吐出圧閾値未満である場合、すなわち、前記複合操作時において前記旋回トルク(特に前記起動トルク)を大きくする必要性が高い場合には、旋回モータの容量を大きくして前記旋回トルクを確保することを可能にする。一方、この態様では、前記複合操作時において前記吐出圧が前記吐出圧閾値以上である場合、すなわち、前記複合操作時であっても前記旋回トルクが確保されている場合には、前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータの容量が大きくなることに起因する旋回の最高速度の低下の度合いを小さくすることを可能にする。この態様において、前記第2の容量よりも小さい容量は、前記第1の容量であってもよく、前記第1の容量とは異なる容量であってもよい。また、この態様において、前記吐出圧閾値は、前記旋回モータの容量が第2の容量よりも小さい容量である場合であっても円滑な旋回動作が可能になるような吐出圧であるか否かを判定することが可能な値に設定される。
【0014】
前記建設機械において、前記アタッチメントは、前記上部旋回体に起伏可能に支持されるブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、当該アームの先端部に連結される先端アタッチメントと、を含み、前記アクチュエータは、前記アームを動作させるように作動するアクチュエータであり、前記アタッチメント操作は、前記アームを動作させるための操作であってもよい。
【0015】
この態様は、前記旋回操作と前記アームを動作させるためのアーム操作との複合操作時において、アームの作動圧が低い場合であっても、従来のような前記圧力損失の発生が抑制されることを可能にしつつ、前記旋回トルク(特に起動トルク)が確保されることを可能にする。
【0016】
前記建設機械において、前記アタッチメントは、前記上部旋回体に起伏可能に支持されるブームと、当該ブームの先端に回動可能に連結されるアームと、当該アームの先端部に連結される少なくとも一つの先端アタッチメントと、を含み、前記アクチュエータは、前記先端アタッチメントを動作させるように作動するアクチュエータであり、前記アタッチメント操作は、前記先端アタッチメントを動作させるための操作であってもよい。
【0017】
この態様は、前記旋回操作と前記先端アタッチメントを動作させるための先端アタッチメント操作との複合操作時において、前記先端アタッチメントの作動圧が低い場合であっても、従来のような前記圧力損失の発生が抑制されることを可能にしつつ、前記旋回トルク(特に起動トルク)が確保されることを可能にする。
【0018】
第2の発明に係る建設機械は、当該建設機械の傾きを検出するための傾斜検出部をさらに備え、前記容量制御部は、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが予め設定された傾き閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されてい
【0019】
前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上である場合には、前記旋回モータの吸込側においてキャビテーションが発生するおそれがある。そこで、この態様では、前記キャビテーションの発生のおそれがある場合、すなわち、前記建設機械が所定の傾き以上の傾斜地に配置されている場合、一律に、前記複合操作時であっても前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われる。このことは、前記建設機械の傾きに起因する前記キャビテーションの発生が抑制されることを可能にする。この態様において、前記第2の容量よりも小さい容量は、前記第1の容量であってもよく、前記第1の容量とは異なる容量であってもよい。
【0020】
第3の発明に係る建設機械は、当該建設機械の傾きを検出するための傾斜検出部と、前記旋回操作部材が受ける前記旋回操作の操作方向を検出するための旋回操作方向検出部と、をさらに備え、前記容量制御部は、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが予め設定された傾き閾値未満である場合、又は前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾き及び前記旋回操作方向検出部により検出される前記旋回操作の操作方向に基づいて得られる前記上部旋回体の旋回方向が重力の方向の成分を含む方向である旋回落下方向でない場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上であり、かつ、前記傾斜検出部により検出される前記建設機械の傾き及び前記旋回操作方向検出部により検出される前記旋回操作の操作方向に基づいて得られる前記上部旋回体の旋回方向が前記旋回落下方向である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている。
【0021】
この態様では、前記建設機械の傾きが前記傾き閾値未満である場合又は前記上部旋回体が前記旋回落下方向に旋回していない場合には、前記旋回モータにおいてキャビテーションが発生する可能性が低いので、前記複合操作時において前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われる。特に、前記複合操作時において前記上部旋回体が前記旋回落下方向とは反対方向、すなわち、重力に抗する方向に旋回する場合には、前記複合操作時において前記旋回トルク(特に前記起動トルク)を大きくする必要性が高い。本態様は、かかる場合において前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われることにより、上部旋回体の前記旋回トルク(特に前記起動トルク)が確保されることを可能にする。一方、前記建設機械の傾きが前記傾き閾値以上であり、かつ、前記上部旋回体が前記旋回落下方向に旋回している場合には、前記複合操作時であっても前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータにおいてキャビテーションの発生が抑制されることを可能にする。この態様において、前記第2の容量よりも小さい容量は、前記第1の容量であってもよく、前記第1の容量とは異なる容量であってもよい。
【0022】
第4の発明に係る建設機械は、前記旋回モータに接続される作動油供給油路と作動油戻り油路との差圧を検出するための差圧検出部と、前記差圧検出部により検出される前記差圧と前記第2の容量とに基づいて暫定旋回トルクを演算するトルク演算部と、をさらに備え、前記容量制御部は、前記トルク演算部により演算される前記暫定旋回トルクが予め設定されたトルク閾値未満である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御を行う一方で、前記トルク演算部により演算される前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値以上である場合には、前記複合操作時における前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節するための制御を行うように構成されている。
【0023】
この態様では、前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値以上である場合には、前記複合操作時であっても前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータの容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われる。このことは、オーバートルクの発生を未然に防止することができる。この態様において、前記第2の容量よりも小さい容量は、前記第1の容量であってもよく、前記第1の容量とは異なる容量であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、共通の油圧ポンプから吐出される作動油によって上部旋回体の旋回動作とアタッチメントの動作とが同時に行われる複合操作時において、圧力損失が発生するのを抑制しつつ、上部旋回体の旋回動作の遅れが生じるのを抑制することができる建設機械が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
図2】前記建設機械のアームの先端部に取り付けられる先端アタッチメントの一例であるグラップルを示す概略図である。
図3】前記建設機械のアームの先端部に取り付けられる先端アタッチメントの一例である圧砕機を示す概略図である。
図4】前記建設機械のアームの先端部に取り付けられる先端アタッチメントの一例であるブレーカを示す概略図である。
図5】前記建設機械のアームの先端部に取り付けられる先端アタッチメントの一例であるフォークを示す概略図である。
図6】前記建設機械における油圧回路を示す図である。
図7】前記建設機械における制御装置の機能構成及びその入出力信号を示すブロック図である。
図8】前記制御装置の演算制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る建設機械100を示す側面図である。図1に示すように、前記建設機械100は、基体を構成するクローラ式の下部走行体1と、その走行面に対して垂直な旋回中心軸Zまわりに旋回可能となるように下部走行体1の上に搭載される上部旋回体2と、この上部旋回体2に搭載されるアタッチメント3と、を備える。
【0027】
前記アタッチメント3は、前記上部旋回体2に起伏可能に支持されるブーム4と、当該ブーム4の先端に回動可能に連結されるアーム5と、複数の先端アタッチメントと、を含む。前記複数の先端アタッチメントは、図1に示す先端アタッチメント6(バケット6)と、図2図5に示す先端アタッチメント6A~6Dと、を含む。当該複数の先端アタッチメントの何れかが選択的に前記アーム5の先端部に着脱可能に連結される。
【0028】
図2に示す先端アタッチメント6Aは、例えばスクラップヤード等においてスクラップを把持し搬送するためのグラップル6Aである。グラップル6Aは、アーム5の先端部に取り付けられるブラケット61Aと、ブラケット61Aに支持されるグラップル本体62Aと、当該グラップル本体62Aに支持される複数の爪63A(図2では4本の爪63A)とを備える。
【0029】
図3に示す先端アタッチメント6Bは、例えばコンクリート構造物等の解体作業を行うための圧砕機6Bである。圧砕機6Bは、アーム5の先端部に取り付けられるブラケット61Bと、前記ブラケット61Bに支持される圧砕機本体62Bと、前記圧砕機本体62Bに支持される一対の圧砕アーム63Bとを備える。
【0030】
図4に示す先端アタッチメント6Cは、例えば岩盤の掘削、岩石の小割、コンクリートの破砕などに使用するためのブレーカ6Cである。ブレーカ6Cは、アーム5の先端部に取り付けられるブラケット61Cと、前記ブラケット61Cに支持されるブレーカ本体62Cと、ブレーカ本体62Cに支持されるとともにその軸方向に往復動作可能なチゼル63Cとを備える。
【0031】
図5に示す先端アタッチメント6Dは、例えば運搬物を把持するためのフォーク6Dである。フォーク6Dは、アーム5の先端部に取り付けられるブラケット61Dと、前記ブラケット61Dに支持されるフォーク本体62Dと、フォーク本体62Dに支持される一対の開閉アーム63Dとを備える。
【0032】
図6は、前記建設機械100における油圧回路を示す図である。図7は、前記建設機械100における制御装置70の機能構成及びその入出力信号を示すブロック図である。図6及び図7に示すように、前記建設機械100は、エンジン20と、第1の油圧ポンプ21と、第2の油圧ポンプ22と、パイロットポンプ23と、旋回モータ30と、複数のアクチュエータと、旋回制御弁41と、複数のアタッチメント制御弁と、旋回操作装置81と、複数のアタッチメント操作装置と、複数の検出部と、制御装置70と、を備える。前記複数のアタッチメント制御弁は、アーム制御弁42と、オプション制御弁43と、図略のブーム制御弁と、図略の先端アタッチメント制御弁と、を含む。前記複数のアタッチメント操作装置は、アーム操作装置82と、オプション操作装置83と、図略のブーム操作装置と、図略の先端アタッチメント操作装置と、を含む。
【0033】
前記第1の油圧ポンプ21及び前記第2の油圧ポンプ22のそれぞれは、ポンプ容量が調節可能である可変容量形の油圧ポンプである。これらの油圧ポンプ21,22のそれぞれは、図略のレギュレータを有し、当該レギュレータは、前記制御装置70からの容量指令信号の入力を受けることによりポンプ容量を前記容量指令信号に対応した容量に調節する。前記第1の油圧ポンプ21、前記第2の油圧ポンプ22及び前記パイロットポンプ23のそれぞれは、エンジン20によって駆動され、これにより図略のタンク内の作動油を吐出する。
【0034】
前記旋回モータ30は、上部旋回体2を旋回駆動させるための油圧モータである。当該旋回モータ30は、第1の油圧ポンプ21から吐出される作動油の供給を受けて回転する図略の出力軸を有し、当該出力軸は上部旋回体2を左右双方向に旋回させるように上部旋回体2に連結されている。具体的に、前記旋回モータ30は、第1ポート30a及び第2ポート30bを有し、これらのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転するとともに他方のポートから作動油を排出する。前記旋回モータ30は、モータ容量が調節可能である可変容量形の油圧モータである。当該旋回モータ30は、図略のレギュレータを有し、当該レギュレータは、前記制御装置70からの容量指令信号の入力を受けることによりモータ容量を前記容量指令信号に対応した容量に調節する。
【0035】
前記複数のアクチュエータは、図1に示すように、前記上部旋回体2に対して前記ブーム4を起伏動作させるように作動するブームシリンダ7と、当該ブーム4に対して前記アーム5を回動動作させるように作動するアームシリンダ8と、当該アーム5に対して前記先端アタッチメント(図1ではバケット6)を回動動作させるように作動する先端アタッチメントシリンダ9と、オプションシリンダ10(図6参照)と、を含む。
【0036】
図6に示すように、前記アームシリンダ8及びオプションシリンダ10のそれぞれは、前記旋回モータ30を旋回駆動する前記第1の油圧ポンプ21と同じ油圧ポンプから吐出される作動油の供給を受けて作動するように構成されている。すなわち、旋回モータ30と、前記アームシリンダ8と、前記オプションシリンダ10とが、共通の第1の油圧ポンプ21に接続されている。一方、図6では図示が省略されているが、前記ブームシリンダ7及び前記先端アタッチメントシリンダ9のそれぞれは、前記第2の油圧ポンプ22から吐出される作動油の供給を受けて作動するように構成されている。
【0037】
前記アームシリンダ8は、ボトム室8aとその反対側のロッド室8bと、を有する。当該アームシリンダ8は、前記ボトム室8aに作動油が供給されることにより伸長して前記アーム5を一方の方向に動かすとともに前記ロッド室8bから作動油を排出し、逆に前記ロッド室8bに作動油が供給されることにより収縮して前記アーム5を他方の方向に動かすとともに前記ボトム室8aから作動油を排出する。
【0038】
図6に示す前記オプションシリンダ10は、図1に示す前記先端アタッチメントシリンダ9とは別のアクチュエータであって、図2図5に示す前記先端アタッチメント6A~6Dのそれぞれに特有の動作をさせるためのシリンダである。
【0039】
前記オプションシリンダ10は、ボトム室10aとその反対側のロッド室10bと、を有する。当該オプションシリンダ10は、前記ボトム室10aに作動油が供給されることにより伸長して前記先端アタッチメントの一部分を一方の方向に動かすとともに前記ロッド室10bから作動油を排出し、逆に前記ロッド室10bに作動油が供給されることにより収縮して前記先端アタッチメントの前記一部分を他方の方向に動かすとともに前記ボトム室10aから作動油を排出する。具体的には次の通りである。
【0040】
前記先端アタッチメントが図2に示すグラップル6Aである場合、前記オプションシリンダ10は、例えばグラップル本体62Aに設けられ、複数の爪63Aを開閉動作させるように作動する。前記先端アタッチメントが図3に示す圧砕機6Bである場合、前記オプションシリンダ10は、例えば圧砕機本体62Bに設けられ、前記一対の圧砕アーム63Bを開閉動作させるように作動する。前記先端アタッチメントが図4に示すブレーカ6Cである場合、前記オプションシリンダ10は、例えばブレーカ本体62Cに設けられ、ブレーカ本体62Cに対してチゼル63Cをその軸方向に前進後退動作(往復動作)させるように作動する。前記先端アタッチメントが図5に示すフォーク6Dである場合、前記オプションシリンダ10は、例えばフォーク本体62Dに設けられ、前記一対の開閉アーム63Dを開閉動作させるように作動する。なお、前記バケット6には、上記のようなオプションシリンダ10は設けられていない。
【0041】
前記先端アタッチメント6A~6Dのそれぞれが前記特有の動作を行うときに必要とされる作動圧、すなわち、前記オプションシリンダ10を作動させるために必要とされる作動圧は、前記先端アタッチメントの種類によって異なる。前記先端アタッチメント6A~6Dのうち、前記グラップル6Aと前記フォーク6Dは一般的に作動圧が低く、前記圧砕機6Bと前記ブレーカ6Cは一般的に作動圧が高い。
【0042】
図6に示すように、前記旋回制御弁41は、前記第1の油圧ポンプ21と前記旋回モータ30との間に介在している。当該旋回制御弁41は、前記旋回モータ30を駆動するための作動油を前記第1の油圧ポンプ21から前記旋回モータ30の第1及び第2ポート30a,30bの何れかに択一的に導くとともに、当該旋回モータ30に供給される作動油の流量である旋回流量を制御する。当該旋回制御弁41は、3位置のパイロット切換弁であり、一対の旋回パイロットポート(一方の旋回パイロットポートP1と反対側の図略の旋回パイロットポート)とを有する。
【0043】
前記旋回制御弁41は、前記一対の旋回パイロットポートに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置に保たれ、前記第1の油圧ポンプ21と前記旋回モータ30との間を遮断するとともに、センターラインL1をタンクに接続する。当該旋回制御弁41は、前記一対の旋回パイロットポートの何れか一方に一定以上のパイロット圧が供給されるとその旋回パイロットポートに応じた方向にそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からシフトし、前記センターラインL1から分岐する旋回用供給ラインL11と前記第1ポート30a又は前記第2ポート30bとを接続するとともに前記ストロークに対応した度合いで前記センターラインL1を絞り、これにより前記旋回モータ30を前記ストロークに対応する方向及び速度で作動させる。
【0044】
前記旋回制御弁41と前記旋回モータ30の前記第1ポート30aは、第1のポートラインL41により接続され、前記旋回制御弁41と前記旋回モータ30の前記第2のポート30bは、第2のポートラインL42により接続されている。前記旋回制御弁41が前記中立位置からシフトすることにより、前記第1のポートラインL41及び前記第2のポートラインL42の一方のラインが作動油供給油路として機能し、他方のラインが作動油戻り油路として機能する。
【0045】
前記アーム制御弁42は、前記第1の油圧ポンプ21と前記アームシリンダ8との間に介在している。当該アーム制御弁42は、前記アームシリンダ8を駆動するための作動油を第1の油圧ポンプ21から前記アームシリンダ8の前記ボトム室8a及び前記ロッド室8bの何れかに択一的に導くとともに、前記アームシリンダ8に供給される作動油の流量であるアーム流量を制御する。当該アーム制御弁42は、3位置のパイロット切換弁であり、一対のアームパイロットポート(一方のアームパイロットポートP2と反対側の図略のアームパイロットポート)とを有する。
【0046】
当該アーム制御弁42は、前記一対のアームパイロットポートに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置に保たれ、前記第1の油圧ポンプ21と前記アームシリンダ8との間を遮断するとともに前記センターラインL2をタンクに接続する。当該アーム制御弁42は、前記一対のアームパイロットポートの何れかに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からシフトし、前記センターラインL2から分岐するアーム用供給ラインL21と前記ボトム室8a又は前記ロッド室8bとを接続するとともに前記ストロークに対応した度合いで前記センターラインL2を絞り、これにより前記アームシリンダ8を前記ストロークに対応する方向及び速度で作動させる。
【0047】
前記オプション制御弁43は、前記第1の油圧ポンプ21と前記オプションシリンダ10との間に介在している。当該オプション制御弁43は、前記オプションシリンダ10を駆動するための作動油を第1の油圧ポンプ21から前記オプションシリンダ10の前記ボトム室10a及び前記ロッド室10bの何れかに択一的に導くとともに、前記オプションシリンダ10に供給される作動油の流量であるオプション流量を制御する。当該オプション制御弁43は、3位置のパイロット切換弁であり、一対のオプションパイロットポート(一方のオプションパイロットポートP3と反対側の図略のオプションパイロットポート)とを有する。
【0048】
当該オプション制御弁43は、前記一対のオプションパイロットポートに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置に保たれ、前記第1の油圧ポンプ21と前記オプションシリンダ10との間を遮断するとともに前記センターラインL3をタンクに接続する。当該オプション制御弁43は、前記一対のオプションパイロットポートの何れかに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からシフトし、前記センターラインL3から分岐するオプション用供給ラインL31と前記ボトム室10a又は前記ロッド室10bとを接続するとともに前記ストロークに対応した度合いで前記センターラインL3を絞り、これにより前記オプションシリンダ10を前記ストロークに対応する方向及び速度で作動させる。
【0049】
前記ブーム制御弁は、前記第2の油圧ポンプ22と前記ブームシリンダ7との間に介在し、前記ブームシリンダ7に供給される作動油の方向を制御するとともに、前記ブームシリンダ7に供給される作動油の流量を制御するための制御弁である。前記先端アタッチメント制御弁は、前記第2の油圧ポンプ22と前記先端アタッチメントシリンダ9との間に介在し、前記先端アタッチメントシリンダ9に供給される作動油の方向を制御するとともに、前記先端アタッチメントシリンダ9に供給される作動油の流量を制御するための制御弁である。
【0050】
前記旋回操作装置81は、前記旋回モータ30を動かすための旋回操作を受け、当該
旋回操作に対応したパイロット圧が前記パイロットポンプ23から前記旋回制御弁41の前記一対の旋回パイロットポートの何れかに択一的に供給されるのを許容するように作動する。具体的に、当該旋回操作装置81は、前記旋回操作を受けて回動することが可能な旋回操作部材である旋回操作レバー81aと、前記パイロットポンプ23と前記一対の旋回パイロットポートとの間に介在する旋回パイロット弁81bと、を有する。旋回パイロット弁81bは、前記旋回操作レバー81aが操作されずに中立位置にあるときは閉弁して前記パイロットポンプ23と前記一対の旋回パイロットポートとの間を遮断する一方、前記旋回操作レバー81aが前記中立位置から回動操作されると前記一対の旋回パイロットポートのうち前記回動操作の方向に対応する旋回パイロットポートに対して当該回動操作の量に対応した大きさのパイロット圧を供給するように開弁する。
【0051】
前記アーム操作装置82は、前記アームシリンダ8を動かすためのアーム操作(本発明におけるアタッチメント操作の一例)を受け、当該アーム操作に対応したパイロット圧が前記パイロットポンプ23から前記アーム制御弁42の前記一対のアームパイロットポートの何れかに択一的に供給されるのを許容するように作動する。具体的に、当該アーム操作装置82は、前記アーム操作を受けて回動することが可能なアーム操作部材(本発明におけるアタッチメント操作部材の一例)であるアーム操作レバー82aと、前記パイロットポンプ23と前記一対のアームパイロットポートとの間に介在するアームパイロット弁82bと、を有する。アームパイロット弁82bは、前記アーム操作レバー82aが操作されずに中立位置にあるときは閉弁して前記パイロットポンプ23と前記一対のアームパイロットポートとの間を遮断する一方、前記アーム操作レバー82aが前記中立位置から回動操作されると前記一対のアームパイロットポートのうち前記回動操作の方向に対応するアームパイロットポートに対して当該回動操作の量に対応した大きさのパイロット圧を供給するように開弁する。
【0052】
前記オプション操作装置83は、前記オプションシリンダ10を動かすためのオプション操作(本発明におけるアタッチメント操作の一例)を受け、当該オプション操作に対応したパイロット圧が前記パイロットポンプ23から前記オプション制御弁43の前記一対のオプションパイロットポートの何れかに択一的に供給されるのを許容するように作動する。具体的に、当該オプション操作装置83は、前記オプション操作を受けて回動することが可能なオプション操作部材(本発明におけるアタッチメント操作部材の一例)であるオプション操作レバー83aと、前記パイロットポンプ23と前記一対のオプションパイロットポートとの間に介在するオプションパイロット弁83bと、を有する。オプションパイロット弁83bは、前記オプション操作レバー83aが操作されずに中立位置にあるときは閉弁して前記パイロットポンプ23と前記一対のオプションパイロットポートとの間を遮断する一方、前記オプション操作レバー83aが前記中立位置から回動操作されると前記一対のオプションパイロットポートのうち前記回動操作の方向に対応するオプションパイロットポートに対して当該回動操作の量に対応した大きさのパイロット圧を供給するように開弁する。なお、上記の旋回操作装置81、アーム操作装置82およびオプション操作装置83はペダル式の操作部材(操作ペダル)を有するものであってもよい。
【0053】
図7に示すように、前記複数の検出部は、旋回速度検出部90と、吐出圧検出部91と、傾斜検出部92と、差圧検出部93と、旋回操作方向検出部94と、アーム操作方向検出部95と、オプション操作方向検出部96と、を備える。前記複数の検出部により検出される検出値に対応する電気信号は前記制御装置70に入力される。
【0054】
前記旋回速度検出部90は、旋回モータ30の回転速度を旋回速度として検出するためのセンサである。当該旋回速度検出部90は、前記旋回速度を検出し、これを電気信号である旋回検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。具体的には、当該旋回速度検出部90は、検出された上部旋回体2の旋回速度の大きさ、旋回方向などを電気信号である旋回検出信号に変換し、制御装置70に入力する。当該旋回速度検出部90としては、例えばジャイロセンサ、エンコーダ、レゾルバなどの旋回速度センサを用いることができるが、これらに限られない。
【0055】
前記吐出圧検出部91は、圧力センサであって、油圧ポンプ21の吐出圧を検出し、これを電気信号である吐出圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。
【0056】
旋回モータ30を作動させるための旋回操作とアームシリンダ8を伸張させるアーム引きの操作とを同時に行う複合操作時に、前記吐出圧検出部91は、駆動させるのに必要な作動圧が相対的に小さいアームシリンダ8を伸張させるための作動圧とほぼ同等の大きさになる吐出圧を検出する。
【0057】
旋回モータ30を作動させるための旋回操作とオプションシリンダ10を伸張させるためのオプション操作とを同時に行う複合操作時には、前記吐出圧検出部91は、旋回モータ30を作動させるのに必要な作動圧とオプションシリンダ10を伸張させるのに必要な作動圧のいずれかとほぼ同等の大きさになる吐出圧を検出する。旋回モータ30を作動させるのに必要な作動圧に比してオプションシリンダ10を伸張させるのに必要な作動圧が大きい場合には、前記吐出圧検出部91は、旋回モータ30を作動させるのに必要な作動圧とほぼ同等の大きさになる吐出圧を検出する。旋回モータ30を作動させるのに必要な作動圧に比してオプションシリンダ10を伸張させるのに必要な作動圧が小さい場合には、前記吐出圧検出部91は、オプションシリンダ10を伸張させるのに必要な作動圧とほぼ同等の大きさになる吐出圧を検出する。
【0058】
旋回モータ30を作動させるための旋回操作とアームシリンダ8を伸張させるアーム引きの操作とオプションシリンダ10を伸張させるためのオプション操作とを同時に行う複合操作時には、前記吐出圧検出部91は、アームシリンダ8を伸張させるのに必要な作動圧とオプションシリンダ10を伸張させるのに必要な作動圧のいずれか小さい方の作動圧とほぼ同等の大きさになる吐出圧を検出する。
【0059】
当該吐出圧検出部91は、例えば、前記第1の油圧ポンプ21と前記センターラインL1,L2,L3とを接続するポンプラインL0に設けられている。ただし、油圧回路において当該吐出圧検出部91が設けられる部位は、前記油圧ポンプ21の吐出圧を検出可能な位置であればよく、前記ポンプラインL0に限られずラインL1やラインL2でもよい。
【0060】
前記傾斜検出部92は、建設機械100の上部旋回体2の傾き(車体の傾き)を検出するための傾斜センサである。当該傾斜検出部92は、例えば上部旋回体2(具体的には、例えば上部旋回体2のアッパーフレームなど)に取り付けられる。具体的に、当該傾斜検出部92としては、例えば2方向の傾斜を計測可能な2軸傾斜センサを用いることができる。当該2軸傾斜センサは、例えば、X軸方向に対する上部旋回体2の傾きとY軸方向に対する上部旋回体2の傾きとを計測し、これらの計測結果に基づいて上部旋回体2が水平面に対してどのように傾いているかを検出可能である。前記2軸傾斜センサとしては、例えば重力加速度を計測して傾きを検出する傾斜センサなどの公知の傾斜センサを適用可能である。当該傾斜検出部92は、前記上部旋回体2の傾きを検出し、これを電気信号である傾斜検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。
【0061】
前記差圧検出部93は、前記旋回モータ30における差圧(有効差圧)を検出する圧力センサである。具体的に、前記差圧検出部93は、第1のポート圧センサ93aと、第2のポート圧センサ93bと、を含む。前記第1のポート圧センサ93aは、前記旋回モータ30の第1のポート30aにおける作動油の圧力である第1のポート圧(MA)を検出し、当該第1のポート圧に対応する電気信号である第1のポート圧検出信号を生成する圧力センサである。前記第2のポート圧センサ93bは、前記旋回モータ30の第2のポート30bにおける作動油の圧力である第2のポート圧(MB)を検出し、当該第2のポート圧に対応する電気信号である第2のポート圧検出信号を生成する圧力センサである。これらのポート圧検出信号は制御装置70に入力される。前記第1のポート圧センサ93aは、例えば前記第1のポートラインL41に設けられ、前記第2のポート圧センサ93bは、例えば前記第2のポートラインL42に設けられている。
【0062】
前記旋回操作方向検出部94は、一対の旋回パイロット圧センサ(一対の圧力センサ)により構成される。前記一対の旋回パイロット圧センサのうち、一方の旋回パイロット圧センサ94aは、前記旋回リモコン弁81bから前記旋回制御弁41における一方の旋回パイロットポートP1に供給される作動油の旋回パイロット圧を検出し、これを電気信号である旋回パイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。前記一対の旋回パイロット圧センサのうち、図略の他方の旋回パイロット圧センサは、前記旋回リモコン弁81bから前記旋回制御弁41における図略の他方の旋回パイロットポートに供給される作動油の旋回パイロット圧を検出し、これを電気信号である旋回パイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。
【0063】
前記アーム操作方向検出部95は、一対のアームパイロット圧センサ(一対の圧力センサ)により構成される。前記一対のアームパイロット圧センサのうち、一方のアームパイロット圧センサ95aは、前記アームリモコン弁82bから前記アーム制御弁42における一方のアームパイロットポートP2に供給される作動油のアームパイロット圧を検出し、これを電気信号であるアームパイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。前記一対のアームパイロット圧センサのうち、図略の他方のアームパイロット圧センサは、前記アームリモコン弁82bから前記アーム制御弁42における図略の他方のアームパイロットポートに供給される作動油のアームパイロット圧を検出し、これを電気信号であるアームパイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。
【0064】
前記オプション操作方向検出部96は、一対のオプションパイロット圧センサ(一対の圧力センサ)により構成される。前記一対のオプションパイロット圧センサのうち、一方のオプションパイロット圧センサ96aは、前記オプションリモコン弁83bから前記オプション制御弁43における一方のオプションパイロットポートP3に供給される作動油のオプションパイロット圧を検出し、これを電気信号であるオプションパイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。前記一対のオプションパイロット圧センサのうち、図略の他方のオプションパイロット圧センサは、前記オプションリモコン弁83bから前記オプション制御弁43における図略の他方のオプションパイロットポートに供給される作動油のオプションパイロット圧を検出し、これを電気信号であるオプションパイロット圧検出信号に変換し、当該検出信号を制御装置70に入力する。
【0065】
なお、図6に示すように、前記建設機械100は、吐出圧検出部97をさらに備え、当該吐出圧検出部97は、前記第2の油圧ポンプ22の吐出圧を検出することで前記第2の油圧ポンプ22の吐出圧と同等の大きさになる作動圧(前記建設機械100が備える他のアクチュエータの作動圧)を検出するための圧力センサである。当該他のアクチュエータとしては、例えばブームシリンダ7などが挙げられるが、これに限られない。
【0066】
図7に示すように、前記制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)、種々の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、前記CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)などから構成される。
【0067】
前記制御装置70は、容量制御部71と、トルク演算部72と、トルク判定部73と、吐出圧判定部74と、操作判定部75と、旋回ブレーキ判定部76と、傾斜判定部77と、旋回速度判定部78と、を機能として備える。前記制御装置70は、前記複数の検出部などから入力される電気信号に基づいて、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、これらが機能的に構成されるように動作する。
【0068】
前記容量制御部71は、前記旋回操作が行われる一方で前記アタッチメント操作が行われない旋回単独操作時には、前記旋回モータ30の容量を予め設定された第1の容量に調節するための制御を行うように構成され、前記旋回操作と前記アタッチメント操作とが同時に行われる複合操作時には、原則として、前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量よりも大きい第2の容量に調節するための制御を行うように構成されている。当該容量制御部71の機能を詳細については後述する。
【0069】
前記トルク演算部72は、前記差圧検出部93により検出される前記差圧と前記第2の容量とに基づいて暫定旋回トルクを演算する。当該暫定旋回トルクは、前記容量制御部71が前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量から前記第2の容量に変更する前に、過トルクの発生を未然に防止する目的で、そのときの前記旋回モータ30における前記差圧と前記第2の容量とに基づいて旋回トルクを暫定的に演算する。前記トルク演算部72は、当該暫定旋回トルクを例えば次の式(1)に基づいて演算する。
【0070】
暫定旋回トルク=(前記第2の容量×前記差圧)/2π×旋回モータの効率 ・・・(1)
前記トルク判定部73は、前記トルク演算部72により演算された前記暫定旋回トルクが予め設定されたトルク閾値未満であるか否かを判定する。当該トルク閾値は、例えば減速機の許容トルクなどに基づいて設定される。
【0071】
前記吐出圧判定部74は、前記吐出圧検出部91により検出される前記吐出圧が予め設定された吐出圧閾値未満であるか否かを判定する。
【0072】
前記操作判定部75は、前記旋回単独操作が行われたか否かを判定する。また、前記操作判定部75は、前記複合操作が行われたか否かを判定する。具体的に、当該操作判定部73は、前記旋回操作方向検出部94により検出される前記旋回パイロット圧検出信号に基づいて前記旋回操作が行われたか否かを判定し、前記アーム操作方向検出部95により検出される前記アームパイロット圧検出信号に基づいて前記アーム操作が行われたか否かを判定し、前記オプション操作方向検出部96により検出される前記オプションパイロット圧検出信号に基づいて前記オプション操作が行われたか否かを判定する。前記操作判定部75は、前記旋回操作が行われたと判定し、かつ、前記アーム操作及び前記オプション操作の何れもが行われていないと判定した場合には、前記旋回単独操作が行われたと判定する。前記操作判定部75は、前記旋回操作が行われたと判定し、かつ、前記アーム操作及び前記オプション操作の少なくとも一方が行われたと判定した場合には、前記複合操作が行われたと判定する。
【0073】
前記旋回ブレーキ判定部76は、上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられていない状態であるか否かを判定する。具体的に、当該旋回ブレーキ判定部76は、例えば、前記旋回操作方向検出部94により検出される前記旋回パイロット圧検出信号に基づく前記旋回操作レバー81aの位置が前記中立位置にある場合には、前記上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられていると判定することができる。また、前記旋回ブレーキ判定部76は、例えば、前記差圧検出部93により検出される前記旋回モータ30における前記差圧に基づいて前記上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられているか、又は上部旋回体2が加速中であるかを判定することもできる。
【0074】
前記傾斜判定部77は、前記傾斜検出部92により検出される検出信号に基づいて前記建設機械100の上部旋回体2の傾き(車体の傾き)が予め設定された傾き閾値D未満であるか否かを判定する。また、前記傾斜判定部77は、前記傾斜検出部92により検出される検出信号及び前記旋回操作方向検出部により検出される検出信号に基づいて前記上部旋回体2の旋回方向が前記旋回落下方向ではないことの判定を行う。
【0075】
前記旋回速度判定部78は、前記旋回速度検出部90により検出される前記検出信号に基づいて前記旋回速度が予め設定された速度閾値未満であるか否かを判定する。
【0076】
図8は、実施形態に係る建設機械100の前記制御装置70の演算制御動作を示すフローチャートである。
【0077】
当該制御装置70は、これに入力される各種検出信号を読み込む(ステップS1)。当該制御装置70の前記吐出圧判定部74は、前記吐出圧が前記吐出圧閾値A未満であるか否かを判定する(ステップS2)。当該吐出圧が前記吐出圧閾値A以上である場合(ステップS2においてNO)、前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御は不要であるため、前記容量制御部71は、前記旋回モータ30の容量を第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。具体的に、前記旋回モータ30が例えば斜板式油圧モータである場合には、斜板が例えば前記第1の容量に対応する小傾転位置に設定される。
【0078】
上述したように、前記先端アタッチメント6A~6Dのうち、前記グラップル6Aと前記フォーク6Dは一般的に作動圧が低く、前記圧砕機6Bと前記ブレーカ6Cは一般的に作動圧が高い。したがって、前記アーム5の先端部に前記圧砕機6B又は前記ブレーカ6Cが連結され、かつ、前記第1の油圧ポンプ21から吐出される作動油が前記オプションシリンダ10に供給されて前記圧砕機6B又は前記ブレーカ6Cが作動しているときには、当該吐出圧が前記吐出圧閾値A以上になりやすい。当該吐出圧が前記吐出圧閾値A以上である場合には、前記起動トルクの確保ができるため旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が不要となる。一方、前記アーム5の先端部に前記グラップル6A又は前記フォーク6Dが連結されている場合には、前記グラップル6A又は前記フォーク6Dが作動していても、当該吐出圧が前記吐出圧閾値A未満になるため、前記起動トルクを確保するために旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御が必要となる。
【0079】
前記吐出圧が前記吐出圧閾値A未満である場合(ステップS2においてYES)、前記操作判定部75は、前記旋回パイロット圧検出信号に基づいて、前記旋回操作が行われたか否かを判定する(ステップS3)。前記操作判定部75は、前記旋回パイロット圧が予め設定された旋回パイロット圧閾値B未満である場合(ステップS3においてNO)、前記旋回操作が行われていないと判定する。かかる場合、前記複合操作が行われていないため、前記容量制御部71は、前記旋回モータの容量を前記第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0080】
前記操作判定部75は、前記旋回パイロット圧が前記旋回パイロット圧閾値B以上である場合(ステップS3においてYES)、前記旋回操作が行われたと判定する。かかる場合、前記トルク演算部72は、前記差圧検出部93により検出される前記差圧と前記第2の容量とに基づいて暫定旋回トルクを演算し、前記トルク判定部73は、前記トルク演算部72により演算された前記暫定旋回トルクが予め設定されたトルク閾値C未満であるか否かを判定する(ステップS4)。前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値C以上である場合(ステップS4においてNO)、過トルクの発生を未然に防止するために、前記容量制御部71は、前記旋回モータの容量を前記第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0081】
前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値C未満である場合(ステップS4においてYES)、前記旋回ブレーキ判定部76は、前記上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられていない状態であるか否かを判定する(ステップS5)。前記上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられている状態である場合(ステップS5においてNO)、すなわち、旋回が減速中である場合、前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御は不要であるため、前記容量制御部71は、前記旋回モータ30の容量を第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0082】
前記上部旋回体2の旋回に対してブレーキがかけられていない状態である場合(ステップS5においてYES)、すなわち、旋回が減速していない場合、前記傾斜判定部77は、次の判定を行う。すなわち、前記傾斜判定部77は、前記傾斜検出部92により検出される検出信号に基づいて前記上部旋回体2の傾き(車体の傾き)が予め設定された傾き閾値D未満であるか否かを判定する(ステップS6)。また、前記傾斜判定部77は、前記傾斜検出部92により検出される検出信号及び前記旋回操作方向検出部により検出される検出信号に基づいて前記上部旋回体2の旋回方向が前記旋回落下方向ではないことの判定を行う(ステップS6)。ここで、前記旋回方向が前記旋回落下方向ではないことは、前記旋回方向が水平方向であることと、前記旋回方向が前記旋回落下方向とは反対の方向(すなわち、登坂方向)であることとを含む。前記上部旋回体2の傾きが前記傾き閾値D以上であり、かつ、前記上部旋回体2の旋回方向が前記旋回落下方向である場合(ステップS6においてNO)、前記旋回モータ30においてキャビテーションの発生を未然に防止するために、前記容量制御部71は、前記旋回モータ30の容量を第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0083】
前記上部旋回体2の傾きが前記傾き閾値D未満である場合、又は、前記上部旋回体2の旋回方向が前記旋回落下方向でない場合(ステップS6においてYES)、前記旋回速度判定部78は、前記旋回速度検出部90により検出される前記検出信号に基づいて前記旋回速度が予め設定された速度閾値E未満であるか否かを判定する(ステップS7)。前記旋回速度が前記速度閾値E以上である場合(ステップS7においてNO)、前記旋回モータの容量を前記第2の容量に調節するための制御は不要であるため、前記容量制御部71は、前記旋回モータ30の容量を第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0084】
なお、上記ステップS6においてYESと判定される場合とは、前記上部旋回体2の傾きが前記傾き閾値D未満であるという条件、及び、前記上部旋回体2の旋回方向が前記旋回落下方向でないという条件の少なくとも一方の条件が満たされる場合のことである。
【0085】
前記旋回速度が前記速度閾値E未満である場合(ステップS7においてYES)、前記操作判定部75は、前記アームパイロット圧検出信号及び前記オプションパイロット圧検出信号に基づいて、前記アーム操作及び前記オプション操作の少なくとも一方が行われたか否かを判定する(ステップS8)。前記アームパイロット圧が予め設定されたアームパイロット圧閾値F未満であり、かつ、前記オプションパイロット圧が予め設定されたオプションパイロット圧閾値G未満である場合(ステップS8においてNO)、前記操作判定部75は、前記アーム操作及び前記オプション操作の何れの操作も行われていないと判定する。かかる場合、前記複合操作が行われていないため、前記容量制御部71は、前記旋回モータの容量を前記第1の容量に調節(維持)するための制御を行う(ステップS10)。
【0086】
前記アームパイロット圧が前記アームパイロット圧閾値F以上である場合、又は、前記オプションパイロット圧が前記オプションパイロット圧閾値G以上である場合(ステップS8においてYES)、前記操作判定部75は、前記旋回操作と前記アーム操作及び前記オプション操作の少なくとも一方の操作とが同時に行われる複合操作が行われていると判定する。かかる場合、容量制御部71は、前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量よりも大きい前記第2の容量に調節するための制御を行う(ステップS9)。具体的に、前記旋回モータ30が例えば斜板式油圧モータである場合には、斜板が例えば前記第2の容量に対応する大傾転位置に設定される。その後、制御装置70は、上記のステップS1~S10の処理を繰り返す。
【0087】
なお、上記ステップS8においてYESと判定される場合とは、前記アームパイロット圧が前記アームパイロット圧閾値F以上であるという条件、及び、前記オプションパイロット圧が前記オプションパイロット圧閾値G以上であるという条件の少なくとも一方の条件が満たされる場合のことである。
【0088】
以上のように、前記実施形態に係る建設機械100では、前記複合操作時における前記旋回モータ30の容量が前記旋回単独操作時における前記旋回モータ30の容量よりも大きい前記第2の容量に調節される。このことは、従来のように前記圧力損失の発生を伴う前記シリンダへの油量を絞る制御を行わずに、あるいはこれを制限しながら、上部旋回体2を旋回させるための旋回トルク、特に、上部旋回体2の旋回を開始させるための起動トルクが確保されることを可能にする。これにより、無駄な圧力損失が生じるのを抑制して前記第1の油圧ポンプ21の出力を効率よく前記旋回モータ30、前記アームシリンダ8及び前記オプションシリンダ10に伝えることができる。一方、前記旋回単独操作時においては前記旋回モータの容量が前記第1の容量に調節されるので、前記過トルクの発生が抑制される。
【0089】
また、前記実施形態に係る建設機械100は、前記旋回速度が前記速度閾値未満である場合、すなわち、前記複合操作時において前記起動トルクを大きくする必要性が高い場合には、旋回モータ30の容量を大きくして前記起動トルクを確保することを可能にする。一方、前記複合操作時において前記旋回速度が前記速度閾値以上である場合、すなわち、前記複合操作時であっても旋回トルクを大きくする必要性が低い場合には、前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータ30の容量が前記第2の容量に調節されることに起因する旋回の最高速度の低下が抑制され、前記旋回単独操作時における旋回の最高速度と同等の最高速度を確保することを可能にする。
【0090】
前記実施形態に係る建設機械100は、前記吐出圧が前記吐出圧閾値未満である場合、すなわち、前記複合操作時において前記旋回トルク(特に前記起動トルク)を大きくする必要性が高い場合には、旋回モータ30の容量を大きくして前記旋回トルクを確保することを可能にする。一方、前記複合操作時において前記吐出圧が前記吐出圧閾値以上である場合、すなわち、前記複合操作時であっても前記旋回トルクが確保されている場合には、前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータの容量が前記第2の容量に調節されることに起因する旋回の最高速度の低下が抑制され、前記旋回単独操作時における旋回の最高速度と同等の最高速度を確保することを可能にする。
【0091】
前記実施形態に係る建設機械100は、前記旋回操作と前記アームを動作させるためのアーム操作との複合操作時において、アームの作動圧が低い場合であっても、従来のような前記圧力損失の発生が抑制されることを可能にしつつ、前記旋回トルク(特に起動トルク)が確保されることを可能にする。
【0092】
前記実施形態に係る建設機械100は、前記旋回操作と前記先端アタッチメントを動作させるための先端アタッチメント操作との複合操作時において、前記先端アタッチメントの作動圧が低い場合であっても、従来のような前記圧力損失の発生が抑制されることを可能にしつつ、前記旋回トルク(特に起動トルク)が確保されることを可能にする。
【0093】
前記実施形態に係る建設機械100では、前記建設機械100の上部旋回体2の傾きが前記傾き閾値未満である場合又は前記上部旋回体2が前記旋回落下方向に旋回していない場合には、前記旋回モータ30においてキャビテーションが発生する可能性が低いので、前記複合操作時において前記旋回モータ30の容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われる。特に、前記複合操作時において前記上部旋回体2が前記旋回落下方向とは反対方向、すなわち、重力に抗する方向に旋回する場合には、前記複合操作時において前記旋回トルク(特に前記起動トルク)を大きくする必要性が高い。前記実施形態に係る建設機械100は、かかる場合において前記旋回モータ30の容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われることにより、上部旋回体2の前記旋回トルク(特に前記起動トルク)が確保されることを可能にする。一方、前記建設機械100の上部旋回体2の傾きが前記傾き閾値以上であり、かつ、前記上部旋回体2が前記旋回落下方向に旋回している場合には、前記複合操作時であっても前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量に調節する制御が行われる。このことは、前記旋回モータ30においてキャビテーションの発生が抑制されることを可能にする。
【0094】
前記実施形態に係る建設機械100では、前記暫定旋回トルクが前記トルク閾値以上である場合には、前記複合操作時であっても前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量に調節する制御が行われる。このことは、オーバートルクの発生を未然に防止することができる。
【0095】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を含むことが可能である。
【0096】
A)モータ容量について
前記実施形態では、ステップS2~ステップS8のそれぞれにおいてNOである場合、前記旋回モータ30の容量を前記第1の容量に調節する制御が行われるが、これに限られない。すなわち、ステップS2~ステップS8のそれぞれにおいてNOである場合、前記旋回モータ30の容量を、前記第2の容量よりも小さい容量であって前記第1の容量とは異なる容量に調節する制御が行われてもよい。
【0097】
B)旋回速度検出部及び旋回速度判定部について
前記実施形態では、前記建設機械100は、旋回速度検出部及び旋回速度判定部を備えていたが、これらは省略可能である。
【0098】
C)吐出圧検出部及び吐出圧判定部について
前記実施形態では、前記建設機械100は、吐出圧検出部及び吐出圧判定部を備えていたが、これらは省略可能である。
【0099】
D)傾斜検出部及び傾斜判定部について
前記実施形態に係る建設機械100では、前記キャビテーションの発生のおそれがある場合、すなわち、前記建設機械100が所定の傾き以上の傾斜地に配置されている場合、一律に、前記複合操作時であっても前記旋回モータ30の容量を前記第2の容量に調節するための制御が行われず、前記旋回モータ30の容量を前記第2の容量よりも小さい容量に調節する制御が行われてもよい。このことは、前記建設機械100の上部旋回体2の傾きに起因する前記キャビテーションの発生が抑制されることを可能にする。
【0100】
なお、前記実施形態では、前記建設機械100は、傾斜検出部及び傾斜判定部を備えていたが、これらは省略可能である。
【0101】
E)差圧検出部及びトルク演算部について
前記実施形態では、前記建設機械100は、差圧検出部及びトルク演算部を備えていたが、これらは省略可能である。
【0102】
F)共通に油圧ポンプについて
前記実施形態に係る前記第1の油圧ポンプ21は、旋回モータ30の駆動と、アームシリンダ8の駆動と、オプションシリンダ10の駆動と、に兼用されるものであるが、本発明に係る第1の油圧ポンプは、旋回モータ30の駆動と、例えば、ブームシリンダ7の駆動とに兼用されるものであってもよく、先端アタッチメントシリンダ9の駆動とに兼用されるものであってもよい。
【0103】
G)基体について
前記実施形態では、基体として下部走行体1を用いているが、前記基体は下部走行体1のように走行可能なものに限定されず、特定の場所に設置されて上部旋回体2を支持する基台であってもよい。
【0104】
H)先端アタッチメントについて
前記実施形態では、交換可能な先端アタッチメントとして、グラップル、圧砕機、ブレーカ及びフォークを例示したが、これらに限られない。
【0105】
I)フローチャートについて
図8に示す制御装置70の演算制御動作を示すフローチャートにおいて、各種信号の読み込み(ステップS1)、旋回操作有無判定(ステップS3)、アーム操作及びオプション操作の有無判定(ステップS8)、旋回モータ30の容量を第2の容量に変更(ステップS9)、および旋回モータ30の容量を第1の容量に維持(ステップS10)は必須であるが、上記以外のステップは必ずしも含まれる必要はない。上記以外のステップは必要に応じて演算制御動作に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0106】
1 下部走行体(基体の一例)
2 上部旋回体
3 アタッチメント
4 ブーム
5 アーム
6 バケット(先端アタッチメントの一例)
6A グラップル(先端アタッチメントの一例)
6B 圧砕機(先端アタッチメントの一例)
6C ブレーカ(先端アタッチメントの一例)
6D フォーク(先端アタッチメントの一例)
8 アームシリンダ
10 オプションシリンダ
21 第1の油圧ポンプ
22 第2の油圧ポンプ
23 パイロットポンプ
30 旋回モータ
70 制御装置
71 容量制御部
72 トルク演算部
81a 旋回操作レバー(旋回操作部材の一例)
82a アーム操作レバー(アタッチメント操作部材の一例)
83a オプション操作レバー(アタッチメント操作部材の一例)
90 旋回速度検出部
91 吐出圧検出部
92 傾斜検出部
93 差圧検出部
94 旋回操作方向検出部
95 アーム操作方向検出部
96 オプション操作方向検出部
100 建設機械
L41 第1ポートライン(作動油供給油路又は作動油戻り油路)
L42 第2ポートライン(作動油供給油路又は作動油戻り油路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8