(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ウインチ固定装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/62 20060101AFI20230209BHJP
B66D 1/28 20060101ALI20230209BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20230209BHJP
B66C 23/36 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B66C23/62
B66D1/28 A
B66C23/26 C
B66C23/36 A
(21)【出願番号】P 2019094334
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼町 彰博
(72)【発明者】
【氏名】大貫 健次
(72)【発明者】
【氏名】岩下 秀和
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-003165(JP,A)
【文献】特開2007-238262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0145980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0026426(US,A1)
【文献】特開2011-225318(JP,A)
【文献】実開昭50-069194(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-23/94
B66D 1/00- 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチドラムと当該ウインチドラムをそのドラム回転軸回りに回転可能に支持するドラム支持部材とを有するウインチ装置と、前記ドラム回転軸が左右方向に向くように前記ウインチ装置が固定されるフレーム部材を有するクレーン本体と、を備えるクレーンに搭載されるウインチ固定装置であって、
前記ドラム支持部材を前記フレーム部材に対して所定の固定位置において着脱可能に固定するための複数の連結部を備え、
前記複数の連結部は、前記ドラム回転軸に対して前後方向の一方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第1の連結部と、前記ドラム回転軸に対して前記前後方向の他方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第2の連結部と、を含み、
前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材にそれぞれ設けられる一対の係合部材を有し、
前記一対の係合部材は、当該一対の係合部材が上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が下方に向かって前記固定位置に移動することにより互いに係合するように構成され、
前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの一方の部材に設けられるラッチ部材と、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの他方の部材に設けられる被係合部材と、保持部材と、を有し、
前記ラッチ部材は、前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が前記固定位置に向かって下方に移動するときに前記ラッチ部材と前記被係合部材とが前記上下方向に相対移動することを許容する移動許容位置と、前記ドラム支持部材が前記固定位置に配置されたときに前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合することにより前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に相対移動することを制限する移動制限位置と、の間で変位することができるように構成され、
前記保持部材は、前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合した状態で前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持するように構成されている、ウインチ固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウインチ固定装置であって、
前記ラッチ部材は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの前記一方の部材に対してラッチ回転軸回りに回動することができるように当該一方の部材に設けられ、当該ラッチ部材が前記ラッチ回転軸回りに回動するのに伴って前記移動制限位置と前記移動許容位置との間で変位する、ウインチ固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のウインチ固定装置であって、
前記ラッチ部材が前記被係合部材に対して係合していることが上側から視認可能となるように、前記ラッチ部材は前記フレーム部材に設けられ、前記被係合部材は前記ドラム支持部材に設けられている、ウインチ固定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のウインチ固定装置であって、
前記保持部材は、前記ラッチ部材が前記移動制限位置に保持されるように前記ラッチ部材を付勢するばね部材を含む、ウインチ固定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウインチ固定装置であって、
前記ラッチ部材が前記被係合部材に接触しながら前記ドラム支持部材が下方に移動することにより前記ラッチ部材が前記ばね部材の付勢力に抗して前記移動許容位置に変位し、前記ドラム支持部材が前記固定位置までさらに下方に移動する過程において前記ラッチ部材が前記ばね部材の前記付勢力によって前記移動許容位置から前記移動制限位置に変位することにより前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合するように構成されている、ウインチ固定装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のウインチ固定装置であって、
前記一対の係合部材のうちの一方の係合部材は、前記一対の係合部材が上下方向に離れた位置から互いに近づく接近方向に相対移動するように前記ドラム支持部材が下方に向かって移動する過程において前記一対の係合部材のうちの他方の係合部材を受け入れる開口を有する溝部を含み、当該溝部に前記他方の係合部材が進入することにより前記一対の係合部材が係合するように構成されている、ウインチ固定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のウインチ固定装置であって、
前記溝部は、
当該溝部に配置された前記他方の係合部材に対して前記接近方向に対向する対向面であって当該対向面に接する前記他方の係合部材が前記一方の係合部材に対して前記接近方向にさらに相対移動することを制限する対向面と、
前記溝部に配置された前記他方の係合部材に対して前方に位置する前側面であって前記他方の係合部材が前方に移動することを制限する前側面と、
前記溝部に配置された前記他方の係合部材に対して後方に位置する後側面であって前記他方の係合部材が後方に移動することを制限する後側面と、を有する、ウインチ固定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のウインチ固定装置であって、
前記前側面及び前記後側面は、下方に向かうほど前方又は後方に位置するように上下方向に対して傾斜している、ウインチ固定装置。
【請求項9】
請求項6~8の何れか1項に記載のウインチ固定装置であって、
前記ウインチ装置は、前記ウインチドラムに巻き付けられたワイヤロープをさらに有し、
前記クレーン本体は、前記ワイヤロープを案内するロープシーブをさらに有し、
前記ウインチ装置が使用されるときには、前記ロープシーブは、前記ドラム回転軸よりも前方で且つ上方に配置され、前記ワイヤロープの一部分は、前記ウインチドラムのうちの前記ドラム回転軸よりも後方の部位と前記ロープシーブとの間に掛け渡され、
前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ドラム回転軸よりも前方にずれた位置に配置され、
前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記ドラム回転軸よりも後方にずれた位置に配置される、ウインチ固定装置。
【請求項10】
請求項1~5の何れか1項に記載のウインチ固定装置であって、
前記少なくとも一つの第1の連結部において、前記一対の係合部材のうちの一方の係合部材はラッチ部材であり、前記一対の係合部材のうちの他方の係合部材は前記ラッチ部材が係合可能な被係合部材であり、前記ラッチ部材は、前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が前記固定位置に向かって下方に移動するときに前記ラッチ部材と前記被係合部材とが前記上下方向に相対移動することを許容する移動許容位置と、前記ドラム支持部材が前記固定位置に配置されたときに前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合することにより前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に相対移動することを制限する移動制限位置と、の間で変位することができるように構成され、
前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合した状態で前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持する保持部材をさらに有する、ウインチ固定装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のウインチ固定装置であって、
前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第1の連結部を含み、当該一対の第1の連結部のそれぞれは、前記一対の係合部材を有し、
前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第2の連結部を含み、当該一対の第2の連結部のそれぞれは、前記ラッチ部材、前記被係合部材、及び前記保持部材を有する、ウインチ固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに搭載されるウインチ固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンに搭載されるウインチ固定装置として、特許文献1は、ウインチドラムをピンで取付ける方式のウインチドラム取付構造を開示している。当該ウインチドラム取付構造では、ウインチドラムを支持するウインチフレームに設けられる穴と、フレーム上に固定された取付ラグに設けられる穴とにピンが挿入されることにより、前記ウインチドラムが前記フレームに取り付けられる。
【0003】
特許文献2は、移動式クレーンにおいて上部旋回体にオプションウィンチ等のオプション装置を装着しない場合にクレーンの安定モーメントを確保するために、オプション装置の代替としての代替ウェイトを上部旋回体に設置するオプション装置代替ウェイト取付装置を開示している。当該ウェイト取付装置では、上部旋回体に設けられた横板上に取付プレートが立設されているとともに、はね止めリンクに設けられた一対の板状部からなるフォーク部間に前記取付プレートが挿入されている。そして、取付プレートに設けられたピン穴とフォーク部に設けられたピン穴にピンが挿通されることによって、取付プレートにはね止めリンクのフォーク部が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-003165号公報
【文献】特開2009-107750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーンは、当該クレーンが分解された状態で輸送される場合がある。近年、前記クレーンを輸送するときの幅や高さなどの寸法を制限する規制が厳しい。このため、前記クレーンの輸送時には、当該クレーンは複数の部品に分解され、ウインチ装置は、クレーン本体のフレーム部材(具体的には、例えば上部旋回体の旋回フレーム)から取り外される場合がある。この場合、前記クレーンの輸送後には、取り外されたウインチ装置を再び前記フレーム部材に取り付ける作業が行われる。
【0006】
しかし、前記フレーム部材には、前記ウインチ装置の他に多くの部品が搭載されるため、前記ウインチ装置が取り付けられる領域及びその周辺のスペースは、非常に狭い場合がある。このような場合、特許文献1の取付構造及び特許文献2の取付装置において行われる作業、すなわち、穴にピンを水平方向に挿入するという作業のための作業スペースを十分に確保することができず、前記フレーム部材に前記ウインチ装置を取り付ける作業を効率よく行うことが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、ウインチ装置をクレーン本体に取り付ける作業を効率よく行うことができるウインチ固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供されるのは、ウインチドラムと当該ウインチドラムをそのドラム回転軸回りに回転可能に支持するドラム支持部材とを有するウインチ装置と、前記ドラム回転軸が左右方向に向くように前記ウインチ装置が固定されるフレーム部材を有するクレーン本体と、を備えるクレーンに搭載されるウインチ固定装置である。当該ウインチ固定装置は、前記ドラム支持部材を前記フレーム部材に対して所定の固定位置において着脱可能に固定するための複数の連結部を備える。前記複数の連結部は、前記ドラム回転軸に対して前後方向の一方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第1の連結部と、前記ドラム回転軸に対して前記前後方向の他方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第2の連結部と、を含む。前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材にそれぞれ設けられる一対の係合部材を有する。前記一対の係合部材は、当該一対の係合部材が上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が下方に向かって前記固定位置に移動することにより互いに係合するように構成される。前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの一方の部材に設けられるラッチ部材と、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの他方の部材に設けられる被係合部材と、保持部材と、を有する。前記ラッチ部材は、前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が前記固定位置に向かって下方に移動するときに前記ラッチ部材と前記被係合部材とが前記上下方向に相対移動することを許容する移動許容位置と、前記ドラム支持部材が前記固定位置に配置されたときに前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合することにより前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に相対移動することを制限する移動制限位置と、の間で変位することができるように構成される。前記保持部材は、前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合した状態で前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持するように構成される。
【0009】
このウインチ固定装置では、前記第1の連結部における前記一対の係合部材は、当該一対の係合部材が上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が下方に向かって前記固定位置に移動することにより互いに係合することができる。また、前記第2の連結部における前記ラッチ部材が前記移動許容位置に変位することにより前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に相対移動することが許容されるので、前記ドラム支持部材が前記固定位置まで下方に移動することができ、前記ドラム支持部材が前記固定位置に配置された状態では、前記ラッチ部材が前記移動制限位置に配置されることにより前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合して前記ラッチ部材と前記被係合部材との上下方向の相対移動が制限される。そして、前記保持部材は前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合した状態で前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持する。すなわち、このウインチ固定装置では、前記ドラム支持部材を前記固定位置まで下方に移動させる動作が行われるとともに、当該ドラム支持部材の下方への移動過程において前記ラッチ部材を前記移動許容位置と前記移動制限位置との間で変位させる動作が行われることにより、前記ドラム支持部材が前記フレーム部材に固定される。このことは、前記ウインチ装置を前記クレーン本体に取り付ける作業が効率よく行われることを可能にする。また、前記ウインチ装置を前記クレーン本体から取り外す場合には、前記ラッチ部材を前記移動制限位置から前記移動許容位置に変位させた状態で、前記一対の係合部材が上下方向に離れるとともに前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に離れるように、前記ドラム支持部材を上方に移動させる動作が行われる。これにより、前記ウインチ装置が前記クレーン本体から取り外される。
【0010】
なお、本発明では、前記ドラム回転軸に対して前後方向の一方にずれた位置と前後方向の他方にずれた位置にそれぞれ前記第1の連結部と前記第2の連結部が配置されているので、ワイヤロープを介して荷重が与えられる前記ウインチドラムを安定して支持することができる。具体的には、本発明では、前記ドラム回転軸が前記左右方向を向くように前記ウインチ装置が前記フレーム部材に固定されるので、前記ウインチドラムに巻き付けられるワイヤロープが繰り出される方向は、左右方向の成分よりも前後方向の成分を多く含み、前記ワイヤロープを介して前記ウインチドラムに作用する荷重は、前記左右方向の成分よりも前記前後方向の成分を多く含む。かかる場合であっても、前記第1の連結部と前記第2の連結部が前記ドラム回転軸に対して前後方向の一方と他方にずれた位置にそれぞれ配置されることにより、前記ウインチドラムを安定して支持することができる。
【0011】
前記ウインチ固定装置において、前記ラッチ部材は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの前記一方の部材に対してラッチ回転軸回りに回動することができるように当該一方の部材に設けられ、当該ラッチ部材が前記ラッチ回転軸回りに回動するのに伴って前記移動制限位置と前記移動許容位置との間で変位することが好ましい。
【0012】
この態様では、前記ラッチ部材を前記ラッチ回転軸回りに回動させることにより当該ラッチ部材を前記移動許容位置と前記移動制限位置との間で変位させることができる。
【0013】
この場合に、前記ラッチ部材が前記被係合部材に対して係合していることが上側から視認可能となるように、前記ラッチ部材は前記フレーム部材に設けられ、前記被係合部材は前記ドラム支持部材に設けられていることが好ましい。
【0014】
この態様では、前記ラッチ部材が回動して前記被係合部材に対して係合する動作及び前記被係合部材に対する係合が解除される動作を、作業者が上側から確認しやすくなる。
【0015】
前記ウインチ固定装置において、前記保持部材は、前記ラッチ部材が前記移動制限位置に保持されるように前記ラッチ部材を付勢するばね部材を含むことが好ましい。
【0016】
この態様は、前記ばね部材の付勢力により前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持することを可能にするとともに、前記ばね部材の付勢力に抗する力が前記ラッチ部材に与えられることにより前記ラッチ部材が前記移動制限位置から前記移動許容位置に変位することを可能にする。
【0017】
具体的には、例えば、前記ウインチ固定装置において、前記ラッチ部材が前記被係合部材に接触しながら前記ドラム支持部材が下方に移動することにより前記ラッチ部材が前記ばね部材の付勢力に抗して前記移動許容位置に変位し、前記ドラム支持部材が前記固定位置までさらに下方に移動する過程において前記ラッチ部材が前記ばね部材の前記付勢力によって前記移動許容位置から前記移動制限位置に変位することにより前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合するように構成されていることが好ましい。
【0018】
この態様では、前記ラッチ部材が前記被係合部材に接触しながら前記ドラム支持部材が下方に移動するときに、前記ウインチ装置の重量の少なくとも一部を含む下向きの荷重又はその反力が前記ラッチ部材に作用すると、前記ラッチ部材は前記ばね部材の付勢力に抗して前記移動許容位置に変位する。そして、前記ドラム支持部材が前記固定位置までさらに下方に移動する過程において、前記ラッチ部材は、前記ばね部材の前記付勢力によって前記移動許容位置から前記移動制限位置に変位する。これにより、前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合する。すなわち、この態様は、前記ドラム支持部材を前記固定位置まで下方に移動させる動作が行われることにより、当該ドラム支持部材の下方への移動過程において前記ラッチ部材を前記移動許容位置と前記移動制限位置との間で変位させる動作が自動的に行われることを可能にする。
【0019】
前記ウインチ固定装置において、前記一対の係合部材のうちの一方の係合部材は、前記一対の係合部材が上下方向に離れた位置から互いに近づく接近方向に相対移動するように前記ドラム支持部材が下方に向かって移動する過程において前記一対の係合部材のうちの他方の係合部材を受け入れる開口を有する溝部を含み、当該溝部に前記他方の係合部材が進入することにより前記一対の係合部材が係合するように構成されていることが好ましい。
【0020】
この態様では、前記ウインチ装置を前記フレーム部材に向けて降下させることにより前記ドラム支持部材を下方に向かって移動させる過程において、前記他方の係合部材を前記一方の係合部材における前記溝部の前記開口から当該溝部に進入させ、これにより、前記一対の係合部材を互いに係合させることができる。
【0021】
前記ウインチ固定装置において、前記溝部は、当該溝部に配置された前記他方の係合部材に対して前記接近方向に対向する対向面であって当該対向面に接する前記他方の係合部材が前記一方の係合部材に対して前記接近方向にさらに相対移動することを制限する対向面と、前記溝部に配置された前記他方の係合部材に対して前方に位置する前側面であって前記他方の係合部材が前方に移動することを制限する前側面と、前記溝部に配置された前記他方の係合部材に対して後方に位置する後側面であって前記他方の係合部材が後方に移動することを制限する後側面と、を有することが好ましい。
【0022】
この態様では、前記溝部の前記対向面、前記前側面、及び前記後側面は、前記溝部に配置された前記他方の係合部材の移動を上記のように制限することができる。これにより、前記一方の係合部材と前記他方の係合部材の係合状態がより安定する。
【0023】
前記ウインチ固定装置において、前記前側面及び前記後側面は、下方に向かうほど前方又は後方に位置するように上下方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0024】
この態様では、前記上下方向に傾斜した前記前側面又は前記後側面により前記溝部に配置された前記他方の係合部材が上下方向に移動することがより制限される。
【0025】
前記ウインチ固定装置において、前記ウインチ装置は、前記ウインチドラムに巻き付けられたワイヤロープをさらに有し、前記クレーン本体は、前記ワイヤロープを案内するロープシーブをさらに有し、前記ウインチ装置が使用されるときには、前記ロープシーブは、前記ドラム回転軸よりも前方で且つ上方に配置され、前記ワイヤロープの一部分は、前記ウインチドラムのうちの前記ドラム回転軸よりも後方の部位と前記ロープシーブとの間に掛け渡され、前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ドラム回転軸よりも前方にずれた位置に配置され、前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記ドラム回転軸よりも後方にずれた位置に配置されていてもよい。
【0026】
この態様では、前記第2の連結部が前記ドラム回転軸よりも後方にずれた位置に配置されるので、前記ドラム支持部材と前記フレーム部材との連結状態が安定して維持される。具体的には、この態様では、前記ワイヤロープの前記一部分は、前記ウインチドラムにおける前記後方の部位と前記ロープシーブとの間に掛け渡される。この場合、クレーンが荷物を吊り上げるときに、前記ウインチドラムのうちの前記ドラム回転軸よりも後方の部位には、前方の部位に比べて、前記ワイヤロープの前記一部分を介して大きな負荷がかかる。従って、前記ドラム回転軸に対して前方に配置される連結部に比べて、前記ドラム回転軸に対して後方に配置される連結部には、より大きな負荷が上向き又は斜め上向きにかかる。この態様では、上記のように前記ドラム回転軸に対して後方に配置される連結部に上向き又は斜め上向きの大きな負荷がかかる場合であっても、前記ドラム支持部材と前記フレーム部材との連結状態が安定して維持されるように、前記ラッチ部材、前記被係合部材及び前記保持部材を有する前記第2の連結部が前記ドラム回転軸よりも後方にずれた位置に配置される。
【0027】
前記ウインチ固定装置では、前記第2の連結部だけでなく、前記第1の連結部も前記ラッチ部材を有する構造であってもよい。具体的には、前記ウインチ固定装置では、前記少なくとも一つの第1の連結部において、前記一対の係合部材のうちの一方の係合部材はラッチ部材であり、前記一対の係合部材のうちの他方の係合部材は前記ラッチ部材が係合可能な被係合部材であり、前記ラッチ部材は、前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材が前記固定位置に向かって下方に移動するときに前記ラッチ部材と前記被係合部材とが前記上下方向に相対移動することを許容する移動許容位置と、前記ドラム支持部材が前記固定位置に配置されたときに前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合することにより前記ラッチ部材と前記被係合部材とが上下方向に相対移動することを制限する移動制限位置と、の間で変位することができるように構成され、前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記ラッチ部材が前記被係合部材に係合した状態で前記ラッチ部材を前記移動制限位置に保持する保持部材をさらに有していてもよい。
【0028】
この態様では、前記第1の連結部及び前記第2の連結部のそれぞれが、前記ラッチ部材、前記被係合部材及び前記保持部材を有する構造を備える。従って、この態様では、前記ドラム回転軸に対して前方に配置される連結部及び後方に配置される連結部の何れにも上向きの大きな負荷がかかる場合であっても前記ドラム支持部材と前記フレーム部材との連結状態が安定して維持される。
【0029】
前記ウインチ固定装置において、前記少なくとも一つの第1の連結部は、前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第1の連結部を含み、当該一対の第1の連結部のそれぞれは、前記一対の係合部材を有し、前記少なくとも一つの第2の連結部は、前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第2の連結部を含み、当該一対の第2の連結部のそれぞれは、前記ラッチ部材、前記被係合部材、及び前記保持部材を有することが好ましい。
【0030】
この態様では、前記一対の第1の連結部が前記ドラム回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置において前記左右方向に互いに間隔をおいて配置され、前記一対の第2の連結部が前記ドラム回転軸に対して前記前後方向の他方にずれた位置において前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される。このことは、前記ドラム支持部材と前記フレーム部材との連結状態がより安定して維持されることを可能にする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ウインチ装置をクレーン本体に取り付ける作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係るウインチ固定装置が搭載されるクレーンを示す側面図である。
【
図2】前記クレーンに搭載されるウインチドラムの一例を示す概略の斜視図である。
【
図3】前記クレーンにおいて、ウインチ装置のウインチドラムと、クレーン本体のロープシーブと、これらの間に掛け渡されるワイヤロープとを示す平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【
図5】前記第1の実施形態に係るウインチ固定装置を示す平面図である。
【
図6】前記第1の実施形態に係るウインチ固定装置の一部を示す正面図である。
【
図7】前記第1の実施形態に係るウインチ固定装置の一部を示す背面図である。
【
図8】前記第1の実施形態において、ウインチ装置をフレーム部材に取り付けるときの動作を説明するための側面図である。
【
図9】前記第1の実施形態において、ウインチ装置をフレーム部材に取り付けるときの動作を説明するための側面図である。
【
図10】前記第1の実施形態において、ウインチ装置をフレーム部材に取り付けるときの動作を説明するための側面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【
図14】前記第4の実施形態の変形例に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【
図15】前記第1の実施形態の変形例に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
[クレーンの全体構造]
図1は、本発明の実施形態に係るウインチ固定装置を搭載するクレーン100の概略を示す側面図である。
図1に示すように、クレーン100は、クレーン本体110と、当該クレーン本体110に搭載されるウインチ装置50と、を備える。
【0035】
前記クレーン本体110は、自走可能な下部走行体101と、当該下部走行体101上に配置された上部旋回体102とを備える。前記上部旋回体102は、前記下部走行体101上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム103(本発明におけるフレーム部材の一例)と、当該旋回フレーム103の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム104と、当該ブーム104の先端部に設けられたロープシーブ107と、前記ブーム104の先端部からワイヤロープRを介して吊り下げられたフック105と、ガントリ108と、上部スプレッダ109Aと、下部スプレッダ109Bと、ブームガイライン109Cと、を備える。前記ロープシーブ107は、前記ワイヤロープRを案内するための滑車である。前記上部旋回体102が、前記ブーム104の先端部に取り付けられる図略のジブをさらに備える場合には、前記フック105は、前記ジブの先端部から前記ワイヤロープRを介して吊り下げられる。
【0036】
前記ウインチ装置50は、前記フック105に繋がるワイヤロープRの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、前記フック105に荷物106を吊り下げて行われる吊作業のための昇降動作を行わせる装置である。前記ウインチ装置50は、ウインチドラム51と、当該ウインチドラム51に巻き付けられたワイヤロープRと、油圧モータ及び減速機を含む図略の駆動源と、を備える。前記ウインチ装置50は、前記旋回フレーム103に固定される。前記ウインチ装置50の固定される位置は、例えば、旋回フレーム103におけるブーム104の取り付け部位の後方である。
【0037】
図2は、前記ウインチ装置50のウインチドラム51の一例を示す概略の斜視図である。
図2に示すように、ウインチドラム51は、ワイヤロープRの巻き取り又は繰り出しのために前記駆動源によってドラム回転軸A1の回りに回転する。前記ウインチ装置50は、前記ウインチドラム51のドラム回転軸A1が左右方向に向くように前記クレーン本体110の前記旋回フレーム103に固定される。
【0038】
なお、図面において示される前、後、左、及び右は、上部旋回体102を基準に定義される。前記ブーム104が倒伏する方向が前方、その反対の方向が後方である。左方および右方は当該定義による前方を基準に決められる。
【0039】
図3は、前記クレーン100において、前記ウインチ装置50のウインチドラム51と、クレーン本体110のロープシーブ107と、これらの間に掛け渡されるワイヤロープRとを示す平面図である。当該ワイヤロープRは、ウインチドラム51から引き出されて前記ロープシーブ107を経由し、前記ブーム104の先端部から垂下されてフック105を吊り下げている。前記ウインチドラム51は、ドラム回転軸A1回りの一方の回転方向である巻取回転方向D1(
図2参照)に回転することにより、ワイヤロープRをウインチドラム51に巻き取り、それによってフック105を上昇させる。また、ウインチドラム51は、巻取回転方向D1の反対方向D2(
図2参照)に回転することにより、ワイヤロープRを繰り出し、それによってフック105を降下させる。
図3に示すように、ワイヤロープRは、前記ロープシーブ107とウインチドラム51の幅方向(左右方向)の中央とを結ぶ直線に対して左右に変位しながら前記ウインチドラム51に巻き取られ、又は前記ウインチドラム51から繰り出される。前記ウインチドラム51の右端と前記ロープシーブ107とを結ぶ直線と、前記ウインチドラム51の左端と前記ロープシーブ107とを結ぶ直線との角度θは、数度(例えば5°程度)であり、前記ワイヤロープRは、前記角度θの範囲で位置が変位する。
【0040】
図1に示すように前記ウインチ装置50が使用されるときには、前記ロープシーブ107は、前記ドラム回転軸A1よりも前方で且つ上方に配置され、前記ワイヤロープRの一部分は、前記ウインチドラム51のうちの前記ドラム回転軸A1よりも後方の部位51Pと前記ロープシーブ107との間に掛け渡される。
【0041】
前記クレーン100は、前記クレーン本体110に搭載されるブーム起伏用のウインチ装置50Aをさらに備える。このウインチ装置50Aは、前記ウインチ装置50の後方において旋回フレーム103に固定される。
【0042】
前記ガントリ108は、前記ブーム104の後方において前記旋回フレーム103に支持され、前記ブーム104の起伏動作においてブーム104を支持する支柱として機能する。前記上部スプレッダ109A及び前記下部スプレッダ109Bは、それぞれ複数のシーブからなる。また、前記上部スプレッダ109Aは、前記ブームガイライン109Cによってブーム104の先端部に接続されている。前記ウインチ装置50Aのウインチドラム51から引き出されたブーム起伏用のワイヤロープR1は、ガントリ108の先端部のシーブに掛けられた後、前記下部スプレッダ109Bと前記上部スプレッダ109Aとの間で複数回掛け回される。ワイヤロープR1の先端は、ガントリ108に固定される。前記ウインチ装置50Aは、ワイヤロープR1の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、前記上部スプレッダ109Aと前記下部スプレッダ109Bとの間の距離を変化させ、ブーム104をガントリ108に対して相対的に回動させながらブーム104を起伏させる。
【0043】
以下、本発明の第1~第4実施形態に係るウインチ固定装置について詳細に説明する。
【0044】
[第1の実施形態]
図4は、本発明の第1の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図であり、
図5は、当該ウインチ固定装置を示す平面図であり、
図6は、当該ウインチ固定装置の一部を示す正面図であり、
図7は、当該ウインチ固定装置の一部を示す背面図である。前記ウインチ固定装置は、ウインチ装置50をクレーン本体110に取り付ける作業を効率よく行うための装置である。
【0045】
図2~
図7に示すように、前記ウインチドラム51は、ワイヤロープRが巻き取られる胴部51Aと、当該胴部51Aの幅方向(左右方向)の両端部にそれぞれ設けられた左右一対のフランジ部51B,51Bと、一対のシャフト部51C,51Cと、を有する。前記一対のシャフト部51C,51Cは、前記ドラム回転軸A1上に設けられている。
【0046】
前記ウインチ装置50は、前記ウインチドラム51をそのドラム回転軸A1回りに回転可能に支持する左右一対のドラム支持部材4R,4Lをさらに備える。右側のドラム支持部材4Rと左側のドラム支持部材4Lは、前後方向に平行な鉛直面についてほぼ面対称である。従って、以下では、前記一対のドラム支持部材4R,4Lのうちの右側のドラム支持部材4Rについて主に説明し、左側のドラム支持部材4Lについての詳細な説明は省略する。
【0047】
右側のドラム支持部材4Rは、本体部41と、一対の延出部42,43と、を有する。前記本体部41は、右側のシャフト部51Cを図略の軸受を介して回転可能に支持する。前記一対の延出部42,43は、当該本体部41の下部において前後方向にそれぞれ延びている。本実施形態では、前記本体部41及び前記一対の延出部42,43は一体的に成形された板状の形状を有するが、これに限られない。前記本体部41と前記一対の延出部42,43は別々に成形された後に互いに接合されたものであってもよい。
【0048】
前記ウインチ固定装置は、前記ウインチ装置50の前記ドラム支持部材4R,4Lを前記クレーン本体110の前記旋回フレーム103に対して所定の固定位置F(
図10参照)において着脱可能に固定するための複数の連結部を備える。当該複数の連結部は、左右一対の第1の連結部1R,1Lと、左右一対の第2の連結部2R,2Lと、を含む。
【0049】
前記一対の第1の連結部1R,1Lは、前記ドラム回転軸A1に対して前方にずれた位置に配置され、前記一対の第2の連結部2R,2Lは、前記ドラム回転軸A1に対して後方にずれた位置に配置される。右側の第1の連結部1Rと左側の第1の連結部1Lは、前後方向に平行な鉛直面についてほぼ面対称であり、前記右側の第2の連結部2Rと左側の第2の連結部2Lは、前後方向に平行な鉛直面についてほぼ面対称である。従って、以下では、前記一対の第1の連結部1R,1Lのうちの右側の第1の連結部1Rについて主に説明し、左側の第1の連結部1Lについての詳細な説明は省略する。同様に、前記一対の第2の連結部2R,2Lのうちの右側の第2の連結部2Rについて主に説明し、左側の第2の連結部2Lについての詳細な説明は省略する。
【0050】
[第1の連結部]
前記第1の連結部1Rは、前記ドラム支持部材4R及び前記旋回フレーム103にそれぞれ取り付けられる一対の係合部材11,12を有する。当該一対の係合部材11,12は、前記ドラム支持部材4Rに支持される上側係合部材11と、前記旋回フレーム103に支持される下側係合部材12とにより構成される。これらの一対の係合部材11,12は、当該一対の係合部材11,12が上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材4Rが下方に向かって前記固定位置Fに移動することにより互いに係合するように構成されている。具体的には以下の通りである。
【0051】
前記上側係合部材11は、前記ドラム支持部材4Rの前側の延出部42に支持されている。当該上側係合部材11は、左右一対のブラケット11A,11Aと、ピン11Pと、を有する。前記一対のブラケット11A,11Aは、左右方向に互いに間隔をおいて配置された状態で前記ドラム支持部材4Rの前記延出部42にそれぞれ固定され、当該延出部42から下方に延びている。前記ピン11Pは、前記一対のブラケット11A,11Aの間に跨って配置されている。本実施形態では、前記ピン11Pは、左右方向に延びる棒形状を有するが、前記ピン11Pの形状は棒形状に限られず、板形状などの他の形状であってもよい。前記ピン11Pは、前記一対のブラケット11A,11Aのそれぞれの下端部に支持されている。
【0052】
前記下側係合部材12は、前記旋回フレーム103に支持され、当該旋回フレーム103から上方に立設された部材である。本実施形態では、前記下側係合部材12は、前後方向及び上下方向に平行な板形状の部分を有するが、当該下側係合部材12の形状は、このような形状に限られない。
【0053】
前記下側係合部材12は、溝部120を含む。当該溝部120は、前記上側係合部材11のピン11Pを受け入れることが可能なように上方に開口する開口12Aを有する。具体的に、前記上側係合部材11が当該下側係合部材12から上方に離れた位置から下側係合部材12に近づく下方(接近方向の一例)に移動するように前記ドラム支持部材4Rが下方に向かって移動する過程において、前記溝部120は、前記開口12Aを通じて前記上側係合部材11のピン11Pを当該溝部120内に受け入れ、当該ピン11Pが前記溝部120に進入することにより、前記一対の係合部材11,12が係合する。
【0054】
前記溝部120は、当該溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して下方に対向する底面12B(対向面の一例)を有する。前記底面12Bは、当該底面12Bに接する前記係合部材11のピン11Pが前記係合部材12に対して下方(接近方向の一例)にさらに相対移動することを制限する。
【0055】
前記溝部120は、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して前方に位置する前側面12Cと、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して後方に位置する後側面12Dと、をさらに有する。前記前側面12Cは、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pが前方に移動することを制限し、前記後側面12Dは、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pが後方に移動することを制限する。
【0056】
本実施形態では、前記前側面12C及び前記後側面12Dのそれぞれは、下方に向かうほど前方に位置するように上下方向に対して傾斜している。これにより、前記ウインチ装置50が前記旋回フレーム103に固定された状態において、前記ピン11Pが前記下側係合部材12に対して上方に移動することが制限される。前記前側面12Cと前記後側面12Dとの距離は、前記ピン11Pが前記溝部120に進入することが可能な寸法に設定されている。本実施形態では、前記前側面12Cと前記後側面12Dとの距離は、前記ピン11Pの直径よりも僅かに大きい寸法に設定されており、これにより、前記ピン11Pが前記溝部120に配置されたときに、当該ピン11Pが前後方向に移動することが抑制される。
【0057】
具体的に、前記溝部120は、前記底面12Bと、前記前側面12Cと、前記後側面12Dとを有する一方で、右側方及び左側方は開口している。このことは、前記溝部120に進入した前記ピン11Pが前記底面12Bに接する位置まで移動することを可能にする。
【0058】
本実施形態では、前記底面12Bは、前後方向に平行な鉛直面で当該底面12Bを切断したときの断面形状が略円弧形状をなす湾曲した凹面であるが、前記底面12Bの形状はこれに限られない。前記前側面12Cは、前記底面12Bの前側の上端から前記開口12Aの前縁まで連続する平面であるが、前側面12Cの形状はこれに限られず、湾曲面であってもよく、平面と湾曲面とを組み合わせた面であってもよい。前記後側面12Dは、前記底面12Bの後側の上端から前記開口12Aの後縁まで連続する平面であるが、後側面12Dの形状はこれに限られず、湾曲面であってもよく、平面と湾曲面とを組み合わせた面であってもよい。本実施形態では、前記前側面12Cと前記後側面12Dとは平行である。これらの前側面12C及び後側面12Dのそれぞれは、上方にむかうにつれて後方に位置するように、左右方向に平行な鉛直面に対して傾斜している。
【0059】
[第2の連結部]
前記第2の連結部2Rは、前記ドラム支持部材4Rに取り付けられるラッチ部材21と、前記旋回フレーム103に取り付けられる被係合部材22と、保持部材23と、変位機構24と、一対のラッチ支持部25,25と、を有する。
【0060】
前記一対のラッチ支持部25,25は、前記ラッチ部材21を支持するためのものであり、前記ドラム支持部材4Rの後側の延出部43に固定されている。前記一対のラッチ支持部25,25は、左右方向に互いに間隔をおいて配置された状態で前記後側の延出部43にそれぞれ固定され、当該延出部43から後方に延びている。後述するラッチ部材21は、前記一対のラッチ支持部25,25の間の隙間に配置される。
【0061】
前記ラッチ部材21は、前記一対のラッチ支持部25,25に支持される被支持部21Aと、当該被支持部21Aから下方に延びる中間部21Bと、当該中間部21Bの下端から前方に延びる下端部21Cと、ラッチピン21Pと、を有する。前記中間部21Bと前記下端部21Cは、フック形状を有するフック部21Dを構成する。前記中間部21Bと前記下端部21Cは、側面視で略L字形状をなす。
【0062】
前記フック部21Dは、前記下端部21Cの上面により構成される上面S1と、前記中間部21Bの前面により構成される前面S2と、前記下端部21Cの前端に形成された傾斜面S3と、を有する。
【0063】
前記被支持部21Aの少なくとも一部は、前記一対のラッチ支持部25,25の隙間に配置され、前記ラッチ部材21が前記支持部材4Rに対してラッチ回転軸A2回りに回動することができるように前記一対のラッチ支持部25,25に支持されている。前記ラッチピン21Pは、前記一対のラッチ支持部25,25の間に左右方向に跨るように配置され、当該前記一対のラッチ支持部25,25に固定されている。前記被支持部21Aは、その貫通孔に挿通された前記ラッチピン21Pを介して前記一対のラッチ支持部25,25に支持されている。
【0064】
前記ラッチ部材21は、当該ラッチ部材21と前記被係合部材22とが上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材4Rが前記固定位置F(
図10参照)に向かって下方に移動するときに前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に対して上方に移動することを許容する移動許容位置P1(
図9参照)と、前記ドラム支持部材4Rが前記固定位置Fに配置されたときに前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合することにより前記ラッチ部材21と前記被係合部材22とが上下方向に相対移動することを制限する移動制限位置P2(
図10参照)と、の間で変位することができるように構成される。すなわち、前記固定位置Fは、前記旋回フレーム103(フレーム部材)に対する前記ドラム支持部材4Rの相対位置であり、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合したときの前記ドラム支持部材4Rの位置である。
【0065】
前記保持部材23は、前記被係合部材22に係合する前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2に保持するように構成されている。前記保持部材23は、ばね部材23Aと、当該ばね部材23Aの一端(前端)を支持するばね支持部23Bと、前記ばね部材23Aの他端(後端)を支持するばね支持部23Cと、を有する。前記ばね支持部23Bは、前記支持部材4R(具体的には、前記支持部材4Rのラッチ支持部25)に固定された部材であり、前記ばね支持部23Cは、前記ラッチ部材21(具体的には、前記ラッチ部材21のフック部21D)に固定された部材である。前記ばね部材23Aは、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態で前記移動制限位置P2に保持されるように前記ラッチ部材21を付勢する。
【0066】
上記のように前記ラッチ部材21は、前記ドラム支持部材4Rに対してラッチ回転軸A2回りに回動することができるように当該前記ドラム支持部材4Rに取り付けられ、当該ラッチ部材21が前記ラッチ回転軸A2回りに回動するのに伴って前記移動制限位置P2と前記移動許容位置P1との間で変位する。
【0067】
前記変位機構24は、前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させるための機構である。
【0068】
当該変位機構24は、押圧部24Aと、押圧支持部24Bと、を有する。前記押圧支持部24Bは、前記一対のラッチ支持部25,25の上部に固定され、これらのラッチ支持部25,25に左右方向に跨るように配置された部材である。前記押圧支持部24Bは、上下方向に貫通する貫通孔を有し、当該貫通孔の内面には雌ねじが形成されている。前記押圧部24Aは、前記押圧支持部24Bの前記貫通孔に螺合されたボルト24Aにより構成される。前記ラッチ部材21は、被押圧部21E(
図4参照)をさらに有する。当該被押圧部21Eは、前記被支持部21Aから前方に突出している。当該被押圧部21Eは、前記ボルト24Aの下端に対して上下方向に対向する上面(被押圧面)を有する。当該ボルト24Aが回転することにより当該ボルト24Aが前記押圧支持部24Bに対して下方に移動すると、当該ボルト24Aの下端が前記被押圧部21Eの前記被押圧面を下方に押圧する。これにより、前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させることができる。
【0069】
前記被係合部材22は、前記旋回フレーム103に支持され、当該旋回フレーム103から上方に立設された部材である。当該被係合部材22は、前記下側係合部材12の後方に配置されている。本実施形態では、前記被係合部材22は、前後方向及び上下方向に平行な板形状の部分を有するが、当該被係合部材22の形状は、このような形状に限られない。
【0070】
前記被係合部材22は、前記旋回フレーム103に連結された接合部22Aと、当該接合部22Aから後方に延びる後方延出部22Bと、を有する。当該後方延出部22Bは、前記旋回フレーム103に対して上方に間隔をおいて配置されている。前記後方延出部22Bと前記旋回フレーム103との隙間は、前記ラッチ部材21の前記フック部21Dの下端部21Cを当該隙間に配置することが可能な大きさに設定されている。
【0071】
前記被係合部材22は、前記後方延出部22Bの下面により構成される下面S11と、当該下面S11に連続する前記後方延出部22Bの後端面により構成される後面S12と、当該後面S12に連続する案内面S13と、を有する。前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態では、前記ラッチ部材21の前記上面S1が前記被係合部材22の前記下面S11と上下方向に対向し、前記ラッチ部材21の前記前面S2が前記被係合部材22の前記後面S12と前後方向に対向する。このことは、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に対して上方に移動することが制限されるとともに、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に対して前方に移動することが制限される。
【0072】
前記ラッチ部材21の前記傾斜面S3は、下方に向かうにつれて後方に位置するように左右方向に平行な鉛直面に対して傾斜した傾斜面である。本実施形態では、前記傾斜面S3は、左右方向に平行な平面であるが、前記傾斜面S3の形態はこれに限られず、湾曲面であってもよく、湾曲面と平面とを組み合わせた面であってもよい。また、前記傾斜面S3は必ずしも左右方向に平行でなくてもよい。
【0073】
前記被係合部材22の前記案内面S13は、下方に向かうにつれて後方に位置するように左右方向に平行な鉛直面に対して傾斜した傾斜面である。本実施形態では、前記案内面S13は、左右方向に平行な平面であるが、前記案内面S13の形態はこれに限られず、湾曲面であってもよく、湾曲面と平面とを組み合わせた面であってもよい。また、前記案内面S13は必ずしも左右方向に平行でなくてもよい。
【0074】
本実施形態では、前記ウインチ固定装置は、前記第1の連結部1Rと前記第2の連結部2Rとの間に、第3の連結部3Rをさらに有する。当該第3の連結部3Rは、一対の係合部材31,32を有する。前記一対の係合部材31,32のうちの一方の係合部材31は、前記ドラム支持部材4Rに支持される上側係合部材31と、前記旋回フレーム103に支持される下側係合部材32とにより構成される。これらの一対の係合部材31,32は、当該一対の係合部材31,32が上下方向に離れた位置から互いに近づくように前記ドラム支持部材4Rが下方に向かって前記固定位置Fに移動することにより互いに係合するように構成されている。
【0075】
本実施形態では、前記上側係合部材31は、前記一対のラッチ支持部25,25のそれぞれと一体に形成された一対のブラケット31A,31Aと、ピン31Pと、を有する。前記一対のブラケット31A,31Aは、左右方向に互いに間隔をおいて配置された状態で前記一対のラッチ支持部25,25から下方に延びている。前記ピン31Pは、前記一対のブラケット31A,31Aの間に跨って配置されている。本実施形態では、前記ピン31Pは、左右方向に延びる棒形状を有するが、前記ピン31Pの形状は棒形状に限られず、板形状などの他の形状であってもよい。前記ピン31Pは、前記一対のブラケット31A,31Aのそれぞれの下端部に支持されている。
【0076】
前記下側係合部材32は、前記旋回フレーム103に支持され、当該旋回フレーム103から上方に立設された部材である。本実施形態では、前記下側係合部材32は、前後方向及び上下方向に平行な板形状の部分を有するが、当該下側係合部材32の形状は、このような形状に限られない。また、本実施形態では、前記下側係合部材32は、前記被係合部材22と一体に形成されており、当該被係合部材22の前方に配置されている。
【0077】
前記下側係合部材32は、溝部320を含む。当該溝部320は、前記上側係合部材31のピン31Pを受け入れることが可能なように上方に開口する開口を有する。具体的に、前記上側係合部材31が当該下側係合部材32から上方に離れた位置から下側係合部材32に近づく下方(接近方向の一例)に移動するように前記ドラム支持部材4Rが下方に向かって移動する過程において、前記溝部320は、前記開口を通じて前記上側係合部材31のピン31Pを当該溝部320内に受け入れ、当該ピン31Pが前記溝部320に進入することにより、前記一対の係合部材31,32が係合する。
【0078】
[動作]
図4、
図8~
図10を参照して、本実施形態に係るウインチ固定装置の動作について説明する。
【0079】
まず、前記ウインチ装置50を前記旋回フレーム103に固定するときの流れについて説明する。
図4は、前記ドラム支持部材4Rが前記旋回フレーム103に対して上方に離れた位置に配置された状態を示している。
図4に示す状態から、前記ドラム支持部材4Rが前記旋回フレーム103に近づくように前記ウインチ装置50を下降させる。このとき、前記上側係合部材11の前記ピン11Pを前記下側係合部材12の前記溝部120の前記開口12Aに近づける。これにより、
図8に示すように前記ピン11Pが前記開口12Aを通じて前記溝部120に進入する。当該溝部120に進入した前記ピン11Pは、当該溝部120に案内されて下方に移動することができる。
【0080】
次に、
図8に示すように、ラッチ部材21の前記フック部21Dの傾斜面S3が前記被係合部材22の前記案内面S13に近づくように前記ウインチ装置50をさらに下降させる。
【0081】
前記ラッチ部材21の前記傾斜面S3が前記被係合部材22の前記案内面S13に接触しながら前記ドラム支持部材4Rが下方に移動するときに、前記ウインチ装置50の重量の少なくとも一部を含む下向きの荷重又はその反力が前記ラッチ部材21に作用すると、
図9に示すように、前記ラッチ部材21は前記ラッチ回転軸A2回りに回動して前記ばね部材23Aの付勢力に抗して前記移動許容位置P1に変位する。
【0082】
そして、前記ドラム支持部材4Rが
図10に示す前記固定位置Fまでさらに下方に移動する過程において、前記ラッチ部21の下端部21Cの前端部の位置が前記被係合部材22の後方延出部22Bよりも下方になると、前記ラッチ部材21は、前記ばね部材23Aの前記付勢力によって前記移動許容位置P1から前記移動制限位置P2に次第に変位する。これにより、
図10に示すように前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合する。
【0083】
前記保持部材23は前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態で前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2に保持する。
【0084】
また、前記ウインチ装置50を前記クレーン本体110から取り外す場合には、前記変位機構24を用いて前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させる。具体的に、前記変位機構24の前記ボルト24Aが回転することにより当該ボルト24Aが前記押圧支持部24Bに対して下方に移動すると、当該ボルト24Aの下端が前記被押圧部21Eの前記被押圧面を下方に押圧する。これにより、前記ラッチ部材21が前記ラッチ回転軸A2回りに回動するので、前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させることができる。この状態で、前記上側係合部材11が前記下側係合部材12に対して上方に離れるとともに前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に対して上方に離れるように、前記ドラム支持部材4Rを上方に移動させる。これにより、前記ウインチ装置50が前記クレーン本体110から取り外される。
【0085】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
図11に示す第2の実施形態に係るウインチ固定装置では、ラッチ部材21が前記旋回フレーム103に取り付けられ、被係合部材22が前記ドラム支持部材4Rに設けられている点で前記第1の実施形態と相違し、その他の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0086】
この第2の実施形態では、第2の連結部2Rは、前記旋回フレーム103に取り付けられるラッチ部材21と、前記ドラム支持部材4Rに設けられる被係合部材22と、保持部材23と、変位機構24と、一対のラッチ支持部25,25と、を有する。
【0087】
前記一対のラッチ支持部25,25は、前記旋回フレーム103に直接固定されていてもよく、第3の連結部3Rの下側係合部材32に支持されることにより、当該下側係合部材32を介して前記旋回フレーム103に固定されていてもよい。
【0088】
前記ラッチ部材21は、前記一対のラッチ支持部25,25の間の隙間に配置され、ラッチ回転軸A2回りに回転可能に前記一対のラッチ支持部25,25に支持されている。具体的に、前記ラッチ部材21は、前記一対のラッチ支持部25,25に支持される被支持部21Aと、当該被支持部21Aから上方に延びる中間部21Bと、当該中間部21Bの上端から前方に延びる上端部21Fと、ラッチピン21Pと、を有する。前記中間部21Bと前記上端部21Fは、フック形状を有するフック部21Gを構成する。前記中間部21Bと前記上端部21Fは、側面視で略L字形状をなす。
【0089】
前記フック部21Gは、前記上端部21Fの下面により構成される下面S21と、前記中間部21Bの前面により構成される前面S22と、前記上端部21Fの前端に形成された傾斜面S23と、を有する。
【0090】
前記被係合部材22は、前記ドラム支持部材4Rに設けられている。具体的に、前記被係合部材22は、前記ドラム支持部材4Rの延出部43の後端から後側に延びるように形成された部材である。第2の実施形態では、前記被係合部材22は、前記延出部43と一体的に成形されたものであるが、これに限られない。前記被係合部材22は、前記ドラム支持部材4Rとは別々に成形された後に前記ドラム支持部材4Rに取り付けられる部材であってもよい。
【0091】
前記被係合部材22は、上面S31と、当該上面S31に連続する前記被係合部材22の後端面により構成される後面S32と、当該後面S32に連続する案内面S33と、を有する。当該案内面S33は、下方に向かうにつれて前方に位置するように左右方向に平行な鉛直面に対して傾斜した傾斜面である。
【0092】
前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態では、前記ラッチ部材21の前記下面S21が前記被係合部材22の前記上面S31と上下方向に対向し、前記ラッチ部材21の前記前面S22が前記被係合部材22の前記後面S32と前後方向に対向する。このことは、前記被係合部材22が前記ラッチ部材21に対して上方に移動することが制限されるとともに、前記被係合部材22が前記ラッチ部材21に対して後方に移動することが制限される。
【0093】
本実施形態では、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に対して係合していることが上側から視認可能となるように、前記ラッチ部材21は前記旋回フレーム103に取り付けられ、前記被係合部材22は前記ドラム支持部材4Rに取り付けられている。これにより、前記ラッチ部材が回動して前記被係合部材に対して係合する動作及び前記被係合部材に対して係合が解除される動作を、上方から確認しやすくなる。
【0094】
第2の実施形態では、変位機構24は、前記ラッチ部材21に取り付けられたレバー24Cを含む。当該レバー24Cが下方に押し下げられることにより、前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させることができる。
【0095】
[第3の実施形態]
図12は、本発明の第3の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
図12に示す第3の実施形態に係るウインチ固定装置では、前記ウインチドラム51に対する前記ラッチ部材21の前後方向の相対位置が前記第1の実施形態と相違している。また、この第3の実施形態では、前記第1の実施形態における前記第3の連結部3Rが省略されている。さらに、この第3の実施形態では、溝部120の構成が前記第1の実施形態と相違している。第3の実施形態におけるその他の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0096】
図12に示す第3の実施形態では、前記下側係合部材12の溝部120は、前記第1の実施形態と同様に、当該溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して下方に対向する底面12B(対向面の一例)と、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して前方に位置する前側面12Cと、前記溝部120に配置された前記係合部材11のピン11Pに対して後方に位置する後側面12Dと、を有する。この第3の実施形態では、前側面12C及び後側面12Dのそれぞれは、上下方向に平行な平面によって構成されている。
【0097】
図4及び
図12において、符号PE,PL,PRは、それぞれ次のような前後方向の位置を示している。前記符号PEは、第1の連結部1Rにおいて前記上側係合部材11のピン11Pが前記下側係合部材12の溝部120に配置されて底面12Bに接しているときの前記ピン11Pの中心の位置である。前記符号PLは、前記被係合部材22に係合しているときの前記ラッチ部材21の上面S1における前後方向の中央の位置である。前記符号PRは、前記ウインチドラム51と前記ロープシーブ107との間に掛け渡された前記ワイヤロープRのうち、前記ウインチドラム51側の端部の位置である。
【0098】
図4に示す第1の実施形態では、前記位置PLは、前記位置PRよりも後方にある。一方、
図12に示す第3の実施形態では、前記位置PLは、前記位置PRよりも前方にある。前記第1の実施形態及び第3の実施形態では、クレーン100が荷物106(
図1参照)を吊り上げるときに、前記ウインチドラム51の前記位置PRに対応する部位には、上向きの成分を含む大きな荷重L1がかかる。また、前記第1の実施形態では、クレーン100が荷物106を吊り上げるときに、前記位置PEに対応する前記ピン11Pには、上向きの成分を含む比較的小さな荷重L2がかかる。
【0099】
一方、第3実施形態では、前後方向において前記位置PEと前記位置PRとの間に前記位置PLが存在する。従って、第3の実施形態では、クレーン100が荷物106を吊り上げるときに、前記位置PEに対応する前記ピン11Pには、下向きの成分を含む比較的小さな荷重L2がかかる。前記第2の連結部2Rにおいて前記位置PLに対応する部位では、前記ラッチ部材21と前記被係合部材22とが係合してこれらの部材の上下方向の相対変位が制限されている。また、前記第1の連結部1Rにおいて前記位置PEに対応する部位では、上記したように前記ピン11Pに対して下向きの成分を含む荷重L2が作用する。従って、当該第3の実施形態は、
図12に示すように前側面12C及び後側面12Dのそれぞれが上下方向に平行な面であっても、前記ピン11Pが溝部120から外れにくい構造を有する。よって、第3の実施形態では、前記第1の実施形態に比べて、前記ウインチ装置50が前記旋回フレーム103に対してより安定して固定される。
【0100】
第3の実施形態では、変位機構24は、前記第2の実施形態と同様に、前記ラッチ部材21に取り付けられたレバー24Cを含む。
【0101】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
図13に示す第4の実施形態に係るウインチ固定装置では、第1の連結部1R及び第2の連結部2Rのそれぞれがラッチ部材21を備え、変位機構24が前記第2の実施形態と同様に前記ラッチ部材21に取り付けられたレバー24Cを含む点で前記第1の実施形態と相違し、その他の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0102】
この第4の実施形態において、第1の連結部1Rに用いられるラッチ部材21と前記被係合部材22の構造は、第1の実施形態における前記第2の連結部2Rに用いられるものと同様である。従って、これらの構造の詳細な説明は省略する。
【0103】
図14は、本発明の第4の実施形態の変形例に係るウインチ固定装置を示す側面図である。
図14に示す変形例に係るウインチ固定装置では、変位機構26の構成が
図13に示す前記第4の実施形態の変位機構24(レバー24C)と相違し、その他の構成は
図13に示す前記第4の実施形態と同様である。
【0104】
前記変位機構26は、前記ラッチ部材21を前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位させるための機構である。この第4の実施形態の変形例では、変位機構26は、取付部26Aと、当該取付部26Aに連結された連結部材26Bと、当該連結部材26Bの前後方向の両端部にそれぞれ取り付けられた一対のロープ26D,26Dと、一対の滑車26E,26Eと、一対の固定部材26F,26Fと、を有する。
【0105】
前記一対の固定部材26F,26Fは、一対のラッチ部材21,21の上部にそれぞれ固定されている。前記一対のロープ26D,26Dの一端部は、前記一対の固定部材26F,26Fにそれぞれ固定されている。前記一対の滑車26E,26Eは、前後方向において前記一対の固定部材26F,26Fの間に配置されている。前記一対のロープ26D,26Dの他端部(上端部)は、前記連結部材26Bに固定されている。前記取付部26Aは、例えばクレーンのフックを係合させることが可能な係合部と当該係合部から前記連結部材26Bまで延びる棒状部とを含む。当該棒状部は、ドラム支持部材4Rに固定されたガイド部26Cの貫通孔に挿通されている。これにより、前記取付部26Aの上下方向の動作が安定する。
【0106】
前記クレーンにより前記取付部26Aが上方に引き上げられるのに伴い、これに連結された連結部材26Bが上昇し、一対のロープ26D,26Dのそれぞれが
図14に示す矢印で示すように滑車26Eに案内されながら、引っ張られる。これにより、一対のラッチ部材21は、前記移動制限位置P2から前記移動許容位置P1に変位する。
【0107】
[変形例]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0108】
(A)上記の実施形態では、前記クレーン本体110は、自走可能な下部走行体101を備えるが、本発明はこれに限られない。本発明では、前記クレーン本体110は、例えば、自走可能でない下部体と、当該下部体上に配置された上部旋回体とを備えるものであってもよい。
【0109】
(B)上記の実施形態では、前記ウインチ装置が固定されるフレーム部材は、旋回フレーム103であるが、本発明はこれに限られず、クレーン本体の一部を構成する他の部材であってもよい。
【0110】
(C)上記の実施形態では、
図3の平面図に示すように、前記ウインチ固定装置は、前記ドラム回転軸A1に対して前方にずれた位置に配置されるとともに前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第1の連結部1L,1Rと、前記ドラム回転軸A1に対して後方にずれた位置に配置されるとともに前記左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の第2の連結部2L,2Rと、を備えるが、本発明は、これに限られない。本発明では、前記ウインチ固定装置は、ドラム回転軸に対して前後方向の一方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第1の連結部と、前記ドラム回転軸に対して前記前後方向の他方にずれた位置に配置される少なくとも一つの第2の連結部と、を含むものであればよい。
【0111】
(D)上記の実施形態では、
図3の平面図に示すように、前記一対の第1の連結部1L,1Rが並ぶ方向は、前記左右方向に平行であるが、本発明はこれに限られず、前記左右方向に対して傾斜した方向であってもよい。同様に、前記一対の第2の連結部2L,2Rが並ぶ方向は、前記左右方向に平行であるが、本発明はこれに限られず、前記左右方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0112】
(E)上記の実施形態では、前記ラッチ部材21は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの前記一方の部材に対してラッチ回転軸A2回りに回動することができるように当該一方の部材に取り付けられているが、本発明はこれに限られない。本発明では、例えば、前記ラッチ部材は、前記ドラム支持部材及び前記フレーム部材のうちの前記一方の部材に対して、特定方向にスライド移動することができるように当該一方の部材に取り付けられ、当該ラッチ部材が前記特定方向にスライド移動するのに伴って前記移動制限位置と前記移動許容位置との間で変位するように構成されていてもよい。前記特定方向は、例えば、水平方向に平行な方向であってもよい。具体的に、前記特定方向は、例えば、前後方向に平行な方向、左右方向に平行な方向であってもよい。
【0113】
(F)上記の実施形態では、前記ウインチ装置50は、前記フック105に繋がるワイヤロープRの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、前記フック105に荷物106を吊り下げて行われる吊作業のための昇降動作を行わせる装置であるが、本発明はこれに限られない。本発明では、ウインチ装置は、例えば、
図1に示すガントリ108の先端部のシーブに掛けられて前記下部スプレッダ109Bと前記上部スプレッダ109Aとの間に掛けられるワイヤロープR1の巻き取りおよび繰り出しを行わせるためのウインチ装置50Aであってもよい。この場合、当該ウインチ装置50Aは、本発明のウインチ固定装置によりフレーム部材(例えば旋回フレーム103)に固定される。この場合、前記ワイヤロープR1は、例えば、ウインチドラム51の前側の上部又は後側の下部から後方に引き出される。
【0114】
また、本発明では、ウインチ装置は、大型のクレーンに設けられるマストの起伏動作を行わせるためのウインチ装置であってもよい。この場合、当該ウインチ装置は、本発明のウインチ固定装置によりフレーム部材(例えば旋回フレーム103)に固定される。このウインチ装置を前記フレーム部材に固定する場合においても、例えば
図1~
図14に示す前記実施形態に係る前記ウインチ固定装置を用いることができる。前記マストの起伏動作を行わせる前記ウインチ装置では、ワイヤロープR1がウインチドラム51から後方に引き出される。このウインチ装置では、例えば
図4に示すように、ワイヤロープR1がウインチドラム51から引き出される位置51P1は、当該ウインチドラム51の後側の下部に位置していてもよい。なお、前記マストの起伏動作を行わせるウインチ装置では、ワイヤロープR1は、ウインチドラム51の前側の上部から後方に引き出されてもよい。
【0115】
(G)また、前記マストの起伏動作を行わせるウインチ装置では、通常の吊作業時には、マストの先端がウインチ装置50Aよりも後方にあり、ワイヤロープR1がウインチドラム51から後方に引き出されるが、クレーン100の組立分解時には、マストを前方に倒伏し、ブームやクローラを吊り上げるケースがある。この態様では、前記吊作業時にはウインチドラム51からワイヤロープR1が引き出される方向は当該ウインチドラム51から後方に向き、前記組立分解時にはウインチドラム51からワイヤロープR1が引き出される方向は当該ウインチドラム51から前方に向く。従って、この態様では、例えば
図13や
図14に示すように第1の連結部1R及び第2の連結部2Rのそれぞれがラッチ部材21を有する構造であってもよい。この態様は、ワイヤロープR1を介してウインチドラム51にかかる荷重の方向が変化する場合であっても、前記旋回フレーム103に対するウインチ装置の固定状態をより安定させることを可能にする。
【0116】
(H)上記の実施形態では、前記ウインチ装置50が固定されるフレーム部材が前記旋回フレーム103であるが、本発明はこれに限られない。本発明では、前記ウインチ装置は例えばブーム104に固定されてもよい。この場合、当該ウインチ装置が固定されるフレーム部材は、例えばブーム104の一部を構成する部材である。具体的に、前記ウインチ装置を前記ブーム104に固定する作業時には、例えば
図4に示すように、ワイヤロープR2がウインチドラム51から引き出される位置51P2は、当該ウインチドラム51の上部に位置していてもよく、他の部位に位置していてもよい。また、前記ウインチ装置は例えばマストやガントリに固定されてもよい。この場合、当該ウインチ装置が固定されるフレーム部材は、例えばマストの一部を構成する部材やガントリの一部を構成する部材である。この場合、ワイヤロープがウインチドラム51から引き出される位置は、当該ウインチドラム51の上部に位置する場合や、当該ウインチドラム51の下部に位置する場合などがある。
【0117】
(I)また、
図15に示す変形例のように、前記ウインチ固定装置は、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態を保持するための係合保持機構30をさらに備えていてもよい。当該係合保持機構30は、保持ピン27と、当該保持ピン27が挿通される挿通孔を有するピン支持部材28と、を有する。当該ピン支持部材28は、前記一対のラッチ支持部25,25の上部に固定され、これらのラッチ支持部25,25に左右方向に跨るように配置された部材である。
図15に示す変形例では、前記ラッチ部材21の上部には、前記ピン支持部材28の前記挿通孔に対応する位置に前記保持ピン27を挿通可能な挿通孔が設けられている。前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態で、前記保持ピン27が前記ピン支持部材28の前記挿通孔及び前記ラッチ部材21の前記挿通孔に挿通される。これにより、前記ラッチ部材21が前記被係合部材22に係合した状態がより安定して保持される。
【0118】
(J)上記の第1の実施形態では、
図4に示すように、前記前側面12C及び前記後側面12Dのそれぞれが下方に向かうほど前方に位置するように上下方向に対して傾斜しているが、前記前側面12C及び前記後側面12Dの傾斜方向は
図4に示す具体例に限定されない。前記前側面12C及び前記後側面12Dのそれぞれは、例えば、下方に向かうほど後方に位置するように上下方向に対して傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0119】
A1 ドラム回転軸
A2 ラッチ回転軸
P1 移動許容位置
P2 移動制限位置
R ワイヤロープ
1L,1R 第1の連結部
2L,2R 第2の連結部
4L,4R ドラム支持部材
11,12 一対の係合部材
11P ピン
120 溝部
12A 溝部の開口
12B 溝部の底面
12C 溝部の前側面
12D 溝部の後側面
21 ラッチ部材
22 被係合部材
23 保持部材
23A ばね部材
50 ウインチ装置
51 ウインチドラム
100 クレーン
103 旋回フレーム(フレーム部材の一例)
107 ロープシーブ
110 クレーン本体