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特許7223283画像処理ユニット及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】画像処理ユニット及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20230209BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20230209BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230209BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230209BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230209BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/00 510A
G09G5/00 530H
G09G5/36 520E
B60K35/00 A
G02B27/01
H04N7/18 J
H04N7/18 U
H04N5/64 521P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019526954
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024267
(87)【国際公開番号】W WO2019004237
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2017126062
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017160527
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03100913(EP,A1)
【文献】特開2015-152746(JP,A)
【文献】特開平06-247184(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090464(WO,A1)
【文献】特開平08-197981(JP,A)
【文献】特開2015-000630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0267402(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0067366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G09G 5/00
G02B 27/01
H04N 7/18,5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって視認される虚像に対応する表示要素を含む表示画像を生成する生成部を備え、
前記生成部は、前記ユーザの視点高さに基づき前記ユーザによって視認される前記虚像の大きさが変化するように、前記表示要素の平面形状を決定し、
前記視点高さが基準位置から、前記基準位置よりも低い位置に変化する時に、前記生成部は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が第1の所定方向及び/又は第2の所定方向に伸びるように、前記表示要素の前記平面形状を拡大し、
前記仮想平面は、道路面がxz平面である時に、前記xz平面から所定高さだけ上昇した位置に設定され、
前記虚像の平面形状は、実際の風景に存在する物体を前記仮想平面において取り囲む形状である、ことを特徴とする画像処理ユニット。
【請求項2】
前記虚像が投射される被投影部材を有する車両の前進方向を前方向とし、前記車両の後進方向を後方向とし、前記生成部は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が前方向及び/又は後方向に伸びるように、前記表示要素の前記平面形状を拡大することを特徴とする請求項1に記載の画像処理ユニット。
【請求項3】
前記第1の所定方向は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の前記平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される前記仮想平面上の前記平面形状が、前記虚像が投射される被投影部材を有する車両に近づく方向であり、
前記第2の所定方向は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の前記平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される前記仮想平面上の前記平面形状が、前記車両から離れる方向であることを特徴とする請求項に記載の画像処理ユニット。
【請求項4】
前記生成部は、前記視点高さの変化に応答して、前記表示要素の前記平面形状の拡大率を動的に決定することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理ユニット。
【請求項5】
単位時間あたりの前記視点高さの変化量が基準値以上である時に、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状の表示を弱める又は無効化することを特徴とする請求項に記載の画像処理ユニット。
【請求項6】
前記ユーザの視線方向が前記虚像を向いている間だけ、前記表示要素の前記平面形状の前記拡大率が1であるように、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状を拡大しないことを特徴とする請求項又はに記載の画像処理ユニット。
【請求項7】
前記表示要素の前記平面形状の前記拡大率が1よりも大きい時に、前記視点高さの低下に伴って前記拡大率が発生したことを前記ユーザに報知することを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の画像処理ユニット。
【請求項8】
前記視点高さは、車両始動時に取得された固定値であり、
前記生成部は、前記固定値に基づき、前記表示要素の前記平面形状の拡大率を決定することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理ユニット。
【請求項9】
前記視点高さが前記基準位置から、前記基準位置よりも高い位置に変化する時に、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が同一であるように、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状を決定することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像処理ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか1項に記載の前記画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットで生成された前記表示画像を表示する表示器と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの視点位置に基づく表示画像を生成可能な画像処理ユニット及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置は、車両の前方に存在する道路上の白線等の区画線を認識し、その区画線(実際の風景)と虚像が重なるように、その虚像に対応する表示画像を車両のウインドシールド(フロントガラス)に投影又は表示することができる。特に、特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置は、レーン逸脱警告装置(LDW装置)、レーン維持アシスト装置(LKA装置)等の運転支援装置と連携し、運転支援装置がアクティブであることを虚像で表す。具体的には、特許文献1の例えば図3図4に示されるように、その虚像は、車両側に傾斜する表示要素M1,M2,M3,M4,M5,M6として、ユーザ(運転者)に視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-110627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の段落[0018]の記載によれば、車内カメラにより撮影された運転者の顔画像を解析して、運転者の眼球位置(視点位置)を演算する。そして、解析により得られた視点位置に応じて、表示要素M1~M6が区画線R1~R6と重畳して視認されるように表示要素M1~M6の投影位置を調節する。しかしながら、視点位置が低くなる時に、本発明者らは、ユーザが虚像を視認し難いこと、即ち視認性の低下を認識した。
【0005】
本発明の1つの目的は、虚像の視認性を向上可能な画像処理ユニット及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0007】
第1の態様において、画像処理ユニットは、
ユーザによって視認される虚像に対応する表示要素を含む表示画像を生成する生成部を備え、
前記生成部は、前記ユーザの視点高さに基づき前記ユーザによって視認される前記虚像の大きさが変化するように、前記表示要素の平面形状を決定し、
前記視点高さが基準位置から、前記基準位置よりも低い位置に変化する時に、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状を拡大する。
【0008】
第1の態様では、視点高さが低くなる時に、表示要素の平面形状は、拡大されている。従って、その表示要素の虚像の大きさは、その拡大の分だけ増大し、視認性を向上させることができる。
【0009】
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記虚像が投射される被投影部材を有する車両の前進方向を前方向とし、前記車両の後進方向を後方向とし、前記生成部は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が前方向及び/又は後方向に伸びるように、前記表示要素の前記平面形状を拡大してもよい。
【0010】
第2の態様では、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が前後方向に伸びて、視認性を向上させることができる。
【0011】
第1の態様に従属する第3の態様において、
前記生成部は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が第1の所定方向及び/又は第2の所定方向に伸びるように、前記表示要素の前記平面形状を拡大してもよい
【0012】
第3の態様では、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が第1の所定方向及び/又は第2の所定方向に伸びて、視認性を向上させることができる。
【0013】
第3の態様に従属する第4の態様において、
前記第1の所定方向は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の前記平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される前記仮想平面上の前記平面形状が、前記虚像が投射される被投影部材を有する車両に近づく方向であってもよく、
前記第2の所定方向は、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の前記平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される前記仮想平面上の前記平面形状が、前記車両から離れる方向であってもよい。
【0014】
第4の態様では、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状がユーザ(運転者)に近づく方向に拡大されて、視認性を効果的に向上させることができる。これに代えて、或いは、これに加えて、第4の態様では、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状がユーザ(運転者)から離れる方向に拡大されて、視認性を効果的に向上させることができる。
【0015】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記生成部は、前記視点高さの変化に応答して、前記表示要素の前記平面形状の拡大率を動的に決定してもよい。
【0016】
第5の態様では、視点高さが変化する時に、その変化に応答して、視認性を向上させることができる。
【0017】
第5の態様に従属する第6の態様において、
単位時間あたりの前記視点高さの変化量が基準値以上である時に、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状の表示を弱める又は無効化してもよい。
【0018】
第6の態様では、視点高さの変化が大きい時に、視認性の向上を中止することができる。
【0019】
第5又は第6の態様に従属する第7の態様において、
前記ユーザの視線方向が前記虚像を向いている間だけ、前記表示要素の前記平面形状の前記拡大率が1であるように、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状を拡大しないようにしてもよい。
【0020】
第7の態様では、ユーザの視線方向が表示要素(虚像)を向いている時だけ、視認性の向上を中止させることができる。言い換えれば、ユーザは、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状の拡大を視認することができないため、ユーザへの誤った情報提示を回避することができる。
【0021】
第5乃至第7の何れか1つの態様に従属する第8の態様において、画像処理ユニットは、
前記表示要素の前記平面形状の前記拡大率が1よりも大きい時に、前記視点高さの低下に伴って前記拡大率が発生したことを前記ユーザに報知してもよい。
【0022】
第8の態様では、ユーザの視点高さに応じた虚像の移動を報知することができる。
【0023】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第9の態様において、
前記視点高さは、車両始動時に取得された固定値であってもよく、
前記生成部は、前記固定値に基づき、前記表示要素の前記平面形状の拡大率を決定してもよい。
【0024】
第9の態様では、車両始動時に取得した視点高さ(固定値)で、車両運転中の視認性を向上させることができる。
【0025】
第1乃至第9の何れか1つの態様に従属する第10の態様において、
前記視点高さが前記基準位置から、前記基準位置よりも高い位置に変化する時に、前記ユーザによって視認される実空間での前記虚像の平面形状又は前記虚像の前記平面形状が写像される仮想平面上の平面形状が同一であるように、前記生成部は、前記表示要素の前記平面形状を決定してもよい。
【0026】
第10の態様では、視点高さが高くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状は、同一であってもよく、言い換えれば、ユーザによって視認される実空間での虚像の平面形状又は虚像の平面形状が写像される仮想平面上の平面形状は、前後方向に伸びなくても、視認性は、低下しない。
【0027】
第11の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置は、
第1乃至第10の何れか1つの態様に従う前記画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットで生成された前記表示画像を表示する表示器と、
を備える。
【0028】
第11の態様では、ヘッドアップディスプレイ装置は、視点高さが低くなる時に、拡大された平面形状を有する表示要素を含む表示画像を表示することができる。従って、その表示要素の虚像の大きさは、その拡大の分だけ増大し、視認性を向上させることができる。
【0029】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1(A)は、本発明に従う画像処理ユニット及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置の概略構成例を示し、図1(B)は、図1(A)の虚像表示面及び仮想平面の説明図を示す。
図2図2(B)は、図1(A)の虚像表示面の変形例を示し、図2(B)は、図2(A)の虚像表示面及び仮想平面の説明図を示す。
図3図3(A)は、ウインドシールドを介して認識される物体(実際の風景)の1例を示し、図3(B)は、図3(A)の物体に重畳される虚像(表示要素)の1例を示し、図3(C)は、実空間での虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図(平面図)を示す。
図4図4(A)は、ユーザによって認識される虚像の1例を示し、図4(B)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される虚像の大きさの変化例を示し、図4(C)は、増大された虚像の1例を示し、図4(D)は、実空間での拡大された虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図(平面図)を示す。
図5】5(A)は、ユーザの視点高さに基づく、実空間での虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の拡大率の複数の設定例を示し、5(B)は、車両までの距離に基づく、実空間での虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の拡大率の設定例を示す。
図6図6(A)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって認識される虚像の1例を示し、図6(B)は、側面視における図6(A)の虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図を示す。
図7図7(A)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって認識される、増大された虚像の1例を示し、図7(B)は、側面視における図7(A)の虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図を示す。
図8図8(A)は、図7(A)の虚像の変形例を示し、図8(B)は、側面視における図8(A)の虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図を示す。
図9図9(A)及び図9(C)の各々は、図7(A)の虚像の他の変形例を示し、図9(B)は、側面視における図9(A)の虚像の平面形状又は仮想平面上の平面形状の説明図を示す。
図10図10(A)は、物体(前方車両)と自車両との位置関係の説明図を示し、図10(B)は、所定方向の設定例の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0032】
図1(A)は、本発明に従う画像処理ユニットを備えるヘッドアップディスプレイ装置(又はヘッドアップディスプレイシステム)の概略構成例を示す。図1(A)に示されるように、ヘッドアップディスプレイシステムは、例えば撮像装置103と、撮像装置103からの撮像画像を処理する画像処理部300と、画像処理部300からの情報に基づき表示器20への表示画像を処理し、且つ表示画像に基づき表示器20を制御する表示コントローラ200と、例えば表示器20及び反射器21を含む表示機構100と、を備えることができる。なお、図1(A)の表示コントローラ200の処理部210は、表示器20を制御する機能を有さないで、その機能は、他の装置(図示せず)、又は、図示される例えば表示器20又は画像処理部300によって実現されてもよい。
【0033】
本明細書において、ユーザによって視認される虚像に対応する表示要素を含む表示画像を生成する生成部230の機能を備える装置は、本発明に従う画像処理ユニットと呼ぶことができる。1例として、生成部230は、図1(A)の表示コントローラ200に適用されているので、生成部230を備える表示コントローラ200は、画像処理ユニットである。画像処理ユニットは、本質的には、表示画像を処理する機能(生成部230)を有するが、撮像画像を処理する機能(物体情報取得部310及び/又は視点情報取得部320)を更に有してもよい。言い換えれば、画像処理部300が表示要素を含む表示画像を生成する生成部230の機能を備える時に、その画像処理部300は、本発明に従う画像処理ユニットと呼ぶことができる。
【0034】
また、本発明に従う画像処理ユニット(例えば図1(A)表示コントローラ200)と、画像処理ユニットで生成された表示画像を表示する表示器20と、を備える装置は、本発明に従うヘッドアップディスプレイ装置と呼ぶことができる。
【0035】
図1(A)において、撮像装置103は、1例として、例えば車両の前方に存在する道路(道路上の実際の風景)を撮像可能である第1の撮像部103-1と、ユーザである例えば運転者の顔を撮像可能である第2の撮像部103-2と、を有している。表示機構100は、車両のウインドシールド101の例えば一部に設定される表示範囲AR(被投影部材)に表示画像(表示要素を含む)を投影して、車両の運転者の視点102で表示要素の虚像表示面V上の虚像が実際の風景(例えば前方車両)と重なるように表示画像を表示範囲ARに表示可能である。表示機構100及び表示コントローラ200は、典型的にはダッシュボードの内部に収納されているが、表示機構100及び表示コントローラ200の一部がダッシュボードの外部に配置されてもよい。なお、表示器20は、例えばウインドシールド101に表示要素又は表示画像を投影するので、投影器と呼ばれてもよい。
【0036】
図1(A)の画像処理部300は、第1の撮像部103-1からの撮像画像を解析し、その撮像画像から、表示要素に重ねられる前方車両、歩行者、白線等の物体を認識可能な物体情報取得部310を有することができる。好ましくは、物体情報取得部310は、認識した物体の位置情報(例えば自車両を基準とした時の実空間での相対的な3次元の位置)を取得し、更に好ましくは、認識した物体の大きさ(例えば実空間での物体の体積)を取得することができる。第1の撮像部103-1は、例えばステレオカメラであり、物体情報取得部310は、左右の撮像画像から、物体と車両(自車両)との距離(自車両から物体までの相対距離)と、道路面H(水平面)上の物体と車両(自車両)との位置(自車両から物体までの相対距離)と、物体を取り囲む直方体を規定する3辺の長さ(物体の幅と奥行きと高さ)と、を取得することができる。
【0037】
図1(A)の画像処理部300は、第2の撮像部103-2からの撮像画像を解析し、その撮像画像から、運転者の目を認識可能な視点情報取得部320を有することができる。好ましくは、視点情報取得部320は、認識した目の位置情報(例えば自車両の室内の天井、又は、床、又は、天井と床との間の所定の位置を基準とした時の実空間での相対的な1次元の位置(視点高さ))を取得し、更に好ましくは、認識した目の向き(視線方向)を取得することができる。
【0038】
撮像装置103は、例えば図示されないインナーリアビューミラー(バックミラー)の付近に設置されている。1例として、第1の撮像部103-1は、インナーリアビューミラーのウインドシールド101側に位置し、第2の撮像部103-2は、インナーリアビューミラーの運転席(図示せず)側に位置する。
【0039】
図1(A)の表示コントローラ200は、処理部210を有している。処理部210は、生成部230を有し、好ましくは、例えば判定部220を更に有することができる。処理部210又は判定部220は、視点情報取得部320によって取得される運転者の視点102が上下方向に変化しているか否かを判定することができる。また、判定部220は、視点高さが変化する時に、その変化が大きいか否かを判定することができる。加えて、判定部220は、視点情報取得部320によって取得される運転者の視線方向が表示要素を向いているか否かを判定することができる。
【0040】
次に、処理部210又は生成部230は、ユーザによって視認される虚像に対応する表示要素を含む表示画像を生成し、好ましくは、車両の運転者の視点102で表示要素の虚像が実際の風景(物体情報取得部310によって取得される例えば前方車両)と重なるように、その表示要素を含む表示画像を生成する。
【0041】
具体的には、生成部230は、ユーザである例えば運転者の視点高さと、認識した物体である例えば前方車両の位置情報と、に基づき、表示要素の位置情報及び大きさを決定することができる。より具体的には、生成部230は、表示要素がユーザによって視認される時に、その表示要素に対応する虚像が実空間上で平面形状を有するように、且つ、ユーザの視点高さに依存しないで、実空間での虚像の平面形状が同一であるように、表示要素の平面形状を決定する。言い換えれば、生成部230は、ユーザの視点高さに応じて、ユーザによって視認される例えば前方車両(実際の風景)の大きさが変化する時に、その前方車両に重ねる表示要素の大きさの変化が、前方車両の大きさの変化と等しくなるように、ユーザの視点高さに応じて、表示要素の平面形状を決定する。即ち、生成部230は、ユーザの視点高さに依らず、ユーザによって視認される例えば前方車両(実際の風景)と表示要素との実空間での相対的な位置関係及び実空間での大きさ関係が変化しないように、ユーザの視点高さに応じて、表示画像内の表示要素の位置及び見た目の形状を決定する。
【0042】
但し、ユーザの視点高さが低くなる時に、虚像の視認性が低下することを本発明者らは認識した。詳細は、後述するが、視認性を向上させるために、生成部230は、ユーザの視点高さに応じて表示要素の平面形状を決定した後、ユーザの視点高さが低くなる時に、表示要素の平面形状を拡大することを特徴とする。従って、その表示要素の虚像の大きさは、その拡大の分だけ増大する。
【0043】
図1(A)の表示コントローラ200は、例えば記憶部240を更に備え、記憶部240は、例えば判定部220、生成部230等の処理部210の処理又は演算に必要な様々なデータを記憶することができる。表示コントローラ200は、典型的には例えばマイクロコンピュータで構成され、例えばCPUと、ROM、RAM等のメモリと、入出力インターフェース等を含むことができる。処理部210は、典型的にはCPU及びRAM(ワーク領域)で構成され、記憶部240は、典型的にはROM(例えばEEPROM)で構成される。例えば、ROMは、CPUに所定の動作(ユーザの視点102に基づく表示画像を生成する方法)を実行させるプログラムを記憶してもよく、RAMは、CPUのワーク領域を形成することができる。また、ROMは、例えば表示要素の形状を決定又は演算するために必要なデータを記憶することができる。
【0044】
表示コントローラ200は、車両に配置又は搭載され、例えばCAN(Controller Area Network)である車載ネットワークLANを介して、例えば画像処理部300等に接続されている。表示コントローラ200は、一般に、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれてもよい。
【0045】
図1(A)の表示コントローラ200は、例えば情報取得部400からの情報を入力し、その情報に基づき、ユーザによって視認される虚像に対応する表示要素を含む表示画像を生成してもよい。具体的には、処理部210又は生成部230は、例えば車載ネットワークLAN、道路情報取得部410及び位置情報取得部420を介して、車両(自車両)の位置(例えば現在位置)に基づく道路面Hの勾配の情報を入力してもよい。
【0046】
なお、情報取得部400からの情報に基づき生成された表示要素の投影位置は、ウインドシールド101に設定される表示範囲ARの一部に固定されてもよく、所定の物体(実際の風景)に重ねられなくてもよい。例えば、道路情報の中に標識情報が含まれる時に、現在位置に基づく道路の標識が、生成部230に入力されて、道路の標識を表す表示要素は、ウインドシールド101に設定される表示範囲ARの一部に固定されて、表示されてもよい。
【0047】
また、処理部210又は生成部230は、例えば車載ネットワークLAN及び車速情報取得部430を介して、車両(自車両)の速度を入力してもよい。現在時刻に基づく車両(自車両)の速度が、生成部230に入力されて、車両の速度を表す表示要素は、ウインドシールド101に設定される表示範囲ARの一部に固定されて、表示されてもよい。言い換えれば、ヘッドアップディスプレイ装置は、表示画像を表示する時に、所定の物体(実際の風景)の位置に依らず、車両の速度等の計器情報を固定する一方、前方車両、歩行者等の障害物情報を所定の物体(実際の風景)の位置に応じて変化させてもよい[0]。なお、表示コントローラ200は、例えば道路情報取得部410、位置情報取得部420、車速情報取得部430等の情報取得部400からの情報を入力しなくてもよい。
【0048】
図1(A)において、表示機構100又は表示器20は、ウインドシールド101を介して虚像表示面V上の虚像をユーザに視認させるために、表示コントローラ200又は処理部210によって制御され、これにより、表示器20は、虚像に対応する表示要素を含む表示画像に基づく表示光L(投影光)を生成又は放出することができる。反射器21は、表示器20からの表示光Lの光路をウインドシールド101に導き、運転者は、ウインドシールド101での表示光L(表示要素)を虚像として認識することができる。なお、表示器20は、例えばLED等の光源部、例えばDMD(Digital Micromirror Device)等の表示素子、表示素子からの光を受光して表示画像(表示要素を含む)を表示するスクリーン等を有する。
【0049】
画像処理ユニットである表示コントローラ200及び例えば表示機構100を備えるヘッドアップディスプレイ装置が搭載される車両(自車両)は、図1(A)において例えば自動車であり、自動車は道路面Hの上を走行可能である。運転者の視点102で、図1(A)の虚像表示面Vの高さ又は奥行き(重畳距離)は、例えば距離D1から距離D3までの所定距離に設定されている。言い換えれば、運転者の視点102で、虚像表示面Vの下端は、車両から距離D1だけ前方に存在し、虚像表示面Vの上端は、車両から距離D3だけ前方に存在し、虚像表示面Vの上下方向の中点は、車両から距離D2だけ前方に存在している。距離D1、距離D2及び距離D3は、それぞれ、例えば20[m]、例えば30[m]及び例えば50[m]である。
【0050】
図1(A)において、1つの反射器21が示されているが、反射器21は、例えば2つの反射器で構成することができ、言い換えれば、表示器20からウインドシールド101までの表示光Lの光路長は、反射器21によって設定されてもよく、距離D1、距離D2及び距離D3は、理想的な運転者の視点高さ(理想的な運転者の座高の高さ)及び表示光Lの光路長に応じて設定されてもよい。また、反射器21は、一般に、表示器20からの表示光Lを拡大し、加えて、反射器21又は表示コントローラ200(例えば処理部210)は、一般に、ウインドシールド101の一部に設定される表示範囲ARにおける歪み(例えばガラス面の歪み)を補正することができる。
【0051】
図1(B)は、図1(A)の虚像表示面及び仮想平面の説明図を示す。表示要素の虚像は、例えば、道路面Hから所定高さだけ上昇した虚像表示面V上に認識され、例えば、虚像表示面Vは、道路面Hから所定高さだけ上昇した仮想平面Sに設定される。なお、虚像表示面Vは、道路面Hと平行に設定されないで、道路面Hから所定の角度だけ傾いてもよい。虚像表示面Vの傾きは、スクリーン(表示器20が表示画像を表示する表示面)又は反射器21の角度によって設定されている。
【0052】
反射器21を回転駆動可能なアクチュエータ(図示せず)が反射器21に設けられていてもよく、その場合、表示コントローラ200の処理部210は、そのアクチュエータを制御して、虚像表示面Vの傾きを調整してもよい。図1(A)又は図1(B)の例において、虚像表示面Vは、道路面Hとほぼ平行であり、道路面Hからの虚像表示面Vの傾きは、1例として、0[degree]から30[degree]までの範囲に設定されてもよい。
【0053】
図1(A)又は図1(B)において、虚像表示面Vは、道路面Hから所定高さだけ上昇しているが、道路面Hに設定されてもよい。また、仮想平面Sは、道路面Hから所定高さだけ上昇しているが、道路面Hに設定されてもよい。
【0054】
図2(B)は、図1(A)の虚像表示面の変形例を示し、図2(B)は、図2(A)の虚像表示面及び仮想平面の説明図を示す。図2(A)又は図2(B)の例において、虚像表示面V’は、道路面Hとほぼ垂直であり、道路面Hからの虚像表示面Vの傾きθ’は、1例として、80[degree]から90[degree]までの範囲に設定されてもよい。図2(A)において、運転者の視点102で、虚像表示面V’上の虚像によって重ねられる実際の風景の範囲(重畳距離)は、例えば距離D1’から距離D3’までの所定距離に設定されている。なお、図2(A)の距離D1’、距離D2’及び距離D3’が、それぞれ、図1(A)の距離D1、距離D2及び距離D3と同一となるように、表示光Lの光路長及び反射器21の角度が設定されてもよい。また、図2(A)の仮想平面Sは、道路面Hから所定高さだけ上昇しているが、道路面Hに設定されてもよい。
【0055】
なお、虚像表示面は、図1(A)の虚像表示面V又は図2(A)の虚像表示面V’に限定されず、例えば特開2014-181025号公報、特開2016-068576号公報、特開2016-212338号公報に開示されるように、複数の虚像表示面の組み合わせであってもよい。言い換えれば、虚像表示面は、実空間での任意の平面に設定してもよく、いわゆる3Dヘッドアップディスプレイ装置の虚像表示面であってもよい。
【0056】
図3(A)は、ウインドシールド101を介して認識される物体OB(実際の風景)の1例を示す。図3(A)に示されるように、ユーザである例えば運転者は、例えば片側三車線の道路を自車両で走行し、例えば左隣のレーン上を走行する前方車両を認識することができる。この時、例えば図1(A)の物体情報取得部310は、自車両の前方に存在する道路上の物体OBとして、車両(前方車両)を認識し、認識した物体OB(前方車両)の位置情報を取得することができる。
【0057】
図3(B)は、図3(A)の物体OBに重畳される虚像V1(表示要素)の1例を示す。例えば図1(A)の生成部230は、物体情報取得部310からの位置情報と、視点情報取得部320からの運転者の視点高さと、に基づき、運転者の視点102で、虚像V1が物体OB(前方車両)と重なるように、虚像V1に対応する表示要素の位置情報を決定することができる。虚像V1は、例えば図1(B)の仮想平面Sと一致する虚像表示面V上に形成される。
【0058】
図3(C)は、実空間での虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図(平面図)を示す。例えば図1(B)に示されるように、虚像表示面Vが仮想平面Sと一致する時に、実空間での虚像V1は、仮想平面S上に形成され、従って、実空間での虚像V1の平面形状は、実空間での仮想平面S上の平面形状と一致する。図3(C)に示されるように、実空間での仮想平面S上の平面形状は、例えば第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形である。図3(C)の例において、仮想平面S上の平面形状(長方形)の中心Cは、物体OB(前方車両)の例えば中心に一致し、生成部230は、物体OB(前方車両)の中心を、例えば物体情報取得部310からの情報によって取得又は算出することができる。
【0059】
図3(C)において、実空間での仮想平面S上の平面形状は、物体情報取得部310によって取得される実空間での物体OB(前方車両)を取り囲む直方体の仮想平面S(仮想平面Sは、道路面Hがxz平面である時に、xz平面から所定高さだけ上昇している。)による切断面を規定する形状であってもよい。言い換えれば、物体情報取得部310は、物体OB(前方車両)を直方体(仮想直方体)で取り囲む時に、直方体(仮想直方体)を規定する3辺の長さ(物体の幅(x軸方向)と奥行き(z軸方向)と高さ(y軸方向))のうち、物体OB(前方車両)の幅及び奥行きに、それぞれ所定値(=of2+of3)及び所定値(=of1+of4)を加算してもよい。代替的に、図3(C)において、of1、of2、of3及びof4の各々は、ゼロに設定されて、第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形は、平面視において、物体OB(前方車両)をぴったり囲んでもよい。
【0060】
なお、物体OB(前方車両)の大きさは、物体情報取得部310によって厳密に取得されなくてもよく、物体情報取得部310は、障害物又は接近物のカテゴリ(例えば「車両」又は「歩行者」)だけが認識されて、カテゴリ毎に、固定の大きさが割り当てられてもよく、カテゴリ内の種類(例えば車両カテゴリ内の「普通自動車」、「大型トラック」、又は「オートバイ」)毎に、固定の大きさが割り当てられてもよい。
【0061】
虚像V1が、例えば図2(B)の仮想平面Sと一致しない虚像表示面V’上に形成される時に、ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状は、図3(C)に示されるように、例えば第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形である。
【0062】
図4(A)は、ユーザによって認識される虚像V1の1例を示し、図4(B)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される虚像V1の大きさの変化例を示し、図4(C)は、増大された虚像V1の1例を示し、図4(D)は、実空間での拡大された虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図(平面図)を示す。
【0063】
図4(A)~図4(C)において、図3(B)の物体OB(前方車両)は、簡略化されて、二点鎖線で表される直方体(現実直方体)として表されている。ユーザの視点高さが図4(A)で想定される高さから図4(B)で想定される高さに減少する時に、ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状が同一であるように、生成部230は、虚像V1に対応する表示要素の平面形状を決定する。従って、実空間での仮想平面S上の平面形状が例えば第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形(仮想直方体)で固定又は維持される状況では、視点高さが低くなる時に、本発明者らは、ユーザが虚像V1を視認し難いこと、即ち視認性の低下を認識した(図4(B)参照)。
【0064】
従って、本発明に従う生成部230では、図4(A)及び図4(B)に示されるように、その物体OB(前方車両)を取り囲む仮想平面S上の平面形状(第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形)に重ねる表示要素(虚像V1)の大きさの変化が、物体OB(前方車両)の大きさ(二点鎖線で表される直方体)の変化と等しくなるように、ユーザの視点高さに応じて、表示要素の平面形状を一時的に決定する。即ち、生成部230は、ユーザの視点高さに依らず、ユーザによって視認される物体OB(前方車両)と表示要素(虚像V1)との実空間での相対的な位置関係及び実空間での大きさ関係が変化しないように、ユーザの視点高さに応じて、表示画像内の表示要素の位置及び見た目の形状を一時的に決定する。その後、生成部230は、一時的に決定された表示要素の平面形状を拡大する(図4(C)及び図4(D)参照)。
【0065】
図4(C)及び図4(D)に示されるように、実空間での仮想平面S上の平面形状は、1例として、第1~第4の辺S1,S2’,S3’,S4で規定される長方形である。即ち、図4(B)の第2の辺S2は、図4(C)の第2の辺S2’に拡大され、図4(B)の第3の辺S3は、図4(C)の第3の辺S3’に拡大される。このように、視点高さが低くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状が前方向に(of4’-of4)の分だけ伸び、且つ後方向に(of1’-of1)の分だけ伸びる(図4(D)参照)。図4(C)に示されるように、生成部230は、一時的に決定された表示要素の平面形状を拡大するので、その表示要素の虚像V1の大きさ(第1~第4の辺S1,S2’,S3’,S4で規定される長方形)は、その拡大の分だけ増大し、視認性を向上させることができる。
【0066】
生成部230は、ユーザの視点高さの変化に応答して、拡大された表示要素の平面形状(拡大率)を動的に決定することができる。ユーザの視点高さが変化する時に、その変化に応答して、視認性を向上させることができる。しかしながら、視点高さの変化が大きい時に、視認性の向上を中止してもよい。具体的には、判定部220は、所定期間内に所定の範囲以上に視点高さが変化するか否かを判定し、単位時間あたりの視点高さの変化量が基準値以上である時に、生成部230は、一時的に決定された表示要素の平面形状を拡大しなくてもよい。代替的に、単位時間あたりの視点高さの変化量が基準値以上である時に、生成部230は、一時的に決定された表示要素の平面形状を拡大しても、表示要素の表示輝度を下げて、或いは、表示要素(虚像V1)の表示を消してもよい。その後、視点高さの変化が小さくなった時に、生成部230は、視認性の向上を再開することができる。視点高さの変化が大きい時に、視認性の向上を中止することで、物体OB(前方車両)と車両(自車両)との距離が変化したという誤った認識、或いは、運転者への誤った情報提示を回避することができる。
【0067】
他方、生成部230は、ユーザの視点高さの変化に応答しなくてもよい。具体的には、生成部230は、車両始動時に取得した視点高さ(固定値)で、車両運転中の視認性を向上させることができる。言い換えれば、例えば比較的座高の低い女性が車両を運転する時に、その女性の視点高さで、車両運転中の視認性を向上させることができる。
【0068】
ところで、生成部230は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって認識される一時的に決定された表示要素の平面形状を拡大するので、その表示要素の虚像V1の大きさ(第1~第4の辺S1,S2’,S3’,S4で規定される長方形)は、その拡大の分だけ増大し、視認性を向上させることができる。しかしながら、判定部220は、視点情報取得部320によって取得される運転者の視線方向が表示要素(虚像V1)を向いているか否かを判定することができる。即ち、運転者の視線方向が表示要素(虚像V1)を向いている時だけ、生成部230は、視認性の向上を中止させてもよい。視認性の向上を中止することで、運転者への誤った情報提示を回避することができる。
【0069】
視点高さが低くなり、且つ運転者の視線方向が表示要素(虚像V1)を向いていない時に、生成部230は、虚像V1を拡大させなくてもよい。
【0070】
加えて、生成部230は、視認性を向上させるために、表示要素(虚像V1)の平面形状を拡大する時に、即ち、拡大率が1よりも大きい時に、ユーザの視点高さの低下に伴って表示要素(虚像V1)の平面形状が拡大されたことをユーザに報知することができる。1例として、生成部230は、ユーザの視点高さに応じて表示要素(虚像V1)を拡大したことを表す専用の表示要素(図示せず)を表示範囲ARに表示することができる。これに加えて、或いは、これに代えて、処理部210は、車両のスピーカ(図示せず)を制御して、ユーザの視点高さに応じて表示要素(虚像V1)を拡大したことを表す音声を出力することができる。これにより、ユーザは、ユーザの視点高さに応じた虚像V1の拡大と、物体OB(前方車両)の接近に応じた虚像V1の拡大とを区別することができる。
【0071】
図5(A)は、ユーザの視点高さに基づく、実空間での虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の拡大率の複数の設定例を示し、図5(B)は、車両までの距離に基づく、実空間での虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の拡大率の設定例を示す。
【0072】
図5(A)に示されるように、判定部220は、ユーザの視点高さが基準位置THαよりも低いか否かを判定することが好ましく、ユーザの視点高さが基準位置THα以上である時に、例えば図3(C)に示されるように、実空間での仮想平面S上の平面形状が例えば第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形で固定又は維持される。視点高さが高くなる時に、ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状は、同一である。言い換えれば、ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状は、図4(D)のように前後方向に伸びなくても、図4(A)での視認性は、低下しない。
【0073】
他方、ユーザの視点高さが基準位置THαよりも低い時に、仮想平面S上の平面形状の拡大率α(=S2’/S2)は、図5(A)の実線で示されるように、増大される。なお、図5(A)のTall及びShortは、それぞれ、車両の室内で想定されるユーザである運転者の視点高さの最大値及び最小値を示す。図5(A)のNormalは、理想的な運転者の視点高さを示す。拡大率αは、図5(A)の実線以外の一点鎖線又は破線によって決定されてもよい。一点鎖線は、上に凸の曲線によって拡大率αを表すことができ、これは、視点高さが低くなる時に、視認性をより一層向上させることができることを意味する。
【0074】
また、視認性を向上させるために、生成部230は、例えば図5(B)に示される拡大率βを使用することができる。即ち、生成部230は、拡大率α×拡大率βで、仮想平面S上の平面形状が拡大されるように、表示要素の平面形状を決定することができる。図5(B)において、物体OB(前方車両)と車両(自車両)との距離が閾値THβよりも大きい時に、1よりも大きい拡大率βを設定することができる。
【0075】
なお、図5(A)及び図5(B)において、拡大率α及び拡大率βの各最小値は、1以上であるが、1よりも小さく設定されてもよい。言い換えれば、拡大率α及び/又は拡大率βの最小値が1よりも小さい時に、拡大率「1」を基準として、縮小してもよい。言い換えれば、1よりも小さい最小値を基準として、拡大率「1」によって仮想平面S上の平面形状は、拡大される。
【0076】
図6(A)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって認識される虚像V1の1例を示し、図6(B)は、側面視における図6(A)の虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図を示す。図6(A)及び図6(B)は、図4(B)に対応し、実空間での仮想平面S上の平面形状が例えば第1~第4の辺S1,S2,S3,S4で規定される長方形で固定又は維持される状況では、視点高さが低くなる時に、本発明者らは、ユーザが虚像V1を視認し難いこと、即ち視認性の低下を認識した(図6(A)参照)。
【0077】
図7(A)は、視点高さが低くなる時に、ユーザによって認識される、増大された虚像V1の1例を示し、図7(B)は、側面視における図7(A)の虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図を示す。図7(A)及び図7(B)は、図4(C)に対応し、実空間での仮想平面S上の平面形状が例えば第1~第4の辺S1,S2’,S3’,S4で規定される長方形で拡大される状況では、視点高さが低くなる時に、本発明者らは、視認性の向上を認識した(図7(A)参照)。
【0078】
図8(A)は、図7(A)の虚像V1の変形例を示し、図8(B)は、側面視における図8(A)の虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図を示す。ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状が前方向に(of4’-of4)の分だけ伸びても、本発明者らは、視認性の向上を認識した(図8(A)参照)。
【0079】
図9(A)及び図9(C)の各々は、図7(A)の虚像V1の他の変形例を示し、図9(B)は、側面視における図9(A)の虚像V1の平面形状又は仮想平面S上の平面形状の説明図を示す。ユーザによって視認される実空間での虚像V1の平面形状又は虚像V1の平面形状が写像される仮想平面S上の平面形状が後方向に(of1’-of1)の分だけ伸びても、本発明者らは、視認性の向上を認識した(図9(A)参照)。また、物体OB(前方車両)それ自身の視認性を保つために、物体OB(前方車両)の方が優先されて、仮想平面S上の平面形状の一部、即ち、物体OB(前方車両)の背後の虚像V1の部分を省略するように、生成部230は、その虚像V1に対応する表示要素の形状を決定することができる。
【0080】
図10(A)は、物体OB(前方車両)と自車両との位置関係の説明図を示し、図10(B)は、所定方向(第1の所定方向)の設定例の説明図を示す。図10(A)の例において、実空間での座標は、x軸、y軸及びz軸で表すことができ、ワールド座標と呼ぶこともできる。図10(B)の例において、所定方向DR1は、z軸に平行であり、仮想平面S上の平面形状の第1の辺S1が所定方向DR1に拡大される時に、第1の辺S1は、自車両に近づくことになる。言い換えれば、自車両の前進方向を前方向とし、自車両の後進方向を後方向とする時に、所定方向DR1(第1の所定方向)は、自車両の後進方向と一致する。
【0081】
なお、図示されていないが、仮想平面S上の平面形状の第4の辺S4が所定方向DR1の反対方向(第2の所定方向:自車両の前進方向)に拡大される時に、第4の辺S4は、自車両から離れることになる。
【0082】
実空間での所定方向は、x軸、y軸及びz軸で表すことができる物体OB(前方車両)のローカル座標で規定してもよい。なお、図10(B)において、物体OB(前方車両)と道路面Hとの境界L1がz軸に垂直であり、所定方向DR1は、所定方向DR1と一致する。
【0083】
所定方向DR1又はDR1は、図10(A)の自車両の後進方向又は第1の辺S1が境界L1から離れる方向に限定されず、仮想平面S上の平面形状が自車両に近づく方向であればよい。図10(B)において、所定方向DRは、点線で表わされ、物体OB(前方車両)の例えば道路面H上の基準点R(例えば中心、重心等)から自車両の運転者の視点102に向かう方向Mと一致するように、物体OB(前方車両)の例えば中心と自車両の運転者の視点102とを結ぶ直線(仮想直線)上に所定方向DRを設定することができる。第1の辺S1が自車両内のユーザ(具体的には、視点102)に近づく方向に拡大される時に、視認性を効果的に向上させることができる。
【0084】
代替的に、所定方向DR1又はDR1は、或いは、所定方向DRは、仮想平面S上の虚像V1の平面形状は、物体OB(前方車両)と道路面Hとの境界L1と、仮想平面S上の虚像V1の平面形状の外縁S1と、の間で規定される、仮想平面S上の隙間又は面積が増加する方向に、拡大されてもよい。視点高さが低くなる時に、仮想平面S上の隙間(仮想平面上の面積)を増加させて、視認性をより一層向上させることができる。
【0085】
更に、物体OBが自車両に向かって進行する障害物である時に、所定方向DR1又はDR1は、或いは、所定方向DRは、その物体OB(障害物)の進行方向に設定されて、虚像V1を拡大させてもよい。
【0086】
なお、虚像V1を拡大する方向は、第1の所定方向だけでなく、第1の所定方向の反対方向(第2の所定方向)を含んでもよい。或いは、虚像V1を拡大する方向は、第1の所定方向に代えて、第1の所定方向の反対方向(第2の所定方向)だけでもよい。
【0087】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0088】
20・・・表示器、21・・・反射器、100・・・表示機構、101・・・ウインドシールド、102・・・ユーザ(運転者)の視点、103・・・撮像装置、200・・・表示コントローラ(広義には、画像処理ユニット)、210・・・処理部、220・・・判定部、230・・・生成部、240・・・記憶部、300・・・画像処理部、310・・・物体情報取得部、320・・・視点情報取得部、400・・・情報取得部、AR・・・表示範囲、DR1,DR1,DR・・・所定方向、L・・・表示光、H・・・道路面、OB・・・物体、R・・・基準点、V・・・虚像表示面、V1・・・虚像。
図1
図2
図3
図4
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図10