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特許7223322熱硬化性組成物、硬化膜、および当該硬化膜を有する物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物、硬化膜、および当該硬化膜を有する物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20230209BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230209BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230209BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20230209BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230209BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230209BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K9/06
C09D175/04
C09D7/62
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019027323
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020132751
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】加納 崇光
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124011(WO,A1)
【文献】特開2001-029883(JP,A)
【文献】特開平08-034828(JP,A)
【文献】特開平10-045867(JP,A)
【文献】特開平11-124501(JP,A)
【文献】特開平10-088010(JP,A)
【文献】特開平10-067844(JP,A)
【文献】特開2011-168922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)と、ブロック化ポリイソシアネート(B)と、シリカ(C)を含有する熱硬化性組成物であって、
前記シリカ(C)は、コロイダルシリカと、反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカであり、
前記反応性官能基は、アミノ基、およびメルカプト基からなる群より選ばれる1種以上の官能基であり、
前記コロイダルシリカ100重量部に対して、前記シランカップリング剤が5重量部以上55重量部以下であり、
前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)の合計において、前記ポリオール(A)の割合が1重量%以上30重量%以下であり、かつ前記シリカ(C)の割合が40重量%以上65重量%以下であることを特徴とする熱硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱硬化性組成物から形成されることを特徴とする硬化膜。
【請求項3】
請求項2記載の硬化膜を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性組成物、硬化膜、および当該硬化膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアミド、トリアセチルセルロース樹脂などの樹脂は、成形加工が容易、軽量かつ耐衝撃性に優れており、様々な分野で使用されている。しかしながら、これら樹脂の成形体の表面はガラスなどと比較して、耐擦傷性、耐摩耗性などに劣るため、爪での引っ掻き、砂塵および小石などの接触や衝撃によって傷や凹みが生じることにより、美観や機能が損なわれる。
【0003】
この問題を解決すべく、当該樹脂の成形体の表面を耐擦傷性の有する塗膜で被覆し、保護する方法が一般的に行われており、このような機能を有する様々なコーティング剤が提案されてきた。とくに、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させるウレタン硬化系組成物は、樹脂の成形体の熱変形が生じない低温での熱硬化に適している。さらに、シリカを含むウレタン硬化系組成物から形成される硬化膜は、表面硬度が高く、良好な耐擦傷性や耐摩耗性を有することが知られている。
【0004】
特許文献1では、特定のポリオールと、ブロック化ポリイソシアネートと、特定のシランカップリング剤で疎水化したシリカを含む熱硬化性樹脂組成物が開示されている。特定のシランカップリング剤でシリカを疎水化することで、塗膜の硬度、耐汚染性、耐薬品性に加えて、耐アルカリ性や貯蔵安定性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-45867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に具体的に開示された塗膜は、シリカが化学結合で塗膜中に固定化されていないため、塗膜表面が擦られたり、摩耗された場合に、シリカが塗膜から脱離して塗膜強度を低下させるだけでなく、シリカが研磨剤となって塗膜をさらに傷つけることが判明した。したがって、当該塗膜は、高硬度であるが、耐擦傷性および耐摩耗性に改善の余地があった。
【0007】
また、通常、上記のような塗膜には、良好な塗膜外観および基材に対する密着性が要求される。
【0008】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされたものであり、耐擦傷性および耐摩耗性に優れ、かつ良好な塗膜外観および密着性を有する硬化膜を形成する熱硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、ポリオール(A)と、ブロック化ポリイソシアネート(B)と、シリカ(C)を含有する熱硬化性組成物であって、前記シリカ(C)は、コロイダルシリカと、反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカであり、前記反応性官能基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基であり、前記コロイダルシリカ100重量部に対して、前記シランカップリング剤が5重量部以上55重量部以下であり、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)の合計において、前記ポリオール(A)の割合が1重量%以上30重量%以下であり、かつ前記シリカ(C)の割合が40重量%以上65重量%以下である熱硬化性組成物、に関する。
【0010】
本発明は、前記熱硬化性組成物から形成される硬化膜、に関する。
【0011】
本発明は、前記硬化膜を有する物品、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0013】
本発明の熱硬化性組成物は、ポリオール(A)と、ブロック化ポリイソシアネート(B)と、シリカ(C)を含有し、前記シリカ(C)は、コロイダルシリカと、反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカであり、前記反応性官能基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である。前記修飾コロイダルシリカは、イソシアネート基に反応性を有する反応性官能基を有するので、少なくとも、ブロック化ポリイソシアネート(B)と反応して化学結合を形成することができるため、硬化膜中に固定化できることが推定される。よって、当該硬化膜の表面が擦られたり、摩耗された場合においても、修飾コロイダルシリカが硬化膜から脱離し難いことが推定されるため、本発明の熱硬化性組成物から形成される硬化膜は、耐擦傷性および耐摩耗性に優れる。また、本発明の熱硬化性組成物は、前記コロイダルシリカ100重量部に対して、前記シランカップリング剤が5重量部以上55重量部以下であり、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)の合計において、前記ポリオール(A)の割合が1重量%以上30重量%以下であり、かつ前記シリカ(C)の割合が40重量%以上65重量%以下であるため、耐擦傷性および耐摩耗性に優れ、かつ塗膜外観および密着性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱硬化性組成物は、ポリオール(A)と、ブロック化ポリイソシアネート(B)と、シリカ(C)を含有し、前記シリカ(C)は、コロイダルシリカと、反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカであり、前記反応性官能基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である。
【0015】
<ポリオール(A)>
本発明のポリオール(A)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、少なくとも、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と反応して硬化膜を形成するものであれば、とくに限定されない。前記ポリオール(A)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
前記ポリオールとしては、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキシサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)などの低分子ポリオール;エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルキレンポリオールと、マレイン酸やフタル酸などのカルボン酸、または、カプロラクトンとを反応させることにより得られるポリエステルポリオール;エチレンカーボネートやトリメチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートと、エチレングリコールや1,3-プロパンジオールなどのアルキレンポリオールとを反応させることにより得られるポリカーボネートポリオール;グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドとを反応させることにより得られるポリエーテルポリオール;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル系モノマーを含有する共重合体などが挙げられる。
【0017】
また、前記ポリオール(A)は、硬化膜の耐擦傷性および耐摩耗性を向上させる観点から、分子量が50~5,000であることが好ましく、100~2,000であることがより好ましい。とくに、前記ポリオール(A)として、前記ポリエステルポリオール、前記ポリカーボネートポリオール、前記ポリエーテルポリオールを使用する場合、分子量(数平均分子量)が200~3,000であることが好ましく、300~2,000であることがより好ましい。
【0018】
<ブロック化ポリイソシアネート(B)>
本発明のブロック化ポリイソシアネート(B)は、イソシアネート基を1分子中に2つ以上有する化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものであり、少なくとも、前記ポリオール(A)と反応して硬化膜を形成するものであれば、とくに限定されない。前記ブロック化ポリイソシアネート(B)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
前記ブロック化ポリイソシアネート(B)において、前記イソシアネート基を1分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート基含有化合物;およびこれらジイソシアネート基含有化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体、アロファネート体などの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、耐侯性を向上させる観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびこれらの誘導体が好ましい。
【0020】
また、前記ブロック化剤としては、例えば、ジエチルマロネート、3,5-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタム、フェノール、メチルエチルケトオキシム、アルコールなどの化合物が挙げられる。これらの中でも、低温硬化性が良好である観点から、ジエチルマロネート、3,5-ジメチルピラゾール、メチルエチルケトオキシムが好ましい。
【0021】
<シリカ(C)>
本発明のシリカ(C)は、コロイダルシリカと、反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカであり、前記反応性官能基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基である。前記シリカ(C)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
前記コロイダルシリカは、分散媒に分散したシリカの微粒子であり、公知のものを制限なく使用できる。前記コロイダルシリカは、硬化膜の光線透過率を高める観点から、その粒子径が、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。なお、前記粒子径は、通常、平均一次粒子径であり、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)で示される。前記コロイダルシリカは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
前記分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールなどの多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶剤;ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;酢酸エチルなどのエステル系溶剤;トルエンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0024】
前記コロイダルシリカは、市販品として、例えば、メタノール分散コロイダルシリカ(商品名:メタノールシリカゾル)、i-プロパノール分散コロイダルシリカ(商品名:IPA-ST)、エチレングリコール分散コロイダルシリカ(商品名:EG-ST)、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル分散コロイダルシリカ(商品名:NPC-ST-30)、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散コロイダルシリカ(商品名:PGM-ST)、ジメチルアセトアミド分散コロイダルシリカ(商品名:DMAC-ST)、メチルエチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:MEK-ST-40)、メチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:MIBK-ST)、酢酸エチル分散コロイダルシリカ(商品名:EAC-ST)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散コロイダルシリカ(商品名:PMA-ST)、トルエン分散コロイダルシリカ(商品名:TOL-ST)(以上、日産化学社製)などが挙げられる。
【0025】
前記反応性官能基を有するシランカップリング剤は、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する。前記反応性官能基を有するシランカップリング剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
前記反応性官能基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ヒドロキシエチル-N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどの水酸基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N-(6-アミノヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、メルカプトメチルジエトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。また、前記反応性官能基を有するシランカップリング剤は、アルコキシシリル基の一部を加水分解および縮重合させたシランオリゴマーを用いても良い。これらの中でも、イソシアネート基との反応性が良好である観点から、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0027】
前記コロイダルシリカと、前記反応性官能基を有するシランカップリング剤との反応生成物である修飾コロイダルシリカは、公知の方法に従い、通常、水の存在下、前記コロイダルシリカと、前記反応性官能基を有するシランカップリング剤を混合して、製造することができる。反応条件は、通常、40~150℃で1~24時間である。
【0028】
前記修飾コロイダルシリカは、水酸基、アミノ基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有するので、官能基当量(mmоl/g)を有する。当該官能基当量は、硬化膜の架橋密度を向上させる観点から、0.2mmоl/g以上であることが好ましく、0.5mmоl/g以上であることがより好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、1.7mmоl/g以下であることが好ましく、1.6mmоl/g以下であることがより好ましい。なお、前記官能基当量は、以下の理論官能基当量により算出できる。
【数1】
【0029】
前記修飾コロイダルシリカにおいて、前記コロイダルシリカ100重量部に対して、前記シランカップリング剤が5重量部以上55重量部以下である。前記シランカップリング剤は、硬化膜の耐擦傷性および耐摩耗性を向上させる観点から、前記コロイダルシリカ100重量部に対して、10重量部以上であることが好ましく、20重量部以上であることがより好ましく、そして、硬化膜の密着性を向上させる観点から、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましい。
【0030】
前記ポリオール(A)の割合は、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)の合計において、1重量%以上30重量%以下である。前記ポリオール(A)の割合は、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)の合計において、硬化膜の耐擦傷性および耐摩耗性を向上させる観点から、2重量%以上25重量%以下であることが好ましい。
【0031】
前記シリカ(C)の割合は、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)の合計において、40重量%以上65重量%以下である。前記シリカ(C)の割合は、前記ポリオール(A)と前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)の合計において、硬化膜の耐擦傷性および耐摩耗性を向上させる観点から、45重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
【0032】
前記ポリオール(A)および前記シリカ(C)と、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)との使用割合は、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基と、前記ポリオール(A)の水酸基の当量および前記シリカ(C)の官能基当量の合計の当量比(NCO/(OH+シリカ(C)の反応性官能基))が、硬化膜の架橋密度を高め、耐候性を向上させる観点から、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、そして、硬化膜の密着性を向上させる観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0033】
前記ポリオール(A)と、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)と前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)の合計の割合は、前記熱硬化性組成物の固形分中、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の熱硬化性組成物は、少なくとも、前記ポリオール(A)と、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)とを反応させるために、触媒を配合することが好ましい。前記触媒としては、公知のものを制限なく使用でき、例えば、有機金属化合物、無機化合物、アミンおよびその塩、金属キレート化合物などが挙げられる。前記有機金属化合物としては、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド;ジラウリン酸ジブチルスズ、2-エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2-エチルカプロン酸亜鉛、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫などのカルボン酸金属塩などが挙げられる。前記無機化合物としては、例えば、塩化鉄、塩化亜鉛などが挙げられる。前記アミンおよびその塩としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジブチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロアルケン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBUともいう)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBNともいう)など)、およびその塩(例えば、脂肪酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、無機塩など)が挙げられる。前記金属キレート化合物としては、例えば、アセチルアセトンやエタノールアミンなどのキレート化合物をチタンやジルコニウムなどの金属に配位させた有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性を向上させる観点から、前記カルボン酸金属塩が好ましく、とくに、金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましい。前記触媒は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記触媒の使用量は、前記シリカ(C)がウレタン硬化反応を阻害する要因となり得るため、前記シリカ(C)の含有量に対する基準で配合することが好ましく、例えば、前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましい。また、前記触媒の使用量は、硬化性組成物のポットライフを向上させる観点から、前記シリカ(C)(=前記コロイダルシリカ+前記シランカップリング剤)100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましく、3重量部以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明の熱硬化性組成物は、固形分調整のために、溶媒を含むことができる。前記溶媒としては、例えば、水;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族および芳香族炭化水素系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール(商品名:ソルフィット、クラレ社製)、ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、t-アミルアルコール、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどが挙げられる。前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどが挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。前記アミド系溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。前記脂肪族および芳香族炭化水素系としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、デカン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。前記溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明の熱硬化性組成物は、硬化膜の耐候性、あるいは後述する基材(部材)の耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤を配合することができる。前記紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物などが挙げられる。前記紫外線吸収剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。前記紫外線吸収剤を用いる場合の含有量は、前記熱硬化性組成物の固形分中、通常、0.1~20重量%程度である。
【0038】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、必要に応じ、各種塗料用添加剤を配合することができる。前記塗料用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、スリップ性付与剤、染料、防汚剤、顔料などが挙げられる。
【0039】
<硬化膜>
本発明の熱硬化性組成物は、通常の塗料において行われる塗装方法により基材(部材)に塗装し、加熱硬化することによって、基材の表面に硬化膜を有する物品が得られる。
【0040】
前記基材(部材)としては、その種類は問わず、公知の樹脂基材(部材);ガラスや金属などの無機基材(部材);炭素繊維などが使用可能である。前記樹脂基材(部材)としては、例えば、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックを問わず種々の樹脂基材(部材)が挙げられ、より具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂などが挙げられる。前記基材(部材)の表面は、硬化膜と基材の密着性を向上させる観点から、プライマー処理;コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、UV改質などの活性化処理;ブラスト処理などの粗化処理などが施されていてもよい。
【0041】
本発明の熱硬化性組成物を、基材(部材)に塗装する方法としては、特に限定がなく、スプレーコート、スピンコート、フローコート、ディップコートなどの公知の方法が採用できる。
【0042】
本発明の熱硬化性組成物を加熱硬化する温度は、使用する基材樹脂の耐熱性や熱変形性などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、室温以上200℃以下、50℃以上150℃以下が例示できる。加熱時間は、加熱温度により異なるが、数分から数時間程度である。
【0043】
前記硬化膜の膜厚は、基材(部材)の表面劣化を防止する観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。硬化膜の膜厚は、硬化膜の密着性を高める観点、硬化膜の硬化時のクラックの発生を抑制する観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明の熱硬化性組成物から形成される硬化膜は、耐擦傷性、耐摩耗性、塗膜外観、および密着性に優れるため、いわゆる、ハードコート膜として用いることができる。とくに、本発明の熱硬化性組成物が、前記紫外線吸収剤を含む場合、当該硬化膜は、前記基材(部材)自体に耐候性がなく、屋外で使用すると変色、変質、劣化などを生じ易い樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂など)に対して有用である。
【実施例
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限られることはない。
【0046】
<修飾コロイダルシリカの製造>
<製造例1>
500mLの4つ口ナス型フラスコに冷却管および撹拌機を装着し、メチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(コロイダルシリカ(SiO)成分:30重量%、粒子径:10~20nm、商品名:「MIBK-ST」、日産化学社製)333重量部を仕込んだ。室温下、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:「DOWSIL Z-6062」、東レ・ダウコーニング社製)30.0重量部、イオン交換水7.5重量部を順に加えて、30分間撹拌した。その後、60℃に昇温し、3時間撹拌した。室温まで冷却し、修飾コロイダルシリカ(官能基当量:1.2mmоl/g、固形分35.1重量%)を製造した。
【0047】
<製造例2~8、比較製造例1~3>
各製造例、各比較製造例において、各原料の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、製造例1と同様の方法により、修飾コロイダルシリカを製造した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、MIBK-STは、メチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:「MIBK-ST」、コロイダルシリカ(SiO)成分:30重量%、粒子径:10~20nm、日産化学社製);
Z-6062は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:「DOWSIL Z-6062」、東レ・ダウコーニング社製);
KBM-903は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:「KBM-903」、信越化学社製);
KBM-403は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:「KBM-403」、信越化学社製);を示す。
【0050】
<実施例1>
<熱硬化性組成物の製造>
前記ポリオール(A)として、ポリオール(A-1)(ポリカーボネートジオール、商品名:「ETERNACOLL UP-50」、固形分:100%、数平均分子量:500、水酸基価:224mgKOH/g、宇部興産社製)を9.1重量部、前記ブロック化ポリイソシアネート(B)として、ブロック化ポリイソシアネート(B-1)(3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、商品名:「TRIXENE BI7982」、固形分:70重量%、NCO基含有率:10.2%、LANXESS社製)を44.1重量部、前記シリカ(C)として、上記で得られた製造例1の修飾コロイダルシリカを171.2重量部(官能基当量:0.41mmоl/g、固形分:35.1重量%)、触媒として、酢酸ナトリウムを0.6重量部、紫外線吸収剤として、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物(商品名:「TINUVIN 479」、BASFジャパン株式会社製)を4.0重量部、光安定剤として、ヒンダードアミン系化合物(商品名:「TINUVIN 123」、BASFジャパン株式会社製)を1.0重量部、レベリング剤として、シリコン系表面調整剤(商品名:「SILCLEAN 3700」、固形分:25重量%、BYK社製)、溶媒として、ジアセトンアルコール(三協化学社製)を33.7重量部配合し、実施例1の熱硬化性組成物を製造した。
【0051】
<硬化膜の作製>
上記で得られた熱硬化性組成物を、ポリカーボネート板(製品名:「パンライト」、帝人化成社製)上に、硬化後の膜厚が5~10μmになるように、スプレーコートで塗布し、120℃に設定した乾燥機にて60分間加熱硬化して、ポリカーボネート板上に硬化膜を作製した(試験片と称す)。作製した試験片を室温下で冷却し、下記の試験方法にて評価した。結果を表2に示す。
【0052】
<塗膜外観の評価>
塗膜外観は、目視により観察し、下記の基準で評価した。
○:異状無し
×:塗膜外観に白化、あるいはクラックあり
【0053】
<密着性の評価>
密着性の評価は、JIS K 5400 8.5.2に準じ、碁盤目テープ法にて試験片の塗膜を貫通して素地面に達する切り傷を間隔1mmで碁盤目状につけて、マス目の数100とし、この碁盤目の上に粘着テープ(ニチバン社製)を貼り、次いでこのテープを剥がした後の塗膜の密着状態を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎:全く剥離が認められない。
○:一部に剥離が認められる。
×:全て剥離している。
【0054】
<耐擦傷性の評価>
耐擦傷性の評価は、スチールウール(#000)をラビングテスターにセットし、試験片の塗膜面上に500g荷重で10往復させた後、ヘイズメーター(製品名:NDH5000、日本電色工業社製)によりヘイズ(%)を測定し、下記の基準で評価した。
○:試験後のヘイズが1.0%未満
×:試験後のヘイズが1.0%以上
【0055】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の評価は、テーバー摩耗試験機に摩耗輪としてCS-10Fをセットし、500g荷重×100回転の条件で摩耗試験を行い、ヘイズメーター(製品名:NDH5000、日本電色工業社製)によりヘイズ(%)を測定し、下記の基準で評価した。
○:試験後のヘイズが5.0%未満
×:試験後のヘイズが5.0%以上
【0056】
<耐候性の評価>
耐候性の評価は、促進耐候性試験機(製品名:メタリングウェザーメーターM6T、スガ試験機社製)を用い、照射強度1kW/m、ブラックパネル温度63±3℃、湿度50%RH、60分中に降雨12分を含む条件での試験を100時間実施し、ヘイズメーター(製品名:NDH5000、日本電色工業社製)によりヘイズ(%)を測定し、耐侯性の評価基準とした。
【0057】
<実施例2~21、比較例1~6>
<熱硬化性組成物の製造、および硬化膜の作製>
各実施例、各比較例において、各原料の種類とその配合量を表2~4に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、熱硬化性組成物を製造し、さらにポリカーボネート板上に硬化膜を作製した(試験片と称す)。
【0058】
上記で得られた試験片を用い、上記の評価方法により、塗膜外観、密着性、耐擦傷性、耐摩耗性、および耐候性を評価した。結果を表2~4に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表2~4中、
A-1は、ポリカーボネートジオール(商品名:「ETERNACOLL UP-50」、固形分:100%、数平均分子量:500、水酸基価:224mgKOH/g、宇部興産社製);
A-2は、:ポリカーボネートジオール(商品名:「ETERNACOLL PH-100」、固形分:100%、数平均分子量:1,000、水酸基価:110mgKOH/g、宇部興産社製);
A-3は、ポリエステルテトラオール(商品名:「プラクセル 410」、固形分:100%、数平均分子量:1,000、水酸基価:220mgKOH/g、ダイセル社製);
A-4は、ポリカーボネートジオール(商品名:「ETERNACOLL PH-200」固形分:100%、数平均分子量:2,000、水酸基価:55mgKOH/g、宇部興産社製);
A-5は、トリメチロールプロパン(固形分:100%、分子量:134、水酸基価:1254mgKOH/g);
B-1は、3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:「TRIXENE BI 7982」、固形分:70重量%、NCO基含有率:10.2%、LANXESS社製);
B-2は、3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(商品名:「TRIXENE BI 7960」、固形分:70重量%、NCO基含有率:10.2%、LANXESS社製);
MIBK-STは、メチルイソブチルケトン分散コロイダルシリカ(商品名:「MIBK-ST」、コロイダルシリカ(SiO)成分:30重量%、粒子径:10~20nm、日産化学社製);
TINUVIN 479は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物(商品名:「TINUVIN 479」、BASFジャパン株式会社製);
TINUVIN 123は、ヒンダードアミン系化合物(商品名:「TINUVIN 123」、BASFジャパン株式会社製);
SILCLEAN 3700は、シリコン系表面調整剤(商品名:「SILCLEAN 3700」、固形分:25重量%、BYK社製);を示す。
【0063】
実施例1~21で得られた硬化膜は、耐擦傷性および耐摩耗性に優れ、かつ良好な塗膜外観および密着性を有していることが分かった。また、実施例1~21で得られた硬化膜は、耐候性の試験後のヘイズの値が小さいことから、耐候性に優れることが分かった。
【0064】
比較例1~2で得られた硬化膜は、シランカップリング剤が、コロイダルシリカ100重量部に対して5重量部未満であるため、塗膜中に固定化されていないコロイダルシリカが多いことから、実施例と比較して、耐擦傷性および耐摩耗性が劣ることが分かった。
【0065】
比較例3で得られた硬化膜は、シランカップリング剤が、コロイダルシリカ100重量部に対して55重量部より多いため、過剰のアルコキシシリル基により硬化収縮が大きくなることから、実施例と比較して、密着性が劣ることが分かった。
【0066】
比較例4で得られた硬化膜は、イソシアネート基と反応しないエポキシ基含有シランカップリング剤を用いているため、コロイダルシリカを塗膜に固定化できていないことから、実施例と比較して、耐擦傷性および耐摩耗性が劣ることが分かった。
【0067】
比較例5で得られた硬化膜は、シリカ(C)の割合が40重量%未満であるため、塗膜硬度を向上させるシリカの量が少ないことから、実施例と比較して、耐擦傷性、耐摩耗性が劣ることが分かった。
【0068】
比較例6で得られた硬化膜は、シリカ(C)の割合が65重量%より多いため、塗膜に柔軟性を付与する有機成分が少ないことから、実施例と比較して、塗膜外観が劣ることが分かった。