(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20230209BHJP
A01D 41/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A01D67/00 G
A01D41/02 D
(21)【出願番号】P 2021158881
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】西崎 宏
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-104387(JP,A)
【文献】特開2006-230353(JP,A)
【文献】特開2005-295902(JP,A)
【文献】特開平11-065692(JP,A)
【文献】実開昭59-031525(JP,U)
【文献】実開平01-018928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01D 47/00
A01D 67/00 - 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に穀稈を脱穀する脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記操縦部(5)の操縦席(10)の前側にフロントパネル(11)を設け、該操縦席(10)の左側にサイドパネル(20)を設け、
該サイドパネル(20)を、前後方向に延在する第1パネル部(21)と、該第1パネル部(21)の左端部から左側上方に傾斜して延在する第2パネル部(22)と、前記第1パネル部(21)の左端部から下方に延在する垂下部(21A)で形成し、
前記第1パネル部(21)の前側に、前記エンジン(E)の出力回転を増減速する
油圧式無段変速機(16)を操作する変速レバー(24)を設け、該変速レバー(24)の後方に、前記刈取装置(3)と脱穀装置(4)の駆動と駆動停止を操作するモードセレクトレバー(25)を設け、
前記操縦席(10)の下側に、前記操縦席(10)を支持する操縦席支持部材(10A)を設け、
前記垂下部(21A)の後部を、操縦席支持部材(10A)における左側後部に設けられた左右方向に延在する支軸(31)に回転自在に固定し、
前記サイドパネル(20)の長手方向が前後方向に沿って延在する操作姿勢と、前記サイドパネル(20)の長手方向が上下方向に沿って延在する開放姿勢に移動可能な構成としたコンバイン。
【請求項2】
前記操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、該昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、該固定部材(41)上を前後方向に摺動可能
な移動部材(40)で形成し、
前記操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、
前記昇降部材(42)の下部に、前記昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、
前記支軸(31)を固定部材(41)の左側後部に設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、該昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、該固定部材(41)上を前後方向に摺動可能ない移動部材(40)で形成し、
前記操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、
前記昇降部材(42)の下部に、前記昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、
前記支軸(31)を移動部材(40)の左側後部に設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、前記エンジン(E)の駆動を停止する構成とした請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、前記油圧式無段変速機(16)の駆動を停止する構成とした請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記操縦部(5)の左壁に電装品(52)を設け、
前記サイドパネル(20)を操作姿勢に移動させた場合には、前記第2パネル部(22)が電装品(52)の上方を覆う構成とした請求項1~5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦席の前側に刈取装置を昇降させる操作レバーを備えたフロントパネルを設け、左側に走行装置の走行速度の増減速を行う変速レバーを備えるサイドパネルを設けたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操縦席の左側に設けられたサイドパネルを、前後方向と左右方向に水平に延在するサイドパネル部と、サイドパネル部の左端部から左上がり傾斜に形成された制御パネル部で形成し、サイドパネル部に走行装置の走行速度の増減速を行う変速レバーや脱穀クラッチ等を操作する刈脱レバーを設け、制御パネル部に、作業灯を点灯させる作業灯スイッチや刈取装置の扱ぎ深さを調整する扱ぎ深さダイヤルを設ける手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手段では、操縦席の左側にサイドパネルが設けられているので、操縦部から刈取装置の後部にある搬送装置に詰まった穀稈の状態を容易に目視で確認することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、サイドパネルの後部を回転自在に支持して、サイドパネルを前後方向に延在する操作姿勢と、上下方向に延在する開放姿勢に移動させて搬送装置に詰まった穀稈の状態を容易に目視で確認することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に穀稈を脱穀する脱穀装置(4)を設け、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記操縦部(5)の操縦席(10)の前側にフロントパネル(11)を設け、該操縦席(10)の左側にサイドパネル(20)を設け、該サイドパネル(20)を、前後方向に延在する第1パネル部(21)と、該第1パネル部(21)の左端部から左側上方に傾斜して延在する第2パネル部(22)と、前記第1パネル部(21)の左端部から下方に延在する垂下部(21A)で形成し、前記第1パネル部(21)の前側に、前記エンジン(E)の出力回転を増減速する油圧式無段変速機(16)を操作する変速レバー(24)を設け、該変速レバー(24)の後方に、前記刈取装置(3)と脱穀装置(4)の駆動と駆動停止を操作するモードセレクトレバー(25)を設け、前記操縦席(10)の下側に、前記操縦席(10)を支持する操縦席支持部材(10A)を設け、前記垂下部(21A)の後部を、操縦席支持部材(10A)における左側後部に設けられた左右方向に延在する支軸(31)に回転自在に固定し、前記サイドパネル(20)の長手方向が前後方向に沿って延在する操作姿勢と、前記サイドパネル(20)の長手方向が上下方向に沿って延在する開放姿勢に移動可能な構成としたコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、該昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、該固定部材(41)上を前後方向に摺動可能ない移動部材(40)で形成し、前記操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、前記昇降部材(42)の下部に、前記昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、前記支軸(31)を固定部材(41)の左側後部に設けた請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、該昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、該固定部材(41)上を前後方向に摺動可能な移動部材(40)で形成し、前記操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、前記昇降部材(42)の下部に、前記昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、前記支軸(31)を移動部材(40)の左側後部に設けた請求項1記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、前記エンジン(E)の駆動を停止する構成とした請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、前記油圧式無段変速機(16)の駆動を停止する構成とした請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記操縦部(5)の左壁に電装品(52)を設け、前記サイドパネル(20)を操作姿勢に移動させた場合には、前記第2パネル部(22)が電装品(52)の上方を覆う構成とした請求項1~5のいずれか1項に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、操縦部(5)の操縦席(10)の前側にフロントパネル(11)を設け、操縦席(10)の左側にサイドパネル(20)を設け、サイドパネル(20)を、前後方向に延在する第1パネル部(21)と、第1パネル部(21)の左端部から左側上方に傾斜して延在する第2パネル部(22)と、第1パネル部(21)の左端部から下方に延在する垂下部(21A)で形成し、第1パネル部(21)の前側に、エンジン(E)の出力回転を増減速する油圧式無段変速機(16)を操作する変速レバー(24)を設け、変速レバー(24)の後方に、刈取装置(3)と脱穀装置(4)の駆動と駆動停止を操作するモードセレクトレバー(25)を設け、操縦席(10)の下側に、操縦席(10)を支持する操縦席支持部材(10A)を設け、垂下部(21A)の後部を、操縦席支持部材(10A)における左側後部に設けられた左右方向に延在する支軸(31)に回転自在に固定し、サイドパネル(20)の長手方向が前後方向に沿って延在する操作姿勢と、サイドパネル(20)の長手方向が上下方向に沿って延在する開放姿勢に移動可能な構成としたので、操縦者は、サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させて、操縦席(10)の左側に大きな空間を形成して、キャビンのハッチから身を乗り出して刈取装置(3)の穀稈の詰まり状態を容易に確認することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、固定部材(41)上を前後方向に摺動可能ない移動部材(40)で形成し、操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、昇降部材(42)の下部に、昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、支軸(31)を固定部材(41)の左側後部に設けたので、サイドパネル(20)は操縦席(10)と上下方向にのみ連動して移動して、操縦者は自分の体形に合った位置に操縦席(10)を容易に移動することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、操縦席支持部材(10A)を、昇降部材(42)と、昇降部材(42)の上面に前後方向に延在して設けられた左右一対の固定部材(41)と、固定部材(41)上を前後方向に摺動可能な移動部材(40)で形成し、操縦席(10)を移動部材(40)に固定し、昇降部材(42)の下部に、昇降部材(42)を上下方向に昇降させる昇降装置(43)を設け、支軸(31)を移動部材(40)の左側後部に設けたので、サイドパネル(20)は操縦席(10)と上下方向と上下方向に連動して移動して、一度、操縦者は自分の体形に合った位置に操縦席(10)を移動させると、その後、操縦席(10)を移動させる必要をなくすことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、エンジン(E)の駆動を停止する構成としたので、操縦者が誤って変速レバー(24)に接触した場合に、走行装置(2)の急発進等を防止して安全性を高めることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1~4のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させた場合には、油圧式無段変速機(16)の駆動を停止する構成としたので、操縦者が誤って変速レバー(24)に接触した場合に、走行装置(2)の急発進等を防止してより安全性を高めることができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、操縦部(5)の左壁に電装品(52)を設け、サイドパネル(20)を操作姿勢に移動させた場合には、第2パネル部(22)が電装品(52)の上方を覆う構成としたので、電装品(52)の上部に粉塵等の堆積を抑制することができる。また、操縦者は、サイドパネル(20)を開放姿勢に移動させて、電装品(52)の保守・交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図8】カバーを取除いたサイドパネルの右側面図である。
【
図12】操縦席と、サイドパネルと、昇降プレートの後方斜視図である。
【
図13】サイドパネルと昇降プレートの後方斜視図である。
【
図14】サイドパネルと昇降プレートの右側面図である。
【
図15】操縦部の前方斜視図であり、サイドパネルは操縦姿勢にある。
【
図16】操縦部の右側面図であり、サイドパネルは操縦姿勢にある。
【
図17】操縦部の前方斜視図であり、サイドパネルが開放姿勢にある。
【
図18】操縦部の右側面図であり、サイドパネルが開放姿勢にある。
【
図19】操縦姿勢にあるサイドパネルと昇降プレートの左側面図である。
【
図20】操縦席と操縦姿勢にあるサイドパネルと昇降プレートの背面図である。
【
図21】開放姿勢にあるサイドパネルと昇降プレートの左側面図である。
【
図22】操縦席と操縦姿勢にあるサイドパネルと昇降プレートの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0020】
操縦部5の下側にはエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。
【0021】
図3~5に示すように、操縦部5の操縦席10の前側には、フロントパネル11が設けられている。フロントパネル11の上側には、操縦者が操縦姿勢を維持するために把持する左右方向に延在するロッド12が設けられ、フロントパネル11の右部には、刈取装置3を昇降等させる操作レバー13が設けられている。
【0022】
操縦部5の操縦席10の左側には、サイドパネル20が設けられている。サイドパネル20は、前後方向に延在するサイドパネル部(請求項の「第1パネル部」)21と、サイドパネル部21の左側に設けられた制御パネル部(請求項の「第2パネル部」)22から形成され、サイドパネル部21の下部は、カバー23で覆われている。また、サイドパネル部21の前側には、エンジンEの出力回転の回転速度等を表示するモニタ15が設けられている。なお、本実施形態においては、サイドパネル部21と制御パネル部22は一体に形成されているが分割して形成することもできる。
【0023】
サイドパネル部21の前部には、エンジンEの出力回転の増減速や回転方向の切替えを行う油圧式無段変速機16を操作する変速レバー24が設けられ、変速レバー24の後側には、油圧式無段変速機16の出力回転の増減速を行うトランスミッション17やエンジンEの出力回転の伝動経路に設けられた刈取クラッチ18と脱穀クラッチ19を操作するモードセレクトレバー25が設けられている。
【0024】
変速レバー24を中立姿勢にした場合には、油圧式無段変速機16の出力回転はゼロになる。変速レバー24を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、油圧式無段変速機16の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると油圧式無段変速機16の出力回転は高速になり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると油圧式無段変速機16の出力回転は低速になる。変速レバー24を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、油圧式無段変速機16の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると油圧式無段変速機16の出力回転は高速になり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると油圧式無段変速機16の出力回転は低速になる。
【0025】
モードセレクトレバー25を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ18と脱穀クラッチ19の接続が解除されて刈取装置3と脱穀装置4の駆動は停止する。モードセレクトレバー25を中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ18が接続されて刈取装置3は駆動し、脱穀クラッチ19の接続は引続き解除されて脱穀装置4の駆動は引続き停止する。モードセレクトレバー25を後側傾斜姿勢にした場合には、脱穀クラッチ19が接続されて脱穀装置4は駆動し、刈取クラッチ18の接続は引続き接続され刈取装置3は引続き駆動する。
【0026】
また、モードセレクトレバー25を中立姿勢にした場合には、トランスミッション17に伝動された油圧式無段変速機16の出力回転は増減速されず走行装置2に伝動され、前側傾斜姿勢にした場合には、減速されて走行装置2に伝動され、後側傾斜姿勢にした場合には、増速されて走行装置2に伝動される。
【0027】
制御パネル部22の左側下方には、キャビン60の左壁61の右面に設けられた電装品52を保護する保護カバー50が設けられている。これにより、複数の電装品52を一か所に集めて設けることができるので、配策作業が容易に行え、電装品52の交換も容易に行うことができる。
【0028】
図6に示すように、制御パネル部22における変速レバー24に対向するスイッチ領域26には、刈取装置3の刈取高さの切替えを行うスイッチ26Aが設けられ、制御パネル部22におけるモードセレクトレバー25に対向するダイヤル領域27には、キャビン60内の温度を昇降させるダイヤル27Aが設けられている。これにより、操縦者は、前屈み姿勢になることなく変速レバー24やモードセレクトレバー25から手を離してスイッチ26Aやダイヤル27Aを容易に操作することができるので、操縦安全性と操作性を高めることができる。
【0029】
図7に示すように、モードセレクトレバー25におけるサイドパネル部21から上方に延出する部位の長さは、変速レバー24におけるサイドパネル部21から上方に延出する部位の長さよりも短く形成されている。これにより、モードセレクトレバー25によって操縦者の視界が遮られるのを抑制することができる。
【0030】
スイッチ領域26の前後方向の長さは、ダイヤル領域27の前後方向の長さよりも長く形成され、スイッチ領域26の上下方向の長さは、ダイヤル領域27の上下方向の長さよりも長く形成されている。これにより、スイッチ領域26に大きな操作部を有するスイッチ26Aを設けることができ、操作性をより高めることができる。また、スイッチ領域26で保護カバー50の上側を覆うことができるので保護カバー50に埃等が堆積するのを防止することができる。
【0031】
図8に示すように、サイドパネル部21の左端部から下方に延在する垂下部21Aの前部には、変速レバー24の基部が揺動自在に固定され、変速レバー24の揺動角度はポテンションメータ等の角度センサ24Aで計測されている。また、垂下部21Aの後部には、モードセレクトレバー25の基部が揺動自在に固定され、モードセレクトレバー25の揺動角度はポテンションメータ等の角度センサ25Aでされている。
【0032】
側面視において、ダイヤル領域27に設けられた複数のダイヤル27Aは、後下がり傾斜の仮想線L上に所定の間隔を隔てて設けられ、ダイヤル領域27の前部に設けられたダイヤル27Aは、前側傾斜姿勢時のモードセレクトレバー25の把持部に重なる位置に設けられている。これにより、操縦者は、前屈み姿勢になることなくモードセレクトレバー25から手を離してダイヤル27Aをより容易に操作することができる。なお、本実施形態においては、ダイヤル領域27の中間部に設けられたダイヤル27Aを中立姿勢時のモードセレクトレバー25の把持部に重なる位置に設け、ダイヤル領域27の後部に設けられたダイヤル27Aを後側傾斜姿勢時のモードセレクトレバー25の把持部に重なる位置に設けている。
【0033】
サイドパネル部21における前側部、すなわち、変速レバー24を挿通する溝が形成された部位は、略水平に形成されている。また、サイドパネル部21における後側部は、すなわち、モードセレクトレバー25を挿通する溝が形成された部位は、緩やかに後下がり傾斜に形成されている。これにより、中立姿勢や後側傾斜姿勢のモードセレクトレバー25の把持部をサイドパネル部21における後側部の上面から所定の長さ上方に位置させることができる。
【0034】
図9に示すように、サイドパネル部21の垂下部21Aの上部は、前後方向に延在する角パイプからなる前後フレーム30に固定されている。また、前後フレーム30の後部は、支軸31に回転自在に固定された揺動プレート32の右面の上部に固定されている。これにより、支軸31を中心としてサイドパネル20を揺動させて、サイドパネル20の長手方向が前後方向に沿う操作姿勢と、サイドパネル20の長手方向が上下方向に沿う開放姿勢に移動させることができる。
【0035】
揺動プレート32は、支軸31に回転自在に固定されている前後と上下方向に延在するプレート部32Aと、プレート部32Aの左面の前後方向の中間部に立設されたリブ部32Bから形成されており、前後フレーム30の後部は、リブ部32Bの左端部に固定されている。これにより、揺動プレート32の変形を抑制して、サイドパネル20をスムーズに揺動させることができる。
【0036】
前後フレーム30の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて下方に延在する連結部材33が設けられ、連結部材33の下部には、前後方向に延在する丸パプからなる前後パイプ34が設けられている。また、前後パイプ34の後部は、右側に湾曲した後に、揺動プレート32の右面の前側下部に固定されている。なお、本実施形態においては、連結部材33は前後方向で水平に設けられているが後下がり傾斜に設けることもできる。
【0037】
モニタ15の下面は、左右方向に延在するピン35を介して湾曲自在な支持パイプ36の前部に固定されている。また、支持パイプ36の後部は前後パイプ34の前部に固定されている。これにより、支軸31を中心としてモニタ15をサイドパネル20と連動させて、モニタ15がサイドパネル20の前側に位置する操作姿勢と、モニタ15がサイドパネル20の上側に位置する開放姿勢に移動させることができる。
【0038】
図10,11に示すように、サイドパネル部21の垂下部21Aは、上部が下部よりも右側に位置する右側傾斜姿勢に設けられている。これにより、サイドパネル部21は、緩やかに右下がり傾斜に形成され、変速レバー24とモードセレクトレバー25は、上部が下部よりも右側に位置する右側傾斜姿勢に設けることができるので、操縦者は、前屈み姿勢になることなく変速レバー24とモードセレクトレバー25を容易に操作することができる。
【0039】
サイドパネル部21と制御パネル部22の交差角度は略115度に形成されている。これにより、操縦者は、制御パネル部22のスイッチ領域26に設けられたスイッチ26Aやダイヤル領域27に設けられたダイヤル27Aを容易に視認することができスイッチ26A等の誤操作を抑制することができる。
【0040】
制御パネル部22の上端部は、中立姿勢時の変速レバー24の上端部と略同一高さに形成されている。また、モニタ15の上端部は、中立姿勢時の変速レバー24の上端部と略同一高さに形成され、モニタ15の下部には、モニタ15の表示画面の切替えを行うスイッチが設けられている。これにより、操縦者は、前屈み姿勢になることなく制御パネル部22のスイッチ領域26に設けられたスイッチ26A等をより容易に操作することができる。
【0041】
図12,13に示すように、操縦席10は、前後方向に移動可動な移動フレーム(請求項の「移動部材」)40の前後方向に延在する左右一対の支持部材40Aの前部を連結する左右方向に延在する支持部材40Bと、左右一対の支持部材40Aの後部に立設された支持部材40Cに支持されている。
【0042】
移動フレーム40は、移動フレーム40の下側に前後方向に延在するアングル材からなる左右一対の固定フレーム(請求項の「固定部材」)41の上面に摺動可能に装着されている。
【0043】
左右一対の固定フレーム41は、矩形状の昇降プレート42に固定され、昇降プレート(請求項の「昇降部材」)42は上下方向に昇降するロッドを有する昇降装置43に支持されている。また、昇降プレート42における移動フレーム40の右側前部には操縦席10の位置の維持と維持を解除するレバー44が設けられている。これにより、操縦者は、操縦席10を前後方向と上下方向に移動させて自分の体形に合った位置に操縦席10を移動させることができる。
【0044】
上下方向に昇降する昇降プレート42に設けられた左右一対の固定フレーム41の後部には、左右方向に延在する連結部材45が設けられている。連結部材45は、左右一対の固定フレーム41を左右方向に延在する左右延在部45Aと、左側の固定フレーム41から左側に延在した後に上方に向かって略90度湾曲して方に延在して上下延在部45Bから形成されている。
【0045】
上下延在部45Bの上部には、左右方向に延在する支軸31が設けられている。支軸31の左部には、支軸31に外嵌めされた揺動プレート32の脱落を防止するカラー46と、カラー46を支軸31に固定するナット等の締結部材47が設けられている。また、支軸31の右部には、サイドパネル20の揺動角度を規制する規制プレート48が設けられている。これにより、操縦席10とサイドパネル20が上下方向に連動して移動して、操縦席10を前後方向に移動させてもサイドパネル20は連動して移動しないので、操縦者は、自分の体形に合った位置に操縦席10を容易に移動させることができる。
【0046】
本実施形態においては、移動フレーム40と、固定フレーム41、昇降プレート42を総称して操縦席支持部材10Aという。また、本実施形態においては、支軸31が設けられている連結部材45を左右一対の固定フレーム41の後部に設けているが、移動フレーム40の左右一対の支持部材40Aに設けることができる。これにより、操縦席10とサイドパネル20を上下方向と前後方向に連動させて移動することができる。
【0047】
図14に示すように、規制プレート48における支軸31を中心として所定の半径を隔てた部位には所定の長さを有する周方向の溝48Aが形成され、溝48Aには、サイドパネル20のコップホルダ28の下部に設けられた左右方向に延在するピン29の右部が挿入されている。これにより、サイドパネル20を過度に揺動させて開放姿勢にするのを防止することができる。なお、サイドパネル20姿勢は、規制プレート48の左面に設けられたセンサ49で測定され、サイドパネル20が操作姿勢に移動させられてセンサ49とピン29の間隔が所定の間隔以下になるとセンサ49からコントローラ52DにON信号が入力され、サイドパネル20が開放姿勢に移動させられてセンサ49とピン29の間隔が所定の間隔を超えるとセンサ49からコントローラ52DにOFF信号が入力される。
【0048】
図15,16に示すように、サイドパネル20を前後方向に延在する操作姿勢に位置させた場合には、キャビン60の左壁61の右面に設けられた電装品52は、サイドパネル20によって覆われる。これにより、操縦者が電装品52に誤って接触するのを防止することができ、電装品52に接続されたハーネスの断線等を防止することができる。
【0049】
図17,18に示すように、サイドパネル20を上下方向に延在する開放姿勢に位置させた場合には、操縦者の左側に大きな空間が形成される。これにより、操縦者はキャビン60の左側のハッチ62から身を乗り出して刈取装置3の穀稈の詰まり状態を容易に確認することができる。また、キャビン60の左壁61の右面に設けられた電装品52は露出される。これにより、操縦者は保護カバー50を取外して電装品52の保守・交換作業を容易に行うことができる。
【0050】
電装品52は、キャビン60の左壁61に装着された配電プレート51に設けられている。配電プレート51の上部には、前側から順に、ヒューズ52Aと、小型リレー52Bと、大型リレー52Cが設けられ、ヒューズ52Aと小型リレー52Bの下側には、コントローラ52Dが設けられている。また、上下方向において、ヒューズ52A等とコントローラ52Dの間には、前後方向に延在する小型リレー52B等に電気を供給する電源ライン53が配策されている。これにより、電源ライン53等の配策作業が容易に行え、作動不良に陥ったヒューズ52A等の交換作業を容易に行うことができる。
【0051】
図19,20に示すように、支軸31の中心部には中空部31Aが形成され、中空部31Aには、スイッチ26Aやモニタ15とコントローラ52Dを接続するハーネス37が挿通されている。これにより、サイドパネル20を操作姿勢から開放姿勢等にスムーズに移動することができ、また、ハーネス37の断線も抑制することができる。
【0052】
連結部材45の上下延在部45Bは、左側の固定フレーム41から左側に延在した後に上側に所定の長さ延在して形成されている。これにより、サイドパネル20を前後方向に延在する操作姿勢に位置させた場合には、サイドパネル部21の上面が、操縦者の肘に対向する位置に設けられ、操縦者が変速レバー24やモードセレクトレバー25を容易に操作することができる。
【0053】
また、サイドパネル20を前後方向に延在する操作姿勢に位置させた場合には、背面視において、サイドパネル部21の右部とサイドパネル20の前側に設けられたモニタ15の右部は、操縦席10の左部に重なるように設けられている。これにより、操縦部5の左右方向の長さを抑制することができる。
【0054】
図21,22に示すように、連結部材45の上下延在部45Bは、左側の固定フレーム41から左側に所定の長さ延在して形成されている。これにより、サイドパネル20を上下方向に延在する開放姿勢に位置させた場合には、サイドパネル部21の右部と操縦席10の左部が接触することなく、サイドパネル部21を操作姿勢から開放姿勢に移動させつことができる。
【0055】
また、サイドパネル20を上下方向に延在する開放姿勢に位置させた場合には、サイドパネル20に設けられた変速レバー24が操縦席10の背もたれの上部に位置し、サイドパネル20の前側に設けられたモニタ15は操縦席10の背もたれよりも上方に位置する。
【0056】
<エンジンの出力回転の伝動>
図23に示すように、エンジンEの出力回転は、第1経路A上に設けられた油圧式無段変速機16に伝動される。油圧式無段変速機16の入力軸に伝動されたエンジンEの出力回転は、油圧式無段変速機16内で増減速等が行われて第1出力軸と第2出力軸から出力される。
【0057】
油圧式無段変速機16の第1出力軸の出力回転は、トランスミッション17に伝動される。トランスミッション17の入力軸に伝動された第1出力軸の出力回転は、トランスミッション1721内のギヤ伝動機構で増減速されて出力軸から出力される。
【0058】
トランスミッション17の出力軸の出力回転は、走行装置2に伝動されて走行装置2のクローラを回動する。
【0059】
油圧式無段変速機16の第2出力軸の出力回転は、刈取クラッチ18を介して刈取装置3に伝動されて刈取装置3の引起装置、切断装置等を駆動する。
【0060】
これにより、変速レバー24を操作して走行装置2の走行速度と刈取装置3の刈取速度を同時に増減速できるので、圃場の穀稈の倒伏状態に応じて変速レバー24を操作して走行装置2の走行速度と刈取装置3の刈取速度を増減速させて穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0061】
また、エンジンEの出力回転は、第2経路B上に設けられた脱穀クラッチ19を介して脱穀装置4に伝動される。
【0062】
サイドパネル20を操作姿勢から開放姿勢に移動した場合には、センサ49の出力信号がOFFとなってエンジンEの始動が規制されて駆動できなくなる。また、エンジンEの駆動中に、センサ49の出力信号がOFFとなった場合には、エンジンEの駆動が停止される。これにより、サイドパネル20を開放姿勢にして電装品52の保守・交換作業時に走行装置2が急発進する等の誤操作を防止して電装品52の保守・交換作業を安全に行うことができる。
【0063】
また、センサ49の出力信号がOFFとなった場合には、油圧式無段変速機16の駆動を停止してエンジンEの出力回転の増減速を規制するのが好ましい。これにより、電装品52の保守・交換作業をより安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
10 操縦席
10A 操縦席支持部材
11 フロントパネル
16 油圧式無段変速機
20 サイドパネル
21 サイドパネル部(第1パネル部)
21A 垂下部
22 制御パネル部(第2パネル部)
24 変速レバー
25 モードセレクトレバー
31 支軸
40 移動フレーム(移動部材)
41 固定フレーム(固定部材)
42 昇降プレート(昇降部材)
43 昇降装置
52 電装品
E エンジン
【要約】 (修正有)
【課題】搬送装置に詰まった穀稈の状態を容易に目視で確認することができるコンバインを提供する。
【解決手段】操縦席の前側にフロントパネルを設け、操縦席の左側にサイドパネルを設け、サイドパネルを、前後方向に延在する第1パネル部と、第1パネル部の左端部から左側上方に傾斜して延在する第2パネル部と、第1パネル部の左端部から下方に延在する垂下部で形成し、第1パネル部の前側に、油圧式無段変速機を操作する変速レバーを設け、変速レバーの後方に、刈取装置と脱穀装置の駆動と駆動停止を操作するモードセレクトレバーを設け、操縦席の下側に、操縦席を支持する操縦席支持部材を設け、垂下部の後部を、操縦席支持部材における左側後部に設けられた左右方向に延在する支軸に回転自在に固定し、サイドパネルの長手方向が前後方向に沿って延在する操作姿勢と、サイドパネルの長手方向が上下方向に沿って延在する開放姿勢に移動可能な構成とした。
【選択図】
図17