(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】自動化された胸部圧迫デバイス
(51)【国際特許分類】
A61H 31/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61H31/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021113145
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2018519492の分割
【原出願日】2016-10-14
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510034982
【氏名又は名称】ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ、ニヒル、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、メラニー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ、バイロン、ジェー.
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526949(JP,A)
【文献】特表2000-501971(JP,A)
【文献】米国特許第04770164(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 31/00
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胸部圧迫を実行するためのデバイスであって、
圧迫ベルトと、
前記患者の胸部の下に配置するためのプラットフォームと、を備え、
前記プラットフォームの下部/上部軸が前記患者の下部/上部軸に対応するように、前記プラットフォームが前記患者の前記胸部の下に配置される場合に、前記圧迫ベルトが、前記プラットフォームに
取り外し可能に接続するよう構成され、前記患者の前記胸部の右側から前記患者の前記胸部の左側まで、前記プラットフォームの中間/横軸に沿って前記患者の前記胸部の上に延在するように適合され、
前記プラットフォームは、少なくとも部分的に、
モータと、
前記圧迫ベルトの第1のセクションを右駆動スプールにスプールオン及びオフするように構成された前記右駆動スプールと、
前記圧迫ベルトの第2のセクションを左駆動スプールにスプールオン及びオフするように構成された前記左駆動スプー
ルと、
前記モータを前記右駆動スプール及び前記左駆動スプールに動作可能に接続するドライブトレインと、
を囲む筐体を含み、
前記右駆動スプール及び前記左駆動スプールは、前記プラットフォームの中間/横軸に沿った前記プラットフォームのそれぞれの横面に配置され、
前記モータは、前記圧迫ベルトを繰り返し締めつけ及び緩めるために、前記ドライブトレイン
に前記右駆動スプール及び前記左駆動スプールを回転させるように構成され、
前記モータは、前記下部/上部軸に沿って前記筐体の第1の領域内に配置され、前記左駆動スプール及び右駆動スプールは
、前記下部/上部軸に沿って前記筐体の第3
の領域内に延在し、
前記第1の領域及び前記第3の領域との間に第2の領域の少なくとも一部が配置され、
前記第2の領域は、放射線不透過コンポーネントを欠く前記筐体内の放射線透過スペースを少なくとも部分的に確定し、前記患者が前記プラットフォーム上に配置されると、前記放射線透過スペースの一部が前記患者の心臓の下に配置される、
デバイス。
【請求項2】
前記圧迫ベルトは、
右取付ポイントで前記右駆動スプールに解放可能に取り付けることができる右ベルト端部と、
前記患者が配置されている表面の反対側の前記プラットフォームの下側にユーザがアクセスする必要なしに、前記プラットフォームの左側から前記ユーザにアクセス可能な左取付ポイントで前記左駆動スプールに解放可能に取り付けることができる左ベルト端部と、を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記右取付ポイントは、ユーザが前記プラットフォームの下側にアクセスする必要なしに、前記プラットフォームの右側からユーザにアクセス可能であり、
前記左取付ポイントは、前記ユーザが前記プラットフォームの下側にアクセスする必要なしに、前記プラットフォームの左側からユーザにアクセス可能であり、
それにより、患者が前記プラットフォーム上に配置されている間、前記右ベルト端部及び前記左ベルト端部は、前記右駆動スプール及び前記左駆動スプールに解放可能に取り付けることができる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記右ベルト端部は、前記右取付ポイントに解放可能に取り付けるための右コネクタを含み、
前記左ベルト端部は、前記左取付ポイントに解放可能に取り付けるための左コネクタを含む、
請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記圧迫ベルトは、前記右ベルト端部及び前記左ベルト端部の間に配置された中央部分を含み、前記中央部分は、圧迫中に前記患者の前胸壁全体に負荷を分散するための前記右ベルト端部及び前記左ベルト端部よりも広い、請求項2から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記圧迫ベルトが、前記患者の前記胸部の上に配置され
て圧迫を加えるように構成された負荷分散セクションを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記右駆動スプール及び前記左駆動スプールは、前記プラットフォームの下部/上部軸に平行に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
複数の圧迫サイクルを実行するために前記モータの動作を制御するための制御システムをさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
各圧迫サイクルは、前記圧迫ベルトを締めること、前記圧迫ベルトを前記締め付け位置に保持期間保持すること、及び前記圧迫ベルトを緩めることを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記制御システムが、前記下部/上部軸に沿って
前記放射線透過
スペースの上に配置される、請求項8
又は9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する本発明は、CPRの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
心肺系蘇生(CPR)は、心停止に苦しんでいる人々を蘇生させるために使用される応急処置の周知で有益な方法である。CPRは、身体を通じて血液をポンピングするように心臓および胸腔を強く押す、反復的な胸部圧迫を必要とする。より良好な血流を提供し、バイスタンダの蘇生努力の有効性を増加させるための努力において、CPRを実行するための様々な機械的デバイスが提案されている。そのようなデバイスの一変形例、例えば、商標AUTOPULSE(登録商標)として販売されている、出願人の市販のデバイスにおいて、ベルトが患者の胸部の周囲に配置され、ベルトは胸部圧迫を行うように使用される。出願人自身の特許である、Mollenauer他の米国特許第6,142,962号明細書(2000年11月7日)「Resuscitation Device Having A Motor Driven Belt To Constrict/Compress The Chest(胸部を圧縮/圧迫するモータ駆動ベルトを有する蘇生デバイス)」、Sherman他の米国特許第6,616,620号明細書(2003年9月9日)「CPR Assist Device with Pressure Bladder Feedback(圧力ブラダーフィードバックを有するCPR支援デバイス)」、Sherman他の米国特許第6,066,106号明細書(2000年5月23日)「Modular CPR assist device(モジュラーCPR支援デバイス)」、Sherman他の米国特許第6,398,745号明細書(2002年6月4日)「Modular CPR assist device(モジュラーCPR支援デバイス)」、Jensenの米国特許第7,347,832号明細書(2008年3月25日)「Lightweight Electro‐Mechanical Chest Compression Device(軽量な電気機械的胸部圧迫デバイス)」、および、Quintana他の米国特許第7,354,407号明細書(2008年4月8日)「Method and Devices for Attaching a Belt Cartridge to a Chest Compression Device(胸部圧迫デバイスへのベルトカートリッジの取りつけのための方法及びデバイス)」が、ベルトによって患者の胸部を圧迫する胸部圧迫デバイスを示している。これらの各特許は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
これらのデバイスは、手動CPRの有益な代替手段であると判明しており、それらは、手動CPRによって提供されるものより優れた循環を提供し、また、心停止患者のより高い生存率ももたらすという証拠が現れている。デバイスは蘇生のための速度および深度で胸部圧迫を提供する。蘇生のための速度は、心停止患者内の血流を誘導するために有効とみなされる任意の圧迫速度であり得、典型的には毎分60から120圧迫(CPRガイドライン2010は毎分80から100圧迫を勧告している)であり、蘇生のための深度は、血流を誘導するために有効とみなされる任意の深度であり得、典型的には1.5から2.5インチ(3.81から6.35cm)(CPRガイドライン2010は毎圧迫2インチ(5.08cm)を勧告している)である。
【0004】
AUTOPULSE(登録商標)胸部圧迫デバイスはベルトを使用し、それはデバイスの筐体と共に駆動スプールに解放可能に取りつけられる。使いやすい配置において、スプラインがベルトに固定され、スプラインはデバイスの駆動スプールにおいてスロットに収まる。駆動スプールは、デバイスの底から、または後面からアクセス可能である。使用前に、新しいベルトがデバイスに適合され、このためには、スプラインを駆動スプールに挿入するためにデバイスを持ち上げる必要がある。患者は次に、デバイスの筐体に配置され、ベルトは患者の胸部の上方で固定される。ベルトの両端は、面ファスナによって、患者の胸部の上方で互いに保持される。配置は、心停止患者を扱うために有効であり、使用に便利であると判明している。ベルトに基づく他のCPR圧迫デバイスが提案されているが、臨床使用において実装されてはいない。Lachの米国特許第4,770,164号明細書(1988年9月13日)「Resuscitation Method and Apparatus(蘇生方法および機器)」は、ベルトを第1のローラの下に、次に第2のローラの下に、患者の上に、逆行して第1のローラの下に、そして次に、患者の一方の側面に配置された大きいローラに通すことによって、ベルトを患者の周囲に固定する。ベルトは面ファスナによってローラに固定され、デバイスの操作者によって患者の寸法に合わせられる。Kellyの米国特許5,738,637号明細書(1998年4月14日)「Chest Compression Apparatus for Cardiac Arrest(心停止のための胸部圧迫機器)」は、ベルトがその中点で背板の下側にボルト留めされ、次に面ファスナで患者の胸部のはさみ機構に固定される、ベルトを使用する。ベルトの取りつけは、いずれのデバイスにおいても使いやすくはない。駆動コンポーネントおよびベルトの、新しい、より使いやすい配置が、本出願において開示される。
【0005】
出願人のAUTOPULSE(登録商標)CPR胸部圧迫デバイスの別の特徴は、圧迫の高さに圧迫ベルトを保持する制御システムの能力である。AUTOPULSE(登録商標)は、圧迫ストローク、高圧迫保持、解放期間、および圧迫間の保持を含む、繰り返される圧迫サイクルにおける圧迫を実行すべく動作することができる。他のいかなる自動化CPR胸部圧迫デバイスも、高閾値の圧迫で圧迫を保持することが可能ではない。圧迫、保持、および解放からなるサイクルの圧迫を実現するための、AUTOPULSE(登録商標)デバイスを動作させる方法は、出願人の以前の特許、Sherman他の米国特許7,374,548号明細書(2008年5月20日)「Modular CPR assist device to hold at a threshold of tightness(緊張度の閾値に保持するためのモジュラーCPR支援デバイス)」によって対象にされている。保持期間は、デバイスのモータ駆動シャフトに動作可能に接続されるブレーキによって実現される。それは、患者の周囲の適切な位置にベルトをロックするように駆動シャフトを停止すべく、活性化され得る。新しい、よりエネルギー効率の良いブレーキングシステムが、本出願に開示される。
【0006】
ときどき、医師が患者の胸部のX線写真を撮ることを欲するのと同時に、胸部圧迫デバイスが患者に使用されなければならないことがある。これは、胸部圧迫デバイスの放射線不透過金属コンポーネント(モータおよび駆動系)が、圧迫ベルトの負荷分配部分の下に直接位置する場合には可能ではない。圧迫ベルトの負荷分配部分は、適切に取りつけられたときに患者の胸部および心臓の上方にくるので、放射線不透過コンポーネントもまた心臓の下に位置する。このことは、放射線不透過コンポーネントがX線機械の視野内にあることを意味する。
【発明の概要】
【0007】
以下に説明されるデバイス及び方法は、圧迫ベルトが容易に交換可能である、ベルト駆動式胸部圧迫デバイスを提供する。胸部圧迫デバイスは、駆動コンポーネントを収容するプラットフォームと、デバイスの上側表面付近で、解放可能に取りつけ可能な連結部材によって駆動コンポーネントに接続される圧迫ベルトと、を含む。患者が筐体に配置されながら、ベルトの取り外し及び交換が実現される。この配置は、ベルトのねじれを回避することに役立ち、ベルトの取り外し及び交換を容易にする。ベルトの設置は、出願人の従来のAUTOPULSE(登録商標)デバイスより単純であり、ユーザによる設置のときに張力が加えられる。圧迫サイクルが、たるみなしの、最適な低レベルの緊張度から開始することを保証すべく、デバイスの制御システムは、スタートアップ時にベルトを緩め、その後、たるみ取り位置にベルトを引き出すように、または、緊張度のインジケータ(モータ電流、ロードセルの負荷、ベルトの張力)を監視しながらスタートアップ時にベルトを締めつけるように、および、条件によっては(ベルトが最初に緩んでいる場合に)ベルトをたるみ取り位置に締めつけるように、または、緊張度のインジケータを監視しながらベルトを反転させて緩めて次にベルトを締めつけ、(初期緊張度がたるみ取り位置の所望の緊張度を超える場合に)ベルトをたるみ取り位置に締めつけるように、デバイスを制御し得る。
【0008】
デバイスの操作の最中に保持期間を提供すべく、ブレーキが使用される。ブレーキはパーキングポールを含み、パーキングポールは、ポールとパークギア配置とを含み、パークギアは駆動系内のコンポーネントに固定され、ポールはパークギアを妨害するように動作可能である。
【0009】
デバイスにおけるコンポーネントの配置は、デバイスの放射線透過領域を提供し、それは、デバイスが心停止患者に適切に取りつけられたときに、患者の心臓の下にくる。例えば、圧迫ベルトは横断方向に位置する駆動スプールによって駆動され得、それは、デバイス内の上部において、圧迫ベルトの上部に(および、したがって、デバイスが取りつけられるときに患者の心臓の上部に)配置される駆動系コンポーネントへ延在する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】患者に取りつけられたCPR胸部圧迫デバイスを示す図である。
【0011】
【
図2】筐体の上の点における、圧迫ベルトと中間ストラップとの間の接続を示す、CPR胸部圧迫デバイスの斜視図である。
【0012】
【
図3】
図1の圧迫デバイスにおいて使用され得る、単一部品の圧迫ベルトを示す図である。
【0013】
【
図4】モータおよび駆動シャフト、駆動ベルト、および二次または遊星駆動スプールを含む、圧迫デバイスの駆動系の斜視図である。
【0014】
【
図5】駆動スプール、駆動ベルト、および二次駆動スプールの端面図である。
【0015】
【
図6】駆動スプールを回転させる代替的な駆動系を示す図である。
【
図7】駆動スプールを回転させる代替的な駆動系を示す図である。
【
図8】駆動スプールを回転させる代替的な駆動系を示す図である。
【
図9】駆動スプールを回転させる代替的な駆動系を示す図である。
【
図10】駆動スプールを回転させる代替的な駆動系を示す図である。
【0016】
【
図11】
図4の駆動系および他の胸部圧迫デバイスでの使用のための、改良されたブレーキ機構を示す図である。
【
図12】
図4の駆動系および他の胸部圧迫デバイスでの使用のための、改良されたブレーキ機構を示す図である。
【
図13】
図4の駆動系および他の胸部圧迫デバイスでの使用のための、改良されたブレーキ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、患者1に適合された胸部圧迫デバイスを示す。胸部圧迫デバイス2は圧迫ベルト3によって圧迫を加える。胸部圧迫デバイス2は、患者の胸部の下に配置されるようにサイズが決められたベルト駆動プラットフォーム4を含み、使用の最中に、プラットフォーム4上に患者が置かれ、プラットフォーム4は、デバイスのための駆動系および制御システムを筐体5に提供する。デバイスの任意の箇所にはめ込まれる制御システムは、プロセッサを含み得、ベルトを締める操作を制御し、筐体に配置されたユーザインタフェース上に出力を提供するように動作可能であり得る。デバイスの操作は、ユーザにデバイスのステータスに関するフィードバックを提供するように制御システムによって操作される、制御パネル6およびディスプレイを通じて、ユーザによって開始され、調整され得る。
【0018】
ベルトは、ベルトの中央部分の幅広い負荷分散セクション7と、左および右ベルト端部8Rおよび8L(細い引っ張りストラップ9Rおよび9Lとして図に示される)とを含み、それらは、負荷分散セクションから患者に対して後ろ側に筐体内の駆動スプールへと延在する部分に、張力を与える役割を果たす。左および右ベルト端部は、ループ11Rおよび11L(例えば、示されるような長方形のループ)によって、中間ストラップ10Rおよび10Lに固定される。患者に適合されるとき、負荷分散セクションは、患者の前胸壁にわたって配置され、左および右ベルト端部は、患者の右および左の腋窩にわたって後ろ側に延在し、
図2に示されるそれぞれの横断方向駆動スプールに接続する。
【0019】
図2は、ベルト駆動プラットフォームおよび筐体を含む、単離された胸部圧迫デバイスを示す。
図2に示されるように、中間ストラップ10Rおよび10Lはループに一端を固定され、筐体のいずれかの側に横断方向に配置された遊星駆動スプール12Rおよび12Lに、他端を固定される。次に、遊星駆動または横断方向駆動スプールは、以下に説明される様々なベルトおよびギアを介して、これもまた筐体内に配置されるモータによって駆動される。スプールの回転のとき、中間ストラップが後ろ側に引かれ、横断方向駆動スプールに巻き取られ、それによって、圧迫ベルトを下方向に引き出して患者の胸部を圧迫するように、中間ストラップは遊星駆動または横断方向駆動スプールに取りつけられる。中間ストラップは、任意の適切な方式で、遊星駆動または横断方向駆動スプールに固定され得る。中間ストラップは、曲げやすくかつ柔軟であり得、または、駆動スプールの周囲に巻かれ得る程度に依然として十分曲げやすい限り、自己支持型(すなわち、プラットフォームが水平であるときに、中間ストラップは他の支持なしで鉛直方向のままである)であり得る。
【0020】
ベルト3は、
図3に示されるとおり、負荷分散セクション7と、左および右の引っ張りストラップ9Rおよび9Lの形の、左および右ベルト端部8Rおよび8Lとを含む。負荷分散セクションは、典型的な患者の胸部の前面のかなりの部分を覆うようにサイズおよび寸法が決められている。引っ張りストラップは、負荷分散セクションに対して細いため、関連するスプールの材料要件を限定する。しかし、ベルト端部は、負荷分散セクションと同一の幅で形成されてもよい。左および右ベルト端部に対応するフックセクションおよびループセクション(13R、13L)は、圧迫ベルトをループ(11R、11L)に固定し、したがって、中間ストラップ10Rおよび10Lに固定する。引っ張りストラップは、ループを通され、合わせるように折り畳まれ、面ファスナまたは他の解放可能な取りつけ具システム(すなわち、器具なしで2つの部品を迅速に取りつけおよび取り外しするように動作可能な、取りつけ具システム)によって固定される。面ファスナはループとともに、
図1に示された二重ループスライダと併せて、圧迫ベルトを中間ストラップに解放可能に固定するための使いやすい手段を提供する。しかし、ベルト端部を中間ストラップに解放可能に取りつける他の使いやすい手段が使用されてもよい(例えば、マッチングセンターリリースバックルコンポーネント(シートベルトバックル)、サイドリリースバックル(バックパックバックル、カムバックル、ベルトバックルなどが使用されてよい)。(ベルトの代わりに、駆動スプールに直接取りつけられてもよい。)1つのサイズのベルトが、様々なサイズの患者に使用されてよく、または、様々なサイズのベルトが、患者のサイズに応じて、デバイスでの使用のために提供され得る。ベルトの初期緊張度が、二重ループスライダを通るストラップを引いて面ファスナセグメントを貼り合わせる、CPRプロバイダによって設けられる(以下で説明するように、システムは、CPRプロバイダがベルトをバックルに固定した後に、ベルトに関するたるみ取り位置を確立し得る)。ベルトは一体型ベルトが好ましい。しかし、まず患者の胸部を一方の側で覆い、次に第1の側を他方の側で覆って、2つのセクションをともに(例えば、対応する面ファスナによって)固定することによって加えられ得る、重なる負荷分散セクションを有する二体型ベルトとして提供されることができる。また、ベルトは、連結機構(例えば、解放可能な連結機構、バックル、もしくはベルクロ(登録商標)面ファスナ、もしくはクランプ、またはベルトを解放可能に取りつける他の使いやすい手段)とともに固定された、2つの部品を有する二体型ベルト(例えば、第1の引っ張りストラップが1つの部品であり、第2の引っ張りストラップが負荷分散セクションとともに第2の部品を構成する)として構成されてもよい。引っ張りストラップは、駆動スプールまたは中間ストラップに直接、解放可能に取りつけられてよい。連結機構は、引っ張りストラップと共に様々な位置に位置し得る。連結機構の提供は、デバイスの取りつけを容易にし得、デバイスの材料の構成要件を最低限に抑え得る。ブラダーが、負荷分散セクション7に組み込まれ得る。
【0021】
ベルト端部は、出願人の従来の米国特許である、Quintana他の米国特許第8,740,823号明細書(2014年6月3日)「Methods And Devices For Attaching A Belt Cartridge To A Chest Compression Device(胸部圧迫デバイスへのベルトカートリッジの取りつけの方法及びデバイス)」に開示された、スプラインおよびスロット配置を使用して、駆動スプールに直接取りつけられ得る。ベルト端部は、任意の適切なファスナ、クランプ、または接続手段を使用して、駆動スプールに直接取りつけられ得る。ベルトおよびその駆動スプールへの取りつけ具は、対称である必要はない。例えば、ベルトは、一方の側では駆動スプールへの直接的な接続に適合された引っ張り部分またはストラップを含み得、他方の側ではまた、中間ストラップを介した、駆動スプールへの間接的な接続に適合された引っ張り部分またはストラップを含み得る。
【0022】
駆動スプールは、駆動ベルトに係合する第1のセグメントと、第1のセグメントから下方に延在し、中間ストラップまたはベルト端部に係合する第2のセグメントとを有する。駆動スプールの間の、対応する前頭面上にあり駆動ベルトの下方にある空間は、駆動系コンポーネントまたは他の放射線不透過コンポーネントによって占有されておらず、したがって、上記の放射線透過窓を構成する。
【0023】
使用において、CPRプロバイダは心停止患者に圧迫デバイスを当てるであろう。CPRプロバイダは、心停止患者を筐体5に配置し、患者がすでに筐体の前面にある状態で、ベルト端部8Rおよび8Lをそれぞれ左および右中間ストラップに(または駆動スプールに直接)固定するであろう。したがって、デバイスの底面へのアクセスの必要はない。圧迫ベルトが一体型ベルトである場合、ベルト端部の少なくとも一方は、その対応する駆動スプールに(直接)固定され、または、患者がプラットフォームに配置された後に中間ストラップに固定される。ベルトが非対称ベルト(一端が駆動スプールへの直接的な接続に適合され、他端が中間ストラップまたは引っ張りストラップを通る間接的な接続に適合される)である場合、ユーザは一方のベルト端部を駆動スプールに固定し、他のベルト端部を中間ストラップに固定するであろう。ベルトが、重なる負荷分散セクションを有する二体型ベルトである場合、ユーザは、ベルト端部を駆動スプールに固定する前または後に、患者の胸部を一方の側で覆い、第1の側を他方の側で覆って、組み立てを完了させるであろう。ベルトが、互いに連結される2つの部品を有する二体型ベルトである場合、例えば、一方のストラップが負荷分散セクションに解放可能に取りつけられ、他方のストラップが負荷分散セクションに固定された状態で、ユーザはベルト端部を駆動スプールまたは中間ストラップに固定する前または後に、2つの部品を互いに接続するであろう。ベルトが適切な位置の状態で、CPRプロバイダは胸部圧迫デバイスの操作を開始し、蘇生のために適切な深度および速度で、患者の胸部を繰り返し圧迫する。患者がプラットフォームに配置された後にベルトが置き換えられる必要がある場合、CPRプロバイダは、容易に圧迫ベルトを中間ストラップまたは駆動スプールから取り外し、中間ストラップまたは駆動スプールに新しい圧迫ベルトのベルト端部を固定することによって、新しい圧迫ベルトを取りつけることができる。このことは、患者を筐体から取り外すことなく行われることができ、従来技術のシステムと比べて著しい量の時間を節約し、ベルト取り換えに伴う、胸部圧迫の開始の遅延を最低限に抑える。ベルトが適切な位置の状態で、CPRプロバイダはデバイスの操作を開始し、患者の胸部の周囲でベルトを締めつけおよび緩めるサイクルを繰り返し発生させる。ベルトが使用の最中に損傷したか、またはねじれた場合(フロントローディングデバイスはねじれを起こす可能性が少ないはずである)、患者がプラットフォームにとどまっていながら、CPRプロバイダはベルトを取り換えるためにデバイスの操作を中断し、右中間ストラップまたは右駆動スプールから右ベルト端部を取り外し、左中間ストラップまたは左駆動スプールから左ベルト端部を取り外す。
【0024】
中間ストラップへの解放可能な取りつけ具を有する、圧迫ベルトと中間ストラップとの配置の利益は、以下に説明されるさらなる発明の利益と共に達成されることができ、または、単独で達成され得る。圧迫ベルトと、駆動スプールへの解放可能な取りつけ具との利益は、以下に説明されるさらなる発明の利益と共に達成されることができ、または、単独で達成され得る。
【0025】
図4は、駆動シャフト、駆動ベルト、および遊星駆動スプールを含み、モータ20とそのモータシャフトとを動作可能に圧迫ベルトに接続する、圧迫デバイスの駆動系の斜視図である。駆動系は、第1の駆動シャフト21(この場合には、任意の減速ギアのモータシャフトまたは出力シャフトの延長)と、次いで第1の駆動シャフトに固定される第1のギア22(太陽ギア)とを含む。第1のギア/太陽ギアは、次いで第2の駆動シャフト24に固定される第2のギア/遊星ギア23と係合する。(モータシャフト、第1および第2の駆動シャフト、ギアおよび駆動スプールは、デバイスにわたって延在し、コンポーネントおよび筐体のための支持を提供する、チャネルビームにおいて支持される。)ある方向への第1の駆動シャフト21の回転は、第2の駆動シャフト24の逆回転(反対方向への回転)をもたらす。第1および第2の駆動シャフトは、したがって、反対方向に回転する。第1および第2の駆動シャフト21(左)および24(右)は、駆動ベルト25Rおよび25Lを介して、第1および第2の横断方向駆動スプール12Rおよび12Lに接続され、第1および第2のシャフトの回転は、第1および第2の横断方向駆動スプールの回転をもたらし、次に、それは中間ストラップ(またはベルト端部)を巻き取って、患者の胸部の周りに圧迫ベルトの締めつけを生じさせる。
図4に示されるように、駆動シャフトは歯車(駆動プーリ)を含み得、駆動スプールは歯車(駆動プーリ)を含み得、駆動ベルトは歯のついた駆動ベルトである。モータシャフトは、第1の駆動シャフト21に直接接続され得るか、またはギアボックス26内の減速ギアを介して接続され得る。ブレーキ27は、任意の適切な点で駆動系に動作可能に接続され得、好ましいブレーキのいくつかの実施形態が、
図11、12および13に、より詳細に示される。
【0026】
図4に示されるように、駆動シャフト21(左)および24(右)は、デバイスの下部/上部中心線の周囲に非対称に配置されるが、しかし、駆動スプールは対称に配置され得る。ベルトは歯車の間に使いやすいリンク機構を提供するが、ベルトは、駆動シャフト(21,24)ならびに第1および第2の横断方向駆動スプール12Rおよび12Lに対応するスプロケットを有するチェーン、または、駆動シャフト(または複数のシャフト)を横断方向駆動スプールと相互接続するウォームギアなどの、同等なコンポーネントに置き換えられ得る。
【0027】
図4の配置において、単一のモータが、圧迫ベルトへの直接的な接続なしで、両方の駆動シャフトおよび両方の駆動スプールを駆動するために使用される。これは、圧迫ベルトのための解放可能な前部取りつけ具システムを可能にする1つのシステムである。この配置において、モータ20、バッテリ28、および制御システムが、横断方向駆動スプール12Rおよび12Lの、中間ストラップまたはベルト端部が固定される部分の上部に位置する(出願人の現在のAUTOPULSE(登録商標)圧迫デバイスにおいては、モータ駆動シャフトは横スピンドルと同一の横断面上に位置する)。したがって、放射線不透過コンポーネントを欠くデバイスの下部に、開かれた占有されていない空間を残す。この開かれた、占有されていない空間は、負荷分散帯の真下に(後ろに)位置する。したがって、圧迫デバイスが患者に取りつけられるとき、この占有されていない空間は患者の心臓の下に位置し、蛍光透視法、X線写真またはCTスキャンで心臓を撮影するための、クリアな放射線透過窓を提供する。患者に取りつけられるとき、ベルトを駆動するモータおよび駆動シャフトは、患者の心臓の領域に対応する、圧迫ベルトの下にある筐体の領域の上部に位置し、駆動スプールは、心臓の上部/下部の水準で下方に延在するにもかかわらず、筐体の中心線から(そして、それに応じて、患者の身体の中心線から)横断方向に変位される。
図4に示された駆動系の利益は、
図1のフロントローディング型の圧迫ベルトと組み合わせて、または、他のベルト取りつけ具機構と組み合わせて得られることができる。また、駆動系コンポーネントが、使用の最中に患者の心臓の下にあるプラットフォームの領域から、デバイスの上部/上部軸に沿って(上方に、または下方に)変位する(例えば、各駆動スプールに1つのモータが動作可能に接続されるか、各駆動シャフトに1つのモータが直接的に接続されるように、2つのモータが使用され得る)限り、放射線透過窓の利益は、他の配置の駆動系によっても達成され得る。
【0028】
図5は、
図4に示された、(デバイスの下方端から見た)駆動シャフト、駆動ベルト、および二次駆動スプールの端面図であり、駆動シャフト21(左)および24(右)、横断方向駆動スプール12Rおよび12L、駆動ベルト25Rおよび25L、およびモータ20を含む。圧迫ストロークの最中、モータは、所望の深さの圧迫を実現するために必要な程度に中間ストラップ(またはベルト端部)を下方向に引くために十分に、各駆動スプールを回転するように動作する。これは、駆動スプールの直径によって変わり得る。好ましくは、駆動スプール12Rおよび12Lは直径が約0.75''(2cm)であり、各圧迫ストローク(この配置において、
図5の下方図から見たとき、駆動スプール12Rは反時計回りに回転し、駆動スプール12Lは時計回りに回転するであろう)において約2.5回転で回転し、下向きに(筐体にあおむけに横になっている患者に対して後ろ側に)中間ストラップ(またはベルト端部)をおよそ1から2インチ(2.5から5cm)引き、2インチ(5cm)である所望の深さの胸部圧迫を得る。駆動スプール12Rおよび12Lは、例えば完全な1回転の半分など、行う回転がより少なくなるように、より大きい直径で形成され得、駆動スプールの部分的な周囲にのみ中間ストラップ(またはベルト端部)を巻き取り、適切な圧迫に必要な程度に下方向に中間ストラップ(またはベルト端部)を引く。この配置において、中間ストラップは、自己支持型であるように、かつ、ベルトに取りつけられていないときに筐体の上で鉛直に立つように、かなり剛性のある材料で形成され得る。
【0029】
筐体の前面または側面から駆動系へのベルトの取りつけを可能とする配置という利益をなおも達成しながら、駆動系は様々なものとなり得る。例えば
図6に示されるように、駆動スプールの間のリンク機構は、駆動ピニオン(歯車)31Rおよび31L、ならびに右および左のラック32Rおよび32Lおよび右および左の被駆動ピニオン33Rおよび33Lを有する、ラックアンドピニオンシステムによって提供され得る。(
図8に示されるように、駆動スプールの一方に反転ギアを有する単一のピニオン、または、駆動スプールの逆側へのベルト端部/中間ストラップの配置を含む、駆動スプールを適切に回転するための様々な配置が使用され得る。
図7に示されるように、駆動シャフトの間のリンク機構は、左および右の駆動シャフトならびに左および右駆動スプール12Rおよび12Lを、駆動ストラップ34Rおよび34Lを介して駆動し得る。このシステムにおける駆動ストラップは、駆動シャフトの周囲に巻き取られ、左および右駆動スプール12Rおよび12L(この実施形態においては単一の駆動シャフトが使用され得る)の周囲にもまた巻き取られる。
【0030】
操作において、駆動シャフトの回転は、駆動シャフト31Rおよび31Lへの駆動ストラップ34Rおよび34Lの巻き取りをもたらし、それは、駆動スプール12Rおよび12Lの回転をもたらし、したがって、圧迫ベルトを締めることをもたらす。このシステムは、圧迫サイクルの解放フェーズにおいて、胸部の自然復元力を用いて圧迫ベルトを引き延ばし得る一方、モータは、駆動スプール12Rおよび12Lの周囲への駆動ストラップ34Rおよび34Lの巻き取りに対応して、駆動シャフト31Rおよび31Lの周囲からの駆動ストラップ34Rおよび34Lの引き出しを可能にすべく動作する。
【0031】
図8は、右および左の両方のベルトが単一の駆動シャフトによって駆動される駆動系を示し、各駆動ベルトは、その関連する駆動スプールを反対方向に回転させ、駆動スプール/中間ストラップ(またはベルト端部)接続の一方が、駆動スプールの内側(中間)部分に配置され、駆動スプールの回転が駆動スプールへの中間ストラップ(またはベルト端部)の巻き取りをもたらすことを保証する。これらの駆動系のそれぞれが、圧迫ベルトが解放可能に、または恒久的に、デバイスの前面から、またはデバイスの側面から駆動系に取りつけられるシステムにおいて使用され得、したがって、患者がプラットフォーム上にいながらにして、ベルトの取りつけ、取り外し及び交換を可能にする。(自動車に関する用法と類似して、駆動系は、モータを除く、ベルトに力を提供すべく動作するコンポーネント群である。)
【0032】
図9は、
図5の横断方向駆動スプール12Rおよび12Lがスプロケット付きスプール35Rおよび35Lに置き換えられた、
図5の駆動系と類似する駆動系を示す。スプロケット付きスプールは、中間ストラップ(またはベルト端部)において対応する穿孔と係合し、第1の方向に回転されるときは中間ストラップ(またはベルト端部)を下方向に引き、したがって、ベルトを締めつけ、反対方向に回転されるときは中間ストラップ(またはベルト端部)を上方向に押し、したがってベルトを緩める。対応するテンショニングスプール36Rおよび36Lは、スプロケット付きスプール35Rおよび35Lに直接隣接して提供され、穿孔された中間ストラップ(またはベルト端部)を、スプロケット付きスプールのスプロケットと係合させる。
【0033】
図5から
図9に示された各駆動系において、大直径の駆動スプールの代わりにレバーが使用されてよく、レバーは中間ストラップ(またはベルト端部)を後ろ側に引くように機能する。レバーは中間ストラップに取りつけられ、横断方向駆動スプールのために提案されたものと同一の機構によって駆動され、中間ストラップを後ろ側に引いてベルトを締めつける。
【0034】
図10は、リングギアおよびピニオンを使用して圧迫ベルトを駆動する駆動系を示す。このシステムにおいて、リングギア37は、上記で説明された
図6の駆動系のラックに取って代わり、モータおよび駆動シャフトから横断方向駆動スプールへ力を転移させる。このシステムにおいて、駆動ピニオン31は、交互に時計回り回転および反時計回り回転でリングギアを駆動し、次にそれらは被駆動ピニオン33Rおよび33Lならびにそれらと並行移動する出力ピニオン38Rおよび38Lを駆動し、次にそれらは駆動スプール12Rおよび12Lを前後に回転するように駆動して、中間ストラップ(またはベルト端部)10Rおよび10L(図示せず)の引き下げおよび押し上げ、または、巻き取りおよび引き出しを行う。患者がデバイスに配置されるときに、ベルトが胸部を覆う適切な位置にある状態で、患者の心臓の下にある筐体の領域内にリングギアがないように、リングギアは、好ましくは中間ストラップ(またはベルト端部)と係合する駆動スプールの下部より上方に位置する。
【0035】
最後に、駆動スプールは任意の使いやすいレバー機構と置き換えられ、モータによって適切なリンク機構で駆動され、中間ストラップ(またはベルト端部)を下向きに引く、および中間ストラップ(またはベルト端部)を上方に押す(または、患者の胸部の反動のときの上方向運動を少なくとも可能にする)ように動作可能である一方、筐体の「心臓」領域における空っぽの空間を維持する利益を得る。スプールは、しかしながら、使いやすい実装ではレバー機構である。
【0036】
圧迫デバイスは、好ましくは、圧迫ダウンストローク、高圧迫保持、解放期間、および圧迫間の保持を含む、圧迫のサイクルを提供すべく動作する。保持期間は、駆動系の回転するコンポーネントを非常に迅速に停止させるように動作可能な、ブレーキの動作によって実現される。胸部圧迫デバイスにおける使用のために以前に提案された、カムブレーキまたはラップスプリングブレーキを含む、任意のブレーキが使用され得、または、モータが失速するか電気的にバランシングされて、保持期間の最中にモータを一時停止し得る。
図11は、
図4の駆動系と共に使用され得る、改良されたブレーキ機構を示す。ブレーキ機構は、自動車用のトランスミッションに使用されるパーキングポールに類似する、パーキングポール機構を含む。パーキングポール41および関連するパークギア(ノッチホイールまたはラチェットホイール)42が、駆動系またはモータシャフトにおいて任意の点に位置し得、パークギアは、任意の回転するコンポーネントに、回転不可能に固定され、
図11には、モータ20とギアボックス26の間の、モータシャフト21に固定されることが示される。ポール41は、ソレノイドアクチュエータ43およびソレノイドプランジャ44、または他のアクチュエータ(例えば、モータが、ポールをパークギアと接触するように振れさせるべく使用され得る)によって操作され、それは駆動シャフトに対して固定される。駆動系にブレーキをかけて停止させるように、制御システムはソレノイドを操作して、ポールにパークギアとの干渉的な接触をさせる。駆動系を解放するように、制御システムはソレノイドを操作して、ポールをパークギアから後退させる。好ましくは、ポールはパークギアから離れるようにバネ付勢され、よって、ソレノイドが動作しない場合、ポールはパークギアとの干渉から後退させられる。この場合において、ソレノイドが動作して、保持期間全体の最中、ポールをパークギアに向けさせる。代替的に、ポールはバネの作用によって干渉的な接触へとシフトされ、ソレノイドに電力が供給されてポールを後退させるまで、干渉的な接触にとどまり、したがって、ポールを干渉的な接触状態に保持するためにバッテリ電力は必要とされない。代替的に、ポールは付勢されなくてもよく、したがって、ソレノイドの作用によって干渉的な接触にシフトされた後、後退させられるまで干渉的な位置にとどまり、したがって、バッテリ電力は、ブレーキを定位置に保持するために消費される必要はなく(しかし、ブレーキを定位置に保持するために電力を印加してもよい)、ポールをパークギアとの干渉的な接触にシフトするため、およびポールを後退させるためにのみ印加される。
【0037】
様々なパーキングポール機構が使用され得る。
図12に示されるように、別の適切なパーキングポール機構は、パークギア42、ソレノイドプランジャ44、および、パークギアと直接係合してポールの役割を果たすポール41を含む。駆動系にブレーキをかけて停止させるように、制御システムはソレノイドを操作して、ポールにパークギアとの干渉的な接触をさせ、駆動系を解放するように、制御システムはソレノイドを操作して、ポールをパークギアから後退させる。
図13に示されるように、適切なパーキングポール機構は、パークギア42、滑りポール45、およびカム46を含む。カムは回転ソレノイド47と共に回転し、従動子48と係合し、ポールをパークギアとの干渉的な接触へと押しこむ。カムは偏心的な外形を有してもよく、しかしながら、従動子によってカムに加えられた力がカムを回転させないように、カムローブの従動子に接触する部分は、カムがロックおよび/またはアンロックの位置にあるとき、円形である(例えば、等直径頂部半径を有する非円形カムローブ。ここで、従動子との接触点の半径は、カムシャフトに対して実質的に一定の半径である)。このことは、ロックおよびアンロックに関連づけられたカムローブ部分が、安定な位置を維持することを可能にする。安定な位置を維持してパークギアを解放する分離力を最低限に抑えるように、ポールがパークギアと係合している最中、従動子はカムローブの等半径のセグメントまたは部分に載っている。モータがロック位置において電力を供給される場合、カムを回転させてポールをアンロックするために必要な電力は、一定である、最低限に抑えられている、および/または、減少している。いったんポールがパークギアと干渉的な接触をさせられると、パークギアと干渉的な接触をした状態でポールを保持するにはバッテリ電力は全く必要ない。ポールを解放するためには電力が必要であるが、パークギアから離れた状態にポールを保持するにはバッテリ電力は全く必要ない。ブレーキ機構のポールは制御システムによって制御され、それはさらに、ソレノイドを操作してポールをポールギアと干渉的な接触をさせて駆動系にブレーキをかけ、したがって、圧迫サイクルの高圧迫保持期間、または圧迫サイクルの圧迫間の保持期間などの、圧迫サイクルの期間の最中に、設定された閾値の緊張度で圧迫ベルトを保持するようにプログラミングされる。いったんポールがパークギアと干渉的な接触をさせられると、パークギアと干渉的な接触をした状態にポールを保持するにはバッテリ電力は全く必要ない。ポールを解放するには電力を必要とし得るが、パークギアから離れた状態にポールを保持するにはバッテリ電力は全く必要ない。
【0038】
使用において、CPRプロバイダがデバイスを心停止患者に当て、デバイスの操作を開始する。デバイスに当てるとき、CPRプロバイダは各ベルト端部をそれの対応する中間ベルトに(または対応する駆動スプールに直接)固定するであろう。制御システムが動作して、圧迫の開始のために適切な緊張度を実現するようにベルトを締めるので、ベルトの初期緊張度は重大ではない。ベルトの配置の後、CPRプロバイダは制御パネルによってデバイスの操作を開始する。開始において、制御システムはまずベルトの緊張度を検査する。これを実現するように、制御システムは、まずベルトを緩め(中間ストラップ(またはベルト端部)は、これに対応するために十分長い帯を提供するための位置に設定され、最初に部分的に巻き取られてよい)、たるみがあることを保証し、次に、ベルトが第1の、低閾値の緊張度(たるみ取り位置、またはプリテンションされた位置)で締まっていることを検知するまで、ベルトを締めつけるようにプログラミングされる。制御システムは、電流センサなどの適切なシステムによってこれを検知し、モータによって引きこまれる電流のスパイクを、たるみ取り位置と関連づける。任意のたるみが取り除かれた点でベルトが締まっているとき、胸部を圧迫する負荷のもとで回転を続けるためには、モータはより多くの電流を必要とするであろう。予想されるモータ電流引きこみの速い増加(モータ閾値電流引きこみ)が、電流センサ、分圧器回路などによって測定される。この電流または電圧のスパイクは、ベルトが患者に強く巻かれており、繰り出されたベルト長が適切な開始点にあることを示す信号として理解される。(モータがたるみ取りと一致する抵抗に遭遇した旨を示す正確な電流レベルは、使用されるモータおよびシステムの多くのコンポーネントの質量に応じて変わるであろう。)ベルトまたは他のシステムコンポーネントは、エンコーダアセンブリによって適合され、この点でのエンコーダ測定値は、システム内でゼロにされる(すなわち、ベルトたるみ取りの開始点として理解される)。エンコーダは次に、この締めつけ前の、または「プリテンションされた」位置からのベルトの長さの変化を判断すべくシステムによって使用される情報を提供する。
【0039】
たるみ取りの検出のために、様々な他の手段が使用され得る。制御システムはまた、システムの移動するコンポーネントにおけるエンコーダスケールの分析(ベルト運動の減速とたるみ取り位置とを関連づける)、プラットフォームにおける負荷センサ(検知された負荷の急速な変化とたるみ取り位置とを関連づける)、またはたるみ取りを検知するための任意の他の手段によっても、たるみ取り位置を判断し得る。
【0040】
動作の代替的なモードとして、制御システムは、最初にベルトを締めつける一方、モータ電流センサ(または、たるみ取りを検出するための他の手段)によってベルトへの負荷を検出し、予め定められた閾値を超える負荷などの、たるみ取りを検出したときは、ベルトを緩めてたるませ、次にベルトを締めつけて、たるみ取り位置を検出するように、または、予め定められた閾値より下の負荷を検出したときは、たるみ取り位置へとベルトの締めつけを続けるようにプログラミングされ得る。したがって、デバイスは、プリテンションを実現するように修正されたとき、患者の胸部の下に配置するためのプラットフォーム、患者の前胸壁を覆って延在するように適合された圧迫ベルト、駆動系を通ってベルトに動作可能に接続され、ベルトに患者の胸部の周囲を締めつけさせることおよび患者の胸部の周囲を緩めさせることを繰り返し行う駆動系を動作させることが可能な、モータ、および、モータの動作を制御して、患者の胸部の周囲の繰り返される圧迫サイクルにおいて圧迫ベルトを締めつけおよび緩めさせるように動作可能な制御システムを含み得、上記制御システムはさらに、繰り返される圧迫サイクルの実行の前に、モータを動作させてベルトを緩め、次にモータを動作させて、ベルトがたるみ取り位置へ締めつけられるまでベルトを締めつけることによって、圧迫ベルトをプリテンションするように動作可能である。また、制御システムは、最初にベルトを締めつけ、たるみ取り位置を検出するが、緩める段階なしに、デバイスを操作してCPR胸骨圧迫を提供することへと進むようにも、プログラミングされ得る。
【0041】
段落38から40に説明された各操作において、制御システムは、たるみ取り位置が検出されたとき、制御システムが圧迫サイクルを開始するユーザ入力を待つべく、システムの動作を一時停止するようにプログラミングされてもよく、または、さらなる操作者の入力なしに圧迫サイクルを開始すべく、すぐに進めるようにプログラミングされてもよい。前述の段落で説明されたプリテンション操作の利益は、横断方向に配置された駆動スプール、および駆動スプールへの圧迫ベルトの前部取りつけ具を含む、上記に説明された追加の実施形態の利益と共に達成され得、または、圧迫ベルト上の単一の位置に取りつけられた単一の駆動スプールを含む胸部圧迫ベルト、もしくは、モータに直接接続されるか、もしくは単一のリンク機構によって接続された単一の駆動スプールなどによって、単独で達成され得る。
【0042】
いったんたるみ取り位置が達成されると、制御システムはベルト位置をたるみ取り位置と関連づける。これは、エンコーダのエンコーダ位置を検出し、エンコーダ位置をベルトのたるみ取り位置と関連づけることによって、または、ベルトに固定された圧迫モニタの位置を検出し、この位置をベルトのたるみ取り位置と関連づけることによって、達成され得る。エンコーダ位置が、所望の圧迫深度に対応する、ベルトの巻き取られていない長さを追跡すべく使用される場合、制御システムは、ベルトを(達成される圧迫深度に対応する、横断方向駆動スプールに巻き取られたベルトの長さに基づく)高閾値の緊張度まで締めることと、瞬時的に高閾値できつくベルトを保持することと、ベルトを緩めることと、瞬時的にベルトを、エンコーダ位置を参照して判断されたたるみ取り位置に保持することとを含む、繰り返される圧迫サイクルを提供すべくモータおよびブレーキを操作するようにプログラミングされるであろう。圧迫デバイスによって達成された圧迫深度を追跡すべく、圧迫モニタが使用される場合、制御システムは、ベルトを(圧迫モニタによって測定された圧迫深度に基づく、または圧迫モニタによって生成された信号から判断された)高閾値の緊張度まで締めることと、瞬時的に高閾値できつくベルトを保持することと、ベルトを緩めることと、瞬時的にベルトを、たるみ取り位置に関連づけられた圧迫モニタのゼロ点を参照して判断されたたるみ取り位置に保持することとを含む、繰り返される圧迫サイクルを提供すべくモータおよびブレーキを操作するようにプログラミングされるであろう。
【0043】
圧迫モニタが、システムによって達成される圧迫状態を判断し、システムの制御にフィードバックを提供すべく使用される場合、圧迫センサは、Halperin他の米国特許6,390,996号明細書(2002年5月21日)「CPR Chest Compression Monitor(CPR胸骨圧迫モニタ)」、および、Palazzolo他の米国特許7,122,014号明細書(2006年10月17日)「Method of Determining Depth of Chest Compressions During CPR(CPRの最中の胸部圧迫の深度判定方法)」において説明される圧迫モニタなどの、加速度計ベースの圧迫モニタ、または、Centen他の米国特許出願公開第2012/0083720号明細書(2012年4月5日)「Reference Sensor For CPR Feedback Device」において説明される、磁界ベースの圧迫モニタを含み得る。圧迫モニタは、典型的には、CPR圧迫の最中に達成される圧迫の深度に対応する信号を生成するセンサと、これらの信号に基づいて圧迫の深度を判定するための関連するハードウェア/制御システムとを含む。圧迫モニタシステムのコンポーネントは、ベルトに組み込まれ得る。または、関連するハードウェアおよび制御システムがデバイスの他の場所に位置する一方、センサはベルトに組み込まれ得るか、もしくは、圧迫ベルトを操作する主要制御システムに統合される。繰り返される圧迫サイクルを実行するデバイスを制御する一方、制御システムは圧迫センサまたは圧迫モニタによって提供された圧迫信号または深度測定を使用して、デバイスの操作を制御し得る。制御システムは、圧迫信号から判断されるように、圧迫ベルトが前胸壁を下方向に(前部方向において、脊椎に向かって)、所望の予め定められた圧迫深さ(典型的には1.5から2.5インチ(3.81から6.35cm))で押した旨を、システムによって達成される圧迫の深度が示すまで、ベルトを締めつけるべく操作され得る。所望の深さは予め定められる。それは、制御システム内にプログラミングされるという意味か、制御システムによって判断されるという意味か、システムの操作者によって入力されるという意味である。
【0044】
制御システムは、少なくとも1つのプロセッサと、プログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを含み得、メモリおよびコンピュータプログラムコードは、この明細書を通じて説明される機能をシステムに実行させるためのプロセッサと共に構成される。制御システムの様々な機能が、単一のコンピュータまたは複数のコンピュータにおいて実現され得、汎用コンピュータまたは専用コンピュータによって実現され得、筐体または関連する除細動器に収容され得る。
【0045】
デバイス及び方法の好ましい実施形態が、開発が行われた環境を参照して説明されている一方、それらは発明の例示的な原則にすぎない。様々な実施形態の要素は、それらの要素を他の種類と組み合わせたときの利益を取得するように、そのような他の種類にそれぞれ組み込まれ得、様々な有益な特徴は、単独の、または互いと組み合わせた実施形態において利用され得る。他の実施形態および構成は、発明の思想および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく考案され得る。