(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ダストカバー、サスペンション装置及びダストカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/38 20060101AFI20230209BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20230209BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20230209BHJP
B60G 15/06 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F16F9/38
F16J3/04 B
F16J3/04 D
F16J15/52 Z
B60G15/06
(21)【出願番号】P 2019060543
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000102393
【氏名又は名称】エクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】川野 寛郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭二
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089935(JP,A)
【文献】特開2017-133550(JP,A)
【文献】特開昭60-199632(JP,A)
【文献】特開2016-084890(JP,A)
【文献】特開2015-190552(JP,A)
【文献】特開平10-159975(JP,A)
【文献】特開2008-240774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/38
B29C 49/32
B29C 49/30
F16J 3/04
F16J 15/52
B60G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向が上下方向となるよう配置されブロー成形により成形された熱可塑性樹脂からなる略円筒状のダストカバーと、
前記ダストカバーに径方向外側が覆われるダンパーと、
前記ダストカバーの径方向外側に配置されるコイルスプリングと、
前記ダンパーの上端側が接続され車体に取り付けられるマウント部と、
前記マウント部の下側に配置され、前記コイルスプリングの上端を受容するアッパシートと、を備え、
前記ダストカバーは、前記ダストカバーの上下方向所定区間をなし、上下方向について径方向外側及び内側へ互い違いに傾斜し、径方向内端よりも径方向外端が薄く形成され、上下方向に伸縮可能な蛇腹部と、前記ダストカバーの上下方向所定位置に形成され、前記ダストカバーの筒状部分から径方向外側へ延びるフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は、前記ダストカバーの上端側に配置され、前記蛇腹部における径方向内端及び径方向外端の間の径方向高さ寸法よりも高い寸法で、前記ダストカバーの筒状部分から径方向外側へ突出し、
前記フランジ部の厚さは、前記蛇腹部の径方向外端の厚さよりも厚く、
前記ダストカバーは、前記ダストカバーの上端をなし、前記フランジ部から上方へ突出する突出部を有し、
前記ダストカバーの前記フランジ部は、前記マウント部と前記アッパシートに挟み込まれ、
前記マウント部は、下面に形成され前記ダストカバーの前記突出部を受容する凹部を有するサスペンション装置。
【請求項2】
所定方向へ延びるダンパーの外側を覆い、軸方向に伸縮可能な蛇腹部と径方向外側へ延びるフランジ部とを有する略円筒状のダストカバーの製造方法であって、
ブロー成形に用いられる金型の内壁面は、前記フランジ部に対応する凹所を有し、
前記金型は、前記凹所の軸方向寸法を、前記フランジ部の厚さに対応する最終成形距離と、前記最終成形距離よりも大きい一次成形距離とに変化させる可変機構を有し、
溶融させたチューブ状
の熱可塑性樹脂が、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記一次成形距離とした状態で前記金型の内部に配置される配置工程と、
前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記一次成形距離とした状態のまま、前記配置工程で前記金型の内部に配置された前記熱可塑性樹脂の内部に空気を送り込み、前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記内壁面に沿うよう変形させる一次成形工程と、
前記一次成形工程で成形した前記熱可塑性樹脂のうち前記凹所に入り込んで前記金型の前記内壁面に沿うよう変形した部分を、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記最終成形距離に変化させて、軸方向に潰す二次成形工程と、を含むダストカバーの製造方法。
【請求項3】
前記金型は、前記ダストカバーにおける前記フランジ部より軸方向一方側に対応する第1金型と、前記ダストカバーにおける前記フランジ部より軸方向他方側に対応し前記第1金型に対して軸方向に相対的に移動可能な第2金型と、を有し、
前記内壁面の前記凹所は、前記第1金型及び前記第2金型の内壁面を組み合わせて構成され、前記第1金型及び前記第2金型の軸方向への相対的な移動により軸方向寸法が変化する請求項2に記載のダストカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるダンパーの外側を覆うダストカバーと、このダストカバーを備えたサスペンション装置と、このダストカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両のサスペンション装置として、所定方向へ延びるダンパーと、ダンパーの径方向外側に配置されるコイルスプリングと、コイルスプリングの内側でダンパーの外側を覆う熱可塑性樹脂からなるダストカバーと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のサスペンション装置では、ダストカバーは、蛇腹部と、蛇腹部の端部にて蛇腹部よりも外径が大きく形成されるフランジ部と、を有している。そして、このフランジ部が、ダンパーの上端側が固定され車体側に取り付けられるマウント部と、コイルスプリングの上端を受容するシートラバーと、に挟み込まれている。
【0003】
熱可塑性樹脂からなるダストカバーは、ブロー成形により製造される。ブロー成形では、溶融させたチューブ状の熱可塑性樹脂を金型内に配置した状態で、熱可塑性樹脂の内部に空気を送り込み、熱可塑性樹脂を径方向に膨張させて金型の内壁面に沿った形状に変形させる。すなわち、ブロー成形においては、熱可塑性樹脂における径方向寸法が大きい部分の厚さは、他の部分と比べて薄くなる。これにより、蛇腹部においては径方向内端よりも径方向外端の厚さが薄くなり、蛇腹部の径方向外端側を変形させることで、ダストカバーは軸方向に伸縮可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のダストカバーのように、ダストカバーの筒状部分にフランジ部を設けると、フランジ部が蛇腹部よりも外径が大きい場合、ブロー成形時にフランジ部の厚さが蛇腹部の径方向外端よりもさらに薄くなってしまう。これにより、ダストカバーのフランジ部の強度を十分に確保できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱可塑性樹脂を用いながらもフランジ部の強度が確保されたダストカバー、及び、このダストカバーを備えたサスペンション装置、並びに、このダストカバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明によれば、ブロー成形により成形された熱可塑性樹脂からなり、所定方向へ延びるダンパーの外側を覆う略円筒状のダストカバーであって、前記ダストカバーの軸方向所定区間をなし、軸方向について径方向外側及び内側へ互い違いに傾斜し、径方向内端よりも径方向外端が薄く形成され、軸方向に伸縮可能な蛇腹部と、前記ダストカバーの軸方向所定位置に形成され、前記ダストカバーの筒状部分から径方向外側へ延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部は、前記蛇腹部における径方向内端及び径方向外端の間の径方向高さ寸法よりも高い寸法で、前記ダストカバーの筒状部分から径方向外側へ突出し、前記フランジ部の厚さは、前記蛇腹部の径方向外端の厚さよりも厚いダストカバーが提供される。
【0008】
このダストカバーによれば、蛇腹部の径方向外端の厚さを比較的薄くして伸縮機能を確保しつつ、フランジ部の厚さを比較的厚くしてフランジ部の強度を確保することができる。
【0009】
また、上記ダストカバーにおいて、前記フランジ部の厚さは、前記蛇腹部の径方向外端の厚さの2倍以上であってもよい。
【0010】
また、上記ダストカバーにおいて、前記フランジ部は、前記ダストカバーの軸方向一端側に配置されてもよい。
【0011】
このダストカバーによれば、フランジ部を他部品へ係わらせることで、ダストカバーの軸方向一端側を他部品へ取り付けることができる。
【0012】
また、上記ダストカバーにおいて、前記ダストカバーの軸方向一端をなし、前記フランジ部から軸方向一方へ突出する突出部を有してもよい。
【0013】
このダストカバーによれば、ブロー成形時に軸方向端部に筒状の不要部分が形成されるところ、突出部等が形成されずにフランジ部が軸方向一端をなす場合、軸方向一端の切断等の処理が極めて煩雑で製造コストが増大してしまうが、フランジ部の軸方向一方側に突出部を形成することにより軸方向一端の処理が容易となりコスト低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明によれば、軸方向が上下方向となるよう配置された上記ダストカバーと、前記ダストカバーに径方向外側が覆われるダンパーと、前記ダストカバーの径方向外側に配置されるコイルスプリングと、前記ダンパーの上端側が接続され車体に取り付けられるマウント部と、前記マウント部の下側に配置され、前記コイルスプリングの上端を受容するアッパシートと、を備え、前記ダストカバーの前記フランジ部は、前記マウント部と前記アッパシートに挟み込まれるサスペンション装置が提供される。
【0015】
このサスペンション装置によれば、ダストカバーにおけるマウント部への取り付け箇所であるフランジ部が厚く形成されているため、ダストカバーにおいて比較的負荷の加わりやすいマウント部への取り付け箇所の強度を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、軸方向が上下方向となるよう配置された上記ダストカバーと、前記ダストカバーに径方向外側が覆われるダンパーと、前記ダストカバーの径方向外側に配置されるコイルスプリングと、前記ダンパーの上端側が接続され車体に取り付けられるマウント部と、前記マウント部の下側に配置され、前記コイルスプリングの上端を受容するアッパシートと、を備え、前記ダストカバーの前記フランジ部は、前記マウント部と前記アッパシートに挟み込まれ、前記マウント部は、下面に形成され前記ダストカバーの前記突出部を受容する凹部を有するサスペンション装置が提供される。
【0017】
このサスペンション装置によれば、ダストカバーの製造コストの低減を図りつつ、ダストカバーのマウント部への取り付け箇所の強度を向上させることができる。
【0018】
さらにまた、本発明では、上記ダストカバーの製造方法であって、ブロー成形に用いられる金型の内壁面は、前記フランジ部に対応する凹所を有し、前記金型は、前記凹所の軸方向寸法を、前記フランジ部の厚さに対応する最終成形距離と、前記最終成形距離よりも大きい一次成形距離とに変化させる可変機構を有し、溶融させたチューブ状の前記熱可塑性樹脂が、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記一次成形距離とした状態で前記金型の内部に配置される配置工程と、前記配置工程で前記金型の内部に配置された前記熱可塑性樹脂の内部に空気を送り込み、前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記内壁面に沿うよう変形させる一次成形工程と、前記一次成形工程で成形した前記熱可塑性樹脂のうち前記凹所に入り込んだ部分を、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記最終成形距離に変化させて、軸方向に潰す二次成形工程と、を含むダストカバーの製造方法が提供される。
【0019】
このダストカバーの製造方法によれば、一次成形工程でフランジ部の厚さより大きな軸方向寸法の凹所に入り込んだ溶融樹脂は、二次成形工程でフランジ部の厚さにまで軸方向に潰される。これにより、熱可塑性樹脂のブロー成形であっても、フランジ部の厚さを比較的厚くすることができる。
【0020】
さらにまた、本発明では、所定方向へ延びるダンパーの外側を覆い、軸方向に伸縮可能な蛇腹部と径方向外側へ延びるフランジ部とを有する略円筒状のダストカバーの製造方法であって、ブロー成形に用いられる金型の内壁面は、前記フランジ部に対応する凹所を有し、前記金型は、前記凹所の軸方向寸法を、前記フランジ部の厚さに対応する最終成形距離と、前記最終成形距離よりも大きい一次成形距離とに変化させる可変機構を有し、溶融させたチューブ状の前記熱可塑性樹脂が、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記一次成形距離とした状態で前記金型の内部に配置される配置工程と、前記配置工程で前記金型の内部に配置された前記熱可塑性樹脂の内部に空気を送り込み、前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記内壁面に沿うよう変形させる一次成形工程と、前記一次成形工程で成形した前記熱可塑性樹脂のうち前記凹所に入り込んだ部分を、前記内壁面の前記凹所の軸方向寸法を前記最終成形距離に変化させて、軸方向に潰す二次成形工程と、を含むダストカバーの製造方法が提供される。
【0021】
このダストカバーの製造方法によれば、一次成形工程でフランジ部の厚さより大きな軸方向寸法の凹所に入り込んだ溶融樹脂は、二次成形工程でフランジ部の厚さにまで軸方向に潰される。これにより、熱可塑性樹脂のブロー成形であっても、フランジ部の厚さを比較的厚くすることができる。
【0022】
また、上記ダストカバーの製造方法において、前記金型は、前記ダストカバーにおける前記フランジ部より軸方向一方側に対応する第1金型と、前記ダストカバーにおける前記フランジ部より軸方向他方側に対応し前記第1金型に対して軸方向に相対的に移動可能な第2金型と、を有し、前記内壁面の前記凹所は、前記第1金型及び前記第2金型の内壁面を組み合わせて構成されてもよい。
【0023】
このダストカバーの製造方法によれば、凹所の軸方向寸法は、第1金型及び第2金型の軸方向への相対的な移動により変化する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ダストカバーに熱可塑性樹脂を用いながらも、ダストカバーのフランジ部の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態を示すサスペンション装置の概略説明図である。
【
図2】サスペンション装置の上部拡大説明図である。
【
図3】チューブ状の溶融樹脂が分割された金型の間に配置された状態を示す説明図である。
【
図4】溶融樹脂が閉じられた金型の内部に配置された状態を示す説明図である。
【
図5】金型内部の溶融樹脂に空気が送り込まれた状態を示す説明図である。
【
図6】金型内壁面の凹所の溶融樹脂が潰された状態を示す説明図である。
【
図7】金型を分割して固化した中空樹脂成形品が取り出される状態を示す説明図である。
【
図8】中空樹脂成形品の軸方向両端が切断される状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から
図8は本発明の一実施形態を示すものであり、
図1はサスペンション装置の概略説明図、
図2はサスペンション装置の拡大説明図、
図3はチューブ状の溶融樹脂が分割された金型の間に配置された状態を示す説明図、
図4は溶融樹脂が閉じられた金型の内部に配置された状態を示す説明図、
図5は金型内部の溶融樹脂に空気が送り込まれた状態を示す説明図、
図6は金型内壁面の凹所の溶融樹脂が潰された状態を示す説明図、
図7は金型を分割して固化した中空樹脂成形品が取り出される状態を示す説明図、
図8は中空樹脂成形品の軸方向両端が切断される状態を示す説明図である。
【0027】
図1に示すように、このサスペンション装置1は、車体200と車輪(図示せず)の間に配置され、車体200に対する車輪の上下動を弾性的に受け止めるコイルスプリング2と、コイルスプリング2の内側に配置され当該上下動を減衰させるダンパー3と、を有する。サスペンション装置1は、ダンパー3の上端側が取り付けられ車体200に固定されるマウント部4と、ダンパー3の下端側に形成され車輪側と連結されるブラケット5と、を有する。また、サスペンション装置1は、コイルスプリング2の内側に配置され、ダンパー3の外側を覆うダストカバー6を有する。本実施形態においては、ダストカバー6は、軸方向が上下方向となるよう配置されている。
【0028】
ダンパー3は、上下方向へ延びるシリンダケース31と、シリンダケース31の上端から上方へ延び上下に移動可能なピストンロッド32と、を有する。ピストンロッド32の上端側は、ゴム材からなるブッシュ41を介してマウント部4に固定される。本実施形態においては、ブラケット5は、シリンダケース31の下端に設けられる。また、ダンパー3は、シリンダケース31から径方向外側へ延びコイルスプリング2の下端を受容するロアシート33を有する。
【0029】
コイルスプリング2は、下端がロアシート33に受容され、上端がトップマウント4の下側に配置されたゴム材からなるアッパシート42に受容される。また、マウント部4とアッパシート42の間にはダストカバー6のフランジ部63が挟み込まれている。
【0030】
ダストカバー6は、熱可塑性樹脂からなり、ブロー成形により製造される。ここでいう「熱可塑性樹脂」には、硬度の比較的低いプラスチックの他、柔軟でゴム弾性を示す熱可塑性エラストマーも含まれる。ダストカバー6の熱可塑性樹脂としては、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等のポリエチレンや、TPO(オレフィン系エラストマー)、TPV(動的架橋エラストマー)、TPC(ポリエステル系エラストマー)、TPU(ウレタン系エラストマー)等の熱可塑性エラストマーを好適に用いることができる。また、ダストカバー6の熱可塑性樹脂は、柔軟性を有し、曲げ弾性率もしくは引張弾性率が1000MPa以下が好ましく、500MPa以下がより好ましい。
【0031】
ダストカバー6は、略円筒状に形成され、アッパシート42からロアシート33にかけてダンパー3の外側を覆う。ダストカバー6は、軸方向について所定区間だけ形成される蛇腹部61と、蛇腹部61の上端から上方へ延びる上端側円筒部62と、上端側円筒部62の軸方向所定箇所から径方向外側へ延びるフランジ部63と、蛇腹部61の下端から下方へ延びる下端側円筒部64と、下端側円筒部64の下端から下方へ向かって拡がる拡開下端部65と、を有する。具体的に、蛇腹部61は、上下方向について径方向内側及び外側へ互い違いに傾斜し、径方向内端よりも径方向外端が薄く形成され、上下方向に伸縮可能となっている。本実施形態においては、フランジ部63がダストカバー6の上端側に配置され、フランジ部63を他部品へ係わらせることで、ダストカバー6の上端側が他部品へ取り付けられる。
図2に示すように、本実施形態においては、フランジ部63は上端側円筒部62の上端から離隔して形成され、上端側円筒部62のフランジ63の上側が、フランジ部63の上面から上方に突出する突出部62bをなしている。
【0032】
本実施形態においては、突出部62bは、トップマウント4の下面43に周方向へ延びるよう形成された凹部44に受容される。ここで、フランジ部63は、蛇腹部61における径方向内端及び径方向外端の間の径方向高さ寸法よりも高い寸法で、ダストカバー6の上端側円筒部62から径方向外側へ突出する。すなわち、フランジ部63は、蛇腹部61の谷部61aと山部61bの間の径方向寸法よりも大きく径方向外側へ突出している。また、フランジ部63の厚さは、蛇腹部61の径方向外端の厚さよりも厚く形成されている。従って、蛇腹部61の径方向外端の厚さを比較的薄くして伸縮機能を確保しつつ、フランジ部63の厚さを比較的厚くしてフランジ部の強度を確保することができる。フランジ部63と蛇腹部61の厚さの比率は任意であるが、例えば、フランジ部63の径方向外端の厚さを、蛇腹部61の径方向外端の厚さの2倍以上とすることができる。
【0033】
ダストカバー6は、ブロー成形により作製されているため、厚さが一様ではない。ダストカバー6の各部の厚さは任意であるが、例えば、上側円筒部62及び下型円筒部64の厚さを0.7mm以上0.9mm以下、フランジ部63の基端の厚さを0.8mm以上1.2mm以下、フランジ部63の先端の厚さを0.6mm以上1.0mm以下、蛇腹部61の谷部61aの厚さを0.7mm以上0.9mm以下、蛇腹部61の山部61bの厚さを0.2mm以上0.4mm以下とすることができる。
【0034】
ここで、ダストカバー6の製造方法を、
図3から
図8を参照して説明する。
図3から
図7に示すように、ブロー成形に用いられる金型100の内壁面110はフランジ部63に対応する凹所130を有しており、金型100は凹所130の軸方向寸法を変化させる可変機構を有している。本実施形態においては、金型100を軸方向一方の第1金型101と軸方向他方の第2金型102から構成し、金型100を閉じた状態のまま第2金型102を第1金型101に対して軸方向へ移動可能とすることで、可変機構を実現している。
図3から
図7の例では、第1金型101を上側に配置し、第2金型102を下側に配置している。可変機構は、凹所130の軸方向寸法を、フランジ部63の厚さに対応する最終成形距離と、最終成形距離よりも大きい一次成形距離とに変化させる。尚、第1金型101及び第2金型102は、それぞれ、中心軸を通る面で分割可能となっている。
【0035】
具体的に、第1金型101の内壁面111は、ダストカバー6のフランジ部63より下側に対応した形状の主壁面112と、溶融樹脂300のエアー導入口310に対応し上下に延びる導入壁面113と、主壁面112の上端と導入壁面113の下端を接続し水平に延びる接続壁面114と、ダストカバー6のフランジ部63に対応し主壁面112の下端から左右外側へ延びる第1フランジ壁面115と、第1フランジ壁面115の左右外端から下方へ延びる垂直壁面116と、を有する。第1金型101の垂直壁面116により画成される空間には、第2金型102が配置される。
【0036】
第2金型102の外壁面122は、上下方向へ延び、第1金型101の垂直壁面116と接触する。これにより、第2金型102は、第1金型101の軸方向他端(下端)を閉塞するとともに、第1金型101の垂直壁面116に案内されて軸方向へ移動する。第2金型102の内壁面121は、ダストカバー6のフランジ部63より上側に対応した形状の主壁面123と、主壁面123の下端から水平に延び溶融樹脂300の下端側を閉塞する閉塞壁面124と、ダストカバー6のフランジ部63に対応し主壁面123の上端から左右外側へ延びる第2フランジ壁面125と、を有する。本実施形態においては、凹所130は、第1金型110の第1フランジ壁面115及び垂直壁面116と、第2金型102の第2フランジ壁面125と、により形成され、第2金型102の軸方向への移動により軸方向寸法が変化する。
【0037】
以上のように構成された金型100を用いてダストカバー6を製造するにあたり、まず、原料となる熱可塑性樹脂を溶融させ、押出機を用いて円筒形状で押し出し、チューブ状の溶融樹脂300とする。
図3に示すように、この溶融樹脂300を、分割された第1金型101及び第2金型102の間に配置する(準備工程)。
【0038】
次に、
図4に示すように、第1金型101及び第2金型102を閉じて、溶融樹脂300を金型100の内部に配置された状態とする(配置工程)。このとき、内壁面110の凹所130は、フランジ部63の厚さより大きな一次成形距離とされている。尚、本実施形態においては、ダストカバー6は上下を反転させた状態で成形される。
【0039】
そして、
図5に示すように、金型100の内部に配置された溶融樹脂300の内部に空気を送り込み、溶融樹脂300を金型100の内壁面110に沿うよう変形させる(一次成形工程)。このとき、他部と比べて厚さが薄くなるものの、内壁面110の凹所130にも溶融樹脂300が入り込む。
【0040】
次いで、
図6に示すように、溶融樹脂300が冷却する前に、第2金型102を凹所130の軸方向寸法をフランジ部63の厚さに対応する最終成形距離に変化させて、凹所130内の溶融樹脂300を潰す(二次成形工程)。すなわち、一次成形工程でフランジ部63の厚さより大きな軸方向寸法の凹所130に入り込んだ溶融樹脂300は、二次成形工程でフランジ部63の厚さにまで軸方向に潰される。これにより、熱可塑性樹脂のブロー成形であっても、フランジ部63の厚さを比較的厚くすることができる。
【0041】
図7に示すように、溶融樹脂300が冷却されて固化した後、第1金型100及び第2金型120が分割され、固化した中空樹脂成形品が取り出される(離型工程)。中空樹脂成形品は、軸方向両端に不要部分が形成された状態となっている。
【0042】
図8に示すように、中空樹脂成形品の不要部分を切断して、ダストカバー6が完成する。このように、ブロー成形時にダストカバー6の軸方向端部に筒状の不要部分が形成されるところ、突出部62b等が形成されずにフランジ部63が軸方向一端をなす場合、軸方向一端の切断等の処理が極めて煩雑で製造コストが増大してしまうが、フランジ部63の軸方向一方側に突出部62bを形成することにより軸方向一端の処理が容易となりコスト低減を図ることができる。
【0043】
このサスペンション装置1によれば、ダストカバー6におけるマウント部4への取り付け箇所であるフランジ部63が厚く形成されているため、ダストカバー6において比較的負荷の加わりやすいマウント部4への取り付け箇所の強度を向上させることができる。また、ダストカバー6の突出部62bがマウント部4の凹部44に受容されるようにしたので、ダストカバー6の製造コストの低減を図りつつ、突出部62bが他の部品等に干渉しない構成とすることができる。
【0044】
尚、前記実施形態においては、ダストカバー6の上端のフランジ部63に突出部62bが形成されたものを示したが、フランジ部63がダストカバー6の軸方向端部をなすよう構成してもよいことは勿論である。この場合、マウント部4の凹部44は不要である。また、ダストカバー6におけるフランジ部63が形成される軸方向位置も適宜変更することができる。
【0045】
また、前記実施形態においては、金型100を第1金型101と第2金型102から構成し、第1金型101と第2金型102を相対的に移動させることにより金型100の凹所130の軸方向寸法を変化させるものを示したが、他の可変機構を用いて凹所の寸法を変化させるようにしてもよい。
【0046】
また、前記実施形態においては、凹所130の軸方向寸法を変化させる金型100を用いた製造方法をダストカバー6に適用したものを示したが、蛇腹部及びフランジ部を有する略円筒形状の熱可塑性樹脂からなる部品であれば、空調用ダクトのようなダストカバー6以外の部品にも適用が可能である。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0048】
1 サスペンション装置
2 コイルスプリング
3 ダンパー
4 マウント部
6 ダストカバー
44 凹部
61 蛇腹部
62b 突出部
63 フランジ部
100 金型
101 第1金型
102 第2金型
110 内壁面
111 内壁面
121 内壁面
130 凹所
200 車体
300 溶融樹脂