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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】振動ジャイロ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5677 20120101AFI20230209BHJP
   G01C 19/5691 20120101ALI20230209BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20230209BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20230209BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20230209BHJP
【FI】
G01C19/5677
G01C19/5691
H01L41/113
H01L41/187
H01L41/047
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019111920
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020204506
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】帯谷 和敬
(72)【発明者】
【氏名】土屋 智由
(72)【発明者】
【氏名】荒屋 和貴
(72)【発明者】
【氏名】谷内 雅紀
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04655081(US,A)
【文献】国際公開第2011/004669(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031748(WO,A1)
【文献】特開2001-324332(JP,A)
【文献】特開平03-106083(JP,A)
【文献】特開平11-304494(JP,A)
【文献】特開平11-006734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
H01L 27/20
41/00-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮退モードのワイングラス振動あるいは円環広がり振動で駆動、検出する振動ジャイロであって、
互いに対向する一対の主面を有する圧電基板と、
前記圧電基板を、前記主面に平行かつ互いに直交する2つの駆動軸の方向に振動させる電界を前記圧電基板に印加するための駆動用電極と、
前記圧電基板の、前記駆動軸の間を等分する2つの検出軸の方向の振動によって前記圧電基板に励起される電荷を検出するための検出用電極と、
を備え、
前記圧電基板は、
三方晶系の点群3mに分類される単結晶の圧電材料からなり、
前記単結晶の結晶軸X,Y,ZのうちZ軸が分極方向であり、
前記結晶軸X,Y,Zによる結晶XYZ座標系を右手系オイラー角の定義に従って、前記Z軸周りに角度ψ回転したX'Y'Z'座標系を、さらにX'軸周りに角度θ回転したX''Y''Z''座標が前記圧電基板のウエハ座標系であるとすると、
2つの前記駆動軸と2つの前記検出軸とのうち一方は、X''軸又はY''軸に平行であり、
2つの前記駆動軸と2つの前記検出軸とのうち他方は、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する2つの直線のうち一方又は他方に平行であり、
前記圧電基板の前記主面方向の弾性コンプライアンスが前記主面内の方位によらず略一定であることを特徴とする、振動ジャイロ。
【請求項2】
前記圧電基板は、ニオブ酸リチウムの単結晶からなり、
-4°<ψ<4°、かつ、63°<θ<67°
であることを特徴とする、請求項1に記載の振動ジャイロ。
【請求項3】
前記圧電基板は、カット角が155°以上、かつ156°以下のYカット板であることを特徴とする、請求項2に記載の振動ジャイロ。
【請求項4】
前記圧電基板の形状は、円形又は正多角形であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の振動ジャイロ。
【請求項5】
前記駆動用電極又は前記検出用電極は、
2つの前記駆動軸及び2つの前記検出軸それぞれを含み前記圧電基板の前記主面に垂直である4つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の8つの領域のうち、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する前記直線に平行である前記仮想面を挟んで互いに隣り合う2つの前記領域に、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含み、
対になるように配置された前記45°モード用電極は、互いに逆位相の電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記対向領域に45°モードで振動しているときに前記主面と平行方向に生じたひずみによって互いに逆位相の電荷が検出されるように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の振動ジャイロ。
【請求項6】
前記駆動用電極又は前記検出用電極は、
前記駆動軸又は前記検出軸を含み前記X''軸及び前記Y''軸それぞれに平行かつ前記圧電基板の前記主面に垂直である2つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の4つの領域のうち少なくとも1つに、当該領域の隣接する前記領域との2つの境界線の間を等分する方向に間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含み、
対になるように配置された前記45°モード用電極は、電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記中間領域に45°モードの振動によって前記主面と平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の振動ジャイロ。
【請求項7】
前記駆動用電極又は前記検出用電極は、
2つの前記駆動軸及び2つの前記検出軸それぞれを含み前記圧電基板の前記主面に垂直である4つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の8つの領域のうち、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する前記直線に平行である前記仮想面を挟んで互いに隣り合う2つの前記領域に、間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含み、
対になるように配置された前記45°モード用電極は、電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記中間領域に45°モードの振動によって前記主面と平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の振動ジャイロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動ジャイロに関し、詳しくは、縮退モードのワイングラス振動あるいは円環広がり振動で駆動、検出する振動ジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転や鉄道の自動操舵台車といった技術が注目されている。これらの制御には、自車の姿勢を高精度でセンシング可能な角速度センサ(ジャイロスコープ、以下、「ジャイロ」という。)が必要不可欠である。このような用途には、従来、バイアス安定性が0.01~1°/h程度を実現する光ファイバージャイロやリングレーザージャイロ等の光学式が用いられているが、非常に高価である。そこで、バイアス安定性が10~1,000°/h程度で比較的安価なMEMS振動ジャイロの高性能化が期待されている。
【0003】
MEMS振動ジャイロの駆動検出方式には静電型や圧電型があり、その性能は電気機械結合係数、Q値ともに高いほど良い。高いQ値が期待できる単結晶材料が利用可能な静電型や水晶を用いた圧電型は、結合係数が低い。一方で、高い結合係数を有するチタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」という。)などのペロブスカイト型圧電材料は、多結晶であるため、Q値が数100程度と低い。
【0004】
そこで高い結合係数と、10,000以上の高いQ値とを兼ね備えたイルメナイト型単結晶圧電材料であるニオブ酸リチウム(LiNbO、以下、「LN」という。)を用いた音叉型振動ジャイロが開発されている。しかし,脆性材料であるLNは機械加工が困難であり、エッチング耐性も非常に高いため、設計自由度が低く、その性能は頭打ちになっている。
【0005】
MEMS振動ジャイロには音叉型の他に、プレート型やリング・ディスク型がある。これらでは、駆動振動と検出振動の共振周波数を一致させ、縮退モードで駆動、検出し、駆動、検出周波数を低くすることで高性能化が可能であり、対称構造にすることで他軸感度の低減も可能である。現在、静電プレート型や静電リング型が報告されており、バイアス安定性は0.1°/h台を実現している。
【0006】
例えば図24は、PZTの多結晶圧電セラミックのディスク型振動ジャイロの断面図である。図24に示すように、ディスク型の圧電基板101の主面103に、円周方向に8分割された電極105~112が形成されている。振動回路及び能動ゲイン制御システム117の一方の端子Tに、互いに対向する電極105,106が接続され、他方の端子Tに互いに対向する電極107,108が接続されている。また、フィードバックシステム18の一方の端子Tに、互いに対向する電極109,110が接続され、他方の端子Tに互いに対向する電極111,112が接続されている。電極105,106と電極107,108とによって逆位相の電界を厚み方向に印加して圧電基板101を駆動し、電極109,110と電極111,112との電荷を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図25は、単結晶圧電材料の音叉型ジャイロの斜視図である。図25に示すように、この音叉型ジャイロは、アームの内側と外側、アームの表面と裏面において、駆動電極及び/または検出電極を非対称に形成して、不正振動と漏れ出力とを少なくするように構成されている。すなわち、一方のアーム202の表裏面の内側に設ける駆動電極211は、その表裏面の外側に設ける駆動電極213より小さい。他方のアーム203の外側側面に設ける検出電極224の長さは、符号xで示す寸法分が短い。アーム202の表裏面に設ける駆動電極211,213は、アーム202とベース204との境界位置からベース204側に、符号fで示す寸法分だけ延在する。アーム203の表裏面に設ける検出電極221は、アーム203とベース204との境界位置からベース204側に、符号gで示す寸法分だけ延在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4655081号明細書
【文献】特許第3336451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の振動ジャイロは、PZTセラミック板107に用いるPZTが多結晶であるため、結晶粒界や方位のばらつきに起因する機械的損失が大きい。特許文献2のジャイロ210は、高い加工精度が必要である。また、常に面外(検出)振動への漏れ振動が高精度化への課題になる。
【0010】
前述したように、逆圧電効果を駆動、圧電効果を検出に用いる方式の振動ジャイロは、一般に電気機械結合係数が高いので、高性能化に最も適している。また、単結晶材料は、多結晶材料に比べ、材料内部の損失が小さいため、高い振動Q値が期待できる。このため、単結晶圧電材料を用いた振動ジャイロが求められる。
【0011】
ジャイロの構造については音叉型やディスク型、半球型などがあるが、ジャイロの高性能化のためには、構造の対称性が高く中央で支持が可能なディスク型、半球型が好ましい。また、高性能化には、駆動方式として輪郭振動モードが好ましい。
【0012】
従来、静電容量検出型の単結晶シリコンのディスク構造、石英による半球、ドーナツ形状のデバイスが検討されている。しかしながら、静電容量検出は電気機械結合係数が小さいという課題がある。
【0013】
単結晶圧電材料を用いたディスク型、半球型ジャイロは、これまで実現されていない。その理由は、単結晶材料の持つ物性(剛性,圧電特性など)の結晶異方性が課題となるからである。高い性能を得るためには、構造だけでなく、物性の非対称性が問題となる。
【0014】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、単結晶圧電材料を用いた振動ジャイロを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した振動ジャイロを提供する。
【0016】
振動ジャイロは、縮退モードのワイングラス振動あるいは円環広がり振動で駆動、検出する振動ジャイロであって、(a)互いに対向する一対の主面を有する圧電基板と、(b)前記圧電基板を、前記主面に平行かつ互いに直交する2つの駆動軸の方向に振動させる電界を前記圧電基板に印加するための駆動用電極と、(c)前記圧電基板の、前記駆動軸の間を等分する2つの検出軸の方向の振動によって前記圧電基板に励起される電荷を検出するための検出用電極と、を備える。前記圧電基板は、三方晶系の点群3mに分類される単結晶の圧電材料からなり、前記単結晶の結晶軸X,Y,ZのうちZ軸が分極方向であり、前記結晶軸X,Y,Zによる結晶XYZ座標系を右手系オイラー角の定義に従って、前記Z軸周りに角度ψ回転したX'Y'Z'座標系を、さらにX'軸周りに角度θ回転したX''Y''Z''座標が前記圧電基板のウエハ座標系であるとすると、2つの前記駆動軸と2つの前記検出軸とのうち一方は、X''軸又はY''軸に平行であり、2つの前記駆動軸と2つの前記検出軸とのうち他方は、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する2つの直線のうち一方又は他方に平行であり、前記圧電基板の前記主面方向の弾性コンプライアンスが前記主面内の方位によらず略一定である。
【0017】
上記構成において、駆動用電極を用いて圧電基板に電界を印加して、圧電基板を駆動軸の方向に縮退モードで振動させ、検出軸の方向の縮退モードの振動で励起される電荷を検出用電極を用いて検出する。
【0018】
上記構成によれば、圧電基板は略等方であるので、機械特性が、動作モードに対応した方位で実質的に一定値であり、縮退モードで駆動し検出する振動ジャイロを構成することができる。
【0019】
なお、「前記圧電基板の前記主面方向の弾性コンプライアンスが前記主面内の方位によらず略一定である」とは、圧電基板の主面方向の弾性コンプライアンスの主面内の方位による差が実質的に無視できる程度であることを意味し、後述する変動係数C.V.(ψ,θ)が1%未満である場合をいう。
【0020】
好ましくは、前記圧電基板は、ニオブ酸リチウム(LN)の単結晶からなり、-4°<ψ<4°、かつ、63°<θ<67°である。
【0021】
この圧電基板の場合、弾性コンプライアンスの主面内における変動係数C.V.(ψ,θ)が1%未満である。
【0022】
好ましくは、前記圧電基板は、カット角が155°以上、かつ156°以下のYカット板である。
【0023】
この場合、前記変動係数がほぼ0であり、駆動軸、検出軸方向の共振周波数が概略一致する。
【0024】
上述したように、圧電基板は、2つの駆動軸及び2つの検出軸それぞれを中心として線対称な形状である。
【0025】
好ましくは、前記圧電基板の形状は、円形又は正多角形である。
【0026】
この場合、圧電基板の加工が容易である。
【0027】
好ましい一態様において、前記駆動用電極又は前記検出用電極は、2つの前記駆動軸及び2つの前記検出軸それぞれを含み前記圧電基板の前記主面に垂直である4つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の8つの領域のうち、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する前記直線に平行である前記仮想面を挟んで互いに隣り合う2つの前記領域に、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含む。対になるように配置された前記45°モード用電極は、互いに逆位相の電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記対向領域に45°モードで振動しているときに前記主面と平行方向に生じたひずみによって互いに逆位相の電荷が検出されるように構成されている。
【0028】
好ましい他の態様において、前記駆動用電極又は前記検出用電極は、前記駆動軸又は前記検出軸を含み前記X''軸及び前記Y''軸それぞれに平行かつ前記圧電基板の前記主面に垂直である2つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の4つの領域のうち少なくとも1つに、当該領域の隣接する前記領域との2つの境界線の間を等分する方向に間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含む。対になるように配置された前記45°モード用電極は、電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記中間領域に45°モードの振動によって前記主面と平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように構成されている。
【0029】
好ましいさらに別の態様において、前記駆動用電極又は前記検出用電極は、2つの前記駆動軸及び2つの前記検出軸それぞれを含み前記圧電基板の前記主面に垂直である4つの仮想面によって分割される前記圧電基板の少なくとも一方の前記主面の8つの領域のうち、前記X''軸及び前記Y''軸の間を等分する前記直線に平行である前記仮想面を挟んで互いに隣り合う2つの前記領域に、間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極を含む。対になるように配置された前記45°モード用電極は、電圧が印加されると、前記圧電基板内の当該45°モード用電極に対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための前記主面と平行方向のひずみを生成するように、又は、前記圧電基板内の前記中間領域に45°モードの振動によって前記主面と平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように構成されている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、単結晶圧電材料を用いた振動ジャイロを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1はワイングラス振動の説明図である。(実施例1)
図2図2はウエハの説明図である。(実施例1)
図3図3は圧電基板の0°モードの振動の説明図である。(実施例1)
図4図4は圧電基板の45°モードの振動の説明図である。(実施例1)
図5図5は振動体の説明図である。(実施例1)
図6図6は振動体の要部拡大平面図である。(実施例1)
図7図7はオイラー角の説明図である。(実施例1の解析例)
図8図8は変動係数の分布図である。(実施例1の解析例)
図9図9図8の拡大図である。(実施例1の解析例)
図10図10は電気機械結合係数の分布図である。(実施例1の解析例)
図11図11は振動のシミュレーション結果を示す図である。(実施例1の解析例)
図12図12は振動体の製造工程の説明図である。(実施例1の試作例)
図13図13は振動体の写真である。(実施例1の試作例)
図14図14は振動ジャイロの断面図である。(実施例1の試作例)
図15図15は振動ジャイロの写真である。(実施例1の試作例)
図16図16はインピーダンス特性のグラフである。(実施例1の試作例)
図17図17は共振端の速度のグラフである。(実施例1の試作例)
図18図18は圧電基板の平面図である。(変形例1)
図19図19は振動体の平面図である。(変形例2)
図20図20は振動体の平面図である。(変形例3)
図21図21は振動体の断面図である。(変形例3)
図22図22は振動体の平面図である。(変形例4)
図23図23は振動体の断面図である。(変形例4)
図24図24はディスク型振動ジャイロの説明図である。(従来例1)
図25図25は音叉型振動ジャイロの説明図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
<実施例1> 縮退モードのワイングラス振動あるいは円環広がり振動で駆動、検出する実施例1の振動ジャイロについて、図1図17を参照しながら説明する。
【0034】
まず、振動ジャイロの駆動原理について説明する。図1は、ワイングラス振動の説明図である。図1に示すように、振動体90の円形の輪郭90aを含む面と平行、かつ、互いに直交する2つの軸を第1軸及び第2軸とし、振動体90の輪郭90aを含む面に垂直な軸を第3軸とする。第1軸、第2軸、及び第3軸は、振動体90の中心を通る。
【0035】
図1(a)は、0°-90°モード(以下、「0°モード」という。)の説明図である。図1(a)に示すように、0°モードの振動では、振動体90の輪郭90aは、鎖線で示すように第1軸方向(第1軸に対して0°の方向)に広がり第2軸方向(第1軸に対して90°の方向)に縮む変形と、破線で示すように第1軸方向に縮み第2軸方向に広がる変形とを繰り返す。
【0036】
図1(b)は、45°-135°モード(以下、「45°モード」という。)の説明図である。図1(b)に示すように、45°モードの振動では、振動体90の輪郭90aは、鎖線で示すように第1軸に対して反時計まわりに45°の方向に広がり第2軸に対して反時計まわりに135°の方向に縮む変形と、破線で示すように第1軸に対して反時計まわりに45°の方向に縮み第2軸に対して反時計まわりに135°の方向に広がる変形とを繰り返す。
【0037】
振動体90が等方であれば、振動体90は、0°モードで第1軸及び第2に関して対称に変形し、45°及び135°方向は振動の節になるので、45°モードの振動は発生しない。0°モードで振動しているとき、第3軸まわりに角速度Ωが作用すると、コリオリ力によって振動体90の対称な振動が歪み、45°モードの振動が励振される。この励振された45°モードの振動を検出することによって、第3軸まわりの角速度Ωを計測することができる。
【0038】
このように、0°モードで駆動し、45°モードで検出するとき、第1軸及び第2軸は駆動軸であり、第1軸及び第2軸の間を等分する軸が検出軸である。45°モードで駆動し、0°モードで検出することも可能である。この場合、第1軸及び第2軸は検出軸であり、第1軸及び第2軸の間を等分する軸が駆動軸である。
【0039】
0°モードと45°モードで振動する圧電基板は、2つの駆動軸と2つの検出軸とのそれぞれを中心として線対称な形状である。
【0040】
図3及び図4は、圧電基板92,94が振動する場合の説明図である。図3及び図4において、第1軸及び第2軸は、圧電基板92,94の主面92s,92t;94s,94tに平行、かつ、互いに直交する。第3軸は、圧電基板92,94の主面92s,92t;94s,94tに垂直である。
【0041】
図3は、0°モードの説明図である。図3(a)に示すように、圧電基板92の主面92s,92tに形成された電極96間に電圧を印加すると、矢印81a,81bで示すように第1軸方向に伸び、矢印82a,82bで示すように第2軸方向に縮む。図3(b)に示すように、円板状の圧電基板94に同様に電圧を印加すると、圧電基板94の8分割された領域は、矢印で示すように、いずれも同じ方向に伸縮し、圧電基板94の輪郭94aは、鎖線94pで示すように変形する。周期的に変動する電界を主面92s,92t;94s,94t間に印加すると、圧電基板92,94を0°モードで振動させることができる。逆に、圧電基板92,94が0°モードで振動すると、圧電基板92,94の主面92s,92t;94s,94t間に、周期的に変動する電荷が生じる。
【0042】
図4は、45°モードの説明図である。図4(a)に示すように、圧電基板92の主面92s,92tに8つに分けて形成された電極98間に交互に逆位相の電圧を印加すると、矢印83a,83bで示すように第1軸に対して45°の方向には伸び、矢印84a,84bで示すように第1軸に対して135°の方向には縮む。図4(b)に示すように、円板状の圧電基板94に同様に電圧を印加すると、圧電基板94は、電極に対応する各領域において矢印で示す方向に伸縮し、伸縮する方向が交互に逆になるため、圧電基板94の輪郭94aは、鎖線94qで示すように変形する。周期的に変動する電圧を圧電基板92,94に印加すると、圧電基板92,94を45°モードで振動させることができる。逆に、圧電基板92,94が45°モードで振動すると、圧電基板92,94に電荷の変動が生じる。
【0043】
0°モードの振動と45°モードの振動とを利用して角速度を計測する場合、圧電基板92,94が等方であり、圧電基板92,94の弾性コンプライアンスが主面92s,92t;94s,94t内のどの方向でも同じであることが理想である。
【0044】
前述したように単結晶圧電材料は結晶異方性を有するが、本願発明者は、切り出す方位によっては主面方向で等方になる可能性があると考え、主面方向で等方になる結晶方位を探索した。詳しくは後述するが、例えば、155°YカットLN板は、弾性コンプライアンスの第1軸成分及び第2軸成分が、主面内のどの方位でも略一定である。
【0045】
図2は、ウエハの説明図である。図2(a)は、Zカットのウエハ2aを示す。図7(b)は、155°Yカットのウエハ2bを示す。
【0046】
図3(a)及び図4(a)には、圧電基板92が155°YカットLN板である場合の結晶軸X,Y,Zを図示している。図3(a)及び図4(a)に示すように、第1軸はY軸と一致している。分極方向はZ軸である。
【0047】
次に、振動ジャイロに用いる振動体11の構成について説明する。
【0048】
図5(a)は、振動体11の平面図、図5(b)は振動体11の断面図である。図5に示すように、振動体11は、円形板状の圧電基板12の一方の主面12sに内側電極21~28及び外側電極41~48が形成され、圧電基板12の他方の主面12tに内側電極31~38及び外側電極51~58が形成されている。一方の内側電極21~28と、他方の内側電極31~38とは、それぞれ、圧電基板12を挟んで互いに対向する。同様に、一方の外側電極41~48と、他方の外側電極51~58とは、それぞれ、圧電基板12を挟んで互いに対向する。
【0049】
圧電基板12の中心に、圧電基板12の主面12s,12t間を貫通する中心穴12bが形成されている。内側電極21~28,31~38は、中心穴12bに沿って45°ピッチで、互いに間隔を設けて配置されている。外側電極41~48,51~58は、内側電極21~28,31~38の径方向外側(中心穴12bとは反対側)に、圧電基板12の外周面12aに沿って45°ピッチで、互いに間隔を設けて配置されている。
【0050】
すなわち、圧電基板12の第1軸及び第2軸と、圧電基板12の第1軸と第2軸との間を等分する2つの軸とにそれぞれ平行、かつ、圧電基板12の主面12s,12tの中心を通る4つの仮想線によって分割される8つの領域において、主面12s,12tの中心側(中心穴12b側)に内側電極21~28,31~38がそれぞれ形成され、主面12s,12tの中心とは反対側(外周面12a側)に外側電極41~48,51~58がそれぞれ形成されている。
【0051】
図6は振動体11の要部拡大図である。図6に示すように、圧電基板12の一方の主面12sには、中心穴12bに沿って、8つの内側電極用端子部21x~28xと8つ外側電極用端子部41x~48xとが形成されている。内側電極用端子部21x~28xは、内側電極21~28と一体に形成されている。外側電極用端子部41x~48xは、内側電極21~28及び内側電極用端子部21x~28xとの間に間隔を設けて形成されている。図5及び図6に示すように、互いに隣り合う内側電極21~28の間に、外側電極41~48と外側電極用端子部41x~48xとを電気的に接続する配線41a~48aが形成されている。内側電極用端子部21x~28x及び外側電極用端子部41x~48xは、後述するロッド端子64(図14参照)に電気的に接続される。
【0052】
図示していないが、圧電基板12の他方の主面12tには、圧電基板12の一方の主面12tの内側電極用端子部21x~28x、外側電極用端子部41x~48x及び配線41a~48aと同様に、内側電極用端子部、外側電極用端子部及び配線が形成されている。圧電基板12の他方の主面12tに形成される内側電極用端子部及び外側電極用端子部は、後述するロッド端子66(図14参照)に電気的に接続される。
【0053】
振動体11を0°モードで振動させ、45°モードの振動によって発生する電荷を検出してもよいし、振動体11を45°モードで振動させ、0°モードの振動によって発生する電荷を検出してもよい。
【0054】
0°モードで駆動し、45°モードで検出する場合、例えば、内側電極21~28,31~38を、第1軸又は第2軸と平行な2つの駆動軸の方向に圧電基板12を振動させる電界を圧電基板12に印加するための駆動用電極として用い、外側電極41~48,51~58を、駆動軸の間を等分する2つの検出軸の方向の振動によって圧電基板12に励起される電荷を検出するための検出用電極として用いる。内側電極21~28,31~38を検出用電極として用い、外側電極41~48,51~58を駆動用電極として用いることも可能である。
【0055】
45°モードで駆動し、0°モードで検出する場合、例えば、内側電極21~28,31~38を駆動用電極として用い、外側電極41~48,51~58を検出用電極として用いる。内側電極21~28,31~38を検出用電極として用い、外側電極41~48,51~58を駆動用電極として用いることも可能である。
【0056】
次に、実施例1の解析例について、図7図11を参照しながら説明する。
【0057】
まず、主面方向で等方、すなわち面内等方になる圧電基板12の結晶方位の解析について説明する。圧電材料の諸材料定数は、分極方向をZ軸としたXYZ座標系(以下、結晶XYZ座標系)で定められる。ウエハの結晶方位がこの分極方向を基準とした方位と異なる場合、ウエハを基準にした座標系(以下、ウエハ座標系)で表現し直した諸材料定数を考える必要がある。
【0058】
ここでは、結晶XYZ座標系を、図7に示すオイラー角の定義に従って、Z軸周りに角度ψ回転したX'Y'Z'座標系を、さらにX'軸周りに角度θ回転したX''Y''Z''座標系をウエハ座標系とする。
【0059】
結晶XYZ座標系における結晶点群3mに属する応力TーひずみS関係式は、次の式(1)で表せる。
【数1】
ここで、S:ひずみ、T:応力、Sij:弾性コンプライアンスである。
【0060】
式(1)をウエハX''Y''Z''座標系で表現し直すと、次の式(2)となる。
【数2】
ただし、圧電基板12は十分薄いと仮定し、平面応力状態(T''=0,T''=0,T''=0)としており、平面方向のひずみに関係のない成分は省略している。
【0061】
面内方位による弾性特性を調べるためウエハX''Y''Z''座標系をさらにZ''軸周りに角度
【数3】
回転したX'''Y'''Z'''座標系での弾性コンプライアンスs11''',s12''',s16''',s66'''を考えると、次の式(3)で表せる。
【数4】
【0062】
これらの式(3)は、
【数5】
の関数であり、これらの式(3)が
【数6】
に依存せず一定であれば、弾性コンプライアンスs11''',s12''',s16''',s66'''が面内等方といえる。なお、s22''',s26'''は、それぞれs11''',s16'''と等価であるので考えなくてよい。このためには、式(3)でのcosの項とsinの項のすべての係数が0に近い値をとればよい。式(3)より、係数は次の4つである。
【数7】
【0063】
11'''はこれらすべてを含むので、s11'''一定が十分条件である。そこで、s11'''の
【数8】
に対する変動係数C.V.(ψ,θ)を、次の式(5)で定義し、変動係数C.V.(ψ,θ)の値が0に近くなるウエハ方位を探索した。
【数9】
【0064】
図8は、変動係数C.V.(ψ,θ)の分布図である。図8に示すように、(ψ,θ)=(0°,0°),(0°,65°)、つまり、Zカット、又は155°Yカットが、面内等方である。LNは、三方晶系の点群3mに属するので、結晶構造的に等価な点が(0°,0°)に関して2か所、(0°,65°)に関して6か所ある。
【0065】
図9は、(0°,65°)近傍での計算結果を示す分布図である。図9から分かるように、変動係数C.V.(ψ,θ)が1%未満となるのは、おおよそ、-4°<ψ<4°,かつ、63°<θ<67°である。
【0066】
図10は、(0°,65°)近傍での電気機械結合係数k31,k32の分布図である。図10から、電気機械結合係数は0.3程度である。
【0067】
(0°,0°)近傍では、電気機械結合係数k31がどの面内方位においても0に近いため、(0°,65°)を採用する。
【0068】
図11は、155°YカットLN板のワイングラス振動を、有限要素法でシミュレーションした結果である。図11(a)は0°モードの振動、図11(b)は45°モードの振動である。0°モードの共振周波数は96.8kHz、45°モードの共振周波数は95.0kHzであった。
【0069】
圧電基板が三方晶系の点群3mに分類される単結晶からなる場合、LN以外の圧電基板、例えば、タンタル酸リチウム(LT)やランガサイト等の圧電基板を用いてもよい。
【0070】
次に、実施例1の試作例について、図12図17を参照しながら説明する。
【0071】
図12は、振動体11の製造工程を示す略図である。図12(a)に示すように、4インチ155°YカットLNウェハ12wを準備し、図12(b)に示すように、ウェハ12wの両面12p,12qに、電子ビーム蒸着によって、クロムの下地層70,71を形成し、その上に金の電極層72,73を形成する。次いで、図12(c)に示すように、両面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィーによりマスクパターン74,75を形成した後、図12(d)に示すように、ウェットエッチングを行い、電極パターンを形成する。最後に、コアドリルを用いてディスク片とその中心穴を切り出して、圧電基板12の外周面12a及び中心穴12bを加工した後、洗浄して、図12(e)に示すようにマスクパターン74,75を除去すると、振動体11が完成する。
【0072】
図13は、試作した振動体11の写真である。試作した振動体11は、厚みが330μm、直径が25.8mm、中心穴12bの直径が4mmである。クロムの下地層70,71のそれぞれの厚さは50nm、金の電極層72,73のそれぞれの厚さは200nmである。
【0073】
図14は、振動体11がソケットに収納された振動ジャイロ10の断面図である。図14に示すように、振動体11は、一対のソケット板60,62の間に配置される。振動体11は、圧電基板12の中心穴12bに一方のソケット板60の突起部63が挿入され、中心穴12bの内周面がソケット板60の突起部63の外周面に接した状態で支持される。ソケット板60,62には、ロッド端子64,66が取り付けられ、ロッド端子64,66の先端が、圧電基板12の中心穴12bの近傍に形成された内側電極用端子部及び外側電極用端子部に接している。
【0074】
図15は、試作した振動ジャイロ10の写真であり、振動体11をソケットに収納した状態を示している。
【0075】
試作した振動ジャイロ10の振動特性を評価するために、インピーダンスアナライザー(4294A、キーサイト・テクノロジーズ・インク社製)をロッド端子64,66に接続して、インピーダンス特性を測定した。
【0076】
0°モードの場合、インピーダンスアナライザーの正極端子を、圧電基板12の一方の主面12sの内側電極21~28に電気的に接続し、負極端子を、圧電基板12の他方主面12tの内側電極31~38に電気的に接続する。45°モードの場合、外側電極41~48,51~58を、交互に正極端子と負極端子とに電気的に接続する。例えば、正極端子を外側電極41,43,45,47,52,54,56,58に電気的に接続し、負極端子を外側電極42,44,46,48,51,53,55,57に電気的に接続する。両方の場合において、測定に使用されていない電極は短絡する。
【0077】
図16は、0°モードと45°モードのインピーダンス特性の測定結果を示すグラフであり、ワイングラスモード付近の周波数応答を示している。図12から、0°モードと45°モードとの共振周波数で振動していることが分かる。測定された共振周波数は、0°モードでは95.7kHz、45°モードでは95.5kHzである。共振周波数は、有限要素によるシミュレーションとよく一致する。検出感度を高めるために、0°モードを検出、45°モードを駆動に用いることが好ましい。
【0078】
図17は、光ヘテロダイン微小振動測定装置(MLD-230D-200K、ネオアーク株式会社製)を用いて、共振端の速度を測定した結果を示すグラフである。0°モードで測定された速度から計算された振動振幅は、200mVの電圧振幅で80nmであった。45°モードで測定された速度から計算された振動振幅は、500mVの電圧振幅で25nmであった。
【0079】
共振周波数でのインピーダンスは、自励発振回路を用いて両方のモードで振動体11を発振させるのに十分に低かった。インピーダンス測定結果から計算された電気機械結合係数は、0°モードで30.0%であり、45°モードで4.3%であり、有限要素シミュレーションとよく一致した。測定されたインピーダンスから計算されたQ値は、0°モードで920であり、45°モードで1300であり、測定された速度から計算されたQ値は、0°モードで960であり、45°モードで880であった。
【0080】
以上に説明したように、振動体の圧電基板がLN等の異方性材料で作られていても、最適配向ウエハを使用することによって、モード整合が達成できる。したがって、単結晶圧電材料を用いた振動ジャイロを実現することができる。
【0081】
次に、実施例1の変形例を説明する。
【0082】
<変形例1> 図18は、振動体に用いる圧電基板の平面図である。図18(a)~(c)に示すように、圧電基板91a~91cの形状は、円形でも、正方形(図示せず)や正八角形や正十六角形等の正多角形でも構わない。この場合、圧電基板91a~91cの加工が容易である。
【0083】
また、図18(d)~(f)に示すように、圧電基板91a~91cの中心に中心穴91p~91rを設けても、図18(a)~(c)に示すように設けなくてもよい。中心穴91p~91rを設けない場合には、例えば、圧電基板の中心点を支持したり、圧電基板の外周の複数箇所を径方向に弾力的に引っ張って圧電基板を保持したり、弾力性を有する部材の間に圧電基板を挟んで保持したりする。
【0084】
<変形例2> 図19の平面図に示すように、圧電基板94の同一主面94sに、0°モード用電極96a~96cと45°モード用電極98a~98cとを種々の態様で配置することが可能である。
【0085】
図19(a)では、圧電基板94の主面94sのうち、右側に一つの0°モード用電極96aが配置され、左側に、対になるように配置された2組の45°モード用電極98a,98sが90°ずらして配置されている。電極96aと2組の電極98a,98sとは、左右を反転して配置してもよい。
【0086】
45°モード用電極98a,98sを用いて、45°モードの振動を駆動し、又は、45°モードの振動を検出することができる。図19(a)には、対になるように配置された45°モード用電極98a,98sが2組の場合を図示しているが、45°モード用電極98a,98sが少なくとも1組あれば、45°モードの振動を検出可能である。
【0087】
つまり、駆動用電極又は検出用電極は、駆動軸及び検出軸それぞれを含み圧電基板94の主面94sに垂直な4つの仮想面86~89によって分割される圧電基板94の少なくとも一方の主面94sの8つの領域のうち、第1軸及び第2軸(すなわち、前述したX''軸及びY''軸)の間を等分する直線に平行である仮想面87,89を挟んで互いに隣り合う2つの領域に、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極98a,98sを含む。対になるように配置された45°モード用電極98a,98sは、(a)互いに逆位相の電圧が印加されると、圧電基板94内の45°モード用電極98a,98sに対向する対向領域において45°モードの振動を励起するための主面94sと平行方向のひずみを生成するように、又は、(b)圧電基板94内の45°モード用電極98a,98sに対向する対向領域に45°モードで振動しているときに主面94sと平行方向に生じたひずみによって互いに逆位相の電荷が検出されるように、構成されている。
【0088】
図19(b)では、圧電基板94の主面94sのうち、内側に一つの0°モード用電極96bが配置され、外側に、対になるように配置された4組の45°モード用電極98b,98tが90°ごとに配置されている。
【0089】
図19(c)では、内側に45°モード用の8つの電極98cが45°ごとに配置され、外側に0°モード用の一つの電極96cが配置されている。
【0090】
図19(d)では、圧電基板94の主面94sのうち、内側に8つの内側電極97aが45°ごとに配置され、外側に8つの外側電極97bが45°ごとに配置されている。図19(d)の態様は、電極97a,97bの位相の組み合わせによって、図19(a)~図19(c)等と等価になるので、汎用性が高い。例えば、内側電極97aについて、「A」が付された電極と「B」が付された電極とを同位相にするとともに、外側電極97bについて、「A」が付された電極と「B」が付された電極とを互いに逆位相にすると、図19(b)と等価になる。
【0091】
<変形例3> 0°モードの3軸電場と、45°モードの径方向の面内電場とを組み合わせるように、電極を配置してもよい。図20は、振動体の平面図である。図20は、図20(b)の線R-R'に沿って切断された部分断面図である。
【0092】
図20(a)は、0°モードの説明図である。図20(a)において「0」が付された4つの電極45xは、0°モード用電極45xであり、記号Pで示すように、それぞれの電界は同位相である。
【0093】
図20(b)は、45°モードの説明図である。図20(b)において「45」が付された電極45a,45bは、対になるように配置された45°モード用電極45a,45bであり、周方向に隣り合う0°モード用電極45xの間に、径方向に間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置されている。
【0094】
45°モード用電極45a,45bは、図21(a)に示すように、圧電基板94の外周面94a及び内周面94bから離れて形成されてもよいし、図21(b)に示すように、圧電基板94の主面94s,94tから内周面94b又は外周面94aに連続するように形成されてもよい。
【0095】
径方向に互いに対向する45°モード用電極45a,45bの間に、例えば図20(b)及び図21において矢印で示す方向の電界が発生する。
【0096】
45°モード用電極45a,45bを用いて、45°モードの振動を駆動し、又は、45°モードの振動を検出することができる。図20には、対になるように配置された4組の45°モード用電極45a,45bが図示されているが、対になるように配置された45°モード用電極45a,45bが少なくとも1組あれば、45°モードの振動を検出可能である。
【0097】
つまり、駆動用電極又は検出用電極は、駆動軸又は検出軸を含み第1軸及び第2軸(すなわち、前述したX''軸及びY''軸)それぞれに平行かつ圧電基板94の主面94s,94tに垂直である2つの仮想面86,88によって分割される圧電基板94の少なくとも一方の主面94sの4つの領域のうち少なくとも1つに、当該領域の隣接する領域との2つの境界線の間を等分する方向に間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極45a,45bを含む。対になるように配置された45°モード用電極45a,45bは、(a)電圧が印加されると、圧電基板94内の45°モード用電極45a,45bに対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための主面94s,94tと平行方向のひずみを生成するように、又は、(b)圧電基板94内の45°モード用電極45a,45bに対向する対向領域の間の中間領域に45°モードの振動によって主面94s,94tと平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように、構成されている。
【0098】
<変形例4> 0°モードの3軸電場と、45°モードの周方向の面内電場とを組み合わせてもよい。図22は、振動体の平面図である。図23は、図22(b)の線S-S'に沿って切断した断面図である。
【0099】
図22(a)は、0°モードの説明図である。図22(a)において「0」が付された4つの電極45yは0°モード用電極45yであり、記号Pで示すように、それぞれの電界は同位相である。
【0100】
図22(b)は、45°モードの説明図である。図22(b)において「45」が付された電極45p,45qは、45°モード用電極45p,45qであり、周方向に互いに隣り合う0°モード用電極45yの間に、周方向に互いに対向し対になるように配置されている。互いに周方向に対向する45°モード用電極45p,45qの間に、例えば図22(b)及び図23において矢印で示す方向の電界が発生する。
【0101】
45°モード用電極45p,45qを用いて、45°モードの振動を駆動し、又は、45°モードの振動を検出することができる。図22には、対になるように配置された4組の45°モード用電極45p,45qが図示されているが、対になるように配置された45°モード用電極45a,45bが少なくとも1組あれば、45°モードの振動を検出可能である。
【0102】
つまり、駆動用電極又は検出用電極は、駆動軸及び検出軸それぞれを含み圧電基板94の主面94s,94tに垂直な4つの仮想面86~89によって分割される圧電基板94の少なくとも一方の主面94sの8つの領域のうち、第1軸及び第2軸(すなわち、前述したX''軸及びY''軸)の間を等分する直線に平行である仮想面87,89を挟んで互いに隣り合う2つの領域に、間隔を設けて互いに対向し、対になるように配置された少なくとも1組の45°モード用電極45p,45qを含む。対になるように配置された45°モード用電極45p,45qは、(a)電圧が印加されると、圧電基板94内の45°モード用電極45p,45qに対向する対向領域の間の中間領域において45°モードの振動を励起するための主面94s,94tと平行方向のひずみを生成するように、又は、(b)圧電基板94内の45°モード用電極45p,45qに対向する対向領域の間の中間領域に45°モードで振動しているときに主面94s,94tと平行方向に生じたひずみによって電荷が検出されるように、構成されている。
【0103】
<変形例5> 圧電基板は、均一な厚みでなくても構わない。例えば、圧電基板の外周近傍の領域の厚みを、他の領域の厚みより大きくて錘にする。圧電基板の厚みを部分的に変えることによって、0°モードと45°モードの共振周波数のずれを補償することも可能である。
【0104】
また、外周近傍の領域の厚みを厚くしたリング型の変形として、圧電基板の厚みを変えることにより、ワイングラス(半球面)型やカップ(円筒)型も可能である。この場合、ディスク型に比べて共振周波数を低くすることが可能である。
【0105】
<まとめ> 以上に説明したように、適切なカット角を選択することにより、単結晶圧電材料を用いた振動ジャイロを構成することができる。
【0106】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0107】
例えば、圧電基板の厚みや外径等の寸法、電極の寸法や形状や配置等は、適宜に選択すればよい。
【符号の説明】
【0108】
1 第1軸(駆動軸又は検出軸)
2 第2軸(検出軸又は駆動軸)
10 振動ジャイロ
11 振動体
12 圧電基板
12w ウェハ
21~28,31~38 内側電極(駆動用電極又は検出用電極)
41~48,51~58 外側電極(検出用電極又は駆動用電極)
45a,45b,45p,45q 45°モード用電極
86~89 仮想面
92,94 圧電基板
96,96a,96b,96c 電極
97a,97b 電極
98 電極
98a,98b 45°モード用電極
98c 電極
98s,98t 45°モード用電極
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