(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】浮体式洋上風力発電装置
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20230209BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20230209BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20230209BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/44 C
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2020077205
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507333960
【氏名又は名称】川上 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-510524(JP,A)
【文献】特開2015-174617(JP,A)
【文献】特開2006-298207(JP,A)
【文献】嶋田健司ら,“洋上風力発電のためのセミサブ浮体の構造最適化について”,海岸工学論文集,日本,土木学会,2007年,第54巻,p.916-920,DOI: 10.2208/proce1989.54.916,ISSN 1884-8222(online),0914-7897(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00,35/44,
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電のローターとナセルが設置されるタワーの基部にそのタワーの下方に延びた浮力室を設けるとともに、前記タワーの基部の水平方向
であって水面に浮く位置に、放射状に複数の鋼管製の放射梁を設け、その鋼管製の放射梁の先端を略環状に結ぶ鋼管製の外周梁を設け、前記浮力室を含むタワー、前記放射梁、前記外周梁がそれぞれ
に有する浮力をもって水に浮く浮体式洋上風力発電装置。
【請求項2】
前記鋼管製の放射梁と前記鋼管製の外周梁の中間部に、
ゴム又は熱可塑性エラストマー製の筒型の可撓継手を備えている請求項1の浮体式洋上風力発電装置。
【請求項3】
上部にローターとナセルを備えるタワーの下部を
水面に浮く浮体で支持する洋上風力発電装置における前記浮体を、前記タワーの基部にそのタワーの下方に延びた浮力室を設けるとともに、前記タワーの基部の水平方向
であって水面に浮く位置に、放射状に設けた浮力を有する鋼管製の複数の放射梁と、前記複数の放射梁の先端を略環状に結んだ浮力を有する鋼管製の外周梁を備えてイカダ型に形成した浮体。
【請求項4】
前記鋼管製の放射梁と前記鋼管製の外周梁の中間部に、
ゴム又は熱可塑性エラストマー製の筒型の可撓継手を備えている請求項3のイカダ型に形成した浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式洋上風力発電装置とその浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電は、環境負荷の少ないクリーンな再生可能エネルギーを利用する発電方式として期待が大きい。
【0003】
風力発電装置は当初より陸上部に設置されてきたが、陸上部では環境問題や風車の大型化に限界があることなどから、洋上に風力発電装置を設置する事例が増えてきている。
【0004】
洋上風力発電は、安定した風が得られ、装置の設置に適した海域の面積も広大にあることで、有望視されている。
【0005】
洋上風力発電装置には着底式と浮体式があるが、水深が50mより浅い海域では着底式風力発電装置が適切と考えられ、それより深い海域では浮体式風力発電装置が有利と考えられている。
【0006】
浮体式洋上風力発電装置の浮体としては、特許文献1~5にも開示されているスパー型、セミサブ型、バージ型が導入されている。
【0007】
スパー型はその形態と構造上、水深が100m以上の海域に用いられ、水深の浅いところには適用できない。
【0008】
スパー型が適用できない水深が50~100mの浅い海域に適用できる浮体方式としてセミサブ型やバージ型の浮体の導入が図られているが、これらの浮体式洋上風力発電装置は実績も浅く、コスト的に経済ベースに乗れるレベルでの発電所建設には至っておらず、建設ストの低減と新たな技術的展開が望まれている。
【0009】
セミサブ型浮体は水線面が小さく、波や潮流から受ける影響が小さいため浮体が安定しているが、構造が複雑になるため製作に高度の技術を必要とすることが課題である。一方、バージ型浮体の場合は波力、波圧を受けると、浮体の揺動が大きくなるほか、重量の低減にも課題がある。
【0010】
風力発電装置は、高いタワーの上部に大径のローターと重量が大きいナセルを設置したトップヘビーな構造物であるため、洋上風力発電装置の転倒を防ぐことができる安定した浮体が必要であるが、従来のバージ型、セミサブ型とも転倒を防ぐために巨大な浮体となっていた。
【0011】
一方、浮体式洋上風力発電装置の別の大きな課題は、浮体が高い波浪と大きな波力受けることに鑑み、浮体の強度確保のために断面は大きく重量も大きいものとなっていた。しかしその重い浮体を浮かせるためには、断面をさらに大きくして大きな重量にせざるを得ないため、建設費が高くなり、経済コストを下げることが困難であった。
【0012】
また、大きくて重たい浮体が大きな波力を受けると、これを支持する係留力も大きなものとなるため、係留索、アンカーに要する建設コストも高くなるという問題も派生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2009-248792号公報
【文献】特開2010-280301号公報
【文献】特開2013-35361号公報
【文献】特開2014-173586号公報
【文献】特開2018-173011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明は、浮体式洋上風力発電装置において、風荷重にたいして安定であり、浮体が受ける波浪と波力の影響をできるだけ小さくして、浮体の軽量化を計ることを第一の課題とする。
【0015】
また、従来の洋上風力発電装置の製作、設置においては、浮体は造船所のドックで製作し,設置はドックから現場へ曳航していたが、本発明では、洋上風力発電装置を設置する現地近くのヤードでの製作、組立が可能で、ドックでの製造や設置場所までの曳航を要しない浮体を提供することを第二の課題とする。
【0016】
即ち本発明は、浮体式洋上風力発電装置の浮体について、上記課題を解決するための工夫を施し、浮体式洋上風力発電装置の軽量化、構造の単純化を図り、施工性の向上を図って建設コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題の解決を目的としてなされた本発明の浮体式洋上風力発電装置の構成は、風力発電のローターとナセルが設置されるタワーを中心として、タワー基部に浮力室を設け、このタワー基部の水平方向に放射状に設けた複数の鋼管製の浮力を有する放射梁と、前記放射梁の先端に略環状に結合される鋼管製の浮力を有する外周梁とを備え、前記タワー、前記放射梁、前記外周梁がそれぞれ水に浮く浮力を有することを特徴とする。
【0018】
前記鋼管製の放射梁と鋼管製の外周梁の中間部に、可撓継手を備えた構成とすることもできる。
【0019】
本明細書では、前記タワー基部に結合された複数の放射梁とこの放射梁の先端部に環状に結合される外周梁が形成する浮体を、イカダ型浮体浮体ともいう。
因みに、現状では水深が浅い海に設置する浮体式洋上風力発電装置は、浮体構造としてセミサブ型、バージ型が適用されているが、内海、湾内、島影等の海象条件の穏やかな海面での浮体構造としては、軽量化が可能である本発明のイカダ型浮体が適している。
【0020】
前記外周梁または放射梁には係留索を取り付け、係留索の他端をアンカーに取り付けて洋上風力発電装置を係留する。
【0021】
前記タワー基部の浮力室は、タワー、ローター、ナセルの重量を支えて、自力で浮く浮力を有する。
前記放射梁と外周梁は、自力で浮く浮力とともに余剰浮力を有し、自重と浮力の力をもって風荷重や波浪荷重に対しタワーを安定的に支持し、過大な傾きや転倒を防止する。
【0022】
外周梁は波力、潮流力を受け持ち、放射梁やタワーに直接大きな波圧、潮流力が作用するのを抑止する。
【0023】
また、外周梁又は放射梁は、取り付けられた係留索からの係留荷重を受けもつ。
【0024】
前記浮力室、放射梁、外周梁によるイカダ型浮体全体の浮力は、安定して浮くこと、及び付着生物の付着重量等も考慮すると、浮体重量の2~3倍程度が好ましい。
【0025】
またイカダ型浮体浮体の放射梁と外周梁は、鋼管を材料とするが、鋼管を使うことによって多くのメリットが得られる。
【0026】
すなわち、鋼管はその製造工場などで量産される関係で比較的安価であり、また浮体製造の作業量、特に溶接量を少なくして、浮体製造作業の単純化、省力化を計ることができる。
【0027】
また、浮体の構造面でみると、鋼板によるボックス構造に対し、鋼管は水圧や波圧等の面圧に強く、補強リブもほとんど必要としない
【0028】
さらに鋼管は、鋼管を使用した浮体が波を被って水没しても浮力を保つように、水密構造とするのに適している。
【0029】
流体力学面から見た場合、鋼管はボックス構造と比較して、流体力(波力、潮流力)を受けることが小さく(抗力係数が小)、浮体の設計上でも有利である。
【0030】
施工面からみた場合、イカダ型浮体浮体は鋼管梁の構造で洋上風力発電装置の設置場所近くのヤードでフランジ継手を用いて現場継手にすることが容易であり、従来型の浮体のように造船所のドックで製作して設置現場に曳航することを必要としない。
【0031】
ここで本発明のイカダ型浮体浮体の外周梁の平面形状は原則円形とするが、円形とすることにより外周梁は波力を集中して受けることを避けることできる。
【0032】
上記のイカダ型浮体浮体は波浪の小さな内海、内湾、島影部に設置する洋上風力発電装置に適用できる。しかし、海象条件の厳しい海域に設置するためには、浮体強度を上げる必要があり、そのため断面を大きくすると重量が大きくなって、大きな浮力を得る必要が生じ、さらに断面を大きくすることになって、浮体の軽量化には覚束ない。
【0033】
また、従来タイプの浮体が波浪により破壊する原因は、部材が鋼材であり、鋼材の剛性は大きく、波浪に対して柔軟に変形できないで、波の大きな荷重を直接受けてしまうことにある。しかるにゴムやプラスチックのように容易に弾性変形する部材を浮体の構造に取り込めば、浮体全体が波動に従って変形できる(良好な波乗り性を発揮する)から、波の影響を小さくして、大きな断面力の発生と破壊を抑えることができる。
【0034】
このため本発明では、放射梁と外周梁の中間部に可撓継手を設けて、浮体の変形性能を良好にして、波浪に対して波乗り性を良くし、大きな断面力の発生を防ぐようにしている。
【0035】
前記可撓継手は外周梁と放射梁の変形性能を良好にし、発生する断面力を小さくする役割を果たして、本発明のイカダ型浮体浮体の軽量化とコスト面での経済性に寄与する。
【0036】
なお、浮体の長さと波長の比が1に近い場合、浮体には激しい縦揺れ、上下動が発生するが、浮体の可撓継手を放射梁や外周梁の途中に設けることによって、浮体の剛体長さを短くすると、波長の長い厳しい波浪域での縦揺れ、上下動を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、軽量で、施工性が良好な浮体式洋上風力発電装置とこの発電装置に好適な浮体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のイカダ型浮体浮体を用いた浮体式洋上風力発電装置の斜視図。
【
図2】
図1の浮体式洋上風力発電装置の浮体に可撓継手を組込んだ例の斜視図。
【
図4】可撓継手の一例の構造を説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は本発明のイカダ型浮体を用いた洋上風力発電装置の実施形態の一例を示す図である。
【0040】
本発明のイカダ型浮体の洋上風力発電装置は、タワー1を中心として、タワー基部に浮力室2を備え、浮力室2の水平方向に水密にした複数の鋼管製の放射梁3を備えると共に、前記放射梁3の先端が平面視略円形になる水密にした鋼管製の外周梁4に連結されてイカダ型浮体を形成し、前記タワー基部の浮力室2、放射梁3、外周梁4による浮力によって水上に浮いている。
【0041】
前記イカダ型浮体は係留索5によりアンカー(図では省略)に係留されている。
【0042】
図示した本発明の浮体式洋上風力発電装置は、一例として出力2MWのローター6、ナセ7をタワー1の上端部に搭載しており、前記ローター6の直径82m、タワー1の高さ80m、タワー基部の直径4.5mである。イカダ型浮体の放射梁3の本数は6本、外周梁4は直径64mの円形に配置されていて、放射梁3と外周梁4の部材断面は直径3.5mの鋼管となっている。なお外周梁4の直径の上記数値、及び放射梁3と外周梁4の部材断面の上記数値は一例であるから、外周梁4の直径を54m、放射梁3と外周梁4の部材断面を3.9mと3.5mとすることもある。
【0043】
タワー1はその基部の断面を大きくし、直径を8m、長さを水面下10m程度まで伸ばして浮力室2とし、浮力室2はタワー1、ローター6とナセル7の重量に対して浮くことのできる大きさの浮力を有している。
【0044】
タワー1が浮力室2を有し、自力で浮いていることは、放射梁3にかかる負担を小さくすることに役立っている。
【0045】
放射梁3は、浮力を有して浮いていて、自重と浮力により外周梁4と共にタワー1を支持し、タワー1が転倒しないように支える。
【0046】
一般に風力発電装置はトップヘビーで風荷重を受け転倒し易い構造であるが、本発明ではイカダ型浮体の放射梁3を長く、外周梁4の円形を大きくすることにより、安定な浮体構造とすることができる。
【0047】
また、タワー1の基部(図示した例では浮力室2)と放射梁3の接続部は、風圧や波力を受けるとき、大きい力が集中するので溶接によりリブで補強し、剛体結合する。
【0048】
放射梁3の本数は、ここでは6本となっているが、4本、8本であってもよい。
【0049】
外周梁4は、放射梁3と一体になってタワー1の安定起立に寄与するが、波浪や潮流を直接受け持ち、タワー1や放射梁3への影響を小さくする浮消波提の役割も担っている。
【0050】
外周梁4又は放射梁3は、係留金具8を備え、係留索5を連結して係留荷重を受け持っている。
【0051】
外周梁4の形状は基本的には円形であるが、多角形とすることもできる。
【0052】
図面上では省略しているが、タワー1、放射梁3、外周梁4には点検や修理のために水密式のマンホールが設けられる。
【0053】
放射梁3と外周梁4の材料としては、浮力が得られること、水圧に耐えられること、水密構造としやすいこともあって鋼管が適している。
【0054】
鋼管構造の本発明のイカダ型浮体は鋼板構造の浮体と比較してリブ部材が少なくて済むこと、円形のため波や潮流の流体力を受けることが小さくて済み、浮体の軽量化が可能となる。
【0055】
外周梁4の平面形状が円形であることは、場所により波の位相が異なるため、外周梁4は最大波圧を同時に受けることがない。
【0056】
イカダ型浮体はフランジ継手9を設けることにより、工場で鋼管部材を製作し、台船で現場へ運搬し、クレーン船を用いて浮体を組立、浮体を現場に浮かべてタワー1、ローター6、ナセル7を組み立てて完成することができる。
【0057】
本発明のイカダ型浮体は主要部分が鋼管製であることにより製作にドックを要しないこと、曳航が不要なことにより、これが従来型式の浮体に比して大きな利点となる。
【0058】
イカダ型浮体は、現場設置が容易であり、アンカーを所定位置に設置してイカダ型浮体とアンカーを連結するだけで設置が完了する。
【0059】
このように現場設置が容易であることのほかに、使用完了後の撤去、解体も容易であるから、設置現場の海洋環境を損なうことが少ない。
【0060】
内海で波浪が比較的穏やか海域では、上述したようなイカダ型浮体を用いた洋上風力発電装置が大きな利便性を発揮する。
【0061】
しかし、上記の洋上風力発電装置を外海に設置した場合、放射梁3と外周梁4は波浪の影響により大きな断面力を生じて破壊されてしまう。
【0062】
上記破壊を回避するため放射梁3や外周梁4の断面を大きくすると重量が大となり、大きな重量物を浮かせるため、さらに断面を大きくする必要が生じ、浮体重量の軽量化が困難となる。
【0063】
また、工場製作が可能な鋼管の直径は4m程度であり、それ以上の大きさの鋼管を使用することは製作上もコスト面でも望ましくない。
【0064】
鋼管断面の大型化、浮体の大重量化を避けるためには、波力と波の衝撃力を避けることが必要である。
【0065】
このため本発明では、放射梁3と外周梁4の中間部に可撓継手10を設けて、イカダ型浮体に波乗りに必要な変形性能もたせるようにした。
【0066】
図2は可撓継手10を備えるイカダ型浮体を用いた本発明浮体式洋上風力発電装置の一例の斜視図であり、放射梁3と外周梁4にはそれぞれ6体の可撓継手10が設けられている。
【0067】
図3は前記可撓継手10の働きを説明するための模式図である。
図3は、可撓継手10を有する本発明のイカダ型浮体を用いた洋上風力発電装置が、一例として波高8m、波長100mの波にもまれるときの状況を模式的に示したものであり、浮体は可撓継手10の部分で曲がり、波形に追従して波に乗っている。
【0068】
図3は模式図であるから浮体式洋上風力発電装置が波の上で変位して表現されているが、実際には浮体式洋上風力発電装置はほぼ定点で波の位相の変化とともに図示したような、イカダ型浮体の変形とタワー1の傾き姿勢をとる。
【0069】
図3の場合イカダ型浮体の放射梁3と外周梁4の屈折角は一例として±13.5°となっており、可撓継手10にはそれ以上の変型性能が要求される。
【0070】
また、可撓継手10には、強度的に放射梁3、外周梁4と同程度の強度が要求される。
【0071】
図4は可撓継手10の一例の構造図であり、ゴムまたは熱可塑性エラストマーを主体として形成されるものである。
【0072】
シリンダー型のゴム(外径350cm、内径250cm、長さ1.6m)10aは、両端が張りだして鍔部10bを具備している。
【0073】
ゴム10aの鰐部10bの両側に鋼フランジ9aを配置してゴム10aと鋼フランジ9aを接着するとともに、L型の抑え金具10cにてゴム10aの鍔部10bを内外全周にわたって抑え込み、L型の押さえ金具10cは鋼フランジ9aに溶接固定されている。
【0074】
鋼フランジ9aとゴム10aの接着強度と鍔部10bのゴムのせん断強度により鋼フランジ9aとゴム10aが一体となって可撓継手10として働く。
【0075】
鋼フランジ9aにジベルを溶接しておき、ゴム10aにジベルを埋め込み接着することにより、鋼フランジ9aとゴム10aの一体化を計ることもできる。
【0076】
鋼フランジ9aの外周部には、ボルト継手用の孔が明けられ、放射梁3または外周梁4の鋼フランジ9aとボルト9bで結合して可撓継手10を形成する。
【0077】
図5は、
図3のイカダ型浮体の放射梁3が波に乗って可撓継手10部分が曲げ変形した時の拡大図である。
【0078】
ゴム10aのシリンダー部が曲げ変形して放射梁3、外周梁4が波乗りに必要な屈折角13.5°が得られている。
【0079】
可撓継手10の働きにより、イカダ型浮体は波に乗り、放射梁3と外周梁4にかかる荷重を減らし、大きな断面力の発生を防ぐことができるから、放射梁3と外周梁4を経済性ある断面の大きさに抑えることができる。
【0080】
実施例では、放射梁3と外周梁4の変形性能と強度性能を満たすために、ゴム10aは15MPa以上の高強度で、ヤング率は15MPa程度の高硬度のものが望ましいが、これに限られるものではない。
【0081】
厳しい波浪の海域においても、イカダ型浮体を用いた本発明の浮体式洋上風力発電装置は可撓継手10の働きにより、イカダ型浮体は波に乗り、放射梁3、外周梁4にかかる荷重を減らし、大きな断面力の発生を防ぎ、放射梁3と外周梁4を経済性ある断面の大きさに抑えることができる。
【0082】
本実施例によれば、経済性に優れる浮体式洋上風力発電装置の浮体として、波浪の穏やかな海域においては
図1のイカダ型浮体を、波浪の厳しい海域においては可撓継手を有する
図2のイカダ型の浮体を提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 タワー
2 浮力室
3 放射梁
4 外周梁
5 係留索
6 ローター
7 ナセル
8 係留金具
9 フランジ継手
9a フランジ
9b ボルト
10 可撓継手
10a ゴム
10b ゴム(鍔部)
10c 抑え金具