(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】抜型用反発材とそれが用いられる抜型
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20230209BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20230209BHJP
B26F 1/38 20060101ALI20230209BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B26F1/44 G
B26F1/40 B
B26F1/38 A
B26F1/44 F
B26D7/18 F
(21)【出願番号】P 2022056348
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-04-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-201798(JP,A)
【文献】特開2001-300897(JP,A)
【文献】特開平08-090497(JP,A)
【文献】実開昭62-055713(JP,U)
【文献】特開平10-131926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/38 - 1/44
B26D 7/18
F16B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の弾性部材からなり、板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれた抜型において前記切刃に沿うように前記ベースに設置される抜型用反発材であって、
前記ベースと接触する取付面と平行をなすように上面が平坦に形成され、前記取付面と前記上面の間の側面に凹部が設けられている接触部と、
この接触部の前記取付面に下方へ突出するとともに、前記抜型に設けられた嵌合孔に対して嵌入可能に形成されている
円柱状又は円筒状の突起部と、を備え
、
前記抜型は横断面が円形をなす前記嵌合孔が前記ベースに設けられ、
前記突起部の側面には、薄板状の係合部が側方へ突出し、かつ、弾性変形により前記突起部を前記嵌合孔に対して嵌入可能に設けられていることを特徴とする抜型用反発材。
【請求項2】
前記抜型はトムソン型と呼ばれる平型であって、
前記接触部の前記取付面は、全面が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の抜型用反発材。
【請求項3】
前記抜型は前記ベースの横断面が円弧状をなし、供給されたシート材料をダイシリンダにセットされた状態で回転しながら打ち抜くロータリーダイカッターに用いられるロータリー型であって、
前記接触部の前記取付面は、前記ベースに対して当接可能に横断面が円弧状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の抜型用反発材。
【請求項4】
前記嵌合孔は前記横断面が円形をなす代わりに矩形をなし、
前記突起部は円柱状又は円筒状をなす代わりに前記嵌合孔に対して嵌入可能な角柱状又は角筒状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の抜型用反発材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の抜型用反発材が用いられる抜型であって、
板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれ、
前記抜型用反発材の前記突起部が嵌入される前記嵌合孔が前記切刃に沿って設けられていることを特徴とする抜型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜型を用いて打抜き加工を行う際に製品の離型性を高める目的で抜型に設置される反発材に係り、特に、抜型から取り外して再利用することが可能な抜型用反発材とそれが用いられる抜型に関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)及び
図7(b)はそれぞれトムソン型(平型)と呼ばれる抜型及びロータリーダイカッターに用いられるロータリー型と呼ばれる抜型の外観の一例を示した斜視図である。
図7(a)に示すように、抜型50aはベニヤ板、樹脂板、金属板などからなるベース51aにレーザ加工などによって形成された溝に、それと同じ形状に折り曲げられた金属製の切刃52aが埋め込まれた構造となっている。そして、通常、抜型50aにはウレタンやスポンジなどからなる反発材(図示せず)が切刃52aに沿って、その刃先よりもわずかに突出するように配設され、両面テープなどを用いてベース51aの表面に貼り付けられている。
このような構造の抜型50aにおいて、紙や段ボールなどのシート材料並びにウレタンなどの発泡体に切刃52aの刃先を当接させた状態からシート材料や発泡体にベース51aを反発材の弾性力に抗して押し付けると、反発材が圧縮変形することによりシート材料や発泡体の刃先に当接した部分が切刃52aの形状通りに打ち抜かれる。そして、ベース51aをシート材料や発泡体から離れる方向へ移動させると、反発材の形状が弾性的に回復することによりシート材料や発泡体が切刃52aから離脱する。
【0003】
図7(b)に示すように、平行に設置されて互いに逆方向に回転するダイシリンダとアンビルシリンダを備えたロータリーダイカッター(図示せず)に用いられる抜型50bは、ベニヤ板、樹脂板、金属板などからなり、横断面が円弧状をなすベース51bに形成された溝に金属製の切刃52bが埋設された構造となっている。なお、抜型50bにおいても上述の反発材(図示せず)が切刃52bに沿って、その刃先よりもわずかに突出するように配設されるとともに、両面テープなどを用いてベース51bの表面に貼り付けられている。
このような構造の抜型50bをロータリーダイカッターのダイシリンダ(図示せず)に取り付けた状態で、ダイシリンダとアンビルシリンダを互いに逆向きに回転させながら、それらの間にシート材料を通過させると、シート材料はアンビルシリンダにより反発材の弾性力に抗して抜型50bに押し付けられる結果、反発材が圧縮変形することによりシート材料の刃先に当接した部分が切刃52bの形状通りに打ち抜かれる。そして、ダイシリンダとアンビルシリンダをさらに回転させると、反発材の形状が弾性的に回復することによってシート材料は切刃52bから離脱する。
【0004】
上述の抜型50a、50bにおいて、反発材は製品の離型性を高めるという機能を有しているが、反発材が硬過ぎると、圧縮変形を起こし難いため、打抜き時の作業性が低下する。一方、反発材が軟らか過ぎると、製品の離型性を高めるという機能が十分に発揮されないだけでなく、シート材料が硬い場合には反発材の一部が摩耗したり、変形したりする可能性が高い。また、シート材料の腰が弱いと、打抜きの際にシート材料が変形してしまうおそれがある。したがって、反発材は適度な弾力性を有し、シート材料に変形を生じさせることがなく、また、シート材料の表面に凹凸がある場合でもその凹凸を吸収してシート材料に対して押圧力が均等に作用するような特性を備えていることが必要である。
【0005】
抜型の反発材に係る技術としては、例えば、特許文献1に「打抜きクッション部材」という名称で、主として段ボールなど板紙を打ち抜いて紙器などのブランクを製造する工程で使用される打抜き型の抜き屑押戻し用クッション部材に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、比較的硬度の高い多孔ゴム質材からなり、所要の厚さを有する帯状部材であって、その幅方向寸法が打抜き刃の基板植設高さ寸法よりやや大きく、長手方向の一方の側部に沿って所要のピッチでバチ形に形成される突起部が設けられていることを特徴とする。
特許文献1に開示されたクッション部材が打抜き時にシート状の材料と接して押圧されると、クッション部材の長手方向の一方の側部に沿って所要のピッチで設けられたバチ形の突起部が隣接する凹欠部側に大きく弾性変形することにより押圧力が吸収されるとともに、クッション部材全体が多孔ゴム質であり、厚み方向への膨出が少ないため、打抜き刃に側圧が加わることなくクッション効果が発揮される。さらに、クッション部材が比較的硬度の高い多孔ゴム質材によって形成されており、その外表面がゴム材とは異なり、濡れ性が高くないため、打抜き時に発生する紙粉が付着し難く、弾性力が損なわれるおそれがない。したがって、上記クッション部材によれば、作業性の向上を図ることができる。
【0006】
また、特許文献2には「段ボール打抜型及びその打抜方法」という名称で、段ボールを所定の形状に打ち抜くための型及びその方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された打抜型に係る発明は、保持体に設けられた切刃の両側に配置される2つの弾性体において、段ボールの打抜きカス部に当接する一方の弾性体が切刃の最上部より突出するように保持体の表面に設けられ、段ボールの製品部に当接する他方の弾性体が保持体に設けられた穴部に配置されていることを特徴とする。
このような構造の打抜型によれば、段ボールの製品部側に当接する弾性体が保持体に設けられた穴部に挿入されており、その厚さが段ボールの打抜きカス部に当接する弾性体より厚くなっていることから、段ボールの製品部側に当接する弾性体の歪み率は、打ち抜く際の段ボールの打抜きカス部に当接する弾性体よりも大きい。この場合、製品部側に当接する弾性体が段ボールの製品部に対して柔らかに接触することになるため、段ボールの段潰れが発生しない。
【0007】
さらに、特許文献3には「シート押え具」という名称で、打抜き型に取り付けられた切刃で段ボールシートを打ち抜くとともに、押罫で罫線を押圧成形する際に、切刃や押罫を挟むように配置されて打抜き型に固定される部材に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、段ボールシートの構成部材の移動を押える滑り止め部が押え板の外表面に設けられたことを特徴とする。
このような構造によれば、罫線割れや切断縁におけるビビリの発生を防ぐことができる。
【0008】
そして、特許文献4には「平坦なシートからブランクを打ち抜くための装置」という名称で、支持板から突き出すように設置された打抜き工具と、この打抜き工具の保護部材によって梱包用のブランクを打ち抜くための装置に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示された発明は、固い材料からなる溝形部材が打抜き工具の長手方向の各側面について、打抜き工具と平行に支持板上に配置され、保護部材の断面の一部分が溝形部材に挿入されていることを特徴とする。
このような構造によれば、保護部材を他の種類のものと素早く交換することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-347489号公報
【文献】特開2001-88095号公報
【文献】特開2006―68896号公報
【文献】特表2006-507139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された発明では、緩衝性が向上するものの、シート状の材料と接触する面積が小さいため、打抜き後の材料に打痕が付いてしまう可能性が高い。また、特許文献1に開示されたクッション部材は基板面に接着剤を用いて接着されることから、基板に対する取り付けや取り外しが容易でなく、しかも打抜き型を使い終わった後に基板から取り外して再利用することができないという課題があった。
また、特許文献2に開示された発明では、2つの弾性体が保持体に接着される構造であるため、打抜型の使用後に保持体から取り外して再利用することが困難である。
【0011】
さらに、特許文献3に開示された発明では、段ボールシートと接触する面積が小さいため、段ボールシートを打ち抜く際にシート押え具と接触する部分に打痕が付いてしまうおそれがある。また、特許文献3には、シート押え具の台板への固定方法について明確には記載されていないものの、シート押え具は台板に接触する面が平坦であることから、シート押え具は台板に両面テープや接着剤などを用いて接着される構造と考えられる。その場合、打抜き型の使用後にシート押え具を台板から取り外す作業が容易でなく、また、台板から取り外したシート押え具を再利用することは困難である。
そして、特許文献4に開示された発明では、保護部材が溝形部材に接着されていないため、保護部材を溝形部材から容易に取り出すことができるものの、溝形部材は背板が支持板に接着剤で接着されているため、支持板から取り外すことは難しく、支持板を使い終わった後に支持板から取り外した溝形部材の再利用も容易でない。
本発明は、このような課題に対処してなされたものであり、適度な弾力性を有し、シート材料並びにウレタンなどの発泡体に対して打痕や変形が生じ難く、ベースに対する着脱が容易であって、抜型の使用後にベースから取り外すことによって再利用することが可能な抜型用反発材とそれが用いられる抜型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1の発明は、弾性部材からなり、板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれた抜型において切刃に沿うようにベースに設置される抜型用反発材であって、ベースと接触する取付面と平行をなすように上面が平坦に形成され、取付面と上面の間の側面に凹部が設けられている接触部と、この接触部の取付面に下方へ突出するように設けられた突起部と、を備えていることを特徴とする。
第1の発明においては、突起部を嵌入可能な嵌合孔を抜型に設けた場合、突起部を嵌合孔に嵌入することによって接触部がベースに固定されるとともに、突起部を嵌合孔から引き抜くことによってその固定状態が解消されるという作用を有する。また、第1の発明においては、凹部の形状や大きさ、あるいは個数を変えることにより、接触部の弾力性が変化するという作用を有する。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、抜型はトムソン型と呼ばれる平型であって、接触部の取付面は、全面が平坦に形成されていることを特徴とする。
第2の発明における突起部を嵌入可能な嵌合孔を抜型に設け、この嵌合孔に突起部を嵌入させるようにして第2の発明を抜型に設置した場合、全面が平坦に形成されている接触部の取付面と平行な上面がベースに対して平行な状態になるため、シート材料を抜型によって打ち抜く際に、接触部の上面とシート材料の接触面積が広くなる。そのため、第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時の押圧力がシート材料に対して均等に加わるという作用を有する。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、抜型はベースの横断面が円弧状をなし、供給されたシート材料をダイシリンダにセットされた状態で回転しながら打ち抜くロータリーダイカッターに用いられるロータリー型であって、接触部の取付面は、ベースに対して当接可能に横断面が円弧状をなしていることを特徴とする。
第3の発明における突起部を嵌入可能な嵌合孔を抜型に設け、この嵌合孔に突起部を嵌入させるようにして第3の発明を抜型に設置した場合、ベースに対して当接可能に横断面が円弧状をなしている接触部の取付面と平行な上面がベースに対して平行な状態になるため、シート材料を抜型によって打ち抜く際に、接触部の上面とシート材料の接触面積が広くなる。そのため、第3の発明においては、第1の発明の作用に加え、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時の押圧力がシート材料に対して均等に加わるという作用を有する。
【0015】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、抜型は横断面が円形をなす嵌合孔がベースに設けられ、突起部は嵌合孔に対して嵌入可能な円柱状又は円筒状をなしていることを特徴とする。なお、第4の発明において「円柱状又は円筒状をなす突起部」には「略円柱状又は略円筒状をなす突起部」も含まれるものとする。
第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、突起部が嵌合孔に嵌入された場合に接触部が突起部の円柱軸又は円筒軸を中心として回転可能な状態になるという作用を有する。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、突起部の側面には、薄板状の係合部が側方へ突出し、かつ、弾性変形により突起部を嵌合孔に対して嵌入可能に設けられていることを特徴とする。なお、第5の発明において「突起部の側面」とは突起部が抜型のベースに設けられた嵌合孔に嵌入された際に嵌合孔の内面と対向する面をいう。
第5の発明においては、第4の発明の作用に加え、係合部が突起部の側面と嵌合孔の内周面の隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部と嵌合孔の間に大きな摩擦力が発生するという作用を有する。
【0017】
第6の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、抜型は横断面が矩形をなす嵌合孔がベースに設けられ、突起部は嵌合孔に対して嵌入可能な角柱状又は角筒状をなしていることを特徴とする。なお、第6の発明において「角柱状又は角筒状をなす突起部」には「略角柱状又は略角筒状なす突起部」も含まれるものとする。
第6の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、突起部が嵌合孔に嵌入された場合に切刃に対する接触部の位置関係が規定されるという作用を有する。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、突起部の側面には、薄板状の係合部が側方へ突出し、かつ、弾性変形により突起部を嵌合孔に対して嵌入可能に設けられていることを特徴とする。なお、第7の発明において「突起部の側面」とは突起部が抜型のベースに設けられた嵌合孔に嵌入された際に嵌合孔の内面と対向する面をいう。
第7の発明においては、第6の発明の作用に加え、係合部が突起部の側面と嵌合孔の内面の隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部と嵌合孔の間に大きな摩擦力が発生するという作用を有する。
【0019】
第8の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明に係る抜型用反発材が用いられる抜型であって、板状のベースに形成された溝に切刃が埋め込まれ、抜型用反発材の突起部を嵌入可能な嵌合孔が切刃に沿って設けられていることを特徴とする。
このような構造の抜型においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明に係る抜型用反発材が用いられた場合、突起部を嵌合孔に嵌入することによって接触部がベースに固定されるとともに、突起部を嵌合孔から引き抜くことによってその固定状態が解消されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、抜型に対する取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができるとともに、抜型から取り外した後に再利用することができる。また、第1の発明では、接触部の材質を変えなくとも、凹部の形状や大きさ、あるいは個数を変えることで、接触部の弾力性を容易に調節可能な構造となっている。したがって、第1の発明によれば、接触部の弾力性を調節することにより、製品の離型性を高めることができる。
【0021】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、抜型による打抜き力がシート材料の一部に集中しないため、打抜き後のシート材料に打痕が付き難いという効果を奏する。
【0022】
第3の発明によれば、ロータリー型に用いた場合に、第2の発明と同様の効果を奏する。
【0023】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、突起部を嵌合孔に嵌入した後に接触部を手で持って突起部の円柱軸又は円筒軸を中心として回転させることにより、切刃に対する接触部の位置関係を容易に調整できるため、抜型に取り付ける際の作業性が良いという効果を奏する。
【0024】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加え、抜型に設置された後に、ベースの嵌合孔から突起部が不用意に抜け落ちてしまうおそれがないという効果を奏する。
【0025】
第6の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、抜型に対して効率良く取り付けることができるという効果を奏する。
【0026】
第7の発明によれば、第6の発明の効果に加え、抜型に設置された後に、ベースの嵌合孔から突起部が不用意に抜け落ちてしまうおそれがないという効果を奏する。
【0027】
第8の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明に係る抜型用反発材が用いられた場合、その取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができるとともに、当該抜型用反発材を取り外した後に再利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る抜型用反発材の外観斜視図及び側面図である。
【
図2】(a)及び(b)はそれぞれ
図1に示した抜型用反発材が設置される抜型の外観斜視図及び平面図である。
【
図3】(a)は
図1に示した抜型用反発材の第1の変形例の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した抜型用反発材が設置される抜型の外観斜視図である。
【
図4】(a)は
図1に示した抜型用反発材の第2の変形例の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した抜型用反発材が設置される抜型の外観斜視図である。
【
図5】(a)及び(b)はそれぞれ
図1に示した抜型用反発材の第3の変形例の外観斜視図及び側面図である。
【
図6】
図5に示した抜型用反発材が設置される抜型の外観斜視図である。
【
図7】(a)及び(b)はそれぞれトムソン型(平型)と呼ばれる抜型及びロータリーダイカッターに用いられるロータリー型と呼ばれる抜型の外観の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の抜型用反発材とそれが用いられる抜型の構造とそれに基づいて発揮される作用及び効果について
図1乃至
図6を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明の抜型用反発材はシート材料並びにウレタンなどの発泡体の打抜きに用いられる抜型のベースに取り付けられるものであるため、以下の説明ではベースに取り付けられた状態でシート材料に接触する側及びベースに接触する側をそれぞれ「上面」及び「下面」と表現し、ベース側を「下方」と表現している。
【実施例1】
【0030】
図1(a)及び
図1(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る抜型用反発材の外観斜視図及び側面図である。また、
図2(a)及び
図2(b)はそれぞれ
図1に示した抜型用反発材が設置される抜型の外観斜視図及び平面図である。なお、
図2(a)及び
図2(b)では図が煩雑になるのを避けるため、全ての嵌合孔と抜型用反発材について符号を付する代わりに、それぞれ1個ずつ符号を付している。また、
図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本発明の抜型用反発材1aはポリエチレンの発泡体やウレタン、あるいはエラストマー樹脂などの弾性部材からなり、互いに平行をなす側面2c、2dにそれぞれ凹部2eが設けられている接触部2と、この接触部2の下面2bに下方へ突出するように設けられた円柱状の突起部3を備えている。
また、接触部2の上面2aは下面2bと平行をなすように平坦に形成されており、突起部3の側面3aには薄板状の係合部3bが側方へ突出するように設けられている。
【0031】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、抜型用反発材1aが用いられる抜型4aはベニヤ板、樹脂板、金属板などからなるベース51aにレーザ加工などによって形成された溝に、それと同じ形状に折り曲げられた金属製の切刃52aが埋め込まれるとともに、切刃52aに沿って抜型用反発材1aの突起部3を嵌入するための嵌合孔5aが設けられている。
また、抜型用反発材1aでは、突起部3が係合部3bの弾性変形によって嵌合孔5aに対して嵌入可能な構造となっている。そして、係合部3bは突起部3の側面3aと横断面が円形をなす嵌合孔5aの内周面の隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部3と嵌合孔5aの間に大きな摩擦力が発生するという作用を有している。したがって、抜型用反発材1aでは、抜型4aに設置された後に、ベース51aの嵌合孔5aから突起部3が不用意に抜けてしまうおそれがない。
【0032】
さらに、抜型4aは従来の抜型50a(
図7(a)を参照)において、抜型用反発材1aが設置される箇所に横断面が円形をなす嵌合孔5aが設けられた構造であることから、抜型用反発材1aでは、突起部3が嵌合孔5aに嵌入された場合に接触部2が突起部3の円柱軸を中心として回転可能な状態となる。したがって、抜型用反発材1aによれば、突起部3を嵌合孔5aに嵌入した後に接触部2を手で持って突起部3の円柱軸を中心として回転させることにより、切刃52aに対する接触部2の位置関係を容易に調整できるため、抜型4aに取り付ける際の作業性が良い。
また、抜型用反発材1aの接触部2は、抜型4aに設置される際に下面2b(
図1(a)及び
図1(b)を参照)がベース51aと接触する取付面となるが、このとき、下面2bと平行をなすように平坦に形成された上面2a(
図1(a)及び
図1(b)を参照)はベース51aに対して平行な状態となる。
このような構造の抜型用反発材1aにおいては、シート材料と接触部2の上面2aが平坦であって、かつ、抜型4aに設置された状態で接触部2の上面2aがベース51aと平行をなすことから、シート材料を抜型4aによって打ち抜く際に、接触部2の上面2aとシート材料の接触する面積が広くなる。これにより、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時に抜型用反発材1aからシート材料へ押圧力が均等に作用する。したがって、抜型4aに抜型用反発材1aを用いると、抜型4aによる打抜き力がシート材料の一部に集中しないため、打抜き後のシート材料に打痕が付き難い。
また、抜型用反発材1aでは、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることにより、接触部2の弾力性が変化する。すなわち、抜型用反発材1aは、接触部2の材質を変えなくとも、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることで、接触部2の弾力性を容易に調節可能な構造となっている。したがって、抜型用反発材1aによれば、接触部2の弾力性を調節することにより、製品の離型性を高めることができる。
さらに、抜型用反発材1aは突起部3を嵌合孔5aに嵌入することによって接触部2がベース51aに固定され、突起部3を嵌合孔5aから引き抜くことによってその固定状態が解消されるため、抜型4aに対する取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができる。そして、抜型4aから取り外した抜型用反発材1aは再利用することが可能である。
【実施例2】
【0033】
図3(a)は
図1に示した抜型用反発材1aの第1の変形例に係る抜型用反発材1bの外観斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)に示した抜型用反発材1bが用いられる抜型4bの外観斜視図である。なお、
図3(b)では図が煩雑になるのを避けるため、全ての嵌合孔について符号を付する代わりに、1個の嵌合孔についてのみ符号を付している。また、
図1及び
図2並びに
図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、抜型用反発材1bは抜型用反発材1aにおいて円柱状の突起部3の代わりに角柱状の突起部6が接触部2の下面2bに下方へ突出するように設けられており、抜型4bは抜型4aにおいて嵌合孔5aの代わりに横断面が矩形をなす嵌合孔5bが設けられている。また、突起部6の側面6aには薄板状の係合部6bが側方へ突出するように設けられている。
さらに、抜型用反発材1bでは、突起部6が係合部6bの弾性変形によって嵌合孔5bに対して嵌入可能な構造となっている。そして、係合部6bは側面6aと嵌合孔5bの内面の隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部6と嵌合孔5bの間に大きな摩擦力が発生するという作用を有している。したがって、抜型用反発材1bでは、抜型4bに設置された後に、ベース51aの嵌合孔5bから突起部6が不用意に抜けてしまうおそれがない。
なお、抜型用反発材1bでは、抜型用反発材1aとは異なり、円柱状の突起部3を嵌合孔5aに嵌入した後に接触部2を手で持って突起部3の円柱軸を中心として回転させることによって切刃52aに対する接触部2の位置関係を調整することはできないものの、角柱状の突起部6を横断面が矩形をなす嵌合孔5bに嵌入することにより、切刃52aに対する接触部2の位置関係が規定されるため、突起部6を嵌合孔5bに嵌入した後に切刃52aに対して接触部2の位置調整を行う必要がない。したがって、抜型用反発材1bでは、抜型4bに対して効率良く取り付けることができる。
【0034】
また、抜型用反発材1bにおいても、シート材料と接触部2の上面2aが平坦であって、かつ、抜型4bに設置された状態で接触部2の上面2aがベース51aと平行をなすことから、シート材料を抜型4bによって打ち抜く際に、接触部2の上面2aとシート材料の接触面積が広くなる。これにより、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時に抜型用反発材1bからシート材料へ押圧力が均等に加わるという作用が同様に発揮される。そのため、抜型4bに抜型用反発材1bを用いた場合、抜型4bによる打抜き力がシート材料の一部に集中しないため、打抜き後のシート材料に打痕が付き難い。
さらに、抜型用反発材1bでは、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることにより、接触部2の弾力性が変化する。すなわち、抜型用反発材1bも、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることで、接触部2の材質を変えることなく、接触部2の弾力性を容易に調節できる構造となっている。したがって、抜型用反発材1bにおいても、接触部2の弾力性を調節することで製品の離型性を高めることができるという効果が同様に発揮される。
そして、抜型用反発材1bでは、突起部6を嵌合孔5bに嵌入することによってベース51aに固定され、突起部6を嵌合孔5bから引き抜くことによってその固定状態が解消されるため、抜型4bに対する取り付け作業及び取り外し作業が容易となっている。そして、抜型4bから取り外した抜型用反発材1bは再利用することが可能である。
【実施例3】
【0035】
図4(a)は
図1に示した抜型用反発材1aの第2の変形例に係る抜型用反発材1cの外観斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)に示した抜型用反発材1cが用いられる抜型4cの外観斜視図である。なお、
図4(b)では図が煩雑になるのを避けるため、全ての嵌合孔について符号を付する代わりに、1個の嵌合孔についてのみ符号を付している。また、
図1及び
図2並びに
図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図4(a)に示すように、抜型用反発材1cは抜型用反発材1aにおいて接触部2の下面2bが平坦に形成される代わりに、下面2bの横断面が円弧状をなしている。また、
図4(b)に示すように、抜型用反発材1cが用いられる抜型4cは平行に設置されて互いに逆方向に回転するダイシリンダとアンビルシリンダを備えたロータリーダイカッター(図示せず)に用いられるものであり、ベニヤ板、樹脂板、金属板などからなり、横断面が円弧状をなすベース51bに形成された溝に金属製の切刃52bが埋設されるとともに、切刃52bに沿って抜型用反発材1cの突起部3を嵌入するための嵌合孔5aが設けられている。すなわち、抜型4cは従来の抜型50b(
図7(b)を参照)において、抜型用反発材1cが設置される箇所に横断面が円形をなす嵌合孔5aが設けられた構造となっている。また、突起部3の側面3aには薄板状の係合部3bが側方へ突出するように設けられている。
さらに、抜型用反発材1cでは、突起部3が係合部3bの弾性変形によって嵌合孔5aに対して嵌入可能な構造となっている。そして、係合部3bは側面3aと嵌合孔5aの内周面の隙間を埋めるように弾性変形することで、突起部3と嵌合孔5aの間に大きな摩擦力が発生するという作用を有している。したがって、抜型用反発材1cでは、抜型4cに設置された後に、ベース51bの嵌合孔5aから突起部3が不用意に抜けてしまうおそれがない。
【0036】
抜型用反発材1cの接触部2は、抜型4cに設置される際に下面2bがベース51bと接触する取付面となるため、その横断面がベース51bに対して当接可能な円弧状をなしている。また、このとき、下面2bと平行をなすように平坦に形成された上面2aはベース51bに対して平行な状態となる。
このような構造の抜型用反発材1cにおいては、シート材料と接触部2の上面2aが平坦であって、かつ、抜型4cに設置された状態で接触部2の上面2aがベース51bと平行をなすことから、シート材料を抜型4cによって打ち抜く際に、接触部2の上面2aとシート材料の接触する面積が広くなる。これにより、シート材料の表面に凹凸がある場合でも、打抜き時に抜型用反発材1cからシート材料へ押圧力が均等に作用する。したがって、抜型4cに抜型用反発材1cを用いると、抜型4cによる打抜き力がシート材料の一部に集中しないため、打抜き後のシート材料に打痕が付き難い。
【0037】
また、抜型用反発材1cでは、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることにより、接触部2の弾力性が変化する。すなわち、抜型用反発材1cは、接触部2の材質を変えなくとも、凹部2eの形状や大きさ、あるいは個数を変えることで、弾力性を容易に調節可能な構造となっている。したがって、抜型用反発材1cによれば、接触部2の弾力性を調節することにより、製品の離型性を高めることができる。
さらに、抜型用反発材1cは突起部3を嵌合孔5aに嵌入することによってベース51bに固定され、突起部3を嵌合孔5aから引き抜くことによってその固定状態が解消されるため、抜型4cに対する取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができる。そして、抜型4cから取り外した抜型用反発材1cは再利用することが可能である。
本発明の抜型4a~4cによれば、抜型用反発材1a~1cが用いられた場合に、その取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができるとともに、取り外した後に再利用することができるという抜型用反発材1a~1cについての効果が同様に発揮される。
【実施例4】
【0038】
図5(a)及び
図5(b)はそれぞれ
図1に示した抜型用反発材1aの第3の変形例に係る抜型用反発材1dの外観斜視図及び側面図であり、
図6は抜型用反発材1dが設置される抜型4aの一部を拡大して示した外観斜視図である。なお、
図1及び
図2を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、抜型用反発材1dは
図1に示した抜型用反発材1aを2つ備えており、この2つの抜型用反発材1aが接触部2の一部で繋がった状態となるように一体として形成された構造となっている。すなわち、抜型用反発材1dは
図1に示した抜型用反発材1aと異なり、接触部2と突起部3をそれぞれ2つずつ備えるとともに、接触部2の両端に凹部2eの代わりに切欠2fがそれぞれ設けられたことを特徴とする。そして、
図6に示すように、抜型用反発材1dでは2つの突起部3が、抜型4aに設けられた2つの嵌合孔5aに対して同時に嵌入可能に形成されている。
このような構造の抜型用反発材1dにおいては、抜型4aに設置する際に2つの突起部3が同時に2つの嵌合孔5aに嵌入されることで、抜型4aに対する接合強度が増すという作用を有する。
なお、
図5及び
図6では、抜型用反発材1dの接触部2に切欠2fが設けられているが、抜型用反発材1aのように切欠2fの代わりに凹部2eが設けられた構造であっても良い。ただし、
図5及び
図6に示すように接触部2の両端に切欠2fが設けられている場合、当該部分は他の部分に比べて変形し易いことから、接触部2を掴んで抜型4aから抜型用反発材1dを取り外す際に、切欠2fが設けられている部分を持ち上げるようにして接触部2の一部を変形させることで、接触部2をより掴み易い状態にすることができるというメリットがある。
【0039】
本発明の抜型用反発材は上述の実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、抜型用反発材1a~1dにおいて、接触部2の側面2c、2dにそれぞれ凹部2eが設けられる代わりに、側面2cから側面2dに貫通するような孔が設けられた構造としても良いし、互いに平行な側面2c、2dの一方のみに設けられた構造、あるいは側面2c、2d以外の側面にも凹部2eが設けられた構造としても良い。また、接触部2に対し、突起部3、6を別部材として、接触部2の下面2bに突起部3、6の上面が接合された構造とすることもできる。さらに、突起部3は円柱状をなす代わりに円筒状をなした構造であっても良いし、突起部6は角柱状をなす代わりに角筒状をなした構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ベースがベニヤ板、樹脂板、金属板によって形成されたトムソン型(平型)と呼ばれる抜型やロータリー型と呼ばれる抜型に設置して、紙や段ボールなどのシート材料並びにウレタンなどの発泡体の打抜きを行う場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1a~1d…抜型用反発材 2…接触部 2a…上面 2b…下面 2c、2d…側面 2e…凹部 2f…切欠 3…突起部 3a…側面 3b…係合部 4a~4c…抜型 5a、5b…嵌合孔 6…突起部 6a…側面 6b…係合部 50a、50b…抜型 51a、51b…ベース 52a、52b…切刃
【要約】
【課題】適度な弾力性を有し、シート材料並びにウレタンなどの発泡体に対して打痕や変形が生じ難く、ベースに対する着脱が容易であって、抜型の使用後にベースから取り外すことによって再利用することが可能な抜型用反発材とそれが用いられる抜型を提供する。
【解決手段】抜型用反発材1aはポリエチレンの発泡体やウレタン、あるいはエラストマー樹脂などの弾性部材からなり、互いに平行をなす側面2c、2dにそれぞれ凹部2eが設けられている接触部2と、側面3aに薄板状の係合部3bが側方へ突出するように設けられるとともに接触部2の下面2bに下方へ突出するように設けられた円柱状の突起部3を備えている。
【選択図】
図1