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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】デューティ補償装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/04 20060101AFI20230209BHJP
   H03K 5/131 20140101ALI20230209BHJP
   H03K 3/354 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H03K5/04
H03K5/131
H03K3/354 B
H03K3/354 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018099477
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019205077
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-149708(JP,A)
【文献】特開2006-250934(JP,A)
【文献】特開2005-20704(JP,A)
【文献】特開2010-114875(JP,A)
【文献】特開2012-10118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K5/04-5/07
H03K5/131
H03K3/354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるクロックのデューティを、制御コードの値によって異なるデューティ調整量に基づいて調整して、当該調整後のクロックを出力するデューティ調整部と、
Nを3以上の整数とし、nを1~Nの各整数として、各期間Tに亘って、前記クロックに対して非同期であって他の何れの期間における周波数とも異なる周波数のサンプリングクロックをサンプリングクロック生成部により生成し、前記サンプリングクロックが指示するタイミングにおいて前記デューティ調整部から出力されるクロックのレベルが所定値である事象を計数して、期間T における当該事象の計数値、期間T の時間および期間T のサンプリングクロックの周波数に基づいて該クロックのデューティを測定するデューティ測定部と、
各期間Tにおいて前記デューティ調整部へ前記制御コードを各値として出力して前記デューティ測定部によるデューティ測定の結果を受け取り、N個の期間T ~T それぞれにおいてデューティが所定範囲となる前記制御コードの値のうちから選択して以降に前記デューティ調整部へ与える制御コードの値を決定する制御部と、
を備えるデューティ補償装置。
【請求項2】
前記制御部は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードの値を昇順または降順に並べたときの最大値および最小値を除く何れかの制御コードの値を、前記デューティ調整部へ与える制御コードの値として決定する、
請求項1に記載のデューティ補償装置。
【請求項3】
前記制御部は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードの値を昇順または降順に並べたときの中央値の制御コードの値を、前記デューティ調整部へ与える制御コードの値として決定する、
請求項1または2に記載のデューティ補償装置。
【請求項4】
前記サンプリングクロック生成部は、
供給される電流の量によって遅延量が異なる複数の遅延セルがリング状に接続され前記サンプリングクロックを生成して出力するリングオシレータと、前記複数の遅延セルそれぞれに電流を供給する電流源と、を含み、
前記電流源が供給する電流の量によって異なる周波数のサンプリングクロックを前記リングオシレータにより生成して出力する、
請求項1~3の何れか1項に記載のデューティ補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックのデューティを補償するデューティ補償装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にデジタル回路はクロックに同期して動作するように設計される。すなわち、デジタル回路は、クロックの立上り及び立下りの双方または何れか一方のタイミングにおいて新たな論理状態に遷移する。或いは、デジタル回路は、多相クロックを構成する各相のクロックの立上り又は立下りのタイミングにおいて新たな論理状態に遷移する。
【0003】
デジタル回路において、クロックのデューティは適正範囲内にあることが重要である。単相クロックのデューティは、ハイレベルの時間tと周期Tとの比(t/T)で表される。二相クロックのデューティは、その二相クロックを構成する互いに相補的な二つのクロックのうち一方のハイレベルの時間と周期との比で表される。
【0004】
もし、クロックのデューティが適正範囲から外れていると、デジタル回路が所望の動作をしない場合がある。例えば、パラレルデータをシリアルデータに変換して該シリアルデータを出力するシリアライザ装置において、シリアルデータの各ビットデータの出力タイミングを指示するクロックのデューティが0.5から大きく異なると、出力されるシリアルデータのうち奇数番目のビットのデータおよび偶数番目のビットのデータそれぞれの期間の長さが互いに大きく異なることになって、いわゆる Even/Oddジッタが発生する。このようなジッタが誤動作の要因となる場合がある。それ故、クロックのデューティは適正範囲内にあることが重要である。
【0005】
クロックのデューティを補償する装置の発明が特許文献1~3に開示されている。これらの文献に記載されたデューティ補償装置は、クロックのデューティを調整するデューティ調整部と、クロックのデューティを測定するデューティ測定部と、を備える。そして、デューティ補償装置は、デューティ測定部により測定されるクロックのデューティが適正範囲内になるように、デューティ調整部においてクロックのデューティを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0241249号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0063191号明細書
【文献】特開2012-10118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のデューティ補償装置では、デューティ測定部により得られるデューティ測定値が真値から大きく異なる場合があり、それ故、デューティ調整部から出力されるクロックのデューティを適正範囲内にすることができない場合がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、より正確にクロックのデューティを適正範囲内にすることができるデューティ補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデューティ補償装置は、(1) 入力されるクロックのデューティを制御コードに応じて調整して、当該調整後のクロックを出力するデューティ調整部と、(2) Nを3以上の整数とし、nを1~Nの各整数として、各期間Tに亘って、クロックに対して非同期であって他の何れの期間における周波数とも異なる周波数のサンプリングクロックをサンプリングクロック生成部により生成し、サンプリングクロックが指示するタイミングにおいてデューティ調整部から出力されるクロックのレベルを検出して、そのレベル検出結果に基づいて該クロックのデューティを測定するデューティ測定部と、(3) デューティ調整部におけるデューティの調整を制御するための制御コードを出力し、各期間Tにおいてデューティ測定部により測定されるデューティが所定範囲となる制御コードを求め、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードに基づいて、デューティ調整部へ与える制御コードを決定する制御部と、を備える。
【0010】
本発明において、制御部は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードを昇順または降順に並べたときの最大値および最小値を除く何れかの制御コードを、デューティ調整部へ与える制御コードとして決定するのが好適である。また、制御部は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードを昇順または降順に並べたときの中央値の制御コードを、デューティ調整部へ与える制御コードとして決定するのも好適である。
【0011】
本発明において、サンプリングクロック生成部は、複数の遅延セルがリング状に接続されたリングオシレータと、複数の遅延セルそれぞれに電流を供給する電流源と、を含み、電流源が供給する電流の量に応じた周波数のサンプリングクロックをリングオシレータにより生成して出力するのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデューティ補償装置は、より正確にクロックのデューティを適正範囲内にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、デューティ補償装置1の構成を示す図である。
図2図2は、デューティ調整部10の構成例を示す図である。
図3図3は、デューティ調整部10の各インバータ11の回路例を示す図である。
図4図4は、デューティ測定部20の構成例を示す図である。
図5図5は、デューティ測定部20のサンプリングクロック生成部21の回路例を示す図である。
図6図6は、制御コードとクロックCLK2のデューティとの間の関係の一例を示すグラフである。
図7図7は、エッジ密度とサンプリングクロックAsyncCLKの周期との間の関係を示すグラフである。
図8図8は、エッジ密度とサンプリングクロックAsyncCLKの周期との間の関係を示すグラフである。
図9図9は、制御コードとクロックCLK2のデューティとの間の関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての調整が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、デューティ補償装置1の構成を示す図である。この図には、デューティ補償装置1の他に、シリアライザ装置2およびPLL回路3も示されている。PLL回路3は、基準クロックCLK0を入力し、シリアライザ装置2におけるシリアルデータ出力のタイミングを指示するためのクロックCLK1を基準クロックCLK0に基づいて生成して、このクロックCLK1を出力する。デューティ補償装置1は、PLL回路3とシリアライザ装置2との間に挿入されている。デューティ補償装置1は、PLL回路3から出力されたクロックCLK1を入力し、このクロックCLK1のデューティを調整して、そのデューティ調整後のクロックCLK2をシリアライザ装置2へ出力する。シリアライザ装置2は、入力されたパラレルデータPar_Dataをシリアライズして、シリアルデータSer_Dataを出力する。シリアライザ装置2は、シリアルデータSer_Dataを出力する際に、そのシリアルデータSer_Dataの各ビットデータをクロックCLK2に同期して出力する。
【0016】
デューティ補償装置1は、デューティ調整部10、デューティ測定部20および制御部30を備える。デューティ調整部10は、PLL回路3から出力されるクロックCLK1を入力するとともに、制御部30から出力される制御コードを入力する。デューティ調整部10は、制御コードに応じてクロックCLK1のデューティを調整して、当該調整後のクロックCLK2をシリアライザ装置2およびデューティ測定部20へ出力する。
【0017】
デューティ測定部20は、デューティ調整部10から出力されるクロックCLK2を入力して、そのクロックCLK2のデューティを測定する。デューティ測定部20は、クロックCLK2に対して非同期であるサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック生成部を含む。デューティ測定部20は、そのサンプリングクロックが指示するタイミングにおいてクロックCLK2のレベルを検出して、そのレベル検出結果に基づいて該クロックCLK2のデューティを測定する。
【0018】
Nを3以上の整数とし、nを1~Nの各整数とする。第nの期間Tに亘って、デューティ測定部20のサンプリングクロック生成部は、クロックCLK2に対して非同期である周波数fのサンプリングクロックを生成する。各期間Tに生成されるサンプリングクロックの周波数fは、他の何れの期間に生成されるサンプリングクロックの周波数とも異なる。各期間Tに、デューティ測定部20は、周波数fのサンプリングクロックを用いて、クロックCLK2のデューティを測定する。
【0019】
制御部30は、デューティ調整部10におけるデューティの調整を制御するための制御コードをデューティ調整部10へ出力する。制御部30は、デューティ測定部20の動作を制御するための制御信号をデューティ測定部20へ出力し、また、各期間Tのデューティ測定部20による測定の結果を受け取る。制御部30は、各期間Tにおいてデューティ測定部20により測定されるデューティが所定範囲となる制御コードを求め、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードに基づいて、デューティ調整部10へ与える制御コードを決定する。
【0020】
図2は、デューティ調整部10の構成例を示す図である。デューティ調整部10は、互いに並列的に接続された複数のインバータ11~11を含む。各インバータ11は、高電位側(Rise側)および低電位側(Fall側)それぞれが独立に制御可能であるトライステートインバータである。各インバータ11は、制御部30から与えられる制御コードによってレベル反転動作が制御される。K個のインバータ11~11それぞれにおけるレベル反転動作によって、入力されるクロックCLK1のデューティが調整されて、その調整後のクロックCLK2が出力される。Kは2以上の整数であり、kは1以上K以下の各整数である。
【0021】
図3は、デューティ調整部10の各インバータ11の回路例を示す図である。各インバータ11は、PMOSトランジスタ12、PMOSトランジスタ13、NMOSトランジスタ14およびNMOSトランジスタ15が直列的に順に接続された構成を有する。PMOSトランジスタ12およびNMOSトランジスタ15それぞれのゲートにクロックCLK1が入力される。PMOSトランジスタ13のゲートに、制御コードに応じてオン/オフを設定するUP信号が入力される。NMOSトランジスタ14のゲートに、制御コードに応じてオン/オフを設定するDN信号が入力される。PMOSトランジスタ13およびNMOSトランジスタ14それぞれのドレインからクロックCLK2が出力される。
【0022】
図4は、デューティ測定部20の構成例を示す図である。この図には、制御部30も示されている。デューティ測定部20は、サンプリングクロック生成部21、サンプラ22およびカウンタ23を含む。
【0023】
サンプリングクロック生成部21は、制御部30から与えられる周波数制御信号に基づいて、第nの期間Tに亘って周波数fのサンプリングクロックAsyncCLKを生成し、そのサンプリングクロックAsyncCLKをサンプラ22およびカウンタ23へ出力する。
【0024】
サンプラ22は、デューティ調整部10から出力されるクロックCLK2を入力するとともに、サンプリングクロック生成部21から出力されるサンプリングクロックAsyncCLKを入力する。サンプラ22は、サンプリングクロックAsyncCLKが指示するタイミングでクロックCLK2のレベルをサンプリングしてホールドし、そのホールドしたレベル値をカウンタ23へ出力する。
【0025】
カウンタ23は、サンプラ22から出力されるレベル値を入力するとともに、サンプリングクロック生成部21から出力されるサンプリングクロックAsyncCLKを入力する。カウンタ23は、サンプリングクロックAsyncCLKが指示するタイミングで、レベル値を積算していくことで、サンプラ22から出力されるレベル値が1である事象を計数する。カウンタ23は、制御部30から与えられるカウンタ制御信号に基づいて動作する。すなわち、カウンタ23は、各期間Tの開始時に計数値を初期化し、各期間Tの終了時の計数値を制御部30へ出力する。
【0026】
期間Tの終了時の計数値、期間Tの時間、および、期間TのサンプリングクロックAsyncCLKの周波数fから、クロックCLK2のデューティを求めることができる。
【0027】
図5は、デューティ測定部20のサンプリングクロック生成部21の回路例を示す図である。サンプリングクロック生成部21は、複数の遅延セル211~211がリング状に接続されたリングオシレータ210と、複数の遅延セル211~211それぞれに電流を供給する電流源212と、を含む。電流源212から各遅延セル211に供給される電流の量は、制御部30から与えられる周波数制御信号により調整される。各遅延セル211における遅延量は、電流源212から供給される電流の量に応じたものとなる。サンプリングクロック生成部21は、電流源212が供給する電流の量に応じた周波数のサンプリングクロックAsyncCLKをリングオシレータ210により生成して出力する。Mは2以上の整数であり、mは1以上M以下の各整数である。
【0028】
図6は、制御コードとクロックCLK2のデューティとの間の関係の一例を示すグラフである。横軸は制御コードであり、縦軸はクロックCLK2のデューティである。この図に示される例では、デューティ調整部10に与えられる制御コードの値が大きいほど、デューティ調整部10から出力されるクロックCLK2のデューティは大きい。クロックCLK2のデューティを0.5としたい場合には、制御コードを値5にすればよい。
【0029】
サンプリングクロックAsyncCLKの周波数は、クロックCLK2の周波数より高くでもよいが、クロックCLK2の周波数より低いのが好ましい。シリアライザ装置2から出力されるシリアルデータSer_Dataのビットレートを高くするには、シリアライザ装置2に入力されるクロックCLK2の周波数を高くすることが必要であり、このクロックCLK2の周波数より更にサンプリングクロックAsyncCLKの周波数を高くすることは消費電力および実装の点で問題がある。それ故、一般に、サンプリングクロックAsyncCLKの周波数は、クロックCLK2の周波数より低くする。
【0030】
サンプリングクロックAsyncCLKによるクロックCLK2の1周期当たりのレベルのサンプリング数(エッジ密度)は、次のようにして計算することができる。クロックCLK2の周期をPtとする。サンプリングクロックAsyncCLKの周期をPaとする。PaをPtで除算(Pa÷Pt)したときの余りをXとする。エッジ密度は、XとYとの積(XY)がPtの整数倍となる最小のYとして求めることができる。XとPtとの最小公倍数をZ(1周して同じ位相に戻る最短期間)とすると、Y=Z÷Xなる関係がある。そのときの精度は、Pt/Y[psec] である。この精度が目標レベルとなるように、サンプリングクロックAsyncCLKの周期Paを設定し、エッジ密度を設定する。エッジ密度は大きいほど好ましい。エッジ密度は、好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上である。
【0031】
図7および図8は、エッジ密度とサンプリングクロックAsyncCLKの周期との間の関係を示すグラフである。両図とも、横軸はサンプリングクロックAsyncCLKの周期Paであり、縦軸はエッジ密度である。両図とも、クロックCLK2の周期Ptを100psとした。横軸におけるサンプリングクロックAsyncCLKの周期Paの設定値の間隔は、図7では0.5psであり、図8では0.005psである。両図の間では、横軸の目盛りが相違し、縦軸の目盛りも相違する。両図に示されるように、エッジ密度を大きくするには、クロックCLK2に対するサンプリングクロックAsyncCLKの非同期性を確保することが重要である。サンプリングクロックAsyncCLKの非同期性が確保されない場合、エッジ密度が極端に小さくなって、クロックCLK2のデューティ測定精度が悪くなり、デューティの補償精度が悪くなる。
【0032】
そこで、本実施形態では、Nを3以上の整数とし、nを1~Nの各整数として、第nの期間Tに亘って、デューティ測定部20のサンプリングクロック生成部21は、クロックCLK2に対して非同期である周波数fのサンプリングクロックを生成する。各期間Tに生成されるサンプリングクロックの周波数fは、他の何れの期間に生成されるサンプリングクロックの周波数とも異なる。各期間Tにおいて、制御部30は、デューティ測定部20により測定されるデューティが所定範囲となる制御コード(例えばデューティが0.5に最も近くなる制御コード)を求める。そして、制御部30は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードのうちから確からしい制御コードを選んで、以降は、その選んだ制御コードをデューティ調整部10へ与える。
【0033】
図9は、制御コードとクロックCLK2のデューティとの間の関係の一例を示すグラフである。この図では、N=4とした。クロックCLK2の周波数を7.874GHzとした。サンプリングクロックAsyncCLKの周期PaとクロックCLK2の周期Ptとの差ΔP(=Pa-Pt)を期間T~Tの間で約1psずつ異ならせた。すなわち、ΔPを、期間Tでは0psとし、期間Tでは1.1psとし、期間Tでは2.0psとし、期間Tでは2.8psとした。
【0034】
ΔP=0psとした期間Tでは、Pa=Ptであるから、サンプラ22によるサンプリングの結果は常にハイレベルとローレベルとを交互に繰り返すことになり、制御コードによらずデューティは常に略0.5である。したがって、期間Tの終了時にクロックCLK2のデューティが0.5となる制御コードを求めると、その制御コードの値は不定である。
【0035】
その他の期間T,T,Tでは、制御コードの値が大きいほどクロックCLK2のデューティが大きい関係があるので、期間T,T,Tそれぞれの終了時にクロックCLK2のデューティが0.5となる制御コードを求めると、その制御コードの値は4の辺りとなる。
【0036】
制御部30は、期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードから確からしい制御コードを選んで、以降は、その選んだ制御コードをデューティ調整部10へ与える。この例では、期間Tの終了時に得られた制御コードは不定であるが、期間T,T,Tそれぞれの終了時に得られた制御コードの値は4で一致している(または値4に近い値になる)ので、確からしい制御コードとして値4が選ばれる。
【0037】
制御部30は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードのうちから確からしい制御コードを選択するに際して、これらの制御コードを昇順または降順に並べたときの最大値および最小値を除く何れかの制御コードを、それ以降にデューティ調整部10へ与える制御コードとして決定してもよい。また、制御部30は、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードを昇順または降順に並べたときの中央値の制御コードを、それ以降にデューティ調整部10へ与える制御コードとして決定してもよい。何れの場合も、N個の期間T~Tそれぞれにおいて求めた制御コードのうち、不適切な制御コードである可能性があるものを排除して、適切な制御コードを選択することができる。したがって、本実施形態では、より正確にクロックのデューティを適正範囲内にすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…デューティ補償装置、2…シリアライザ装置、3…PLL回路、10…デューティ調整部、11~11…インバータ、12,13…PMOSトランジスタ、14,15…NMOSトランジスタ、20…デューティ測定部、21…サンプリングクロック生成部、22…サンプラ、23…カウンタ、30…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9