(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】三次元造形サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20230209BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20230209BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20230209BHJP
C08F 20/56 20060101ALI20230209BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230209BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230209BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20230209BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20230209BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230209BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230209BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/46
C08F20/10
C08F20/56
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B29C64/106
B29C64/40
B29C64/264
B33Y70/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2018134653
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】清貞 俊次
(72)【発明者】
【氏名】国広 芳朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 裕也
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146423(WO,A1)
【文献】特開2016-175213(JP,A)
【文献】特表2018-523589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
B29C
B33Y
B41M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマー(A)0.1~30.0質量%、水溶性単量体(B)15.0~94.9質量%、及び水溶性有機溶剤(C)5.0~50.0質量%を含有する三次元造形サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)を重合してなるポリマーであり、水溶性有機溶剤(C)は沸点が100℃以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項2】
水溶性ポリマー(A)0.1~30.0質量%、水溶性単量体(B)15.0~60.0質量%、水溶性有機溶剤(C)5.0~50.0質量%、非重合性化合物(G)
1.0~50.0質量%
を含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項3】
不飽和化合物(a)が(メタ)アクリレート基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマー、マレイミド基を有するモノマーから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項4】
不飽和化合物(a)が、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(イソ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、アクリロニトリル、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリフルオロ酢酸ビニル、ビニルオキシテトラヒドロピラン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルマレイミドから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項5】
水溶性単量体(B)が水溶性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上の単量体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項6】
水溶性単量体(B)が、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項7】
水溶性有機溶剤(C)はβ-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミドであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項8】
水溶性有機溶剤(C)が、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドから選ばれる1種以上の溶剤であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する光硬化性インク(F)。
【請求項10】
光硬化型インクジェット方式の三次元造形において、水溶性ポリマー(A)が0.1~30.0質量%、水溶性単量体(B)が15.0~94.9質量%、水溶性有機溶剤(C)を5.0~50.0質量%及び光重合開始剤(D)が0~5.0質量%を含有することを特徴とする請求項9に記載の光硬化性インク(F)。
【請求項11】
光硬化型インクジェット方式の三次元造形において、水溶性ポリマー(A)が1.0~25.0質量%、水溶性単量体としてアクリロイルモルフォリン(B1)が35.0~
80.0質量%、水溶性有機溶剤(C)が5.0~30.0質量%、及び光重合開始剤(D)が0.05~5.0質量%を含有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載する光硬化性インク(F)。
【請求項12】
不飽和化合物(a)を水溶性有機溶剤(C)中の溶液重合により水溶性ポリマー(A)を得てから、得られた水溶性ポリマー(A)の水溶性有機溶剤(C)溶液に水溶性単量体(B)を添加して混合する請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の製造方法。
【請求項13】
不飽和化合物(a)を水溶性有機溶剤(C)中の溶液重合により水溶性ポリ マー(A)を得てから、得られたポリマー(A)の有機溶剤(C)溶液に水溶性単量体(B)及び光重合開始剤(D)を添加して混合する請求項9~11のいずれか一項に記載光硬化性インク(F)の製造方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、又は請求項9~11のいずれか一項に記載の光硬化性インク(F)を活性エネルギー線照射により硬化して得られることを特徴とするサポート材。
【請求項15】
請求項14に記載のサポート材を用いて造形されることを特徴とする三次元造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形における形状支持用サポート材を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該組成物を含有する光硬化性インク、該組成物から形成されるサポート材、該サポート材を用いた三次元造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形技術とは三次元の形状データをもとに、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、粉末樹脂、粉末金属等を溶融押出やインクジェット、レーザー光や電子ビーム等を用いて融着、硬化させることによって、薄膜状に積み重ねて目的の三次元造形物を得る技術である。形状データから直接造形物が得られ、中空やメッシュ状等の複雑な形状を一体成型できるため、小ロットもしくはオーダーメイドのテストモデル作成を始め、医療、航空機産業、産業用ロボット等利用分野が広がっている。
【0003】
三次元造形物を得るには一般的に3Dプリンターと呼ばれる造形装置が使用されている。具体的には、アクリル等の光硬化樹脂を光硬化型インクジェット3Dプリンターにより積層していく方式(光硬化型インクジェット方式)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた熱溶解積層方式、他にも粉末造形方式や光造形方式が知られている。
【0004】
三次元造形では複雑な形状の立体造形物を形成できるが、中空構造を製造する際に、立体造形物が自重により変形することを防止するため、形状支持用の支持体が必要になる。特に光硬化性樹脂を段階的に硬化していく光硬化型インクジェット方式では、モデル材からなる立体造形物とサポート材からなる支持体を同時に形成した粗造形物を作成していく必要があるので、粗造形物からサポート材を除去する工程を設けなければならない。
【0005】
粗造形物のサポート材を除去する方法は様々な方法が提案されており、ヘラやブラシ等を用いて手作業で剥離したり、ウォータージェットで吹き飛ばしたり等の物理的な方法、熱可塑性樹脂や熱溶融するワックスを用いてサポート材のみを加熱溶融させて除去する方法、アルカリ性水溶液、水や有機溶剤を用いて、サポート材を溶解、或いは崩壊させて除去する方法などが用いられている。
【0006】
特に三次元造形後、モデル材とサポート材からなる一体の粗造形物を水に浸けておくだけで、サポート材が水に溶解する、分散する、又は吸水して崩壊することによって粗造形物から容易に除去する手法は、特別な洗浄液を用意しなくても、造形物の細部に詰まったサポート材を効率的に除去することができ、造形物の破損や変形も起こり難いため、様々なサポート材用樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体とポリオキシプロピレングリコール(PPG)及び/又は水を主成分とした光硬化性樹脂組成物、特許文献2は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体、PPG、ポリオキシエチレングリコール(PEG)及び水溶性有機溶剤を主成分とした光硬化性樹脂組成物、特許文献3は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基又はポリオキシブチレン基を有する単官能エチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル系単量体を主成分とした光硬化性樹脂組成物、特許文献4は、ポリオキシブチレングリコール(PTMG)と水溶性単官能エチレン性不飽和単量体を主成分とした光硬化性樹脂組成物をそれぞれ提案した。しかし、これらの組成物は必須且つ主要成分としてPPG、PTMG等を含有しており、このようなポリオキシアルキルグリコールは低分子量の場合、水に可溶だが、分子量の増加に伴って水に対する溶解性が急激に低下する特徴を有する。そのため、十分なサポート力を提供できる中分子量や高分子量のポリオキシアルキルグリコールを使用したこれらのサポート材組成物は、光造形後に粗造形物を水に浸けてサポート材の除去を行う際に、サポート材全体はモデル材から剥離できるが、ポリオキシアルキルグリコールが油状の残渣として水中に拡散し、モデル材の表面や細部の水と接触するあらゆる部分に付着してしまう問題があった。このような油状残渣を再度アルコール等で洗浄するか、ふき取る等の仕上げ作業により取り除かなければならず、大変が手間や費用がかかり、又洗浄後の水溶液は白から黄色く濁ったものであって、排水処理は困難という問題もあった。
【0007】
サポート材由来の造形物汚染問題を解決するため、特許文献5はイオン性単量体を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提案した。該文献によると、イオン性単量体は活性エネルギー線照射により硬化し、サポート力を提供することかでき、又イオン性単量体は極性が高く、サポート材用組成物中他の構成成分と相溶するため、得られたサポート材が水に対して十分な溶解や分散速度を有すると同時に油状残渣を生じず、洗浄後の水溶液が透明であって容易に廃棄できる。ところが、イオン性単量体は極性が高いため、湿度の高い環境における三次元造形作業や長時間、大きいサイズの品物を造形する場合、吸湿によるサポート材の変形を生じる恐れがある。
【0008】
一方で光硬化型インクジェット方式の3Dプリンターによる造形はより大規模、高速度、高精度と高性能化が求められ、サポート材としては十分な強度と耐湿性を有し、様々な環境における光造形を対応でき、且つ造形物の表面汚染が起こらなく、仕上げ工程が不要で、洗浄後の水等を容易に処理できるものの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-111226号公報
【文献】特開2017-031249号公報
【文献】特開2018-058974号公報
【文献】特開2018-087291号公報
【文献】WO2016-121587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、モデル材とサポート材からなる一体の粗造形物を水等の洗浄液に浸漬するだけで、サポート材を効率よく除去でき、かつ仕上げ工程が必要とせず、高精度に大型の三次元造形物を取得できるサポート材用、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及び該樹脂組成物から形成するサポート材を提供することを課題とする。また、本発明は、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する光硬化性インク、該光硬化性インクを硬化して得られるサポート材を提供することを課題とする。更に、これらのサポート材用いて造形される三次元造形物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、サポート材用樹脂組成物として水溶性ポリマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることにより前記の課題を解決し、目標を達成しえることを見出し、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は
(1)水溶性ポリマー(A)を含む三次元造形サポート材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)を重合してなるポリマーであることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(2)水溶性ポリマー(A)を0.1~30.0質量%含有することを特徴とする前記(1)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(3)不飽和化合物(a)が(メタ)アクリレート基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマー、マレイミド基を有するモノマーから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(4)不飽和化合物(a)が、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(イソ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、アクリロニトリル、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリフルオロ酢酸ビニル、ビニルオキシテトラヒドロピラン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルマレイミドから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(5)水溶性単量体(B)を15.0~99.9質量%含有することを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(6)水溶性単量体(B)が水溶性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上の単量体であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(7)水溶性単量体(B)が、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマーであることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(8)水溶性有機溶剤(C)5.0~50.0質量%を更に含有する前記(1)~(7)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(9)水溶性アミド系有剤(C)はβ-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミドであることを特徴とする前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(10)水溶性有機溶剤(C)が、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドから選ばれる1種以上の溶剤であることを特徴とする前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)、
(11)前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する光硬化性インク(F)、
(12)光硬化型インクジェット方式の三次元造形において、水溶性ポリマー(A)が0.1~30.0質量%、水溶性単量体(B)が15.0~99.9質量%、水溶性有機溶剤(C)を5.0~50.0質量%及び光重合開始剤(D)が0~5.0質量%を含有することを特徴とする前記(11)に記載の光硬化性インク(F)、
(13)光硬化型インクジェット方式の三次元造形において、水溶性ポリマー(A)が1.0~25.0質量%、水溶性単量体としてアクリロイルモルフォリン(B1)が35.0~94.0質量%、水溶性有機溶剤(C)が5.0~40.0質量%、及び光重合開始剤(D)が0.05~5.0質量%を含有することを特徴とする前記(11)又は(12)に記載する光硬化性インク(F)、
(14)前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)及び/又は前記(11)~(13)のいずれか一項に記載の光硬化性インク(F)を活性エネルギー線照射により硬化して得られることを特徴とするサポート材、
(15)前記(14)に記載のサポート材を用いて造形されることを特徴とする三次元造形物
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水溶性ポリマーを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が三次元造形と同時に或いはその直後に活性エネルギー線照射により硬化され、サポート材を形成し、サポート材及びそれに支持されたモデル材と一体になった粗造形物を得る。得られる粗造形物を水等の洗浄液に浸漬することで、サポート材が洗浄液に溶解や分散しモデル材から容易に剥離、除去することが出来る。更に、水溶性ポリマーを含むことで、得られたサポート材の硬度が高く、モデル材に対するサポート性が良好である。また得られたサポート材の耐湿性が高いため、長時間の造形作業においても高精度の三次元造形物が形成できる。さらに、サポートの洗浄性が良好であり、洗浄後造形物の表面が汚染せず、仕上げ工程も省略することができる。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)を重合してなるポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーである。なお、本発明における水溶性とは、水に対する溶解度(25℃)が1(g/100gの水)以上であることを意味するものとする。
【0015】
本発明における水溶性ポリマー(A)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)全体に対して0.1~30.0質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)を硬化して得られるサポート材の耐湿性や硬度に優れ、精度良く造形が行えるため好ましい。水溶性ポリマー(A)の含有量は30.0質量%以下であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の粘度が低く、インクジェット適性に優れ、また硬化して得られるサポート材が洗浄水に対して十分な溶解速度、分散速度を有するため好ましい。更に1.0~25.0質量%であることがより好ましく、5.0~20.0質量%であることが特に好ましい。
【0016】
本発明における水溶性ポリマー(A)の数平均分子量は、1,000~50,000であることが好ましい。数平均分子量が1,000以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)を硬化して得られるサポート材の耐湿性や硬度に優れ、精度良く造形が行えるため好ましい。数平均分子量が50,000以下であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の粘度が低く、インクジェット適性に優れ、また硬化して得られるサポート材が洗浄水に対して十分な溶解速度、分散速度を有するため好ましく、更に数平均分子量が2,000~20,000であることがより好ましい。
【0017】
不飽和化合物(a)とは(メタ)アクリレート基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマー、マレイミド基を有するモノマーから選ばれる1種以上のモノマーであり、これらの不飽和化合物(a)は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0018】
(メタ)アクリレート基を有するモノマーとしては(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、N,N、N-トリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレート塩、水溶性のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、水溶性のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、水溶性のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、水溶性のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラフリル(メタ)アクリレート等から選ばれる1種以上のモノマーであることが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーとしては(メタ)アクリルアミド及び/又は水溶性のN-置換(メタ)アクリルアミドである。N-置換(メタ)アクリルアミドとしては(メタ)アクリロイルモルホリン、水溶性のN-アルキル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN,N-ビスヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN-アルキル-N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、水溶性のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、水溶性のN,N,N-トリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミド塩から選ばれる1種以上のモノマーであることが好ましい。
【0020】
ビニル基を有するモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、アクリロニトリル、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリフルオロ酢酸ビニル、ビニルオキシテトラヒドロピラン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸塩、ビニルホスホン酸塩から選ばれる1種以上のモノマーであることが好ましい。
【0021】
アリル基を有するモノマーとしては、N-アリルピロリドン、N-アリルカプロラクタム、N-アリルアセトアミド、アクリロニトリル、アリルオキサゾリン、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、酢酸アリル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、エチルアリルエーテル、トリフルオロ酢酸アリル、アリルオキシテトラヒドロピラン、ヒドロキシエチルアリルエーテル、アリルスルホン酸塩、アリルホスホン酸塩から選ばれる1種以上のモノマーであることが好ましい。
【0022】
マレイミド基を有するモノマーとしては、マレイミド基および炭素数1~6の直鎖、分岐のアルキル基をα位及び/又はβ位に導入したα置換マレイミド基、α,β置換マレイミド基を有するモノマーが挙げられ、N-置換基として炭素数1~12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルカルボン酸基、アルコキシシラン基を導入したα-アルキル-N-置換マレイミド、α,β-ジアルキル-N-置換マレイミド、α-フェニル-N-置換マレイミドおよびN-置換テトラヒドロフタルイミドから選ばれる1種以上のモノマーであることが好ましい。
【0023】
不飽和化合物(a)にカルボン酸塩、ホスホン酸塩、スルホン酸塩等を含む場合、対カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+等の無機カチオン、アンモニウム、イミダゾリウム、コリン、スルホニウム、オキサゾリウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム等の有機カチオンから選ばれる少なくとも1種のイオンが挙げられる。不飽和化合物(a)にアンモニウム塩等を含む場合、対アニオンとしては、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオン又はOH-、CH3COO-、NO3
-、ClO4
-、PF6
-、BF4
-、HSO4
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、CH3C6H6SO3
-、C4F9SO3
-、(CF3SO2)2N-、SCN-等の無機酸アニオン又は有機酸アニオンから選ばれる1種以上のイオンが挙げられる。
【0024】
不飽和化合物(a)はアミド基を有する水溶性のモノマーであることが好ましく、アミド基を有するモノマーの場合、重合して得られた水溶性ポリマー(A)の水溶性、及び水溶性ポリマー(A)の水溶性有機溶剤(C)への溶解性が良好となり、均一な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)が調製しやすいため好ましく、アクリルロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ビニルピロリドンであることがより好ましく、アクリルロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミドであることが特に好ましい。
【0025】
水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)を重合したポリマーであるが、この際の重合方法としては、特に限定することがなく、不飽和基の重合方法として公知の方法により得ることができる。例えば不飽和化合物(a)をバルク重合、溶液重合、沈殿重合等を活性エネルギー線または熱によるラジカル重合やアニオン重合、カチオン重合等によって行うことができる。
【0026】
不飽和化合物(a)を重合する際に使用する開始剤は公知の光開始剤、熱重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としてはアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、αアミノケトン系、キサントン系、アントラキノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、高分子光開始剤系等を用いることができる。熱重合開始剤としてはアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等の通常のものを用いることができる。カチオン重合の開始剤にはプロトン酸やルイス酸等の通常のものを用いることができる。アニオン重合にはアルカリ金属や有機金属化合物等の通常のものを用いることができる。
【0027】
水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)の重合後に必要に応じて精製したポリマーとして使用することもできる。ポリマーの精製方法としては再沈殿等の公知の方法により行うことができる。
【0028】
水溶性ポリマー(A)は不飽和化合物(a)を水溶性有機溶剤(C)中の溶液重合により得ることもできる。その場合、得られる水溶性ポリマー(A)の水溶性有機溶剤(C)溶液に所定量の水溶性単量体(B)を添加して、更に必要に応じて光重合開始剤を添加、混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)として直接使用することが可能である。
【0029】
本発明に用いられる水溶性単量体(B)は水溶性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種以上の単量体であることが好ましく、水溶性単量体(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)全体に対して15.0~99.9質量%であることが好ましい。Bの含有量が15.0質量%以上である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)を硬化して得られるサポート材の硬度や耐湿性に優れ、精度良く三次元造形が行えるため好ましい。Bの含有量が99.9質量%以下である場合には、硬化して得られるサポート材が洗浄水に対して十分な溶解速度や分散速度を有するため好ましい。また、Bの含有量が35.0~94.9質量%であることがより好ましく、50.0~70.0質量%であること特に好ましい。なお、本発明における水溶性とは、水に対する溶解度(25℃)が1(g/100gの水)以上であることを意味するものとする。
【0030】
本発明に用いられる水溶性(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル基の炭素数1~6である(メタ)アクリルエステル系モノマーが挙げられ、水溶性のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が2~100の範囲であるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルとした(メタ)アクリルエステル系モノマーが挙げられ、水溶性のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、前記水溶性のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの水酸基を炭素数1~4であるアルコキシ其に置換した(メタ)アクリルエステル系モノマー等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる水溶性のN-置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、炭素数が1~3のアルキル基を導入したN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基を導入したN-ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ヒロドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル-N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基および炭素数1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基を導入したN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基、炭素数が1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドや、N-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる水溶性単量体(B)としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドが水への溶解度が大きく、また活性エネルギー線照射による硬化性が高いため好ましい。また皮膚刺激性が低く安全性が高くて取り扱い易いN-アクロイルモルホリン(皮膚一次刺激性インデックスPII=0.5)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(PII=0.0)が特に好ましい。
【0033】
本発明で用いる水溶性有機溶剤(C)は、水に対する溶解度(25℃)が1(g/100gの水)以上を有し、且つ水溶性ポリマー(A)及び水溶性単量体(B)とは反応性を有しない有機溶剤である。水溶性有機溶剤(C)としては、例えば、窒素含有化合物、硫黄含有化合物、酸素含有化合物が挙げられる。窒素含有化合物としては、水溶性の直鎖又は環状アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アリルアミン、アルキレンジアミン、アルカノールアミン等のアミン類、アセトアミド、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N,N-ジアルキルアセトアミド、N,N-ジアルキルプロピオンアミド、N-アルキルピロリドン、N-アルキルカプロラクタム、β-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類、モルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリン、アニリン、イミダゾール、カプロラクタム、テトラメチル尿素、ピコリン、ヒドラジン、ピペコリン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン等が挙げられる。硫黄含有化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。酸素含有化合物としては、水溶性の直鎖又は環状アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、クロロプロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジオール、オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルアセタート、トリエチレングリコールモノメチルエーチル、トリエチレングリコールモノエチルエーチル、トリエチレングリコールジメチルエーチル、プロピレングリコールモノメチルエーチル、プロピレングリコールモノエチルエーチル、ジプロピレングリコールモノメチルエーチル、ジプロピレングリコールモノエチルエーチル、グリセリングリシジルエーテル、グリセリンモノアセタート、グリセリンジアセタート、グリセリントリアセタート等の多価アルコールの誘導体、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセタール類、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられる。又これらの水溶性有機溶剤のうち、インクジェットインクとして使用する際の吐出適正および、三次元造形中に蒸発に起因するサポート性低下を防止する観点から、沸点が100℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上が特に好ましい。これらの水溶性有機溶剤(C)は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明で用いる水溶性有機溶剤(C)としては、アミド基を有する水溶性有機溶剤が水溶性ポリマー(A)及び水溶性単量体(B)両方を溶解できるため好ましい。具体的には炭素数1~4のアルキル基を導入したジアルキルホルムアミド、ジアルキルアセトアミド、ジアルキルプロピオンアミド、N-アルキルピロリドン、N-アルキルカプロラクタム等のアミド溶剤、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基を導入したβ-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミド等が挙げられ、β-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミドがより好ましい。
【0035】
β-アルコキシ-N,N-ジアルキルプロピオンアミドとしては、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-(イソ)ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドがより好ましく、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドが工業品を容易に入手でき、特に好ましい。これらの水溶性有機溶剤(C)は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明で用いる水溶性有機溶剤(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)全体に対して5.0~50.0質量%であることが好ましい。5.0質量%以上であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の粘度を低くし、インクジェットインクとして吐出適性に優れ、また硬化して得られるサポート材が洗浄水に対して十分な溶解速度、分散速度を有するため好ましい。50.0質量%以下であれば、硬化して得られるサポート材の耐湿性や硬度に優れ、精度良く三次元造形が行えるため好ましい。また、5.0~40.0質量%であることがより好ましく、10.0~30.0質量%であることが特に好ましい。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)は重合により硬化し固形となる組成物であるが、この際の重合方法としては、特に限定することがなく、不飽和基の重合方法として公知の方法により得ることができる。例えば活性エネルギー線または熱によるラジカル重合やアニオン重合、カチオン重合等が挙げられ、また、活性エネルギー線による重合は、光開始剤の添加や照射線量の調整により容易に重合を制御できるため好ましい。
【0038】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の硬化に用いる活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、可視光、電子線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線などを指す。例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、電子線加速装置、放射性元素などの線源が挙げられる。活性エネルギー線源として電子線を用いた場合は、通常、光開始剤を含有する必要はないが、その他の活性エネルギー線源を用いた場合は、光重合開始剤(D)を添加することが好ましい。照射する活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の保存安定性と硬化速度及び有害性の低さから紫外線が好ましい。
【0039】
本発明で用いる光重合開始剤(D)としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、αアミノケトン系、キサントン系、アントラキノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、高分子光開始剤系等の通常のものから適宜選択すればよい。例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、α-ベンゾイルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、αアミノケトン類としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニル)メチル-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、アシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、高分子光開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン-1-オンのポリマー等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明で用いる光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)全体に対して5.0質量%以下であることが好ましく、0.05~5.0質量%がより好ましく、0.5~3質量%が特に好ましい。0.05質量%以上である場合には、硬化性樹脂組成物(E)を活性エネルギー線照射により十分に重合反応を起こし、硬化して得られるサポート材中の残存モノマーが少なく、硬化物の硬度も耐湿性も十分に保たれ、サポート性が良好であると共に、非重合性の水溶性有機溶剤(C)のブリードアウトが抑制できる。又、5質量%以下である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のポットライフが長く、保管中のゲル化等のトラブルの発生を抑制できる。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の硬化に必要な活性エネルギー線照射量(積算光量)は、特に制限するものではない。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)に用いられる水溶性ポリマー(A)、水溶性単量体(B)及び水溶性有機溶剤(C)の種類と添加量によって変動し、積算光量が50mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であることが好ましい。積算光量が50mJ/cm2以上であると、十分な硬化が進行し、硬化物の硬度と耐湿性が良好であり、高精度な三次元造形物を得ることができる。また、積算光量が1000mJ/cm2以下であると、活性エネルギー線の照射時間が短く、三次元造形の生産性向上につながるため、好ましい。
【0042】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)は、上記水溶性ポリマー(A)、水溶性単量体(B)、水溶性有機溶剤(C)及び光重合開始剤(D)以外に非重合性化合物(G)を更に使用することができる。非重合性化合物(G)としては水溶性ポリマー(A)、水溶性単量体(B)、水溶性有機溶剤(C)及び光重合開始剤(D)と相溶するが、それらと反応せず、かつ非重合性のものであれば特に限定されることはない。例えば、アルキレングリコール類(水溶有機溶剤(C)を除く)アルキレンオキシドの平均付加モル数が2~100の範囲であるポリアルキレングリコール類(水溶有機溶剤(C)を除く)、アルキレン基及び/又はアルキル基等からなるアルキレングリコールモノアルキルエーテル類(水溶有機溶剤(C)を除く)、アルキレングリコールジアルキルエーテル類(水溶有機溶剤(C)を除く)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(水溶有機溶剤(C)を除く)、アルキレンオキシドの平均付加モル数が2~100の範囲であり(水溶有機溶剤(C)を除く)、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類(水溶有機溶剤(C)を除く)、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類(水溶有機溶剤(C)を除く)、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(水溶有機溶剤(C)を除く)等、酢酸アルキル、プロピオン酸アルキル、ブタン酸アルキル等からなるカルボン酸エステル類(水溶有機溶剤(C)を除く)や、ケトン類(水溶有機溶剤(C)を除く)、水、イオン性液体等が挙げられ、これらの非重合性化合物は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明で用いる非重合性化合物(G)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)全体に対して50.0質量%以下であることが好ましい。50.0質量%以下である場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)を硬化して得られるサポート材の耐湿性や硬度に悪影響を与えないため好ましく、30.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)は、必要に応じて各種添加剤を使用できる。添加剤としては、熱重合禁止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤、湿潤分散材、帯電防止剤、着色剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。これら各種樹脂や添加剤の添加量は、本発明による活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0045】
熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、フェノチアジン、ピロガロール、β-ナフトール等が挙げられる。
【0046】
老化防止剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、及びヒンダードアミン系の化合物が挙げられる。
【0047】
界面活性剤としては、例えばノニルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリン酸ポリエチレンオキサイド付加物、ステアリン酸ポリエチレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤、ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤、アセチレン系グリコール化合物型非イオン界面活性剤、アセチレン系ポリアルキレングリコール化合物型非イオン界面活性剤、パーフルオロアルキルポリエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素含有界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル、両性の高分子界面活性剤が挙げられる。
【0048】
帯電防止剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性帯電防止剤、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等のアニオン性帯電防止剤、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のノニオン性帯電防止剤、アルキルベタイン、アルキルイミダソリウムベタイン等の両性の帯電防止剤、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の重合性帯電防止剤が挙げられる。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の好ましい使用方法としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を所定の形状パターンに形成すると同時に、または形成した直後、活性エネルギー線を照射して硬化させることであり、インクジェットにより吐出し、活性エネルギー線照射により硬化させる光硬化型インクジェット方式の3Dプリンターに用いる光硬化性インク(F)として用いることがより好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の粘度はサポート材の構造を形成する際の操作性の面から25℃において1mPa・sから2,000mPa・sであることが好ましい。い。特に光硬化性インク(F)としてインクジェットノズルから吐出する場合、安定吐出を行う観点から、粘度は25℃において1mPa・sから200mPa・sであることが好ましく、吐出温度は20~100℃の範囲であることが好ましい。吐出温度を高温に設定すると光硬化性インク(F)の粘度が低下し、高粘度の樹脂を吐出できるが、熱による変性や重合が起こりやすくなる。光硬化性インク(F)の熱的な安定性の観点から80℃より低温での吐出が好ましいため、光硬化性インク(F)の粘度が100mPa・s以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E)の使用方法としては、光硬化性インク(F)として光硬化型インクジェット方式の3Dプリンターを用いて、微小液滴をインクジェットノズルから所定の形状パターンを描画するよう吐出してから活性エネルギー線を照射して硬化薄膜を形成する方式が好ましい。具体的には、まずモデル材によって造形すべき立体造形物の三次元CADデータを基に、三次元造形用のデータとして、造形する立体造形物に対応するモデル材の硬化薄膜を積層する方向にスライスした断面形状のデータおよび、造形時にモデル材を支持するためのサポート材の硬化薄膜を積層する方向にスライスしたデータを作成する。サポート材の設置データは、例えば上方位置のモデル材がいわゆるオーバーハングしている部分がある場合、下方位置のモデル材の周囲にサポート材を配置することにより、このオーバーハング部分を下方より支持するようにサポート材が設けられる様に作成する。モデル材およびサポート材の断面形状データに応じた所望のパターンでインクジェットノズルからモデル材用光硬化性インクまたはサポート材用の光硬化性インク(F)を吐出して該樹脂の薄膜層を形成した後、光源から活性エネルギー線を照射して該樹脂の薄膜層を硬化させる。次いで、該硬化させた樹脂の薄膜層の上に、次の断面形状に応じてインクジェットノズルからモデル材用光硬化性インク及び/またはサポート材用の光硬化性インク(F)を供給する。以上を繰り返すことにより、各断面形状に相当するモデル材およびサポート材の硬化薄膜を積層して、目的とするモデル材からなる立体造形物およびサポート材からなる立体造形物を支持する支持体を形成する。支持体は通常、平面ステージと立体造形物との間に形成させる。サポート材用の光硬化性インク(F)とモデル材用光硬化性インクは同一のインクジェットノズルから吐出してもよいし、別個のインクジェットノズルから吐出してもよい。
【0052】
本発明のサポート材は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により硬化して得ることができ、また三次元造形における形状支持用サポート材として使用することにより、立体造形物がサポート材により支持された状態の粗造形物を得ることができる。得られた粗造形物は洗浄液に浸漬し、サポート材を洗浄液に溶解または分散させて除去することによって立体造形物を簡便に取得することができる。
【0053】
本発明のサポート材の洗浄液には、通常水を用い、水としては水道水、純水、イオン交換水等を用いる。また本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて得られたサポート材を溶解または分散させ、立体造形物が溶解、膨潤しないことができれば、アルカリ水溶液や電解質溶液、有機溶剤を用いることも可能である。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が挙げられ、電解質溶液としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の電解質の水溶液が挙げられる。有機溶剤としてアルコール類、ケトン類、アルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類等が挙げられる。これらの水、アルカリ水溶液、電解質溶液、有機溶剤は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。立体造形物を溶解しないことと、またサポート材が洗浄液に溶解もしくは分散し易いこと、更に安全性の面から洗浄液としては水が特に好ましい。
【0054】
サポート材の洗浄時間としては、24時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましい。生産効率の点から洗浄時間が24時間以下であれば、一日毎に洗浄サイクルを繰り返す事ができて効率が良いため好ましく、10時間以下であれば昼間に製造した造形物を夜間に洗浄し、翌日には洗浄が完了できるためより効率よく生産可能なためより好ましい。また洗浄時間は短い方は生産効率が上がるため好ましく、5時間以下であればより好ましく、3時間以下であれば更に好ましい。
【0055】
サポート材の洗浄温度としては、0℃~100℃の任意の温度において可能であるが、高温での洗浄では立体造形物を形成する樹脂が熱による変形を起こす可能性があり、一方でサポート材の溶解、分散は温度が高いほうが速やかに進むため10℃以上40℃以下での洗浄がより好ましい。
【0056】
サポート材の形状は立体造形物の形状を支持する様に設けられれば任意であるが、本発明のサポート材は洗浄水に浸漬することで、溶解または分散により除去可能な支持体として得ることができ、粗造形物の任意の外表面に接して多数の支持体を設けることも可能である。このように多数の支持体を設けることにより、自重による変形を防止するだけでなく、造形終了部分に対して光を遮蔽する効果があり、過剰な活性エネルギー線照射による粗造形物の劣化を防止することもできる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0058】
水溶性ポリマー(A)として、下記(A-1)~(A-6)を使用した。水溶性ポリマー(A-1)の数平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製のLC-10Aを用いて、カラムはShodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)、溶離液としてテトラヒドロフランを使用した。)により測定し、標準ポリスチレン分子量換算により算出した。
【0059】
A:水溶性ポリマー
A-1:N,N-ジメチルアクリルアミド(a-1)(Kohshylmer(登録商標) DMAA(登録商標)、KJケミカルズ社製)のホモポリマー、数平均分子量は2,100である。
A-2:(a-1)のホモポリマー、数平均分子量は45,000である。
A-3:(a-1)のホモポリマー、数平均分子量は16,000である。
A-4:(a-1)とマレイミドアクリレート(a-2)(東亜合成株式会社製のアロニックスM-145)のコポリマー(5:1モル比)、数平均分子量は8,000である。
A-5:(a-1)のホモポリマー、数平均分子量は6,800である。
A-6:N-アクリロイルモルホリン(a-3)(Kohshylmer(登録商標) ACMO(登録商標)、KJケミカルズ社製)のホモポリマー、数平均分子量14,000である。
A-7:N-ビニルピロリドン(a-4)のホモポリマー、数平均分子量15,000である。
【0060】
実施例用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E-1)~(E-14)と比較例用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I-1)~(I-5)
実施例1
水溶性ポリマー(A-1)10.0質量部、N-アクロイルモルホリン(B-1)89.5質量部、Omnirad 184(D-1)0.5質量部をそれぞれ容器に仕込み、25℃で1時間攪拌することにより、均一透明な実施例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E-1)を得た。
【0061】
実施例2~14
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行うことにより、実施例2~14に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E-2)~(E-14)を得た。
【0062】
比較例1~5
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例1~5に相当する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I-1)~(I-5)を得た。ここにおいて、比較例2は特許文献1(特開2012-111226号公報)に記載の実施例2-1を、比較例3は特許文献2(特開2017-031249号公報)に記載の実施例S4を、比較例4は特許文献4(特開2018-087291号公報)に記載の実施例2を、比較例5は特許文献3(特開2018-058974号公報)に記載の実施例5を参考にした。
【0063】
【0064】
表1中の略号の説明
A:水溶性ポリマー
A-1~A-7は前記のとおりである。
B:水溶性単量体
B-1:N-アクリロイルモルホリン(Kohshylmer(登録商標) ACMO(登録商標)、KJケミカルズ社製)
B-2:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(Kohshylmer(登録商標) HEAA(登録商標)、KJケミカルズ社製)
B-3:メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(PEG平均分子量400)(NKエステル AM90G、新中村化学株式会社製)
C:水溶性有機溶剤
C-1:β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(KJCMPA(登録商標)-100、KJケミカルズ社製)
C-2:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
C-3:数平均分子量400のポリプロピレングリコール(ユニオールD-400、日油株式会社製)
C-4:β-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(KJCBPA(登録商標)-100、KJケミカルズ社製)
C-5:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
C-6:数平均分子量200のポリエチレングリコール
D:光重合開始剤
D-1:Omnirad 184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resins B.V.製)
D-2:Omnirad TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、IGM Resins B.V.製)
D-3:Omnirad 819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、IGM Resins B.V.製)
D-4:Omnirad 2959(2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、IGM Resins B.V.製)
G:非重合性化合物
G-1:イオン交換水
G-2:数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(ユニオールD-1000、日油株式会社製)
G-3:数平均分子量1000のポリブチレンポリエチレングリコール(ポリセリンDC-1100、日油株式会社製)
H:各種添加剤およびその他成分
H-1:サーフィノール440(エアープロダクツジャパン社製)
H-2:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
H-3:BYK307(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミージャパン株式会社製]
H-4:(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)ラジカル
H-5:エマノーン1112(ラウリン酸ポリエチレンオキサイド、花王株式会社製)
H-6:TEGORad2100(ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコンアクリレート、エボニック デグサ製)
H-7:ユニオックスPKA-5009(メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、日油株式会社製)
【0065】
実施例1~14および比較例1~5で得られたサポート材形成用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(E-1)~(E-14)、(I-1)~(I-5)を用いた評価を以下の方法で実施し、結果を表2に示す。
【0066】
粘度測定
コーンプレート型粘度計(装置名:RE550型粘度計 東機産業株式会社製)を使用し、JIS K5600-2-3に準じて、25℃にて、各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0067】
サポート性
水平に設置した厚さ1mmのポリメチルメタクリレート板(PMMA板)に厚さ10mm、内径20mmの円筒形のスペーサーを設置し、スペーサーの内側に各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を各0.3g充填した後、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04-L41、紫外線照度300mW/cm2、積算光量1,000mJ/cm2)し、硬化したサポート材を得た。更に硬化したサポート材の上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を0.3g追加し、同様に紫外線照射による硬化を行いサポート材の薄膜の積層を行った。以後同様の硬化を繰り返し、10mmの厚さまで薄膜が積層されたサポート材を得た。その後、室温(25℃)において、得られたサポート材のショアA硬度を測定しサポート材の支持体としてのサポート性能を評価した。
◎:サポート性が良好(ショアA硬度≧80)
○:サポート性が十分認められる(80>ショアA硬度≧60)
△:サポート性が若干認められるが不十分(60>ショアA硬度≧40)
×:サポート性がない(40>ショアA硬度)
【0068】
耐湿性
水平に設置したガラス板上に厚さ75μmの重剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7001)を密着させ、厚さ1mm、内部が50mm×20mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側に各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填した後、更にその上に厚さ50μmの軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、ポリエステルフィルムE7002)を重ね、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04-L41、紫外線照度300mW/cm2、積算光量1,000mJ/cm2)し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、両側の剥離PETフィルムを取り除いて作成した硬化物を試験片として用い、25℃、50%RHに設定した恒温恒湿槽中に24時間静置し、静置前後の試験片表面を目視により評価を行った。
◎:静置後に硬化物が吸湿による変形が認められない
○:静置後に硬化物が吸湿によるブリードアウトがわずかに認められるが、変形はほぼ認められない
△:静置後に硬化物が吸湿によるブリードアウトが若干認められ、変形がわずかに見られる
×:静置後に硬化物が吸湿により溶解し、変形が認められる
【0069】
洗浄性
水平に設置した厚さ1mmのポリメチルメタクリレート板(PMMA板)に厚さ1mm、内部が50mm×40mmのスペーサーを設置し、スペーサーの内側にモデル材を形成する光硬化前の硬化性樹脂組成物としてミマキエンジニアリング社製「LH100white」と、各実施例と比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を各1gずつ相互に接触するように充填した後、紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製、インバーター式コンベア装置ECS-4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製M04-L41、紫外線照度300mW/cm2、積算光量1,000mJ/cm2)し、モデル材およびサポート材を得た。その後、室温(25℃)において、得られたPMMA板上のモデル材およびサポート材を洗浄液としてイオン交換水に浸漬し、サポート材が水に溶解もしくは分散し、モデル材およびPMMA板上からサポート材が除去された後、モデル材およびPMMA板の状態を確認し、洗浄性を下記の評価方法により評価した。
◎:サポート材がすべて除去(モデル材との接触部およびPMMA板表面にザラツキ、油状のべた付き等も無い状態)
○:サポート材はほぼ除去(モデル材との接触部およびPMMA板表面にザラツキ、油状のべた付き等がわずかにあるが、水流で洗浄可能な状態)
△:サポート材はほぼ除去されるが残渣、油状のべた付き等が見られる状態(モデル材との接触部およびPMMA表面にザラツキ、油状のべた付き等のサポート材に由来する残留物があり、水流では洗浄不可な状態)
△×:サポート材が一部残留(モデル材との接触部およびPMMA表面にサポート材の一部が残留し、水流では洗浄不可な状態)
×:サポート材は除去されていない状態
【0070】
洗浄時間
上記サポート材の洗浄性において、サポート材が水に溶解もしくは分散し、除去されるまでの時間を確認し、下記の評価方法により評価した。
◎:サポート材が1時間未満の間に水に溶解もしくは分散し、除去
○:サポート材が1時間以上5時間未満の間に水に溶解もしくは分散し、除去
△:サポート材が5時間以上10時間未満の間に水に溶解もしくは分散し、除去
△×:サポート材が10時間以上24時間未満の間に水に溶解もしくは分散し、除去
×:サポート材の除去に24時間以上必要
【0071】
洗浄液の状態
上記サポート材の洗浄性において、サポート材が水に溶解もしくは分散した後の洗浄液の状態を確認し、下記の評価方法により評価した。
◎:洗浄液が均一透明であり、残渣がない状態
○:洗浄液が均一、微白濁であり、残渣がない状態
△:洗浄液が白濁し、油状残渣がわずかにみられる状態
×:洗浄液が白濁し、油状残渣がみられる状態
【0072】
【0073】
表の結果から明らかなように、実施例1~14の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、25℃において1,000mPa・s以下の粘度を有し、操作性に優れ、特に実施例1、3、4、6~14は100mPa・s以下の粘度であり、操作性に優れ、インクジェットインクとして吐出性が良好となる粘度を有していた。実施例の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して得られたサポート材は硬度や耐湿性に優れ、長時間の造形においても良好なサポート性を示す好適な樹脂であった。更に、実施例においていずれもイオン交換水に良好な溶解、分散性を示し、低温かつ短時間でサポート材を完全に除去することができ、更に水溶性有機溶剤を含むことで、洗浄液へのサポート材の溶解性、分散性を向上され、洗浄後のサポート材がPMMA板表面に再付着することを抑制していた。一方、水溶性ポリマーを含まない比較例では、比較例1~4では良好な洗浄時間を示したが、その他の物性について、全てを満足できるものはなかった。比較例1では、水溶性ポリマー(A)を有しないため、硬化して得られたサポート材の耐湿性が低く、長時間の造形は不可能であった。特許文献1(特開2012-111226号公報)に記載の実施例2-1を参考にした比較例2、特許文献2(特開2017-031249号公報)に記載の実施例S4を参考にした比較例3では、硬化して得られたサポート材の硬度がショアA60未満と低く、また耐湿性も低く、長時間の造形や大型の造形では十分な造形精度が得られない結果であり、サポート材除去に用いた洗浄水が白濁し、黄色油状の残渣があり、PMMA板表面やモデル材界面に黄色油状の付着物としてみられていた。一方特許文献4(特開2018-087291号公報)に記載の実施例2を参考にした比較例4では、硬化物の硬度が高く、サポート性は良好であったが、比較例2、3と同様にサポート材除去に用いた洗浄水が白濁し、分散したサポート材の一部がPMMA板表面やモデル材界面に黄色油状の付着物としてみられ、水洗では完全に除去できず、洗浄後に立体造形物に油滴等のサポート材由来の表面汚染が見られ、アルコール等の有機溶剤による拭き取りなどの仕上げ工程が必要な状態であった。また特許文献3(特開2018-058974号公報)に記載の実施例5を参考にした比較例5では25℃のイオン交換水での洗浄では24時間では十分なサポート材の洗浄ができないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明してきたように、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は三次元造形用のサポート材を形成するために好適に用いることができる。また本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は粘度が低く、操作性に優れ、光硬化型インクジェット方式の3Dプリンターによる三次元造形に使用する光硬化性インクとしても用いることが出来る。更に三次元造形物が本発明のサポート材により支持された状態の粗造形物を洗浄液に浸漬した場合、サポート材を効率よく除去でき、かつ仕上げ工程が必要とせず、高精度に大型の三次元造形物を取得できる。また水溶性ポリマーを含むことによりサポート材のサポート性に優れ、優れた造形精度を得られると共に、耐湿性を向上させる効果を有し、長時間の造形が可能となり、大型の三次元造形物の製造が可能となっている。本発明のサポート材は優れた除去性を発揮すると共に、大型の三次元造形物を精度よく造形できる利点があり、特に光硬化型インクジェット方式の3Dプリンターによる、大規模、高速度、高精細と高性能化した造形が可能となる利点がある。