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  • 特許-換気装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/10 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
E06B7/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019119344
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004508
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504254770
【氏名又は名称】株式会社佐原
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 欣也
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀明
(72)【発明者】
【氏名】本地 徹平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095960(JP,A)
【文献】実開昭51-011649(JP,U)
【文献】特開2009-162451(JP,A)
【文献】特開昭59-114390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内と屋外を仕切る仕切壁と、
上記仕切壁の屋内側に配置され屋内の空気を屋外に向かって吐出するファンと、
上記仕切壁の屋外側に上記ファンに対向して配置されたフードと、
を備えた換気装置において、
上記ファンから吐出される空気が通る送風路の少なくとも一部を画成する内カバーが、上記フードの内側に配置され、上記送風路は屋外に連なる排出口を有し、
上記送風路には、異常高温時に上記送風路を閉塞するように動作する遮炎手段が配置され、
上記内カバーと上記フードとの間には、異常高温を感知して上記ファンを停止させる第1ファン停止手段が配置され、
上記仕切壁の屋内側には、異常高温を感知して上記ファンを停止させる第2ファン停止手段が配置されていることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
上記第1ファン停止手段のファン停止動作温度が、上記遮炎手段の閉塞動作温度より低く、上記第2ファン停止手段のファン停止動作温度が、上記第1ファン停止手段のファン停止動作温度より低いことを特徴とする請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
上記第1、第2ファン停止手段がそれぞれ第1、第2サーモスタットからなることを特徴とする請求項1または2に記載の換気装置。
【請求項4】
上記第1サーモスタットは、ステーを介して内カバー外面に固定されるとともに上記フードの内面に接しており、上記第2サーモスタットは、上記仕切壁の屋内側の面に接して固定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の換気装置。
【請求項5】
上記遮炎手段が異常高温時に発泡膨張する膨張材からなり、上記膨張材が上記排出口の近傍における上記送風路の内面に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内の空気を屋外に排出する換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の窓開口に嵌め殺しのサッシ窓と一緒に設置された換気装置を開示されている。この換気装置は、屋内の空気を屋外へ排出するためのものであり、屋内側に配置されたファンと、屋外側に配置されたフードとを備えている。ファンから吐出された空気はフード内を通り、フードの下端に形成された排出口から屋外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-95960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記換気装置において、屋外で火災が生じた時に、その火炎がフードから屋内に侵入するのを防ぐ機能が求められている。
本発明者は、異常高温時にフード内の送風路を遮断するように動作する遮炎手段を設置することを検討したが、ファンが稼働している状況では送風路を流れる屋内空気により遮炎手段の温度が上昇せず、遮炎手段の動作が遅れてしまうことが判明した。
そこで、異常高温を感知してファンへの給電を停止するサーモスタットをフード内に設置することも検討したが、このサーモスタットも送風路を流れる屋内空気の影響を受けて、給電停止動作が遅れ、ひいては遮炎手段の動作遅れを招くことが判明した。
また、上記サーモスタットが異常高温を感知してファンを停止させた後、火炎が迫ってきて温度がさらに上昇した時に、サーモスタットが溶融して絶縁不良状態すなわち通電状態になり、ファンを再稼働させる可能性も残されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、屋内と屋外を仕切る仕切壁と、上記仕切壁の屋内側に配置され屋内の空気を屋外に向かって吐出するファンと、上記仕切壁の屋外側に上記ファンに対向して配置されたフードと、を備えた換気装置において、上記ファンから吐出される空気が通る送風路の少なくとも一部を画成する内カバーが、上記フードの内側に配置され、上記送風路は屋外に連なる排出口を有し、上記送風路には、異常高温時に上記送風路を閉塞するように動作する遮炎手段が配置され、上記内カバーと上記フードとの間には、異常高温を感知して上記ファンを停止させる第1ファン停止手段が配置され、上記仕切壁の屋内側には、異常高温を感知して上記ファンを停止させる第2ファン停止手段が配置されている。
【0006】
上記構成によれば、第1ファン停止手段は内カバーとフードとの間に配置されているので、ファン稼働状況でも送風路を流れる屋内空気の影響を受けず、屋外での火災発生時に異常高温を即座に感知してファンを停止することができる。その結果、遮炎手段も送風路を流れる屋内空気の影響を受けずに、早期に送風路を閉塞することができ、火炎の侵入を防止することができる。
火炎が迫ってきて温度がさらに上昇し第1ファン停止手段が溶融して再び通電状態になったとしても、第2ファン停止手段は仕切壁の屋外側に配置されていて第1ファン停止手段より火炎の影響が弱いので、溶融されずにファンの停止状態を維持することができ、ファンの再稼働を防止することができる。
【0007】
好ましくは、上記第1ファン停止手段のファン停止動作温度が、上記遮炎手段の閉塞動作温度より低く、上記第2ファン停止手段のファン停止動作温度が、上記第1ファン停止手段のファン停止動作温度より低い。
上記構成によれば、第1ファン停止手段のファン停止動作により、遮炎手段は確実かつ早期に送風路を閉塞することができる。第2ファン停止手段は第1ファン停止手段より動作温度が低いが、仕切壁の内側に配置されているので、第1ファン停止手段より遅れてファン停止動作をする。
【0008】
好ましくは、上記第1、第2ファン停止手段がそれぞれ第1、第2サーモスタットからなる。
好ましくは、上記第1サーモスタットは、ステーを介して内カバー外面に固定されるとともに上記フードの内面に接しており、上記第2サーモスタットは、上記仕切壁の屋内側の面に接して固定されている。
上記構成によれば、屋外の火災に対する応答性を高めることができる。
【0009】
好ましくは、上記遮炎手段が異常高温時に発泡膨張する膨張材からなり、上記膨張材が上記吐出口の近傍における上記送風路の内面に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ファン稼働中に屋外で火災が発生した時に、屋外の異常高温を確実に感知してファンを停止し、送風路を遮断することができるとともに、ファンの再稼働を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る換気装置をサッシ窓とともに示す縦断面図である。
図2】上記換気装置の拡大断面図である。
図3】上記換気装置の平断面図であり、一部構成材をハッチングで示す。
図4】上記換気装置の背面図であり、フードを省いて示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、建物の外壁1の窓開口1aには、換気機能付きサッシ窓装置2が嵌め込まれている。換気機能付きサッシ窓装置2は、嵌め殺しのサッシ窓5と、このサッシ窓5の上側に隣接する換気装置6とを備えている。
サッシ窓5は、サッシ枠5aとこのサッシ枠5aに嵌め込まれたガラス板5bとを有している。
【0013】
図2図4に示すように、換気装置6はユニット化されており、支持フレーム10と、屋内側に配置されたファンユニット20と、屋内側においてファンユニット20を覆うファンカバー30と、屋外側に配置されたフード40と、屋外側においてフード40の内側に配置された内カバー50とを、主たる構成要素として備えている。ファンユニット20とファンカバー30とフード40と内カバー50は、後述するように支持フレーム10に取り付けられている。
【0014】
図1に示すように、支持フレーム10の下縁部がサッシ窓5の枠部5aの上縁部に連結され、支持フレーム10の上縁部および左右縁部が窓開口1aの上縁部および左右縁部にそれぞれ固定されている。
【0015】
支持フレーム10は、垂直に起立して屋内と屋外を仕切る仕切壁11を有している。この仕切壁11に、上記ファンユニット20が固定されている。図3に示すように、ファンユニット20は、中央に駆動部21を有し、その左右に一対のファン22を有している。駆動部21はモータと給電回路を内蔵している。一対のファン22は、駆動部21とは反対側の側面に吸込部22aを有し、その屋外側に吐出部22bを有している。
【0016】
一対のファン22の吐出部22bは、上記仕切壁11に形成された開口(図示しない)に挿入されて仕切壁11から屋外側に突出している。これら吐出部22bには、開閉板23がそれぞれ取り付けられている。この開閉板23は、ファン22が稼働している時にはその風圧により開いており、ファン22が停止している時には、自重により閉じるようになっている。
【0017】
上記支持フレーム10の屋内側には、上記ファンカバー30も取り付けられている。このファンカバー30は,上板31と、正面板32と、側板33とを互いに連結することにより形成されており、ファンユニット20を囲っている。上板31の屋外側の縁部が支持フレーム10に連結され、正面板32の下縁部が連結部材34を介して支持フレーム10の下縁部に連結されている。
正面板32は段部32aを有しており、この段部32aには通気口32xが形成されるとともに、この通気口32xを覆う網またはフィルタ35が設置されている。
【0018】
上記フード40は、ファンユニット20に対向して屋外側に配置されている。フード40は、主板41と、この主板41の左右両側を塞ぐ側板42とを有している。主板41は、垂直に起立する起立壁41aと、起立壁41aの下縁から屋内側に向かって延びる上壁41bと、起立壁41aの下縁から、屋内側に向かって延びる底壁41cとを有している。上壁41bと底壁41cが支持フレーム10の仕切壁11に連結されている。
底壁41cには、開口41xが多数形成されている。フード40の内部空間45は、下端の開口41xを介して屋外に連なっている。
【0019】
フード40の内側には上記内カバー50が配置されている。内カバー50は、フレーム10の仕切壁11およびフード40の起立壁41aと平行をなして離間対向する起立壁51と、フード40の上壁41bと離間対向する上壁52と、左右の側板42と離間対向する左右の側壁53とを有している。側壁53には鍔部53aが形成されており、この鍔部53aを支持フレーム10の仕切壁11の屋外側の面に固定することにより、内カバー50が仕切壁11に取り付けられている。
【0020】
内カバー50は、一対のファン22の吐出部22bとフード40とを隔離しており、仕切壁11と協働して送風路55を画成している。この送風路55は、下端の排出口56およびフード40の開口41xを介して屋外に連なっている。
【0021】
図2に示すように、上記送風路55の排出口56近傍の内面(本実施形態では、内カバー50の内面と仕切壁11の屋外側の面)には、異常高温時に発泡膨張する膨張材60(遮炎手段)が設けられている。
【0022】
フード40と内カバー50との間の空間、例えばフード40の起立壁41aと内カバー50の起立壁51との間の間隙には、第1サーモスタット70(第1ファン停止手段)が配置されている。本実施形態では、第1サーモスタット70は、ステー71を介して内カバー50の起立壁51の屋外側の面に固定されるとともに、フード40の起立壁41aの屋内側の面に接している。
【0023】
第1サーモスタット70は、コード72を介してファンユニット20の駆動部21の給電回路に接続されており、異常高温時に開いてモータ21への給電を停止し、一対のファン22の稼働を停止させるようになっている。
【0024】
上記仕切壁11の屋内側の面には、第2サーモスタット80(第2ファン停止手段)が接して固定されている。この第2サーモスタット80もコードを介してファンユニット20の駆動部21の給電回路に、第1サーモスタット70と直列になるように接続されており、異常高温時に開いてモータ21への給電を停止し、一対のファン22の稼働を停止させるようになっている。
【0025】
第2サーモスタット80のファン停止動作温度は約50℃であり、第1サーモスタット70のファン停止動作温度の約70℃より低く、この第1サーモスタット70のファン停止動作温度は、上述した膨張材60の閉塞動作温度(発泡膨張開始温度)の約150℃より低い。
【0026】
上記のように構成された換気機能付きサッシ窓装置1の作用を説明する。ファンユニット20は常時稼働しており、これにより屋内の汚れた空気を屋外に強制排気し、建物の別の場所に設置した吸気口から新鮮な屋外の空気を屋内に取り込むようになっている。
【0027】
換気装置6内での空気の流れを簡単に説明する。図1図2に示すように、屋内の空気は、ファンカバー30の通気口32xからファンカバー30内に入り、一対のファン22の吸込部22aに吸い込まれて吐出部22bから吐出される。吐出された空気は、内カバー50と仕切壁11間の送風路55を流れて排出口56から屋外へ排出される。
【0028】
屋外で火災が発生し、フード40の近傍が異常高温になった時には、第1サーモスタット70が動作温度70℃を感知して給電回路を開くため、ファン22の稼働を停止させることができる。第1サーモスタット70は、フード40と内カバー50との間に配置されており、ファン22から吐出されて送風路55を流れる屋内空気の影響を受けないので、フード40近傍の異常高温に即座に応答してファン22を停止させることができる。特に本実施形態では、第1サーモスタット70が内カバー50から離れフード40に接しているので、異常高温に対する応答性を最大限に発揮することができる。
【0029】
火炎が迫ってきてフード40の近傍の温度がさらに上昇し、膨張材60の動作温度150℃に達した時には、膨張材60が膨張して、送風路55、本実施形態では排出口56を閉じることができる。その結果、火炎が排出口56から屋内に入り込むのを阻止することができる。上述したように、ファン22が既に停止しているので、膨張材60は送風路55内の空気流の影響を受けずに、確実にフード近傍40の異常高温に応答して送風路55を遮断することができる。
【0030】
上記のようにファン22を早期に停止することにより、次の効果も得られる。すなわち、ファン22が稼働を続けると、排出口56から排出された空気によってサッシ窓5の枠部5aの上縁部だけが冷やされ、枠部5bの他の部分が火炎によって高温になり、温度むらが生じる。そのため、枠部5aの変形を招き、枠部5aと窓開口1aの隙間から火炎が侵入する可能性がある。しかし、ファン22を早期に停止できるので、枠部5aの温度むらに起因する変形を防止でき、火炎の侵入を防止できる。
【0031】
第2サーモスタット80は、第1サーモスタット70より動作温度が低いが、仕切壁11の屋内側の面に設けられていて屋外の火炎の影響を直接受けないので、屋外温度の上昇する過程で、第1サーモスタット70より後に開き動作(ファン停止動作)をする。この第2サーモスタット80の開き動作が膨張材60の膨張開始前に実行されるように、換気装置6の構成に合わせて第2サーモスタット80の開き動作温度を設定するのが好ましい。
【0032】
フード40の近傍温度が上昇し、第1サーモスタット70が溶けて絶縁不良状態(通電状態)となる可能性がある。しかし、上述したように第2サーモスタット80が開き状態(ファン停止動作状態)にあるため、ファン22の再稼働を防止でき、このファン22の再稼働により生じる膨張材60の膨張の遅れや、上記枠部5aの変形等を確実に防ぐことができる。
【0033】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形例を採用することができる。
内カバーをボックス形状にして内カバー単独で送風路を画成してもよい。
フードが送風路の一部を画成してもよい。
遮炎手段は、遮炎板と、遮炎板を閉じ方向に付勢するスプリングと、遮炎板を開き状態に維持するヒューズとで構成してもよい。この構成では、異常高温時にヒューズが溶けて送風路を閉じる。
ファン停止手段は、異常高温時にファンの給電回路を開く素子であれば、サーモスタットでなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、屋内にファンを配置し、屋外にフードを配置した換気装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
6 換気装置
10 支持フレーム
11 仕切壁
20 ファンユニット
22 ファン
22a 吸込部
22b 吐出部
40 フード
41x 開口
50 内カバー
55 送風路
56 排出口
60 膨張材(遮炎手段)
70 第1サーモスタット(第1ファン停止手段)
80 第2サーモスタット(第2ファン停止手段)
図1
図2
図3
図4