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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】等電位ボンディング金具
(51)【国際特許分類】
   H02G 13/00 20060101AFI20230209BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20230209BHJP
   H01R 4/36 20060101ALI20230209BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20230209BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H02G13/00
E04H9/14 D
H01R4/36
F16B2/06 A
F16B2/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020107522
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003846
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】渡 章浩
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3225871(JP,U)
【文献】特開平9-73929(JP,A)
【文献】特開平8-246604(JP,A)
【文献】実開平5-64123(JP,U)
【文献】特開2018-173103(JP,A)
【文献】特開2020-85122(JP,A)
【文献】実開昭63-159280(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 13/00
E04H 9/14
H01R 4/36
F16B 2/06
F16B 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を挟み付ける一対の金属製挟持具と、この一対の金属製挟持具を互いに締結する鉄筋締結用ボルトと、一方の金属製挟持具に設けられたリード線取付け部から成る等電位ボンディング金具において、
一対の金属製挟持具には、その互いに対面する底面に、リード線取付け部におけるリード線の長さ方向と平行に鉄筋嵌合凹部が形成されると共に、当該鉄筋嵌合凹部の長さ方向に対して直交する一側方に張り出す張出し板部がそれぞれ連設され、この両張出し板部の内、一方の張出し板部には貫通ネジ孔が設けられると共に、他方の張出し板部には、前記貫通ネジ孔に螺入される鉄筋締結用ボルトの頭部側が貫通する貫通孔が設けられ、両張出し板部間にはスペーサーが着脱自在に介装され、このスペーサーは、一方の張出し板部の底面に当接する座板部、この座板部に設けられたボルト挿通孔、前記座板部から連設されて前記一方の張出し板部の側辺に隣接する回り止め用折曲板部、及び前記座板部から連設されて前記鉄筋締結用ボルトの両側に立ち上がる両側板部を備え、このスペーサーの前記両側板部には、このスペーサーの前記座板部が当接する一方の張出し板部とは反対側の他方の張出し板部の端縁を受け止める支持面が設けられ、前記スペーサーが外された状態では、前記他方の張出し板部の端縁が前記一方の張出し板部の底面で直接受け止められるように構成された、等電位ボンディング金具。
【請求項2】
スペーサーの前記座板部が当接する一方の張出し板部は、リード線取付け部を備えた一方の金属製挟持具に連設され、スペーサーの前記両側板部の支持面で端縁が受け止められる他方の張出し板部は、リード線取付け部を備えていない他方の金属製挟持具に連設され、この他方の金属製挟持具は、全体が板状体から成形されたもので、鉄筋嵌合凹部は板状体のV字形成形により設けられると共に、鉄筋締結用ボルトが貫通する貫通孔が設けられた張出し板部は、当該ボルトの頭部を受ける外側面が、この張出し板部の張出し方向に沿って円弧形に突曲するように成形され、更に、この張出し板部に設けられた前記貫通孔は、この張出し板部の張出し方向に沿って長くなった長孔状に形成されている、請求項1に記載の等電位ボンディング金具。
【請求項3】
前記リード線取付け部は、一対の金属製挟持具の前記鉄筋嵌合凹部間で挟持する鉄筋の長さ方向と平行に貫通するリード線挿通用貫通孔と、このリード線挿通用貫通孔内に挿入された金属製のリード線押さえ具と、リード線挿通用貫通孔の周壁部を貫通する貫通ネジ孔を螺合貫通して内端が前記リード線押さえ具に当接するリード線締結用ボルトから構成され、前記リード線押さえ具は、リード線挿通用貫通孔内に挿入される本体と、この本体の一端から金属製挟持具の外側に回り込む延出部とを有し、前記リード線締結用ボルトは、前記延出部に設けられたボルト挿通孔を経由して前記貫通ネジ孔に螺合するように構成されている、請求項1又は2に記載の等電位ボンディング金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷時に鉄筋コンクリート造りの建物内に発生する電位差を抑制して、建物内の各種電気機器を保護するための等電位ボンディング金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来周知の等電位ボンディング金具は、特許文献1にも示されるように、鉄筋を挟み付ける一対の金属製挟持具と、この一対の金属製挟持具を互いに締結する鉄筋締結用ボルトと、一方の金属製挟持具に設けられたリード線取付け部から構成され、リード線取付け部は、一方の金属製挟持具から一体に延出する平板部に、リード線の端末に固着された圧着端子板を重ねてボルトナットにより締結一体化するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-155769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来周知の等電位ボンディング金具では、鉄筋を挟み付ける一対の金属製挟持具どうしを、鉄筋の両側に位置する2本の締結用ボルトナットにて互いに締結して、間に位置する鉄筋を挟み付ける構造であったため、太さが最小の鉄筋から太さが最大の鉄筋まで確実に挟持固定することは出来るが、一対の金属製挟持具の相対姿勢を保持しながら2本の締結用ボルトナットを操作しなければならないので、鉄筋への取り付けに多大の手間と時間を要するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる等電位ボンディング金具を提案するものであって、本発明に係る等電位ボンディング金具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、鉄筋(R)を挟み付ける一対の金属製挟持具(1,2)と、この一対の金属製挟持具(1,2)を互いに締結する鉄筋締結用ボルト(27)と、一方の金属製挟持具(1)に設けられたリード線取付け部(3)から成る等電位ボンディング金具において、
一対の金属製挟持具(1,2)には、その互いに対面する底面に、リード線取付け部(3)におけるリード線(L)の長さ方向と平行に鉄筋嵌合凹部(15,18)が形成されると共に、当該鉄筋嵌合凹部(15,18)の長さ方向に対して直交する一側方に張り出す張出し板部(5,17)がそれぞれ連設され、この両張出し板部(5,17)の内、一方の張出し板部(5)には1つの貫通ネジ孔(19)が設けられると共に、他方の張出し板部(17)には、前記貫通ネジ孔(19)に螺入される1本の鉄筋締結用ボルト(27)の頭部(27a)側が貫通する1つの貫通孔(20)が設けられ、両張出し板部(5,17)間にはスペーサー(21)が着脱自在に介装され、このスペーサー(21)は、一方の張出し板部(5)の底面に当接する座板部(22)、この座板部(22)に設けられた1つのボルト挿通孔(23)、前記座板部(22)から連設されて前記一方の張出し板部(5)の側辺に隣接する回り止め用折曲板部(24)、及び前記座板部(22)から連設されて前記鉄筋締結用ボルト(27)の両側に立ち上がる一対の側板部(25a,25b)を備え、このスペーサー(21)の前記一対の側板部(25a,25b)には、このスペーサー(21)の前記座板部(22)が当接する一方の張出し板部(5)とは反対側の他方の張出し板部(17)の端縁(17a)を受け止める支持面(26)が設けられ、前記スペーサー(21)が外された状態では、前記他方の張出し板部(17)の端縁(17a)が前記一方の張出し板部(5)の底面で直接受け止められるように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の構成によれば、一対の金属製挟持具の鉄筋嵌合凹部間で鉄筋を挟み付けた状態で、一方の金属製挟持具の張出し板部にある貫通孔から挿入した1本の鉄筋締結用ボルトを、スペーサーのボルト挿通孔を経由させて他方の金属製挟持具の張出し板部にある貫通ネジ孔に螺合締結することにより、本発明の等電位ボンディング金具を鉄筋の所要位置に固定することが出来る。この後、端末に従来使用されていた圧着端子板が取り付けられていないリード線の端末所定長さ領域を、一方の金属製挟持具に設けられているリード線取付け部で取付け固定することにより、当該リード線と鉄筋とを導通状態に接続することが出来る。
【0007】
本発明の等電位ボンディング金具は、上記のように使用することが出来るものであるが、一対の金属製挟持具間で鉄筋を挟持するとき、当該鉄筋が両金属製挟持具の鉄筋嵌合凹部に嵌合するので、各金属製挟持具の横側方に張り出している張出し板部の向きが不測に変動することは無い。又、各金属製挟持具の張出し板部間に介装されるスペーサーは、その座板部に設けられたボルト挿通孔に鉄筋締結用ボルトが貫通していることと、座板部に連設された回り止め用折曲板部が一方の張出し板部の側辺に隣接していることによって、当該スペーサーの位置と向きが一定している。しかも当該スペーサーの座板部から連設されている一対の側壁板部の支持面で、他方の張出し板部の鉄筋締結用ボルトの両側2箇所を安定良く支持させることが出来る。以上の結果、一対の金属製挟持具間に挟んだ鉄筋を1本の鉄筋締結用ボルトによって確実に且つ簡単容易に締結し、リード線取付け部を備えた等電位ボンディング金具を鉄筋に取り付けることが出来る。
【0008】
しかも上記のようにスペーサーを併用すれば、リード線取付け部を備えた一方の金属製挟持具の張出し板部に対して他方の金属製挟持具の張出し板部の支持位置を、スペーサーの座板部と一対の側壁板部の支持面との間の間隔だけ離すことが出来るので、当該他方の金属製挟持具全体を一方の金属製挟持具に対して大きく傾斜させなくとも、両金属製挟持具の鉄筋嵌合凹部間の間隔を広げて、大径の太い鉄筋を安定良く且つ確実に両金属製挟持具間で締結することが出来る。換言すれば、小径の細い鉄筋の場合は、前記他方の金属製挟持具の鉄筋嵌合凹部のある側が一方の金属製挟持具側に近づいて大きく傾斜することになるが、このような場合には、即ち、小径の細い鉄筋に取り付ける場合は、スペーサーを取り外せば良い。即ち、鉄筋締結用ボルトを一方の金属製挟持具の貫通ネジ孔とスペーサーのボルト挿通孔から一旦抜き取り、フリーになったスペーサーを、その回り止め用折曲板部が一方の金属製挟持具の張出し板部の側辺から離れる方向に取り除き、その後、鉄筋締結用ボルトを一方の金属製挟持具の貫通ネジ孔に再度螺合させれば、他方の金属製挟持具の張出し板部の側辺を一方の金属製挟持具の張出し板部の底面で直接支持させることによって、両金属製挟持具の鉄筋嵌合凹部間の間隔を十分に狭め、両金属製挟持具間で小径の細い鉄筋を安定良く確実に挟持固定することが出来る。
【0009】
上記本発明を実施する場合、スペーサー(21)の前記座板部(22)が当接する一方の張出し板部(5)は、リード線取付け部(6)を備えた一方の金属製挟持具(1)に連設し、スペーサー(21)の前記両側板部(25a,25b)の支持面(26)で端縁(17a)が受け止められる他方の張出し板部(17)は、リード線取付け部(6)を備えていない他方の金属製挟持具(2)に連設することが出来る。この場合、他方の金属製挟持具(2)は、その全体を板状体で形成することが出来る。具体的には、他方の金属製挟持具(2)の鉄筋嵌合凹部(18)は板状体のV字形成形により構成すると共に、鉄筋締結用ボルト(27)が貫通する貫通孔(20)が設けられた張出し板部(17)は、当該ボルト(27)の頭部(27a)を受ける外側面が、この張出し板部(17)の張出し方向に沿って円弧形に突曲するように成形し、更に、この張出し板部(17)に設けられた前記貫通孔(20)は、この張出し板部(17)の張出し方向に沿って長くなった長孔状に形成することが出来る。この構成によれば、一対の金属製挟持具の内、少なくとも一方は板状体のプレス加工により安価に構成することが出来る。しかも板状体から成る他方の金属製挟持具の角度は、スペーサーを使用する場合と使用しない場合の何れにおいても、挟持する鉄筋の太さによって変化するが、この状況においても鉄筋締結用ボルトは問題なく張出し板部の長孔から成る貫通孔を貫通すると共に、ボルト頭部の内側面は常に張出し板部の外側面と線接触する状態になり、当該ボルトの締結力を、板状体から成る他方の金属製挟持具の張出し板部に確実に伝えて所期の動作を行わせることが出来る。
【0010】
尚、前記リード線取付け部(6)は、任意の構造のものを採用出来るが、例えば一対の金属製挟持具(1,2)の前記鉄筋嵌合凹部(15,18)間で挟持する鉄筋(R)の長さ方向と平行に貫通するリード線挿通用貫通孔(7)と、このリード線挿通用貫通孔(7)内に挿入された金属製のリード線押さえ具(3)と、リード線挿通用貫通孔(7)の周壁部を貫通する貫通ネジ孔(13,14)を螺合貫通して内端が前記リード線押さえ具(3)に当接するリード線締結用ボルト(8,9)から構成し、前記リード線押さえ具(3)は、リード線挿通用貫通孔(7)内に挿入される本体(10)と、この本体(10)の一端から金属製挟持具(1)の外側に回り込む延出部(11)とを有せしめ、前記リード線締結用ボルト(8)は、前記延出部(11)に設けられたボルト挿通孔(12)を経由して前記貫通ネジ孔(13)に螺合するように構成することが出来る。この構成によれば、端末に圧着端子板が取り付けられていないリード線を簡単容易に固定することが出来るのであるが、リード線(一般的には複数本の導線を束ねて撚りをかけたもの)を直接ボルトの先端面で押圧固定する場合と比較して、ボルトの先端面でリード線を損傷させる恐れも無く、リード線と金属製挟持具との間の接触導通面積を十分に大きくすることが出来、所期の目的である等電位ボンディングの効果を確実に得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、スペーサーを使用している状態での正面図である。
図2図2は、同状態での右側面図である。
図3図3は、ボルト類を除いた構成部品を示す斜視図である。
図4図4は、図1のA-A線断面図である。
図5図5は、図2のB-B線断面図である。
図6図6は、図2のC-C線断面図である。
図7図7は、取り付ける対象の鉄筋の太さが変化する場合の状態を説明する右側面図である。
図8図8は、取り付ける対象の鉄筋の太さが細くなったためにスペーサーを外して使用している状態を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施例を、添付の図1図6に基いて説明すると、1は例えば真鍮(C2801)から製造される主金属製挟持具、2は例えば一般構造用圧延鋼材(SS400)から製造される副金属製挟持具、3は例えば溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)から製造されるリード線押さえ具である。主金属製挟持具1は、柱状の本体部4と、この本体部4の底面と面一に片側に延出させた張出し板部5とから成り、リード線取付け部6を備えている。このリード線取付け部6は、本体部4の中心位置を全長にわたって貫通する断面円形のリード線挿通用貫通孔7と、このリード線挿通用貫通孔7に一端から挿入されるリード線押さえ具3、及び2本のリード線締結用ボルト8,9から構成されている。リード線押さえ具3は、リード線挿通用貫通孔7の全長とほぼ等しい長さの押さえ具本体10と、この押さえ具本体10の一端からコの字形に折り返した、押さえ具本体10と平行な延出部11とから構成され、延出部11には、円形のボルト挿通孔12が設けられている。
【0013】
主金属製挟持具1の本体部4には、その上面の長さ方向両端から同一距離だけ離れた2か所に、内端がリード線挿通用貫通孔7に開口する貫通ネジ孔13,14が設けられ、これら貫通ネジ孔13,14に螺合貫通し且つ内端が押さえ具本体10に当接する2本のリード線締結用ボルト8,9が設けられている。リード線押さえ具3の延出部11は、押さえ具本体10の全体をリード線挿通用貫通孔7内に挿入させたとき、当該延出部11のボルト挿通孔12が、この延出部11のある側の貫通ネジ孔13又は14の真上位置に同心状に位置するように構成され、この貫通ネジ孔13又は14に螺合するリード線締結用ボルト8又は9は、リード線押さえ具3の延出部11のボルト挿通孔12を経由して貫通ネジ孔13又は14に螺合することになる。リード線挿通用貫通孔7内に挿入されている押さえ具本体10は、リード線挿通用貫通孔7の内周面に沿う横断面円弧形に成形されている。
【0014】
主金属製挟持具1の本体部4の底面には、リード線挿通用貫通孔7と平行な全長にわたって連続する横断面V字形の鉄筋嵌合凹部15が刻設されている。副金属製挟持具2は、主金属製挟持具1の本体部4と張出し板部5を含む全体の平面サイズとほぼ同一の板状体から製造されたもので、主金属製挟持具1の本体部4に対応する本体部16と、主金属製挟持具1の張出し板部5に対応する張出し板部17を備えている。本体部16は、主金属製挟持具1の本体部4に設けられている鉄筋嵌合凹部15と上下対称形の横断面V字形の鉄筋嵌合凹部18が形成されるように折曲され、張出し板部17は、その張り出し方向の中央部が外側に突曲するように、全長にわたって横断面円弧形に形成されている。主金属製挟持具1の張出し板部5には、そのほぼ中央位置に板厚方向に貫通する貫通ネジ孔19が設けられ、副金属製挟持具2の横断面円弧形の張出し板部17には、主金属製挟持具1の貫通ネジ孔19と平面視で重なる位置に、当該張出し板部17の張り出し方向に沿った長孔状の貫通孔20が設けられている。
【0015】
主金属製挟持具1の張出し板部5と副金属製挟持具2の張出し板部17との間には、着脱自在スペーサー21が介装されている。このスペーサー21は、板材を細断してプレス加工により製造されたもので、主金属製挟持具1の張出し板部5の底面に当接する座板部22、この座板部22に設けられたボルト挿通孔23、座板部22の外側辺から折曲連設されて主金属製挟持具1の張出し板部5の外側辺5aに隣接する回り止め用折曲板部24、及び座板部22の左右両側辺から折曲連設された左右両側板部25a,25bを備え、この左右両側板部25a,25bには、副金属製挟持具2の張出し板部17の外側端縁17aを受け止める支持面26が設けられている。
【0016】
主金属製挟持具1、副金属製挟持具2、及びスペーサー21は次のように組み立てられる。先ずスペーサー21を、主金属製挟持具1の張出し板部5の外側辺5aに回り止め用折曲板部24が隣接する状態で、その座板部22を主金属製挟持具1の張出し板部5の底面に当接させる。次に副金属製挟持具2の張出し板部17の外側から鉄筋締結用ボルト27を、副金属製挟持具2の張出し板部17に設けられている長孔状の貫通孔20と、スペーサー21の座板部22に設けられているボルト挿通孔23をこの順に挿通させ、最後に当該鉄筋締結用ボルト27の先端を主金属製挟持具1の張出し板部5に設けられている貫通ネジ孔19に、当該張出し板部5の底面側から螺合貫通させ、副金属製挟持具2の張出し板部17の外側端縁17aにおける左右両端近傍の2箇所を、スペーサー21の左右両側板部25a,25bに設けられている支持面26に隣接させる。このとき図示のように、スペーサー21の左右両側板部25a,25bの外端部から、座板部22から離れる方向にそれぞれ突起部25c,25dを連設しておけば、鉄筋締結用ボルト27の締結前の状態で副金属製挟持具2が鉄筋締結用ボルト27の回りに遊転するのを制限し、当該副金属製挟持具2を、その本体部16が主金属製挟持具1の本体部4と対面する向きに保持することが出来る。
【0017】
以上のように構成された等電位ボンディング金具は、鉄筋コンクリート製の建物に使用されている鉄筋Rを他の鉄筋又は鉄骨とリード線Lによって電気的に接続させるために使用されるものであって、主金属製挟持具1と副金属製挟持具2を連結している鉄筋締結用ボルト27を弛めて、主金属製挟持具1の本体部4における鉄筋嵌合凹部15と副金属製挟持具2の本体部16における鉄筋嵌合凹部18との間を広げ、これら主金属製挟持具1の本体部4と副金属製挟持具2の本体部16とを、これらの間に鉄筋Rが入り込むように鉄筋Rに対し横から嵌合させる。この後、鉄筋締結用ボルト27を締め込んで、主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15と副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18との間で鉄筋Rを挟持締結させる。
【0018】
上記の等電位ボンディング金具の取付け作業時において、スペーサー21は、鉄筋締結用ボルト27が座板部22のボルト挿通孔23を貫通していることと、回り止め用折曲板部24が主金属製挟持具1の張出し板部5の外側辺5aに隣接していることとにより、主金属製挟持具1に対する位置と向きが規制されている。従って、鉄筋嵌合凹部18が鉄筋Rに嵌合している副金属製挟持具2は、その張出し板部17の外側端縁17aにおける左右両端近傍の2箇所が、スペーサー21の左右両側板部25a,25bの支持面26上で確実に受け止められる。この結果、鉄筋締結用ボルト27の締め込みにより、当該鉄筋締結用ボルト27の頭部27aから副金属製挟持具2の横断面円弧形に外向きに突曲する張出し板部17が受ける締め付け力よって、当該副金属製挟持具2は、スペーサー21の支持面26と張出し板部17の外側端縁17aとの当接箇所を支点にして主金属製挟持具1に接近する方向の押圧力を受け、鉄筋Rを主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15と副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18との間で挟持固定することになる。
【0019】
以上のようにして鉄筋Rの所定箇所に本発明の等電位ボンディング金具を取り付けたならば、主金属製挟持具1のリード線締結用ボルト8,9をねじ戻して、リード線押さえ具3の押さえ具本体11をこれに対面するリード線挿通用貫通孔7の内面から離間させた状態において、端末に圧着端子板が取り付けられていないリード線Lの端末を、主金属製挟持具1のリード線挿通用貫通孔7内に、リード線押さえ具3の延出部11のある側から、押さえ具本体11とこれに対面するリード線挿通用貫通孔7の内面との間に挿入する。このリード線Lを、端末がリード線挿通用貫通孔7の他端から突出する程度までリード線挿通用貫通孔7内に十分に挿入したならば、主金属製挟持具1のリード線締結用ボルト8,9をねじ込んで、その内端でリード線挿通用貫通孔7内に挿入されているリード線押さえ具3の押さえ具本体11をリード線L側に押圧し、当該押さえ具本体11とリード線挿通用貫通孔7の内面との間でリード線Lを挟持締結させることにより、鉄筋Rに対するリード線Lの接続が完了する。
【0020】
上記のように鉄筋Rに本発明の等電位ボンディング金具を取り付ける前の状態では、鉄筋締結用ボルト27を緩めておけば、副金属製挟持具2の張出し板部17の外側端縁17aとスペーサー21の支持面26との当接部を支点にして副金属製挟持具2を、その鉄筋嵌合凹部18が主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15に対して遠近方向に移動するように揺動させて、主金属製挟持具1に対して副金属製挟持具2の角度を変更し、以て主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15と副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18との間の間隔を変えることが出来る。このとき副金属製挟持具2の角度の変化に伴って、副金属製挟持具2の長孔状の貫通孔20を貫通する鉄筋締結用ボルト27の位置が当該貫通孔20の長さの範囲内で変化すると共に、当該副金属製挟持具2の張出し板部17の突曲面と鉄筋締結用ボルト27の頭部27aとの線接触位置が長孔状の貫通孔20の長さの範囲内で変化することになる。上記の副金属製挟持具2の角度変更によって、主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15と副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18との間で挟持する鉄筋Rの太さの変化に対応することが出来るが、この主金属製挟持具1に対する副金属製挟持具2の傾斜角度が変化することにより、主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15に対して副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18の位置が、当該鉄筋嵌合凹部15,18の長さ方向に対する直交方向に変動する。
【0021】
従って、両鉄筋嵌合凹部15,18の位置が鉄筋嵌合凹部15,18の長さ方向に対する直交方向にずれ過ぎると、その両者間で鉄筋Rを安定良く挟持できなくなるので、このような状況にならない範囲内に、主金属製挟持具1に対する副金属製挟持具2の傾斜角度の変化量を抑制しなければならない。換言すれば、取付け対象の鉄筋Rの太さは、両鉄筋嵌合凹部15,18間で鉄筋Rを安定良く挟持できる範囲内に制限される。即ち、主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15との間で副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18が鉄筋Rを安定良く挟持できる範囲内であれば、主金属製挟持具1に対して副金属製挟持具2の傾斜角度を変えることにより、本発明の等電位ボンディング金具を太さの異なる複数種類の鉄筋Rに対して確実に挟持固定することが出来る。
【0022】
スペーサー21を併用する状態で、両鉄筋嵌合凹部15,18間で安定良く挟持できる鉄筋Rの最小径よりも細い鉄筋Rに対して本発明の等電位ボンディング金具を取り付ける場合は、図8に示すように、スペーサー21を併用しない。即ち、一旦鉄筋締結用ボルト27を主金属製挟持具1から取り外した状態で、当該鉄筋締結用ボルト27からスペーサー21を抜き取る。この後、副金属製挟持具2の長孔状の貫通孔20を貫通している鉄筋締結用ボルト27を主金属製挟持具1の貫通ネジ孔19に螺合させる。この状態では、図8の実線で示すように、副金属製挟持具2は、その張出し板部17の外側端縁17aが主金属製挟持具1の張出し板部5の底面に直接当接し、当該副金属製挟持具2を主金属製挟持具1に対して殆ど傾斜させなくとも、その鉄筋嵌合凹部18と主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15との間の間隔が大幅に狭まり、これら両鉄筋嵌合凹部15,18間で極小径の細い鉄筋Rであっても安定良く確実に挟持固定することが出来る。
【0023】
上記のスペーサー21を使用しない状況においても、本発明の等電位ボンディング金具を取り付ける対象の鉄筋Rが太くなる場合は、図8の仮想線で示すように、主金属製挟持具1の鉄筋嵌合凹部15に対して副金属製挟持具2の鉄筋嵌合凹部18を離すように副金属製挟持具2を傾斜させて、両鉄筋嵌合凹部15,18間の間隔を広げ、太い鉄筋Rも両鉄筋嵌合凹部15,18間で挟持固定することが出来る。勿論、この場合でも、両鉄筋嵌合凹部15,18間で太い鉄筋Rを安定良く確実に挟持固定できる範囲内に副金属製挟持具2の傾斜角度を制限しなければならない。
【0024】
尚、本願発明を実施する場合、副金属製挟持具2の張出し板部17に設けた突曲面17bと長孔状の貫通孔20を、主金属製挟持具1の張出し板部5に設け、副金属製挟持具2の張出し板部17を主金属製挟持具1の張出し板部5のように平板状に形成し、この平板状の張出し板部17に貫通ネジ孔19を設け、スペーサー21を使用する場合、このスペーサー21の座板部22を副金属製挟持具2の平板状の張出し板部17の内側底面に当接させ、鉄筋締結用ボルト27は、主金属製挟持具1の張出し板部5に設けられた長孔状の貫通孔20からスペーサー21のボルト挿通孔23を経由させて、副金属製挟持具2の平板状の張出し板部17に設けた貫通ネジ孔19に螺合させるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の等電位ボンディング金具は、落雷時に鉄筋コンクリート造りの建物内に発生する電位差を抑制して、建物内の各種電気機器を保護するために、鉄筋どうし又は鉄筋と鉄骨とをリード線で接続させる場合に、当該リード線を鉄筋に接続させるための手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0026】
1 主金属製挟持具
2 副金属製挟持具
3 リード線押さえ具
4,16 本体部
5,17 張出し板部
6 リード線取付け部
7 リード線挿通用貫通孔
8,9 リード線締結用ボルト
10 押さえ具本体
11 延出部
12 ボルト挿通孔
13,14,19 貫通ネジ孔
15,18 鉄筋嵌合凹部
17a 張出し板部17の外側端縁
17b 張出し板部17の突曲面
20 長孔状の貫通孔
21 スペーサー
22 座板部
23 貫通孔
24 回り止め用折曲板部
25a,25b 左右両側板部
25c,25d 突起部
26 支持面
27 鉄筋締結用ボルト
27a ボルト頭部
R 鉄筋
L リード線
図1
図2
図3
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図8