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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】止血用組成物及びこれを含む容器
(51)【国際特許分類】
   A61L 24/10 20060101AFI20230209BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61L 24/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A61L24/10
A61L24/00 240
A61L24/02
A61L24/00 250
A61L24/00 260
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020549529
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018014752
(87)【国際公開番号】W WO2019107887
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160858
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0127183
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520187780
【氏名又は名称】ダリム ティッセン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、シ-ネ
(72)【発明者】
【氏名】ベ、サン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】コ、ジェ-ヒョン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532139(JP,A)
【文献】特表2013-530955(JP,A)
【文献】特許第4769578(JP,B2)
【文献】特表2002-523336(JP,A)
【文献】特表2014-530066(JP,A)
【文献】特表2016-502448(JP,A)
【文献】特表2015-525090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に充填するためのコラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物であって、
前記安定化剤が、アルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム(C 2 3 NaO 2 )、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びグリシンから選択された1種以上であり、
前記止血用組成物が粉末剤形態であり、
前記コラーゲンとトロンビンが、前記容器の入口側からコラーゲン、安定化剤、トロンビン、又はトロンビン、安定化剤、コラーゲンの順に配置されて互いに混合されない状態で分離された止血用組成物。
【請求項2】
前記コラーゲンは、架橋されたコラーゲンであることを特徴とする請求項1に記載の止血用組成物。
【請求項3】
前記架橋されたコラーゲンの分子量は100,000ないし1,000,000Daltonであることを特徴とする請求項2に記載の止血用組成物。
【請求項4】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記コラーゲンが40ないし97重量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の止血用組成物。
【請求項5】
前記安定化剤は、マンニトールであることを特徴とする請求項に記載の止血用組成物。
【請求項6】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記安定化剤が1ないし30重量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の止血用組成物。
【請求項7】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記トロンビンが2ないし50重量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の止血用組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項の止血用組成物を含む容器。
【請求項9】
コラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物が充填された第1容器と、
希釈液が充填された第2容器とを含む止血用キットであって、
前記安定化剤が、アルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム(C 2 3 NaO 2 )、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びグリシンからなる1種以上であり、
前記止血用組成物が粉末剤形態であり、
前記第1容器において、コラーゲンとトロンビンが、前記第1容器の入口側からコラーゲン、安定化剤、トロンビン、又はトロンビン、安定化剤、コラーゲンの順に配置されて互いに混合されない状態で分離された止血用キット。
【請求項10】
前記希釈液は、精製水、塩化カルシウム(CaCl2)溶液、塩化ナトリウム(NaCl)溶液、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、及び酢酸ナトリウム(C23NaO2)溶液からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項11】
前記希釈液は塩化カルシウム溶液であり、
前記希釈液の総重量に対して、前記塩化カルシウムが0.001ないし30重量%で含まれることを特徴とする請求項10に記載の止血用キット。
【請求項12】
前記止血用キットは、
第1容器と第2容器が互いに結合して止血用組成物と希釈液が混合されてハイドロゲルを形成し、
前記ハイドロゲルの平均気孔サイズは50μmないし200μmであることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項13】
前記ハイドロゲルのpHは6ないし8であることを特徴とする請求項12に記載の止血用キット。
【請求項14】
前記コラーゲンは架橋されたコラーゲンであることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項15】
前記架橋されたコラーゲンの分子量は100,000ないし1,000,000Daltonであることを特徴とする請求項14に記載の止血用キット。
【請求項16】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記コラーゲンが40ないし97重量%で含まれることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項17】
前記安定化剤は、マンニトールであることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項18】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記安定化剤が1ないし30重量%で含まれることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【請求項19】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記トロンビンが2ないし50重量%で含まれることを特徴とする請求項に記載の止血用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月28日付けの大韓民国特許出願第10-2017-0160858号及び2018年10月24日付けの大韓民国特許出願第10-2018-0127183号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、止血用組成物及びこれを含む容器に関する。
【背景技術】
【0003】
シーラント(Sealant)と止血剤(hemostats)を含む組織接着剤分野の研究開発は急速に成長している。1998年に米国FDAでフィブリンシーラント(Fibrin sealant)が許可されるにつれて、毎年新しい組織接着剤が開発され続けている。このような組織接着剤は、従来に外科的又は内科的手術において使用されていた縫合術、クリップ術、灸術などの技術を代替できる素材として脚光を浴びている。
【0004】
縫合術などの従来の外科的な技術は強い伸長力(strong tensile strength)を有するが、患者の苦痛誘発及び施術後に除去などの問題を有している。それに対して、組織接着剤は、速い接着時間、手軽な使用、施術後に除去不要などの数多くの長所を有しているが、低い接着性及び伸張力(low adhesiveness and tensile strength)と、水分が存在する場合は接着性が著しく低下する制限点を有している。このような組織接着剤の限界を克服するための研究が続いている。
【0005】
組織接着剤は、組織に直接接触するので、生体適合性が要求される。また、医療用接着剤の場合は、通常生体内で使用されるため、接着が本質的に体液と血液中に流れ込むと、生体が直接関与するので、より厳しい条件で毒性と危害性がなく、より厳密な生体適合性と生分解性の素材が要求される。
【0006】
現在商用化及び/又は実用化されている組織接着剤は、シアノアクリレート瞬間接着剤、フィブリングルー、ゼラチングルー及びポリウレタン系などに大別される。シアノアクリレート瞬間接着剤は、最近になって高機能性及び高性能を有する瞬間接着剤の研究で脚光を浴びている。特に、生体適合性、柔軟性及び低毒性の生体組織縫合用の医療用瞬間接着剤は、止血、抗菌効果だけでなく縫合糸の代替も可能であるので、先進国を中心に研究が活発に行われている。
【0007】
このようなシアノアクリレート系組織接着剤は、現在、ダーマボンド(Dermabond:Johnson&Johnson社)とインダーミル(Indermil:US Surgical社)などの製品として商用化されている。このようなシアノアクリレート系組織接着剤は、単一物質であって短時間で室温で開始剤なしに水分により硬化し、外観が透明で接着強度が大きいという長所があるが、衝撃に弱く、耐熱性に低下する短所を有している。また、毒性が激しくて現在はほとんど使用されておらず、米国を除いた他の国において臨床で部分的に使用しているが、一部の組織毒性と脆弱性のため、使用が制限されている。
【0008】
また、フィブリングルー接着剤は、最初に1998年に米国FDAにより心臓外科への応用が許可された。その以後、フィブリン組織接着剤に対する研究開発が活発に行われ、現在Tisseel VH(Baxer社)とEvicel TM(Johnson&Johnson社)などの製品が商用化されている。フィブリン系組織接着剤は、シアノアクリレート系とともに組織接着剤の市場の大部分を占めている。フィブリン組織接着剤は、フィブリンの架橋反応を利用してフィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウム及び線溶酵素の阻害剤を組織接着剤として末梢神経の縫合、微小血管の縫合などに適用して縫合の代用又は補強のための臨床応用が実施されている。このようなフィブリングルー接着剤は、接着部位の水分に影響を受けずに速く接着し、血小板と凝固障害がなく生体適合性に優れた長所を有している。しかしながら、接着力が弱く、生分解速度が速く、血液の感染の危険があるという制限点を有している。
【0009】
また、ゼラチングルーは、生体由来の組織接着剤として、ゼラチン-レゾルシノール-ホルマリン(GRF)で架橋させたものが開発された。その他に、ゼラチン-グルタルアルデヒドのような組織接着剤が開発されたが、組織接着性は高いが、架橋剤として使われるホルマリンやグルタルアルデヒドが生体内のタンパク質とも架橋反応を起こして組織毒性を起こす短所を有している。
【0010】
また、ポリウレタン系接着剤は、硬化後に接合部の柔軟性が維持される弾性接着剤の形態で開発された。この接着剤は、生体組織表面の水を吸収して組織との密着性を高め、水と反応して数分以内に硬化し、硬化物が柔軟性を有する特徴があり、硬化した接着剤が適切に生分解される長所を有している。しかしながら、合成原料である芳香族ジイソシアネートが生体毒性を有するという短所がある。
【0011】
また、「Avitene」(Alcon)、「Helitene」(Dahamed)のようにコラーゲン単独成分の止血剤は非血液製剤であるが、非常に高価で、単独成分として組織接着効果がないため、止血剤としてのみ使用している。
【0012】
また他の従来技術として、非特許文献1~4などが紹介されているが、これらは接着性止血剤の製品にフィブリノーゲン、トロンビン、血液凝固剤、アプロチニンなどの血液製剤及び牛由来タンパク質などを使用することにより、このときに発生し得る特定疾患の感染の恐れ及び原料確保、保存、製造過程などにかかる過大なコストにより製品の価格が高価である問題がある。
【0013】
また、ゼラチンマトリックス成分を含むFloseal(Baxter社)は最も多く使われている製品であり、ゼラチンマトリックスに塩化カルシウム溶液に混合されたトロンビンを加えて止血効果を示す製品である。これは、特に、目以外の部位に対する多くの領域の外科的手術のとき、結紮(ligature)又は一般的な手順において効果的に調節されないか、調節が不可能な出血に使用することができる。ただし、これは、トロンビン、ゼラチン、塩化カルシウム溶液の3つに大別され、その各溶液を一度に混合するのではなく、2段階に分けて混合しなければならないため、多少の時間がかかる。従って、外科的手術のとき、深刻な結紮及び出血が起きる分秒を争うほど切迫した状態では、複雑な製品の指示書に従って混ぜる余裕がなく、順次行われる過程は、時刻を争う出血患者の生命を脅かすことになり、使用者に非常に煩わしいという問題がある。
【0014】
また、前述したような止血用製品は人に適用されるので、最終生成物及びその成分の品質に対する最高の安全基準、保存安定性及び単純な使用方法を提供する必要がある。特に、2種以上の成分を混合して使用する場合は、「使用用意済の(ready-to-use)」形態にしなければならず、混合が容易な状態で提供しなければならない。
【0015】
これにより、毒性が非常に少なく、保存及び取扱いが容易であり、使用方法が単純で時間を争う出血患者に適用でき、生体分解性に優れた止血剤の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第5464471号明細書
【文献】米国特許第5773033号明細書
【文献】米国特許第5605887号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Fibrin monomer based tissue adhesive, US Patent 5464471, 1995
【文献】Hemostatic and tissue adhesive, US Patent 5883078, 1999
【文献】Fibrinogen/chitosan hemostatic agents, US Patent 5773033, 1998
【文献】Therapeu tic fibrinogen compositions, US Patent 5605887, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者は、前述したような問題点を解決するために、コラーゲン、安定化剤、トロンビンを含む止血用組成物及びこれを含む容器を開発して、単純な使用方法で時間を争う出血患者に適用でき、毒性がなく、血液の感染に対する問題点がないとともに、生体分解速度が速く、止血効果に優れていることを確認して本発明を完成した。
【0019】
従って、本発明の目的は、コラーゲン、安定化剤、トロンビンを含む止血用組成物及びこれを含む容器を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、前記止血用組成物が充填された第1容器及び希釈液が充填された第2容器を含むキットを提供することにある。
【0021】
また、本発明のまた他の目的は、前記止血用キットを用いて製造されたハイドロゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例によれば、コラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物であって、前記コラーゲンとトロンビンの間に安定化剤が配置されて、コラーゲンとトロンビンが互いに分離された止血用組成物を提供する。
【0023】
前記コラーゲンは、架橋されたコラーゲンであり得る。
【0024】
前記架橋されたコラーゲンは、
S1)コラーゲンをエタノール又はメタノールに処理する段階と、
S2)前記S1)段階で処理されたコラーゲンに酸を添加してpH2~4のコラーゲン溶液として製造する段階と、
S3)前記S2)段階から製造されたコラーゲン溶液を中性状態にした後、遠心分離してエステル化コラーゲンを製造する段階と、
S4)前記S3)段階から製造されたエステル化コラーゲンに架橋剤を添加して架橋されたコラーゲンを製造する段階と、
S5)前記S4)段階から製造された架橋されたコラーゲンを精製水に分散させた後、凍結乾燥させる段階とを含む製造方法により製造されることができる。
【0025】
前記架橋されたコラーゲンの分子量は、100,000ないし1,000,000Daltonであり得る。
【0026】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記コラーゲンが40ないし97重量%で含まれてもよい。
【0027】
前記安定化剤は、アルブミン(human serum albumin)、マンニトール、酢酸ナトリウム(C23NaO2)、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びグリシンからなる群から選択された1種以上であり得る。
【0028】
前記安定化剤はマンニトールであり得る。
【0029】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記安定化剤が1ないし30重量%で含まれてもよい。
【0030】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記トロンビンが2ないし50重量%で含まれてもよい。
【0031】
前記止血用組成物は粉末剤の形態であり得る。
【0032】
本発明の他の実施例によれば、前記止血用組成物を含む容器を提供する。
【0033】
本発明の他の実施例によれば、コラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物が充填された第1容器と、希釈液が充填された第2容器とを含む止血用キットであって、前記第1容器はコラーゲンとトロンビンの間に安定化剤が配置されてコラーゲンとトロンビンが互いに分離された止血用キットを提供する。
【0034】
前記希釈液は、精製水、塩化カルシウム(CaCl2)溶液、塩化ナトリウム(NaCl)溶液、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、及び酢酸ナトリウム(C23NaO2)溶液からなる群から選択された1種以上であり得る。
【0035】
ここで、好ましくは、前記希釈液は塩化カルシウム溶液であり、前記希釈液の総重量に対して、前記塩化カルシウムが0.001ないし30重量%で含まれてもよい。
【0036】
前記止血用キットは、第1容器と第2容器が互いに結合して止血用組成物と希釈液が混合されてハイドロゲルを形成する。
【0037】
前記ハイドロゲルの平均気孔サイズは、50μmないし200μmであり得る。
【0038】
前記ハイドロゲルのpHは6ないし8であり得る。
【0039】
前記第1容器にトロンビン、安定化剤、コラーゲンの順に充填されてもよい。
【0040】
前記止血用キットの止血用組成物は前述の通りであるので、以下には省略する。
【発明の効果】
【0041】
本発明のコラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物は止血効果に優れている。
【0042】
また、本発明のコラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物を含む容器は、迅速で簡単に使用することができ、毒性がなく、血液の感染に対する問題点がないとともに、生体分解速度が速く、血液との接触時に膨張し、この膨張率が大きいため、止血効果に優れている。
【0043】
従って、本発明の止血用組成物及びこれを含む容器は、止血キットとして使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例2、実施例4及び比較例1を塩化カルシウム溶液と混合して作られた各ハイドロゲルに対するSEMイメージである。
図2】架橋されたコラーゲン及び架橋されたゼラチンに対するそれぞれの膨張速度を測定して得られたグラフである。
図3】実施例2及び比較例1をウサギ腸間膜切断モデルにそれぞれ処理して止血成功率(左)と止血にかかる時間(右)を測定して得られたグラフである。
図4】実施例2及び比較例1をブタの上大静脈損傷モデルにそれぞれ処理した後、H&E染色して得られた組織のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、コラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物であって、前記コラーゲンとトロンビンの間に安定化剤が配置されてコラーゲンとトロンビンが分離された止血用組成物を提供する。
【0046】
前記コラーゲンは、止血用組成物に含まれ、出血部位の血液を吸収して血小板を引き寄せて止血効果を引き起こす。また、前記コラーゲンは、血小板と付着するときは何もない状態で結合されるのではなく、接着剤のような作用をする物質であるvWF(von Willebrand’s factor)と結合して血小板の細胞表面上に存在する膜糖蛋白であるGPIb/IX複合体と結合を促進させて一次止血を行う。
【0047】
前記コラーゲンは、各種動物の組織を酸又はアルカリ処理するか、ペプシンなどの酵素を処理して抽出されるタンパク質であり得る。
【0048】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記コラーゲンが40ないし97重量%で含まれてもよい。ここで、40重量%未満で含まれる場合は止血効果が非常に低下する恐れがあり、97重量%超過で含まれる場合は相対的に前記トロンビン及び安定化剤が少なく含まれるため、全体の止血用組成物の化学安定性が低下するか、止血効果が低くなる可能性がある。
【0049】
また、前記コラーゲンは、架橋されたコラーゲンであり得、ここで、架橋されたコラーゲンは分子量が100,000ないし1,000,000Daltonであることが好ましいが、これに制限されない。前記架橋されたコラーゲンの分子量が100,000Dalton未満である場合は、血液吸収力は速いが、血液凝固が遅くなって止血効果が低下する可能性があり、1,000,000Daltonを超過する場合は、血液吸収力が著しく低下する可能性がある。
【0050】
前記架橋されたコラーゲンは、化学的架橋法、物理的架橋法、又はこれらの組み合わせによる方法で製造され、このとき、化学的架橋法により架橋されたコラーゲンは、架橋剤を利用して自家架橋結合(crosslinking)されたコラーゲンである。一方、物理的架橋法により架橋されたコラーゲンは、乾熱処理、紫外線照射、ガンマ線照射により架橋されたコラーゲンである。
【0051】
ここで、前記架橋剤は、ホルムアルデヒド(Formaldehyde)、グルタルアルデヒド(Glutaraldehyde)、カルボジイミド(Carbodiimides(EDC))、ポリエポキシ化合物(Polyepoxy compounds)からなる群から選択されたいずれか1種以上の架橋剤であり得る。好ましくは、カルボジイミド(Carbodiimides(EDC))であるが、これに制限されない。
【0052】
前記架橋されたコラーゲンは、機械的強度に優れて物理的圧迫止血効果を示すことができ、多量の出血を止血させることができる。
【0053】
前記架橋されたコラーゲンは、エステル化されたコラーゲンを架橋して得られたコラーゲンであり得る。
【0054】
本発明の一実施例において、前記架橋されたコラーゲンは、
S1)コラーゲンをエタノール又はメタノールに処理する段階と、
S2)前記S1)段階で処理されたコラーゲンに酸を添加してpH2~4のコラーゲン溶液として製造する段階と、
S3)前記S2)段階から製造されたコラーゲン溶液を中性状態にした後、遠心分離してエステル化コラーゲンを製造する段階と、
S4)前記S3)段階から製造されたエステル化コラーゲンに架橋剤を添加して架橋されたコラーゲンを製造する段階と、
S5)前記S4)段階から製造された架橋されたコラーゲンを精製水に分散させた後、凍結乾燥させる段階とを含む製造方法により製造される。
【0055】
前記S1)段階は、コラーゲンをエタノール又はメタノールに処理する段階であって、コラーゲンをエタノール又はメタノールに溶解して、後で架橋剤を混合するときに容易にするための段階であり、コラーゲン溶液を製造する段階である。
【0056】
前記S1)段階の以前に、コラーゲンを動物の皮膚組織を酸性溶液に処理してアテロコラーゲンを抽出する段階をさらに含んでもよい。
【0057】
前記S2)段階は、前記S1)段階で処理されたコラーゲンに酸を添加してpH2~4のコラーゲン溶液として製造する段階であり、コラーゲン溶液に酸を添加してコラーゲンを完全にエタノール又はメタノールに溶解された状態を作るための段階である。
【0058】
前記S3)段階は、前記S2)段階から製造されたコラーゲン溶液を中性状態にした後、遠心分離してエステル化コラーゲンを製造する段階であって、コラーゲンの両末端にある約12~27個のアミノ酸で構成された非らせん構造であるテロペプチド(telopeptide)を除去し、前記テロペプチドが除去された部分をエステル化させる段階である。ここで、テロペプチドは、生体内にコラーゲンが投入されたときに免疫反応を起こす主な原因として知られており、これによって医薬品などの原料として使用するとき、免疫反応を避けるためにテロペプチドを除去してアテロコラーゲン又はエステル化コラーゲンを使用することが好ましい。
【0059】
前記S3)段階は、中性状態に作られたコラーゲン溶液にペプシン酵素を処理してテロペプチドが除去され、エステル作用基を有するエステル化コラーゲンを一次的に作った後、遠心分離を利用して高純度のエステル化コラーゲンを分離させる段階であり得る。
【0060】
ここで、前記遠心分離は、エステル化コラーゲンのみが浸削されるように1000rpmないし30,000rpmで、5分ないし3時間の間行うことが好ましいが、これに制限されない。
【0061】
ここで、前記高純度のエステル化コラーゲンを分離する方法は、
(a)テロペプチドが除去されたアテロコラーゲンを含む試料を容器内に用意する段階と、
(b)前記アテロコラーゲンを含む試料を前記容器から濾過メンブレンが備えられた濾過モジュールに流入させ、前記濾過モジュールに圧力を印加して前記試料が前記濾過メンブレンを通過しながら濾過されるようにする限外濾過過程を行う段階と、
(c)前記限外濾過過程により前記濾過メンブレンを通過しながら濾過されて前記濾過モジュールから流出するエステル化コラーゲン溶液を収集する段階と、
(d)前記濾過メンブレンを通過しながら濾過されるエステル化コラーゲン溶液の流量を測定して限外濾過速度を決定する段階と、
(e)前記限外濾過速度が一定速度以下に減少すると、前記限外濾過過程を中止する段階と、
(f)前記試料のうち、前記濾過メンブレンを通過できずに前記容器に復帰する残留物に水を添加した後、これを前記濾過メンブレンが備えられた濾過モジュールに流入させて透析濾過過程を行う段階と、
(g)前記透析濾過過程により前記濾過メンブレンを通過しながら濾過されて前記濾過モジュールから流出するエステル化コラーゲン溶液を収集する段階と、
(h)前記(f)段階と前記(g)段階を繰り返す段階を含むことができる。
【0062】
前記(b)段階で、ポンプのポンピング作用により前記アテロコラーゲンを含む試料を前記容器から前記濾過メンブレンが備えられた濾過モジュールに流入させ、前記濾過モジュールには約10~30psiの圧力を印加することができる。
【0063】
前記(e)段階で、前記限外濾過速度が約1g/分以下に減少すると、前記限外濾過過程を中止させることができる。
【0064】
前記(f)段階で、前記容器に復帰する残留物には限外濾過過程により濾過された溶液と同量の精製水を添加することができる。
【0065】
前記(f)段階及び(g)段階における透析濾過過程は、少なくとも5回行うことが好ましい。
【0066】
これによって、前記(a)ないし(h)段階によりアテロコラーゲンをエステル化させながら、高純度のエステル化コラーゲンが得られる。
【0067】
一方、前記S4)段階は、前記S3)段階から製造されたエステル化コラーゲンに架橋剤を添加して架橋されたコラーゲンを製造する段階であって、エステル化コラーゲンを架橋させて物理的圧迫止血効果を示すことができるとともに、免疫反応を起こさない架橋されたコラーゲンを提供するための段階である。
【0068】
また、前記S4)段階での架橋剤は、前述したようにホルムアルデヒド(Formaldehyde)、グルタルアルデヒド(Glutaraldehyde)、カルボジイミド(Carbodiimides(EDC))、ポリエポキシ化合物(Polyepoxy compounds)からなる群から選択されたいずれか1種以上の架橋剤であり、以下に詳細な説明は省略する。
【0069】
前記S5)段階は、前記S4)段階から製造された架橋されたコラーゲンを精製水に分散させた後、凍結乾燥させる段階であって、架橋されたコラーゲンに残っている架橋剤及びテロペプチドが除去されていないコラーゲンを除去するための段階である。従って、前記S5)段階は、前記S4)段階から製造された架橋されたコラーゲンを精製水に分散させることにより微量の架橋剤及びテロペプチドが除去されていないコラーゲンを精製水に溶解させ、凍結乾燥により精製水に溶解されたまま凍結されて除去されることができる。また、このときの凍結乾燥は、当該技術分野において用いられる通常の方法であり得る。
【0070】
前記安定化剤は、止血用組成物に含まれて前記コラーゲンとトロンビンが混合しないようにするために前記コラーゲンとトロンビンのタンパク質を間に挟んでこれらのタンパク質の固有特性を維持する。従って、前記安定化剤が止血用組成物に含まれることにより、強い止血効果を有するコラーゲンとトロンビンを分離させるだけでなく、非活性物質として止血用組成物の化学安定性及び生物学的活性を維持することが保障できる。
【0071】
前記安定化剤は、アルブミン(human serum albumin)、マンニトール、酢酸ナトリウム(C23NaO2)、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びグリシンからなる群から選択された1種以上であり得る。
【0072】
ここで、前記安定化剤は、アルブミン、マンニトール及び酢酸ナトリウムからなる群から選択された1種以上を含むことにより、トロンビンの化学的安定性及び生物学的活性を維持することができる。
【0073】
また、前記安定化剤は、マンニトール、スクロース、トレハロース、ソルビトール及びグリシンからなる群から選択された1種以上を含むことにより、止血時間の延長を抑制し、血液凝固活性を維持させることができる。
【0074】
前記安定化剤は、好ましくはマンニトールであるが、これに制限されない。
【0075】
前記マンニトールは、キノコ・ザクロの根などの植物に広範囲に存在する白色の針状又は柱状の結晶であり、水によく溶けて緩下剤として使用されることもあり、グリセロールの代替剤として使用される。
【0076】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記安定化剤が1ないし30重量%で含まれることができる。このとき、1重量%未満で含まれる場合、前記コラーゲンとトロンビンを分離しにくくて化学安定性が低下する恐れがあり、30重量%超過で含まれる場合、相対的に前記コラーゲン及びトロンビンが少なく含まれて全体の止血用組成物の止血効果が低くなる恐れがある。
【0077】
前記トロンビンは止血用組成物に含まれ、これは、強力な止血因子として血液凝固に関与して血液中の可溶性フィブリノーゲンを加水分解して不溶性のフィブリンに変化させる反応において触媒の役割をする。また、前記トロンビンは、二次止血過程である血液凝固因子の活性化により繊維素が形成される過程において血小板活性化を誘導することができる。
【0078】
前記止血用組成物の総重量に対して、前記トロンビンが2ないし50重量%で含まれることがある。このとき、3重量%未満で含まれる場合は止血効果が非常に低下する可能性があり、50重量%超過で含まれる場合は相対的に前記コラーゲン及び安定化剤が少なく含まれて全体の止血用組成物の化学安定性が低下するか、止血効果が低くなる可能性がある。
【0079】
前記止血用組成物は、粉末剤形態であり、乾燥した粉末剤形態である止血用組成物は、外部環境及び水分により容易に液体状態に変質しないように製造された粉末剤形態であることが好ましい。前記止血用組成物は、粉末剤形態であって、各成分により化学安定性を有することができ、互いに混合されない状態で維持させることが容易である。また、取扱い及び保管に便利な長所を有する。
【0080】
本発明の他の実施例によれば、前記止血用組成物を含む容器を提供することができる。
【0081】
このとき、前記止血用組成物を含む容器は、止血効果を有するコラーゲン、安定化剤及びトロンビンが全て充填された状態であるため、使用方法が非常に単純であるので、時間を争う出血患者に適用できる長所を有する。特に、外科的手術時に深刻な結紮及び出血が起きる緊急な状態、分秒を争う状態でただ希釈液と混ぜて直ちに出血部位に適用できるので、使用者の利便性は勿論、専門的な技術者ではなくても手軽に利用できるほど非常に使用方法が単純であるという長所を有する。
【0082】
本発明の他の実施例によれば、コラーゲン、安定化剤及びトロンビンを含む止血用組成物が充填された第1容器と、希釈液が充填された第2容器とを含む止血用キットであって、前記第1容器はコラーゲンとトロンビンの間に安定化剤が配置されてコラーゲンとトロンビンが互いに分離された止血用キットを提供する。
【0083】
前記止血用キットは、前述した止血用組成物を用いているおり、コラーゲン、安定化剤及びトロンビンも同一であるので、以下に詳細な説明は省略する。
【0084】
前記第1容器は、止血用組成物が充填されており、コラーゲンとトロンビンの間に安定化剤が充填されているもので、外部物理的力により配置された順序が変わらないようにする。また、前記第1容器に充填されたコラーゲン、安定化剤、トロンビンが配置された順序に応じて、後で希釈液と混合して有する流れ性(flowability)が変わるだけでなく、膨張率及び膨張速度が変わる。これにより、前記第1容器は、コラーゲン、安定化剤、トロンビン又はトロンビン、安定化剤、コラーゲンの順に充填されることが好ましい。より好ましくは、トロンビン、安定化剤、コラーゲンの順序であるが、これに制限されない。
【0085】
前記第2容器は、希釈液が充填されており、ここで、希釈液は、前記第1容器の止血用組成物を溶解するか分散させるためのもので、溶媒又は分散媒として使用されることができる。例えば、精製水、塩化カルシウム(CaCl2)溶液、塩化ナトリウム(NaCl)溶液、ヒト血清アルブミン(human serum albumin)、及び酢酸ナトリウム(C23NaO2)溶液からなる群から選択された1種以上であり得る。好ましくは、塩化カルシウム溶液又は塩化ナトリウム溶液であるが、これに限定されない。
【0086】
前記希釈液が塩化カルシウム溶液である場合、前記希釈液の総重量に対して、前記塩化カルシウムが0.001ないし30重量%で含まれ、前記止血用組成物と混合がうまく行われる範囲の重量%であれば特に制限されない。
【0087】
前記第1容器又は第2容器の形状及び素材は特に制限せず、医薬及びバイオ技術の分野において通常使用されるものであり得る。例えば、前記第1容器又は第2容器の形状は注射器であり、前記第1容器又は第2容器の素材はコラーゲン、安定化剤及びトロンビンから選択されたいずれか1つと化学反応を起こさない素材である。
【0088】
一方、前記止血用キットは、第1容器と第2容器が互いに結合して止血用組成物と希釈液が混合されてハイドロゲルを形成することができる。
【0089】
前記第1容器と第2容器が互いに結合できるように第1容器の前端部には締結突起を含み、第2容器は第1容器の前端部にある締結突起と結合するように締結溝を含んでもよい。
【0090】
また、前記ハイドロゲルは多孔性であり、これにより、止血剤として使用するときに血液吸収率が高く、血液を吸収した後もハイドロゲルの形態が維持されるので、止血効果が低下せずに優れた止血効果を発揮できる。
【0091】
また、前記ハイドロゲルの平均気孔サイズは50μmないし200μmであり得る。平均気孔サイズが50μm未満であると血液吸収率が低下し、200μmを超過すると血液を吸収した後、ハイドロゲルの形態が維持できなくて止血効果が低下する恐れがある。
【0092】
また、前記ハイドロゲルの形成時間は5秒ないし5分であり、分秒を争うほど切迫した状態に深刻な結紮及び出血を防ぐことができる。また、短時間でハイドロゲルを形成することにより、使用者が手軽に使用することができる。
【0093】
前記ハイドロゲルは、止血用組成物と希釈液が混合して中性状態のpHを有することにより、前記ハイドロゲルを生体に適用するときに生体適合性及び生体安全性を確保することができる。さらに、毒性が少なく、感染安全性を有することができる。これによって、前記ハイドロゲルのpHは6ないし8であり得る。
【0094】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0095】
製造例1:エステル化コラーゲン粉末製造
【0096】
以下の過程によりエステル化コラーゲン粉末を製造した。
【0097】
(1)エタノールにコラーゲンを加えた後、冷蔵状態で撹拌した。
【0098】
(2)0.5MのHClを用いて試料のpHを6.7±0.3に調整した。
【0099】
(3)前記溶液を透析チューブ(dialysis tubing)に入れ、精製水を利用して透析を行った。
【0100】
(4)前記溶液を凍結及び凍結乾燥してエステル化コラーゲン粉末を得た。
【0101】
製造例2:架橋されたコラーゲン粉末製造
【0102】
以下の過程により架橋されたコラーゲン粉末を製造した。
【0103】
(1)前記製造例1から製造されたエステル化コラーゲンを精製水に入れて撹拌した。
【0104】
(2)十分に混ざったエステル化コラーゲン溶液にEDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide)を入れた。
【0105】
(3)EDCがエステル化コラーゲンと十分反応できるようによく混ぜた。
【0106】
(4)冷蔵状態で2~3日放置した。
【0107】
(5)架橋化されて固まった架橋されたコラーゲン溶液を精製水に入れて分散させた。
【0108】
(6)前記架橋されたコラーゲン液を放置して層分離が起きたとき、架橋されたコラーゲンのみを取って溶液は捨てた。
【0109】
(7)前記(6)の過程を3~5回繰り返して架橋されたコラーゲンのみを得た。
【0110】
(8)Buffer(sodium phosphate/sodium chloride)に架橋されたコラーゲンを入れ、冷蔵で1~2日放置してBuffer中和させた。
【0111】
(9)Buffer中和の後、精製水で洗浄し、コラーゲンを凍結及び凍結乾燥した。
【0112】
(10)凍結乾燥済みの前記試料をブレンダー(blender)に入れてすりつぶした。
【0113】
(11)前記パウダーをふるいにかけて、200~355μmのサイズの粒子を選別した。
【0114】
製造例3:架橋されたゼラチン
【0115】
エステル化コラーゲン粉末の代わりに、市中に止血剤として販売されるゼラチン粉末(FloSeal Hemostatic Matrix、Baxter A.G.、米国)を利用して架橋されたゼラチンを得た。
【0116】
実験例1:流れ性(Flowability)の確認
【0117】
止血用組成物内のコラーゲン、マンニトール、トロンビンが配置された順序に応じて、希釈液である塩化カルシウム溶液(濃度)と混合時の流れ性の違いを確認するためのものであり、下記の表1のように実施例を用意した。このとき、マンニトール及びトロンビンはパウダータイプで市販されている製品を使用し、エステル化コラーゲンは前記製造例1から得られたものを使用し、架橋されたコラーゲンは前記製造例2から得られたものを使用した。また、流れ性の比較分析のために前記製造例3から得られた架橋されたゼラチンを使用した。
【0118】
【表1】
【0119】
前記表1のように用意された実施例1ないし4及び比較例1は、以下の方法により混合時に必要な力を測定してその結果を表2に示す。
【0120】
1)2つのシリンジを用意し、1つのシリンジは前記実施例1ないし4又は比較例1を前記表1のような配置順序に充填し、残りの1つのシリンジは塩化カルシウム溶液を充填した。
【0121】
2)2つのシリンジを連結した(筒先を互いに回してはめて結合)。
【0122】
3)機械を利用して実施例1ないし4又は比較例1が充填されているシリンジ(male type)を固定させた(つかむ)。
【0123】
4)機械を利用して塩化カルシウム溶液が充填されているシリンジ(female type)のプッシュロッドを押して、実施例1ないし4又は比較例1が入っているシリンジに入れた。
【0124】
5)シリンジの位置を変更して機械に空いたシリンジを固定させた(つかむ)。
【0125】
6)混合された内容物が充填されているシリンジ(male type)のプッシュロッドを押して、混合された内容物を空いたシリンジに入れた。
【0126】
7)4)~5)を繰り返して、混合時に必要な力を測定した。ここで、4)ステップを行う度に必要な力(N1、N3、N5、N7)を測定した。
【0127】
一方、シリンジ内に充填された止血用組成物は固体粉末であるため、高い密度でシリンジに充填されているので、塩化カルシウム溶液を止血用組成物が充填されたシリンジ内に注入する力は逆に止血用組成物を塩化カルシウム溶液が充填されたシリンジ内に注入する力に比べて相対的に大きくならざるを得ない。これに塩化カルシウム溶液を止血用組成物が充填されたシリンジ内に注入するのに必要な力(N1、N3、N5、N7)を測定することにより、混合時の流れ性の差を確認した。
【0128】
【表2】
【0129】
前記表2に示すように、実施例1ないし4は比較例1に比べて相対的に混合に必要な力、すなわち、混合時に発生する圧力の大きさが全て低く、一方、実施例2が実施例1より平均的に混合時に発生する圧力の大きさが小さかった。これにより、トロンビンとマンニトールが注射器の入口側に配置されたことが、混合初期から原材料の混合に必要な圧力を減らし、原材料がうまく混合するように助けることを確認した。
【0130】
それに対して、架橋されたゼラチンが充填された比較例1は、実施例1ないし4とは異なるように発生する圧力が一定のパターンを示していない。架橋されたゼラチンは、混合時に発生する圧力の大きさが架橋されたコラーゲンが充填された実施例1と、実施例2ないし実施例4に比べて平均だけでなく全体的に高く現れ、N5においては少なくは3倍、多くは約10倍程度と大きな差があった。
【0131】
実験例2:SEM(Scanning Electron Microscope)による微細構造の確認
【0132】
前記実験例1を行った後、塩化カルシウム溶液と混合した実施例2、実施例4、及び比較例1をSEMを用いてそれぞれの微細構造イメージを得た。このイメージは図1に示す。
【0133】
前記図1に示すように、実施例2及び実施例4は微細で密集した多孔性膜構造を確認することができ、それに対して、比較例1においては、実施例2と実施例4に比べて多孔性膜構造が少なく確認され、秩序なく凝っている構造が確認された。これにより、実施例2及び実施例4は相対的に比較例1に比べて塩化カルシウム溶液と混合した後、均一な多孔性構造により血液が吸収されて凝集されて止血を助ける多孔性膜構造を有することが確認できた。
【0134】
実験例3:膨張率及び膨張速度の確認
【0135】
本発明による止血用組成物が希釈液との混合後に示す膨張速度を確認するために、まず前記実験例1の表1に記載された方式に従って、実施例2及び比較例1をそれぞれ用意した。用意した実施例2及び比較例1の粒子面積をそれぞれ測定した。その次に、各試料を塩化カルシウム溶液と混合した後、1、2、3、5、10、20、30分の間隔で粒子面積を測定して、これに面積変化率を計算して膨張速度を算出した。この結果を図2に示す。
【0136】
前記図2に示すように、実施例2と比較例1は初期1分以内に急激に膨張して2、3、5、10分まで膨張し続けるが、10分以後は膨張率が飽和状態になることを確認した。また、架橋されたコラーゲンが含まれる実施例2は、比較例1に比べて膨張速度が速く、面積変化が大きいので、架橋されたコラーゲンが架橋されたゼラチンに比べて同一の時間内にさらに速く粒子の膨張による物理的圧迫作用を行うことができるため、止血効果に大きく役立つことを確認した。
【0137】
実験例4:分解度試験
【0138】
本発明による止血用組成物内に含まれたコラーゲンに対する生体分解性及び分解度を測定して生体適合性を有するか、分解性が低くて感染危険性はないかを確認するために分解度試験を行った。まず、前記製造例1から得られたエステル化コラーゲン、前記製造例2から得られた架橋されたコラーゲン、前記製造例3から得られた架橋されたゼラチンを用意して、それぞれの試料の重さを測定した。その次に、各試料をマイクロ遠心チューブ(micro-centrifuge tube)に入れて25units/mLのコラーゲン分解酵素(Collagenase)が含まれた1XPBS buffer 1~2mLを入れていっぱい充填した。試料が入っているチューブを37℃の水槽(water bath)に入れて24~72時間放置した。24、48、72時間経過後に試料を取り出して凍結乾燥した後、重さを測定した。分解度試験の前後に測定した試料の重さを下記の計算式を用いて残った重量比を計算した。その結果を表3に示す。
【0139】
<残った重量比の計算式>
【0140】
残った重量比(%)=分解度試験後の試料の乾燥重量/分解度試験前の試料の乾燥重量*100
【0141】
【表3】
【0142】
架橋されたコラーゲン及びエステル化コラーゲンは72時間以内にコラーゲン分解酵素により試料が完全に分解されたことを確認した。それに対して、架橋されたゼラチンは72時間後に残った重量比が3.3±1.2%で、コラーゲン分解酵素により試料が完全に分解されなかった。従って、架橋されたゼラチンに比べて架橋されたコラーゲンとエステル化コラーゲンが同一の条件で速い分解能を有することを確認して、生体分解性が高く、感染危険性が非常に少ないことを確認した。
【0143】
実験例5:ウサギの腸間膜切断モデルにおける止血性能の比較
【0144】
本発明による止血用組成物の止血能を確認するために前記実験例1と同一に実施例2及び比較例1を用意した。止血能の比較は、ウサギの腸間膜切断モデルを用いた。腸間膜を切断して出血を誘導した後、実施例2又は比較例1を適用した後、30秒間止血圧迫を試みて出血の有無を確認し、出血が起きた場合、追加30秒の止血圧迫を繰り返した。90秒以内に止血が成功する確率と止血にかかる時間を測定してその結果を図3に示す。
【0145】
前記図3に示すように、実施例2は、15匹の全てのウサギが90秒以内に止血に成功した反面、比較例1は15匹のウサギのうち10匹のみが90秒以内に止血が完了した。また、止血にかかる時間において、実施例2は64±4.957秒である反面、比較例1は86±8.718秒と測定され、t-testの結果、統計的有意性が確認された(p<0.05)。これにより、本発明による止血用組成物を利用する場合、止血成功率が高く、止血時間が短縮されるので、卓越した止血能を有することを確認した。
【0146】
実験例6:豚上大静脈損傷モデルにおける体内分解度及び炎症反応の比較
【0147】
本発明による止血用組成物の体内分解度及び炎症反応の程度を確認するために、前記実験例1と同一に実施例2及び比較例1を用意した。ブタの上大静脈を部分切開して出血を誘導した後、実施例2又は比較例1を適用して止血した。実験の1週間後、豚を犠牲にして検体を回収し、H&E染色により残っている止血組成物の量と炎症反応を比較した。その結果を下記の表4に示し、H&E染色後の組織のイメージは図4に示した。
【0148】
【表4】
【0149】
(表4の+はmild(軽い、若干)、++はmoderate(普通)を意味する。)
前記表4に示すように、ブタの上大静脈損傷モデルにおいて使用された止血剤組成物の残余物は、実施例2は若干残った程度であり、比較例1は普通程度残った状態であり、炎症反応もまた残余物の量に比例して実施例2が弱い炎症反応、比較例1が通常の炎症反応を示した。
【0150】
また、前記図4は、それぞれ実施例2及び比較例1のH&E染色後の組織のイメージであり、実施例2の残余物の量が比較例1の残余物の量より比較的少ないことが確認でき、残余物の量に比例して炎症細胞の数も実施例2が比較例1より少ないことが分かる。これは、前記実験例4の結果と同様に、速い分解能を有する組成物が生体分解性が高く、炎症反応などの感染危険性が少ないことを示す。これによって、本発明による止血用組成物を利用する場合、生体適合性を向上させ、副作用を減らし、止血剤により新しく発生する感染危険性を低くすることができる。
【0151】
実験例7:白鼠部分腎切除モデルにおける止血剤組成物の生体適合性の確認
【0152】
本発明による止血用組成物の生体適合性を確認するために、前記実験例1と同一に実施例2及び比較例1を用意した。白鼠の腎臓の一部を切除して出血を誘導した後、実施例2又は比較例1を切断面に適用して止血した。実験の1週間後、白鼠を犠牲にして検体を回収し、病理学的検鏡により止血剤組成物の違いによる生体適合性を比較確認して下記の表5に示す。
【0153】
【表5】
【0154】
前記表5において、等級は以下の基準に応じて付けられた。
0:no change(何の変化もない)
1:minimal(極小の変化)
2:mild(軽い又は若干の変化)
3:moderate(普通)
4:marked(目立った変化)
5:maximum(最高の又は極限の変化)
【0155】
前記表5に示すように、比較例1を適用した白鼠個体においては術後に組織変形と出血が観察されたが、実施例2を適用した白鼠個体においては術後組織変形や術後出血などが観察されなかった。線維芽細胞の活性度や線維芽細胞の増殖による線維化は、比較例1を適用した個体においてより大きく現れ、細胞間出血も比較例1において大きく現れた。特に、比較例1を適用した腎切除面の周囲の脂肪組織において肉芽腫及び炎症反応が大きく現れた。
【0156】
一方、病理学的に有害であることを示す指標であるdestruction scoreは、実施例2において平均17.5を比較例1において平均26.5であることが分かった。これにより、実施例2の生体適合性が比較例1より優れていることが分かる。
図1
図2
図3
図4