(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】座の構造、及び椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/02 20060101AFI20230209BHJP
A47C 3/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A47C7/02 Z
A47C3/04
(21)【出願番号】P 2018197784
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】野溝 渉
(72)【発明者】
【氏名】酒井 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 和幸
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-135768(JP,A)
【文献】特開2001-128805(JP,A)
【文献】特開2014-097179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/02
A47C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板と当該座板に支持されるクッション部材と当該クッション部材を被覆する表皮材とを有して前記表皮材の周縁部に備えられる締付け紐が引き締められることによって前記周縁部が絞られて前記表皮材が取り付けられる座の構造であり、前記座板は
前記締付け紐で引き締められた後に前記表皮材で覆われていない裏面側を露出させて用いられるものであり、フレームの回動支軸に対して回動可能に組み付けられる回動軸受け部を
前記座板の前記裏面側に備え、前記座板の
前記裏面側には傾斜面が形成されると共に前記傾斜面の途中には、前記締付け紐の引き締めに伴って絞られて次第に窄められる前記表皮材の前記周縁部を入り込ませて収容して前記周縁部及び前記締付け紐を外観に露出させないように隠す収容溝が形成され、かつ前記収容溝は前記傾斜面において開口し且つ前記傾斜面から水平方向内向きに凹む態様で前記座板を一廻りするように環状に形成され、前記締付け紐を通す前記表皮材の前記周縁部の開口部を除き前記締付け紐のすべてが露出せず、前記締付け紐全体を前記表皮材の周縁部ごと前記収容溝が収容することを特徴とする座の構造。
【請求項2】
前記収容溝と連通して前記締付け紐の端部が押し込まれて収容され得る貫通孔または凹部の端部収容部が更に設けられることを特徴とする請求項1記載の座の構造。
【請求項3】
前記座の前記裏面側が前後左右の四方の傾斜面を有する形態に形成されることを特徴とする請求項1記載の座の構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載の座の構造が適用されて表皮材が座へと取り付けられている座を備えることを特徴とする椅子。
【請求項5】
前記座板を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造を成す他の椅子と水平方向にスタッキングし得るように構成されていることを特徴とする請求項4記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座の構造及び椅子に関する。さらに詳述すると、本発明は、表面が表皮材で覆われる座に適用して好適な構造、及び、そのような構造が適用された構成を含む椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、座シェルや座板の上面に載置されたクッション部材の表面が表皮材(「くるみ」とも呼ばれる)で覆われて構成される椅子の座が存在する(特許文献1)。
【0003】
表皮材によってクッション部材の表面を覆う態様として、クッション部材の上面に重ねた表皮材の周縁部を座シェルや座板の下面側に若干折り返し、表皮材の縁部に一廻り形成された袋状縁部に挿通させた締付け紐を引っ張って締め上げて緊張させることによってクッション部材の表面と座シェルや座板の周端部とをくるんで被覆するようにする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、座シェルや座板の下面側で表皮材の縁部を一廻りする締付け紐を締め上げて表皮材の周縁部を窄めるようにして取り付ける場合、当該表皮材の周縁部や締付け紐が座シェルや座板の下面側で露出したままでは、表皮材の周縁部や締付け紐が何かに引っ掛かり引っ張られることによって周縁部の締め付けが弛んでしまったり、見栄えを損なったりするという問題がある。また、座シェルや座板の下面側に位置する表皮材の周縁部や締付け紐を下方から覆い隠すために下面側にカバー部材を更に取り付けるようにすると、部品点数が多くなるという問題や、取り付けや組み立てにかかる手間が増大するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、カバー部材などの追加的な他の部品を用いることなく座を覆う表皮材の周縁部を露出させないようにすることができる座の構造、及び、そのような座の構造が適用された構成を含む椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の座の構造は、座板と当該座板に支持されるクッション部材と当該クッション部材を被覆する表皮材とを有して表皮材の周縁部に備えられる締付け紐が引き締められることによって周縁部が絞られて表皮材が取り付けられる座の構造であり、座板は締付け紐で引き締められた後に表皮材で覆われていない部分を露出させて用いられるものであり、フレームの回動支軸に対して回動可能に組み付けられる回動軸受け部を裏面側に備え、座板の裏面側には傾斜面が形成されると共に傾斜面の途中には、締付け紐の引き締めに伴って絞られて次第に窄められる前記表皮材の前記周縁部を入り込ませて収容して周縁部及び締付け紐を外観に露出させないように隠す収容溝が形成され、かつ収容溝は傾斜面において開口し且つ傾斜面から水平方向内向きに凹む態様で座板を一廻りするように環状に形成され、締付け紐を通す表皮材の周縁部の開口部を除き締付け紐のすべてが露出せず、締付け紐全体を表皮材の周縁部ごと収容溝が収容するようにしている。
【0008】
したがって、この座の構造によると、締付け紐が引き締められることによって座を被覆する表皮材の周縁部が絞られて(言い換えると、窄められて)収容溝に収容され、周縁部及び締付け紐が外観に露出しないように隠される。
【0009】
本発明の座の構造は、収容溝と連通して締付け紐の端部が押し込まれて収容され得る貫通孔または凹部の端部収容部が更に設けられるようにしても良い。この場合には、締付け紐を固定するための部材や結び目などが嵩張る場合でもそれらも確実に収容される。
【0010】
本発明の座の構造は、座の裏面側が前後左右の四方の傾斜面を有する形態に形成されるようにしても良い。この場合には、表皮材の周縁部が絞られながら(言い換えると、窄められながら)傾斜面上を滑らかに移動して収容溝へとスムーズに入り込んで収容される。
【0011】
また、本発明の椅子は、上述の座の構造が適用されて表皮材が座板へと取り付けられている座を備えるようにしている。したがって、この椅子によると、上述の座の構造の作用が奏される椅子が実現される。
【0012】
本発明の椅子は、座板を跳ね上げ位置に保持した状態で同一構造を成す他の椅子と水平方向にスタッキングし得るように構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の座の構造や椅子によれば、座を被覆する表皮材の周縁部を収容溝に収容して周縁部及び締付け紐を外観に露出させないように隠すことができるので、追加的な部品を用いること無く、椅子を使用する際の快適性の向上や良好な外観の創出が可能になる。
【0014】
本発明の座の構造や椅子は、端部収容部が更に設けられるようにした場合には、締付け紐を固定するための部材や結び目なども確実に収容することができるので、椅子を使用する際の快適性の向上や良好な外観の創出を一層確実に達成することが可能になる。
【0015】
本発明の座の構造や椅子は、座の裏面側が傾斜面を有する形態に形成されるようにした場合には、表皮材の周縁部を傾斜面上を滑らかに移動させて収容溝へとスムーズに入り込ませて収容することができるので、座の組み立てを容易に且つ効率的に行うことが可能になる。
【0016】
本発明の椅子は、水平方向にスタッキングし得るように構成されるようにした場合には、スタッキングする際に視認され易くなる座板の裏面の外観が良好であるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る座の構造の実施形態の一例を含む椅子を示す正面図で、座が使用位置にある状態を示す。
【
図4】
図1の椅子の座が跳ね上げ位置にある状態でスタッキング状態を示す側面図である。
【
図5】
図1の椅子の座が跳ね上げ位置にある状態でスタッキング状態を示す左前方上方斜視図である。
【
図9】表皮材が取り付けられる際の状態を説明する座の底面図である。
【
図10】表皮材が取り付けられた状態を説明する座の前後方向に沿う縦断面図である。
【
図14】座板と結合部材とが組み合わされた状態の座板の前後方向に沿う縦断面図である。
【
図15】座板と結合部材とが組み合わされる状態を説明する図である。
【
図16】座板と結合部材とが組み合わされる状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る座の構造の実施形態の一例が会議場などで使用され得る椅子の座の組み立てにおいて用いられている場合を例に挙げる。
【0019】
図1乃至
図16に、本発明に係る座の構造の実施形態の一例を含む椅子を示す。なお、本明細書において、前後左右の方向は着座者を中心に定められるものとし、「前」又は「前方」とは座において椅子及び当該椅子の座に座った着座者にとっての「前」又は「前向き」であり、「後(うしろ)」又は「後方」とは同様に椅子及び着座者にとっての「後ろ」又は「後向き」である。また、前後方向と水平面内において直交する方向が座において椅子及び着座者にとっての左右方向であり、椅子の幅方向である。さらに、「上」及び「下」は座において椅子及び着座者にとっての上及び下であり、鉛直面内の上と下である。
【0020】
(全体構成)
本実施形態の座の構造が適用されている椅子は、金属フレームを主体に構成される脚フレーム2(具体的には、左右二本の前脚フレーム2A,2A並びに左右二本の後脚フレーム2B,2B)と、脚フレーム2の上端に支持される左右一対の肘掛け部3,3と、左右の後脚フレーム2B,2Bの上端に支持される背凭れ4と、脚フレーム2に支持される回動支軸5と、回動支軸5を介して使用位置と跳ね上げ位置との間で回動可能に支持される座1とを備える。
【0021】
本実施形態の座の構造が適用されている椅子は、また、座1を跳ね上げ位置に保持した状態で、同一構造を成す同じ種類の他の椅子と水平方向にスタッキング(「前後方向にネスティング」とも言う)し得るように構成される(
図4,
図5)。
【0022】
座1は、座板10と、当該座板10の表(おもて)面側(別言すると、使用位置における上面側)に取り付けられて支持されるクッション部材12と、当該クッション部材12の表面を被覆するための表皮材13(
図1乃至
図5では図示していない)とを有する。
【0023】
本発明の説明では、座板10について、座1が使用位置であるときの姿勢(
図1乃至
図3)を基準として、使用位置の姿勢において上面になる面を「表(おもて)面」と呼ぶと共に下面になる面を「裏面」と呼ぶ。
【0024】
脚フレーム2は、左右二本の前脚フレーム2A,2Aと左右二本の後脚フレーム2B,2Bとの四本のフレームによって構成される。
【0025】
左右の前脚フレーム2A,2Aは、金属製の丸型のパイプ材によって形成されて上端側が下端側よりも後ろ側に位置するように若干後傾した姿勢で配設され、下端にキャスタ2cを備える。
【0026】
左右の後脚フレーム2B,2Bは、金属製の丸型のパイプ材によって形成されて上端側が下端側よりも前側に位置するように若干前傾した姿勢で配設され、下端にキャスタ2cを備える。
【0027】
椅子同士の水平方向におけるスタッキング(別言すると、前後方向におけるネスティング)が可能であるようにするため、左の前脚フレーム2Aと右の前脚フレーム2Aとの正面視における離間幅は、左の後脚フレーム2Bと右の後脚フレーム2Bとの正面視における離間幅よりも広くなるように調節される。
【0028】
各脚フレーム2A,2Bの上部は、肘掛け部3及び背凭れ4を支持するための支持部として機能する。
【0029】
図に示す例では、肘掛け部3と背凭れ4とが、樹脂により、左右の肘掛け部3,3各々の後端と背凭れ4の左右両端それぞれの下端部とが連接して一体のものとして形成される。
【0030】
また、左右の肘掛け部3,3各々の前端から連続/連接して前脚連結部3a,3aが一体のものとして形成され、さらに、背凭れ4の左右両端それぞれの下端から連続/連接して後脚連結部4a,4aが一体のものとして形成される。
【0031】
左右の前脚フレーム2A,2Aの上端部と左右の前脚連結部3a,3aとがそれぞれ連結されると共に左右の後脚フレーム2B,2Bの上端部と左右の後脚連結部4a,4aとがそれぞれ連結され、脚フレーム2の上端部に、一体に形成された肘掛け部3及び背凭れ4が装着される。
【0032】
右側の前脚フレーム2Aと後脚フレーム2Bとに対し、及び、左側の前脚フレーム2Aと後脚フレーム2Bとに対し、水平面に沿い且つ概ね前後方向に沿って配設されて前端が前脚フレーム2Aに連結されると共に後端が後脚フレーム2Bに連結される架設フレーム7が設けられる。したがって、架設フレーム7は、左右一対のものとして設けられる。
【0033】
架設フレーム7の前端及び後端は、前脚フレーム2Aの後面や後脚フレーム2Bの前面に対して溶接によって連結される。
【0034】
左右一対の架設フレーム7,7に対し、前側に座板受軸6が設けられ、後ろ側に回動支軸5が設けられる。
【0035】
座板受軸6は、左右方向に沿って配設され、左右両端が左右一対の架設フレーム7,7にそれぞれ連結されてこれら左右一対の架設フレーム7,7の間に掛け渡されて設けられる。
【0036】
回動支軸5は、座板受軸6の後方位置に於いて左右方向に沿って配設され、左右両端が左右一対の架設フレーム7,7にそれぞれ連結されてこれら左右一対の架設フレーム7,7の間に掛け渡されて設けられる。
【0037】
回動支軸5及び座板受軸6の左右両端は、架設フレーム7の内側面に対して溶接によって連結される。
【0038】
回動支軸5及び座板受軸6は、どちらも、左右両側の傾斜部5a,5a/6a,6aとこれらに挟まれる水平部5b/6bとが連続するように一本の金属製の丸型のパイプ材が折り曲げられて一体に形成される。
【0039】
回動支軸5及び座板受軸6は、どちらも、左右方向における中間部分に設けられて左右方向に沿って水平に延びる水平部5b/6bと、当該水平部5b/6bの左右両端それぞれと連続/連接して外方に向かって斜め上方に向けて延びる左右の傾斜部5a,5a/6a,6aを有するものとして形成される。
【0040】
回動支軸5及び座板受軸6は、どちらも、左右一対の架設フレーム7,7の間に、平面視において左右方向に沿うように、且つ、正面視において中間部分の水平部5b/6b部分が下方に凹むように配設される。すなわち、回動支軸5及び座板受軸6は、どちらも、正面視において凹状を成すように形成されて配設される。
【0041】
回動支軸5及び座板受軸6は、どちらも、座板10の裏面側の形状に沿うように、凹状を成すように形成される。
【0042】
回動支軸5は、水平部5bにおいて、座1を、使用位置と跳ね上げ位置との間で回動可能であるように支持する。
【0043】
座板受軸6は、水平部6bにおいて、使用位置における座1の裏面(具体的には、座板10の裏面側に形成される当接部11)と当接して座1を下方から受け止めて支持する。
【0044】
(座の構造)
本実施形態の座の構造は、座板10と当該座板10に支持されるクッション部材12と当該クッション部材12を被覆する表皮材13とを有して表皮材13の周縁部に備えられる締付け紐14が引き締められることによって周縁部が絞られて表皮材13が取り付けられる座の構造であり、締付け紐14の引き締めに伴って絞られて次第に窄められる表皮材13の周縁部を入り込ませて収容して前記周縁部及び締付け紐14を外観に露出させないように隠す収容溝15が座1の裏面側に設けられるようにしている。
【0045】
座板10の裏面側に、表皮材13の周縁部及び締付け紐14を収容して仕舞い込むための収容溝15が設けられる。
【0046】
図に示す例では、座板10の裏面側が前後左右の四方から中央に向かって下向きに出張る(別言すると、隆起する)形態に形成され、前後左右の四方から中央に向かう傾斜面それぞれの途中に、前記傾斜面において開口し且つ前記傾斜面から水平方向内向きに凹む態様で収容溝15が形成される。
【0047】
収容溝15は、座板10の裏面側において、座板10にとっての前後左右を一廻り連通する凹みとして形成される。
【0048】
収容溝15の態様は、座板10の裏面側において当該座板10の前後左右の四方の外方に向けて開口すると共に内方に向けて凹む態様であれば、図に示す例の形態には限定されない。
【0049】
例えば、座板10の裏面側が前後左右の四方の傾斜面を有して当該傾斜面の途中に形成される態様でなくても良く、座板10が平板状の上側板部と平板状の下側板部とが上下方向において対向すると共に平面視においてこれら上側板部や下側板部よりも小さい狭間部がこれら上側板部と下側板部とによって上下方向において挟まれるように形成され、これら上側板部と下側板部との間の狭間部の厚さ分の間隙として座板10を一廻りするように収容溝15が形成されるようにしても良い。
【0050】
座板10には、また、収容溝15の後端位置において、収容溝15としての空間と連通するように端部収容部10aが形成される。
【0051】
図に示す例では、端部収容部10aは、座板10を上下方向に貫通する貫通孔として形成されるようにしている。しかしながら、端部収容部10aの態様は、締付け紐14の端部が押し込まれて収容され得る態様であれば貫通孔に限定されるものではなく、収容溝15としての空間と連通する凹部として形成されるようにしても良い。
【0052】
表皮材13は、周縁部に紐保持部13aが形成され、当該紐保持部13aの一部が途切れて開口13b,13bが形成される。図に示す例では、開口13b,13bは、紐保持部13aの後端部に形成される。
【0053】
図に示す例では、紐保持部13aは、テープ状の布地やプラスチックシートなどのテープ材が丸められて形成される筒状部材が表皮材13の周縁部に縫い付けられることによって設けられる。紐保持部13aは、具体的には例えば、テープ材の長手方向に沿う両側縁が合わせられて閉じられて筒状に形づくられてから両側縁が表皮材13の周縁寄りの位置に縫い付けられることによって設けられる。
【0054】
締付け紐14は、紐保持部13a内を挿通すると共に両端部分14a,14aが開口13b,13bから外部に引き出されて備えられる。なお、締付け紐14は、例えば、紐保持部13aとしての筒状部材が表皮材13に縫い付けられる際、テープ材が丸められながら供給される際にその内方に締付け紐14が通過させられつつ一緒に供給されることにより、筒状部材内に、即ち紐保持部13a内に、長手方向において移動自在に閉じ込められて備えられる。
【0055】
紐保持部13aの態様は、表皮材13の周縁部に締付け紐14を保持し得る態様であれば、図に示す例の形態には限定されない。
【0056】
例えば、紐保持部13aは、表皮材13の周縁部分が折り返された上で周縁が縫い付けられることによって形成されるようにしても良い。
【0057】
座板10の表面側にクッション部材12が載置された状態でクッション部材12の表側から表皮材13が被せられ、表皮材13の周縁部分(尚、紐保持部13aを含む)が座板10の裏面側に回り込まされる。このとき、表皮材13の周縁部の紐保持部13aは、座板10の裏面側において、収容溝15の開口と座板10の周縁との間に位置させられる。すなわち、収容溝15の開口が、表皮材13の内部に入らないように、表皮材13の外部に在るように、紐保持部13aは収容溝15の開口と座板10の周縁との間に位置させられる。
【0058】
表皮材13がクッション部材12の表面,クッション部材12の側面及び座板10の側端,並びに座板10の裏面の周縁部を覆って包み込んでいる状態で、座板10の裏面側において紐保持部13aの開口13b,13bから外部に引き出されている締付け紐14の両端部分14a,14aが引っ張られて引き締められる。
【0059】
表皮材13の周縁部分が座板10の裏面側に回り込まされてから締付け紐14が引き締められることにより、表皮材13が座板10及びクッション部材12をくるんだ状態で表皮材13の周縁部が絞られる(言い換えると、窄められる)。
【0060】
表皮材13の周縁部は、締付け紐14が引き締められて絞られる(言い換えると、窄められる)に従って収容溝15へと入り込み、締付け紐14が十分に引き締められたときには少なくとも紐保持部13aが外観上現れないように収容溝15内に入り込む。
【0061】
図に示す例のように座板10の裏面側が傾斜面を有する形態に形成される場合には、締付け紐14が引き締められると、表皮材13の周縁部が絞られながら(言い換えると、窄められながら)傾斜面上を滑らかに移動して収容溝15へとスムーズに入り込むようになる。
【0062】
締付け紐14は、十分に引き締められた状態で、紐保持部13aの開口13b,13bから外部に引き出されている部分のうちの開口13b,13bの近傍位置において、例えば、U字形やO字形の金属片がかしめられて相互に固定されたり、或いは、結ばれて相互に固定されたりする。これにより、締付け紐14の引き締め状態が維持されて締付け紐14による締め付け/締め上げ状態が保持される。
【0063】
締付け紐14のうちの紐保持部13aの開口13b,13bから外部に引き出されている部分や、これらの部分同士を相互に固定するためのかしめ部材や結び目などは、収容溝15と連通するように座板10に形成される端部収容部10aに収容される。
【0064】
ここで、収容溝15はデザイン面ではできる限り細く形成されることが望まれる一方で締付け紐14を固定するためのかしめ部材や結び目などの寸法が締付け紐14が挿通している状態の紐保持部13aの寸法よりも大きい場合も考えられる。
【0065】
この場合、締付け紐14が挿通している状態の紐保持部13aが擦れ擦れで入り込むことができる寸法で収容溝15が形成されるようにしても、端部収容部10aが設けられることにより、当該端部収容部10aへとかしめ部材や結び目などを収容することができ、締付け紐14の端部も外観上現れないように隠すことができる。ただし、締付け紐14を固定するためのかしめ部材や結び目などの寸法がそれほど大きくない場合には締め付け紐14の端部も収容溝15へと入り込ませて一緒に収容することができる場合もあり、そのような場合には端部収容部10aが設けられないようにしても良い。
【0066】
以上のように構成された座の構造や椅子によれば、締付け紐14が引き締められることによって座1を被覆する表皮材13の周縁部が絞られて(言い換えると、窄められて)収容溝15に収容され、前記周縁部及び締付け紐14を外観に露出させないように隠すことができる。このため、追加的な部品を用いること無く、椅子を使用する際の快適性の向上や良好な外観の創出が可能になる。
【0067】
なお、座の構造に関する上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
【0068】
例えば、上述の実施形態では座の構造の実施形態の一例が
図1などに全体構造を示す椅子の座1の組み立てにおいて用いられている場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る座の構造が適用され得る座や椅子は実施形態として図に示される座1や椅子に限られるものではなく、種々の形態を備える座や椅子に対して本発明は適用され得る。
【0069】
また、上述の実施形態では座板10にクッション部材12が載置されるようにしているが、座板10にクッション部材12が載置されることは本発明において必須の構成ではない。座がクッション部材を含まず、表皮材が、座を構成する座板或いは座そのものとしての座板を被覆する場合にも本発明は適用可能である。
【0070】
(座の回動部構造)
本実施形態の座の回動部構造は、座1の裏面側に形成される回動軸受部20に、回動支軸5と着脱可能に係合する係合爪部22が設けられると共に、回動軸受部20と組み合わせられて回動支軸5に対して座1を回動可能に取り付ける結合部材30に、回動支軸5の表面へと押し付けられて抵抗を発揮する摺動当接部35が形成されるようにしている。
【0071】
座板10の裏面側の、前側に当接部11が形成され、後ろ側に回動軸受部20が形成される。
【0072】
当接部11は、左右方向に沿い且つ座板受軸6の周面の形状(言い換えると、周面の湾曲の程度)に合わせて凹む湾曲凹部11aを有するものとして形成される。
【0073】
当接部11は、座1が跳ね上げ位置から使用位置へと回動する際に使用位置において座板受軸6の水平部6bへと当接し、座1ががたつくことがなく安定して使用位置を維持することができるように座板受軸6の水平部6bによって下方から受け止められて支持される。
【0074】
回動軸受部20は、座板10の裏面から突出する堤状本体部21と、当該堤状本体部21から延出する係合爪部22と、堤状本体部21に対して形成される嵌合穴部23とを有する。
【0075】
堤状本体部21は、座板10の裏面から、左右方向に沿って(座1が使用位置のときの姿勢を基準として)下向きに突出する堤(つつみ)状に形成される。以下、各部の向きは、座1が使用位置のときの姿勢を基準とする。
【0076】
係合爪部22は、堤状本体部21の後面から後ろ向きに延出する態様で形成される。図に示す例では、左右方向において相互に離間して並ぶ一対の係合爪部22,22が設けられるようにしている。しかしながら、係合爪部22の個数は、二個に限定されるものではなく、一個でも良く、或いは、三個以上でも良い。
【0077】
係合爪部22の先端部に凸部22aが形成され、座板10が回動軸受部20を介して回動支軸5へと組み付けられる際に当該凸部22aが回動支軸5を乗り越えて係止することによって回動支軸5に対して回動軸受部20が(延いては、座板10が)着脱可能な程度に係合する。
【0078】
嵌合穴部23は、堤状本体部21の後面において開口し且つ後面から前向きに穿たれる態様で形成される。図に示す例では、左右一対の係合爪部22,22のそれぞれを挟むように左右方向において相互に離間して並ぶ三個の嵌合穴部23が設けられるようにしている。しかしながら、嵌合穴部23の個数は、三個に限定されるものではなく、一個若しくは二個でも良く、或いは、四個以上でも良い。
【0079】
座板10には、また、左右方向において並ぶ三個の嵌合穴部23のうちの左右両端の嵌合穴部23,23それぞれの後方位置に、上下方向に穿たれてねじ穴25が設けられる。
【0080】
結合部材30は、回動軸受部20と組み合わされて取り付けられることにより、回動軸受部20が回動支軸5と係合する状態を保持すると共に、回動支軸5に対する座板10の回動に対して抵抗を付与するためのものである。
【0081】
結合部材30は、左右方向を長手方向とする本体部31と、当該本体部31から延出する嵌合凸部32と、回動軸受部20の係合爪部22が入り込む穴隙部33と、回動支軸5が入り込む軸貫通部34と、摺動当接部35とを有する。
【0082】
嵌合凸部32は、座板10側の回動軸受部20に設けられる嵌合穴部23へと嵌合するものであり、本体部31の前面から前向きに延出する態様で形成される。図に示す例では、回動軸受部20の嵌合穴部23の位置及び個数に合わせて左右方向において相互に離間して並ぶ三個の嵌合凸部32が設けられる。
【0083】
穴隙部33は、座板10側の回動軸受部20の係合爪部22が入り込む空間であり、本体部31の前面から軸貫通部34への進入を可能にする空隙として形成される。
【0084】
軸貫通部34は、結合部材30の長手方向(即ち、左右方向)に沿って回動支軸5を入り込ませる空間として左右方向に沿って形成される。
【0085】
摺動当接部35は、軸貫通部34へと向けて露出する摺動面35aを有するものとして、左右方向において並ぶ三個の嵌合凸部32のうちの左右両端の嵌合凸部32,32それぞれの後方位置に設けられる。
【0086】
図に示す例では摺動当接部35はリブ状に形成されるようにしているが、摺動当接部35の態様は図に示す例の形態には限定されない。具体的には例えば、摺動当接部35は、面状に形成されるようにしても良い。
【0087】
結合部材30の左右端寄りの位置のそれぞれに形成される摺動当接部35が回動支軸5の表面へと積極的に押し付けられるように形成され、回動支軸5に対する回動軸受部20の(延いては、座板10の)回動に対して摺動当接部35の当接による抵抗が発揮される。
【0088】
結合部材30の左右端寄りの位置のそれぞれに形成される摺動当接部35,35各々の後方位置に、上下方向に穿たれてねじ穴38が設けられる。
【0089】
すなわち、図に示す例では、嵌合凸部32,摺動当接部35,及びねじ穴38が前後方向に沿って並んで配設される。
【0090】
座板10の回動支軸5への取り付けは、結合部材30が回動支軸5の水平部5bへと押し当てられた状態で回動軸受部20が組み付けられることによって行われる。
【0091】
具体的には例えば
図15や
図16に示すように、嵌合凸部32を上側にした姿勢で結合部材30が回動支軸5の前面側へと押し当てられた状態で起立姿勢の座板10が上方から降ろされる。
【0092】
そして、座板10側の回動軸受部20の係合爪部22が結合部材30の穴隙部33へと入り込み、軸貫通部34へと進入して係合爪部22の凸部22aが回動支軸5を乗り越えて当該回動支軸5へと係合する。
【0093】
また、結合部材30の嵌合凸部32が座板10側の回動軸受部20の嵌合穴部23へと入り込んで嵌合する。
【0094】
結合部材30の左右のねじ穴38,38それぞれからねじ(図示していない)が差し入れられて座板10側の左右のねじ穴25,25へと至ってねじ止めされることにより、回動軸受部20と結合部材30とが組み合わせられて結合され、これによって座板10が回動支軸5に対して取り付けられる。
【0095】
回動支軸5に対して結合部材30と回動軸受部20とが組み合わされて取り付けられた状態で、図に示す例では、結合部材30の摺動当接部35が回動支軸5の表面へと押し付けられて回動支軸5に対する回動軸受部20の(延いては、座板10の)回動に対して摺動当接部35の摺動面35aの当接による抵抗が発揮される。
【0096】
ここで、摺動当接部35の形態及び寸法を適切に設定することにより、ねじ(図示していない)が最後までねじ込まれて締め付けられた状態で座1の回動に対して発揮される抵抗感が適度な大きさになるよう調整することができる。このため、組立の際にねじの締め付け具合を加減することによって抵抗の発揮のされ方を調節するという手間を掛ける必要が無い。
【0097】
また、図に示す例では嵌合凸部32,摺動当接部35,及びねじ穴38が前後方向に沿って並んで配設されるようにしているため、ねじ(図示していない)が最後までねじ込まれて締め付けられた状態において嵌合凸部32とねじとに挟まれる摺動当接部35へと働く拘束力が安定するので回動支軸5への摺動当接部35の摺動面35aの当接によって発揮される抵抗力の振れ幅が無く若しくは殆ど無く、予定の抵抗力を正確に発揮させることが可能になる。
【0098】
なお、図に示す例では、左右方向において並ぶ三個の嵌合凸部32のうちの中央の嵌合凸部32の後方位置に設けられる補助部36は回動支軸5の表面へと積極的に押し付けられるようには形成されず、したがって回動支軸5に対する回動軸受部20の(延いては、座板10の)回動に対する補助部36の当接による抵抗は発揮されない。具体的には例えば、回動支軸5の表面と補助部36の軸貫通部34へと向けて露出する面36aとの間に0.2~0.4 mm 程度の隙間が形成されるようにすることにより、回動支軸5と補助部36との間には抵抗が発揮されないようにすることができる。
【0099】
ただし、座板10の回動に対して適切な抵抗を発揮させるようにするため、必要に応じ、補助部36も回動支軸5の表面へと積極的に押し付けられるように形成されて座板10の回動に対して補助部36の面36aの当接による抵抗が発揮されるようにしても良い。
【0100】
以上のように構成された座の回動部構造や椅子によれば、座1を取り付けるための部材30に抵抗を発揮する摺動当接部35が形成されるようにしているので、追加的な部品を使うこと無く且つ座1の取り付け自体に必要な組み立て工程と同時に座1の回動に対して抵抗を発揮する仕組みを組み込むことができる。このため、座の組み立ての効率化を図り、座の回動部構造としての有用性や汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0101】
なお、座の回動部構造に関する上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
【0102】
例えば、上述の実施形態では座の回動部構造の実施形態の一例が
図1などに全体構造を示す椅子の座1の回動機構として適用される場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る座の回動部構造が適用され得る座や椅子は実施形態として図に示される座1や椅子に限られるものではなく、種々の形態を備える座や椅子に対して本発明は適用され得る。
【符号の説明】
【0103】
1 座
2 脚フレーム
2A 前脚フレーム
2B 後脚フレーム
2c キャスタ
3 肘掛け部
3a 前脚連結部
4 背凭れ
4a 後脚連結部
5 回動支軸
5a 傾斜部
5b 水平部
6 座板受軸
6a 傾斜部
6b 水平部
7 架設フレーム
10 座板
10a 端部収容部
11 当接部
11a 湾曲凹部
12 クッション部材
13 表皮材
13a 紐保持部
13b 開口
14 締付け紐
14a 端部分
15 収容溝
20 回動軸受部
21 堤状本体部
22 係合爪部
22a 凸部
23 嵌合穴部
25 ねじ穴
30 結合部材
31 本体部
32 嵌合凸部
33 穴隙部
34 軸貫通部
35 摺動当接部
35a 摺動面
36 補助部
36a 露出する面
38 ねじ穴