(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ベルトクランプ
(51)【国際特許分類】
B65D 63/12 20060101AFI20230209BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20230209BHJP
B65D 63/10 20060101ALI20230209BHJP
F16L 3/137 20060101ALI20230209BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B65D63/12 Z
F16B2/08 E
B65D63/10 D
F16L3/137
H02G3/32
(21)【出願番号】P 2019118282
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】徳永 睦
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0104347(US,A1)
【文献】登録実用新案第3129190(JP,U)
【文献】特開2002-252914(JP,A)
【文献】特開平08-200317(JP,A)
【文献】実開昭62-192682(JP,U)
【文献】特開2003-324827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/12
F16B 2/08
B65D 63/10
F16L 3/137
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な索体の外周に、索体の軸方向に直交する周方向に巻回する帯状のベルト部と、前記ベルト部が挿通されるベルト挿通部を有するバックル部と、索体に軸方向の引っ張り力が作用した際に、前記ベルト部と索体とが相対的に索体の軸方向へ横ずれすることを防止する横ずれ防止機構と、を備えるベルトクランプであって、
前記横ずれ防止機構が、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において前記ベルト部と索体との間に介在する介在物によって構成されており、
前記介在物は、平坦面と、該平坦面に対向する傾斜面とを有することで、前記介在物の肉厚が、前記ベルト部の標準巻回位置から索体の軸方向外方へ徐々に大きくなって
おり、
前記ベルト部によって索体を巻回した状態において、前記平坦面が索体に臨み、前記傾斜面が前記ベルト部に臨んでいる、ベルトクランプ。
【請求項2】
前記横ずれ防止機構が前記バックル部に設けられており、前記バックル部の一部が前記介在物を兼ねている、請求項1に記載のベルトクランプ。
【請求項3】
前記ベルト挿通部を画成する周壁の一部が前記介在物を兼ねており、
前記横ずれ防止機構として、前記周壁の肉厚を索体の軸方向に徐変している、請求項2に記載のベルトクランプ。
【請求項4】
前記横ずれ防止機構が、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において、前記ベルト部によって形成される輪の中に索体と共に配される横ずれ防止部材に形成されている、請求項1に記載のベルトクランプ。
【請求項5】
前記横ずれ防止部材は、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において、索体の軸方向に肉厚が徐変する部位を少なくとも有する、請求項4に記載のベルトクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスやケーブル等の索体を結束するためのベルトクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスやケーブル等の長尺な索体を所定ルートに配索する際は、複数本を1つに纏めて所定箇所に固定するため、ベルトクランプによって索体を結束し、所定箇所へクランプすることが多い。しかし、この索体が結束された状態において、索体に軸方向の引っ張り張力等が作用することがある。この場合、引っ張り張力等が大きいと、ベルトクランプと索体との相対位置関係が索体の軸方向(=ベルトクランプの幅方向)にずれてしまう、いわゆる横ずれが発生してしまうことがある。
【0003】
そこで、このような横ずれを防止できるベルトクランプとして、下記特許文献1が提案されている。特許文献1のベルトクランプは、長尺な索体の外周に、索体の軸方向に直交する周方向に巻回する帯状のベルト部と、当該ベルト部が挿通係止されるベルト挿通部を有するバックル部と、横ずれ防止機構とを備える。この横ずれ防止機構としては、索体と当接するバックル部の外面(索体支持面)に、索体の軸方向と直交する周方向に延在する突条を設けている。そのうで、当該突条を中空な三角筒状に形成して、可撓変形性に富む形状としている。
【0004】
そして、ベルトクランプによって索体を結束すると、突条と索体とが圧接することで、突条における索体と当接している部分のみが押し潰される。つまり、ベルトクランプによって索体を結束すると、突条が索体の外形に沿って変形した状態となる。これにより、索体と突条との接触面積が増大して、横ずれ防止性能が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、横ずれ防止機構を構成する突条の初期形状は、索体の軸方向=横ずれ方向において形状は一様である。これでは、ベルトクランプによって索体を結束した状態では突条の一部が押し潰されて索体との接触面積=摩擦係数は増大するが、横ずれ方向全体に亘って索体への圧接力は一様なので、横ずれ防止性能には限界がある。つまり、索体との接触面積を増大して横ずれを発生し難くしているが、索体との摩擦係数以上の張力が作用して実際に横ずれが生じてしまった場合には対応できない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、索体が横ずれするほど横ずれ防止性能が高くなる横ずれ防止機構を備えるベルトクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段として、本発明は、長尺な索体の外周に、索体の軸方向に直交する周方向に巻回する帯状のベルト部と、前記ベルト部が挿通されるベルト挿通部を有するバックル部と、索体に軸方向の引っ張り力が作用した際に、前記ベルト部と索体とが相対的に索体の軸方向へ横ずれすることを防止する横ずれ防止機構と、を備えるベルトクランプである。そして、前記横ずれ防止機構を、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において前記ベルト部と索体との間に介在する介在物によって構成したうえで、前記介在物の肉厚が、前記ベルト部の標準巻回位置から索体の軸方向外方へ徐々に大きくなっていることを特徴とする。
【0009】
前記横ずれ防止機構は、前記バックル部に直接設けて、前記バックル部の一部が前記介在物を兼ねるように構成することができる。具体的には、前記ベルト挿通部を画成する周壁の一部を前記介在物として兼用し、前記横ずれ防止機構として、前記周壁の肉厚を索体の軸方向に徐変することができる。
【0010】
また、前記横ずれ防止機構は、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において、前記ベルト部によって形成される輪の中に索体と共に配される横ずれ防止部材に形成することもできる。この場合、前記横ずれ防止部材は、前記ベルト部によって索体を巻回した状態において、索体の軸方向に肉厚が徐変する部位を少なくとも形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベルトクランプによれば、横ずれ防止機構として、ベルト部と索体との間の介在物の肉厚を、標準巻回位置から索体の軸方向外方へ徐々に大きくしている。したがって、標準巻回位置においては従来と同様の横ずれ防止性能であるが、実際に横ずれが生じ始めると、徐々に介在物の肉厚が大きくなって、ベルト部と索体との圧接力が大きくなる。つまり、索体が横ずれするほど介在物の存在が大きくなってストッパー的機能を果たすため、大きく横ずれすることなく、有効に横ずれを防止することができる。
【0012】
横ずれ防止機構をバックル部の一部に直接形成しておけば、部品点数の増加を避けてコスト上昇を抑えられると共に、巻回作業性の低減も避けることができる。
【0013】
横ずれ防止機構を構成する介在物をバックル部等と別体としていれば、ベルトクランプの構造や索体の太さなどに応じて適正な介在物に変更することができるので、横ずれ防止性能や汎用性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】横ずれが生じていない状態での
図2のI-I線断面図である。
【
図4】横ずれ防止機構が作用している状態の
図2のI-I断面図である。
【
図7】横ずれが生じていない状態での
図6の中央断面図である。
【
図8】横ずれ防止機構が作用している状態の
図6の中央断面図である。
【
図10】実施形態3の横ずれ防止部材の斜視図である。
【
図11】横ずれが生じていない状態での
図9のI-I線相当断面図である。
【
図12】横ずれ防止機構が作用している状態の
図9のI-I線相当断面図である。
【
図14】実施形態4の横ずれ防止部材の斜視図である。
【
図15】横ずれが生じていない状態での
図13のI-I線相当断面図である。
【
図16】横ずれ防止機構が作用している状態の
図13のI-I線相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のベルトクランプは、複数本の索体を1つに纏めて結束したり、所定ルートで配策された索体の中間部を所定箇所で安定して固定したりするなどのために使用される。索体としては、長尺な紐状のものであれば特に限定されない。具体的には、ワイヤーハーネス、ケーブル、ローブ、コードなどが挙げられる。索体の配策場所も特に制限は無く、自動車,船舶,列車,航空機等の各種乗り物、産業機械,工作機械,電子機器等の機器類、工場,発電所,商業施設等の各種施設などで配策される。
【0016】
そのうえで、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、基本構造がベルト部と、ベルト挿通部を有するバックル部とを有するベルトクランプである限り、従来から公知の種々のベルトクランプへ横ずれ防止機構を適用可能である。したがって、本発明は多数の実施形態が考えられるが、以下には、そのうち代表的な実施形態を例に挙げて具体的に説明する。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1のベルトクランプ1は、
図1,
図2に示すように、索体Wを結束するベルト部10と、ベルト挿通部13にベルト部10を挿通して係止するバックル部11と、索体Wと共にベルトクランプ1を索体Wの配索対象へ固定するためのクリップ部12とを有する。ベルトクランプ1は合成樹脂製の射出成型品であって、ベルト部10、バックル部11、クリップ部12、及び後述の横ずれ防止機構用の介在物は、それぞれ一体成形されている。
【0018】
ベルト部10は長尺でフレキシブルな帯状であって、その基端がバックル部11から連続し、その先端は自由端となっている。ベルト部10の一面には、鋸刃状のセレーション(図示せず)が長手方向に沿って連続形成されている。索体Wを結束する際は、索体Wの外周を一周して巻回したうえで、バックル部11のベルト挿通部13へ挿通することで、セレーションの存在によって係止される。詳しくは、索体Wの軸方向と直交する周方向にベルト部10を巻回している。ベルトクランプ1の使用前(初期形状)では、ベルト部10は索体Wを巻回するに十分な長さを有しているが、索体Wを結束した際は、ベルト挿通部13から抜け出た余剰部分は切除される。
【0019】
バックル部11はブロック状であって、その中央部に水平方向のベルト挿通部13が形成されている。ベルト挿通部13は、バックル部11の一面から対向する反対面に至る貫通孔であって、その内部には、ベルト部10のセレーションと係合する係止爪(図示せず)が設けられている。索体Wを結束する際は、ベルト挿通部13の開口方向が索体Wの軸方向と直交する径方向に向けて配す。そのうえで、索体Wを結束すると、ベルト挿通部13に挿通されたベルト部10のセレーションとバックル部11の係止爪とが係合することで、ベルト部10が結束状態で係止される。なお、ベルト挿通部13の幅寸法は、ベルト部10の幅寸法より大きい。索体Wを結束した状態において、索体Wの横ずれが生じていない
図3に示す状態では、ベルト部10はベルト挿通部13の幅方向中央部に挿通係止されており、ベルト部10の幅方向外方には隙間がある。このベルト挿通部13の幅方向中央部が、ベルト部10の標準巻回位置である。
【0020】
バックル部11の上面(索体Wとの当接面)には、ベルト挿通部13の開口方向と平行に延在する突条14が、バックル部11の幅方向に複数本並設されている。本実施形態1では、突条14が三本形成されている。索体Wを結束した際は、各突条14は索体Wの軸方向と直交する径方位に延在しており、索体Wの軸方向に複数本並存している。この突条14の存在によって、索体Wとの密着性及び初期横ずれ防止性能が向上する。
【0021】
クリップ部12は、バックル部11の下面(索体Wとの当接面の反対側の面)に円皿形のスタビライザー15を介して形成されている。クリップ部12は、この種のベルトクリップにおいて従来から一般的に採用されている公知のクリップ部と同様の形状であり、中央に立設する支柱12aと、当該支柱12aの先端部から左右外方へ弾性変形可能に設けられた2つの係合爪12bとを有する。
【0022】
クリップ部12は、ベルト部10によって索体Wを結束した状態で、索体Wと共にベルトクランプ1を配索対象へ固定するための部位である。具体的には、配索対象の所定箇所に穿設された図外の係合孔に先端部から係合爪12bを弾性変形させながら挿通し、係合爪12bが係合孔の裏面周縁に係合することで、ベルトクランプ1が固定される。このとき、スタビライザー15が係合孔の表面周縁に弾接することで、係合孔がシールされる。
【0023】
ここまでが、従来と同様のベルトクランプ1の基本的構成であるが、本実施形態1では、さらにベルト挿通部13を画成する周壁の一部を、横ずれ防止機構用の介在物として兼用できる構造となっている。具体的には、索体Wを結束した状態において、索体Wとベルト部10との間に介在している、ベルト挿通部13の上面を画成する上壁部51を、介在物として兼用している。上壁部51は、ベルト部10の標準巻回位置に臨む幅方向中央部の肉厚が最も小さく、そこから幅方向外方に行くほど徐々に肉厚が大きくなっている。
【0024】
そして、
図3に示す横ずれが生じていない標準巻回位置から、
図4に示すように索体Wに軸方向の大きな引っ張り張力等が作用すると、バックル部11はクリップ部12において固定されているので初期位置から動かないが、索体Wがベルト部10の周回内において横ずれする。すると、ベルト部10の基端側はバックル部11と一体連続しているので動かないが、ベルト部10の先端側は自由端となっているので索体Wと共に移動し、ベルト挿通部13内において横ずれする。これにより、ベルト部10とバックル部11との相対位置関係が横(索体Wの軸方向)にずれる。
【0025】
すると、ベルト部10の巻回直径は変わらないが、ベルト部10と索体Wとの間に介在するベルト挿通部13の上壁部51の肉厚が徐々に大きくなっていく。そして、ベルト部10と索体Wとの間においてこれ以上上壁部51の肉厚が大きくなれない状態となったところで、索体Wの横ずれを防止することができる。つまり、索体Wの横ずれ量が大きくなるほど、ベルト部10による緊締力が上昇することで、索体Wの横ずれを有効に防止することができる原理である。
【0026】
(実施形態2)
図5~
図8に、本発明の実施形態2を示す。
図5,
図6に示すように、実施形態2のベルトクランプ2は、索体Wを結束するベルト部20と、ベルト挿通部23にベルト部20を挿通するバックル部21と、索体Wと共にベルトクランプ2を索体Wの配索対象へ固定するためのクリップ部22とを有する。ベルトクランプ2は合成樹脂製の射出成型品であって、バックル部21、クリップ部22、及び後述の横ずれ防止機構用の介在物は、それぞれ一体成形されているが、ベルト部20は別体となっている。
【0027】
ベルト部20は独立部材であって、長尺でフレキシブルな帯状である。バックル部21は開閉可能な二つ折れ部材であって、ベース板部26と上板部52とが、襞状のヒンジ部27を介して連結されている。ベース板部26と上板部52の先端部には、バックル部21を閉じた状態で固定できる係合爪28と係合溝29が、それぞれ形成されている。
【0028】
索体Wを結束する際は、
図5に示すように、バックル部21の上板部52を、長手方向が索体Wの軸方向と平行になるようにして配す。そのうえで、上板部52も含めて索体Wの軸方向と直交する周方向にベルト部20を巻回して索体Wを結束し係止する。そして、
図6に示すようにベース板部26を畳んで係合爪28と係合溝29を係合させることで、ベース板部26と上板部52との間にベルト挿通部23が形成される。なお、ベルト挿通部23の幅寸法は、ベルト部20の幅寸法より大きい。索体Wを結束した状態において、索体Wの横ずれが生じていない
図5に示す状態では、ベルト部20はベルト挿通部23の幅方向中央部に存在しており、ベルト部20の幅方向外方には隙間がある。このベルト挿通部23の幅方向中央部が、ベルト部20の標準巻回位置である。
【0029】
クリップ部22は、ベース板部26の下面に円皿形のスタビライザー25を介して形成されている。クリップ部22は、この種のベルトクリップにおいて従来から一般的に採用されている公知のクリップ部と同様の形状であり、中央に立設する支柱22aと、当該支柱22aの先端部から左右外方へ弾性変形可能に設けられた2つの係合爪22bとを有する。クリップ部22の存在目的は、実施形態1のクリップ部12と同じなので、説明を省略する。
【0030】
ここまでが、従来と同様のベルトクランプ2の基本的構成であるが、本実施形態2では、さらにベルト挿通部23を画成する周壁の一部を、横ずれ防止機構用の介在物として兼用できる構造となっている。具体的には、索体Wを結束した状態において、索体Wとベルト部20との間に介在している、バックル部21の上板部52を介在物として兼用している。上板部52は、ベルト部20の標準巻回位置に臨む幅方向中央部の肉厚が最も小さく、そこから幅方向外方に行くほど徐々に肉厚が大きくなっている。
【0031】
そして、
図7に示す横ずれが生じていない標準巻回位置から、
図8に示すように索体Wに軸方向の大きな引っ張り張力等が作用して横ずれが生じると、バックル部21側のベルト部20が索体Wと共に横ずれする。一方、バックル部21はクリップ部22において固定されているので初期位置から動かないため、ベルト部20がベルト挿通部23内を横滑りする。これにより、ベルト部20とバックル部21との相対位置関係が横(索体Wの軸方向)にずれる。
【0032】
すると、ベルト部20の巻回直径は変わらないが、ベルト部20と索体Wとの間に介在する上板部52の肉厚が徐々に大きくなっていく。そして、ベルト部20と索体Wとの間においてこれ以上上板部52の肉厚が大きくなれない状態となったところで、索体Wの横ずれを防止することができる。つまり、索体Wの横ずれ量が大きくなるほど、ベルト部20による緊締力が上昇することで、索体Wの横ずれを有効に防止することができる原理である。
【0033】
(実施形態3)
図9~
図12に、本発明の実施形態3を示す。
図9に示すように、実施形態3のベルトクランプ3は、索体Wを結束するベルト部30と、ベルト挿通部33(
図11参照)にベルト部30を挿通して係止するバックル部31と、索体Wと共にベルトクランプ3を索体Wの配索対象へ固定するためのクリップ部32と、横ずれ防止機構用の介在物として横ずれ防止部材53とを有する。ベルトクランプ3は合成樹脂製の射出成型品であって、ベルト部30と、バックル部31と、クリップ部32とは、それぞれ一体成形されている。横ずれ防止部材53も合成樹脂製の射出成形品であるが、バックル部31とは別体として形成されている。
【0034】
なお、実施形態1のバックル部11と本実施形態3のバックル部31とは同じ形状であるが、実施形態1を示す
図1は、ベルト挿通部13の出口側斜視図であり、実施形態3を示す
図9は、ベルト挿通部33の入口側斜視図である。つまり、
図9は、
図1と逆から見た図である。
【0035】
ベルト部30は長尺でフレキシブルな帯状であって、その基端がバックル部31から連続し、その先端は自由端となっている。ベルト部30の一面には、鋸刃状のセレーション(図示せず)が長手方向に沿って連続形成されている。索体Wを結束する際は、横ずれ防止部材53も含めて索体Wの外周を一周して巻回したうえで、バックル部31のベルト挿通部33へ挿通することで、セレーションの存在によって係止される。詳しくは、横ずれ防止部材53を索体Wの外面に宛がった状態で、横ずれ防止部材53の幅方向中央部外方を通って索体Wの軸方向と直交する周方向にベルト部30を巻回している。ベルトクランプ3の使用前(初期形状)では、ベルト部30は索体Wを巻回するに十分な長さを有しているが、索体Wを結束した際は、ベルト挿通部33から抜け出た余剰部分は切除される。
【0036】
バックル部31はブロック状であって、その中央部に水平方向のベルト挿通部33が形成されている。ベルト挿通部33は、バックル部31の一面から対向する反対面に至る貫通孔であって、その内部には、ベルト部30のセレーションと係合する係止爪(図示せず)が設けられている。索体Wを結束する際は、ベルト挿通部33の開口方向が索体Wの軸方向と直交する径方向に向けて配す。そのうえで、索体Wを結束すると、ベルト挿通部33に挿通されたベルト部30のセレーションとバックル部31の係止爪とが係合することで、ベルト部30が結束状態で係止される。なお、ベルト挿通部33の幅寸法とベルト部30の幅寸法とはほぼ同じであり、索体Wを結束した状態では、ベルト挿通部33内においてベルト部30の幅方向外方に隙間は無い。
【0037】
図11に示すように、バックル部31の上面(索体Wとの当接面)には、ベルト挿通部33の開口方向と平行に延在する突条34が、バックル部31の幅方向に複数本並設されている。本実施形態3では、突条34が三本形成されている。索体Wを結束した際は、各突条34は索体Wの軸方向と直交する径方位に延在しており、索体Wの軸方向に複数本並存している。この突条34の存在によって、索体Wとの密着性及び初期横ずれ防止性能が向上する。
【0038】
図9に示すように、クリップ部32は、バックル部31の下面(索体Wとの当接面の反対側の面)に円皿形のスタビライザー35を介して形成されている。クリップ部32は、この種のベルトクリップにおいて従来から一般的に採用されている公知のクリップ部と同様の形状であり、中央に立設する支柱32aと、当該支柱32aの先端部から左右外方へ弾性変形可能に設けられた2つの係合爪32bとを有する。クリップ部32の存在目的は、実施形態1のクリップ部12と同じなので、説明を省略する。
【0039】
ここまでが、従来と同様のベルトクランプ3の基本的構成であるが、本実施形態3では、横ずれ防止機構用の介在物として、横ずれ防止部材53を使用している。
図10に示すように、横ずれ防止部材53は、左右(幅方向)に細長い複数の介在部60が、襞状の連結部61によってそれぞれ連結された構造となっている。横ずれ防止部材53は、全体的に湾曲した初期形状となっており、各連結部61部分において索体Wの外形に沿って周方向に変形可能となっている。
【0040】
各介在部60は、細板状のベース部60aと、当該ベース部60aの左右両端から立設する側壁部60bと、ベース部60aの裏面(索体Wとの当接面)に突出形成された複数の突起部60cとを有する。各ベース部60aは、ベルト部30の幅方向中央部の肉厚が最も小さく、そこから幅方向外方に行くほど徐々に肉厚が大きくなっている。突起部60cは、ベース部60aの幅方向に複数本(本実施形態3では三本)並設されている。
図11に示すように、索体Wを結束する際は、ベルト部30は横ずれ防止部材53の幅方向中央部に巻回する。この
図11に示す位置が、標準巻回位置である。
【0041】
そして、
図11に示す横ずれが生じていない標準巻回位置から、
図12に示すように索体Wに軸方向の大きな引っ張り張力等が作用して横ずれが生じても、バックル部31はクリップ部32において固定されているので初期位置から動かない。ベルト部30も、基端側がバックル部31と一体連続しており、先端側はベルト挿通部33内において幅方向外方に隙間が無いので移動しない。一方、横ずれ防止部材53は幅方向(索体Wの軸方向)に固定されていないので、突起部60cの存在によって索体Wと共に横ずれする。これにより、ベルト部30と横ずれ防止部材53との相対位置関係が横(索体Wの軸方向)にずれる。
【0042】
すると、ベルト部30の巻回直径は変わらないが、ベルト部30と索体Wとの間に介在する横ずれ防止部材53のベース部60aの肉厚が徐々に大きくなっていく。そして、ベルト部30と索体Wとの間においてこれ以上ベース部60aの肉厚が大きくなれない状態となったところで、索体Wの横ずれを防止することができる。つまり、索体Wの横ずれ量が大きくなるほど、ベルト部30による緊締力が上昇することで、索体Wの横ずれを有効に防止することができる原理である。
【0043】
なお、索体Wの最大横ずれ幅は、ベルト部30が横ずれ防止部材53の側壁部60bに当接する位置であるが、横ずれ防止機構は、ベルト部30が側壁部60bに当接する前に横ずれを停止させられるようにベース部60aの肉厚が設計されている。
【0044】
(実施形態4)
図13~
図16に、本発明の実施形態4を示す。
図13に示すように、実施形態4のベルトクランプ4は、索体Wを固定するベルト部40と、ベルト挿通部43(
図15参照)にベルト部40を挿通して係止するバックル部41と、索体Wと共にベルトクランプ4を索体Wの配索対象へ固定するためのクリップ部42と、横ずれ防止機構用の介在物として横ずれ防止部材54とを有する。ベルトクランプ4は合成樹脂製の射出成型品であって、ベルト部40と、バックル部41と、クリップ部42とは、それぞれ一体成形されている。横ずれ防止部材53も合成樹脂製の射出成形品であるが、バックル部41とは別体として形成されている。
【0045】
ベルト部40は長尺でフレキシブルな帯状であって、その基端がバックル部41から連続し、その先端は自由端となっている。ベルト部40の一面には、鋸刃状のセレーション(図示せず)が長手方向に沿って連続形成されている。索体Wを固定する際は、索体Wの外周を巻回したうえで、バックル部41のベルト挿通部43へ挿通することで、セレーションの存在によって係止される。詳しくは、索体Wの軸方向と直交する周方向にベルト部40を巻回している。
【0046】
なお、本実施形態4では、比較的直径の小さい索体W1本のみを固定する状態を示している。ベルトクランプ4の使用前(初期形状)では、ベルト部40は索体Wを巻回するに十分な長さを有しているが、ベルト挿通部43から抜け出た余剰部分を切除する。
【0047】
バックル部41はブロック状であって、その中央部に水平方向のベルト挿通部43が形成されている。ベルト挿通部43は、バックル部41の一面から対向する反対面に至る貫通孔であって、その内部には、ベルト部40のセレーションと係合する係止爪(図示せず)が設けられている。索体Wを固定する際は、ベルト挿通部43の開口方向が索体Wの軸方向と直交する径方向に向けて配す。そのうえで、索体Wを固定すると、ベルト挿通部43に挿通されたベルト部40のセレーションとバックル部41の係止爪とが係合することで、ベルト部40が結束状態で係止される。
【0048】
なお、ベルト挿通部43の幅寸法は、ベルト部40の幅寸法とほぼ同じである。したがって、ベルト部40をベルト挿通部43内へ相通したとき、ベルト部40の幅方向外方には隙間は無い。
【0049】
図13,
図15に示すように、バックル部41の上面(索体Wと当接する方向の面)の幅方向両側縁には、側壁部46が立設されている。また、バックル部41の上面の幅方向中央部には、ベルト挿通部43の開口方向と平行に延在する突条44が1本形成されている。そのうえで、索体Wを固定する際は、バックル部41の上面の両側壁部46の間に、横ずれ防止部材54を設置して使用する。
【0050】
図14に示すように、横ずれ防止部材54は、板状のベース部70aの上面(索体Wと当接する方向の面)に、複数本の突条70bが並設されている。本実施形態4では、ベース部70aの左右両縁に1つづつと、幅方向中央部に1つの、合計3本凸設している。また、ベース部70aの下面(索体Wと当接する方向と反対の面)には、厚肉部70cが下方へ突出形成されている。厚肉部70cは、横ずれ防止部材54の幅方向中央部の肉厚(ベース部70a下面からの突出量)が最も小さく、幅方向外方へ行くほど徐々に肉厚が大きくなっている。そして、バックル部41の上面へ設置する際は、バックル部41の突条44が厚肉部70cの中央に位置する状態で設置される。この厚肉部70cの肉厚が最も小さい幅方向中央部にバックル部41の突条44が位置している位置が、ベルト部40の標準巻回位置である。
【0051】
図13に戻って、クリップ部42は、バックル部41の下面(索体Wとの当接面の反対側の面)に円皿形のスタビライザー45を介して形成されている。クリップ部42は、この種のベルトクリップにおいて従来から一般的に採用されている公知のクリップ部と同様の形状であり、中央に立設する支柱42aと、当該支柱42aの先端部から左右外方へ弾性変形可能に設けられた2つの係合爪42bとを有する。クリップ部42の存在目的は、実施形態1のクリップ部12と同じなので、説明を省略する。
【0052】
そして、
図15に示す横ずれが生じていない標準巻回位置から、
図16に示すように索体Wに軸方向の大きな引っ張り張力等が作用して横ずれが生じても、バックル部41はクリップ部42において固定されているので初期位置から動かない。ベルト部40も、基端側がバックル部41と一体連続しており、先端側はベルト挿通部43内において幅方向外方に隙間が無いので移動しない。一方、横ずれ防止部材54は幅方向(索体Wの軸方向)に固定されていないので、突条70bの存在によって索体Wと共に横ずれする。これにより、横ずれ防止部材54がバックル部41上を横滑りすることで、バックル部41と横ずれ防止部材54との相対位置関係が横(索体Wの軸方向)にずれる。
【0053】
すると、ベルト部40の巻回直径は変わらないが、ベルト部40と索体Wとの間に介在する横ずれ防止部材54の厚肉部70cの肉厚が徐々に大きくなっていく。このとき、バックル部41上面の突条44が横ずれ防止部材54の厚肉部70cに摺接する。そして、ベルト部30と索体Wとの間においてこれ以上ベース部60aの肉厚が大きくなれない状態、すなわち、突条44が厚肉部70cの下面を摺動できなくなったところで、索体Wの横ずれを防止することができる。つまり、索体Wの横ずれ量が大きくなるほど、ベルト部40による緊締力が上昇することで、索体Wの横ずれを有効に防止することができる原理である。
【0054】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれに限られることは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、横ずれ防止機構を構成する介在部の肉厚を徐々に大きくするには、直線状の傾斜面を形成してもよいし、円弧状の斜面を形成することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1・2・3・4 ベルトクランプ
10・20・30・40 ベルト部
11・21・31・41 バックル部
12・22・32・42 クリップ部
13・23・33・43 ベルト挿通部
14・34・44 突条
15・25・35・45 スタビライザー
51 上壁部(介在物)
52 上板部(介在物)
53・54 横ずれ防止部材(介在物)
60 介在部
61 連結部
70a ベース部
70b 突条部
70c 厚肉部
W 索体