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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230209BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20230209BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20230209BHJP
   C08B 15/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L1/08
C08H7/00
C08B15/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017248340
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2018104703
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2016253930
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】坪井 拓磨
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/032931(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/071156(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098543(WO,A1)
【文献】特開2010-059304(JP,A)
【文献】特開2013-151636(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069641(WO,A1)
【文献】特開2013-181168(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098544(WO,A1)
【文献】特開2010-242063(JP,A)
【文献】特開2010-184999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08H 1/00-99/00
C08B 15/00-15/10
D06M 10/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂、及び、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.10mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を含有してなる、樹脂組成物であって、前記a)樹脂が塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、又はゴム系樹脂である、樹脂組成物。
【請求項2】
a)樹脂が塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、又はクロロプレンゴムである、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
b)セルロース繊維複合体が、セルロース繊維のカルボキシ基に、修飾基を有する化合物がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなる、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載の樹脂組成物を含む成形体。
【請求項5】
a)樹脂と、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.10mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法であって、前記a)樹脂が塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、又はゴム系樹脂である、樹脂組成物の製造方法
【請求項6】
a)樹脂が塩化ビニル樹脂又はクロロプレンゴムである、請求項5記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等として好適に使用し得る樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、該樹脂組成物の製造方法、及び、該樹脂組成物にフィラーとして配合し得るセルロース繊維複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた複合材料が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、界面活性剤を吸着させた微細セルロース繊維複合体を、各種樹脂に配合することで、高い機械的強度と透明性とを併せ持った複合材料が得られることが報告されている。
【0004】
また、特許文献2には、繊維表面に炭化水素基がアミド結合を介して連結し、平均繊維径が0.1~200nmである微細セルロース繊維複合体を、ポリエステル樹脂に配合して得られる複合材料が、透明性と機械的強度に優れ、環境に対する負荷の少ないものであると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-140738号公報
【文献】特開2013-151636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、これら複合材料をより広範な用途に使用することが期待されており、優れた剛性に加えて、高い耐熱性を有する、さらなる複合材料が求められている。
【0007】
本発明は、耐熱性と剛性を両立する樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、該樹脂組成物の製造方法、及び、該樹脂組成物にフィラーとして配合し得るセルロース繊維複合体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記〔1〕~〔5〕に関する。
〔1〕 a)樹脂、及び、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を含有してなる、樹脂組成物。
〔2〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を含む成形体。
〔3〕 a)樹脂と、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔4〕 セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、樹脂組成物用添加剤であるセルロース繊維複合体。
〔5〕 セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基に1~3級の炭化水素系アミンがイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなるセルロース繊維複合体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は高い耐熱性を有するという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、樹脂とセルロース繊維複合体を含有するものであって、該セルロース繊維複合体が表面修飾され、かつ、その表面のアルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であることに特徴を有する。なお、本明細書においては、セルロース繊維複合体や、原料であるセルロース繊維等について、微細化されたことを明確とする趣旨から「微細セルロース繊維複合体」、「微細セルロース繊維」と称する場合もある。
【0011】
一般的に、天然セルロースの生合成においては、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化することで高次な固体構造が構築される。本発明で用いられるセルロース繊維複合体は、これを原理的に利用して得られるものであり、天然由来のセルロース固体原料におけるミクロフィブリル間の強い凝集をもたらす表面間の強固な水素結合を弱めるために、その一部を酸化してカルボキシ基に変換した後に、表面のカルボキシ基及び(酸化されなかった)水酸基から選ばれる1種以上を更に修飾することによって得られる。このようにして得られたセルロース繊維複合体は、疎水性が向上して有機溶媒や樹脂中での分散性が良好となり、樹脂に配合した場合には剛性などの物性が優れる樹脂組成物が得られるものである。しかしながら、樹脂組成物に高い耐熱性が求められるケースでは、前記セルロース繊維複合体は、必ずしも耐熱性が十分ではない場合があることが判明した。そこで、本発明者らが耐熱性の向上について鋭意検討した結果、当該セルロース繊維複合体を調製する際に行う酸化処理において、セルロース分子の水酸基がアルデヒド基を経てカルボキシ基に置換されるが、反応が十分進行せずにアルデヒド基のままである副産物が生じることに着目した。そしてこのアルデヒド基が、セルロース繊維複合体の修飾基や、反応時に残存する修飾基の有する化合物などと作用することによって副生成物が生じ、耐熱性に影響すると推測した。そこで、水酸基をアルデヒド基に酸化する酸化処理の後で、例えば酸化又は還元反応を更に行うことでアルデヒド基を一定量以下まで減少させることが可能であれば、耐熱性を向上できるのではと推察した。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
【0012】
[セルロース繊維複合体]
本発明で用いられるセルロース繊維複合体は、セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下、好ましくは0.18mmol/g以下、より好ましくは0.15mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下、さらに好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは実質的に0mmol/gであることを特徴とする。ここで、実質的に0mmol/gとは不可避的に微量のアルデヒド基を含む場合を言う。なお、「アルデヒド基含有量」とは、セルロース繊維複合体を構成するセルロース中のアルデヒド基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0013】
<セルロース繊維>
(カルボキシ基含有量)
本発明で用いられるセルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維は、カルボキシ基含有量が、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下、更に好ましくは1.2mmol/g以下である。なお、「カルボキシ基含有量」とは、セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0014】
(アルデヒド基含有量)
また、構成セルロース繊維としては、アルデヒド基含有量が、得られるセルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量と同程度のものが好ましく、従って、複合体を樹脂に含有させて樹脂組成物とした時の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは0.20mmol/g以下、より好ましくは0.18mmol/g以下、さらに好ましくは0.15mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下、さらに好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは実質的に0mmol/gである。
【0015】
かかるセルロース繊維としては、公知のものを用いても、別途調製して用いてもよい。例えば、天然のセルロース繊維に予めカルボキシ基を含有させる酸化処理を行なったカルボキシ基含有セルロース繊維に対して、公知の処理、例えば、更なる酸化処理(以降、追酸化処理と記載する)又は還元処理を行うことで、セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維を得ることができる。また、後述する複合化処理を行なうことができるのであれば、酸化処理を行なって得られたカルボキシ基含有セルロース繊維に対して、公知の微細化処理を行なって得られた微細セルロース繊維に対して、追酸化処理又は還元処理を行なって得られたものでもよい。
【0016】
アルデヒド基の除去については、還元処理、追酸化処理のどちらの処理工程を使用してもよいし、両方を組み合わせてもよい。
【0017】
追酸化の処理条件としては、アルデヒド基がカルボキシ基に酸化される条件であれば適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、天然セルロースにカルボキシ基を導入した後に行うことが好ましく、処理温度や処理時間は用いる酸化剤により決定される。酸化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば亜塩素酸塩を用いることができ、亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが挙げられる。処理中の液pHは、反応性の観点から、好ましくは3以上10以下、より好ましくは4以上7以下、更に好ましくは4以上5以下である。また、処理温度は、反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。また、処理時間は、反応性の観点から、好ましくは1時間以上であり、好ましくは10時間以上である。
【0018】
前記追酸化処理の処理系にはセルロース繊維、酸化剤以外にその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではない。
【0019】
還元の処理条件としては、アルデヒド基が水酸基に還元される条件であれば適宜設定することができ、特に限定されない。還元処理工程としては、天然セルロースにカルボキシ基を導入した後に行うことが好ましく、処理温度や処理時間は用いる還元剤により決定される。還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば金属水素化物、亜ジチオン酸塩が挙げられる。金属水素化物としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等が挙げられ、亜ジチオン酸塩としては亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。処理中の液pHは、反応性の観点から、好ましくは7以上12以下、より好ましくは9以上11以下、更に好ましくは10である。また、処理温度は、反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。また、処理時間は、反応性の観点から、好ましくは1時間以上であり、好ましくは3時間以上である。
前記還元処理の処理系にはセルロース繊維、還元剤以外にその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではない。
【0020】
<修飾基>
また、本発明で用いられるセルロース繊維複合体は、前記セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されていることも一つの特徴である。このような、セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体は、例えば、本発明の樹脂組成物用の添加剤として用いることができ、かかる樹脂組成物用添加剤であるセルロース繊維複合体は本発明に包含される。
【0021】
本明細書において、セルロース繊維複合体における修飾基の結合とは、セルロース繊維表面のカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合している状態のことを意味する。これは、例えば、セルロース繊維表面に存在するカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上を選択して、好ましくはカルボキシ基に、修飾基を有する化合物をイオン結合及び/又は共有結合させることにより得られる。カルボキシ基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくはアミド結合である。また、水酸基への結合様式としては、共有結合が挙げられ、具体的には、エステル結合;カルボキシメチル化、カルボキシエチル化などのエーテル結合;ウレタン結合が挙げられる。よって、本発明のセルロース繊維複合体としては、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を有する化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られることが好ましい。
【0022】
(修飾基を有する化合物)
修飾基を有する化合物としては、後述の修飾基を有するものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。これらの中では、分散性の観点から、好ましくは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物である。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシイオンが挙げられる。共有結合の場合は置換される官能基によって以下のものを用いることができる。カルボキシ基への修飾においては、アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよい。エステル結合の場合は、アルコールがよく、例えば、ブタノール、オクタノール、ドデカノールが例示される。ウレタン結合の場合は、イソシアネート化合物がよい。水酸基への修飾においては、エステル結合の場合は、酸無水物がよく、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸が例示される。エーテル結合の場合は、エポキシ化合物(例えば、酸化アルキレンやアルキルグリシジルエーテル)、アルキルハライド及びその誘導体(例えば、メチルクロライド、エチルクロライドやモノクロロ酢酸)が例示される。
【0023】
本発明における修飾基としては、炭化水素基、共重合部等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上が組み合わさって、セルロース繊維に結合(導入)されてもよい。
【0024】
(炭化水素基)
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0025】
鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、複合体を樹脂に含有させて樹脂組成物とした時の耐熱性を向上させる観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、6以上が更に好ましく、8以上が更に好ましい。また、同様の観点から、30以下が好ましく、24以下がより好ましく、18以下が更に好ましく、16以下が更に好ましい。なお、以降において炭化水素基の炭素数とは、修飾基全体としての総炭素数のことを意味する。
【0026】
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられ、複合体を樹脂に含有させて樹脂組成物とした時の耐熱性を向上させる観点から、好ましくはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
【0027】
鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。また、入手容易性の観点から、30以下が好ましく、18以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、8以下がよりさらに好ましい。
【0028】
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられ、樹脂との相溶性の観点から、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
【0029】
環式飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。また、入手容易性の観点から、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、8以下がよりさらに好ましい。
【0030】
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられ、樹脂との相溶性の観点から、好ましくはシクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
【0031】
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
【0032】
前記アリール基の総炭素数は6以上であればよく、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
【0033】
前記アラルキル基の総炭素数は7以上であり、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは8以上であり、また、同様の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、さらに好ましくは11以下である。
【0034】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましい。
【0035】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が後述する置換基で置換された基などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基が好ましい。
【0036】
前記炭化水素基を有する第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、酸無水物、イソシアネート化合物は、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
【0037】
具体例としては、第1~3級アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、ベンジルアミンが挙げられる。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。これらの中では、分散性および耐熱性の観点から、好ましくは、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、アニリン、より好ましくはプロピルアミン、ドデシルアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、アニリンである。
【0038】
従って、本発明には、セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基に1~3級の炭化水素系アミンがイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなるセルロース繊維複合体が包含される。かかる本発明のセルロース繊維複合体は、好ましくは樹脂組成物用添加剤として使用される。
【0039】
セルロース繊維複合体における炭化水素基の平均結合量は、セルロース繊維あたり、複合体を樹脂に含有させて樹脂組成物とした時の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。ここで、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合であっても、個々の平均結合量は前記範囲内であることが好ましい。
【0040】
また、炭化水素基の導入率は、いずれの修飾基についても、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、更に好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下である。ここで、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
【0041】
(共重合部)
本発明において、共重合部としては、例えば、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部等を用いることができる。ここで、EO/PO共重合部とは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した構造を意味する。例えば、EO/PO共重合部を有するアミンが後述する式(i)で表される場合は、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)はランダム又はブロック状の連鎖構造となるが、該アミンが後述する式(ii)で表される構造を有するアミンである場合は、(EO)a(PO)b、(EO)c(PO)d、(EO)e(PO)fは、連鎖している必要はない。
【0042】
EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)は、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。なお、POの含有率が100モル%とは、EO/PO共重合部がPOのみで構成されているものであり、本発明においてはPO重合部が導入されていても構わない。
【0043】
EO/PO共重合部の分子量は、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上であり、同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。例えば、後述する式(ii)で表される構造を有するアミンである場合は、(EO)a(PO)b+(EO)c(PO)d+(EO)e(PO)fの合計の分子量を、EO/PO共重合部の分子量とする。EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)、EO/PO共重合部の分子量は、アミンを製造する際の平均付加モル数から計算して求めることができる。
【0044】
EO/PO共重合部とアミンとは、直接に又は連結基を介して結合しているものが好ましい。連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1~6、より好ましくは1~3のアルキレン基が用いられる。例えば、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0045】
かかるEO/PO共重合部を有するアミンとしては、例えば、下記式(i):
【0046】
【化1】
【0047】
〔式中、Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、-CHCH(CH)NH基、又は下記式(ii)で表される基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である〕
で表される化合物が挙げられる。
【0048】
式(ii):
【0049】
【化2】
【0050】
〔式中、nは0又は1であり、Rはフェニル基、水素原子、又は炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、c及びeは、EOの平均付加モル数を示し、独立して0~50の数であり、d及びfはPOの平均付加モル数を示し、独立して1~50の数である〕
【0051】
式(i)におけるaはEOの平均付加モル数を示し、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは11以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、更に好ましくは30以上であり、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
【0052】
式(i)におけるbはPOの平均付加モル数を示し、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0053】
また、EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)は、アミンが前記式(i)で表される場合は、前記aとbより、共重合部におけるPOの含有率を計算することが可能であり、式:b×100/(a+b)より求めることができ、アミンが前記式(i)及び式(ii)で表される場合は、同様に、式:(b+d+f)×100/(a+b+c+d+e+f)より求めることができる。好ましい範囲は、前述のとおりである。
【0054】
式(i)におけるRは水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、-CHCH(CH)NH基、又は前記式(ii)で表される基を示すが、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、水素原子が好ましい。炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、イソ又はノルマルのプロピル基である。
【0055】
また、式(i)におけるRが式(ii)で表される基である場合、式(ii)におけるRの炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、好ましくはメチル基、エチル基である。Rがメチル基又はエチル基である場合、nが1であることが好ましく、Rが水素原子である場合、nが0であることが好ましい。また、式(ii)におけるc及びeとしては、独立して、10~30が好ましく、d及びfとしては、独立して、5~25が好ましい。
【0056】
かかる式(i)で表されるEO/PO共重合部を有するアミンは、公知の方法に従って調製することができる。例えば、プロピレングリコールアルキルエーテルにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを所望量付加させた後、水酸基末端をアミノ化すればよい。必要により、アルキルエーテルを酸で開裂することで末端を水素原子とすることができる。これらの製造方法は、特開平3-181448号を参照することができる。
【0057】
前記EO/PO共重合部を有するアミンは、例えば、市販品を好適に用いることができ、具体例としては、HUNTSMAN社製のJeffamine M-2070、Jeffamine M-2005、Jeffamine M-2095、Jeffamine M-1000、Jeffamine M-600、Surfoamine B200、Surfoamine L100、Surfoamine L200、Surfoamine L207,Surfoamine L300、XTJ-501、XTJ-506、XTJ-507、XTJ―508;BASF社製のM3000、Jeffamine ED-900、Jeffamine ED-2003、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、XTJ-510、Jeffamine T-3000、JeffamineT-5000、XTJ-502、XTJ-509、XTJ-510等が挙げられる。これらの中では、耐熱性の観点から、好ましくは、Jeffamine M-2070、Jeffamine M-2005、Jeffamine M-1000、Jeffamine M-600、Surfoamine L100、Surfoamine L200、Surfoamine L207,Surfoamine L300である。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0058】
セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の平均結合量は、セルロース繊維あたり、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。
【0059】
また、セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の修飾率は、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、耐熱性に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは95%以下である。
【0060】
なお、前記修飾基は置換基を有するものであってもよく、例えば、炭化水素基の場合、置換基を含めた修飾基全体の総炭素数が前記範囲内となるものが好ましい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基が挙げられる。なお、前記した炭化水素基そのものが置換基として結合していてもよい。
【0061】
なお、本明細書において、修飾基の平均結合量は、修飾基を有する化合物の添加量、修飾基を有する化合物の種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。また、セルロース繊維複合体における修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、セルロース繊維表面のカルボキシ基又は水酸基に修飾基が導入された量及び割合のことであり、セルロース繊維のカルボキシ基含有量と水酸基含有量を公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出することができる。
【0062】
<平均繊維径>
本発明で用いられるセルロース繊維複合体としては、置換基の種類に関係なく、平均繊維径に特に限定はない。例えば、平均繊維径がマイクロオーダーの態様(態様1)、平均繊維径がナノオーダーの態様(態様2)が例示される。
【0063】
態様1のセルロース繊維複合体は、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。なお、本明細書において、マイクロオーダーのセルロース繊維の平均繊維径は、以下の方法に従って測定することができる。
【0064】
具体的には、例えば、絶乾したセルロース繊維をイオン交換水中で家庭用ミキサー等を用いて攪拌して繊維を解した後、さらにイオン交換水を加え均一になるよう攪拌して得られた水分散液の一部を、メッツォオートメーション社製の「Kajaani Fiber Lab」にて分析する方法が挙げられる。かかる方法により、平均繊維径がマイクロオーダーの繊維径を測定することができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0065】
態様2のセルロース繊維複合体は、耐熱性向上、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、取扱い性、寸法安定性、溶媒分散性、及び増粘性発現の観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である。なお、本明細書において、ナノオーダーのセルロース繊維の平均繊維径は、以下の方法に従って測定することができる。
【0066】
具体的には、微細化処理を行なった際に得られた分散液を、光学顕微鏡(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX-1000」)を用いて倍率300~1000倍で観察し、繊維30本以上の平均値を計測することで、ナノオーダーの繊維径を測定することができる。光学顕微鏡での観察が困難な場合は、前記分散液に溶媒を更に加えて調製した分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて測定することができる。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0067】
<結晶化度>
セルロース繊維複合体の結晶化度は、強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
【0068】
[セルロース繊維複合体の製造方法]
本発明で用いられるセルロース繊維複合体は、前記したセルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。なお、ここでいうセルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011-140632号公報に記載の方法を参照にし、更に、前述の追酸化処理又は還元処理を行なうことで、アルデヒドを除去したカルボキシ基含有セルロース繊維として調製することができる。
【0069】
具体的な製造方法としては、修飾基のセルロース繊維への導入態様によって、以下の2態様が挙げられる。即ち、修飾基をイオン結合によってセルロース繊維に結合させる態様(態様A)、修飾基を共有結合によってセルロース繊維に結合させる態様(態様B)が挙げられる。なお、共有結合として、アミド結合の場合を以下に示す。
〔態様A〕
工程(1):天然セルロース繊維をN-オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を追酸化処理又は還元処理を行なって、アルデヒド基が低減されたカルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(3A):工程(2)で得られたアルデヒド基が低減されたカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを混合する工程
〔態様B〕
工程(1):天然セルロース繊維をN-オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を追酸化処理又は還元処理を行なって、アルデヒド基が低減されたカルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(3B):工程(2)で得られたアルデヒド基が低減されたカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とをアミド化反応させる工程
【0070】
修飾基の導入方法は、例えば、態様Aは特開2015-143336号公報に記載の方法を、態様Bは特開2015-143337号公報に記載の方法を参照にして行うことができる。また、本発明においては、工程(1)の後に後述する微細化工程を行い、カルボキシ基含有の微細セルロース繊維とした後に工程(2)を行う方法(第1の製造形態)、及び、工程(1)から順に工程(3A又は3B)を行い、その後に微細化工程を行ってセルロース繊維複合体を得る方法(第2の製造形態)を行ってもよい。
【0071】
以下、態様Aの第1の製造形態に基づいて、セルロース繊維複合体の製造方法を説明する。
【0072】
〔工程(1)〕
工程(1)は、天然セルロース繊維をN-オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程である。具体的には、天然セルロース繊維に対して、特開2015-143336号又は特開2015-143337号に記載の、酸化処理工程(例えば、2,2,6,6テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)を用いた酸化処理)及び精製工程(必要により)を行なうことで、カルボキシ基含有量が好ましくは0.1mmol/g以上のカルボキシ基含有セルロース繊維が得られる。
【0073】
原料の天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていてもよい。また、前記市販のパルプのセルロースI型結晶化度は、通常80%以上である。
【0074】
(微細化工程)
次に、第1の製造形態では、精製工程後に工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を微細化する工程を行って、カルボキシ基含有の微細セルロース繊維を得る。微細化工程では、精製工程を経たカルボキシ基含有セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。
【0075】
分散媒としての溶媒は、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3~6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1~6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2~5の低級アルキルエーテル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル等の極性溶媒等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、微細化処理の操作性の観点から、水、炭素数1~6のアルコール、炭素数3~6のケトン、炭素数2~5の低級アルキルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸メチルトリグリコールジエステル等の極性溶媒が好ましく、環境負荷低減の観点から、水がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボキシ基含有セルロース繊維を分散できる有効量であればよく、特に制限はないが、カルボキシ基含有セルロース繊維に対して、好ましくは1~500質量倍、より好ましくは2~200質量倍使用することがより好ましい。
【0076】
微細化処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
【0077】
〔工程(2)〕
工程(2)は、工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を追酸化処理又は還元処理を行なって、アルデヒド基が低減されたカルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程である。追酸化処理又は還元処理の方法は、前述のセルロース繊維複合体の項を参照することができる。
【0078】
かくして、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシ基へと選択的に酸化され、また更に、アルデヒド基が酸化処理又は還元処理されることでカルボキシ基又は水酸基へと置換されたセルロースからなる微細セルロース繊維を得ることができる。
【0079】
〔工程(3A)〕
第1の製造形態において、工程(3A)は、前記工程を経て得られたアルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを混合して、セルロース繊維複合体を得る工程である。具体的には、アルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを溶媒中で混合すればよく、例えば、特開2015-143336号に記載の方法に従って製造することができる。
【0080】
工程(3A)で用いられる、修飾基を有する化合物としては、セルロース繊維複合体において前記した前述のものが挙げられる。
【0081】
前記化合物の使用量は、セルロース繊維複合体における修飾基の所望結合量により決めることができるが、反応性の観点から、アルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維に含有されるカルボキシ基1molに対して、アミン基が、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.1mol以上、更に好ましくは0.5mol以上、更に好ましくは0.7mol以上、更に好ましくは1mol以上であり、製品純度の観点から、好ましくは50mol以下、より好ましくは20mol以下、更に好ましくは10mol以下となる量用いる。なお、前記範囲に含まれる量の化合物を一度に反応に供しても、分割して反応に供してもよい。化合物が、モノアミンの場合は、上記のアミン基とアミンとは同じである。
【0082】
溶媒としては、用いる化合物が溶解する溶媒を選択することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、水等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの極性溶媒の中でも、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、エタノール、DMF、水が好ましい。
【0083】
混合時の温度は、化合物の反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上である。また、複合体の着色の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。混合時間は、用いる化合物及び溶媒の種類に応じて適宜設定することができるが、化合物の反応性の観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
【0084】
前記塩形成後、未反応の化合物等を除去するために、適宜後処理を行ってもよい。該後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
【0085】
また、態様Bの製造方法については、工程(1)及び工程(2)は態様Aと同様に行うことができるので、以下に第1の製造形態における工程(3B)について記載する。また、例えば、特開2013-151661号公報に記載の方法により製造することができる。
【0086】
〔工程(3B)〕
第1の製造形態において、工程(3B)は、前記工程を経て得られたアルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とをアミド化反応させて、セルロース繊維複合体を得る工程である。前記混合方法としては、原料が反応する程度のものであれば特に問題なく、具体的には、前記原料を縮合剤の存在下で混合し、アルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維に含有されるカルボキシ基と、修飾基を有する化合物のアミノ基とを縮合反応させてアミド結合を形成する。
【0087】
工程(3B)で用いられる、修飾基を有する化合物としては、セルロース繊維複合体において前記した前述のものが挙げられる。
【0088】
工程(3B)では、アルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを縮合剤の存在下でアミド化させる。
【0089】
前記修飾基を有する化合物の使用量は、反応性の観点から、アルデヒド基を低減したカルボキシ基含有セルロース繊維に含有されるカルボキシ基1molに対して、アミン基が、好ましくは0.1mol以上、より好ましくは0.5mol以上であり、製品純度の観点から、好ましくは50mol以下、より好ましくは20mol以下、更に好ましくは10mol以下となる量用いる。なお、前記範囲に含まれる量の化合物を一度に反応に供しても、分割して反応に供してもよい。
【0090】
縮合剤としては、特には限定されないが、合成化学シリーズ ペプチド合成(丸善社)P116記載、又はTetrahedron,57,1551(2001)記載の縮合剤などが挙げられ、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(以下、「DMT-MM」と称する場合がある。)等が挙げられる。
【0091】
上記アミド化反応においては、前記微細化工程における溶媒が挙げられ、用いる化合物が溶解する溶媒を選択することが好ましい。
【0092】
前記アミド化反応における反応時間及び反応温度は、用いる化合物及び溶媒の種類等に応じて適宜選択することができるが、反応率の観点から、好ましくは1~24時間、より好ましくは10~20時間である。また、反応温度は、反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上である。また、複合体の着色の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
【0093】
前記反応後、未反応の化合物や縮合剤等を除去するために、適宜後処理を行ってもよい。該後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
【0094】
なお、態様A及び態様Bのいずれにおいても、第2の製造形態では、前記した各工程を、工程(1)、工程(2)、工程(3A)又は工程(3B)、微細化工程の順で行うこと以外は、第1の製造形態と同様の方法で行うことができる。
【0095】
また、態様A及び態様Bを組み合せて得られるセルロース繊維複合体であってもよく、即ち、イオン結合を介して連結した修飾基とアミド結合を介して連結した修飾基を有するセルロース繊維複合体であってもよい。この場合、工程(3A)と工程(3B)のいずれを先に行ってもよい。
【0096】
かくして、セルロース繊維に修飾基がイオン結合及び/又は共有結合を介して連結した、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下のセルロース繊維複合体を得ることができる。
【0097】
得られたセルロース繊維複合体は、上記後処理を行った後の分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状のセルロース繊維複合体を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、セルロース繊維複合体が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
【0098】
粉末状のセルロース繊維複合体としては、例えば、前記セルロース繊維複合体の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記セルロース繊維複合体の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記セルロース繊維複合体の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記セルロース繊維複合体の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
【0099】
[樹脂]
本発明における樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂を用いることができる。
【0100】
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られることから、飽和ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含むものを意味する。
【0101】
(メタ)アクリル系樹脂としては、該樹脂を構成する全重合体の単量体単位の合計を基準として、50質量%以上の(メタ)アクリル酸メチルを単量体単位として含むものが好ましく、メタクリル系樹脂がより好ましい。
【0102】
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル及びこれに共重合可能な他の単量体を共重合することによって製造することができる。重合方法は特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)などが挙げられるが、生産性の観点から注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)が好ましい。また、上記単量体混合物とラジカル重合開始剤を含む重合性混合物を重合反応させることで、耐熱性に優れるメタクリル系樹脂が得られる。
【0103】
硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が好ましい。
【0104】
光硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
【0105】
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3-ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ベンジルメチルケトン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性、耐水性、透明性及び耐擦傷性向上の観点から、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが好ましい。
【0106】
光重合開始剤で、例えば、単量体(単官能単量体、多官能単量体)、反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂等を重合することができる。
【0107】
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能単量体には、2~8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3~8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0108】
反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマー又は樹脂は、前記単量体と共に用いても良い。
【0109】
光硬化性樹脂は、凝集物が少なく、透明性に優れる樹脂組成物が得られる観点から、好ましい。
【0110】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ポリウレタン樹脂;ケイ素樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られることから、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0111】
前記樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形材料を強固に成形することができ、機械的強度を向上させることができる。尚、硬化剤の含有量は、使用する硬化剤の種類により適宜設定すればよい。
【0112】
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース(セルロースアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース混合アシレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の有機酸無機酸混酸エステル;アセチル化ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。上記酢酸セルロースには、セルローストリアセテート(アセチル置換度2.6~3)、セルロースジアセテート(アセチル置換度2以上2.6未満)、セルロースモノアセテートが含まれる。上記のセルロース系樹脂の中でも、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られることから、セルロースの有機酸エステルが好ましく、酢酸セルロース(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)がより好ましい。セルロース系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
また、本発明では、ゴム系樹脂を用いることができる。ゴム系樹脂は、強度を高めるために、補強材としてカーボンブラック配合品が汎用されているが、その補強効果にも限界があると考えられる。しかしながら、本発明では、ゴム系樹脂に本発明のセルロース繊維複合体を配合することで、得られるゴム組成物中での分散性に優れることから、機械的強度及び耐熱性に優れる樹脂組成物として提供することが可能になると考えられる。
【0114】
ゴム系樹脂としては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムが好ましい。
【0115】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴム等が挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ゴム組成物の良好な加工性と高反発弾性を両立させる観点から、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴムから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0116】
樹脂組成物中の樹脂の含有量、樹脂に対するセルロース繊維複合体量及び樹脂に対するセルロース繊維量(換算量)は、樹脂の種類にもよるが、下記のとおりである。
【0117】
本発明の樹脂組成物中の樹脂の含有量は、成形体を製造する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。また、セルロース繊維複合体等を含有させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0118】
本発明の樹脂組成物中のセルロース繊維複合体の含有量は、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。
【0119】
本発明の樹脂組成物中のセルロース繊維複合体量は、樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0120】
本発明の樹脂組成物中、セルロース繊維量(換算量)は、樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度等の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0121】
本発明の樹脂組成物は、前記成分以外に、可塑剤を含有することができる。
【0122】
可塑剤としては、特に限定はなく、従来からの可塑剤であるフタル酸エステルやコハク酸エステル、アジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、分子内に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2~3のアルキレンオキサイドを平均0.5~5モル付加したアルコールであるエステル化合物が好ましく、具体的には、特開2008-174718号公報及び特開2008-115372号公報に記載の可塑剤が例示される。
【0123】
可塑剤の含有量は、成形体にした際の成形体の耐熱性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、同様の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0124】
本発明のセルロース繊維複合体は、可塑剤中に分散させることで凝集物が少なく、透明性に優れることから、前述の熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂とセルロース繊維複合体とを含有する樹脂組成物の製造に好適に用いることができる。
【0125】
本発明の樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中10質量%程度以下が好ましく、5質量%程度以下がより好ましい。
【0126】
また、本発明の樹脂組成物が、ゴム系樹脂を含有する場合には、前記以外の成分として、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム工業界で通常用いられるカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、酸化マグネシウム、亜鉛華、ステアリン酸、プロセスオイル、植物油脂、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に配合されている各種添加剤を従来の一般的な量で配合させることができる。
【0127】
本発明の樹脂組成物は、前記した樹脂とセルロース繊維複合体を含有するものであり、樹脂とセルロース繊維複合体を配合することで容易に調製することができる。例えば、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂とセルロース繊維複合体、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー、自転公転式攪拌機等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練すればよい。
【0128】
また、本発明の樹脂組成物が、ゴム系樹脂を含有する場合には、ゴム及び前記改質セルロース繊維を含有するものであり、ゴムとセルロース繊維複合体を配合することで容易に調製することができる。例えば、ゴムとセルロース繊維複合体、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、例えばロール等の開放式混練機、バンバリーミキサー等の密閉式混練機等を用いて混合することにより調製することができる。溶融混合時の温度は通常10~200℃であり、好ましくは20~180℃である。また、有機溶媒を用いてゴムとセルロース繊維複合体が溶解した溶液を調製後、有機溶媒成分を除去することで調製してもよい。
【0129】
かくして得られた樹脂組成物は、実質的に水分を含まないものであり、非水系が好ましい。樹脂組成物の水分含有量は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。ここで、実質的に0質量%とは不可避的に微量の水分を含む場合を言う。なお、本明細書において、水分含有量は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0130】
本発明の樹脂組成物は、加工性が良好で、かつ、耐熱性に優れるため、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等各種用途に好適に用いることができる。具体的には、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、電子部品などを構成する電子材料として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器として、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイとして、ダッシュボード、インストルメントパネル、フロア等の自動車部品等に好適に用いることができる。
【0131】
[樹脂成形体]
樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を押出成形、射出成形、プレス成形、注型成型又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。例えば、パッケージや基板などに注入あるいは塗布した後、乾燥し硬化させることで用途に応じた成形体を得ることができる。
【0132】
シート状の成形体を調製する場合、加工性の観点から、その厚さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更に好ましい。また、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
【0133】
かくして得られた本発明の樹脂組成物の成形体は、機械的強度に優れ、また、耐熱性に優れることから、前記樹脂組成物で挙げられた各種用途に好適に用いることができる。
【0134】
上述した実施形態に関し、本発明は、さらに以下の樹脂組成物、該樹脂組成物を含む成形体、樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物用添加剤であるセルロース繊維複合体及びセルロース繊維複合体を開示する。
【0135】
<1> a)樹脂、及び、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を含有してなる、樹脂組成物。
【0136】
<2> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、好ましくは0.18mmol/g以下、より好ましくは0.15mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下、さらに好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは実質的に0mmol/gである、前記<1>記載の樹脂組成物。
<3> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.15mmol/g以下である、前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.1mmol/g以下である、前記<1>~<3>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.05mmol/g以下である、前記<1>~<4>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、実質的に0mmol/gである、前記<1>~<5>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維のカルボキシ基含有量が、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上であり、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下、更に好ましくは1.2mmol/g以下である、前記<1>~<6>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維のカルボキシ基含有量が、0.4mmol/g以上である、前記<1>~<7>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<9> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維のカルボキシ基含有量が、0.6mmol/g以上である、前記<1>~<8>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<10> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維のカルボキシ基含有量が、3mmol/g以下である、前記<1>~<9>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<11> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維が、好ましくは、天然のセルロース繊維に予めカルボキシ基を含有させる酸化処理を行なったカルボキシ基含有セルロース繊維に対して、追酸化処理又は還元処理が行われたもの、又は、酸化処理を行なって得られたカルボキシ基含有セルロース繊維に対して、公知の微細化処理を行なって得られた微細セルロース繊維に対して、追酸化処理又は還元処理が行われたものである、前記<1>~<10>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<12> 前記セルロース繊維複合体を構成するセルロース繊維が、天然のセルロース繊維に予めカルボキシ基を含有させる酸化処理を行なったカルボキシ基含有セルロース繊維に対して、追酸化処理又は還元処理が行われたものである、前記<1>~<11>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<13> 前記追酸化処理の処理条件が、酸化剤として好ましくは亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸塩を使用し、処理中の液pHが、好ましくは3以上10以下、より好ましくは4以上7以下、更に好ましくは4以上5以下であり、処理温度が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下であり、処理時間が、好ましくは1時間以上、より好ましくは10時間以上である、前記<1>~<12>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<14> 前記還元処理の処理条件が、還元剤として好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等の金属水素化物及び/又は亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム等の亜ジチオン酸塩であり、処理中の液pHが、好ましくは7以上12以下、より好ましくは9以上11以下、更に好ましくは10であり、処理温度が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下であり、処理時間が、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上である、前記<1>~<13>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<15> 前記セルロース繊維が、好ましくは、そのセルロース繊維表面に存在するカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上に、修飾基を有する化合物をイオン結合及び/又は共有結合させることにより得られる、より好ましくは、セルロース繊維複合体が、セルロース繊維のカルボキシ基に、修飾基を有する化合物がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなる、前記<1>~<14>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<16> 前記セルロース繊維複合体が、セルロース繊維のカルボキシ基に、修飾基を有する化合物がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなる、前記<1>~<15>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<17> 前記修飾基を有する化合物が、好ましくは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、ブタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール、イソシアネート化合物、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸等の酸無水物、エポキシ化合物(例えば、酸化アルキレンやアルキルグリシジルエーテル)、アルキルハライド及びその誘導体(例えば、メチルクロライド、エチルクロライドやモノクロロ酢酸)である、前記<1>~<16>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<18> 前記修飾基を有する化合物が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む、前記<1>~<17>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<19> 前記修飾基を有する化合物が、第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む、前記<1>~<18>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<20> 前記第1~3級アミンが、好ましくはエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、ベンジルアミンであり、前記第4級アンモニウム化合物が、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドである、前記<1>~<19>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<21> 前記修飾基が、好ましくは炭化水素基、共重合部等であり、これらが好ましくは単独で又は2種以上が組み合わさって、セルロース繊維に結合(導入)される、前記<1>~<20>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<22> 炭化水素基が、好ましくは、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基である、前記<1>~<21>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<23> 鎖式飽和炭化水素基が、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等であり、鎖式不飽和炭化水素基が、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基であり、環式飽和炭化水素基が、好ましくはシクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等であり、芳香族炭化水素基が、好ましくはアリール基及びアラルキル基である、前記<1>~<22>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<24> 前記アリール基が、好ましくはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基及びターフェニル基であり、アラルキル基が、好ましくはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、及びフェニルオクチル基である、前記<1>~<23>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<25> セルロース繊維複合体における炭化水素基の平均結合量が、セルロース繊維あたり、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上であり、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である、前記<1>~<24>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<26> 炭化水素基の導入率が、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、更に好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下である、前記<1>~<25>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<27> 前記共重合部が、好ましくはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部等である、前記<1>~<26>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<28> EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)が、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である、前記<1>~<27>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<29> EO/PO共重合部の分子量が、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である、前記<1>~<28>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<30> EO/PO共重合部とアミンとは、直接に又は連結基を介して結合しているものが好ましく、連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1~6、より好ましくは1~3のアルキレン基、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基である、前記<1>~<29>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<31> セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の平均結合量が、セルロース繊維あたり、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上であり、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である、前記<1>~<30>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<32> セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の修飾率が、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、好ましくは95%以下である、前記<1>~<31>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<33> セルロース繊維複合体がマイクロオーダーの態様の場合、その平均繊維径が好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である、前記<1>~<32>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<34> セルロース繊維複合体がナノオーダーの態様の場合、その平均繊維径が好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である、前記<1>~<33>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<35> セルロース繊維複合体の結晶化度が好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である、前記<1>~<34>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<36> セルロース繊維複合体の結晶化度が20%以上である、前記<1>~<35>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<37> セルロース繊維複合体の結晶化度が40%以上である、前記<1>~<36>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<38> セルロース繊維複合体の結晶化度が80%以下である、前記<1>~<37>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<39> セルロース繊維複合体の結晶化度が75%以下である、前記<1>~<38>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<40> a)樹脂が、好ましくは熱可塑性樹脂及び/又は硬化性樹脂である、前記<1>~<39>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<41> 熱可塑性樹脂が、好ましくは、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂等である、前記<1>~<40>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<42> 硬化性樹脂が、好ましくは光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂である、前記<1>~<41>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<43> 前記樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合、好ましくは硬化剤を使用する、前記<1>~<42>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<44> a)樹脂がゴム系樹脂である、前記<1>~<43>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<45> ゴム系樹脂が、好ましくはジエン系ゴム及び/又は非ジエン系ゴムである、前記<1>~<44>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<46> ジエン系ゴムが、好ましくは天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等の変性天然ゴム等である、前記<1>~<45>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<47> 非ジエン系ゴムが、好ましくはブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムである、前記<1>~<46>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<48> 樹脂組成物中の樹脂の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である、前記<1>~<47>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<49> 樹脂組成物中のセルロース繊維複合体の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である、前記<1>~<48>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<50> 樹脂組成物中のセルロース繊維複合体量が、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である、前記<1>~<49>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<51> 樹脂組成物中のセルロース繊維量(換算量)が、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である、前記<1>~<50>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<52> さらに可塑剤を含有する、前記<1>~<51>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<53> 可塑剤が、好ましくはフタル酸エステルやコハク酸エステル、アジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等である、前記<1>~<52>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<54> 可塑剤の含有量が、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である、前記<1>~<53>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<55> 樹脂組成物が、好ましくは、さらに、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤;他の高分子材料;他の樹脂組成物を含有し、かかる添加剤の含有割合が、樹脂組成物中10質量%程度以下が好ましく、5質量%程度以下がより好ましい、前記<1>~<54>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<56> 樹脂組成物がゴム系樹脂を含有する場合、好ましくは、さらにカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、酸化マグネシウム、亜鉛華、ステアリン酸、プロセスオイル、植物油脂、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に配合されている各種添加剤が従来の一般的な量で配合される、前記<1>~<55>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<57> 水分含有量が、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である、前記<1>~<56>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<58> 好ましくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等、より好ましくは日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、電子部品などを構成する電子材料として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器として、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイとして、ダッシュボード、インストルメントパネル、フロア等の自動車部品等用いることができる、前記<1>~<57>いずれか1項に記載の樹脂組成物。
<59> 前記<1>~<58>いずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
<60> 好ましくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等、より好ましくは日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、電子部品などを構成する電子材料として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器として、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイとして、ダッシュボード、インストルメントパネル、フロア等の自動車部品等用いることができる、前記<59>に記載の成形体。
<61> a)樹脂と、b)セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなるセルロース繊維複合体を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
<62> セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる、樹脂組成物用添加剤であるセルロース繊維複合体。
<63> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、好ましくは0.18mmol/g以下、より好ましくは0.15mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下、さらに好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは実質的に0mmol/gである、前記<62>に記載のセルロース繊維複合体。
<64> セルロース分子内にカルボキシ基を有するセルロース繊維の複合体であって、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下であり、かつ、カルボキシ基に1~3級の炭化水素系アミンがイオン結合及び/又は共有結合を介して結合されてなるセルロース繊維複合体。
<65> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、好ましくは0.18mmol/g以下、より好ましくは0.15mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下、さらに好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは実質的に0mmol/gである、前記<64>に記載のセルロース繊維複合体。
<66> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.15mmol/g以下である、前記<62>又は<64>に記載のセルロース繊維複合体。
<67> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.1mmol/g以下である、前記<62>又は<64>に記載のセルロース繊維複合体。
<68> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、0.05mmol/g以下である、前記<62>又は<64>に記載のセルロース繊維複合体。
<69> 前記セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量が、実質的に0mmol/gである、前記<62>又は<64>に記載のセルロース繊維複合体。
【実施例
【0137】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温(室温)」とは25℃を示す。
【0138】
〔セルロース繊維の平均繊維径〕
セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
【0139】
〔セルロース繊維及びセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量〕
乾燥質量0.5gのセルロース繊維又はセルロース繊維複合体を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、セルロース繊維又はセルロース繊維複合体が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-50」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、式1により、セルロース繊維又はセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)・・・式1
【0140】
〔セルロース繊維及びセルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量〕
ビーカーに、セルロース繊維又はセルロース繊維複合体100.0g(固形分濃度1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え室温で16時間撹拌する。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒドを酸化処理したセルロース繊維又はセルロース繊維複合体を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品をセルロース繊維又はセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量を上記に記載の方法で測定し、酸化処理したセルロース繊維又はセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式2にてセルロース繊維又はセルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理したセルロース繊維又はセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量)-(セルロース繊維又はセルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量)・・・式2
【0141】
〔樹脂組成物の水分含有量〕
ハロゲン水分計MOC-120H(島津製作所社製)を用いて行った。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分濃度とし、下記式により水分濃度を求める。
水分濃度(%)=100-固形分濃度(%)
【0142】
微細セルロース繊維の調製例1(天然セルロースにN-オキシル化合物を作用させて得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
【0143】
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25g、臭化ナトリウム12.5g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて得られた酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、酸化パルプ3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、カルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1.3質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基含有量は0.27mmol/gであった。
【0144】
微細セルロース繊維の調製例2(アルデヒド基を還元処理したカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液)
ビーカーに微細セルロース繊維の調製例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液3846.15g(固形分濃度1.3質量%)に1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウムを2.63g仕込み、室温下3時間反応させアルデヒド還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行い、反応終了後イオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。得られたアルデヒド基を還元処理したカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基含有量は0.02mmol/gであった。
【0145】
微細セルロース繊維の調製例3(酸型処理して得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液)
ビーカーに微細セルロース繊維の調製例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液5300.00g(固形分濃度1.3質量%)にイオン交換水4043gを加え0.7質量%の水溶液とし、メカニカルスターラーにて室温下(25℃)、30分攪拌した。続いて1M塩酸水溶液を558g仕込み室温下、1時間反応させた。反応終了後イオン交換水にて洗浄を行い、塩酸及び塩を除去しカルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態の酸型セルロース繊維分散液(固形分濃度1.8質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基含有量は0.27mmol/gであった。
【0146】
微細セルロース繊維の調製例4(アルデヒド基を酸化処理したカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液)
ビーカーに微細セルロース繊維の調製例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液769.23g(固形分濃度1.3質量%)に、酢酸緩衝液(pH=4.8)を250g、亜塩素酸ナトリウムを4.50g、1-メチル-2-ブテンを3.30g仕込み、室温下16時間反応させアルデヒド酸化処理を行った。反応終了後イオン交換水にて洗浄を行い、1M塩酸水溶液を80.0g、イオン交換水を659g加え0.7質量%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行い、反応終了後イオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。得られたアルデヒド基を酸化処理したカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.81mmol/g、アルデヒド基含有量は0.04mmol/gであった。
【0147】
微細セルロース繊維の調製例5(天然セルロースにN-オキシル化合物を作用させて得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の分散液)
パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25g、臭化ナトリウム12.5g、次亜塩素酸ナトリウム23.5gの添加量とした以外は調製例1と同様にしてカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1.2質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.5nm、カルボキシ基含有量は1.18mmol/g、アルデヒド基含有量は0.17mmol/gであった。
【0148】
表1に、各調製例で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維の性質をまとめた。
【0149】
【表1】
【0150】
なお、下記で調製する微細セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量は、その原料である、調製例で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維のアルデヒド基含有量と同じであった。微細セルロース繊維複合体のアルデヒド基含有量の具体的な値を表3~6に示した。
【0151】
EO/PO共重合部を有するアミド(EOPO共重合アミン)の製造例
プロピレングリコール第三級ブチルエーテル132g(1mol)を1Lのオートクレーブに仕込み、75℃に加熱し、フレーク状の水酸化カリウム1.2gを加え、溶解するまで攪拌した。次いで、表2に示す量のエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を110℃で0.34MPaにて反応させた後、Magnesol 30/40(ケイ酸マグネシウム、ダラスグループ社製)7.14gを投入して95℃で中和し、得られた生成物をジ第三級ブチル-p-クレゾール 0.16gを添加、混合した後、濾過して、EO/PO共重合体であるポリエーテルを得た。
【0152】
一方、酸化ニッケル/酸化銅/酸化クロム(モル比:75/23/2)(和光純薬工業社)の触媒を充填した1.250mLの管状反応容器に上記で得られたポリエーテル(8.4mL/min)、アンモニア(12.6mL/min)及び水素(0.8mL/min)をそれぞれ供給した。容器の温度を190℃に維持し、圧力を14MPaに維持した。そして容器からの粗流出液を70℃及び3.5mmHgにて30分間留去した。得られたアミノ化ポリエーテル200g及び15%塩酸水溶液93.6gをフラスコに仕込み、反応混合物を100℃にて3.75時間加熱し、第三級ブチルエーテルを酸で開裂させた。そして生成物を15%の水酸化カリウム水溶液144gで中和した。次に中和された生成物を112℃で一時間減圧留去して濾過し、前記式(i)で表されるEO/PO共重合部を有するモノアミンを得た。なお、得られたモノアミンは、EO/PO共重合部とアミンが直接結合しており、式(i)におけるRは水素原子である。
【0153】
なお、アミン共重合部の分子量は、
1409〔EO分子量(44.03)×EO付加モル数(32)〕+522〔PO分子量(58.04)×PO付加モル数(9)〕+58.04〔出発原料中のPO部分分子量(プロピレングリコール)〕=1989
を四捨五入して2000と算出した。
【0154】
【表2】
【0155】
微細セルロース繊維複合体の製造例1(実施例1-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液200g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、表2に示す種類のアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基0.3molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0156】
微細セルロース繊維複合体の製造例2(比較例1-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、表2に示す種類のアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基0.3molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0157】
微細セルロース繊維複合体の製造例3(実施例2-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、プロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、プロピル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0158】
微細セルロース繊維複合体の製造例4(比較例2-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、プロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、プロピル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0159】
微細セルロース繊維複合体の製造例5(実施例2-2)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、ヘキシルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、ヘキシル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0160】
微細セルロース繊維複合体の製造例6(比較例2-2)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、ヘキシルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、ヘキシル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0161】
微細セルロース繊維複合体の製造例7(実施例2-3)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、テトラブチルアンモニウム基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0162】
微細セルロース繊維複合体の製造例8(比較例2-3)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、テトラブチルアンモニウム基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0163】
微細セルロース繊維複合体の製造例9(実施例2-4)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、ジエタノールアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、ジエタノール基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0164】
微細セルロース繊維複合体の製造例10(比較例2-4)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、ジエタノールアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、ジエタノール基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0165】
微細セルロース繊維複合体の製造例11(実施例2-5)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、EO/PO共重合アミン製造例で作成したEOPO共重合アミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0166】
微細セルロース繊維複合体の製造例12(比較例2-5)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、EO/PO共重合アミン製造例で作成したEOPO共重合アミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0167】
微細セルロース繊維複合体の製造例13(実施例2-6)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、ジプロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、ジプロピル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0168】
微細セルロース繊維複合体の製造例14(比較例2-6)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、ジプロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、ジプロピル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0169】
微細セルロース繊維複合体の製造例15(実施例2-7)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アニリンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、還元処理した微細セルロース繊維に、フェニル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0170】
微細セルロース繊維複合体の製造例16(比較例2-7)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、アニリンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、フェニル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0171】
微細セルロース繊維複合体の製造例17(実施例2-8)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、プロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量、縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)を微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して3molに相当する量、N-メチルモルホリン(NMM)を微細セルロース繊維のカルボキシ基に対して2molに相当する量を仕込み、DMF1000g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMT-MM塩を除去することで、還元処理した微細セルロース繊維に、プロピル基がアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0172】
微細セルロース繊維複合体の製造例18(比較例2-8)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、プロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量、縮合剤であるDMT-MMを微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して3molに相当する量、NMMを微細セルロース繊維のカルボキシ基に対して2molに相当する量を仕込み、DMF1000g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMT-MM塩を除去することで、微細セルロース繊維に、プロピル基がアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0173】
微細セルロース繊維複合体の製造例19(実施例2-9)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例4で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、プロピルアミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.0molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、酸化処理した微細セルロース繊維に、プロピル基がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0174】
実施例1-1、比較例1-1
<可塑剤と微細セルロース繊維複合体の混合物の製造>
微細セルロース繊維複合体の製造例1及び2で製造した微細セルロース繊維複合体の分散液に、可塑剤(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、花王社製)を表3に示す配合量となるよう添加して超音波ホモジナイザー(US-300E、日本精機製作所社製)にて2分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)にて100MPaで2パス、150MPaで1パス微細処理させた。該均一混合物をガラスシャーレに注ぎ、2日間40℃で真空乾燥を行い、可塑剤と微細セルロース繊維複合体の混合物を製造した。
【0175】
<ポリ塩化ビニル樹脂組成物>
ポリ塩化ビニル樹脂100部に対して、上記で得られた可塑剤と微細セルロース繊維又はその複合体の混合物に表3に示す配合組成の成分を50ミリリットルの密閉型ミキサーで170℃で10分間混練し、ポリ塩化ビニル樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を15×15×0.2cmの金型中で175℃で4分半予熱後に、1分半加圧(圧力:5kg/cm)し、ポリ塩化ビニルシートを調製し、その物性を評価した。
【0176】
実施例2-1
<ゴム組成物>
微細セルロース繊維複合体の製造例3で得られた微細セルロース繊維複合体を用いてゴム組成物を製造した。表4に示す配合組成において、酸化マグネシウム(加硫剤、和光純薬工業社製)と酸化亜鉛(加硫促進剤、和光純薬工業社製)とステアリン酸(ルナックS-70、花王社製)を除く成分を50ミリリットルの密閉型ミキサーで6分間混練し、温度が90℃に達したときに容器を開放して混合物を得た。該混合物に酸化マグネシウムと酸化亜鉛とステアリン酸を加えて50ミリリットルの密閉型ミキサーで3分間混練し、温度が90℃に達したときに容器を開放して未加硫のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫処理をして加硫ゴムシートを調製した。
【0177】
実施例2-2~2-9及び比較例2-1~2-8
微細セルロース繊維複合体の製造例3で製造した微細セルロース繊維複合体を、表4又は5に示す微細セルロース繊維複合体に変更したこと以外は実施例2-1と同様にして加硫ゴムシートを調製した。
【0178】
得られたポリ塩化ビニル樹脂組成物とゴム組成物の加硫ゴムシートの特性について、下記の試験例1の方法に従って評価した。結果を表3~5に示す。なお、ポリ塩化ビニル樹脂組成物については、ポリ塩化ビニル複合体シートを作製し、その際の成型性として、シート化が可能であった場合を「G」、シート化が不可能であった場合を「NG」と評価した。
【0179】
試験例1(5%質量減少温度)
熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名「STA7200」)を用いて、およそ1mgのサンプルをアルミパンに乗せ、窒素雰囲気下、40℃から300℃まで、1分間に10℃の割合で温度を上昇させて質量減少を計測した。100℃における質量を100%として5%質量が減少する温度を算出した。5%質量減少温度が高いほど耐熱性に優れていることを示す。
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
微細セルロース繊維複合体の製造例20(実施例3-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度2.0質量%)を仕込んだ。続いて、EO/PO共重合アミン製造例で作成したEOPO共重合アミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基0.1molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMFに溶媒置換することで、還元処理した微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0184】
微細セルロース繊維複合体の製造例21(実施例3-2)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例5で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.2質量%)を仕込んだ。続いて、EO/PO共重合アミン製造例で作成したEOPO共重合アミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基0.1molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMFに溶媒置換することで、還元処理した微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0185】
微細セルロース繊維複合体の製造例22(比較例3-1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例3で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液300g(固形分濃度1.8質量%)を仕込んだ。続いて、EO/PO共重合アミン製造例で作成したEOPO共重合アミンを、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基0.1molに相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄することで、微細セルロース繊維に、EOPO共重合体がイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
【0186】
<エポキシ樹脂組成物>
実施例3-1
製造例20で製造した微細セルロース繊維複合体5質量部に、エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER828)100質量部、硬化剤(2-エチル-4-メチルイミダゾール、和光純薬工業社製)5質量部及び溶媒(DMF)340質量部を添加して、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所社製、商品名:US-300E)にて2分間撹拌した。その後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで3パス微細処理し、さらに撹拌器(シンキー社製、商品名:あわとり練太郎)を用いて7分間撹拌した。得られた溶液をバーコーターを用いて塗工し、80℃で60分乾燥し溶媒を除去した後、150℃で60分熱硬化させてエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0187】
実施例3-2及び比較例3-1
製造例20で製造した微細セルロース繊維複合体に代えて、製造例21(実施例3-2)又は製造例22(比較例3-1)で製造した微細セルロース繊維複合体を使用したこと以外は実施例3-1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0188】
試験例2(1%質量減少温度)
熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名「STA7200」)を用いて、およそ1mgのサンプルをアルミパンに乗せ、窒素雰囲気下、40℃から300℃まで、1分間に10℃の割合で温度を上昇させて質量減少を計測した。100℃における質量を100%として1%質量が減少する温度を算出した。1%質量減少温度が高いほど耐熱性に優れていることを示す。結果を表6に示す。
【0189】
【表6】
【0190】
表3~6より、同じ修飾基によって改質されたものであっても、アルデヒド基含有量が0.20mmol/g以下の複合体を含有する実施例の樹脂組成物は、樹脂の種類に関係なく耐熱性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。