(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ドア作動制御システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/77 20150101AFI20230209BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230209BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20230209BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20230209BHJP
【FI】
E05F15/77
B60J5/04 C
B60R25/24
E05F15/73
(21)【出願番号】P 2018105006
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩下 明暁
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160732(JP,A)
【文献】特開2015-113575(JP,A)
【文献】特開2015-124530(JP,A)
【文献】特開2014-226942(JP,A)
【文献】特開2012-149474(JP,A)
【文献】特開2016-98496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F15/00-15/79
E05B49/00
B60J5/04
B60R25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーに所持される電子キーに設けられ、当該電子キーに発生する動きを検出する変位検出部と、
前記変位検出部の出力に基づいて前記電子キーに規定のモーション操作が発生したかどうかを判定するモーション操作判定部と、
前記モーション操作判定部の判定に基づいて前記電子キーの通信相手に設けられるモーション操作対象ドアを作動させるモーション作動部とを備え、
前記モーション操作判定部は、前記モーション操作対象ドアの作動状態に基づき、前記モーション操作の判定基準を変更するドア作動制御システムであって、
前記モーション操作判定部は、前記変位検出部の出力を演算した演算値と判定閾値との対比に基づいて前記モーション操作が発生したかどうかを判定するとともに、前記モーション操作が発生した
と判定したことに伴って前記モーション操作対象ドアが作動中である場合
には、
前記モーション操作が発生せずに前記モーション操作対象ドアが作動していない
場合における、前記モーション操作が発生したかどうかの判定に供される前記判定閾値から別の値
となる前記判定閾値
に変更
することによって前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易くするドア作動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの作動を制御するドア作動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のドア作動制御システムでは、モーション操作に基づいて、車両の自動開閉ドア(パワースライドドア等)の開閉を制御している。モーション操作とは、電子キーを所持したユーザーが規定の動きを再現することで、その再現に基づいて車両の自動開閉ドアの開閉を制御させるための操作のことをいう。このモーション操作によるドアの開閉制御では、たとえば、電子キーに設けられた操作部を操作することなく、また、車両の自動開閉ドアの操作部を操作することなく、ドアの開閉が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドア作動制御システムにおいて、ドアの開作動及び閉作動しているときに、モーション操作によって別の作動(例えばドアの移動の停止)をさせることがある。例えば、開方向に移動するパワースライドドアをモーション操作によって移動途中の位置で停止させる場合、電子キーを所持したユーザーは、規定のモーション操作を行う。このような状況において、電子キーを所持したユーザーに課す規定のモーション操作について、作動を開始させる場合と作動を停止させる場合とで、それぞれ異なる判定基準にしたいというニーズがあった。
【0005】
本発明の目的は、ドア作動制御システムにおいて、ユーザーの意思に沿った作動を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのドア作動制御システムは、ユーザーに所持される電子キーに設けられ、当該電子キーに発生する動きを検出する変位検出部と、前記変位検出部の出力に基づいて前記電子キーに規定のモーション操作が発生したかどうかを判定するモーション操作判定部と、前記モーション操作判定部の判定に基づいて前記電子キーの通信相手に設けられるモーション操作対象ドアを作動させるモーション作動部とを備え、前記モーション操作判定部は、前記モーション操作対象ドアの作動状態に基づき、前記モーション操作の判定基準を変更する。
【0007】
この構成によれば、モーション操作判定部におけるモーション操作の発生に関する肯定判定をモーション操作対象ドアの作動状態に合わせて変化させている。例えば、モーション操作対象ドアが作動中にその作動を停止させる場合は、作動を開始させる場合とは異なる判定基準のモーション操作によって停止させる。この場合、モーション操作対象ドアを停止させたいユーザーの意思を反映させ易くなり、それだけ、ユーザーの意思に沿った作動を可能にする。
【0008】
前記ドア作動制御システムは、前記モーション操作判定部は、前記モーション操作対象ドアが作動中である場合、前記モーション操作対象ドアが作動していない場合より前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い判定基準に変更することが好ましい。
【0009】
作動中であるモーション操作対象ドアをモーション操作によって停止させようとする場合、例えばユーザーが慌ててモーション操作を行ってしまうと、モーション操作が不十分となることがある。この場合、モーション操作対象ドアを停止させることができず、ユーザーの意思を反映することができない。一方、上記構成によれば、モーション操作対象ドアが作動中である場合、電子キーを所持したユーザーの動きについて、モーション操作対象ドアが作動していない場合よりモーション操作が発生したと肯定判定し易くなる。このようにモーション操作によってモーション操作対象ドアの作動を止めたい場合、ユーザーの意思を反映し易くなり、ユーザーの意思に沿った作動を可能にするのに一層有利となる。
【0010】
前記ドア作動制御システムにおいて、前記モーション操作判定部は、前記変位検出部の出力を演算した演算値と判定閾値との対比に基づいて前記モーション操作が発生したかどうかを判定するとともに、前記モーション操作対象ドアが作動中である場合、前記モーション操作対象ドアが作動していないときとは別の値に前記判定閾値を変更することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、判定閾値を変更するという簡易な方法により、モーション操作の発生を肯定判定し易い状態に切り替えることが可能となる。よって、制御構成が複雑化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドア作動制御システムは、ユーザーの意思に沿った作動を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ドア作動制御システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ドア作動制御システムの一実施形態を、
図1~
図4に従って説明する。
図1に示すように、通信相手としての車両1は、電子キー2と無線によるID照合を行う電子キーシステム3を備える。本例の電子キーシステム3は、車両1からの通信を契機に狭域無線(通信距離が数m)によってID照合を実行するキー操作フリーシステムである。なお、以降は、キー操作フリーシステムによるID照合を「スマート照合」と記すとともに、その通信を「スマート通信」と記す。
【0015】
車両1は、ID照合(スマート照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5と、パワースライドドア(スライドドア6)の作動を制御するパワースライドドアECU7と、エンジン8を制御するエンジンECU9とを備えている。これらECUは、車内の通信線10を通じて接続されている。通信線10は、例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)からなる。照合ECU4のメモリ11には、車両1に登録された電子キー2の電子キーIDが書き込み保存されている。
【0016】
車両1のボディECU5は、手動ドア12を施解錠するメカ部分としてのドアロック機構15の作動を制御する。車両1は、例えば運転席ドアや助手席ドア等の手動ドア12を備える。手動ドア12には、手動ドア12の開閉を操作するための車外ドアハンドル13が設けられている。車外ドアハンドル13には、例えばドア解錠するときのトリガとして車外ドアハンドル13に対するユーザーのタッチ操作を検出するタッチセンサ(図示略)と、ドア施錠するときに操作するドア操作部14が設けられている。ボディECU5は、タッチセンサやドア操作部14の検出信号を基に、ドアロック機構15の作動を制御する。
【0017】
車両1は、室外に電波を送信する室外送信機16と、室内に電波を送信する室内送信機17と、車両1において電波を受信する車両受信機18とを備える。室外送信機16及び室内送信機17は、例えばLF(Low Frequency)帯の電波を送信する。車両受信機18は、例えばUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する。
【0018】
電子キー2は、電子キー2の動作を制御するキー制御部20と、電子キー2において電波を受信する受信部21と、電子キー2において電波を送信する送信部22とを備えている。キー制御部20のメモリ23には、電子キー2が有する固有のIDである電子キーIDが書き込み保存されている。受信部21は、例えばLF電波を受信する。送信部22は、例えばUHF電波を送信する。
【0019】
電子キー2は、電子キー2の遠隔操作によってドアロック機構15の作動を実行させるために操作するキー操作部24を備えている。キー操作部24には、例えば、手動ドア12の施解錠などの機能が割り当てられている。キー操作部24は、操作されると検出信号をキー制御部20に出力する。キー制御部20は、キー操作部24の検出信号を入力した場合、電子キー2の送信部22に施錠要求信号又は解錠要求信号を車両1へ送信させる。車両1は、これらを受信するとID照合が成立していることを前提に、手動ドア12の施解錠を行う。
【0020】
図2に示すように、室外送信機16は、車両1の周囲一帯に、室外通信エリアEaを形成する。室外通信エリアEaは、例えば、
図2に一点鎖線で示すとおりである。なお、本例の室外通信エリアEaは、運転席側の手動ドア12と助手席側の手動ドア12と車両後方の手動ドア12(バックドア)とに設けられた室外送信機16による3つのエリアを図示しているが、配置する室外送信機16の場所及び個数に応じて、室外通信エリアEaを適宜変更してもよい。室内送信機17は、車両1の室内に設けられ、室内一帯に、室内通信エリアEbを形成する。室内通信エリアEbは、例えば、
図2に二点鎖線で示すとおりである。室外送信機16及び室内送信機17は、電子キー2を探索すべくウェイク信号を定期的にLF送信し、ウェイク信号の受信に対する応答(アック)を電子キー2から返信させる。
【0021】
電子キー2が室外通信エリアEaの外方から室外通信エリアEaに進入して車両1及び電子キー2の間で通信(室外スマート通信)が確立すると、スマート照合(室外スマート照合)が開始される。スマート照合には、車両1が持つ固有の車両コードを認証する車両コード照合と、暗号鍵を使用したチャレンジレスポンス認証と、電子キーIDを認証する電子キーID照合とが含まれる。照合ECU4は、室外送信機16の送信電波に対する電子キー2の応答を受信し、電子キー2との間でスマート照合の全てが成立する場合に、室外スマート照合が成立されたとみなす。本例では、室外スマート照合が成立した状態において、手動ドア12の車外ドアハンドル13又はドア操作部14が操作されると、手動ドアの施解錠が実行される。なお、電子キー2のキー操作部24が操作された場合は、電子キー2から施錠要求信号や解錠要求信号が車両1に送信されて、手動ドア12が施解錠される。
【0022】
照合ECU4は、電子キー2が室外通信エリアEaから室内通信エリアEbに進入して通信(室内スマート通信)が確立すると、室外のときと同様のスマート照合(室内スマート照合)を実行する。照合ECU4は、室内送信機17の送信電波に対する電子キー2の応答を受信し、電子キー2との間で、スマート照合の全てが成立する場合に、室内スマート照合が成立されたとみなす。照合ECU4は、室内スマート照合が成立する場合、車両電源の遷移を許可する。これにより、例えばブレーキペダルを踏み込んだ状態でエンジンスイッチ25が操作されると、エンジンが始動する。
【0023】
車両1は、モーション操作対象ドアとしてのスライドドア6を備えている。スライドドア6は、略直線往復動する自動開閉が可能なドアである。スライドドア6は、スライドドア6の開閉作動を実行するために操作する車外ドアハンドル26を備えている。また、車両1は、スライドドア6の開閉作動を実行するために操作されるパワースライドドアスイッチ27を運転席等に備えている。
【0024】
車両1は、スライドドア6の作動を制御するパワースライドドアECU7を備えている。パワースライドドアECU7は、スライドドア6の開閉作動の駆動源となるパワースライドドアモータ28と、スライドドア6を施解錠するメカ部分としてのドアロック機構29とを制御する。車外ドアハンドル26及びパワースライドドアスイッチ27は、操作されるとパワースライドドアECU7へ検出信号を出力する。パワースライドドアECU7は、車外ドアハンドル26又はパワースライドドアスイッチ27からの検出信号が入力されると、ドアロック機構29及びパワースライドドアモータ28を作動させる。
【0025】
例えば、パワースライドドアECU7は、スライドドア6が施錠状態且つ閉状態のとき、ID照合が成立している状態において車外ドアハンドル26又はパワースライドドアスイッチ27が操作されると、ドアロック機構29にスライドドア6の解錠を実行させる。そして、スライドドア6の解錠が完了すると、パワースライドドアECU7は、パワースライドドアモータ28を一方向に回転させることにより、スライドドア6を開作動させる。また、例えば、スライドドア6が開状態のとき、車外ドアハンドル26やパワースライドドアスイッチ27が操作されると、パワースライドドアECU7は、パワースライドドアモータ28を他方向に回転させ、スライドドア6を閉作動させる。そして、スライドドア6が閉状態になると、パワースライドドアECU7は、ドアロック機構29にスライドドア6の施錠を実行させる。
【0026】
ドア作動制御システム30は、電子キー2を所持したユーザーの規定のモーション操作によって、例えば、電子キー2のキー操作部24や車両1の車外ドアハンドル26等を操作することなくモーション操作対象ドアを作動させるモーション操作機能を備える。本例のモーション操作機能は、スマート照合が成立していることを前提に、モーション操作に基づいて閉状態のスライドドア6を開ける開作動を有する。モーション操作による一連の開作動には、スライドドア6が施錠されている場合は、解錠を行うことを含んでもよい。なお、本例の場合、スライドドア6がモーション操作対象ドアであり、手動ドア12はモーション操作対象ドアではない。
【0027】
電子キー2は、電子キー2の動きを検出する変位検出部31を備える。変位検出部31は、電子キー2に発生する動きに応じた検出信号Saをキー制御部20に出力する。変位検出部31は、例えば加速度センサ、角速度センサ、振動センサ、又は、それらセンサの組み合わせ等であることが好ましい。変位検出部31は、例えばX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の動きを検出することにより、電子キー2に発生する動きを監視する。
【0028】
ドア作動制御システム30は、変位検出部31の出力を基に電子キー2に規定のモーション操作が発生したかどうかを判定するモーション操作判定部32を備える。本例のモーション操作判定部32は、キー制御部20に設けられる。本例のモーション操作判定部32は、変位検出部31の検出信号Saを、メモリ23に格納された演算式Yによって演算する。そして、モーション操作判定部32は、その演算によって求まる演算値が判定閾値以上である場合に、電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定する。
【0029】
図3に示すように、本例の演算式Yは、事前に取り込まれた学習データから学習装置40によって生成される。学習装置40は、データ入力部41と、特徴量抽出部42と、前処理部43と、学習部44とを備えている。データ入力部41は、情報データDaを入力する。情報データDaは、例えば、加速度センサから出力された加速度信号である。特徴量抽出部42は、集められた情報データDaの群から1次特徴量x1を抽出する。1次特徴量x1は、例えば、加速度信号の波形に係る「平均値」、「最大値」、「最小値」、「時間幅」、「傾き」などのパラメータからなる。前処理部43は、特徴量抽出部42から抽出された1次特徴量x1を処理し、2次特徴量x2を生成する。2次特徴量x2は、1次特徴量x1を2乗した値及び異なる1次特徴量x1を掛け合わせた値などの計算値である。学習部44は、1次特徴量x1及び2次特徴量x2を学習データとして入力し、未学習データに対して正しい出力を示せるように学習を行う。学習部44は、例えば、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)によるパターン認識を行う。学習部44は、情報データDaから抽出された複数の学習データから、2クラス判別のための演算式Yを求める。
【0030】
本例では、モーション操作判定部32は、未学習データとして変位検出部31の検出信号Saを入力すると演算式Yによって演算値を得る。モーション操作判定部32は、電子キー2に発生した動きが規定のモーション操作に近似であるほど大きい演算値を得る。よって、例えば、規定のモーション操作よりも小さい動き、大きい動き、早い動き、遅い動き、及びこれらの組み合わせである動きが発生した場合には、演算値は小さくなる。規定のモーション操作は、例えば直立した状態から両足つま先立ちをして、元に戻す(かかとを地面つける)両かかとタップであることが挙げられる。
【0031】
本例の判定閾値は、第1の閾値と、この第1の閾値よりも小さい第2の閾値とからなる。第1の閾値及び第2の閾値は、キー制御部20のメモリ23にそれぞれ記憶されている。モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動していない場合、演算値が第1の閾値以上であればモーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定する。モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動中である場合、演算値が第2の閾値以上であればモーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定する。
【0032】
本例では、モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動していない状況において電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定した場合に、判定閾値を小さくする。具体的には、モーション操作判定部32は、電子キー2に規定のモーション操作が発生したと第1の閾値に基づき肯定判定してから一定時間の間、判定閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更する。モーション操作判定部32は、一定時間の経過後、又は、第2の閾値に基づきモーション操作の発生を肯定判定した場合に、判定閾値を第2の閾値から第1の閾値に戻す。本例において一定時間とは、スライドドア6の開作動が開始してから完了するまでの時間に基づいて規定されている。
【0033】
キー制御部20は、モーション操作判定部32によって電子キー2に規定のモーション操作が発生したと肯定判定した場合、制御信号Scを、送信部22を介して車両1へ送信する。制御信号Scは、例えばスライドドア6を作動させることを要求するコマンドと、電子キーIDとを含む信号であることが好ましい。
【0034】
ドア作動制御システム30は、モーション操作判定部32の判定に基づいてスライドドア6を作動させるモーション作動部51を備える。本例のモーション作動部51は、パワースライドドアECU7に設けられている。モーション作動部51は、スライドドア6が作動していない場合に、制御信号Scを受信すると、スライドドア6の開作動を実行する。ここで、スライドドア6が作動していない場合とは、スライドドア6が閉状態又は半ドア状態であるかは問わない。
【0035】
ドア作動制御システム30は、モーション操作判定部32の判定に基づいてスライドドア6の作動を停止させるモーション停止部52を備える。本例のモーション停止部52は、パワースライドドアECU7に設けられている。モーション停止部52は、スライドドア6が作動中の場合に、制御信号Scを受信すると、スライドドア6の作動を途中で停止させる。例えば、スライドドア6が開方向に移動しているとき、制御信号Scを受信した場合、モーション停止部52は、スライドドア6をその時点の位置で停止させる。
【0036】
次に、
図2及び
図4を用いて、ドア作動制御システム30の作用及び効果を説明する。
図2に示すように、電子キー2を所持したユーザーが室外通信エリアEaにおいて、スライドドア6の開作動を実行するべく規定のモーション操作を再現した後、さらにその開作動を停止させるべく再度モーション操作を再現した場合を説明する。手動ドア12及びスライドドア6は、施錠状態且つ閉状態であるとする。
【0037】
図4に示すように、ステップS101では、モーション操作判定部32は、電子キー2に規定のモーション操作が発生したかどうかを判定する。ここではモーション操作判定部32は、変位検出部31の検出信号Saを演算式Yに通して求めた演算値が第1の閾値以上である場合に、電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定する。キー制御部20は、モーション操作判定部32が肯定判定した場合、ステップS102に移行する。キー制御部20は、モーション操作判定部32が肯定判定するまで電子キー2に発生する動きを監視し続ける。
【0038】
ステップS102では、キー制御部20は、モーション操作判定部32の肯定判定に基づき、制御信号Scを車両1へ送信する。車両1は、制御信号Scを受信すると、パワースライドドアECU7のモーション作動部51によってスライドドア6の開作動を開始させる。
【0039】
ステップS103では、モーション操作判定部32は、ステップS101においてモーション操作が発生したと肯定判定してから一定時間の間、判定閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更する。
【0040】
ステップS104では、キー制御部20は、モーション操作判定部32によって電子キー2に規定のモーション操作が発生したかどうかを判定する。ところで、スライドドア6の開作動中に、スライドドア6の開作動を緊急に停止させたい場合がある。この場合、ユーザーは、スライドドア6を開作動させたときと同じモーション操作を実行することになるが、モーション操作を慌てて再現した場合、これが正規のモーション操作に沿わない可能性が高い。しかし、本例の場合、モーション操作判定の判定閾値が第1の閾値から第2の閾値に変更されているので、演算値が判定閾値以上となる状態に移行できる。すなわち、モーション操作が規定通り正しく再現されなくても、モーション操作判定部32は、電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定することが可能となる。キー制御部20は、モーション操作判定部32が肯定判定した場合、ステップS105に移行する。一方、キー制御部20は、モーション操作判定部32がステップS101においてモーション操作が発生したと肯定判定してから一定時間の間に、肯定判定をしなかった場合、ステップS106に移行する。
【0041】
ステップS105では、キー制御部20は、モーション操作判定部32の肯定判定に基づき、制御信号Scを車両1へ送信する。車両1は、スライドドア6の作動中(開動中)に制御信号Scを受信すると、パワースライドドアECU7のモーション停止部52によってスライドドア6の開作動を停止させる。この場合、スライドドア6は、開方向へ移動する途中の位置で停止する。
【0042】
ステップS106では、モーション操作判定部32は、判定閾値を第1の閾値に戻す。仮に、ステップS104でモーション操作判定部32が電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定しなかった場合は、モーション作動部51は、スライドドア6の開作動を最後まで実行する。
【0043】
本例では、モーション操作判定部32は、スライドドア6の作動状態に基づき、モーション操作の判定基準を変更した。この構成によれば、スライドドア6が作動中にその作動を停止させる場合は、作動を開始させる場合とは異なる判定基準のモーション操作によって停止させる。この場合、スライドドア6を停止させたいユーザーの意思を反映させ易くなり、それだけ、ユーザーの意思に沿った作動を可能にする。
【0044】
本例では、モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動中である場合、スライドドア6が作動していない場合よりモーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易くした。この構成によれば、モーション操作によってスライドドア6の作動を停止したい場合、ユーザーの意思を反映し易くなり、ユーザーの意思に沿った作動を可能にするのに一層有利となる。
【0045】
本例では、モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動中である場合、スライドドア6が作動していないときとは別の値に判定閾値を変更する構成とした。この構成によれば、モーション操作判定部32は、判定閾値を変更するという簡易な方法により、モーション操作の発生を肯定判定し易い状態に切り替えることが可能となる。よって、制御構成が複雑化することを抑制できる。
【0046】
本例では、モーション操作判定部32は、電子キー2に設けられるとともに、スライドドア6が作動していない状況において電子キー2にモーション操作が発生したと肯定判定した場合に、モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い状態に変更する。この構成によれば、モーション操作判定部32は、モーション操作によってモーション操作対象ドアを作動させた後、再びモーション操作によってモーション操作対象ドアの作動を停止する場合に、モーション操作の発生を肯定判定し易くすることができる。また、モーション操作判定部32が電子キー2に設けられることによりモーション操作の発生を肯定判定し易くするための一連の制御を電子キー2内で実施できるため、電子キー2と車両1との間の通信が複雑化することを抑制できる。
【0047】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・本実施形態において、モーション操作判定部32は、操作部(車外ドアハンドル13、ドア操作部14、キー操作部24、及び車外ドアハンドル26等)が操作された状況において、スライドドア6が作動中である場合に、判定閾値を小さくする構成としてもよい。この構成によれば、例えば、車外ドアハンドル13がタッチ操作を検出した後で、モーション作動部51によってスライドドア6が作動中である場合に、モーション操作判定部32は、判定閾値を小さくする。ところで、モーション操作判定部32は、モーション操作とそれに近似の動きとの判別が難しいため、モーション操作に近似の動きが電子キー2に発生したに過ぎない場合でもモーション操作が発生したと肯定判定することがある。これは、ユーザーが意図しないスライドドア6の作動停止が発生してしまうことに繋がる。上記構成は、モーション操作判定部32がスライドドア6が作動中である場合にいつでも判定閾値を小さくする場合と比較して、この問題点を解消するのに効果が高い。また、操作部が操作された状況ではユーザーがモーション操作を必要としていないことを前提とすると、この状況下で発生したモーション作動部51によるスライドドア6の開作動及び閉作動は、モーション操作に近似の動きが発生したことによる作動である可能性が高い。上記構成によれば、モーション作動部51によるスライドドア6の開作動及び閉作動がモーション操作に近似の動きが発生したことによる作動である可能性が高い場合については、その作動を容易に停止することができるため、その点において応答性を確保できる。また、ユーザーがモーション操作を必要としていない場合には、操作部が操作された状況だけでなく、手動ドア12が開いている状況や、電子キー2が室内にある状況等も挙げられる。これらの状況下においても、スライドドア6が作動中である場合に判定閾値を小さくしてもよい。
【0048】
・本実施形態において、モーション操作判定部32が電子キー2にモーション操作が発生したと判定した場合に、判定閾値を小さくする構成としたが、この場合に限定されない。例えば、スライドドア6が作動中であることをパワースライドドアECU7によって検知しているときに、その旨の報知信号を車両1の室外送信機16及び室内送信機17から電子キー2へ送信する。そして、電子キー2がこの報知信号を受信している場合に、モーション操作判定部32が判定閾値を小さくするようにしてもよい。すなわち、モーション操作対象ドアが作動中である場合に、モーション操作判定部32が判定閾値を小さくすればよい。
【0049】
・本実施形態において、モーション作動部51によるスライドドア6の作動は、開作動に限定されず、閉作動を含んでいてもよい。
・本実施形態において、モーション停止部52によるスライドドア6の作動の停止は、開作動を停止させることに限られない。例えば、スライドドア6の閉作動をその途中の位置で停止させてもよい。
【0050】
・本実施形態において、モーション停止部52は、スライドドア6の作動の停止をした後に、反転させる作動を実行してもよい。例えば、モーション停止部52は、開方向へ移動中のスライドドア6を停止させた後、閉方向へ移動させてもよい。
【0051】
・本実施形態において、モーション操作が発生したとモーション操作判定部32が肯定判定し易くするための構成は、判定閾値を小さくすることに限定されない。例えば、判定閾値と演算値との対比において、肯定判定し易くなるように、演算値を補正したり、検出信号を補正したり、演算式Yを変更したりするのでもよい。すなわち、スライドドア6が作動中である場合、スライドドア6が作動していない場合よりも肯定判定し易くなっていればよい。
【0052】
・本実施形態において、モーション操作判定部32は、スライドドア6が作動中である場合、スライドドア6が作動していない場合よりモーション操作を肯定判定し難い判定基準に変更してもよい。
【0053】
・本実施形態において、モーション操作判定部32が用いる演算式Yは、学習装置40によって生成されたものに限定されない。すなわち、演算式Yは機械学習で生成されることに限定されない。ただし、機械学習によって生成した演算式Yを用いることにより、モーション操作判定部32は、モーション操作とそれに近似の動きとを精度よく判別することが期待できる。
【0054】
・本実施形態において、モーション操作の規定の動きは、両かかとタップに限定されない。例えば、複数回の屈伸動作としてもよい。また、一つの動作に限定されず、例えば、屈伸→静止→屈伸等、複数の動きを組み合わせたものでもよい。
【0055】
・本実施形態において、電子キー2から変位検出部31の検出信号Saをそのまま車両1に送信し、車両1側で動きの判定を行ってもよい。すなわち、モーション操作判定部32は、車両1側に設けられてもよい。
【0056】
・本実施形態において、変位検出部31は、モーションセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等、種々の部材が適用可能である。
・本実施形態において、モーション操作対象ドアは、スライドドア6に限定されない。例えば、自動で開閉可能なラッゲージドアやバックドア等の他のドアに変更可能である。
【0057】
・本実施形態において、電子キーシステム3は、高機能携帯電話等を電子キー2として用いたシステムとしてもよい。
・本実施形態において、ID照合に使用される車両1及び電子キー2間の無線通信の帯域は、特に限定されない。また、通信方式も種々の態様に変更してもよい。
【0058】
・本実施形態において、電子キーシステム3は、車両1から定期送信されるLF電波を電子キー2が受信した場合に電子キー2が電子キーIDをUHF送信して照合させるシステムに限定されない。要は、電子キー2の正否を無線により確認できるシステムであればよい。
【0059】
・本実施形態において、通信相手は、車両1に限らず、他の機器や装置に変更可能である。
次に、上述した実施形態やその変形例から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
【0060】
(イ)前記ドア作動制御システムにおいて、前記通信相手に設けられたドアの作動を実行するために操作する操作部を備え、前記モーション操作判定部は、前記操作部が操作された状況において、前記モーション操作対象ドアが作動中である場合に、前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い判定基準に変更する。
【0061】
(ロ)前記ドア作動制御システムにおいて、前記モーション操作判定部は、前記通信相手に設けられた前記モーション操作対象ドアではないドアが開状態である状況において、前記モーション操作対象ドアが作動中である場合に、前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い判定基準に変更する。
【0062】
(ハ)前記ドア作動制御システムにおいて、前記モーション操作判定部は、前記電子キーが前記通信相手の室内に位置している状況において、前記モーション操作対象ドアが作動中である場合に、前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い判定基準に変更する。
【0063】
(ニ)前記ドア作動制御システムにおいて、前記モーション操作判定部は、事前に取り込まれた学習データから学習装置によって生成された演算式を用いて、前記変位検出部の検出結果を演算した演算値が閾値以上であるかを判定することにより前記モーション操作が発生したかどうかを判定する。
【0064】
(ホ)前記ドア作動制御システムにおいて、前記モーション操作判定部は、前記電子キーに設けられるとともに、前記モーション操作対象ドアが作動していない状況において前記電子キーに前記モーション操作が発生したと肯定判定した場合に、前記モーション操作が発生したかどうかの判定を肯定判定し易い判定基準に変更する。
【符号の説明】
【0065】
1…車両、2…電子キー、3…電子キーシステム、4…照合ECU、6…スライドドア、7…パワースライドドアECU、30…ドア作動制御システム、31…変位検出部、32…モーション操作判定部、51…モーション作動部、52…モーション停止部。