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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】吊り下げ支持装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 35/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B65G35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018173180
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020045190
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿添 義治
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-126754(JP,A)
【文献】実開昭54-043010(JP,U)
【文献】特開2001-048005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/00-37/02
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを上方から吊り下げ支持する複数の支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
前記レールは逆T字形の内部空間を有し、
前記複数の支持ブラケットは、互いにレールの長さ方向に距離をおいて設けられており、
前記支持ブラケットは、前記内部空間に挿入可能な上下方向の逆T字形に形成されて、フランジとウエブとを有し、
前記フランジは、レールの長さ方向に沿った一端が他端よりも上側に位置するように、水平方向に対して傾斜した姿勢で形成されており、
前記レールの内部空間に支持ブラケットが挿入されるように、これらレールと支持ブラケットとが相互に嵌め合わされて、支持ブラケットによってレールを水平方向に支持したときに、前記フランジの一端は、レールからレールの重量にもとづく下向きの荷重を受けるとともに、前記フランジの他端は、レールからレールの重量にもとづく上向きの荷重を受けて、レールとフランジとの間に作用する摩擦力によりレールをフランジに対して保持させるように構成されており、
前記走行体は、前記レールにおける上向きに凸形状の走行案内面に沿って転動する走行輪を備えるとともに、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であり、かつ前記支持ブラケットが存在する位置では前記支持ブラケットを避けた姿勢で走行可能であることを特徴とする吊り下げ支持装置。
【請求項2】
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを上方から吊り下げ支持する複数の支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
前記レールは、中空状であるとともにその複数がジョイントによって長さ方向に接続された構成であり、
前記ジョイントは、その長さ方向に沿って、中央部と、一方および他方の端部とを有し、
前記中央部は、前記レールと同じ外形形状を有するとともに、前記支持ブラケットの断面よりも大きめの溝が形成されており、前記溝に前記支持ブラケットが挿入され、前記中央部と前記支持ブラケットとにピンが通されることで、前記ピンの周りにおいて回転変位可能に前記支持ブラケットに支持されるものであり、
前記一方および他方の端部は、前記中空状のレールの端部に挿入されてレールに接続されるものであり、
前記複数の支持ブラケットは、互いにレールの長さ方向に距離をおいて設けられており、
前記走行体は、前記レールにおける上向きに凸形状の走行案内面に沿って転動する走行輪を備えるとともに、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であり、かつ前記支持ブラケットが存在する位置では前記支持ブラケットを避けた姿勢で走行可能であることを特徴とする吊り下げ支持装置。
【請求項3】
レールは横断面円形状の外面を有し、
走行体は、レールの一方の側部に斜め上方向から接する第1の走行輪と、レールの他方の側部に斜め上方向から接する第2の走行輪とを有するとともに、支持ブラケットを第1の走行輪と第2の走行輪との間に挟んだ状態でこの支持ブラケットの位置を通過するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の吊り下げ支持装置。
【請求項4】
走行体は、横断面がU字形であってそのU字が上向きに開口したボディを有し、
第1および第2の走行輪は前記U字の開口の部分に設置され、
前記ボディは、前記U字の内部にレールを収容した状態で配置されるとともに、被支持物を吊り下げ支持するように構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の吊り下げ支持装置。
【請求項5】
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを支持する支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
走行体は、そのボディがレールの一方の側面に沿って上下方向に配置されているとともに、前記レールに沿って転動する走行輪を備え、
走行輪は、前記ボディにて片持ち支持されるとともに、レールの上向きに凸形状の走行案内面に接触するように形成され、
支持ブラケットは、レールの他方の側面に沿って配置され、
前記走行体は、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であることを特徴とする吊り下げ支持装置。
【請求項6】
モノレール構造のレールと、被支持物を吊り下げ支持した状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
走行体のボディの底部に貫通孔が形成され、
ボディは、前記貫通孔を通るハンガにて被支持物を吊り下げ支持するように構成され、
前記貫通孔は、前記走行体の走行方向と交差する方向の長孔として形成されており、
前記ハンガは、前記長孔構造の貫通孔に沿って前記走行体の走行方向と交差する方向に回転変位可能であることを特徴とする吊り下げ支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊り下げ支持装置に関し、特に走行式の吊り下げ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り下げ支持装置として、天井あるいはその近傍にレールを設置し、このレールに沿って走行可能な走行体を設け、この走行体から対象物すなわち被支持物を吊り下げるようにした、走行式のものが知られている。特許文献1には、このような吊り下げ支持装置に用いることができるレールであって、横断面がI字形であるものが記載されている。
【0003】
このようなレールを用いた吊り下げ支持装置では、走行移動用の走行輪を備えた走行体が設けられ、この走行体の走行輪が、I字形のレールにおける下側のフランジの上面に沿って転動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-211089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなI字形のレールを用いた吊り下げ支持装置は、被支持物を水平方向に移動させる場合に適している。レールをカーブさせることで、水平面内の任意の方向に被支持物を移動させることもできる。
【0006】
しかしながら、たとえば三次元空間内の任意の経路に沿って、すなわち立体的な任意の経路に沿って、被支持物を移動させることは困難である。そのためには、断面がI形であり、したがってそれに応じた剛性を有するレールを三次元的に変形させなければならないためである。また被支持物を移動方向と垂直な面内で変位させたい場合は、やはりそれに応じてレールを捩じるなどにより方向決めしなければならない。さらにレールのねじり方向に応じた一方向にしか、被支持物を移動方向と垂直な面内で変位させることができない。つまり同垂直面内における任意の方向に自在に被支持物を変位させることはできない。
これらの点で、I字形のレールを用いた吊り下げ支持装置では、被支持物の走行方向や走行時の姿勢に制約があり、その自由度が高くないという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、被支持物を三次元空間内において容易に任意の方向に走行させることができ、かつ被支持物を走行方向と垂直な面内で容易に変位させることができる吊り下げ支持装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の吊り下げ支持装置は、
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを上方から吊り下げ支持する複数の支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
前記レールは逆T字形の内部空間を有し、
前記複数の支持ブラケットは、互いにレールの長さ方向に距離をおいて設けられており、
前記支持ブラケットは、前記内部空間に挿入可能な上下方向の逆T字形に形成されて、フランジとウエブとを有し、
前記フランジは、レールの長さ方向に沿った一端が他端よりも上側に位置するように、水平方向に対して傾斜した姿勢で形成されており、
前記レールの内部空間に支持ブラケットが挿入されるように、これらレールと支持ブラケットとが相互に嵌め合わされて、支持ブラケットによってレールを水平方向に支持したときに、前記フランジの一端は、レールからレールの重量にもとづく下向きの荷重を受けるとともに、前記フランジの他端は、レールからレールの重量にもとづく上向きの荷重を受けて、レールとフランジとの間に作用する摩擦力によりレールをフランジに対して保持させるように構成されており、
前記走行体は、前記レールにおける上向きに凸形状の走行案内面に沿って転動する走行輪を備えるとともに、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であり、かつ前記支持ブラケットが存在する位置では前記支持ブラケットを避けた姿勢で走行可能であることを特徴とする。
また、本発明の他の吊り下げ装置は、
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを上方から吊り下げ支持する複数の支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
前記レールは、中空状であるとともにその複数がジョイントによって長さ方向に接続された構成であり、
前記ジョイントは、その長さ方向に沿って、中央部と、一方および他方の端部とを有し、
前記中央部は、前記レールと同じ外形形状を有するとともに、前記支持ブラケットの断面よりも大きめの溝が形成されており、前記溝に前記支持ブラケットが挿入され、前記中央部と前記支持ブラケットとにピンが通されることで、前記ピンの周りにおいて回転変位可能に前記支持ブラケットに支持されるものであり、
前記一方および他方の端部は、前記中空状のレールの端部に挿入されてレールに接続されるものであり、
前記複数の支持ブラケットは、互いにレールの長さ方向に距離をおいて設けられており、
前記走行体は、前記レールにおける上向きに凸形状の走行案内面に沿って転動する走行輪を備えるとともに、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であり、かつ前記支持ブラケットが存在する位置では前記支持ブラケットを避けた姿勢で走行可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、上記の吊り下げ搬送装置において、
レールは横断面円形状の外面を有し、
走行体は、レールの一方の側部に斜め上方向から接する第1の走行輪と、レールの他方の側部に斜め上方向から接する第2の走行輪とを有するとともに、支持ブラケットを第1の走行輪と第2の走行輪との間に挟んだ状態でこの支持ブラケットの位置を通過するように構成されていることが好適である。
【0010】
本発明によれば、上記の吊り下げ搬送装置において、
走行体は横断面がU字形であってそのU字が上向きに開口したボディを有し、
第1および第2の走行輪は前記U字の開口の部分に設置され、
前記ボディは、前記U字の内部にレールを収容した状態で配置されるとともに、被支持物を吊り下げ支持するように構成されていることが好適である。
【0012】
本発明の他の吊り下げ支持装置は、
上向きに凸形状の走行案内面を有したロッド形状のモノレール構造のレールと、このレールを支持する支持ブラケットと、被支持物を吊り下げた状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
走行体は、そのボディがレールの一方の側面に沿って上下方向に配置されているとともに、前記レールに沿って転動する走行輪を備え、
走行輪は、前記ボディにて片持ち支持されるとともに、レールの上向きに凸形状の走行案内面に接触するように形成され、
支持ブラケットは、レールの他方の側面に沿って配置され、
前記走行体は、前記走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の吊り下げ支持装置は、
モノレール構造のレールと、被支持物を吊り下げ支持した状態で前記レールに沿って走行可能な走行体とを有し、
走行体のボディの底部に貫通孔が形成され、
ボディは、前記貫通孔を通るハンガにて被支持物を吊り下げ支持するように構成され、 前記貫通孔は、前記走行体の走行方向と交差する方向の長孔として形成されており、
前記ハンガは、前記長孔構造の貫通孔に沿って前記走行体の走行方向と交差する方向に回転変位可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吊り下げ支持装置によれば、モノレール構造のレールは上向きに凸形状の走行案内面を有し、走行体は、上向きに凸形状の走行案内面に沿って、走行方向と交差する方向に回転変位可能であるようにしたため、被支持物を三次元空間内において容易に任意の方向に走行させることができ、かつ被支持物を走行方向と交差する面内で容易に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の吊り下げ支持装置の要部の横断面図である。
図2図1に示された部分の側面図である。
図3図1に示された部分におけるレールの断面構造を示す図である。
図4】レールどうしの連結構造を示す図である。
図5】レールの取り付け工程を示す図である。
図6】走行体の立体図である。
図7】走行体の側面図である。
図8】走行体の変位の様子を示す図である。
図9】走行体の走行移動の様子を示す図である。
図10】走行体の別の例を示す図である。
図11】本発明の他の実施の形態の吊り下げ支持装置の要部の横断面図である。
図12】本発明のさらに他の実施の形態の吊り下げ支持装置の要部の横断面図である。
図13図12に示された部分の側面図である。
図14図12に示されたレールによる経路が湾曲しているときの同レールのための支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3において、11はモノレール方式のレールで、その外形が横断面円形状に形成されている。このレール11は、中空状に形成されたうえで、おおむね水平方向に配置され、その上端には、レール11の内部空間12からレール11の外側にわたるスリット13が、レール11の壁部を貫通した状態で形成されている。レール11の内部には横方向の上部底壁14が設けられ、この上部底壁14は、レール11を構成する一方の側壁15と他方の側壁16とを接続する形態とされている。これによって、レール11の内部には、スリット13とともに逆T字形を呈する上側内部空間17が形成されている。18、19は、一対の頂壁であって、レール11において、逆T字形を呈する上側内部空間17を形成するために、スリット13を挟んで配置されている。頂壁18、19には、スリット13に向かって開口する凹部20、21がそれぞれ形成されている。凹部20、21は、内周面の横断面形状がC字形になるように形成されている。
【0018】
レール11は、たとえばアルミニウムの押出成形などによって、長尺のものを好適に製造することができる。複数のレール11を互いに接続する必要がある場合は、図4に示す構成とする。すなわち、図4において、22、22は連結ピンであって、互いに接続すべき一対のレール11、11の凹部20どうし、および凹部21どうしの間にわたって、たとえば圧入状態で挿入されることで、これら一対のレール11、11どうしを接続することができる。
【0019】
レール11は、支持ブラケット26を用いて、たとえば天井54から吊り下げ支持されている。レール11を天井よりもかなり低い位置に設置する場合には。天井に取り付けられる支持部材25に支持ブラケット26を取り付ける。支持ブラケット26は、レール11の上側内部空間17に挿入可能な逆T字形を呈している。27は逆T字形の支持ブラケット26のフランジ、28は逆T字形の支持ブラケット26のウエブである。図1および図2に示すように、ウエブ28は鉛直方向に形成されている。これに対しフランジ27は、レール11の長さ方向に沿った一端29が他端30よりも上側に位置するように、水平方向に対して若干傾斜した姿勢で形成されている。
【0020】
このような構成の支持ブラケット26でレール11を水平方向に支持すると、上記のようにフランジ27が傾斜していることから、レール11の重量にもとづき、フランジ27の一端29ではレール11の頂壁18、19から下向きの荷重L1が作用し、またフランジ27の他端30ではレール11の上部底壁14から上向きの荷重L2が作用する。これらの荷重が支持ブラケット26のフランジ27で受けられることによって、レール11が支持部材25にて支持される。このとき、フランジ27とレール11との間には、荷重L1、L2に基づく摩擦力が作用するため、レール11が支持部材25に対して保持され、レール11の長さ方向に位置ずれが生じることを防止できる。このため、ボルトなどの締結要素を用いなくても、レール11を支持部材25に対して所要の強さで取り付けることができる。
【0021】
図5は、支持部材25へのレール11の取り付け工程を示す。すなわち、まずレール11を所定の設置位置に仮配置したうえで、長尺のレール11の端部から図示のように上側内部空間17に支持ブラケット26のフランジ27をはまり込ませる。そのときに、図示のように支持ブラケット26をレール11に対して傾斜させることでフランジ27を上側内部空間17に沿った姿勢とさせ、その姿勢でフランジ27をレール11に沿ってスライドさせて、支持ブラケット26を所定の設置位置まで移動させる。支持ブラケット26がレール11を支持すべき設置位置に到達したなら、支持ブラケット26を傾斜姿勢から鉛直姿勢に変化させることで、図2に示す状態となって、支持ブラケット26にてレール11を支持できることになる。
【0022】
図1において、35は、レール11に支持された状態でこのレール11に沿って走行可能な走行体である。図1図6図7に示すように、走行体35は、横断面がU字形であってそのU字が上向きに開口したボディ36を有し、このボディ36には、回転自在な複数の走行輪37が設けられている。複数の走行輪37の内の一部および他の一部は、横断面円形状に形成されているレール11の上部における、スリット13およびこのスリット13に入り込む支持ブラケット26を間に挟んだ、一方および他方の側部15、16の外面すなわち走行案内面に上側から下向きの斜め方向に接した状態で走行できるように構成されている。すなわち走行輪37を備えた走行体35は、レール11の外面を走行案内面として、レール11の長手方向に走行できるように構成されている。詳細には、いずれの走行輪37も、その踏面38が、横断面円形状に形成されているレール11の外面の接線の方向に向くように配置されている。また、図示の例では、ボディ36は、踏面38がレール11の接線の方向に向くように配置された走行輪37を斜め方向に回転自在に支持するために、そのU字の開口端の部分が外開き形状となるように構成されている。なお、走行輪37の踏面38がレール11の接線の方向に向くのであれば、ボディ36を外開き形状以外の適宜の形状とすることもできる。
【0023】
レール11の上部におけるスリット13を間に挟んだ一方および他方の側部15、16の外面に接した状態で配置された複数の走行輪37は、図6および図7に示すように、走行体35の走行方向にそれぞれ一対が配置されている。
【0024】
横断面U字形のボディ36の底部39はレール11よりも下側に配置されるが、この底部39には、被支持物としての荷40を吊り下げ支持するためのハンガ41が設けられている。ハンガ41は、図示のような丸環にて構成することが好適である。またハンガ41は、水平方向に自在に回転できる状態で、ボディ36の底部39に設けられている。詳細には、図1において、42は、底部39に設けられた孔、43は、ハンガ41における、孔42を通る軸であり、軸43は孔42の中で自在に回転する。
【0025】
このような構成によれば、走行体35は、レール11に支持された状態でこのレール11の長さ方向に走行することができる。そのときに、走行輪37は、横断面円形状に形成されているレール11の外面における接線の方向に踏面38が向くように配置されているため、図8に示すように、レール11の周方向に沿った位置を、自在に変更可能である。つまり、走行輪37を含む走行体35は、レール11の周方向に沿って回転変位することが可能である。ただし、レール11にはスリット13が形成されており、またレール11は支持ブラケット26によって吊り下げ状態で支持されており、さらに走行体35によって荷40を吊り下げ支持するように構成されているため、走行体35が回転変位できる角度範囲には一定の制限がある。詳細には、走行体35は、スリット13や支持ブラケット26を間に挟んだ一方および他方の側部15、16の外面にそれぞれ走行輪37が接した状態で支持ブラケット26の位置を通過するように構成されている。
【0026】
このように走行体35がレール11の周方向に沿って回転変位することが可能であるために、走行体35は、レール11が直線状に設置されている場合はもちろんのこと、レール11がカーブ状に設置されている場合であっても、レール11に沿って安定して走行することができる。たとえば図9は図の左側から右側に向けてレール11が降下するように描かれているが、その場合に走行体35が安定して走行できる。さらにたとえば、図9の左側から右側にかけてレール11が図9の紙面と交差する方向に変位するように設置されている場合であっても、走行体35は、レール11の周囲に回転変位できることで、安定して走行することができる。すなわち、レール11が三次元空間内における任意の方向に設置されている場合であっても、走行体35は、そのレール11に沿って安定な状態で走行することができる。また上述のように、走行体35は、その走行方向に向いた両側のそれぞれに、その走行方向に沿った一対の走行輪37が各別に設けられているため、図9に示すような傾斜状態のレール11に沿って走行するときや、上記のように三次元空間内における任意の方向に設置されているレール11に沿って走行するときに、いっそう安定して走行することができる。
【0027】
たとえば、図8に示すように、走行体35を、鉛直方向に対してたとえば+30度~-30度の範囲で、支持ブラケット26と干渉させることなく円滑に回転変位させることができる。支持ブラケット26が存在しない領域においては、レール11をその長手方向の軸心の周りに捩じった状態で配置することなどによって、走行体35を、スリット13と干渉することなく、30度を超えた範囲、たとえば45度やそれ以上の範囲にまで回転変位させることも可能である。
【0028】
上記のようにハンガ41が水平方向に自在に回転できる状態で設けられているために、走行体35がレール11に沿った任意の三次元方向に走行する場合であっても、荷40を安定な状態で吊り下げ支持することができる。
【0029】
図10は、走行体35の他の例を示す。この図10の例では、ボディ36の底部39の孔42が、レール11の周方向に向いた長孔として形成されている。このような構成であると、図10に示すように走行体35が特別に回転変位していない場合であっても、必要に応じて、ハンガ41すなわちこのハンガ41によって吊り下げ支持された荷40の姿勢を自由に変更させることができる。さらに、孔42が長孔であることで、図8に示すように走行体35がレール11の周方向に沿って回転変位したときに、荷40の姿勢をいっそう自由に変更させることができる。
【0030】
なお、図10に示した走行体であると、この走行体を走行させるためのレールが、図1などに示される横断面円形のものや円弧状のものでなくても、すなわち、たとえば特許文献1に記載されたI字形のものであっても、荷つまり吊り下げ対象物を走行方向と交差する方向に回転変位させることが可能である。
【0031】
図11は、本発明の他の実施の形態を示す。ここでは、レール51は、上述の実施の形態のような複雑な断面形状を有するものではなく、単純な円筒形状の長尺のパイプ状体によって構成されている。レール51を構成するパイプ状体は、軽金属や合成樹脂などの適宜の材料にて形成されている。
【0032】
図11の実施の形態においては、走行体64は、そのボディ65がレール51の一方の側面51aに沿って上下方向に配置されている。そして、走行輪66は、ボディ65にて片持ち支持されるとともに、レール51の上向きに凸形状の走行案内面67に接触する鼓形に形成されている。図示の例では、レール51は上記のように円筒形状に形成されているため、その下側にも、凸形状の下側案内面68が形成される。そして、図11において、69は鼓形の浮き上がり防止ローラであり、同様にボディ65にて片持ち支持され、かつ下側案内面68に接触可能であることによって走行輪66の浮き上がりを防止する。ボディ65の下端には、図1などに示したものと同様のハンガ41が設けられている
【0033】
図11の実施の形態においては、天井54に取り付けられた支持ブラケット70は、レール51の他方の側面51bに沿って配置され、この側面51bに取り付けられている。このため、走行体64は、支持ブラケット70を避けながら、この支持ブラケット70の設置位置を通過可能である。なお、支持ブラケット70は、図示のように天井に取り付けられることでレール51を吊り下げ支持する構成のほかに、たとえば壁面に取り付けられることで壁面からレールを片持ち支持する構成や、その他の適宜の構成とすることもできる。
【0034】
このような図11の実施の形態においても、走行体64は、レール11の周方向に沿った位置を、自在に変更可能である。つまり、走行輪66を含む走行体64は、支持ブラケット70と干渉しない限りにおいて、レール11の周方向に沿って回転変位することが可能である。
【0035】
図11の実施の形態では走行輪66として上述のように鼓形のものを用いており、それによって走行輪66が特にレール11に追従しやすい構成となっている。しかし、走行輪66の形状は、所要の性能を発揮する限りにおいて任意である。
【0036】
この図11の実施の形態においても、走行体64において、図10に示したものと同様の長孔構造を採用することができる。
【0037】
図12図14は、本発明のさらに他の実施の形態を示す。ここでは、レール51は、図11に示したものと同様の、単純な円筒形状の長尺のパイプ状体によって構成されている。
【0038】
52は、このようなパイプ状体によって構成されたレール51、51どうしを接続させるためのジョイントで、合成樹脂などによって形成されている。そして、このジョイント52がブラケット53によって天井54などから吊り下げ支持されることで、レール51の全体が同様に吊り下げ支持されている。ジョイント52は、円柱状の中央部55と、同様に円柱状の一方および他方の端部56、56とを有する、中央部55は、その外径が、パイプ状体によって構成されたレール51の外径と等しくなるように形成されている。一方および他方の端部56、56は、パイプ状体によって構成されたレール51、51に実質的な隙間なく挿入できるように、その外径が設定されている。
【0039】
詳細には、ジョイント52の中央部55には溝57が形成されており、この溝57に板状のブラケット53が挿入され、水平方向のピン58が中央部55とブラケット53とに通されることで、ジョイント52がブラケット53によって支持されている。ブラケット53が板状であることで、走行体35はその走行時にブラケット53の両側に距離をおいてブラケット53の位置を通過することができる。溝57は、その縦断面がブラケット53よりも大き目に形成されており、これによってジョイント52はピン58の周りにおいて、鉛直面内で回転変位可能である。その結果、ブラケット53は、レール51が傾斜状態にあっても、このレール51を支持することができる。
【0040】
レール51とジョイント52との連結構造を詳しく説明する。ジョイント52の端部56、56がレール51、51に挿入されると、図12に示すようにレール51、51の端面がジョイント52の中央部55の端面に当たることで、レール51、51とジョイント52とが互いに位置決めされる。この状態で、それぞれのレール51の底部からその壁部にねじ59をねじ込み、このねじ59の先端側をジョイント52の端部56に入り込ませる。すると、図11において矢印Aで示すように、端部56が側方へ押し広げられてレール51の内面に押圧される。また、ねじ59の先端側をジョイント52の端部56に入り込ませることで、図11において矢印Bで示すように、端部56はねじ59の先端側により上向きに押されて、やはりレール51の内面に押圧される。これによって、レール51とジョイント52とが確実に固定される。また、レール51を貫通したねじ59がジョイント52の端部56に入り込んでいるため、レール51からのジョイント52の抜け出しが確実に防止される。ねじ59は上記のようにレール51の底部の位置に設けられているが、走行体35の走行輪37はこのような底部の位置に沿って走行することは無いため、図示のようにねじ59の頭部60がレール51の外面から突出していても、何ら問題は生じない。
【0041】
なお、詳しい図示は省略するが、ジョイント52の端部56へのねじ59の入り込みと、その押圧とを確実なものとするために、端部56に、ねじ59の径よりも小さいサイズの凹部あるいは隙間であって、ねじ込みの際にねじ59の先端部が入り込み可能なものをあらかじめ形成しておくことが好ましい。
【0042】
このような構成のレール51およびジョイント52を用いた場合であっても、図11に示すように、同様に、走行体35がレール51の周りにおける回転変位を伴いながら走行することができる。なお、図12図14に示された実施の形態においても、走行体35において、図10に示したものと同様の長孔構造を採用することができる。
【0043】
図13は、図9と同様にレール11が傾斜状態で設置された状態を示す。ここでは、ブラケット53の変形例として、このブラケット53が上部61と下部62とに分割されるとともに、これら上部61と下部62とが連結部63によって連結されたものも、示されている。下部62は、連結部63を中心として、鉛直面の方向に回転変位できるように構成されている。このような構成であると、連結部63を中心として下部62を回転変位させることができるため、ピン58の位置を、ジョイント52すなわちレール51を設置すべき位置に対応させて、自在に昇降させることができる。これによって、レール51を容易に設置することができる。
【0044】
上記においては、レール11、51として、横断面が円形であるものを例示した。しかし、レールは、走行輪37を支持する上部のみが横断面円弧状に形成されていれば足り、その下部の形状、すなわち走行輪37が接触する可能性が無い部分の形状は、任意である。また、厳密に横断面円形または円弧状でなくても、上向きに凸形状となる横断面形状であって走行輪37が無理なく回転変位できるのであれば、適宜の横断面形状を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の吊り下げ支持装置は、走行式の吊り下げ支持装置として、たとえば、各種器具の吊り下げ支持装置や、各種製品の吊り下げ支持装置や、シート・防球ネットなどの吊り下げ支持装置や、エアツール・電動ツールなどの各種ツールの吊り下げ支持装置などとして、好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 レール
13 スリット
25 支持部材
26 支持ブラケット
35 走行体
36 ボディ
37 走行輪
40 荷
41 ハンガ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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