(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】原子炉受動的崩壊熱除去における空気流制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G21C15/18 M
G21C15/18 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018194713
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(74)【代理人】
【識別番号】100186831
【氏名又は名称】梅澤 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・シニース
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ローウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ドーン
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・モリナーロ
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104269194(CN,A)
【文献】特開2015-010841(JP,A)
【文献】特開2014-071054(JP,A)
【文献】特開平06-011592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力システムからの崩壊熱を除去するための受動的安全システム(100)であって、
原子炉容器(1)と、
前記原子炉容器(1)を取り囲む格納構造体と、
前記格納構造体の外周部を取り囲む分割流路であって、冷却剤源入口に開口する冷却剤降下管(7)と、前記冷却剤降下管(7)と前記格納構造体との間の冷却剤上昇管(4)とを含み、前記冷却剤降下管(7)および前記冷却剤上昇管(4)は、前記分割流路の底部で流体連通する、分割流路と、
前記分割流路内のダンパー(101)であって、前記分割流路を通る冷却剤流を可能にする開位置と、前記分割流路を通る冷却剤流を制限する閉位置と、の間を移動するように構成され、かつ重力により移動して前記開位置になる前記分割流路内の位置に配されたダンパー(101)と、
前記ダンパー(101)に取り外し可能に結合し、前記ダンパー(101)を前記開位置に保持し、前記ダンパー(101)を前記閉位置に配置するように構成されたアタッチメント(102)と、
を含むシステム(100)。
【請求項2】
前記原子炉容器(1)は溶融塩を含み、前記冷却剤上昇管(4)および前記冷却剤降下管(7)は、前記分割流路の前記底部でのみ流体連通し、大気からの空気は、前記ダンパー(101)が開位置にある場合に、前記格納構造体および前記原子炉容器(1)を冷却するために、前記分割流路を通って流れるように構成される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記閉位置にある前記ダンパー(101)は、前記冷却剤上昇管(4)を実質的に閉じる、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記ダンパー(101)の第1の端部にあって、前記ダンパー(101)を前記分割流路に回転可能に接続するヒンジ(107)と、
前記ダンパー(101)の第2の端部に接続され、前記ダンパー(101)を前記ヒンジ(107)の周りに回転させるように構成されたアタッチメント(102)と、
をさらに含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記アタッチメント(102)は電磁石を含み、前記ダンパー(101)は、前記電磁石に電力が供給された場合にのみ前記ダンパー(101)が前記アタッチメント(102)にしっかりと結合されるように磁性材料を含む、請求項
1に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記アタッチメント(102)に結合され、前記分割流路内で前記アタッチメント(102)および前記ダンパー(101)を移動させるように構成されたウィンチ
をさらに含む、請求項
1に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記アタッチメント(102)に接続された電源(104)であって、前記アタッチメント(102)が前記電源(104)によって供給される電力の下で前記ダンパー(101)を前記開位置に保持するように構成される、電源(104)と、
前記電源(104)によって供給される前記電力を制御する温度依存スイッチ(103)と、
をさらに含む、請求項
1に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記温度依存スイッチ(103)は、前記ダンパー(101)が前記原子力システム(100)の過渡状態に関連する温度で前記開位置に配置されるように、前記温度において前記電源(104)によって供給される前記電力を除去するように構成される、請求項
7に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記温度依存スイッチ(103)は、前記温度で回路を開いて前記電力を除去するように、前記温度において溶融する導体を含む、請求項
8に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉受動的崩壊熱除去における空気流制御のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、1995年4月11日に発行され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hunsbedtらの米国特許第5,406,602号に記載されているような関連技術の液体金属原子炉のプロファイル断面図である。
図1に示すように、潜在的に地下にある環状または円形のコンクリートサイロ8は環状の格納容器2を収容し、さらに格納容器2は原子炉1を収容し、潜在的にすべて同心状に整列している。原子炉1は、液体金属冷却剤、例えば液体ナトリウムに浸漬された炉心12を含む。原子炉1と格納容器2との間にギャップ3として示される空間は、アルゴンなどの不活性ガスで満たされてもよい。原子炉1および格納容器2は、上部フレーム16から垂直下方に吊り下げられている。コンクリートサイロ8は、地震時に格納容器2および原子炉1の構造的完全性を維持し、それらの構造物と周囲のサイロ8との間の結合されていない移動を可能にするために、耐震アイソレータ18によって上部フレーム16を支持することができる。
【0003】
原子炉1は、炉心12に選択的に挿入されるかまたは炉心12から引き出される中性子吸収制御棒15によって制御される。原子炉1は、核分裂性燃料の炉心12に制御棒15を挿入して、必要な核分裂生成中性子の燃料を奪うことにより、緊急状態に応答するか、または定期的なメンテナンスを行うために完全に停止することができる。しかしながら、残留崩壊熱は、炉心12から生成され続け、時間の経過と共に指数関数的に減少していく。この熱は停止した原子炉1から消散しなければならない。液体金属冷却剤および隣接する原子炉構造体の熱容量は、残留熱を消散させるのを助ける。例えば、熱は、原子炉1から格納容器2への熱放射によって伝達され得る。格納容器2からの熱もまた、そこから外側に離間したコンクリートサイロ8に向かって外側に放射することができる。
【0004】
そうでなければ、この崩壊熱を除去するためのシステムが、原子炉1および周囲構造体からの熱を環境などのヒートシンクに除去する。そのようなシステムの1つは、
図1に示すような原子炉容器補助冷却システム(RVACS)であってもよい。熱収集シリンダ5は、格納容器2とサイロ8との間に同心状に配置され、格納容器2と熱収集シリンダ5の内面との間に熱気上昇管4を画定する。熱収集シリンダ5は、サイロ8と熱収集シリンダ5の外面との間に冷気降下管7をさらに画定することができる。熱を格納容器2から熱気上昇管4内の空気に伝達することができる。熱収集シリンダ5の内面は、格納容器2からの熱放射を受け取ることができ、そこからの熱が自然対流によって上昇する流れに伝達され、空気出口9を介して熱が除去される。上昇管4内の空気を2つの周囲の高温表面によって加熱することにより、システム内の自然の空気ドラフトが生じて、大気が地上の空気入口6を通って地上に入る。入口6からの空気は、冷気降下管7に導かれ、次いでコンクリートサイロ8の底部に導かれ、回転して熱気上昇管4に入る。熱気は、地上の空気出口9に導かれる。
【0005】
図2は、
図1の図面と直交する、原子炉サイロ8と格納容器2との間の垂直方向の熱収集シリンダ5の概略断面図である。熱収集シリンダ5の外面を断熱材5aで覆って、熱収集シリンダ5からサイロ8内に、および冷気降下管7内を下方に流れる空気中に熱を伝達するのを低減することができる。降下管7内の比較的冷たい空気と上昇管4内の比較的高温の空気との間の温度差が大きいほど、モーター駆動ポンプを用いずに受動的な空気冷却のための自然循環を駆動する。この自然循環は、通常の原子炉運転中および停止中に起こり、原子炉容器1内のナトリウムは通常レベル10(
図1)にある。類似の関連する受動的原子炉冷却剤システムは、1993年3月2日に発行されたHunsbedtらの米国特許第5,190,720号、および2014年10月28日に発行されたHorieらの米国特許第8,873,697号に記載されており、これらのすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2017/0025194号明細書
【発明の概要】
【0007】
例示的な実施形態は、溶融塩原子炉および他の冷却チャネルのための関連するRVACSを含む、原子炉受動的冷却システムで使用するためのダンパーシステムを含む。例示的なシステムは、冷却剤流を所望の程度に制限するために、完全な開位置、閉位置、および中間位置の間で冷却剤導管内を移動可能なダンパーを含む。例えば、ダンパーは、定常状態動作中に流れ導管を大部分遮断し、冷却剤流を10%以下に制限し、熱力学的効率のために原子炉内の熱を保持することができる。それにもかかわらず、ダンパーは、外力または動力の介入なしに、電力の喪失および/または原子炉の過熱を含む故障時または過渡的なシナリオにおいて開位置に移動して、最大の冷却を可能にする。
【0008】
ダンパーの移動は、ダンパーを流路に固定するジョイントまたはヒンジによって達成することができ、アタッチメントがダンパーの端部を所望の位置および開度に保持または移動させる。ダンパーを開くことは、例示的なシステムではいくつかの方法で達成され、多くは受動的手段によって達成される。例えば、電磁石は、電力を受け取るときに閉位置でダンパーをアタッチメントに保持することができ、その後に、過渡的シナリオで電力が失われたときにダンパーが開位置にはまる、または受動的に付勢される。あるいは、例えばウィンチまたは他の移動装置がアタッチメントを閉位置に保持し、ウィンチが過渡状態で動力を失うとダンパーが開位置に戻る。あるいは、例えば、電源およびスイッチは、ダンパーおよび/または任意のアタッチメントもしくはアクチュエータに電力を供給するように構成することができ、過渡的なシナリオではスイッチが開き、ダンパーをデフォルトの開位置に移動させることができる。スイッチは温度依存性であり、冷却剤または原子炉システムに曝されており、冷却が必要なしきい値温度で過熱を検出し、および/または溶融するなどにより、他の方法で開くことができる。
【0009】
例示的な実施形態は、プラント動作中であっても、いつでも冷却剤流路に設置することができ、定常動作中における受動的冷却剤流、ひいては熱損失を低減または実質的に除去することができる。ダンパーおよび/または温度依存スイッチは、冷却剤流中に直接設置することができ、一方、電源、ウィンチ、手動スイッチなどの他の構成要素は、外部に配置することも、所望の場所に配置することもできる。ダンパーが所望の量の冷却剤流を遮断する位置に移動すると、冷却システムおよび原子炉内の熱損失、流体励起振動および極端な温度勾配を低減して動作を改善することができ、一方、非定常状態の事故および冷却剤の流れを必要とするその他のシナリオでは、ダンパーは、完全な冷却剤流を確実かつ完全に可能にする。
【0010】
例示的な実施形態は、添付の図面を詳細に説明することにより、より明らかになるであろう。添付の図面では、同様の要素は同様の符号によって示されているが、これらは単に例示として与えられており、それらが示す用語を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】関連技術の原子炉容器補助冷却システム(RVACS)のプロファイル概略図である。
【
図2】関連技術のRVACSにおける流れ導管の直交断面図である。
【
図3】流路に設置された例示的な実施形態の冷却剤制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これは特許文献であるため、読む際には、一般的な広範な構築規則を適用する必要がある。この文書に記載され、示されているすべては、添付の特許請求の範囲内に入る主題の一例である。本明細書に開示した特定の構造的および機能的詳細は、実施例をどのように作製し使用するかを説明するためのものに過ぎない。本明細書に具体的に開示されていないいくつかの異なる実施形態および方法は、特許請求の範囲に含まれる。したがって、特許請求の範囲は、多くの代替形態で具体化されてもよく、本明細書に記載された実施例のみに限定されると解釈するべきではない。
【0013】
「第1の」、「第2の」などの順序を示す用語が、様々な要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって順序を限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためだけに使用される。「第2の」以上の序数がある場合、必ずしも差異や他の関係がなくても、単に複数の要素が存在していなければならない。例えば、例示的な実施形態または方法の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のすべての組み合わせを含む。「など(etc.)」の使用は「など(et cetera)」として定義され、前の項目の同じグループに属する他のすべての要素を任意の「および/または」の組み合わせに含めることを示す。
【0014】
ある要素が別の要素に「接続される」、「結合される」、「嵌合される」、「取り付けられる」、または「固定される」などと言及されている場合、それは他の要素に直接接続されてもよいし、介在する要素が存在してもよいことが理解されよう。一方で、ある要素が別の要素に対して「直接接続される」、「直接結合される」などと言及される場合には、介在する要素は存在しなくてもよい。要素間の関係を記述するために使用される他の単語も同様なやり方(例えば、「間に」対「直接間に」、「隣接する」対「直接隣接する」など)で解釈するべきである。同様に、「通信可能に接続される」などの用語は、無線で接続されているか否かにかかわらず、仲介デバイス、ネットワークなどを含む2つの電子デバイス間の情報交換およびルーティングのすべての変形を含む。
【0015】
本明細書で使用する場合、単数形(「a」、「an」および「the」)は、そうでないことを明記しない限り、単数形および複数形の両方を含むことが意図される。「a」や「an」のような不定冠詞は、事前に導入されたものとそうでないものの両方の変更された用語を導入または参照し、一方、「the」のような定冠詞は、事前に導入されたのと同じ用語を参照する。「備える」、「備えている」、「含む」、および/または「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、記載した特徴、特性、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、特性、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはこれらのグループが存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。
【0016】
以下に説明する構造および動作は、図面に記載および/または注記された順序から外れることがある。例えば、連続して示される2つの動作および/または図面は、関係する機能/動作に応じて、実際には同時に実行されてもよいし、逆の順序で実行されてもよい。同様に、以下に説明する例示的な方法の個々の動作は、繰り返して、個別に、または逐次的に実行されてもよく、以下に説明する単一の動作以外のループまたは他の一連の動作を提供することができる。以下に説明される特徴および機能を有する任意の実施形態および方法は、任意の実行可能な組み合わせで、例示的な実施形態の範囲内に含まれることが想定されるべきである。
【0017】
本発明者らは、RVACSなどの関連する受動的冷却剤システムは常に環境に対して開放されており、原子炉の周りで受動的に熱を除去することを認識している。実際、全体が参照により本明細書に組み込まれている、Loewenらの共有する米国特許出願公開第2017/0025194号明細書に記載されているように、常に冷却する受動的システムは、空気流および冷却を実際に加速することができる。一定の熱除去が事故時に有用である一方で、通常の電力運転中に、本発明者らは、RVACSおよび関連する受動的冷却剤システムが、原子炉の出力の大幅な損失、したがって経済効率の大幅な損失をもたらす可能性があることを認識した。例えば、常時オンのRVACS受動的冷却によって、従来の液体金属原子炉の設計では、潜在的に2 MWthまで失われる可能性がある。高温原子炉の常時受動的冷却はまた、原子炉、格納容器、および冷却構造体にわたって急峻な温度勾配を引き起こし、材料の変形、腐食および/または疲労をもたらすおそれがある。RVACSまたは他の受動的システム内の一定の空気流は、潜在的に不規則な周波数または共振周波数の不要な振動をさらに引き起こす可能性があり、それは関連するシステムを損傷または磨耗させるおそれがある。しかし、受動的冷却は、プラントの安全のために保持されなければならない。本発明者らは、これらの新たに認識された問題および他の問題を克服するために、本発明者らは、例示的な実施形態によって可能になる固有の解決策を用いて、発明者らによって認識されたこれらおよび他の問題に対処するために以下に記載する例示的な実施形態および方法を開発した。
【0018】
本発明は、流体流制御システムおよびそれを原子炉冷却剤システムに使用する方法である。本発明とは対照的に、以下に説明する少数の例示的な実施形態および例示的な方法は、本発明としておよび/または本発明に関連して使用することができる多様な異なる構成のサブセットを示す。
【0019】
図3は、
図1および
図2のRVACSなどの、原子炉受動的流体熱交換器流路50で使用可能な例示的な実施形態の冷却剤制御システム100の概略図である。例えば、システム100は、熱気上昇管4をRVACS内の排気口9に接続する水平配管に設置することができる。あるいは、例えば、システム100は、流量制御のための他の冷却剤流路に設置されてもよい。
図3に示すように、例示的な実施形態のシステム100は、流体流路50内の流れを制限する可動ダンパー101を含む。ダンパー101は、
図3では、閉位置または部分的閉位置を実線で、開位置に移動可能な場合を破線で示している。ダンパー101は、RVACSの流れ導管などの、流路50の縁部に実質的に着座する金属、プラスチック、または他の流体を遮断または制限する材料のプレート、ディスクまたはシートであってもよい。ダンパー101は、さらに多孔質であってもよく、あるいはダンパー101を通る流量をある程度減少させ、潜在的に圧力の形成または流体の滞留を防止することができる穴、切り欠きおよび/または他の流路を含んでもよい。
【0020】
ダンパー101は開位置と閉位置との間で移動可能である。例えば、ダンパー101は、実質的に剛性であり、流路50内で開位置と閉位置との間、およびその増分で回転するように、ピボット107およびアタッチメント102に取り付けられている。
図3に見られるように、ダンパー101は、実線で示す第1の閉位置にあり、点線で示す第2の開位置に解放または移動されてもよい。このように移動すると、RVACSを通るさらなる空気流または流路50を通る他の冷却剤流体が可能となり、潜在的に完全な自然循環によって誘発された非常冷却用のRVACSフローが可能となる。しかしながら、閉位置にあるときは、ダンパー101は、流路50内の流体による自然なまたは強制的な循環を制限し、ひいては原子炉からの熱除去を制限するように、流路50を通る流れを著しく制限することができる。例えば、RVACSシステムで使用される場合には、閉じたダンパー101は、熱気上昇管4から排気口9への(または空気入口6から冷気降下管7への)著しい冷却剤流を防止することができ、したがって、閉鎖時の原子炉の冷却および熱の損失を防止することができる。そのような実質的に減少した流れは、最大冷却剤流の10%以下などの少量を依然として許容することができ、滞留を防止し、システム全体にわたって相対的に冷却剤と同じ温度にシステム100を維持することができる。
【0021】
いくつかの方法でいくつかの望ましい開度および閉位置にダンパー101を移動させることができる。例えば、アタッチメント102はダンパー101を解放して、実線で示す閉位置から破線で示す開位置にヒンジ107を中心として回転させることができる。ダンパー101は、アタッチメント102から解放されたときに、流路50内の流体の流れの力の下で、重力、ばねなどの受動的な力によって開位置に落ちることができる。例えば、アタッチメント102は、ダンパー101内の磁性材料と相互作用する磁場によってダンパー101を閉位置に保持する電磁石であってもよいし、電磁石を含んでいてもよい。アタッチメント102はまた、フックおよびアイレット、チェーンの相互リンク、ねじ、およびねじ穴などの機械的締結具または直接接続であってもよい。アタッチメント102内の電磁石への電力が遮断されるか、またはアタッチメント102が取り外される構成に移動または回転されると、ダンパー101はアタッチメント102から外れてヒンジ107内の重力またはばねを介して自動的に開位置に移動する。同様に、受動的ではないが、モーターまたは他のバイアス駆動装置は、ダンパー101を所望のように開位置に動かすことができる。
【0022】
あるいは、例えば、ダンパー101をアタッチメント102の移動によって移動させることができる。アタッチメント102は、ウィンチ106または作動トランスデューサまたは流路50内の所望の位置にそれを移動させる、潜在的に流路50の外側の、他の移動構造体に接続することができる。ダンパー101は、アタッチメント102と共に移動して、流路50の所望のレベルの閉鎖を達成することができる。同様に、アタッチメント102は、分離後にダンパー101と再接続するように再配置することができる。例えば、アタッチメント102内の電磁石の消磁に続いて、ダンパー101はアタッチメント102から離れた開位置にあり、ウィンチ106などにより、ダンパー101に十分に近接して、アタッチメント102と磁気的に再結合し、流路50内の閉位置に再配置されるように、電磁石を再励磁して位置決めすることができる(破線で示す)。
【0023】
図3に見られるように、ダンパー101が閉じた状態に保持されると、導管50を通る流れが制限され、そのような空気によって引き起こされる冷却が制限される。
図1および
図2などのRVACSで使用する場合、原子炉1および格納容器2からの熱伝達が制限され、熱損失、温度勾配および流体励起振動が減少し、熱力学的効率を改善することができる。ダンパー101は、RVACSなどのシステムを通る受動的な空気流を維持しながら、アタッチメント102によって移動および/または解放されることによって依然として開くことができる。
【0024】
図3に示すように、ダンパー101は、例示的な実施形態のシステム100では、受動的に移動し、かつ/またはフェイルセーフの開放状態に移動することができる。電源104は、このようなフェイルセーフ開放のための回路に電力を供給することができる。例えば、電源104は、原子炉プラントが定常状態の動作状態にあるとき常にオンであるDC発電機、バッテリ、プラント送電網によって供給される電力などであってもよい。ウィンチ106、アタッチメント102、およびダンパー101を最も制限された位置に保持することによって、またはアタッチメント102内の電磁石に電力を供給することなどにより、回路を介して電源104がウィンチ106および/またはアタッチメント102に電力を供給することができる。電源104が停止されるか、またはその回路が開かれると、ウィンチ106および/またはアタッチメント102が電力を失い、ダンパー101が重力、ばね付勢、空気流の力などの下で開位置に戻ることを可能にする。同様に、電力が回復されると、ウィンチ106は、アタッチメント102がダンパー101に再結合するように延長され、その後に、ダンパー101を閉位置に動かすために引き込まれる。このようにして、ダンパー101は、電力喪失シナリオにおいて常に開放状態であってもよく、流路50を通る流れを最大にし、潜在的に冷却することができる。
【0025】
また、温度依存スイッチ103および/または手動スイッチ105などの1つまたは複数のスイッチを回路上に設けて、ウィンチ106および/またはアタッチメント102への電力を遮断してダンパー101を開くこともできる。例えば、手動スイッチ105は、プラントオペレータが電源104によって電力が供給されていないときにダンパー101が最大開位置に入るように作動させることができる、制御室からのオペレータ制御スイッチまたは局所回路遮断器であってもよい。
【0026】
同様に、温度依存スイッチ103は、周囲条件が異常動作条件または冷却の緊急の必要性に関連する温度などのしきい値温度に達すると開くことができる。例えば、スイッチ103は、高温で回路を開く溶融可能な導体を使用することができる。原子炉または高温排気などの熱源に近接したスイッチ103の配置に応じて、Woodの金属などの、ある量の適切に合金化された材料は、特定の温度で溶融して回路を遮断/開放する。あるいは、例えば、バイメタルばねまたは他の温度依存材料がしきい値温度で物理的に回路と接触しなくなり、回路を遮断することができる。例示的な実施形態のシステム100の他の態様は受動的であってもよいので、オペレータは何らかの操作をする必要はなく、過渡的または必要な冷却に関連する温度に達したときに、温度依存スイッチ103がダンパー101を最大開位置に移動させる。温度依存スイッチ103は、ダンパー101と同じ流路50内に示されているが、スイッチ103は、正確な温度測定を可能にし、かつ/または冷却の必要性を反映する遠隔および/または特定の場所にあってもよい。
【0027】
上記のように、いくつかの異なる構造は、そのような冷却剤が必要とされるときに、冷却剤流路内のダンパーを受動的に開くために、単独でまたは組み合わせて使用可能である。臨界温度または他の過渡状態でダンパー101を開くためには、外部モーター、バッテリ、電源、人間の介入、可動部品などは必要ない。冗長なフェイルセーフを提供するために、構造体を共に使用することができ、それは例えば、電力供給される回路と組み合わせて使用され、原子炉過熱温度でダンパー101を開位置に移動させ、また、電力104の喪失および/またはスイッチ105による人間の介入でダンパー101を開位置に移動させる温度依存スイッチ103などである。しかしながら、流路50の所望の増分閉鎖を達成するためのウィンチ106または他の位置決め装置によるダンパー101の微細な移動、オペレータによる物理的移動を必要とする能動的スイッチ105などを含む能動的システムを、例示的な実施形態のシステム100と併せて使用することができる。
【0028】
例示的な実施形態のシステム100は、実質的に放射性になり、溶融し、脆化し、または放射性粒子を保持/吸着するなど、物理的特性を実質的に変化させることなく、原子炉環境に適合する弾性材料で製造することができる。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼304または316、XM-19、ジルコニウム合金、ニッケル合金、合金600などを含むいくつかの公知の構造材料は、例示的な実施形態のデブリフィルタの構成要素の任意の要素に対して選択することができる。接合構造および直接接触要素は、汚れを防止するために、異なる互換性のある材料から選択されてもよい。
【0029】
例示的な実施形態の冷却剤制御システム100は、プラント製造時またはプラント寿命の任意の時点で設置することができる。例えば、システム100は、既存のRVACSに設置されてもよいし、流路50にダンパー101、温度依存スイッチ103、およびアタッチメント102を設置し、関連する電源104およびウィンチ106を同じまたは他の場所の外部に設置することにより、プラント建設中に追加されてもよい。この設置は、冷却剤が流路50を通って流れる間に実行されてもよい。一旦設置されると、例示的な実施形態のシステム100は、ダンパー101によって閉位置に保持されて、オペレータによるさらなる操作を必要とすることなく冷却剤流を低減することができ、あるいはウィンチ106などによりダンパー101をオペレータの制御下で所望の位置に能動的に移動させることができる。それにもかかわらず、システム100は、電源104の喪失時に、および/またはスイッチ103を開く過渡温度しきい値に達したときに、オペレータの介入なしに流路50を開く。
【0030】
このように説明された例示的な実施形態および方法は、当業者には理解されるように、例示的な実施形態は、以下の特許請求の範囲内にあるが、日常的な実験によって変更および置換することができる。例えば、RVACS内の冷却剤流路が示されているが、他の原子炉冷却剤導管は、例示的な実施形態の適切な成形およびサイジングによって簡単に使用することができ、特許請求の範囲に含まれる。そのような変形は、これらの請求項の範囲から逸脱しているとみなすべきではない。
[実施態様1]
原子力システムからの崩壊熱を除去するための受動的安全システム(100)であって、
原子炉容器(1)と、
前記原子炉容器(1)を取り囲む格納構造体と、
前記格納構造体の外周部を取り囲む分割流路であって、冷却剤源入口に開口する冷却剤降下管(7)と、前記冷却剤降下管(7)と前記格納構造体との間の冷却剤上昇管(4)とを含み、前記冷却剤降下管(7)および前記冷却剤上昇管(4)は、前記分割流路の底部で流体連通する、分割流路と、
前記分割流路内のダンパー(101)であって、前記分割流路を通る冷却剤流を可能にする開位置と、前記分割流路を通る冷却剤流を制限する閉位置と、の間を移動するように構成され、かつ受動的に故障して前記開位置になるように構成されたダンパー(101)と、
を含むシステム(100)。
[実施態様2]
前記原子炉容器(1)は溶融塩を含み、前記冷却剤上昇管(4)および前記冷却剤降下管(7)は、前記分割流路の前記底部でのみ流体連通し、大気からの空気は、前記ダンパー(101)が開位置にある場合に、前記格納構造体および前記原子炉容器(1)を冷却するために、前記分割流路を通って流れるように構成される、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様3]
前記閉位置にある前記ダンパー(101)は、前記冷却剤上昇管(4)を実質的に閉じる、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様4]
前記ダンパー(101)の第1の端部にあって、前記ダンパー(101)を前記分割流路に回転可能に接続するヒンジ(107)と、
前記ダンパー(101)の第2の端部に接続され、前記ダンパー(101)を前記ヒンジ(107)の周りに回転させるように構成されたアタッチメント(102)と、
をさらに含む、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様5]
前記ダンパー(101)に取り外し可能に結合し、前記ダンパー(101)を前記開位置に保持し、前記ダンパー(101)を前記閉位置に配置するように構成されたアタッチメント(102)
をさらに含む、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様6]
前記アタッチメント(102)は電磁石を含み、前記ダンパー(101)は、前記電磁石に電力が供給された場合にのみ前記ダンパー(101)が前記アタッチメント(102)にしっかりと結合されるように磁性材料を含む、実施態様5に記載のシステム(100)。
[実施態様7]
前記アタッチメント(102)に結合され、前記分割流路内で前記アタッチメント(102)および前記ダンパー(101)を移動させるように構成されたウィンチ
をさらに含む、実施態様5に記載のシステム(100)。
[実施態様8]
前記アタッチメント(102)に接続された電源(104)であって、前記アタッチメント(102)が前記電源(104)によって供給される電力の下で前記ダンパー(101)を前記開位置に保持するように構成される、電源(104)と、
前記電源(104)によって供給される前記電力を制御する温度依存スイッチ(103)と、
をさらに含む、実施態様5に記載のシステム(100)。
[実施態様9]
前記温度依存スイッチ(103)は、前記ダンパー(101)が前記原子力システム(100)の過渡状態に関連する温度で前記閉位置に配置されるように、前記温度において前記電源(104)によって供給される前記電力を除去するように構成される、実施態様8に記載のシステム(100)。
[実施態様10]
前記温度依存スイッチ(103)は、前記温度で回路を開いて前記電力を除去するように、前記温度において溶融する導体を含む、実施態様9に記載のシステム(100)。
[実施態様11]
前記温度依存スイッチ(103)は、前記冷却剤上昇管(4)内に配置される、実施態様9に記載のシステム(100)。
[実施態様12]
原子力システムからの崩壊熱を除去するための受動的安全システム(100)であって、原子炉(1)から熱を除去するために冷却剤流を運ぶように構成された前記原子炉(1)の周りの冷却剤流路と、
前記冷却剤流路内のダンパーシステムであって、しきい値温度において、前記冷却剤流を制限する閉位置から前記冷却剤流を可能にする開位置に移動するように構成されたダンパー(101)を含み、前記ダンパー(101)を開位置にして受動的に故障するように構成されたダンパーシステムと、
を含むシステム(100)。
[実施態様13]
前記ダンパーシステムは、電源(104)および前記冷却剤流中の温度依存スイッチ(103)をさらに含み、前記温度依存スイッチ(103)は、前記しきい値温度において前記電源(104)を切断するように構成される、実施態様12に記載のシステム(100)。
[実施態様14]
前記ダンパーシステムは、前記電源(104)に接続された場合にのみ前記ダンパー(101)を前記閉位置に保持するアタッチメント(102)をさらに含む、実施態様13に記載のシステム(100)。
[実施態様15]
前記アタッチメント(102)は、前記電源(104)によって電力を供給される電磁石を含み、前記ダンパー(101)は磁性材料を含む、実施態様14に記載のシステム(100)。
[実施態様16]
前記温度依存スイッチ(103)は、回路を完成させる材料を含み、前記材料は、前記回路を開くために前記しきい値温度において溶融するように構成される、実施態様13に記載のシステム(100)。
[実施態様17]
前記冷却剤流路は、前記原子炉(1)を取り囲む分割流路であり、冷却剤源入口に開口する冷却剤降下管(7)と、前記冷却剤降下管(7)と前記格納構造体との間の冷却剤上昇管(4)とを含み、前記冷却剤降下管(7)および前記冷却剤上昇管(4)は、前記分割流路の底部で流体連通する、実施態様12に記載のシステム(100)。
[実施態様18]
前記冷却剤上昇管(4)および前記冷却剤降下管(7)は、前記分割流路の前記底部でのみ流体連通し、大気からの空気は、前記ダンパー(101)が開位置にある場合に、前記原子炉(1)を冷却するために、前記分割流路を通って流れるように構成される、実施態様17に記載のシステム(100)。
[実施態様19]
原子力発電所に受動的安全システム(100)を設置する方法であって、
原子炉(1)の周りの冷却剤流路内に可動ダンパー(101)を配置するステップであって、前記流路は、前記原子炉(1)から熱を除去するために冷却剤流を運ぶように構成される、ステップと、
前記流路内の冷却剤流を制限するように電力を供給された場合に前記可動ダンパー(101)を閉位置に保持するように構成されたアタッチメント(102)に前記ダンパー(101)を取り付けるステップと、
前記冷却剤流路に温度依存スイッチ(103)を配置するステップと、
前記温度依存スイッチ(103)が閉じられた場合に電源(104)が前記アタッチメント(102)に電力を供給するように前記電源(104)を前記温度依存スイッチ(103)および前記アタッチメント(102)に接続するステップと
を含む方法。
[実施態様20]
前記温度依存スイッチ(103)は、前記原子炉(1)内の過渡状態に関連するしきい値温度において受動的に開くように構成される、実施態様19に記載の方法。
【符号の説明】
【0031】
1 原子炉容器、原子炉
2 格納容器
3 ギャップ
4 熱気上昇管
5 熱収集シリンダ
5a 断熱材
6 空気入口
7 冷気降下管
8 原子炉サイロ、コンクリートサイロ
9 空気出口、排気口
10 通常レベル
12 炉心
15 中性子吸収制御棒
16 上部フレーム
18 耐震アイソレータ
50 流体流路、原子炉受動的流体熱交換器流路、導管、流路
100 冷却剤制御システム、システム
101 可動ダンパー
102 アタッチメント
103 温度依存スイッチ
104 電力、電源
105 能動的スイッチ、手動スイッチ
106 ウィンチ
107 ピボット、ヒンジ
304 オーステナイト系ステンレス鋼
600 合金