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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/20 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A47L9/20 D
A47L9/20 511C
A47L9/20 521C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018213999
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020078530
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】堀元 純生
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-153776(JP,U)
【文献】実開昭49-075662(JP,U)
【文献】実開昭52-079763(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵する駆動部と、前記駆動部に着脱可能に装着される集塵部とを有し、前記電動送風機が駆動することによりダストを含む空気が前記集塵部に流入するよう構成された掃除機本体を備え、
前記集塵部は、集塵カップと、前記集塵カップに着脱可能に収納されるフィルタとを有し、
前記フィルタは、弾性変形によって振動可能な弾性枠体と、前記弾性枠体に設けられたフィルタ本体と、振動伝達部とを有し、
前記振動伝達部は、前記弾性枠体によって生じる振動を前記フィルタ本体に伝達するよう、前記弾性枠体と前記フィルタ本体との間に設けられており、
前記弾性枠体は、等間隔で配置された4本のL形部分と、各L形部分の下端を連結する円環部分と、倒立U形の摘み部とを有してなり、
対向する2本のL形部分の下端に前記倒立U形の摘み部の下端が繋がっており、
前記摘み部は、前記円環部分よりも上方位置に配置されていることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記振動伝達部が、前記弾性枠体と前記フィルタ本体とを接合する接合部である請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記振動伝達部が、前記フィルタ本体と接触可能に前記弾性枠体に設けられた突起部である請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記振動伝達部が、前記フィルタ本体と接触可能な玉材と、前記玉材と前記弾性枠体とを連結する連結材とを有してなる請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記フィルタ本体が布製または紙製である請求項1~4のいずれか1つに記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記弾性枠体は、カップ形に形成されており、前記弾性枠体の前記カップ形の開口端部に沿って外鍔部が設けられている請求項1~5のいずれか1つに記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機として、特許文献1には、電動送風機を内蔵する本体ケースと、本体ケースに着脱可能に装着される集塵カップと、集塵カップ内に収納されるカップ形のフィルタ枠と、フィルタ枠の外面を覆うフィルタと、打撃棒とを備え、集塵カップに吸引口が設けられると共に、本体ケースに排気口が設けられた電気掃除機が提案されている。
【0003】
この従来の電気掃除機において、打撃棒は、本体ケースを貫通してフィルタ枠側へ突出した下端と、本体ケースから外部へ突出する上端とを有し、使用者が打撃棒の上端にハンマー等を用いて打撃を加えることにより、この打撃力が打撃棒の下端からフィルタ枠を介してフィルタに伝わり、それによってフィルタが振動してフィルタに付着したダストを集塵カップ内に払い落とすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-151169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の電気掃除機の場合、フィルタを振動させる手段としての打撃棒が本体ケースを貫通しているため、吸引力を低下させないよう打撃棒の貫通部分の気密性を確保する必要がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、簡素な構造でありながらメンテナンス性が向上した電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電動送風機を内蔵する駆動部と、前記駆動部に着脱可能に装着される集塵部とを有し、前記電動送風機が駆動することによりダストを含む空気が前記集塵部に流入するよう構成された掃除機本体を備え、
前記集塵部は、集塵カップと、前記集塵カップに着脱可能に収納されるフィルタとを有し、
前記フィルタは、弾性変形によって振動可能な弾性枠体と、前記弾性枠体に設けられたフィルタ本体と、振動伝達部とを有し、
前記振動伝達部は、前記弾性枠体によって生じる振動を前記フィルタ本体に伝達するよう、前記弾性枠体と前記フィルタ本体との間に設けられている電気掃除機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者が簡単にフィルタを除塵することができるメンテナンス性に優れた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1の電気掃除機を示す斜視図である。
図2図1の電気掃除機における集塵部を左側から視た斜視図である。
図3図2の集塵部の左側断面図である。
図4図2の集塵部における集塵カップから弾性枠体と共に濾材を取り出した状態を示す斜視図である。
図5図2の集塵部における枠本体を示す下方から視た斜視図である。
図6図5の枠本体の左側断面図である。
図7図6の枠本体に振動伝達部としての接合部を介して濾材が接合された状態を示す左側断面図である。
図8図2の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。
図9】実施形態2の電気掃除機の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。
図10】実施形態3の電気掃除機の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
<電気掃除機の全体構成>
図1は本発明の実施形態1の電気掃除機を示す斜視図である。なお、図1において、この電気掃除機の前後左右上下方向を矢印にて示している。
この電気掃除機Aは、電動送風機1bを内蔵する駆動部1および駆動部1に着脱可能に装着される集塵部2を有する掃除機本体10と、駆動部1の下部に接続された吸込口体3と、駆動部1の上部に接続される棒状のハンドル4とを備えたスティック型の電気掃除機である。
【0011】
駆動部1は、上下方向に長い流線形の筐体1aを有しており、その筐体1aに前記電動送風機1bと共に図示しないバッテリが収納されている。また、筐体1aの前面には電源スイッチ1acが設けられている。
この筐体1aは、その前面側の下半部に、集塵部2を着脱可能に装着するよう前面から左右側面に亘って開口する装着凹部1cが設けられている。
また、筐体1aにおいて、装着凹部1cの底部1caには可撓性ホース6を介して吸込口体3と接続する第1通風路1cbが設けられると共に、装着凹部1cの天井部1ccには筐体1aの上半部の内部空間と連通する第2通風路1cdが設けられており、第2通風路1cd内に電動送風機1bが収納されている。
【0012】
また、筐体1aの上半部の後面には排気口1aaが設けられており、空気が第2通風路1cdを通過した後に排気口1aaから外部へ排気されるようになっている。
また、筐体1aの上端には有底筒状のハンドル接続部1abが設けられると共に、ハンドル接続部1abの後面上部には、ハンドル4の下端の係止凹部(不図示)と係脱可能に係止する係止爪(不図示)を有する押しボタン1afが設けられている。また、ハンドル4の上部には手元側の電源スイッチ4aが設けられている。
【0013】
押しボタン1afを押しながらハンドル4を引っ張ってハンドル接続部1abから引き抜くことができる。例えば、階段や棚上等を清掃する際は、このように掃除機本体10からハンドル4を引き抜いてスティック型からハンディ型に変え、掃除機本体10のハンドル接続部1abを持って清掃することができる。
【0014】
吸込口体3は、底部に吸込口3bが設けられた筐体3aを有している。
この筐体3aの内部には、吸込口3bと可撓性ホース6とを接続する通風路3cが設けられている。
吸込口体3の筐体3aの後部と駆動部1の筐体1aの下部とはヒンジ部材7にて連結されており、このヒンジ部材7によって駆動部1に対して吸込口体3は前後方向および左右方向に揺動することができる。
【0015】
<集塵部について>
図2図1の電気掃除機における集塵部を左側から視た斜視図であり、図3図2の集塵部の左側断面図であり、図4図2の集塵部における集塵カップから弾性枠体と共に濾材を取り出した状態を示す斜視図である。また、図5図2の集塵部における枠本体を示す下方から視た斜視図であり、図6図5の枠本体の左側断面図である。
集塵部2は、上方開口部2aaを有する集塵カップ2aと、集塵カップ2aに着脱可能に収納されるフィルタ2bとを有する。
【0016】
集塵カップ2aは、集塵部2が駆動部1の装着凹部1cに装着されたときに第1通風路1cbと接続する空気流入口2abを底部に有している。
この空気流入口2abは、集塵カップ2aの底部から上方へ突出した短筒形に形成されており、その短筒形の上端には逆止弁2acが設けられている。つまり、空気流入口2abから集塵カップ2a内にダストを含む空気が流入する際は逆止弁2acが開き、空気の流れが止まると逆止弁2acが閉じてダストが空気流入口2ab側へ戻らないようになっている。
【0017】
また、集塵カップ2aは、フィルタ2bの後述する弾性枠体2baの外鍔部42baを載せる複数のリブ2adを内面における上方開口部2aaの近傍に有する。
また、集塵カップ2aの上端の前面には、係止爪112aeを有するスライド部材12aeおよび付勢部材としての圧縮コイルバネ22aeを有するロック機構2aeが設けられると共に、集塵カップ2aの下端には、駆動部1の装着凹部1cの底部1caの周囲部に設けられた図示しない凹部に係止可能な突起部2afが設けられている。
ている。
【0018】
ロック機構2aeのスライド部材12aeは上下方向にスライド可能であり、圧縮コイルバネ22aeによって上方へ付勢されている。
一方、駆動部1の筐体1aにおける装着凹部1cの上縁近傍には、装着凹部1cに装着された集塵カップ2aのロック機構2aeの係止爪112aeと係脱可能に係止する図示しない係止凹部が設けられている。
【0019】
集塵カップ2aを駆動部1の装着凹部1cに装着する際、集塵カップ2aの下部の突起部2afが装着凹部1cの底部1caの前記凹部(不図示)に係止すると共に、ロック機構2aeの係止爪112aeが装着凹部1cの上縁近傍の前記係止凹部(不図示)に係止する。集塵カップ2aを駆動部1の装着凹部1cから取り外す際は、ロック機構2aeのスライド部材12aeを圧縮コイルバネ22aeの付勢力に抗して下方へスライドすることにより係止爪112aeが係止凹部(不図示)から離脱するため、スライド部材12aeを下方へスライドさせた状態で集塵カップ2aを手前へ引き出すと装着凹部1cから取り外すことができる。
【0020】
フィルタ2bは、弾性変形可能な略カップ形の弾性枠体2baと、弾性枠体2baの集塵カップ2a側の面(外面)に設けられた袋状のフィルタ本体(濾材)2bbと、弾性枠体2baとフィルタ本体2bbとの間に設けられ振動伝達部2bcとを有する。
図5図7に示すように、弾性枠体2baは、短筒部12baと、短筒部12baの下端縁から吊り下がるように連設された枠部22baと、枠部22baの底部から上方突出状に連設された倒立U形の摘み部32baと、短筒部12baの外周面に連設された外鍔部42baとを有し、少なくとも枠部22baが弾性変形可能な材料(例えば、樹脂)にて形成されている。
【0021】
実施形態1の場合、弾性枠体2baにおいて、枠部22baは、等間隔で配置された4本のL形部分122baと、各L形部分122baの下端を連結する円環部分222baとを有してなり、対向する2本のL形部分122baの下端に摘み部32baの下端が繋がっている。
【0022】
また、実施形態1の場合、フィルタ本体2bbは布製であり、袋状のフィルタ本体2bbの開口端縁部が、弾性枠体2baの短筒部12baの外周面に接着、溶着等により隙間無く密着し固定されている。
また、実施形態1の場合、振動伝達部2bcは、弾性枠体2baの枠部22baとフィルタ本体2bbとを接合する接合部12bcである。具体的には、枠部22baの4本のL形部分122baの屈曲部外側とフィルタ本体2bbの内面とが、接着剤による接着、超音波による溶着、糸による縫製等によって接合されており、その各接合部分が振動伝達部2bcとしての接合部12bcとなっている。
【0023】
<電気掃除機の動作およびメンテナンスについて>
このように構成された実施形態1の電気掃除機Aの動作およびメンテナンスについて、図1図8を参照しながら説明する。なお、図8図2の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。
床などの清掃(掃除)の際、電気掃除機Aの電源スイッチ1acまたは4aを押すことにより、電動送風機1bが駆動して駆動部1内が負圧となり、それによって吸込口3bからダストを含む空気が吸込口体3内に流入する。吸込口体3内に流入したダストを含む空気は、可撓性ホース6および駆動部1の第1通風路1cbを通って集塵部2の集塵カップ2a内に空気流入口2abから流入する。集塵部2において、集塵カップ2a内に流入したダストはフィルタ本体2bbに捕捉され、ダストが除去された空気がフィルタ本体2bbを通過して駆動部1の第2通風路1cdに流入し、排気口1aaから外部に排気される。なお、電源スイッチ1acまたは4aをもう一度押すと、電動送風機1bが停止する。
【0024】
このようにして床などを清掃(掃除)した後の集塵カップ2a内にはダストが溜まるため、集塵カップ2a内に所定量以上のダストが溜まれば駆動部1から集塵部2を取り外してダストを廃棄する必要がある。また、フィルタ2bのフィルタ本体2bbにおけるダストカップ2aに面する外面にはダストD(図8(A)参照)が付着しているため、フィルタ本体2bbからダストDを除去することが好ましい。
【0025】
このような集塵部2のメンテナンスの際には、駆動部1の装着凹部1cから取り外した集塵部2を床面や台上に置いた状態とし、図8(A)に示すように、一方の手でフィルタ2bの弾性枠体2baの外鍔部42baを集塵カップ2aの各リブ2adに押し付けながら、他方の手で弾性枠体2baの摘み部32baを矢印P1方向に引き上げる。このとき、弾性枠体2baの枠部22baの4本のL形部分122baの下端が引き上げられるように弾性変形し、それに伴って4つの接合部12bc(振動伝達部2bc)と共にフィルタ本体2bbの底部も引き上げられる。なお、このときの弾性枠体2baの弾性変形により、4本のL形部分122baの屈曲部、各接合部12bcおよび各接合部12bcと接合したフィルタ本体2bbの底部の4箇所が、弾性枠体2baのセンター(軸心)の方へ接近する。
【0026】
その後、図8(B)に示すように、引き上げた摘み部32baを離すと、弾性枠体2baの枠部22baが急激に元の形状に復元する。すなわち、摘み部32baが急激に矢印P2方向に下がり、弾性枠体2baの4本のL形部分122baの屈曲部、各接合部12bcおよび各接合部12bcと接合したフィルタ本体2bbの底部の4箇所が、弾性枠体2baのセンター(軸心)から離れた元の位置へ移動する。このとき、弾性枠体2baの急激な復元動作時の振動が、4つの接合部12bc(振動伝達部2bc)を介してフィルタ本体2bbに伝わる。つまり、フィルタ本体2bbは縮まった状態から一気に広がった状態となる。このようにフィルタ本体2bbには急激な振動(衝撃)が付与されるため、フィルタ本体2bbの外面に付着したダストDが集塵カップ2a内に振り落とされる。なお、摘み部32baの引き上げおよび離しを複数回繰り返せばより効果的にフィルタ本体2bbからダストDを除去することができる。
【0027】
なお、フィルタ本体2bbを紙製とした場合、弾性枠体2baの弾性変形と復元動作が繰り返し行われることにより、フィルタ本体2bbの接合部12bc近傍部分が破れるおそれがあるため、実施形態1では布製のフィルタ本体2bbを用いている。しかしながら、紙製のフィルタ本体2bbでもこのような破れが生じないものであれば、接合部12bcにて弾性枠体2baと接合してもよい。
【0028】
(実施形態2)
図9は実施形態2の電気掃除機の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。なお、図9において、図8中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態2の電気掃除機は、集塵部におけるフィルタ102bの振動伝達部102bcの構成が実施形態1とは異なる以外は、実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態2における実施形態1とは異なる点を主に説明する。
【0029】
図9(A)および(B)に示すように、実施形態2において、振動伝達部102bcは、フィルタ本体2bbと接触可能に弾性枠体2baに設けられた突起部112bcである。具体的には、弾性枠体2baの4本のL形部分122baにおける屈曲部の外側近傍位置に、突起部112bcが一体状に設けられている。この突起部112bcのL形部分122baからの突出寸法は、特に限定されるものではないが、実施形態2ではL形部分122baにおける屈曲部の厚み程度の突出寸法に設定されている。換言すると、突起部112bcの厚みはL形部分122baにおける屈曲部の厚みの2倍程度である。
【0030】
実施形態2の場合も、集塵部のメンテナンスの際には実施形態1と同様に弾性枠体2baの摘み部32baの引っ張りと離しを行うことにより、フィルタ本体2bbの外面に付着したダストDを振り落とすことができる。
この際、図9(A)に示すように、実施形態2ではフィルタ本体2bbが弾性枠体2baに接合されていないため、摘み部32baを矢印P1方向に引き上げると、4つの突起部112bc(振動伝達部102bc)は弾性枠体2baのセンター(軸心)の方へ接近するが、この動きにフィルタ本体2bbは追随しない。
【0031】
その後、図9(B)に示すように、引き上げた摘み部32baを離すと、弾性枠体2baの枠部22baが急激に元の形状に復元する。すなわち、摘み部32baが急激に矢印P2方向に下がり、弾性枠体2baの4本のL形部分122baおよび各突起部112bcが、弾性枠体2baのセンター(軸心)から離れた元の位置へ移動し、フィルタ本体2bbと接触する。このとき、弾性枠体2baの急激な復元動作時の振動が、4つの突起部112bc(振動伝達部2bc)を介してフィルタ本体2bbに伝わる。つまり、フィルタ本体2bbは弛んだ状態から4つの突起部112bcによって内側から押し広げられて張った状態となる。このようにフィルタ本体2bbには急激な振動(衝撃)が付与されるため、フィルタ本体2bbの外面に付着したダストDが集塵カップ2a内に振り落とされる。なお、実施形態2の場合も、摘み部32baの引き上げおよび離しを複数回繰り返せばより効果的にフィルタ本体2bbからダストDを除去することができる。
【0032】
(実施形態3)
図10は実施形態3の電気掃除機の集塵部の除塵動作を説明する図であって(A)は摘み部を引き上げた状態、(B)は摘み部を離した状態である。なお、図10において、図8中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態3の電気掃除機は、集塵部におけるフィルタ102bの振動伝達部202bcの構成が実施形態1とは異なる以外は、実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態3における実施形態1とは異なる点を主に説明する。
【0033】
図10(A)および(B)に示すように、実施形態3において、振動伝達部202bcは、フィルタ本体2bbと接触可能な玉材212bcと、玉材212bcと弾性枠体2baとを連結する連結材222bcとを有してなる。
この場合、玉材212bcは、フィルタ本体2bbにダメージを与えないよう球形に形成されており、その一部には連結材222bcとしての紐を結びつける輪部が設けられている。なお、弾性枠体2baの摘み部32baにも連結材222bcとしての紐を結びつける輪部が設けられている。
また、連結材222bcの長さは、弾性枠体2baの自由状態において、玉材212bcによってフィルタ本体2bbの底部が押し下げられて張った状態となる長さに設定される。
【0034】
実施形態3の場合も、集塵部のメンテナンスの際には実施形態1と同様に弾性枠体2baの摘み部32baの引っ張りと離しを行うことにより、フィルタ本体2bbの外面に付着したダストDを振り落とすことができる。
この際、図10(A)に示すように、摘み部32baを矢印P1方向に引き上げると、弾性枠体2baの枠部22baが弾性変形すると共に、振動伝達部202bcの連結材222bcおよび玉材212bcが上昇する。
【0035】
その後、図10(B)に示すように、引き上げた摘み部32baを離すと、弾性枠体2baの枠部22baが急激に元の形状に復元する。すなわち、摘み部32baが急激に矢印P2方向に下がり、弾性枠体2baの4本のL形部分122baが、弾性枠体2baのセンター(軸心)から離れた元の位置へ移動する。これと同時に、振動伝達部202bcの玉材212bcが落下する。このとき、弾性枠体2baの急激な復元動作により袋状のフィルタ本体2bbの周囲部(側面部)が4本のL形部分122baで押されると共に、玉材212bcによってフィルタ本体2bbの底部が押される。
【0036】
このようにフィルタ本体2bbには急激な振動(衝撃)が付与されるため、フィルタ本体2bbの外面に付着したダストDが集塵カップ2a内に振り落とされる。なお、実施形態3の場合も、摘み部32baの引き上げおよび離しを複数回繰り返せばより効果的にフィルタ本体2bbからダストDを除去することができる。
また、実施形態3では、このような除塵方法以外にも、例えば、フィルタ202bを装着した集塵カップ2aを揺らし、それによって振動伝達部202bcの玉材212bcをフィルタ本体2bbの底部上で転がす、玉材212bcを弾性枠体2baに衝突させる等の動作を行うことによって、フィルタ本体2bbに振動を与えてダストDを振るい落とすこともできる。
【0037】
(他の実施形態)
1.実施形態3(図10)において、振動伝達部202bとしての玉材212bcおよび連結材222bcの代わりに、弾性枠体2baの摘み部32baからフィルタ本体2bbの底部に向かって延びる振動伝達部としての棒状部材を、摘み部32baに一体状に設けてもよい。この場合、フィルタ本体2bbの底部にダメージを与えないように棒状部材の下端を丸みのある形状に形成する。この構成によれば、弾性変形した弾性枠体2baが復元すると、棒状部材がフィルタ本体2bbの底部を瞬間的に突いて(押圧して)ダストを振るい落とすことができる。
【0038】
2.実施形態1(図7)では、弾性枠体2baの外面側にフィルタ本体2bbが設けられた場合を例示したが、弾性枠体2baの内面側にフィルタ本体2bbが設けられてもよい。この場合、吸引時にフィルタ本体2bbが弾性枠体2baから離れてしまわないよう、弾性枠体2baにおける4本のL型部分122baの各内面とフィルタ本体2bbの外面とを振動伝達部2bcとしての接合部12bcにて接合する。
【0039】
3.実施形態1(図1)では、掃除機本体10と吸込口体3とが可撓性ホース6で接続されたスティック型の電気掃除機Aを例示したが、本発明はこの電気掃除機に限定されず、例えば、可撓性ホース6を省略し、吸込口体の接続管部を掃除機本体に着脱可能に接続するタイプのスティック型電気掃除機であってもよい。あるいは、ハンドル4の代わりに掃除機本体10の駆動部1の筐体1aにハンドルを設け、掃除機本体10を持って掃除を行うことができるハンディ型の電気掃除機であってもよく、このハンディ型の掃除機本体に延長管を介して吸込口体を接続したスティック型の電気掃除機としてもよい。また、キャニスター型掃除機であってもよい。
【0040】
(まとめ)
本発明の電気掃除機は、電動送風機を内蔵する駆動部と、前記駆動部に着脱可能に装着される集塵部とを有し、前記電動送風機が駆動することによりダストを含む空気が前記集塵部に流入するよう構成された掃除機本体を備え、
前記集塵部は、集塵カップと、前記集塵カップに着脱可能に収納されるフィルタとを有し、
前記フィルタは、弾性変形によって振動可能な弾性枠体と、前記弾性枠体に設けられたフィルタ本体と、振動伝達部とを有し、
前記振動伝達部は、前記弾性枠体によって生じる振動を前記フィルタ本体に伝達するよう、前記弾性枠体と前記フィルタ本体との間に設けられている。
【0041】
この構成によれば、集塵部のメンテナンス時において、使用者は弾性枠体をフィルタ本体と反対側に引っ張って弾性変形させ、離すことにより、弾性変形した枠本体を復元させることができる。このとき、弾性枠体が振動し、この振動が振動伝達部を介してフィルタ本体(濾材)に伝達されるため、フィルタ本体に付着したダストが振るい落とされる。よって、使用者は簡単にフィルタ本体の除塵を行うことができる。また、集塵部に設けられている弾性枠体に振動伝達部を設けることが可能であるため、弾性枠体の大幅な設計変更をする必要はない。
すなわち、本発明によれば、使用者が簡単にフィルタ本体を除塵することができるメンテナンス性に優れた電気掃除機を大幅な設計変更をすることなく提供することができる。
また、前記従来の電気掃除機(特許文献1)の場合、フィルタを振動させる手段としての打撃棒が本体ケースを貫通しているため、吸引力を低下させないよう打撃棒の貫通部分の気密性を確保する必要がある、打撃に耐えうるよう打撃棒およびフィルタ枠等を剛性を有する素材で構成する必要がありコストおよび重量増加につながる、打撃棒を必要とするため部品点数および組み立て工数が増加する、打撃力が強すぎるとフィルタ枠およびフィルタが破損する、といった課題を内包しているが、本発明は従来のこのような課題を解消したものである。
【0042】
本発明の電気掃除機は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
(1)前記振動伝達部が、前記弾性枠体と前記フィルタ本体とを接合する接合部であってもよい。
この構成によれば、集塵部に設けられた弾性枠体とフィルタ本体とを振動伝達部としての接合部(例えば、接着剤)にて接合することができるため、メンテナンス性に優れた集塵部を低コストにて作製することができる。この構成の場合、フィルタ本体は布製のものが好適である。
【0043】
(2)前記振動伝達部が、前記フィルタ本体と接触可能に前記弾性枠体に設けられた突起部であってもよい。
この構成によれば、集塵部に設けられた弾性枠体を成型する金型を利用して突起部を有する弾性枠体を成型することが可能であるため、メンテナンス性に優れた集塵部を比較的低コストにて作製することができる。この構成の場合、フィルタ本体は布製でも紙製でもよい。
(3)前記振動伝達部が、前記フィルタ本体と接触可能な玉材と、前記玉材と前記弾性枠体とを連結する連結材とを有してなるものであってもよい。
この構成によれば、集塵部に設けられた弾性枠体に連結材(例えば、紐)を介して玉材を連結することができるため、メンテナンス性に優れた集塵部を比較的低コストにて作製することができる。また、この構成によれば、弾性枠体を振ることによって玉材をフィルタ本体に衝突させ、それによってフィルタ本体に付着したダストを振り落とすことも可能となる。この構成の場合、フィルタ本体は布製でも紙製でもよい。
【0044】
(4)前記弾性枠体は、カップ形に形成されており、前記弾性枠体の前記カップ形の開口端部に沿って外鍔部が設けられると共に、前記弾性枠体の前記カップ形の内側底面に摘み部が設けられてもよい。
この構成によれば、フィルタ本体の除塵時において、使用者は一方の手で弾性枠体の外鍔部を集塵カップに押さえ付け、他方の手で弾性枠体の摘み部を引っ張って離す動作をすることができるため、弾性枠体を安定させた状態で摘み部を摘んで除塵動作を行うことができる。なお、フィルタを集塵カップから取り外した場合は、使用者は一方の手で弾性枠体の外鍔部を掴み、他方の手で弾性枠体の摘み部を引っ張って離す動作をすることができる。
【0045】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 駆動部
1b 電動送風機
2 集塵部
2a 集塵カップ
2b、102b、202b フィルタ
2ba 弾性枠体
2bb フィルタ本体
2bc、102bc、202bc 振動伝達部
10 掃除機本体
12bc 接合部
112bc 突起部
212bc 玉材
222bc 連結材
32ba 摘み部
42ba 外鍔部
A 電気掃除機
図1
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