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特許7223569接着フィルム、接着剤組成物及びフレキシブルプリント基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】接着フィルム、接着剤組成物及びフレキシブルプリント基板
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20230209BHJP
   C09J 127/12 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230209BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20230209BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 163/04 20060101ALI20230209BHJP
   B32B 15/06 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J127/12
C09J201/00
C09J11/04
B32B25/08
H05K1/03 650
H05K1/03 670
C09J163/00
C09J163/04
B32B15/06 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018226619
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090564
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 久恵
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-041429(JP,A)
【文献】特許第3175338(JP,B2)
【文献】特開2016-023294(JP,A)
【文献】特開平10-245535(JP,A)
【文献】特開平10-292010(JP,A)
【文献】特開2010-235744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム層に接着層が積層された接着フィルムであって、
該接着層は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤を含有する接着剤組成物で構成され、
該接着層は、Bステージ状態であり、
該熱硬化性樹脂の含有量が、該不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であり、
JIS7127(1999)に準拠して測定される、該接着層の弾性率が、15MPa以上であり、破断伸び率が、400%未満であることを特徴とする接着フィルム。
【請求項2】
前記不飽和結合を有するフッ素系ゴムは、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーの重合体又は共重合体の不飽和結合導入物である請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記不飽和結合を有するフッ素系ゴムは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体の不飽和結合導入物である請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項4に記載の接着フィルム。
【請求項6】
該不飽和結合を有するフッ素ゴムのムーニー粘度(ML1+10(121℃))が40~110である請求項1~5のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂の軟化点が、30℃以上である請求項1~6のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記無機充填剤の含有量が、前記不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、1質量部~35質量部である請求項1~7のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項9】
前記無機充填剤が、シリカを含む請求項1~8のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の接着フィルムを含むフレキシブルプリント基板であって、
前記接着層が硬化しているフレキシブルプリント基板。
【請求項11】
不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤を含有する接着剤組成物であって、
該熱硬化性樹脂の含有量が、該不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であり、
JIS7127(1999)に準拠して測定される、前記接着剤組成物をBステージ状態としたときの弾性率が、15MPa以上であり、破断伸び率が、400%未満であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項12】
前記不飽和結合を有するフッ素系ゴムは、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーの重合体又は共重合体の不飽和結合導入物である請求項11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記不飽和結合を有するフッ素系ゴムは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体の不飽和結合導入物である請求項11に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む請求項11~13のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項14に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
該不飽和結合を有するフッ素ゴムのムーニー粘度(ML1+10(121℃))が40~110である請求項11~15のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
該熱硬化性樹脂の軟化点が、30℃以上である請求項11~16のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
前記無機充填剤の含有量が、前記不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、1質量部~35質量部である請求項11~17のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項19】
前記無機充填剤が、シリカを含む請求項11~18のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物を含む接着層を有するフレキシブルプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴムを含む接着フィルム、接着剤組成物並びに該接着フィルム又は接着剤組成物を用いたフレキシブルプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用の接着剤組成物としては、一般的に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とするものが使用される(例えば特許文献1)また、主成分として耐熱劣化性に優れるフッ素系ゴムを使用し、エポキシ樹脂と混合することも提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3175338号公報
【文献】特許第3555354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フッ素系ゴムを用いた場合、フッ素ゴムの低弾性率、高伸び率の影響でプリント配線板の加工時の加工性が低下することがわかった。
本発明は、上記のような問題を解決することを目的とする。
すなわち、フッ素系ゴム及び熱硬化性樹脂を含み、プリント配線板に使用した時の加工性が良好な接着フィルム及び接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下により上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
樹脂フィルム層に接着層が積層された接着フィルムであって、
該接着層は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤を含有する接着剤組成物で構成され、
該接着層は、Bステージ状態であり、
該熱硬化性樹脂の含有量が、該不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であり、
JIS7127(1999)に準拠して測定される、該接着層の弾性率が、15MPa以上であり、破断伸び率が、400%未満であることを特徴とする接着フィルム。
また、本発明は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤を含有する接着剤組成物であって、
該熱硬化性樹脂の含有量が、該不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であることを特徴とする接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フッ素系ゴム及び熱硬化性樹脂を含み、プリント配線板に使用した時の加工性が良好な接着フィルム及び接着剤組成物を提供できる。また、本発明によれば、該接着フィルム又は接着剤組成物を使用したフレキシブルプリント基板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、数値範囲を示す「○○以上▲▲以下」及び「○○~▲▲」などの記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む範囲である。
本発明は、樹脂フィルム層に接着層が積層された接着フィルムであって、
該接着層は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤を含有する接着剤組成物で構成され、
該接着層は、Bステージ状態であり、
該熱硬化性樹脂の含有量が、該不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であり、
JIS7127(1999)に準拠して測定される、該接着層の弾性率が、15MPa以上であり、破断伸び率が、400%未満であることを特徴とする。
【0008】
以下、本発明で用いる各材料について説明する。
〈不飽和結合を有するフッ素系ゴム〉
本発明で用いる接着剤組成物は、二重結合などの不飽和結合を有するフッ素系ゴムを含有する。不飽和結合を有するフッ素系ゴムは、フッ素系ゴムに公知の方法で不飽和結合を導入することで得ることができる。例えば、アルカリ変性など塩基変性による方法が挙げられる。
二重結合などの不飽和結合を有するフッ素系ゴムを用いることで、その不飽和結合に由来する架橋点をフッ素系ゴムに付与することができるため、硬化後に三次元構造を取ることができる。そのため、高温での接着力、半田耐熱性、及び高温長時間の耐久試験後の接着力が良好になる。
【0009】
好ましくは、不飽和結合を有するフッ素系ゴムには、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、及びテトラフルオロエチレンなどからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーの重合体又は共重合体の不飽和結合導入物が挙げられる。より好ましくは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、及びテトラフルオロエチレンなどからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーの共重合体の不飽和結合導入物である。共重合体は、好ましくは二元共重合体又は三元共重合体であり、より好ましくは二元共重合体である。
共重合体中には、本発明の効果を損なわない程度に、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロイソブテン、酢酸ビニルなどのフッ素化オレフィン、オレフィン、ビニル化合物等が共重合されていてもよい。
具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体などの不飽和結合導入物が挙げられる。
好ましくはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体の不飽和結合導入物であり、共重合割合(フッ化ビニリデン:ヘキサフルオロプロペン)は、質量基準で、好ましくは3:7~9.5:0.5であり、より好ましくは5:5~9:1である。
【0010】
不飽和結合を有するフッ素系ゴムのムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、40~110であることが好ましい。上記範囲であると、シート加工性に優れ、弾性率と伸び率が適正な範囲となるため、抜き加工性、高温での接着力、半田耐熱性、高温長時間の耐久試験後の接着力、及びBステージ状態での加工性が良好になる。ムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、より好ましくは50~100である。
ムーニー粘度は、材料の分子量などにより制御することができる。例えば、分子量を大きくすることでムーニー粘度をより大きくすることができる。
ムーニー粘度の測定は、JIS K 6300-1(2013)に準じて行う。ムーニービスコメータSMV-201(株式会社島津製作所製)を用いて、温度条件121℃にて、予熱時間1分及びローターの回転時間10分の条件で粘度を測定する。
【0011】
これらの重合体又は共重合体に対し、必要に応じてアセトン、メチルエチルケトン等の
ケトン系溶媒の存在下、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、トリエチルアミン等のアルカリ性物質により、好ましくは20~70℃程度の温度で処理することにより、脱フッ化水素化反応して分子内に不飽和結合を形成させることができる。
不飽和結合を有するフッ素系ゴムにおける不飽和結合の含有量(-CH=CH-の含有量)は、好ましくは0.1質量%~30質量%であり、より好ましくは0.5質量%~10質量%である。不飽和結合を有するフッ素系ゴムは市販のものを用いることもできる。
【0012】
〈熱硬化性樹脂〉
接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は軟化点が、30℃以上であることが好ましい。すなわち、常温(25℃)で固形状態であることが好ましい。軟化点は、より好ましくは30℃~160℃であり、さらに好ましくは40℃~160℃であり、さらにより好ましくは50℃~150℃であり、特に好ましくは60℃~130℃である。
フレキシブルプリント基板などのプリント配線板の製造工程において、熱プレス前のBステージ(半硬化)状態で、部品実装のための穴あけなどの加工が必要となる場合がある。軟化点が上記範囲であり、常温で固形状態の熱硬化性樹脂を用いることで、フッ素系ゴムとの混合性が良好となり、後述する無機充填剤の弾性率向上効果と相まって、Bステージ状態での加工性がさらに良好になる。
樹脂の軟化点は、JIS K 7234の環球法により測定することができる。測定装置には、例えば、メトラートレド社製メトラー軟化点測定装置(FP900サーモシステム)などを使用することができる。
【0013】
熱硬化性樹脂は、反応性、耐熱性の点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のいずれか又はこれら2種類以上の混合物であることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、水素添加物などが例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒドを酸又はアルカリを触媒として加え反応させたものである。
フェノール類としては、フェノール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソクレゾール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。
アルデヒド類として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。一般にはホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドが使用される。この他に、植物油変性フェノール樹脂を用いることもできる。植物油変性フェノール樹脂は、フェノール類と植物油とを酸触媒の存在下に反応させ、ついで、アルデヒド類をアルカリ触媒の存在下に反応させることにより得られる。酸触媒としてはパラトルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂として、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などを用いるこ
ともできる。
【0015】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。このようなエポキシ樹脂は、市販のものを用いてもよく、例えば、YDCN700-10(新日鉄住金化学株式会社)、N695(DIC株式会社)などが挙げられる。
熱硬化性樹脂の含有量は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、8質量部~120質量部であることが必要である。上記範囲であると、抜き加工性及び高温での接着力が良好になる。該含有量は、好ましくは8質量部~110質量部であり、より好ましくは8質量部~100質量部である。
【0016】
〈無機充填剤〉
本発明に用いる接着剤組成物は、無機充填剤を含有する。無機充填剤には、公知の材料を用いることができる。無機充填剤は電気絶縁性のものが好ましい。
例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化マンガン及び酸化ジルコニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、タルク、マイカ、カオリンなどが挙げられる。
【0017】
フッ素系ゴムは弾性率が低いため、Bステージ状態での加工の際に、接着剤のバリの発生や加工部への接着剤の付着などが発生することがわかった。これに対し、接着剤組成物に無機充填剤を用いることで、弾性率を向上させることができ、加工性が良好になる。
無機充填剤は、ある程度凝集して弾性率を高めやすいチキソトロピー性を有するものが好ましい。このような観点から、シリカ、水酸化アルミニウム、タルクなどが好ましい。より好ましくはシリカである。シリカは、乾式シリカ又は湿式シリカなど特に制限なく使用することができる。シリカは市販のものを用いることもできる。例えば、アエロジル200(日本アエロジル工業)などが挙げられる。
【0018】
無機充填剤は、疎水化処理されていてもよい。疎水化処理としては、シリコーンオイル処理、シランカップリング剤処理などが挙げられる。
無機充填剤の一次粒子の個数平均粒径は、好ましくは10nm~100000nmであり、より好ましくは50nm~10000nm程度である。
無機充填剤の含有量は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部~35質量部であり、より好ましくは1質量部~30質量部であり、さらに好ましくは3質量部~25質量部である。上記範囲であることで、加工性に加え、接着性、はんだ耐熱性、及び高温長時間の耐久性が良好になる。
【0019】
〈アミン化合物〉
接着剤組成物は、硬化剤としてアミン化合物を含有してもよい。アミン化合物は硬化性の観点から、芳香族ジアミン化合物が好ましい。
芳香族ジアミン化合物は、例えば下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
[式(I)中、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、炭素数1~6のアルキレン基、芳香族炭化水素基、カルボニル基、フルオレン基、スルホニル基、エーテル基及びスルフィド基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、m、nはそれぞれ0~4の整数である。]
アルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。アルキル基は硬化性の観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
アルキレン基は、好ましくは、メチレン基、エチレン基が挙げられる。アルキレン基は硬化性の観点から、メチレン基がより好ましい。
【0022】
m、nは貯蔵安定性、速硬化性により優れるという観点から、それぞれ独立して0~2の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
式中、-NHの配置は、硬化性の観点から、Rに対してパラ位であるのが好ましい。
芳香族炭化水素基は、2価であれば特に制限されない。例えば、フェニレンが挙げられる。芳香族炭化水素基は例えばメチル基のような置換基を有することができる。
【0023】
は、芳香族炭化水素基とアルキレン基とが組み合わされた置換基であってもよく、芳香族炭化水素とアルキレン基との組み合わせは特に制限されない。例えば、芳香族炭化水素基を有するアルキレン基が挙げられる。具体的には例えば、2つのアルキレン基が芳香族炭化水素を介して結合する態様、アルキレン基の側鎖として芳香族炭化水素が結合している態様、芳香族炭化水素基とアルキレン基とが結合し芳香族炭化水素基及びアルキレン基が式(I)に示される2つのベンゼン環とそれぞれ結合する態様が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレンが挙げられる。芳香族炭化水素はメチル基のような置換基を有することができる。
式(I)で示される化合物の中でも、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)が特に好ましい。
アミン化合物の含有量は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部~20質量部であり、より好ましくは1質量部~10質量部である。
【0024】
〈接着剤組成物〉
本発明の接着剤組成物は、不飽和結合を有するフッ素系ゴム、熱硬化性樹脂、及び無機充填剤、並びに必要に応じてアミン化合物など他の添加剤を混合して得ることができる。混合する際は、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。
本発明の接着剤組成物は、フレキシブルプリント基板の製造に用いるためのものであることが好ましい。
例えば、接着剤組成物を用いた接着フィルムを得て、これをフレキシブルプリント基板の製造に用いることもできる。
【0025】
〈接着フィルム〉
本発明の接着フィルムは、樹脂フィルム層に接着層が積層された接着フィルムであって
、該接着層は、上記接着剤組成物で構成される。樹脂フィルム層には、特に制限されずポリイミドなど公知の材料を採用できる。
【0026】
JIS7127 引張特性の試験方法に準拠して測定される、接着層の弾性率(又は接着剤組成物をBステージ状態(半硬化状態)としたときの弾性率)が、15MPa以上であることが必要である。好ましくは、20MPa以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは3000MPa以下であり、より好ましくは1000MPa以下であり、さらに好ましくは100MPa以下である。
また、JIS7127(1999) 引張特性の試験方法に準拠して測定される、接着層の破断伸び率(又は接着剤組成物をBステージ状態(半硬化状態)としたときの破断伸び率)が400%未満であることが必要である。好ましくは、300%未満であり、より好ましくは200%未満である。下限は特に制限されないが、好ましくは50%以上であり、より好ましくは100%以上である。
弾性率及び破断伸び率が上記範囲であることで、加工性が良好になる。弾性率及び破断伸び率は、熱硬化性樹脂の軟化点、フッ素系ゴムのムーニー粘度、無機充填剤の含有量、などにより制御することができる。
【0027】
接着フィルムは公知の方法で製造することができる。例えば、上記接着剤組成物の有機溶媒溶液を調製し、ポリイミドなどの樹脂フィルム層に塗布して接着層を形成する。そして、例えば50℃~160℃、1分~15分の条件下で乾燥させ、接着層をBステージ状態にし、接着フィルムが得られる。その後、得られた接着フィルムを被接着物と貼り合わせ、加熱硬化させることができる。
フレキシブルプリント基板の製造において、カバーフィルムやキャリアフィルムなどの接着に上記接着剤組成物を用いる場合も同様に接着することで、接着剤組成物の硬化物を含む接着層を有するフレキシブルプリント基板を得ることができる。Bステージ状態から加熱硬化の間に、必要に応じて、穴あけ加工などを行うこともできる。
【0028】
Bステージ状態の接着剤組成物を得る方法は、特に制限されず、上記のように加熱乾燥させる方法を含め、公知の方法を採用することができる。
有機溶媒は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン(MIBK)、等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、含有する固形分量が、好ましくは10質量%~70質量%、より好ましくは20質量%~40質量%になる範囲で用いればよい。
【0029】
フレキシブルプリント基板の構成は特に制限されない。公知の構成のフレキシブルプリント基板に本発明の接着フィルムを適用できる。あるいは、公知の構成のフレキシブルプリント基板における接着層に、本発明の接着剤組成物の硬化物を含む接着層を適用できる。
例えば、ポリイミドなどのキャリアフィルム、該キャリアフィルムの一方の面に積層された接着層A、該接着層A上に設けられた銅箔などからなる回路、該回路及び該接着剤層A上に設けられた接着層B、該接着層Bに積層されたカバーフィルムを有するフレキシブルプリント基板が挙げられる。
接着層A及び接着層Bの少なくとも一方、又は両方が本発明の接着剤組成物の硬化物を含む接着層であることが好ましい。接着層A及び接着層Bのそれぞれの厚みは、好ましくは1μm~100μm程度であり、より好ましくは10μm~50μm程度である。
あるいは、フレキシブルプリント基板の製造に上記接着フィルムを用いてもよい。例えば、接着層Aを含むキャリアフィルムや接着層Bを含むカバーフィルムとして、上記接着フィルムを使用しうる。そうすることで、接着フィルムを含むフレキシブルプリント基板であって、接着フィルムに含まれる接着層が硬化しているフレキシブルプリント基板を得
ることができる。
キャリアフィルム、回路、及びカバーフィルムに用いられる材料は特に制限されず、公知の材料を用いることができる。フレキシブルプリント基板の製造方法に関しても、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。また、以下の処方において、部は特に断りに無い限り質量基準である。
【0031】
まず実施例で採用した試験方法について説明する。
(接着性試験(23℃))
接着剤組成物の溶液をポリイミドフィルム(株式会社カネカ製 アピカルNPI 厚み12.5μm)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、140℃で3分間熱風乾燥機により乾燥させ、半硬化(Bステージ)状態のサンプルを得た。このBステージサンプルの接着剤塗布面と銅箔(JX日鉱日石製 BHY 厚み18μm)の黒処理面とを真空プレスラミネート機を用いて、160℃、3MPa、30秒間減圧下で熱圧着させた。その後、160℃で10時間加熱硬化させた。
硬化後のサンプルを、引っ張り試験機(島津製 オートグラフ)を用いて23℃の雰囲気下でポリイミドフィルムを90°の方向に50mm/minの速度で引き剥がし、接着強度を測定した。
接着強度が0.5N/mm以上のものをA、0.34N/mm以上0.5N/mm未満のものをB、0.34N/mm未満のものをCとした。
【0032】
(接着性試験(150℃))
上記接着性試験において、150℃の雰囲気下でポリイミドフィルムを90℃の方向に50mm/minの速度で引き剥がし、接着強度を測定した。
接着強度が0.5N/mm以上のものをA、0.34N/mm以上0.5N/mm未満のものをB、0.34N/mm未満のものをCとした。
【0033】
(半田耐熱性)
接着性の評価と同様に加熱硬化させたサンプルを作製し、20mm角に切断し、300℃の半田浴にポリイミド面を上にして10分間フロートさせた。
膨れや剥がれのないものをA、目立たない膨れや剥がれがわずかにみられるものをB、顕著な膨れもしくは剥がれのあったものをCとした。
【0034】
(150℃耐久試験後の接着力)
上記接着性の評価と同様に作製したサンプルを150℃の環境の大気オーブン中に3000時間放置した後、常温にて放冷し、上記接着性の評価と同様に引きはがし強度を測定した。
【0035】
(抜き加工性)
ポリイミドフィルムに接着剤組成物を塗付乾燥してBステージ状態としたフィルムを用いて、抜き加工性の評価を実施した。抜き加工は、プレス加工機を用いたせん断加工で実施した。直径5mmの丸穴を100穴の打ち抜きを行い、抜き断面の観察を行い、100μm以上のバリが発生した穴数を計測した。バリの数が、0個~3個をA判定とし、4個~10個をB判定とし、11個以上をC判定とした。
【0036】
(Bステージ状態での弾性率及び伸び率)
弾性率及び破断伸び率は、JIS7127(1999) (プラスチック-引張特性の
試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件)に準拠して測定する。装置は、島津製作所 卓上形精密万能試験機 AG-IS 10KNを使用する。
各実施例・比較例で得られた接着剤組成物の溶液を、シリコン系離型剤が塗付されたPETフィルムに、乾燥後の厚みが30μmになるように塗付し、乾燥(140℃で3分間熱風乾燥機により乾燥)を行う。乾燥後、Bステージ状態となった接着剤組成物で構成される接着層をPETフィルムから剥がしたものをサンプルとして評価する。評価は、引張スピード50mm/分、標点間距離100mmの条件で行う。
【0037】
<実施例1>
・フッ素ゴムA 2重結合変性(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンの二元共重合体(共重合割合:フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン=8/2)のアルカリ変性品、ムーニー粘度:98、二重結合の含有量:4質量%)100部
・シリカ(ヒュームドシリカ:アエロジル200(日本アエロジル工業)) 5部
・エポキシ樹脂(固形 軟化点95℃)o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N695(DIC株式会社)) 20部
・アミン化合物(4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)キュアハードMED-J) 3部
メチルエチルケトン(MEK)を用いて、上記固形分が30質量%になるように溶解させて、接着剤組成物を得た。なお、シリカはビーズミルを用いて分散させた。
また、得られた接着剤組成物の溶液をポリイミドフィルム(株式会社カネカ製 アピカルNPI 厚み12.5μm)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、140℃で3分間熱風乾燥機により乾燥させ、Bステージ状態のサンプルを得た。このサンプルの接着剤塗布面と銅箔(JX日鉱日石製 BHY 厚み18μm)の黒処理面とを真空プレスラミネート機を用いて、160℃、3MPa、30秒間減圧下で熱圧着させた。その後、160℃で10時間加熱硬化させ、実施例1の試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを用いて、前述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例2~11、比較例1~6>
使用した材料などを表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~11、比較例1~6の接着剤組成物及び試験サンプルを得た。これらの評価結果を表1に示す。
【0039】
なお、表中に記載の上記以外の材料は以下の通りである。
フッ素ゴムB 2重結合変性(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンの二元共重合体(共重合割合:フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン=8/2)のアルカリ変性品、ムーニー粘度:50、二重結合の含有量:4質量%)
フッ素ゴムC 2重結合変性(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンの二元共重合体(共重合割合:フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン=8/2)のアルカリ変性品、ムーニー粘度:30、二重結合の含有量:4質量%)
フッ素ゴムA 未変性(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンの二元共重合体(共重合割合:フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロペン=8/2、ムーニー粘度:98)
エポキシ樹脂(液状)JER604:グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製品エピコート604)
エポキシ樹脂(液状)EP828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカルエポキシ社)
エポキシ樹脂(固形 軟化点80℃):o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN700-10(新日鉄住金化学))
【0040】
【表1】

表中、組成の数値は、質量部である。また、>500%は、500%を超えることを意味する。