(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のライダー支援システムのための処理装置及び処理方法、鞍乗型車両のライダー支援システム、及び、鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 27/00 20200101AFI20230209BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20230209BHJP
B62J 45/422 20200101ALI20230209BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B62J27/00
B62J45/00
B62J45/422
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018238799
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】プファウ ラーズ
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118716(JP,A)
【文献】特開2008-121583(JP,A)
【文献】特開2016-165943(JP,A)
【文献】特開2016-068769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0107491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/00-27/30,
45/00-45/423,99/00
G08G 1/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(100)のライダー支援システム(10)のための処理装置(60)であって、
前記鞍乗型車両(100)の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部(61)と、
前記鞍乗型車両(100)にライダー支援動作を実行させる制御モードを、前記取得部(61)で取得される前記トリガ情報に応じて開始する実行部(62)と、
を備えており、
前記取得部(61)は、更に、前記鞍乗型車両(100)のハンドルグリップ(2a)へのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報を取得し、
前記実行部(62)は、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させ、
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記ハンドルグリップ(2a)に前記ライダーの一方の手のみが載置されていない場合と、前記ハンドルグリップ(2a)に前記ライダーの両手が載置されていない場合と、で、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させる、
処理装置(60)。
【請求項2】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記ライダー支援動作として実行される自動減速動作を、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて変化させる、
請求項1に記載の処理装置(60)。
【請求項3】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記自動減速動作によって前記鞍乗型車両(100)に生じさせる速度又は減速度を変化させる、
請求項2に記載の処理装置(60)。
【請求項4】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記ライダー支援動作として実行される自動加速動作を、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて変化させる、
請求項1~3の何れか一項に記載の処理装置(60)。
【請求項5】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記自動加速動作によって前記鞍乗型車両(100)に生じさせる速度又は加速度を変化させる、
請求項4に記載の処理装置(60)。
【請求項6】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記ライダー支援動作として実行される前記ライダーへの警告動作を、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて変化させる、
請求項1~5の何れか一項に記載の処理装置(60)。
【請求項7】
前記警告動作は、前記ライダーに外力を与えて警告する動作である、
請求項6に記載の処理装置(60)。
【請求項8】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、警告の有無、強度、周期、又は種別を変化させる、
請求項6又は7に記載の処理装置(60)。
【請求項9】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて、前記取得部(61)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記ライダー支援動作の開始タイミングを変化させる、
請求項1~8の何れか一項に記載の処理装置(60)。
【請求項10】
前記取得部(61)は、前記ハンドルグリップ(2a)への前記ライダーの手の載置状態を接触式に検出するセンサ(42a)の検出結果に基づいて、前記ライダー姿勢情報を取得する、
請求項1~9の何れか一項に記載の処理装置(60)。
【請求項11】
前記取得部(61)は、前記ハンドルグリップ(2a)への前記ライダーの手の載置状態を非接触式に検出するセンサ(42a)の検出結果に基づいて、前記ライダー姿勢情報を取得する、
請求項1~9の何れか一項に記載の処理装置(60)。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか一項に記載の処理装置(60)を備えている、
鞍乗型車両(100)のライダー支援システム(10)。
【請求項13】
請求項
12に記載のライダー支援システム(10)を備えている、
鞍乗型車両(100)。
【請求項14】
鞍乗型車両(100)のライダー支援システム(10)のための処理方法であって、
前記ライダー支援システム(10)の処理装置(60)の取得部(61)が、前記鞍乗型車両(100)の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得ステップ(S101、S103)と、
前記処理装置(60)の実行部(62)が、前記鞍乗型車両(100)にライダー支援動作を実行させる制御モードを、前記取得ステップ(S101、S103)で取得される前記トリガ情報に応じて開始する実行ステップ(S102、S104~S106)と、
を含んでおり、
前記取得ステップ(S101、S103)では、前記取得部(61)が、更に、前記鞍乗型車両(100)のハンドルグリップ(2a)へのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報を取得し、
前記実行ステップ(S102、S104~S106)では、前記実行部(62)が、前記取得ステップ(S101、S103)で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させ、
前記実行ステップ(S102、S104~S106)では、前記実行部(62)が、前記制御モードにおいて、前記ハンドルグリップ(2a)に前記ライダーの一方の手のみが載置されていない場合と、前記ハンドルグリップ(2a)に前記ライダーの両手が載置されていない場合と、で、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させる、
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲環境情報を用いて、ライダーの運転を支援するためのライダー支援動作を実行するライダー支援システムのための処理装置及び処理方法と、その処理装置を備えているライダー支援システムと、そのライダー支援システムを備えている鞍乗型車両と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍乗型車両に関する技術として、ライダーの運転を支援するためのものがある。例えば、特許文献1では、走行方向又は実質的に走行方向にある障害物を検出する周囲環境検出装置を用いて、不適切に障害物に接近していることを鞍乗型車両のライダーへ警告するライダー支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両では、ライダーが、車体に跨って着座して運転しており、不意に実行されるライダー支援動作によっては、転倒等が生じかねない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーの安全性を向上することが可能な処理装置及び処理方法を得るものである。また、その処理装置を備えているライダー支援システムを得るものである。また、そのライダー支援システムを備えている鞍乗型車両を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る処理装置は、鞍乗型車両のライダー支援システムのための処理装置であって、前記鞍乗型車両の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部と、前記鞍乗型車両にライダー支援動作を実行させる制御モードを、前記取得部で取得される前記トリガ情報に応じて開始する実行部と、を備えており、前記取得部は、更に、前記鞍乗型車両のハンドルグリップへのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報を取得し、前記実行部は、前記取得部で取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させる。
【0007】
本発明に係るライダー支援システムは、上述の処理装置を備えている。
【0008】
本発明に係る鞍乗型車両は、上述のライダー支援システムを備えている。
【0009】
本発明に係る処理方法は、鞍乗型車両のライダー支援システムのための処理方法であって、前記ライダー支援システムの処理装置の取得部が、前記鞍乗型車両の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得ステップと、前記処理装置の実行部が、前記鞍乗型車両にライダー支援動作を実行させる制御モードを、前記取得ステップで取得される前記トリガ情報に応じて開始する実行ステップと、を含んでおり、前記取得ステップでは、前記取得部が、更に、前記鞍乗型車両のハンドルグリップへのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報を取得し、前記実行ステップでは、前記実行部が、前記取得ステップで取得される前記ライダー姿勢情報に応じて、前記鞍乗型車両(100)に実行させる前記ライダー支援動作を変化させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る処理装置、ライダー支援システム、鞍乗型車両、及び、処理方法では、ライダー支援動作を実行させる制御モードが、鞍乗型車両の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報に応じて開始される。また、鞍乗型車両のハンドルグリップへのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報に応じて、そのライダー支援動作が変化させられる。そのため、ライダーのライダー支援動作に対する耐性の不足を加味した上で、ライダー支援動作を実行することが可能となって、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、システム構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る処理装置、ライダー支援システム、鞍乗型車両、及び、処理方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る処理装置、ライダー支援システム、鞍乗型車両、及び、処理方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0014】
例えば、以下では、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車に用いられる場合を説明しているが、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に用いられてもよい。鞍乗型車両は、ライダーが跨って乗車する乗物全般を意味する。鞍乗型車両には、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、バギー、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車、モータを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車等が含まれ、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係るライダー支援システムについて説明する。
【0017】
<ライダー支援システムの構成>
実施の形態に係るライダー支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、システム構成を示す図である。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、ライダー支援システム10は、鞍乗型車両100に搭載される。鞍乗型車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を備える。
【0019】
ライダー支援システム10は、例えば、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14と、を備える。
【0020】
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
【0021】
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27と、を備える。
【0022】
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34と、が設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所と、の間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側と、の間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
【0023】
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0024】
込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36等の部材と、それらの部材が設けられ、主流路25、副流路26及び供給流路27を構成するための流路が内部に形成されている基体51と、処理装置(ECU)60と、によって、液圧制御ユニット50が構成される。液圧制御ユニット50は、ライダー支援システム10において、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧、つまり、前輪制動機構12によって前輪3に付与されるブレーキ力及び後輪制動機構14によって後輪4に付与されるブレーキ力を制御する機能を担うユニットである。
【0025】
各部材が、1つの基体51に纏めて設けられていてもよく、また、複数の基体51に分かれて設けられていてもよい。また、処理装置60は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、処理装置60は、基体51に取り付けられていてもよく、また、基体51以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、処理装置60の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0026】
通常状態、つまり、ライダー支援動作としての後述される自動減速動作が実行されない状態では、処理装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3にブレーキ力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4にブレーキ力が付与される。
【0027】
図1及び
図3に示されるように、ライダー支援システム10は、周囲環境検出装置41及びライダー姿勢検出装置42を含む各種検出装置と、入力装置46と、警告装置47と、を備える。各種検出装置、入力装置46、及び、警告装置47は、処理装置60と通信可能になっている。
【0028】
周囲環境検出装置41は、鞍乗型車両100の周囲環境情報を検出する。例えば、周囲環境検出装置41は、周囲環境情報として、鞍乗型車両100から前方の障害物(例えば、構造物、横断者、横断車等)までの距離及び方向を検出する。周囲環境検出装置41が、前方の障害物までの距離及び方向に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。周囲環境検出装置41として、具体的には、カメラ、測距センサ等が用いられる。周囲環境検出装置41が、鞍乗型車両100の側方、後方等の周囲環境情報を検出するものであってもよい。
【0029】
また、周囲環境検出装置41は、後述される制御モードの開始の判定に利用されるトリガ情報を周囲環境情報に応じて生成し、トリガ情報を出力する。さらに、周囲環境検出装置41は、トリガ情報の生成に伴い、制御モードにおいて実行される自動減速動作によって鞍乗型車両100の車輪に付与されるブレーキ力の目標値である目標ブレーキ力を算出し、算出結果を出力する。なお、自動減速動作には、障害物への衝突を自動で回避するための緊急ブレーキ動作、オートクルーズ走行モードにおいて自動で実行される減速動作等が含まれる。
【0030】
ライダー姿勢検出装置42は、鞍乗型車両100のライダーの搭乗姿勢の状態を検出し、検出結果を出力する。ライダー姿勢検出装置42は、例えば、鞍乗型車両100のハンドルグリップ2aへのライダーの手の載置状態を検出する第1センサ42aと、鞍乗型車両100のライダーの膝を受ける箇所に作用する外力の有無、大きさ、作用位置等を検出する第2センサ42bと、鞍乗型車両100のシート1aに作用する外力の有無、大きさ、作用位置等を検出する第3センサ42cと、を含む。
【0031】
第1センサ42aは、例えば、鞍乗型車両100の一対のハンドルグリップ2aの内部又は外面に取り付けられている歪ゲージである。第1センサ42aは、ハンドルグリップ2aへのライダーの手の載置の有無を、接触を検知することで検出するもの(例えばタッチセンサ等)であってもよく、また、ハンドルグリップ2aとライダーの手の距離を検知することで検出するものであってもよく、また、接触式に検出するものであってもよく、また、非接触式に検出するもの(例えば、カメラ、レーダー等)であってもよい。
【0032】
第2センサ42bは、例えば、鞍乗型車両100の胴体1の両側部のライダーの膝を受ける箇所(例えば、燃料タンクの側部等)の内部又は外面に取り付けられている歪ゲージである。第2センサ42bは、鞍乗型車両100のライダーの膝を受ける箇所に作用する外力の有無、大きさ、又は作用位置を検出するものであれば、接触式のセンサであってもよく、また、非接触式のセンサであってもよい。なお、第2センサ42bが設けられていなくてもよい。
【0033】
第3センサ42cは、例えば、鞍乗型車両100のシート1aのライダーが着座する領域の内部又は外面に取り付けられている歪ゲージである。第3センサ42cは、鞍乗型車両100のシート1aに作用する外力の有無、大きさ、又は作用位置を検出するものであれば、接触式のセンサであってもよく、また、非接触式のセンサであってもよい。なお、第3センサ42cが設けられていなくてもよい。
【0034】
入力装置46は、ライダーによる走行モードの選択操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を出力する。入力装置46は、走行モードとして、例えば、オートクルーズ走行モードを選択する選択操作を受け付ける。オートクルーズ走行モードは、鞍乗型車両100をその挙動が少なくとも部分的に自動制御された状態で持続的に走行させる走行モードである。オートクルーズ走行モードでは、鞍乗型車両100から先行車までの距離が距離基準値に近づくように制御される。また、ライダーによって上限速度が入力されている場合には、鞍乗型車両100に生じる速度がその上限速度を超えないように制御される。入力装置46として、例えば、レバー、ボタン又はタッチパネルが用いられ得る。入力装置46は、例えば、ハンドル2に設けられている。
【0035】
警告装置47は、音によってライダーに警告するものであってもよく、また、表示によってライダーに警告するものであってもよく、また、振動によってライダーに警告するものであってもよく、また、それらの組み合わせによって警告するものであってもよい。具体的には、警告装置47は、スピーカー、ディスプレイ、ランプ、バイブレーター等であり、鞍乗型車両100に設けられていてもよく、また、ヘルメット等の鞍乗型車両100に付随する装備に設けられていてもよい。
【0036】
処理装置60は、鞍乗型車両100のライダー支援システム10の動作を制御する。処理装置60は、例えば、取得部61と、実行部62と、を備える。取得部61は、各種検出装置及び入力装置46から出力される情報を取得し、実行部62へ出力する。実行部62は、例えば、トリガ判定部62aと、ライダー姿勢判定部62bと、制御指令設定部62cと、制御部62dと、を備える。
【0037】
実行部62は、トリガ判定部62aによる判定結果に応じて、鞍乗型車両100に自動減速動作を実行させる制御モードを開始する。また、実行部62は、ライダー姿勢判定部62bにおいて、ライダー姿勢検出装置42の検出結果に応じて生成されるライダー姿勢情報が、自動減速動作に不向きな姿勢で取得される情報であると判定されると、制御指令設定部62cに、制御モードで出力されることになる制御指令を変更させる。制御指令設定部62cでは、例えば、自動減速動作において鞍乗型車両100に生じさせる速度、減速度、自動減速動作の開始タイミング、ライダーに発せられる警告の有無、強度、種別等が設定される。制御部62dは、その設定に応じて、込め弁31、弛め弁32、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36等の動作を司る制御指令を出力することにより、鞍乗型車両100の車輪にブレーキ力を生じさせて、自動減速動作を実行する。また、制御部62dは、その設定に応じて、警告装置47の警告動作を司る制御指令を出力することにより、ライダーに自動減速動作が実行されることを報知する。
【0038】
自動減速動作が実行される状態では、処理装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が閉鎖され、第2弁36が開放される。その状態で、ポンプ34が駆動されると、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加して、車輪(前輪3、後輪4)にブレーキ力が付与される。
【0039】
<ライダー支援システムの動作>
実施の形態に係るライダー支援システムの動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、動作フローを示す図である。
【0040】
処理装置60は、鞍乗型車両100の走行中において、
図4に示される動作フローを実行する。
【0041】
(取得ステップ)
ステップS101において、取得部61は、周囲環境検出装置41の検出結果に応じて生成されるトリガ情報を取得する。
【0042】
(実行ステップ)
ステップS102において、実行部62のトリガ判定部62aは、ステップS101で取得されたトリガ情報に基づいて、鞍乗型車両100に自動減速動作を実行させるための制御モードを開始するか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS103に進み、Noである場合には、ステップS101に戻る。
【0043】
(取得ステップ)
ステップS103において、取得部61は、ライダー姿勢検出装置42の検出結果に応じたライダー姿勢情報を取得する。
【0044】
(実行ステップ)
ステップS104において、実行部62のライダー姿勢判定部62bは、ステップS103で取得されたライダー姿勢情報が、自動減速動作に耐性のある姿勢で取得される情報であるか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS105に進み、Noである場合には、ステップS106に進む。
【0045】
(実行ステップ)
ステップS105において、実行部62の制御指令設定部62cは、自動減速動作において鞍乗型車両100に生じさせる速度及び減速度を、通常の目標値に設定する。また、実行部62の制御指令設定部62cは、自動減速動作の開始タイミングを、通常のタイミングに設定する。また、実行部62の制御指令設定部62cは、制御モードにおいて生じさせる警告(つまり、ライダーに自動減速動作が実行されることを報知する警告)を、無しに設定する。なお、実行部62の制御指令設定部62cが、警告(知覚性の低い警告)を有りに設定してもよい。実行部62の制御部62dは、その設定に応じた制御指令を出力して、液圧制御ユニット50及び警告装置47を動作させる。
【0046】
(実行ステップ)
ステップS106において、実行部62の制御指令設定部62cは、自動減速動作及び警告動作を実行しないことを設定する。実行部62の制御指令設定部62cが、ステップS105における自動減速動作よりも、速度が高い自動減速動作、減速度が小さい自動減速動作、開始タイミングが遅い自動減速動作等が実行される制御指令を設定してもよい。また、その際、実行部62の制御指令設定部62cが、警告を有りに設定してもよい。実行部62の制御部62dは、その設定に応じた制御指令を出力して、液圧制御ユニット50及び警告装置47を動作させる。
【0047】
なお、以上では、ステップS103で取得されるライダー姿勢情報に応じて、鞍乗型車両100に生じさせる速度又は減速度、自動減速動作の開始タイミング等が2段階に切り替えられる場合を説明しているが、3段階以上に切り替えられてもよい。
【0048】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、通常の速度が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、通常の速度よりも高い速度が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、自動減速動作が実行されない。ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合に、ステップS106において、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定される場合よりも高い速度が設定されて、自動減速動作が実行されてもよい。
【0049】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、通常の減速度が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、通常の減速度よりも小さい減速度が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、自動減速動作が実行されない。ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合に、ステップS106において、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定される場合よりも小さい減速度が設定されて、自動減速動作が実行されてもよい。
【0050】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、自動減速動作の通常の開始タイミングが設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、通常の開始タイミングよりも遅い開始タイミングが設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、自動減速動作が実行されない。ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合に、ステップS106において、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定される場合よりも遅い開始タイミングが設定されて、自動減速動作が実行されてもよい。
【0051】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、エンジンブレーキと、液圧制御ユニット50による前輪3の制動と、液圧制御ユニット50による後輪4の制動と、の共用による自動減速動作が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、エンジンブレーキと、液圧制御ユニット50による後輪4の制動と、の共用による自動減速動作が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、自動減速動作が実行されない。ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合に、ステップS106において、エンジンブレーキのみによる自動減速動作が実行されてもよい。
【0052】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、エンジンブレーキと、液圧制御ユニット50による前輪3の制動と、液圧制御ユニット50による後輪4の制動と、の共用による自動減速動作が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、エンジンブレーキのみによる自動減速動作が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、自動減速動作が実行されない。
【0053】
例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、警告が無しに設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定された場合には、ステップS106において、警告が有りに設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aにどちらの手も載置していないことが判定された場合には、ステップS106において、ライダーがハンドルグリップ2aに片手のみを載置していると判定される場合よりも知覚性の高い警告が設定されてもよい。ライダーの知覚性の高い警告は、強度の強い警告であってもよく、また、周期の短い警告であってもよく、また、開始タイミングの早い警告であってもよく、また、知覚性が優れている種別(音、表示、振動)の警告であってもよい。
【0054】
なお、以上では、ステップS104における判定が、ステップS105及びステップS106が実施される前段階においてのみ実施される場合を説明しているが、ステップS104における判定が、ステップS105及びステップS106において鞍乗型車両100にブレーキ力を生じさせている間においても実施されてよい。例えば、ステップS105の実行中にステップS104が実施され、その時点で取得されるライダー姿勢情報が、自動減速動作に不向きな姿勢で取得される情報であると判定された場合に、ステップS106が実行されてもよい。また、例えば、ステップS106の実行中にステップS104が実施されて、その時点で取得されるライダー姿勢情報が、自動減速動作に耐性のある姿勢で取得される情報であると判定された場合に、ステップS105が実行されてもよい。
【0055】
また、以上では、ライダー支援システム10によって実行されるライダー支援動作が、鞍乗型車両100に自動で減速を生じさせる自動減速動作である場合を説明しているが、ライダー支援システム10によって実行されるライダー支援動作が、鞍乗型車両100に自動で加速を生じさせる自動加速動作であってもよい。自動加速動作には、後方からの衝突を自動で回避するための加速動作、オートクルーズ走行モードにおいて自動で実行される加速動作等が含まれる。そのような場合には、ステップS106において、実行部62の制御指令設定部62cは、自動加速動作及び警告動作を実行しないことを設定する。実行部62の制御指令設定部62cが、ステップS105における自動加速動作よりも、速度が低い自動加速動作、加速度が小さい自動加速動作、開始タイミングが遅い自動加速動作等が実行される制御指令を設定してもよい。また、その際、実行部62の制御指令設定部62cが、警告を有りに設定してもよい。実行部62の制御部62dは、その設定に応じた制御指令を出力して、エンジン制御ユニット(図示省略)及び警告装置47を動作させる。
【0056】
また、以上では、ライダー支援システム10によって、自動減速動作に加えて警告動作が実行される場合を説明しているが、ライダー支援システム10によって、警告動作のみが実行されてもよい。つまり、警告装置47から出力される警告は、ライダーに自動減速動作が実行されることを報知する警告であってもよく、また、ライダーに危険な周囲環境下にいることを報知する警告であってもよい。そのような場合には、例えば、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに両手を載置していると判定された場合には、ステップS105において、通常の警告が設定され、ステップS104で、ライダーがハンドルグリップ2aに少なくとも一方の手を載置していないと判定された場合には、ステップS106において、通常の警告よりも知覚性の低い警告が設定されるとよい。このように構成されることで、ライダーが警告に驚いて運転が不安定になることが抑制される。
【0057】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態に係るライダー支援システムの効果について説明する。
ライダー支援システム10では、鞍乗型車両100の周囲環境情報に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部61と、鞍乗型車両100にライダー支援動作を実行させる制御モードを、取得部61で取得されるトリガ情報に応じて開始する実行部62と、を備えており、取得部61は、更に、鞍乗型車両100のハンドルグリップ2aへのライダーの手の載置状態の情報であるライダー姿勢情報を取得し、実行部62は、取得部61で取得されるライダー姿勢情報に応じて、鞍乗型車両100に実行させるライダー支援動作を変化させる。そのため、ライダーのライダー支援動作に対する耐性の不足を加味した上で、ライダー支援動作を実行することが可能となって、安全性が向上する。
【0058】
好ましくは、実行部62は、制御モードにおいて、ライダー支援動作として実行される自動減速動作を、取得部61で取得されるライダー姿勢情報に応じて変化させる。そのように構成されることで、自動減速動作に対するライダーの耐性が不足していることを加味した上で、自動減速動作を実行することが可能となって、安全性が向上する。
【0059】
好ましくは、実行部62は、制御モードにおいて、ライダー支援動作として実行される自動加速動作を、取得部61で取得されるライダー姿勢情報に応じて変化させる。そのように構成されることで、自動加速動作に対するライダーの耐性が不足していることを加味した上で、自動加速動作を実行することが可能となって、安全性が向上する。
【0060】
好ましくは、実行部62は、制御モードにおいて、ライダー支援動作として実行されるライダーへの警告動作を、取得部61で取得されるライダー姿勢情報に応じて変化させる。そのように構成されることで、警告動作に対するライダーの耐性が不足していることを加味した上で、警告動作を実行することが可能となって、安全性が向上する。その警告動作が、ライダーに外力(例えば振動)を与える警告動作である場合には、ライダーが警告に驚いて運転が不安定になる可能性が高い。そのため、そのように構成することは、特に、ライダーに外力(例えば振動)を与える警告動作が実行される場合に有用である。
【0061】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の一部のみが実施されてもよく、また、実施の形態の一部同士が組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 胴体、1a シート、2 ハンドル、2a ハンドルグリップ、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ライダー支援システム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、27 供給流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 第1弁、36 第2弁、41 周囲環境検出装置、42 ライダー姿勢検出装置、42a 第1センサ、42b 第2センサ、42c 第3センサ、46 入力装置、47 警告装置、50 液圧制御ユニット、51 基体、60 処理装置、61 取得部、62 実行部、100 鞍乗型車両。