(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】計数機構
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018566284
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(86)【国際出願番号】 GB2017051724
(87)【国際公開番号】W WO2017216549
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-10
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518096537
【氏名又は名称】ティーティーピー パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストレンジ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー,ローレンス
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/045904(WO,A1)
【文献】特公昭45-041171(JP,B1)
【文献】実公昭51-015482(JP,Y2)
【文献】特開昭60-040845(JP,A)
【文献】特表2007-537800(JP,A)
【文献】特表2006-500094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/00
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量分配器または試料採取器のための計数機構であって、
互いに対して回転可能な第1のハウジング部品および湾曲した断面形状を有する第2のハウジング部品を含むハウジング部品と、
前記第1のハウジング部品と前記第2のハウジング部品との間に配置された計数リングと、を備え、
前記第1のハウジング部品は、
前記第1のハウジング部品から半径方向に延在し前記計数リングに当接する突起を有し、前記計数リングの一部分を前記第2のハウジング部品と接触した状態に保持し
、
前記ハウジング部品の相対的回転によっ
て、前記計数リングの表面に対して前記突起を摺動させて、前記第2のハウジング部品の円周での前記計数リングの回転運動を駆動することで、
前記計量分配器による1回の計量分配または前記試料採取器による1回の試料採取に対応する前記ハウジング部品の予め規定された回転によって、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との間の増分的な回転変位を生じさせて、
前記計量分配のカウント数または
前記試料採取のカウント数の記録を提供できるようにする、
計数機構。
【請求項2】
前記計数リングおよび前記第2のハウジング部品の対向する面の円周に設けられたギヤの歯のアレイであって、前記計数リング上の歯の数は前記第2のハウジング部品上の歯の数とは異なる、ギヤの歯のアレイをさらに備え、
前記突起によって、接触した部分において、前記計数リングおよび前記第2のハウジング部品の対向する歯を噛み合わせ、
前記第2のハウジング部品に対する前記計数リングの前記回転運動は、前記第2のハウジング部品の歯と前記計数リングの歯との順次の噛み合わせを含むことで、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との間の前記増分的な回転変位が歯の数の差によってもたらされる、
請求項1に記載の計数機構。
【請求項3】
前記第1のハウジング部品は、少なくとも一部が前記第2のハウジング部品内に位置決めされ、前記計数リングは前記第1のハウジング部品の周りに配置され、
第1の歯のアレイは、前記第2のハウジング部品の内面に設けられ、
対向する歯のアレイは、前記計数リングの外面に設けられ、前記計数リングは、前記第2のハウジング部品よりも少ない数の歯を有し、
前記突起は、前記第1のハウジング部品の外面から半径方向に延在して、前記計数リングの内面に当接し、前記計数リングを軸がずれるように移動させて前記第2のハウジング部品に接触させることで、
前記ハウジング部品の相対的回転によって、前記突起が、前記第2のハウジング部品の軸の周りでの前記計数リングの偏心回転を駆動するようにする、
請求項2に記載の計数機構。
【請求項4】
前記第2のハウジング部品は、少なくとも一部が前記第1のハウジング部品内に位置決めされ、前記計数リングは前記第2のハウジング部品の周りに配置され、
第1の歯のアレイは前記第2のハウジング部品の外面に設けられ、
前記対向する歯のアレイは、前記計数リングの内面に設けられ、前記計数リングは、前記第2のハウジング部品よりも多い数の歯を有し、
前記突起は、前記第1のハウジング部品の内面から半径方向に延在し、前記突起は前記計数リングの外面に当接し、前記計数リングを軸がずれるように移動させて前記第2のハウジング部品に接触させることで、
前記ハウジング部品の相対的回転によって、前記突起が、前記第2のハウジング部品の前記軸の周りでの前記計数リングの偏心回転を駆動するようにする、
請求項2に記載の計数機構。
【請求項5】
前記第2のハウジング部品と計数リングとの歯の数の差は1である、
請求項2~4のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項6】
前記計数リングは、硬質の円形部品または可撓性ベルトである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項7】
前記突起は、
楔、
洋梨型のカム、
偏心形状を有する対応するハウジング部品の一部分、
成形されたバネ部品、または
バネ
のうちの1つを備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項8】
前記第1のハウジング部品が複数の突起を有し、
前記計数リングは可撓性であって、前記突起が前記計数リングに当接して前記計数リングを変形させ、前記突起に対応する位置において前記第2のハウジング部品に接触させ、
前記ハウジング部品の相対的回転によって、前記計数リングの前記変形は、前記計数リングの円周上を伝搬し、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との接触部分における歯の順次の噛み合わせを駆動し、
前記計数リングと前記第2のハウジング部品との間の前記増分的な回転変位が、歯の数の差によってもたらされる、
請求項2に記載の計数機構。
【請求項9】
前記第1のハウジング部品は、少なくとも一部が前記第2のハウジング部品内に位置決めされ、
第1の歯のアレイは、前記第2のハウジング部品の内面に設けられ、
前記対向する歯のアレイは、前記計数リングの外面に設けられ、前記計数リングは、前
記第2のハウジング部品よりも少ない数の歯を有し、
前記突起は、前記第1のハウジング部品の外面から半径方向に延在し、前記突起は前記計数リングの内面に当接して、それを半径方向に変形させ、前記第2のハウジング部品の内面に接触させる、
請求項8に記載の計数機構。
【請求項10】
前記計数リングの外面に設けられた目盛と、
前記目盛の一部分が露出されるように前記計数リングと位置合わせされた、前記第2のハウジング部品にある窓であって、前記目盛の露出したグラデーションが、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との前記回転変位の記録を提供する窓と、をさらに備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項11】
前記第2のハウジング部品はシリンダー状の形状を有し、第1の歯のアレイは、回転軸に垂直である軸方向端面の円周に設けられており、
前記対向する歯のアレイは、前記計数リングの軸方向端面に設けられており、
前記突起は、前記歯の端面に対向する前記計数リングの前記端面に当接して、前記計数リングを回転平面から変形させ、前記突起に対応する位置において前記第2のハウジング部品の前記歯と噛み合わせることで、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との接触平面は、前記回転平面に平行である、
請求項8に記載の計数機構。
【請求項12】
前記計数リングと前記第2のハウジング部品との歯の数の差は、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との接触部分の数の倍数である、
請求項9~11のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項13】
前記ギヤの歯の形状は、
サイクロイド、インボリュート、または鋸歯のうちの1つである、
請求項2~12のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項14】
前記計数リングおよび前記第2のハウジング部品のそれぞれに対向する面は、互いに対して滑らないように接触する摩擦面であり、
前記ハウジング部品の相対的回転によって、前記突起が、前記第2のハウジング部品に対する前記計数リングの、滑らない回転運動を駆動し、
前記計数リングと前記第2のハウジング部品の接触面との前記円周の差が、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との間の前記増分的な回転変位を生じる、
請求項1に記載の計数機構。
【請求項15】
前記摩擦面は、
互いに対する滑りをなくすための表面処理または前記表面のテクスチャー加工、
高摩擦材
のうちの1つによって提供される、
請求項14に記載の計数機構。
【請求項16】
半径方向突起は、前記計数リングに対して半径方向に力をもたらすように構成されたバネ付き部品を備える、
請求項14または15に記載の計数機構。
【請求項17】
前記第1のハウジング部品及び前記第2のハウジング部品は同軸である、
請求項1~16のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項18】
前記第2のハウジング部品はシリンダー状である、
請求項1~17のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項19】
前記ハウジング部品の予め規定された回転と、前記計数リングと前記第2のハウジング部品との増分的な回転変位との間の比を提供するギヤレシオが、35:1~2002:1である、
請求項1~18のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項20】
第2の計数リングであって、前記ハウジング部品の予め規定された回転によって、前記計数リングと前記第2の計数リングの間に増分的な回転変位を生じるように構成され、前記第2のハウジング部品に対する前記計数リングの完全な回転毎に、前記第2の計数リングと前記第2のハウジング部品との間に増分的な回転変位を生じるように構成された、第2の計数リングをさらに備える、
請求項1~19のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項21】
前記ハウジング部品の一方に設けられた爪車と、
前記ハウジング部品の他方に設けられた爪であって、一方向のみの相対的回転が前記ハウジング部品によって可能となる爪と、をさらに含む、
請求項1~20のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項22】
複数の部品の1つ以上が、鋳造プロセスによって形成される、
請求項1~21のいずれか1項に記載の計数機構。
【請求項23】
複数の部品の1つ以上がプラスチック製である、
請求項1~22のいずれか1項に記載の計数機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計数機構に関し、特に、計量分配器(ディスペンサー)または試料採取器(サンプラー)のための計数機構に関し、ここで、この機構は、計量分配のカウント数または試料採取のカウント数を記録し得る。
【背景技術】
【0002】
計数機構および計数機器は当業界でよく知られており、およびいくつもの事象を増分的に計数するための手段を提供するという共通の目標を持って、多くの異なる形態を取る。そのような機構は、試料採取事象のカウントを記録するために試料採取器に、および計量分配事象のカウントを記録するために計量分配器に、組み込まれることが多い。計量分配器内の計数機構の特定の重要な適用例は、計量分配された投与回数、および残りの投与回数の記録を提供できる医療機器内にあることである。
【0003】
吸入器、鼻腔用スプレーおよびペン型注入器(injection pens)などの医療機器は、いずれも、患者に薬剤を投与するために使用される。これらの機器は複数回分の投与量を含むことが多く、および患者は数日または数週間にわたって使用できる。機器がほぼ空の状態になると、機器は、ラベルで主張されているものよりも少ない投与量を放出し得る。この投与量の不足は使用者には見えないことが多く、それゆえ、関連する状態の効果的な治療に対して意味合いを持つ可能性のある、不十分な投与量が投与されることとなり得る。
【0004】
それゆえ、使用者が、投薬した投与回数を把握して、過少量投与(有効性の欠如を生じる)でも過量投与(副作用および合併症の可能性がある)でもないことを保証することが望ましい。これらの理由で、機器内に残っている投与回数を示しかつひとたび一定回数の投与が使用されたら機器が使用されるのを防止するためにロックアウトする(locks
out)計数機構を、機器内に含むことが望ましい。
【0005】
理想的なカウンターすなわち計数器には、いくつもの要件がある。頑強で信頼性が高い必要があり、かつ使用者がどのように機器を使用するかに関わらず、投与を正確に計数する必要がある。1回分の投与量が実際に投与されたときにのみ計数する必要があり、かつカウンターを後戻りさせたりまたは巻き戻したりすることは不可能である必要があり、および落とされたときに、カウントを失ったり、または獲得したりするべきではない。カウンターはまた、好ましくは彩色によって、簡単に読み取ることができる必要があり、使用者が、残りの投与回数を一見しただけで明確に捉えることができるようにする。最後に、低コストでかつ簡単に製造できる必要がある。pMDI(加圧式定量噴霧式吸入器(pressurised metered dose inhaler))などの機器内の多くのカウンターは、前述の機能を達成するために、多数の部品を含む。これによりコストを増大させ、およびそのような機器は、多くの構成要素のうちの1つの故障によって、誤動作しやすいことを意味する。
【0006】
多数のカウンターが従来技術において開示されており、例えば米国特許第6651844号明細書には、鼻腔用スプレー用のカウンターが開示されており、および米国特許第9022039号明細書には、模擬シガレット(simulated cigarette)用のカウンターが開示されている。しかしながら、主に、カウンターは吸入器に関して開示されており、これは、いくつかの規制当局がそのような機器に関する必須条件を有しているためである。
【0007】
特に、広範囲の計数機構が、爪車および爪機構(米国特許出願公開第2002139812号明細書)、フェースギヤ(米国特許第8740014号明細書)、足踏みろくろ(米国特許第8820318号明細書)、脱進機構(米国特許出願公開第2002195102号明細書)およびらせんトラックの歯(米国特許出願公開第20060231093号明細書)を備える機構を含むpMDIと一緒に使用されるように提案されている。pMDIカウンターは、作動棒の非常に小さい往復運動を正確に把握して、この運動を小さなカウントに変える必要があるという、困難な要件を有する。その結果、これらのカウンターは、複数の部品および機構からなって非常に複雑であることが多いため、製造公差に無関心である。
【0008】
しかしながら、従来技術では、大きな回転運動を使用して作動される機器のための少数のカウンターが開示されており、それによって、大きな回転運動は、カウンターの車(wheel)の遥かに小さい運動へとギヤを落とされる必要がある。米国特許第6769601号明細書には、大きな歯車および爪車を使用して計量ドラムの回転運動を小さなカウントへ変換する、DPI(ドライパウダー吸入器)用のカウンターが開示されている。車および爪車によって大きなギヤ減速が達成され得るが、カウンターの車は、正しい解決法を達成するために実質的に計量ドラムよりも大きい必要があり、これは、そのような機構が、コンパクトで使いやすい機器に設けられることを阻止する。
【0009】
米国特許第6149054号明細書に開示されているカウンターは、スピンドルおよび歯機構を含む。スピンドルに刻まれたインジケータフラグが、スピンドルが回ると上方へ動き、カウントを示す。カウンターは、大きなギヤ減速(60:1)を達成でき、かつ低コストであるが、カウンターの分解能(resolution)はスピンドルの長さによって制限され、これは、個々のカウントを特定することが困難であることを意味する。さらに、スピンドルは、長い細目ネジを必要とし、これは、機器を製造するコストの問題で、正確に成形することが困難である。
【0010】
国際公開第2006062448号パンフレットには、回転可能な送り車の周りに配置された、好ましくは金属のインジケーターストリップを含む計数機構が開示されている。送り車上の数字の間隔を制御して、1回の回転当たりの投与回数を大きく変位させるようにし得る。しかしながら、これは、ギヤ減速がないために、かなりの量のテープを必要とするため、製造の簡単さ、および機構がコンパクトで使いやすい機器に組み込まれ得る程度に、影響を有する。
【0011】
米国特許第8181645号明細書には、2つのカウンターリングを含む、DPI用のカウンターが開示されており、ここで、第1のカウンターリング(1の位のカウンターリング)は、大きなゼネバ車を使用して機器を割送る(indexing)ことによって駆動され、および第2のカウンターリング(10の位)は、ゼネバ機構を介して第1のカウンターリングによって駆動される。ゼネバ機構は、カウンターリングの大きな連続的な回転を、10の位カウンターリングの間欠的な回転へ変換するために使用される。投与の全てを表示するのに必要な大きな(~120:1)ギヤ減速を達成するために、説明の特許は、複数のギヤ減速段を有する必要があり、その結果、追加的な部品、追加的ながたつき、および追加的な公差感度を生じる。
【0012】
従って、大きなギヤ減速ができる一方で、コンパクトであり、使いやすい機器内で小さな形状因子と組み合わせられ得るカウンターに対するニーズが存在する。製造および組み立てをより簡単にする一方で、関連コストを低く保つために、最低限の構成部品から形成される計数機構に対するさらなるニーズがある。カウンターは、カウントを正確にかつ信頼性高く記録する一方で、摩耗に対して頑強である必要があり、カウンターが、それが用いられる機器の耐用期間にわたって使用され得るようにする。最後に、機器が、一定数の
カウント後に自動的にロックする手段を提供して、例えば計量分配器内で用いられるときに、計量分配される投与回数が制限されるようにすることに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術の機器の上述の問題を解決する、計量分配器または試料採取器において用いられ得る計数機構を提供しようとする。本発明は、大きなギヤ減速を達成でき、機器の大きな回転運動-例えば試料採取または計量分配機能を提供するための-が、ギヤを落とされて、カウントを記録する小さな増分的な運動を提供するようにするカウンターを提供しようとすることが重要である。本発明のさらなる目的は、頑強であり、低コストで、組み立てが簡単であり、正確にカウントを記録し、および小さな形状因子を有する機構において、複雑な部品を最低限にして、大きなギヤ減速を提供することである。本発明は、さらに、一定数のカウント後にカウント機構をロックできる、計数機構用のロックアウト機構を提供しようとする。ロックアウト機構は、信頼性は高いが、製造コストおよび組み立てコストを削減するために、最低限の部品で形成される必要があることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、第1のハウジング部品および第2のハウジング部品であって、ハウジング部品は互いに対して回転可能であり、および第2のハウジング部品は、湾曲した断面形状を有する、第1のハウジング部品および第2のハウジング部品、第1のハウジング部品と第2のハウジング部品との間に配置された計数リングを含む、計量分配器または試料採取器用の計数機構であって、第1のハウジング部品は、計数リングに当接する突起を有し、計数リングの一部分を第2のハウジング部品と接触した状態に保持し、これらハウジング部品の相対的回転によって、突起を計数リングの表面に対して摺動させて、第2のハウジング部品の円周での計数リングの回転運動を駆動し、ハウジング部品の予め規定された回転によって、計数リングと第2のハウジング部品との間に増分的な回転変位を生じさせて、カウントを記録するようにする、計数機構が提供される。
【0015】
本発明による計数機構では、ハウジング部品の回転は、ギヤが落とされて、計数リングとハウジング部品の一方との間に小さな増分的な回転を提供する。このようにして、例えば計量分配または試料採取機能をもたらすためのハウジング部品の大きな回転は、計数リングと第2のハウジング部品との間の遥かに小さい増分的な回転変位によって記録されるため、コンパクトな形態において、求められる大きなギヤ減速を提供する。
【0016】
本発明による計数機構は、3つの部品しか必要としないため、低コストであり、および製造および組み立てが簡単である。この機構によって、ハウジング部品の多数回の回転を記録できるようにする一方で、使いやすい機器のための小さな形状因子を維持する。本発明による機構は、さらに、高度に正確であり、およびほとんどがたつきがない。
【0017】
計数リングの増分的な運動は、回転運動によるものであるため、ほとんど摩耗がなく、機器を、これらの構成要素の故障に対してより頑強にし、機器の耐用期間を長くする。回転運動はまた、静かな動作をもたらし、機器の使いやすさを高める。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、計数機器用のロックアウト機構が提供され、計数機器は、第1のハウジング部品、第1のハウジング部品に対して回転可能である第2のハウジング部品、および回転可能な計数部品を含み、計数部品の回転は第2のハウジング部品の回転によって駆動されて、第2のハウジング部品のフル回転によって第1のハウジング部品に対する計数部品の増分的な回転を生じ、ロックアウト機構は、計数部品、第1のハウジング部品および第2のハウジング部品のそれぞれに設けられたロッキング機構を含み、当
該機構は、全てが同時に整列されるとロックされるように構成され、第2のハウジング部品のロッキング機構および計数部品のロッキング機構は、それぞれ、対応する部品がフル回転する度に一度、第1のハウジング部品のロッキング機構と整列するように配置され、第2のハウジング部品の十分な回転数後に、3つ全てのロッキング機構が整列するように駆動されて、ロックアウトをトリガ(作動)する。
【0019】
本発明によるロックアウト機構では、回転可能な3部品の計数機構(部品のうちの1つは他のものの回転によって駆動される)は、ひとたび予め規定したカウント数が記録されたら、さらなる回転が防止され得る。ロックアウト機構は、機器の耐用期間の間、3つの部品が一度しか整列しないため、同時整列を使用してロックアウトを初期化するということを利用する。機構が単純であることは、製造しやすくかつ低コストで製造されること、および故障の可能性が低減されることを意味する。回転の方向に直角に駆動されるバネ付き機構を導入する可能性は、複数の部品がしっかりとロックされ、かつハウジング部品を回転させるように力を加えることによっては簡単に克服され得ないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施形態を、以下、例としてのみ、添付図面を参照して説明する。
【0021】
【
図1A】本発明による計数機構の第1の例の分解図を概略的に示す。
【
図1B】本発明による計数機構の第1の例の断面図を概略的に示す。
【
図2A】本発明による計数機構の第1の例の前面図を概略的に示す。
【
図2B】本発明による計数機構の第1の例の断面図を概略的に示す。
【
図3A】計数機構の任意選択的なギヤの歯が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図3B】計数機構の任意選択的なギヤの歯が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図3C】計数機構の任意選択的なギヤの歯が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図3D】計数機構の任意選択的なギヤの歯が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図4】本発明による計数機構の第1のハウジング部品および計数リングのアセンブリを概略的に示す。
【
図5A】第1のハウジング部品の突起が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図5B】第1のハウジング部品の突起が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図5C】第1のハウジング部品の突起が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図5D】第1のハウジング部品の突起が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図5E】第1のハウジング部品の突起が取り得る代替形態を概略的に示す。
【
図6A】本発明による計数機構の第2の例の分解図を概略的に示す。
【
図6B】本発明による計数機構の第2の例の断面図を概略的に示す。
【
図6C】本発明による計数機構の第2の例の前面図の概略的に示す。
【
図6D】本発明による計数機構の第2の例の断面図の概略的に示す。
【
図7A】本発明による計数機構の第3の例の前面図の概略的に示す。
【
図7B】本発明による計数機構の第3の例の断面図の概略的に示す。
【
図8A】本発明による計数機構の第4の例の断面図を概略的に示す。
【
図8B】本発明による計数機構の第4の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図8C】本発明による計数機構の第4の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図8D】本発明による計数機構の第4の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図8E】本発明による計数機構の第4の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図8F】本発明による計数機構の第4の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図9A】本発明による計数機構の第5の例の分解図を概略的に示す。
【
図9B】本発明による計数機構の第5の例の組み立て図を概略的に示す。
【
図10A】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図10B】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図10C】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図10D】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図10E】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図10F】本発明の例の構成部品の代替例を概略的に示す。
【
図11A】本発明による計数機構用のロックアウト機構の動作原理を概略的に示す。
【
図11B】本発明による計数機構用のロックアウト機構の動作原理を概略的に示す。
【
図11C】本発明による計数機構用のロックアウト機構の動作原理を概略的に示す。
【
図11D】本発明による計数機構用のロックアウト機構の動作原理を概略的に示す。
【
図12A】本発明による計数機構の第1の例において用いられるロックアウト機構の例を概略的に示す。
【
図12B】本発明による計数機構の第1の例において用いられるロックアウト機構の例を概略的に示す。
【
図12C】本発明による計数機構の第1の例において用いられるロックアウト機構の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aおよび
図1Bは、本発明による計数機構100を概略的に示す。計数機構100は、第1のハウジング部品110および第2のハウジング部品120を含む。第2のハウジング部品120は、湾曲した断面形状を有し、および第1のハウジング部品110に対して回転可能である。計数機構100は、さらに、第1のハウジング部品110と第2のハウジング部品120との間に位置決めされる計数リング130を含む。第1のハウジング部品110は、
図1Aの分解図に示す突起111を有し、この突起は、機構110が組み立てられると、計数リング130に当接するように位置決めされる。
【0023】
組み立てられると、突起は、第2のハウジング部品120に対して計数リング111を保持するように作用する。ハウジング部品110、120が回転されると、突起は計数リング130の表面131に対して摺動し、それにより、第2のハウジング部品120の対向する曲面の円周での計数リング130の回転運動を駆動する。このようにして、ハウジング部品110、120の予め規定された回転が、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の増分的な回転変位を生じる。それゆえ、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の増分的な回転変位の回数が、ハウジング部品の予め規定された回転数の記録を提供する。
【0024】
サイクロイド機構
図1の例では、第1のハウジング部品、第2のハウジング部品および計数リングは、それぞれ、実質的にシリンダー状の形状を有する。計数リング130の半径は、軸方向F-Fに沿ってこれらの部品を一体にすることによって機器が組み立てられると、計数リング130が第1のハウジング部品の一部分112にぴったり適合しかつ第2のハウジング部品120内に位置するような、半径である。第2のハウジング部品120は、
図2Aに示すように、計数リング130と第1のハウジング部品の少なくとも一部分112とを実質的に囲む。
【0025】
ハウジング部品110、120と計数リングとの間の相互作用は、
図2Bに示される横断面G-Gに最もよく示す。この例では、ひとたび組み立てられたら、ハウジング部品110および120は実質的に同軸になり、第1のハウジング部品110の一部分が第2のハウジング部品120内に位置する状態にして、
図2Bに示すように、それらが実質的に同心となるようにする。計数リング130は、第1および第2のハウジング部品の重なり
合う部分の間に位置決めされ、および第1のハウジング部品110の半径方向に延在する突起111と接触することによって、軸外しとなるように変位される。それゆえ、組み立てられると、ハウジング部品110、120は、
図1AにF-Fとして示す共通の回転軸を共有し、および計数リング130は偏心して位置決めされ、この軸から変位される。
図2Bに示すように、突起111は、第1のハウジング部品110から半径方向外向きに延在して、計数リング130の内面に当接し、および計数リング130の外面の一部分を第2のハウジング部品120の内面と接触した状態に保つ。この例では、それゆえ、計数リング130は、ハウジング部品110、120に対して偏心して位置決めされる。計数リングの直径は、計数リング130の一部分が、突起111に隣接する第1の位置141において第2のハウジング部品120と接触する状態で組み立てられると、計数リングが、突起111に対して第1のハウジング部品の反対側に対応する第2の位置142において、第2のハウジング部品120の内面から分離されるような、直径にされる。
【0026】
第1のハウジング部品110は、第1の突起111から90度だけ円周方向に分離された1つ以上の追加的な半径方向突起111aを有し得る。追加的な突起111aは第1の突起111よりも小さく、追加的な突起が、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の接触を生じるほど半径方向に十分遠くまで延在しないようにする。実際、突起11aは、計数リングにさらに安定性をもたらすのを助け、計数リングを、
図2Bに示す正しい偏心位置に保つのを支援し得る。
【0027】
第1のハウジング部品110が軸F-Fの周りで第2のハウジング部品120に対して回転されると、第1のハウジング部品が計数リング130内で回転するにつれて、突起111が計数リングの内面に対して摺動する。それゆえ、第2のハウジング部品120の内面121と接触した状態を保たれる計数リングの部分141は、突起と共に動いて、計数リングが第2の外側ハウジング部品120の内周を巡って転がるようにする。計数リング130の外面の円周は、第2のハウジング部品120の内面121の円周よりも短いため、計数リング130が滑ることなく第2のハウジング部品の内面に対して転がることを条件に、第1のハウジング部品の時計回りのフル回転によって、第2のハウジング部品120に対する計数リング130の増分的な反時計回りの変位(incremental anticlockwise displacement)を生じる。それゆえ、計数リング130および第2のハウジング部品120の対向面121は、ハウジング部品に対して計数リング130の回転運動の減少を生じるように構成されたギヤを提供する。
【0028】
第2のハウジング部品の内面121の円周に偏心して取り付けられた計数リング130の回転運動を容易にするために、および滑りを実質的に防止するために、機構は、さらに、好ましくは、2つの対向するギヤの歯122、132のアレイを含み得る。
図2Bに示すように、歯のアレイは、計数リング130の外面132、および第2のハウジング部品120の対向する内面122の双方の円周に設けられる。それゆえ、突起111による計数リング130の偏心変位は、対向するギヤの歯を、計数リング130と第2のハウジング部品120の接触部分141において噛み合わせる。計数リング130の直径は、突起111とは反対側の機構の側における位置142で、対向するギヤの歯の間が分離するような、直径とし得る。第1のハウジング部品110が回転すると、噛み合ったギヤの歯の位置が、計数リング130の内面での突起の滑り接触によって駆動されて、ハウジングの周りで動く。それゆえ、第2のハウジング部品の表面に対する計数リング130の回転運動は、第2のハウジング部品120の内周でのギヤの歯の順次の噛み合わせによってもたらされる。
【0029】
計数リングの位置が、歯が噛み合う位置に制限されているため、噛み合っているギヤの歯122、132は、第2のハウジング部品120の表面121に対する計数リング130の滑りを、防止する。関連して、ギヤの歯122、132はまた、第2のハウジング部
品120に対する第1のハウジング部品110の回転によってもたらされる、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の回転変位を規定する。例えば、第2のハウジング部品120の内面と計数リング130の外面との円周の差が、ハウジング部品のアレイ122上に1つの歯を余分に提供したことで生じている場合、ハウジング部品のフル回転によって、連続する歯の間の分離に等しい回転変位を生じる。これは、
図2Bの図面に描かれ得、そこでは、第2のハウジング部品120に対する第1のハウジング部品の時計回りのフル回転によって、計数リングを、第2のハウジング部品に対して、1つの歯に対応する距離だけ、反時計回りに動かす。
【0030】
図1および
図2に示す本発明の例によって提供されるサイクロイドギヤリング装置は、コンパクトな形態で非常に高いギヤレシオを提供できるようにする。なぜなら、従来のギヤリング機構とは異なり、2つのギヤが、かなり異なる数の歯ではなく、同様の数の歯を有するときに、最大のギヤレシオが提供されるためである。それゆえ、構成要素は、同様のサイズにでき、およびコンパクトな形態に組み込むことができる。本発明のこの例において使用されるこのタイプのギヤリング機構によって提供されるギヤ減速比は、
【数1】
によって計算され得る。それゆえ、計量分配器に適用されるときには、35:1のギヤレシオを提供するために、内ギヤは35個の歯、および外ギヤは36個の歯を有し得る。
【0031】
歯付きのサイクロイドギヤでは、それゆえ、達成され得る最大の単段のギヤ減速は、その部品に取り付けられ得る内歯の数に等しい。所与の長さに沿って取り付け得る歯の数は、部品公差、および機構における衝突(clashes)の可能性によって、制限される。
【0032】
さらに、計数リングの回転運動は連続的であり、それゆえ、ほんのわずかな回転を測定するために使用され得る-これは、計量分配または試料採取機器は1回の回転当たり複数回の投与量を計量分配するように設計され得るため、有用である。例えば、35:1のギヤリングを備えるカウンターは、第2のハウジングに対して第1のハウジングが180°回る毎に単回投与量が計量分配された場合、70回の投与を計数するために使用され得る。
【0033】
図2の例は、
図3Aに拡大して示すような、サイクロイド歯の形状を使用する。サイクロイド歯の形状は、計数リングと第2のハウジング部品との間に強力な接続をもたらす。このように形成された形状はまた、非噛み合い部分における干渉を少なくする。この形状は、対向する歯の全てにわたって摺動するのではなく回転し、およびこれら歯は、凸状の側腹部を有するため、摩耗が最小限にされ、および動作が静かである。高強度でありかつ低摩耗であることは、本発明においてサイクロイド歯を使用することを好ましいものにするが、いくつかの他の歯の形状が、等しく使用され得る。
図3Bは、インボリュート歯の形状による形態のさらなる選択肢を示す。この歯の形状は、単一曲線で形成されかつ平らであるため、経済的に機械加工できる。インボリュートギヤの歯はまた、回転を通して一定の圧力角を提供し、およびギヤのセンタリングに関わらず、一定速度で回転する。
図3Cおよび
図3Dは、それぞれ35鋸歯計数リングおよび70鋸歯計数リングを示す。鋸歯形状は、歯の端部に向かって急勾配のテーパを有するため、衝突する確率は低下される。好ましい実施形態では、低摩耗であることからサイクロイド歯が使用されるが、高いギヤレシオが好ましい場合には(例えば70:1のカウンターで)、鋸歯が好ましいかもしれない。なぜなら、歯の数が増加するにつれて衝突が起こりやすくなり、かつこの形状の急
勾配のテーパは、この影響を軽減させるのを助けるためである。
【0034】
上述の通り、ハウジング部品の回転は、第2のハウジング部品120と比べて遥かに低速の計数リング130の回転を引き起こすため、計数リング130の回転変位は、ハウジング部品の回転数のカウントを提供し得る(それゆえ、計量分配器の場合には計量分配された投与回数の、または試料採取器の場合には試料採取事象のカウント)。使用者にカウント情報を伝えるために、機構に目盛133が設けられて、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の回転変位の可視表示を提供し得る。
図4は、第1のハウジング部品110および計数リング130の図であり、これは、計数リング130に設けられる、考えられる目盛133を示す。これは、例えば、残っている投与回数の可視表示を提供するためにグラデーションおよび色を備える、印刷やラベルの添付によって作られ得る。例えば、琥珀色は、別の機器を注文する必要があることを使用者に気付かせるために使用され、および赤色は、残りが1週間分の投与量に満たないことを示し得る。さらに、正確な残りの投与回数を提供するために数字が追加されてもよい。目盛133は、第2のハウジング部品120上の窓123と組み合わせられてもよく、現在の回転数に対応する目盛133の一部分のみが、使用者に見えるようにする。第2のハウジング部品と計数リングとの間のこの回転変位がカウントを提供するため、目盛機構-この場合は目盛133および窓123-は、これらの構成要素に設けられて、協同してカウントの記録を提供する必要がある。
【0035】
機構が逆方向に-
図2Bの第1のハウジング部品110の反時計回りの回転に対応する-駆動され得ないことを保証するために、機構は、さらに、爪車機構124および爪機構114を含む。
図1Aの例では、爪車124は、第2のハウジング部品120の内側面に設けられ、および爪114は第1のハウジング部品110に設けられる。
【0036】
図1~4の例示的な機構では、突起111は、第1のハウジング部品から半径方向に突出する楔機構であり、計数リングの偏心変位、および第2のハウジング部品との必要な接触をもたらす。これは、さらに、第1の突起から円周方向にオフセットされている-この例では90°だけ-、より小さい楔または半円形の突起111aによって補足され得る。計数リング130の内面131上にある3つ以上の接触点が協働して、正しい偏心位置に計数リングを保持して、計数リング130および第2のハウジング部品120の互いに対向する歯122と132とが、主突起111に隣接する接触点141で噛み合うようにする。
図5A~5Eに示すような、半径方向突起111が取り得るいくつかの代替形態がある。
図5Aに示す小さな楔機構の代わりに、半径方向突起111は、
図5Bに示すような第1のハウジング部品の外面に形成された西洋梨形のカムの形態をとってもよい。あるいは、半径方向突起は、
図5Cに示すような、偏心してセンタリングされた円によって規定された断面形状を有する第1のハウジング部品の本体によって提供されてもよい。この場合、偏心は、ハウジング部品の横断面の不均一性によって提供される。
【0037】
あるいは、上述の固定された機構の代わりに、突起は、バネ付き機構の形態をとってもよい。
図5Dおよび
図5Eは、突起111が、それぞれ成形バネおよび板バネによって提供されている、下方ハウジング部品110を示す。バネ機構を追加することは、上述の一体的に形成された例と比較して製造の複雑さを増すが、バネ付き機構は、確実な係合力を常に保証し、および機構内のいずれの公差の積み重ね(tolerance stacks)も軽減するのを助ける。このバネ機構は、ハウジング部品または計数部品の一方に成形プラスチックで形成し得るか、または全く別個の部品とし得る。別個のバネ部品を有することは、組み立てを複雑にし、かつコストを増大させるが、それにより金属バネを使用できるようにし、金属バネは、単位体積当たり蓄積されるエネルギーなど、バネに望まれる材料特性を有する。
【0038】
上述の例では、計数リング130は、例えば硬質プラスチックから製造された硬質部品によって提供される。これは、突起111によって加えられた力が、形状を決して変形または実質的に変更させることなく、計数リング130を軸外しとなるように変位させるように作用するようにする。しかしながら、計数リング130は、硬質部品を含むのではなく、その代わりに可撓性ベルトとし得る。このベルトの例示的な材料は、エラストマー、例えば:シリコーン、EPDM、TPE、TPUまたはViton;一般に低モジュラスポリマー、例えばポリオレフィン、またはエンジニアリングポリマーまたは金属の網状のもしくは非常に薄いセクションとし得る。可撓性ベルトは、歯122、132が衝突するという問題をほぼなくすため、好都合とし得る。達成可能なギヤレシオは、計数リングおよび第2のハウジング部品上の歯の数によって制限され、および歯の数(所与の体積に関する)は、それらの歯がどの程度小さく作製され得るかによって、制限される。最小サイズの歯は、達成可能な公差によって決定づけられる-歯が公差外であるギヤは、衝突して引っ掛かる。可撓性材料が計数リング130に使用される場合、圧縮荷重を支持することができない代わりに、単に変形する。圧縮荷重を支持できないため、カウンターは引っ掛かることができず、およびこれにより、機構の最小の歯の可変サイズを小さくし、これは、小さな体積内に多くの歯が収まり得ることを意味する。しかしながら、ベルト駆動システムの主な不利益は、ベルトの噛み合っていない部分の位置が分からないことである-これは、カウント情報を使用者に伝えるのにベルトを不適当にする。この問題はまた、被駆動ベルトとより硬質なカウントインジケータとの間に一体丁番を備える計数リング130を構成するなど、追加的な機構または部品を使用することによって、是正され得る。噛み合っていないセクションの形状を維持するが衝突に見舞われる実質的に硬質のカウンターと、その形状を保持しないが衝突に見舞われない可撓性カウンターとの間は連続している。半硬質のポリマーカウンターは、特定のカウンターに対し、精度と衝突に対する感度との間の良好な妥協案を提供し得る。
【0039】
さらに、計数機構は、計数リング130またはハウジング部品110、120に、機器の耐用期間の間にいくつかの点において機能をトリガする機構を含み得る。例えば、ひとたび増分的に回転する計数リング130上の機構が、ある回転変位に到達したら、使用者に信号または光が表示され得るか、または、計量分配器内で用いられる場合、計量分配される投与量が変化し得る。
【0040】
このようにしてトリガされる機能の重要な例は、耐用期間の最後にトリガされる、機器のロックアウトとし得る(計数リングの、ある回転変位によって示されるような)。例えば、機器は、70回の投与後にトリガする寿命末期ロックアウトを有し得る。これは、カウンターにスロットを、下方ハウジングにスロットを、および上方ハウジングにバネ付き部材を有することによって、達成され得、これらは、70回分の投与量(例えば)が計量分配されたときに、一度だけ整列する。バネ付き部材は、ハウジングの回転の方向に対して直角なスロットに追い込まれる。これにより、上方ハウジング、下方ハウジングおよび計数リングを一緒に効果的にロックし、使用者がこれ以上の投与量を計量分配するのを防止する。
【0041】
ロックアウト機構について下記で詳細に説明する。
【0042】
計数機能は、ロックアウトまたは使用者へのカウント指示にのみ依存しない;第三者へ送信するためのデータの収集にも使用され得る。
【0043】
多段機構
上述の例は、単一の計数リング130を使用してカウントを記録するが、非常に大きなギヤレシオをコンパクトなサイズで達成するために、多段機構が使用され得る。ギヤレシオに関して、さらなる段を追加することは幾何学的に調整する(scale)ことになる
一方で、より多くの歯を追加することは付加的に調整することになるため、最終的には、より多くの歯を追加するのではなく、さらなる段を追加することが常に好ましい。本発明による機構の利点は、単一の余分な部品のみを備える第2の段が追加され得ることである。第2の段の後のさらなる段も、それぞれ単一の余分な部品のみを備えて、追加され得る。
【0044】
非常に大きな減速比を達成するために使用され得るこのカウンターの2段の実施形態は、第2の計数リングを有することであり、これは、1つ多い(または1つ少ない)内歯を有することを除いて、ほとんど上方ハウジングと同じである。この例では、第2のハウジング部品に対して第1のハウジング部品がフル回転する度に、上方ハウジングから第1の計数リングが1つの歯分だけオフセットされ(第1の段)、かつ計数リングがフル回転する度に、第2の計数リングおよび外側ハウジングが1つの歯分だけオフセットされる(第2の段)。上述の機構に関し、これにより、第1の段にギヤレシオ35:1、および第2の段にギヤレシオ36:1を与え、カウンターにおける総ギヤレシオを1260:1にし、これには、4つの部品を必要とするにすぎず、そのうちの2つは、ハウジング部品110、120によって形成される。
【0045】
さらなる段は、第2の段の自由表面に突起を配置し、かつこれを、さらなるサイクロイドギヤを駆動するために使用することによって、追加され得る。第2の段は、駆動構成要素(第1のハウジング部品と同等)を形成し、かつ固定基準(上方ハウジング)が全ての段の間で共有され得る-第3の段は第2の計数リングで構成され、および第4の段は、第2の段と同じ方法で追加され得る。これは、n個の段を備える機構が、n+2個の部品(またはひとたびハウジングを考慮に入れなければn個の余分な部品)を必要とするにすぎないように、繰り返され得る。
【0046】
多段機構は、小さな直径内で非常に大きなギヤレシオを必要とする適用例に、特に好都合とし得る。ギヤ付き部品の直径は、実質的に、それらが含む歯の個数と比例するため、大きいなギヤレシオは大きな直径を必要とする。その代わりにギヤを積み重ねることによって、機構は、垂直空間を犠牲にして、小さな直径を維持できる。この形状因子は、非経口的薬物投与機器や電子たばこなどの、長くて薄い製品に特に有用である。
【0047】
逆サイクロイド機構
図6A~6Dは、本発明による計数機構のさらなる例を示す。この例は、上述のサイクロイド機構の例と同様であり、および同じ動作原理を用いるが、ハウジング部品110、120は「逆」の機能を有する。特に、上方の外側ハウジング部品は、計数リング130を駆動する第1のハウジング部品110の機能を果たし、および内側の下方ハウジング部品は、計数リング130の増分的な回転が測定される第2のハウジング部品120の機能を果たす。
【0048】
この例では、計数リング130は第2の(下方)ハウジング部品120上に、および第1の(上方)ハウジング部品内に位置する。半径方向突起111は、第1の(上方)ハウジング部品の滑らかな内面から内向きに延在して、計数リング130の外面に接触する。計数リングでの突起111の接触は、計数リングを軸外しとなるようにシフトさせて、内面131が第2の(下方)ハウジング部品120の外向きの面125と接触して保持されるようにする。この例の計数リング130は、計数リング130の内面に延びる円周の歯132のアレイを有する。第2のハウジング部品は、対向する歯122のアレイを有し、これは、計数リング130が位置する第2のハウジング部品120の部分125の外向きの面の円周に延びる。それゆえ、計数リング130との半径方向突起111の接触によって、
図6Dに示すように、対向する歯122と132とを、突起111に隣接する位置141において噛み合わせる。
【0049】
この例では、上述のサイクロイド配置構成の逆の動作を用いて、第2の(下方)ハウジング部品120は固定しており、第1の(上方)ハウジング部品が回転していると考慮することによって、機器の動作は最もよく理解される。第1のハウジング部品110が第2のハウジング部品120に対して回転されるため、突起111は、計数リング130の外面135に対して摺動し、計数リング130の内面を第2のハウジング部品120の外面に対して転がす。それゆえ、
図6Dに示す噛み合った接触部分141は、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の境界を巡るように伝わり、対向するギヤの歯122、132の順次の噛み合わせによって、回転運動が促される。
【0050】
この逆の配置構成において、計数リング130は、第2のハウジング部品120よりも多い数の歯を有して、第2のハウジング部品120に対する第1のハウジング部品110のフル回転後、計数リング110が、歯の数の差に対応する回転変位によって、第2のハウジング部品120に対して前方に動かされるようになる。それゆえ、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の増分的な回転変位の回数は(公知の開始点から測定されるような)、ハウジング部品110、120の回転数の記録を提供する。
【0051】
この逆の配置構成では、計数運動は下方(第2の)ハウジング120と計数リング130との間で発生するため、これら2つの部品間に、何らかの計数目盛133または表示を有することが好ましい。計数表示は、上方ハウジングと計数リングとの間で起こり得るが、そのため、運動の間、目盛を覆うことが好ましく(および、例えば各フル回転後に覆いが取られる)、そうでなければ、使用者は、何カウントが示されていたのかに関して、混乱させられる。
【0052】
上述の例と比較するとき、逆の機構の不都合なことは、歯がより小さい半径で形成されるため、歯のための余裕が少なく、それにより、利用可能な最大ギヤ減速が制限されることである。
【0053】
摩擦ベースの機構
上述の実施形態におけるギヤの歯122、132の中心的機能は、第2のハウジング部品120を備える計数リング130の動きが、単に回転接触によるものであり、およびそれらの表面の互いに対する滑りをなくすことを保証することである。ハウジング部品110、120の回転のカウントは、ハウジング部品の回転量と、計数リングと第2のハウジング部品との間に誘発された増分的な変位との一定比率によってもたらされ、いずれの滑りもこの比率を破壊し(単なる増分的な変位以上のものを生じることによって)、それゆえ、カウントの不正確な記録を生じる。しかしながら、滑らない条件は、必要な精度を提供するのに必要な程度でこの条件が達成され得る限り、対向する歯のアレイ以外の代替的な機構によって等しく提供され得る。
【0054】
図7Aおよび
図7Bは、必要な滑らない条件を達成するために、歯ではなく、高摩擦面121、135を使用する、1つのそのような機構を示す。この例では、ハウジング部品110、120および計数リング130の配置構成は、
図1~4を参照して説明されるものと同一である。しかしながら、計数リング130および第2のハウジング部品120の対向する面に円周の歯のアレイが設けられる代わりに、これらの面は、滑らない条件を提供するのに十分な高摩擦接触を提供するように構成される。
【0055】
滑りを最小限にするために、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の摩擦係数および反作用力の双方を最大にすることが望ましい。反作用力は、バネ付き部品(上記で詳述したような)を使用することによって、または締まり嵌めと組み合わせられて弾性的に変形する材料を有することによって、最大にされ得る。摩擦は、表面処理する
こと、テクスチャー加工すること、または同様の高摩擦材料、例えばシリコーンまたはTPEを使用することによって、最大にされ得る。TPEの使用は、2ショット工程の一部として-別個の組み立てステップを必要とするのではなく-オーバーモールドまたは成形され得るため、特に好都合とし得る。
【0056】
この機構の利点は、歯を完全に除去することによって衝突の可能性をなくし、かつ理論的な最大ギヤレシオを、計数リング130と第2のハウジング部品120の周囲の公差に結び付けることである。滑らない条件が維持され得、および小さな増分的な動きを前提として、使用者が十分正確に目盛を読むことができる限り、極めて高いギヤレシオが達成可能である。例えば外周100mmの計数リングおよび内周100.25mmの第2のハウジング部品120は、単段でギヤレシオ400:1を与える。
【0057】
この機構の不都合なことは、計数輪は、機械的な反作用力ではなく、摩擦が作用するのみであり滑りやすいとし得る可能性を含むことである。さらに、ギヤレシオは、離散的な変数(歯の比)ではなく連続的な変数(周囲の比)によって決定されるため、公差感度が高い。説明として、上述の例において、部品のそれぞれの周囲に±0.1mmの公差がある場合、ギヤレシオは、それらの部品が仕様内にあった場合、222:1~2002:1の間のどこかにあるとし得る。
【0058】
ハーモニックギヤ機構
本発明による計数機構のさらなる例が
図8Aに示されている。ここでも、この例の動作原理は、
図1~4を参照して説明したものとよく似ている。しかしながら、この場合、計数リング130は、偏心して装着されるのではなく、可撓性であり、および変形されて、計数リングが周りに位置決めされる第1のハウジング部品の形状に起因して、いくつかの点において第2のハウジング部品の内面に接触する。
【0059】
ハウジング部品110、120および計数リング130の配置構成は、
図1Aに示すものと同様であり、計数リング130は、第1のハウジング部品110の一部分112の周りに位置決めされ、かつ第2のハウジング部品120内に位置する。しかしながら、この例では、半径方向突起は、計数リング130が周りに位置決めされる第1のハウジング部品110の一部分112の断面形状によって提供されている。例えば、
図8Aの例では、第1のハウジング部品の一部分112の横断面は、楕円形または丸みを帯びた方形の横断面を有し、ここでは、楕円の長尺の軸の両端部が、半径方向突起111を提供する。計数リング130は可撓性であり、かつ楕円形の横断面の長尺の軸の長さは、弛緩した計数リング130の直径を上回るため、計数リングは、第1のハウジング部品110の周りに置かれるときに、変形する必要がある。第1のハウジング部品112の断面形状は、計数リング130の変形によって計数リング130を第2のハウジング部品120の内面に、突起111に対応する位置141で接触させるように、適切なサイズにされる。
【0060】
先の例のように、2つの対向する円周のギヤの歯のアレイは、計数リング130および第2のハウジング部品120の周りに設けられ得、異なる数の歯が各構成要素に設けられている。それゆえ、第1のハウジング部品の突起111によって与えられた計数リング130と第2のハウジング部品120との接触は、接触位置141において、対向するギヤの歯の噛み合いを生じる。
【0061】
第1のハウジング部品110が第2のハウジング部品120に対して回転されると、計数リング130内にある第1のハウジング部品の部分の楕円形横断面の回転によって、計数リング130の半径方向の変形を、計数リング130の円周を巡るように伝搬させる。それゆえ、計数リング130は、第2のハウジング部品の対向面に対して回転し、および歯の順次の噛み合わせによって進む。それゆえ、第2のハウジング部品に対する第1のハ
ウジング部品のフル回転は、計数リングと第2のハウジング部品との間に、歯の数の差に対応する必要な増分的な回転変位を生じ得る。
【0062】
この例の構成における違いは、第1のハウジング部品は、計数リング130と第2のハウジング部品120との間に少なくとも2つの接触点141を提供することである。
図8Aの例は、歯が噛み合わせられる2つの同相の接触領域を有し、これらの接触点141から90度オフセットしている2つの領域142を備える。2つの接触点141があるため、計数リング130と第2のハウジング部品の歯の数の差は、偶数である必要がある-これは、達成可能なギヤレシオを半減する。このハーモニックギヤの例の利点は、2つの接触点によって、接触発生(yield)前の荷重伝達を大きくできることであるが、一般的に、計数の適用例では、伝達される荷重は、重要ではない。
【0063】
変形に追いやる第1のハウジング部品の部分112の断面形状に関して、可撓性計数リング130と同じ円周長さの形状は、そこにぴったりと収められることによってそれらの形状が計数リング上の全ての点の位置を規定するように、選択され得る。あるいは、計数リング130の長さよりも短い円周長さを有する形状が、選択され得る。例えば、
図8Bに示す断面形状は、その周りにぴったりと嵌められる計数リングを駆動するために使用され得、または
図8Cの断面形状は、より小さい円周に起因して、長尺の側面のそれぞれに、規定されていない計数リングの部分を残す、同じ長さの計数リングを駆動するために使用され得る。計数リング130の「緩い」部分と、第2のハウジング部品の歯との間が衝突する危険はない。なぜなら、歯が接触点のそれぞれで適切に噛み合うことを前提として、可撓性計数リング130は、引っ掛かりを生じるのに必要な圧縮荷重を支持できないためである。
【0064】
計数リングの位置を完全には規定しないように、計数リングよりも短い周囲長を有する形状は、任意の2つの隣接する接触点間の計数リング部分の長さに依存して、複数の異なる配置構成を有し得る。ギヤ減速比は、計数リング上の歯の数、それゆえ(所与の歯のピッチでは)使用される計数リングの全長によって規定される。このようにして、
図8Dおよび
図8Eの計数リングが同じ歯のピッチを有し、およびそれら双方が、第2のハウジング部品120よりも少ない数の歯を有すると仮定すると、
図8Dの計数リングは、その長さがより長いことによって(第2のハウジング部品120の内側面により近い)、最大のギヤ減速比を提供するであろう。
【0065】
同相の別々の領域141の数は、2つの部品の歯の数の最小限の差に等しい。完全に規定された可撓性計数リングでは、歯132の数の差は、同相の領域141の数の倍数である必要がある。このため、特に、7個の突起111を規定する断面形状を備える
図8Fの第1のハウジング部品など、必要な接触点の数が素数である場合には、3つ以上の接触点を備える第1のハウジング部品110を使用することが好都合とし得る。
【0066】
第1のハウジング部品の形状が「実質的な」接触点を提供することも可能である。
図8Dおよび
図8Eの形状は、例えば、互いに120度オフセットする2つの物理的な突起111のみを有する。しかしながら、この形状は、120度の間隔で配置された3つの突起を有する形状と等しいため、第3の「実質的な」同相の接触点を有する。それゆえ、完全に規定されている場合には、2つの部品間の歯の数の最小限の差は、実質的な同相の接触点が総数に含まれるため、3である。
【0067】
ハーモニックフェースギヤ(harmonic face gear)機構
図9Aおよび
図9Bは、本発明による計数機構のさらなる例を示す。この機構は、ハーモニックギヤ機構と同様に機能するが、この例では、計数リング130と第2のハウジング部品120との間の接触平面は、ハウジング部品110、120の回転の方向に平行し
ている。
図9Aに示すように、計数リング130の軸方向に向く端面136は、第2のハウジング部品の軸方向端面126と接触し、および第1のハウジング部品110上の突起111によって適所に保持される。
【0068】
ハーモニック機構のように、この例では、計数リング130は可撓性であり、かつ第1のハウジング部品110の突起111との接触によって変形され得る。前述の例のように、第1および第2のハウジング部品は実質的にシリンダー状であり、それらの直径は、
図9Bに示すように、機構が組み立てられると第1のハウジング部品110が第2のハウジング部品120内に部分的に位置するようなサイズにされている。計数リング130の直径は、第1のハウジング部品110の直径よりも大きい。1つ以上の突起が第1のハウジング部品から半径方向に延在し、および1つ以上の突起の軸方向に向く端部は、計数リングの軸方向面137と接触し、計数リング130の下面136の対応する部分141を、第2のハウジング部品120の対向する軸方向端面126と接触させて、保持する。突起111は、計数リングを変形させるように作用して、接触した部分141を、リングの平面から曲げて、第2のハウジング部品120の対向する面126と接触させる。
【0069】
それゆえ、ハウジング部品110および120の回転は、計数リングの軸方向上端面137に対して突起111を摺動させ、計数リングを変形させて計数リング130の円周方向に伝搬させて、第2のハウジング部品120の対向する端面126に対して転がす。計数リング130は、第2のハウジング部品よりも大きな円周を有するため、
図9Bに示す第1のハウジング部品110の時計回りのフル回転は、第2のハウジング部品に対する計数リング130の増分的な時計回りの回転変位を引き起こす。それゆえ、公知の開始点からの増分的な変位回数は、本発明の他の例のようなハウジング部品の回転数の記録を提供する。
【0070】
第1のハウジング部品110は、計数リング130の他の部分を第2のハウジング部品120から確実に分離されたままにするさらなる突起111bを含み得る。
図9Bに示すように、一連の突起111、111bは、計数リングがいくつかの突起111の下方および他の突起111bの上方を通過するようにして、設けられ得る。このようにして、突起は、いくつかの点において計数リングの高さを規定し、計数リングが、求められる点でのみ第2のハウジング部品と接触することを保証する。
図9の例では、この機能は、いくつかの点におけるリングの高さを規定する一連の突起によって実行されたが、突起(高さを規定する)と、リングの半径よりも小さい半径を規定し、それを変形させる外側ケージとの組み合わせによっても、実行され得る。
【0071】
しかしながら、変形は達成され、第1のハウジング部分は、計数リング130を、わずかに小さい第2のハウジング部品120の半径に適合するように、接触平面から変形させる。上述の例のように、対向する歯のアレイが、計数リングおよび第2のハウジング部品の対向する面に設けられ得、歯が、接触する部分で噛み合うようにし(同相)、かつ他の点ではクリアランスがあるようにする(逆相)。そのため、複数の部品の円周での歯の順次の噛み合わせによって、回転運動が促される。
【0072】
さらなる代替例
上記の実施形態では、第1のハウジング部品110および第2のハウジング部品120は同軸に配置されて、相互回転軸の周りで互いに対して回転され得るようにする。しかしながら、これが当てはまる必要はなく、および機器の残りの部分によって課される幾何学的な制約が、非同軸のカウンターを等価の同軸カウンターよりもコンパクトとし得ることを意味する場合など、いくつかの機器では、この非同軸のカウンターを有することが好都合とし得る。
【0073】
非同軸のカウンターは、硬質の半径方向突起111を有することができない。なぜなら、そうでなければ複数の回転の点があり、そこでは、半径方向突起が、計数リング130と第2のハウジング部品120との間を強制的に接触させるには小さすぎるか、または大きすぎて引っ掛かりを引き起こすかのいずれかであるためである。しかしながら、柔軟な半径方向突起-例えばバネ-を使用することによって、突起111は長さを調整でき、接触が常に確実に行われるようにする。
図10Aおよび
図10Bは、バネ付きの半径方向突起111を用いて計数リング130をハウジング部品110、120の非同軸配置構成へ追いやる機構の動作を概略的に示す。
図10Aおよび
図10Bは、第2のハウジング部品120の回転軸143が第1のハウジング部品110の回転軸144からオフセットしていることを示す。このことは、第1のハウジング部品の軸144に最も近い側面および第1のハウジング部品の軸144から最も遠い側面の双方で第2のハウジング部品120に対して計数リング130のリングを保持するのに十分な力を適用できるように選択される、柔軟なバネ付きの突起111で説明される-
図10Aおよび
図10Bにそれぞれ示されるように。
【0074】
同様に、上述の例では、ハウジング部品は、円形横断面を備えて実質的にシリンダー状であるが、特に、機器の残りの部分の幾何学的形状が、そのような形状は円形よりも効率的であると決定づける場合、他の断面形状を使用することができる。
図10Cは、第2のハウジング部品120が楕円形の横断面を有する機構を示す。ここでも、第2のハウジング部品120の半径が変動するため、完全な回転のために計数リング130を第2のハウジング部品120と接触した状態に保持するために突起が十分な力を加える必要があるという理由で、柔軟な突起111が用いられ得る。ここでも、
図10Cの場合、突起111にバネが使用され、バネは、計数リング130の内側を、楕円の短軸を通過して摺動するときには圧縮し、かつ楕円の長軸を通過して回転するときには伸長する。後者の場合、バネ111によって加えられた力は低減されるが、力は、依然として、計数リング130を第2のハウジング部品120に対して保持しかつ回転接触をもたらすのに十分である。
【0075】
同様に、計数リング130は、円形である必要はなく、および部品の形状が、計数リングが第2のハウジング部品120の全周を巡って第2のハウジング部品との回転接触を保持するようなものであることを条件に、それを駆動する突起111は任意の形状を取り得る。例は、長尺の突起111によって駆動されている楕円形計数リング130の
図10Dに提供されており、これは、この条件を満たしている。
【0076】
概して、外ギヤ(例えば
図1~4の例の第2のハウジング部品120、または
図6の例の計数リング130)のどこの曲率半径も、内ギヤ(例えば
図1~4の例の計数リング130または
図6の例の第2のハウジング部品120)のどこの曲率半径よりも大きいことを条件に-小さな隆起、噛み合わない領域、およびギヤの歯の形状自体は無視して、計数リング130および第2のハウジング部品120は、任意の滑らかに湾曲した形状を取り得る。
図10Eおよび
図10Fは、この要件を満たし得る第2のハウジング部品120の断面形状の例を示す。計数リングおよび第2の部品が歯のアレイを備えて、滑らない条件を提供する場合、歯は、大きいギヤの内側で転がる空間を有する小さいギヤと合うように、正しいサイズおよびピッチである必要がある。
【0077】
内ギヤの最大曲率半径を最小にするための要件は、円が、全ての点で同じ曲率半径を有するため、内ギヤに最も好ましい形状であることを意味する。そのため、所要のサイズでは、円は、常に、最小の最大曲率半径を有する。同じ論理によって、円は、外ギヤに最も好ましい形状である:円は、全ての点で同じ曲率半径を有するため、所与のサイズでは、円は、常に、最大の最小曲率半径を有する。総合的に、これらの意見は、考えられるギヤレシオの最大範囲が、円を使用することによって達成されることを意味する。
【0078】
ロックアウト機構
上述の通り、本発明による計数機構は、さらに、その耐用期間の最後に機器をロックするように構成されたロックアウト機構を含み得る。
【0079】
一般的に言えば、本発明によるロックアウト機構は、以下:第1のハウジング部品210;第1のハウジング部品210に対して回転可能な第2のハウジング部品220;および回転可能な計数部品230を含む任意の計数機器に用いられ得る;計数部品230の回転は、第2のハウジング部品220の回転によって駆動されて、第2のハウジング220部のフル回転によって、第1のハウジング部品210に対する計数部品230の増分的な回転を生じ得る。
図11A~11Dは、上述の本発明による計数機器の様々な例によって使用されるこの全体的な構造を概略的に示す。
図11では、第1のハウジング部品210は、第2のハウジング部品220に対して回転可能であり、およびこれらのハウジング部品のフル回転によって、回転可能な計数部品230と第2のハウジング部品220との間の増分的な回転変位を生じる。
【0080】
計数部品230の増分的な回転が第1のハウジング部品210の回転によって駆動される機構は、上述の例で説明するように、半径方向突起によって、第2のハウジング部品220に対する計数部品230の回転運動を駆動し得る。しかしながら、これは、等しく、第1のハウジング部品210の回転毎(第2のハウジング部品220に対する)に、計数リング230に増分的な回転(第2のハウジング部品220に対する)を生じる、任意の他の機構によるとし得る。例えば従来の公知のギヤリング装置は、これらのそれぞれの部品の回転の減速比を提供するために等しく使用され得る。
【0081】
第1のハウジング部品210、第2のハウジング部品220および計数部品230のそれぞれは、部品に位置決めされたロッキング機構211、221、231を有するため、部品と一緒に回転する。第2のハウジング部品220を固定基準として考慮すると、第1のハウジング部品210のロッキング機構211は、第1のハウジング部品210の回転毎に1度、第2のハウジング部品のロッキング機構221を越えて回転し、および計数部品230のロッキング機構231は、計数部品210の回転毎に1度、第2のハウジング部品のロッキング機構221を越えて回転する。
【0082】
ロッキング機構211、221、231は、
図11Dに示すように、それらが全て同時に整列されるときにのみ、係合して一緒にロックするように構成される。用語「整列される」の使用は、近接している意味を含まず、単に、これらの3つの機構が、ロックアウトするように相互作用する固有の位置にあるにすぎない。これらの機構を一緒にロックすることによって、ハウジング部品のさらなる回転を防止する。第1のハウジング部品210は機器の耐用期間にわたって複数回(n回)回転するが、計数部品230は1回しか回転しない。これらの部品の3つの考えられる対のうち、第1のハウジング/計数部品のロッキング機構および第1/第2のハウジング部品のロッキング機構は、
図11Bおよび
図11Cに示すように、カウンターの寿命を通して複数回(それぞれn-1およびn)整列する。これらの場合には、ロックアウトはトリガするべきではなく、
図11Dに示すように、部品の3つ全てが整列するときにのみトリガする。
【0083】
機構231および221の相対位置は、機器がロックアウトするまで何カウントであるかを決定する。機構211および221の相対位置が、最終的な回転中のどの点でロックアウトが発生するかを決定し、それゆえ、最終的な投与中のロックアウトに対して最も論理的な位置を特定するために使用され得る。1回の回転で複数回の投与がある機器では、それぞれが1回の投与に対応する複数の211の機構があり得る。単一の211の機構しか有しないことの利点は、これにより、機構231に対する公差感度を低下させることである。
【0084】
ロッキング機構211、221、231は、これらの機構が同時に整列すると、第1のハウジング部品、第2のハウジング部品および計数部品に必要なロックを提供するのに適切な任意の形態を取り得る。
図12A~12Cは、
図1~4を参照して上述した本発明による計数機構に用いられるような、ロックアウト機構の一例を概略的に示す。この例では、第2のハウジング部品に設けられたロッキング機構221は、ロッド222およびバネ223によって形成された、バネ付き部材221を含む。ロッド222は、機構の長尺の軸P-Pに沿って位置し、および軸P-Pに沿って第1のハウジング部品110の方へロッド222に力を加えるように付勢されるバネ223の弾性張力下に保持される。
【0085】
第1のハウジング部品110および計数部品130のロッキング機構は、それぞれ、軸方向に方向付けられたスロットを含み、それら双方とも、ロッド222を受け入れるような形状にされている。
図12Cに示すように、ロッド222の端部は段付き形状を有し、および長さにおいて、第1の端面224が第1のハウジング部品の部分112の軸方向端面に接触し、かつ長いセクションが、計数リングの軸方向端面と接触する端面225を有するように、ずらされている。計数リング130は、第1のハウジング部品の部分112よりも大きい直径を有するため、組み立てられると、計数リングの端面137は、第1のハウジング部品の端面117を越えて半径方向に延在する。それゆえ、第1のハウジング部品110および計数リング130の2つのオフセットした端面117、137は、ロッドのずらされた端面と接触し、およびロッドの動きを防止し、バネ223の張力下で準備万端の位置に保持される。
【0086】
上述の通り、第1のハウジング部品110は、機器の耐用期間の間に何回も回転して、第1のハウジング部品のスロット211がロッド222の下側で回転するようにする。しかしながら、ロッド222は、その先端225において、計数リング130の上面137によって支持されたままであるため、ロッド222はバネ223の作用下でスロット211内へと動くことはできない。ロッド222の下側で両スロット211、231を整列させるための十分な増分的な回転による、計数リング130を駆動するためのハウジング部品110、120の十分な回数の回転後にのみ、そのロッドは、ロックアウトをトリガするためのバネの作用下で、両スロット211、231内へと追いやられる。
【0087】
バネ付き部材は、ハウジングの回転の方向に対して直角のスロット内へと駆動される。これにより、第1のハウジング、第2のハウジングおよび計数リングを効果的に一緒にロックし、これにより、計量分配器において適用されると、使用者がこれ以上の投与量を計量分配するのを防止する。例えば、機構は、70回の投与後にトリガする寿命末期ロックアウトを有し得る。この場合、スロットは、ひとたび70回分の投与量が計量分配されたときにのみ、整列する。
【0088】
上述の例では、ロッキング機構は、バネ付き機構および2つのスロットによって提供されるが、スロットは、上昇されたポストによって等しく置き換えられ得る。さらに、ロッキング機構は、これらの機構が同時に整列すると、3個の回転可能な部品をロックするのに好適な任意の他の形態を取り得る。
【0089】
本発明による計数機構は、いくつもの利点を有する。第1に、機構は、ハウジング部品の回転と計数リングの増分的な回転変位との間に大きな減速比を提供して、多数の回転の記録が保たれ得るようにする。機構の配置構成は、コンパクトな形態でこれを達成できるようにすることが重要である。計数部品の動きは回転運動によるものであるため、機構は、かなり摩耗が低減され、それゆえ、耐用期間が長くされ、かつ部品の故障抵抗が高められる。これは、機器がほとんど騒音なく動作する手段を可能にする。
【0090】
本発明による計数機構は、3つの部品のみを必要とするため、低コストであり、かつ製造および組み立てが簡単である。特に、カウントの異なる機器間の部品の変更の個数は、設計によって最小限にされ得る。例えば、35:1および70:1の異なる計数(counting variant)の双方を有する機器を設計すると、35:1投与カウンターは、上方ハウジングに72個、および計数リングに70個の歯を有するように設計され得、および70:1投与カウンターは、上方ハウジングに71個、および計数リングに70個の歯を有するように設計され得る。このように、計数リングの成形は、変形例によって変更する必要はない。
【0091】
システムによってもたらされる機械的な利点によって、計数機構のいずれの摩擦も、使用者によって簡単に克服され、かつ伝達された力は低いため、部品は、プラスチックから安価に成形され得る。全ての部品は、一本の線を引き出して成形され得、および部品の組み立ては、ほとんど線対象である。カウンターは上方および下方ハウジングによって適所に保持されるため、追加的な保持機構を必要としない。計数リングの周囲は、対応する直線距離よりも多くの利用可能な空間を有するため、各増分を示すためにより多くの余裕がある。単に歯の数を変更することによって、異なるギヤレシオの新しいカウンターを設計することも簡単である。
【0092】
本発明による機構は、さらに、高度に正確であり、かつほとんどがたつきがない。計数機構はまた、特に、歯が機器に含まれているとき、いくつかの歯が常に噛み合っているため、衝撃に対する弾性がある。複数の部品が、それらの外面または内面に、一体的に形成された歯を有することも好都合である。なぜなら、複数の部品は、中心部が抜き取られている状態にあるときに形成され得るため、これらの歯を形成するコストがかからないためである。
【0093】
本発明によるロックアウト機構は、ハウジング構成部品の予め決められた回転数後に三部品の回転可能な計数機構が連続的に回転するのを防止する、単純な手段を提供する。計数機構の回転は、ハウジング部品の回転からギヤが落とされるため、機器の耐用期間の間に3つの部品が一度のみ整列し、およびこれが、ロックアウトを初期化するために使用され得る。機構が単純であることは、製造しやすくかつ低コストで製造されることを意味し、および故障の可能性が低減される。回転の方向に直角に駆動されるバネ付き機構を導入する可能性は、複数の部品がしっかりとロックされかつハウジング部品を回転させるように力を加えることによって、簡単には克服され得ないことを意味する。