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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
F25D17/08 306
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019008921
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020118346
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】額賀 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拳司
(72)【発明者】
【氏名】加納 奨一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩俊
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 真也
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-033144(JP,A)
【文献】特開2008-241112(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178027(WO,A1)
【文献】特開2008-106993(JP,A)
【文献】特開2009-041793(JP,A)
【文献】特開2005-098605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0300137(US,A1)
【文献】特開2003-090665(JP,A)
【文献】米国特許第05694788(US,A)
【文献】特開2016-161268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/06 - 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍温度帯に設定された第一貯蔵室と,前記第一貯蔵室の下方に配置されるとともに,冷蔵温度帯又は冷凍温度帯に設定可能な切替室である第二貯蔵室と,前記第一貯蔵室の上方に配置された第三貯蔵室と,前記第二貯蔵室を前記第一貯蔵室及び前記第三貯蔵室とは独立して開閉可能なドアと,送風機と,冷媒の減圧手段としてのキャピラリチューブとともに冷凍サイクルを構成し,前記第三貯蔵室の背部に配置され,前記第三貯蔵室に供給される空気を生成する第一蒸発器と前記第一蒸発器の下方かつ前記第二貯蔵室の略背部に配置された第二蒸発器とを含む蒸発器と,該蒸発器が収納されるともに、前記第一蒸発器を収納する第一蒸発器室と前記第二蒸発器を収納する第二蒸発器室とを含む蒸発器室と,前記送風機駆動時に前記第二蒸発器室から前記第一貯蔵室に空気を送る第一貯蔵室送風路と,前記第一貯蔵室に流入した空気が前記第二蒸発器室に戻る第一貯蔵室戻り風路と,前記送風機駆動時に前記第二蒸発器室から前記第二貯蔵室に空気を送る第二貯蔵室送風路と,前記第二貯蔵室に流入した空気が前記第二蒸発器室に戻る第二貯蔵室戻り風路とを備え,前記第一貯蔵室戻り風路と,前記第二貯蔵室戻り風路の一部を,前記第一貯蔵室からの戻り空気と,前記第二貯蔵室からの戻り空気の何れの空気も共通に通過する共通戻り風路とし,水平方向に延在する前記第二貯蔵室戻り風路の始端部である入口開口が冷蔵庫の背面方向に開口して形成され,前記第二蒸発器室の側方に設けた前記共通戻り風路の始端部において,前記第二貯蔵室戻り風路を流れる冷気は,鉛直方向に延在する前記第一貯蔵室戻り風路を流れる冷気に当該冷気の側方から合流することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1記載の冷蔵庫において,前記共通戻り風路を,前記第一貯蔵室戻り風路と,前記第二貯蔵室戻り風路の終端部に形成したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項記載の冷蔵庫において,前記共通戻り風路を略垂直に設けたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項に記載の冷蔵庫において,前記第一貯蔵室戻り風路の始端部を,前記第一貯蔵室の下端に設けたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の冷蔵庫において,前記共通戻り風路の始端部を,前記入口開口の法線方向投影領域内に配置するとともに,前記入口開口の近傍に逆流低減手段を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項に記載の冷蔵庫において,前記逆流低減手段として,前記入口開口を複数に分割したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
請求項に記載の冷蔵庫において,前記共通戻り風路の始端部を,前記入口開口の法線方向投影領域外に配置することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項8】
請求項に記載の冷蔵庫において,前記逆流低減手段として,前記第二貯蔵室戻り風路の流れを開閉制御するダンパを備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,家庭用の冷凍冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として,例えば特開2005-98605号公報(特許文献1)がある。特許文献1には,最上段に冷蔵室を設け、その下部に貯氷室、および、冷凍温度まで切替え可能な切替室を並列に設け、その下部に野菜室を設け、最下段に冷凍室を設け、各貯蔵室の戻り風路が蒸発器室内で合流する冷蔵庫が開示されている(例えば特許文献1の図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-98605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では,戻り風路を独立に構成しているために貯蔵室の数に応じて風路スペースが増大してしまう。
【0005】
本発明は,上記課題に鑑みてなされたものであり,上記構成を有する冷蔵庫において,風路をコンパクトするために集約し,スペース効率の高い冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
凍温度帯に設定された第一貯蔵室と,前記第一貯蔵室の下方に配置されるとともに,冷蔵温度帯又は冷凍温度帯に設定可能な切替室である第二貯蔵室と,前記第一貯蔵室の上方に配置された第三貯蔵室と,前記第二貯蔵室を前記第一貯蔵室及び前記第三貯蔵室とは独立して開閉可能なドアと,送風機と,冷媒の減圧手段としてのキャピラリチューブとともに冷凍サイクルを構成し,前記第三貯蔵室の背部に配置され,前記第三貯蔵室に供給される空気を生成する第一蒸発器と前記第一蒸発器の下方かつ前記第二貯蔵室の略背部に配置された第二蒸発器とを含む蒸発器と,該蒸発器が収納されるともに、前記第一蒸発器を収納する第一蒸発器室と前記第二蒸発器を収納する第二蒸発器室とを含む蒸発器室と,前記送風機駆動時に前記第二蒸発器室から前記第一貯蔵室に空気を送る第一貯蔵室送風路と,前記第一貯蔵室に流入した空気が前記第二蒸発器室に戻る第一貯蔵室戻り風路と,前記送風機駆動時に前記第二蒸発器室から前記第二貯蔵室に空気を送る第二貯蔵室送風路と,前記第二貯蔵室に流入した空気が前記第二蒸発器室に戻る第二貯蔵室戻り風路とを備え,前記第一貯蔵室戻り風路と,前記第二貯蔵室戻り風路の一部を,前記第一貯蔵室からの戻り空気と,前記第二貯蔵室からの戻り空気の何れの空気も共通に通過する共通戻り風路とし,水平方向に延在する前記第二貯蔵室戻り風路の始端部である入口開口が冷蔵庫の背面方向に開口して形成され,前記第二蒸発器室の側方に設けた前記共通戻り風路の始端部において,前記第二貯蔵室戻り風路を流れる冷気は,鉛直方向に延在する前記第一貯蔵室戻り風路を流れる冷気に当該冷気の側方から合流する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,冷凍温度帯の貯蔵室貯蔵室と,冷蔵温度帯の貯蔵室の戻り風路をコンパクト化することで,スペース効率の高い冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係わる冷蔵庫の正面図
図2図1のA-A断面図
図3】実施例1に係わるドア,容器を外した状態の冷蔵室の正面図
図4】(a)実施例1に係わるドア,容器を外した状態の製氷室,冷凍室,第一切替室及び第二切替室の正面図(b)実施例1に係わるドア,容器,吐出口を外した状態の製氷室,冷凍室,第一切替室及び第二切替室の正面図
図5】実施例1に係る第二ファンの斜視図
図6】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図
図7】実施例1に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図
図8図2のB-B断面からみた第一切替室の斜視図
図9】実施例1に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図
図10図2のB-B断面からみた第一切替室の斜視図
図11図2のC-C断面図
図12図4(a)中に示すD-D断面図
図13図4(a)中に示すE-E断面図
図14】実施例2に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図
図15】実施例3に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明の実施形態である。
【0010】
<実施例1>
本発明に関する冷蔵庫の実施例1について説明する。図1は実施例1に係わる冷蔵庫の正面図,図2図1のA-A断面図である。
【0011】
図1に示すように,冷蔵庫1の箱体10は,上方から冷蔵室2,左右に併設された製氷室3と冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6の順番で貯蔵室を有している。
【0012】
冷蔵庫1はそれぞれの貯蔵室の開口を開閉するドアを備えている。これらのドアは,冷蔵室2の開口を開閉する,左右に分割された回転式の冷蔵室ドア2a,2bと,製氷室3,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6の開口をそれぞれ開閉する引き出し式の製氷室ドア3a,冷凍室ドア4a,第一切替室ドア5a,第二切替室ドア6aである。これら複数のドアの内部材料は主にウレタンで構成されている。
【0013】
ドア2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部200を設けている。ドア2a,2bを冷蔵庫1に固定するために,ドアヒンジ(図示せず)が冷蔵室2上部及び下部に設けてあり,上部のドアヒンジはドアヒンジカバー16で覆われている。
【0014】
製氷室3及び冷凍室4は,基本的に庫内を冷凍温度(0℃未満)の例えば平均的に-18℃程度にした貯蔵室であり,冷蔵室2は庫内を冷蔵温度(0℃以上)の例えば平均的に4℃程度にした貯蔵室である。第一切替室5及び第二切替室6は,操作部200によって冷凍温度もしくは冷蔵温度に設定することができる貯蔵室であり,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵温度(平均的に4℃程度に維持)と,冷凍温度(平均的に-18℃程度に維持)の何れかを選択することができる。具体的には,第一切替室5と第二切替室6がともに冷凍温度に設定される「FF」モード,第一切替室5と第二切替室6がそれぞれ冷蔵温度と冷凍温度に設定される「RF」モード,第一切替室5と第二切替室6がそれぞれ冷凍温度と冷蔵温度に設定される「FR」モード,第一切替室5と第二切替室6がともに冷蔵温度に設定される「RR」モードの中から選択することができる。
【0015】
図2に示すように,冷蔵庫1は,鋼板製の外箱10aと合成樹脂製の内箱10bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)を充填して形成される箱体10により,庫外と庫内は隔てられて構成されている。箱体10には発泡断熱材に加えて,比較的熱伝導率の低い真空断熱材を外箱10aと内箱10bとの間に実装することで,食品収納容積を低下させることなく断熱性能を高めている。ここで,真空断熱材は,グラスウールやウレタン等の芯材を,外包材で包んで構成される。外包材はガスバリア性を確保するために金属層(例えばアルミニウム)を含む。また,真空断熱材は製造性から一般的に各面形状が平面で形成される。
【0016】
本実施例では,箱体10の背部,下部に真空断熱材25f,25gを,箱体10の両側部に真空断熱材25h(図8参照)を設けることで,冷蔵庫1の断熱性能を高めている。
【0017】
同様に,本実施例では,第一切替室ドア5a,第二切替室ドア6aに真空断熱材25d,25eを設けることで,冷蔵庫1の断熱性能を高めている。上記の断熱構成は,特に各切替室5,6を冷凍モードとし,庫外と切替室5,6との温度差が大きく,外気から侵入する熱量が多い場合に,省エネルギー性能を大きく向上できる。
【0018】
冷蔵室2と,製氷室3及び冷凍室4は断熱仕切壁28によって隔てられている。また,製氷室3及び冷凍室4と,第一切替室5は断熱仕切壁29によって隔てられ,第一切替室5と第二切替室6は断熱仕切壁30によって隔てられている。本実施例の冷蔵庫1では断熱仕切壁29の内部に真空断熱材25bを,断熱仕切壁30内部に真空断熱材25cを設けることで,貯蔵室間の熱移動を抑制して冷蔵庫1の断熱性能を高めている。
【0019】
さらに,本実施例の冷蔵庫1では,後述する第二蒸発器14b及びその周辺風路(第二蒸発器室8b,冷凍室風路12,及び冷凍室戻り風路12d)と,第一切替室5との間に断熱仕切壁27を設けることで,冷蔵庫1の断熱性能を高めている。上記の断熱構成は,特に第一切替室5を冷蔵温度とし,第二切替室6を冷凍温度とした「RFモード」の場合の冷蔵庫1の省エネルギー性能を向上できる。冷蔵温度帯の第一切替室5は,隣接する部屋が冷凍温度帯である上面(断熱仕切壁29),背面(断熱仕切壁27),さらに底面(断熱仕切壁30)から吸熱され,第一切替室5が過度に冷却されるため,冷蔵温度帯を保つためにヒータ(図示せず)での加熱が必要となる場合がある。本実施例の冷蔵庫では,断熱仕切壁29,30の内部に真空断熱材25を設け,第一切替室5の上面及び底面からの過度な吸熱を抑えることで,第一切替室5を冷蔵温度帯に保ちやすくなり,ヒータでの加熱を抑えて省エネルギー性能を向上している。
【0020】
冷蔵室ドア2a,2bの庫内側には複数のドアポケット33を設け,また棚34a,34b,34c,34dを設けることで,冷蔵室2内は複数の貯蔵スペースに区画されている。製氷室ドア3a,冷凍室ドア4a,第一切替室ドア5a,第二切替室ドア6aには,一体に引き出される製氷室容器3b,冷凍室容器4b,第一切替室容器5b,第二切替室容器6bを備えている。
【0021】
冷蔵室2の内部である,断熱仕切壁28の上方には間接冷却室36を設けている。間接冷却室36は,ドア36aと収納部36bが接触して密閉される構造としている。これにより,低温低湿な空気が間接冷却室36内の食品に直接入らないようにして,間接冷却室36内の食品の乾燥を抑制している。さらに本実施例の冷蔵庫1の間接冷却室36は,ドア36aを閉じると,例えばパッキングによりドア36aと収納部36bが隙間なく接触し,密閉される構造としている。加えて,間接冷却室36には,ポンプ(図示せず)が接続されており,ポンプを動作させることで,間接冷却室36内部を,例えば0.8気圧に減圧し,間接冷却室36内に設けた食品の酸化を抑制している。
【0022】
間接冷却室36は,断熱仕切壁28を介して製氷室3及び冷凍室4と隣接させており,製氷室3及び冷凍室4による吸熱により,冷蔵室2よりも低温な氷温モード(例えば約-3~0℃)にできるようにしている。また,断熱仕切り壁28内にはヒータ(図示せず)を設けており,ヒータを動作させることで冷蔵室2の温度に近いチルドモード(例えば約0~3℃)にも設定できる。なお,これらの運転モードは操作部200を操作することで切替えられる。
【0023】
冷蔵室2,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6の庫内背面側には,それぞれ冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,第一切替室温度センサ43,第二切替室温度センサ44を設け,第一蒸発器14aの上部には第一蒸発器温度センサ40a,第二蒸発器14bの上部には第二蒸発器温度センサ40bを設け,これらのセンサにより,冷蔵室2,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6,第一蒸発器14a,及び第二蒸発器14bの温度を検知している。また,冷蔵庫1の天井部のドアヒンジカバー16の内部には,外気温度センサ37と外気湿度センサ38を設け,外気(庫外空気)の温度と湿度を検知している。その他にも,ドアセンサ(図示せず)を設けることで,ドア2a,2b,3a,4a,5a,6aの開閉状態をそれぞれ検知している。
【0024】
冷蔵庫1の上部には,制御装置の一部であるCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31を配置している。また,制御基板31は,外気温度センサ37,外気湿度センサ38,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,第一切替室温度センサ43,第二切替室温度センサ44,第一蒸発器温度センサ40a,第二蒸発器温度センサ40b等と電気配線(図示せず)で接続されている。
【0025】
制御基板31では,各センサの出力値や操作部26の設定,ROMに予め記録されたプログラム等を基に,後述する圧縮機24や第一ファン9a,第二ファン9b,第一切替室ダンパ101,第二切替室ダンパ102,冷媒制御弁52の制御を行っている。
【0026】
図2に示すように,本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用ファンである第一ファン9aの形態として,遠心型ファンであるターボファンを略鉛直に配置している。ターボファンをはじめとする遠心型ファンでは,軸方向に吸込んだ流れを径方向に吹出す特性を有するため,本実施例では,第一ファン9a吸込口側(冷蔵庫の前面側)には空間が必要であるが,第一ファン9aの裏側に風路空間を設ける必要がない。そのため,第一ファン9a周辺の送風路の奥行き寸法を,第一蒸発器14aの奥行き寸法と同等あるいは同等以下にできるため,食品収納容積の拡大に寄与できる。
【0027】
図2に示すように,本実施例の冷蔵庫では,冷凍用ファンである第二ファン9bの形態として,冷蔵室と同様に遠心型ファンであるターボファンを略鉛直に配置している。ターボファンをはじめとする遠心型ファンでは,軸方向に吸込んだ流れを径方向に吹出す特性を有するため,本実施例では,第二ファン9b吸込側(冷蔵庫の背面側)には空間が必要であるが,第二ファン9b裏側に風路空間を設ける必要がない。そのため,第二ファン9b周辺の送風路の奥行き寸法を,第二蒸発器14bの奥行き寸法と同等あるいは同等以下にできるため,食品収納容積の拡大に寄与できる。
【0028】
図3は,実施例1に係るドア,容器を外した状態の冷蔵室の正面図である。図2および図3に示すように,第一蒸発器14aと熱交換して低温になった空気(冷気)は,第一蒸発器14aの上方に設けた冷蔵用ファンである第一ファン9aにより,第一ファン吐出風路11,冷蔵室吐出口11aを介して冷蔵室2に送風され,冷蔵室2内を冷却する。冷蔵室2に送風された空気は冷蔵室戻り口15a(図2参照)及び冷蔵室戻り口15b(図3参照)から第一蒸発器室8aへと戻り,再び第一蒸発器14aにより冷却される。
【0029】
図4(a)は実施例1に係るドア,容器を外した状態の製氷室,冷凍室,第一切替室及び第二切替室の正面図で,図4(b)は実施例1に係るドア,容器,吐出口を外した状態の製氷室,冷凍室,第一切替室及び第二切替室の正面図である。
【0030】
本実施例の冷蔵庫1は,図4(b)に示すように第一切替室5及び第二切替室6への送風量を制御,あるいは送風を遮断する手段として,第一切替室ダンパ101,第二切替室ダンパ102を備えている。第一切替室ダンパ101は第一切替室5の背部に実装され,第二切替室ダンパ102は第二切替室6の背部に実装されている。ここで,第一切替室ダンパ101の開口面積は6300mm(幅180mm×高さ35mm),第二切替室ダンパ102の開口面積は5200mm(幅80mm×高さ65mm)である。
【0031】
図2に示すように,第一切替室ダンパ101は冷蔵庫の背面側に向かって開口するように,言い換えると,第一切替室ダンパ101の稼働領域を冷蔵庫の背面側になるように構成されている。このような構成とすることで,第一切替室ダンパ101がファンの昇圧により第一切替室5側に加圧された場合に,ダンパとその枠との間の隙間が狭まるようになっている。上記の断熱構成は,特に第一切替室5を冷蔵温度とし,第二切替室6を冷凍温度とした「RFモード」の場合の冷蔵庫1の省エネルギー性能を向上できる。冷蔵温度帯の第一切替室5は,隣接する部屋が冷凍温度帯である上面(断熱仕切壁29),背面(断熱仕切壁27),さらに底面(断熱仕切壁30)から吸熱され,第一切替室5が過度に冷却されるため,冷蔵温度帯を保つためにヒータ(図示せず)での加熱が必要となる場合がある。本実施例の冷蔵庫では,第一切替室ダンパ101を閉じた状態で隙間ができにくい構成であるため,第二ファン吐出風路12から第一切替室へ冷気が漏れにくく,第一切替室5を冷蔵温度帯に保ちやすくなり,ヒータでの加熱を抑えて省エネルギー性能を向上している。
【0032】
図2及び図4(b)に示すように,第二蒸発器14bは第一切替室5,第二切替室6の略背部の第二蒸発器室8b内に設けてある。第二蒸発器14bと熱交換して低温になった空気は,第二蒸発器14bの上方に設けた第二ファン9bを駆動することにより,第一切替室ダンパ101,第二切替室ダンパ102の開閉状態に依らず第二ファン吐出風路12,冷凍室風路130,冷凍室吐出口120a,120bを介して製氷室3及び冷凍室4に送られ,製氷室3の製氷皿(図示なし)内の水,容器3b内の氷,冷凍室4内の容器4bに収納された食品等を冷却する。製氷室3及び冷凍室4を冷却した空気は,冷凍室戻り口120cより冷凍室戻り風路120dを介して,第二蒸発器室8bに戻り,再び第二蒸発器14bと熱交換する。
【0033】
図4(a)(b)に示すように,第一切替室ダンパ101が開放状態に制御されている場合は,第二ファン9bにより昇圧された空気は,第二ファン吐出風路12,第一切替室風路140,第一切替室ダンパ101,第一切替室吐出口111aを介して,第一切替室5に設けた第一切替室容器5b内に送られて,第一切替室容器5b内の食品を冷却する。第一切替室5を冷却した空気は,第一切替室戻り口111b,第一切替室戻り口111c,第一切替室戻り風路111d(図示なし),冷凍室戻り風路120cを流れて,第二蒸発器室8bに戻り,再び第二蒸発器14bと熱交換する。
【0034】
第二切替室ダンパ102が開放状態に制御されている場合は,第二ファン9bにより昇圧された空気は,第二ファン吐出風路12,第二切替室風路150,第二切替室ダンパ102,第二切替室吐出口112aを介して,第二切替室6に設けた第二切替室容器6b内に送られて,第二切替室容器6b内の食品を冷却する。第二切替室6を冷却した空気は,第二切替室戻り口112b,第二切替室戻り風路112cを流れて,第二蒸発器室8bに戻り,再び第二蒸発器14bと熱交換する。なお,低温の蒸発器が収納される蒸発器室(本実施例では第二蒸発器室8b),蒸発器と熱交換して低温になった空気が流れる風路(本実施例では,第二ファン吐出風路12,冷凍室風路130,第一切替室風路140,第二切替室風路150),冷凍温度に維持される貯蔵室(本実施例では製氷室3,冷凍室4,冷凍温度に設定された場合の第一切替室5,冷凍温度に設定された場合の第二切替室6),冷凍温度に維持される貯蔵室からの戻り風路(本実施例では,冷凍室戻り風路120d,冷凍温度に設定された場合の第二切替室戻り風路112c)は,冷凍温度になる空間であるため,以下では冷凍温度空間と呼ぶ。
【0035】
図5は実施例1に係る第二ファンの斜視図である。図5に示すように,第二ファン9bの形態は,遠心型ファンであるターボファン(後向きファン)とし,翼枚数は10枚としている。ターボファンは高静圧タイプの送風機のため,冷蔵庫で一般的に用いられるプロペラファンと比較して高静圧(風路抵抗が大きい)状態になっても風量が低下しにくい特性を持っている。本実施例では,第一切替室ダンパ101,第二切替室ダンパ102といった複数のダンパを有し,ダンパの開閉により運転モードを切替えるため,前記ダンパの開閉状態によって風路抵抗が大きくなる異なる。このような運転条件の変化がある場合であっても,風量を極端に低下させることなく,安定した冷却が可能である。
【0036】
また,ターボファンは,他の遠心型ファン(例えばシロッコファン,ラジアルファン)よりも翼枚数が比較的少なく設計できる。これは,風路として使える有効な面積が広いため,狭い吸込開口近傍で霜が成長した場合であっても風量が極端に低下しにくくなることを意味しており,言い換えると,冷却能力の低下が起きにくくなるため,冷蔵庫を長時間運転した場合の風量(冷却能力)を向上できる。
【0037】
図6は,実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。本実施例の冷蔵庫1では,圧縮機24,冷媒の放熱を行う放熱手段である庫外放熱器50aと壁面放熱配管50b,仕切り壁28,29,30の前面部への結露を抑制する結露防止配管50c,冷媒を減圧させる減圧手段である冷蔵用キャピラリチューブ53aと冷凍用キャピラリチューブ53b,冷媒と庫内の空気を熱交換させて,庫内の熱を吸熱する第一蒸発器14aと第二蒸発器14bを備え,これらにより庫内を冷却している。また,冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ51と,液冷媒が圧縮機24に流入するのを防止する気液分離器54a,54bを備え,さらに冷媒流路を制御する三方弁52,逆止弁56,冷媒流を接続する冷媒合流部55も備えており,これらを冷媒配管59により接続することで冷凍サイクルを構成している。
【0038】
なお本実施例の冷蔵庫1は,冷媒にイソブタンを用いている。また,本実施例の圧縮機24はインバータを備えて回転速度を変えることができる。
【0039】
三方弁52は,52a,52bで示す2つの流出口を備え,流出口52a側に冷媒を流す冷蔵モードと,流出口52b側に冷媒を流す冷凍モードを備え,これらを切換えできる部材である。また,本実施例の三方弁52は,流出口52aと流出口52bの何れも冷媒が流れないようにする全閉,また何れも冷媒が流れるようにする全開のモードも備え,これらにも切換え可能である。
【0040】
本実施例の冷蔵庫1では,冷媒は以下のように流れる。圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露防止配管50c,ドライヤ51の順に流れ,三方弁52に至る。三方弁52の流出口52aは冷媒配管を介して冷蔵用キャピラリチューブ53aと接続され,流出口52bは冷媒配管を介して冷凍用キャピラリチューブ53bと接続されている。
【0041】
冷蔵室2を冷却する場合は,流出口52a側に冷媒が流れるようにする。流出口52aから流出した冷媒は,冷蔵用キャピラリチューブ53a,第一蒸発器14a,気液分離機54a,冷媒合流部55の順に流れた後,圧縮機24に戻る。冷蔵用キャピラリチューブ53aで低圧低温になった冷媒が第一蒸発器14aを流れることで第一蒸発器14aが低温となり,この第一蒸発器14bにより冷却された空気を第一ファン9a(図2参照)で送風することで冷蔵室2を冷却する。
【0042】
製氷室3,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6を冷却する際は,流出口52b側に冷媒が流れるようにする。流出口52bから流出した冷媒は,冷凍用キャピラリチューブ53b,第二蒸発器14b,気液分離機54b,逆止弁56,冷媒合流部55の順に流れた後,圧縮機24に戻る。逆止弁56は気液分離機54bから冷媒合流部55側には冷媒が流れ,冷媒合流部55から気液分離機54b側へは流れないように配設している。冷凍用キャピラリチューブ53bで低圧低温になった冷媒が第二蒸発器14bを流れることで第二蒸発器14bが低温となり,第二蒸発器14bにより冷却された空気を第二ファン9b(図2参照)で送風することで製氷室3,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6を冷却する。
【0043】
本実施例の冷蔵庫1では,冷蔵室2は第一蒸発器14aを用いて冷却し,製氷室3,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6は第二蒸発器14bを用いて冷却する構成としているが,このような構成とすることで,第一蒸発器14aと第二蒸発器14bのそれぞれに異なる蒸発器温度を設定できる。具体的には,冷凍温度帯である,又は冷凍温度帯に設定可能な製氷室3,冷凍室4,第一切替室5,第二切替室6を冷却する第二蒸発器14bに冷媒を流す際は,これらの貯蔵室よりも低温な蒸発器温度(例えば-25℃)とする。一方,冷蔵温度帯の冷蔵室2を冷却する第一蒸発器14aに冷媒を流す際は,冷媒の蒸発器温度を比較的高くする(例えば-10℃)。一般的に,蒸発器の温度が高いほど,冷凍サイクルの冷却効率を高めることができ,省エネルギー性能向上に有効である。また,蒸発器の温度が高いほど,空気が蒸発器を通過する際の空気中の水分の着霜が抑えられ,すなわち空気の除湿が抑えられ,庫内を高湿に保つことができる。従って,第一蒸発器14aの温度が高い状態で冷蔵室2を冷却することで,冷凍温度帯の貯蔵室と共通の蒸発器で冷却する場合に比べ,冷蔵室2冷却時の省エネルギー性能を高められるとともに,冷蔵室2内を高湿に保つことができる。
【0044】
また,冷蔵室2のみを冷却する第一蒸発器14aと,その他の貯蔵室を冷却する第二蒸発器14bとを分けることで,第一蒸発器14aの除霜方式をオフサイクル除霜とし,さらなる省エネルギー性能向上と,冷蔵室2の高湿化を図っている。
【0045】
まず,第二蒸発器14bの下部には,第二蒸発器14bを加熱するラジアントヒータ21を設けている。ラジアントヒータ21は,例えば50W~200Wの電気ヒータで,本実施例では150Wのとしている。第二蒸発器14bの除霜時に発生した除霜水(融解水)は第二蒸発器室8bの下部の第二トイ23bから排水管26を介して圧縮機24の上部に設けた第二蒸発皿32に排出される。
【0046】
一方,第一蒸発器14aの除霜にはオフサイクル除霜方式を採用しており,第一蒸発器14aに冷媒を流さない状態で,第一ファン9aを駆動させる。第一ファン9aにより,冷蔵室2の空気が冷蔵室戻り口15a,15bを介して第一蒸発器14aに流れ(図3参照),霜の融点よりも高温の冷蔵温度(0℃以上)の冷蔵室2の空気により第一蒸発器14aの霜を加熱して除霜する。第一蒸発器14aの除霜時に発生した除霜水は,第一蒸発器室8aの下部に設けた第一トイ23a(図2参照)から,排水管(図示なし)を介して機械室39に設けた第一蒸発皿(図示なし)に排出される。
【0047】
オフサイクル除霜方式を用いると,電気ヒータ(約150W)を用いることなくファン(0.5~3W)のみで第一蒸発器14aの除霜が行えるため,電気ヒータを用いる除霜方式に比べ消費電力を抑えられる。また,オフサイクル除霜中に通過する空気(約4℃)は,低温な第一蒸発器14a及び第一蒸発器14aに付着した霜(約0℃)により冷却されるため,第一蒸発器14aを除霜すると同時に,冷蔵室2を冷却できる。従って省エネルギー性能の高い除霜方式である。さらに,オフサイクル除霜中は第一蒸発器14aの温度が高いため,第一蒸発器14aを通過する空気の除湿が抑えられ,或いは加湿されるため,冷蔵室2を高湿に保つ効果をさらに高めることができる。
【0048】
このように,冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室2を冷却する第一蒸発器14aを備え,冷蔵室2冷却時の蒸発器温度を高め,また,オフサイクル除霜方式を採用することで,省エネルギー性能を高め,また冷蔵室2を高湿にしている。
【0049】
図7は,実施例1に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「FR」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を開いた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)を示している。また,第一切替室風路140と第一切替室吐出口111aを省略して描いている。
【0050】
図7に示すように,冷凍室内の冷気は,冷凍室戻り風路120dを介して下方向に向かって流れる。同様に,第一切替室内の冷気は,第一切替室戻り風路111dを介して下方向に向かって流れる。冷凍室戻り風路120dと第一切替室戻り風路111dとをそれぞれ流れる冷気は,共通戻り風路160にて合流して,第二蒸発器室8bへ向かう。本実施例のように,共通戻り風路160を備えることで,冷凍室戻り風路120dと第一切替室戻り風路111dを独立に形成した場合に比べてスペース効率を高めることができる。
【0051】
一方で,2つの貯蔵室からの戻り冷気が共通に流れる風路に,2つの貯蔵室から同時に戻り冷気が流れる場合,,,冷気の合流により風路抵抗が増大し,循環風量が低下することで冷却性能が低下するという課題が生じる場合があった。そこで,本実施例では,上記の課題が生じにくい構成としている。
【0052】
図7に示すように,共通戻り風路160を,冷凍室戻り風路120dと第一切替室戻り風路111dの終端部に形成している。このような構成とすることで,共通戻り風路160の長さを短くして,風路抵抗が増大する影響を小さくできる。
【0053】
図8は,図2のC-C断面図である。また,図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「FR」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を開いた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)を示している。
【0054】
図8に示すように,冷凍室3を第一切替室の上部に設けるとともに,第二蒸発器室8bを第一切替室の略背部に設け,共通戻り風路160を第二蒸発器室8bの側方に設けている。このように風路を実装することで,共通戻り風路160と冷蔵室戻り風路111dの経路を短く設計できるため,冷蔵庫のスペース効率を高められる。
【0055】
図9は,実施例1に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「RF」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を閉じた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)と,第一切替室5内で生成される自然対流の冷気流れ方向(一点鎖線)を示している。また,第一切替室風路140と第一切替室吐出口111aを省略して描いている。
【0056】
図9に示すように,第一切替室戻り風路111d近傍では,強制対流の主流203が第一切替室戻り風路11dに衝突することで,強制対流で生じる渦201aが時計回り方向に生成される。第一切替室5内では,外周を沿うように,自然対流の流れ202が時計回り方向に生成される。また,強制対流で生じる渦201aと自然対流の流れ202との干渉により,冷蔵温度帯の第一切替室5から冷凍温度帯の冷凍室3の戻り冷気に熱が輸送される。
【0057】
図9に示すように,共通戻り風路160の始端と終端とを結んだ直線が略垂直となるように構成し,共通戻り風路160を流れる冷気の向きが下方向となるように構成している。このように構成することで,強制対流で生じる渦201aと自然対流の流れ202の流れ方向が同一となり,2つの渦が衝突する箇所においては流れ方向が逆になるため,冷凍室3の冷気(共通戻り風路160の冷気)が第一切替室5に逆流しにくくなり,これにより第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い信頼性の高い冷蔵庫となる。
【0058】
また,本実施例の冷蔵庫は,「RF」モードにおいて,第一切替室5の上面,下面,背面が冷凍温度となるため,第一切替室5が冷えすぎるといった事態が生じやすく,逆流抑制の効果が顕著に現れる。
【0059】
さらに,本実施例の冷蔵庫は,第一切替室5を冷蔵で使用する場合だけでなく,冷凍で使用することを想定するために,冷凍で使用する場合の第一切替室5に流れる風量を確保するために,第一切替室戻り風路111dと第一切替室戻り口111b,111cなどの開口を冷蔵で使用する場合に比べて大きくするする必要がある。そのため,冷凍室3から戻る冷気(共通戻り風路160の冷気)の逆流により,第一切替室5が冷えすぎるといった事態が生じやすく,逆流抑制の効果が顕著に現れる。
【0060】
図9に示すように,第一切替室5では自然対流が生成されるため,上部が比較的高温で,下部が比較的低温な温度分布が形成される。また,本実施例の第一切替室戻り口111bは,第一切替室5の下部に備えられている。これにより,強制対流で生じる渦201aと自然対流の流れ202との干渉部の温度差が小さくなり,これにより冷蔵温度帯の第一切替室5から冷凍温度帯の冷凍室3の戻り冷気に輸送される熱量を比較的小さくなり,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0061】
図10は,図2のB-B断面からみた第一切替室の斜視図である。図8に示すように,第一切替室5には,第一切替室戻り口111bと第一切替室戻り口111cとを備えている。戻り口を複数備えることで,合計開口面積が略同一な戻り口を1つとした場合に比べて,強制対流で生じる渦201aの直径を小さくすることができるため,自然対流の流れ202との熱交換が抑えられ,冷蔵温度帯の第一切替室5から冷凍温度帯の冷凍室3の戻り冷気に輸送される熱量を比較的小さくなり,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0062】
図11は,図2のC-C断面図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「RF」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を閉じた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)と,第一切替室5内で生成される自然対流の冷気流れ方向(一点鎖線)を示している。
【0063】
図10図11に示すように,第一切替室戻り口111bと第一切替室戻り口111cには,第一切替室戻り風路111dを分断するスリット111eを備えている。これにより,強制対流で生じる渦201aを複数に分断して渦直径を小さくすることができるため(図9参照),強制対流で生じる渦201aと自然対流の流れ202との熱交換が抑えられ,冷蔵温度帯の第一切替室5から冷凍温度帯の冷凍室3の戻り冷気に輸送される熱量を比較的小さくなり,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0064】
図11に示すように,第一切替室戻り口111cにはスリット111eを備え,スリット111eの第一切替室側(冷蔵庫の右側)が,冷凍室戻り風路120d側より上方となるように傾斜している。これにより,冷凍室3から第一切替室に流れる流路の風路抵抗が増大し,冷凍室3からの戻り冷気(共通戻り風路160の冷気)が第一切替室5に逆流しにくくなり,これにより第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0065】
図11に示すように,第二切替室ダンパ102の左右方向の幅寸法よりも上下方向の高さ寸法が大きくなるよう構成している。これにより,限られた左右方向の風路幅寸法内で,冷却器の幅寸法を拡大することができるため,冷蔵庫の冷却性能を増大できる。
【0066】
図12は,図4(a)中に示すD-D断面図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「RF」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を閉じた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)と,第一切替室5内で生成される自然対流の冷気流れ方向(一点鎖線)を示している。
【0067】
図12に示すように,第一切替室の戻り風路111dは,冷凍室戻り風路120dから第一切替室5(冷蔵庫の扉側)に向かって高さ位置が高くなるように構成されている。これにより,冷凍室3から第一切替室に流れる流路の風路抵抗が増大し,冷凍室3からの戻り冷気(共通戻り風路160の冷気)が第一切替室5に逆流しにくくなり,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0068】
図12に示すように,第一切替室の戻り風路111dの底面は,断熱仕切壁30により段差を有している。そのため,第一切替室の戻り風路111dでは強制対流で生じる渦201aだけでなく,強制対流で生じる第二渦201bが生成される。これにより,強制対流の主流203と自然対流の流れ202は,複数の渦を介するため熱を輸送しにくくなり,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0069】
図13は,図4(a)中に示すE-E断面図である。図13に示すように,第二切替室6の後方上部に第二切替室戻り口112bが備えられており,第二切替室戻り口112bから流入した空気は,第二切替室戻り口112bから下方に延伸する第二切替室戻り風路112cを流れて,第二切替室戻り口112bより高さ位置が低く形成された第二蒸発器室流入口112dに至り,第二蒸発器室8bに流れ込むように構成されている。このように第二切替室戻り口112bと,第二蒸発器室流入口112dの間に,下方に延伸する風路を備えることで,第二切替室ダンパを閉じた際に,第二蒸発器室8b内の低温冷気が第二切替室6内に流入し難くすることがでる。これにより,特に第二切替室6が冷蔵温度に設定された際に,第二切替室6が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0070】
<実施例2>
次に本発明の実施例2に係る冷蔵庫について,図14を用いて説明する。実施例2は,実施例1と比べて第一切替室5の戻り風路構成が異なっている。なお,その他の構成は同様であり,重複する説明は省略する。
図14は,実施例2に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「RF」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を閉じた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)と,第一切替室5内で生成される自然対流の冷気流れ方向(一点鎖線)を示している。また,第一切替室風路140と第一切替室吐出口111aを省略して描いている。
【0071】
図14に示すように,第一切替室戻り風路111dには逆流低減手段として第一切替室戻りダンパ103を設けている。これにより,共通戻り風路160から第一切替室5への冷気の逆流を抑えられ,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0072】
<実施例3>
次に本発明の実施例2に係る冷蔵庫について,図15を用いて説明する。実施例3は,実施例1と比べて第一切替室5の戻り風路構成が異なっている。なお,その他の構成は同様であり,重複する説明は省略する。
図15は,実施例3に係る冷凍室と第一切替室の風路構成を示す図である。図中における矢印は,冷蔵庫1の設定を「RF」モードとした場合の,第一切替室ダンパ101を閉じた状態における強制対流の冷気流れ方向(点線)と,第一切替室5内で生成される自然対流の冷気流れ方向(一点鎖線)を示している。また,第一切替室風路140と第一切替室吐出口111aを省略して描いている。
【0073】
図15に示すように共通戻り風路160の始端部は,第一切替室5の戻り風路である第一切替室戻り風路111dの始端部となる第一切替室戻り口111bの開口の後方投影領域(戻り口の法線方向投影領域)から寸法H(本実施例ではH=50mm)だけ下方に共通戻り風路160の始端部を配置している。このように戻り口の法線方向投影領域から共通戻り風路160の始端部が外れるように配置することで,維持される温度帯が冷蔵温度帯と冷凍温度帯に貯蔵室に関して,一方の貯蔵室からの戻り冷気が,他方の貯蔵室に熱影響を及ぼし難くなるため,他方の貯蔵室が冷え過ぎるといった事態が生じ難い信頼性が高い冷蔵庫となる。また,図15に示すように,第一切替室戻り風路111dの終端部と,冷凍室戻り風路120dの終端部が略並行するように構成されている。これにより,冷凍室戻り風路120dから第一切替室戻り風路111dに逆流するためには流れの向きを180度偏向する必要があるため,共通戻り風路160から第一切替室5への冷気の逆流を抑えられ,第一切替室5が冷え過ぎるといった事態が生じ難い冷蔵庫となる。
【0074】
以上が,本実施の形態例を示す実施例である。なお,本発明は前述した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
2a,2b 冷蔵室ドア
3 製氷室
3a 製氷室ドア
3b 製氷室容器
3c 製氷皿
4 冷凍室
4a 冷凍室ドア
4b 冷凍室容器
5 第一切替室
5a 第一切替室ドア
5b 第一切替室容器
6 第二切替室
6a 第二切替室ドア
6b 第二切替室容器
8a 第一蒸発器室(冷蔵用蒸発器室)
8b 第二蒸発器室(冷凍用蒸発器室)
9a 第一ファン
9b 第二ファン
10 断熱箱体
10a 外箱
10b 内箱
11 第一ファン吐出風路
11a 冷蔵室吐出口
12 第二ファン吐出風路
14a 第一蒸発器
14b 第二蒸発器
15a,b 冷蔵室戻り口
16 ヒンジカバー
21 ラジアントヒータ
23a 第一トイ
23b 第二トイ
24 圧縮機
25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h 真空断熱材
26 排水管
27,28,29,30 断熱仕切壁
31 制御基板
32a 第一蒸発皿
32b 第二蒸発皿
34a 冷蔵室棚最上段
34b 冷蔵室棚2段目
34c 冷蔵室棚3段目
34d 冷蔵室棚最下段
35 第一間接冷却室
36 第二間接冷却室
37 製氷タンク
39 機械室
40a 第一蒸発器温度センサ
40b 第二蒸発器温度センサ
41 冷蔵室温度センサ
42 冷凍室温度センサ
43 第一切替室温度センサ
44 第二切替室温度センサ
45 トイ温度センサ
50a,50b 放熱器
51 ドライヤ
52 三方弁(冷媒制御手段)
53a 冷蔵用キャピラリチューブ(減圧手段)
53b 冷凍用キャピラリチューブ(減圧手段)
54a 冷蔵用気液分離器
54b 冷凍用気液分離器
55 冷媒合流部
56 逆止弁
59 冷媒配管
101 第一切替室ダンパ
102 第二切替室ダンパ
103 第一切替室戻りダンパ
111a 第一切替室吐出口
111b,111c 第一切替室戻り口
111d 第一切替室戻り風路
112a 第二切替室吐出口
112b 第二切替室戻り口
112c 第二切替室戻り風路
112d 第二蒸発器室流入口
120c 冷凍室戻り口
120d 冷凍室戻り風路
130 冷凍室風路
140 第一切替室風路
150 第二切替室風路
200 操作部
201a 強制対流で生じる渦201
201b 強制対流で生じる第二渦201
202 自然対流の流れ
203 強制対流の主流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15