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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20230209BHJP
【FI】
F24D3/00 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019019304
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125880
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和之
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-269733(JP,A)
【文献】特開昭64-059412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を加熱する熱交換器を内部に有する熱源機と、
熱媒の熱を利用して暖房する暖房器と、
熱源機内部の熱交換器と暖房器とを接続する熱媒循環路と、
熱媒循環路内の熱媒を循環させるポンプと、
熱源機内部の熱媒循環路上に設けられ、暖房器に供給される熱媒の温度を検出するための第1温度センサと、
熱源機外部の熱媒循環路上に設けられ、暖房器を通過した後の熱媒の温度を検出するための第2温度センサと、
前記第2温度センサの検出値に応じて暖房運転を実行する制御装置とを備え、
前記第2温度センサは、異なる特性値を有する複数種類の温度センサの中から1つを選択して取り付けられるものであり、
前記制御装置は、第2温度センサとして選択可能な各温度センサの特性値と温度との相関関係を示す温度特性データ群と、第2温度センサとして選択可能な各温度センサに対応した複数の設定モードとを有し、設定モードが自動又は手動で切り替え可能に構成されており、
前記制御装置は、更に、設定された設定モードが取り付けられている第2温度センサに適合するか否かを判断する設定モード適合判断工程が実行可能に構成され、
前記設定モード適合判断工程は、熱源機を非加熱状態でポンプを駆動させたときの第1温度センサの検出値と第2温度センサの検出値との整合性に基づいて判断する構成を備えている暖房システム。
【請求項2】
請求項に記載の暖房システムにおいて、
前記制御装置は、熱源機が非加熱状態となって所定時間経過している場合に前記設定モード適合判断工程の実行を許可する構成を有する暖房システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の暖房システムにおいて、
前記制御装置は、更に、設定モード適合判断工程において設定された設定モードが取り付けられた第2温度センサに適合しないと判断した場合、設定モードを自動で他の設定モードに変更する構成を備えている暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機により加熱した熱媒を暖房器に循環供給して暖房を行う暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記暖房システムとして、暖房器を通過した後の熱媒温度を検出するための温度センサを熱源機の熱交換器と暖房器とを接続する熱媒循環路の戻り管に設け、この温度センサの検出温度に応じて暖房システムの温度制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-47374号公報
【文献】特開平11-22984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記温度センサは、暖房システムの温度制御に用いられるものであるため、例えば、暖房器が複数設けられた場合にも暖房器ごとに適切に温度制御が行われるように、既定の温度センサが、熱源機外部の戻り管(暖房器が複数台設けられている場合には暖房器ごとの熱媒温度が検出できる位置)に設けられている。しかしながら、暖房システムの施工先等のユーザによっては、施工上の理由から、既定の温度センサと特性値が異なる別の温度センサを使用したいとの要望があるが、従来の暖房システムでは、ユーザの要望に十分応えられず、融通性に劣っていた。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、特性値の異なる複数種類の温度センサの中から1つを使用する場合、取り付けられている温度センサによって正常に使用可能として融通性の高い暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る暖房システムは、
熱媒を加熱する熱交換器を内部に有する熱源機と、
熱媒の熱を利用して暖房する暖房器と、
熱源機内部の熱交換器と暖房器とを接続する熱媒循環路と、
熱媒循環路内の熱媒を循環させるポンプと、
熱源機内部の熱媒循環路上に設けられ、暖房器に供給される熱媒の温度を検出するための第1温度センサと、
熱源機外部の熱媒循環路上に設けられ、暖房器を通過した後の熱媒の温度を検出するための第2温度センサと、
前記第2温度センサの検出値に応じて暖房運転を実行する制御装置とを備え、
前記第2温度センサは、異なる特性値を有する複数種類の温度センサの中から1つを選択して取り付けられるものであり、
前記制御装置は、第2温度センサとして選択可能な各温度センサの特性値と温度との相関関係を示す温度特性データ群と、第2温度センサとして選択可能な各温度センサに対応した複数の設定モードとを有し、設定モードが自動又は手動で切り替え可能に構成されており、
前記制御装置は、更に、設定された設定モードが取り付けられている第2温度センサに適合するか否かを判断する設定モード適合判断工程が実行可能に構成され、
前記設定モード適合判断工程は、熱源機を非加熱状態でポンプを駆動させたときの第1温度センサの検出値と第2温度センサの検出値との整合性に基づいて判断する構成を備えている
【0007】
この構成によれば、前記設定モードにより、第2温度センサとして取り付けられる温度センサと対応する温度特性データに基づいて熱媒温度の検出が行われる。従って、第2温度センサとして特性値の異なる複数種類の温度センサの中から1つを選択して使用する場合に、使用する温度センサによって実際の熱媒温度を正しく認識することができ、暖房システムを正常に使用することができる。このように、第2温度センサとして使用する温度センサに対応して設定モードを切り替え可能に構成することにより、既定の温度センサとは別の温度センサの使用をも可能となり、融通性に優れ、ユーザの要望にも応え得るものとなる。
【0008】
また、本発明においては、設定モード適合判断工程を実行可能な構成を有するので、取り付けられた第2温度センサに対応した設定モードの選択間違いを確実に発見することができる。さらには、前記設定モード適合判断工程を実行する際、熱源機を非加熱状態でポンプを駆動させて熱媒循環路内に熱媒を循環させることにより、熱媒循環路内の熱媒温度は熱媒循環路全長で略一定温度となり、第1温度センサ取付位置の熱媒温度と、第2温度センサ取付位置の熱媒温度とは、略同一の値となる。第1温度センサは、予め定められた既定の温度センサが使用されるため、実際の熱媒温度を正しく認識している。従って、その状態において、第1温度センサの検出値と、第2温度センサの検出値とが整合しない場合は、設定された設定モードが、取り付けられた第2温度センサの特性値に対応した設定モードに設定されていないと判断できる。その結果、取り付けられた第2温度センサに対応した設定モードが設定されていないと判断された場合には、例えば、使用者に報知して手動にて第2温度センサに対応する設定モードへの変更を促したり、自動的に第2温度センサに対応する設定モードへの変更を行ったりするなどの対策をとることが可能となり、異常状態での暖房システムの使用を防止できる。
【0009】
前記制御装置は、熱源機が非加熱状態となって所定時間経過している場合に前記設定モード適合判断工程の実行を許可する構成を有することが好ましい。この場合、熱源機が非加熱状態となって所定時間経過することにより、熱媒循環路内の熱媒温度は、雰囲気温度と略同等となり、熱媒を循環させた場合にも暖房器での放熱はほとんどなくなる。従って、第1温度センサ取付位置と第2温度センサ取付位置とで実際の熱媒温度の差は、より少なくなる。よって、設定モード適合判断工程における判断精度が更に向上する。
【0010】
前記制御装置は、更に、設定モード適合判断工程において設定された設定モードが取り付けられた第2温度センサに適合しないと判断した場合、設定モードを自動で他の設定モードに変更する構成を備えていることが好ましい。この場合、設定モードが、取り付けられた第2温度センサに対応するまで自動的に設定モードの変更を行うことができる。従って、暖房システムの使用に際して利便性が高くなり、異常状態での暖房システムの使用を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の暖房システムの全体構成を示す模式図である。
図2】温度特性データ群の例を示すデータ表である。
図3】実施形態の暖房システムにおいて設定モード適合判断工程の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態の暖房システムにおいて設定モード適合判断工程の流れの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態の暖房システム1は、温水を加熱する熱交換器11を内部に有する熱源機10と、温水の熱を利用して暖房する床暖房パネル(暖房器)2と、熱源機10内部の熱交換器11と床暖房パネル2とを接続する温水循環路(熱媒循環路)3と、温水循環路3内の温水を循環させるポンプ4と、熱源機10内部の温水循環路3上に設けられる第1温度センサ5と、熱源機10外部の温水循環路3上に設けられる第2温度センサ6と、制御装置7とを備えている。なお、この暖房システム1では、温水(水)を熱媒として使用するが、熱媒は不凍液等の媒体を使用してもよい。
【0013】
熱源機10は、熱交換器11と、熱交換器11を加熱するガス燃焼装置12とを備え、熱交換器11には温水循環路3が接続されている。これにより、温水循環路3を循環する温水が熱交換器11により加熱される。なお、熱源機10の加熱手段は、ガス燃焼装置12に限らず、ヒートポンプ式、電気加熱式などその他の加熱手段を使用することができる。
【0014】
床暖房パネル2は、床下に設置される暖房配管21を備え、この暖房配管21に温水循環路3が接続されている。温水循環路3から暖房配管21に温水が供給されて流通されることにより温水の熱を放熱して床や室内等を暖める。なお、床暖房パネル2は暖房器を構成するものであるが、暖房器は温風を吹き出す温風暖房器等であってもよい。また、この暖房システム1では、1台の床暖房パネル2を備えるものであるが、複数台の床暖房パネル2を備えるものや、床暖房パネル(低温暖房端末)2と温風暖房器(高温暖房端末)とを備えるもの等であってもよい。
【0015】
温水循環路3は、往き管31と戻り管32とを有し、往き管31を通して熱源機10の熱交換器11で加熱された温水が床暖房パネル2へ供給され、戻り管32を通して床暖房パネル2で放熱された温水が熱源機10の熱交換器11へ戻される。このように温水循環路3は、熱源機10の熱交換器11と床暖房パネル2との間で温水の循環経路を形成する。
【0016】
ポンプ4は、熱源機10内における温水循環路3の戻り管32に設けられている。ポンプ4を駆動することで温水循環路3内の温水を熱源機10と床暖房パネル2との間で循環させる。
【0017】
第1温度センサ5は、熱源機10内部における温水循環路3の往き管31に設けられ、熱源機10で加熱されて床暖房パネル2に供給される温水の温度を検出する。第2温度センサ6は、熱源機10外部における温水循環路3の戻り管32に設けられ、床暖房パネル2を通過した後の熱源機10に戻される温水の温度を検出する。これら第1温度センサ5、第2温度センサ6は、例えば、サーミスタ、熱電対等が使用される。
【0018】
制御装置7は、熱源機10内に設けられ、暖房システム1の運転制御を行うものであり、マイコン等のコンピュータで構成され、各種のプログラム、演算部、記憶部等を備えている。この制御装置7により、暖房システム1による暖房運転の際、ポンプ4を駆動して温水循環路3内の温水を循環させ、熱源機10を加熱状態とし温水循環路3内の温水を加熱する。そして、第1温度センサ5によって床暖房パネル2に供給される温水の温度を検出し、この検出温度に基づいて熱源機10を加熱制御し、一定温度(例えば、40℃)の温水が温水循環路3の往き管31を通して床暖房パネル2に供給されるようにする。また、第2温度センサ6によって床暖房パネル2から熱源機10に戻される温水の温度を検出し、この検出温度に基づいて使用者がリモコン等で設定した暖房設定温度となるように床暖房パネル2の温調制御が行われる。例えば、第2温度センサ6の検出温度が、上限温度を上回ると熱源機10の加熱を停止させ、下限温度を下回ると熱源機10の加熱を再開させるようにする。なお、上限温度及び下限温度は、前記暖房設定温度に基づいて決定される。また、第2温度センサ6の検出温度に基づいた床暖房パネル2の温調制御は、第2温度センサ6の検出温度に応じて熱源機10による前記一定温度を変更するものとしてもよい。
【0019】
ここで、制御装置7は、温度センサの検出温度を認識する際、使用する温度センサの特性値と温度との相関関係を示す温度特性データに基づいて温度センサが出力する特性値を温度に換算している。温度センサの特性値とは、温度によって変化する固有の出力値であり、サーミスタであれば抵抗値やマイコン認識値等で表され、熱電対であれば起電力やマイコン認識値等で表される。
【0020】
ところで、第1温度センサ5は、所定の特性値を有する予め定められた温度センサが使用されるが、第2温度センサ6は、異なる特性値を有する複数種類の温度センサの中から1つを選択したものが使用される。第2温度センサ6は暖房システム1(より詳しくは、床暖房パネル2)の温度制御に使用するものであり、例えば、複数台の床暖房パネル2が設置される場合にも床暖房パネル2ごとに温度制御可能とするために、熱源機10外部の温水循環路3の戻り管32上(例えば、床暖房パネル2の暖房配管21出口近傍)に設けられており、床暖房パネル2と同時に施工される場合がある。従って、暖房システム1の施工先等のユーザから、暖房システム1を施工する際に、既定の温度センサではなく、様々な床暖房パネルの中から施工する床暖房パネルに合わせた温度センサ(例えば、床暖房パネルと同時に施工しやすい温度センサであり既定の温度センサと異なる温度センサ)を使用したいとの要望がある。この要望等にも応え、かつ融通性に優れる暖房システム1とするため、第2温度センサ6について、複数種類の温度センサを使用可能としている。従って、例えば、熱源機10内部に設けられる第1温度センサ5は、熱源機10の製造メーカ指定等の既定の温度センサが取り付けられ、熱源機10外部に設けられる第2温度センサ6は、既定の温度センサ又はユーザ指定の温度センサが取り付けられる場合がある。
【0021】
制御装置7において、第1温度センサ5は既定の1種類の温度センサが使用されるため、特定の温度特性データに基づいて温水温度の検出が行われる。また、制御装置7は、第2温度センサ6として選択可能な各温度センサの特性値と温度との相関関係を示す温度特性データ群と、選択可能な各温度センサに対応した複数の設定モードと、自動又は手動で設定モードを切り替え可能にする選択部とを有し、選択部により設定モードに対応する温度センサの温度特性データが設定される構成を備えている。前記選択部において、自動で設定モードを切り替える構成は制御装置7に備えるプログラム又は電子回路等からの指令で切り替えられ、手動で設定モードを切り替える構成は別に備えるタクトスイッチ(登録商標)等の操作部を手動操作することでその操作信号により切り替えられる。
【0022】
図2に、第2温度センサ6の温度特性データ群を示す。なお、図2に示す温度特性データ群は、表形式に数値をまとめたデータ表であるが、グラフ化、数式化等したものであってもよい。この温度特性データ群は、温度と、第2温度センサ6として使用される温度センサの種類ごとの特性値(ここでは、マイコン認識値[ビット数])との相関関係を示しており、例えば、温度が15℃のときは、温度センサがAタイプのものでは832ビット、Bタイプのものでは888ビットの特性値を示す。設定モードは、第2温度センサ6として使用される温度センサの種類ごとに対応して設けられており、例えば、設定モードaではAタイプの温度センサ、設定モードbではBタイプの温度センサに対応する。制御装置7の選択部により、設定モードaが設定されている場合はAタイプの温度センサの温度特性データが設定され、設定モードbが設定されている場合はBタイプの温度センサの温度特性データが設定される。例えば、設定された設定モードが「設定モードa」の場合、温度センサの特性値が832ビットを示しているときは検出温度は15℃と換算され、設定された設定モードが「設定モードb」の場合、温度センサの特性値が832ビットを示しているときは検出温度は23℃と換算される。
【0023】
これにより、設定モードの設定により、第2温度センサ6として取り付けられる温度センサと対応する温度特性データに基づいて第2温度センサ6で認識する特性値が温度換算される。従って、第2温度センサ6として特性値の異なる複数種類の温度センサの中から1つを選択して使用する場合に、使用する温度センサによって実際の温水温度を正しく検出することができ、暖房システム1を正常に使用することができる。よって、既定の温度センサとは別の温度センサを使用することも可能となり、融通性に優れ、ユーザの要望にも的確に応え得るものとなる。
【0024】
一方で、制御装置7において、取り付けられた第2温度センサ6の種類に対応して設定モードを設定する必要があるが、例えば、工場出荷時に設定モードの切り替えを間違ったり忘れたり、また、施工先で不用意に設定モードが切り替えられたりするなどの場合が発生し得る。この場合、第2温度センサ6では、実際に取り付けられた温度センサと適合しない設定モードが使用される。そのため、特性値が異なる温度センサの温度特性データに基づいて温水温度が認識されて暖房システム1を動作させることとなり、暖房システム1を正常に使用できなくなるという不具合が生じる。
【0025】
このような不具合を防止すべく、制御装置7は、設定モード適合判断工程を実行する設定モード判断部を更に備えている。この設定モード適合判断工程は、熱源機10を非加熱状態でポンプ4を駆動させたときの第1温度センサ5の検出値と第2温度センサ6の検出値との整合性に基づいて、設定された設定モードが取り付けられている第2温度センサ6に適合するか否かを判断する。ここで、温度センサの検出値は、温度センサが検出する温水温度、温度センサが出力する特性値(抵抗値、起電力、マイコン認識値などを含む。)などが使用される。
【0026】
設定モード適合判断工程を実行する際、熱源機10を非加熱状態でポンプ4を駆動させて温水循環路3内に温水を循環させることにより、温水循環路3全長で温水温度が略一定温度となり、第1温度センサ5取付位置の温水温度と第2温度センサ6取付位置の温水温度とは略同一の値となる。第1温度センサ5は、予め定められた既定の温度センサが使用されるため、第1温度センサ5の検出値の温水温度は、実際の温水温度を反映した正しい値である。従って、その状態において、第1温度センサ5の検出値と、第2温度センサ6の検出値とが整合しない場合には、設定された設定モードが、取り付けられた第2温度センサ6の特性値と対応した設定モードに設定されていないと判断できる。
【0027】
以下に、この判断方法の例を説明する。
(判断方法1)
判断方法1では、第1温度センサ5で検出された往き側の温水温度T1と、第2温度センサ6で検出された戻り側の温水温度T2との温度差が、許容温度範囲X内にあるか否かにより第2温度センサ6の設定モードの適合性を判断する。すなわち、|T1-T2|≦Xの場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6と適合すると判断し、|T1-T2|>Xの場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6とは不適合であると判断する。なお、許容温度範囲Xは、例えば、3℃とする。
【0028】
以下に具体例を示す。
(1)状態1の場合
状態1では、暖房システム1は、以下の状態にあるものとする。
・温水循環路3内のどの位置でも「実際の温水温度が15℃」であり、「第1温度センサ5は温水温度が15℃」であると正しく認識されている。
・第2温度センサ6は、温度特性データ群(図2参照)より「Bタイプ」の特性値を示す温度センサが取り付けられている。
・制御装置7において第2温度センサ6の設定モードは、「設定モードa」(図2を参照して、Aタイプの温度センサの温度特性データが設定される。)が設定されている。
すなわち、状態1の設定モードaは、第2温度センサ6として取り付けられた温度センサ(Bタイプ)とは整合していない状態である。
【0029】
そして、設定モード適合判断工程では、第1温度センサ5の検出値T1は実際の温水温度の15℃を検出し、第2温度センサ6として取り付けられているBタイプの温度センサでは、実際の温水温度15℃に対してマイコン認識値(特性値)は888ビットを出力する。設定された設定モードaであるため、その温度特性データ(図2参照)より、マイコン認識値888ビットに対応して第2温度センサ6で検出する温水温度T2は5℃と認識される。従って、第1温度センサ5の検出温度T1と第2温度センサ6の検出温度T2との温度差は、|T1-T2|=|15℃-5℃|=10℃>3℃となり許容温度範囲Xを超えるため、第2温度センサ6の設定モードaは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)とは不適合と判断される。
【0030】
(2)状態2の場合
次に、状態2では、第2温度センサ6の設定モードは、「設定モードb」(図2を参照して、Bタイプの温度センサの温度特性データが設定される。)が設定されている以外は、前記状態1と同じ状態にあるものとする。すなわち、状態2の設定モードbは、第2温度センサ6として取り付けられた温度センサ(Bタイプ)と整合する状態である。
【0031】
この状態2の場合、設定モードbが設定されているため、その温度特性データ(図2参照)より、マイコン認識値888ビットに対応して第2温度センサ6で検出する温水温度T2は15℃と認識される。従って、第1温度センサ5の検出温度T1と第2温度センサ6の検出温度T2との温度差は、|T1-T2|=|15℃-15℃|=0℃≦3℃となり許容温度範囲X内であるため、第2温度センサ6の設定モードbは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)と適合すると判断される。
【0032】
(判断方法2)
判断方法2では、第2温度センサ6のマイコン認識値(特性値)と、第1温度センサ5の検出温度及び設定された設定モードに対応するマイコン認識値の基準値Mとを比較することにより、第2温度センサ6の設定モードの適合性を判断する。基準値Mは、設定された設定モードでの温度特性データ(図2参照)より、第1温度センサ5の検出温度と対応するマイコン認識値に許容範囲(±α)を設けた値として決定する。なお、許容範囲αは、許容温度範囲に基づいて決めることができる。そして、第2温度センサ6でのマイコン認識値が、基準値Mの範囲内である場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6と適合すると判断し、基準値Mの範囲外である場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6とは不適合であると判断する。
【0033】
以下に具体例を示す。
(1)状態1の場合(判断方法1の記載を参照)
設定モード適合判断工程では、設定された設定モードaであり、第1温度センサ5より実際の温水温度は15℃であるため、設定モードaでの温度特性データ(図2参照)より、15℃に対応するマイコン認識値832ビットに基づいて、基準値Mは832±α(αは、例えば、18ビット)ビットとする。第2温度センサ6として取り付けられているBタイプの温度センサでは、実際の温水温度の15℃に対してマイコン認識値は888ビットを出力する。従って、マイコン認識値(888ビット)≠基準値M(832±18ビット)となり基準値Mの範囲外であるため、第2温度センサ6の設定モードaは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)とは不適合と判断される。
【0034】
(2)状態2の場合(判断方法1の記載を参照)
この状態2の場合、設定された設定モードbであるため、その温度特性データより、実際の温度15℃に対応するマイコン認識値888ビットに基づいて、基準値Mは888±α(αは、例えば、18ビット)ビットとする。第2温度センサ6として取り付けられているBタイプの温度センサでは、実際の温水温度の15℃に対してマイコン認識値は888ビットを出力する。従って、マイコン認識値(888ビット)≒基準値M(888±αビット)となり基準値Mの範囲内であるため、第2温度センサ6の設定モードbは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)と適合すると判断される。
【0035】
(判断方法3)
判断方法3では、第2温度センサ6におけるマイコン認識値(特性値)と第1温度センサ5の検出温度とから、温度特性データ群(図2参照)を参照して第2温度センサ6のタイプを特定することにより、第2温度センサ6の設定モードの適合性を判断する。第2温度センサ6のタイプを特定するには、第1温度センサ5の検出温度T1のときに第2温度センサ6で認識するマイコン認識値Tb2と整合する温度センサの種類を、温度特性データ群(図2参照)を参照して見つけ出す。そして、特定した第2温度センサ6のタイプに対して設定された設定モードが一致する場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6と適合すると判断し、不一致の場合は、設定モードは取り付けられた第2温度センサ6とは不適合であると判断する。
【0036】
以下に具体例を示す。
(1)状態1の場合(判断方法1の記載を参照)
設定モード適合判断工程では、第2温度センサ6(Bタイプ)の検出値としてマイコン認識値Tb2が888ビットであると認識されている。実際の温水温度は、第1温度センサ5の検出温度T1である15℃であるため、温度特性データ群(図2参照)より、15℃のときにマイコン認識値888ビットを示す温度センサは、Bタイプの温度センサであると特定される。従って、Bタイプの温度センサ≠設定された設定モードaであるため、第2温度センサ6の設定モードaは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)とは不適合と判断される。
【0037】
(2)状態2の場合(判断方法1の記載を参照)
この状態2の場合、設定モードbであるから、Bタイプの温度センサ=設定された設定モードbであるため、第2温度センサ6の設定モードbは、取り付けられた第2温度センサ6(Bタイプ)と適合すると判断される。
【0038】
なお、以上の判断方法1~3は、例示であり、これら以外で第1温度センサ5の検出値と第2温度センサ6の検出値との整合性に基づく他の方法を用いてもよい。
【0039】
次に、設定モード適合判断工程の流れの例を説明する。
図3のフローチャート(前記判断方法1)を参照して、設定モード適合判断工程を開始すると、ステップS1で熱源機10が非加熱状態であるか否かを確認する。熱源機10の非加熱状態は、例えば、ガス燃焼装置12が消火状態であることにより確認できる。熱源機10が非加熱状態の場合は、温水循環路3の全長で温水の温度が略一定温度を示すことから、第1温度センサ5の取付位置の温水温度T1と第2温度センサ6の取付位置の温水温度T2とは略同一の値となる。
【0040】
熱源機10の非加熱状態が確認されると、ステップS2でタイマを起動して、ステップS3で所定時間t(例えば、30分)が経過するまで待機する。すなわち、設定モード適合判断工程の直前まで熱源機10が加熱状態であった場合は、温水循環路3内に加熱された温水が残留し床暖房パネル2で放熱されるため、温水循環路3内の温水温度が往き側(第1温度センサ5の取付位置)と戻り側(第2温度センサ6の取付位置)とでは若干異なり、設定モード適合判断の精度が低下するおそれがある。これに対し、熱源機10が非加熱状態となって所定時間t経過している場合は、温水循環路3内の温水温度は、雰囲気温度と略同等となり、温水を循環させた場合にも床暖房パネル2での放熱はほとんどなくなるため、温水循環路3の往き側と戻り側の実際の温水温度の差は、より少なくなり、設定モード適合判断工程における判断精度が更に向上する。
【0041】
所定時間tが経過すると、ステップS4でポンプ4を駆動して温水循環路3内の温水を熱源機10の熱交換器11と床暖房パネル2との間で循環させる。この状態で、次のステップS5以降の処理により設定された設定モードが第2温度センサ6に適合しているか判断される。
【0042】
まず、ステップS5では、第1温度センサ5により往き側の温水温度T1を検出し、第2温度センサ6により戻り側の温水温度T2を検出する。ここで、第2温度センサ6が検出する温水温度T2は、第2温度センサ6の検出値(例えば、マイコン認識値(ビット数))を、設定された設定モードによる温度特性データ(図2参照)に基づいて温度換算した温度値である。なお、第1温度センサ5は、予め定められた温度センサが使用されているため、第1温度センサ5が検出する温水温度T1は、実際の温水温度を正しく認識している。
【0043】
そして、ステップS6で、第1温度センサ5が検出する温水温度T1と、第2温度センサ6が検出する温水温度T2とを比較し、両温度の温度差|T1-T2|が許容温度範囲X(例えば、3℃以内)内であるか否かを判断する。この温度差|T1-T2|が許容温度範囲X内にある場合は、第2温度センサ6での検出温度T2は、第1温度センサ5が検出する実際の温水温度T1と整合するから、正しく認識されているといえる。従って、この場合、ステップS7にて第2温度センサ6の設定モードは、取り付けられた第2温度センサ6と適合する設定モードであると判断される。設定モードが適合する場合は、ステップS8へ移行しポンプ4を駆動停止して、設定モード適合判断工程を終了する。
【0044】
一方、ステップS6で、前記温度差|T1-T2|が許容温度範囲Xを超える場合は、第2温度センサ6での検出温度T1は、第1温度センサ5が検出する実際の温水温度T1と整合せず、誤って認識されているといえる。従って、この場合、ステップS9にて第2温度センサ6の設定モードは、取り付けられた第2温度センサ6とは適合せず、設定モードが不適合であると判断される。
【0045】
設定モードが不適合である場合は、ステップS10で、設定されていた設定モードとは異なる設定モードに切替えられ、処理をステップS5へと戻す。そして、設定モードとして取り付けられた第2温度センサ6と適合する設定モードが設定されるまで(ステップS7)、ステップS5→ステップS6→ステップS9→ステップS10の一連の処理を繰り返し行う。これにより、第2温度センサ6の設定モードは、取り付けられた第2温度センサ6と適合する設定モードへと自動的に変更される。
【0046】
以上の設定モード適合判断工程によれば、取り付けられた第2温度センサ6に対応した設定モードの選択間違いを確実に発見することができる。設定された設定モードが取り付けられた第2温度センサ6と適合しない場合は、適合する設定モードが設定されるまで設定モードを切り替えて適合性判断が行われるから、暖房システム1の使用上利便性が高く、異常状態での暖房システム1の使用を確実に防止できる。
【0047】
なお、前記ステップS6では、第1温度センサ5、第2温度センサ6の検出値として温水温度を用いた判断方法(前記判断方法1)であるが、上述の判断方法2で説明したように温度センサが出力する特性値(マイコン認識値、抵抗値、起電力値など)を用いた判断方法であってもよい。
【0048】
また、前記設定モード適合判断工程では、ステップS9で設定モードが不適合と判断した場合、次のステップS10で設定モードを他の設定モードに切り替えてステップS5へ移行させるが、ステップS10では設定モードを切り替えずに異常報知を行うようにし、ステップS8へ移行してポンプ4を駆動停止して設定モード適合判断工程を終了するようにしてもよい。この場合、異常報知により、使用者等に対して設定モードの選択間違いが知らされ、操作部の手動操作により正しい設定モードへ変更することを促すことができ、異常状態での暖房システム1の使用を防止することができる。
【0049】
次に、設定モード適合判断工程の他の例を説明する。
この例は、上述した判断方法3に即したものであり、図4に示すフローチャートに従った処理を実行する。図4のフローチャートに示すステップS11~ステップS14は、図3の場合のステップS1~S4と同様の処理を行う。そして、ステップS15において、第1温度センサ5で温水温度T1を検出し、第2温度センサ6でマイコン認識値(特性値)Tb2を検出する。ステップS16で、第2温度センサ6におけるマイコン認識値Tb2と第1温度センサ5の検出温度T1とから、温度特性データ群(図2参照)を参照して第2温度センサ6として使用されている温度センサのタイプを特定する。なお、この温度センサのタイプの特定方法は、上述の判断方法3で述べたとおりである。そして、ステップS17で、この特定した第2温度センサ6のタイプ(使用する温度センサ)に対して設定された設定モードが一致するか否か判断する。
【0050】
設定された設定モードが特定した第2温度センサ6のタイプと一致する場合は、ステップS18にて第2温度センサ6の設定モードは、取り付けられた第2温度センサ6と適合する設定モードであると判断される。設定モードが適合する場合は、ステップS19へ移行してポンプ4を駆動停止して、この設定モード適合判断工程を終了する。
【0051】
一方、ステップS17で、特定した第2温度センサ6のタイプに対して設定された設定モードが一致しない場合は、ステップS20にて第2温度センサ6の設定モードは、取り付けられた第2温度センサ6とは適合せず、設定モードが不適合であると判断される。設定モードが不適合である場合は、ステップS21において、ステップS16により特定した第2温度センサ6のタイプに対応する設定モードへと切替える。これにより、設定された設定モードは、直ちに取り付けられた第2温度センサ6と対応する設定モードが設定される。そして、ステップS19へ移行してポンプ4を駆動停止して、この設定モード適合判断工程を終了する。
【0052】
以上のように、図4の設定モード適合判断工程によれば、設定モードが不適合と判断された場合は直ちに適合する設定モードへと切替えられるので、設定モードの適合性判断を迅速にかつ効率よく行うことができ、暖房システム1の使用上の利便性が高く、また異常状態での暖房システム1の使用を確実に防止できる。
【0053】
なお、本発明は、前記実施形態のみに限定されず、特許請求の範囲の記載内及び均等の範囲内で様々な変更を施すことが可能である。
例えば、暖房器2を複数備える場合、設定モード適合判断工程は、暖房器2,2,・・・ごとに個別に又は全暖房器2,2,・・・一斉に判断することができる。
また、設定モードの切り替えは、自動的に切り替えるだけでなく手動でも切り替え可能に構成されているが、制御装置7で自動的に変更する自動切替えだけの構成でもよく、また、使用者等が操作部を手動操作して変更する手動切替えだけの構成でもよい。なお、自動切替えだけの構成の場合、例えば、工場出荷時(初期設定)を設定モードaとして、施工場所での試運転時等において設定モード適合判断工程を実行して設定モードが不適合と判断した場合は自動的に適合する設定モードに切り替えるようにしてもよい。また、手動切替えだけの構成の場合、設定モード適合判断工程において設定モードが不適合と判断した場合は報知を行う処理とすればよい(段落0048参照)。
また、設定モード適合判断工程の実行は、暖房システム1の施工初期(試運転時)、メンテナンス時、暖房器2や熱源機10の取り換え時、定期的、又は不定期的など、様々なタイミングで行うことができる。
また、サービスマンや使用者等の意思によって必要に応じて設定モード適合判断工程を実行することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 暖房システム
2 床暖房パネル(暖房器)
3 温水循環路(熱媒循環路)
4 ポンプ
5 第1温度センサ
6 第2温度センサ
7 制御装置
10 熱源機
11 熱交換器
12 ガス燃焼装置
21 暖房配管
31 往き管
32 戻り管
図1
図2
図3
図4